JP2022137340A - 造形液、立体造形用キット、および立体造形物の製造方法 - Google Patents

造形液、立体造形用キット、および立体造形物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】強度および熱分解性に優れたグリーン体を造形できる造形液などの提供。【解決手段】単官能モノマーと、多官能モノマーと、を含有する造形液であって、前記単官能モノマーとして熱分解性モノマーを含み、前記単官能モノマーの含有量Aと前記多官能モノマーの含有量Bとの質量比(A/B)が、65/35~95/5であり、前記造形液の樹脂膜における熱分解残渣率が5.0質量%以下である造形液とする。【選択図】なし

Description

本発明は、造形液、立体造形用キット、および立体造形物の製造方法に関する。
従来より、金属粉体を用いた立体造形においては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)等の水溶性樹脂を水系溶媒中へ溶解した水溶性の造形液が広く用いられている。しかし、このような水溶性の造形液は、アルミニウム、マグネシウム等のイオン化傾向が高く、酸化され易い金属粉体を用いた立体造形に適用することは困難である。
前記課題を解決するため、樹脂被覆した金属粉体に対する造形液として架橋剤および有機溶剤を含有する架橋性の造形液の適用が試みられている。金属粉体を樹脂被覆することによってグリーン体中の樹脂含有量が多くなり、グリーン体の強度を高めることができる。
また、乾燥微粒子材料と、液体モノマー、および開始剤を含む3次元印刷法に用いられる材料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
本発明は、強度および熱分解性に優れたグリーン体を造形できる造形液を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としての本発明の造形液は、単官能モノマーと、多官能モノマーと、を含有する造形液であって、前記単官能モノマーとして熱分解性モノマーを含み、前記単官能モノマーの含有量Aと前記多官能モノマーの含有量Bとの質量比(A/B)が、65/35~95/5であり、前記造形液の樹脂膜における熱分解残渣率が5質量%以下である。
本発明によると、強度および熱分解性に優れたグリーン体を造形できる造形液を提供することができる。
図1Aは、本発明の立体造形物の製造方法に用いられる立体造形物の製造装置の動作の一例を示す概略図である。 図1Bは、本発明の立体造形物の製造方法に用いられる立体造形物の製造装置の動作の他の一例を示す概略図である。 図1Cは、本発明の立体造形物の製造方法に用いられる立体造形物の製造装置の動作の他の一例を示す概略図である。 図1Dは、本発明の立体造形物の製造方法に用いられる立体造形物の製造装置の動作の他の一例を示す概略図である。 図1Eは、本発明の立体造形物の製造方法に用いられる立体造形物の製造装置の動作の他の一例を示す概略図である。
本明細書においては、「粉体」は「粉末」又は「粉末材料」と称することもある。「造形液」は「硬化液」又は「反応液」と称することもある。また、硬化物が積層した立体造形物を「グリーン体」、「焼結体」、「成形体」、又は「造形物」と称することもある。「グリーン体」を熱処理して脱脂したものを「脱脂体」と称することもある。「グリーン体」と「脱脂体」とを合わせて「焼結前駆体」と称することもある。
(造形液)
本発明の造形液は、単官能モノマーと、多官能モノマーと、を含有する造形液であって、前記単官能モノマーとして熱分解性モノマーを含み、前記単官能モノマーの含有量Aと前記多官能モノマーの含有量Bとの質量比(A/B)が、65/35~95/5であり、前記造形液の樹脂膜における熱分解残渣率が5質量%以下であり、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
従来の架橋性の造形液では、反応性を高めるため、金属粉体を被覆した樹脂を有機溶剤により可塑化しなければならないので、被覆樹脂と有機溶剤とは相溶性を有することが必要である。また、従来の架橋性の造形液は、被覆樹脂と有機溶剤の相溶性が高い場合、乾燥工程において粉体に対して造形液を付与していない非造形部に有機溶剤の蒸気が接触することによって、非造形部が硬化してしまうという問題がある。
従来の特許文献1(特許第4624626号公報)に記載の材料は、3次元印刷法により得られた硬化物を焼結処理しないでそのまま利用するものであり、脱脂焼結に適した硬化物の組成については開示されていない。使用する反応性モノマーの具体的な例示はなく、グリーン体の熱分解性についても開示されていない。グリーン体の熱分解性が悪いと、焼結自体が進行しないことがあり、焼結できたとしても焼結体の密度が低いという問題がある。
本発明の造形液においては、単官能モノマーと、多官能モノマーと、を含有する造形液であって、単官能モノマーとして熱分解性モノマーを含み、単官能モノマーの含有量Aと多官能モノマーの含有量Bとの質量比(A/B)が、65/35~95/5であり、造形液の樹脂膜における熱分解残渣率が5質量%以下であることによって、得られるグリーン体が熱分解性に優れているため、焼結工程において焼結阻害が生じないので、密度、強度、熱伝導率、電気伝導度等が良好な造形物(焼結体)が得られる。また、グリーン体が熱分解性に優れるため、脱脂工程にかかる時間を短くできるので、生産性が高くなる。
更に、本発明においては、グリーン体から非造形部の固着を取り除くために洗浄液(湿式除去)を用いる必要がなく、乾式除去を行うことができるため、生産性が高く、副生産物(廃液)が発生しない。なお、湿式除去の場合は乾燥工程が必要となり、手間がかかり、生産性が低下する。
本発明においては、造形液の樹脂膜における熱分解残渣率が5.0質量%以下であり、4質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
造形液の樹脂膜とは、造形液単体に熱をかけることにより形成される硬化体である。一定の形状が保たれていればよく、また、形状は膜状に限らない。
造形液の樹脂膜における熱分解残渣率が5.0質量%以下であると、熱分解性に優れたグリーン体が得られる。
ここで、造形液の樹脂膜における熱分解残渣率は、以下のようにして測定することができる。
造形液2gを直径5cmのテフロン(登録商標)シャーレに入れ、窒素ガスを充填して酸素濃度を5体積%以下とした80℃の恒温槽で6時間処理して樹脂膜を得る。得られた樹脂膜を8mg測り取り、熱分析装置Thermoplus EVOIIと差動型示差熱天秤TG-DTA(株式会社リガク製)にて、窒素ガスフロー200ml/minで50℃から450℃に昇温速度20℃/minで昇温させた後、450℃で30分間保持した時の残渣重量を求め、下記式より熱分解残渣率を算出することができる。
熱分解残渣率(%)=(残渣重量/TG測定前の重量)×100
本発明の造形液は、単官能モノマーと、多官能モノマーと、を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記造形液を用いることによって、脱脂工程および焼結工程に適した強度と熱分解性を有するグリーン体が得られる。
<単官能モノマー>
単官能モノマーとしては、熱分解性モノマー、側鎖に脂環構造を有するモノマーなどが挙げられる。
-熱分解性モノマー-
