JP2022142253A - 鏡用樹脂基板およびその製造方法、導電性樹脂組成物およびその製造方法、ならびにこれらを用いた鏡および成形体 - Google Patents

鏡用樹脂基板およびその製造方法、導電性樹脂組成物およびその製造方法、ならびにこれらを用いた鏡および成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】高い耐熱性や高い面衝撃性と、低い表面抵抗値とを兼ね備えた鏡用樹脂基板を提供すること。【解決手段】鏡用樹脂基板は、環状オレフィン系重合体(A)と、カーボンナノチューブ(B)と、を含む。前記環状オレフィン系重合体(A)と、前記カーボンナノチューブ(B)との合計量を100質量部としたとき、前記カーボンナノチューブ(B)の量が0.1質量部以上10質量部以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、鏡用樹脂基板およびその製造方法、導電性樹脂組成物およびその製造方法、ならびにこれらを用いた鏡および成形体に関する。
近年、車両内表示情報の多様化が進んでおり、視認性に優れたヘッドアップディスプレイの開発が進められている(例えば特許文献1および特許文献2)。このようなヘッドアップディスプレイでは、例えば、液晶表示装置等に表示された情報を、反射鏡等によって反射し、フロントガラス等の所望の位置に投影して画像表示を行う。当該ヘッドアップディスプレイは、車両内に設置されるため、各部材に非常に高い耐熱性が要求される。
例えば、樹脂基板またはガラス基板等からなる基板上にめっきや、蒸着、塗布等で反射層を形成した鏡が知られている。ただし、ヘッドアップディスプレイ等に使用される鏡は、簡便な方法で形成可能であることが求められており、例えば静電塗装等によって反射層を形成すること等が求められている。
特開2004-126226号公報 特開2009-75514号公報
ここで、静電塗装によって反射層を形成するためには、基板の表面抵抗値が十分に低い必要がある。しかしながら、樹脂基板の表面抵抗値を下げようとすると、耐熱性や面衝撃性等も低下する傾向がある。したがって、低い表面抵抗値と、耐熱性や面衝撃性とを兼ね備えた基板は得られていないのが実状であった。
本発明は当該課題を鑑みてなされたものである。具体的には、高い耐熱性や高い面衝撃性と、低い表面抵抗値とを兼ね備えた鏡用樹脂基板の提供を目的とする。
本発明は、以下の鏡用樹脂基板を提供する。
環状オレフィン系重合体(A)と、カーボンナノチューブ(B)と、を含み、前記環状オレフィン系重合体(A)と、前記カーボンナノチューブ(B)との合計量を100質量部としたとき、前記カーボンナノチューブ(B)の量が0.1質量部以上10質量部以下である、鏡用樹脂基板。
本発明は、以下の鏡を提供する。
上記鏡用樹脂基板と、前記鏡用樹脂基板の少なくとも一方の面に配置された反射層と、を有する、鏡。
本発明は、以下の鏡用樹脂基板の製造方法を提供する。
上記鏡用樹脂基板の製造方法であって、前記環状オレフィン系重合体(A)の一部および前記カーボンナノチューブ(B)を含むマスターバッチを用意する工程と、前記マスターバッチおよび前記環状オレフィン系重合体(A)の残部を溶融混練する工程と、を含む、鏡用樹脂基板の製造方法。
本発明は、以下の導電性樹脂組成物を提供する。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が50000以上である環状オレフィン系重合体(A)と、カーボンナノチューブ(B)と、芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含み、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が50000未満である重合体(C)と、を含み、前記環状オレフィン系重合体(A)、前記カーボンナノチューブ(B)、および前記芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含む重合体(C)の合計量100質量部に対して、前記環状オレフィン系重合体(A)を75.0~99.8質量部、前記カーボンナノチューブ(B)を0.1~8.3質量部、前記芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含む重合体(C)を0.1~16.7質量部含む、導電性樹脂組成物。
本発明は、以下の導電性樹脂組成物の製造方法を提供する。
上記導電性樹脂組成物の製造方法であって、前記環状オレフィン系重合体(A)の一部、前記カーボンナノチューブ(B)、および前記芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含む重合体(C)を含むマスターバッチを用意する工程と、前記マスターバッチおよび前記環状オレフィン系重合体(A)の残部を溶融混練する工程と、を含む、導電性樹脂組成物の製造方法。
本発明は、以下の成形体を提供する。
上記導電性樹脂組成物から得られる、成形体。
本発明の鏡用樹脂基板は高い耐熱性や高い面衝撃性と、低い表面抵抗値とを兼ね備える。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
1.鏡用樹脂基板
本発明の鏡用樹脂基板は、主に鏡用の基板として使用される。当該鏡用樹脂基板は、特にヘッドアップディスプレイ用ミラー等、高温環境下や、高い面衝撃強度が要求される鏡に好適である。ただし、当該鏡用樹脂基板は、ヘッドアップディスプレイ以外の鏡に使用されてもよく、鏡以外の用途に使用されてもよい。
上述のように、樹脂基板の表面抵抗値を下げようとすると、耐熱性や面衝撃性も低下してしまうという課題があった。これに対し、本発明者らが鋭意検討したところ、環状オレフィン系重合体(A)およびカーボンナノチューブ(B)を所定の量ずつ含む場合に、樹脂基板の表面抵抗値が格段に低くなり、その一方で、耐熱性や面衝撃性を低下させ難いことが見出された。
環状オレフィン系重合体(A)とカーボンナノチューブ(B)とを組み合わせると、カーボンナノチューブ(B)が鏡用樹脂基板全体に均一に配置されやすく、比較的少量のカーボンナノチューブ(B)でも、表面抵抗値を下げることができる。つまり、環状オレフィン系重合体(A)由来の耐熱性や面衝撃性を損なうことなく、表面抵抗値を下げられる。
なお、本発明の鏡用樹脂基板は、環状オレフィン系重合体(A)およびカーボンナノチューブ(B)だけでなく、芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含む重合体(C)(以下、単に「重合体(C)」とも称する)等をさらに含んでいてもよい。鏡用樹脂基板が、重合体(C)を含むと、カーボンナノチューブ(B)の分散性がさらに良好になり、鏡用樹脂基板の抵抗値がさらに低くなる。
また、鏡用樹脂基板は、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。以下、本発明の鏡用樹脂基板が含む成分について説明する。
・環状オレフィン系重合体(A)
環状オレフィン系重合体は、環状オレフィン由来の繰返し単位を有する重合体であればよく、例えば環状オレフィン由来の繰返し単位のみを有していてもよく、環状オレフィン由来の繰返し単位と環状オレフィン以外の繰返し単位との両方を含んでいてもよい。なお、環状オレフィン系重合体(A)には、後述の芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含む重合体(C)に相当するものは含まない。環状オレフィン系重合体(A)と、後述の重合体(C)とは、例えば、重量平均分子量(Mw)が相違する。環状オレフィン系重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が50000以上であることが好ましい。なお、環状オレフィン系重合体(A)の上記重量平均分子量(Mw)は、50000以上500000以下がより好ましく、50000以上300000以下がさらに好ましい。一方、後述の重合体(C)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が50000未満であり、当該環状オレフィン系重合体(A)と区別される。また、後述の重合体(C)は、後述の物性(i)~(iv)を満たすことでも当該環状オレフィン系重合体(A)と区別される。
環状オレフィン系重合体(A)は、エチレンまたはα-オレフィンと、環状オレフィンとの共重合体(A1)(以下、単に「共重合体(A1)」とも称する)、および環状オレフィンの開環重合体(A2)(以下、単に「開環重合体(A2)」とも称する)のうち、少なくとも一方を含むことが好ましい。
上記共重合体(A1)は、耐熱性や成形性等の観点で、下記一般式(I)で表される、エチレンまたはα-オレフィン由来の繰り返し単位(a)と、下記一般式(II)~(VI)のいずれかで表される、環状オレフィン由来の繰返し単位(b)と、を含むことが好ましい。
Figure 2022142253000001
一般式(I)において、R300は水素原子または炭素原子数1~29の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基を表す。共重合体(A1)は、一般式(I)で表される繰返し単位を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
上記繰返し単位は、下記一般式(Ia)で表されるエチレンまたはα-オレフィンモノマーから得られる。
Figure 2022142253000002
一般式(Ia)において、R300は一般式(I)におけるR300と同一である。一般式(Ia)で表されるモノマーの例には、エチレン、プロピレン、1ーブテン、1-ぺンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-へキセン、4,4-ジメチル-1-へキセン、4,4-ジメチル-1-ぺンテン、4-エチル-1-へキセン、3-エチル-1-へキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-へキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が含まれる。これらの中でも、鏡用樹脂基板の耐熱性や面衝撃性が高まりやすいとの観点で、エチレンまたはプロピレンが好ましく、エチレンがより好ましい。
Figure 2022142253000003
一般式(II)において、uは0または1を表す。vは0または1以上の整数を表し、0以上2以下の整数が好ましく、0または1がより好ましい。wは0または1を表す。さらに、R61~R78、Ra1、およびRb1は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、または炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表す。R75~R78は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
Figure 2022142253000004
