JP2022142612A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】アンチサージ制御を適宜実施しつつも、必要なときにアンチサージ制御をキャンセルしてエンジントルクを増強し加速性能を確保できるようにする。【解決手段】車両に動力源として搭載される内燃機関を制御する制御装置であって、スロットルバルブの開度が縮小ないし全閉してエンジン回転数が減速する状態から、スロットルバルブの開度が拡開してエンジン回転数が加速する状態に切り替わる過渡期に、エンジン回転数の上昇に合わせて点火タイミングを遅角補正し、またエンジン回転数の低下に合わせて点火タイミングを進角補正するアンチサージ制御を実施するが、エンジントルクを速やかに増大させるべき所定の条件が成立する場合には、一時的に前記アンチサージ制御を実施しない内燃機関の制御装置を構成した。【選択図】図4

Description

本発明は、動力源として車両に搭載される内燃機関を制御する制御装置に関する。
火花点火式内燃機関における、気筒に充填された混合気への点火タイミングは、原則として、そのときの内燃機関の運転領域に応じて設定する。そのベース点火タイミングは、当該運転領域におけるMBT(Minimum advance for Best Torque)と、当該運転領域においてノッキングが惹起されないと通常考えられる限界の点火タイミング(の進角量)との比較により定まる。低負荷ないし中負荷域では、点火タイミングをMBTまで進角させてもノッキングは起こらず、故にベース点火タイミングをMBTのタイミングとする。これに対し、高負荷域では、点火タイミングをMBTまで進角させるとノッキングを起こすリスクがあるので、ベース点火タイミングをMBTのタイミングよりも遅らせる必要がある。
その上で、気筒におけるノッキングの有無を判定し、その判定結果に応じて点火タイミングを調整する。ノッキングを感知したときには、以後ノッキングが起こらなくなるまで点火タイミングを徐々に遅角させる、即ちベース点火タイミングに加味する遅角補正量を徐々に増大させる。翻って、ノッキングを感知していないときには、ノッキングが起こらない限りにおいて点火タイミングを徐々に進角させる、即ちベース点火タイミングに加味する遅角補正量を減少させて、内燃機関の出力及び燃費の向上を図る。
点火タイミングをMBTに近づけるほど内燃機関の熱機械変換効率が向上し、MBTから遠ざけるほど熱機械変換効率が低下する。これを利用して、内燃機関が出力するエンジントルクを増減調整し、以てエンジン回転数を制御することも周知である(以上、例えば下記特許文献を参照)。
特開2016-008578号公報
内燃機関のスロットルバルブの開度が縮小ないし全閉してエンジン回転数が減速する状態から、スロットルバルブの開度が拡開してエンジン回転数が加速する状態に切り替わる過渡期に、エンジン回転数が瞬時的に急上昇するサージが発生して内燃機関が揺動することがある。その振動が車体に伝わり、運転者を含む車両の搭乗者に感じ取られると、ドライブフィーリングを損ねることになりかねない。
そこで、図3に示すように、エンジン回転数の上昇に対して点火タイミングを遅角補正してエンジントルクを低減し、その後のエンジン回転数の低落に対して点火タイミングを進角補正してエンジントルクを再び増大させることを反復するアンチサージ制御を実施することがある。このような制御により、減速から加速に切り替わる過渡期におけるエンジントルクの急増を抑制し、エンジン回転数のサージングを適切に防止することができる。
しかしながら、減速後の再加速時に常に必ずアンチサージ制御を実施することとすると、可及的速やかにエンジン回転を加速させたい状況下においてエンジントルクが必要十分に増大せず、加速の遅れ、もたつきを招く可能性がある。
上記の点に鑑みてなされた本発明は、アンチサージ制御を適宜実施しつつも、必要なときにアンチサージ制御をキャンセルしてエンジントルクを増強し加速性能を確保できるようにすることを所期の目的としている。
本発明では、車両に動力源として搭載される内燃機関を制御する制御装置であって、スロットルバルブの開度が縮小ないし全閉してエンジン回転数が減速する状態から、スロットルバルブの開度が拡開してエンジン回転数が加速する状態に切り替わる過渡期に、エンジン回転数の上昇に合わせて点火タイミングを遅角補正し、またエンジン回転数の低下に合わせて点火タイミングを進角補正するアンチサージ制御を実施するが、エンジントルクを速やかに増大させるべき所定の条件が成立する場合には、一時的に前記アンチサージ制御を実施しない内燃機関の制御装置を構成した。