熱分解性モノマーは、モノマーの樹脂膜における熱分解残渣率が1質量%以下となるモノマーを意味する。
ここで、モノマーの樹脂膜の熱分解残渣率は、以下のようにして測定することができる。
モノマーおよび重合開始剤を含むモノマー液2gを直径5cmのテフロン(登録商標)シャーレに入れ、窒素ガスを充填して酸素濃度を5体積%以下とした80℃の恒温槽で6時間処理して樹脂膜を得る。得られた樹脂膜を8mg測り取り、熱分析装置Thermoplus EVOIIと差動型示差熱天秤TG-DTA(株式会社リガク製)にて、窒素ガスフロー200ml/minで50℃から450℃に昇温速度20℃/minで昇温させた後、450℃で30分間保持した時の残渣重量を求め、下記式より熱分解残渣率を算出することができる。
熱分解残渣率(%)=(残渣重量/TG測定前の重量)×100
熱分解性モノマーとしては、例えば、メタクリル酸ヒドロキシモノマーが挙げられる。
通常、単官能モノマーは、熱分解性を示すためには極性基を持たないことが望ましいと考えられるが、本発明者が鋭意検討を重ねた結果、メタクリル酸ヒドロキシモノマーの中でも、2-ヒドロキシエチルメタクリレートは極性基を有しているにも関わらず、他の種々の単官能モノマーを凌駕する熱分解性を示すことを知見した。
前記熱分解性モノマーの含有量は、造形液の全量に対して、20質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。前記熱分解性モノマーの含有量が20質量%以下であると、得られるグリーン体の強度と熱分解性を両立することができる。
-側鎖に脂環構造を有するモノマー-
造形液は、2-ヒドロキシエチルメタクリレートだけではグリーン体の強度が不足するため、更に側鎖に脂環構造を有する単官能モノマーを添加してグリーン体の強度を底上げすることが好ましい。
側鎖に脂環構造を有するモノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、4-t-ブチルシクロへキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、グリーン体の強度の観点から、(メタ)アクリロイルモルフォリンが特に好ましい。
側鎖に脂環構造を有するモノマーの含有量は、造形液の全量に対して、50質量%以上が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
側鎖に脂環構造を有するモノマーの含有量が50質量%以上であると、グリーン体の強度を向上させることができる。
単官能モノマーの含有量は、造形液の全量に対して、70質量%以下が好ましく、80質量%以上がより好ましい。単官能モノマーの含有量が70質量%以上であると、得られるグリーン体の強度と熱分解性を両立することができる。
<多官能モノマー>
多官能モノマーとしては、2官能のジアクリレート又は3官能のトリアクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、増粘効果が低くインクジェットヘッドでの吐出性が良好な点から、2官能のジアクリレートが好ましい。
多官能モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、3-メチル-1,5ペンタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、鳥メチルプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート、グリセリンプロポキシトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールアルコキシテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどが挙げられる。
多官能モノマーの含有量は、造形液の全量に対して、10質量%以上30質量%以下が好ましく、10質量%以上20質量%以下がより好ましい。多官能モノマーの含有量が10質量%以上30質量%以下であると、グリーン体の強度を向上させることができる。多官能モノマーの含有量が10質量%未満であると、架橋の効果が小さくグリーン体の強度が不足してしまうことがあり、30質量%を超えると、靭性が低下し、十分なグリーン体の強度が得られないことがある。
単官能モノマーの含有量Aと多官能モノマーの含有量Bとの質量比(A/B)は、65/35~95/5であり、80/20~90/10であることが好ましい。
質量比(A/B)が65/35~95/5であると、強度および熱分解性に優れたグリーン体が得られる。
<熱重合開始剤>
本発明の造形液は、熱重合開始剤を含有していてもよい。熱重合開始剤とは加熱によってラジカルを発生させる化合物である。重合開始剤を使用することで、金属の酸化を抑制しつつ、造形液を硬化させることができる。
熱重合開始剤としては、金属粉体を酸化させない点からアゾ重合開始剤が好ましい。アゾ重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、造形液の経時安定性と反応温度との両立の観点から、2,2’-アゾイソブチロニトリルが好ましい。
前記熱重合開始剤の含有量は、反応性モノマー(熱分解性モノマー、脂環構造を有するモノマー、多官能モノマー)100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上1質量部以下であることがより好ましい。
<その他の成分>
その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、乾燥防止剤、粘度調整剤、浸透剤、消泡剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、着色剤、保存剤、安定化剤などが挙げられる。
界面活性剤は、造形液の表面張力などを調整する目的で添加することが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが挙げられる。
本発明の造形液は実質的に水を含有しないことが好ましい。これにより、粉体の基材が高活性金属、言い換えると禁水材料(例えば、アルミニウム、チタンなど)であっても適用することができるためである。なお、実質的に水を含有しないとは、水の含有量が造形液全量に対して1.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が更に好ましい。また、造形液における水の含有量が公知かつ技術常識の手法を用いた場合において検出限界以下であることが特に好ましい。
本発明の造形液は実質的に粒子等の固形分を含有しないことが好ましい。これにより、インクジェットヘッドなどの造形液付与手段からの吐出が安定化し、粉体の層に造形液を付与して形成した硬化物の強度が充分に得られ、寸法精度が向上する。なお、実質的に固形分を含有しないとは、固形分の含有量が造形液全量に対して1.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることが更に好ましい。また、造形液における固形分の含有量が公知かつ技術常識の手法を用いた場合において検出限界以下であることが特に好ましい。
-造形液の調製方法-
造形液の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱分解性モノマー、多官能モノマー、側鎖に脂環構造を有するモノマー、および熱重合開始剤、更に必要に応じてその他の成分を添加し、混合撹拌する方法などが挙げられる。
