JP2022128727A - 熱間プレス部材および熱間プレス用鋼板ならびに熱間プレス部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐食性に優れた熱間プレス部材および熱間プレス用鋼板ならびに熱間プレス部材の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】鋼板の少なくとも一方の面にめっき層を備え、前記めっき層は、Fe1.7Al4Si、Al17.4Fe8Si7.6、Fe2Al5の少なくとも一種を含有する上層と、Fe2Al3Si、FeAlの少なくとも一種を含有する中間層と、Fe1.7Al4Si、Fe2Al5の少なくとも一種を含有する下層とを有し、前記上層は、単相Znをさらに含み、前記めっき層表面の算術平均粗さRaが1.8未満である、熱間プレス部材。【選択図】なし
Description
本発明は、熱間プレス部材および熱間プレス用鋼板ならびに熱間プレス部材の製造方法に関する。特に、犠牲防食性を有することにより、耐食性に優れた熱間プレス部材および熱間プレス用鋼板ならびに熱間プレス部材の製造方法に関する。
自動車の軽量化及び衝突安全性の向上を目的とし、自動車用鋼板の高強度化が進んでいる。近年では、引張強度1500MPa級の冷延鋼板が開発され、適用が検討されつつある。
しかし、鋼板の高強度化に伴い、プレスにおける成形不良やスプリングバックなどが寸法精度の課題となる。そこで、鋼板を加熱して成形性を高め、プレスと同時に金型で焼き入れることで強度を高め、且つ寸法精度に優れる熱間プレス技術の適用が拡大している。さらに、熱間プレス時の鉄スケール除去に必要なショットブラスト工程を省略できることから、熱間プレスにおいて、Al系めっき鋼板の適用も増加している。Al系めっき鋼板を適用した技術としては、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1には、Al系めっき鋼板を熱間プレスに適用する方法が開示されている。鋼板にAl系めっき鋼板は熱間プレス前の加熱により、鋼板から拡散するFeとAl-Fe化合物を形成し、めっき表層までAl-Fe化合物を形成する。Al-Fe化合物上では、電着塗装の前処理である化成処理において皮膜が生成しない。また、Al-Fe化合物では犠牲防食性も有さないため、カット疵部から腐食が進行してしまう。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、耐食性に優れた熱間プレス部材および熱間プレス用鋼板ならびに熱間プレス部材の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた。その結果、めっき層中に、特定量のZnを含有させることにより、犠牲防食性を有することができ、その結果、耐食性に優れた熱間プレス部材が得られることを見出した。
本発明は上記知見に基づくものであり、その要旨は以下の通りである。
[1]鋼板の少なくとも一方の面にめっき層を備え、前記めっき層は、Fe1.7Al4Si、Al17.4Fe8Si7.6、Fe2Al5の少なくとも一種を含有する上層と、Fe2Al3Si、FeAlの少なくとも一種を含有する中間層と、Fe1.7Al4Si、Fe2Al5の少なくとも一種を含有する下層とを有し、
前記上層は、単相Znをさらに含み、前記めっき層表面の算術平均粗さRaが1.8未満である、熱間プレス部材。
[2]質量%で、Zn:5~50%、Si:5~20%を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるめっき層を有する、熱間プレス用鋼板。
[3][2]に記載の熱間プレス用鋼板を、Ac3変態点以上1000℃以下に加熱後、熱間プレスする、熱間プレス部材の製造方法。
[1]鋼板の少なくとも一方の面にめっき層を備え、前記めっき層は、Fe1.7Al4Si、Al17.4Fe8Si7.6、Fe2Al5の少なくとも一種を含有する上層と、Fe2Al3Si、FeAlの少なくとも一種を含有する中間層と、Fe1.7Al4Si、Fe2Al5の少なくとも一種を含有する下層とを有し、
