JP2022128969A - 耐熱性高タフネス繊維、およびその製造方法 - Google Patents

耐熱性高タフネス繊維、およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】強度、伸度および耐熱性の物性のバランスが優れる耐熱性高タフネス繊維を提供する。【解決手段】破断強度が7~15cN/dtex、破断伸度が10~30%、融点が290℃以上である耐熱性高タフネス繊維により得られる。【選択図】なし

Description

本発明は耐熱性高タフネス繊維、およびその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、強度、伸度、および耐熱性の物性のバランスが優れていることを特徴とする耐熱性高タフネス繊維、およびその製造方法に関するものである。
近年、紡糸技術の発展により、様々な繊維が工業化され、繊維を構成する化学構造と紡糸条件を選択することで、求められる性能・用途に応じた物性をもつ繊維が開発・製造されている。高強度、高弾性繊維は、高強度の構造体を与えることができるが、伸度が低い場合、大きな変形に対しては緩和することができずに破断してしまう。これら繊維の強伸度はトレードオフの関係にあり、強度と伸度の双方を満たす高タフネス繊維の開発は困難であった。
高タフネス繊維に関する報告例としては以下のようなものがある。例えば、特開昭59-100710号公報(特許文献1)では、超延伸したポリエチレン繊維を熱収縮処理することにより強度15~25g/de、伸度15~25%の高タフネスポリエステル繊維を報告している。また、特開2000-144527号公報(特許文献2)ではオイリングおよび集束の位置を調整することにより強度8~9g/de、伸度10~15%のポリエステル繊維を得る方法を報告している。また、特開2008-308786号公報(特許文献3)では紡糸線上の温度履歴を制御することによって、強度が8~10cN/dtex、伸度が20~25%以上のポリエステル繊維を報告しているが、いずれも汎用繊維であり、耐熱性が比較的低いものである。
一方で、強度に加え材料開発において必要な性能として耐熱性が挙げられる。例えば、全芳香族ポリアミドからなる繊維(アラミド繊維と称する場合がある)は、高強度・耐熱・難燃性繊維として特に有用なものである。
例えば、パラフェニレンテレフタルアミドから構成されるパラ型全芳香族ポリアミド繊維は、高強度、高弾性率を有することから、各種マトリックスの補強材やロープ等の工業資材として幅広く用いられている。また、メタフェニレンイソフタルアミドから構成されるメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、耐熱性に加え柔軟な繊維であり、例えば防護衣等の防災安全衣料用途や耐熱性が要求されるゴム補強材等の産業用途に用いられている。
これらアラミド繊維の機械物性は、パラ型では破断強度15~20cN/dtex、破断伸度1~5%(デュポン(株)製「ケブラー」(登録商標)、帝人(株)製「トワロン」(登録商標))等が挙げられ、メタ型では、破断強度3~6cN/dtex、破断伸度30~60%(デュポン(株)製「ノーメックス」(登録商標)、帝人(株)製「コーネックス」(登録商標))が挙げられ、これらの繊維物性を考慮した用途開発が行われてきた。
しかしながら、アラミド繊維を用いる場合、耐熱性が必要な分野において、さらに高強度が求められる場合は、一般的にパラ型を用いるが、使用変形を伴いにくい用途に限定される。一方、耐熱性が必要な分野において、柔軟性が求められる場合は、メタ型を用いるが、強度を犠牲にする必要があった。
したがって、アラミド繊維相当の耐熱性を有しながらも、強度と伸度のバランスがとれた特徴を有する合成繊維を得ることは有用であるが、従来技術では得られていなかった。
特開昭59-100710号公報 特開2000-144527号公報 特開2008-308786号公報
本発明の目的は、前述した背景の通り、高耐熱性を有しながらも、強度と伸度のバランスがとれた高耐熱高タフネス繊維を提供することにある。
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討をおこなった結果、複数の特定のモノマーを特定の比率で共重合にしたポリマーを繊維とすることにより、高耐熱性を有しながらも、強度と伸度のバランスがとれた耐熱性高タフネス繊維が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明によれば、
1.破断強度が7~15cN/dtex、破断伸度が10~30%、融点が290℃以上であることを特徴とする耐熱性高タフネス繊維、
