以下、幾つかの実施形態について図面を参照しながら説明する。複数の実施形態について同一又は類似の構成部分には同一又は類似符号を付して説明を省略することがある。
(第1実施形態)
第1実施形態について図1から図12を参照しながら説明する。図1に例示したように、バッテリ2には電力変換器としての三相インバータ3が接続されている。バッテリ2は、ニッケル水素蓄電池やリチウム蓄電池などの蓄電池である。三相インバータ3にはモータ4が接続されている。モータ4は、例えばハイブリッド車の車輪を駆動する動力発生装置であり、永久磁石同期モータ(PMSM)を例示している。
三相インバータ3には、U相、V相、W相の複数相分のマルチフェーズコンバータ6u、6v、6wが用意されている。三相インバータ3は、それぞれ、基本単位となるコンバータ5u、5v、5wを2以上のn個多重並列接続したマルチフェーズコンバータ6u、6v、6wにより構成されている。
図1には、基本単位となるコンバータ5u、5v、5wの符号にそれぞれ添え字「1~n」を付して図示している。以下の説明では、コンバータ5u1、5u2、5u3…5un、5v1、5v2、5v3…5vn、5w1、5w2、5w3…5wn、のうち個々又はその一つを単にコンバータ5と略することもある。また、インダクタに流れる電流(以下、インダクタ電流IL)の検出対象となるコンバータ5u1、5v1、5w1を、「マスタ相のコンバータ5」と称することもある。コンバータ5の構成例は図3に示している。
例えば、U相のマルチフェーズコンバータ6uは、n個のコンバータ5に流す全電流を1/nでそれぞれ分担すると共に、互いに位相差T/nを存して駆動することで各コンバータ5u1…5unの駆動電流を平準化する。各コンバータ5u1…5unの出力電流が合成されるため電流リップルを相殺でき、これにより、所望の電流波形、ここでは正弦波電流を出力するように構成されている。V相、W相のマルチフェーズコンバータ6v、6wも同様である。
上記の個々のコンバータ5は、図3に示すように、上アームスイッチSW1、下アームスイッチSW2、インダクタL、及びコンデンサCを図示形態に備え、バッテリ2の電圧を所望に変換する降圧型の非反転形バックコンバータにより構成される。
上アームスイッチSW1、下アームスイッチSW2は、Nチャネル型のパワーMOSFETなどのパワースイッチとして構成され、ドレインソース間には負荷電流を転流するためそれぞれ還流ダイオードD1、D2が接続されている。以下の説明では、上アームスイッチSW1及び下アームスイッチSW2の双方、又はその一方を「パワースイッチ」と称することもある。
本実施形態に係る制御システム1は、三相インバータ3に制御装置10を接続しており、図1に示す制御装置10を主体として制御を実行する。制御装置10は、複数のコア及び揮発性及び不揮発性のメモリ37などを備えたコンピュータにより構成されるもので、機能的には制御部11及びパルス生成部12としての構成を備える。メモリ37は、非遷移的実体的記憶媒体として各種のデータを保持する保持部として用いられる。バッテリ2には電圧センサ13が設置されており、電圧センサ13の検出電圧は制御部11に入力されている。
また、UVW各相のマスタ相となるコンバータ5u1、5v1、5w1を構成するインダクタLの通電経路には、電流センサ14が設けられている。制御部11は、電流センサ14により検出されたインダクタ電流ILを入力している。また電圧センサ15が、コンデンサCの出力電圧Voutを検出するために設けられており、当該電圧センサ15による検出電圧は制御部11に入力されている。
制御部11は、要求トルクに応じて算出された電流指令値Ioを指令値として入力し当該電流指令値Ioに応じた制御情報をパルス生成部12に出力する。なお、電流指令値Ioの更新周期は、交流周波数の周期に比較して十分短い時間に設定されており、交流周波数にて変化する電流指令値Ioを細かく設定できる。
また電流センサ16は、モータ4に入力させる相電流Iu、Iv、Iwを検出するために設けられており、電流センサ16による検出電流は制御部11に入力されている。また制御部11は、モータ4に設置されるレゾルバなどの回転位置センサ4aによりロータの角度θを入力し角速度ωの情報を演算する。制御部11は、これらの情報をフィードバック制御情報としてパルス生成部12に出力する。
パルス生成部12は、制御部11から入力される制御情報に基づいて、三相インバータ3の3×n個のコンバータ5を多重動作させるように多重パルス(マルチフェーズパルス)を生成する。
図2に機能的に例示したように、パルス生成部12は、ゲート駆動部21、ゼロ電流検出部22、及びパルス演算部23としての機能的構成を備える。図3に示したように、パルス演算部23は、パルス幅カウンタ24a、開始位相カウンタ24b、終了位相カウンタ24cなどによるカウンタ24を備える。
パルス演算部23は、各相のマルチフェーズコンバータ6u、6v、6wの各コンバータ5が電流境界モードにて動作するときの上アームスイッチSW1及び下アームスイッチSW2のオン時間Ton及びオフ時間Toff、周期T、及び、同相(例えばU相)の複数のコンバータ5に入力させる多重パルス間の位相差Tdの各パラメータを算出する。
電流境界モードとは、インダクタ電流ILがゼロとなることを検出したことを条件として、上アームスイッチSW1及び下アームスイッチSW2のオン・オフを切り替えるモードを示す。オン時間Ton、オフ時間Toff、周期T、位相差Tdの各パラメータは、同相のマルチフェーズコンバータ(例えば6u)の各コンバータ5に入力させる多重パルスの間で同一に設定される。
ゲート駆動部21は、パルス演算部23の演算結果に基づいて三相インバータ3を駆動する。ゲート駆動部21は、パルス演算部23により算出されたオン時間Ton、周期T、位相差Tdに基づいて上アームスイッチSW1又は下アームスイッチSW2をオン・オフ駆動する。
本実施形態では、例えば、ある相、例えばU相の電流指令値Ioが0を超える場合、ゲート駆動部21が、マルチフェーズコンバータ6uを構成する各コンバータ5の下アームスイッチSW2をオフに保持した状態で、上アームスイッチSW1をオン・オフ駆動する。上アームスイッチSW1がオンすると、バッテリ2から上アームスイッチSW1を通じてインダクタ電流ILを漸増させながらコンデンサCを充電する。
その後、オン時間Tonが経過すると、ゲート駆動部21は上アームスイッチSW1をオフ駆動する。上アームスイッチSW1がオフしても、下アームスイッチSW2に付属した還流ダイオードD2を通じてインダクタ電流ILが流れ続ける。
インダクタ電流ILは漸減するが、ゼロ電流検出部22は、インダクタ電流ILがゼロとなるタイミングを検出する。ゲート駆動部21は、インダクタ電流ILがゼロとなると、上アームスイッチSW1を再びオンする。電流指令値Ioが0を超える限り、この動作が繰り返される。各コンバータ5は、ゼロ電流検出部22によりインダクタ電流ILがゼロ検出されたことを条件として、上アームスイッチSW1をターンオンする電流境界モードにて動作する。
逆に、電流指令値Ioが0未満の場合、ゲート駆動部21が、上アームスイッチSW1をオフに保持した状態で、下アームスイッチSW2をオン・オフ駆動する。下アームスイッチSW2がオンすると、インダクタ電流ILを漸減させながらコンデンサCから放電する。この後、オン時間Tonが経過すると、ゲート駆動部21は下アームスイッチSW2をオフ駆動する。下アームスイッチSW2がオフしても、上アームスイッチSW1に接続された還流ダイオードD1を通じてインダクタ電流ILが流れ続ける。
