JP2022139748A - 車体部品用アルミニウム合金板及びその製造方法 - Google Patents

車体部品用アルミニウム合金板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アルミニウムスクラップ材を原料とすることで環境負荷を抑制しつつ、成形性、製品強度および耐食性を有する車体部品用アルミニウム合金板及びその製造方法を提供すること。【解決手段】Fe:0.5質量%を超え1.2質量%以下、Si:1.0質量%以上2.0質量%以下、Cu:0.2質量%以下、Mn:0.5質量%以上1.5質量%以下、Mg:0.4質量%以上1.2質量%以下、Zn:1.0質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有し、平均結晶粒径が30μm以下であり、0.2%耐力が120MPa以上175MPa以下で、伸びが20%以上であり、圧延方向に2%の一軸ひずみ付与後に170℃で20分間の熱処理を施した後の0.2%耐力が160MPa以上である。【選択図】なし

Description

本発明は、車体部品用アルミニウム合金板及びその製造方法に関する。
近年、地球環境を保護するために、環境負荷を低減できる材料の採用が求められている。アルミニウム合金板においても、各種使用済みアルミニウム合金部品のくず(以下、アルミニウムスクラップ材という)を再利用して製造するニーズは非常に高い。このアルミニウムスクラップ材を再利用してアルミニウム合金板を製造すると、アルミニウム地金を採用する場合に比べて、COの発生量を大幅に抑制し、環境負荷を低減できる。このようなアルミニウムスクラップ材を再利用したアルミニウム合金を車体部品(例えば、自動車レインフォ―ス部材)として用いる場合、部品成型時のプレス成形性や塗装性、製品としての構造強度、耐食性等の確保が重要となる。しかし、アルミニウムスクラップ材を再利用したアルミニウム合金板は様々な添加元素が含まれるため、これら構造体に求められる全ての要求特性を満足する事が難しかった。例えば、材料強度に関して、部品成型時のプレス成形性を確保するためには一定の強度範囲に収める必要があり、強度が高すぎても低すぎてもプレス成形性が劣る。一方で最終製品としては構造強度を確保するため、高強度であることが必要とされる。これらレインフォ―ス用部材はプレス成形後の塗装工程(ベーキング工程)で負荷される温度によって材料強度が向上し最終製品の強度となるが、このベーキングによる強度向上を考慮してもプレス成形性と最終製品の構造強度確保を両立する事が難しかった。
このようなアルミニウムスクラップ材を再利用したアルミニウム合金板として、例えば、特許文献1に記載のアルミニウム合金板が知られている。
例えば、特許文献1のアルミニウム合金板は、Si:0.4~2.0質量%、Fe:0.2~0.6質量%、Cu:0.1~0.7質量%、Mn:0.5~1.5質量%、Mg:0.5~2.0質量%、Zn:0.05~1.0質量%を含み、残部がAlおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金により形成されている。この特許文献1に記載のアルミニウム合金板は、板厚全断面にわたって再結晶組織を有し、かつ、再結晶粒径:50μm以下、導電率:43.0~49.5%IACSとされており、これによりプレス成形性及び耐食性を向上させている。
特許第5323673号公報
ところで、特許文献1では、アルミニウム合金板のプレス成形性や耐食性についての記述はあるものの、対象製品が自動車等のヒートインシュレータであり、車体部品用アルミニウム合金板(例えば、自動車レインフォ―ス用アルミニウム合金板)とは異なるため、必ずしも必要特性が一致しない。また、前述のプレス成形性と最終製品の構造強度確保を達成するのは難しいと考えられる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、アルミニウムスクラップ材を原料とすることで環境負荷を抑制しつつ、成形性、製品強度および耐食性を有する車体部品用アルミニウム合金板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本研究者らは、鋭意研究の結果、アルミニウム圧延工場で発生するアルミニウムスクラップ材の成分を分析し、アルミニウムスクラップ材に多く含まれる合金元素の影響を詳細に検討して、合金成分範囲の選択と、その後の製造条件の組み合わせを適切に制御することで、成形性、製品強度および耐食性を有する車体部品用アルミニウム合金材を見出した。
すなわち、本発明者らは上記課題を鑑み、アルミニウムスクラップ材を再利用したアルミニウム合金の成分最適化に加えて、鋳造、圧延、熱処理等の製造工程を最適化する事で各添加成分の固溶・析出状態、各種金属間化合物のサイズ、数密度などの分散状態、集合組織を制御し、車体部品用アルミニウム合金板に求められる要求特性をいずれも高い次元で満足する発明品を得る事ができた。例えば、金属間化合物の分散状態に関しては、粗大なMg-Si化合物の存在割合を適正化する事で部品成型時のプレス成形性に必要な材料強度を確保しつつ、その後の部品塗装工程における熱負荷によって、時効硬化を生じさせて最終製品での高い強度を得ることができる。