一般式(III)において、xおよびdはそれぞれ独立に0または1以上の整数を表し、0以上2以下の整数が好ましく、0または1がより好ましい。yおよびzはそれぞれ独立に0、1、または2を表す。R81~R99は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基または炭素原子数3~15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、もしくはアルコキシ基を表す。なお、R89およびR90が結合している炭素原子と、R93が結合している炭素原子またはR91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよい。また、y=z=0のとき、R95およびR92、またはR95およびR99は互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
Figure 2022142253000005
一般式(IV)において、mは0、1、または2を表し、0または1が好ましく、1がより好ましい。nは、0、1、または2を表し、0または1が好ましく、0がより好ましい。qは1、2、または3を表し、1または2が好ましく、1がより好ましい。R18~R31はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、水素原子または炭素原子数1~20の炭化水素基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
また、q=1のときR28およびR29、R29およびR30、ならびに/またはR30およびR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、q=2または3のとき、R28およびR28、R28およびR29、R29およびR30、R30およびR31、ならびに/またはR31およびR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。上記単環または多環は、芳香族環であってもよい。
Figure 2022142253000006
一般式(V)において、R100およびR101はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素原子数1~5の炭化水素基を表し、fは1以上18以下を表す。
Figure 2022142253000007
一般式(VI)において、qは1、2、または3を表し、R32~R39はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。
q=1のときR36およびR37、R37およびR38、ならびに/またはR38およびR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、q=2または3のときR36およびR36、R36およびR37、R37およびR38、R38およびR39、ならびに/またはR39およびR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。上記単環または上記多環が二重結合を有していてもよく、上記単環または上記多環が芳香族環であってもよい。
共重合体(A1)は、上記一般式(II)~(VI)で表される繰返し単位を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
上記一般式(II)~(VI)で表される繰返し単位は、それぞれ、下記一般式(IIa)~(VIa)で表される環状オレフィンモノマーから得られる。下記一般式(IIa)~(VIa)における各符号は、上記一般式(II)~(VI)における符号と同一である。
Figure 2022142253000008
上記一般式(IIa)~(VIa)で表される環状オレフィンモノマーの例には、ビシクロ-2-へプテン誘導体(ビシクロヘプト-2-エン誘導体)、トリシクロ-3-デセン誘導体、トリシクロ-3-ウンデセン誘導体、テトラシクロ-3-ドデセン誘導体、ペンタシクロ-4-ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ペンタシクロ-3-ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ-4-ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロ-3-へキサデセン誘導体、ヘキサシクロ-4-へプタデセン誘導体、へプタシクロ-5-エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-4-エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-5-ヘンエイコセン誘導体、オクタシクロ-5-ドコセン誘導体、ノナシクロ-5-ペンタコセン誘導体、ノナシクロ-6-へキサコセン誘導体、シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物、1,4-メタノ-1,4a,9a-テトラヒドロフルオレン誘導体、1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-へキサヒドロアントラセン誘導体、炭素数3~20のシクロアルキレン誘導体等が含まれる。
上記の中でも、一般式(IIa)で表される環状オレフィンモノマー由来の構造、すなわち一般式(II)で表される繰り返し単位を含むことが好ましい。また、一般式(II)で表される繰り返し単位と一般式(III)~(VI)のいずれかで表される繰り返し単位との組み合わせも好ましい。
上記一般式(IIa)で表される環状オレフィンモノマーの例には、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(以下、「ノルボルネン」とも称する)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドセン(以下、「テトラシクロドセン」とも称する)が含まれ、特にテトラシクロドセンが好ましい。一般式(IIa)で表される環状オレフィンモノマーは剛直な環構造を有することから、重合体(A1)がこれら由来の構造を含むと、得られる鏡用樹脂基板の強度が高まりやすい。
重合体(A1)は特に、エチレンとテトラシクロドセンとのランダム共重合体、エチレンとノルボルネンとのランダム共重合体、エチレンとテトラシクロドセンとベンゾノルボルナジエンとのランダム共重合体が好ましく、エチレンとテトラシクロドセンとのランダム共重合体またはエチレンとテトラシクロドセンとベンゾノルボルナジエンとのランダム共重合体がより好ましい。
ここで、重合体(A1)において、エチレンまたはα-オレフィン由来の構造単位(a)の量は、重合体(A1)の全構造単位の量100モル%に対して、5モル%以上95モル%以下が好ましく、20モル%以上90モル%以下がより好ましく、40モル%以上85モル%以上がさらに好ましく、50モル%以上80モル%以下が特に好ましい。一方、環状オレフィン由来の構造単位(b)の量は、重合体(A1)の全構造単位の量100モル%に対して、5モル%以上95モル%以下が好ましく、10モル%以上80モル%以下がより好ましく、15モル%以上60モル%以下がさらに好ましく、20モル%以上50モル%以下が特に好ましい。
一方、開環重合体(A2)の例には、ノルボルネン系単量体の開環重合体や、ノルボルネン単量体とこれと開環共重合可能な他の単量体との開環重合体、さらにはこれらの水素化物等が含まれる。
ノルボルネン系単量体の例には、ノルボルネンおよびその誘導体、トリシクロ[4.3.01,6.12,5]デカ-3,7-ジエン(以下、「ジシクロペンタジエン」とも称する)およびその誘導体、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(以下、「メタノテトラヒド口フルオレン」とも称する)およびその誘導体、テトラシクロドデセンおよびその誘導体、等が含まれる。
各化合物の誘導体は、アルキル基、アルキレン基、ビニル基、アルコキシカルボニル基、アルキリデン基等の置換基を有していてもよい。置換基の数は特に制限されず、1個であってもよく、2個以上であってもよい。このような置換基を有する誘導体の例には、8-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-メチル-8-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン、8-エチリデン-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン等が含まれる。開環重合体(A2)は、ノルボルネン系単量体由来の構造を一種のみ含んでいてもよく、二種以上含んでいてもよい。
一方、ノルボルネン系単量体と開環重合可能なその他の単量体の例には、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の単環の環状オレフィン系単量体が含まれる。
ノルボルネン系単量体の開環重合体や、ノルボルネン単量体とこれと開環共重合可能な他の単量体との開環重合体は、ノルボルネン系単量体を単独で、またはノルボルネン系単量体と開環重合可能なその他の単量体とを公知の触媒の存在下で重合して得られる。
また、ノルボルネン系単量体の開環重合体の水素化物や、ノルボルネン系単量体と他の単量体との開環重合体の水素化物は、上記開環重合体に水素化触媒を混合し、炭素-炭素不飽和結合を水素化することで得られる。
なお、環状オレフィン系重合体(A)は、市販品であってもよい。市販品の例には、三井化学社製のアペル(商品名)、ポリプラスチックス社製のTOPAS(商品名)、日本ゼオン社製のZEONEX(商品名)等が含まれる。
鏡用樹脂基板中の環状オレフィン系重合体(A)の量は、環状オレフィン系重合体(A)およびカーボンナノチューブ(B)の合計100質量部に対して、90質量部以上99.9質量部以下であり、95.0質量部以上99.9質量部以下がより好ましい。環状オレフィン系重合体(A)の量が90.0質量部以上であると、耐熱性や面衝撃性に優れた鏡用樹脂基板が得られる。一方、環状オレフィン系重合体(A)の量が99.9質量部以下であると、相対的にカーボンナノチューブ(B)の量が十分になり、鏡用樹脂基板の表面抵抗値が十分に低くなる。
また、鏡用樹脂基板が、後述の重合体(C)をさらに含む場合、環状オレフィン系重合体(A)とカーボンナノチューブ(B)と重合体(C)との合計量100質量部に対する環状オレフィン系重合体(A)の量は、75.0質量部以上99.8質量部以下が好ましく、86.0質量部以上99.8質量部以下がより好ましい。鏡用樹脂基板が、さらに他の成分を含む場合、鏡用樹脂基板の総量100質量部に対する環状オレフィン系重合体(A)の量は、75.0質量部以上99.8質量部以下が好ましく、86.0質量部以上99.8質量部以下がより好ましい。環状オレフィン系重合体(A)の量が当該範囲であると、鏡用樹脂基板の耐熱性や面衝撃性が良好になる。
・カーボンナノチューブ(B)
カーボンナノチューブ(B)は、チューブ状の炭素同位体であればよい。カーボンナノチューブ(B)の形状は特に制限されないが、外形(直径)は100nm以下が好ましく、70nm以下がより好ましく、50nm以下がさらに好ましく、30nm以下が特に好ましい。カーボンナノチューブ(B)の外径が100nm以下であると、鏡用樹脂基板中で、カーボンナノチューブ(B)によるネットワーク構造が形成されやすく、鏡用樹脂基板の表面抵抗値が低くなりやすい。一方、カーボンナノチューブ(B)の外径が1nm以上であると、カーボンナノチューブ(B)の分散性が良好になりやすい。