2.250℃における乾熱寸法変化率が2%未満である、前記1記載の耐熱性高タフネス繊維、
3.耐熱性高タフネス繊維が、メタフェニレンテレフタルアミド単位および/またはメタフェニレンイソフタルアミド単位と、パラフェニレンテレフタルアミド単位および/またはパラフェニレンイソフタルアミド単位と、を含む共重合アラミド重合体からなる、前記1、または2に記載の耐熱性高タフネス繊維、
4.耐熱性高タフネス繊維が、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、イソフタロイル、テレフタロイルの群から選ばれる少なくとも3種類の構造を含み、メタフェニレンジアミンおよび/またはイソフタロイルモノマー単位と、パラフェニレンジアミンおよび/またはテレフタロイルモノマー単位のモル比率が40以上70未満:60以下30より大きい範囲である前記1~3のいずれか1つに記載の耐熱性高タフネス繊維、そして、
5.耐熱性高タフネス繊維の製造方法であって、
メタフェニレンテレフタルアミド単位および/またはメタフェニレンイソフタルアミド単位と、パラフェニレンテレフタルアミド単位および/またはパラフェニレンイソフタルアミド単位と、を含む構造から構成され、前記それぞれのアミド単位が、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、イソフタロイル、テレフタロイルの群から選ばれる少なくとも3種類の構造を含み、メタフェニレンジアミンおよび/またはイソフタロイルモノマー単位と、パラフェニレンジアミンおよび/またはテレフタロイルモノマー単位のモル比率が40以上70未満:60以下30より大きい範囲であり、重量平均分子量が40万~100万である共重合アラミド重合体を用いて、以下(1)~(5)のステップで製造し、かつ(6)の製造条件を満足する、耐熱性高タフネス繊維の製造方法。
(1).前記共重合アラミド重合体をアミド系溶媒に10~30質量%の範囲で溶解させて紡糸用ドープとし、紡糸口金に通し、
(2).アミド系溶媒を1~20質量%含む水性凝固浴中に紡出して凝固し、
(3).水性洗浄浴水洗し、引き続き沸水延伸浴中で1.1~5.0倍の範囲で延伸し、(4).100~250℃の範囲で乾熱処理を行い、
(5).290~380℃の範囲で熱処理を加えながら、延伸倍率2.0~10.0倍の範囲で熱延伸し、
(6).前記沸水延伸倍率と前記熱延伸倍率の合計延伸倍率が7倍以上、
が提供される。
本発明で得られる耐熱性高タフネス繊維は、250℃以上の使用環境に耐えうる耐熱性を有し、破断強度が7~15cN/dtex、破断伸度が10~30%の高タフネス繊維であり、物性のバランスが優れているため、強度と柔軟性を補っていた防護衣料用途、伸度が必要なゴム補強用途などにおいて好適に使用することができる。
以下、本発明について詳細を説明する。
本発明の耐熱性高タフネス繊維は、破断強度が7~15cN/dtex、破断伸度が10~30%、融点が290℃以上であることを特徴とする。かかる耐熱性高タフネス繊維を構成するポリマーとして、全芳香族ポリアミド(以下、アラミドと称する場合がある)が挙げられ、具体的にはメタ型およびパラ型芳香族ジアミン成分とメタ型およびパラ型芳香族ジカルボン酸成分とから構成されるものであり、共重合により合成されるものである。
本発明において特に好ましく使用されるのは、力学特性、耐熱性、難燃性の観点から、メタフェニレンテレフタルアミド単位および/またはメタフェニレンイソフタルアミド単位と、パラフェニレンテレフタルアミド単位および/またはパラフェニレンイソフタルアミド単位と、を含む構造から構成される共重合アラミド重合体からなる全芳香族ポリアミドである。
本発明の耐熱性高タフネス繊維において、共重合アラミド重合体からなる全芳香族ポリアミドはランダム共重合されており、好ましくは、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、イソフタロイル、テレフタロイルの群から選ばれる少なくとも3種類の構造を含み、メタフェニレンジアミンおよび/またはイソフタロイルモノマー単位のモル%が全体の40以上70未満、パラフェニレンジアミンおよび/またはテレフタロイルモノマー単位のモル%が全体の60以下30超過であることが好ましく、メタフェニレンジアミンおよび/またはイソフタロイルモノマー単位のモル%が全体の50以上70未満、パラフェニレンジアミンおよび/またはテレフタロイルモノマー単位のモル%が全体の50以下30超過であることがより好ましく、メタフェニレンジアミンおよび/またはイソフタロイルモノマー単位のモル%が全体の50以上67未満、パラフェニレンジアミンおよび/またはテレフタロイルモノマー単位のモル%が全体の50以下33超過であることが特に好ましい。
