JP7039997B2 - 金属粉末材料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属粉末材料の製造方法に関し、さらに詳しくは、積層造形法において、レーザービーム等のエネルギー線を照射して三次元造形物を製造する用途に適した金属粉末材料を製造する方法に関する。
三次元造形物を製造する新しい技術として、付加製造技術(Additive Manufacturing;AM)の発展が近年著しい。付加製造技術の一種として、粉末材料のエネルギー線照射による固化を利用した積層造形法がある。金属粉末材料を用いた積層造形法としては、粉末積層溶融法と、粉末堆積法の2種が代表的である。
粉末積層溶融法の具体例として、選択的レーザー溶融法(Selective Laser Melting;SLM)、電子線溶融法(Electron Beam Melting;EBM)等の方法を挙げることができる。これらの方法においては、金属よりなる粉末材料を、ベースとなる基材上に供給して粉末床を形成し、三次元設計データをもとに、粉末床の所定の位置に、レーザービーム、電子線等のエネルギー線を照射する。すると、照射を受けた部位の粉末材料が、溶融と再凝固によって固化し、造形体が形成される。粉末床への粉末材料の供給とエネルギー線照射による造形を繰り返し、造形体を層状に順次積層して形成していくことで、三次元造形物が得られる。
一方、粉末堆積法の具体例としては、レーザー金属堆積法(Laser Metal Deposition;LMD)を挙げることができる。この方法においては、三次元造形物を形成したい位置に、ノズルを用いて金属粉末を噴射しながら、同時に、レーザービームの照射を行い、所望の形状を有する三次元造形物を形成する。
上記のような積層造形法を用いて、金属材料よりなる三次元造形物を製造する際に、得られる三次元造形物に、空隙や欠陥等、構成材料の分布が不均一な構造が生じる場合がある。そのような不均一構造の生成は、極力抑制することが望ましい。例えば、特許文献1においては、SLM法等において、金属粉末層にエネルギー線を照射する際に、金属粉末層の表面に対して垂直に静磁場を作用させることで、溶融プールにおいて生じる現象に起因した欠陥を低減することを図っている。
特開2017-25401号公報
金属材料を用いた積層造形法による三次元造形物の製造において、三次元造形物の内部に、構成材料の分布が不均一な構造が生じる原因としては、特許文献1に記載されるようなエネルギー線の照射時に発生する現象だけでなく、さまざまな要素が存在しうる。その中で、エネルギー線照射前の粉末材料の状態も、得られる三次元造形物の状態に大きな影響を与えうる。
例えば、粉末積層溶融法において、粉末床に粉末材料を円滑に供給し、粉末材料が均一に敷き詰められた粉末床を安定に形成することにより、均質性の高い三次元造形物が得られやすい。また、粉末床において、粉末材料が高密度で充填されているほど、エネルギー線を照射して得られる三次元造形物が凝固収縮を起こしにくい。粉末堆積法においても、ノズルを閉塞させずに粉末材料を円滑に供給することで、三次元造形物を安定に形成することができる。このように、粉末材料を原料とした積層造形において、用いられる粉末材料の特性を制御することが重要となる。
本発明が解決しようとする課題は、積層造形法において、三次元造形物を製造するのに適した金属粉末材料を製造できる金属粉末材料の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る金属粉末材料の製造方法は、金属よりなり、質量基準分布における篩下積算分率が10%となる粒子径d10が10μm以上、100μm以下である原料粒子を加熱することで、前記原料粒子よりも円形度が高くなった金属粒子の表面に、前記金属粒子を構成する金属元素の少なくとも一部より構成される金属または金属化合物のナノ粒子が付着した金属粉末材料を製造する、というものである。
ここで、前記原料粒子の加熱を、熱プラズマ処理によって行うとよい。
また、前記原料粒子を、アトマイズ法によって製造するとよい。
前記ナノ粒子は、前記金属粒子を構成する金属元素のうち、昇華しやすい金属元素が、前記金属粒子中よりも濃化されたものであるとよい。
前記ナノ粒子および前記金属粒子に、アルミニウムが含まれるとよい。
前記原料粒子は、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、鉄合金のいずれかよりなるとよい。
前記金属粒子の円形度は、平均粒径において、0.90以上であるとよい。
上記発明にかかる金属粉末材料の製造方法においては、原料粒子を加熱することで、原料粒子よりも円形度が高くなった金属粒子を得るとともに、その金属粒子の表面にナノ粒子を形成する。円形度の向上とナノ粒子の形成により、得られる金属粉末材料の流動性を高め、また充填性を高めることができる。
その結果として、得られる金属粉末材料を、積層造形に好適に用いることが可能となる。つまり、粉末積層溶融法において用いる粉末床を形成する際に、金属粉末材料の流動性の高さによって、安定して金属粉末材料を供給できるようになる。また、均一性の高い粉末床を形成しやすくなる。粉末床における充填密度も高めやすくなる。粉末堆積法においても、金属粉末材料の流動性の高さによって、ノズルの閉塞を抑制し、造形物の形成を安定して行いやすくなる。
この製造方法においては、金属粒子の円形度の向上とナノ粒子の生成を一度の加熱で行うことができるため、上記のように積層造形に用いるのに優れた金属粉末材料を、簡便に製造することができる。