カーボンナノチューブ(B)の繊維長は、3μm以上500μm以下が好ましく、5μm以上300μm以下がより好ましく、7μm以上100μm以下がさらに好ましく、9μm以上50μm以下が特に好ましい。繊維長が3μm以上であると、鏡用樹脂基板中で、カーボンナノチューブ(B)のネットワーク構造が十分に形成されやすく、表面抵抗値が十分低くなりやすい。一方、繊維長が500μm以下であると、カーボンナノチューブ(B)の分散性が良好になりやすい。なお、カーボンナノチューブ(B)の外径および繊維径は、電子顕微鏡観察(SEM)を用いて、100本のカーボンナノチューブの長さおよび外径を測定し、それぞれこれらの平均値を算出することで求められる。
カーボンナノチューブ(B)のアスペクト比(繊維長/外径)は、30~50000が好ましく、50~30000がより好ましく、100~20000がさらに好ましい。カーボンナノチューブ(B)のアスペクト比が当該範囲であると、分散性が良好になりやすい。
カーボンナノチューブ(B)の形状は、チューブ状であればよく、例えば針状、円筒チューブ状、魚骨状(フィッシュボーン、カップ積層型)であってもよく、トランプ状(プレートレット)、コイル状等であってもよい。また、カーボンナノチューブ(B)は、グラファイトウィスカー、フィラメンタスカーボン、グラファイトファイバー、極細炭素チューブ、カーボンフィブリル、カーボンナノファイバー等とすることができる。カーボンナノチューブ(B)の形状は上記の中でも円筒チューブ状が好ましい。
円筒チューブ状のカーボンナノチューブ(B)は、1層以上のグラファイトを巻いて円筒状にした構造を有する。当該円筒チューブ状のカーボンナノチューブ(B)は、グラファイト層を1層のみを巻いた構造の単層カーボンナノチューブであってもよく、グラファイト層を2層以上巻いた多層カーボンナノチューブであってもよい。また、これらが混在していてもよい。ただし、コスト面から多層カーボンナノチューブが好ましい。また、カーボンナノチューブの側面がグラファイト構造ではなく、アモルファス構造であるカーボンナノチューブであってもよい。
カーボンナノチューブ(B)は、各種表面処理されていてもよく、表面にカルボキシル基等の官能基が導入されていてもよい。また、有機化合物や金属原子、フラーレン等を内包させたカーボンナノチューブ等であってもよい。
ここで、カーボンナノチューブ(B)は炭素の純度が高いことが好ましく、カーボンナノチューブ(B)100質量%中の炭素の量(以下「炭素純度」とも称する)は85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。炭素純度が85質量%以上であると、鏡用樹脂基板の表面抵抗値が低くなりやすい。
鏡用樹脂基板内でカーボンナノチューブ(B)は、二次粒子として存在していてもよい。二次粒子形状は、一次粒子であるカーボンナノチューブが複雑に絡み合った状態であってもよく、直線状のカーボンナノチューブが集合した状態であってもよい。これらの中でも直線状のカーボンナノチューブが集合した状態のほうが、鏡用樹脂基板の表面抵抗が小さくなりやすいとの観点で好ましい。
上記カーボンナノチューブ(B)は、公知の方法、例えばレーザーアブレーション法、アーク放電法、熱CVD法、プラズマCVD法、燃焼法等で製造できる。ただし、ゼオライトを触媒の担体とし、アセチレンを原料とした熱CVD法が、精製を必要とせず、効率よく純度の高いカーボンナノチューブを製造できる観点で好ましい。
カーボンナノチューブ(B)は、市販品であってもよい。市販品の例には、K-Nanos 100P、100T、200P(いずれもKumho Petrochemical社製)、FloTube9000、9100、(いずれもCNano社製)、NC7000(Nanocyl社製)等が含まれる。
鏡用樹脂基板中のカーボンナノチューブ(B)の量は、環状オレフィン系重合体(A)およびカーボンナノチューブ(B)の合計量100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下であればよく、0.1質量部以上5.0質量部以下がより好ましい。環状オレフィン系重合体(A)に対してカーボンナノチューブ(B)の量が当該範囲であると、鏡用樹脂基板の表面抵抗値が十分に低くなる。
また、鏡用樹脂基板が、後述の重合体(C)をさらに含む場合、環状オレフィン系重合体(A)とカーボンナノチューブ(B)と重合体(C)との合計量100質量部に対するカーボンナノチューブ(B)の量は、0.1質量部以上8.3質量部以下が好ましく、0.1質量部以上4.5質量部以下がより好ましい。カーボンナノチューブ(B)の量が当該範囲であると、鏡用樹脂基板が着色する。その結果、鏡の反射層を透過した光が、鏡用樹脂基板に吸収されやすくなり、鏡の周囲の部材に影響が生じ難くなる。また、鏡用樹脂基板が、さらに他の成分を含む場合、鏡用樹脂基板の総量100質量部に対するカーボンナノチューブ(B)の量は、0.1質量部以上8.3質量部以下が好ましく、0.1質量部以上4.5質量部以下がより好ましい。カーボンナノチューブ(B)の量が当該範囲であると、鏡用樹脂基板の耐熱性や面衝撃性が高くなり、表面抵抗値が十分に低くなる。
・芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含む重合体(C)
鏡用樹脂基板は、環状オレフィン系重合体(A)およびカーボンナノチューブ(B)以外に、芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含む重合体(C)を含んでいてもよい。当該重合体(C)を含むと、環状オレフィン系重合体(A)に対するカーボンナノチューブ(B)の分散性がより良好になる。また、鏡用樹脂基板を製造する際に使用する樹脂組成物の加工性が良好になったりする。その結果、鏡用樹脂基板の表面抵抗値が低下したり、外観が良好になったり、耐熱性や機械特性等が高まったりする。
その詳細な機構は明らかでないが、芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造を50質量%以上含む重合体(C)は、芳香族構造がカーボンナノチューブ(B)の分子内に存在する二重結合と電気的に相互作用する。つまり、重合体(C)は、カーボンナノチューブ(B)と親和する。一方で、当該重合体(C)は、環状オレフィン系重合体(A)との親和性も高い。したがって、カーボンナノチューブ(B)が、鏡用樹脂基板を製造するための樹脂組成物(特に環状オレフィン系重合体(A))内に均一に分散される。その結果、当該樹脂組成物の流動性や加工性が向上し、得られる鏡用樹脂基板の外観(表面光沢性)が良好になる。さらに、樹脂組成物の流動性の向上により、カーボンナノチューブ(B)もしくはその凝集体の構造破壊が生じ難く、鏡用樹脂基板の表面抵抗値が十分に低くなる。
上述のように、重合体(C)は、重量平均分子量(Mw)が、上述の環状オレフィン系重合体(A)と相違する。重合体(C)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が50000未満であり、100以上10000以下がより好ましく、300以上5000以下がさらに好ましい。また、重合体(C)は、下記要件(i)~(iv)を満たすことが好ましく、さらに要件(v)も満たすことがより好ましい。前述のように、重合体(C)は、以下の物性によっても環状オレフィン系重合体(A)と切り分けることができる。
(i)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が300~5000の範囲にある。
(ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が9.0以下である。
(iii)JIS K2207に従って測定される軟化点が70~170℃の範囲にある。
(iv)JIS K7112に従って測定される密度が900~1200kg/mの範囲にある。
(v)重合体(C)の160℃、B型粘度計、ローター回転数60rpmで測定される溶融粘度が、100~5000mPa・sである。
(i)重合体(C)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、300~5000の範囲にあればよく、その上限は、より好ましくは4000であり、さらに好ましくは3000であり、特に好ましくは2000であり、さらに好ましくは1000である。重合体(C)の数平均分子量が上記範囲内にあると、鏡用樹脂基板中でのカーボンナノチューブ(B)の分散性が高まり、表面抵抗値が十分に低くなる。また、鏡用樹脂基板を製造するための樹脂組成物の流動性が高くなる。
(ii)重合体(C)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、9.0以下であり、これらの比はより好ましくは6.0以下であり、さらに好ましくは4.0以下であり、特に好ましくは3.0以下である。Mw/Mnが上記範囲内であると、カーボンナノチューブ(B)の分散性が低い高分子量成分が少ないために、鏡用樹脂基板を製造しやすくなり、さらには鏡用樹脂基板の耐熱性や機械特性等が良好になる。なお、重量平均分子量(Mw)もポリスチレン換算値である。
重合体(C)のMw/Mnは、重合時の触媒種や重合温度等により調整できる。一般に未変性ポリオレフィンワックスの重合にはチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒が用いられるが、所望のMw/Mnにするためには、メタロセン触媒を用いることが好ましい。なお、未変性ポリオレフィンワックスの精製によっても重合体(C)のMw/Mnを調整できる。
(iii)重合体(C)のJIS K2207に従って測定される軟化点は、70~170℃の範囲にあればよく、その上限は、より好ましくは160℃であり、さらに好ましくは150℃であり、特に好ましくは145℃である。また、下限は、より好ましくは80℃であり、さらに好ましくは90℃であり、特に好ましくは95℃であり、より好ましくは105℃である。軟化点が上記上限値以下にあると、鏡用樹脂基板を製造しやすくなり、さらに鏡用樹脂基板の耐熱性や機械特性等が良好になる。軟化点が上記下限値以上であると、鏡用樹脂基板において、重合体(C)がブリードアウトし難い。
重合体(C)の軟化点は、芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンの重合度により調整できる。例えば重合体(C)が後述のイソプロペニルトルエンの重合体である場合、重合度を多くすることで、軟化点を上げられる。上記軟化点は、触媒種、重合温度、重合後の精製により調整してもよい。また後述のように、重合体(C)が、ポリオレフィンワックスを芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンで変性した化合物である場合、その軟化点は、未変性ポリオレフィンワックスの組成により調整できる。より具体的には未変性ポリオレフィンワックス中のα-オレフィンの含有量を多くすることで、軟化点を下げられる。また、未変性ポリオレフィンワックス調製時の触媒種や重合温度や、重合後の精製により、上記軟化点を調整することも可能である。
