JP2022132140A - 狭帯域幅発光材料 - Google Patents

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Masashi Mamada
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千波矢 安達
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Abstract

【課題】色純度が高い安定な狭帯域幅発光材料を提供し、発光デバイスの安定性を向上させること。【解決手段】多重共鳴効果を用いた狭帯域幅発光材料において、好ましくは0.30eV以上、より好ましくは0.35 eV以上、さらに好ましくは0.40 eV以上の最低一重項励起状態-最低三重項状態のエネルギー差を有する発光材料をTAFデバイスの終端発光材料として用いる発光デバイス。【選択図】なし

Description

本発明は、狭帯域幅発光材料とそれを用いた発光デバイスに関する。また、狭帯域幅発光材料の設計方法、およびその設計方法を実行するためのプログラムにも関する。
遅延蛍光材料(TADF 材料)をアシストドーパントとして用いるTADF assisted Fluorescence (TAF)システムやTADF材料やエキシプレックス材料をホストとして用いる発光デバイスにおいて終端発光材料として多重共鳴型TADF材料である狭帯域幅発光化合物の使用が、色純度やデバイス寿命といった点で優れていることが、近年示されている(非特許文献1参照)。
終端発光材料として用いることでデバイス中ではアシストドーパントであるTADF材料上で三重項励起子が一重項に変換されてからフェルスター型エネルギー移動(FET)により終端発光材料に励起子が移るため、終端発光材料上では主に一重項励起子が生成し、光励起と同様に発光する。
ホストやアシストドーパントに用いるTADF材料上で生じる一重項励起子のFETによる速やかな減衰は、結果として三重項励起子寿命を短くすることに繋がり、デバイスの長寿命化を実現する。
また、終端発光材料はTADF材料からFETによってエネルギーを受け取るため、一重項励起子が生成する。
多重共鳴型TADF材料である狭帯域幅発光材料はその発光の半値幅が非常に狭く、スペクトルに振動構造がないため色純度に優れ、発光のほとんどが一重項からの発光である。一方で逆項間交差速度が遅いため、75%の励起子が三重項として生成する電流励起デバイス中では三重項励起子寿命が長くなり、アシストドーパントを用いずに単にTADF材料として用いた場合はデバイス寿命が短くなる問題がある。
多重共鳴型TADF材料である狭帯域幅発光材料を終端発光材料に用いた場合、TADF材料からFETによってエネルギーを受け取るため、この問題が解消され、デバイス寿命の長寿命化が実現できる。
C.-Y. Chan, M. Tanaka, Y.-T. Lee, Y.-W. Wong, H. Nakanotani, T. Hatakeyama, and C. Adachi, "Stable pure-blue hyperfluorescence organic light-emitting diodes with high-efficiency and narrow emission", Nature Photonics, DOI: 10.1038/s41566-020-00745-z
TADF材料を用いた発光デバイス、特に青色発光デバイスの長寿命化を阻む要因には様々な要因があるが、そのひとつに、終端材料自身として用いている狭帯域幅発光材料自身のTADF性の低さ、すなわち逆項間交差速度の遅さによるものがあげられる。
さらなるデバイスの向上を目指すためには、狭帯域幅発光材料上で生じる三重項励起子および三重項励起子発光狭帯域幅発光材料の安定性向上は欠かすことができない。
本発明は狭帯域幅発光材料の最低三重項状態エネルギーを低くすることでTADF性を低下させることで、色純度が高い安定な狭帯域幅発光材料を供し、発光デバイスの安定性を向上するものである。
本発明は、こうした知見に基づいて提案されたものであり、具体的に以下の内容を含む。
[1] 下記一般式(1)で表される化合物。
一般式(1)
-X
(上式において、Mは、Xが水素原子であるときに多重共鳴効果を用いた発光材料として機能する部分構造を表し、Xは3環以上の縮合環を含む多環芳香族基を表す。)
[2] 前記多環芳香族基が3つ以上のベンゼンの縮合環を含む芳香族基である、[1]に記載の化合物(ここでいう芳香族基を構成する環骨格には複素原子が含まれていてもよい)。
[3] 前記多環芳香族基が、前記3環以上の縮合環の環骨格構成原子で結合する基である、[1]または[2]に記載の化合物。
[4] 最低一重項励起状態-最低三重項状態のエネルギー差が0.30eV以上である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の化合物。
[5] 最低一重項励起状態-最低三重項状態のエネルギー差が0.35eV以上である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の化合物。
[6] 最低一重項励起状態-最低三重項状態のエネルギー差が0.40eV以上である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の化合物。
[7] Mが、下記の構造1~18の構造からなる群より選択される1以上の骨格構造を含む、[1]~[6]のいずれか1項に記載の化合物。
Figure 2022132140000001
Figure 2022132140000002
[8] Mが、前記構造1~18のいずれかの環骨格構成炭素原子で結合する基である、[7]に記載の化合物。
[9] Xが、4環以上の縮合環を含む芳香族基である、[7]または[8]に記載の化合物。
[10] Xが、前記4環以上の縮合環の環骨格構成原子で結合する基である、[9]に記載の化合物。
[11] Mが前記構造1を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[12] Mが前記構造2を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[13] Mが前記構造3を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[14] Mが前記構造4を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[15] Mが前記構造5を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[16] Mが前記構造6を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[17] Mが前記構造7を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[18] Mが前記構造8を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[19] Mが前記構造9を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[20] Mが前記構造10を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[21] Mが前記構造11を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[22] Mが前記構造12を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[23] Mが前記構造13を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[24] Mが前記構造14を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[25] Mが前記構造15を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[26] Mが前記構造16を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[27] Mが前記構造17を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[28] Mが前記構造18を含む、[7]~[10]のいずれか1項に記載の化合物。
[29] Xが4~6環の縮合環を含む芳香族基である、[1]~[28]のいずれか1項に記載の化合物。
[30] Xが4環の縮合環を含む芳香族基である、[1]~[28]のいずれか1項に記載の化合物。
[31] Xが置換もしくは無置換のピレニル基である、[1]~[28]のいずれか1項に記載の化合物。
[32] Xが置換もしくは無置換の1-ピレニル基である、[1]~[28]のいずれか1項に記載の化合物。
[33] Xが置換もしくは無置換の2-ピレニル基である、[1]~[28]のいずれか1項に記載の化合物。
[34] [1]~[33]のいずれか1項に記載の化合物を含む、発光デバイス。
[35] 多重共鳴効果を用いた狭帯域幅発光材料において、好ましくは0.30eV以上、より好ましくは0.35 eV以上、さらに好ましくは0.40 eV以上の最低一重項励起状態-最低三重項状態のエネルギー差を有する発光材料をTAFデバイスの終端発光材料として用いる発光デバイス。
[36] 多重共鳴効果を用いた狭帯域幅発光材料に多環芳香族や複素環ユニットを有する修飾基を修飾することで好ましくは0.30eV以上、より好ましくは0.35 eV以上、さらに好ましくは0.40 eV以上の最低一重項励起状態-最低三重項状態のエネルギー差を有する発光材料とし、TADF性を低下させた発光材料をTAFデバイスの終端発光材料として用いる発光デバイス。
[37] 前記修飾基は最低三重項状態のエネルギーが母骨格である前記狭帯域幅発光材料の最低一重項励起状態のエネルギーとの差が0.30eV以上であることが好ましく、より好ましくは0.35 eV以上、さらに好ましくは0.40 eV以上であることが好ましい、[36]に記載の発光デバイス。
[38] 前記修飾基が、多環芳香族ユニット(例えば、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、ピレン環、クリセン環、ぺリレン環、ビフェニレン環、ターフェニレン環を含むユニット、より好ましくは4環以上の縮合環)または含複素環多環芳香族ユニット(例えば、ピリジン環、ピロール環、チオフェン環、フラン環を含むユニット、より好ましくは4環以上の縮合環)を含む、[36]または[37]に記載の発光デバイス。
[39] 前記多環芳香族ユニットまたは前記含複素環多環芳香族ユニットを構成骨格として用いた多重共鳴効果による狭帯域幅発光材料で、好ましくは0.30eV以上、より好ましくは0.35 eV以上、さらに好ましくは0.40 eV以上の最低一重項励起状態-最低三重項状態のエネルギー差を有する発光材料をTAFデバイスの終端発光材料として用いる、[38]に記載の発光デバイス。
[40] 前記発光材料をTAFデバイスの終端発光材料として用いる発光デバイスであって、発光全体に占める蛍光発光成分の割合が98%以上である、[34]~[39]のいずれか1項に記載の発光デバイス。