インダクタ電流ILは漸増するが、ゼロ電流検出部22は、インダクタ電流ILがゼロとなるタイミングを検出する。ゲート駆動部21は、インダクタ電流ILがゼロになると再び下アームスイッチSW2をオンする。電流指令値Ioが0を下回る限り、この動作が繰り返される。各コンバータ5は、ゼロ電流検出部22によりインダクタ電流ILがゼロ検出されたことを条件として、下アームスイッチSW2をターンオンする電流境界モードにて動作する。
図4に多重動作個数n=4とし、周期をT、位相差TdをT/nとした場合の波形例を示している。インダクタ電流ILが漸増しその後に漸減すると、インダクタLにはインダクタ電流ILが三角波状に通電されることになる。
制御装置10は、前述のフィードバック情報に基づいてUVW各相の電流指令値Ioを正弦波状に徐々に変化させながらパルス生成部12に制御情報を出力する。パルス生成部12は、図4に例示したように多重パルスの各パラメータ(オン時間Ton、オフ時間Toff、周期T、位相差Td)を変化させる。
各コンバータ5は、互いに同一の位相差Td=T/nを有して相電流Iu、Iv、Iwをモータ4に通電することで、各コンバータ5の出力電流を多重数n分だけ重畳しつつ、モータ4のUVW各相に通電できる。これにより、所望の電流指令値Io、ここでは正弦波状に変化する電流指令値Ioに各相電流Iu、Iv、Iwを制御できる。
各相電流Iu、Iv、Iwの最大出力は、インダクタ飽和電流より小さく且つ三相インバータ3の発熱要件を満たすように決定され、多重動作個数nは最大出力を満たす上限に基づいて決定すると良い。また、多重パルスの周期Tに対応した周波数は、可聴周波数より高く設定すると良い。
多重動作個数nは、大きいほど電流リップル相殺効果が高くなるため極力大きくすることが望ましい。なお、多重動作個数nを大きくしすぎると制御装置10による制御を複雑化する要因となるため、制御装置10のリソースに基づく処理能力に応じて多重動作個数nを決定すると良い。
以下、フローチャートを用いて各相のマルチフェーズコンバータ6u、6v、6wに係る処理動作を詳細説明する。UVW各相の動作は概ね同一であるため、U相のマルチフェーズコンバータ6uの処理動作を説明し、V相、W相のマルチフェーズコンバータ6v、6wの処理動作説明を省略する。
図5に1多重目のコンバータ5u1の処理ステップを示すように、ゼロ電流検出部22がS1、S2においてインダクタ電流ILがゼロとなるタイミングを検出したことを条件として、ゲート駆動部21がS3又はS4において上アームスイッチSW1又は下アームスイッチSW2をターンオンさせる。このとき、パルス演算部23はS2において電流指令値Ioの値に基づいて、上アームスイッチSW1をオンするか、下アームスイッチSW2をオンするかを決定する。
電流指令値Ioがゼロを超えていれば、ゲート駆動部21は、S3において上アームスイッチSW1をターンオンし、電流指令値Ioがゼロ未満であれば、ゲート駆動部21はS4において下アームスイッチSW2をターンオンする。
コンバータ5u1を駆動する際、パルス演算部23は、各コンバータ5のパワースイッチSW1又はSW2をオン継続させるオン時間Ton、及び、各コンバータ5に印加する多重パルスの間の位相差Tdを算出する。
相電流Iuの電流指令値をIo、コンバータ5の多重数をnとすると、コンバータ5の平均電流I=Io/nとなる。本制御システム1では、インダクタ電流ILはゼロを境界として漸増又は漸減を繰り返すため、インダクタ電流ILのピーク電流ILpは、平均電流Iの2倍=2Iとなる。
パルス演算部23は、電流指令値Io>0のときには、上アームスイッチSW1のオン時間Ton及びオフ時間Toff、並びに、周期T及び位相差Tdを、それぞれ下記の(1-1)式~(1-4)式に基づいて算出する。
ここで、Vinは入力電圧、Voutは相電圧、Lはインダクタのインダクタンス、nはコンバータ5の多重動作数を示す。
パルス演算部23は、電流指令値Io<0のときには、下アームスイッチSW2のオン時間Ton及びオフ時間Toff、並びに、周期T及び位相差Tdを、それぞれ下記の(2-1)式~(2-4)式に基づいて算出する。
パルス生成部12は、上アームスイッチSW1及び下アームスイッチSW2を駆動するためのパルスを生成し、ゲート駆動部21はS3、S4において上アームスイッチSW1又は下アームスイッチSW2をオン駆動する。
図6に1多重目~n多重目のコンバータ5を起動させるためのパルス生成例を示している。パルス幅カウンタ24aは、ゼロ電流検出部22によりインダクタ電流ILがゼロ検出されたことを条件として、カウンタ値を所定値に設定しダウンカウントすることでオン時間Tonを計測する。
パルス演算部23は、オン時間Tonを経過すれば図5のS5においてYESと判定し、オンされているパワースイッチSW1又はSW2をS6においてターンオフする。これにより、オン時間TonだけパワースイッチSW1又はSW2をオン継続させることできる。
またパルス生成部12のパルス演算部23は、パルス幅カウンタ24aと同時に開始位相カウンタ24bを動作させる。開始位相カウンタ24bは、2多重目~n多重目のコンバータ5u2…5unに入力させるパルスの開始タイミングを計測するためのカウンタを示す。開始位相カウンタ24bは、カウンタ値を所定値に設定しダウンカウントすることでパルス演算部23にて演算された位相差Tdに相当する時間を計測する。終了位相カウンタ24cは、1多重目~n多重目のコンバータ5u1…5unにそれぞれ入力させるパルスの終了タイミングを計測するカウンタを示す。終了位相カウンタ24cは、カウンタ値を所定値に設定しダウンカウントすることでパルス演算部23にて演算された位相差Tdに相当する時間を計測する。
図7にm多重目(ただしm≧2)のコンバータ5の処理ステップを示す。パルス生成部12は、S11においてm-1多重目のコンバータ5のパワースイッチSWm-1をオンしていることを条件としてS12以降の処理を行っている。ここで示したパワースイッチSWm-1とは、m-1多重目のコンバータ5の上アームスイッチSW1又は下アームスイッチSW2の何れかを示し電流指令値Ioに基づいて変化する。
m-1多重目のコンバータ5のパワースイッチSWm-1がオンした後、S12においてm多重目の開始タイミングである位相差Td=Ton/nを経過したか否かを開始位相カウンタ24bにより計測し、S12の条件を満たしたとき、S13においてm多重目のコンバータ5のパワースイッチSWmをターンオンさせる。パワースイッチSWmとは、m多重目のコンバータ5の上アームスイッチSW1又は下アームスイッチSW2の何れかを示し電流指令値Ioに基づいて変化する。
以降、パルス生成部12は、開始位相カウンタ24bのカウントが終了する度に、m多重目のコンバータ5のパワースイッチSWmを順次オンさせるパルスを生成する。これにより、互いに位相差Tdを存して駆動用のパルスを出力開始できる。
他方、図6に示すように、1多重目のコンバータ5u1のパルス幅カウンタ24aによるカウントが終了するとオン時間Tonを経過したと判断し、パルス生成部12は、1多重目のコンバータ5u1のパワースイッチSW1又はSW2へのパルス出力を停止する。パルス生成部12は、パルス幅カウンタ24aによるカウントを終了したタイミングにおいて終了位相カウンタ24cのカウントを開始する。その後、パルス生成部12は、終了位相カウンタ24cによるカウントを終了し、S14においてオン時間Tonを経過する度に、m多重目のコンバータ5のパワースイッチSWmへ出力しているパルスを順次停止させる。これにより、m多重目のパワースイッチSWmを順次ターンオフさせる。
