JP2022140260A - 燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
Description
例えば特許文献1では、燃料電池スタックの交流インピーダンスを精度よく計測する燃料電池システムが開示されている。
コンバータの小型化をねらいとして、同一コア上で複数のコイルを磁気結合させた磁気結合リアクトルを備えた磁気結合コンバータの導入が選択肢として考えられる。磁気結合コンバータでは、リアクトルのコアの磁気飽和を緩和し出力電流リプルを低減するため、磁気結合されたコイルどうしを、同じデューティ比で位相差が等間隔になるよう交互にスイッチングすることが一般的である。磁気結合リアクトルは、燃料電池の低出力時にはコイルを流れる電流がゼロになる時間を含む不連続モードでの動作となる。
本研究者らは、電流が断続する不連続モードでの動作時に、磁気結合リアクトル特有の現象である相互インダクタンスによる他のコイルからの負電流で疑似的なスイッチオン状態となり、スイッチのオフからオンへの制御がスムーズに切り替わらず、デューティ比を変化させても燃料電池の出力電流値が変化しない状態となる、「不感帯」が存在することを新たに発見した。不感帯においては、デューティ比を変化させて交流インピーダンス測定のための交流信号を印加しようとしても、上記のように燃料電池の出力電流値がほとんど変化しないため、適切に燃料電池の交流インピーダンスを計測することができない。これは上記特許文献1の応答性能低下領域に相当するものであるが、交流インピーダンスを計測しない時間帯又は交流インピーダンスを計測できない時間帯が頻繁に生じることで、燃料電池の運転状態を最適に制御できない虞がある。
前記燃料電池システムは、燃料電池と、当該燃料電池の出力電圧の昇圧及び降圧からなる群より選ばれる少なくとも一種を行うコンバータと、を備え、
前記コンバータは、n(nは2以上の整数)相のコイルが互いに磁気結合されているリアクトルと、前記コイルそれぞれに接続されるn相のスイッチと、制御部と、を備え、
前記制御部は、n相の前記スイッチのON・OFF制御を行い、
前記制御部は、前記コイルの電流値をモニタリングし、
前記制御部は、前記燃料電池の電流波形及び電圧波形から前記燃料電池の交流インピーダンスを測定し、
前記制御部は、n相の前記スイッチをそれぞれ異なる位相で動作させ、且つ、n相の前記スイッチをそれぞれ同じデューティ比で動作させ、
前記制御部は、下記条件1を満たすと判定したときに、n相の前記スイッチをそれぞれ同じ位相で動作させることを特徴とする。
条件1:n相の前記スイッチをそれぞれ異なる位相で動作させたときに、前記コイルを流れる電流が不連続モードであり且つ1相の前記コイルに流れる電流値がゼロに維持されている時に他の少なくとも1相のコイルに接続された前記スイッチがONからOFFに切り替わる運転条件である。
前記制御部は、現在の前記コンバータの運転条件を当該データ群に照らして、前記条件1を満たすか否かを判定してもよい。
前記制御部は、前記燃料電池の交流インピーダンス測定要求が有ることを確認した場合に、n相の前記スイッチをそれぞれ同じ位相で動作させ、前記燃料電池の交流インピーダンスを測定してもよい。
前記リアクトルのコイルを流れる平均電流値が所定の閾値以上であると判定した場合にn相の前記スイッチをそれぞれ異なる位相で動作させてもよい。
式(A):D<{(1/2)(L-M)(VH-VL)}/(LVL+MVL-MVH)
式(B):D<(1/2){1-(VL/VH)}
[式(A)及び式(B)中、Lは前記リアクトルの自己インダクタンス、Mは前記リアクトルの相互インダクタンス、VHは前記コンバータの出口電圧、VLは前記コンバータの入口電圧、Dはデューティ比(-)である。]
前記燃料電池システムは、燃料電池と、当該燃料電池の出力電圧の昇圧及び降圧からなる群より選ばれる少なくとも一種を行うコンバータと、を備え、
前記コンバータは、n(nは2以上の整数)相のコイルが互いに磁気結合されているリアクトルと、前記コイルそれぞれに接続されるn相のスイッチと、制御部と、を備え、
前記制御部は、n相の前記スイッチのON・OFF制御を行い、
前記制御部は、前記コイルの電流値をモニタリングし、
前記制御部は、前記燃料電池の電流波形及び電圧波形から前記燃料電池の交流インピーダンスを測定し、
前記制御部は、n相の前記スイッチをそれぞれ異なる位相で動作させ、且つ、n相の前記スイッチをそれぞれ同じデューティ比で動作させ、
前記制御部は、下記条件1を満たすと判定したときに、n相の前記スイッチをそれぞれ同じ位相で動作させることを特徴とする。
