JP2022140296A - 粉末材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】積層造形法において、三次元造形物を製造するのに適した、高い流動性および高い充填密度を備える粉末材料を提供する。【解決手段】金属粒子を含む粉末材料であって、前記金属粒子の累積粒度分布における10%粒径d10が16μm未満であり、かつ、90%粒径d90が35μmよりも大きく、粉体中を上向きに螺旋運動するブレードに作用するエネルギーとして計測される流動エネルギーを、粉体の質量で除した値として得られる比エネルギーを、粉体の嵩密度で規格化した値が、0.47mJ・ml/g2未満であることを特徴とする粉末材料。【選択図】図1
Description
本発明は、粉末材料に関し、さらに詳しくは積層造形法において、粉末床を形成して、レーザービーム等のエネルギー線を照射して三次元造形物を製造する用途に適した粉末材料に関する。
三次元造形物を製造する新しい技術として、付加製造技術(Additive Manufacturing;AM)の発展が近年著しい。付加製造技術の一種として、粉末材料のエネルギー線照射による固化を利用した積層造形法がある。金属粉末材を用いた積層造形法の一例として、粉末積層溶融法が代表的である。
粉末積層溶融法の具体例として、選択的レーザー溶融法(Selective Laser Melting;SLM) 、電子線溶融法(Electron Beam Melting;EBM)等の方法を挙げることができる。これらの方法においては、金属よりなる粉末材料を、ベースとなる基材上に供給して粉末床を形成し、三次元設計データをもとに、粉末床の所定の位置に、レーザービーム、電子線等のエネルギー線を照射する。すると、照射を受けた部位の粉末材料が、溶融と再凝固によって固化し、造形体が形成される。粉末床への粉末材料の供給とエネルギー線照射による造形を繰り返し、造形体を層状に順次積層して形成していくことで、三次元造形物が得られる。
上記のような積層造形法を用いて、金属材料よりなる三次元造形物を製造する際に、得られる三次元造形物に、空隙や欠陥等、構成材料の分布が不均一な構造が生じる場合がある。そのような不均一な構造の生成は、極力抑制することが望ましい。金属材料を用いた積層造形法において、製造される三次元造形物の内部に、構成材料の不均一な分布が生じる原因は、複数考えられるが、要因の1つとして、エネルギー線照射前の粉末材料の状態が、得られる三次元造形物の状態に、大きな影響を与えうる。
例えば、積層造形法において、粉末材料が流動性に優れていると、粉末材料の供給が円滑に行われることから、粉末材料が均一に敷き詰められた粉末床を安定に形成することができる。このように、積層造形法によって三次元造形物を製造する際に、原料として用いる粉末材料が高い流動性を有していると、その粉末材料を用いて形成した粉末床に対してエネルギー線を照射した際に、均一性の高い造形物を得やすくなる。例えば、特許文献1では、電子顕微鏡観察に基づく、粒径が20μm以下の微細な粒子の割合を、15個数%以下と少量に制限することによって、粉末材料の流動性の改善を図っている。
上記特許文献1に開示されているものをはじめ、従来一般に、積層造形の原料として用いられる粉末材料においては、流動性を高めることを意図して、分級を行い、微粉を可能な限り除去していることが多い。しかし、積層造形法において、構成材料の不均一な分布が抑えられた良質な三次元造形物を与えうる、粉末材料が均一に敷き詰められた粉末床を得るためには、粉末材料が高い流動性を有していることだけでなく、高い充填密度を示すことも重要である。分級によって流動性を高めた粉末材料は、必ずしも高い充填密度を示すものとはならない。
本発明が解決しようとする課題は、積層造形法において、三次元造形物を製造するのに適した、高い流動性および高い充填密度を備える粉末材料を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る粉末材料は、金属粒子を含む粉末材料であって、前記金属粒子の質量基準累積粒度分布における10%粒径d10が16μm未満であり、かつ、90%粒径d90が35μmよりも大きく、さらに、粉体中を上向きに螺旋運動するブレードに作用するエネルギーとして計測される流動エネルギーを、粉体の質量で除した値として得られる比エネルギーを、粉体の嵩密度で規格化した値が、0.47mJ・ml/g2未満である、というものである。
ここで、前記粉末材料は雪崩角が40°未満であるとよい。
前記粉末材料は充填密度が57%以上であるとよい。
また、前記粉末材料は、前記金属粒子に加えて、金属または金属酸化物よりなるナノ粒子を含有しているとよい。
前記金属粒子は鉄基合金またはニッケル基合金よりなるとよい。
前記金属粒子の前記10%粒径d10が15μm未満であり、かつ、前記90%粒径d90が40μmより大きいと、なおよい。
本発明に係る粉末材料は、前記金属粒子を、ガスアトマイズ法により製造する工程を含んで、前記粉末材料を製造するものである。
ここで、前記金属粒子をガスアトマイズ法により製造した後、粒度分布における小径側の粒子を除去する分級の工程を実施しないとよい。
上記発明にかかる粉末材料は、粒度分布においてd10が16μm未満、つまり、16μm未満の粒子の比率が10%より多く、特許文献1に記載されるもの等、従来の粉末材料よりも微細な粒子(微粉)の含有量が多い。一方、d90が35μm超となっており、比較的粒径の大きい粒子の含有も確保されている。このように、d10<16μmとの分布で規定される小径の粒子の含有と、d90>35μmとの分布で規定される大径粒子の両方の金属粒子が含有されるため、大径粒子の間の空隙に小径粒子が入り込むことによる充填密度向上の効果が得られる。つまり、上記発明にかかる粉末材料は、粒度分布の幅が広く、粉末床として粉末材料を敷き詰めた際、粉末床における充填密度を向上させ、均一性の高い粉末床が得られやすくなる。加えて、上記粉末材料においては、粉体中を上向きに螺旋運動するブレードに作用するエネルギーとして計測される流動エネルギーを、粉体の質量で除した値として得られる比エネルギーを、粉体の嵩密度で規格化した値が、0.47mJ・ml/g2未満である。比エネルギーは、低圧充填時など粉体の動きが制限されない環境下で、金属粒子の凝集体を分散させるのに要するエネルギーを示している。つまり、比エネルギーを嵩密度で規格化した値は、粉末材料の流動性を示す指標となり、この値が小さいほど、粉末材料は流動性に優れたものとなる。なお、比エネルギーをSpecific Energy(SE)、嵩密度をρb、比エネルギーを嵩密度で規格化した値をSE/ρb値、と以後記載することにする。