パワースイッチSW1又はSW2をターンオフするときにはハードスイッチングとなる。しかし、パワースイッチSW1及びSW2の出力に設けられるコンデンサCの充電時間をスイッチング時間より十分長くすれば、電圧上昇を制限する期間を長期間化でき、ZVS(Zero Voltage Switching)とすることができる。これにより、スイッチング損失を概ねゼロにできる。出力コンデンサの容量が不足している場合には、並列にコンデンサCを追加するとよい。
この結果、パルス演算部23は、1多重目のコンバータ5u1へのパルスを出力したタイミングから前述のように計算した位相差Tdの後に順次パルスを出力することで、1…n多重目のコンバータ5u1…5unに入力させる多重パルスを生成できる。
各コンバータ5の共振時間は、パワースイッチSW1及びSW2の出力容量と、還流ダイオードD1及びD2の接合容量と、インダクタLのインダクタンスとにより決定される。パワースイッチSW1、SW2のオンタイミングは、これらの容量とインダクタンスによる共振半周期後の電圧最下点に設定することが好ましい。共振半周期後の電圧最下点とは、パワースイッチSW1又はSW2をオフすることで、インダクタ電流ILがゼロをオーバーシュートした後に再度ゼロに近接するタイミングになる。これにより、ZCS(Zero-Current-Switching)、且つ、疑似ZVS(Zero-Voltage-Switching)にできるようになり、ターンオン時のスイッチング損失を実質ゼロにできる。
<多重数切替部25の説明>
以下、本実施形態の特徴となる多重数切替部25の構成及びその技術的意義について説明する。図1に示すように、パルス生成部12は、コンバータ5を同時に多重動作させる多重動作個数na(動作多重数)を変更する多重数切替部25として機能するブロックを備える。多重数切替部25は、多重動作数変更部相当である。
多重数切替部25は、電流指令値Io、又は、入力される指令回転数に依存して変化する電流指令値Ioの最大値に応じて、コンバータ5の多重動作個数naを変更するブロックである。以下では、本願に係る多重数切替部25による多重動作個数naの切替方法を説明すると共にその意義を説明する。
多重数切替部25は、電流指令値Io又は回転数指令値に応じて多重動作個数naを算出し、パルス演算部23に出力する。又は、制御装置10が電流指令値Io又は回転数指令値から多重動作個数naを計算し、多重数切替部25に多重動作個数naを出力し、多重数切替部25がこのデータに基づいて多重動作個数naを切替えるようにしても良い。
電流指令値I
o>0のとき、多重数切替部25は、多重動作個数n
aを用い、上アームスイッチSW1のオン時間Ton1、オフ時間Toff1、周期T、及び、各コンバータの間の位相差Tdを、それぞれ(3-1)式~(3-4)式に基づいて算出する。
また多重数切替部25は、多重動作個数naを超えるスレーブ相のコンバータ5に対してパルスを出力するゲート駆動部21の動作を無効化する。すなわちパワースイッチSW1及びSW2をオフに保持する。図8及び図9に示すように、電流指令値Ioが同じ場合、多重動作個数naの少ない方が周期が長くなりパルス幅が広くなる。
また多重数切替部25は、電流指令値Ioに応じて多重動作個数naを切替えてもよい。図10に示すように、電流指令値Ioが大きいほど多重動作個数naを多くし、電流指令値Ioが小さいほど多重動作個数naを少なくすると良い。また図10には、電流指令値Ioの切替タイミングを、多重動作個数naの切替タイミングに一致させる形態を示しているが、これに限定されるものではない。
図11に示すように、多重数切替部25が多重動作個数naを切替えるタイミングは、電流指令値Ioの切替タイミングと同一タイミングでなくても良く、電流指令値Ioの切替指令を受けてその電流切替タイミングから遅延したタイミングにて多重動作個数naを切替えても良い。多重動作個数naを少なくすることで、パルス幅の短縮化を抑制でき、電流指令値Ioが比較的小さい場合でも、コンバータ5は正常にパルスを出力できる。
図12に示すように、指令値として指令回転数を用いているときには、指令回転数に応じて多重動作個数naを切替えても良い。制御装置10は、指令回転数を入力すると電流指令値Ioに基づいて出力電流を正弦波状に変化させる。
この場合、多重数切替部25は、指令回転数が大きいほど多重動作個数naを多くし、指令回転数が小さいほど多重動作個数naを少なく切り替えると良い。また多重数切替部25は、入力される指令回転数に依存して変化する電流指令値Ioの最大値に応じて、多重動作個数naを切替えても良いし、指令回転数に応じて多重動作個数naを切替えても良い。
本実施形態によれば、多重数切替部25により多重動作個数naを変更切替えできるようにしている。多重動作個数naを少なくすることで、パルス幅の短縮化を抑制できる。このため、指令回転数が比較的小さい場合でも、コンバータ5を正常に駆動できる。
(第2実施形態)
第2実施形態について図13を参照しながら説明する。第2実施形態については、第1実施形態と異なる部分について説明し、同一部分についての説明を省略する。
図13には図7に代わるフローチャートを示している。図13に示すように、S11aにおいて1多重目のコンバータ5のパワースイッチSW1又はSW2をオンしたタイミングから、S12aにおいて1多重目のパルスを基準としてm多重目のパルスの位相差Tdm=Ton×(m-1)/nを経過した後、S13においてm多重目のコンバータ5のパワースイッチSWmをターンオンするようにしても良い。
なお、1多重目の開始位相を基準としたm多重目の開始位相の位相差Tdmは、下記の(4)式の関係性に基づいて算出できる。
例えばU相の場合、1多重目のコンバータ5u1をマスタ相として、当該マスタ相のコンバータ5u1のパワースイッチSW1又はSW2をターンオンさせた後に、2以上のm多重目のコンバータ5u2…5unをスレーブ相として順にパワースイッチSW1又はSW2をターンオンさせるようにしても良い。本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
(第3実施形態)
第3実施形態について図14及び図15を参照しながら説明する。第1及び第2実施形態と異なる部分について説明する。多重数切替部25が、コンバータ5の多重動作個数naを切替えるときに、電流境界モードにおけるルールを継続できない場合がある。
図14に例示したように、ある切替タイミングtaにおいて多重動作個数naを2から4に切替え、多重パルスの周期Tを周期T2=T/2に切替えることを考える。
図14に示すように、切替タイミングtaより前では1多重目、3多重目のコンバータ5u1、5u3を動作させることによって電流境界モードを継続しながら相電流Iuを所望の電流指令値Ioに制御している。
しかし、切替タイミングta以降において1多重目から4多重目のコンバータ5u1…5u4の動作を周期Td2=T2/4により順に切替えると、マスタ相のコンバータ5u1に流れるインダクタ電流ILをゼロにできるものの、スレーブ相の3多重目のコンバータ5u3のインダクタ電流ILをゼロにできず、電流境界モードによる動作を継続できない。
このように、現在の多重動作個数nを次回の多重動作個数naに切り替える場合、パルス生成部12は、多重数切替部25による切替出力を受けて補間多重パルスPuを発生させることにより電流境界モードを継続させると良い。
多重動作個数naを切替えるときに、パルス生成部12が補間多重パルスPuを生成して電流境界モードの動作を継続させる一例について図15を参照しながら説明する。
切替前周期T、切替後周期Ta、切替前多重動作個数n、切替後多重動作個数na、ただし、n<naとする。このとき、切替前位相差Td=T/na、切替後位相差Tda=Ta/naとなる。