条件1:n相の前記スイッチをそれぞれ異なる位相で動作させたときに、前記コイルを流れる電流が不連続モードであり且つ1相の前記コイルに流れる電流値がゼロに維持されている時に他の少なくとも1相のコイルに接続された前記スイッチがONからOFFに切り替わる運転条件である。
図1に示す燃料電池システムは、例えば車両に搭載され、外部負荷50として車両の駆動用モータがインバータを介して接続されている。また、図示していないが、燃料電池10及び昇圧コンバータ20と並列して、バッテリーを備えていても良い。燃料電池10の出力電力は、昇圧コンバータ20により昇圧された後、さらにインバータにより直流から交流に変換され、モータに供給される。
昇圧コンバータ20は、互いに並列に接続された6相の昇圧回路を備える。図1では、昇圧回路を6相備える構成を示しているが、相数は特に限定されない。
昇圧回路は、リアクトル21、電流センサ22、スイッチ23、ダイオード24、コンデンサ25を備える。昇圧回路は、入力電圧センサ、出力電圧センサを備えていてもよい。
6相の昇圧回路のうち、2相ずつが1つのリアクトル21のコアを共用し互いに磁気結合することができる。各昇圧回路において、スイッチ23がONされるとリアクトル21を流れる電流は増加し、スイッチ23がOFFされるとリアクトル21を流れる電流は減少し、電流がゼロに到達した場合にはゼロが維持される。電流センサ22は、リアクトル21を流れる電流値を取得する。
図示していない制御部が、スイッチ23をON/OFF制御することにより、コンバータ20での昇圧比、及び燃料電池10からの出力電流値を制御する。
燃料電池10の出力電力は、車両の要求(速度、加速度、積載量、及び、道路の勾配等)によって大きく変化し、それに応じて出力電流も大きく変化する。燃料電池10の出力電流が大きい場合、その電流を1つの昇圧回路に流すと、発熱が増大して昇圧コンバータ20の電力変換効率が低下する。また、大電流に耐えうる昇圧回路に小さい電流しか流さない場合にも、エネルギ損失が増大し、昇圧コンバータ20の電力変換効率が低下する。そこで、昇圧コンバータ20は複数相の昇圧回路(図1に示す例では6相)を備え、昇圧コンバータ20は、燃料電池10の出力電流値に応じて駆動する相数を切り替える。例えば、燃料電池10の出力電流値が0~150Aの時は2相で駆動し、150~300Aの時は4相で駆動し、300~600Aの時は6相で駆動する。昇圧回路は、流れる電流によって効率が異なり、駆動相数を変えることで、各電流域でそれぞれ最適な効率で運転することができる。
コンバータは、DC/DCコンバータであってもよい。
コンバータは、n(nは2以上の整数)相のコイルが互いに磁気結合されているリアクトルと、コイルそれぞれに接続されるn相のスイッチと、制御部と、を備える。コンバータは、ダイオード、電流センサ、電圧センサ、フォトカプラ、及び、コンデンサ等を備えていてもよい。
コアには、n(nは2以上の整数)相のコイルが巻回されていてもよい。nは2以上であればよく、上限は特に限定されず、10以下であってもよく、5以下であってもよく、4以下であってもよく、3以下であってもよい。
リアクトルが有するコア及びコイルは、従来公知のコンバータに用いられているコア及びコイルを採用してもよい。
本開示においては、1つの独立したコイルが巻回されたコアを有するリアクトルを非磁気結合リアクトルと称する。本開示においては、非磁気結合リアクトルを備えるコンバータを非磁気結合コンバータと称する。本開示においては、2以上の独立したコイルが巻回されたコアを有するリアクトルを磁気結合リアクトルと称する。本開示においては、磁気結合リアクトルを備えるコンバータを磁気結合コンバータと称する。
本開示において独立したコイルとは、1つ以上の渦巻部と、2つの端子部を備えるコイルを意味する。
ダイオードは、従来公知のコンバータに用いられているダイオードを採用してもよい。
制御部は、スイッチへのON指令とOFF指令とを周期的に切り替えることにより、スイッチのON・OFF制御を行い、n相のスイッチのデューティ比を制御してもよい。これにより燃料電池からの出力電流値を制御してもよい。
昇圧コンバータでは、リアクトルに対する電気的なエネルギの蓄積と放出とをおこなうスイッチングの動作を繰り返して昇圧する。デューティ比は、その昇圧動作のスイッチング周期中において、スイッチング素子が開いてリアクトルに電気的なエネルギが蓄積される蓄積期間が占める割合を定める。昇圧コンバータにおける昇圧動作のスイッチング周期をTとし、スイッチング素子がターンオンする期間をTON、ターンオフする期間をTOFFとするとき、デューティ比Dは、D(-)=TON/Tとして表される。便宜のため、デューティ比は百分率(%)で示す場合がある。この場合、D(%)=TON/T×100である。