上記発明にかかる粉末材料は、d10<16μmとして規定されるように、小径の金属粒子を多く含むことが、充填密度を高める効果を有する反面、流動性を低下させる要因となる可能性があるが、SE/ρb値を低く抑えることで、十分に高い流動性を確保することができる。このように、上記発明にかかる粉末材料は、高い流動性と充填密度を両立するものとなり、高い充填密度を有する粉末床を円滑に形成することができる。その結果、積層造形によって、均一性の高い組織を有する三次元造形物を与えうる原料粉末となる。
ここで、粉末材料の雪崩角が40°未満である場合には、粉末材料において高い流動性を確保することができる。雪崩角とは、回転ドラム内に粉末を入れて低速で回転させた際に、粉末が雪崩を引き起こした時の角度(粉末の堆積層の斜面と水平面がなす角度)であり、粉末の流動性が高いほど雪崩角は小さくなる。
粉末材料の充填密度が57%以上である場合には、高密度な粉末床を形成することができ、均質な積層造形物を得ることができる。
粉末材料が、金属粒子に加えて、金属または金属酸化物よりなるナノ粒子を含有している場合には、隣接する金属粒子の間にナノ粒子が介在されることで、粉末材料の流動性を高めやすくなる。
金属粒子が、鉄基合金またはニッケル基合金よりなる場合には、積層造形法を利用した製造の需要が大きい鉄基合金またはニッケル基合金よりなる三次元造形物の原料として、粉末材料を好適に用いることができる。
金属粒子の10%粒径d10が15μm未満であり、かつ、90%粒径d90が40μm超である場合には、粉末材料が、さらに幅広い粒度分布を有することにより、充填率向上の効果がさらに高くなる。
上記発明にかかる金属粒子の製造方法は、金属粒子をガスアトマイズ法によって製造する工程を含んでいる。金属粒子をガスアトマイズ法によって製造することにより、種々の合金組成に対して、ミクロンオーダーの粒径を有し、かつ円形度が高いことにより高い流動性を示す粒子を製造しやすい。また、ガスアトマイズ法を用いことにより、金属粒子製造時に、金属粒子の構成成分を原料として、ナノ粒子が金属粒子の表面に、同時に生成される場合がある。このナノ粒子は、粉末材料の流動性を向上させるのに寄与しうる。特に、ナノ粒子が金属粒子の表面に付着した状態で生成することで、流動性向上の効果が安定して得られるようになる。
ここで、粒度分布における小径側の粒子を除去する、分級の工程を実施しない場合には、粉末材料を構成する金属粒子が、広い粒度分布を有するものとなり、その結果、粉末材料の充填密度を高めやすい。また、d10<16μmとなった粒度分布を実現するのに、外部からの小径粒子の添加等による粒度の調整を省略できる可能性があり、粉末材料の製造工程を簡素化することができる。金属粒子をアトマイズ法によって製造することで、円形度の高い金属粒子の生成、またナノ粒子の生成によって、高い流動性を示す金属粒子が簡便に得られる効果と合わせて、流動性と充填性の両方に優れた粉末材料を、簡便に、また低コストで製造することが可能となる。
以下に、本発明の実施形態にかかる粉末材料について、詳細に説明する。本発明の実施形態にかかる粉末材料は、積層造形法において、粉末床を構成し、エネルギー線の照射によって三次元造形物を製造するための原料として用いることができる。
本発明の実施形態にかかる粉末材料の構成、粉末材料の特性、および粉末材料の製造方法について説明する。
本実施形態にかかる粉末材料は、質量基準累積粒度分布における10%粒径d10が16μm未満であり、かつ、90%粒径d90が35μmより大きくなった粒度分布を有する金属粒子を含有する、粉末材料である。粉末材料は、そのような金属粒子に加えて、ナノ粒子を含有する。本実施形態にかかる粉末材料は、上記の粒度分布、および後に説明する所定のSE/ρb値を満たす限りにおいて、金属粒子、および任意に含有されるナノ粒子以外の成分を含有してもよい。しかし、金属粒子およびナノ粒子以外の成分は、不可避的不純物を除いて、含有しない方が好ましい。
(1)金属粒子
本実施形態にかかる粉末材料に含有される金属粒子の質量基準累積粒度分布においては、d10が16μm未満であり、かつ、d90が35μmより大きくなっている。d10<16μmであることは、粒度分布全体として、粒径10μm程度の小径粒子が多く含まれることを意味する。一方、d90>35μmであることは、粒度分布において、比較的粒径が大きい粒子の含有も確保されていることを意味する。このように、粒度分布が、幅広い粒径にわたっていることにより、粉末材料が高い充填密度を与えるものとなる。粉末材料が大径の金属粒子のみよりなるとすれば、粉末材料を敷き詰める工程において、金属粒子同士が隣接す箇所に空隙が生じ、粉末床の充填密度は低下する。しかし、本実施形態にかかる金属粒子のように、幅広い粒度分布を有することにより、大径粒子の間の空隙を小径粒子(微粉)で埋めて、粉末床の充填密度を向上させることができる。粉末材料が有する粒度分布の幅を広げ、充填密度を向上させる効果を高める観点から、粉末材料の粒度分布において、d10が15μm未満であり、かつ、d90が40μmより大きいと、より好ましい。