(iv)重合体(C)の、JIS K7112に従って密度勾配管法で測定される密度は、900~1200kg/mの範囲にあればよく、より好ましくは950~1150kg/mであり、さらに好ましくは1000~1100kg/mである。重合体(C)の密度が上記範囲内にあると、カーボンナノチューブ(B)の分散性が高まり、鏡用樹脂基板の表面抵抗値が低くなったり、鏡用樹脂基板の外観(表面光沢性)、機械特性が良好になったりする。
重合体(C)が、ポリオレフィンワックスを芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンで変性した化合物である場合、重合体(C)の密度は、後述の未変性ポリオレフィンワックスの組成や重合時の重合温度、水素濃度等によって調整できる。
(v)重合体(C)の160℃、B型粘度計、ローター回転数60rpmで測定される溶融粘度は、100~5000mPa・sが好ましく、300~4500mPa・sがより好ましく、600~4000mPa・sがさらに好ましい。重合体(C)の160℃における溶融粘度が当該範囲であると、鏡用樹脂基板を製造するための樹脂組成物内で、カーボンナノチューブ(B)の分散性が高まり、鏡用樹脂基板の表面抵抗値が低くなる。また、鏡用樹脂基板の外観(表面光沢性)や機械特性が良好になる。
ここで、重合体(C)の構造は特に制限されず、芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位は、主鎖に含まれていてもよく、側鎖に含まれていてもよい。
重合体(C)は、例えば芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンのいずれか一方の単独重合体であってもよく、芳香族置換エテンおよび芳香族置換プロペンの共重合体であってもよく、芳香族置換エテンおよび/または芳香族置換プロペンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。これらの場合、芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位は、通常、主鎖に含まれる。
一方で、重合体(C)は、未変性ポリオレフィンワックスを芳香族置換エテンおよび/または芳香族置換プロペンで変性した化合物であってもよい。この場合、芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位は、通常、側鎖に含まれる。
重合体(C)は、上記の中でも、主鎖に芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンに由来する構造単位を有することが好ましい。
ここで、本明細書における、芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンとは、エチレンに芳香環が結合した化合物、もしくは、プロペンに芳香環が結合した化合物である。芳香環の種類は特に制限されず、例えば複素環であってもよい。芳香環の例には、フェニル基、ピリジル基、キノリル基、カルバゾリル基、ピロリドン由来の基等が含まれるが、これらに限定されない。
芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンの具体例には、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-クロロスチレン、m-クロロスチレンおよびp-クロロメチルスチレン等のスチレン系モノマー;4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、5-エチル-2-ビニルピリジン、2-メチル-5-ビニルピリジン、2-イソプロペニルピリジン等のピリジン系モノマー;2-ビニルキノリン、3-ビニルイソキノリン等のキノリン系モノマー;N-ビニルカルバゾール;イソプロペニルトルエン等が含まれる。
これらの中でも特にスチレン系モノマーまたはイソプロペニルトルエンが好ましく、スチレン、α-メチルスチレン、またはイソプロペニルトルエン由来の構造単位を主鎖に含む化合物が好ましい。
重合体(C)中の芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位の量は、重合体(C)の質量に対して50質量%であればよく、より好ましくは60質量%であり、さらに好ましくは70質量%であり、特に好ましくは80質量%である。重合体(C)中の芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位の量が50質量%以上であると、重合体(C)とカーボンナノチューブ(B)との相溶性が良好となる。したがって、鏡用樹脂基板の外観(表面光沢性)が良好になったり、耐熱性が高まったり、表面抵抗値が十分に低下したりする。
芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位の量は、重合体(C)調製時の芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンの仕込み比等から算出される。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)等を用いて重合体(C)を抽出し、NMR等にてその構造を分析することによっても特定できる。
上記芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を主鎖に含む重合体(C)は、触媒の存在下、上述の芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンを単独で、もしくは芳香族置換エテンおよび/または芳香族置換プロペンと、必要に応じて他のモノマーと重合させることで得られる。
重合反応の際に、反応熱の除去や反応混合物の高粘度化の抑制等のために、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素および脂環族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の炭化水素溶媒を用いることが好ましい。好ましい炭化水素溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、クメン、シメン等の芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;またはこれらの混合物が含まれる。炭化水素溶媒には、これらが一種のみ含まれていてもよく、二種以上含まれていてもよい。これらの反応溶媒の使用量は、反応混合物中のモノマーの初期濃度が10~80質量%となるような量が好ましい。
重合温度は、使用するモノマーや触媒の種類および量等により適宜選択される。重合様式としては、回分式または連続式のいずれの方式を採用することもできる。また、多段重合を行うこともできる。
上述のように重合体(C)は、未変性ポリオレフィンワックスを上述の芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンで変性した化合物であってもよい。以下、未変性ポリオレフィンワックスの構造およびその調製方法について先に説明し、その後、これらを芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンで変性する方法について説明する。
・未変性ポリオレフィンワックスの構造
未変性ポリオレフィンワックスは、エチレンおよび炭素原子数3~12のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種の単独重合体もしくは共重合体が好ましい。炭素原子数3~12のα-オレフィンの例には、炭素原子数3のプロピレン、炭素原子数4の1-ブテン、炭素原子数5の1-ペンテン、炭素原子数6の1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、炭素原子数8の1-オクテン等が含まれ、好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンである。未変性ポリオレフィンワックスは、1種単独の重合体からなるものでもよいし、2種以上の重合体を混合したものであってもよい。
以下、未変性ポリオレフィンワックスの具体例として、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、4-メチル-1-ペンテン系ワックスについて説明するが、未変性ポリオレフィンワックスは、これらに限定されない。
(1)ポリエチレン系ワックス
未変性ポリオレフィンワックスがポリエチレン系ワックスである場合、特開2009-144146号公報等に記載されているポリエチレン系ワックスが好ましい。以下簡単に記載する。
ポリエチレン系ワックスは、例えば、エチレン単独重合体またはエチレンと炭素原子数3~12のα-オレフィンとの共重合体とすることができる。エチレン単独重合体の具体例には、高密度ポリエチレンワックス、中密度ポリエチレンワックス、低密度ポリエチレンワックス、直鎖状低密度ポリエチレンワックスが含まれる。
一方、ポリエチレン系ワックスがエチレンと炭素原子数3~12のα-オレフィンとの共重合体である場合、エチレン由来の構造単位の量(a)は、91.0~99.9モル%が好ましく、より好ましくは93.0~99.9モル%であり、さらに好ましくは95.0~99.9モル%であり、特に好ましくは95.0~99.0モル%である。一方、炭素原子数3以上のα-オレフィン由来の構造単位の量(b)は、0.1~9.0モル%が好ましく、好ましくは0.1~7.0モル%であり、さらに好ましくは0.1~5.0モル%であり、特に好ましくは1.0~5.0モル%である。ただし、(a)+(b)=100モル%である。ポリエチレン系ワックスの構造単位の割合は、13C-NMRスペクトルの解析により求められる。
エチレンと共重合する炭素原子数3~12のα-オレフィンの例には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等の直鎖状または分岐状のα-オレフィンが含まれ、好ましくは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンであり、さらに好ましくは炭素原子数が3~8のα-オレフィンであり、特に好ましくはプロピレン、1-ブテンであり、さらに好ましくはプロピレンである。エチレンとプロピレンや1-ブテンとを共重合すると、重合体(C)が硬くなり、べたが少なくなる傾向にある。そのため、鏡用樹脂基板の表面性が良好となる。また鏡用樹脂基板の機械特性や耐熱性を高める点でも好ましい。その理由は明らかではないが、プロピレンや1-ブテンは、他のα-オレフィンと比較して、少量の共重合で効率的に融点を下げる。そのため、同じ融点で比べると結晶化度が高い傾向にあり、このことが要因と推察する。エチレンと共重合するα-オレフィンは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリエチレン系ワックスは、環状オレフィン系重合体(A)がエチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(A1)を含む場合に特に好適に用いられる。これらを組み合わせると、環状オレフィン系重合体(A)と重合体(C)との相容性が高まり、鏡用樹脂基板の外観(表面光沢性)、耐熱性等が良好となる。