前記所定の条件の具体例としては、内燃機関と車両の駆動輪との間に介在するトランスミッションの変速比が変更されることや、内燃機関の出力トルクを平時よりも増強する走行モードに移行したこと、等が挙げられる。
前記所定の条件が成立している場合において、一時的に前記アンチサージ制御を実施しないキャンセル時間の長さは、そのときのエンジン回転数に応じて変更することが好ましい。例えば、エンジン回転数がより低い値であるときのキャンセル時間を、エンジン回転数がより高い値であるときのキャンセル時間よりも長く設定する。既にエンジン回転数が高回転となっているならば、それ以上の加速が必要とされる度合いが相対的に小さいので、キャンセル時間を短縮して早期にアンチサージ制御を再開することが許される。
本発明によれば、アンチサージ制御を適宜実施しつつも、必要なときにアンチサージ制御をキャンセルしてエンジントルクを増強し加速性能を確保できるようになる。
本発明の一実施形態における車両用内燃機関及び制御装置の概略構成を示す図。 同実施形態における車両の駆動系の構成を例示する図。 同実施形態の制御装置による制御の内容を説明するタイミング図。 同実施形態の制御装置がプログラムに従い実行する処理の手順例を示すフロー図。 同実施形態の制御装置による制御の内容を説明するタイミング図。 同実施形態の制御装置が決定する、アンチサージ制御のキャンセル時間の長さとそのときのエンジン回転数との関係を例示する図。
本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1に、本実施形態における車両用内燃機関100の概要を示す。本実施形態の内燃機関100は、ポート噴射式の4ストローク火花点火エンジンであり、複数の気筒1(図1には、そのうち一つを図示している)を包有する。各気筒1の吸気ポートの近傍には、吸気ポートに向けて燃料を噴射するインジェクタ11を気筒1毎に設けている。また、各気筒1の燃焼室の天井部に、点火プラグ12を取り付けてある。点火プラグ12は、点火コイルにて発生した誘導電圧の印加を受けて、中心電極と接地電極との間で火花放電を惹起するものである。点火コイルは、半導体スイッチング素子であるイグナイタとともに、コイルケースに一体的に内蔵される。
吸気を供給するための吸気通路3は、外部から空気を取り入れて各気筒1の吸気ポートへと導く。吸気通路3上には、エアクリーナ31、吸気絞り弁である電子スロットルバルブ32、サージタンク33、吸気マニホルド34を、上流からこの順序に配置している。
排気を排出するための排気通路4は、気筒1内で燃料を燃焼させた結果発生した排気を各気筒1の排気ポートから外部へと導く。この排気通路4上には、排気マニホルド42及び排気浄化用の三元触媒41を配置している。
排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)装置2は、排気通路4と吸気通路3とを連通する外部EGR通路21と、EGR通路21上に設けたEGRクーラ22と、EGR通路21を開閉し当該EGR通路21を流れるEGRガスの流量を制御するEGRバルブ23とを要素とする。EGR通路21の入口は、排気通路4における触媒41の下流の所定箇所に接続している。EGR通路21の出口は、吸気通路3におけるスロットルバルブ32の下流の所定箇所(特に、サージタンク33若しくは吸気マニホルド34)に接続している。
図2に、車両が備える駆動系のトランスミッションの一例を示す。このトランスミッションは、トルクコンバータ7及び自動変速機8、9を具備してなる。図示例のものは、内燃機関100が出力するエンジントルクを二つの経路を介して車両の駆動輪に伝達することが可能な、いわゆる動力分割式(トルクスプリット式)変速機8、9である。その一方の伝達経路には、ベルト式の無段変速機(Continuously Variable Transmission)9を配し、他方の伝達経路には、遊星歯車機構81を含むスプリット変速機構8を配している。
内燃機関100が出力するエンジントルクは、内燃機関100の出力軸であるクランクシャフトからトルクコンバータ7の入力側のポンプインペラ71に入力され、出力側のタービンランナ72に伝達される。