-造形液の物性等-
造形液の粘度は、25℃で、3mPa・s以上20mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上10mPa・s以下がより好ましい。粘度が3mPa・s以上、或いは、20mPa・s以下であると、造形液のインクジェットノズルからの吐出が安定化し、粉体に造形液を付与して形成した硬化物の強度が充分に得られ、寸法精度が良好である。
なお、粘度は、例えば、JIS K7117に準拠して測定することができる。
造形液の静的表面張力は、25℃で、40N/m以下が好ましく、10N/m以上30N/m以下がより好ましい。静的表面張力が、40N/m以下であると、インクジェットノズルからの吐出が安定化し、粉体層に造形液を付与して形成した硬化物の強度が充分に得られ、寸法精度が良好である。
静的表面張力は、例えば、協和界面科学株式会社製のDY-300により測定することができる。
(立体造形用キット)
本発明の立体造形用キットは、粉体と、造形液と、を有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
<造形液>
造形液としては、単官能モノマーと、多官能モノマーとを含有する本発明の造形液が用いられる。
<粉体>
粉体としては、基材単独の粉体、および基材表面に有機材料を被覆した粉体の少なくともいずれかを用いることができる。
-基材-
基材としては、粉体乃至粒子の形態を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、その材質としては、例えば、金属、セラミックス、カーボン、ポリマー、木材、生体親和材料、砂、磁性材料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、極めて高強度な立体造形物を得る観点から、最終的に焼結処理(工程)が可能な金属、セラミックスが好ましい。
金属としては、材質として金属を含むものであれば特に限定されるものではなく、例えば、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、鉛(Pd)、銀(Ag)、インジウム(In)、錫(Sn)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ネオジウム(Nd)、又はこれらの合金などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、(Fe)、銅(Cu)、銀(Ag)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、又はこれらの合金が好ましく、アルミニウム合金がより好ましい。
アルミニウム合金としては、例えば、AlSi10Mg、AlSi12、AlSiMg0.6、AlSiMg、AlSiCu、Scalmalloy、ADC1などが挙げられる。
セラミックスとしては、例えば、酸化物、炭化物、窒化物、水酸化物などが挙げられる。
酸化物としては、例えば、金属酸化物などが挙げられる。金属酸化物としては例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)などが挙げられる。
基材としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、純Al(東洋アルミニウム株式会社製、A1070-30BB)、純Ti(大阪チタニウムテクノロジーズ社製)、SUS316L(山陽特殊製鋼株式会社製、商品名:PSS316L);AlSI10Mg(東洋アルミニウム株式会社製、Si10MgBB);SiO(株式会社トクヤマ製、商品名:エクセリカSE-15K)、AlO(大明化学工業株式会社製、商品名:タイミクロンTM-5D)、ZrO(東ソー株式会社製、商品名:TZ-B53)などが挙げられる。
なお、基材は、有機材料との接着性の向上やコーティング性の向上を行う目的で公知の表面処理(表面改質処理)を施してもよい。
基材の体積平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、2μm以上100μm以下が好ましく、8μm以上50μm以下がより好ましい。
基材の体積平均粒子径が、2μm以上であると、凝集の影響が増加することを防ぎ、基材への有機材料コーティングを行いやすくなり、歩留りの低下や造形物の製造効率の低下、基材の取扱性やハンドリング性の低下を防止することができる。また、体積平均粒子径が100μm以下であると、粒子同士の接点の減少や空隙の増加を防ぐことができ、立体造形物、およびその焼結物の強度が低下することを防ぐことができる。
基材の粒度分布としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、粒度分布はよりシャープである方が好ましい。
基材の体積平均粒子径および粒度分布は、公知の粒径測定装置を用いて測定することができ、例えば、粒子径分布測定装置マイクロトラックMT3000IIシリーズ(マイクロトラックベル社製)などが挙げられる。
基材は、従来公知の方法を用いて製造することができる。粉体乃至粒子状の基材を製造する方法としては、例えば、固体に圧縮、衝撃、摩擦等を加えて細分化する粉砕法、溶湯を噴霧させて急冷粉体を得るアトマイズ法、液体に溶解した成分を沈殿させる析出法、気化させて晶出させる気相反応法等が挙げられる。
基材としては、その製造方法に制限されないが、より好ましい方法としては、例えば、球状の形状が得られ、粒径のバラツキが少ない点からアトマイズ法が挙げられる。アトマイズ法としては、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、遠心アトマイズ法、プラズマアトマイズ法などが挙げられ、いずれも好適に用いられる。
-有機材料-
基材表面に有機材料を被覆した粉体において、有機材料としては樹脂が好適に用いられる。
樹脂としては、基材を被覆している状態の樹脂に限らず、基材を被覆していた樹脂が造形液に溶解している状態の樹脂も含む。また、「被覆」とは、基材の表面の少なくとも一部が被覆樹脂によって覆われている状態を表し、基材の表面の全てが樹脂によって覆われている状態に限定されない。また、「造形液に溶解」とは、例えば、30℃の造形液100gに被覆樹脂の材料を1g混合して撹拌したとき、その90質量%以上が溶解することを表す。
樹脂としては、基材として使用可能な活性の高い金属(高活性金属)に対して反応性が低いことが好ましい。特に、樹脂は、水に対する溶解性が低い有機溶剤に可溶であることがより好ましい。これにより、基材が高活性金属、言い換えると禁水材料(例えば、アルミニウム、チタンなど)であっても適用することができる。
樹脂としては、造形液と反応して架橋構造を形成する反応性官能基を有していてもよい。反応性官能基は、例えば、アクリル基、ビニル基などが挙げられる。これらの中でも、反応速度が速いアクリル基が好ましい。
脱脂工程又は焼結工程において樹脂が造形物中に残存することで焼結阻害を起こさないようにするために、樹脂単独を450℃で加熱した場合に、95質量%以上が熱分解するものであることが好ましい。