本発明の車体部品用アルミニウム合金板は、Fe:0.5質量%を超え1.2質量%以下、Si:1.0質量%以上2.0質量%以下、Cu:0.2質量%以下、Mn:0.5質量%以上1.5質量%以下、Mg:0.4質量%以上1.2質量%以下、Zn:1.0質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有し、平均結晶粒径が30μm以下であり、0.2%耐力が120MPa以上175MPa以下で、伸びが20%以上であり、圧延方向に2%の一軸ひずみ付与後に170℃で20分間の熱処理を施した後の0.2%耐力が160MPa以上である。
本発明では、0.2%耐力が120MPa以上175MPa以下、伸びが20%以上とされているので、プレス加工を適切に施すことができる。また、2%の一軸ひずみ付与後に170℃で20分間の熱処理を施した後の0.2%耐力を160MPa以上と非常に高くでき、最終製品の強度を高めることができる。また、Cuが0.2質量%以下、Znが1.0質量%以下と少ないので、耐食性を高めることができる。さらに、平均結晶粒径が30μm以下と小さいので、加工性を向上できる。
なお、平均結晶粒径が30μmを超えると加工性が低下する。また、0.2%耐力が120MPa未満であるとプレス加工時にアルミニウム合金板が破断するおそれがあり、175MPaを超えると加工性が低下する。さらに、伸びが20%未満では、加工性が低下する。加えて、圧延方向に2%の一軸ひずみ付与後に170℃で20分間の熱処理を施した後の0.2%耐力が160MPa未満であると、最終製品(例えば、自動車レインフォース)の強度が低下する。
Feは、アルミニウム合金板の耐力向上に寄与し、0.5質量%以下では耐力を向上させることができず、1.2質量%を超えると金属間化合物の割合が増加して、耐力が高くなりすぎることにより、成形性が悪化する。
Siは、アルミニウム合金板の耐力向上に寄与し、1.0質量%未満であると十分な170℃熱処理後の耐力が得られず製品強度が不足する。一方、2.0質量%を超えると金属間化合物の割合が増加して、耐力が高くなりすぎることにより、成形性が悪化する。
Cuは、アルミニウム合金板の耐力向上及び耐食性に寄与し、0.2質量%を超えると耐食性が大幅に低下する。
Mnは、アルミニウム合金板の耐力向上に寄与し、0.5質量%未満であると十分な170℃熱処理後の耐力が得られず、製品強度が不足する。一方、1.5質量%を超えると、金属間化合物が粗大化して、やはり十分な170℃熱処理後の耐力が得られない。
Mgは、アルミニウム合金板の耐力向上に寄与し、0.4質量%未満であると十分な170℃熱処理後の耐力が得られない。一方、1.2質量%を超えると耐力が高くなりすぎて、伸びが低下する他、成形性が悪化する。
Znは、アルミニウム合金板の耐食性に寄与し、1.0質量%を超えると耐食性が悪化する。
本発明の車体部品用アルミニウム合金板の好ましい態様としては、Cr:0.01質量%以上0.10質量%以下、Ti:0.01質量%以上0.10質量%以下、Zr:0.01質量%以上0.10質量%以下のうち、1種または2種以上をさらに含有するとよい。
Cr及びZrのそれぞれは、強度向上と結晶粒の微細化および組織の安定化に寄与し、0.01質量%未満では上記効果が十分に得られず、0.10質量%を超えると上記の効果が飽和する他、多数の金属間化合物が生成されて、成形性に悪影響を及ぼすおそれがある。
Tiは、強度向上と鋳塊組織の微細化に寄与し、0.01質量%未満では上記効果が十分に得られず、0.10質量%を超えると、上記効果が飽和する他、粗大な晶出物が生じるおそれがある。
本発明の車体部品用アルミニウム合金板の好ましい態様としては、円相当径が1.0μm以上のMg-Si系第二相粒子が7.0×10個/mm以下であるとよい。
上記態様では、粗大なMg-Si化合物の存在割合を7.0×10個/mm以下と適正化することにより、部品成型時のプレス成形性に必要な材料強度を確保しつつ、その後の部品塗装工程における負荷熱によって、時効硬化を生じさせて最終製品での高い強度を得ることができる。
本発明の車体部品用アルミニウム合金板の好ましい態様としては、圧延方向の断面の立方体方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率と、Goss方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率との和が5%以上であるとよい。
ここで、EBSD(Electron BackScatter Diffraction)法における集合組織の表現は、圧延による板材の集合組織の場合、圧延面と圧延方向で表されており、圧延面は{hkl}で表現され、圧延方向は<uvw>で表現される。この表現を用いた場合、立方体方位(Cube方位)は、{001}<100>と表現され、Goss方位は{110}<001>と表現される。
上記Cube方位{001}<100>及びGoss方位{110}<001>では、結晶面(圧延面)上のすべり線は、曲げ軸に対して45°および135°と対称性を良好にすることができる。このため、上記態様では、圧延面の全結晶粒における立方体方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率と、Goss方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率との和(以下、方位面積率という)を一定以上に高めることで、曲げ外側におけるせん断帯形成が抑制され、曲げ加工性を大幅に向上できる。