トルクコンバータ7は、ロックアップ機構を備える。ロックアップ機構は、トルクコンバータ7の入力側と出力側とを相対回転不能に締結するロックアップクラッチ73と、ロックアップクラッチ73を断接切換駆動するための作動液圧(油圧)を制御するロックアップソレノイドバルブ(図示せず)とを要素とする。車速がある程度以上に高い(例えば、約10km/h以上)ときには、ほぼ常時トルクコンバータ7をロックアップする。車速がそれ以下となれば、トルクコンバータ7のロックアップを解除する。ロックアップ時、トルクコンバータ7の出力側回転数の入力側回転数に対する比である速度比は1となる。翻って、非ロックアップ時には、トルクコンバータ7の速度比が、駆動状態に応じて1よりも小さくなったり大きくなったりする。
タービンランナ72に連結したインプット軸75には、インプット軸ギア76を固定している。インプット軸ギア76は、これよりも大径で歯数の多いプライマリ軸ギア95と噛合する。プライマリ軸ギア95は、CVT9のプライマリ軸94に固定している。
CVT9は、プライマリ軸94に相対回転不能に支持させたプライマリプーリ91と、プライマリ軸94と平行に配されたセカンダリ軸96に相対回転不能に支持させたセカンダリプーリ92と、プライマリプーリ91及びセカンダリプーリ92に巻き掛けられたベルト93とを備え、両プーリ91、92とベルト93との摩擦により、プライマリ軸94とセカンダリ軸96との間でトルクを伝達する。
ベルト式CVT9では、各プーリ91、92におけるベルト93を挟む溝の幅が変更されることにより、セカンダリプーリ92とプライマリプーリ91とのプーリ比、換言すればCVT9が具現する変速比が連続的に無段階で変更される。
遊星歯車機構81は、サンギア811、複数個のプラネタリギア814を有するプラネタリキャリア812、及びリングギア813を備える。サンギア811は、セカンダリ軸96に相対回転不能に支持させてある。他方、プラネタリキャリア812は、アウトプット軸84に対して相対的に回転可能であるように外嵌している。各プラネタリギア814は、サンギア811の外周の歯に噛合し、かつリングギア813の内周の歯に噛合する。
リングギア813には、アウトプット軸84を連結している。アウトプット軸84に固定したギア101は、デファレンシャル装置のリングギア102と噛合する。アウトプット軸84の回転は、デファレンシャル装置を介して車軸(ドライブシャフト)103に伝わり、車軸103に取り付けられた駆動輪を回転させる。
また、プラネタリキャリア812は、スプリットドリブンギア82を相対回転不能に支持している。スプリットドリブンギア82は、これよりも大径で歯数の多いスプリットドライブギア83と噛合する。スプリットドライブギア83は、インプット軸75に対して相対的に回転可能であるように外嵌している。
インプット軸75とスプリットドライブギア83との間には、断接切換可能な液圧クラッチC1を介設している。クラッチC1は、作動液圧によりインプット軸75とスプリットドライブギア83とを直結、即ちこれらが一体となって回転するように結合することができる。
サンギア811とリングギア813との間にも、断接切換可能な液圧クラッチC2を介設している。クラッチC2は、作動液圧によりサンギア811とリングギア813とを直結、即ちこれらが一体となって回転するように結合することができる。
加えて、プラネタリキャリア812と変速機8のケースとの間に、断接切換可能な液圧クラッチであるブレーキB1を介設している。ブレーキB1は、作動液圧によりプラネタリキャリア812をケースに対して固定、即ちプラネタリキャリア812の回転を制動することができる。
この自動変速機8、9は、クラッチC1、C2及びブレーキB1の各々の係合(締結)/非係合(切断、解放)の切り換えを通じて、複数の動力伝達モードを選択的にとることができる。車両の発進時、低車速域からの加速時や、低中車速域での巡航時等には、専らベルト式CVT9のみによってエンジントルクを車軸103及び駆動輪に伝える「ベルトモード」を用いる。
ベルトモードでは、クラッチC2を係合し、クラッチC1及びブレーキB1を非係合とする。これにより、スプリットドライブギア83がインプット軸75から切り離され、遊星歯車機構81のプラネタリキャリア812が自由回転状態となり、遊星歯車機構81のサンギア811とリングギア813とが直結される。インプット軸75に入力されるトルクは、噛合するギア76、95による減速を経てCVT9のプライマリ軸94に伝達され、プライマリプーリ91からベルト93を介してセカンダリプーリ92に伝達される。そして、セカンダリ軸96、サンギア811、リングギア813及びアウトプット軸84が一体となって回転する。
中高車速域での走行、特にオーバドライブ時には、ベルト式CVT9及びスプリット変速機構8の双方にエンジントルクを分配し、これら両者から車軸103及び駆動輪に伝える「スプリットモード」を用いる。