樹脂としては、水酸基を有する樹脂であることが好ましく、例えば、ポリビニルアセタール(ガラス転移温度:107℃)、ポリビニルブチラール(ガラス転移温度:67℃)、ポリアクリルポリオール(ガラス転移温度:80℃)、ポリエステルポリオール(ガラス転移温度:133℃)、ポリブタジエンポリオール(ガラス転移温度:-17℃)、エチルセルロース(ガラス転移温度:145℃)、ニトロセルロース(ガラス転移温度:50℃)などが挙げられる。他にも、酢酸ビニル共重合体(塩化ビニル-酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル等)の部分鹸化体、ポリエーテルポリオール、フェノール系ポリオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリアクリルポリオールが好ましい。
樹脂は、分子末端ではなく分子内に水酸基が多数存在し、重量平均分子量および水酸基価が一定以上であることが好ましい。
重量平均分子量としては、100,000以下が好ましく、2,000以上100,000以下がより好ましい。また、樹脂は、重量平均分子量が100,000以下で常温固体であることが好ましい。
水酸基価としては、基材への密着性から10mgKOH/g以上がより好ましい。
樹脂としては、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、ポリアクリルポリオール(DIC株式会社製、アクリディックWFU-580)、ポリエステルポリオール(DIC株式会社製のポリライトOD-X-668、株式会社ADEKA製のアデカニューエースYG-108)、ポリブタジエンポリオール(日本曹達株式会社製、GQ-1000)、ポリビニルブチラール(株式会社クラレ製、モビタールB20H)、ポリビニルアセタール(積水化学工業株式会社製、エスレックBM-2,KS-1)、エチルセルロース(日進化成株式会社製、ETHOCEL)、ポリアクリル(共栄社化学株式会社製、オリコックスKC-3000)などが挙げられる。
基材を被覆している樹脂の厚みは、平均厚みで、5nm以上1,000nm以下が好ましく、5nm以上500nm以下がより好ましく、50nm以上300nm以下が更に好ましく、100nm以上200nm以下が特に好ましい。平均厚みが5nm以上であると、造形物の強度が向上する。また、平均厚みが1,000nm以下であると、造形物の寸法精度が向上する。
なお、平均厚みは、例えば、粒子をアクリル樹脂等に包埋した後、エッチング等を行って基材の表面を露出させた後、走査型トンネル顕微鏡STM、原子間力顕微鏡AFM、走査型電子顕微鏡SEMなどを用いて、任意の10箇所の厚みを測定およびその平均値を算出することにより得ることができる。
粒子の表面積に対する樹脂の表面積の割合(表面被覆率)は、15%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましい。表面被覆率が15%以上であると、造形物の強度および寸法精度が向上する。
なお、表面被覆率は、例えば、粉体の写真を取得し、二次元の写真に写る任意の10個の粒子において測定する。具体的には、粒子の表面の全面積に対する、樹脂で被覆された部分の面積の割合(%)を測定し、その平均値を算出してこれを表面被覆率とする。なお、樹脂で被覆された部分の判断において、例えば、SEM-EDS等のエネルギー分散型X線分光法による元素マッピングの手法等を用いることができる。
基材表面に有機材料を被覆した粉体の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機材料を基材上に公知の被覆方法に従って被覆する方法などが好適に挙げられる。
有機材料の基材の表面への被覆方法としては、特に制限はなく、公知の被覆方法の中から適宜採用することができ、かかる被覆方法としては、例えば、転動流動コーティング法、スプレードライ法、撹拌混合添加法、ディッピング法、ニーダーコート法などが好適に挙げられる。また、これらの被覆方法は、公知の市販の各種コーティング装置、造粒装置などを用いて実施することができる。
-粉体の物性等-
粉体の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3μm以上250μm以下が好ましく、3μm以上200μm以下がより好ましく、5μm以上150μm以下が更に好ましく、10μm以上85μm以下が特に好ましい。
体積平均粒径が3μm以上であると、粉体の流動性が向上し、粉体(層)が形成しやすく積層した層表面の平滑性が向上するため、立体造形物の製造効率の向上、取り扱いやハンドリング性が向上すると共に寸法精度が向上する傾向にある。また、体積平均粒子径が250μm以下であると、粉体の粒子同士の空間の大きさが小さくなるため、立体造形物の空隙率が小さくなり、強度の向上に寄与する。従って、体積平均粒径が3μm以上250μm以下であることが、寸法精度と強度を両立させるのに好ましい。
粉体の粒度分布としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
粉体の特性としては、その安息角を測定した場合において、60°以下が好ましく、50°以下がより好ましく、40°以下が更に好ましい。
安息角が、60°以下であると、粉体を支持体上の所望の場所に効率よく安定に配置させることができる。
なお、安息角は、例えば、粉体特性測定装置(パウダテスタPT-N型、ホソカワミクロン株式会社製)などを用いて測定することができる。
-その他の成分-
立体造形用キットにおけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、流動化剤、フィラー、レベリング剤、焼結助剤、高分子樹脂粒子などが挙げられる。
流動化剤は、粉体からなる層等を容易にかつ効率よく形成し得る点で好ましい。
フィラーは、主に粉体の表面に付着させたり、粉体間の空隙に充填させたりするのに有効な材料である。効果としては、例えば、粉体の流動性の向上や、粉体同士の接点が増え、空隙を低減できることから、立体造形物の強度やその寸法精度を高めることができる。
レベリング剤は、主に粉体の表面の濡れ性を制御するのに有効な材料である。効果としては、例えば、粉体への造形液の浸透性が高まり、立体造形物の強度アップやその速度を高めることができ、形状を安定に維持させることができる。
焼結助剤は、得られた硬化物(焼結前駆体)を焼結させる際、焼結効率を高める上で有効な材料である。効果としては、例えば、硬化物(焼結前駆体)の強度を向上でき、焼結温度を低温化でき、焼結時間を短縮できる。
粉体は、各種の立体造形物、構造物の簡便かつ効率的な製造に好適に用いることができ、本発明の立体造形用キット、および本発明の立体造形物の製造方法に特に好適に用いることができる。
粉体に本発明の造形液を付与するだけで、複雑な立体形状を有する硬化物を簡便かつ効率よくしかも寸法精度よく製造することができる。こうして得られた硬化物は、充分な硬度を有するグリーン体(焼結前駆体)であり、手で持ったり、型に出し入れしたり、エアーブロー処理を行って余分な粉体を除去したりしても、型崩れを生じることがなく、取扱性、およびハンドリング性に優れる。硬化物は、そのまま使用してもよいし、焼結前駆体として更に焼結処理を施して成形物(立体造形物の焼結体)としてもよい。
(立体造形物の製造方法)
本発明の立体造形物の製造方法は、造形液付与工程と、硬化物形成工程とを含み、脱脂工程および焼結工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
<造形液付与工程>