本発明の車体部品用アルミニウム合金板の製造方法は、アルミニウムスクラップ材を含み、Fe:0.5質量%を超え1.2質量%以下、Si:1.0質量%以上2.0質量%以下、Cu:0.2質量%以下、Mn:0.5質量%以上1.5質量%以下、Mg:0.4質量%以上1.2質量%以下、Zn:1.0質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金を溶解鋳造した後、500℃以上600℃以下で2時間以上保持する均質化処理を施し、次いで、50m/min以上の圧延速度で複数パスの熱間圧延を行った後、冷間圧延することにより、厚さ0.8mm以上2.5mm以下の板材を形成し、前記板材を100℃/秒以上の加熱速度で500℃以上550℃以下に加熱して15秒以上120秒以下保持してから、200℃/秒以上の冷却速度で100℃以下に冷却する溶体化処理を施した後、14日以上の室温保管による時効処理または50℃で72時間の時効処理を施す。
本発明では、熱間圧延及び冷間圧延により、最終の厚さが0.8mm以上2.5mm以下の板材を形成し、この板材に対して溶体化処理及び工業的乃至は14日以上の室温保管による時効処理を実行することで、成形性、強度および耐食性を有する車体部品用アルミニウム合金板を製造することができる。
均質化処理の温度が500℃未満であると鋳造時に発生する偏析が残存し、充分な均質化が実施できず、その保持温度が600℃を超えると鋳塊が溶融するおそれがある。また、保持時間が2時間未満であると均質化が充分に進行しない場合がある。
熱間圧延の1回のパスの圧延速度が50m/min未満であると、素材の伸びや、立方体方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率と、Goss方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率との和(方位面積率)が低下するとともに、170℃熱処理後の0.2%耐力が低下するため、アルミニウム合金板の成形性や製品強度が低下する。
溶体化処理の加熱速度が100℃/秒未満であると、アルミニウム合金板の生産性が低下し、その保持温度が500℃未満であると溶質元素の再固溶が充分に進行せず、600℃を超えると板が溶融し破断するおそれがある。また、保持時間が15秒未満であると再固溶が充分に進行せず、120秒を超えるとアルミニウム合金板の生産性が低下する。
また、溶体化処理の冷却速度が10℃/秒未満であると、アルミニウム合金板の生産性が低下する。
溶体化処理後の室温保管が14日未満であると、時効硬化が不足し、アルミニウム合金板の強度が不足し、成形性が低下する。
本発明によれば、アルミニウムスクラップ材を原料とすることで環境負荷を抑制しつつ、優れた成形性、強度および耐食性を有する車体部品用アルミニウム合金板を提供できる。
以下、本発明に係る車体部品用アルミニウム合金板(以下、アルミニウム合金板という)をレインフォース材に適用した実施形態について説明する。
[アルミニウム合金板の構成]
本実施形態のアルミニウム合金板は、例えば、自動車のフード、トランクの内側に挿入されており、構造体の剛性を高めるために用いられるレインフォ―スメント等として用いられるいわゆるレインフォース材に加工される。このアルミニウム合金板は、アルミニウムスクラップ材を原料とするアルミニウム合金から形成されている。具体的には、アルミニウム合金板となるアルミニウム合金には、アルミニウムスクラップ材が50もしくは60質量%以上含まれており、全てアルミニウムスクラップ材により形成されていてもよい。
また、このようなアルミニウムスクラップ材は、アルミニウム圧延工場や各種使用済みアルミニウム合金部品のくずからなる。
また、アルミニウム合金板は、上述したように、アルミニウムスクラップ材を主原料とするため、複数の元素を含んでいる。具体的には、アルミニウム合金板は、Fe:0.5質量%を超え1.2質量%以下、Si:1.0質量%以上2.0質量%以下、Cu:0.2質量%以下、Mn:0.5質量%以上1.5質量%以下、Mg:0.4質量%以上1.2質量%以下、Zn:1.0質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなる。
Feは、アルミニウム合金板の耐力向上に寄与し、0.5質量%以下では耐力を向上させることができず、1.2質量%を超えると金属間化合物の割合が増加して、耐力が高くなりすぎることにより、成形性が悪化する。
Siは、アルミニウム合金板の耐力向上に寄与し、1.0質量%未満であると十分な170℃熱処理後の耐力が得られず製品強度が不足する。一方、2.0質量%を超えると金属間化合物の割合が増加して、耐力が高くなりすぎることにより、成形性が悪化する。
Cuは、アルミニウム合金板の耐力向上及び耐食性に寄与し、0.2質量%を超えると耐食性が大幅に低下する。