本実施形態にかかる粉末材料に含有される金属粒子の質量基準累積粒度分布においては、d10が16μm未満であり、かつ、d90が35μmより大きくなっている。d10<16μmであることは、粒度分布全体として、粒径10μm程度の小径粒子が多く含まれることを意味する。一方、d90>35μmであることは、粒度分布において、比較的粒径が大きい粒子の含有も確保されていることを意味する。このように、粒度分布が、幅広い粒径にわたっていることにより、粉末材料が高い充填密度を与えるものとなる。粉末材料が大径の金属粒子のみよりなるとすれば、粉末材料を敷き詰める工程において、金属粒子同士が隣接す箇所に空隙が生じ、粉末床の充填密度は低下する。しかし、本実施形態にかかる金属粒子のように、幅広い粒度分布を有することにより、大径粒子の間の空隙を小径粒子(微粉)で埋めて、粉末床の充填密度を向上させることができる。粉末材料が有する粒度分布の幅を広げ、充填密度を向上させる効果を高める観点から、粉末材料の粒度分布において、d10が15μm未満であり、かつ、d90が40μmより大きいと、より好ましい。
粉末材料の流動性の観点からは、d10の下限は特に限定されないが、あまりに粒子が小さいと充填密度の向上に寄与し難しくなるので、例えば、1μm以上とするとよい。d90の上限も特に限定されないが、積層造形の原料として一般的に用いられる金属粉末の粒径を考慮すると、例えば200μm以下とするとよい。さらに、同様の観点から、質量基準累積粒度分布における50%粒径である平均粒径d50は、10μm以上、また150μm以下であることが好ましい。
粉末材料が、上記粒度分布を有し、かつ、後述するSE/ρb値を与えるものであれば、金属粒子を構成する金属は特に限定されないが、鉄基合金、ニッケル基合金、コバルト基合金、チタン基合金を好適に用いることができる。より好ましくは、鉄基合金、もしくはニッケル基合金を用いるとよい。鉄基合金およびニッケル基合金は、積層造形における需要が大きく、鉄基合金もしくはニッケル基合金を主成分とする粉末材料は、積層造形の原料として、好適に用いることができる。鉄基合金としては、各種ステンレス鋼や工具鋼に相当する成分組成を有するものを、特に好適に用いることができる。
(2)ナノ粒子
本実施形態にかかる粉末材料は、ナノ粒子を含有する。粉末材料にナノ粒子が含有されることで、粉末材料の流動性の向上に効果を有するとともに、金属粒子の間にナノ粒子が介在され、金属粒子間に働く引力相互作用が低減されることで、金属粒子間の付着力を低減する効果が得られる。
本実施形態にかかる粉末材料は、ナノ粒子を含有する。粉末材料にナノ粒子が含有されることで、粉末材料の流動性の向上に効果を有するとともに、金属粒子の間にナノ粒子が介在され、金属粒子間に働く引力相互作用が低減されることで、金属粒子間の付着力を低減する効果が得られる。
ナノ粒子は、金属粒子の表面に付着していても、金属粒子と独立して、金属粒子の間の空間に分散されていてもよい。好ましくは、ナノ粒子の分布を安定させる等の観点から、金属粒子の表面に付着しているとよい。ナノ粒子は金属もしくは金属酸化物より構成されることが好ましい。ナノ粒子は、上記で説明した金属粒子の構成成分に由来して生成するものであっても、上記の金属粒子とは別に添加されるものであってもよい。ナノ粒子が金属粒子の構成成分に由来して生成される場合の例として、後に金属粒子の製造方法として説明するように、アトマイズ法によって金属粒子を形成する際に、金属粒子の構成成分に由来するナノ粒子が、金属粒子の表面に付着した状態で、生成される形態を挙げることができる。ナノ粒子が金属酸化物より構成される場合に、好適な金属酸化物として、SiO2、Al2O3、TiO2等を挙げることができる。これらの金属酸化物は、積層造形工程を経て、金属よりなる三次元造形物に含まれても、深刻な影響を与えにくい。金属酸化物よりなるナノ粒子は、金属粒子と別に準備し、金属粒子に添加されるとよい。
ナノ粒子の粒径は、ナノメートルオーダーであれば特に限定されるものではないが、1nm以上、また、100nm以下である場合を、好適なものとして例示することができる。ナノ粒子の形状も特に限定されず、略球形、多面体形状、不規則形状等どのような粒子形状をとっていてもよい。特に、ナノ粒子を金属粒子と別に添加する場合には、好ましくは、粉末材料の流動性を効果的に向上させる観点から、略球形の粒子状であるとよい。粉末材料に含有されるナノ粒子の量は、特に限定されるものではないが、例えば、流動性向上の効果を高く得る観点から、金属粒子の質量を基準として、0.001質量%以上とするとよい。また、過剰なナノ粒子の含有による三次元造形物の品質への影響を避ける等の観点から、0.1質量%以下とするとよい。なお、ナノ粒子は、粒径の小ささにより、粉末材料の質量基準粒度分布には、実質的に影響を与えない。
(3)粉末材料の特性
本実施形態にかかる粉末材料では、粉末材料の流動性を示す比エネルギー(SE:mJ/g)を、粉末材料の嵩密度(ρb:g/ml)で除した値(SE/ρb:mJ・ml/g2)を、粉末材料の流動性の指標として用い、SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2未満に抑えられている。SEは、低応力環境において、粉末材料における金属粒子の凝集体を剪断によって分散させるのに要するエネルギーである。詳細には、低圧充填時など粉体が拘束されていない環境下で、粉末材料中を羽根車状のブレードが回転しながら上向きの螺旋運動を行った際に、ブレードに印加される剪断力から算出される。粉末材料の粒子同士の間に強い凝集が生じ、粉末材料の流動性が低い場合に、比エネルギー(SE)が大きくなる。
本実施形態にかかる粉末材料では、粉末材料の流動性を示す比エネルギー(SE:mJ/g)を、粉末材料の嵩密度(ρb:g/ml)で除した値(SE/ρb:mJ・ml/g2)を、粉末材料の流動性の指標として用い、SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2未満に抑えられている。SEは、低応力環境において、粉末材料における金属粒子の凝集体を剪断によって分散させるのに要するエネルギーである。詳細には、低圧充填時など粉体が拘束されていない環境下で、粉末材料中を羽根車状のブレードが回転しながら上向きの螺旋運動を行った際に、ブレードに印加される剪断力から算出される。粉末材料の粒子同士の間に強い凝集が生じ、粉末材料の流動性が低い場合に、比エネルギー(SE)が大きくなる。
