JP2022142983A - 低温靭性に優れた鋼管 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶接部の低温靭性に優れた鋼管を得ること。【解決手段】溶接金属の成分及び組織が特定の範囲内であると共に、溶接金属のビード形状が、Sout≦0.97×Sin、θ1≦0.95×θ2を満たすことを特徴とする鋼管(ここで、Soutは鋼管外面側の溶接金属の断面積、Sinは鋼管内面側の溶接金属の断面積、θ1は外面側溶融線角度、θ2は内面側溶融線角度である)。【選択図】図1
Description
本発明は、長手方向に内外両面からサブマージアーク溶接された鋼管に関する。
原油・天然ガスの長距離輸送手段として、ラインパイプの重要性は高まっている。長距離輸送用の幹線ラインパイプとしては米国石油協会(API)の5Lが設計の基本となっており、実際の使用量も多い。
ラインパイプ用の鋼管は、一般的に、鋼板を筒状に成形し、鋼板の突き合わせ部を長手方向に内外両面からシーム溶接して製造される。シーム溶接は、通常、開先の一部をガスシールドアーク溶接で仮付溶接した後、サブマージアーク溶接により、鋼管の内面及び外面から一層ずつ溶接して完了する。仮付溶接は後続して行われるサブマージアーク溶接により完全に消去される。
このように製造される鋼管の例としては、UOE鋼管、JCOE鋼管が挙げられる。ラインパイプの溶接部は、採掘地の寒冷化や輸送効率向上のための高圧化の観点から、高靭性化が求められる。
特許文献1は、API規格X65~X70級の溶接鋼管に関し、変形特性と溶接部靭性を兼ね備えた鋼管を提供することを目的として、母材と溶接金属が特定の成分組成を備え、母材部は、第1相がフェライトで、第2相がフェライト粒界に面積率5~20%で分散している島状マルテンサイトである金属組織を有し、溶接金属部は、多数のTiOを核として変態生成した微細なアシキュラーフェライトが面積率80%以上、島状マルテンサイトが面積率5%以下である金属組織を有するものとした鋼管を開示する。
特許文献2は、溶接鋼管に関し、溶接熱影響部(HAZ)が優れた靭性を備える鋼管を提供することを目的として、HAZが、島状マルテンサイトの面積分率4%以下、平均旧オーステナイト粒径400μm以下の金属組織を備え、先行溶接及び後続溶接によって形成される各HAZの平均旧オーステナイト粒径と、先行溶接によって形成される溶接ビードの先端から5mm位置でのビード幅と、先行溶接及び後続溶接の溶接ビードの溶融線傾斜角等をパラメータとして考慮する技術を開示する。
特許文献3および4は、API規格5LでX60~X70級の強度を有し、板厚6~40mmの厚鋼板を成形し、長手方向に内外面からシーム溶接された溶接部を有する鋼管を対象とし、厚鋼板を溶接入熱15~110kJ/cmで溶接して鋼管とした場合であっても、低温での溶接金属部の靭性に優れた鋼管を得ることを目的として、母材及び溶接金属の各成分組成と溶接金属の金属組織を考慮した技術を開示する。
ラインパイプ用鋼管は、原油・天然ガスの長距離の輸送効率向上のための高圧化に対応するべく肉厚化が進んでいる。厚鋼板の溶接には、サブマージアーク溶接のような大入熱溶接が必要であるが、大入熱溶接においては、一般に、HAZの靭性の低下が問題となっている。一方、ラインパイプ用鋼管は、深海井戸や寒冷地で用いられることも多いため、-40℃以下という低温での靭性に対する保証が求められることもある。このため、ラインパイプ用鋼管に関しては、母材となる鋼板の成分組成はもとより、溶接部について、溶接金属の成分組成やHAZ組織、ビード形状などの観点から検討がなされてきた。
前記特許文献1,3及び4では、溶接部の低温靭性を改善するため、母材部及び溶接金属の金属組織の観点からの検討がなされている。特に、特許文献3,4は、溶接金属をアシキュラーフェライト主体の組織にすることにより、溶接金属の靭性を向上させることを開示するものの、溶接部の更なる靭性向上のためには、HAZの靭性向上も併せて検討する必要がある。
前記特許文献2では、HAZの金属組織に加え、溶接金属のビード形状の観点からの検討を行っている。特にパイプライン規格であるDVN-OS-F101で規定される溶融線会合部ノッチ(FL試験片。特許文献2では「会合部FLノッチ」と称している。)試験片を採用し、靭性改善のため、ノッチ底に占めるICCGHAZ長さを小さくすることに着目してはいる。しかし、先行溶接で形成されたHAZと後続溶接で形成されたHAZの平均旧オーステナイト粒径を変数とするパラメータを提案しているため、HAZ全体のマクロ的指標を提示するにとどまり、局所的なき裂の起点を正しく評価できない場合がある。その結果として、HAZ靭性を向上できない場合もある。
このように、ラインパイプの溶接部の靭性向上には、溶接金属の靭性向上のみならず、HAZ靭性の向上を達成することが求められるところ、HAZの低温靭性改善については、未だ検討の余地がある。本発明は、特許文献3,4で提案される溶接金属の靭性向上に加えて、HAZの靭性をも向上させ、溶接部全体の靭性を向上させることを技術的な課題とするものであり、溶接部の低温靭性に優れた鋼管を得ることを目的とするものである。
突き合せ部の内面および外面が長手方向にサブマージアーク溶接によって溶接された溶接部を有する鋼管は、ガス輸送時に内圧により円周方向に引張応力を受ける。したがって、溶接部でき裂が発生した場合、き裂は板厚方向に進み、そこからさらに鋼管長手方向(軸方向)に進展していく。そのため、板厚方向に靭性の良い組織が含まれていれば、そこで亀裂の進展が抑えられ、溶接部の靭性は担保される。
溶接部は溶接金属とHAZから成るので、溶接部における板厚方向のき裂進展経路は、溶接金属中のみ、あるいは、溶接金属とHAZの両方を通過するものになる。したがって、溶接部の靭性を確保するためには、溶接金属とHAZのいずれにおいても靭性が良好であることが求められる。本発明は、HAZについても鋼管外面側と鋼管内面側の両方のHAZを靭性評価の対象とすることができる試験片である溶融線会合部ノッチ試験片(パイプラインの規格であるDVN-OS-F101で規定される、50%WM(溶接金属)及び50%HAZのFL試験片)を採用する。
HAZの靭性に関しては、先行する鋼管内面側溶接の熱(内面入熱)により加熱された溶融線近傍の粗粒域のうち、後続の鋼管外面側溶接による熱(外面入熱)により二相域(AC1点~AC3点の間の温度)に再加熱された領域(IRCGHAZ(Intercritical Reheated Coarse-Grained Heat Affected Zone)、若しくはICCGHAZ(Inter Critical Coarse-Grained Heat Affected Zone)ともいう。)で靭性が低下することが知られている。これは、その金属組織が、粗粒化するとともに島状マルテンサイトが生成することにより脆化組織となることが主な要因であると認識する。溶接金属とHAZを含む溶接部の靭性評価に当たり、本発明者は、IRCGHAZの近傍を評価することができる前記溶融線会合部ノッチ試験片を採用して、IRCGHAZとノッチの位置関係に注目して検討を進めた。
溶融線会合部ノッチ試験片は、鋼管長手方向(軸方向)に垂直な断面(以下、「鋼管断面」ともいう。)において、2つの溶融線会合部(先行溶接金属と後続溶接金属の溶融線どうしが交差する点)を結ぶ直線(溶融線会合部を通り鋼板幅方向に引いた直線でもあり、以下、「会合部通線」ともいう。)を中心線として、これに垂直な直線がHAZを通過する距離と溶接金属を通過する距離(内面側溶接金属を通過する距離と外面側溶接金属を通過する距離の和)とが50:50になる位置にノッチを設けたシャルピー衝撃試験片である(この試験片における前記垂直な直線を「ノッチ線」(ノッチ底を通る、会合部通線に垂直な線分)ともいう。)。この試験片による実験の結果、鋼管内面側溶融線上のAC3点(外面側溶接によりAC3温度に加熱された鋼管内面側溶融線上の位置。以下、「溶融線上AC3点」ともいう。また、同様に、外面側溶接によりAC1温度に加熱された位置を「溶融線上AC1点」ともいう。)と、鋼管内面側溶融線上のノッチ線の位置(以下、「内面側溶融線上ノッチ位置」ともいう。)との間の距離(以下、「ノッチAC3間距離」ともいう。)が長いほど、低温での衝撃吸収エネルギーが大きくなること、すなわち、低温靭性が向上することが判明した。
このノッチAC3間距離が長いことは、IRCGHAZの位置が、内面側溶融線上ノッチ位置から遠く、ノッチ線からも遠いため、IRCGHAZによる靭性低下に及ぼす影響が少ないことを示していると思われる。このような位置関係にするためには、外面入熱量を少なくするとよいと考えることができる。外面入熱量を少なくすると、溶融線上AC3点と溶融線上AC1点は、内面側溶融線上、それぞれに外面側に寄ることになり、また、AC3点とAC1点との間隔(IRCGHAZの幅でもある)は狭くなる。このように、外面入熱量を少なくすると、IRCGHAZをノッチ線から遠ざけることができる。ここで、外面入熱量の大小は、外面側溶接金属を介してHAZに伝達される熱量の大小であるから、鋼管断面における外面側溶接金属の断面積の大小と相関がある。結果として、外面入熱量を内面入熱量より少なくすることは、外面側溶接金属の断面積Soutを内面側溶接金属の断面積Sinよりも小さくすることである。
さらに、本発明者は、溶接ビード形状を制御してIRCGHAZをノッチ線から遠ざけることも考えた。
まず、内面側溶融線の傾角(内面側溶融線上ノッチ位置と会合部とを通る直線が会合部通線との間になす角度(以下、「内面側溶融線角度」ともいう。)θ2を大きくすることにより、ノッチAC3間距離(内面側溶融線上ノッチ位置と溶融線上AC3点との間の距離)を長くすることができる。一方で、溶融線会合部ノッチ試験片の規定(WM(溶接金属):HAZ=50:50)から、単にθ2を大きくしただけでは、ノッチ線が会合部側に寄ってしまう。そのため、外面側溶融線角度θ1を小さくして、ノッチ線上の溶融金属部分を確保すればよいことを見出した。すなわち、内面側溶融線角度θ2を大きくし、外面側溶融線角度θ1をより小さくすることで、IRCGHAZの位置をノッチ線から遠ざけることができる。したがって、溶接部の溶融線会合部ノッチ試験片による靭性は向上する。