(2)ポリプロピレン系ワックス
未変性ポリオレフィンワックスは、ポリプロピレン系ワックスであってもよい。ポリプロピレン系ワックスは、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンの共重合体、あるいは、プロピレンと炭素原子数4~12のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。
プロピレンとエチレンとを共重合する場合は、プロピレン由来の構造単位を60~99.5モル%とすることが好ましい。プロピレン由来の構造単位量は、より好ましくは80~99モル%であり、さらに好ましくは90~98.5モル%であり、特に好ましくは95~98モル%である。このようなポリプロピレン系ワックスを用いると、外観(表面光沢性)や耐熱性が良好な鏡用樹脂基板が得られやすい。
ポリプロピレン系ワックスを、プロピレンと、炭素原子数4~12のα-オレフィンとを共重合体させた化合物とする場合、炭素原子数4~12のα-オレフィンの例には、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン等の直鎖状または分岐状のα-オレフィンが含まれる。これらの中でも、1-ブテンが特に好ましい。
ポリプロピレン系ワックスがプロピレン・α-オレフィン共重合体である場合、プロピレン由来の構造単位の量(a’)は60~90モル%であることが好ましく、より好ましくは65~88モル%であり、さらに好ましくは70~85モル%であり、特に好ましくは75~82モル%である。一方、炭素原子数4以上のα-オレフィン由来の構造単位の量(b’)は10~40モル%が好ましく、より好ましくは12~35モル%であり、さらに好ましくは15~30モル%であり、特に好ましくは18~25モル%である。ただし、(a’)+(b’)=100モル%である。
このようなポリプロピレンワックスは、環状オレフィン系重合体(A)がポリプロピレンと環状オレフィンとの共重合体(A1)を含む場合に特に好適に用いられる。これらを組み合わせると、環状オレフィン系重合体(A)と重合体(C)との相容性が高まり、鏡用樹脂基板の外観(表面光沢性)や耐熱性が良好となる。
(3)4-メチル-1-ペンテン系ワックス
未変性ポリオレフィンワックスとしては、国際公開第2011/055803号に記載の4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体を熱分解して得たものや、特開2015-028187号公報に記載された、4-メチル-1-ペンテン系重合体が好適である。
(4)未変性ポリオレフィンワックスの調製方法
上述の未変性ポリオレフィンワックスは、エチレンやプロピレン、4-メチル-1-ペンテン等を直接重合したものであってもよく、高分子量の(共)重合体を準備し、これらを熱分解して得てもよい。熱分解する場合、300~450℃で5分~10時間熱分解することが好ましい。この場合、未変性ポリオレフィンワックスには、不飽和末端が生じる。H-NMRにより測定される、1000個の炭素原子あたりのビニリデン基(不飽和末端)の個数が0.5~5個であると、芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンを50質量%以上含む重合体(C)とカーボンナノチューブ(B)との親和性が高まりやすい。なお、未変性ポリオレフィンワックスは、溶媒に対する溶解度の差で分別する溶媒分別、または蒸留等の方法で精製されていてもよい。
一方、エチレンやプロピレン、4-メチル-1-ペンテン等を直接重合して未変性ポリオレフィンワックスを得る場合、その方法は限定されない。種々公知の製造方法を適用でき、例えば、エチレン等をチーグラー/ナッタ触媒またはメタロセン系触媒により重合してもよい。
(5)芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンによる変性方法
上記未変性モノマーを芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンを変性する方法は特に制限されない。使用する芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンは、上述の芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンのいずれであってもよいが、スチレン系モノマーが好ましく、特にスチレンが好ましい。
例えば、原料となる未変性ポリオレフィンワックスと、芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン(例えばスチレン等)とを、有機過酸化物等の重合開始剤の存在下で溶融混練する方法であってもよい。また、原料となる未変性ポリオレフィンワックスと、芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン(例えばスチレン等)とを有機溶媒に溶解した溶液に有機過酸化物等の重合開始剤を添加し、溶融混練する方法であってもよい。
溶融混練には、オートクレーブ、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等、公知の装置を用いることができる。これらの中でも、オートクレーブ等のバッチ式溶融混練性能に優れた装置を使用すると、各成分が均一に分散・反応した重合体(C)が得られる。また連続式に比べ、バッチ式は滞留時間を調整しやすく、また滞留時間を長く取れるため、変性率やその効率を高めることが比較的容易であるとの観点で好ましい。
なお、未変性ポリオレフィンワックスを芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペンで変性した後、これを鏡用樹脂基板の製造方法に合わせて、加工してもよい。例えば重合体(C)を、粉体状、タブレット状、ブロック状に加工してもよい。一方で、重合体(C)を水や有機溶媒中に分散させたり溶解させたりしてもよい。重合体(C)を水や有機溶媒に溶解もしくは分散させる方法は特に限定されない。例えば、攪拌によって重合体(C)を溶解させたり分散させてもよい。また、攪拌しながら加熱してもよい。
さらに、水や有機溶媒中に溶解または分散させた後に析出させ、重合体(C)を微粒子化してもよい。重合体(C)を微粒子化する方法としては、例えば以下の方法がある。まず、重合体(C)が60~100℃で析出するように溶媒組成を調整する。そして、当該溶媒および重合体(C)の混合物を加熱して、溶媒中に芳香族置換エテンまたは重合体(C)を溶解または分散させる。そして当該溶液を、平均冷却速度1~20℃/時間(好ましくは2~10℃/時間)で冷却し、重合体(C)を析出させる。またこの後、貧溶媒を加えて、析出をさらに促進させてもよい。
鏡用樹脂基板中の重合体(C)の量は、環状オレフィン系重合体(A)とカーボンナノチューブ(B)と重合体(C)との合計量100質量部に対して、0.1質量部以上16.7質量部以下が好ましく、0.1質量部以上9.0質量部以下がより好ましい。重合体(C)の量が当該範囲であると、カーボンナノチューブ(B)の分散性が良好になる。鏡用樹脂基板が、さらに他の成分を含む場合には、鏡用樹脂基板の総量100質量部に対する重合体(C)の量は、0.1質量部以上16.7質量部以下が好ましい。重合体(C)の量が当該範囲であると、カーボンナノチューブ(B)の分散性が良好になり、鏡用樹脂基板の表面抵抗値が十分に低くなる。
・その他
本発明の鏡用樹脂基板には、本発明の目的および効果を損なわない範囲で、任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分の例には、臭素化ビスフェノール、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、トリフェニルホスフェート、ホスホン酸アミドおよび赤燐等のような難燃剤;三酸化アンチモンおよびアンチモン酸ナトリウム等のような難燃助剤;燐酸エステルおよび亜燐酸エステル等のような熱安定剤;ヒンダードフェノール等のような酸化防止剤;耐熱剤;耐候剤;光安定剤;離型剤;流動改質剤;着色剤;滑剤;帯電防止剤;結晶核剤;可塑剤;発泡剤等が含まれる。
鏡用樹脂基板における任意成分の含有量は、環状オレフィン系重合体(A)およびカーボンナノチューブ(B)の合計100質量部に対して30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
2.鏡用樹脂基板の製造方法
本発明の鏡用樹脂基板は、種々の方法を利用して製造することができる。例えば、環状オレフィン系重合体(A)と、カーボンナノチューブ(B)と、上記重合体(C)と、任意成分とを、同時にまたは任意の順序で、タンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、単軸あるいは二軸の押出機等で混合する方法により、樹脂組成物を調製し、これを成形してもよい。
樹脂組成物の調製の際、上記重合体(C)をカーボンナノチューブ(B)に含浸させてから、環状オレフィン系重合体(A)と混合してもよい。カーボンナノチューブ(B)に上記重合体(C)を含浸させる方法は、特に限定されない。例えば、溶融した上記重合体(C)とカーボンナノチューブ(B)とを接触させた状態で、カーボンナノチューブ(B)にロールやバーで張力をかけたり、カーボンナノチューブ(B)の拡幅と集束とを繰り返したり、カーボンナノチューブ(B)に圧力や振動を加えたりする方法が挙げられる。これらの方法によれば、上記重合体(C)をカーボンナノチューブ(B)の内部まで含浸させることができる。
当該含浸方法は、加熱した複数のロールやバーの表面にカーボンナノチューブ(B)を接触させ、カーボンナノチューブ(B)を拡幅させた状態で上記重合体(C)と接触させる方法等であってもよい。また特に、絞り口金、絞りロール、ロールプレス、ダブルベルトプレスを用いて、上記重合体(C)をカーボンナノチューブ(B)に含浸させる方法が好適である。なお、このような含浸作業を行うとしても、上記重合体(C)は容易にカーボンチューブ(B)の中に入りこみやすく、短時間で効率よく作業できる。
また、鏡用樹脂基板を製造する際、環状オレフィン系重合体の一部(A)およびカーボンナノチューブ(B)を含むマスターバッチを用意する工程と、マスターバッチおよび環状オレフィン系重合体(A)の残部を溶融混練する工程と、を行ってもよい。
一方で、重合体(C)を使用する場合には、鏡用樹脂基板を製造する際、環状オレフィン系重合体の一部(A)、カーボンナノチューブ(B)、および重合体(C)を含むマスターバッチを用意する工程と、マスターバッチおよび環状オレフィン系重合体(A)の残部とを溶融混練する工程と、を行ってもよい。
カーボンナノチューブ(B)は、環状オレフィン系重合体(A)に均一に分散させにくい場合がある。そこで、環状オレフィン系重合体(A)とカーボンナノチューブ(B)と、必要に応じて重合体(C)とを含むマスターバッチを調製してから、マスターバッチと環状オレフィン系重合体(A)の残部とを混合してもよい。