粉末材料のSE値の測定には、粉体流動性分析装置を用いることができる。そのような装置の具体例としては、Freeman Technology社製のパウダーレオメータFT4を挙げることができる。
このように、SE/ρb値は、粉末材料の流動性の指標となり、その値が小さいほど粉末材料の流動性が高いことを示す。本実施形態にかかる粉末材料においては、SE/ρb値が、0.47mJ・ml/g2未満であることにより、粒子間に働く付着力(引力)が小さく抑えられ、粉末材料が高い流動性を有する。SE/ρb値は、さらに好ましくは、0.5mJ・ml/g未満であるとよい。粉末材料のSE/ρb値が0.47mJ・ml/g2未満であることにより、本実施形態にかかる粉末材料は、良好な流動性を有するものとなる。すると、積層造形工程において、粉末床への粉末材料の供給、および粉末床における粉末材料の敷き詰めが円滑に行われ、均質で高密度な粉末床を得ることができる。その結果、良質な三次元造形物を得ることが可能となる。SE/ρb値を小さく抑える手段は、特に限定されるものではないが、例えば、上記で説明した金属粒子へのナノ粒子の添加、金属粒子の円形度の向上、水分の除去等の手段を挙げることができる。SE/ρb値の下限については定める必要はないが、鉄基合金等の金属粉末において、おおむね0.3mJ・ml/g2以上となる。
粉末材料において、SE/ρb値が小さい場合に、雪崩角(Φ)が小さくなる傾向がある。雪崩角とは、所定量の粉体を入れた円筒容器をゆっくり回転させた時に、回転に伴い上に引き上げられた粉末の流動挙動を観察することで得られる値であり、粒子間の付着力と重力のバランスが崩れて雪崩が生じる直前の粉末の角度(粉末の堆積層の斜面と水平面がなす角度)を示す。SE/ρb値が小さく、粒子間に働く付着力が小さい場合に、粉体の流動性が向上することから、雪崩角(Φ)が小さくなる。
本実施形態にかかる粉末材料の雪崩角(Φ)は、40°未満であることが好ましく、さらに好ましくは35°未満であるとよい。粉末材料の雪崩角(Φ)が40°未満であることにより優れた流動性を有し、その結果、積層造形法において、粉末材料の供給等、粉末材料の流動性が影響を及ぼす工程が円滑に行われ、粉末床への敷き詰めの密度、および粉末床の表面の平滑性も向上させやすくなるので、良質な三次元造形物を得ることができる。粉末材料の雪崩角の下限は、特に指定されるものではないが、鉄基合金、もしくはニッケル基合金等より構成されるこの種の金属粉末において、おおむね15°以上である。
上記のように、本実施形態にかかる粉末材料は、d10<16μmとして規定されるとおり、小径粒子を多く含むことで、高い充填密度を示す。充填密度は、嵩密度(ρb)を真密度(ρt)で除した値(ρb/ρt×100%)として定量的に評価することができる。本実施形態にかかる粉末材料においては、上記充填密度が、57%以上であることが好ましい。すると、粉末材料が形成する粉末床において、粉末材料の敷き詰め密度を十分に高め、積層造形法によって得られる三次元造形物において、構成材料の空間的均一性を高めるのに、効果的に寄与する。充填密度に上限は特に設けられないが、鉄基合金、もしくはニッケル基合金等より構成されるこの種の金属粉末において、おおむね90%以下となる。
粉末材料は、d10<16μm、かつ、d90>35μmの粒度分布と、0.47mJ・ml/g2未満のSE/ρb値を有することで、高い流動性を有し、かつ、高い充填密度を有するものとなり、積層造形の原料として、粉末材料を好適に用いることができる。例えば、積層造形法のうち、SLM法やEBM法等の粉末積層溶融法を実施する場合には、ホッパーから粉末材料を供給し、基材の上に敷き詰めて、粉末床を形成する。この際、粉末材料のSE/ρb値が0.47未満であることにより、粉末材料が高い流動性を有すると、ホッパーから安定して粉末材料を流出させることができる。また、リコーター等を用いて、粉末材料を敷き詰めて、粉末床とする際に、粉末材料が高い流動性を有することにより、敷き詰めを円滑に行うことができる。加えて、粉末材料の粒度分布が、上記で述べたように、広く微粉を含むものであることにより、粉末材料の敷き詰めを、高密度で、また均質に行いやすくなる。このように、粉末材料が高い流動性を有し、かつ、高い充填性を有することは、均一性および密度の高い粉末床を安定して形成するうえで、重要である。粉末材料の流動性および充填性が上昇することで、粉末材料を密に、また、平滑に敷き詰めることができ、粉末床を形成する際に、高い敷き詰め性が得られる。そして、均一性および密度の高い粉末床に対して、エネルギー線が照射され、積層造形を行うことにより、均質で欠陥の少ない三次元造形物を形成しやすくなる。
(4)粉末材料の製造方法
上記で説明した本実施形態にかかる粉末材料の製造方法は、特に限定されるものではないが、以下に説明する本発明の実施形態にかかる粉末材料の製造方法を用いて、好適に製造することができる。
上記で説明した本実施形態にかかる粉末材料の製造方法は、特に限定されるものではないが、以下に説明する本発明の実施形態にかかる粉末材料の製造方法を用いて、好適に製造することができる。
最初に、粉末材料の原料となる、金属粒子を準備する必要がある。金属粒子を製造する方法は、特に限定されないが、ガスアトマイズ法を用いることが好ましい。ガスアトマイズ法は、合金溶湯を真空中に噴射し、噴射された合金溶湯に窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを吹きるけることによって、金属微粒子を得るものである。ガスアトマイズ法においては、金属粒子の形状を球形に近づけやすく、さらに、合金溶湯を噴射するノズルの寸法(開口角等)や、ガス圧等の条件により、粒径および粒子表面の状態を制御可能である。例えば、合金溶湯の成分組成の中に、Al,Mg,Cu,Sn等、他の成分金属元素(Fe等)より昇華しやすい金属元素が含まれる場合、ガスアトマイズ法においては、それらの金属元素を昇華させ、金属粒子の表面で凝固させることにより、所望するミクロンオーダーの粒径を有する金属粒子と共に、金属粒子成分由来のナノ粒子を、金属粒子の表面に付着させた状態で生成させることも可能である。金属粒子の構成成分の昇華を促進できる条件は、例えば、使用するガスノズルの種類(開口角等)を選択することや、装置内で溶融金属の粉砕を行うエリアを低圧とすることで、達成しうる。このように、金属粒子をガスアトマイズ法によって作製することによって、球形性の高い金属粒子を形成すること、さらには適宜ナノ粒子の生成を促進することによって、簡便に、粉末材料を高い流動性を有するものとして製造することができる。