本開示において、スイッチングの周期(スイッチング周期)とは、スイッチがオフからオンに切り替わった時点から、再度スイッチがオフからオンに切り替わる時点までの期間を意味する。
制御部は、n相の前記スイッチをそれぞれ異なる位相で動作させる時は、n相のスイッチを、それぞれ(360/n)°の位相差で動作させてもよい。
制御部は、スイッチが2相の場合、且つ、2相のスイッチをそれぞれ異なる位相で動作させる場合、2相のスイッチを、それぞれ30~180°の位相差で動作させてもよく、電力変換効率向上の観点から、180°の位相差すなわち逆位相で動作させてもよい。逆位相での動作の場合は、-5°~+5°の範囲で位相誤差が生じてもよい。
3相以上の磁気結合リアクトルの場合に1相の前記コイルに流れる電流値がゼロであり且つ他のコイルに接続されたスイッチがONからOFFに切り替わる運転条件とは、残りの相の内の少なくともいずれか一相のスイッチがONからOFFに切り替わる運転条件であってもよい。
n相の前記スイッチをそれぞれ異なる位相で動作させる場合に、互いに磁気結合されたn相をそれぞれ(360°/n)の位相差で駆動したときには、条件1は、不連続モードかつデューティ比が(100-100/n)%未満になるときであってもよい。
制御部は、条件1に相当するコンバータの運転条件を予めデータ群として記憶し、現在のコンバータの運転条件を当該データ群に照らして、前記条件1を満たすか否かを判定してもよい。これにより不感帯に突入することを回避することができ、燃料電池の交流インピーダンス測定の精度が向上する。
前記リアクトルのコイルに流れる平均電流値が所定の閾値以上であると判定した場合にn相のスイッチをそれぞれ異なる位相で動作させてもよい。
互いに磁気結合されたn相のスイッチを同位相で動作させているときに、燃料電池の出力電流が増大すると、連続モードに移行する。この直後に位相を同位相から異なる位相に切り替えると条件1の範囲に入ってしまう。また、同位相で連続モードまで駆動すると減圧変換効率が悪い。そのため、燃料電池の出力電流が増大し、リアクトルのコイルに流れる平均電流値が所定の閾値以上であると判定した場合にスイッチをそれぞれ異なる位相で動作させてもよい。これにより、不感帯の発生を抑制し且つ電圧変換効率を向上させることができる。
リアクトルのコイルに流れる平均電流値の所定の閾値は、例えば、3~15Aであってもよい。
「不感帯」とは、コンバータのPWMデューティ比を増減させても、リアクトルのコイルに流れる平均電流値がほとんど変化しない領域を指す。磁気結合の相互インダクタンスによる負電流が原因で、2相磁気結合の単方向昇圧(降圧)回路ではデューティ比が50%以下の不連続モード領域の一部に現れる。
図2は、入力電圧Vfcが200V、出力電圧Vhが350Vで昇圧比を一定とし、互いに磁気結合された2相のコイルを駆動させて、デューティ比を徐々に増加させたときの、リアクトルの各コイルに流れる平均電流値(単相平均電流値)の電流変化を表した図である。図2において、コイルの自己インダクタンスは96.4μHであり、コイルの相互インダクタンスは62.7μHであり、スイッチの駆動周波数は20kHzとした。
リアクトルのコイルに流れる平均電流値を算出する状態方程式(後述)によれば、図2の破線で示したように、デューティ比が増加するにつれてリアクトルのコイルに流れる平均電流値も単調増加するはずだが、実際には実線で示したように、階段状に電流が増加する特性を示し、点線で囲まれた部分に、デューティ比を増加させてもリアクトルのコイルに流れる平均電流値が増加しない「不感帯」が存在する。リアクトルのコイルに流れる平均電流値が上記不感帯にある場合、デューティ比を変化させても、リアクトルのコイルに流れる平均電流値すなわち燃料電池の出力電流値が変化せず、適切に燃料電池の交流インピーダンスを測定することができない。
時刻t0からt1までの間、V相のスイッチはONであり、徐々にL2電流が増大する。一方、U相のスイッチはOFFであり、L1電流は0に維持されている。時刻t1において、V相のスイッチがONからOFFに切り替わったことにより、V相のL2電流が減少に転じる。ここで、U相のスイッチはOFFに維持されたままであるが、時刻t1以降、V相の相互作用によりU相に流れるL1電流は、減少と増加が交互に現れる。
ここで、例えば時刻t2のように、U相のL1電流が増加しているときにU相のスイッチをONしても、既に電流が増加しているため、スイッチONの信号は認識されない。その後、時刻t3のようにU相のL1電流が減少するタイミングになって初めてU相のスイッチONが認識され、その後U相のスイッチがOFFされるまでL1電流が増加する。スイッチONの信号が認識されないタイミングと認識されるタイミングが交互に現れるため、図2のように、不感帯が繰り返し現れることになる。