ここで、切替前位相差Tdは、多重動作個数naの場合の位相差として表現されている。図15に示すように、切替前の多重動作個数はnであるため、切替タイミングtbの前後で相電流Iuに変化はない。
このとき、補間多重パルスPu中のm多重目の周期をTmとすると、周期T1~Tmは図15及び下記(5)式に基づいて算出できる。
図15に示す切替タイミングtbからm多重目の周期Tmの補間多重パルスPuを生成することで電流境界モードを継続しつつ多重動作個数nを切替えることができる。
なお、上記方法は一例であり、補間多重パルスPuの生成方法は、上記方法に限定されるものではない。例えば、補間多重パルスPu間の位相差Toを、切替前位相差T/naと切替後位相差Ta/naとの間の何れかの値に設定しても良い。
以上説明したように、第3実施形態によれば、多重動作個数nを切替える際に、その途中で補間多重パルスPuを生成している。これにより、コンバータ5の多重動作個数nを切替えたとしても電流境界モードを安定して継続させることができる。
(第1から第3実施形態に関連したフィードバック制御構成の変形例)
第1から第3実施形態に関連したフィードバック制御構成の変形例について図16から図20を参照しながら説明する。図16に示すように制御装置10Aを構成しても良い。制御装置10Aは、制御部11A、パルス生成部12A、及びメモリ37を内蔵している。制御部11Aは、減算器30、電流制御器31、相変換器としての二相三相変換器32、及び三相二相変換器34を図示形態に接続して構成される。
制御部11Aは、d軸電流指令値Id*、q軸電流指令値Iq*を入力する。また制御部11Aの三相二相変換器34は、相電流Iu、Iv、Iwを入力すると共に、モータ4に設置されるレゾルバなどの回転位置センサ4aによりロータの角度θを入力し角速度ωの情報を演算する。三相二相変換器34は、モータ4の三相の相電流Iu、Iv、Iwをd軸電流Id、q軸電流Iqに変換し減算器30に出力する。
減算器30は、d軸電流指令値Id*、q軸電流指令値Iq*からd軸電流Id、q軸電流Iqをそれぞれ減算し、電流制御器31に出力する。電流制御器31は、例えば、比例積分制御によりdq軸の電流指令値Id_cmd、Iq_cmdを二相三相変換器32に出力する。二相三相変換器32は、電流制御器31から入力されるdq軸の電流指令値をモータ4の三相毎の電流指令値Iu_cmd、Iv_cmd、Iw_cmd、に変換し、パルス生成部12Aに出力する。
パルス生成部12Aは、パルス生成ブロック12u、12v、12wを三相の相毎に備えると共に、動作多重数を変更するための多重数切替部25を一つ備える。各パルス生成ブロック12u、12v、12wは、それぞれゼロ電流検出部22、パルス演算部23、ゲート駆動部21としての機能的構成を備える。パルス生成ブロック12u、12v、12wの各相のパルス演算部23は、それぞれ、モータ4の三相毎の電流指令値Iu_cmd、Iv_cmd、Iw_cmdを入力する。ゼロ電流検出部22は、相毎にゼロ電流を検出しパルス演算部23に出力する。
パルス演算部23は、各相のマルチフェーズコンバータ6u、6v、6wの各コンバータ5が電流境界モードにて動作するときの上アームスイッチSW1及び下アームスイッチSW2のオン時間Ton及びオフ時間Toff、周期T、及び、同相(例えばU相)の複数のコンバータ5に入力させる多重パルス間の位相差Tdの各パラメータを算出する。
ゲート駆動部21は、パルス演算部23の演算結果に基づいて三相インバータ3を駆動する。ゲート駆動部21は、パルス演算部23により算出されたオン時間Ton、周期T、位相差Tdに基づいて上アームスイッチSW1又は下アームスイッチSW2をオン・オフ駆動する。
多重数切替部25Aは、電流制御器31からq軸電流の電流指令値Iq_cmdを入力して、コンバータ5の多重動作個数naを変更するブロックである。多重数切替部25Aは、図17に示すように電流指令値Iq_cmdの値に基づいて多重動作個数naを切替え、変更する。例えば、電流指令値Iq_cmdが10を超えていれば多重動作個数naを8に設定し、電流指令値Iq_cmdが4を超え10以下であれば多重動作個数naを4に設定し、電流指令値Iq_cmdが1を超え4以下であれば多重動作個数naを2に設定し、電流指令値Iq_cmdが1以下であれば多重動作個数naを1に設定してもよい。
このように、電流指令値Iq_cmdに応じて多重動作個数nを2^n毎に変更すると、パルス演算部23における位相差演算を省略することが可能になる。この多重動作個数naの変更時の動作例は、前述の図10、図11の流れと同様であるため説明を省略する。図18に適用前と適用後の三相電流Iu、Iv、Iwの波形例を示したように、高調波電流歪みの影響を改善できる。
例えば、図19に例示したように、コンバータ5が4多重動作しているときに多重数切替部25が3多重動作に切替えた場合には、周期Tに対する位相差T/3に係る信号を再計算することが必要となる。前述したように、予め定められた条件に基づいて、該当コンバータ5の動作/停止を切り替えることで、動作させるコンバータ5を変更できる。図20に2多重動作に切り替える例を示したように、2、4多重目の信号を停止するだけで良くなるため、位相差T/2に係る信号をわざわざ算出する必要がなくなり、制御処理量を削減できる。
(第4実施形態)
第4実施形態について図21から図24を参照しながら説明する。本実施形態では、コンバータ5の多重動作個数nを同一としながら、電流指令値Ioの変化に応じて多重パルスに基づく相電流Iu、Iv、Iwを滑らかに変化させる場合の実施形態について説明する。すなわち、本実施形態では第1から第3実施形態にて説明した多重数切替部25の構成を省いても良い。
電流指令値Ioの変化に応じて、パルス幅を変更する過渡的な状態においても電流境界モードの動作を継続できるように、パルス生成部112は、各コンバータ5に順次出力される複数の多重パルスの間を補間する補間多重パルスPuを補間部12bの機能により生成すると良い。図21に示すように、パルス生成部112は補間部12bとしての機能を備える。
例えば、補間部12bは、UVW各相において各コンバータ5に入力させる今回の第1多重パルス間におけるターンオフタイミング間の位相差の値と、次回の第2多重パルス間におけるターンオフタイミング間の位相差の値と、の間に、補間多重パルスPu間におけるターンオフタイミング間の位相差の値を設定すると良い。
具体的には、補間部12bの機能により次のように補間多重パルスPuを生成することが望ましい。図22に示すように、今回の第1多重パルス間のターンオフタイミング間の位相差をP
kとし、次回の多重パルス間のターンオフタイミング間の位相差をP
k+1とすると、補間多重パルスPu間のターンオフタイミング間の位相差P
kaを下記の(6)式に基づいて算出する。
ここでは(6)式を例示した線形補間方法を記載したが、これに限定されるものではない。補間多重パルスPuの間のターンオフタイミング間、又は、ターンオンタイミング間の位相差が、今回及び次回の多重パルス間の位相差の間の値に設定されていれば良い。すると、今回と次回の多重パルス間の出力電流を滑らかに補間でき、コンバータ5の駆動電流出力を平準化できる。
図23には、前述実施形態で説明したカウンタ24を用いて補間多重パルスPuを生成する場合の、パルス幅カウンタ24a、開始位相カウンタ24b、終了位相カウンタ24cの各カウンタ値の変化と、パルス演算部23による補間多重パルスPuの出力結果の一例を示している。