まず、内面側溶融線の傾角(内面側溶融線上ノッチ位置と会合部とを通る直線が会合部通線との間になす角度(以下、「内面側溶融線角度」ともいう。)θ2を大きくすることにより、ノッチAC3間距離(内面側溶融線上ノッチ位置と溶融線上AC3点との間の距離)を長くすることができる。一方で、溶融線会合部ノッチ試験片の規定(WM(溶接金属):HAZ=50:50)から、単にθ2を大きくしただけでは、ノッチ線が会合部側に寄ってしまう。そのため、外面側溶融線角度θ1を小さくして、ノッチ線上の溶融金属部分を確保すればよいことを見出した。すなわち、内面側溶融線角度θ2を大きくし、外面側溶融線角度θ1をより小さくすることで、IRCGHAZの位置をノッチ線から遠ざけることができる。したがって、溶接部の溶融線会合部ノッチ試験片による靭性は向上する。
溶接金属の靭性向上に関しては、特許文献3,4で提案されているように、アシキュラーフェライト(AF)を主体とし、粒界フェライト(GBF)や島状マルテンサイト(MA)をより生じさせない組織にするとよい。
本発明者は、これらの知見に基づいて、本発明を完成した。その要旨は以下のとおりである。
[1]長手方向に内面および外面が溶接された溶接部を有する鋼管であって、
前記鋼管の母材の引張強度が520~760MPaであり、
前記鋼管の溶接熱影響部(HAZ)の組織が、面積率で
ベイナイト:50%以上
粒界フェライト:15%以下
フェライトサイドプレート:15%以下
島状マルテンサイト:5%以下
旧オーステナイト粒径:200μm以下
EBSD粒径:150μm以下
であり、
前記溶接部の溶接金属の成分が、
C :0.030~0.100%、
Si:0.030~0.500%、
Mn:0.50~2.00%、
P :0.015%以下、
S :0.010%以下、
Al:0.0010~0.0300%、
Ti:0.0050~0.0400%、
N :0.0020~0.0060%、
O :0.0150~0.0500%、
残部:Fe及び不純物
であり、次の式(1)~式(7)を満足し、
前記溶接金属の組織が、面積率で、
アシキュラーフェライト:80%以上
粒界フェライト:10%以下
島状マルテンサイト:3%以下
を含み、EBSD粒径が10μm以下
であり、
前記鋼管長手方向に垂直な断面において、前記鋼管の溶接金属の形状が、次の式(8)~式(9)を満足することを特徴とする鋼管:
0%≦α’≦50% …(1)
0.3≦Al/O≦0.8 …(2)
0.30%≦Ceq≦0.50% …(3)
0.05%≦Pcm≦0.20% …(4)
α’=(1.5×(O-0.89Al)+3.4×N-Ti)×1000…(5)
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15…(6)
Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60
+Mo/15+V/10+5B …(7)
Sout≦0.97×Sin …(8)
θ1≦0.95×θ2 …(9)
ここで、
Sout:鋼管外面側の溶接金属の断面積
Sin :鋼管内面側の溶接金属の断面積
θ1 :外面側溶融線角度
θ2 :内面側溶融線角度
であり、上記の式(2)、(5)、(6)、(7)の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を示し、含まないときは0%とする。
前記鋼管の母材の引張強度が520~760MPaであり、
前記鋼管の溶接熱影響部(HAZ)の組織が、面積率で
ベイナイト:50%以上
粒界フェライト:15%以下
フェライトサイドプレート:15%以下
島状マルテンサイト:5%以下
旧オーステナイト粒径:200μm以下
EBSD粒径:150μm以下
であり、
前記溶接部の溶接金属の成分が、
C :0.030~0.100%、
Si:0.030~0.500%、
Mn:0.50~2.00%、
P :0.015%以下、
S :0.010%以下、
Al:0.0010~0.0300%、
Ti:0.0050~0.0400%、
N :0.0020~0.0060%、
O :0.0150~0.0500%、
残部:Fe及び不純物
であり、次の式(1)~式(7)を満足し、
前記溶接金属の組織が、面積率で、
アシキュラーフェライト:80%以上
粒界フェライト:10%以下
島状マルテンサイト:3%以下
を含み、EBSD粒径が10μm以下
であり、
前記鋼管長手方向に垂直な断面において、前記鋼管の溶接金属の形状が、次の式(8)~式(9)を満足することを特徴とする鋼管:
0%≦α’≦50% …(1)
0.3≦Al/O≦0.8 …(2)
0.30%≦Ceq≦0.50% …(3)
0.05%≦Pcm≦0.20% …(4)
α’=(1.5×(O-0.89Al)+3.4×N-Ti)×1000…(5)
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15…(6)
Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60
+Mo/15+V/10+5B …(7)
Sout≦0.97×Sin …(8)
θ1≦0.95×θ2 …(9)
ここで、
Sout:鋼管外面側の溶接金属の断面積
Sin :鋼管内面側の溶接金属の断面積
θ1 :外面側溶融線角度
θ2 :内面側溶融線角度
であり、上記の式(2)、(5)、(6)、(7)の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を示し、含まないときは0%とする。
[2]前記溶接金属の成分が、前記Feの一部に代えて、
Cu:0~0.60%、
Ni:0~0.50%、
Cr:0~0.50%、
Mo:0~0.40%、
V :0~0.060%、
Nb:0~0.060%、
B :0~0.0350%、
Mg:0~0.0100%、及び
Ca:0~0.005%
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする[1]に記載の鋼管。
Cu:0~0.60%、
Ni:0~0.50%、
Cr:0~0.50%、
Mo:0~0.40%、
V :0~0.060%、
Nb:0~0.060%、
B :0~0.0350%、
Mg:0~0.0100%、及び
Ca:0~0.005%
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする[1]に記載の鋼管。
[3]前記鋼管の母材の成分が、質量%で、
C :0.010~0.100%、
Si:0.03~0.50%、
Mn:0.50~2.00%、
P :0.015%以下、
S :0.010%以下、
Al:0.001~0.050%、
Ti:0.005~0.030%、
N :0.0020~0.0060%、
O :0.0050%以下、
Cu:0~0.50%、
Ni:0~0.60%、
Cr:0~0.50%、
Mo:0~0.40%、
V :0~0.060%、
Nb:0~0.060%、
B :0~0.0020%、
Mg:0~0.0100%、及び
Ca:0~0.0300%
を含有し、残部がFe及び不純物
であることを特徴とする[1]または[2]に記載の鋼管。
C :0.010~0.100%、
Si:0.03~0.50%、
Mn:0.50~2.00%、
P :0.015%以下、
S :0.010%以下、
Al:0.001~0.050%、
Ti:0.005~0.030%、
N :0.0020~0.0060%、
O :0.0050%以下、
Cu:0~0.50%、
Ni:0~0.60%、
Cr:0~0.50%、
Mo:0~0.40%、
V :0~0.060%、
Nb:0~0.060%、
B :0~0.0020%、
Mg:0~0.0100%、及び
Ca:0~0.0300%
を含有し、残部がFe及び不純物
であることを特徴とする[1]または[2]に記載の鋼管。
[4]前記溶接熱影響部(HAZ)と溶接金属(WM)の割合が50:50になる溶融線会合部ノッチ試験片を用いた試験において、-20℃におけるシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが46J以上であることを特徴とする[1]~[3]のいずれか1つに記載の鋼管。
[5]前記溶接金属の中央にノッチを有する試験片を用いた衝撃試験において、-20℃におけるシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが100J以上であることを特徴とする[1]~[4]のいずれか1つに記載の鋼管。
[6]前記鋼管の溶接金属の形状が、次の式(10)~式(11)を満足することを特徴とする[1]~[5]のいずれか1つに記載の鋼管。
θout≧100°、θin≧100° …(10)
hout≦2mm、hin≦2mm …(11)
θout:鋼管外面側溶接ビード止端角
θin :鋼管内面側溶接ビード止端角
hout:鋼管外面側溶接ビード高さ
hin :鋼管内面側溶接ビード高さ
θout≧100°、θin≧100° …(10)
hout≦2mm、hin≦2mm …(11)
θout:鋼管外面側溶接ビード止端角
θin :鋼管内面側溶接ビード止端角
hout:鋼管外面側溶接ビード高さ
hin :鋼管内面側溶接ビード高さ
本発明によれば、溶接部の低温靭性に優れた鋼管を得ることができる。
以下、本発明の実施形態ついて説明する。
(溶接金属の成分)
はじめに、溶接金属の成分について説明する。なお、以下、成分に関する「%」は、特に断りのない限り「質量%」を表す。
(溶接金属の成分)
はじめに、溶接金属の成分について説明する。なお、以下、成分に関する「%」は、特に断りのない限り「質量%」を表す。
C:0.030~0.100%
Cは鋼の強度確保のために必要な元素であり、含有量の下限は0.030%が望ましい。好ましくは0.050%である。一方、C量が多いと溶接シーム部において溶接高温割れが発生しやすくなるので、上限は0.100%、好ましくは、0.065%である。
Cは鋼の強度確保のために必要な元素であり、含有量の下限は0.030%が望ましい。好ましくは0.050%である。一方、C量が多いと溶接シーム部において溶接高温割れが発生しやすくなるので、上限は0.100%、好ましくは、0.065%である。
Si:0.030~0.500%