なお、前述したように、磁気結合されている一方の相のコイルの電流値が0であるときに、他方の相のスイッチがONからOFFに切り替わると、一方の相のコイルに電流の増減が生じ、その結果不感帯が現れる。
したがって、条件1の通り、n相の前記スイッチをそれぞれ異なる位相で駆動したときに、前記コイルを流れる電流が不連続モードであり且つ磁気結合されている一方の相のコイルの電流値が0に維持されているときに、他方の相のスイッチがONからOFFに切り替わるような運転条件の時に、不感帯が発生すると言える。
2相磁気結合の場合、2相を駆動する位相差は180°であってもよい。2相を駆動する位相差が180°である場合、不連続モードであってデューティ比が50%未満であれば、磁気結合されている一方の相のコイルの平均電流値が0に維持されているときに、他方の相のスイッチがONからOFFに切り替わるような運転条件の時に、不感帯が発生することになる。
したがって、条件1として、n相のスイッチをそれぞれ異なる位相で動作させ、且つ、n相のスイッチをそれぞれ同じデューティ比で動作させたときに電流波形がサイン波を重畳していない場合に、不感帯に突入していると判定することができる。すなわち、n相のスイッチをそれぞれ異なる位相で動作させ、且つ、n相のスイッチをそれぞれ同じデューティ比で動作させたときに電流波形がサイン波を重畳しているか否かを判定することで不感帯に突入しているか否かを判定することができる。
図4を考慮して、制御部は、コイルの電流値の振幅が通常の振幅となるようにn相のスイッチのデューティ比を増減させたときに、測定される前記コイルの電流値の振幅が期待値よりも小さい時に条件1を満たすと判定してもよい。コイルの電流値の振幅が期待値よりも小さい時は、サイン波を重畳していない状態に相当し、不感帯に突入していると判定することができる。
式(1)は電流Iベクトルの状態方程式である。この状態方程式を解くことにより、図2中において破線で示した電流曲線を得ることができる。式(1)における電圧Vベクトルは、表1のように表される。表1は、式(1)における電圧Vベクトルと不感帯発生条件(斜線部分)を示す。
図5及び式(1)のMで表される磁気結合の相互インダクタンスによる負電流が原因で、2相磁気結合の単方向昇圧(降圧)回路では表1の斜線部分に示すように、両相のスイッチがオフの状態、つまり180°位相差駆動でデューティ比が50%未満の不連続モード領域の一部に不感帯が現れる。メカニズムは式(1)を表1の条件で時間に沿って解くことで得られるように、両相のスイッチがオフの状態で片方のコイルに流れる電流が0Aかつ、もう一方のコイルに流れる電流が正である場合に、0A側のコイルに相互インダクタンスによる起電圧が発生し負電流を生じる。その後、負電流が増加することでコイルの起電力がなくなり、じきに減少に転じるが、0Aに戻るまでの期間は表1の斜線部分のようにスイッチが疑似的なON状態となるため、負電流側スイッチがONでもOFFでも電流波形に影響を与えることができず制御不感帯となる。
なお、例えば、U相とV相とW相の3相磁気結合昇圧回路の場合の不感帯発生条件は、3相すべてのスイッチがOFFで、IU>0、IV≦0、IW≦0の場合や、IU>0、IV>0、IW≦0の場合等が想定される。
図7は、U相とV相の2相磁気結合昇降圧回路の一例を示す図である。
昇圧回路だけでなく、降圧回路や昇降圧回路においても昇圧回路と同様に電流制御不感帯の問題があり、不感帯発生時に同位相駆動することにより、不感帯の発生を回避又は抑制することができる。なお、不連続モードを持たない双方向回路については不感帯は存在しないと考えられる。
図8は、昇圧コンバータのリアクトルのコイルに流れる電流が連続モードの場合の電流波形の一例を示す図である。
図9は、昇圧コンバータのリアクトルのコイルに流れる電流が不連続モードの場合の電流波形の一例を示す図である。
図8に示すように、昇圧コンバータのリアクトルのコイルに流れる電流(リアクトル電流)はスイッチング動作に伴って三角波となり、三角波の中央値がリアクトル平均電流(以下、平均電流と記載する)である。ここで、デューティ(Duty)を減らして平均電流を下げていくと、三角波の最下点が0Aに達する。ここからさらに平均電流を下げると、昇圧コンバータは片方向の回路であるため、図9に示すように、リアクトル電流がゼロとなる期間が発生し始める。このようにコンバータのデューティ比の制御のスイッチング周期中にリアクトルのコイルに流れる電流がゼロとなる期間を有する動作を、不連続モードと呼び、デューティ比の制御のスイッチング周期中にリアクトルのコイルに流れる電流がゼロとなる期間を有さない動作を、連続モードと呼ぶ。