さらに、本実施形態の粉末材料においては、上記で述べたガスアトマイズ法によって得た金属粒子に対して、従来の製造工程で行われている、分級を行わないことが好ましい。従来の製造工程では、分級によって微粉を除去することにより、粉末材料の流動性を向上させている。しかし、上記で説明したように、本実施形態にかかる粉末材料は、d10<16μmとの粒度分布に代表されるように、微粉を多く含むことで、高い充填性を実現できるものとなっている。製造工程において、分級による微粉の除去を省略することで、そのような微粉を多く含む粒度分布が得られやすくなる。微粉除去の工程を不要とすることで、コストの削減と歩留まりの向上が可能となる。また、別途準備した微粉を、大径粒子を多く含む粉末材料に添加するような工程も、必要ない。
なお、アトマイズ法等による金属粒子の製造の後に、粒度分布の調整およびナノ粒子の生成促進の観点から、熱プラズマ処理等の加熱を適宜行っても良い。アトマイズ法によって得られた金属粒子が二次凝集を起こしている場合もあるが、加熱を行うことで、その凝集が解消される。金属粒子がさらに加熱されると、金属粒子の表面近傍の組織が溶融または昇華し、金属粒子の表面で急冷凝固される際に、再凝固によって、金属粒子の表面に、その溶融または昇華した材料を原料として、ナノ粒子が生成される。
また、アトマイズ法による金属粒子の製造後、および/または加熱処理後に、別途、金属酸化物等よりなるナノ粒子を添加してもよい。金属粒子由来のナノ粒子の生成、および/または外部からの金属酸化物ナノ粒子の添加により、粉末材料の流動性をさらに向上させることができる。
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。ここでは、粉末材料の粒度分布およびSE/ρb値と、流動性および充填性、また敷き詰め性の関係性について調べた。各評価は、大気中、室温にて行っている。本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
[1]粉末材料の状態と特性の関係
(試料の作製)
鉄基合金およびニッケル基合金を原料としたガスアトマイズ法によって、金属粒子を作製した。ガスアトマイズ法で作成する際、ノズルの開口角とガス圧力を調整することで、アトマイズガスにより形成される再循環ゾーンの圧力を-55kPaG未満となるように調整することによって、粒径を調整するとともに、表面に付着させてナノ粒子が生成するようにした。上記のようにして得た金属粒子は、平均粒径で20μm以上50μm以下の範囲であった。得られた金属粒子に対して分級は行わなかった。このようにして複数の粉末材料の試料を準備した(試料1~8)。上記作製試料について、以下に示す検討を行った。
(試料の作製)
鉄基合金およびニッケル基合金を原料としたガスアトマイズ法によって、金属粒子を作製した。ガスアトマイズ法で作成する際、ノズルの開口角とガス圧力を調整することで、アトマイズガスにより形成される再循環ゾーンの圧力を-55kPaG未満となるように調整することによって、粒径を調整するとともに、表面に付着させてナノ粒子が生成するようにした。上記のようにして得た金属粒子は、平均粒径で20μm以上50μm以下の範囲であった。得られた金属粒子に対して分級は行わなかった。このようにして複数の粉末材料の試料を準備した(試料1~8)。上記作製試料について、以下に示す検討を行った。
(粒度分布の評価)
JIS Z 8825に準拠し、レーザー回折・散乱式測定機を用いて、各粉末材料の粒度分布を測定した。
JIS Z 8825に準拠し、レーザー回折・散乱式測定機を用いて、各粉末材料の粒度分布を測定した。
(粉末材料の形態の評価)
作製した金属粒子に、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察を行った。代表の試料について、図1に観察像を示す。図1の観察に使用した試料は、表1の試料3の試料であり、d10値が13.8μm、かつ、SE/ρb値が0.45mJ・ml/g2の試料である。原料は、JIS SKD-61の工具鋼である。
作製した金属粒子に、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察を行った。代表の試料について、図1に観察像を示す。図1の観察に使用した試料は、表1の試料3の試料であり、d10値が13.8μm、かつ、SE/ρb値が0.45mJ・ml/g2の試料である。原料は、JIS SKD-61の工具鋼である。
(SE/ρb値の評価)
SE/ρb値は、比エネルギー(SE)の値を嵩密度(ρb)で除することにより、評価される。SEとρbは、フリーマンテクノロジー社製「パウダーレオメータFT4」を用いて測定した。測定には23.5mm径のブレードと、25mmの円筒状のスプリット容器を用いた。金属粉末材料の各試料を上記の円筒状のスプリット容器に充填して、ブレードを上向きに回転させ、ブレードから粉末材料に印加される剪断力を計測し、SEとした。測定環境は、室内温度15℃以上30℃以下、湿度20%未満である。上記のようにして計測したSEをρbで除し、SE/ρb値とした。
SE/ρb値は、比エネルギー(SE)の値を嵩密度(ρb)で除することにより、評価される。SEとρbは、フリーマンテクノロジー社製「パウダーレオメータFT4」を用いて測定した。測定には23.5mm径のブレードと、25mmの円筒状のスプリット容器を用いた。金属粉末材料の各試料を上記の円筒状のスプリット容器に充填して、ブレードを上向きに回転させ、ブレードから粉末材料に印加される剪断力を計測し、SEとした。測定環境は、室内温度15℃以上30℃以下、湿度20%未満である。上記のようにして計測したSEをρbで除し、SE/ρb値とした。