Siはブローホール防止に有効であり、またアシキュラーフェライト主体の組織とするために、含有量の下限は0.030%、好ましくは0.150%である。一方、Si量が多いと島状マルテンサイトを形成しやすくなり、低温靱性を著しく劣化させるので、上限は0.500%、好ましくは0.250%である。
Siはブローホール防止に有効であり、またアシキュラーフェライト主体の組織とするために、含有量の下限は0.030%、好ましくは0.150%である。一方、Si量が多いと島状マルテンサイトを形成しやすくなり、低温靱性を著しく劣化させるので、上限は0.500%、好ましくは0.250%である。
Mn:0.50~2.00%
Mnは焼入れ性向上元素として作用する。溶接金属をアシキュラーフェライト主体の組織とするための含有量の下限は0.50%であり、好ましくは1.00%、さらに好ましくは、1.20%である。一方、Mn量が多いと、粗大なMnSが形成され、破壊の起点となるため、上限は2.00%であり、好ましくは1.75%、さらに好ましくは1.50%である。
Mnは焼入れ性向上元素として作用する。溶接金属をアシキュラーフェライト主体の組織とするための含有量の下限は0.50%であり、好ましくは1.00%、さらに好ましくは、1.20%である。一方、Mn量が多いと、粗大なMnSが形成され、破壊の起点となるため、上限は2.00%であり、好ましくは1.75%、さらに好ましくは1.50%である。
P:0.015%以下(0%を含む)
S:0.010%以下(0%を含む)
P、Sは、いずれも不純物であり、溶接部の靭性を悪化させる元素である。これらの含有量はなるべく低い方が好ましく、Pの上限は0.015%、Sの上限は0.010%である。好ましくは、Pの上限は0.008%、Sの上限は0.003%である。なお、脱P、脱Sはコストがかかるため、経済的観点から、これらの好ましい下限値は、各々、0.001%である。
S:0.010%以下(0%を含む)
P、Sは、いずれも不純物であり、溶接部の靭性を悪化させる元素である。これらの含有量はなるべく低い方が好ましく、Pの上限は0.015%、Sの上限は0.010%である。好ましくは、Pの上限は0.008%、Sの上限は0.003%である。なお、脱P、脱Sはコストがかかるため、経済的観点から、これらの好ましい下限値は、各々、0.001%である。
Al:0.0010~0.0300%
Alは脱酸元素として作用し、アシキュラーフェライト核生成サイトとして有効なTi酸化物を分散させるための酸素量制御に必要である。母材希釈を考慮すると、望ましい下限は0.0010%であり、好ましくは0.0100%である。一方、Al量が0.0300%を超えると、酸化物の生成を阻害し、靭性を確保できないので、上限は0.0300%であり、好ましくは0.0150%である。
Alは脱酸元素として作用し、アシキュラーフェライト核生成サイトとして有効なTi酸化物を分散させるための酸素量制御に必要である。母材希釈を考慮すると、望ましい下限は0.0010%であり、好ましくは0.0100%である。一方、Al量が0.0300%を超えると、酸化物の生成を阻害し、靭性を確保できないので、上限は0.0300%であり、好ましくは0.0150%である。
Ti:0.0050~0.0400%
Tiは溶接金属中の酸素と反応して、アシキュラーフェライトの核となるTi酸化物を形成する。この酸化物を溶接金属中に多数微細分散させるため、望ましい含有量の下限は0.0050%であり、好ましくは0.0090%である。一方、Ti量が過剰になると、Ti酸化物が凝集・粗大化し、アシキュラーフェライトの核を生成する能力が低下すること、また、Ti酸化物が破壊の起点となり靭性を確保できないので、上限は0.0400%であり、好ましくは0.0150%である。
Tiは溶接金属中の酸素と反応して、アシキュラーフェライトの核となるTi酸化物を形成する。この酸化物を溶接金属中に多数微細分散させるため、望ましい含有量の下限は0.0050%であり、好ましくは0.0090%である。一方、Ti量が過剰になると、Ti酸化物が凝集・粗大化し、アシキュラーフェライトの核を生成する能力が低下すること、また、Ti酸化物が破壊の起点となり靭性を確保できないので、上限は0.0400%であり、好ましくは0.0150%である。
N:0.0020~0.0060%
Nはアシキュラーフェライト組織形成のために有効なTi量の調整のために効果的元素であるため、望ましい含有量の下限は0.0020%であり、好ましくは0.0030%である。一方、0.0060%を超えると、Tiと反応せずに残った固溶Nが著しく靭性を低下させるため、その上限は0.0060%であり、好ましくは0.0040%である。
Nはアシキュラーフェライト組織形成のために有効なTi量の調整のために効果的元素であるため、望ましい含有量の下限は0.0020%であり、好ましくは0.0030%である。一方、0.0060%を超えると、Tiと反応せずに残った固溶Nが著しく靭性を低下させるため、その上限は0.0060%であり、好ましくは0.0040%である。
O:0.0150~0.0500%
Oはアシキュラーフェライトの核となる酸化物形成のために必要な元素である。そのため望ましい含有量の下限は0.0150%であり、好ましくは0.0200%である。一方、O量が0.0500%を超えると、酸化物の過剰形成、凝集・粗大化により靭性が低下するので、上限は0.0500%とする。上限は、好ましくは0.0300%である。
Oはアシキュラーフェライトの核となる酸化物形成のために必要な元素である。そのため望ましい含有量の下限は0.0150%であり、好ましくは0.0200%である。一方、O量が0.0500%を超えると、酸化物の過剰形成、凝集・粗大化により靭性が低下するので、上限は0.0500%とする。上限は、好ましくは0.0300%である。
溶接金属の残部はFe及び不純物である。ここで、溶接金属の不純物とは、溶接の過程で、溶接ワイヤ、フラックス、鋼板、周辺雰囲気等から混入する成分であり、本願発明の課題を解決する上での妨げとならない量で、また、最終製品においては、その特性上の実際的な問題を発生させない量で、存在することが許容され得る成分のことをいう。
溶接金属は、上記のFeの一部に代えて、以下の元素を含有させてもよい。以下に説明する元素の含有は必須ではなく、溶接金属中の含有量は0%でもよい。
Cu:0~0.60%
Cuは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Cuの含有量は0%でもよい。0.60%を超えると効果が飽和するので、上限は0.60%とする。
Cuは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Cuの含有量は0%でもよい。0.60%を超えると効果が飽和するので、上限は0.60%とする。
Ni:0~0.500%
Niは靭性を低下させることなく、溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Niの含有量は0%でもよい。0.500%を超えると効果が飽和するので、上限は0.500%とする。
Niは靭性を低下させることなく、溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Niの含有量は0%でもよい。0.500%を超えると効果が飽和するので、上限は0.500%とする。
Cr:0~0.50%
Crは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Crの含有量は0%でもよい。0.50%を超えると効果が飽和するので、上限は0.50%とする。
Crは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Crの含有量は0%でもよい。0.50%を超えると効果が飽和するので、上限は0.50%とする。
Mo:0~0.40%
Moは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Moの含有量は0%でもよい。0.40%を超えると効果が飽和するため、上限は0.40%とする。
Moは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Moの含有量は0%でもよい。0.40%を超えると効果が飽和するため、上限は0.40%とする。
V:0~0.060%
Vは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Vの含有量は0でもよい。0.06%を超えると効果が飽和するので、上限は0.060%とする。
Vは溶接金属の強度を向上することのできる元素である。Vの含有量は0でもよい。0.06%を超えると効果が飽和するので、上限は0.060%とする。
Nb:0~0.060%
Nbは強度向上、粒界フェライト抑制に有効な固溶Bを存在させるために有効な元素である。Nbの含有量は0%でもよい。Nb量が0.060%を超えると島状マルテンサイトが形成しやすくなり、靭性が低下するので、上限は0.060%である。望ましい上限は0.020%である。
Nbは強度向上、粒界フェライト抑制に有効な固溶Bを存在させるために有効な元素である。Nbの含有量は0%でもよい。Nb量が0.060%を超えると島状マルテンサイトが形成しやすくなり、靭性が低下するので、上限は0.060%である。望ましい上限は0.020%である。
B:0~0.0350%
Bは固溶状態のBが、溶接金属の粒界フェライト形成を抑制することにより、アシキュラーフェライトの形成を促進する。Bの含有量は0%でもよいが、この効果を得るために下限を0.0001%とする。好ましくは0.0005%である。一方、B量が0.0350を超えると強度が高くなりすぎて、靭性が低下するので、上限は0.0350%とする。好ましくは0.0100%である。溶接金属へのB添加は、厚板母材、フラックス、又はワイヤのいずれからでも添加することができる。例えば、母材がB無添加鋼の場合、B酸化物が含有したフラックスを用いればよい。