図11は、デューティ比と電流、電圧のタイムチャートの一例を示す図である。
図11に示すように、不感帯においては、デューティ比を一定の振幅で増減させても、FC出力電流値及びFC出力電圧値はほとんど変化しない。例えば、不感帯においては、通常よりもデューティ比の振幅を大きくすることにより、電流を増減させることができるが、製品のばらつき等により図10の特性がずれている場合には、電流の振幅が過度に大きくなり、制御性が悪くなる恐れがある。
例えば、FC電圧値が200V、コンバータ出力電圧が350V、FC電流値が20Aの場合を考える。単相で駆動すると外部への電流リプルが大きくなるため、2相180度位相インターリーブ駆動を行うと、例えば図10のように10Aの不感帯につかまり、電流制御精度が低下する可能性がある。
図13は、U相とV相の2相磁気結合リアクトルを備えるコンバータの180°位相差駆動時のリアクトル電流波形の一例を示す図である。
図14は、U相とV相の2相磁気結合リアクトルを備えるコンバータの同位相駆動と180°位相差駆動を交互に行った時のリアクトル電流波形の一例を示す図である。
ここで、図13のロジックで同位相駆動領域を設けると、両相の電流が一致し、不感帯が発生する条件である「両方OFFの時に、片方だけゼロ電流になる領域」を回避でき、不感帯の影響を改善できる。不感帯が存在しないため、インピーダンスを計測するために、FC出力電流にサイン波を乗せても、安定してコンバータを制御することができる。
同位相の駆動波形は図12のようになり、図13の180°位相差駆動の場合に見られたUV相オフで片相に電流が残っている状態で生じる逆電流による電流振動が無くなる。
制御部は、燃料電池の電流波形及び電圧波形から燃料電池の交流インピーダンスを測定する。
制御部は、燃料電池の交流インピーダンス測定要求の有無を確認し、燃料電池の交流インピーダンス測定要求が有ることを確認した場合に、条件1を満たすか否か判定し、条件1を満たすと判定したときに、n相のスイッチをそれぞれ同じ位相で動作させ、燃料電池の交流インピーダンスを測定してもよい。
制御部は、条件1を満たすと判定したときに、燃料電池の交流インピーダンス測定要求の有無を確認し、燃料電池の交流インピーダンス測定要求が有ることを確認した場合に、n相のスイッチをそれぞれ同じ位相で動作させ、燃料電池の交流インピーダンスを測定してもよい。
制御部は、燃料電池の電解質膜の状態やガス供給の状態を把握するため、燃料電池の運転中に所定の頻度で、燃料電池の交流インピーダンス測定を実施する。
制御部は、コンバータのPWMデューティ比を周期的に増減させながらスイッチングし、ある周波数成分を含んだ負荷電流をかけたときの、燃料電池の出力電圧及び出力電流値を一波長以上時系列波形データとして取得し、その波形データを離散フーリエ変換し、電圧信号の離散フーリエ変換結果を電流信号の離散フーリエ変換結果で除算することにより燃料電池の交流インピーダンスを算出する。
不連続モードと呼ばれる低負荷領域では、デューティ比を増大させると、リアクトルのコイルを流れる平均電流値も増大する。
上記燃料電池の交流インピーダンスを取得するため、例えば、出力電流値の振幅が±3A程度のサイン波になるよう、デューティ比を制御しても良い。
なお、燃料電池の出力電圧値は、燃料電池スタック全体の電圧を取得しても良いし、各単セルの電圧を取得しても良い。燃料電池スタック全体の電圧値を用いれば、燃料電池スタック全体の交流インピーダンスを取得でき、単セル毎の電圧値を用いれば、単セル毎の交流インピーダンスを取得できる。
また、複数の単セル毎(例えば、2単セル毎、4単セル毎など)に電圧を取得すると任意の単セルブロック毎の交流インピーダンスを取得できる。
単セル面積が数百cm2程度の場合、発電中に取得する交流インピーダンスの200Hz以上の成分は主に電解質膜のプロトン移動抵抗や接触抵抗を表し、数10Hzの成分は、ガス拡散抵抗を表す。
なお、本開示における燃料電池の交流インピーダンスの測定方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができ、例えば特開2008-098134に記載の方法と同様の方法であってもよい。
図15に示すように、制御部は、n相のスイッチをそれぞれ異なる位相且つ同じデューティ比で動作させる。その後、制御部は、条件1を満たしているか否か判定する。制御部は、条件1を満たす場合は、n相のスイッチの動作を、それぞれ同一のデューティ比且つ異なる位相の動作から、それぞれ同一のデューティ比且つ同じ位相の動作に変更し、燃料電池の交流インピーダンス測定を行う。一方、条件1を満たさない場合は、制御部は、n相のスイッチを、それぞれ同一のデューティ比且つ異なる位相で動作させて、燃料電池の交流インピーダンスの測定を行う。