造形液付与工程は、粉体に対し、本発明の造形液を付与する工程であり、造形液付与手段により実施される。「造形液」とは熱や電子線によって硬化性する性質を持ち、粒子表面で硬化し、粒子同士を結着させる液体組成物である。
粉体に対し造形液を付与する前に、粉体を支持体上(造形ステージ上)に配置させて粉体層を形成する。
-粉体層の形成-
粉体を支持体上(造形ステージ上)に配置させて粉体層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、薄層に配置させる方法としては、特許第3607300号公報に記載の選択的レーザー焼結方法に用いられる、公知のカウンター回転機構(平坦化ローラ)などを用いる方法、粉体をブラシ、ローラ、ブレード等の部材を用いて薄層に拡げる方法、押圧部材を用いて粉体の表面を押圧して薄層に拡げる方法、公知の粉体積層造形装置を用いる方法、などが好適に挙げられる。
粉体層形成手段として、カウンター回転機構、ブラシ乃至ブレード、押圧部材などを用いて、支持体上に粉体を薄層に載置させるには、例えば、以下のようにして行うことができる。
即ち、外枠(「造形槽」、「型」、「中空シリンダー」、「筒状構造体」などと称されることもある)内に、外枠の内壁に摺動しながら昇降可能に配置された支持体上に粉体を、カウンター回転機構などを用いて載置させる。このとき、支持体として、外枠内を昇降可能なものを用いる場合には、支持体を外枠の上端開口部よりも少しだけ下方の位置に配し、即ち、粉体層の厚み分だけ下方に位置させておき、支持体上に粉体を載置させる。以上により、粉体を支持体上に薄層に載置させることができる。
また、粉体を支持体上に薄層に載置させるには、公知の立体造形物の製造装置を用いて自動的にかつ簡便に行うこともできる。立体造形物の製造装置は、一般に、粉体を積層するためのリコーター(平坦化ローラ)と、粉体を支持体上に供給するための可動式供給槽と、粉体を薄層に載置し、積層するための可動式造形槽とを備える。粉体積層造形装置においては、供給槽を上昇させるか、造形槽を下降させるか、又はその両方によって、常に供給槽の表面は造形槽の表面よりもわずかに上昇させることができ、供給槽側からリコーターを用いて粉体を薄層に配置させることができ、リコーターを繰り返し移動させることにより、薄層の粉体を積層させることができる。
粉体層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一層当たりの平均厚みで、30μm以上500μm以下が好ましく、60μm以上300μm以下がより好ましい。
平均厚みが、30μm以上であると、粉体に造形液を付与して形成した粉体(層)による硬化物(焼結前駆体)の強度が充分であり、その後の焼結等の処理乃至取扱い時に型崩れ等の問題が生じることがない、500μm以下であると、粉体に造形液を付与して形成した粉体(層)による硬化物の寸法精度が向上する。
なお、平均厚みは、特に制限はなく、公知の方法に従って測定することができる。
粉体(層)に、造形液を付与する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ディスペンサ方式、スプレー方式、インクジェット方式などが挙げられる。
これらの中でも、ディスペンサ方式は、液滴の定量性に優れるが、塗布面積が狭くなり、スプレー方式は、簡便に微細な吐出物を形成でき、塗布面積が広く、塗布性に優れるが、液滴の定量性が悪く、スプレー流による粉体の飛散が発生する。このため、本発明においては、インクジェット方式が特に好ましい。インクジェット方式は、スプレー方式に比べ、液滴の定量性がよく、ディスペンサ方式に比べ、塗布面積が広くできる利点があり、複雑な立体形状を精度よくかつ効率よく形成し得る点で好ましい。
インクジェット法による場合、造形液付与手段は、インクジェット法により造形液を粉体層に付与可能なノズルを有する。なお、ノズルとしては、公知のインクジェットプリンターにおけるノズル(吐出ヘッド)を好適に使用することができ、また、インクジェットプリンターを造形液付与手段として好適に使用することができる。なお、インクジェットプリンターとしては、例えば、株式会社リコー製のSG7100などが好適に挙げられる。インクジェットプリンターは、ヘッド部から一度に滴下できる造形液量が多く、塗布面積が広いため、塗布の高速化を図ることができる点で好ましい。
本発明においては、造形液を精度よく、かつ高効率に付与可能なインクジェットプリンターを用いた場合においても、造形液が、粒子等の固形物や、樹脂等の高分子の高粘度材料を含有しないため、ノズル乃至そのヘッドにおいて目詰り等が発生せず、腐食等を生じさせることもなく、また、粉体層に付与(吐出)された際、粉体における有機材料に効率よく浸透可能であるため、立体造形物の製造効率に優れ、しかも樹脂等の高分子成分が付与されることがないため、予定外の体積増加等を生じることがなく、寸法精度のよい硬化物が容易にかつ短時間で効率よく得られる点で有利である。
<硬化物形成工程>
硬化物形成工程は、造形液を付与した粉体を硬化させて硬化物を形成する工程であり、硬化物形成手段により実施される。
「硬化物」とは、造形液中の反応性モノマー(熱分解性モノマー、脂環構造を有するモノマー、多官能モノマー)が反応し、流動性がない状態になることにより一定の立体形状が保たれている構造体を意味する。
造形液を付与した粉体を硬化させて硬化物を形成する方法としては、例えば、熱、電磁波、電子線、中性子線、又は2種以上の材料を混合する方法などが挙げられる。これらの中でも、最も安価でありかつ簡便である点から熱で硬化する方法が好ましい。また、電子線で硬化する方法は反応性モノマーの硬化速度が速く、粉体への高い浸透性により大きな厚みを有するグリーン体を造形できる点から好ましい。
熱硬化における加熱温度は100℃以下であることが好ましい。加熱は1層ごとに行ってもよく、造形液を塗布する硬化物形成工程、加熱により硬化する硬化物形成工程、積層工程を繰り返し行ってもよい。
熱硬化は、加熱により重合開始剤から発生するラジカルの失活を抑えるため、酸素濃度が5体積%以下の雰囲気下又は不活性雰囲気下で行うことが好ましい。不活性雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴンなどが挙げられる。
酸素濃度が5体積%以下の雰囲気又は不活性雰囲気の圧力は反応性モノマーの蒸発を抑えるため、0.05MPa以上1.0MPa以下であることが好ましい。
加熱方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オーブン等の一定の温度に設定された容器中に造形液を付与した粉体を投入する方法、造形層の外壁を加熱する方法、マイクロ波や赤外線を照射し、粉体や造形液を直接加熱する方法、又はこれらを2種以上組み合わせた方法などが挙げられる。なお、造形中に加熱を行ってもよい。
電子線照射は、電子線照射装置を用い、加速電圧は200kV以上500kV以下で行うことが好ましく、線量は10kGy以上500kGy以下で行うことが好ましい。電子線が金属粉末による遮蔽で減衰するため、200kV以上の加速電圧で行うことが好ましく、500kVを超えると、線源および遮蔽板が大きくなり、照射装置および造形装置が大型化してしまう。
電子線が到達する深さは、金属粉末の遮蔽による影響を受けるため、1層ごとに硬化させる方法が好ましい。具体的には、造形液を塗布する硬化物形成工程、電子線を照射する硬化物形成工程、積層工程を繰り返し行い、積層された硬化物を得ることができる。