以下、図24のフローチャートを参照し、補間多重パルスPuの生成方法を説明する。図24に示すように、パルス生成部12は、S11においてマスタ相のコンバータ5u1のインダクタ電流ILをゼロ検出したか否かを判定し、ゼロ検出したことを条件として、S12においてカウンタ値を設定する。
パルス演算部23は、第1実施形態に示した方法と同様の方法を用いて、パルス幅カウンタ24a、開始位相カウンタ24b、終了位相カウンタ24cによるカウンタ値を設定することで、パワースイッチSW1又はSW2のオン時間Ton、オフ時間Toff、周期T、及びマスタ相及びスレーブ相のコンバータ5u1…5unの間のオン/オフタイミングの位相差Tdを設定する。
パルス生成部12は、電流指令値Ioが変化せず、多重パルスの現在のパルス幅から次回パルス幅を変更しないときには、S13にてNOと判定し、設定したカウンタ値に基づいてS18において次回の多重パルスを出力する。
しかし、電流指令値Ioが変化し、多重パルスの今回のパルス幅から次回パルス幅を変更するときには、S13においてYESと判定し、S14において前述した補間多重パルスPuの間の位相差間の条件を満たすようにカウンタ値を算出し、S15において補間多重パルスPuを出力する。
他方、パルス生成部12は、S16において補間多重パルスPuのマスタ相のゼロ電流を検出すると、S17において次回の多重パルスのパルス幅及び位相差に基づいて再度カウンタ値を設定し、S18において次回の多重パルスを出力する。
上記では流れを理解しやすいようにフローチャートにより図示したが、各処理ステップについてはその処理プロセスを必要に応じて並列処理するようにしても良い。
従来の技術を適用した場合、多重パルスの間の補間値としてマスタ相と各スレーブ相のコンバータ5に入力させるパルスの幅をそれぞれ算出する必要があり、しかも、これらの補間パルスを出力中には出力電流が一時的に増加してしまうことが確認されている。
本実施形態によれば、今回の第1多重パルスと次回の第2多重パルスとの間の位相差に着目し、補間部12bの機能により位相差を線形補間するように補間多重パルスPuを生成している。前述した方法では、補間前の第1多重パルス間の位相差をPk、補間後の第2多重パルス間の位相をPk+1としたとき、補間多重パルスPuの間の位相差を位相差Pkと位相差Pk+1の間の値に設定している。これにより、今回の多重パルスと次回の多重パルスの間を滑らかに補間でき、各コンバータ5の駆動電流出力を平準化できる。
また本形態によれば、補間多重パルスPuの間の位相差は、全て同一の位相差に設定できるため算出処理を一回で済ませることができる。補間多重パルスPuの間の位相差を例えば線形補間する場合、今回の多重パルス間の位相差Pkと、次回の多重パルス間の位相差Pk+1との平均値で求めることができ、従来技術の補間演算量に対して演算負荷を低減できる。コンバータ5の多重数に対応した補間多重パルスPuの幅及び補間多重パルスPuの間の位相差をマップ化してメモリ37に記憶しておき、このメモリ37に記憶されたマップを用いて演算するようにしても良い。
(第5実施形態)
第5実施形態について図25及び図26を参照しながら説明する。本実施形態は、第4実施形態の変形例であるため、第4実施形態と異なる部分について説明する。
図25に示すように、パルス演算部23は、多重パルスのそれぞれのパルスの開始位相を計測する開始位相カウンタ24bと、多重パルスの各パルス毎にパルス幅を制御する多重パルス幅カウンタ24dとを備える。パルス生成部112は、開始位相カウンタ24bが満了する毎に次回多重目のコンバータ5にパルスを入力させる。
開始位相カウンタ24bは、多重パルスのそれぞれのパルスを出力開始する開始位相を計測する。また多重パルス幅カウンタ24dは、1多重目~4多重目のコンバータ5u1…5u4に入力させるそれぞれのパルス幅の時間を計測するカウンタであり、開始位相カウンタ24bにより計測された開始位相を基準として計測すると共に多重パルスのそれぞれのパルス幅を計測する。
今回のマスタ相~スレーブ相のコンバータ5に入力させる一群の多重パルスのパルス幅をT
kとし、これらの多重パルス間の位相差をP
kとする。また、次回マスタ相~スレーブ相のコンバータ5に入力させる一群の多重パルスのパルス幅をT
k+1、これらの多重パルス間の位相差をP
k+1とすると、図26に示した補間多重パルスPuのパルス幅T
kaを下記の(7)式に基づいて算出できる。
パルス演算部23は、開始位相カウンタ24bにより位相差Pk、Pk+1を順次計測し、多重パルス幅カウンタ24dによりパルス幅Tk、Tka、Tk+1を計測することにより今回の多重パルス、補間多重パルスPu、次回の多重パルスを順次演算できる。本実施形態の方法によっても、多重パルスを生成できるため、第4実施形態と同様の作用効果を奏する。
(第3から第5実施形態に関連したフィードバック制御構成の変形例)
第3から第5実施形態に関連したフィードバック制御構成の変形例について図27から図31を参照しながら説明する。図27に示すように制御装置10Bを構成しても良い。制御装置10Bは、制御部11B、パルス生成部12B、メモリ37を内蔵している。制御部11Bは、減算器30、電流制御器31、相変換器としての二相三相変換器32、及び三相二相変換器34を図示形態に接続して構成される。
制御部11Bは、d軸電流指令値Id*、q軸電流指令値Iq*を入力する。また制御部11の三相二相変換器34は、相電流Iu、Iv、Iwを入力すると共に、モータ4に設置されるレゾルバなどの回転位置センサ4aによりロータの角度θを入力し角速度ωの情報を演算する。三相二相変換器34は、モータ4の三相の相電流Iu、Iv、Iwをd軸電流Id、q軸電流Iqに変換し減算器30に出力する。
減算器30は、d軸電流指令値Id*、q軸電流指令値Iq*からd軸電流Id、q軸電流Iqをそれぞれ減算し、電流制御器31に出力する。電流制御器31は、例えば、比例積分制御によりdq軸の電流指令値Id_cmd、Iq_cmdを二相三相変換器32に出力する。二相三相変換器32は、電流制御器31から入力されるdq軸の操作量をモータ4の三相毎の電流指令値Iu_cmd、Iv_cmd、Iw_cmd、に変換し、パルス生成部12Bに出力する。
パルス生成部12Bは、パルス生成ブロック12u、12v、12wを三相の相毎に備える。各パルス生成ブロック12u、12v、12wは、それぞれゼロ電流検出部22、パルス演算部23Z、ゲート駆動部21としての機能的構成を備える。パルス生成ブロック12u、12v、12wの各相のパルス演算部23Zは、それぞれ、モータ4の三相毎の電流指令値Iu_cmd、Iv_cmd、Iw_cmdを入力する。ゼロ電流検出部22は、相毎にゼロ電流を検出しパルス演算部23Zに出力する。
パルス演算部23Zは、各相のマルチフェーズコンバータ6u、6v、6wの各コンバータ5が電流境界モードにて動作するときの上アームスイッチSW1及び下アームスイッチSW2のオン時間Ton及びオフ時間Toff、周期T、及び、同相の複数のコンバータ5に入力させる多重パルス間の位相差Tdの各パラメータを算出する。
ゲート駆動部21は、パルス演算部23の演算結果に基づいて三相インバータ3を駆動する。ゲート駆動部21は、パルス演算部23により算出されたオン時間Ton、周期T、位相差Tdに基づいて上アームスイッチSW1又は下アームスイッチSW2をオン・オフ駆動する。
各相のパルス演算部23Zは、電流指令値Iu_cmd、Iv_cmd、Iw_cmdの値に基づいて上アームスイッチSW1のオン時間Ton及びオフ時間Toff、並びに、周期T及び位相差Tdを算出する。例えば、U相のパルス生成ブロック12uにおいては、パルス演算部23Zは、電流指令値Iu_cmd>0のときには、上アームスイッチSW1のオン時間Ton及びオフ時間Toff、並びに、周期T及び位相差Tdを、それぞれ(1-1)式~(1-4)式に基づいて算出する。