ここで、原料粒子の加熱を、熱プラズマ処理によって行う場合には、原料金属の表面近傍の組織を、溶融または昇華が起こる温度まで、高速で加熱することができるので、溶融または昇華した金属の再凝固によって、金属粒子の円形度を向上させながら、その表面にナノ粒子を生成させやすい。
また、原料粒子を、アトマイズ法によって製造する場合には、種々の合金組成に対して、ミクロンオーダーの粒径を有し、ある程度円形度の高い原料粒子を得ることができる。そのような原料粒子を加熱に供することで、円形度の高い金属粒子の表面にナノ粒子が付着した金属粉末材料を形成しやすい。
ナノ粒子が、金属粒子を構成する金属元素のうち、昇華しやすい金属元素が、金属粒子中よりも濃化されたものである場合には、原料粒子を加熱することにより、その昇華しやすい金属元素を優先的に金属粒子から放出させ、金属粒子の表面にナノ粒子を形成させることができる。
ナノ粒子および前記金属粒子に、アルミニウムが含まれる場合には、アルミニウムを含んだ原料粒子を加熱することにより、そのような金属粉末材料を得ることができるが、アルミニウムは昇華しやすい金属であり、アルミニウムを含むナノ粒子を、金属粒子の表面に付着した状態で、生成させやすい。
原料粒子が、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、鉄合金のいずれかよりなる場合には、本製造方法によって得られる金属粉末材料を、積層造形法を利用した製造の需要が大きいそれらの合金よりなる三次元造形物の原料として、好適に用いることができる。また、それらの合金には、アルミニウム等の昇華しやすい元素をはじめ、多様な添加元素を含有させることができ、原料粒子の加熱によって、ナノ粒子を金属粒子の表面に形成しやすい。
金属粒子の円形度が、平均粒径において、0.90以上である場合には、得られる金属粉末材料の流動性を特に高めることができる。また、高密度での充填も行いやすくなる。
(a),(b)は、ホッパーからの粉末材料の落下を説明する図であり、(a),(b)の順に粉末材料の落下が進行する。(c)は、粉末材料の敷き詰めを説明する図である。 金属粒子の凝集状態を説明する図であり、(a)は金属粒子の表面にナノ粒子が存在する場合、(b)は金属粒子のみの場合を示している。 熱プラズマ処理を説明する図である。 熱プラズマ処理前(#1)および処理後(#2)の金属粒子の粒度分布および円形度を示す試験結果である。 粒子形状の評価のための粒子画像であり、粒径70μmの場合について、(a)は熱プラズマ処理前、(b)は熱プラズマ処理後の状態を示している。 金属粒子のSEM像であり、(a)は熱プラズマ処理前の状態である。(b)~(d)は熱プラズマ処理後の状態であり、順に観察倍率が大きくなっている。 熱プラズマ処理後の金属粒子表面に対するオージェ電子分光の結果であり、(a)はナノ粒子を含まない領域、(b)はナノ粒子を含む領域を観察したものである。 熱プラズマ処理の効果を示す試験結果であり、(a)は嵩密度規格化剪断付着力(τ/ρ)、(b)は内部摩擦角(φ)、(c)は嵩密度(ρ)の評価結果を示している。
以下に、本発明の一実施形態にかかる金属粉末材料の製造方法について詳細に説明する。本発明の一実施形態にかかる金属粉末材料の製造方法は、積層造形法において、エネルギー線の照射によって三次元造形物を製造するための原料として用いることができる粉末材料を製造するものである。
[金属粉末材料の製造方法の概要]
本発明の一実施形態にかかる金属粉末材料の製造方法においては、金属よりなり、ミクロンオーダーの粒径を有する原料粒子を、熱プラズマ処理等によって、加熱する。この加熱により、もとの原料粒子よりも円形度の高くなった金属粒子を生成させる。同時に、その円形度の高くなった金属粒子の表面に付着させて、ナノ粒子を形成する。ナノ粒子は、金属粒子を構成する金属元素の少なくとも一部より構成される金属、または金属粒子を構成する金属元素の少なくとも一部を含む化合物である金属化合物よりなるものである。
このようにして製造される、円形度の高い金属粒子の表面にナノ粒子が付着したものよりなる金属粉末材料は、円形度が低く、表面にナノ粒子を有さない原料粒子そのものよりなる金属粉末材料と比較して、積層造形法によって三次元造形物を製造するのに適した特性を有するものとなる。そこで、本実施形態にかかる金属粉末材料の製造方法およびそれによって得られる金属粉末材料について詳細に説明する前に、積層造形用の粉末材料に求められる特性について説明する。
[積層造形用粉末材料に求められる特性]
発明者らは、積層造形法による三次元造形物の製造を安定に行い、また良質な三次元造形物を得るために、粉末材料において、どのような特性が重要となるかを明らかにした。
積層造形法のうち、SLM法やEBM法等の粉末積層溶融法においては、図1に示すように、ホッパー1を用いて粉末材料Pを供給し、基材2の上に敷き詰めることで、粉末床を形成する。得られた粉末床に、レーザービームや電子線等のエネルギー線を所定のパターンで照射して、粉末材料Pの溶融と再凝固を起こし、造形体Aを作製する。粉末材料Pの供給とエネルギー線の照射を交互に繰り返すことで、造形体Aを層状に積層し、三次元造形物を製造することができる。
図1(a),(b)に示すように、粉末材料Pを供給するホッパー1は、容器10の底部に筒状の粉末供給路11を有しており、容器10に充填した粉末材料Pを、重力によって、粉末供給路11から流出させ、粉末床形成のために供給する。この際、ホッパー1から安定して粉末材料Pを流出させることが、均一性の高い粉末床を安定して形成するうえで、重要である。