前記上層は、単相Znをさらに含み、前記めっき層表面の算術平均粗さRaが1.8未満である、熱間プレス部材。
[2]質量%で、Zn:5~50%、Si:5~20%を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるめっき層を有する、熱間プレス用鋼板。
[3][2]に記載の熱間プレス用鋼板を、Ac3変態点以上1000℃以下に加熱後、熱間プレスする、熱間プレス部材の製造方法。
本発明によれば、耐食性に優れた熱間プレス部材が得られる。本発明の熱間プレス部材であれば、自動車分野において、軽量化と優れた耐食性を両立することが可能となる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な一実施態様を示すものであり、以下の説明によって何ら限定されるものではない。また、鋼成分組成の各元素の含有量の単位はいずれも「質量%」であり、以下、特に断らない限り単に「%」で示す。
本発明の熱間プレス部材は、鋼板の少なくとも一方の面にめっき層を備え、めっき層は、Fe1.7Al4Si、Al17.4Fe8Si7.6、Fe2Al5の少なくとも一種を含有する上層と、Fe2Al3Si、FeAlの少なくとも一種を含有する中間層と、Fe1.7Al4Si、Fe2Al5の少なくとも一種を含有する下層とを有し、上層は、単相Znをさらに含むことを特徴とする。上層ではFe1.7Al4Si、Al17.4Fe8Si7.6といった、Fe2Al5に比べZnの固溶限の低い層が存在することにより、単相Znの析出がより容易になる。上層がFe2Al5のみの場合でも単相Znの析出は可能である。本発明の熱間プレス部材は、腐食環境下において単相Znによる犠牲防食が働き、十分な耐食性を得られる。更に、本発明の熱間プレス部材は、めっき層表面の算術平均粗さRaが1.8未満とすることで、電着塗装において塗膜が均一に被覆し、期待される耐食性が得られる。熱間プレス部材における、めっき層表面の算術平均粗さRaは、熱間プレス用鋼板における、めっき層中のZn含有量により制御することが出来る。これは、熱間プレス用鋼板におけるめっき層中のZn含有量を5~50質量%とすることで、熱間プレス前の加熱時のめっき皮膜の溶融が抑制され、その結果、熱間プレス後の熱間プレス部材において、所望の表面粗さを得ることができる。
なお、単相Znは、上層において、島状または網目状に存在する。
本発明の熱間プレス用鋼板は、質量%で、Zn:5~50%、Si:5~20%を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるめっき層を有することを特徴とする。以下、本発明の熱間プレス用鋼板のめっき層の組成について説明する。なお、以下の成分の含有量の単位である「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味するものとする。
Zn:5~50%
めっき層中に、Zn:5%以上を含有することで、熱間プレス後のめっき層内に単相Znが形成される。これにより、本発明で課題とする耐食性の改善が可能となる。Znが5%未満の場合は熱間プレス後のめっき層内に十分な単相Znが形成されず、期待される耐食性の改善に至らない。そのため、Zn含有量の下限は5%とし、好ましくは15%以上とする。また、Znの含有量が増えるにつれ、めっき皮膜の融点が低下する。そのため、Znが50%を超えると熱間プレス前の加熱時にめっき皮膜が溶融し、熱間プレス後の表面粗さが増大する。これにより、電着塗装において塗膜の薄い箇所が生じ、期待される耐食性が得られない可能性がある。このため、Znの含有量の上限は50%以下とし、好ましくは30%以下とする。