Mnは、アルミニウム合金板の耐力向上に寄与し、0.5質量%未満であると十分な170℃熱処理後の耐力が得られず、製品強度が不足する。一方、1.5質量%を超えると、金属間化合物が粗大化して、やはり十分な170℃熱処理後の耐力が得られない。
Mgは、アルミニウム合金板の耐力向上に寄与し、0.4質量%未満であると十分な170℃熱処理後の耐力が得られない。一方、1.2質量%を超えると耐力が高くなりすぎて、伸びが低下する他、成形性が悪化する。
Znは、アルミニウム合金板の耐食性に寄与し、1.0質量%を超えると耐食性が悪化する。
また、アルミニウム合金板は、Cr:0.01質量%以上0.10質量%以下、Ti:0.01質量%以上0.1質量%以下、Zr:0.01質量%以上0.10質量%以下のうち、1種または2種以上をさらに含有することが好ましい。
Cr及びZrのそれぞれは、強度向上と結晶粒の微細化および組織の安定化に寄与し、0.01質量%未満では上記効果が十分に得られず、0.10質量%を超えると上記の効果が飽和する他、多数の金属間化合物が生成されて、成形性に悪影響を及ぼすおそれがある。
Tiは、強度向上と鋳塊組織の微細化に寄与し、0.01質量%未満では上記効果が十分に得られず、0.10質量%を超えると、上記効果が飽和する他、粗大な晶出物が生じるおそれがある。
このアルミニウム合金板は、平均結晶粒径が30μm以下であり、0.2%耐力が120MPa以上175MPa以下で、伸びが20%以上であり、圧延方向に2%の一軸ひずみ付与後に170℃で20分間の熱処理を施した後の0.2%耐力が160MPa以上である。2%の一軸ひずみ付与は、レインフォースとしてのプレス成形を想定した条件であり、170℃で20分間の熱処理は、レインフォースへの加工後の塗装を想定した条件である。つまり、この圧延方向に2%の一軸ひずみ付与後に170℃で20分間の熱処理を施した後の0.2%耐力(170℃熱処理後の耐力という場合がある)は、レインフォースの製品としての強度を想定している。
また、平均結晶粒径が30μmを超えると加工性が低下する。さらに、0.2%耐力が120MPa未満であるとプレス加工時にアルミニウム合金板が破断するおそれがあり、175MPaを超えると加工性が低下する。加えて、伸びが20%未満では、加工性が低下する。また、圧延方向に2%の一軸ひずみ付与後に170℃で20分間の熱処理を施した後の0.2%耐力が160MPa未満であると、最終製品である自動車部品(例えば、自動車レインフォース)の強度が低下する。
なお、平均結晶粒径は25μm以下がより好ましい。0.2%耐力は145MPa以上170MPa以下がより好ましい。また、170℃熱処理後の耐力は175MPa以上がより好ましい。
また、アルミニウム合金板は、円相当径が1.0μm以上のMg-Si系第二相粒子が7.0×103個/mm以下である。なお、円相当径が1.0μm以上のMg-Si系第二相粒子が7.0×103個/mmを超えると、部品成型時のプレス成形性に必要な材料強度を確保しにくく、その後の部品塗装工程における熱負荷によって、時効硬化が生じにくくなる可能性がある。
さらに、アルミニウム合金板は、圧延方向の断面の立方体方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率(Cube方位面積率)と、Goss方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率(Goss方位面積率)との和(方位面積率)が5%以上である。この方位面積率は、5%以上であれば曲げ加工性の向上に寄与するものの、方位面積率の数値が5%を大きく超えてもその効果は飽和することから、5%以上であればよい。なお、上記結晶粒の全結晶粒に対する面積率が5%未満であると、曲げ外側におけるせん断帯形成を抑制しにくくなることから、曲げ加工性を大幅に向上させることが難しい。
また、アルミニウム合金板は、素材の導電率が38%IACS以上43%IACS以下であるのが好ましい。導電率は各添加元素(特に、SiとMg)の固溶・析出状態を表す指標ともなり、アルミニウム合金板の強度(0.2%耐力及び170℃で20分間の熱処理後の0.2%耐力)等に影響を与える。アルミニウムマトリクスへの固溶が進むと導電率は低くなり、金属間化合物として析出が進むと導電率は高くなる。このため、素材の導電率が低すぎても高すぎても素材強度や時効後強度が低下する傾向にあり、上記範囲とすることが望ましい。
なお、導電率が38%IACS未満である場合、及び43%IACSを超える場合、アルミニウム合金板に対する各添加元素の固溶度が適切な範囲外となるため、0.2%耐力及び170℃で20分間の熱処理後の0.2%耐力が低下する可能性がある。また、導電率が43%IACSを超えると金属間化合物が粗大化する傾向にあることから、耐食性がやや低下する可能性がある。
この導電率は40%IACS以上42%IACS以下がより好ましい。
[アルミニウム合金板の製造方法]
アルミニウム合金板は、以下の手順にて製造される。まず、50質量%以上のアルミニウムスクラップ材を含んだ上記組成のアルミニウム合金に対して、溶解鋳造処理、均質化処理、均熱処理、熱間圧延処理、冷間圧延処理、溶体化処理及び時効処理をこの順で施すことにより製造する。以下、具体的に説明する。
[溶解鋳造処理]