[41] 前記多重共鳴効果を用いた狭帯域幅発光材料が以下の骨格を含む、[34]~[40]のいずれか1項に記載の発光デバイス(ただし、以下の各構造中のベンゼン環上の各水素原子が重水素や官能基で置換されていても構わない。具体的には、ジフェニルアミンやカルバゾールなどの電子ドナー、シアノ基やフッ素原子などの電子アクセプターによる修飾がされても構わないし、メチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基などの立体的に嵩高い官能基が導入されていても構わないし、フェニル基などの単環の芳香族基が導入されていても構わない。)。
Figure 2022132140000003
Figure 2022132140000004
[42] 前記多重共鳴効果を用いた狭帯域幅発光材料が以下の骨格を含む、[34]~[40]のいずれか1項に記載の発光デバイス(ただし、以下の各構造中のベンゼン環上の各水素原子が重水素や官能基で置換されていても構わない。具体的には、ジフェニルアミンやカルバゾールなどの電子ドナー、シアノ基やフッ素原子などの電子アクセプターによる修飾がされても構わないし、メチル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基などの立体的に嵩高い官能基が導入されていても構わないし、フェニル基などの単環の芳香族基が導入されていても構わない。)。
Figure 2022132140000005
[43] 多重共鳴効果を用いた発光材料分子を構成する1つ以上の水素原子を、3環以上の縮合環を含む多環芳香族基で置換することを特徴とする、安定性を向上させた狭帯域幅発光材料の設計方法(ここでいう芳香族基を構成する環骨格には複素原子が含まれていてもよい)。
[44] 多重共鳴効果を用いた発光材料分子を構成する1つ以上の水素原子を3環以上の縮合環を含む多環芳香族基で置換した分子を2種以上想定し、その2種以上の想定分子を計算により評価して最適な分子を選択することを含む、安定性を向上させた狭帯域幅発光材料の設計方法(ここでいう芳香族基を構成する環骨格には複素原子が含まれていてもよい)。
[45] 前記評価が安定性の評価を含む、好ましくは安定性が高いものを高く評価することを含む、[44]に記載の狭帯域幅発光材料の設計方法。
[46] 前記評価が、最低一重項励起状態-最低三重項状態のエネルギー差の大きさの評価を含む、好ましくはエネルギー差が大きいものを高く評価することを含む、[44]または[45]に記載の狭帯域幅発光材料の設計方法。
[47] 前記評価が、発光スペクトルの半値幅の評価を含む、好ましくは半値幅が小さいものを高く評価することを含む、[44]~[46]のいずれか1項に記載の狭帯域幅発光材料の設計方法。
[48] [43]~[47]の設計方法を実施するためのプログラム。
[49] 多重共鳴効果を用いた発光材料分子を構成する1つ以上の水素原子を、3環以上の縮合環を含む多環芳香族基で置換することを特徴とする、安定性を向上させた狭帯域幅発光材料の製造方法(ここでいう芳香族基を構成する環骨格には複素原子が含まれていてもよい)。
本発明によれば、色純度が高い安定な狭帯域幅発光材料を提供し、発光デバイスの安定性を向上させることができる。
CzBNNaとCzBNPyrのTDDFT計算で求めた分子軌道分布とエネルギーダイアグラムである。 BiPhOBPyr、BiPhOCzNBPyrおよびPyrPhOCzNBのTADFT計算で求めた分子軌道分布とエネルギーダイアグラムである。 CzBNNaのトルエン溶液の紫外吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよびリン光スペクトルである。 CzBNPyrのトルエン溶液の紫外吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよびリン光スペクトルである。 BiPhOBPyrののトルエン溶液の紫外吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよびリン光スペクトルである。 BiPhOCzNBPyrのトルエン溶液の紫外吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよびリン光スペクトルである。 PyrPhOCzNBのトルエン溶液の紫外吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよびリン光スペクトルである。 CzBNNaとmCBPの薄膜、および、CzBNPyrとmCBPの薄膜の発光スペクトルである。 CzBNNaとmCBPの薄膜の発光の過度減衰曲線である。 CzBNPyrとmCBPの薄膜の発光の過渡減衰曲線である。 CzBNNaのトルエン溶液について、300~400nmの光を連続照射したときの発光の経時変化を示すグラフである。 CzBNPyrのトルエン溶液について、300~400nmの光を連続照射したときの発光の経時変化を示すグラフである。 BiPhOCzNBPyrのトルエン溶液について、300~400nmの光を連続照射したときの発光の経時劣化を示すグラフである。 BiPhOCzNBのトルエン溶液について、300~400nmの光を連続照射したときの発光の経時劣化を示すグラフである。 実施例5、比較例5、6で作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成とエネルギー準位を示す模式図である。 CzBNNaを用いた比較素子4とCzBNPyrを用いた素子5の発光スペクトルである。 CzBNNaを用いた比較素子4とCzBNPyrを用いた素子5の電流密度-電圧特性を示すグラフである。 CzBNNaを用いた比較素子4とCzBNPyrを用いた素子5の外部量子効率(EQE)-輝度特性を示すグラフである。 CzBNNaを用いた比較素子4、CzBNPyrを用いた素子5、CzBNPhを用いた比較素子5、C56を用いた比較素子6の酸素非存在下での発光強度の経時変化を示すグラフである。 CzBNNaを用いた比較素子4、CzBNPyrを用いた素子5、CzBNPhを用いた比較素子5、C56を用いた比較素子6の酸素存在下での発光強度の経時変化を示すグラフである。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本発明に用いられる化合物の分子内に存在する水素原子の同位体種は特に限定されず、例えば分子内の水素原子がすべてHであってもよいし、一部または全部がH(デューテリウムD)であってもよい。本発明の好ましい実施態様では分子内の水素原子はすべてHである。本発明の一態様では、分子内の水素原子はすべてH(デューテリウムD)である。本発明の一態様では、分子内の水素原子は一部がHであり、残りがH(デューテリウムD)である。なお、本発明の説明において「置換」あるいは「置換基」という用語には、H(デューテリウムD)などのH以外の水素原子同位体は含まれない。
<一般式(1)で表される化合物>
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される。
一般式(1)
-X
一般式(1)において、Mは、Xが水素原子であるときに多重共鳴効果(Multiple Resonance Effect)を有する発光材料として機能する分子になるような部分構造を表す。ここでいう「多重共鳴効果を用いた」とは、分子中に存在する2つ以上のヘテロ原子がそれぞれ共鳴していて、分子全体として多重に共鳴していることを意味する。ヘテロ原子の種類としては、ホウ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等を例示することができる。好ましいのは、ホウ素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択される2つ以上の原子(同一であっても異なっていてもよい)を含む構造が多重共鳴している分子であり、より好ましいのは、ホウ素原子、窒素原子および酸素原子からなる群より選択される2つ以上の原子(同一であっても異なっていてもよい)を含む構造が多重共鳴している分子である。本発明の好ましい態様では、ヘテロ原子としてホウ素原子と窒素原子だけを含む構造が多重共鳴している分子である。本発明の別の好ましい態様では、ヘテロ原子としてホウ素原子と酸素原子だけを含む構造が多重共鳴している分子である。本発明の別の好ましい態様では、ヘテロ原子としてホウ素原子と窒素原子と酸素原子だけを含む構造が多重共鳴している分子である。本発明の別の好ましい態様では、ヘテロ原子として窒素原子と酸素原子だけを含む構造が多重共鳴している分子である。本発明の別の好ましい態様では、ヘテロ原子として窒素原子だけを含む構造が多重共鳴している分子である。
は多環構造を有する基であることが好ましい。中でも、環骨格構成原子としてヘテロ原子を含む環とベンゼン環が縮合した構造を含むことが好ましい。特に、複数のベンゼン環がヘテロ原子を含む環を介して縮合している構造を含むことが好ましい。また、含窒素芳香環が2つ以上縮合した構造を含むことも好ましい。
の例として、上記の構造1~18の構造からなる群より選択される1以上の骨格構造を含む基を例示することができる。構造1~18の1つ以上の水素原子は置換基で置換されていてもよい。置換基は、例えば後述の置換基群Aの中から選択したり、後述の置換基群Bの中から選択したりしてもよい。骨格構造に置換している置換基の数は、例えば0~6つのいずれかにしたり、0~4つのいずれかにしたり、0~2のいずれかにしたり、1~6つにしたり、2~6つにしたりしてもよい。構造1~18は無置換(置換基の数が0)であってもよい。
は、Mを構成する多環構造の環骨格構成炭素原子でXと結合する基であることが好ましい。例えば、構造1~18の骨格を構成する炭素原子が、直接Xと結合するものであることが好ましい。Xと結合する炭素原子は、Mの中にホウ素原子が存在するときは、そのホウ素原子から見てパラ位の炭素原子であることが好ましい。また、Mの中に窒素原子が存在するときは、その窒素原子から見てメタ位の炭素原子であることが好ましい。また、Mの中に酸素原子が存在するときは、その酸素原子から見てメタ位の炭素原子であることが好ましい。また、Mを構成する多環構造が、例えば構造18のように、ホウ素原子、窒素原子および酸素原子を含む非対称構造であるとき、Xと結合する炭素原子は、ホウ素原子から見てパラ位の炭素原子であってもメタ位の炭素原子であってもよく、また、窒素原子から見てメタ位の炭素原子であってもよく、酸素原子から見てメタ位の炭素原子であってもパラ位の炭素原子であってもよい。
一般式(1)において、Xは多環芳香族基を表す。Xが表す多環芳香族基は、3環以上の縮合環を含む芳香族基である。Xが表す多環芳香族基は、4環以上の縮合環を含む芳香族基であることが好ましく、4~6環の縮合環を含む芳香族基であることが特に好ましい。多環芳香族基を環骨格には複素原子(例えば窒素原子)が含まれていてもよいが、含まれていないことが好ましい。すなわち環骨格構成原子は炭素原子のみからなるものが好ましい。Xは、縮合環の環骨格構成原子で結合する基であることが好ましい。Xを構成する縮合環は置換基を有していてもよく、置換基は例えば後述の置換基群Aの中や、後述の置換基群Bの中から選択してもよい。Xの好ましい具体例として、1-ピレニル基、2-ピレニル基を例示することができ、これらの基を構成する水素原子も置換されていてもよい。