マスターバッチを作製することで、環状オレフィン系重合体(A)に対するカーボンナノチューブ(B)の分散性が良好になる。そのため、得られる鏡用樹脂基板の表面抵抗値が低くなり、耐熱性や面衝撃性が維持されやすくなる。また、マスターバッチが上記重合体(C)を含む場合には、重合体(C)がカーボンナノチューブ(B)を被覆しやすくなり、鏡用樹脂基板の機械特性、耐熱性等も改善されやすくなる。
マスターバッチが、環状オレフィン系重合体(A)およびカーボンナノチューブ(B)を含む場合、これらの質量比(環状オレフィン系重合体(A)/カーボンナノチューブ(B))は、0.25~999.0が好ましく、0.5~199がより好ましい。質量比が999.0以下であると、カーボンナノチューブ(B)の割合が相対的に高すぎないので、マスターバッチの製造時にカーボンナノチューブ(B)の凝集構造が破壊されにくい。その結果、得られる鏡用樹脂基板の表面抵抗値が低くなりやすい。また、含有質量比が0.25以上であると、マスターバッチを製造しやすい。
一方、マスターバッチが、環状オレフィン系重合体(A)、カーボンナノチューブ(B)、および重合体(C)を含む場合、環状オレフィン系重合体(A)およびカーボンナノチューブ(B)の質量比(環状オレフィン系重合体(A)/カーボンナノチューブ(B))は、0.25~998.0が好ましく、0.33~994.0がより好ましい。また、カーボンナノチューブ(B)と重合体(C)との質量比(重合体(C)/カーボンナノチューブ(B))は0.25~1.0が好ましく、0.13~1.0がより好ましい。環状オレフィン系重合体(A)や重合体(C)に対するカーボンナノチューブ(B)の割合が過度に高くないため、マスターバッチの製造時にカーボンナノチューブ(B)の凝集構造が破壊されにくい。その結果、得られる鏡用樹脂基板の表面抵抗値が低くなりやすい。一方で、環状オレフィン系重合体(A)や重合体(C)を十分に含むため、マスターバッチを製造しやすい。
なお、マスターバッチは、前述の任意の成分をさらに含んでいてもよい。マスターバッチは、各成分をタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、単軸或いは二軸の押出機等で混合して製造できる。
上記樹脂組成物の調製後、例えば射出成形、押出成形、圧縮成形等により所望の形状に成形する。特に意匠性と成形性の観点から射出成形法が好ましい。
ここで、鏡用樹脂基板の形状は特に制限されず、鏡用樹脂基板の用途に応じて適宜選択される。例えば平板状であってもよく、曲面を有していてもよく、さらに所望の凹凸を有していてもよい。
3.鏡
上述の鏡用樹脂基板の表面に反射層を形成することで、鏡とすることができる。光反射層の種類は特に制限されず、鏡に要求される光反射性や性能等に応じて適宜選択される。反射層を構成する材料の例には、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、チタンまたはこれらの合金等の金属;酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化鉄、酸化スズ、酸化シリコン、酸化アルミニウム等の金属酸化物;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム等の金属窒化物;等が含まれ、これらを結着するための樹脂等をさらに含んでいてもよい。
反射層の厚みは特に制限されず、一般的な鏡と同様とすることができる。通常0.25μm~10.0μmが好ましく、0.5~5.0μmがより好ましい。このような範囲であると、反射層によって十分に光を反射しやすくなる。
反射層の形成方法は特に制限されず、その例には、熱CVD法、プラズマCVD法、レーザーCVD法等の化学蒸着法(CVD);真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング等のドライメッキ法や溶射法;スピンコート法、ディッピング法、刷毛塗り法、噴霧塗装法、静電塗装法、電着塗装法等の塗装;電解メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法;等が含まれる。
上記の中でも静電塗装法が特別な装置等が必要なく、車両の製造ライン上で行うことが可能である点で好ましい。静電塗装法とは、負に帯電した塗料の粒子を、静電気の引力によって、所望の基材(ここでは、鏡用樹脂基板)に付着させる方法である。上述のように、鏡用樹脂基板は、表面抵抗値が低いことから、このような静電塗装によっても、反射層を形成可能である。
ここで、鏡用樹脂基板上に反射層を形成する際、必要に応じて、反射層上には、例えば劣化防止等のために、保護層等を有していてもよい。
4.導電性樹脂組成物
本発明は、導電性樹脂組成物も提供する。当該導電性樹脂組成物やその成形体の用途は特に制限されないが、当該導電性樹脂組成物によれば、高い導電性と優れた外観とを兼ね備えた成形体が得られる。
当該導電性樹脂組成物は、上述の環状オレフィン系重合体(A)と、上述のカーボンナノチューブ(B)と、上述の芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含む重合体(C)と、を含む。また、環状オレフィン系重合体(A)、カーボンナノチューブ(B)、および重合体(C)の合計量を100質量部としたとき、環状オレフィン系重合体(A)の量は75.0~99.8質量部であり、86.0~99.8質量部が好ましく、86.0~98.5質量部がより好ましい。得られる成形体の表面光沢性を高めるとの観点では、環状オレフィン系重合体(A)の含有量が高いこと好ましい。また、導電性樹脂組成物に特に高い加工性が必要とされる場合、環状オレフィン系重合体(A)の下限は、好ましくは93質量部であり、より好ましくは95質量部であり、さらに好ましくは97質量部である。
一方、環状オレフィン系重合体(A)、カーボンナノチューブ(B)、および重合体(C)の合計量を100質量部としたとき、カーボンナノチューブ(B)の量は0.1~8.3質量部が好ましく、0.1~6.0質量部が好ましく、0.1~4.5質量部がより好ましい。カーボンナノチューブ(B)を0.1質量部以上含むことで、導電性樹脂組成物、ひいてはその成形体の導電性が良好になる。また、カーボンナノチューブ(B)の量が8.3質量部以下であると、得られる成形体の表面光沢性が良好になる。なお、成形体において、高い導電性、すなわち低い体積固有抵抗値を得るには、カーボンナノチューブ(B)の量は多いほうが好ましい。成形体に特に高い導電性が必要とされる場合、カーボンナノチューブ(B)の下限が、好ましくは1質量部であり、より好ましくは2質量部であり、さらに好ましくは3質量部である。
また、環状オレフィン系重合体(A)、カーボンナノチューブ(B)、および重合体(C)の合計量を100質量部としたとき、重合体(C)の量は0.1~16.7質量部が好ましく、0.1~10.0質量部が好ましく0.1~9.0質量部がより好ましい。重合体(C)を0.1質量部以上含むことで、上記カーボンナノチューブ(B)の分散性が良好になり、導電性樹脂組成物、ひいては成形体の導電性が良好になりやすく、さらには成形体の表面光沢性も良好になりやすい。一方、重合体(C)の含有量が16.7質量部以下であると、環状オレフィン系重合体(A)が本来有する性質を損ない難く、得られる成形体の機械特性が良好になりやすい。
なお、環状オレフィン系重合体(A)、カーボンナノチューブ(B)、および重合体(C)や、導電性樹脂組成物の製造方法については、上述の鏡用樹脂基板が含む各成分と同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。
当該導電性樹脂組成物(もしくは成形体)の導電性は、ASTM D257に準拠して測定される体積固有抵抗値で評価される。導電性樹脂組成物の好ましい体積固有抵抗値は、用途に応じて適宜選択される。例えば、本発明の導電性樹脂組成物がICトレー、シリコンウエハーケース、キャリアテープ等の半導体製品包装材料として用いられる場合、導電性樹脂組成物の体積固有抵抗値は1.0×10~1.0×10Ω・cmが好ましい。また、導電性樹脂組成物がクリーンルーム床材、ベルトコンベア、OA機器向け弱電部材、静電塗装下地材として用いられる場合、その体積固有抵抗値は、1.0×10~1.0×10Ω・cmが好ましい。さらに、導電性樹脂組成物がOA機器向け電磁波シールド部材として用いられる場合、その体積固有抵抗値は、1.0×10-1~1.0×10Ω・cmが好ましい。導電性樹脂組成物の体積固有抵抗値は、カーボンナノチューブ(B)の種類や含有量、さらには重合体(C)の種類や含有量によって調整される。
さらに、導電性樹脂組成物のJIS K7171(ISO 178)に準拠して測定される曲げ弾性率は、当該導電性樹脂組成物が含む環状オレフィン系重合体(A)単体の曲げ弾性率に対して、好ましくは100~400%であり、より好ましくは100~300%であり、さらに好ましくは100~250%である。導電性樹脂組成物の曲げ弾性率が上記範囲内であれば、カーボンナノチューブ(B)の添加による導電性樹脂組成物の曲げ弾性率の低下が少なく、導電性樹脂組成物を種々の用途に適用しやすくなる。ここで、導電性樹脂組成物の曲げ弾性率は、導電性樹脂組成物の組成(特に環状オレフィン系重合体(A)の種類やカーボンナノチューブ(B)の含有量等)によって調整される。
5.導電性樹脂組成物の用途
上記導電性樹脂組成物は、例えば射出成形、押出成形、圧縮成形等により成形し、成形体として使用される。なお、これらの成形方法の中でも、意匠性と成形性の観点から射出成形法が好ましい。
本発明の導電性樹脂組成物は、家庭用品から工業用品に至る広い用途の成形体の製造に使用される。用途の例には、電気部品、電子部品、自動車用部品、機械機構部品、食品容器、フィルム、シート、繊維等が挙げられる。その具体例には、プリンター、パソコン、ワープロ、キーボード、PDA(小型情報端末機)、電話機、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、WiFiルーター、ファクシミリ、複写機、ECR(電子式金銭登録機)、電卓、電子手帳、電子辞書、カード、ホルダー、文具等の事務・OA機器;洗濯機、冷蔵庫、掃除機、電子レンジ、照明器具、ゲーム機、アイロン、炬燵等の家電機器;TV、VTR、ビデオカメラ、デジタルカメラ、一眼レフカメラ、携帯オーディオ端末、ラジカセ、テープレコーダー、ミニディスク、CDプレイヤー、スピーカー、液晶ディスプレイ等のAV機器;コネクター、リレー、コンデンサー、スイッチ、プリント基板、コイルボビン、半導体封止材料、電線、ケーブル、トランス、偏向ヨーク、分電盤、時計等の電気・電子部品および通信機器等が含まれる。
また、用途の例には、座席(詰物、表地等)、ベルト、天井張り、コンパーチブルトップ、アームレスト、ドアトリム、リアパッケージトレイ、カーペット、マット、サンバイザー、ホイルカバー、タイヤ、マットレスカバー、エアバック、絶縁材、吊り手、吊り手帯、電線被服材、電気絶縁材、塗料、コーティング材、上張り材、床材、隅壁、デッキパネル、カバー類、合板、天井板、仕切り板、側壁、カーペット、壁紙、壁装材、外装材、内装材、屋根材、防音板、断熱板、窓材等の自動車、車両、船舶、航空機および建築用材料;衣類、カーテン、シーツ、合板、合繊板、絨毯、玄関マット、シート、バケツ、ホース、容器、眼鏡、鞄、ケース、ゴーグル、スキー板、ラケット、テント、楽器等の生活・スポーツ用品等も含まれる。