50質量%以上のアルミニウムスクラップ材を含んだFe:0.5質量%を超え1.2質量%以下、Si:1.0質量%以上2.0質量%以下、Cu:0.2質量%以下、Mn:0.5質量%以上1.5質量%以下、Mg:0.4質量%以上1.2質量%以下、Zn:1.0質量%以下を含有し、残部がAlおよび不可避不純物からなるアルミニウム合金を溶解してアルミニウム合金溶湯を生成する。そして、アルミニウム合金溶湯を半連続鋳造法(DC鋳造)により鋳造する。
なお、鋳造法については、半連続鋳造法に限らず、連続鋳造法等、その他の常法を用いてもよい。また、アルミニウム合金鋳塊に対して、均質化処理の前後に面削加工を実施してもよい。
[均質化処理]
半連続鋳造法により得られた鋳塊に対して、偏析など不均質な組織を除去する事を目的に均質化処理を実施する。高温の均質化処理により、鋳造時にマトリクスに過飽和に固溶した添加元素が金属間化合物として析出する。析出する金属間化合物のサイズや分散量は均質化処理の温度、時間に影響を及ぼされるため、添加元素の種類に応じた熱処理条件を選択する必要がある。
例えば、アルミニウムスクラップ材を含んだアルミニウム合金が上記組成とされていることから、得られた鋳塊について均質化処理を500℃以上600℃以下の温度で2時間以上行う。この均質化処理は、535~595℃の温度で3~8時間保持することがより好ましい。
なお、均質化処理の保持温度が500℃未満であると、鋳造時に発生する偏析が残存し、充分な均質化が実施できず、その保持温度が600℃を超えると鋳塊が溶融するおそれがある。また、保持時間が2時間未満であると均質化が充分に進行しない場合がある。
[均熱処理]
均質化処理がなされた鋳塊に対して均熱処理を実施する。この均熱処理は、均質化処理よりも若干低い温度で実行され、例えば、480℃以上550℃以下の温度で1時間以上保持する。なお、均熱処理と熱間圧延前の均熱処理を兼ねて実施しても良い。
[熱間圧延処理]
均質化処理がなされた鋳塊(均熱処理がなされた場合には、均熱処理がなされた鋳塊)に対して熱間圧延処理を実施する。この熱間圧延は、500℃前後の高温で実施される。具体的には、出側の温度が400℃~460℃となる熱間粗圧延後、シングルリバース式の熱間仕上圧延機に50m/min以上の圧延速度で3回通過させることにより、板材の厚さを2mm~6mmとする。具体的には、圧延速度が50m/min以上150m/min以下で、巻取り温度を350℃以上400℃以下の条件で熱間仕上げの1パス目を実行する。次に、圧延速度が50m/min以上150m/min以下で、巻取り温度を330℃以上380℃以下の条件で熱間仕上げの2パス目を実行する。最後に、圧延速度が150m/min以上300m/min以下で、巻取り温度を230℃以上330℃以下の条件で熱間仕上げの3パス目を実行する。
なお、熱間圧延の圧延速度が50m/min未満であると、素材の伸びや立方体方位率が低下するとともに、170℃熱処理後の0.2%耐力が低下するため、アルミニウム合金板の成形性や製品強度が低下する。
本実施形態では、上記熱間仕上圧延の条件を種々変更する事で材料の集合組織を制御し、最終圧延品における圧延面の立方体方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率と、Goss方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率との和(方位面積率)を所望の範囲に調整した。
[冷間圧延]
次に、熱間圧延後の板材に対して、冷間圧延処理を実施する。この冷間圧延処理の方法は、特に限定されないが、例えば、圧延機に板材を通過させることにより実施できる。この冷間圧延後の板材の厚さは、例えば、0.8mm以上2.5mm以下とされる。
[溶体化処理]
冷間圧延処理後の板材に対して、溶体化処理を実施する。この溶体化処理では、板材を100℃/秒以上の加熱速度で500℃以上550℃以下に加熱して15秒以上120秒以下保持してから、200℃/秒以上の冷却速度で100℃以下に冷却する。
なお、溶体化処理の加熱速度が100℃/秒未満であると、アルミニウム合金板の生産性が低下し、その保持温度が500℃未満であると再結晶化が充分に進行せず、600℃を超えるとアルミニウム合金板が溶融し破断するおそれがある。また、保持時間が15秒未満であると再結晶化が充分に進行せず、120秒を超えるとアルミニウム合金板の生産性が低下する。また、溶体化処理の冷却速度が200℃/秒未満であると、アルミニウム合金板の生産性が低下する。
[時効処理]
最後に、溶体化処理が施された板材に対して、室温で14日以上保管するか、50℃で72時間保持する室温相当の時効処理を実行する。これらアルミニウム合金板の圧延終了後の時効処理後の耐力、伸びは当該製品のプレス成形性に大きく影響する。この時効処理後のアルミニウム合金板の0.2%耐力が120MPa以上175MPa以下で、伸びが20%以上となる。
さらに、このようにして製造されたアルミニウム合金板(時効処理後のアルミニウム合金板)に、当該製品におけるプレス成形後の塗装工程における熱負荷を想定し、以下の方法により0.2%耐力を測定した。具体的には、JISZ2241に基づく引張試験により2%のひずみを付与した後の試験片に対して、10℃/秒以上の加熱速度で170℃に加熱して20分保持してから、10℃/秒以上の冷却速度で冷却する熱処理を施した後に耐力を測定した。これらアルミニウム合金板の170℃熱処理後の耐力は、当該製品の製品強度に値する。この170℃熱処理後のアルミニウム合金板の0.2%耐力は、160MPa以上となる。