V相のパルス生成ブロック12vにおいては、パルス演算部23Zは、電流指令値Iv_cmd>0のときには、上アームスイッチSW1のオン時間Ton及びオフ時間Toff、並びに、周期T及び位相差Tdを、それぞれ(1-1)式~(1-4)式に基づいて算出する。W相のパルス生成ブロック12wにおいては、パルス演算部23Zは、電流指令値Iw_cmd>0のときには、上アームスイッチSW1のオン時間Ton及びオフ時間Toff、並びに、周期T及び位相差Tdを、それぞれ(1-1)式~(1-4)式に基づいて算出する。
パルス演算部23Zは、電流指令値Iu_cmd、Iv_cmd、Iw_cmdの値に基づいて上アームスイッチSW1のオン時間Ton及びオフ時間Toff、並びに、周期T及び位相差Tdを算出する。例えば、U相のパルス生成ブロック12uにおいては、パルス演算部23Zは、電流指令値Iu_cmd<0のときには、下アームスイッチSW2のオン時間Ton及びオフ時間Toff、並びに、周期T及び位相差Tdを、それぞれ(2-1)式~(2-4)式に基づいて算出する。
V相のパルス生成ブロック12vにおいては、パルス演算部23Zは、電流指令値Iv_cmd<0のときには、下アームスイッチSW2のオン時間Ton及びオフ時間Toff、並びに、周期T及び位相差Tdを、それぞれ(2-1)式~(2-4)式に基づいて算出する。W相のパルス生成ブロック12wにおいては、パルス演算部23Zは、電流指令値Iw_cmd<0のときには、下アームスイッチSW2のオン時間Ton及びオフ時間Toff、並びに、周期T及び位相差Tdを、それぞれ(2-1)式~(2-4)式に基づいて算出する。
図23には、カウンタ24を用いて補間多重パルスPuを生成する場合の、パルス幅カウンタ24a、開始位相カウンタ24b、終了位相カウンタ24cの各カウンタ値の変化を示している。パルス演算部23は、図28の上段に示したハードウェア構成でも補間多重パルスPuの生成を実現できる。
このパルス演算部23Zは、(1-1)式~(2-4)式の処理を実行することで、上アームスイッチSW1、下アームスイッチSW2のオン時間Ton、周期Tを、カウンタ24のパラメータとしてパルス幅カウンタ24aに入力させる。そしてパルス演算部23は、次回の多重パルス間の位相差Pk+1を開始位相カウンタ24b、終了位相カウンタ24cに入力させる。
パルス演算部23Zは、補間多重パルスPuの間の位相差を例えば線形補間する場合、前回の多重パルス間の位相差Pkと、今回の多重パルス間の位相差Pk+1との平均値Pk+Pk+1/2を求め、この平均値を終了位相カウンタ24cに出力し、終了位相カウンタ24cにより終了位相を補正している。これにより、カウンタ24を用いて1~n多重目の補間多重パルスPuを図23に示すように生成できる。この方法を用いて補間多重パルスPuを生成することで、パルス幅変更時の電流境界モードを維持できるが、例えば相電圧Vu、Vv、Vwの変化が大きいケースでは電流境界モードを維持できない場合がある。
相電圧Vu、Vv、Vwがほぼ一定となる最大値、最小値の領域であれば、パルス演算部23の補間パルス出力で問題は生じない。図29の中央図参照。しかし、相電圧Vu,Vv、Vwが急峻に変化している時間領域では、マスタとなる1多重目のパルスを出力する時点と、スレーブとなる2~4多重目のパルスを出力する時点とで電圧が変化している。このため、パルス演算部23のオン時間Tonに対する電流が減少又は増加し、スレーブのパルスの周期が変化することで意図した出力とならない。図29の右図参照。後述する実施形態では、逆起電圧に基づいて補正することを示すが、逆起電圧に基づいて補正しても電流境界モードを維持できない場合がある。このときの、1多重目及び2多重目のパルスの実験例を、図31の上図に示しているが、領域Bにおいて電流境界モードを維持できていない。
この不具合を解消するため、パルス演算部23Zを、図28の下段に示したハードウェア構成とすると良い。このハードウェア構成では、パルス演算部23Zが、開始位相カウンタ24b及び終了位相カウンタ24cにより計測を終了するたびに終了位相を補正する。
このとき、パルス演算部23Zは、(1-1)式~(2-4)式の演算処理を実行することで、上アームスイッチSW1、下アームスイッチSW2のオン時間Ton、周期Tを、カウンタ24のパラメータとしてパルス幅カウンタ24aに入力させる。さらに、パルス演算部23Zは、次回の多重パルス間の位相差Pk+1を開始位相カウンタ24b、終了位相カウンタ24cに入力させる。前述同様に、パルス演算部23Zは、補間多重パルスPuの間の位相差を例えば線形補間する場合、前回の多重パルス間の位相差Pkと、今回の多重パルス間の位相差Pk+1との平均値Pk+Pk+1/2を求め、この平均値を終了位相カウンタ24cに出力し、終了位相カウンタ24cにより終了位相を補正する。さらに、パルス演算部23Zは、開始位相カウンタ24b及び終了位相カウンタ24cにより計測を終了する度に、カウンタ補正指示に基づいて補正値Aを終了位相カウンタ24cに出力することでカウンタ値を更新する。
図30の右側のタイミングチャート中に示すように、補正値Aの値に基づいて終了位相カウンタ24cの値を徐々に変化させる。すると、相電流Iu、Iv、Iwを意図した振幅に保持できるようになる。このようにすることで、図31の下図に示したように、パルス電流境界モードを維持できる。
(第6実施形態)
第6実施形態について図32から図35を参照しながら説明する。
モータ4は回転速度に応じた磁束変化により逆起電力を生じ、出力電圧が変動する。制御の応答性が不十分な場合、この逆起電力の影響を受け、図32に示すように、相電流Iu、Iv、Iwが高調波電流歪みを生じる。この高周波電流成分はモータ4が騒音を発生させる原因となる。この場合、制御の応答性を上げないと、高調波電流歪みの影響を改善できず、限られた物理リソースによる制御装置10では改善できない虞がある。特に、モータ4を所定の回転数以上に高速回転させた場合、出力電圧Voutは逆起電圧の影響を顕著に受けるため、さらに電流歪みが大きくなる虞がある。
そこで本実施形態では、モータ4に生じた逆起電圧に基づいて多重パルスのパルス幅を補正する方法を説明する。図33に示すように、制御装置10は、パルス生成部212を備える。制御装置10は、逆起電圧補正部12cとしての機能を備えている。
このとき、逆起電圧が最大となる振幅をVmとし、逆起電圧の位相情報を(ω
et+φ)=(2πf
et+φ)とする。ここで、tは時間、ω
eは電気角速度、φは電流に対する位相差、f
eは電気周波数、を示す。出力電圧Voutは、入力電圧Vinの2分の1、つまりVin/2を中心に動作させることが好ましく、前記の逆起電圧を考慮し、下記(8)式の関係性を備えるように制御すると良い。
またパルス生成部212が、逆起電圧の振幅Vmを計算するときにはモータ4の回転数に基づいて計算すると良い。そして、パルス生成部212は、モータ4の回転位置及び逆起電圧の振幅Vm、位相情報に基づいて出力電圧Voutを計算し、この出力電圧Voutに基づいて多重パルスのパルス幅を補正することが望ましい。具体的には、例えば、(1-1)式~(1-4)式、(2-1)式~(2-4)式、(3-1)式~(3-4)式においてVoutを(8)式として計算すればよい。
逆起電圧は、モータ4の個体に基づく固有値となるため予測可能である。例えば、モータ4に固有に定められた逆起電圧定数にモータ4の回転数を乗じて逆起電圧を計算、予測すると良い。また、前記のパルス幅を高精度に補正するためには、前記の出力電圧Voutの逆起電圧に加え、モータ4の巻線抵抗及びインダクタンスに生じる電圧を考慮すればよい。