Bは固溶状態のBが、溶接金属の粒界フェライト形成を抑制することにより、アシキュラーフェライトの形成を促進する。Bの含有量は0%でもよいが、この効果を得るために下限を0.0001%とする。好ましくは0.0005%である。一方、B量が0.0350を超えると強度が高くなりすぎて、靭性が低下するので、上限は0.0350%とする。好ましくは0.0100%である。溶接金属へのB添加は、厚板母材、フラックス、又はワイヤのいずれからでも添加することができる。例えば、母材がB無添加鋼の場合、B酸化物が含有したフラックスを用いればよい。
Mg:0~0.0100%
MgはMgSあるいはMgAl2O4を形成し、ピン止め粒子として作用する。Mgの含有量は0%でもよい。溶接金属のオーステナイト粒成長を抑制するための下限は0.0010%であり、好ましくは0.0015%である。一方、0.0100%を超えると効果が飽和するので、上限は0.0100%とする。好ましくは、上限は0.0025%である。
MgはMgSあるいはMgAl2O4を形成し、ピン止め粒子として作用する。Mgの含有量は0%でもよい。溶接金属のオーステナイト粒成長を抑制するための下限は0.0010%であり、好ましくは0.0015%である。一方、0.0100%を超えると効果が飽和するので、上限は0.0100%とする。好ましくは、上限は0.0025%である。
Ca:0~0.005%
Caは形態制御による延性の改善や組織微細化に有効な元素である。Caの含有量は0%でもよい。Ca量が多いと、硫化物や酸化物の粗大化を生じ、延性や靭性が劣化するので、上限は0.005%とする。
Caは形態制御による延性の改善や組織微細化に有効な元素である。Caの含有量は0%でもよい。Ca量が多いと、硫化物や酸化物の粗大化を生じ、延性や靭性が劣化するので、上限は0.005%とする。
本実施形態における溶接金属の成分は、さらに、以下に説明する関係を満たすとよい。
0%≦α’≦50% …(1)
α’=(1.5×(O-0.89×Al)+3.4×N-Ti)×1000 …(5)
式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を示し、含まないときは0%とする。
0%≦α’≦50% …(1)
α’=(1.5×(O-0.89×Al)+3.4×N-Ti)×1000 …(5)
式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を示し、含まないときは0%とする。
α’はAl、O及びTi、Nの化学量論比に基づいて、有効なアシキュラーフェライト生成能を示すパラメータである。α’を、0~50の範囲に制御することによりアシキュラーフェライト核生成能が向上する。
α’が0未満の場合、Al、Ti量がいずれかが過多、あるいはN、O量が過少となるため、著しくアシキュラーフェライト核生成能が減少する。α’が50超の場合、Al、Ti量がいずれかが過少、あるいはN、O量が過多となるため、著しくアシキュラーフェライト核生成能が減少する。
α’が0未満の場合、Al、Ti量がいずれかが過多、あるいはN、O量が過少となるため、著しくアシキュラーフェライト核生成能が減少する。α’が50超の場合、Al、Ti量がいずれかが過少、あるいはN、O量が過多となるため、著しくアシキュラーフェライト核生成能が減少する。
0.3≦Al/O≦0.8 …(2)
式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を示し、含まないときは0%とする。
Al/Oは、Al量とO量の比であり、アルミ脱酸終了後の酸素ポテンシャルを示す指標である。Al/Oを0.3~0.8に制御することで、アシキュラーフェライトの生成能を向上できる。
Al/O比が0.3未満の場合、O量が過多となり、Ti酸化物を形成しなかった溶存酸素が鋼の清浄度を下げるため靭性が低下する。一方、Al/Oが0.8超の場合、Al量が過多となり、Tiと結合するO量が低減し、アシキュラーフェライト核となるTi酸化物が減少し、靭性が低下する。よって、Al/Oは、0.3~0.8とするのが好ましい。
式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を示し、含まないときは0%とする。
Al/Oは、Al量とO量の比であり、アルミ脱酸終了後の酸素ポテンシャルを示す指標である。Al/Oを0.3~0.8に制御することで、アシキュラーフェライトの生成能を向上できる。
Al/O比が0.3未満の場合、O量が過多となり、Ti酸化物を形成しなかった溶存酸素が鋼の清浄度を下げるため靭性が低下する。一方、Al/Oが0.8超の場合、Al量が過多となり、Tiと結合するO量が低減し、アシキュラーフェライト核となるTi酸化物が減少し、靭性が低下する。よって、Al/Oは、0.3~0.8とするのが好ましい。
0.03%≦Ceq≦0.50% …(3)
溶接金属の成分組成は、下記の式で表されるCeqを0.30~0.50%とするのが好ましい。
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 …(6)
式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を示し、含まないときは0%とする。
Ceqは溶接金属の焼入れ性について、各合金元素の焼入れ性をそれぞれC量に換算して合計したものである。溶接金属が所望の引張強度を確保するために、Ceqを0.03~0.50%に制御するのが好ましい。
溶接金属の成分組成は、下記の式で表されるCeqを0.30~0.50%とするのが好ましい。
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 …(6)
式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を示し、含まないときは0%とする。
Ceqは溶接金属の焼入れ性について、各合金元素の焼入れ性をそれぞれC量に換算して合計したものである。溶接金属が所望の引張強度を確保するために、Ceqを0.03~0.50%に制御するのが好ましい。
0.05%≦Pcm≦0.20% …(4)
溶接金属の成分組成は、下記の式で表されるPcmが0.05~0.20%となるのが好ましい。
Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60
+Mo/15+V/10+5B …(7)
式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を示し、含まないときは0%とする。
溶接金属の引張強度を確保するためには、種々の合金元素をバランスよく含有させることによって、Pcmの値を0.05%以上とするのが好ましい。合金元素を過剰に含有させるとコスト上昇につながるため、Pcmの値は0.20%以下とするのが好ましい。
溶接金属の成分組成は、下記の式で表されるPcmが0.05~0.20%となるのが好ましい。
Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60
+Mo/15+V/10+5B …(7)
式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を示し、含まないときは0%とする。
溶接金属の引張強度を確保するためには、種々の合金元素をバランスよく含有させることによって、Pcmの値を0.05%以上とするのが好ましい。合金元素を過剰に含有させるとコスト上昇につながるため、Pcmの値は0.20%以下とするのが好ましい。
(溶接金属の組織)
次に、溶接金属の組織について説明する。
本発明の鋼管は、引張強度TSが520~760MPa、板厚が6~40mm程度の鋼板をサブマージアーク溶接すると、溶接入熱15~110kJ/cmの範囲で行われる。その溶接金属の組織は、アシキュラーフェライトを主とする以下のような組織であると、後述する溶接金属の形状・HAZ組織による効果と相まって、溶接部の靭性向上に寄与する。なお、以下、組織に関する「%」は、特に断りのない限り鋼管断面における「面積率(%)」を表す。
次に、溶接金属の組織について説明する。
本発明の鋼管は、引張強度TSが520~760MPa、板厚が6~40mm程度の鋼板をサブマージアーク溶接すると、溶接入熱15~110kJ/cmの範囲で行われる。その溶接金属の組織は、アシキュラーフェライトを主とする以下のような組織であると、後述する溶接金属の形状・HAZ組織による効果と相まって、溶接部の靭性向上に寄与する。なお、以下、組織に関する「%」は、特に断りのない限り鋼管断面における「面積率(%)」を表す。
アシキュラーフェライト:80%以上
アシキュラーフェライトはTi系酸化物を核とした針状のフェライト組織であり、その割合が大きいほど、溶接金属部の破壊単位が微細化する。その効果を得るためには、アシキュラーフェライトを80%以上とすることが好ましい。
アシキュラーフェライトはTi系酸化物を核とした針状のフェライト組織であり、その割合が大きいほど、溶接金属部の破壊単位が微細化する。その効果を得るためには、アシキュラーフェライトを80%以上とすることが好ましい。
粒界フェライト:10%以下
粒界フェライトは脆化相の1つで、破壊の起点となり、靭性低下要因となる。そのため、粒界フェライトは10%以下とすることが好ましい。
粒界フェライトは脆化相の1つで、破壊の起点となり、靭性低下要因となる。そのため、粒界フェライトは10%以下とすることが好ましい。
島状マルテンサイト:3%以下
島状マルテンサイトも脆化相の1つで、非常に硬度が高いため破壊の起点となり、靭性低下要因となる。そのため、島状マルテンサイトを3%以下とすることが好ましい。
島状マルテンサイトも脆化相の1つで、非常に硬度が高いため破壊の起点となり、靭性低下要因となる。そのため、島状マルテンサイトを3%以下とすることが好ましい。
EBSD粒径:10μm以下
EBSD(Electron Back Scatter Diffraction;電子線後方散乱回析)粒径は破壊単位の目安となる結晶粒径サイズである。EBSD粒径が10μm以下であれば破壊単位が微細であり、低温での靭性を確保する面で好ましい。
EBSD(Electron Back Scatter Diffraction;電子線後方散乱回析)粒径は破壊単位の目安となる結晶粒径サイズである。EBSD粒径が10μm以下であれば破壊単位が微細であり、低温での靭性を確保する面で好ましい。
(溶接金属の形状)