本発明で用いる一般式(1)で表される化合物は、狭帯域幅発光材料であることが好ましい。狭帯域幅発光材料とは、発光スペクトルの半値全幅(FWHM)が狭い発光材料である。半値全幅は50nm以下で有ることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、35nm以下であることがさらに好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(2)で表されるものであることが好ましい。
一般式(2)
-Py
上式において、Mは、Xが水素原子であるときに多重共鳴効果を用いた発光材料として機能する部分構造を表し、Ryは置換もしくは無置換のピレニル基を表す。ピレニル基の置換基は、例えば後述の置換基群Aの中や、置換基群Bの中から選択してもよい。
一般式(1)で表される化合物は、下記一般式で表されるものであることも好ましい。
Figure 2022132140000006
Figure 2022132140000007
R、Rは各々独立に水素原子または置換基を表す。ここでいう置換基は、後述の置換基群Aの中や、置換基群Bの中から選択してもよい。Rが表す置換基の例として、フェニル基等の単環の芳香族基を挙げることができる。単環の芳香族基は、置換基群Aの中や、置換基群Bの中から選択される置換基で置換されていてもよい。
一般式(1)で表される多重共鳴効果を用いた狭帯域幅発光材料の具体例として、下記の化合物を例示することができる。好ましいのは、1番目、5番目、6番目、10番目、11番目、15番目、16番目、20番目に記載されたピレニル基で置換された化合物である。
Figure 2022132140000008
Figure 2022132140000009
Figure 2022132140000010
<遅延蛍光材料(TADF 材料)>
一般式(1)で表される化合物は、TAFシステムの発光デバイスにおける発光材料として好ましく用いることができる。すなわち、遅延蛍光材料(TADF材料)のアシストドーパントと併用することによって、優れたTAFシステムの発光デバイスを提供することができる。以下において、一般式(1)で表される化合物と併用する遅延蛍光材料について説明する。
一般式(1)で表される化合物と併用する遅延蛍光材料は、一般式(1)で表される化合物よりも大きな最低励起一重項エネルギーを有している遅延蛍光材料である。ホスト材料をさらに併用する場合は、ホスト材料よりも小さな最低励起一重項エネルギーを有している遅延蛍光材料であることが好ましい。
本発明における「遅延蛍光材料」とは、励起状態において、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差を生じ、その励起一重項状態から基底状態へ戻る際に蛍光(遅延蛍光)を放射する有機化合物である。本発明では、蛍光寿命測定システム(浜松ホトニクス社製ストリークカメラシステム等)により発光寿命を測定したとき、発光寿命が100ns(ナノ秒)以上の蛍光が観測されるものを遅延蛍光材料と言う。一般式(1)で表される化合物と併用する遅延蛍光材料(アシストドーパント)は遅延蛍光を放射しうる材料であるが、本発明の発光デバイスに用いたときにこのアシストドーパントである遅延蛍光材料に由来する遅延蛍光を放射することは必須とされない。アシストドーパントである遅延蛍光材料からの発光は、本発明の発光デバイスからの発光の10%未満であることが好ましく、例えば1%未満、0.1%未満、0.01%未満、検出限界以下であってもよい。
ホスト材料を用いた発光デバイスにおいて、アシストドーパントである遅延蛍光材料は、励起一重項状態のホスト材料からエネルギーを受け取って励起一重項状態に遷移する。あるいは、アシストドーパントである遅延蛍光材料は、励起三重項状態のホスト材料からエネルギーを受け取って励起三重項状態に遷移してもよい。アシストドーパントである遅延蛍光材料は励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーの差(ΔEST)が小さいことから、励起三重項状態のアシストドーパントは励起一重項状態のアシストドーパントへ逆項間交差しやすい。これらの経路により生じた励起一重項状態のアシストドーパントは、一般式(1)の化合物へエネルギーを与えて一般式(1)の化合物を励起一重項状態に遷移させる。
アシストドーパントである遅延蛍光材料は、最低励起一重項エネルギーと77Kの最低励起三重項エネルギーの差ΔESTが0.3eV以下であることが好ましく、0.25eV以下であることがより好ましく、0.2eV以下であることがより好ましく、0.15eV以下であることがより好ましく、0.1eV以下であることがさらに好ましく、0.07eV以下であることがさらにより好ましく、0.05eV以下であることがさらにまた好ましく、0.03eV以下であることがさらになお好ましく、0.01eV以下であることが特に好ましい。
ΔESTが小さければ、熱エネルギーの吸収によって励起一重項状態から励起三重項状態に逆項間交差しやすいため、アシストドーパントは熱活性化型の遅延蛍光材料として機能する。熱活性化型の遅延蛍光材料は、デバイスが発する熱を吸収して励起三重項状態から励起一重項へ比較的容易に逆項間交差し、その励起三重項エネルギーを効率よく発光に寄与させることができる。
本発明の好ましい一態様では、アシストドーパントである遅延蛍光材料として下記一般式(3)で表される化合物を用いる。
Figure 2022132140000011
一般式(3)において、R21~R23のうち1つはシアノ基または下記一般式(4)で表される基を表し、R21~R23の残りの2つとR24およびR25のうちの少なくとも1つは下記一般式(5)で表される基を表し、R21~R25の残りは水素原子または置換基(ただしここでいう置換基はシアノ基、下記一般式(4)で表される基、下記一般式(5)で表される基ではない)を表す。
Figure 2022132140000012
一般式(4)において、Lは単結合もしくは2価の連結基を表し、R31およびR32は各々独立に水素原子または置換基を表し、*は結合位置を表す。
Figure 2022132140000013
一般式(5)において、Lは単結合または2価の連結基を表し、R33およびR34は各々独立に水素原子または置換基を表し、*は結合位置を表す。
21~R23のうちでは、R21またはR22がシアノ基または一般式(4)で表される基であることが好ましい。本発明の好ましい一態様では、R22がシアノ基である。本発明の好ましい一態様では、R22が一般式(4)で表される基である。本発明の一態様では、R21がシアノ基または一般式(4)で表される基である。本発明の一態様では、R23がシアノ基または一般式(4)で表される基である。本発明の一態様では、R21~R23のうち1つがシアノ基である。本発明の一態様では、R21~R23のうち1つが一般式(4)で表される基である。
本発明の好ましい一態様では、一般式(4)におけるLは単結合である。本発明の一態様では、Lは2価の連結基であり、好ましくは置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基であり、より好ましくは置換もしくは無置換のアリーレン基であり、さらに好ましくは置換もしくは無置換の1,4-フェニレン基(置換基として例えば炭素数1~3のアルキル基)である。
本発明の一態様では、一般式(4)におけるR31およびR32は各々独立に、アルキル基(例えば炭素数1~40)、アリール基(例えば炭素数6~30)、ヘテロアリール基(例えば環骨格構成原子数5~30)、アルケニル基(例えば炭素数1~40)およびアルキニル基(例えば炭素数1~40)からなる群より選択される1つの基または2つ以上を組み合わせた基である(以下においてこれらの基を「置換基群Aの基」という)。本発明の好ましい一態様では、R31およびR32は各々独立に、置換もしくは無置換のアリール基(例えば炭素数6~30)であり、アリール基の置換基としては置換基群Aの基を挙げることができる。本発明の好ましい一態様では、R31およびR32は同一である。
本発明の好ましい一態様では、一般式(5)におけるLは単結合である。本発明の一態様では、Lは2価の連結基であり、好ましくは置換もしくは無置換のアリーレン基、または置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基であり、より好ましくは置換もしくは無置換のアリーレン基であり、さらに好ましくは置換もしくは無置換の1,4-フェニレン基(置換基として例えば炭素数1~3のアルキル基)である。
本発明の一態様では、一般式(5)におけるR33およびR34は各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基(例えば炭素数1~40)、置換もしくは無置換のアルケニル基(例えば炭素数1~40)、置換もしくは無置換のアリール基(例えば炭素数6~30)、または置換もしくは無置換のヘテロアリール基(例えば炭素数5~30)を表す。ここでいうアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基の置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(例えば炭素数1~40)、アルコキシ基(例えば炭素数1~40)、アルキルチオ基(例えば炭素数1~40)、アリール基(例えば炭素数6~30)、アリールオキシ基(例えば炭素数6~30)、アリールチオ基(例えば炭素数6~30)、ヘテロアリール基(例えば環骨格構成原子数5~30)、ヘテロアリールオキシ基(例えば環骨格構成原子数5~30)、ヘテロアリールチオ基(例えば環骨格構成原子数5~30)、アシル基(例えば炭素数1~40)、アルケニル基(例えば炭素数1~40)、アルキニル基(例えば炭素数1~40)、アルコキシカルボニル基(例えば炭素数1~40)、アリールオキシカルボニル基(例えば炭素数1~40)、ヘテロアリールオキシカルボニル基(例えば炭素数1~40)、シリル基(例えば炭素数1~40のトリアルキルシリル基)、ニトロ基およびシアノ基からなる群より選択される1つの基または2つ以上を組み合わせた基を挙げることができる(以下においてこれらの基を「置換基群Bの基」という)。
33とR34は、互いに単結合または連結基を介して結合して環状構造を形成してもよい。特にR33とR34がアリール基である場合は、互いに単結合または連結基を介して結合して環状構造を形成することが好ましい。ここでいう連結基としては-O-、-S-、-N(R35)-、-C(R36)(R37)-、-C(=O)-を挙げることができ、-O-、-S-、-N(R35)-、-C(R36)(R37)-が好ましく、-O-、-S-、-N(R35)-がより好ましい。R35~R37は各々独立に水素原子または置換基を表す。置換基としては、上記置換基群Aの基を選択したり、下記置換基群Bの基を選択したりすることができ、好ましくは炭素数1~10のアルキル基および炭素数6~14のアリール基からなる群より選択される1つの基または2つ以上を組み合わせた基である。
一般式(5)で表される基は、下記一般式(6)で表される基であることが好ましい。
Figure 2022132140000014
一般式(6)で表される化合物は、下記一般式(7)~(12)のいずれかで表される化合物であることがより好ましい。
Figure 2022132140000015