めっき層中に、Zn:5%以上を含有することで、熱間プレス後のめっき層内に単相Znが形成される。これにより、本発明で課題とする耐食性の改善が可能となる。Znが5%未満の場合は熱間プレス後のめっき層内に十分な単相Znが形成されず、期待される耐食性の改善に至らない。そのため、Zn含有量の下限は5%とし、好ましくは15%以上とする。また、Znの含有量が増えるにつれ、めっき皮膜の融点が低下する。そのため、Znが50%を超えると熱間プレス前の加熱時にめっき皮膜が溶融し、熱間プレス後の表面粗さが増大する。これにより、電着塗装において塗膜の薄い箇所が生じ、期待される耐食性が得られない可能性がある。このため、Znの含有量の上限は50%以下とし、好ましくは30%以下とする。
Si:5~20%
本発明の熱間プレス用鋼板は、めっき層中にSiを5~20%含有する。Siはめっきの合金層(めっき-鋼板界面に生じる金属間化合物の層)厚みを低減するために有効である。合金層は高硬度で延性が低いため、厚くなるとブランキングなど熱間プレス前の冷間予加工で割れを生じ、熱間プレス後のめっきの剥離などの起点となる。Si含有量が5%未満であると熱間プレス後のめっき層内のFe2Al3Si、FeAl層の少なくとも一種を含有する中間層が不連続となり、Fe1.7Al4Si、Al17.4Fe8Si7.6、Fe2Al5の少なくとも一種を含有する上層内における、単相Zn析出が阻害される。一方、Si含有量が20%を超えると、合金層薄膜化効果は飽和するのみならず、めっき層に高硬度の単相Siが過剰に析出するようになるため、冷間加工性はかえって悪化する。また、表面粗さも増大する。冷間加工性と表面粗さの維持のため、Si含有量は20%以下とし、好ましくは15%以下とする。
本発明の熱間プレス用鋼板は、めっき層中にSiを5~20%含有する。Siはめっきの合金層(めっき-鋼板界面に生じる金属間化合物の層)厚みを低減するために有効である。合金層は高硬度で延性が低いため、厚くなるとブランキングなど熱間プレス前の冷間予加工で割れを生じ、熱間プレス後のめっきの剥離などの起点となる。Si含有量が5%未満であると熱間プレス後のめっき層内のFe2Al3Si、FeAl層の少なくとも一種を含有する中間層が不連続となり、Fe1.7Al4Si、Al17.4Fe8Si7.6、Fe2Al5の少なくとも一種を含有する上層内における、単相Zn析出が阻害される。一方、Si含有量が20%を超えると、合金層薄膜化効果は飽和するのみならず、めっき層に高硬度の単相Siが過剰に析出するようになるため、冷間加工性はかえって悪化する。また、表面粗さも増大する。冷間加工性と表面粗さの維持のため、Si含有量は20%以下とし、好ましくは15%以下とする。
残部はAlおよび不可避的不純物からなる。
めっき層の付着量は特に限定されず、任意の量とすることができる。しかし、片面当たりの付着量が10g/m2未満では熱間プレス加熱時のFeスケール生成抑制効果が不十分となる場合があるため、片面当たりの付着量を10g/m2以上とすることが好ましい。一方、片面当たりの付着量が120g/m2を超えると加工性が悪化する場合があるため、片面当たりの付着量を120g/m2以下とすることが好ましい。
本発明において、熱間プレス用鋼板におけるめっき層の下地鋼板として、例えば、質量%で、C:0.15~0.50%、Si:0.05~2.00%、Mn:0.5~3.0%、P:0.10%以下、S:0.05%以下、Al:0.10%以下、N:0.010%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼板を用いることができる。なお、鋼板としては冷延鋼板または熱延鋼板のいずれでも構わない。以下に、各成分の限定理由を記載する。
C:0.15~0.50%
Cは、鋼の強度を向上させる元素であり、熱間プレス部材の引張強度(以下、TSと称することもある)を980MPa以上にするには、その量を0.15%以上とすることが好ましい。一方、C量が0.50%を超えると、素材の鋼板のブランキング加工性が著しく低下する。したがって、C量は0.15~0.50%が好ましい。
Cは、鋼の強度を向上させる元素であり、熱間プレス部材の引張強度(以下、TSと称することもある)を980MPa以上にするには、その量を0.15%以上とすることが好ましい。一方、C量が0.50%を超えると、素材の鋼板のブランキング加工性が著しく低下する。したがって、C量は0.15~0.50%が好ましい。