(雪崩角の評価)
雪崩角(Φ)を、Mercury Scientific社製「Revolution Powder Analyzer」を用いて評価した。粉末材料を収容する円筒状の回転式ドラム式と、ドラム内部を写し、粉末材料の挙動を連続的に記録するCCDカメラからなる装置である。所定量の粉末材料を回転式ドラムに入れて、低速(0.6rpm)で回転させると粉末の堆積層は回転に沿って上方へ引き上げられるが、粒子間の付着力と重力のバランスが崩れたときに雪崩が起こる。雪崩が生じた際の状態をCCDカメラで記録し、雪崩が生じた際の粉末材料の角度(粉末の堆積層の斜面と水平面がなす角度)を雪崩角(Φ)として、粉末材料の流動性を評価した。
雪崩角(Φ)を、Mercury Scientific社製「Revolution Powder Analyzer」を用いて評価した。粉末材料を収容する円筒状の回転式ドラム式と、ドラム内部を写し、粉末材料の挙動を連続的に記録するCCDカメラからなる装置である。所定量の粉末材料を回転式ドラムに入れて、低速(0.6rpm)で回転させると粉末の堆積層は回転に沿って上方へ引き上げられるが、粒子間の付着力と重力のバランスが崩れたときに雪崩が起こる。雪崩が生じた際の状態をCCDカメラで記録し、雪崩が生じた際の粉末材料の角度(粉末の堆積層の斜面と水平面がなす角度)を雪崩角(Φ)として、粉末材料の流動性を評価した。
(充填密度の評価)
充填密度(以後、充填密度をρfと記載する)は、嵩密度(ρb)/真密度(ρt)として算出した。真密度(ρt)はSente Software社製の材料物性値計算ソフト(JMatPro)による計算値を採用した。嵩密度(ρb)は、上記SE/ρb値の算出に用いたのと同じ値とした。
充填密度(以後、充填密度をρfと記載する)は、嵩密度(ρb)/真密度(ρt)として算出した。真密度(ρt)はSente Software社製の材料物性値計算ソフト(JMatPro)による計算値を採用した。嵩密度(ρb)は、上記SE/ρb値の算出に用いたのと同じ値とした。
(評価結果)
<金属粒子の状態>
図1に、代表的な作製試料のSEM画像を示す。画像より、粉末材料に含まれている金属粒子の形状は、ほぼ球形であり、さらに、拡大図に示される通り、金属粒子の表面には、ナノ粒子が多数付着していることが分かる。金属粒子の作製にガスアトマイズ法を採用したことに対応して、金属粒子の形状が略球形となっている。さらに、金属粒子表面にナノ粒子が付着しているのは、金属粒子の原料に含まれている金属のうち、昇華しやすい金属が、ガスアトマイズ工程において昇華し、金属粒子の表面で凝固したものであると考えられる。なお、図1のSEM画像の取得に使用した試料は、試料3の試料である。
<金属粒子の状態>
図1に、代表的な作製試料のSEM画像を示す。画像より、粉末材料に含まれている金属粒子の形状は、ほぼ球形であり、さらに、拡大図に示される通り、金属粒子の表面には、ナノ粒子が多数付着していることが分かる。金属粒子の作製にガスアトマイズ法を採用したことに対応して、金属粒子の形状が略球形となっている。さらに、金属粒子表面にナノ粒子が付着しているのは、金属粒子の原料に含まれている金属のうち、昇華しやすい金属が、ガスアトマイズ工程において昇華し、金属粒子の表面で凝固したものであると考えられる。なお、図1のSEM画像の取得に使用した試料は、試料3の試料である。
表1より粉末材料の粒度分布においてd10が16μm未満、かつ、SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2未満となっている試料1~4の試料は、全て、雪崩角(Φ)が40°未満、かつ、充填密度(ρf)が57%以上である。一方、試料5から試料8に示すように、粉末材料のd10値が16μm未満であっても、SE/ρb値が0.47未満となっていとなっていなければ、40°未満の小さい雪崩角と57%以上の高い充填密度を得ることができない。このことから、粉末材料の粒度分布においてd10が16μm未満、かつ、d90が35μm超であり、さらに、SE/ρbが0.47mJ・ml/g2未満であれば、積層造形に適した、高い流動性を有することで小さい雪崩角を与え、かつ、粉末床における充填密度を高められる粉末材料を得られることが分かる。
[2]粉末材料の敷き詰め性
粉末材料が、粒度分布においてd10が16μm未満、かつ、SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2以上の特性を有するとき、粉末材料が適切に敷き詰められるかを評価することを目的に、以下に示すような粉末材料の敷詰め性の評価を行った。
粉末材料が、粒度分布においてd10が16μm未満、かつ、SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2以上の特性を有するとき、粉末材料が適切に敷き詰められるかを評価することを目的に、以下に示すような粉末材料の敷詰め性の評価を行った。
(粉末材料の敷き詰め性の評価方法)
表1に示した試料2、試料4、および試料8を用いて積層造形装置で粉末床を実際に作成し、敷き詰め性を評価した。試料2および試料4はd10が16μm未満、かつ、SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2未満となっており、試料8は上記範囲を満たしていない試料である。表2に評価結果をまとめて示し、図2に敷き詰め性の評価に使用した粉末床を示す。なお、敷き詰め性の評価を補う観点から、上記試料2、4、8に加えて、別途市販の粉末材料を参考試料として準備し、これらの参考試料についても雪崩角、充填密度を上記試験[1]と同様の測定方法に従って測定するとともに、敷き詰め性の評価を行った。
表1に示した試料2、試料4、および試料8を用いて積層造形装置で粉末床を実際に作成し、敷き詰め性を評価した。試料2および試料4はd10が16μm未満、かつ、SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2未満となっており、試料8は上記範囲を満たしていない試料である。表2に評価結果をまとめて示し、図2に敷き詰め性の評価に使用した粉末床を示す。なお、敷き詰め性の評価を補う観点から、上記試料2、4、8に加えて、別途市販の粉末材料を参考試料として準備し、これらの参考試料についても雪崩角、充填密度を上記試験[1]と同様の測定方法に従って測定するとともに、敷き詰め性の評価を行った。