次に、溶接金属の形状(ビード形状)について説明する。
図3は、ノッチAC3間距離(内面側溶融線上AC3点から内面側溶融線上ノッチ位置までの距離)を横軸に、溶融線会合部ノッチ試験片の-20℃でのシャルピー衝撃試験における吸収エネルギーを縦軸にプロットしたグラフである。なお、溶接ビード形状(ノッチAC3間距離)だけを変化させて評価するために、母材板厚、母材および溶接金属の成分、溶接入熱を同一とし、開先形状(内面および外面の開先角度、深さ)のみをそれぞれ変えて溶接した。グラフ中、「▲」印は基準値(46J)未満、「●」印は基準値以上であることを示す。このグラフから、ノッチAC3間距離が長いほど、-20℃低温での衝撃吸収エネルギーが大きくなること、すなわち、低温靭性が向上することが看て取れる。
前述したように、このノッチAC3間距離が長いことは、IRCGHAZの位置が、内面側溶融線上ノッチ位置から遠く、ノッチ線からも遠いため、IRCGHAZによる靭性低下に及ぼす影響が少ないことを示していると思われる。
即ち、鋼管断面における溶融線会合部ノッチ試験片の採取に当たって、できるだけノッチAC3間距離が長くなるような溶融金属の形状(ビード形状)にするとよいことが分かる。
そこで、このような位置関係にするためには、外面入熱量を少なくするとよいことと、溶接ビード形状を制御してIRCGHAZをノッチ線から遠ざけることを考えた。これらについて、以下に説明する。
次に、溶接金属の形状(ビード形状)について説明する。
図3は、ノッチAC3間距離(内面側溶融線上AC3点から内面側溶融線上ノッチ位置までの距離)を横軸に、溶融線会合部ノッチ試験片の-20℃でのシャルピー衝撃試験における吸収エネルギーを縦軸にプロットしたグラフである。なお、溶接ビード形状(ノッチAC3間距離)だけを変化させて評価するために、母材板厚、母材および溶接金属の成分、溶接入熱を同一とし、開先形状(内面および外面の開先角度、深さ)のみをそれぞれ変えて溶接した。グラフ中、「▲」印は基準値(46J)未満、「●」印は基準値以上であることを示す。このグラフから、ノッチAC3間距離が長いほど、-20℃低温での衝撃吸収エネルギーが大きくなること、すなわち、低温靭性が向上することが看て取れる。
前述したように、このノッチAC3間距離が長いことは、IRCGHAZの位置が、内面側溶融線上ノッチ位置から遠く、ノッチ線からも遠いため、IRCGHAZによる靭性低下に及ぼす影響が少ないことを示していると思われる。
即ち、鋼管断面における溶融線会合部ノッチ試験片の採取に当たって、できるだけノッチAC3間距離が長くなるような溶融金属の形状(ビード形状)にするとよいことが分かる。
そこで、このような位置関係にするためには、外面入熱量を少なくするとよいことと、溶接ビード形状を制御してIRCGHAZをノッチ線から遠ざけることを考えた。これらについて、以下に説明する。
Sout≦0.97×Sin
図2は、鋼管断面における内面側溶接金属、外面側溶接金属、IRCGHAZおよび二相加熱領域とノッチ線との位置関係を示す。外面入熱量を少なくすると、外面側溶接によるHAZ中のAC3線とAC1線が、対面側溶接金属の方に寄る。即ち、内面側溶融線上AC3点とAC1点は、それぞれに外面側に寄ることになり、また、AC3点とAC1点との間隔(IRCGHAZの幅でもある)は狭くなる。このように、外面入熱量を少なくすると、IRCGHAZをノッチ線から遠ざけることができる。ここで、外面入熱量の大小は、外面側溶接金属を介してHAZに伝達される熱量の大小に関係するから、鋼管断面における外面側溶接金属の断面積の大小と相関がある。結果として、外面入熱量を内面入熱量より少なくすることは、外面側溶接金属の断面積Soutを内面側溶接金属の断面積Sinよりも小さくすることである。
図2は、鋼管断面における内面側溶接金属、外面側溶接金属、IRCGHAZおよび二相加熱領域とノッチ線との位置関係を示す。外面入熱量を少なくすると、外面側溶接によるHAZ中のAC3線とAC1線が、対面側溶接金属の方に寄る。即ち、内面側溶融線上AC3点とAC1点は、それぞれに外面側に寄ることになり、また、AC3点とAC1点との間隔(IRCGHAZの幅でもある)は狭くなる。このように、外面入熱量を少なくすると、IRCGHAZをノッチ線から遠ざけることができる。ここで、外面入熱量の大小は、外面側溶接金属を介してHAZに伝達される熱量の大小に関係するから、鋼管断面における外面側溶接金属の断面積の大小と相関がある。結果として、外面入熱量を内面入熱量より少なくすることは、外面側溶接金属の断面積Soutを内面側溶接金属の断面積Sinよりも小さくすることである。
後記実施例を含む様々な実験によれば、具体的に式(8)を満たすと好ましいことがわかった。
Sout≦0.97×Sin …(8)
ここで、Soutは鋼管断面における鋼管外面側の溶接金属の断面積、Sinは鋼管内面側の溶接金属の断面積である。Sout≦0.97×Sinに制御するとよい。好ましくは、Sout≦0.90×Sinに、さらに好ましくは、Sout≦0.80×Sinに制御するとよい。例えば、鋼管外面側の溶接金属は、鋼管内面側溶接金属とのメタルタッチを確保した上で、Hout≦0.95×Hinであれば、Sout≦0.97×Sinを満たすことができる。ここで、Houtは、鋼管外面側溶接の入熱量(外面入熱量)であり、Hinは鋼管内面側溶接の入熱量(内面入熱量)である。
Sout≦0.97×Sin …(8)
ここで、Soutは鋼管断面における鋼管外面側の溶接金属の断面積、Sinは鋼管内面側の溶接金属の断面積である。Sout≦0.97×Sinに制御するとよい。好ましくは、Sout≦0.90×Sinに、さらに好ましくは、Sout≦0.80×Sinに制御するとよい。例えば、鋼管外面側の溶接金属は、鋼管内面側溶接金属とのメタルタッチを確保した上で、Hout≦0.95×Hinであれば、Sout≦0.97×Sinを満たすことができる。ここで、Houtは、鋼管外面側溶接の入熱量(外面入熱量)であり、Hinは鋼管内面側溶接の入熱量(内面入熱量)である。
θ1≦0.95×θ2
さらに、本発明者は、溶接ビード形状を制御してIRCGHAZをノッチ線から遠ざけることも考えた。
図1に、外面側溶融線角度θ1、内面側溶融線角度θ2、鋼管外面側の溶接金属の断面積Sout、鋼管内面側の溶接金属の断面積Sinの位置関係を示す。まず、内面側溶融線角度θ2を大きくすることにより、ノッチAC3間距離を長くすることができる。一方で、溶融線会合部ノッチ試験片の規定(WM(溶接金属):HAZ=50:50)から、単にθ2を大きくしただけでは、ノッチ線が会合部側に寄ってしまう。そのため、外面側溶融線角度θ1を小さくして、ノッチ線上の溶接金属部分を確保すればよいことを見出した。すなわち、内面側溶融線角度θ2を大きくし、外面側溶融線角度θ1をより小さくすることで、IRCGHAZの位置をノッチ線から遠ざけることができる。
さらに、本発明者は、溶接ビード形状を制御してIRCGHAZをノッチ線から遠ざけることも考えた。
図1に、外面側溶融線角度θ1、内面側溶融線角度θ2、鋼管外面側の溶接金属の断面積Sout、鋼管内面側の溶接金属の断面積Sinの位置関係を示す。まず、内面側溶融線角度θ2を大きくすることにより、ノッチAC3間距離を長くすることができる。一方で、溶融線会合部ノッチ試験片の規定(WM(溶接金属):HAZ=50:50)から、単にθ2を大きくしただけでは、ノッチ線が会合部側に寄ってしまう。そのため、外面側溶融線角度θ1を小さくして、ノッチ線上の溶接金属部分を確保すればよいことを見出した。すなわち、内面側溶融線角度θ2を大きくし、外面側溶融線角度θ1をより小さくすることで、IRCGHAZの位置をノッチ線から遠ざけることができる。
以上から、溶融金属のビード形状を式(9)のとおりにした鋼管であれば、低温でのHAZ靭性の低下を改善することができることを見出した。
θ1≦0.95×θ2 …(9)
ここで、θ1は外面側溶融線角度、θ2は内面側溶融線角度である。本発明においては、θ1≦0.95×θ2に制御するとよい。好適には、θ1≦0.90×θ2に、さらに好適には、θ1≦0.80×θ2に制御するとよい。
θ1≦0.95×θ2 …(9)
ここで、θ1は外面側溶融線角度、θ2は内面側溶融線角度である。本発明においては、θ1≦0.95×θ2に制御するとよい。好適には、θ1≦0.90×θ2に、さらに好適には、θ1≦0.80×θ2に制御するとよい。
Sout≦0.97×Sinとともにθ1≦0.95×θ2を満たす溶接金属のビード形状になるように突き合せ溶接した試験材から溶融線会合部ノッチ試験片を採取し、-20℃でのシャルピー衝撃試験を行った結果を図3に「●」印で示す。従来の例(「▲」)と比較すると、本発明品(「●」印)は、ノッチAC3間距離が長くなっており、低温靭性が向上した(吸収エネルギーが大きくなった)。このように、Sout≦0.97×Sinとともにθ1≦0.95×θ2を満たす溶接ビード形状にすることにより、HAZの低温でのシャルピー衝撃試験における吸収エネルギーを向上させることができる。
なお、溶接金属のビード形状として、次の事項を考慮するとよい。
θout≧100°、θin≧100° …(10)
hout≧2mm、hin≧2mm …(11)
ここで、θoutは鋼管外面側溶接ビード止端角、θinは鋼管内面側溶接ビード止端角である。溶接止端角が小さい場合(特に90°以下になる場合)、鋼管拡管時に溶接ビード止端部に応力が集中し破壊が発生するだけでなく、アンダーカットと呼ばれる溶接欠陥も発生しやすくなる。その発生抑制のために内外面溶接ビードの止端角θout、θinを100°以上になるように制御するとよい。また、鋼管の溶接後の塗装膜厚を確保するため、鋼管外面側溶接ビード高さhout、及び鋼管内面側溶接ビード高さhinは、いずれも2.0mmより小さくするとよい。
θout≧100°、θin≧100° …(10)
hout≧2mm、hin≧2mm …(11)
ここで、θoutは鋼管外面側溶接ビード止端角、θinは鋼管内面側溶接ビード止端角である。溶接止端角が小さい場合(特に90°以下になる場合)、鋼管拡管時に溶接ビード止端部に応力が集中し破壊が発生するだけでなく、アンダーカットと呼ばれる溶接欠陥も発生しやすくなる。その発生抑制のために内外面溶接ビードの止端角θout、θinを100°以上になるように制御するとよい。また、鋼管の溶接後の塗装膜厚を確保するため、鋼管外面側溶接ビード高さhout、及び鋼管内面側溶接ビード高さhinは、いずれも2.0mmより小さくするとよい。