スプリットモードでは、クラッチC1を係合し、クラッチC2及びブレーキB1を非係合とする。これにより、インプット軸75とスプリットドライブギア83とが直結され、インプット軸75の回転がスプリットドライブギア83及びスプリットドリブンギア82を介して遊星歯車機構81のプラネタリキャリア812に伝わるようになる。サンギア811とリングギア813とは、切り離される。インプット軸75に入力されるトルクは、噛合するギア83、82による増速を経てプラネタリキャリア812に伝達され、さらにプラネタリキャリア812からサンギア811及びリングギア813に分割して伝達される。
サンギア811に与えられたトルクは、CVT9のセカンダリ軸96に伝達され、セカンダリプーリ92からベルト93を介してプライマリプーリ91に伝達される。そして、プライマリ軸94を介してプライマリ軸ギア95に伝達され、プライマリ軸ギア95からインプット軸ギア76に伝達される。スプリットモードでは、プライマリ軸ギア95が駆動側、これに対してインプット軸ギア76が従動(被動)側となる。
ベルトモードからスプリットモードに移行、いわば変速機8、9を「シフトアップ」した当初、CVT9が具現する変速比はベルトモードにおけるハイギア寄りとなっている、即ちプーリ比(=プーリ92の径/プーリ91の径)が小さくなっている。このときには、CVT9を介して多くの動力がインプット軸75からアウトプット軸84に伝達されており、スプリット変速機構8を介して伝達される動力は多くはない。
スプリットモードへの移行後、車速がさらに加速し上昇するにつれて、CVT9が具現する変速比はローギア寄りに変化してゆく、即ちプーリ比が大きくなってゆく。その帰結として、遊星歯車機構81のサンギア811の回転数がより低くなり、リングギア813及びアウトプット軸84の回転数がより高くなる。それとともに、スプリット変速機構8を介してインプット軸75からアウトプット軸84に伝達される動力が増大する。最終的には、動力の大半がスプリット変速機構8経由で伝わるようになる。
ベルトモード及びスプリットモードは何れも、車両の運転者がシフトレバー(セレクタレバー)を操作して前進走行レンジ(Dポジション等)を選択しているときの動力伝達モードである。運転者が後進走行レンジ(Rポジション)を選択しているときには、ブレーキB1を係合し、クラッチC1、C2を非係合とする。これにより、スプリットドライブギア83がインプット軸75から切り離され、遊星歯車機構81のサンギア811とリングギア813とが切り離され、かつプラネタリキャリア812の回転が制止される。インプット軸75に入力されるトルクは、ベルトモードと同様、噛合するギア76、95による減速を経てCVT9のプライマリ軸94に伝達され、プライマリプーリ91からベルト93を介してセカンダリプーリ92に伝達される。
そして、セカンダリ軸96及びサンギア811が回転するが、遊星歯車機構81のプラネタリキャリア812が制動されているために、リングギア813がサンギア811とは逆方向に回転することになる。このリングギア813の回転方向は、ベルトモード及びスプリットモードにおけるリングギア813の回転方向とは逆である。結局、リングギア813及びアウトプット軸84が一体となって逆回転し、車軸103及び駆動輪を逆回転させ、車両が後進走行する。
運転者が非走行レンジ(NポジションやPポジション)を選択しているときには、クラッチC1、C2及びブレーキB1の全てを非係合とする。クラッチC1、C2及びブレーキB1を係合していない状態では、内燃機関100の出力するエンジントルクがインプット軸75に入力されたとしても、そのトルクはセカンダリ軸96まで伝達され、遊星歯車機構81のサンギア811及びプラネタリギア814を空転させるに止まる。つまり、エンジントルクはアウトプット軸84には伝達されず、車軸103及び駆動輪は回転駆動されない。
上述したトランスミッション7、8、9の構成は、あくまでも具体的な一例である。よって、車両のトランスミッションの構成はこのようなものには限定されない。トランスミッションに、有段自動変速機(Automatic Transmission)や手動変速機(Manual Transmission)を採用することも当然に考えられる。
本実施形態にあって、内燃機関100の運転制御を司る電子制御装置(Electronic Control Unit)0は、プロセッサ、メモリ、入力インタフェース、出力インタフェース等を有したマイクロコンピュータシステムである。ECU0は、複数基のECUまたはコントローラがCAN(Controller Area Network)等の電気通信回線を介して相互に通信可能に接続されてなるものであることがある。