各試料の敷き詰め性を評価するに際し、積層造形装置として、コンセプトレーザー社製「金属3DプリンターM2」を用い、当該装置に所定量の粉末材料を投入し、速度100mm/sでコーターによる敷き詰めを行い、245mm×245mmの敷き詰め部(粉末床)を作製した。粉末の積層厚は50μmとし、積層厚の2倍に相当する量を粉末床に供給して、敷き詰めを行った。粉末床の表面を装置内蔵のカメラで撮影し、撮像画像内の220mm×220mmの領域を測定領域として敷き詰め性を評価した。得られる撮影画像において、粉末材料が密に充填されている領域ほど高輝度に撮影されることから、積層造形を支障なく行える敷き詰め密度に対応する基準以上の輝度が得られている領域を粉末材料が十分に敷き詰められている領域(領域a)、輝度が上記閾値未満の領域を粉末材料の敷き詰めが不十分な領域(領域b)とし、二値化を経て各領域の面積を見積もった。さらに、以下の式を用いて、有効面積率(%)を算出した。有効面積率が98%以上の場合を「敷き詰め性が良い」として「〇」、98%未満の場合を「敷き詰め性が悪い」として「×」と評価し、表1に示した。
有効面積率(%)=領域aの面積×100/測定領域の面積
有効面積率(%)=領域aの面積×100/測定領域の面積
(評価結果:敷き詰め性)
表1における試料2、試料4、試料8、ならびに別途準備した参考試料1および参考試料2の粉末材料を用いて実際に粉末床を形成し、粉末床における各試料の粉末材料が均一に充填されているかどうかを上記の方法で評価した。その結果を表2に示す。表2における試料2および試料4の試料は、いずれも粉末材料の粒度分布におけるd10が16μm未満、かつ、SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2未満となっているが、試料8、参考試料1、および参考試料2はいずれもSE/ρb値が0.47mJ・ml/g2以上となっている。SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2未満である試料2、4は、敷き詰め性がいずれも「〇」で「良い」との評価であるのに対し、SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2以上である試料8、参考試料1、ならびに参考試料2の敷き詰め性は「×」で「悪い」と評価されている。
表1における試料2、試料4、試料8、ならびに別途準備した参考試料1および参考試料2の粉末材料を用いて実際に粉末床を形成し、粉末床における各試料の粉末材料が均一に充填されているかどうかを上記の方法で評価した。その結果を表2に示す。表2における試料2および試料4の試料は、いずれも粉末材料の粒度分布におけるd10が16μm未満、かつ、SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2未満となっているが、試料8、参考試料1、および参考試料2はいずれもSE/ρb値が0.47mJ・ml/g2以上となっている。SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2未満である試料2、4は、敷き詰め性がいずれも「〇」で「良い」との評価であるのに対し、SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2以上である試料8、参考試料1、ならびに参考試料2の敷き詰め性は「×」で「悪い」と評価されている。
上記敷き詰め性の差は、粉末材料の流動性および充填密度と対応付けることができる。試験[1]でも説明したとおり、試料2および試料4は、いずれも雪崩角が40°未満で小さく、かつ、充填密度が57%以上と高いことから、高い流動性を有し、かつ、粉末床における充填密度も高い。一方、試料8、参考試料1および参考試料2は、雪崩角は40°超であり、かつ充填密度も57%未満である。よって、粉末材料が、粒度分布においてd10が16μm未満であり、かつ、SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2であることで、小さな雪崩角および高い充填密度が得られ、それに対応して粉末床を形成する際に粉末材料が高い敷き詰め性を示し、均一に充填されると言える。
以上、本発明の実施形態および実施例について説明した。本発明は、これらの実施形態及び実施例に特に限定されること無く、種々の改変を行うことが可能である。
このように、SE/ρb値は、粉末材料の流動性の指標となり、その値が小さいほど粉末材料の流動性が高いことを示す。本実施形態にかかる粉末材料においては、SE/ρb値が、0.47mJ・ml/g2未満であることにより、粒子間に働く付着力(引力)が小さく抑えられ、粉末材料が高い流動性を有する。粉末材料のSE/ρb値が0.47mJ・ml/g2未満であることにより、本実施形態にかかる粉末材料は、良好な流動性を有するものとなる。すると、積層造形工程において、粉末床への粉末材料の供給、および粉末床における粉末材料の敷き詰めが円滑に行われ、均質で高密度な粉末床を得ることができる。その結果、良質な三次元造形物を得ることが可能となる。SE/ρb値を小さく抑える手段は、特に限定されるものではないが、例えば、上記で説明した金属粒子へのナノ粒子の添加、金属粒子の円形度の向上、水分の除去等の手段を挙げることができる。SE/ρb値の下限については定める必要はないが、鉄基合金等の金属粉末において、おおむね0.3mJ・ml/g2以上となる。
(粒度分布の評価)
JIS Z 8825:2013に準拠し、レーザー回折・散乱式測定機を用いて、各粉末材料の粒度分布を測定した。
JIS Z 8825:2013に準拠し、レーザー回折・散乱式測定機を用いて、各粉末材料の粒度分布を測定した。