メタフェニレンジアミンおよび/またはイソフタロイルモノマー単位のモル%が70以上であった場合、目的の強度を達成することができない。また、メタフェニレンジアミンおよび/またはイソフタロイルモノマー単位のモル%が40未満であった場合、得られるポリマーは後述するアミド系溶媒に溶解しないため、紡糸することができない。なお、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、イソフタロイル、テレフタロイルの組み合わせを下記表1に示す。
本発明は、例1~4に示すような、少なくとも3種類の構造を含むことが好ましく、例5のように4種類の構造を含むことが特に好ましい。
Figure 2022128969000001
全芳香族ポリアミドの原料となる芳香族ジアミン成分としては、メタフェニレンジアミンまたはパラフェニレンジアミン、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン等、およびこれらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルキル基等の置換基を有する誘導体を例示することができる。
本発明の全芳香族ポリアミドを構成する芳香族ジカルボン酸成分の原料としては、例えば、芳香族ジカルボン酸ハライドを挙げることができる。メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、イソフタル酸クロライド、イソフタル酸ブロマイド等のイソフタル酸ハライド、およびこれらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体を例示することができる。同様に、パラ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、テレフタル酸クロライド、テレフタル酸ブロマイド等のテレフタル酸ハライド、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1~3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体を例示することができる。
本発明の全芳香族ポリアミドの重合方法としては、メタフェニレンジアミンとイソフタル酸クロライドとを含む生成ポリアミドの良溶媒ではない有機溶媒系(例えばテトラヒドロフラン)と無機の酸受容剤ならびに可溶性中性塩を含む水溶液系とを接触させることによって、ポリメタフェニレンイソフタルアミド重合体の粉末を単離する方法(界面重合、特公昭47-10863号公報)、またはアミド系溶媒で上記ジアミンと酸クロライドを溶液重合し次いで水酸化カルシウム、酸化カルシウム等で中和する方法(溶液重合、特開平8-074121号公報、特開平10-88421号公報)などに記載の方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
なお、本発明に用いられる全芳香族ポリアミド共重合体(共重合アラミド重合体ともいう)の重量平均分子量は、実用に耐え得る破断強度を持つ繊維を形成し得る観点から、後述する分析方法に従い40万~100万であることが必要である。なお、重量平均分子量40万に満たない場合、破断強度が著しく減少するだけでなく、安定な紡糸を行うことができなくなる。また、分子量が100万を超える場合、後述する全芳香族ポリアミド溶液を作製し紡出する際、粘度が高すぎるため取扱が難しく、専用の設備が必要となってしまう。
本発明で規定する分子量範囲のポリマーは、低分子量ポリマーと高分子量ポリマーの混合物を使用することができ、混合比の調整により全体分子量が規定する分子量範囲の値であればよい。例えば、重量平均分子量が20万のポリマーと80万のポリマーを混合し、この混合されたポリマーの重量平均分子量が60万であった場合、本発明で規定する分子量範囲のため、利用は何ら問題ない。
本発明の全芳香族ポリアミド繊維は、上記の製造方法によって得られた全芳香族ポリアミドを用いて、以下に説明する紡糸液調製工程、紡糸・凝固工程、洗浄工程、沸水延伸工程、乾熱処理工程、熱延伸工程を経て製造される。
[紡糸液調製工程]
紡糸液調製工程においては、本発明の全芳香族ポリアミドを溶媒に溶解して、紡糸液(ドープ)を調製する。紡糸液の調製にあたっては、通常アミド系溶媒を用い、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等を例示することができる。これらの中では溶解性と取扱い安全性の観点から、NMP、またはDMAcを用いることが好ましい。