電子線照射は、空気中又は不活性雰囲気下で行うことが好ましい。反応性モノマーの反応は空気中でも進行するが、空気中で電子線を照射した場合、オゾン等の有害物質を発生させるため、不活性ガスパージや十分な換気を行う必要がある。
本発明の立体造形物の製造方法は、上記造形液付与工程および硬化物形成工程を順次繰り返すことで積層物を形成する(以下、「積層工程」と称する)。「積層物」とは、造形液が付与された領域を有する粉体の層が複数積層された構造体である。
積層工程は、造形液が付与された領域を有する粉体の層である薄層上に、上記と同様にして、造形液付与工程と、硬化物形成工程と、を有し、これにより新たに積層させた粉体の層において造形液が付与された領域を形成する。なお、このとき、最上部の積層した粉体の薄層において生じる造形液が付与された領域は、その下に存在する粉体の薄層における造形液が付与された領域と連続する。その結果、粉体の層の二層分の厚みを有する造形液が付与された領域が得られる。
粉体層上に次の粉体層を積層するときの積層ピッチは50μm以上150μm以下であることが好ましい。
<脱脂工程>
本発明の立体造形物の製造方法は、グリーン体を加熱して有機成分を除去することで脱脂体を得る脱脂工程を有することが好ましい。「脱脂体」とは、グリーン体から架橋樹脂等の有機成分を脱脂することにより得られる立体物である。なお、後述する焼結工程前の造形物である硬化物、グリーン体、および脱脂体を総称して「焼結前駆体」と称する。
脱脂工程は、脱脂手段を用い、有機成分の熱分解温度以上であって且つ基材を構成する材料の融点又は固相線温度より低い温度でグリーン体を加熱することで有機成分を分解して除去する。脱脂手段としては、例えば、公知の焼結炉や電気炉などが挙げられる。
<焼結工程>
焼結工程は、硬化物に対し焼結処理を行う工程であり、焼結手段により実施される。
焼結工程は、硬化物形成工程において形成した硬化物が積層した立体造形物(グリーン体)を焼結する工程である。焼結工程を行うことにより、グリーン体を緻密化および一体化された金属乃至セラミックスの成形物(立体造形物の焼結体)とすることができる。
焼結手段としては、例えば、公知の焼結炉などが挙げられるが、上記の脱脂手段と同一の手段であってもよい。また、脱脂工程と焼結工程は、連続して実行されてもよい。
<その他の工程>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、乾燥工程、余剰粉体除去工程、後処理工程などが挙げられる。
-乾燥工程-
本発明の立体造形物の製造方法は、グリーン体を乾燥させてグリーン体中に残存する液体成分を除去する乾燥工程を有することが好ましい。
乾燥工程は、グリーン体中に含まれる有機溶剤等の液体成分のみならず、有機物を除去してもよい。乾燥手段としては、例えば、公知の乾燥機、恒温恒湿槽などを用いることができる。
-余剰粉体除去工程-
本発明の立体造形物の製造方法は、硬化物に付着している粉体である余剰粉体を除去してグリーン体を得る余剰粉体除去工程を有することが好ましい。「グリーン体」とは反応性モノマーが反応して、流動性が無い状態になることより一定の立体形状が保たれている立体物であって、硬化物を構成しない粉体である余剰粉体を除去する余剰粉体除去工程を経たものを表し、好ましくは余剰粉体が実質的に付着していない立体物を表す。
また、余剰粉体除去方法としては、エアーブローにより硬化物から余剰粉体を除去する方法、除去液に浸漬させることにより硬化物から余剰粉体を除去する方法などが挙げられる。
-後処理工程-
本発明の立体造形物の製造方法は、焼結体に対して後処理を行う後処理工程を有することが好ましい。後処理工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面保護処理工程、塗装工程などが挙げられる。
表面保護処理工程は、硬化物形成工程において形成した硬化物が積層した立体造形物(グリーン体)に保護層を形成等する工程である。この表面保護処理工程を行うことにより、硬化物を例えばそのまま使用等することができる耐久性等を硬化物の表面に与えることができる。保護層の具体例としては、耐水性層、耐候性層、耐光性層、断熱性層、光沢層、などが挙げられる。表面保護処理手段としては、公知の表面保護処理装置、例えば、スプレー装置、コーティング装置などが挙げられる。
塗装工程は、硬化物形成工程において形成した硬化物が積層した立体造形物(グリーン体)に塗装を行う工程である。塗装工程を行うことにより、グリーン体を所望の色に着色させることができる。塗装手段としては、公知の塗装装置、例えば、スプレー、ローラ、刷毛等による塗装装置などが挙げられる。
ここで、本発明の立体造形物の製造方法における造形の流れについて、図1A~図1Eを参照して説明する。図1A~図1Eは、本発明の立体造形物の製造方法に用いられる立体造形物の製造装置の動作の一例を示す概略図である。
まず、造形槽の造形ステージ上に、1層目の粉体の層30が形成されている状態から説明する。1層目の粉体の層30上に次の粉体の層を形成するときには、図1Aに示すように、供給槽の供給ステージ23を上昇させ、造形槽の造形ステージ24を下降させる。このとき、造形槽22における粉体の層の上面と平坦化ローラ12の下部(下方接線部)との間隔(積層ピッチ)がΔt1となるように造形ステージ24の下降距離を設定する。間隔Δt1は、特に制限されるものではないが、50μm以上150μm以下であることが好ましい。
本実施形態では、平坦化ローラ12は供給槽21および造形槽22の上端面に対してギャップが生じるように配置している。したがって、造形槽22に粉体20を移送供給して平坦化するとき、粉体の層の上面は供給槽21および造形槽22の上端面よりも高い位置になる。これにより、平坦化ローラ12が供給槽21および造形槽22の上端面に接触することを確実に防止できて、平坦化ローラ12の損傷が低減する。平坦化ローラ12の表面が損傷すると、造形槽22に供給した粉体の層31(図1D参照)の表面にスジが発生して平坦性が低下しやすくなる。
次いで、図1Bに示すように、供給槽21の上端面よりも高い位置に配置した粉体20を、平坦化ローラ12を矢印方向に回転しながら造形槽22側に移動することで、粉体20を造形槽22へと移送供給する(粉体供給)。更に、図1Cに示すように、平坦化ローラ12を造形槽22の造形ステージ24のステージ面と平行に移動させ、造形ステージ24の造形槽22上で所定の厚さΔt1になる粉体の層31を形成する(平坦化)。このとき、粉体の層31の形成に使用されなかった余剰の粉体20は余剰粉体受け槽29に落下する。粉体の層31を形成後、平坦化ローラ12は、図1Dに示すように、供給槽21側に移動されて初期位置(原点位置)に戻される(復帰される)。
ここで、平坦化ローラ12は、造形槽22および供給槽21の上端面との距離を一定に保って移動できるようになっている。一定に保って移動できることで、平坦化ローラ12で粉体20を造形槽22の上へと搬送させつつ、造形槽22上又は既に形成された硬化層30の上に均一厚さh(積層ピッチΔt1に相当)の粉体の層31を形成できる。なお、以下、粉体の層31の厚みhと積層ピッチΔt1とを区別せずに説明することがあるが、特に断りのない限り、同じ厚みであり、同じ意味である。また、粉体の層31の厚みhを実際に測定して求めてもよく、この場合、複数箇所の平均値とすることが好ましい。