Si:0.05~2.00%
Siは、Cと同様に、鋼の強度を向上させる元素であり、熱間プレス部材のTSを980MPa以上にするには、その量を0.05%以上とすることが好ましい。一方、Si量が2.00%を超えると、熱間圧延時に赤スケールと呼ばれる表面欠陥の発生が著しく増大するとともに、圧延荷重が増大したり、熱延鋼板の延性の劣化を招く。さらに、Si量が2.00%を超えると、ZnやAlを主体としためっき皮膜を鋼板表面に形成するめっき処理を施す際に、めっき処理性に悪影響を及ぼす場合がある。したがって、Si量は0.05~2.00%が好ましい。
Siは、Cと同様に、鋼の強度を向上させる元素であり、熱間プレス部材のTSを980MPa以上にするには、その量を0.05%以上とすることが好ましい。一方、Si量が2.00%を超えると、熱間圧延時に赤スケールと呼ばれる表面欠陥の発生が著しく増大するとともに、圧延荷重が増大したり、熱延鋼板の延性の劣化を招く。さらに、Si量が2.00%を超えると、ZnやAlを主体としためっき皮膜を鋼板表面に形成するめっき処理を施す際に、めっき処理性に悪影響を及ぼす場合がある。したがって、Si量は0.05~2.00%が好ましい。
Mn:0.5~3.0%
Mnは、フェライト変態を抑制して焼入れ性を向上させるのに効果的な元素である。また、Ac3変態点を低下させるので、熱間プレス前の加熱温度を低下するにも有効な元素である。このような効果の発現のためには、Mn量を0.5%以上とすることが好ましい。一方、Mn量が3.0%を超えると、偏析して素材の鋼板および熱間プレス部材の特性の均一性が低下する。したがって、Mn量は0.5~3.0%が好ましい。
Mnは、フェライト変態を抑制して焼入れ性を向上させるのに効果的な元素である。また、Ac3変態点を低下させるので、熱間プレス前の加熱温度を低下するにも有効な元素である。このような効果の発現のためには、Mn量を0.5%以上とすることが好ましい。一方、Mn量が3.0%を超えると、偏析して素材の鋼板および熱間プレス部材の特性の均一性が低下する。したがって、Mn量は0.5~3.0%が好ましい。
P:0.10%以下
P量が0.10%を超えると、偏析して素材である鋼板および熱間プレス部材の特性の均一性が低下するとともに、靭性も著しく低下する。したがって、P量は0.10%以下が好ましい。
P量が0.10%を超えると、偏析して素材である鋼板および熱間プレス部材の特性の均一性が低下するとともに、靭性も著しく低下する。したがって、P量は0.10%以下が好ましい。
S:0.05%以下
S量が0.05%を超えると、熱間プレス部材の靭性が低下する。したがって、S量は0.05%以下が好ましい。
S量が0.05%を超えると、熱間プレス部材の靭性が低下する。したがって、S量は0.05%以下が好ましい。
Al:0.10%以下
Al量が0.10%を超えると、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、Al量は0.10%以下が好ましい。
Al量が0.10%を超えると、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、Al量は0.10%以下が好ましい。
N:0.010%以下
N量が0.010%を超えると、熱間圧延時や熱間プレス加工前の加熱時にAlNの窒化物が形成され、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、N量は0.010%以下が好ましい。
N量が0.010%を超えると、熱間圧延時や熱間プレス加工前の加熱時にAlNの窒化物が形成され、素材の鋼板のブランキング加工性や焼入れ性を低下させる。したがって、N量は0.010%以下が好ましい。