溶液濃度としては、次工程である紡糸・凝固工程での凝固速度および重合体の溶解性の
観点から、適当な濃度を適宜選択すればよく、通常は10~30質量%の範囲とすることが必要である。安定な紡糸を達成するためには15~25質量%の範囲とすることがより好ましい。
本発明ではドープ中に無機塩を導入してもよく、ドープに対して0~20質量%の無機塩を含むことが好ましく、安定した紡糸性を得るためには0~10質量%の無機塩がより好ましい。
ここで、20質量%を超えた無機塩を含むと凝固速度が速くなりすぎてしまい、繊維中に多数のボイドを形成することから目的の物性を持った繊維を得ることができない。なお、無機塩としては塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウムなどの塩化物塩を使用することが好ましい。
[紡糸・凝固工程]
紡糸・凝固工程においては、上記で得られたドープを凝固液中に紡出して凝固させる。紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、紡糸孔径、配列状態等は特に制限する必要はなく、例えば、紡糸孔数が10~30000個、紡糸孔径が0.03~0.2mmのステープルファイバー用の多ホール紡糸口金等を用いることができる。
また、紡糸口金から紡出する際のドープの温度は、20~90℃の範囲が好ましく、70~90℃がより好ましい。
本発明の繊維を得るために用いる凝固浴としては、アミド系溶媒を1~20質量%を含む水溶液であり、好ましくは3~15質量%含む水溶液である。この水溶液の温度は50~90℃の範囲が好ましい。
また、凝固浴中に、塩化カルシウムまたは塩化マグネシウム等の無機塩を、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35~45質量%含むことができる。
前記のように、ドープを紡糸口金から凝固液中に紡出して凝固浴を通過させて凝固糸を得る。
[洗浄工程、沸水延伸工程]
かくして得られた凝固糸は、水性洗浄浴にて十分水洗され、沸水延伸工程に送られる。
沸水延伸浴中の延伸倍率は1.1~5.0倍の範囲が必要であり、1.1~3.0倍の範囲がより好ましい。延伸を当該倍率の範囲で行い、分子鎖配向を上げることにより、最終的に得られる繊維の強度を確保することができる。
[乾熱処理工程]
上記の洗浄・延伸工程を経た繊維に対して、好ましくは、乾熱処理工程を実施する。乾熱処理工程においては、上記の洗浄工程により洗浄が実施された繊維を、100~250℃の範囲で乾熱処理をする。好ましくは100~200℃の範囲で乾熱処理をする。また、乾熱処理は定長下で行うのが好ましい。なお、上記の乾熱処理の温度は、熱板、加熱ローラーなどの繊維加熱手段の設定温度をいう。
[熱延伸工程]
本発明においては、上記乾熱処理工程を経た繊維に対して、熱延伸工程を施す。熱延伸工程においては、290~380℃の範囲で熱処理を加えながら延伸を実施する。処理温度は、好ましく290~350℃の範囲である。290℃に満たない場合、高倍率延伸ができないため不適であり、380℃を超えると繊維の変色や断糸が起きる可能性がある。
熱延伸工程において、延伸倍率は、2.0~10.0倍の範囲が必要であり、好ましくは3.0~10.0倍の範囲である。なお、熱延伸処理の温度は、熱板、加熱ローラーなどの繊維加熱手段の設定温度をいう。
そして、本発明における前記の沸水延伸倍率および熱延伸倍率の合計延伸倍率は、7倍以上であることが必要である。前記の合計延伸倍率が7倍に満たないと、目標の強度を発現することができない。そのため、沸水延伸倍率および熱延伸倍率は工程の調子を鑑みて適宜調整する必要がある。
以上の方法により得られる耐熱性高タフネス繊維の破断強度は、7~15cN/dtexであり、下限は8.0cN/dtex以上がより好ましい。
破断強度が7.0cN/dtexに満たない場合、本発明が目的とする高タフネスとしての強度としては不十分である。また、破断伸度は10%~30%が必要であり、15%~25%が好ましく、20%~25%以上がより好ましい。破断伸度が10%未満である場合、伸度が十分ではないことから高タフネス性の発揮が不十分である。破断伸度が30%を超えると、充分な強度を得ることが困難となる。
本発明の耐熱性高タフネス繊維の融点は、290℃以上が必要であり、300℃以上が好ましい。融点が290℃より低くなると耐熱性繊維としての性能を発揮することができなくなる。