2相磁気結合リアクトルの場合では、燃料電池システムの運転中に、条件1に相当する不感帯が発生する領域に突入したときに、互いに磁気結合された2相のコイルを駆動する際、2相を同じ位相で制御し、2相同時に図2で示すような不感帯に入らないようにすることで、少なくとも1相は不感帯を抜け制御できる状態を維持し、sin波重畳ができるようにする。
条件1に相当する不感帯が発生する領域は、2相磁気結合リアクトルの場合は、不連続モードであり、かつデューティ比が50%未満の時であってもよい。そのため、例えば燃料電池への要求出力が減少し、不連続モードかつデューティ比が50%以上から、50%未満に減少するタイミングで、2相のスイッチの動作を、それぞれ同一のデューティ比且つ異なる位相の動作から、それぞれ同一のデューティ比且つ同じ位相の動作に変更してもよい。
図16に示すように、制御部は、n相のスイッチをそれぞれ異なる位相且つ同じデューティ比で動作させる。その後、制御部は、条件1を満たしているか否か判定する。制御部は、条件1を満たしていると判定したとき、燃料電池の交流インピーダンス測定の要求があるか否か判定する。制御部は、燃料電池の交流インピーダンス測定の要求があると判定したときは、n相のスイッチの動作を、それぞれ同一のデューティ比且つ異なる位相の動作から、それぞれ同一のデューティ比且つ同じ位相の動作に変更し、燃料電池の交流インピーダンス測定を行う。一方、制御部は、燃料電池の交流インピーダンス測定の要求がないと判定したときは、制御部は、n相のスイッチを、それぞれ同一のデューティ比且つ異なる位相で動作させる。
したがって、制御部は、条件1を満たし、且つ、燃料電池の交流インピーダンス測定を実施する場合にのみ、n相のスイッチの動作を、それぞれ同一のデューティ比且つ異なる位相の動作から、それぞれ同一のデューティ比且つ同じ位相の動作に変更し、その他の場合には、n相のスイッチを、それぞれ同一のデューティ比且つ異なる位相で動作させるようにしても良い。インピーダンス計測時のみ同位相駆動とすることで不感帯の影響を改善でき、且つ、リプル増加による電圧変換効率低下の抑制やコンデンサ温度上昇を抑制することができる。なお、制御部は、燃料電池の交流インピーダンス測定の要求があるか否か判定し、燃料電池の交流インピーダンス測定の要求があると判定したときに、条件1を満たしているか否か判定してもよい。
図17に示すように、制御部は、n相のスイッチの動作を、それぞれ同一のデューティ比且つ異なる位相の動作から、それぞれ同一のデューティ比且つ同じ位相の動作に変更し、燃料電池の交流インピーダンスを測定した後、リアクトルのコイルを流れる平均電流値が所定の閾値以上であるか否か判定する。
制御部は、リアクトルのコイルを流れる平均電流値が所定の閾値以上であると判定した場合にn相のスイッチの動作を、それぞれ同一のデューティ比且つ同じ位相の動作から、それぞれ同一のデューティ比且つ異なる位相の動作に変更する。一方、制御部は、リアクトルのコイルを流れる平均電流値が所定の閾値未満であると判定した場合にn相のスイッチを、それぞれ同一のデューティ比且つ同じ位相で動作させる。これにより、不感帯の発生を抑制し且つ電圧変換効率を向上させることができる。
本研究者らは2相(ずつ)が磁気結合された、L>Mである昇圧コンバータにおいて、条件1を満足し、不感帯が発生するのは、不感帯発生領域として斜線で囲われた領域であることを知見した。
なお、Lはリアクトルの自己インダクタンス、Mは相互インダクタンスであり、それぞれリアクトルの物性値により決定される固有な値である。VLは昇圧コンバータの入口電圧(昇圧前電圧)、VHは昇圧コンバータの出口電圧(昇圧後電圧)である。
2相磁気結合(n=2)の場合、2相を駆動する位相は異なっていればよく、位相差は180°であってもよい。2相を駆動する位相が異なっている場合、不連続モードであってデューティ比が50%未満(D<0.5)であれば、磁気結合されている一方の相のコイルの平均電流値が0に維持されているときに、他方の相のスイッチがONからOFFに切り替わる運転条件になる。
制御部は、精度良く不感帯が発生する運転条件を判定する観点から、2相磁気結合(n=2)の場合は、図18に示す不感帯発生領域の条件である「互いに磁気結合された2相のスイッチをそれぞれ180°の位相差で動作させたときに、コイルを流れる電流が不連続モードであり、且つ、2相のスイッチのデューティ比(D)が50%未満(D<0.5)であり、且つ、下記式(A)又は式(B)のいずれか一方を満たす」と判定した場合に、条件1を満たすと判定してもよい。