制御装置10は、モータ4の回転位置センサ4aのセンシング結果を用いてモータ4の回転数を求め、三相の相電流Iu、Iv、Iw及びモータ4のロータの位置に基づき、相電流Iu、Iv、Iwをトルクに関係する磁力方向の電流に変換してベクトル制御する。
このときのフィードバック制御構成の一例について図34を参照しながら説明する。制御部11は、減算器30、電流制御器31、相変換器としての二相三相変換器32、及び三相二相変換器34を図示形態に接続して構成される。
制御部11は、電流指令値Ioを入力しモータ4の各相電流Iu、Iv、Iwとの間の差電流に基づいて電流フィードバック制御する。三相二相変換器34は、三相電流をdq軸電流に変換し、電流制御器31は、例えば、比例積分制御によりdq軸の操作量を出力する。二相三相変換器32は、電流制御器31から入力されるdq軸の操作量をモータ4の三相毎の操作量に変換する。
本実施形態において、パルス生成部212は、逆起電圧補正部12c及びパルス演算部33の機能を備える。パルス演算部33は、モータ4の相毎にコンバータ5に入力させる多重パルスのオン時間Ton1、オフ時間Toff1、周期T、位相差Tdを含む各パラメータを演算する。これらのオン時間Ton1、オフ時間Toff1、周期Tは、電流指令値Ioが正のとき、前述した(1-1)式~(1-4)式のオン時間Ton1、オフ時間Toff1、周期T、位相差Tdを用いて計算できる。また、電流指令値Ioが負のとき、前述した(2-1)式~(2-4)式のオン時間Ton2、オフ時間Toff2、周期T、位相差Tdを用いて計算できる。
ここでいう逆起電圧補正部12cの機能は、例えばモータ4の回転数から逆起電圧の振幅Vmを演算する処理と、逆起電圧の振幅Vm、位相情報に基づいて出力電圧Voutを計算する処理とを含む。パルス演算部33は、モータ4の相毎に前記のパラメータを演算するとき、逆起電圧補正部12cの機能により逆起電圧を考慮した出力電圧に基づいてパルスの幅を補正する。逆起電圧の振幅Vmは、モータ4の回転数に比例するため、モータ4の回転数に比例するように逆起電圧の振幅Vmを演算することが望ましい。
制御方法として、前述では電流制御方法を例示したが、図35に示すように制御部11に代えて制御部211を構成しても良い。制御部211は、減算器30、電流制御器31、二相三相変換器32、三相二相変換器34に加えて、速度制御器35、減算器36を備える。この制御部211に示すように、回転位置センサ4aを用いてモータ4の角速度ωを求め、指令角速度ω*との差を減算器36により検出し、速度制御器35により速度制御しても良い。このとき、d軸電流、q軸電流の相互干渉を排除する非干渉制御方法を用いても良い。これにより、モータ4の駆動時に生じる不安定化要因を排除できる。逆起電圧が入力電圧Vinに対して大きくなる場合、弱め界磁制御することが望ましい。
各コンバータ5は、図33に示すように降圧コンバータを並列接続して構成されているが、この構成は、バッテリ2の電源電圧の範囲内で出力電圧Voutが変動する場合に好適となる。
前述ではモータ4の回転数から逆起電圧を演算により求めることを例示したが、モータ4の回転数と逆起電圧の振幅Vm、位相情報とを紐付けたマップを予めメモリ37に用意しておいても良い。パルス生成部212は、モータ4の回転数に対応してメモリ37に記憶された逆起電圧の振幅Vm、位相情報を参照して多重パルスの幅を補正するようにしても良い。また、出力電圧Voutを電圧センサ15により検出しつつ、電圧センサ15の検出に基づく遅延時間を考慮の上、計算に使用しても良い。
パルス生成部212は、逆起電圧補正部12cにより多重パルスの幅を逆起電圧に応じて周期的に補正した結果について電流指令値Io又は指令回転数に対応してメモリ37に保持させると良い。また、パルス演算部33が、次回の電流指令値Ioに基づいて周期的に補正内容を計算している最中には、メモリ37に保持された多重パルスに関する現在又は過去の計算結果を用いて、多重パルスの幅を逆起電圧補正部12cの機能により補正すると良い。
本実施形態に示したように、逆起電圧補正部12cにより逆起電圧に基づいてパルス幅を補正することで、モータ4の逆起電圧をフィードフォワード的にパルス幅の演算に組み込むことができる。これにより、図36に示すように、目的となる理想正弦波に電流波形をより近似できるようになり、高効率化・低騒音化・低EMC化を実現できる。また、電流フィードバック制御のみの簡単でシンプルな制御系により実現できる。
(第7実施形態)
第7実施形態を説明する。例えば、図3、図33に示すコンバータ5において、下アームスイッチSW2をオフしたまま、第1アームスイッチとして上アームスイッチSW1をオン・オフすると、電流はインダクタL、還流ダイオードD2を通じて転流する。
このとき、還流ダイオードD2の還流作用に代えて、上アームスイッチSW1に対向した下アームスイッチSW2を第2アームスイッチとしてオンすることで同期整流しても良い。
同期整流することで損失をより低減できる。また外付けの還流ダイオードD2が不要になり小型化できる。同期整流するには、前出のパルスのオフ時間Toffの計算式(例えば、(1-2)式のオフ時間Toff1、(2-2)式のオフ時間Toff2、又は(3-2)式のオフ時間Toff1)に基づき設定された時間だけ、対向する上アームスイッチSW1をオンすると良い。但し、パワースイッチSW1及びSW2の間の短絡防止のため、上アームスイッチSW1と下アームスイッチSW2のオン時間Tonの間にデッドタイムを設けることが望ましい。
前記の同期整流方法によれば、同期整流時間を計算により予測して求めることができる。この場合、外部に別途センサを設けて同期整流のタイミングを検出する必要がなくなるためシステムの小型化、低コスト化を図ることができる。
前記でも説明したように、電流指令値Io>0のときには、上アームスイッチSW1のオン時間Ton1、周期T、位相差Tdをそれぞれ(1-1)式、(1-3)式、(1-4)式と同様に設定するが、同期整流時間は、(1-2)式に示すオフ時間Toff1と等しい時間を、同期整流時における下アームスイッチSW2のオン時間Ton2に対応して設定すると良い。
また電流指令値Io<0のときには、下アームスイッチSW2のオン時間Ton2、周期T、位相差Tdはそれぞれ(2-1)式、(2-3)式、(2-4)式と同様に設定し、(2-2)式に示すオフ時間Toff2と等しい時間を、同期整流時における上アームスイッチSW1のオン時間Ton1に対応して設定すると良い。
(第6及び第7実施形態に関連したフィードバック制御構成の変形例)
第6及び第7実施形態に関連したフィードバック制御構成の変形例について図37から図42を用いて説明する。図37に示すように制御装置10Cを構成しても良い。制御装置10Cは、制御部11C、パルス生成部12C、及びメモリ37を内蔵している。制御部11Cは、減算器30、電流制御器31、相変換器としての二相三相変換器32、及び三相二相変換器34を図示形態に接続して構成される。
制御部11Cは、d軸電流指令値Id*、q軸電流指令値Iq*を入力する。また制御部11Cの三相二相変換器34は、相電流Iu、Iv、Iwを入力すると共に、回転位置センサ4aによりロータの角度θを入力し角速度ωの情報を演算する。三相二相変換器34は、モータ4の三相の相電流Iu、Iv、Iwをd軸電流Id、q軸電流Iqに変換し減算器30に出力する。