また、本発明の耐熱性高タフネス繊維において、250℃における乾熱寸法変化率は2%未満が好ましく、1.5%以下がより好ましく、1.0%以下がさらに好ましく、0.5%以下が特に好ましい。
乾熱寸法変化率が2%以上になると耐熱性繊維としての性能を発揮することができなくなる。
以下、実施例および比較例により、本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例及び比較例に制限されるものではない。尚、実施例および比較例における各物性値は、下記の方法で測定した。
[重量平均分子量Mw]
JIS-K-7252に準じ、サイズ排除クロマトグラフィー用カラムを装着した高速液体クロマトグラフィー装置にて分析をおこない、展開溶媒にはジメチルホルムアミド(塩化リチウムを0.01モル%含有)を用いて測定した。なお、標準分子量サンプルとしてはシグマアルドリッチ製ポリスチレンセット(ピークトップ分子量Mp=400~2000000)を用いた。
[単繊維繊度]
JIS-L-1015に準じ、正量繊度のA法に準拠した測定を実施し、見掛け繊度にて表記した。
[破断強度、破断伸度]
引張試験機(インストロン社製、型式:5565)を用いて、JIS-L-1015に準じ、以下の条件で測定した。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g/dtex)
引張速度 :20mm/分
[乾熱寸法変化率]
JIS-L-1013に準じ、B法に準拠した測定を実施し、250℃における寸法変化率を求めた。
[繊維の融点]
繊維の融点はJIS-K-7197に準じ、熱機械分析により求めた。得られたサンプルのピークのうち、高温側に検出されたピークの頂点温度または、繊維の溶解によりピーク検出が不可能となった温度を融点とした。
[実施例1]
特公昭47-10863号公報に準じた界面重合により、メタフェニレンジアミンおよびイソフタロイルモノマー単位が全体の67モル%、パラフェニレンジアミンおよびテレフタロイルモノマー単位が33モル%である共重合アラミド重合体粉末を合成した。この際、酸クロライドモノマーはイソフタル酸クロライドおよびテレフタル酸クロライドの双方を使用し、重量比が2:1となるようにした。また、アミンモノマーはメタフェニレンジアミンおよびパラフェニレンジアミンの双方を使用し重量比が2:1となるようにした。重量平均分子量は80万であった。この重合体粉末および塩化カルシウムを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。この際、ポリマー溶液に対して、共重合アラミド重合体の質量濃度が16%、塩化カルシウムが3%になるよう調整した。
このポリマー溶液を85℃に加温し紡糸原液として、孔径0.1mm、孔数100の吐出孔が円形の紡糸口金から85℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴の組成は、塩化カルシウムが44質量%、NMPが3質量%、残りの水が53質量%であり、浸漬長(有効凝固浴長)100cmにて糸速5.0m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出した。
この凝固糸条を第1~第2水洗浄浴にて水洗し、この際の総浸漬時間は200秒とした。なお、第1~第2水性洗浄浴温度はそれぞれ20℃、30℃の水を用いた。この洗浄糸条を90℃の沸水中にて2.4倍に延伸し、引続き90℃の温水中に40秒浸漬し、洗浄した。
次に、表面温度が170℃のローラーに巻回して乾熱処理した後、表面温度が325℃の熱板にて4.5倍に延伸し、全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は、繊度1.3dtex、破断強度10.4cN/dtex、破断伸度23%、融点307℃、250℃における乾熱寸法変化率は1.00%であった。
[実施例2]
実施例1に準じた界面重合により、メタフェニレンジアミンおよびイソフタロイルモノマー単位が全体の60モル%、パラフェニレンジアミンおよびテレフタロイルモノマー単位が40モル%である共重合アラミド重合体粉末を合成した。この際、酸クロライドモノマーはイソフタル酸クロライドおよびテレフタル酸クロライドの双方を使用し、重量比が3:2となるようにした。また、アミンモノマーはメタフェニレンジアミンおよびパラフェニレンジアミンの双方を使用し重量比が3:2となるようにした。重量平均分子量は64万であった。この重合体粉末および塩化カルシウムを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。この際、ポリマー溶液に対して共重合アラミド重合体の質量濃度が16%、塩化カルシウムが3%になるよう調整した。