一般式(6)~(12)において、L11およびL21~L26は単結合もしくは2価の連結基を表す。L11およびL21~L26の説明と好ましい範囲については、上記のLの説明と好ましい範囲を参照することができる。
一般式(6)~(12)において、R41~R110は各々独立に水素原子または置換基を表す。R41とR42、R42とR43、R43とR44、R44とR45、R45とR46、R46とR47、R47とR48、R51とR52、R52とR53、R53とR54、R54とR55、R55とR56、R56とR57、R57とR58、R58とR59、R59とR60、R61とR62、R62とR63、R63とR64、R65とR66、R66とR67、R67とR68、R68とR69、R69とR70、R72とR73、R73とR74、R74とR75、R75とR76、R76とR77、R77とR78、R78とR79、R79とR80、R81とR82、R82とR83、R83とR84、R84とR85、R86とR87、R87とR88、R88とR89、R89とR90、R91とR92、R93とR94、R94とR95、R95とR96、R96とR97、R97とR98、R99とR100、R101とR102、R102とR103、R103とR104、R104とR105、R105とR106、R107とR108、R108とR109、R109とR110は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。互いに結合して形成する環状構造は芳香環であっても脂肪環であってもよく、またヘテロ原子を含むものであってもよく、さらに環状構造は2環以上の縮合環であってもよい。ここでいうヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択されるものであることが好ましい。形成される環状構造の例として、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、イミダゾリン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、シクロヘキサジエン環、シクロヘキセン環、シクロペンタエン環、シクロヘプタトリエン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプタエン環、フラン環、チオフェン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノリン環などを挙げることができる。例えばフェナントレン環やトリフェニレン環のように多数の環が縮合した環を形成してもよい。一般式(6)で表される基に含まれる環の数は3~5の範囲内から選択してもよく、5~7の範囲内から選択してもよい。一般式(7)~(12)で表される基に含まれる環の数は5~7の範囲内から選択してもよく、5であってもよい。
41~R110が採りうる置換基として、上記の置換基群Bの基を挙げることができ、好ましくは炭素数1~10の無置換のアルキル基、または炭素数1~10の無置換のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~10のアリール基である。本発明の好ましい一態様では、R41~R110は水素原子または炭素数1~10の無置換のアルキル基である。本発明の好ましい一態様では、R41~R110は水素原子または炭素数6~10の無置換のアリール基である。本発明の好ましい一態様では、R41~R110はすべてが水素原子である。
一般式(6)~(12)におけるR41~R110が結合している炭素原子(環骨格構成炭素原子)は、各々独立に窒素原子に置換されていてもよい。すなわち、一般式(6)~(12)におけるC-R41~C-R110は、各々独立にNに置換されていてもよい。窒素原子に置換されている数は、一般式(6)~(12)で表される基の中で0~4つであることが好ましく、1~2つであることがより好ましい。本発明の一態様では、窒素原子に置換されている数は0である。また、2つ以上が窒素原子に置換されている場合は、1つの環中に置換されている窒素原子の数は1つであることが好ましい。
一般式(6)~(12)において、X~Xは、酸素原子、硫黄原子またはN-Rを表す。本発明の一態様では、X~Xは酸素原子である。本発明の一態様では、X~Xは硫黄原子である。本発明の一態様では、X~XはN-Rである。Rは水素原子または置換基を表し、置換基であることが好ましい。置換基としては、上記置換基群Aから選択される置換基を例示することができる。例えば、無置換のフェニル基や、アルキル基やアリール基からなる群より選択される1つの基または2つ以上を組み合わせた基で置換されているフェニル基を好ましく採用することができる。
一般式(6)~(12)において、*は結合位置を表す。
以下に、アシストドーパントである遅延蛍光材料として用いることができる好ましい化合物を挙げる。以下の例示化合物の構造式において、t-Buはターシャリーブチル基を表す。
Figure 2022132140000016
Figure 2022132140000017
Figure 2022132140000018
Figure 2022132140000019
Figure 2022132140000020
Figure 2022132140000021
Figure 2022132140000022
Figure 2022132140000023
Figure 2022132140000024
アシストドーパントである遅延蛍光材料には、上記以外にも公知の遅延蛍光材料を適宜組み合わせて用いることができる。また、知られていない遅延蛍光材料であっても、用いることが可能である。
アシストドーパントである遅延蛍光材料として、WO2013/154064号公報の段落0008~0048および0095~0133、WO2013/011954号公報の段落0007~0047および0073~0085、WO2013/011955号公報の段落0007~0033および0059~0066、WO2013/081088号公報の段落0008~0071および0118~0133、特開2013-256490号公報の段落0009~0046および0093~0134、特開2013-116975号公報の段落0008~0020および0038~0040、WO2013/133359号公報の段落0007~0032および0079~0084、WO2013/161437号公報の段落0008~0054および0101~0121、特開2014-9352号公報の段落0007~0041および0060~0069、特開2014-9224号公報の段落0008~0048および0067~0076、特開2017-119663号公報の段落0013~0025、特開2017-119664号公報の段落0013~0026、特開2017-222623号公報の段落0012~0025、特開2017-226838号公報の段落0010~0050、特開2018-100411号公報の段落0012~0043、WO2018/047853号公報の段落0016~0044に記載される一般式に包含される化合物、特に例示化合物であって、遅延蛍光を放射するものを挙げることができる。また、特開2013-253121号公報、WO2013/133359号公報、WO2014/034535号公報、WO2014/115743号公報、WO2014/122895号公報、WO2014/126200号公報、WO2014/136758号公報、WO2014/133121号公報、WO2014/136860号公報、WO2014/196585号公報、WO2014/189122号公報、WO2014/168101号公報、WO2015/008580号公報、WO2014/203840号公報、WO2015/002213号公報、WO2015/016200号公報、WO2015/019725号公報、WO2015/072470号公報、WO2015/108049号公報、WO2015/080182号公報、WO2015/072537号公報、WO2015/080183号公報、特開2015-129240号公報、WO2015/129714号公報、WO2015/129715号公報、WO2015/133501号公報、WO2015/136880号公報、WO2015/137244号公報、WO2015/137202号公報、WO2015/137136号公報、WO2015/146541号公報、WO2015/159541号公報に記載される発光材料であって、遅延蛍光を放射するものを採用することもできる。なお、この段落に記載される上記の公報は、本明細書の一部としてここに引用している。
アシストドーパントである遅延蛍光材料は金属原子を含まないことが好ましい。例えば、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択される原子からなる化合物を選択することができる。例えば、炭素原子、水素原子、窒素原子および酸素原子からなる群より選択される原子からなる化合物を選択することができる。例えば、炭素原子、水素原子および窒素原子からなる化合物を選択することができる。
<ホスト材料>
TAFシステムの発光デバイスを構成する発光層には、発光材料である一般式(1)で表される化合物と、アシストドーパントである遅延蛍光材料(TADF材料)の他に、ホスト材料を用いてもよい。ホスト材料には、一般式(1)で表される化合物やアシストドーパントである遅延蛍光材料よりも最低励起一重項エネルギーが大きい材料を採用する。
ホスト材料としては、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。また、本発明の好ましい一態様では、ホスト材料は遅延蛍光を放射しない化合物の中から選択する。ホスト材料からの発光は、本発明の発光デバイスからの発光の1%未満であることが好ましく、0.1%未満であることがより好ましく、例えば0.01%未満、検出限界以下であってもよい。
ホスト材料は金属原子を含まないことが好ましい。例えば、ホスト材料として、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群より選択される原子からなる化合物を選択することができる。例えば、炭素原子、水素原子、窒素原子および酸素原子からなる群より選択される原子からなる化合物を選択することができる。例えば、炭素原子、水素原子および窒素原子からなる化合物を選択することができる。
以下に、ホスト材料として用いることができる好ましい化合物を挙げる。
Figure 2022132140000025
Figure 2022132140000026
Figure 2022132140000027
<発光デバイス>
(発光層)
本発明の発光デバイスの発光層は、一般式(1)で表される化合物、アシストドーパントである遅延蛍光材料を含む発光組成物からなる。発光組成物には、さらにホスト材料を含んでいてもよい。本発明の好ましい実施態様では、発光層は、一般式(1)で表される化合物、アシストドーパントである遅延蛍光材料、ホスト材料以外に、電荷やエネルギーの授受を行う化合物や金属元素を含まない。また、発光層は、一般式(1)で表される化合物、アシストドーパントである遅延蛍光材料、ホスト材料のみから構成することもできる。さらに発光層は、炭素原子、水素原子、窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、硫黄原子およびフッ素原子からなる群より選択される原子からなる化合物だけで構成することもできる。例えば、発光層は、炭素原子、水素原子、窒素原子、ホウ素原子、酸素原子およびフッ素原子からなる群より選択される原子からなる化合物だけで構成することができる。本発明の好ましい実施態様では、発光層は、炭素原子、水素原子、窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、フッ素原子を含み、さらに好ましくはこれら以外の元素を含まない。