ECU0の入力インタフェースには、車両の実車速を検出する車速センサから出力される車速信号a、内燃機関100のクランクシャフトの回転角度及びエンジン回転数を検出するクランク角センサから出力されるクランク角信号b、アクセルペダルの踏込量またはスロットルバルブ32の開度をアクセル開度(いわば、要求されるエンジン負荷率またはエンジントルク)として検出するセンサから出力されるアクセル開度信号c、気筒1に連なる吸気通路3(スロットルバルブ32の下流、特に、サージタンク33若しくは吸気マニホルド34)内の吸気温及び吸気圧を検出する温度・圧力センサから出力される吸気温・吸気圧信号d、内燃機関100の冷却水温を検出する水温センサから出力される冷却水温信号e、車両の加速度または車両が現在所在している路面の勾配を検出する加速度センサから出力される加速度信号f、気筒1を内包しているシリンダブロックの振動の大きさを検出する振動式のノックセンサから出力される振動信号g、車両の運転者が操作するシフトレバーの位置を検出するシフトポジションスイッチから出力されるシフトポジション信号h等が入力される。
ECU0の出力インタフェースからは、点火プラグ12に付随するイグナイタに対して点火信号i、インジェクタ11に対して燃料噴射信号j、スロットルバルブ32に対して開度操作信号k、EGRバルブ23に対して開度操作信号l、トルクコンバータ7のロックアップクラッチ73の断接切換用のロックアップソレノイドバルブに対して開度操作信号t、スプリット変速機構8のクラッチC1、C2、ブレーキB1の断接切換用のソレノイドバルブに対して開度操作信号u、CVT9に対して変速比制御信号v等を出力する。
ECU0のプロセッサは、メモリに格納されているプログラムを解釈、実行し、運転パラメータを演算して内燃機関100の運転を制御する。ECU0は、制御に必要な各種情報a、b、c、d、e、f、g、hを入力インタフェースを介して取得し、エンジン回転数を知得するとともに気筒1に吸入される空気(新気)量を推算する。そして、吸入空気量に見合った(理論空燃比またはその近傍の目標空燃比を達成できるような)要求燃料噴射量、燃料噴射タイミング(一度の燃焼に対する燃料噴射の回数を含む)、燃料噴射圧、点火タイミング(一度の燃焼に対する点火の回数を含む)、要求EGR率(または、EGRガス量、EGRガス分圧)、トルクコンバータ7のロックアップを行うか否か、CVT9が具現する変速比等といった各種運転パラメータを決定する。ECU0は、運転パラメータに対応した各種制御信号i、j、k、l、t、u、vを出力インタフェースを介して印加する。
気筒1に充填された混合気への火花点火のタイミングを決定するにあたり、ECU0は、現在の内燃機関100の運転領域[エンジン回転数,サージタンク33若しくは吸気マニホルド34の吸気圧(または、アクセル開度、エンジン負荷率、エンジントルク、吸入空気量若しくは燃料噴射量)]に応じてベース点火タイミングを設定し、そのベース点火タイミングに、気筒1におけるノッキングの発生の有無に応じた遅角補正量を加える。
ベース点火タイミングは、人の聴覚に認識される程度のノッキングが起こる可能性が小さく、それでいて内燃機関100の熱機械変換効率を最大化できるようなタイミングに定められる。アクセル開度が大きくない部分負荷領域におけるベース点火タイミングは、MBTまたはその近傍のタイミングとなる。アクセル開度が全開または全開に近い全負荷ないし高負荷領域におけるベース点火タイミングは、MBTよりも遅れる。ECU0のメモリには予め、内燃機関100の運転領域を示すパラメータ[エンジン回転数,吸気圧等]とベース点火タイミングとの関係を規定したマップデータが格納されている。ECU0は、現在の内燃機関100の運転領域のパラメータをキーとしてマップデータを検索し、設定するべきベース点火タイミングを得る。
その上で、ECU0は、ノックセンサの出力信号gを参照して各気筒1におけるノッキングの有無を判定し、その判定結果に応じた点火タイミングの調整を行うという、ノックコントロール制御を実施する。ECU0は、気筒1またはシリンダブロックの振動の強度を示す振動信号gをサンプリングし、ノッキングに起因して生じる振動が持つ周波数成分(例えば、7kHzないし15kHzの成分)を通過させつつ、この振動以外の成分を減衰させるバンドパスフィルタに入力する。しかして、バンドパスフィルタで処理した後の信号gの値をノック判定値と比較し、前者が後者を上回ったならば、膨脹行程を迎えた気筒1でノッキングが起こったと判定する。前者が後者以下であるならば、当該気筒1でノッキングは起こっていないと判定する。