残部はFeおよび不可避的不純物である。さらに上記成分組成に加え、以下の理由により、Cr:0.01~1.0%、Ti:0.01~0.20%、B:0.0005~0.0800%のうちから選ばれた少なくとも一種や、Sb:0.003~0.030%が、個別にあるいは同時に含有することが好ましい。
Cr:0.01~1.0%
Crは、鋼を強化するとともに、焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。こうした効果の発現のためには、Cr量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Cr量が1.0%を超えると、著しいコスト高を招くため、その上限は1.0%とすることが好ましい。
Crは、鋼を強化するとともに、焼入れ性を向上させるのに有効な元素である。こうした効果の発現のためには、Cr量を0.01%以上とすることが好ましい。一方、Cr量が1.0%を超えると、著しいコスト高を招くため、その上限は1.0%とすることが好ましい。
Ti:0.01~0.20%
Tiは、鋼を強化するとともに、細粒化により靭性を向上させるのに有効な元素である。また、次に述べるBよりも優先して窒化物を形成して、固溶Bによる焼入れ性の向上効果を発揮させるのに有効な元素でもある。よって、Ti量は0.01%以上とすることが好ましい。しかし、Ti量が0.20%を超えると、熱間圧延時の圧延荷重が極端に増大し、また、熱間プレス部材の靭性が低下するので、その上限は0.20%とすることが好ましい。
Tiは、鋼を強化するとともに、細粒化により靭性を向上させるのに有効な元素である。また、次に述べるBよりも優先して窒化物を形成して、固溶Bによる焼入れ性の向上効果を発揮させるのに有効な元素でもある。よって、Ti量は0.01%以上とすることが好ましい。しかし、Ti量が0.20%を超えると、熱間圧延時の圧延荷重が極端に増大し、また、熱間プレス部材の靭性が低下するので、その上限は0.20%とすることが好ましい。
B:0.0005~0.0800%
Bは、熱間プレス時の焼入れ性や熱間プレス後の靭性向上に有効な元素である。こうした効果の発現のためには、B量を0.0005%以上とすることが好ましい。一方、B量が0.0800%を超えると、熱間圧延時の圧延荷重が極端に増大し、また、熱間圧延後にマルテンサイト相やベイナイト相が生じて鋼板の割れなどが生じるので、その上限は0.0800%とすることが好ましい。
Bは、熱間プレス時の焼入れ性や熱間プレス後の靭性向上に有効な元素である。こうした効果の発現のためには、B量を0.0005%以上とすることが好ましい。一方、B量が0.0800%を超えると、熱間圧延時の圧延荷重が極端に増大し、また、熱間圧延後にマルテンサイト相やベイナイト相が生じて鋼板の割れなどが生じるので、その上限は0.0800%とすることが好ましい。
Sb:0.003~0.030%
Sbは、亜鉛系めっき鋼板を加熱してから熱間プレス加工、冷却をするまでの間に鋼板表層部に生じる脱炭層を抑制する効果を有する。このような効果の発現のためにはその量を0.003%以上とすることが好ましい。一方、Sb量が0.030%を超えると、圧延荷重の増大を招き、生産性を低下させる。したがって、Sb量は0.003~0.030%とすることが好ましい。
Sbは、亜鉛系めっき鋼板を加熱してから熱間プレス加工、冷却をするまでの間に鋼板表層部に生じる脱炭層を抑制する効果を有する。このような効果の発現のためにはその量を0.003%以上とすることが好ましい。一方、Sb量が0.030%を超えると、圧延荷重の増大を招き、生産性を低下させる。したがって、Sb量は0.003~0.030%とすることが好ましい。
本発明の熱間プレス用鋼板の製造方法について、下地鋼板の製造方法については特に限定されず常法により製造すればよい。下地鋼板に対してめっき層を成膜するめっき方法についても特に限定されるものではなく、溶融めっき法、電気めっき法、蒸着めっき法等、任意の方法を用いることができる。また、めっき処理後に合金化処理を施してもよい。
次に、本発明の熱間プレス部材の製造方法について説明する。本発明では、上述した、本発明の熱間プレス用鋼板を、Ac3変態点以上1000℃以下に加熱後、熱間プレスすることを特徴とする。