発光層は、少なくとも一般式(1)で表される化合物およびアシストドーパントである遅延蛍光材料を含む発光組成物を用いて湿式工程で形成してもよいし、乾式工程で形成してもよい。
湿式工程では、発光組成物を溶解した溶液を面に塗布し、溶媒の除去後に発光層を形成する。湿式工程として、スピンコート法、スリットコート法、インクジェット法(スプレー法)、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。湿式工程では、発光組成物を溶解することができる適切な有機溶媒を選択して用いる。ある実施形態では、発光組成物に含まれる化合物に、有機溶媒に対する溶解性を上げる置換基(例えばアルキル基)を導入することができる。
乾式工程としては真空蒸着法を好ましく採用することができる。真空蒸着法を採用する場合は、発光層を構成する各化合物を個別の蒸着源から共蒸着させてもよいし、全化合物を混合した単一の蒸着源から共蒸着させてもよい。単一の蒸着源を用いる場合は、全化合物の粉末を混合した混合粉を用いてもよいし、その混合粉を圧縮した圧縮成形体を用いてもよいし、各化合物を加熱溶融して混合した後に冷却した混合物を用いてもよい。ある実施形態では、単一の蒸着源に含まれる複数の化合物の蒸着速度(重量減少速度)が一致ないしほぼ一致する条件で共蒸着を行うことにより、蒸着源に含まれる複数の化合物の組成比に対応する組成比の発光層を形成することができる。形成される発光層の組成比と同じ組成比で複数の化合物を混合して蒸着源とすれば、所望の組成比を有する発光層を簡便に形成することができる。ある実施形態では、共蒸着される各化合物が同じ重量減少率になる温度を特定して、その温度を共蒸着時の温度として採用することができる。発光層を蒸着法により製膜する場合は、一般式(1)で表される化合物、アシストドーパントである遅延蛍光材料、ホスト材料のそれぞれの分子量は1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、900以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値は、例えば200であったり、400であったり、600であったりしてもよい。
(発光デバイスの層構成)
少なくとも一般式(1)で表される化合物およびアシストドーパントである遅延蛍光材料を含む発光組成物からなる発光層を形成することにより、有機フォトルミネッセンス素子(有機PL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)などの優れた有機発光素子を提供することができる。
発光層の厚さは例えば1~15nmとしたり、2~10nmとしたり、3~7nmとすることができる。
有機フォトルミネッセンス素子は、基材上に少なくとも発光層を形成した構造を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子障壁層、正孔障壁層、電子注入層、電子輸送層、励起子障壁層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。
US2020/0168814A1の[0141]~[0169]および[0192]~[0242]に記載される使用例、デバイス、ディスプレイ、スクリーン等の説明は、その全体を本明細書の一部としてここに引用し、本発明の説明とする。
本発明のある実施形態では、下記の化合物を電子阻止材料として好ましく用いることができる。
Figure 2022132140000028
本発明のある実施形態では、下記の化合物を正孔阻止材料として好ましく用いることができる。
Figure 2022132140000029
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 2022132140000030
次に、有機エレクトロルミネッセンス素子の電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
Figure 2022132140000031
さらに、有機エレクトロルミネッセンス素子の各有機層に添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
Figure 2022132140000032
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
最低励起一重項エネルギーES1と最低励起三重項エネルギーET1は下記の方法で測定し、ΔESTは、下記の方法で測定したES1およびET1を用い、ΔEST=ES1-ET1を計算することにより求めた。
(1)最低励起一重項エネルギーES1
測定対象化合物とホスト材料とを、測定対象化合物が濃度6重量%となるように共蒸着することでSi基板上に厚さ100nmの試料を作製する。常温(300K)でこの試料の蛍光スペクトルを測定する。具体的には、励起光入射直後から入射後100ナノ秒までの発光を積算することで、縦軸を発光強度、横軸を波長の蛍光スペクトルを得る。この発光スペクトルの短波側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値 λedge[nm]を求める。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をES1とする。
換算式:ES1[eV]=1239.85/λedge
発光スペクトルの測定には、励起光源に窒素レーザー(Lasertechnik Berlin社製、MNL200)を検出器には、ストリークカメラ(浜松ホトニクス社製、C4334)を用いることができる。
(2)最低励起三重項エネルギーET1
最低励起一重項エネルギーES1の測定で用いたものと同じ試料を77[K]に冷却し、励起光を燐光測定用試料に照射し、ストリークカメラを用いて、燐光強度を測定する。具体的には、励起光入射後1ミリ秒から入射後10ミリ秒の発光を積算することで、縦軸を発光強度、横軸を波長の燐光スペクトルを得る。この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を求める。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をET1とする。
換算式:ET1[eV]=1239.85/λedge
燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線は以下のように引く。燐光スペクトルの短波長側から、スペクトルの極大値のうち、最も短波長側の極大値までスペクトル曲線上を移動する際に、長波長側に向けて曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち上がるにつれ(つまり縦軸が増加するにつれ)、傾きが増加する。この傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を、当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
なお、スペクトルの最大ピーク強度の10%以下のピーク強度をもつ極大点は、上述の最も短波長側の極大値には含めず、最も短波長側の極大値に最も近い、傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とする。
発光性能の評価は、ソースメータ(ケースレー社製:2400シリーズ)、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)、分光放射計(トプコン社製:SR-3)およびストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334型)を用いて行った。
本実施例で用いた一般式(1)で表される化合物と比較化合物を以下に示す。
<実施例で用いた一般式(1)で表される化合物>
Figure 2022132140000033
<比較化合物>
Figure 2022132140000034
(合成例1)構造5(CzBN)のホウ素のパラ位にナフチル基を導入した化合物CzBNNaの合成
Figure 2022132140000035
2-ブロモ-1,3-ジフルオロ-5-ヨードベンゼン(6.00g、18.8mmol)、ナフタレン-2-イルボロン酸(3.56g、20.7mmol)、炭酸カリウム(7.80g、56.4mmol)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.08g、0.9mmol)を、脱気したテトラヒドロフランと水(容量比で2:1)の混合溶媒に、窒素雰囲気下で溶解して一晩加熱還流した。この反応物を室温まで冷却した後、水(100mL)に注ぎ入れ、酢酸エチルで抽出を行った。得られた有機層の溶媒を減圧下で蒸発させて濃縮物を得た。この濃縮物を、n-ヘキサンを溶離液に用いてカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体a1の白色固体を収量4.92g、収率83%で得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, 298K, relative to Me4Si): δ = 8.01 (s, 1H), 7.95-7.87 (m, 3H), 7.66 (d, 1H, J = 8.5 Hz), 7.55-7.53 (m, 2H), 7.32 (d, 2H, J= 8.5 Hz).
MS (APCI) calcd. for C16H9BrF2: m/z = 317.99; found: 318.01 [M]+.
Figure 2022132140000036
窒素雰囲気下、9H-カルバゾール(2.30g、13.8mmol)をN,N-ジメチルホルムアミド(脱水)(100mL)と丸底フラスコに入れて溶解した。この溶液に、水素化ナトリウム(0.55g、13.8mmol)の60%鉱油分散液を徐々に加え、室温で1時間攪拌した後、中間体a1(2.00g、6.3mmol)を添加して130℃で16時間加熱した。この反応物に水を加えて反応を停止させ、沈殿物(粗生成物)を濾別した。得られた粗生成物を、クロロホルム:ヘキサン=4:6の混合溶媒を溶離液に用いてフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)にて精製することにより、中間体a2を収量3.04g、収率79%で得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, 298K, relative to Me4Si): δ = 8.21 (d, 4H, J = 7.5 Hz), 8.11-8.08 (m, 3H), 7.92 (d, 1H, J = 8.5 Hz), 7.86-7.84 (m, 2H,), 7.75 (d, 1H, J = 7.5 Hz), 7.53-7.50 (m, 6H), 7.43-7.33 (m, 8H).
MS (APCI) calcd. for C40H25BrN2: m/z = 612.12; found: 612.27 [M]+.