気筒1におけるノッキングの発生を感知したときには、以後ノッキングが起こらなくなるまで点火タイミングを徐々に遅角させる、換言すればベース点火タイミングに加味する遅角補正量を徐々に増大させる。一方で、ノッキングの発生を感知していないときには、ノッキングが起こらない限りにおいて点火タイミングを徐々に進角させる、即ちベース点火タイミングに加味する遅角補正量を減少させて、内燃機関100の出力及び燃費性能の向上を図る。ノッキングの有無の判定及び点火タイミングの補正は、各気筒1毎に個別に行うことが可能である。
また、ECU0は、内燃機関100の吸気通路3上のスロットルバルブ32の開度が縮小ないし全閉してエンジン回転数が減速する状態から、スロットルバルブ32の開度が拡開してエンジン回転数が加速する状態に切り替わる過渡期に、下記アンチサージ制御を実施する。
アンチサージ制御は、減速後の再加速時にエンジン回転数が瞬時的に急上昇するサージが発生することを防止するための措置である。直近まで閉じられていたスロットルバルブ32が開き始めると、気筒1に吸入される空気量及び燃料噴射量が増加して内燃機関100の出力トルクが増大し、また内燃機関100のポンピングロスが低減する。それに伴い、エンジン回転数が加速する。それが急峻であると、サージングとなり、内燃機関100及び車体を揺動させる懸念が生じる。
図3に示すように、アンチサージ制御では、スロットルバルブ32が開き始めてからある程度の期間、エンジン回転数の上昇に合わせて点火タイミングを遅角補正し、エンジン回転数の低落に合わせて点火タイミングを進角補正することを、複数回繰り返す処理を行う。図3中、時点t0から時点t1までが、アンチサージ制御を実施している期間である。
エンジン回転数が上昇する区間では、ベース点火タイミングにノックコントロール制御による遅角補正量を加味した点火タイミングに、さらにアンチサージ制御による遅角補正量を加味する。最終的に決定する点火タイミングは、ベース点火タイミングにノックコントロール制御による遅角補正量を加味したタイミングよりも遅角する。
これに対し、エンジン回転数が下降する区間では、アンチサージ制御による遅角補正量をエンジン回転数が上昇する区間と比べて減少させるか、アンチサージ制御により遅角補正ではなく進角補正を(ベース点火タイミングにノックコントロール制御による遅角補正量を加味した点火タイミングに対して)加える。最終的に決定する点火タイミングは、エンジン回転数が上昇する区間よりも進角する。
このようなアンチサージ制御により、時点t0から時点t1までの期間、内燃機関100が出力するエンジントルクが概ね一定化する、即ちエンジントルクが顕著に増大せずまたは微増し、エンジン回転のサージングが回避され、過渡期における内燃機関100及び車体の揺動の発生を防止することができる。時点t1以降は、アンチサージ制御を終了、即ちアンチサージ制御による点火タイミングの遅角補正量を0とし、平常通り、ベース点火タイミングにノックコントロール制御による遅角補正量を加味したものを基に点火タイミングを決定することになる。時点t1以降は、エンジントルクが増大してエンジン回転数が加速してゆく。
だが、アンチサージ制御は、エンジントルクを抑制する方向に働く。それ故、減速後の再加速時に常に必ずアンチサージ制御を実施することとすると、可及的速やかにエンジン回転を加速させたい状況下においてエンジントルクが必要十分に増大せず、加速の遅れ、もたつきを招く可能性がある。
そこで、図4に示すように、本実施形態のECU0は、エンジン回転数が減速する状態から加速する状態に切り替わる過渡期に(ステップS2)アンチサージ制御を実施する(ステップS3)ことを原則としつつも、エンジントルクを速やかに増大させるべき所定の条件が成立する場合には(ステップS1)、敢えてアンチサージ制御を実施せずにキャンセルする(ステップS4)。
ステップS1にいう所定の条件の具体例を、以下に列挙する。
[1]トランスミッション7、8、9の動力伝達モードが、スプリットモードからベルトモードに移行したとき