その後、図1Eに示すように、液体吐出ユニットのヘッド52から造形液の液滴10を吐出して、次の粉体の層31に所望の形状の造形液被付与層30を積層形成する(造形)。次いで、上述した粉体層形成工程および造形液付与工程を繰り返して新たな造形液被付与層30を形成して積層する。このとき、新たな造形液被付与層30とその下層の造形液被付与層30は一体化する。以後、更に粉体層形成工程および造形液付与工程を繰り返し行い、積層物を完成させる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(モノマー液の調製例1~6)
表1に示す単官能モノマーを5分間マグネチックスターラーで混合した後、表1に示す熱重合開始剤を加えて、更に120分間マグネチックスターラーで混合し、十分に溶解した。
得られたモノマー液をディスポメンブレンフィルター(28CP020AS、アドバンテック株式会社製)でろ過し、No.1~6のモノマー液を調製した。なお、表1中の各成分の配合量は質量部である。
<モノマー液の熱分解残渣率の測定>
得られたNo.1~6のモノマー液2gを直径5cmのテフロン(登録商標)シャーレに入れ、窒素ガスを充填して酸素濃度を5体積%以下とした80℃の恒温槽で6時間処理して樹脂膜を得た。
得られた樹脂膜を8mg測り取り、熱分析装置Thermoplus EVOII差動型示差熱天秤TG-DTA(株式会社リガク製)にて、窒素ガスフロー200ml/minで50℃から450℃に昇温速度20℃/minで昇温させた後、450℃で30分間保持した時の残渣重量を求め、下記式より熱分解残渣率を算出した。結果を表1に示した。
熱分解残渣率(%)=(残渣重量/TG測定前の重量)×100
Figure 2022137340000001
表1中の各成分の詳細については、以下のとおりである。
*HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学株式会社製)
*LA:ラウリルアクリレート(共栄社化学株式会社製)
*ACMO:アクリロイルモルフォリン(KJケミカルズ株式会社製)
*IBXA:イソボルニルアクリレート(大阪有機化学株式会社製)
*TBCHA:4-t-ブチルシクロへキシルアクリレート(サートマー社製)
*TMCHA:3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート(サートマー社製)
*AIBN:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(富士フィルム和光純薬株式会社製)
表1の結果から、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)は、他の種々の単官能モノマーを凌駕する熱分解性を示すことがわかった。
(実施例1~14および比較例1~5)
<造形液の調製>
表2~表5に示す熱分解性モノマーおよび側鎖に脂環構造を有するモノマーを5分間マグネチックスターラーで混合した後、表2~表5に示す多官能モノマーを30分間マグネチックスターラーで混合し、十分に溶解した。その後、熱重合開始剤を加えて、更に120分間マグネチックスターラーで混合し、十分に溶解した。
得られた溶解液をディスポメンブレンフィルター(28CP020AS、アドバンテック株式会社製)でろ過し、実施例1~14および比較例1~5の造形液を調製した。なお、表2~表5中の各成分の配合量は質量部である。
<造形液の熱分解残渣率の測定>
表2~表5に示す各造形液2gを直径5cmのテフロン(登録商標)シャーレに入れ、窒素ガスを充填して酸素濃度を5体積%以下とした80℃の恒温槽で6時間処理して樹脂膜を得た。
得られた樹脂膜を8mg測り取り、熱分析装置Thermoplus EVOII差動型示差熱天秤TG-DTA(株式会社リガク製)にて、窒素ガスフロー200ml/minで50℃から450℃に昇温速度20℃/minで昇温させた後、450℃で30分間保持した時の残渣重量を求め、下記式より熱分解残渣率を算出した。結果を表2~表4に示した。
熱分解残渣率(%)=(残渣重量/TG測定前の重量)×100
<造形物の作製>
粉体としてAlSi10Mg粉(東洋アルミニウム株式会社製、Si10Mg-30BB、体積平均粒径:35μm)と、実施例1~14および比較例1~5の造形液とを用い、以下のようにしてグリーン体を作製した。
実施例12においては、粉体として、以下のようにして作製した樹脂被覆した金属粉体と、実施例12の造形液とを用いた。
-コート液の調製-
アクリルポリオール樹脂(東栄化成株式会社製、TZ#9515)6質量部に、アセトン114質量部を混合し、ウォーターバス中で50℃に加熱しながら、スリーワンモーター(新東科学株式会社製、BL600)を用いて1時間撹拌し、アクリルポリオールを有機溶剤に溶解させ、5質量%のアクリルポリオール溶解液120質量部を調製した。得られた調製液をコート液とした。なお、アクリルポリオールの5質量%溶液の20℃における粘度を粘度計(ブルックフィールド社製、回転式粘度計、DV-E VISCOMETER HADVE115型)を用いて測定したところ、5.0mPa・s~6.0mPa・sであった。
次に、市販のコーティング装置(パウレック社製、MP-01)を用いて、AlSi10Mg粉末(東洋アルミニウム株式会社製、Si10Mg-30BB、体積平均粒径:35μm)100質量部に対し、被覆樹脂が1質量部になるよう、コート液をコーティングし、金属粉体とした。
(1)図1A~図1Eに示したような立体造形物の製造装置を用いて、供給側粉体貯留槽から造形側粉体貯留槽に粉体を移送させ、支持体上に平均厚みが84μmの粉体による薄層を形成した。
(2)次に、形成した粉体による薄層の表面に、造形液を、公知のインクジェット吐出ヘッドのノズルから吐出した。なお、造形液の吐出領域は40mm×10mmの長方形形状とし、300dpiで1ボクセルあたりの造形液量を36pLとした。
(3)次に、上記(1)および(2)の工程を所定の3mmの総平均厚みになるまで繰返し、粉体による薄層を順次積層して積層物を形成した後、乾燥機(ヤマト科学株式会社製、DP300)を用いて、80℃にて6時間加熱することで硬化物を造形した。その後、余剰粉体を取り除き、実施例1~14および比較例1~5のグリーン体を得た。
<曲げ強度の測定方法>
得られた各グリーン体について、以下のようにして曲げ強度を測定した。グリーン体の曲げ強度の測定には、万能試験機(オートグラフ、型式AG-I、株式会社島津製作所製)を使用し、1kN用ロードセル、および3点曲げ治具を用いた。また、支点間距離は24mmとし、荷重点を1mm/分間の速度で変位させた際の応力を歪量に対してプロットし、破断点の応力を最大応力とした。なお、グリーン体は、スパチュラで余剰粉体を取り除いた上で測定に用いた。
Figure 2022137340000002
Figure 2022137340000003
Figure 2022137340000004
Figure 2022137340000005
表2~表5中の造形液の各材料の詳細については、以下の通りである。
-単官能モノマーおよび熱重合開始剤-
表1で説明したとおりである。
-多官能モノマー
*3EGDA:トリエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学株式会社製)
*4EGDA:テトラエチレングリコールジアクリレート(共栄社化学株式会社製)
*PE3A:ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学株式会社製)