ホッパー1からの粉末材料Pの流出には、複数の過程が関与している。まず、流出の初期においては、図1(a)に示すように、斜線で表示した粉末供給路11の直上に位置する粉末材料Pが、粉末材料Pで満たされた容器10から、空の粉末供給路11に向かって落下する(運動M1)。この際、粉末材料Pが落下しやすいほど、初期の粉末材料Pの供給を安定に行うことができる。
粉末材料Pの落下しやすさの指標として、粉末材料Pの粒子間の剪断付着力(τ)を粉末材料Pの嵩密度(ρ)で除したもの(τ/ρ)を用いることができる。剪断付着力(τ)は、粒子の凝集体を剪断によって分散させるのに要する力であり、その値が大きいほど、粒子間に働く付着力が大きいことを示す。剪断付着力(τ)が大きいと、ホッパー1から落下しようとする粉末材料Pにおいて、粒子同士の間に凝集が生じ、粉末材料Pを構成する粒子がホッパー1から落下しにくくなる。剪断付着力(τ)を嵩密度(ρ)で除したもの(τ/ρ)は、自重によって粉体を排出できる最小の孔径である限界排出径に比例する量である。限界排出径が小さいほど、粉体が流出しやすいことになる。なお、剪断付着力(τ)および嵩密度(ρ)は、粉体圧の関数であるが、ここでは、漏斗形状を有するホッパー1からの排出を扱っているため、粉体圧をゼロとみなすことができる。以降、τ/ρを嵩密度規格化剪断付着力と称することにする。
このように、τ/ρの値は、粉末材料Pの落下しやすさの指標となり、その値が小さいほど、粉末材料Pが落下しやすいことを示す。なお、剪断付着力(τ)は、例えば、粉末材料Pに圧力(σ)を印加した際に発生する剪断応力(τ)を計測し、σを横軸に、τを縦軸にプロットした際の縦軸切片として求めればよい(τ=τ(σ=0))。嵩密度(ρ)は、例えば、公知の密度測定器を用いて、計測すればよい。例えば、τ/ρの値が、(m/s)を単位として、0.25以下、さらには、0.20以下、0.15以下であることが好ましい。
ホッパー1において、粉末供給路11の直上に位置する粉末材料Pが落下すると、図1(b)に示すように、落下した粉末材料Pが占めていた領域に空隙が生じる。すると、その空隙に向かって、周囲の粉末材料Pが崩れ、空隙を埋める(運動M2)。この際、周囲の粉末材料Pが崩れやすい方が、空隙の充填およびそれに続く粉末材料Pの落下が、安定に、また高い均一性をもって進行する。粉末材料Pの崩れやすさを示す指標として、内部摩擦角(φ)を用いることができる。
内部摩擦角(φ)は、粉末材料Pに圧力を印加した際にその圧力に交差する方向に生じる剪断応力の、印加圧力に対する比例係数を、摩擦角で表現したものであり、その値が小さいほど、粉末材料Pの集合体が崩れやすく、また広がりやすいことを示す。つまり、内部摩擦角(φ)が小さいほど、粉末材料Pが崩れてホッパー1内に生じた空隙を埋めやすいことになる。内部摩擦角(φ)は、例えば、上記剪断付着力(τ)を計測する際と同様に、粉末材料Pに圧力(σ)を印加した際に発生する剪断応力(τ)を計測し、σを横軸に、τを縦軸にプロットして、横軸に対する近似直線の角度として求めればよい(tanφ=τ/σ)。内部摩擦角(φ)は、例えば、22°以下、さらには18°以下であることが好ましい。なお、内部摩擦角(φ)は、安息角で代用することもできる。
そして、図1(a)に示す粉末供給路11の直上に位置する粉末材料Pの落下(運動M1)や、図1(b)に示す周囲の粉末材料Pの崩れ落ち(運動M2)によって粉末供給路11に粉末材料Pが供給されると、その粉末材料Pが粉末供給路11を通って、ホッパー1の外に流出する(運動M3)。この際の粉末材料Pの流速(FR)が大きいほど、粉末材料Pの流動性が高くなり、粉末材料Pを安定に流出させることができる。粉末材料Pの流速(FR)は、上記で説明した嵩密度規格化剪断付着力(τ/ρ)および内部摩擦角(φ)との間に強い相関を有する量であり、嵩密度規格化剪断付着力(τ/ρ)および内部摩擦角(φ)が小さいほど、流速(FR)が大きくなる傾向がある。
以上のように、粉末材料Pにおいて、嵩密度規格化剪断付着力(τ/ρ)が小さいほど、また内部摩擦角(φ)が小さいほど、粉末材料Pが流動性に優れたものとなり、ホッパー1から粉末床への粉末材料Pの供給を、安定して、また高い均一性をもって進行させることができる。その結果、粉末積層溶融法による積層造形において、粉末床の形成を、安定して行うことができる。
ホッパー1から基材2の上に供給された粉末材料Pは、リコーター(ブレード)3により、平滑化され、基材2の上、および既に形成されている下層の造形体Aの上に敷き詰められて、粉末床とされる。この際、ホッパー1から落下した粉末材料Pを押し広げるようにして、リコーター3を基材2の面に水平に掃引することで(運動M4)、粉末材料Pの分布を均一化する。ホッパー1から基材2の上、また造形体Aの上に供給された粉末材料を分散させやすくするため、また、その粉末材料Pをリコーター3によって押し広げやすくするためには、粉末材料Pの集合体が崩れやすいものである方がよい(運動M5)。上記で説明したように、内部摩擦角(φ)が小さい場合に、粉末材料Pが崩れやすくなり、均一性の高い粉末床を形成しやすくなる。