次に、結晶方位について説明する。立方体方位(Cube方位)は、EBSD法における集合組織の表現では、{001}<100>と表現され、Goss方位は{110}<001>と表現される。このCube方位及びGoss方位は、圧延面の厚さ方向ND、圧延方向LD、圧延方向に対して直角方向TDの三つの方向に同様の特性を示す。このCube方位{001}<100>及びGoss方位{110}<001>では、結晶面(圧延面)上のすべり線は、曲げ軸に対して45°および135°と対称性を良好にすることができる。このため、全結晶粒における立方体方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率と、Goss方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率との和(方位面積率)を一定上に高めることで、曲げ外側におけるせん断帯形成が抑制され、曲げ加工性を大幅に向上できることを見出した。
このようにして製造されたアルミニウム合金板は、平均結晶粒径が30μm以下であり、0.2%耐力が120MPa以上175MPa以下で、伸びが20%以上であり、2%の一軸ひずみ付与後に170℃で20分間の熱処理を施した後の0.2%耐力が160MPa以上であるアルミニウム合金板、すなわち、成形性、強度および耐食性を有する車体部品用アルミニウム合金板となる。また、アルミニウムスクラップ材を50質量%以上含んだアルミニウム合金からアルミニウム合金板を製造できるので、環境負荷を低減できる。
具体的には、本実施形態のアルミニウム合金板は、0.2%耐力が120MPa以上175MPa以下で、伸びが20%以上とされているので、プレス加工を適切に施すことができる。また、圧延方向に2%の一軸ひずみ付与後に170℃で20分間の熱処理を施した後の0.2%耐力を160MPa以上と非常に高くでき、最終製品(例えば、自動車レインフォース)の強度を高めることができる。また、Cuが0.2質量%以下、Znが1.0質量%以下と少ないので、耐食性を高めることができる。さらに、平均結晶粒径が30μm以下と小さいので、加工性を向上できる。
また、粗大なMg-Si化合物の存在割合を7.0×10個/mm以下と適正化することにより、部品成型時のプレス成形性に必要な材料強度を確保しつつ、その後の部品塗装工程における負荷熱によって、時効硬化を生じさせて最終製品での高い強度を得ることができる。さらに、圧延面の立方体方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率と、Goss方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率との和(方位面積率)が5%以上であり、この立方体方位(Cube方位){001}<100>及びGoss方位{110}<001>では、結晶面(圧延面)上のすべり線を、曲げ軸に対して45°および135°と対称性を良好にすることができるため、方位面積率を一定上に高めることで、曲げ外側におけるせん断帯形成が抑制され、曲げ加工性を大幅に向上できる。加えて、導電率が38%IACS以上43%IACS以下とされているので、アルミニウム合金板の0.2%耐力及び170℃で20分間の熱処理後の0.2%耐力のそれぞれを上記数値範囲にすることができる。また、導電率を43%IACS以下であれば金属間化合物が粗大化することがないので、耐食性が低下することを抑制できる。
そして、上述したような車体部品用アルミニウム合金板に対してプレス成形加工を施した後、塗装を施すことにより、優れた成形性、強度および耐食性を有する自動車レインフォースを提供できる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、自動車レインフォースに加工される例を説明したが、これに限らず、レインフォース以外の車両骨格部品や外板等の車体部品にこの車体部品用アルミニウム合金板を適用することも可能である。また、シャーシ部品に適用することも可能であり、本発明において車体部品にはシャーシ部品も含むものとする。
実施例1~17及び比較例1~12のアルミニウム合金を以下に示す方法で製造し、得られた各試料の0.2%耐力及び伸びを測定した後、成形性を評価した。以下に詳しく説明する。
実施例1~17及び比較例1~12の原料となるアルミニウム合金の組成(成分)は、表1に示す通りとした。
これらのアルミニウム合金を溶解しアルミニウム合金溶湯を生成し、半連続鋳造により鋳造した。半連続鋳造法により得られた鋳塊に対して、550℃で3時間の均質化処理を施した後、510℃で1時間保持する均熱処理を施し、表2に示す各種条件にて熱間圧延を行った後、冷間圧延を施すことにより厚さ1.5mmの板材を形成した。この板材を100℃/秒以上の加熱速度で520℃に加熱して20秒以下保持してから、50℃/秒の冷却速度で100℃以下に冷却する溶体化処理を施した後、50℃で72時間保持する時効処理を施し、各試料とした。