表1~表5の結果から、実施例1~3および7~8は、熱分解性モノマーである2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と多官能モノマーが適正な含有量であるため、優れたグリーン体の熱分解性および曲げ強度を有していることがわかった。
実施例4~6は、実施例1のアクリロイルモルフォリン(ACMO)とは別の側鎖に脂環構造を有するモノマーを用いたものであり、実施例1に比べてグリーン体の曲げ強度はやや劣るものの、十分なグリーン体の熱分解性と曲げ強度を有していることがわかった。
実施例9および10は、実施例1の多官能モノマー(3EG-DA)とは別の多官能モノマーを用いたものであり、実施例9は架橋部の炭素数が増えてグリーン体の曲げ強度が若干低下したものの、十分な曲げ強度を有することがわかった。また、実施例10は、3官能の多官能モノマーを用いており増粘効果が大きいため、多官能モノマーの含有量を抑える必要があり、その結果、アクリロイルモルフォリン(ACMO)の含有量が増加するので、グリーン体の熱分解性が若干低下したものの、十分な熱分解性を有することがわかった。
これに対して、比較例1は、造形液中に熱分解性モノマーである2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)を含まないため、グリーン体の熱分解性が劣る結果となった。
比較例2は、造形液中の多官能モノマーの含有量が多すぎるため、グリーン体がもろくなり曲げ強度が不足する結果となった。
比較例3は、造形液中に多官能モノマーを含有しないため、グリーン体の曲げ強度が不足する結果となった。
比較例4は、造形液中の熱分解性モノマーである2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)の含有量が少ないため、グリーン体の熱分解性が劣る結果となった。
比較例5は、造形液中の多官能モノマーの含有量が少ないため、グリーン体の曲げ強度が不足する結果となった。
以上の結果により、造形液の樹脂膜の熱分解残渣率が高いと、造形液の樹脂膜の熱分解性が悪くなり、それに起因してグリーン体の熱分解性が悪くなることがわかった。
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 単官能モノマーと、多官能モノマーと、を含有する造形液であって、
前記単官能モノマーとして熱分解性モノマーを含み、
前記単官能モノマーの含有量Aと前記多官能モノマーの含有量Bとの質量比(A/B)が、65/35~95/5であり、
前記造形液の樹脂膜における熱分解残渣率が5.0質量%以下であることを特徴とする造形液である。
<2> 前記熱分解性モノマーの含有量が20質量%以下である、前記<1>に記載の造形液である。
<3> 前記熱分解性モノマーがメタクリル酸ヒドロキシモノマーである、前記<1>から<2>のいずれかに記載の造形液である。
<4> 前記熱分解性モノマーが2-ヒドロキシエチルメタクリレートである、前記<3>に記載の造形液である。
<5> 前記多官能モノマーが2官能モノマーである、前記<1>から<4>のいずれかに記載の造形液である。
<6> 更に側鎖に脂環構造を有するモノマーを50質量%以上含有する、前記<1>から<5>のいずれかに記載の造形液である。
<7> 前記側鎖に脂環構造を有するモノマーが(メタ)アクリロイルモルフォリンである、前記<6>に記載の造形液である。
<8> 熱重合開始剤を含有する、前記<1>から<7>のいずれかに記載の造形液である。
<9> 粉体に対し、前記<1>から<8>のいずれかに記載の造形液を付与する造形液付与工程と、
造形液を付与した粉体を硬化させて硬化物を形成する硬化物形成工程と、
を含むことを特徴とする立体造形物の製造方法である。
<10> 前記粉体が、基材単独の粉体および基材表面に有機材料を被覆した粉体の少なくともいずれかである、前記<9>に記載の立体造形物の製造方法である。
<11> 前記基材が金属およびセラミックスの少なくともいずれかを含む、前記<10>に記載の立体造形物の製造方法である。
<12> 前記硬化物に対し焼結処理を行う焼結工程を含む、前記<9>から<11>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法である。
<13> 粉体と、
前記<1>から<8>のいずれかに記載の造形液と、を有することを特徴とする立体造形用キットである。
<14> 前記粉体が、基材単独の粉体および基材表面に有機材料を被覆した粉体の少なくともいずれかである、前記<13>に記載の立体造形用キットである。
<15> 前記基材が金属およびセラミックスの少なくともいずれかを含む、前記<14>に記載の立体造形用キットである。
前記<1>から<8>のいずれかに記載の造形液、前記<9>から<12>のいずれかに記載の立体造形物の製造方法、および前記<13>から<15>のいずれかに記載の立体造形用キットによると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
特許第4624626号公報

Claims (15)

  1. 単官能モノマーと、多官能モノマーと、を含有する造形液であって、
    前記単官能モノマーとして熱分解性モノマーを含み、
    前記単官能モノマーの含有量Aと前記多官能モノマーの含有量Bとの質量比(A/B)が、65/35~95/5であり、
    前記造形液の樹脂膜における熱分解残渣率が5.0質量%以下であることを特徴とする造形液。
  2. 前記熱分解性モノマーの含有量が20質量%以下である、請求項1に記載の造形液。
  3. 前記熱分解性モノマーがメタクリル酸ヒドロキシモノマーである、請求項1から2のいずれかに記載の造形液。
  4. 前記熱分解性モノマーが2-ヒドロキシエチルメタクリレートである、請求項3に記載の造形液。
  5. 前記多官能モノマーが2官能モノマーである、請求項1から4のいずれかに記載の造形液。
  6. 更に側鎖に脂環構造を有するモノマーを50質量%以上含有する、請求項1から5のいずれかに記載の造形液。
  7. 前記側鎖に脂環構造を有するモノマーが(メタ)アクリロイルモルフォリンである、請求項6に記載の造形液。
  8. 熱重合開始剤を含有する、請求項1から7のいずれかに記載の造形液。
  9. 粉体に対し、請求項1から8のいずれかに記載の造形液を付与する造形液付与工程と、
    造形液を付与した粉体を硬化させて硬化物を形成する硬化物形成工程と、
    を含むことを特徴とする立体造形物の製造方法。
  10. 前記粉体が、基材単独の粉体および基材表面に有機材料を被覆した粉体の少なくともいずれかである、請求項9に記載の立体造形物の製造方法。
  11. 前記基材が金属およびセラミックスの少なくともいずれかを含む、請求項10に記載の立体造形物の製造方法。
  12. 前記硬化物に対し焼結処理を行う焼結工程を含む、請求項9から11のいずれかに記載の立体造形物の製造方法。
  13. 粉体と、
    請求項1から8のいずれかに記載の造形液と、を有することを特徴とする立体造形用キット。
  14. 前記粉体が、基材単独の粉体および基材表面に有機材料を被覆した粉体の少なくともいずれかである、請求項13に記載の立体造形用キット。
  15. 前記基材が金属およびセラミックスの少なくともいずれかを含む、請求項14に記載の立体造形用キット。
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