また、粉末材料Pが敷き詰められた粉末床において、粉末材料Pが高密度に充填されているほど、エネルギー線の照射を経て、均質な三次元造形物を形成しやすい。エネルギー線の照射によって粉末材料Pが溶融し、再凝固する際に、凝固収縮による変形やガスの残存による欠陥の生成を起こしにくくなるからである。粉末材料Pとして、大きな嵩密度(ρ)を有するものを用いるほど、粉末床において、粉末材料Pを高密度に充填することができる。嵩密度(ρ)は、2.5g/cm以上であることが好ましい。なお、本明細書では、嵩密度として、見かけ密度(AD)を想定しているが、代わりに、タップ密度(TD)を指標として用いてもよい。また、別の指標として、粉粒体層における嵩体積内の粒子の割合を示した充填率(%)を用いることもでき、その場合には、充填率が55%以上であることが好ましい。
以上のように、粉末材料Pとして、内部摩擦角(φ)が小さく、崩れやすいものを用いることで、ホッパー1から供給された粉末材料Pから、均一性の高い粉末床を形成することができる。また、粉末材料Pとして、大きな嵩密度(ρ)を有するものを用いることで、製造される三次元造形物の均質性を高めることができる。上記のように、ホッパー1から安定して均一性高く流出させることができる粉末材料Pを用いることの効果と併せて、粉末積層溶融法による積層造形において、積層造形全体の工程を、安定して円滑に進めることができる。また、良質な三次元造形物を得やすくなる。
LMD法をはじめとする粉末堆積法による積層造形においても、上記のように、流動性に優れた粉末材料Pを用いることで、ノズルに粉末材料Pを供給する工程を、安定に実行することができる。さらに、ノズルから造形を行う箇所に向かって、気流とともに粉末材料Pを噴射する工程においても、ノズルの閉塞を抑制し、造形を安定して進めることができる。
[金属粉末材料の特性を向上させるための手段]
次に、上記のように、金属粉末材料の特性を、積層造形に適したものとして向上させるための手段、つまり、金属粉末材料の流動性および嵩密度を高めるための手段について説明する。
(1)ナノ粒子の含有
金属粉末材料が、ミクロンオーダーの粒径を有する金属粒子に加えて、ナノ粒子を含有することで、金属粒子の相互間における引力を低減することができる。これにより、金属粒子間に働く剪断付着力(τ)を低減し、金属粉末材料の崩れやすさを高めることができる。その結果として、金属粉末材料の流動性を高めることができる。
ナノ粒子の含有によって金属粒子間の引力が低減されるのは、ナノ粒子が金属粒子間に介在されることで、金属粒子間に所定の距離が保たれることによる。図2(b)のように、ナノ粒子が含有されない場合には、金属粒子P1どうしが、相互間の斥力によって規定される限界まで、接近することができる。これに対し、図2(a)のように、金属粒子P1の間に、ナノ粒子P2が介在されることで、金属粒子P1は、介在されたナノ粒子P2の径によって規定される距離よりも、相互に接近することができない。ファンデルワールス力、静電引力等、金属粒子間に働く引力は、金属粒子間の距離が大きくなると、小さくなる。
特に、サブミクロンからミクロンオーダーの粒径を有する金属粒子において、粒子間の引力としては、ファンデルワールス力が支配的である。粒子間に働くファンデルワールス力は、粒子間の距離が離れるほど、小さくなる。つまり、ナノ粒子の介在により、金属粒子の距離が離れると、それに応じて、ファンデルワールス力による引力が減少することになる。
ナノ粒子は、上記金属粒子と別体として金属粉末材料中に混合されていても、金属粒子に付着していてもよい。しかし、特に、金属粒子に付着している場合には、ナノ粒子が金属粒子の表面に固定されていることで、金属粒子間の距離の確保によるファンデルワールス力低減の効果を、安定して、また高度に享受することができる。ここで、ナノ粒子が金属粒子に付着しているとは、ナノ粒子と金属粒子の間に働く引力が、少なくとも金属粒子相互間に働く引力よりも大きい状態を指し、好ましくは、積層造形におけるエネルギー線照射までの段階の金属粉末材料の取り扱いにおいて、ナノ粒子が金属粒子から分離されない程度に大きいとよい。さらに好ましくは、ナノ粒子が、金属粒子の表面に一体に接合されている状態、つまり、化学結合(原子間結合)によってナノ粒子が金属粒子に結合されている状態にあるとよい。
(2)金属粒子の円形度の向上
金属粉末材料を構成する金属粒子の形状も、金属粉末材料の流動性や充填性に大きな影響を与える。金属粒子が、対称性の高い、球体に近い形状を有する方が、その形状の効果により、金属粉末材料における内部摩擦角(φ)が小さくなる。すると、金属粉末材料の集合体の崩れやすさが向上し、金属粉末材料の流動性が高くなる。その結果、積層造形において、ホッパー等からの金属粉末材料の流出を安定に行えるとともに、金属粉末材料を粉末床として敷き詰めやすくなる。また、金属粒子が球体に近い形状を有する方が、その形状の効果により、金属粒子を密に充填することが可能となり、金属粉末材料の嵩密度(ρ)が大きくなる。その結果、密な粉末床を形成し、三次元造形物の品質の向上につなげることができる。
上記のような効果を十分に得る観点から、金属粒子の円形度は、平均粒径(d50)において、つまり、粒径が平均粒径に等しい金属粒子について、0.90以上であることが好ましい。その円形度は、0.95以上、さらには0.97以上であると、さらに好ましい。ここで、金属粒子の円形度は、金属粒子の立体形状を平面上に投影した二次元図形(投影図形)の、真円へ近接度を示す指標である。