Figure 2022132140000037
脱水トルエン(60mL)に中間体a2(1.50g、2.4mmol)を溶解して調製した溶液に、-30℃の窒素雰囲気下で、n-ブチルリチウム(1.80ml、2.9mmol)の1.6Mヘキサン溶液を徐々に加え、室温まで温めた後、60℃に加熱して2時間攪拌した。この混合物に三臭化ホウ素(0.35mL、3.6mmol)を-15℃で添加して室温で2時間攪拌し、さらに、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.98mL、5.2mmol)を0℃で添加し、室温まで温めた後、110℃に加熱して10時間撹拌した。この反応混合物を室温まで冷却し、酢酸ナトリウム水溶液と酢酸エチルを加え、析出した沈殿物(粗生成物)を濾別した。この粗生成物を、温めたトルエンに溶解して再結晶させた後、昇華させることにより、目的のCzBNNaを収量0.37g、収率28%で得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, 298K, relative to Me4Si): δ = 8.98 (d, 2H, J = 7.5 Hz), 8.66 (s, 2H), 8.55 (d, 2H, J = 8.5 Hz), 8.39 (d, 2H, J = 7.0 Hz), 8.34 (s, 1H), 8.26 (d, 2H, J = 7.5 Hz), 8.12 (d, 1H, J = 8.5 Hz), 8.06 (t, 2H, J = 9.5 Hz), 7.99 (d, 1H, J = 8.0 Hz), 7.70 (t, 2H, J = 7.5 Hz), 7.65-7.59 (m, 4H), 7.47 (t, 2H, J = 7.5 Hz).
MS (APCI) calcd. for C40H23BN2: m/z = 542.20; found: 542.31 [M]+.
Elemental analysis calcd. (%) for C40H23BN2: C 88.57, H 4.27, N 5.16; found: C 88.48, H 4.28, N 5.28.
(合成例2)構造5(CzBN)のホウ素のパラ位にピレニル基を導入した化合物CzBNPyrの合成
Figure 2022132140000038
2-ブロモ-1、3-ジフルオロ-5-ヨードベンゼン(3.20g、10.0mmol)、ピレン-1-イルボロン酸(2.74g、11.0mmol)、炭酸カリウム(4.16g、30.0mmol)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.58g、0.5mmol)を、脱気したテトラヒドロフランと水(容量比で2:1)の混合溶媒に、窒素雰囲気下で溶解して一晩加熱還流した。この反応物を室温まで冷却した後、水(70ml)に注ぎ入れ、酢酸エチルで抽出を行った。得られた有機層の溶媒を減圧下で蒸発させて濃縮物を得た。この濃縮物を、n-ヘキサンを溶離液に用いてカラムクロマトグラフィーにて精製し、中間体b1の白色固体を収量3.37g、収率85%で得た。
1H NMR (500 MHz, CD2Cl2, 298K, relative to Me4Si): δ = 8.25-8.21 (m, 3H), 8.16-8.10 (m, 4H), 8.05 (t, 1H, J= 7.5 Hz), 7.94 (d, 1H, J = 7.5 Hz), 7.27 (d, 2H, J = 8.0 Hz).
MS (APCI) calcd. for C22H11BrF2: m/z = 392.00; found: 392.08 [M]+.
Figure 2022132140000039
窒素雰囲気下、9H-カルバゾール(3.07g、18.4mmol)をN、N-ジメチルホルムアミド(脱水)(180mL)と丸底フラスコに入れて溶解した。この溶液に、水素化ナトリウム(0.73g、18.4mmol)の60%鉱油分散液を徐々に加え、室温で1時間攪拌した後、中間体b1(3.30g、8.3mmol)を添加して130℃で16時間加熱した。この反応物に水を加えて反応を停止させ、沈殿物(粗生成物)を濾別した。得られた粗生成物を、クロロホルム:ヘキサン=4:6の混合溶媒を溶離液に用いてフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)にて精製することにより、中間体b2を収量4.32g、収率75%で得た。
1H NMR (500 MHz, CD2Cl2, 298K, relative to Me4Si): δ = 8.39 (d, 1H, J = 9.5 Hz), 8.27-8.09 (m, 11H), 8.06-8.02 (m, 3H), 7.53 (t, 4H, J = 8.0 Hz), 7.43 (d, 4H, J = 8.0 Hz), 7.34 (t, 4H, J = 7.5 Hz).
MS (APCI) calcd. for C46H27BrN2: m/z = 686.14; found: 686.30 [M]+.
Figure 2022132140000040
脱水キシレン(100mL)に中間体b2(1.50g、2.2mmol)を溶解して調製した溶液に、-30℃の窒素雰囲気下で、n-ブチルリチウム(1.60mL、2.6mmol)の1.6Mヘキサン溶液を徐々に加え、室温まで温めた後、60℃に加熱して2時間攪拌した。この混合物に臭化ホウ素(0.31mL、3.3mmol)を-15℃で添加して室温で2時間攪拌し、さらに、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.87mL、5.1mmol)を0℃で添加し、室温まで温めた後、110℃に加熱して10時間撹拌した。この反応混合物を室温まで冷却し、酢酸ナトリウムの水溶液と酢酸エチルを加え、析出した沈殿物(粗生成物)を濾別した。この粗生成物を、温めたトルエンに溶解して再結晶させた後、昇華させることにより、目的のCzBNPyrを収量0.47g、収率35%で得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, 298K, relative to Me4Si): δ = 9.10 (d, 2H, J = 7.5 Hz), 8.71 (s, 2H), 8.54 (d, 1H, J = 7.5 Hz), 8.45 (d, 4H, J = 8.0 Hz), 8.41 (d, 1H, J = 7.0 Hz), 8.34-8.21 (m, 6H), 8.15-8.09 (m, 2H), 7.77 (t, 1H, J = 7.0 Hz), 7.51-7.41 (m, 6H).
MS (APCI) calcd. for C46H25BN2: m/z = 616.21; found: 616.31 [M]+.
Elemental analysis calcd. (%) for C46H25BN2: C 89.62, H 4.09, N 4.54; found: C 89.20, H 3.99, N 4.46.
(合成例3)2つのフェニル基が導入された構造17(BiPhOB)にピレニル基を導入した化合物BiPhOBPyrの合成
Figure 2022132140000041
1-(4-ブロモ-3、5-ジフルオロフェニル)ピレン(2.00g)、[1、1’-ビフェニル]-4-オール(2.16g)、および炭酸カリウム(1.76g)を窒素雰囲気下でn-メチルピロリドン(25mL)に溶解し、170℃で14時間撹拌した。この反応混合物を室温まで冷却した後、水を加えて反応を停止させ、沈殿物(粗生成物)を濾別した。得られた粗生成物を、クロロホルム:ヘキサン=4:6の混合溶媒を溶離液に用いてフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)にて精製することにより、中間体c1を収量2.68g、収率76%で得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, 298K, relative to Me4Si): δ = 8.14-7.94 (m, 8H), 7.84 (d, 1H), 7.55 (d, 4H), 7.50 (d, 4H), 7.36 (t, 4H), 7.27 (t, 2H), 7.20 (m, 4H), 7.03 (s, 2H).
Figure 2022132140000042
脱水キシレン(20mL)に中間体c1(1.00g)を溶解して調製した溶液に、n-ブチルリチウム(1.00mL)の1.59Mヘキサン溶液を、-30℃の窒素雰囲気下で徐々に加え、室温まで温めた後、60℃に加熱して2時間攪拌した。この混合物に三臭化ホウ素(0.17mL)を-15℃で添加して室温で2時間攪拌し、さらに、N,N-ジイソプロピルエチル-アミン(0.60mL)を0℃で添加し、室温まで温めた後、110℃に加熱して8時間撹拌した。この反応混合物を室温まで冷却し、酢酸ナトリウムの水溶液と酢酸エチルを加え、析出した沈殿物(粗生成物)を濾別した。この粗生成物を、温めたトルエンに溶解して再結晶させた後、昇華させることにより、目的のBiPhOBPyrを収量0.25g、収率28%で得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, 298K, relative to Me4Si): δ = 9.03 (s, 2H), 8.36-8.07 (m, 9H), 8.02 (d, 2H), 7.78 (d, 4H), 7.70 (d, 2H), 7.58 (s, 2H), 7.52 (t, 4H), 7.44 (t, 2H).
(合成例4)フェニル基が導入された構造18(BiPhOCzNB)にピレニル基を導入した化合物BiPhOCzNBPyrの合成
Figure 2022132140000043
窒素雰囲気下、9H-カルバゾール(2.23g)をN,N-ジメチルホルムアミド(脱水)(250mL)と丸底フラスコに入れて溶解した。この溶液に、水素化ナトリウム(0.56g)の60%鉱油分散液を徐々に加え、室温で1時間攪拌した後、1-(4-ブロモ-3、5-ジフルオロフェニル)ピレン(5.00g)を添加して80℃で5時間加熱した。この反応物に水を加えて反応を停止させ、沈殿物(粗生成物)を濾別した。得られた粗生成物を、クロロホルム:ヘキサン=2:8の混合溶媒を溶離液に用いてフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)にて精製することにより、中間体d1を収量2.30g、収率38%で得た。
1H NMR (500 MHz, CD2Cl2, 298K): δ = 8.29-8.06 (m, 11H), 7.71-7.68 (m, 2H), 7.49 (t, 2H), 7.36-7.30 (m, 4H).
Figure 2022132140000044
中間体d1(2.30g)、[1、1’-ビフェニル]-4-オール(0.87g)、および炭酸カリウム(0.71g)を窒素雰囲気下でn-メチルピロリドン(40mL)に溶解し、170℃で12時間撹拌した。この反応混合物を室温まで冷却した後、水を加えて反応を停止させ、沈殿物(粗生成物)を濾別した。得られた粗生成物を、クロロホルム:ヘキサン=3:7の混合溶媒を溶離液に用いてフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)にて精製することにより、中間体d2を収量2.46g、収率84%で得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, 298K, relative to Me4Si): δ = 8.25-8.18 (m, 6H), 8.10-7.97 (m, 5H), 7.63 (d, 2H), 7.60 (s, 1H), 7.55 (d, 2H), 7.50 (t, 2H), 7.45 (s, 1H), 7.42 (t, 2H), 7.37-7.30 (m, 7H).