(HAZの組織)
次に、HAZの組織について説明する。
API規格5LでX60~X70級(引張強度が520~760MPa相当)のHAZの組織は、鋼管断面における面積率で50%以上がベイナイトであるとよい。そして、脆化相である粒界フェライト、フェライトサイドプレート、島状マルテンサイトは、いずれも、靭性低下の要因となるため、鋼管断面における面積率で、粒界フェライトは15%以下、フェライトサイドプレートは15%以下、島状マルテンサイトは5%以下であることが望ましい。また、HAZの旧オーステナイト(以下、「旧γ」という。)粒径が200μm以下、EBSD粒径が150μm以下であることが望ましい。本発明の鋼管のHAZ組織は、このような組織とすることにより、破壊単位が微細となり、溶接金属の形状・組織による効果と相まって、溶接部のHAZ靭性が良好なものとなる。
次に、HAZの組織について説明する。
API規格5LでX60~X70級(引張強度が520~760MPa相当)のHAZの組織は、鋼管断面における面積率で50%以上がベイナイトであるとよい。そして、脆化相である粒界フェライト、フェライトサイドプレート、島状マルテンサイトは、いずれも、靭性低下の要因となるため、鋼管断面における面積率で、粒界フェライトは15%以下、フェライトサイドプレートは15%以下、島状マルテンサイトは5%以下であることが望ましい。また、HAZの旧オーステナイト(以下、「旧γ」という。)粒径が200μm以下、EBSD粒径が150μm以下であることが望ましい。本発明の鋼管のHAZ組織は、このような組織とすることにより、破壊単位が微細となり、溶接金属の形状・組織による効果と相まって、溶接部のHAZ靭性が良好なものとなる。
(母材の成分)
次に、好ましい母材の成分について説明する。
なお、本発明の実施形態においては、鋼管母材成分や組織は、特に限定しない。引張強度TSが520~760MPaの場合の好ましい母材成分について説明する。
次に、好ましい母材の成分について説明する。
なお、本発明の実施形態においては、鋼管母材成分や組織は、特に限定しない。引張強度TSが520~760MPaの場合の好ましい母材成分について説明する。
C:0.010~0.100%
Cは鋼の強度向上に有効であり、含有量の下限を0.010%とする。好ましくは0.030%である。一方、C量が多すぎると強度過剰により母材及びHAZの低温靱性が劣化し、さらに、溶接性が劣化するので、C量は上限を0.100%とする。好ましくは0.070%である。
Cは鋼の強度向上に有効であり、含有量の下限を0.010%とする。好ましくは0.030%である。一方、C量が多すぎると強度過剰により母材及びHAZの低温靱性が劣化し、さらに、溶接性が劣化するので、C量は上限を0.100%とする。好ましくは0.070%である。
Si:0.03~0.50%
Siは脱酸に必要な元素であり、含有量の下限を0.03%とする。好ましくは0.12%である。一方、Si量が多いと島状マルテンサイトを形成しやすくなり、低温靱性を著しく劣化させるので、Si量の上限は0.50%である。好ましくは0.35%である。
Siは脱酸に必要な元素であり、含有量の下限を0.03%とする。好ましくは0.12%である。一方、Si量が多いと島状マルテンサイトを形成しやすくなり、低温靱性を著しく劣化させるので、Si量の上限は0.50%である。好ましくは0.35%である。
Mn:0.50~2.00%
Mnは焼入れ性向上元素として作用し、その効果を得るための含有量の下限は0.50%である。好ましくは、下限1.00%である。一方、Mn量が多いと鋼の焼入れ性が増して、HAZ靱性、溶接性を劣化する。さらに、連続鋳造鋼片の中心偏析を助長し、母材の低温靱性が劣化するので、Mn量の上限は2.00%であり、好ましくは、1.80%である。
Mnは焼入れ性向上元素として作用し、その効果を得るための含有量の下限は0.50%である。好ましくは、下限1.00%である。一方、Mn量が多いと鋼の焼入れ性が増して、HAZ靱性、溶接性を劣化する。さらに、連続鋳造鋼片の中心偏析を助長し、母材の低温靱性が劣化するので、Mn量の上限は2.00%であり、好ましくは、1.80%である。
P :0.015%以下
S :0.010%以下
P、Sは、いずれも不純物であり、溶接部の靭性を悪化させる元素である。これらの含有量はなるべく低い方が好ましく、Pの上限は0.015%、Sの上限は0.010%である。好ましくは、Pの上限は0.008%、Sの上限は0.003%である。なお、脱P、脱Sはコストがかかるため、経済的観点から、これらの好ましい下限値は、各々、0.001%である。
S :0.010%以下
P、Sは、いずれも不純物であり、溶接部の靭性を悪化させる元素である。これらの含有量はなるべく低い方が好ましく、Pの上限は0.015%、Sの上限は0.010%である。好ましくは、Pの上限は0.008%、Sの上限は0.003%である。なお、脱P、脱Sはコストがかかるため、経済的観点から、これらの好ましい下限値は、各々、0.001%である。
Al:0.001~0.050%
Alは、脱酸材として鋼材中に含まれる元素である。Alはさらに、Nと結合してAlNを形成し、鋼材の焼入れ部分の結晶粒の粗大化を抑制する。また、Mgと結合してMgAl2O4を形成し、HAZ粗粒化を抑制するピニング粒子と作用し、靭性を向上させる。Alの含有量が低すぎると、この効果が得られないので、含有量の下限は0.001%である。好ましくは、0.020%である。一方、Al含有量が高すぎると、粗大なAl2O3が破壊起点となり、母材靭性が低下するので、Al量の上限は0.050%とする。好ましくは、0.040%である。
Alは、脱酸材として鋼材中に含まれる元素である。Alはさらに、Nと結合してAlNを形成し、鋼材の焼入れ部分の結晶粒の粗大化を抑制する。また、Mgと結合してMgAl2O4を形成し、HAZ粗粒化を抑制するピニング粒子と作用し、靭性を向上させる。Alの含有量が低すぎると、この効果が得られないので、含有量の下限は0.001%である。好ましくは、0.020%である。一方、Al含有量が高すぎると、粗大なAl2O3が破壊起点となり、母材靭性が低下するので、Al量の上限は0.050%とする。好ましくは、0.040%である。
Ti:0.005~0.030%
Tiは、鋼中で微細なTiNを形成し、その単体、あるいはMg酸化物(MgAl2O4)との複合介在物がピニング粒子として作用する。その結果、HAZのオーステナイト粒の粗大化が抑制されミクロ組織が微細化し、低温靱性が改善する。この効果を得るために、Ti量の下限は0.005%である。好ましくは、0.010%である。一方、Ti量が多くなると、Ti酸化物が凝集・粗大化し、靭性が劣化するので、Ti量の上限は0.030%とする。好ましくは、0.020%である。
Tiは、鋼中で微細なTiNを形成し、その単体、あるいはMg酸化物(MgAl2O4)との複合介在物がピニング粒子として作用する。その結果、HAZのオーステナイト粒の粗大化が抑制されミクロ組織が微細化し、低温靱性が改善する。この効果を得るために、Ti量の下限は0.005%である。好ましくは、0.010%である。一方、Ti量が多くなると、Ti酸化物が凝集・粗大化し、靭性が劣化するので、Ti量の上限は0.030%とする。好ましくは、0.020%である。
N :0.0020~0.0060%
NはTiと結合してTiNを形成する元素であり、含有量の下限は0.0020%である。好ましくは、0.0030%である。一方、N量が多いと、Tiと結合しなかった固溶Nが靭性を低下させるので、N量の上限は0.0060%である。好ましくは、0.0050%である。
NはTiと結合してTiNを形成する元素であり、含有量の下限は0.0020%である。好ましくは、0.0030%である。一方、N量が多いと、Tiと結合しなかった固溶Nが靭性を低下させるので、N量の上限は0.0060%である。好ましくは、0.0050%である。
O :0.0050%以下
Oはピニング粒子を形成する元素である。しかしながら、Oを含有すると鋼の清浄度が低下するので少ない方が好ましく、上限は0.0050%である。好ましくは0.0030%である。
Oはピニング粒子を形成する元素である。しかしながら、Oを含有すると鋼の清浄度が低下するので少ない方が好ましく、上限は0.0050%である。好ましくは0.0030%である。
以上説明した以外の残部は、Fe及び不純物である。ここで、母材の不純物とは、原材料に含まれる、あるいは、製鋼、鋳造等の製造過程で混入する成分であり、本願発明の課題を解決する上での妨げとならない量で、また、最終製品においては、その特性上の実際的な問題を発生させない量で、存在することが許容され得る成分のことをいう。
母材は、上記のFeの一部に代えて、以下の元素を含有させてもよい。以下に説明する元素の含有は必須ではなく、母材中の含有量は0でもよい。
Cu:0~0.50%
Cuは母材の強度を向上することのできる元素である。Cu量が多くなると、効果は飽和する。Cuの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なCu量は0.10~0.50%である。
Cuは母材の強度を向上することのできる元素である。Cu量が多くなると、効果は飽和する。Cuの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なCu量は0.10~0.50%である。
Ni:0~0.60%
Niは靭性を低下させることなく、母材の強度を向上することのできる元素である。Ni量が多くなると、効果は飽和する。Niの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なNi量は0.10~0.60%である。
Niは靭性を低下させることなく、母材の強度を向上することのできる元素である。Ni量が多くなると、効果は飽和する。Niの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なNi量は0.10~0.60%である。
Cr:0~0.50%