減算器30は、d軸電流指令値Id*、q軸電流指令値Iq*からd軸電流Id、q軸電流Iqをそれぞれ減算し、電流制御器31に出力する。電流制御器31は、例えば、比例積分制御によりdq軸の電流指令値Id_cmd、Iq_cmdを二相三相変換器32に出力する。二相三相変換器32は、電流制御器31から入力されるdq軸の操作量をモータ4の三相毎の電流指令値Iu_cmd、Iv_cmd、Iw_cmd、に変換し、パルス生成部12Aに出力する。
パルス生成部12Cは、パルス生成ブロック12u、12v、12wを三相の相毎に備える。各パルス生成ブロック12u、12v、12wは、それぞれゼロ電流検出部22、パルス演算部23、ゲート駆動部21、及び、逆起電力に基づいてパルスを補正するための逆起電圧補正部12cとしての機能的構成を備える。パルス生成ブロック12u、12v、12wの各相のパルス演算部23は、それぞれ、モータ4の三相毎の電流指令値Iu_cmd、Iv_cmd、Iw_cmdを入力する。ゼロ電流検出部22は、相毎にゼロ電流を検出しパルス演算部23に出力する。
パルス演算部23は、各相のマルチフェーズコンバータ6u、6v、6wの各コンバータ5が電流境界モードにて動作するときの上アームスイッチSW1及び下アームスイッチSW2のオン時間Ton及びオフ時間Toff、周期T、及び、同相(例えばU相)の複数のコンバータ5に入力させる多重パルス間の位相差Tdの各パラメータを算出する。
ゲート駆動部21は、パルス演算部23の演算結果に基づいて三相インバータ3を駆動する。ゲート駆動部21は、パルス演算部23により算出されたオン時間Ton、周期T、位相差Tdに基づいて上アームスイッチSW1又は下アームスイッチSW2をオン・オフ駆動する。
メモリ37には、モータ4の回転数と逆起電圧の振幅Vm、位相差φとを紐付けたマップが予め記憶されている。各相の逆起電圧補正部12cは、モータ4の角度θに依存したモータ回転数をメモリ37の記憶内容と照合して参照し、各相毎に逆起電圧の振幅Vm_u、Vm_v、Vm_w、位相差φ_u、φ_v、φ_wを入力する。
各相の逆起電圧補正部12cは、電源電圧Vinと共に、逆起電圧の振幅Vm_u、Vm_v、Vm_w、位相差φ_u、φ_v、φ_wに基づいて出力電圧Vout_u、Vout_v、Vout_wを計算する。このとき前述の(8)式でも示したが、図38に示したように、逆起電圧補正部12cは出力電圧Voutを計算する。これにより、前述実施形態と同様に逆起電圧の影響を補正できる。図39に例示したように、出力電圧Voutを逆起電圧に基づいて補正できるようになり、図40に例示したように、高調波電流歪みの影響を極力排除して改善できる。
また、モータ4の回転数が高回転になると、逆起電圧の振幅Vmが大きくなる。出力電圧Voutの振幅Vmが電源電圧Vinに近くなるにしたがって、インダクタLに生ずる電圧が小さくなり、インダクタLに電流が流せなくなる。この場合、制御不能、動作不可となる虞がある。そこで、図41に示すように、電源電圧Vinの利用率を向上する電源電圧利用率向上制御部21dを備えることが望ましい。この電圧利用率向上制御部12dは、逆起電圧の振幅Vmが所定の閾値を超えた場合、逆起電圧の補正後の出力電圧Voutに上下限を設定して出力する。
例えば、電源電圧Vinよりわずかに下回る値に上限値を設定すると共に、電源電圧Vinの基準値0をわずかに上回る値に下限値を設定する。ここで電圧利用率向上制御部12dは、逆起電圧の補正後の出力電圧Voutが上限値を超えればクランプして上限値どまりとし、下限値を下回ればクランプして下限値どまりとする。
これにより、パルス演算部23は、パルス幅補正計算用の出力電圧Voutの正弦波ピークを上限値及び下限値にて制限した状態でパルス演算を行うことができる。出力電圧Voutに上下限を設けているため比較的大きく逆起電圧を生じる場合でも問題なく動作できるようになり動作可能範囲を広げることができる。また電圧利用率を高めることができる。
(第8実施形態)
第8実施形態について図43を参照しながら説明する。前述の第6実施形態、第7実施形態においては、多重動作個数nは2以上に限られるものではなく、n=1の場合にも適用できる。
すなわち、図43に示すように、UVW相の各相において、マスタ相に対応した多重動作個数n=1のコンバータ5u1、5v1、5w1を用いて各相単一のパルスを生成してモータ4を駆動するようにしても良い。
(第9実施形態)
第9実施形態について図44を参照しながら説明する。図44に示したように制御装置10Dを構成しても良い。制御装置10Dは、前述実施形態で説明した制御装置10A内の多重数切替部25A、制御装置10B内のパルス演算部23Z、制御装置10C内の逆起電圧補正部12cを全て備えている。すなわち、前述実施形態の特徴を全て備えた構成に適用できる。ここで、多重数切替部は25、パルス演算部は23、逆起電圧補正部は、「12」又は「12d」により構成しても良い。
(他の実施形態)
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができ、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。例えば、以下に示す変形又は拡張が可能である。
前述実施形態では、降圧型のコンバータ5を用いた電力変換器を記載しているが、これに限定されるものではなく、例えば、昇圧型、昇降圧型のコンバータ5を用いることができる。またコンバータ5は、非絶縁型であっても絶縁型であっても良い。電圧センサ15は必要に応じて設ければ良い。
前述実施形態では、多重動作個数nを4や2に設定した形態を示しているが、多重動作個数nは3でも5以上でも良い。前述実施形態では、パワースイッチSW1及びSW2は、Nチャネル型のパワーMOSFETを例示しているが、他種類のパワースイッチング素子により構成しても良い。
前述実施形態では、パワースイッチSW1、SW2を構成するパワーMOSFETに負荷電流を転流するため、並列に還流ダイオードD1、D2をそれぞれ設けているが、これに限定されるものではない。還流ダイオードD1、D2に代えてパワーMOSFETに付加されるボディダイオードを用いても良い。また逆導通性を備えたパワースイッチ(例えば逆導通IGBT(RC-IGBT))を用いて構成しても良い。
また、1多重目のコンバータ5u1、5v1、5w1と同様に、2以上のm多重目のコンバータ5u2…5un、5v2…5vn、5w2…5wnにゼロ電流検出部22を設け、インダクタ電流ILをゼロ検出した後に、対応するパワースイッチSW1又はSW2をオンするようにしても良い。パワースイッチSW1、SW2のオン時間Tonは、前述(1-1)式、(2-1)式、又は(3-1)式のように算出したオン時間Tonを用いることが望ましい。
制御装置10の中の構成である「制御部11」、「パルス生成部12、112、212」は、ロジック回路を組み合わせたハードウェアを用いて実現してもよいし、マイコンなどのハードウェアがプログラムを実行することで実現しても良い。
本開示に記載の制御装置10、10A、10B、10C、10Dによる手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御装置10、10A、10B、10C、10D及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御装置10、10A、10B、10C、10D及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていても良い。
本発明は、前述した実施形態に準拠して記述したが、本発明は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範畴や思想範囲に入るものである。