式(A):D<{(1/2)(L-M)(VH-VL)}/(LVL+MVL-MVH)
式(B):D<(1/2){1-(VL/VH)}
[式(A)及び式(B)中、Lはリアクトルの自己インダクタンス、Mはリアクトルの相互インダクタンス、VHはコンバータの出口電圧、VLはコンバータの入口電圧、Dはデューティ比である。]
2相(ずつ)が磁気結合された場合には、「互いに磁気結合された2相のスイッチをそれぞれ180°の位相差で動作させたときに、コイルを流れる電流が不連続モードであり、且つ、2相のスイッチのデューティ比(D)が50%未満である」ことが条件1の内の一つになる。
一方、n相(ずつ)が磁気結合され、互いに磁気結合されたn相をそれぞれ(360°/n)の位相差で駆動したときの条件1は、「互いに磁気結合された2相のスイッチをそれぞれ180°の位相差で動作させたときに、コイルを流れる電流が不連続モードであり、且つ、2相のスイッチのデューティ比(D)が50%未満である」の条件の代わりに「互いに磁気結合されたn相のスイッチをそれぞれ(360°/n)の位相差で動作させたときに、コイルを流れる電流が不連続モードであり、且つ、n相のスイッチのデューティ比が(100-100/n)%未満」になる。
2相磁気結合(n=2)の場合は、制御部は、上記した「互いに磁気結合された2相のスイッチをそれぞれ180°の位相差で動作させたときに、コイルを流れる電流が不連続モードであり、且つ、2相のスイッチのデューティ比(D)が50%未満(D<0.5)であり、且つ、式(A)又は式(B)のいずれか一方を満たす」と判定した場合に、条件1を満たすと判定してもよい。
図19は、2相磁気結合リアクトルを備えるコンバータを含む燃料電池システムにおける燃料電池の交流インピーダンス測定をするときの制御の一例を示すフローチャートである。
制御部は、2相のスイッチの動作を、それぞれ180°の位相差且つ同じデューティ比で動作させて燃料電池の交流インピーダンス測定の要求があるか否か判定する。制御部は、燃料電池の交流インピーダンス測定の要求がないと判定したときは、制御を終了する。一方、制御部は、燃料電池の交流インピーダンス測定の要求があると判定したときは、コイルの電流値をモニタリングし、条件1として、「互いに磁気結合された2相のスイッチをそれぞれ180°の位相差で動作させたときに、コイルを流れる電流(駆動する相)が不連続モードであり、且つ、2相のスイッチのデューティ比(D)が50%未満(D<0.5)であり、且つ、式(A)又は式(B)のいずれか一方を満たす」か否か判定する。制御部は、条件1を満たしていないと判定したときは、2相のスイッチの動作を、それぞれ180°の位相差且つ同じデューティ比で動作させて燃料電池の交流インピーダンス測定を行う。一方、制御部は、条件1を満たしていると判定したときは、2相のスイッチの動作を、それぞれ180°の位相差且つ同じデューティ比の動作から、同じ位相且つ同じデューティ比の動作に変更して、燃料電池の交流インピーダンスの測定を行う。
不感帯が発生する条件1を満たすか否かを判定する手段は上記に限定されず、例えば入力電圧、出力電圧及びデューティ比に応じて、不感帯に該当する範囲を定義しておき、所定の出力電圧の時に入力電圧及びデューティ比が不感帯に該当する範囲に突入または近づいたことを示すときに、条件1を満たすと判定してもよい。
上述のように、不感帯に該当する範囲を予め定義しておき、その範囲に進入したときに2相のスイッチの動作を、それぞれ180°の位相差且つ同じデューティ比の動作から、同じ位相且つ同じデューティ比の動作に変更することにより、燃料電池の交流インピーダンスを取得したいときに速やかに交流インピーダンスを取得することができる。
すなわち、条件1として、「互いに磁気結合された2相のスイッチをそれぞれ180°の位相差で動作させたときに、コイルを流れる電流が不連続モードであり、且つ、2相のスイッチのデューティ比が50%未満である」ときとしてもよい。この場合、例えば燃料電池への要求出力が減少し、コイルを流れる電流が不連続モードであり、且つ、2相のスイッチのデューティ比が50%以上から、コイルを流れる電流が不連続モードであり、且つ、2相のスイッチのデューティ比が50%未満に移行するタイミングで、2相のスイッチの動作を、それぞれ180°の位相差且つ同じデューティ比の動作から、同じ位相且つ同じデューティ比の動作に変更してもよい。
図18に示すように、式(A)及び式(B)によって異なる位相から同じ位相に変更する範囲から除外される領域は大きくない。従って、「式(A)または式(B)のいずれか一方を満たすとき」の条件を除外しても、バッテリーの寿命増加に与える影響は限定的と考えられる。一方、「式(A)または式(B)のいずれか一方を満たすとき」の条件を除外することによって制御が簡素化されつつ、適切に燃料電池の交流インピーダンスの測定を行うことができる。