Crは母材の強度を向上することのできる元素である。Cr量が多くなると、効果は飽和する。Crの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なCr量は0.10~0.50%である。
Crは母材の強度を向上することのできる元素である。Cr量が多くなると、効果は飽和する。Crの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なCr量は0.10~0.50%である。
Mo:0~0.40%
Moは母材の強度を向上することのできる元素である。Mo量が多くなると、効果は飽和し、さらに、靭性が低下する。Moの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なMo量は0~0.40%である。
Moは母材の強度を向上することのできる元素である。Mo量が多くなると、効果は飽和し、さらに、靭性が低下する。Moの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なMo量は0~0.40%である。
V :0~0.060%
Nbは母材強度を向上させる元素である。V量が大きくなると、析出硬化によって降伏比が上昇することがある。Vの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なV量は0.010~0.060%である。
Nbは母材強度を向上させる元素である。V量が大きくなると、析出硬化によって降伏比が上昇することがある。Vの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なV量は0.010~0.060%である。
Nb:0~0.060%
Nbは母材強度を向上させる元素である。Nb量が多くなると、島状マルテンサイトが形成しやすくなり、靭性が低下する。Nbの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なNb量は0.010~0.040%である。
Nbは母材強度を向上させる元素である。Nb量が多くなると、島状マルテンサイトが形成しやすくなり、靭性が低下する。Nbの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なNb量は0.010~0.040%である。
B :0~0.0020%
Bは母材の焼入れ性向上、粒界フェライト形成抑制に有効な元素である。B量が多くなると、効果は飽和する。Bの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なB量は0.0010~0.0020%である。
Bは母材の焼入れ性向上、粒界フェライト形成抑制に有効な元素である。B量が多くなると、効果は飽和する。Bの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なB量は0.0010~0.0020%である。
Mg:0~0.010%
MgはMgAl2O4、MgSのような介在物を形成する元素である。MgAl2O4はTiN上に析出する。これらの介在物はピニング粒子として作用し、HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制してミクロ組織を微細化し、低温靱性を改善する。Mg量が多くなると、効果は飽和するので、上限は0.010%が好ましい。Mgの含有量は0でもよい。
MgはMgAl2O4、MgSのような介在物を形成する元素である。MgAl2O4はTiN上に析出する。これらの介在物はピニング粒子として作用し、HAZのオーステナイト粒の粗大化を抑制してミクロ組織を微細化し、低温靱性を改善する。Mg量が多くなると、効果は飽和するので、上限は0.010%が好ましい。Mgの含有量は0でもよい。
Ca:0~0.0300%
Caは、硫化物系介在物の形態を制御し、低温靱性を向上させる元素である。さらに、リン化物、硫化物を形成して、実質的にPやSの濃度を低減し、硫化物応力割れ抵抗性を向上させる。Ca量が多いと、CaO-CaSが大型のクラスターや介在物となり、靱性に悪影響を及ぼすおそれがある。Caの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なCa量は0.0100~0.0300%である。
Caは、硫化物系介在物の形態を制御し、低温靱性を向上させる元素である。さらに、リン化物、硫化物を形成して、実質的にPやSの濃度を低減し、硫化物応力割れ抵抗性を向上させる。Ca量が多いと、CaO-CaSが大型のクラスターや介在物となり、靱性に悪影響を及ぼすおそれがある。Caの含有量は0でもよい。効果を得るための好適なCa量は0.0100~0.0300%である。
(鋼管の製造方法)
次に、本発明の鋼管の製造方法について説明する。鋼管の製造方法は特に限定されない。公知の製造方法を適用することができる。
例えば、前述した母材の化学組成を有する鋼材を公知の方法で溶製し、精錬された溶鋼を連続鋳造法によりスラブとする。次いで、スラブを1000~1250℃に加熱し、仕上げ温度を700~900℃として熱間圧延を行う。
次に、本発明の鋼管の製造方法について説明する。鋼管の製造方法は特に限定されない。公知の製造方法を適用することができる。
例えば、前述した母材の化学組成を有する鋼材を公知の方法で溶製し、精錬された溶鋼を連続鋳造法によりスラブとする。次いで、スラブを1000~1250℃に加熱し、仕上げ温度を700~900℃として熱間圧延を行う。
続いて、仕上げ圧延後の鋼板を加速冷却する。母材の組織を前述した所定の組織とし、強度、靭性のバランスを良好なものとするためには、加速冷却の条件が重要である。具体的には、加速冷却の開始温度を650~850℃、加速冷却の停止温度を400~500℃、平均冷却速度を10~100℃/分として、加速冷却を行う。これにより、所定の母材強度を得ることができる。
次いで、得られた鋼板に、所定形状の開先加工を施す。例えば、開先形状として、得るべき溶接金属のビード形状に合わせて、外面側がθ1の角度、内面側がθ2の角度で、「θ1≦0.95×θ2」になるように加工してもよい。このように開先加工した端部を突き合わせて内面側からのサブマージアーク溶接を完了させ、さらに、外面側から長手方向にサブマージアーク溶接を実行して、本発明の鋼管を製造する。溶接に際しては、内面入熱量Houtと外面入熱量Hinが「Hout≦0.95×Hin」を満たすようにして、「Sout≦0.97×Sin」を満たす溶接金属のビードを形成することができる。
開先内にはフラックスを散布し、サブマージアーク溶接用鋼ワイヤを使用し、入熱15~110kJ/cmの大入熱サブマージアーク溶接により接合する。フラックス及び鋼ワイヤは、特に限定されるものでなく、公知のものを使用することができる。鋼ワイヤを使用する場合、フラックスは、公知の焼成型フラックス、溶融型フラックなどを使用することができ、それによって上述した溶接金属成分を得ることができれば、靱性に優れた溶接金属を得られる。また、必要に応じ、溶接前のフラックス予熱を行ってもよい。
サブマージアーク溶接の方法は、特に限定されるものでなく、多電極のサブマージアーク溶接を含み、公知の溶接法がいずれも適用でき、溶接条件も、特に限定されるものでない。
(試験方法)
次に、本発明の試験方法について説明する。
本発明においては、前述のとおり、溶融線会合部ノッチ試験片を採用した。すなわち、図4のように、DNV-OS-F101に従って、鋼管断面において、会合部通線を中心線として、これに垂直な直線がHAZを通過する距離と溶接金属を通過する距離(内面側溶接金属を通過する距離と外面側溶接金属を通過する距離との和)とが50:50になる位置をノッチとする2mmVノッチシャルピー試験片を用いた。
鋼管シーム溶接スタート部からエンド部まで任意に10か所、鋼管長手方向(軸方向)に垂直に切断して、試験片を得た。
JIS Z2242に従って、-20℃でシャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギーを測定した。吸収エネルギーは、シャルピー衝撃試験を3回行い、その平均値とした。
次に、本発明の試験方法について説明する。
本発明においては、前述のとおり、溶融線会合部ノッチ試験片を採用した。すなわち、図4のように、DNV-OS-F101に従って、鋼管断面において、会合部通線を中心線として、これに垂直な直線がHAZを通過する距離と溶接金属を通過する距離(内面側溶接金属を通過する距離と外面側溶接金属を通過する距離との和)とが50:50になる位置をノッチとする2mmVノッチシャルピー試験片を用いた。
鋼管シーム溶接スタート部からエンド部まで任意に10か所、鋼管長手方向(軸方向)に垂直に切断して、試験片を得た。
JIS Z2242に従って、-20℃でシャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギーを測定した。吸収エネルギーは、シャルピー衝撃試験を3回行い、その平均値とした。
組織の面積率は、次のように測定した。
溶接金属については、外面表層から肉厚t/4位置の溶接ビード幅の1/2部を試験片採取し、研磨後、ナイタル腐食及びレペラ腐食を行い、現出した組織を光学顕微鏡にて、1000μm×1000μmの範囲で観察される組織を対象に10視野測定し、得られた像を画像解析し、各組織の平均面積率を算出して求めた。
溶接金属については、外面表層から肉厚t/4位置の溶接ビード幅の1/2部を試験片採取し、研磨後、ナイタル腐食及びレペラ腐食を行い、現出した組織を光学顕微鏡にて、1000μm×1000μmの範囲で観察される組織を対象に10視野測定し、得られた像を画像解析し、各組織の平均面積率を算出して求めた。
HAZについては、基本的に溶融金属と同様であるが、面積率と粒径の測定箇所が、外面側及び内面側の各溶融線とノッチ線との交点位置のHAZである。
HAZの旧γ粒径は、外面の表層から2mm位置を光学顕微鏡で観察できるように試験片採取し、研磨および旧γ粒を現出する腐食を行い、光学顕微鏡にて溶融線第一近接粒径(内面側溶融線に最も近い位置に存在する結晶粒)を50個測定し、その平均粒径を求めた。