Figure 2022132140000045
中間体d2(1.20g)をフラスコに入れて真空下で乾燥し、脱水トルエン(50mL)を加えて溶解した。この溶液を-20℃に冷却し、1.59Mのn-ブチルリチウム溶液(1.68mL)を徐々に加え、-20℃で2時間撹拌した後、2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1.40mL)を徐々に加え、室温で4時間撹拌した。この反応混合物に水を加え、ジクロロメタンで抽出を行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過し、その濾液を真空下で蒸発乾固した。この乾固物を、クロロホルム:ヘキサン=3:7の混合溶媒を溶離液に用いてカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、中間体d3を収量0.80g、収率63%で得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, 298K, relative to Me4Si): δ = 8.25 (d, 1H), 8.20-7.99 (m, 10H), 7.59-7.57 (m, 3H), 7.53 (d, 4H,), 7.46 (t, 2H), 7.45-7.39 (m, 3H), 7.32-7.27 (m, 5H), 0.70 (s, 12H).
Figure 2022132140000046
中間体d3(0.32g)と塩化アルミニウム(0.58g)をクロロベンゼンに溶解し、窒素雰囲気下、120℃で5時間攪拌した。この反応混合物に水を加えて反応を停止させた後、酢酸エチルで抽出を行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過し、その濾液を真空下で蒸発乾固した。この乾固物を、クロロホルム:ヘキサン=1:9の混合溶媒を溶離液に用いてカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、目的のBiPhOCzNBPyrを収量0.05g、収率16%で得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, 298K, relative to Me4Si): δ = 9.08 (s, 1H), 9.99 (d, 1H), 8.56-8.07 (m, 12H,), 7.98 (d, 1H), 7.82 (d, 2H), 7.75 (t, 1H), 7.71-7.41 (m, 8H).
(合成例5)構造18(PhOCzNB)の他の位置にピレニル基を導入した化合物PyrPhOCzNBの合成
Figure 2022132140000047
窒素雰囲気下、9H-カルバゾール(5.00g)をN,N-ジメチルホルムアミド(脱水)(180mL)と丸底フラスコに入れて溶解した。この溶液に、水素化ナトリウム(1.32g、)の60%鉱油分散液を徐々に加え、室温で1時間攪拌した後、2-ブロモ-1、3-ジフルオロベンゼン(6.35g)を添加して80℃で8時間加熱した。この反応物に水を加えて反応を停止させ、沈殿物(粗生成物)を濾別した。得られた粗生成物を、クロロホルム:ヘキサン=1:9の混合溶媒を溶離液に用いてフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)にて精製することにより、中間体e1を収量5.18g、収率51%で得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, 298K, relative to Me4Si): δ = 8.16 (d, 2H), 7.52-7.50 (m, 1H), 7.42 (t, 2H), 7.36-7.30 (m, 4H), 7.08 (d, 2H).
Figure 2022132140000048
中間体e1(3.50g)、4-(ピレン-1-イル)フェノール(3.33g)、および炭酸カリウム(1.70g)を窒素雰囲気下でn-メチルピロリドン(40mL)に溶解し、170℃で12時間撹拌した。この反応混合物を室温まで冷却した後、水を加えて反応を停止させ、沈殿物(粗生成物)を濾別した。得られた粗生成物を、クロロホルム:ヘキサン=3:7の混合溶媒を溶離液に用いてフラッシュカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)にて精製することにより、中間体e2を収量4.10g、収率65%で得た。
1H NMR (500 MHz, CD2Cl2, 298K): δ = 8.27 (d, 1H), 8.24-8.03 (m, 10H), 7.70 (d, 2H), 7.60 (t, 1H,), 7.45 (t, 2H), 7.38-7.30 (m, 6H), 7.18 (d, 2H).
Figure 2022132140000049
中間体e2(1.00g)をフラスコに入れて真空下で乾燥し、脱水トルエン(120ml)を加えて溶解した。この溶液を-20℃に冷却し、1.59Mのn-ブチルリチウム溶液(1.63ml)を徐々に加え、-20℃で2時間撹拌した後、2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1.32mL)を徐々に加え、室温で6時間撹拌した。この反応混物に水を加え、ジクロロメタンで抽出を行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過し、その濾液を真空下で蒸発乾固した。この乾固物を、クロロホルム:ヘキサン=4:6の混合溶媒を溶離液に用いてカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、中間体e3を収量0.65g、収率61%で得た。
1H NMR (500 MHz, CD2Cl2, 298K): δ = 8.26-7.99 (m, 11H), 7.69 (t, 1H), 7.63 (d, 2H), 7.43 (t, 2H), 7.33 (t, 2H), 7.30-7.24 (m, 6H), 0.66 (s, 12H).
Figure 2022132140000050
中間体e3(0.50g)と塩化アルミニウム(1.00g)をクロロベンゼンに溶解し、窒素雰囲気下、120℃で5時間攪拌した。この反応混合物に水を加えて反応を停止させた後、ジクロロメタンで抽出を行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、濾過し、その濾液を真空下で蒸発乾固した。この乾固物を、クロロホルム:ヘキサン=1:9の混合溶媒を溶離液に用いてカラムクロマトグラフィーにて精製することにより、目的のPyrPhOCzNBを収量0.09g、収率24%で得た。
1H NMR (500 MHz, CDCl3, 298K, relative to Me4Si): δ = 8.99-8.86 (m, 2H), 8.46-8.08 (m, 13H), 7.95-7.77 (m, 2H), 7.70-7.43 (m, 4H,), 7.35 (d, 1H).
(時間依存密度汎関数(TDDFT)計算)
TDDFT計算で求めた各化合物の分子軌道分布、HOMOおよびLUMOのエネルギー、最低励起一重項エネルギーS、最低励起三重項エネルギーT、最低励起一重項エネルギーSと最低励起三重項エネルギーTの差ΔEST、および振動子強度fを図1、2に示す。各図中、上下のラインに付した数値は、それぞれLUMOのエネルギー、HOMOのエネルギーを示し、中間の2つのラインに付した数値は、それぞれ励起一重項エネルギーS、励起三重項エネルギーTを示す。
(比較例1) CzBNNaを用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製
Ar雰囲気のグローブボックス中でCzBNNaのトルエン溶液(濃度10-5mol/L)を調製した。
また、石英基板上に真空蒸着法にて、真空度8×10-5Pa以下の条件にてCzBNNaとmCBPとを異なる蒸着源から蒸着し、CzBNNaの濃度が1重量%である薄膜を50nmの厚さで形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。
(実施例1) CzBNPyrを用いた有機フォトルミネッセンス素子の作製
CzBNNaの代わりにCzBNPyrを用いること以外は、比較例1と同様にしてCzBNPyrのトルエン溶液を調製し、CzBNPyrとmCBPの薄膜を形成して有機フォトルミネッセンス素子とした。
(実施例2~4、比較例2、3) 他の化合物を用いた有機フォトルミネッセンス素子(トルエン溶液)の調製
CzBNNaの代わりに表1に示す化合物を用いること以外は、比較例1と同様にして各化合物のトルエン溶液を調製した。
Figure 2022132140000051
[有機フォトルミネッセンス素子の評価]
比較例1と実施例1~4で調製したトルエン溶液について、紫外吸収スペクトルと340nm励起光による蛍光スペクトルとリン光スペクトルを測定した。CzBNNaのトルエン溶液の測定結果を図3に示し、CzBNPyrの測定結果を図4に示し、BiPhOBPyrのトルエン溶液の測定結果を図5に示し、BiPhOCzNBPyrのトルエン溶液の測定結果を図6に示し、PyrPhOCzNBの測定結果を図7に示す。図3~7中、「UV@R.T.」は室温で測定した紫外吸収スペクトルを示し、「FL@R.T.」は室温で測定した蛍光スペクトルを示し、「FL@77K」は77Kで測定した蛍光スペクトルを示し、「Ph@77K」は77Kで測定したリン光スペクトルを示す。
比較例1と実施例1で作製した薄膜の発光スペクトルを図8に示し、様々な温度で測定した発光の過渡減衰曲線を図9、10に示す。図10中の挿入図は、50Kで測定した即時蛍光の過渡減衰曲線を示す。図10に示すCzBNPyrドープ膜の過渡減衰曲線からは、50~300Kのいずれの温度においても遅延蛍光は認められなかった。
また、比較例1と実施例1で調製したトルエン溶液と薄膜の各種特性値を表2に示し、実施例2~4で調製したトルエン溶液の各種特性値を表3に示す。各表において、λabsは吸収極大波長、λmaxは発光極大波長、Stokes shiftはλmaxとλabsの差、FWHMは発光ピークの半値全幅、ΦArはアルゴン雰囲気で測定したフォトルミネッセンス(PL)量子収率、ΔESTは最低励起一重項エネルギーSと最低励起三重項エネルギーTの差ΔEST、τは即時蛍光の発光寿命、τは遅延蛍光の発光寿命、Kは放射遷移の速度定数、Knrは無放射遷移の速度定数、kISCは項間交差の速度定数、kRISCは逆項間交差の速度定数である。