(粉末材料の形態の評価)
作製した金属粒子に、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察を行った。代表の試料について、図1に観察像を示す。図1の観察に使用した試料は、表1の試料3の試料であり、d10値が13.8μm、かつ、SE/ρb値が0.45mJ・ml/g2の試料である。原料は、JIS SKD-61(JIS G4404:2015)の工具鋼である。
作製した金属粒子に、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察を行った。代表の試料について、図1に観察像を示す。図1の観察に使用した試料は、表1の試料3の試料であり、d10値が13.8μm、かつ、SE/ρb値が0.45mJ・ml/g2の試料である。原料は、JIS SKD-61(JIS G4404:2015)の工具鋼である。
(粉末材料の敷き詰め性の評価方法)
表1に示した試料2、試料4、および試料8を用いて積層造形装置で粉末床を実際に作成し、敷き詰め性を評価した。試料2および試料4はd10が16μm未満、かつ、SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2未満となっており、試料8は上記範囲を満たしていない試料である。表2に評価結果をまとめて示す。なお、敷き詰め性の評価を補う観点から、上記試料2、4、8に加えて、別途市販の粉末材料を参考試料として準備し、これらの参考試料についても雪崩角、充填密度を上記試験[1]と同様の測定方法に従って測定するとともに、敷き詰め性の評価を行った。
表1に示した試料2、試料4、および試料8を用いて積層造形装置で粉末床を実際に作成し、敷き詰め性を評価した。試料2および試料4はd10が16μm未満、かつ、SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2未満となっており、試料8は上記範囲を満たしていない試料である。表2に評価結果をまとめて示す。なお、敷き詰め性の評価を補う観点から、上記試料2、4、8に加えて、別途市販の粉末材料を参考試料として準備し、これらの参考試料についても雪崩角、充填密度を上記試験[1]と同様の測定方法に従って測定するとともに、敷き詰め性の評価を行った。
各試料の敷き詰め性を評価するに際し、積層造形装置として、コンセプトレーザー社製「金属3DプリンターM2」を用い、当該装置に所定量の粉末材料を投入し、速度100mm/sでリコーターによる敷き詰めを行い、245mm×245mmの敷き詰め部(粉末床)を作製した。粉末の積層厚は50μmとし、積層厚の2倍に相当する量を粉末床に供給して、敷き詰めを行った。粉末床の表面を装置内蔵のカメラで撮影し、撮像画像内の220mm×220mmの領域を測定領域として敷き詰め性を評価した。得られる撮影画像において、粉末材料が密に充填されている領域ほど高輝度に撮影されることから、積層造形を支障なく行える敷き詰め密度に対応する基準以上の輝度が得られている領域を粉末材料が十分に敷き詰められている領域(領域a)、輝度が上記閾値未満の領域を粉末材料の敷き詰めが不十分な領域(領域b)とし、二値化を経て各領域の面積を見積もった。さらに、以下の式を用いて、有効面積率(%)を算出した。有効面積率が98%以上の場合を「敷き詰め性が良い」として「〇」、98%未満の場合を「敷き詰め性が悪い」として「×」と評価し、表1に示した。
有効面積率(%)=領域aの面積×100/測定領域の面積
有効面積率(%)=領域aの面積×100/測定領域の面積
上記敷き詰め性の差は、粉末材料の流動性および充填密度と対応付けることができる。試験[1]でも説明したとおり、試料2および試料4は、いずれも雪崩角が40°未満で小さく、かつ、充填密度が57%以上と高いことから、高い流動性を有し、かつ、粉末床における充填密度も高い。一方、試料8、参考試料1および参考試料2は、雪崩角は40°超であり、かつ充填密度も57%未満である。よって、粉末材料が、粒度分布においてd10が16μm未満であり、かつ、SE/ρb値が0.47mJ・ml/g2であることで、小さな雪崩角および高い充填密度が得られ、それに対応して粉末床を形成する際に粉末材料が高い敷き詰め性を示し、均一に充填されると言える。
Claims (8)
- 金属粒子を含む粉末材料であって、
前記金属粒子の質量基準累積粒度分布における10%粒径d10が16μm未満であり、かつ、90%粒径d90が35μmよりも大きく、
粉体中を上向きに螺旋運動するブレードに作用するエネルギーとして計測される流動エネルギーを、粉体の質量で除した値として得られる比エネルギーを、粉体の嵩密度で規格化した値が、0.47mJ・ml/g2未満である、粉末材料。 - 雪崩角が40°未満である、請求項1に記載の粉末材料。
- 充填密度が57%以上である、請求項1または請求項2に記載の粉末材料。
- 前記粉末材料は、前記金属粒子に加えて、金属または金属酸化物よりなるナノ粒子を含有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の粉末材料。
- 前記金属粒子は鉄基合金またはニッケル基合金よりなる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の粉末材料。
- 前記粉末材料の前記10%粒径d10が15μm未満であり、かつ、前記90%粒径d90が40μmよりも大きい、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の粉末材料。
- 前記金属粒子を、ガスアトマイズ法により製造する工程を含んで、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の粉末材料を製造する、粉末材料の製造方法。
- 前記金属粒子をガスアトマイズ法により製造した後、粒度分布における小径側の粒子を除去する分級の工程を実施しない、請求項7に記載の粉末材料の製造方法。
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