このポリマー溶液を85℃に加温し紡糸原液として、孔径0.1mm、孔数100の吐
出孔が円形の紡糸口金から85℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴の組成は、塩化カルシウムが44質量%、NMPが3質量%、残りの水が53質量%であり、浸漬長(有効凝固浴長)100cmにて糸速5.0m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出した。
この凝固糸条を第1~第2水洗浄浴にて水洗し、この際の総浸漬時間は200秒とした。なお、第1~第2水性洗浄浴温度はそれぞれ20℃、30℃の水を用いた。この洗浄糸条を90℃の沸水中にて2.5倍に延伸し、引続き90℃の温水中に40秒浸漬し、洗浄した。次に、表面温度170℃のローラーに巻回して乾熱処理した後、表面温度330℃の熱板にて3.5倍に延伸し、全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は、繊度1.8dtex、破断強度9.2cN/dtex、破断伸度22%、融点319℃、250℃における乾熱寸法変化率は0.70%であった。
[実施例3]
実施例1に準じた界面重合により、メタフェニレンジアミンおよびイソフタロイルモノマー単位が全体の56モル%、パラフェニレンジアミンおよびテレフタロイルモノマー単位が44モル%である共重合アラミド重合体粉末を合成した。この際、酸クロライドモノマーはイソフタル酸クロライドおよびテレフタル酸クロライドの双方を使用し、重量比が5:4となるようにした。また、アミンモノマーはメタフェニレンジアミンおよびパラフェニレンジアミンの双方を使用し重量比が5:4となるようにした。重量平均分子量は45万であった。この重合体粉末および塩化カルシウムを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。この際、ポリマー溶液に対して共重合アラミド重合体の質量濃度が20%、塩化カルシウムが2%になるよう調整した。
このポリマー溶液を85℃に加温し紡糸原液として、孔径0.1mm、孔数100の吐出孔が円形の紡糸口金から85℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。この凝固浴の組成は、塩化カルシウムが44質量%、NMPが3質量%、残りの水が53質量%であり、浸漬長(有効凝固浴長)100cmにて糸速5.0m/分で通過させた後、いったん空気中に引き出した。
この凝固糸条を第1~第2水洗浄浴にて水洗し、この際の総浸漬時間は200秒とした。なお、第1~第2水性洗浄浴温度はそれぞれ20℃、30℃の水を用いた。この洗浄糸条を90℃の沸水中にて2.4倍に延伸し、引続き90℃の温水中に40秒浸漬し、洗浄した。
次に、表面温度170℃のローラーに巻回して乾熱処理した後、表面温度315℃の熱板にて4.0倍に延伸し、全芳香族ポリアミド繊維を得た。
得られた繊維は、繊度1.54dtex、破断強度11.1cN/dtex、破断伸度24%、融点313℃、250℃における乾熱寸法変化率は0.30%であった。
[比較例1]
実施例1に準じた界面重合により、メタフェニレンジアミンおよびイソフタロイルモノマー単位が全体の75モル%、パラフェニレンジアミンおよびテレフタロイルモノマー単位が25モル%である共重合アラミド重合体粉末を合成した。この際、酸クロライドモノマーはイソフタル酸クロライドおよびテレフタル酸クロライドの双方を使用し、重量比が3:1となるようにした。また、アミンモノマーはメタフェニレンジアミンおよびパラフェニレンジアミンの双方を使用し重量比が3:1となるようにした。重量平均分子量は61万であった。この重合体粉末および塩化カルシウムを、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解させ、透明なポリマー溶液を得た。この際、ポリマー溶液に対して共重合アラミド重合体の質量濃度が21%、塩化カルシウムが3%になるよう調整した。
このポリマー溶液を実施例1の条件で紡糸し、全芳香族ポリアミド繊維を得た。この際、沸水延伸倍率は2.4倍、熱板延伸倍率は3.0倍とした。
得られた繊維は、繊度1.7dtex、破断強度4.6cN/dtex、破断伸度33%、融点333℃、250℃における乾熱寸法変化率は0.87%であった。
[比較例2]