金属粒子の円形度は、[投影図形と同じ面積を有する円の周長]/[投影図形の輪郭の総長]、として算出することができる。金属粒子が真球、つまり投影図形が真円の場合には、円形度が1となる。円形度の解析は、光学顕微鏡、電子顕微鏡(SEM)等の顕微鏡像に基づいて行えばよい。上記のような円形度は、粒径が平均粒径に等しいとみなすことができる金属粒子に対して、統計的に十分な数の金属粒子の平均値として求めることが好ましい。例えば、平均粒径を中心として、±5μmの範囲の粒径を有する金属粒子を、粒径が平均粒径に等しいとみなして、それらの金属粒子の円形度を解析し、その平均値を採用するとよい。金属粒子が、引力によって凝集している場合には、その凝集体(二次粒子)全体として、円形度を評価する。なお、光学顕微鏡やSEMでは、ナノ粒子の存在は、金属粒子の円形度の計測に実質的に影響を与えないので、ナノ粒子が金属粒子に付着している場合でも、そのままの状態で、円形度を評価すればよい。
金属粒子の円形度を上げることは、円形度の高さそのものの効果に加え、水の吸着量の低減を通しても、金属粉末材料の流動性の向上に寄与する。円形度が高いほど、金属粒子の比表面積が小さくなり、水が吸着可能な面積が相対的に小さくなるからである。すると、水を介した液架橋によって金属粒子の間に働く引力を低減することができ、金属粒子間の剪断付着力(τ)を低減できる。
[金属粉末材料の製造方法の詳細]
ここで、本発明の一実施形態にかかる金属粉末材料の製造方法の詳細について説明する。上記のように、本実施形態にかかる金属粉末材料の製造方法においては、原料粒子を加熱することで、金属粒子の円形度の向上と、ナノ粒子の形成とを同時に行い、金属粉末材料の流動性と嵩密度を高めることができる、
最初に、金属粉末材料の原料となる、原料粒子を準備する必要がある。原料粒子は、金属よりなり、ミクロンオーダーの粒径、つまり質量基準分布における篩下積算分率が10%となる粒子径d10で、10μm以上、100μm以下の粒径を有するものである。ここで、d10で10μm以上、100μm以下との粒径は、熱プラズマ処理等による加熱を経て生成する金属粒子の粒径が、原料粒子と同程度、あるいは凝集の解消を経てそれ以下になることから、積層造形の原料として一般的に採用される金属粒子の粒径に基づいて規定している。
原料粒子は、三次元造形物の構成材料となるものであり、三次元造形物に所望される成分組成を有する金属材料よりなっている。金属材料の種類は特に限定されるものではないが、好適な例として、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、鉄合金を例示することができる。これらの合金を原料とする三次元造形物を積層造形法によって製造する需要が大きいからである。特に、他の加工法では製造の難しい特殊な形状を有する部材の需要が大きいのが、チタン合金およびニッケル合金である。チタン合金としては、Ti-6Al-4V合金に代表されるTi-Al系合金等を例示することができる。ニッケル合金としては、インコネル(登録商標)等を例示することができる。また、鉄合金としては、種々の工具鋼を例示することができる。
原料粒子は、熱プラズマ処理等による加熱を経て得られる金属粒子とは異なり、実質的に、表面にナノ粒子を有さない。ナノ粒子を有するものであってもよいが、その場合にも、ナノ粒子の量は、加熱を経て得られる金属粒子に付着したナノ粒子の量に比べて、無視できる程度である。
原料粒子を製造する方法は、特に限定されないが、アトマイズ法を用いることが好ましい。アトマイズ法は、合金溶湯を微小な液滴とした状態で凝固させることで、金属微粒子を得るものである。合金溶湯を真空中に噴射し、噴射された合金溶湯に不活性ガスを吹き付けることによって、微小な液滴を生成するガスアトマイズ法や、高速回転するディスクに液滴を滴下して、遠心力によって微小な液滴を生成するディスクアトマイズ法を適用することができる。アトマイズ法においては、ミクロンオーダーの粒径を有する金属粒子を効率的に得ることができる。アトマイズ法は、種々の合金組成に対して適用することができる。また、ミクロンオーダーの粒径を有し、ある程度円形度の高い原料粒子を得やすいので、本実施形態にかかる製造方法において、原料粒子の製造に用いるのに適している。特に、ガスアトマイズ法は、金属粒子の製造効率や簡便性等の観点で好適である。
アトマイズ法等により、原料粒子を準備すると、次に、得られた金属粒子に対して加熱を行う。この際、加熱は、熱プラズマ処理によって行うことが好ましい。熱プラズマ処理の概略を、図3に示す。熱プラズマ処理装置5においては、プラズマ用ガスGに高周波誘導コイル51から高周波を印加することで、プラズマアークPLを発生させる。プラズマアークPLの出力を大きくすることで、熱プラズマを発生させることができ、その中を通過する物質を瞬時に高温まで加熱することができる。このプラズマアークPLの中に原料粒子Mを通過させる。原料粒子Mは、プラズマアークPLによって、瞬時に高温まで加熱され、凝集が解消されるとともに、金属粒子の表面において、溶融または昇華を起こす。そして、プラズマアークPLを抜けた位置で急冷を受け、金属粒子P1の表面にナノ粒子P2を有する金属粉末材料Pとなる。
アトマイズ法によって得られた原料粒子は、凝集を起こしている場合も多い。しかし、熱プラズマ処理等によって原料粒子を加熱することで、その凝集が解消される。これにより、得られる金属粉末材料は、原料粒子よりも円形度が向上したものとなる。
原料粒子がさらに加熱されると、原料粒子の少なくとも表面近傍の組織が、溶融または昇華する。溶融または昇華を起こすことで、原料粒子が当初有していた粒子形状および表面構造は、一旦解消される。その原料粒子が急冷されると、溶融または昇華した材料が再凝固するが、その際に、表面自由エネルギーの効果により、比表面積の低減と表面の平滑化が起こる。これにより、原料粒子よりも円形度の高められた金属粒子が生成する。例えば、加熱によって、金属粒子の円形度を、加熱前の原料粒子の1.1倍以上に向上させることができる。