HAZの旧γ粒径は、外面の表層から2mm位置を光学顕微鏡で観察できるように試験片採取し、研磨および旧γ粒を現出する腐食を行い、光学顕微鏡にて溶融線第一近接粒径(内面側溶融線に最も近い位置に存在する結晶粒)を50個測定し、その平均粒径を求めた。
EBSD粒径は500μm×500μmの範囲で20視野EBSD解析し、結晶方位差15°で区切ったときの結晶粒サイズの平均とした。
溶接ビード形状は、前述の溶融線会合部ノッチ試験片の断面をマクロ写真撮影し、その写真をもとに各種測定位置の長さ、角度を測定した。各測定位置の値は10個分の平均とした。
表1の化学組成を有する鋼材を溶製し、精錬された溶鋼を連続鋳造法によりスラブとし、1150℃に加熱後、熱間圧延を施した。その後、熱間圧延の仕上げ温度を800℃として、700~795℃から加速冷却を開始し、400~500℃で加速冷却を停止した。
続いて、得られた鋼板にX型開先を形成し、管状に成形し、公知のワイヤ及びフラックスを用いて、管の内面側、外面側の順にサブマージアーク溶接を行い、UO鋼管とした。溶接の際、入熱は板厚によって15~100kJ/cmの範囲で、Hout≦0.95×Hinを満たしつつ、適宜変更した。入熱は、溶接速度、開先形状などで調整し得る。
各板厚の鋼板を溶接した後、溶接ビード形状(Hout、Hin、Sout、Sin、θout、θin、θ1、θ2)を測定した。表2に、その結果を示す。
各板厚の鋼板を溶接した後、溶接ビード形状(Hout、Hin、Sout、Sin、θout、θin、θ1、θ2)を測定した。表2に、その結果を示す。
さらに、シーム溶接金属の成分分析をした。表3に溶接金属の成分、Ceq、Pcm、Al/Oおよびα’を示す。
さらに、溶接金属組織(アシキュラーフェライト、粒界フェライトと島状マルテンサイトの合計)の面積率(%)とEBSD粒径および溶接欠陥有無を測定した。表4に、その結果を示す。表4におけるAF率、GBF率、MA率はそれぞれ、溶接金属組織におけるアシキュラーフェライト、粒界フェライト、島状マルテンサイトの面積率を示す。また、溶接欠陥は高温あるいは低温割れ、ブローホールやスラグ巻き込み、アンダーカットのことを言う。溶接欠陥がある場合は「有」、ない場合は「無」とした。
さらに、HAZ組織(ベイナイト、粒界フェライト、フェライトサイドプレート、島状マルテンサイト)と、HAZの旧γ粒径およびEBSD粒径を測定した。表5にその結果を示す。表5におけるベイナイト率およびFSP率は、各々、溶接金属組織におけるベイナイト率およびフェライトサイドプレートの面積率を示す。
溶融線会合部ノッチ試験片を用いて、-20℃におけるシャルピー衝撃試験を実施し、HAZ靭性を評価した。表6に、その結果を示す。ここで、吸収エネルギーが46J以上であるものを良として「〇」、46J未満のものを不良として「×」と評価した。また、溶接金属の靭性試験として、溶接金属中央にノッチを有する試験片を用いて-20℃におけるシャルピー衝撃試験を実施した。溶接金属については、吸収エネルギーが100J以上であるものを良として「〇」、100J未満のものを不良として「×」と評価した。
参考として、ISO規格(12135、15653)に準じてCTOD(Crack Tip Opening Displacement:亀裂先端開口変位)試験も行った。シャルピー衝撃試験と同様に、溶融線会合部ノッチ試験片と溶接金属中央にノッチを有する試験片を用いて、-10℃で試験を実施した。試験は3本行い、CTOD値が3本とも0.15mm未満のものを靭性不良として「×」印で、0.15mm以上のものがあれば「〇」と評価した。
参考として、ISO規格(12135、15653)に準じてCTOD(Crack Tip Opening Displacement:亀裂先端開口変位)試験も行った。シャルピー衝撃試験と同様に、溶融線会合部ノッチ試験片と溶接金属中央にノッチを有する試験片を用いて、-10℃で試験を実施した。試験は3本行い、CTOD値が3本とも0.15mm未満のものを靭性不良として「×」印で、0.15mm以上のものがあれば「〇」と評価した。
本発明の溶接金属成分および溶接金属の形状を満足する発明例は、いずれも、-20℃でのシャルピー衝撃試験における吸収エネルギーが46J以上であり、優れた溶接熱影響部靱性を有するものであった。また、溶接金属における吸収エネルギーは100J以上であった。さらに、-10℃におけるCTOD値は、溶接熱影響部で0.15mm以上であり、溶接金属でも同様であった。
本発明によれば、溶接部の低温靭性に優れた鋼管を安定して提供することができる。
Claims (6)
- 長手方向に内面および外面が溶接された溶接部を有する鋼管であって、
前記鋼管の母材の引張強度が520~760MPaであり、
前記鋼管の溶接熱影響部(HAZ)の組織が、面積率で
ベイナイト:50%以上
粒界フェライト:15%以下
フェライトサイドプレート:15%以下
島状マルテンサイト:5%以下
旧オーステナイト粒径:200μm以下
EBSD粒径:150μm以下
であり、
前記溶接部の溶接金属の成分が、
C :0.030~0.100%、
Si:0.030~0.500%、
Mn:0.50~2.00%、
P :0.015%以下、
S :0.010%以下、
Al:0.0010~0.0300%、
Ti:0.0050~0.0400%、
N :0.0020~0.0060%、
O :0.0150~0.0500%、
残部:Fe及び不純物
であり、次の式(1)~式(7)を満足し、
前記溶接金属の組織が、面積率で、
アシキュラーフェライト:80%以上
粒界フェライト:10%以下
島状マルテンサイト:3%以下
を含み、EBSD粒径が10μm以下
であり、
前記鋼管長手方向に垂直な断面において、前記鋼管の溶接金属の形状が、次の式(8)~式(9)を満たすことを特徴とする鋼管:
0%≦α’≦50% …(1)
0.3≦Al/O≦0.8 …(2)
0.30%≦Ceq≦0.50% …(3)
0.05%≦Pcm≦0.20% …(4)
α’=(1.5×(O-0.89×Al)+3.4×N-Ti)×1000…(5)
Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 …(6)
Pcm=C+Si/30+(Mn+Cu+Cr)/20+Ni/60
+Mo/15+V/10+5B …(7)
Sout≦0.97×Sin …(8)
θ1≦0.95×θ2 …(9)
ここで、
Sout:鋼管外面側の溶接金属の断面積
Sin :鋼管内面側の溶接金属の断面積
θ1 :外面側溶融線角度
θ2 :内面側溶融線角度
であり、上記の式(2)、(5)、(6)、(7)の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を示し、含まないときは0%とする。 - 前記溶接金属の成分が、前記Feの一部に代えて、
Cu:0~0.60%、
Ni:0~0.5%、
Cr:0~0.5%、
Mo:0~0.4%、
V :0~0.060%、
Nb:0~0.060%、
B :0~0.0350%、
Mg:0~0.0100%、及び
Ca:0~0.005%
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋼管。 - 前記鋼管の母材の成分が、質量%で、
C :0.010~0.100%、
Si:0.03~0.50%、
Mn:0.50~2.00%、
P :0.015%以下、
S :0.010%以下、
Al:0.001~0.050%、
Ti:0.005~0.030%、
N :0.0020~0.0060%、
O :0.0050%以下、
Cu:0~0.50%、
Ni:0~0.60%、
Cr:0~0.50%、
Mo:0~0.40%、
V :0~0.060%、
Nb:0~0.060%、
B :0~0.0020%、
Mg:0~0.0100%、及び
Ca:0~0.0300%
を含有し、残部がFe及び不純物
であることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管。 - 前記溶接熱影響部(HAZ)と溶接金属の割合が50:50になる溶融線会合部ノッチを有する試験片を用いた試験において、-20℃におけるシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが46J以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の鋼管。
- 前記溶接金属の中央にノッチを有する試験片を用いた衝撃試験において、-20℃におけるシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが100J以上であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の鋼管。
- 前記鋼管の溶接金属の形状が、次の式(10)~式(11)を満足することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の鋼管。
θout≧100°、θin≧100° …(10)
hout≦2mm、hin≦2mm …(11)
θout:鋼管外面側溶接ビード止端角
θin :鋼管内面側溶接ビード止端角
hout:鋼管外面側溶接ビード高さ
hin :鋼管内面側溶接ビード高さ
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2024090614A1 (ko) * | 2022-10-27 | 2024-05-02 | 주식회사 포스코 | 용접 열영향부 인성이 우수한 강재 및 그 제조방법 |
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2021
- 2021-03-17 JP JP2021043289A patent/JP2022142983A/ja active Pending
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WO2024090614A1 (ko) * | 2022-10-27 | 2024-05-02 | 주식회사 포스코 | 용접 열영향부 인성이 우수한 강재 및 그 제조방법 |
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