特公昭47-10863号公報に準じた界面重合によりメタフェニレンジアミンおよびイソフタロイルモノマー単位が全体の33モル%、パラフェニレンジアミンおよびテレフタロイルモノマー単位が67モル%である共重合アラミド重合体粉末を合成した。この際、酸クロライドモノマーはイソフタル酸クロライドおよびテレフタル酸クロライドの双方を使用し、重量比が1:2となるようにした。また、アミンモノマーはメタフェニレンジアミンおよびパラフェニレンジアミンの双方を使用し重量比が1:2となるようにした。本ポリマーはNMPをはじめとする溶媒への良好な溶解性を示さないことから、紡糸することができなかった。
[比較例3]
メタフェニレンジアミンおよびイソフタロイルモノマー単位が全体の100モル%である全芳香族ポリアミド繊維(帝人(株)製「コーネックス」)の物性測定をしたところ、繊度2.2dtex、破断強度4.9cN/dtex、破断伸度40%、融点測定不可(400℃以上)、250℃における乾熱寸法変化率は0.20%であった。
[比較例4]
パラフェニレンジアミンおよびテレフタロイルモノマー単位が100モル%からなる全芳香族ポリアミド繊維(帝人(株)製「トワロン」(登録商標))の物性測定をしたところ、繊度2.0dtex、破断強度21cN/dtex、破断伸度3%、融点測定不可(400℃以上)、250℃における乾熱寸法変化率は0%であった。
前記の実施例及び比較例で得られた繊維の物性を表2に示す。
Figure 2022128969000002
本発明で得られる耐熱性高タフネス繊維は、強度、伸度および耐熱性の物性のバランスが優れていることから、耐熱性を犠牲にして汎用繊維が使用されていた用途や、複数の繊維の組み合わせにより機械物性を補っていた用途に好適に使用できる。また、補強材用途において適度な強度と柔軟性を兼ねそろえた新規な耐熱性高タフネス材料、例えば変形を多く伴い強度が求められるゴム補強分野の材料に適用できる。

Claims (5)

  1. 破断強度が7~15cN/dtex、破断伸度が10~30%、融点が290℃以上であることを特徴とする耐熱性高タフネス繊維。
  2. 250℃における乾熱寸法変化率が2%未満である、請求項1記載の耐熱性高タフネス繊維。
  3. 耐熱性高タフネス繊維が、メタフェニレンテレフタルアミド単位および/またはメタフェニレンイソフタルアミド単位と、パラフェニレンテレフタルアミド単位および/またはパラフェニレンイソフタルアミド単位と、を含む構造から構成される共重合アラミド重合体からなる、請求項1または2に記載の耐熱性高タフネス繊維。
  4. 耐熱性高タフネス繊維が、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、イソフタロイル、テレフタロイルの群から選ばれる少なくとも3種類の構造を含み、メタフェニレンジアミンおよび/またはイソフタロイルモノマー単位と、パラフェニレンジアミンおよび/またはテレフタロイルモノマー単位のモル比率が40以上70未満:60以下30より大きい範囲である請求項1~3のいずれか1項に記載の耐熱性高タフネス繊維。
  5. 耐熱性高タフネス繊維の製造方法であって、
    メタフェニレンテレフタルアミド単位および/またはメタフェニレンイソフタルアミド単位と、パラフェニレンテレフタルアミド単位および/またはパラフェニレンイソフタルアミド単位と、を含む構造から構成され、前記それぞれのアミド単位は、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、イソフタロイル、テレフタロイルの群から選ばれる少なくとも3種類の構造を含み、メタフェニレンジアミンおよび/またはイソフタロイルモノマー単位と、パラフェニレンジアミンおよび/またはテレフタロイルモノマー単位のモル比率が40以上70未満:60以下30より大きい範囲であり、重量平均分子量が40万~100万である共重合アラミド重合体を用いて、以下(1)~(5)のステップで製造し、かつ(6)の製造条件を満足する、耐熱性高タフネス繊維の製造方法。
    (1).前記共重合アラミド重合体をアミド系溶媒に10~30質量%の範囲で溶解させて紡糸用ドープとし、紡糸口金に通し、
    (2).アミド系溶媒を1~20質量%含む水性凝固浴中に紡出して凝固し、
    (3).水性洗浄浴水洗し、引き続き沸水延伸浴中で1.1~5.0倍の範囲で延伸し、(4).100~250℃の範囲で乾熱処理を行い、
    (5).290~380℃の範囲で熱処理を加えながら、延伸倍率2.0~10.0倍の範囲で熱延伸し、
    (6).前記沸水延伸倍率と前記熱延伸倍率の合計延伸倍率が7倍以上である。
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