さらに、原料粒子の表面近傍の組織が溶融または昇華し、原料粒子の表面で急冷凝固される際に、再凝固によって得られる金属粒子の表面に、その溶融または昇華した材料を原料として、ナノ粒子が生成される。ナノ粒子は、原料粒子に含有される金属元素から構成されたものとなり、また、金属粒子の表面に強固に付着したものとなる。
特に、原料粒子の成分組成の中に、Al,Mg,Cu,Sn等、他の成分金属元素よりも昇華しやすい金属元素が含まれる場合には、その昇華しやすい金属、またはもとの原料粒子の成分組成よりもその昇華しやすい金属の濃度が高くなった合金が、優先的に、原料粒子から昇華する。そして、円形度を高められた金属粒子の表面で再凝固する際に、他の成分金属との再凝固に関する挙動の差によって、金属粒子の表面にナノ粒子を形成しやすい。上で原料粒子を構成する金属種の例として列挙したチタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、鉄合金としては、Al等の昇華しやすい金属元素を含有するものが、多数公知である。
以上のように、原料粒子に対して熱プラズマ処理等によって加熱を行うことで、円形度の高い球形に近い形状と平滑な表面を有する金属粒子の表面に、金属ナノ粒子が付着した状態の金属粉末材料を得ることができる。
なお、アトマイズ法等による原料粒子の製造の後、および/または熱プラズマ処理等による加熱処理の後に、粒子群に対する分級を適宜行ってもよい。また、上記のようにして得られた金属粒子の表面にナノ粒子を有する金属粉末材料に、化学処理等を事後的に施しても、また、適宜、別の種類の粉末材料、例えばナノ粒子を有さない金属粉末等を混合して、積層造形に用いてもよい。
[製造される金属粉末材料]
上記のように、原料粒子の加熱を経て製造される金属粉末材料は、金属粒子と、その金属粒子の表面に付着したナノ粒子とを有している。
金属粒子は、原料粒子の一次粒径とほぼ同じ粒径を有し、原料粒子とほぼ同じ成分組成を有している。そして、原料粒子よりも円形度が高く、対称性の高い形状と平滑な表面を有している。金属粒子の粒径は、積層造形の原料としての好適性の観点から、d10で、10μm以上、さらには30μm以上であると好ましい。また、d10は、100μm以下であると好ましい。上でも述べたとおり、金属粒子の円形度は、平均粒径において、0.90以上であることが好ましい。円形度は、0.95以上、さらには0.97以上であるとさらに好ましい。
ナノ粒子は、ナノオーダーの粒径を有している。ナノ粒子の粒径は、特に限定されない。粒径が1nm以上である場合、また、100nm以下である場合を好適なものとして例示することができる。
上記のように、ナノ粒子は、原料粒子、および加熱後の金属粒子を構成する金属元素の少なくとも1つと同じ金属元素よりなる、金属または金属化合物である。ナノ粒子に含有される金属元素が、積層造形において三次元造形物の主たる構成材料となる金属粒子に含有される金属元素と同じであることで、得られる三次元造形物において、金属粒子を構成する以外の金属元素が含有されないことになる。よって、三次元造形物において不要な不純物が発生されにくい。
上記のように、原料粒子が、Al等、他の成分金属元素よりも昇華しやすい金属元素を含有する場合には、その昇華しやすい金属元素が、優先的に金属粒子中から放出されて、金属粒子の表面でナノ粒子を形成する。このようにして形成されるナノ粒子は、その昇華しやすい金属よりなるか、またはもとの原料粒子の成分組成よりもその昇華しやすい金属が濃化された合金よりなる。
金属よりなる原料粒子の加熱によって形成されたナノ粒子は、金属を主成分とするものとなりやすい。しかし、ナノ粒子は、金属化合物であってもよい。ナノ粒子が金属化合物である場合の例として、金属酸化物である形態を挙げることができる。熱プラズマ処理等の加熱を経ることで、ナノ粒子の少なくとも一部が酸化物となる場合も多い。
ナノ粒子の形状は特に限定されない。しかし、原料粒子の加熱によって、原料粒子の構成材料の溶融または昇華と再凝固を経て形成されるため、不規則形状をとりやすい。
ナノ粒子の生成量も特に限定されず、成分組成、粒径等に応じて、金属粒子間の付着力の低減に十分な効果を発揮できる量で、ナノ粒子を生成させればよい。例えば、金属粒子の表面積の10%以上を占めるように、ナノ粒子を生成させるとよい。ナノ粒子の粒径や生成量は、プラズマアークの出力等、熱プラズマ処理時の条件によって調整することができる。ナノ粒子を生成させるためには、溶融または昇華させる金属元素の沸点または昇華点以上(Alであれば、2467℃以上)のプラズマアーク中に、原料粒子を投入すればよいが、例えば、プラズマアークへの投入電力を大きくしてプラズマ温度をより高くすることで、効果的にナノ粒子の生成量を増加させることができる。