熱間プレス用鋼板の加熱温度の範囲をAc3変態点以上1000℃以下とすることにより、当該鋼板の組織をオーステナイト化し、熱間プレス時の急冷でマルテンサイト相などの硬質相を形成し、熱間プレス部材を高強度化することができる。加熱温度がAc3変態点より低いと、加熱された鋼板におけるオーステナイト分率が低下するため、熱間プレス後にマルテンサイトの体積率が不十分となり、十分な引張強度を確保することができない。加熱温度が1000℃超えであると、結晶粒径が過度に粗大となるため、曲げ圧潰性が低下する。なお、Ac3変態点は、下記(1)式により求めることができる。
Ac3変態点(℃)=881-206C+53Si-15Mn-20Ni-1Cr-27Cu+41Mo…(1)
ただし、(1)式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。含有されていない元素の含有量は0として計算する。
Ac3変態点(℃)=881-206C+53Si-15Mn-20Ni-1Cr-27Cu+41Mo…(1)
ただし、(1)式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表す。含有されていない元素の含有量は0として計算する。
また、熱間プレス用鋼板を加熱する方法は何ら限定されるものでなく、電気炉やガス炉による炉加熱、通電加熱、誘導加熱、高周波加熱、火炎加熱などが例示される。
加熱に次いで、熱間プレス加工を行い、加工と同時または直後に金型や水などの冷媒を用いて冷却を行うことにより熱間プレス部材が製造される。本発明においては、熱間プレス条件は特に限定されないが、一般的な熱間プレス温度範囲である600~800℃でプレスを行う事が出来る。
次に、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
板厚1.4mmの熱間プレス用冷延鋼板(質量%で、C:0.24%、Si:0.25%、Mn:1.3%、P:0.01%、S:0.002%、Al:0.03%、N:0.005%、Cr:0.16%、Ti:0.03%、B:0.002%、Sb:0.008%を下地鋼板として用い、連続式溶融アルミめっき設備によって、めっき浴の浴温を660℃、Alめっき付着量を片面あたり60g/m2、すなわち両面で120g/m2の条件で熱間プレス用Al系めっき鋼板(Ac3変態点:825℃)を製造した。
得られた熱間プレス用Al系めっき鋼板に対して、熱間プレス炉加熱を模擬した熱処理を実施した。熱処理は、試験片を雰囲気温度910℃設定の電気炉で加熱し、900℃に到達後、90秒保持したのち試験片を取り出し、成形開始温度(本実験では700℃で固定)まで空冷し、その後平板金型にて強制冷却を行うことで実施した。得られた熱間プレス部材について、以下の評価を行った。
(1)熱間プレス部材の層構造の特定
熱間プレス部材について、X線回折及びSEM-EDX分析を行い、上層、中間層、下層の構成成分の同定を行った。X線回折では株式会社リガク製のSmartLabを用い、使用X線:Cu-Kα、管電圧:40kV、管電流:30mA、スキャニングスピード:4°/minで分析を行った。SEM-EDX分析では日本電子製のSEM:JSM-7200FとThermo Fisher製のEDX検出器:UltraDryを用い、加速電圧15.0kVで分析を行った。X線回折での強度ピークから検出された構成成分とSEM-EDX分析で得られた各相の組成比からめっき層の構成成分の同定を行った。
熱間プレス部材について、X線回折及びSEM-EDX分析を行い、上層、中間層、下層の構成成分の同定を行った。X線回折では株式会社リガク製のSmartLabを用い、使用X線:Cu-Kα、管電圧:40kV、管電流:30mA、スキャニングスピード:4°/minで分析を行った。SEM-EDX分析では日本電子製のSEM:JSM-7200FとThermo Fisher製のEDX検出器:UltraDryを用い、加速電圧15.0kVで分析を行った。X線回折での強度ピークから検出された構成成分とSEM-EDX分析で得られた各相の組成比からめっき層の構成成分の同定を行った。