なお、変形例として、条件1として、「互いに磁気結合された2相のスイッチをそれぞれ180°の位相差で動作させたときに、コイルを流れる電流が不連続モードであり、且つ、2相のスイッチのデューティ比が50%未満、且つ、式(A)を満たすとき」又は、「互いに磁気結合された2相のスイッチをそれぞれ180°の位相差で動作させたときに、コイルを流れる電流が不連続モードであり、且つ、2相のスイッチのデューティ比が50%未満、且つ、式(B)を満たすとき」としてもよい。
20:昇圧コンバータ
21:リアクトル
22:電流センサ
23:スイッチ
24:ダイオード
25:コンデンサ
50:外部負荷
Claims (6)
- 燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムは、燃料電池と、当該燃料電池の出力電圧の昇圧及び降圧からなる群より選ばれる少なくとも一種を行うコンバータと、を備え、
前記コンバータは、n(nは2以上の整数)相のコイルが互いに磁気結合されているリアクトルと、前記コイルそれぞれに接続されるn相のスイッチと、制御部と、を備え、
前記制御部は、n相の前記スイッチのON・OFF制御を行い、
前記制御部は、前記コイルの電流値をモニタリングし、
前記制御部は、前記燃料電池の電流波形及び電圧波形から前記燃料電池の交流インピーダンスを測定し、
前記制御部は、n相の前記スイッチをそれぞれ異なる位相で動作させ、且つ、n相の前記スイッチをそれぞれ同じデューティ比で動作させ、
前記制御部は、下記条件1を満たすと判定したときに、n相の前記スイッチをそれぞれ同じ位相で動作させることを特徴とする燃料電池システム。
条件1:n相の前記スイッチをそれぞれ異なる位相で動作させたときに、前記コイルを流れる電流が不連続モードであり且つ1相の前記コイルに流れる電流値がゼロに維持されている時に他の少なくとも1相のコイルに接続された前記スイッチがONからOFFに切り替わる運転条件である。 - 前記制御部は、n相の前記スイッチをそれぞれ異なる位相で動作させる時は、n相の前記スイッチをそれぞれ(360/n)°の位相差で動作させる請求項1に記載の燃料電池システム。
- 前記制御部は、前記条件1に相当する前記コンバータの運転条件を予めデータ群として記憶し、
前記制御部は、現在の前記コンバータの運転条件を当該データ群に照らして、前記条件1を満たすか否かを判定する、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。 - 前記制御部は、前記条件1を満たすと判定したときに、前記燃料電池の交流インピーダンス測定要求の有無を確認し、
前記制御部は、前記燃料電池の交流インピーダンス測定要求が有ることを確認した場合に、n相の前記スイッチをそれぞれ同じ位相で動作させ、前記燃料電池の交流インピーダンスを測定する、請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。 - 前記制御部は、n相の前記スイッチを、それぞれ同じ位相で動作させ、前記燃料電池の交流インピーダンスを測定した後、前記リアクトルのコイルを流れる平均電流値が所定の閾値以上であるか否か判定し、
前記リアクトルのコイルを流れる平均電流値が所定の閾値以上であると判定した場合にn相の前記スイッチをそれぞれ異なる位相で動作させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の燃料電池システム。 - 前記制御部は、n=2であり、且つ、互いに磁気結合された2相の前記スイッチをそれぞれ180°の位相差で動作させたときに、前記コイルを流れる電流が不連続モードであり、且つ、2相の前記スイッチのデューティ比が50%未満(D<0.5)であり、且つ、下記式(A)または式(B)のいずれか一方を満たす時に前記条件1を満たすと判定する、請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
式(A):D<{(1/2)(L-M)(VH-VL)}/(LVL+MVL-MVH)
式(B):D<(1/2){1-(VL/VH)}
[式(A)及び式(B)中、Lは前記リアクトルの自己インダクタンス、Mは前記リアクトルの相互インダクタンス、VHは前記コンバータの出口電圧、VLは前記コンバータの入口電圧、Dはデューティ比(-)である。]
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