本実施形態にかかる製造方法において、原料粒子を熱プラズマ処理等によって加熱して、円形度の向上した金属粒子の表面にナノ粒子が付着した金属粉末材料とすることで、もとの原料粒子と比べて、金属粒子間の剪断付着力(τ)が減少し、内部摩擦角(φ)も小さくなる。また、嵩密度(ρ)が高くなる。それらの結果、金属粉末材料の落下しやすさと崩れやすさが向上することで、流動性が向上する。また、金属粉末材料の充填性も向上する。このように、流動性と充填性に優れた金属粉末材料を積層造形法に用いることで、粉末床を形成する際の金属粉末材料の供給および敷き詰めを、均一性高く、また安定して行うことができる。粉末床の充填密度が高められることで、得られる三次元造形物の均質性も向上される。例えば、原料粒子の熱プラズマ処理によって、嵩密度規格化剪断付着力(τ/ρ)を当初の50%以下に低減することができる。また、内部摩擦角(φ)をtanφで当初の80%以下に低減することができる。一方、嵩密度(ρ)を1.1倍以上に上昇させることができる。
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明する。ここでは、原料粒子に熱プラズマ処理による加熱を施すことによって得られる金属粉末材料の状態および特性に関する試験を行った。
(試料の作製)
Ti-6Al-4V合金(6質量%のAlと4質量%のVを含有し、残部がTiと不可避的不純物よりなる合金;Ti-64)よりなる金属粒子を、ガスアトマイズ法にて作成した。そして、45/75μmにて分級を行い、試料#1を準備した。
また、同様にガスアトマイズ法にて作成した金属粒子を、熱プラズマ処理した。そして、45/75μmにて分級を行い、試料#2を準備した。
(金属粒子の状態と特性の評価)
まず、試料#1および試料#2のそれぞれについて、粒子画像分析装置を用いて、粒子形状の評価を行った。そして、粒子形状に基づいて、粒度分布を評価するとともに、粒径10μmごとに、円形度を計測した。
また、試料#1および試料#2に対して、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察を行った。さらに、SEMを用いたオージェ電子分光(AES)によって、元素濃度の深さ分布を分析した。
そして、試料#1および試料#2のそれぞれについて、嵩密度規格化剪断付着力(τ/ρ)、内部摩擦角(φ)、嵩密度(ρ)の評価を行った。剪断付着力(τ)および内部摩擦角(φ)の測定は、JIS Z 8835に準拠し、回転セル型の剪断試験装置を用いて、粉末材料に圧力(σ)を印加した際に発生する剪断応力(τ)を計測することで行った。σを横軸に、τを縦軸にプロットし、剪断付着力(τ)を縦軸切片として求めるとともに、近似直線の傾きをtanφとして、内部摩擦角(φ)を求めた。また、嵩密度(ρ)は、JIS Z 2504に準拠し、金属粉末用嵩比重測定器を用いて、計測した。各計測は、気温23℃、相対湿度RH26%の条件で行った。
(評価結果)
<金属粒子の状態>
図4に、試料#1(プラズマ処理前)および試料#2(プラズマ処理後)について、粒度分布を示す(実線および破線にて表示)。これによると、試料#1と試料#2は、中央値や幅において、類似した粒度分布を有している。また、下の表1に、粒度分布にかかるパラメータを示す。これらの各パラメータも、試料#1と試料#2で近い値となっている。つまり、試料#1,#2とも、分級によって所望の粒度分布を得られており、以降の評価において、試料#1と試料#2の間に見られる状態や特性の差は、粒度分布の差によるものではないということが確認される。
Figure 0007039997000001
図5に、試料#1の平均粒径に対応する粒径70±5μmの場合について、得られた粒子画像の例を示す。(a)が試料#1、(b)が試料#2の観察結果を示している。それらの像を見ると、試料#1では、ほとんどの粒子が、円形から逸脱したいびつな形状を有しているのに対し、試料#2では、いずれの粒子も、かなり円形に近い形状を有している。
さらに、図5のそれらの粒子画像に基づいて、金属粒子の円形度を算出し、平均をとると、試料#1については、0.89となった。これに対し、試料#2については0.99と、ほぼ1となる数値が得られた。
図5の粒子画像をもとに粒径70μmに対応する円形度を評価したのと同様に、他の粒径についても、粒径10μmごとに、円形度を評価した。その評価結果を、粒度分布と併せて図4に示す(プロット点と直線にて表示)。図4によると、全粒径において、試料#2の円形度が、試料#1よりも高くなっている。その傾向は、小径側で特に顕著である。
以上の評価結果より、分級のみを行った試料#1よりも、熱プラズマ処理を経た試料#2において、顕著に高い円形度が得られており、球形に近い金属粒子が得られていることが分かる。つまり、熱プラズマ処理によって、金属粒子の円形度を上げ、球形に近い金属粒子とすることができる。
さらに、図6に、金属粒子のSEM観察の結果を示す。図6(a)では、試料#1の粒子を示している。直径が数10μmの大径の粒子の表面に、10μm以下程度の径を有する小径の粒子が多数密着しているのが分かる。また、大径の粒子自体の形状がいびつなものも見られる。これら大径の粒子と小径の粒子の集合体が、図5(a)のように、円形度の低いいびつな粒子画像に対応している。
これに対し、同倍率で試料#2の粒子を観察した図6(b)においては、直径が数10μmの粒子の表面に、それよりも小さい粒子が付着しているような状態はほぼ見られない。また、各粒子自体が球体に近い形で観察されており、いびつな形を有する粒子は、ほぼ見られない。
図6(c)に、試料#2の粒子の高倍率像を示す。これによると、粒子が、ほぼ球体とみなせる形状を有しているのが確認できる。また、粒子が、平滑性の高い表面を有している。
図6(d)に、図6(c)の粒子の表面をさらに高倍率で観察した像を示す。ここでは、暗く観察されている背景状の部位が、略球形の金属粒子の平滑な表面に対応する。そして、その暗い部位の中に、複数の明るい領域が、ナノオーダーのサイズで粒状に観察されている。これらの領域は、金属粒子の表面に付着したナノ粒子に対応している。