車両の運転者がアクセルペダルの踏み込みを緩めるかアクセルペダルから足を離し、それに呼応してスロットルバルブ32の開度が縮小ないし全閉してエンジン回転数及び車速が低下すると、自動変速機8、9の動力伝達モードがスプリットモードからベルトモードに移行する、いわば変速機8、9を「シフトダウン」する。その状態で、運転者が再びアクセルペダルを強く踏み込んで車両の速やかなる加速を要求した場合、ベルトモードで車軸103及び駆動輪に必要十分なトルクを伝達し供給する必要がある。このような場合には、アンチサージ制御をキャンセルし、スロットルバルブ32の開度の拡大に伴うエンジントルクの増大及びエンジン回転数の加速を容認する。
[2]トランスミッション7、8、9が具現する変速比または変速段位が変更される際のブリッピングを実行するとき
上記のベルト式CVT9を含む動力分割式変速機8、9に限らず、他の形態のCVTやAT、MTであっても、トランスミッション7、8、9の変速比または変速段位をハイギア側からローギア側へとシフトダウンする際には、空吹かしのようにエンジン回転数を上昇させるブリッピングを実行することが少なくない。アンチサージ制御は、そのようなブリッピングの妨げとなり得るので、変速比または変速段位の変更時には一時的にこれをキャンセルし、スロットルバルブ32の開度の拡大に伴うエンジントルクの増大及びエンジン回転数の加速を容認する。
[3]特にトランスミッションとして手動変速機を搭載した車両において、シフトレバーがシフトダウン方向に操作されたとき
MT車では、ブリッピングを実行するか否かが運転者に委ねられているので、シフトレバーがシフトダウン方向に操作されてからある程度の時間、アンチサージ制御をキャンセルする。
[4]トランスミッションとして自動変速機7、8、9を搭載した車両において、運転者自身の手で変速比または変速段位を選択するモードに移行したとき
CVT車やAT車では、基本的にはECU0が自動的に変速比または変速段位を決定または変更する。だが、近時では、運転者がシフトレバーやハンドルの近傍に設けられたパドル等を操作して変速比または変速段位を決定または変更できる「マニュアルモード」運転を行うことが可能な車両が増えつつある。そのような車両では、運転者が手ずから変速比または変速段位をシフダウンすることがあり、そのシフトダウン時にエンジン回転数を必要十分に加速できるよう、アンチサージ制御をキャンセルする。
[5]トルクコンバータ7のロックアップクラッチ73が係合された直後の時期
車両が停車しまたは極低車速である状態で、運転者がアクセルペダルを踏み込み、スロットルバルブ32の開度が拡大してエンジン回転数及び車速が上昇すると、それまでロックアップしていなかったトルクコンバータ7をロックアップするようになる。トルクコンバータ7をロックアップすると、トランスミッション7、8、9総体での変速比がロックアップ前から変化するとともに、トルクコンバータ7によるトルク増幅作用が営まれなくなり、その分車軸103及び駆動輪に伝達されるエンジントルクが小さくなる可能性がある。そこで、ロックアップ直後の時期には、アンチサージ制御をキャンセルし、スロットルバルブ32の開度の拡大に伴うエンジントルクの増大を容認し、車両の加速レスポンスを高く維持できるようにする。
[6]内燃機関100の出力トルクを平時よりも増強する走行モードに移行したとき
運転者がシフトレバーやコックピットに設置されたスイッチ等を操作して、車両の走行モードを、平時よりもスロットルバルブ32の開度を拡大させる等して内燃機関100の出力が増強される「パワーモード」や「登坂モード」に切り替えることがある。あるいは、ECU0が、車両に実装した加速度センサを介して現在所在している路面の勾配を検出し、その勾配が所定以上の上り勾配である場合に、登坂路を円滑に走破できるよう、平時よりも内燃機関100の出力が増強される登坂モードに自動的に切り替えることもあり得る。これらの場合には、アンチサージ制御をキャンセルし、スロットルバルブ32の開度の拡大に伴うエンジントルクの増大及びエンジン回転数の加速を容認する。
図5に、アンチサージ制御を一時的にキャンセルする場合の、ECU0による内燃機関100の運転制御の模様を例示している。図5中、時点t2にて上掲の所定の条件が成立しており、時点t2から時点t3まで、時点t4から時点t5までのそれぞれの区間が、アンチサージ制御を実施しないキャンセル時間として設定されている。キャンセル時間中の点火タイミングは、アンチサージ制御による遅角補正(即ち、現在のエンジン回転数やその単位時間あたりの変化量(加速度または減速度)に応じた遅角補正)が加えられることなく、ベース点火タイミングにノックコントロール制御による遅角補正量を加味したものを基に決定する。