さらに、用途の例には、シャンプーや洗剤等のボトル、食用油、醤油等の調味料ボトル、ミネラルウォーターやジュース等の飲料用ボトル、弁当箱、茶碗蒸し用椀等の耐熱食品用容器、皿、箸等の食器類、その他各種食品容器や、包装フィルム、包装袋等も含まれる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらの実施例によって何ら制限を受けるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施形態の変更が可能である。
1.樹脂組成物およびマスターバッチの準備
1-1.環状オレフィン系重合体とカーボンナノチューブと、を含有する樹脂組成物(S)の調製
カーボンナノチューブ(B-1)としてOCSiAl社製、TUBALL75CNT(直径:1.5nm、繊維長:不明)を準備した。一方、環状オレフィン系重合体(A-1)としてエチレン・テトラシクロドデセン共重合体(三井化学社製、アペル5015AL、重量平均分子量(Mw)787000)を準備した。
上記環状オレフィン系重合体(A-1)99質量部に、上記カーボンナノチューブ(B-1)1質量部を加え、2軸バッチ式溶融混練装置(東洋精機社製、ラボプラストミル)で250℃、50rpmで5分間混錬し、樹脂組成物(S)を作製した。
1-2.環状オレフィン系重合体とカーボンナノチューブと、を含有する樹脂組成物(T)の調製
カーボンナノチューブ(B-1)としてOCSiAl社製、TUBALL75CNTを準備した。一方、環状オレフィン系重合体(A-1)としてエチレン・テトラシクロドデセン共重合体(三井化学社製、アペル5015AL、重量平均分子量(Mw)787000)を準備した。さらに、重合体(C-1)を以下のように調製した。
<重合体(C-1)の調製>
攪拌翼を備えた実容量1270mlのオートクレーブ(1段目)に、イソプロペニルトルエン(モノマー)および脱水精製したトルエン(溶媒)の混合物(容量比:イソプロペニルトルエン/トルエン=1/1)と、脱水精製したトルエンで10倍に希釈したボロントリフロライドフェノラート錯体(フェノール1.7倍当量)とを連続的に供給し、温度を5℃に保持しながら重合反応させた。イソプロペニルトルエンおよびトルエンの混合物の供給量は1.0リットル/時間とし、希釈した触媒の供給量は90ミリリットル/時間とした。
続いて、反応混合物を2段目のオートクレーブに移送し、温度5℃で重合反応を継続させた。そして、1段目および2段目のオートクレーブ中での合計滞留時間が2時間になった時点で、連続的に反応混合物をオートクレーブ外に排出した。その後、オートクレーブ内での滞留時間の3倍(6時間)が経過した時点で、反応混合物を1リットル採取し、重合反応を終了させた。採取した反応混合物に1規定のNaOH水溶液を添加し、触媒残さを脱灰した。更に、得られた反応混合物を多量の水で5回洗浄し、エバポレーターで溶媒および未反応モノマーを減圧留去して、イソプロペニルトルエン重合体(重合体(C-1))を得た。なお、重合体(C-1)のGPCで測定される数平均分子量(Mn)は820であり、重量平均分子量(Mw)は、1240であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は1.51であった。さらに、JIS K2207に従って測定される軟化点は100℃であった。さらに、160℃、B型粘度計、ローター回転数60rpmで測定される溶融粘度は910mPa・sであり、JIS K7112に従って測定される密度は1020kg/mであった。
<樹脂組成物(T)の調製>
上記環状オレフィン系重合体(A-1)98.6質量部と、カーボンナノチューブ(B-1)1質量部と、重合体(C-1)0.4質量部と、を加えて、2軸バッチ式溶融混練装置(東洋精機社製、ラボプラストミル)にて、250℃、50rpmで5分間混錬し、樹脂組成物(T)を調製した。
1-3.環状オレフィン系重合体とカーボンナノチューブと、を含有する樹脂組成物(U)の調製
環状オレフィン系重合体(A-1)の代わりに、環状オレフィン系重合体(A-2)(シクロオレフィンポリマー(環状オレフィンの開環重合体、ゼオン社製、ZEONEX E48R)、重量平均分子量(Mw)62700)を用いた以外は、樹脂組成物(T)と同様に、樹脂組成物(U)を調製した。
1-4.低密度ポリエチレン樹脂と、カーボンブラックと、を含有するマスターバッチ(W)の調製
カーボンブラックとしてNITE-CHRIP社製、NITE(IDH27-B-047/C-083B_P)を準備した。一方、オレフィン樹脂として低密度ポリエチレン樹脂(CAS:9002-88-4)を準備した。さらに、上述の重合体(C-1)も準備した。
低密度ポリエチレン樹脂74.6質量部、カーボンブラック25質量部、および重合体(C-1)0.4質量部を混合し、2軸バッチ式溶融混練装置(東洋精機社製、ラボプラストミル)にて、250℃、50rpmで5分間混錬し、マスターバッチ(W)を調製した。
2.鏡用樹脂基板の作製
[実施例1]
上記樹脂組成物(S)を真空プレス機(神藤金属工業所社製、NSF-50型)にて、270℃、10MPaで10分間プレスし、以下の2種類の大きさの鏡用樹脂基板を作製した。
鏡用樹脂基板1:幅4.5mm長さ4.5mm厚さ2mm
鏡用樹脂基板2:幅80mm長さ10mm厚さ3mm
[実施例2]
上記樹脂組成物(S)を、樹脂組成物(T)に変更した以外は、実施例1と同様に鏡用樹脂基板を作製した。
[実施例3]
上記樹脂組成物(S)を、樹脂組成物(U)に変更した以外は、実施例1と同様に鏡用樹脂基板を作製した。
[比較例1]
環状オレフィン系重合体(A-1)(エチレン・テトラシクロドデセン共重合体(三井化学社製アペル5015AL))99.6質量部、および重合体(C-1)0.4質量部を混合し、2軸バッチ式溶融混練装置(東洋精機社製、ラボプラストミル)にて、250℃、50rpmで5分間混錬し実施例1と同様に鏡用樹脂基板を作製した。
[比較例2]
環状オレフィン系重合体(A-2)(シクロオレフィンポリマー(環状オレフィンの開環重合体、ゼオン社製、ZEONEX E48R))99.6質量部、および重合体(C-1)0.4質量部を混合し、2軸バッチ式溶融混練装置(東洋精機社製、ラボプラストミル)にて、250℃、50rpmで5分間混錬し実施例1と同様に鏡用樹脂基板を作製した。
[比較例3]
環状オレフィン系重合体(A-3)(環状オレフィンコポリマー、ポリプラスチックス社製、TOPAS 5013L)99.6質量部、および重合体(C-1)0.4質量部を混合し、2軸バッチ式溶融混練装置(東洋精機社製、ラボプラストミル)にて、250℃、50rpmで5分間混錬し実施例1と同様に鏡用樹脂基板を作製した。
[比較例4]
環状オレフィン系重合体(A-1)88質量部と、マスタ―バッチ(W)12質量部とを混合し、樹脂組成物中のカーボンブラック含有量を3質量%とした。当該混合物を、2軸バッチ式溶融混練装置(東洋精機社製、ラボプラストミル)にて、250℃、50rpmで5分間混錬し、樹脂組成物を得た。その後、当該樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様に、鏡用樹脂基板を作製した。
[比較例5]
環状オレフィン系重合体(A-1)の代わりに、環状オレフィン系重合体(A-2)を使用した以外は、比較例4と同様に、鏡用樹脂基板を作製した。
[比較例6]
環状オレフィン系重合体(A-1)の代わりに、環状オレフィン系重合体(A-3)を使用した以外は、比較例4と同様に、鏡用樹脂基板を作製した。
[比較例7]
環状オレフィン系重合体(A-1)96質量部と、マスタ―バッチ(W)4質量部とを混合し、樹脂組成物中のカーボンブラック含有量を1質量%とした。当該混合物を、2軸バッチ式溶融混練装置(東洋精機社製、ラボプラストミル)にて、250℃、50rpmで5分間混錬し、樹脂組成物を得た。その後、当該樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様に、鏡用樹脂基板を作製した。
[比較例8]
環状オレフィン系重合体(A-1)95質量部と、樹脂組成物(T)5質量部とを混合し、樹脂組成物中のカーボンナノチューブ含有量を0.05質量%とした。当該混合物を、2軸バッチ式溶融混練装置(東洋精機社製、ラボプラストミル)にて、250℃、50rpmで5分間混錬し、樹脂組成物を得た。その後、当該樹脂組成物を用いた以外は、実施例1と同様に、鏡用樹脂基板を作製した。
[評価]
上記実施例および比較例で作製した鏡用樹脂基板について、以下の方法で面衝撃強度、表面抵抗率、および熱変形温度を測定した。結果を表1に示す。
<表面抵抗率>
厚さ2mmの鏡用樹脂基板について、エーディーシー社製、デジタル超高抵抗/微粒電流計8340Aを用いて、4短針法により23℃、湿度:50%、印加電圧:10V、印加時間:60秒の条件で表面抵抗率を測定した。なお、表面抵抗率が1.0×10-6以下となった場合には、JIS K7194:1994に準拠し、低抵抗抵抗率計(日東精工アナリテック社製、ロレスタ-GX-MCP-T700)を用いて、印加電流:1mA、印加時間:10秒、23℃、湿度:50%の条件で表面抵抗率を再測定した。表面抵抗率を表1に示す。
<熱変形温度>
厚さ3mmの鏡用樹脂基板について、ISO75に準拠して、荷重たわみ温度(HDT)を0.8MPa荷重でフラットワイズ法で測定した。当該値を表1に示す。
<高速面衝撃試験>
厚さ2mmの鏡用樹脂基板に、23℃の条件下で、径が1/2インチのロードセル付き撃芯(ストライカ)を試験速度3m/sで衝突させた。鏡用樹脂基板の裏面には支持台径1インチの台を配置した。得られる変位および試験力変位曲線から試験力の最大点までのエネルギー値を最大衝撃点エネルギーとして算出し、当該値を表1に示す。この値が大きいほど、耐衝撃性が高いことを表す。
Figure 2022142253000009
上記表1に示すように、環状オレフィン系重合体と、カーボンナノチューブとを含み、かつ環状オレフィン系重合体およびカーボンナノチューブの合計100質量部に対して、カーボンナノチューブの量が0.1質量部以上10質量部以下であると(実施例1~3)、対応するカーボンナノチューブを含まない比較例1および2と比較して、熱変形温度や高速面積衝撃性は同等であるにも関わらず、表面抵抗率を下げることができた。また、環状オレフィン系重合体(A)として環状オレフィンコポリマー(A-3)を用いた比較例3においても、カーボンナノチューブ(B-1)を含まないことから、その表面抵抗率は高かった。
一方、カーボンナノチューブを含んでいたとしても、その量が少なすぎる場合には、表面抵抗率が十分に下がらなかった(比較例8)。また、炭素系化合物として、カーボンナノチューブではなく、カーボンブラックを含む場合(比較例4~7)には、カーボンナノチューブを含む場合と比較して表面抵抗率が十分に下がらなかった。
本発明の鏡用樹脂基板は、高い耐熱性や高い面衝撃性と、低い表面抵抗値とを兼ね備える。したがって、車両内で使用される鏡等、幅広い分野で利用可能である。

Claims (15)