なお、表2の熱間圧延条件において、圧延速度は、圧延条件B~Dでは、各欄ごとに下限値以上、上限値未満で範囲を示しており(例えば圧延条件Dの1パス目では20m/min以上50m/min未満)、圧延条件Aでは各欄ごとに下限値以上、上限値以下(1パス目であれば100m/min以上150m/min以下)で範囲を示している。
(0.2%耐力の測定)
0.2%耐力については、JISZ2241に準ずる方法により測定した。具体的には、得られた各試料から圧延方向と平行にサンプルを切り出してJIS5号形状の試験片を作成し、常温で引張試験を実施し、耐力(MPa)を測定した。なお、引張速度は、5mm/分とした。
(伸びの測定)
伸びについては、JISZ2241に準ずる方法により測定した。具体的には、得られた各試料から圧延方向と平行にサンプルを切り出してJIS5号形状の試験片を作成し、常温で引張試験を実施し、伸びを測定した。なお、ここでいう伸びとは、JISZ2241に基づく破断後の永久伸びを原標点距離に対する百分率で表したものである。
(導電率)
導電率については、4端子法にて測定した。20~25℃の室温環境にて試料に対し500mAの電流を流し、電圧値から抵抗を算出し、その後、導電率を算出した。
(化合物粒子分布状態の観察)
製造したアルミニウム合金について、圧延方向に平行な断面を観察した。観察はイオンミリング法に基づくCP加工(断面加工)を施した断面を電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)にて行った。観察した画像を基に画像解析によって化合物粒子(Mg-Si化合物粒子)の円相当径と分布密度を算出し、円相当径が1.0μm以上のMg-Si化合物粒子の数密度(個/mm)を表3に示した。
(結晶粒径)
金属組織を露出させる方法として、アルミニウム合金板の圧延方向に対し平行に切断した断面をエメリー紙にて研磨し、荒バフ研磨、仕上げ研磨を施した後、水洗、乾燥を実施し、更に、バーカー氏液中で、浴温:25℃、印加電圧:30V、印加時間:120秒の条件で陽極酸化処理を施す方法を適用した。処理後の試料について、偏光をかけた光学顕微鏡を用いて撮影し、切断法により平均結晶粒径を算出した。
(方位面積率)
結晶粒のCube方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率(Cube方位面積率)と、Goss方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率(Goss方位面積率)との和(方位面積率)は、EBSD(Electron BackScatter Diffraction)法にて測定した結晶粒方位分布マップOIM(Orientation Imaging Microscopy)像にCube{001}<100>方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積分率と、Goss方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積分率との和を方位面積率として測定した。具体的には、前述したアルミニウム合金板の圧延方向の板厚断面の0.20mm×1.5mm(板厚)の測定領域に対して、1μmのピッチで電子線を走査して、各測定点の結晶方位を測定し、測定点間の方位差から判定した結晶粒のうち、Cube方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒及びGoss方位との方位差が15°以内にある方位を有する結晶粒のそれぞれについて、測定面積に対する平均面積率(%)を測定してCube方位面積率及びGoss方位面積率を算出し、これらの和を方位面積率とした。
(成形性の評価)
成形性の評価については、JISZ2248に基づく180°密着曲げを実行した際に生じる割れ、しわの発生具合を目視にて評価した。この場合、しわがほとんど発生しておらず、割れていないものを非常に良好(◎)と評価し、一部にしわが発生しているものの割れていないものを良好(〇)と評価し、割れが発生しているものを不可(×)と評価した。
(製品強度の評価)
試料に圧延方向に2%の一軸歪を付与した後、170℃で20分間の熱処理後の0.2%耐力を製品強度と想定した。その耐力が180MPa以上のものを非常に良好(◎)と評価し、160MPa以上180MPa未満のものを良好(〇)と評価し、160MPa未満のものを不可(×)と評価した。
(耐食性の評価)
耐食性評価として、塩水噴霧試験(SST)を1000時間実施した。この腐食試験後のサンプルについて、リン酸クロムによって腐食生成物を除去後、腐食減量を測定した。この結果に基づいて、腐食減量が15.0mg/cm未満のものを良好(〇)、15.0mg/cm以上のものを不可(×)と評価した。
これら耐力、伸び、導電率、円相当径が1.0μm以上のMg-Si化合物の数密度、結晶粒径、Cube方位面積率、Goss方位面積率、方位面積率、170℃熱処理後の耐力については表3に示し、各種評価については、表4に示した。
Figure 2022139748000001
Figure 2022139748000002
Figure 2022139748000003
Figure 2022139748000004