各キャンセル時間はそれぞれ、例えば約一秒ないし二秒程度の長さである。因みに、時点t3から時点t4までの中間の区間では、アンチサージ制御を実施しても構わない。アンチサージ制御のキャンセル時間の長さは、そのときのエンジン回転数の高低に応じて調整することが好ましい。例えば、図6に示すように、現在のエンジン回転数が低いほどキャンセル時間を延長し、現在のエンジン回転数が高いほどキャンセル時間を短縮することが考えられる。既にエンジン回転数が高回転となっているならば、それ以上の加速が必要とされる度合いが相対的に小さくなり、キャンセル時間を短縮して早期にアンチサージ制御を再開することが許される。
本実施形態では、車両に動力源として搭載される内燃機関100を制御する制御装置であって、スロットルバルブ32の開度が縮小ないし全閉してエンジン回転数が減速する状態から、スロットルバルブ32の開度が拡開してエンジン回転数が加速する状態に切り替わる過渡期に、エンジン回転数の上昇に合わせて点火タイミングを遅角補正し、またエンジン回転数の低下に合わせて点火タイミングを進角補正するアンチサージ制御を実施するが、エンジントルクを速やかに増大させるべき所定の条件が成立する場合には、一時的に前記アンチサージ制御を実施しない内燃機関の制御装置0を構成した。
前記所定の条件とは、例えば、内燃機関100と車両の駆動輪との間に介在するトランスミッション7、8、9の変速比が変更されること(上掲の[1]、[2]、[3]、[4]または[5]等)や、内燃機関100の出力トルクを平時よりも増強する走行モードに移行したこと(上掲の[6]等)である。
本実施形態によれば、車両が減速から加速に移行する過渡期にアンチサージ制御を適宜実施してエンジン回転数のサージングを防止し、内燃機関100及び車両の振動を抑制してドライバビリティ及びドライブフィーリングを高く保つことができる。それでありながら、必要なときには、アンチサージ制御をキャンセルして点火タイミングの遅角化を抑止し、エンジントルクを増強してエンジン回転及び車速の加速性能を必要十分に確保することが可能となる。
また、前記所定の条件が成立している場合において、一時的に前記アンチサージ制御を実施しないキャンセル時間の長さを、そのときのエンジン回転数に応じて変更するようにすれば、キャンセル時間が不必要に長くなったり短くなったりすることを回避できる。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。各部の具体的構成や処理の手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
100…内燃機関
1…気筒
12…点火プラグ
3…吸気通路
32…スロットルバルブ
7、8、9…トランスミッション(トルクコンバータ、スプリット変速機構、ベルト式CVT)
0…内燃機関の制御装置(ECU)
a…車速信号
b…クランク角信号
c…アクセル開度信号
f…加速度信号
g…ノックセンサの出力信号
h…シフトポジション信号
i…点火信号
j…燃料噴射信号
k…スロットルバルブの開度操作信号
t…ロックアップソレノイドバルブの開度操作信号
u…クラッチ及びブレーキの断接切換用ソレノイドバルブの開度操作信号
v…CVTの変速比制御信号

Claims (4)

  1. 車両に動力源として搭載される内燃機関を制御する制御装置であって、
    スロットルバルブの開度が縮小ないし全閉してエンジン回転数が減速する状態から、スロットルバルブの開度が拡開してエンジン回転数が加速する状態に切り替わる過渡期に、エンジン回転数の上昇に合わせて点火タイミングを遅角補正し、またエンジン回転数の低下に合わせて点火タイミングを進角補正するアンチサージ制御を実施するが、
    エンジントルクを速やかに増大させるべき所定の条件が成立する場合には、一時的に前記アンチサージ制御を実施しない内燃機関の制御装置。
  2. 内燃機関と車両の駆動輪との間に介在するトランスミッションの変速比が変更されることを前記所定の条件とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
  3. 内燃機関の出力トルクを平時よりも増強する走行モードに移行したことを前記所定の条件とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
  4. 前記所定の条件が成立している場合において、一時的に前記アンチサージ制御を実施しないキャンセル時間の長さを、そのときのエンジン回転数に応じて変更する請求項1、2または3記載の内燃機関の制御装置。
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