  1. 環状オレフィン系重合体(A)と、
    カーボンナノチューブ(B)と、
    を含み、
    前記環状オレフィン系重合体(A)と、前記カーボンナノチューブ(B)との合計量を100質量部としたとき、前記カーボンナノチューブ(B)の量が0.1質量部以上10質量部以下である、
    鏡用樹脂基板。
  2. 前記環状オレフィン系重合体(A)が、エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(A1)および環状オレフィンの開環重合体(A2)からなる群から選択される少なくとも一種を含む、
    請求項1に記載の鏡用樹脂基板。
  3. 前記環状オレフィン系重合体(A)が、前記エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(A1)を含み、
    前記エチレンまたはα-オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(A1)が、
    下記一般式(I)で表される、少なくとも一種のオレフィン由来の繰り返し単位(a)と、
    下記一般式(II)~(VI)のいずれかで表される環状オレフィン由来の繰り返し単位(b)と、
    を含む、請求項2に記載の鏡用樹脂基板。
    Figure 2022142253000010
    (一般式(I)において、
    300は水素原子または炭素原子数1~29の直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基を表す)
    Figure 2022142253000011
    (一般式(II)において、
    uは0または1を表し、
    vは0または1以上の整数を表し、
    wは0または1を表し、
    61~R78、Ra1、およびRb1は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、または炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基を表し、
    75~R78は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい)
    Figure 2022142253000012
    (一般式(III)において、
    xおよびdはそれぞれ独立に0または1以上の整数を表し、
    yおよびzはそれぞれ独立に0、1、または2を表し、
    81~R99は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基または炭素原子数3~15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基、もしくはアルコキシ基を表し、
    89およびR90が結合している炭素原子と、R93が結合している炭素原子またはR91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよく、
    y=z=0のとき、R95およびR92、またはR95およびR99は互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい)
    Figure 2022142253000013
    (一般式(IV)において、
    nおよびmはそれぞれ独立に0、1、または2を表し、
    qは1、2、または3を表し、
    18~R31はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基であり、
    q=1のときR28およびR29、R29およびR30、ならびに/またはR30およびR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、
    q=2または3のとき、R28およびR28、R28およびR29、R29およびR30、R30およびR31、ならびに/またはR31およびR31は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、前記単環または前記多環が芳香族環であってもよい)
    Figure 2022142253000014
    (一般式(V)において、
    100およびR101はそれぞれ独立に、水素原子、または炭素原子数1~5の炭化水素基を表し、
    fは1以上18以下を表す)
    Figure 2022142253000015
    (一般式(VI)において、
    qは1、2、または3を表し、
    32~R39はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子を除くハロゲン原子、またはフッ素原子を除くハロゲン原子で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、
    q=1のときR36およびR37、R37およびR38、ならびに/またはR38およびR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、
    q=2または3のときR36およびR36、R36およびR37、R37およびR38、R38およびR39、ならびに/またはR39およびR39は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、
    前記単環または前記多環が二重結合を有していてもよく、
    前記単環または前記多環が芳香族環であってもよい)
  4. 前記環状オレフィン系重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が50000以上であり、
    芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含み、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が50000未満である重合体(C)をさらに含む、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の鏡用樹脂基板。
  5. 前記芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含む重合体(C)が、下記(i)~(iv)をすべて満たす、
    請求項4に記載の鏡用樹脂基板。
    (i)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が300~5000の範囲にある
    (ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が9.0以下である
    (iii)JIS K2207に従って測定される軟化点が70~170℃の範囲にある
    (iv)JIS K7112に従って測定される密度が900~1200kg/mの範囲にある
  6. 前記芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含む重合体(C)が、スチレン、α-メチルスチレン、およびイソプロペニルトルエンから選ばれる少なくとも1種の重合体である、
    請求項4または5に記載の鏡用樹脂基板。
  7. ヘッドアップディスプレイ用ミラーの基板である、
    請求項1~6のいずれか一項に記載の鏡用樹脂基板。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載の鏡用樹脂基板と、
    前記鏡用樹脂基板の少なくとも一方の面に配置された反射層と、
    を有する、鏡。
  9. ヘッドアップディスプレイ用ミラーである、
    請求項8に記載の鏡。
  10. 請求項1~7のいずれか一項に記載の鏡用樹脂基板の製造方法であって、
    前記環状オレフィン系重合体(A)の一部および前記カーボンナノチューブ(B)を含むマスターバッチを用意する工程と、
    前記マスターバッチおよび前記環状オレフィン系重合体(A)の残部を溶融混練する工程と、
    を含む、
    鏡用樹脂基板の製造方法。
  11. ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が50000以上である環状オレフィン系重合体(A)と、
    カーボンナノチューブ(B)と、
    芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含み、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が50000未満である重合体(C)と、
    を含み、
    前記環状オレフィン系重合体(A)、前記カーボンナノチューブ(B)、および前記芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含む重合体(C)の合計量100質量部に対して、
    前記環状オレフィン系重合体(A)を75.0~99.8質量部、
    前記カーボンナノチューブ(B)を0.1~8.3質量部、
    前記芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含む重合体(C)を0.1~16.7質量部含む、導電性樹脂組成物。
  12. 前記芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含む重合体(C)が、下記(i)~(iv)をすべて満たす、
    請求項11に記載の導電性樹脂組成物。
    (i)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が300~5000の範囲にある
    (ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が9.0以下である
    (iii)JIS K2207に従って測定される軟化点が70~170℃の範囲にある
    (iv)JIS K7112に従って測定される密度が900~1200kg/mの範囲にある
  13. 前記芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含む重合体(C)が、スチレン、α-メチルスチレン、およびイソプロペニルトルエンから選ばれる少なくとも1種の重合体である、
    請求項11または12に記載の導電性樹脂組成物。
  14. 請求項11~13のいずれか一項に記載の導電性樹脂組成物の製造方法であって、
    前記環状オレフィン系重合体(A)の一部、前記カーボンナノチューブ(B)、および前記芳香族置換エテンまたは芳香族置換プロペン由来の構造単位を50質量%以上含む重合体(C)を含むマスターバッチを用意する工程と、
    前記マスターバッチおよび前記環状オレフィン系重合体(A)の残部を溶融混練する工程と、
    を含む、導電性樹脂組成物の製造方法。
  15. 請求項11~13のいずれか一項に記載の導電性樹脂組成物から得られる、成形体。
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