さらに、図7に、試料#2の粒子の表面の微小領域に対してAESを測定した結果を示す。図6(d)で観察された金属粒子の表面において、明るく観察されたナノ粒子を含まない領域に対応する測定結果が、図7(a)である。一方、ナノ粒子を含んだ領域に対応する測定結果が、図7(b)である。
図7(a)と図7(b)で元素濃度の分布を比較すると、いずれにおいても、Ti,V,Al,O,Cが分布している。しかし、図7(b)のナノ粒子を含む領域において、図7(a)のナノ粒子を含まない領域よりも、Alの濃度が高くなっている。また、Oの濃度も高くなっている。特に、深さの浅い領域で、それらの傾向が顕著である。この結果から、金属粒子の表面に付着して形成されたナノ粒子において、金属粒子の内部に比べ、Alが濃化するとともに、酸化が進行していることが分かる。
以上のSEMおよびAESの結果より、試料#2において、熱プラズマ処理を経ることで、金属粒子の円形度が上がるとともに、金属粒子の表面に、ナノ粒子が付着して生成していることが分かる。そして、そのナノ粒子は、金属粒子と同じ成分元素を含有するが、金属粒子よりもAlが濃化されたものとなっている。これらの結果は、熱プラズマ処理によって金属粒子が加熱を受けると、表面が一旦溶融または昇華して再凝固することで、金属粒子の円形度が上がるとともに、その過程で金属粒子の表面にナノ粒子が形成されることを示している。ナノ粒子形成の過程においては、金属粒子に含まれる金属元素のうち、特に昇華しやすいAlが、優先的に金属粒子の表面から放出され、ナノ粒子に濃化されている。
<金属粉末材料の特性>
図8(a)に、嵩密度規格化剪断付着力(τ/ρ)の測定結果を示す。図中、τ/ρの単位は、(m/s)である。図8(a)によると、熱プラズマ処理を経た試料#2において、τ/ρの値が、分級のみを経た試料#1と比べて、50%以下にまで小さくなっている。
また、図8(b)に、内部摩擦角(φ)の測定結果を示す。これによると、熱プラズマ処理を経た試料#2において、内部摩擦角(φ)が、分級のみを経た試料#1と比べて、tanφで80%以下となっている。
さらに、図8(c)に、嵩密度(ρ)の測定結果を示す。これによると、熱プラズマ処理を経た試料#2において、嵩密度(ρ)が、分級のみを経た試料#1と比べて、1.1倍に大きくなっている。
以上のように、金属粒子に熱プラズマ処理を施すことで、金属粉末材料の嵩密度規格化剪断付着力(τ/ρ)および内部摩擦角(φ)が減少するとともに、嵩密度(ρ)が増大している。これらはいずれも、金属粒子の円形度の向上と、金属粒子表面へのナノ粒子の生成の効果によるものである。特に、嵩密度規格化剪断付着力(τ/ρ)の減少は、ナノ粒子の生成によるファンデルワールス力低減の影響を大きく受けていると考えられる。
以上、本発明の実施形態および実施例について説明した。本発明は、これらの実施形態および実施例に特に限定されることなく、種々の改変を行うことが可能である。
1 ホッパー
10 容器
11 粉末供給路
2 基材
3 リコーター
5 熱プラズマ処理装置
A 造形体
P 粉末材料
P1 金属粒子
P2 ナノ粒子

Claims (7)

  1. 合金よりなり、質量基準分布における篩下積算分率が10%となる粒子径d10が10μm以上、100μm以下である原料粒子を加熱することで、前記原料粒子よりも円形度が高くなった金属粒子の表面に、金属または金属化合物のナノ粒子が付着した金属粉末材料を製造し、
    前記ナノ粒子は、
    前記金属粒子を構成する金属元素の少なくとも一部より構成され、
    前記金属粒子を構成する金属元素のうち、他の成分金属元素よりも昇華しやすい金属元素が、前記金属粒子中よりも濃化され、
    少なくとも一部が酸化されており、
    前記金属粒子の内部に比べて酸化が進行したものとなり、
    製造される前記金属粉末材料において、剪断付着力を嵩密度で除した嵩密度規格化剪断付着力が、0.20(m/s) 以下となることを特徴とする金属粉末材料の製造方法。
  2. 前記原料粒子の加熱を、熱プラズマ処理によって行うことを特徴とする請求項1に記載の金属粉末材料の製造方法。
  3. 前記原料粒子を、アトマイズ法によって製造することを特徴とする請求項1または2に記載の金属粉末材料の製造方法。
  4. 前記ナノ粒子および前記金属粒子に、アルミニウムが含まれることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の金属粉末材料の製造方法。
  5. 前記原料粒子は、チタン合金、ニッケル合金、コバルト合金、鉄合金のいずれかよりなることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の金属粉末材料の製造方法。
  6. 前記金属粒子の円形度は、平均粒径において、0.90以上であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の金属粉末材料の製造方法。
  7. 製造される前記金属粉末材料において、内部摩擦角が18°以下となることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の金属粉末材料の製造方法。
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