Figure 2022132140000052
Figure 2022132140000053
また、実施例1,3および比較例1~3で調製したトルエン溶液(3mL)について、300~400nmのバンドパスフィルターを通過した光を5mW/cmの照射パワーで連続照射し、発光強度の経時劣化を測定した結果を図11~14に示し、各図から発光強度が初期の90%になるまでの時間LT90を求めた結果を表4、5に示す。ここで、発光強度の経時劣化の測定は、大気中(in air:酸素存在下)と窒素雰囲気中(in N2:酸素非存在下)とで行った。大気中で観測される経時劣化は、一重項励起子の劣化に対応し、窒素雰囲気中で観測される経時劣化は、一重項励起子と三重項励起子の劣化に対応する。また、表4には、表2に示したλmax、FWHM、ΦAr、ΔESTと、大気中で測定したPL量子収率ΦAirを併せて示した。
Figure 2022132140000054
Figure 2022132140000055
多重共鳴型狭帯発光TADF材料の一種であるCzBN(構造5)のホウ素のパラ位にフェニル基(Ph)、ナフチル基(Na)、ピレニル基(Pyr)を導入したところ、いずれも発光波長、ストークスシフト、スペクトル半値幅がほとんど同じ化合物が得られた。S1とT1のエネルギー差(ΔEST)はフェニル修飾体(CzBNPh)およびナフチル修飾体(CzBNNa)が無修飾体と同じ0.15 eVであったのに対し、ピレニル体(CzBNPyr)は0.61 eVと非常に低い三重項励起子を有しており、TADF性を示さないことを見出した。発光量子収率は無修飾体が99%であるのに対し、フェニル体が99%、ナフチル体が77%、ピレニル体が83%と依然高い発光性を有していた。
また、他の多重共鳴型骨格を有する化合物としてPhOB(構造17)やPhOCzNB(構造18)のホウ素原子のパラ位にピレニル基を導入した化合物(BiPhOBPyr、BiPhOCzNBPyr)や、構造18の他の位置にピレニル基を導入した化合物(PyrPhOCzNB)についても評価を行ったところ、いずれも低いT1エネルギーと高いPL量子収率を示し、また、スペクトル半値幅が狭く、ストークスシフトが小さいという良好な特性を示した。さらに、BiPhOCzNBPyrと、ピレニル基を導入していない無修飾体(BiPhOCzNB)の寿命(LT90)を比較したところ、両者はS1エネルギーが同等であるものの、BiPhOCzNBPyrの方が、BiPhOCzNBよりも長い寿命を示した。
以上のことから、本発明において多重共鳴効果によってTADF性を示す化合物群にピレンなどの多環芳香族を導入することで、その発光特性を損なうことなく三重項励起子を効率的に除去することができ、これにより、安定性が高い狭帯域発光材料を提供できることが示された。
[エレクトロルミネッセンス素子の作製]
下記の各実施例および各比較例で作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の層構成と各層のエネルギー準位を図15に示す。図15中、各層の下方に記した数値はHOMOのエネルギーを示し、上方に記した数値はLUMOのエネルギーを示す。Emitterは、実施例5、比較例4、5で用いたドーパントであり、比較例4ではCzBNNa、実施例5ではCzBNPyr、比較例5ではCzBNPhである。また、C56は比較例6で用いたドーパントである。
(比較例4) CzBNNaを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の作製
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度6×10-5Paで積層することにより作製した。まず、ITO上にHAT-CNを10nmの厚さに形成し、その上に、Tris-PCzを30nmの厚さに形成した。続いて、mCBPを5nmの厚さに形成した。次に、CzBNNaとmCBPを異なる蒸着源から共蒸着し、30nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、CzBNNaの濃度は0.5重量%とした。次に、SF3-TRZを10nmの厚さに形成した。その上に、LiqとSF3-TRZを異なる蒸着源から共蒸着し、20nmの厚さの層を形成した。この時、Liqの濃度は30重量%とした。さらにLiqを2nmの厚さに形成し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子(比較素子4)とした。
(実施例5、比較例5、6) 他の化合物をドーパントに用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の作製
発光層を形成する際、CzBNNaの代わりに表6に示す化合物を用いること以外は、比較例4と同様にして有機エレクトロルミネッセンス素子(素子5、比較素子4~6)を作製した。ここで、CzBNPyrおよびCzBNPhの発光層における濃度は5重量%とし、C56の発光層における濃度は20重量%とした。
Figure 2022132140000056
[有機エレクトロルミネッセンス素子の評価]
比較素子4、素子5の発光スペクトルを図16に示し、電流密度-電圧特性を図17に示し、外部量子効率(EQE)-輝度特性を図18に示す。また、素子5、比較素子4~6の窒素雰囲気中(酸素非存在下)で測定した発光強度の経時変化を図19に示し、大気中(酸素存在下)で測定した発光強度の経時変化を図20に示す。また、比較素子4、素子5のデバイス特性を表7に示す。表7中、Vonはオン電圧、Lmaxは最大輝度、CEは電流効率、PEは電力効率、EQEは外部量子効率、λELは発光極大波長、FWHMは発光ピークの半値全幅、CIE(x,y)は1000nitsで測定したCIE色度座標、LT95は1000nitsで連続駆動したときの輝度が初期輝度の95%になるまでの時間、LT90は1000nitsで連続駆動したときの輝度が初期輝度の90%になるまでの時間、Driving voltageは5mA/cmでの電圧をそれぞれ示す。ここで、EQE欄の上段に示した数値は、左側から順に、図18から読み取ったEQEの最大値、100cd/mでのEQE、1000cd/mでのEQE、10000cd/mでのEQEであり、下段に示した数値は、EQEの最大値に対する相対値である。この相対値が小さいもの程、ロールオフが抑えられていることを意味する。LT90およびLT95は酸素非存在下で測定した値であり、LT95の欄の括弧内の数値は、輝度が初期輝度の95%になったときの電流密度である。また、表7には、表2に示した薄膜のPL量子収率ΦArを併せて示した。
Figure 2022132140000057
図19に示す、酸素非存在下での発光強度の経時劣化は、発光ドーパントの一重項励起子と三重項励起子の劣化を反映する。図19に示すように、発光ドーパントとして、CzBNにナフチル基を導入した化合物(CzBNNa)を用いた比較素子4とCzBNにピレニル基を導入した化合物(CzBNPyr)を用いた素子5は、CzBNにフェニル基を導入した化合物(CzBNPh)を用いた比較素子5に比べて劣化が抑えられていた。さらに、比較素子4と素子5の間では、CzBNPyrを用いた素子5の方が長寿命であった(表7のLT95、LT90)。このことから、多重共鳴型TADF材料に多環芳香族基を導入することにより寿命が改善すること、特にピレニル基の導入が好ましいことが、エレクトロルミネッセンス素子においても確認することができた。
Figure 2022132140000058
多重共鳴効果型狭帯発光材料に多環芳香族を導入することにより、多重共鳴骨格上より効果的に三重項励起子を取り除き、発光性がほとんど変わらない蛍光分子を得ることができる。
本発明によれば、色純度が高い安定な狭帯域幅発光材料を提供し、発光デバイスの安定性を向上させることができる。このため、本発明は産業上の利用可能性が高い。

Claims (12)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物。
    一般式(1)
    -X
    (上式において、Mは、Xが水素原子であるときに多重共鳴効果を用いた発光材料として機能する部分構造を表し、Xは3環以上の縮合環を含む多環芳香族基を表す。)
  2. 前記多環芳香族基が3つ以上のベンゼンの縮合環を含む芳香族基である、請求項1に記載の化合物(ここでいう芳香族基を構成する環骨格には複素原子が含まれていてもよい)。
  3. 前記多環芳香族基が、前記3環以上の縮合環の環骨格構成原子で結合する基である、請求項1または2に記載の化合物。
  4. 最低一重項励起状態-最低三重項状態のエネルギー差が0.30eV以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
  5. が、下記の構造1~18の構造からなる群より選択される1以上の骨格構造を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
    Figure 2022132140000059
    Figure 2022132140000060
  6. Xが、4環以上の縮合環を含む芳香族基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
  7. Xが置換もしくは無置換のピレニル基である、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の化合物を含む、発光デバイス。
  9. 多重共鳴効果を用いた発光材料分子を構成する1つ以上の水素原子を、3環以上の縮合環を含む多環芳香族基で置換することを特徴とする、安定性を向上させた狭帯域幅発光材料の設計方法(ここでいう芳香族基を構成する環骨格には複素原子が含まれていてもよい)。
  10. 多重共鳴効果を用いた発光材料分子を構成する1つ以上の水素原子を3環以上の縮合環を含む多環芳香族基で置換した分子を2種以上想定し、その2種以上の想定分子を計算により評価して最適な分子を選択することを含む、安定性を向上させた狭帯域幅発光材料の設計方法(ここでいう芳香族基を構成する環骨格には複素原子が含まれていてもよい)。
  11. 請求項9または10の設計方法を実施するためのプログラム。
  12. 多重共鳴効果を用いた発光材料分子を構成する1つ以上の水素原子を、3環以上の縮合環を含む多環芳香族基で置換することを特徴とする、安定性を向上させた狭帯域幅発光材料の製造方法(ここでいう芳香族基を構成する環骨格には複素原子が含まれていてもよい)。
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