(2)表面粗さ
熱間プレス部材について、表面の粗度測定を行った。粗度の測定は、株式会社 ミツトヨ製の小形表面粗さ測定機 SJ-210を用い、高域カットオフλc=0.8mm、低域カットオフλs=2.5μmの条件で算術平均粗さRaを測定した。
熱間プレス部材について、表面の粗度測定を行った。粗度の測定は、株式会社 ミツトヨ製の小形表面粗さ測定機 SJ-210を用い、高域カットオフλc=0.8mm、低域カットオフλs=2.5μmの条件で算術平均粗さRaを測定した。
(3)耐食性
熱間プレス部材を80mm×70mmのサイズに剪断後、化成処理としてリン酸亜鉛処理を行った後、電着塗装を施した。ここで、リン酸亜鉛処理、電着塗装は以下に示す条件で行った。
リン酸亜鉛処理:日本パーカライジング社製の脱脂剤:FC-E2001、表面調整剤:PL-X、化成処理剤:PB-SX35(温度:35℃)を用いて、化成処理液の浸漬時間を90秒の条件で化成処理を施した。
電着塗装:関西ペイント社製の電着塗料:GT-100を用いて、膜厚が10μmとなるように電着塗装を施した。
その後、評価面の端部5mm、及び非評価面(背面)をテープでシール処理を行った後、評価面の中央にカッターナイフで、長さ50mm、中心角60°のクロスカット傷を荷重1000gで加えたものを耐食性の評価用サンプルとした。
熱間プレス部材を80mm×70mmのサイズに剪断後、化成処理としてリン酸亜鉛処理を行った後、電着塗装を施した。ここで、リン酸亜鉛処理、電着塗装は以下に示す条件で行った。
リン酸亜鉛処理:日本パーカライジング社製の脱脂剤:FC-E2001、表面調整剤:PL-X、化成処理剤:PB-SX35(温度:35℃)を用いて、化成処理液の浸漬時間を90秒の条件で化成処理を施した。
電着塗装:関西ペイント社製の電着塗料:GT-100を用いて、膜厚が10μmとなるように電着塗装を施した。
その後、評価面の端部5mm、及び非評価面(背面)をテープでシール処理を行った後、評価面の中央にカッターナイフで、長さ50mm、中心角60°のクロスカット傷を荷重1000gで加えたものを耐食性の評価用サンプルとした。
上記評価用サンプルを用いて腐食促進試験を実施した。腐食促進試験をスタートし、30サイクル後まで行った後、疵部からの赤錆幅をルーペにて観察し、下記の基準で評価した。
◎:0.1mm未満
〇:0.1mm以上0.5mm未満
×:0.5mm以上
評価結果を表1に示す。
◎:0.1mm未満
〇:0.1mm以上0.5mm未満
×:0.5mm以上
評価結果を表1に示す。
表1より、本発明例では、犠牲防食性を有することによる耐食性に優れた熱間プレス部材が得られることがわかる。
Claims (3)
- 鋼板の少なくとも一方の面にめっき層を備え、前記めっき層は、Fe1.7Al4Si、Al17.4Fe8Si7.6、Fe2Al5の少なくとも一種を含有する上層と、Fe2Al3Si、FeAlの少なくとも一種を含有する中間層と、Fe1.7Al4Si、Fe2Al5の少なくとも一種を含有する下層とを有し、
前記上層は、単相Znをさらに含み、前記めっき層表面の算術平均粗さRaが1.8未満である、熱間プレス部材。 - 質量%で、Zn:5~50%、Si:5~20%を含有し、残部Alおよび不可避的不純物からなるめっき層を有する、熱間プレス用鋼板。
- 請求項2に記載の熱間プレス用鋼板を、Ac3変態点以上1000℃以下に加熱後、熱間プレスする、熱間プレス部材の製造方法。
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JP2021027104A JP2022128727A (ja) | 2021-02-24 | 2021-02-24 | 熱間プレス部材および熱間プレス用鋼板ならびに熱間プレス部材の製造方法 |
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