表3及び表4に示したように、Fe:0.5質量%を超え1.2質量%以下、Si:1.0質量%以上2.0質量%以下、Cu:0.2質量%以下、Mn:0.5質量%以上1.5質量%以下、Mg:0.4質量%以上1.2質量%以下、Zn:1.0質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有し、平均結晶粒径が30μm以下であり、0.2%耐力が120MPa以上175MPa以下で、伸びが20%以上であり、圧延方向に2%の一軸ひずみ付与後に170℃で20分間の熱処理を施した後の0.2%耐力が160MPa以上である実施例1~17は、成形性及び製品強度がいずれも良好又は非常に良好となり、耐食性もすべて良好であった。
一方、比較例1は、Fe成分が少なすぎて結晶粒径が大きくなるとともに、0.2%耐力が低くなったので、成形性が悪化し不可となった。比較例2は、Fe成分が多すぎたため、成形性が不可となった他、Mg-Si化合物の数密度が大きくなった。比較例3は、Si成分が少なすぎたことから、170℃熱処理後の0.2%耐力が低くなったので、製品強度が不可となった。比較例4は、Si成分が多すぎたため耐食性が不可となった他、0.2%耐力が高くなり、成形性が不可となった。比較例5は、Cu成分が多すぎたことから、耐食性が不可となった他、0.2%耐力が高くなり、成形性も不可となった。比較例6は、Mn成分が少なすぎて、0.2%耐力及び170℃熱処理後の0.2%耐力が低くなったので、成形性及び製品強度のいずれもが不可となった。比較例7は、Mn成分が多すぎて導電率が高くなるのに伴いMg-Si化合物の数密度が大きくなり過ぎた結果、170℃熱処理後の0.2%耐力が低くなったので、製品強度が不可となった。
また、比較例8は、Mg成分が少なすぎたことから、170℃熱処理後の0.2%耐力が低くなったので、製品強度が不可となった。比較例9は、Mg成分が多すぎたことから、0.2%耐力が低くなり、成形性が不可となった。比較例10~12は、熱間圧延の条件がDであり、他の条件A~Cに比べて、1パス目及び2パス目の圧延速度が低かった。このため、比較例11及び12は、伸び及び方位面積率が低くなるとともに、170℃熱処理後の0.2%耐力が低くなったので、成形性及び製品強度のいずれもが不可となった。また、比較例10は、Zn成分が多量に含まれていたことから耐食性が不可となった他、結晶粒径が大きく、方位面積率が低くなるとともに、170℃熱処理後の0.2%耐力も低くなったので成形性及び製品強度のいずれもが不可となった。

Claims (5)

  1. Fe:0.5質量%を超え1.2質量%以下、Si:1.0質量%以上2.0質量%以下、Cu:0.2質量%以下、Mn:0.5質量%以上1.5質量%以下、Mg:0.4質量%以上1.2質量%以下、Zn:1.0質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなる組成を有し、平均結晶粒径が30μm以下であり、0.2%耐力が120MPa以上175MPa以下で、伸びが20%以上であり、圧延方向に2%の一軸ひずみ付与後に170℃で20分間の熱処理を施した後の0.2%耐力が160MPa以上であることを特徴とする車体部品用アルミニウム合金板。
  2. Cr:0.01質量%以上0.10質量%以下、Ti:0.01質量%以上0.10質量%以下、Zr:0.01質量%以上0.10質量%以下のうち、1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の車体部品用アルミニウム合金板。
  3. 円相当径が1.0μm以上のMg-Si系第二相粒子が7.0×10個/mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車体部品用アルミニウム合金板。
  4. 圧延方向の断面の立方体方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率と、Goss方位との方位差が15°以内にある方位を持つ結晶粒の全結晶粒に対する面積率との和が5%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車体部品用アルミニウム合金板。
  5. アルミニウムスクラップ材を含み、Fe:0.5質量%を超え1.2質量%以下、Si:1.0質量%以上2.0質量%以下、Cu:0.2質量%以下、Mn:0.5質量%以上1.5質量%以下、Mg:0.4質量%以上1.2質量%以下、Zn:1.0質量%以下を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金を溶解鋳造した後、500℃以上600℃以下で2時間以上保持する均質化処理を施し、次いで、50m/min以上の圧延速度で複数パスの熱間圧延を行った後、冷間圧延することにより、厚さ0.8mm以上2.5mm以下の板材を形成し、前記板材を100℃/秒以上の加熱速度で500℃以上550℃以下に加熱して15秒以上120秒以下保持してから、200℃/秒以上の冷却速度で100℃以下に冷却する溶体化処理を施した後、14日以上の室温保管による時効処理または50℃で72時間の時効処理を施すことを特徴とする車体部品用アルミニウム合金板の製造方法。
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