JP2022127644A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】難削材の高速切削加工に供しても優れた耐久性の被覆工具を提供する。【解決手段】工具基体側のA層(AlTiXN層)と表面側のB層(TiSiMN層)を組とするC層を有し、工具基体からi番目のAi層、Bi層、Ci層(i=1~n)において、Ai層の平均層厚aiにつき、a1-an≧2、a1からanの変化は負の勾配、Bi層の平均層厚biにつき、bn-b1≧2、b1からbnの変化は正の勾配、Ci層のSi原子%、Ai層のSi原子%、Bi層のSi原子%をγi、αi、βiとすると、γi=αi×{ai/(ai+bi)}+βi×{bi/(ai+bi)}が、γn-γ1≧0.1、γ1からγnの変化は正の勾配で、工具基体から表面へ0.1μmの位置、被覆層の平均層厚の半分の位置、表面から工具基体へ0.1μmの位置の平均結晶粒幅をδ1、δ2、δ3とすると、δ3<δ2<δ1である被覆工具。【選択図】図1

Description

本発明は表面被覆切削工具(以下、被覆工具ということがある)に関する。
従来、切削工具の寿命を向上させるために、炭化タングステン(以下、WCという)基超硬合金等の工具基体の表面に、被覆層を形成した被覆工具があり、この被覆工具は耐摩耗性等が向上している。
そして、被覆工具のより一層の切削性能を向上させるために、被覆層の組成や構造について、種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、平均層厚が1~15μmのTiとAlとSiの複合窒化物層からなる被覆層を有し、前記被覆層が、層厚方向に沿って、Al成分最高含有点とAl成分不含有点とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、かつ前記Al成分最高含有点から前記Al成分不含有点、前記Al成分不含有点から前記Al成分最高含有点へAl成分含有量が連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、隣接する前記Al成分最高含有点とAl成分不含有点の間隔が、0.01~0.1μmである被覆工具が記載され、該被覆工具は鋼や鋳鉄などの高速切削加工を高い機械的衝撃を伴う高切り込みや高送りなどの切削条件で行っても優れた耐チッピング性を発揮するとされている。
また、例えば、特許文献2には、工具基体の上の被覆層が、1~15μm以下の層厚であり、かつAlaTibSicMdN(ただし、0.35≦a≦0.7、0<c≦0.1、0<d≦0.3、a+b+c+d=1)からなるA層と、TieSifMegN(ただし、0<f≦0.1、0<g≦0.3、e+f+g=1)からなるB層とが交互に各2層以上積層された積層体を含み、前記工具基体に最も近い側の前記A層を構成するAlの前記式中における原子比をa1とし、前記被覆層の表面に最も近い側の前記A層を構成するAlの前記式中における原子比をa2とすると、a1-a2≧0.005である被覆工具が記載され、該被覆工具は耐摩耗性、耐欠損性、密着性を有するとされている。
特開2003-291005号公報 特開2017-1147号公報
本発明は、前記事情や前記提案を鑑みてなされたものであって、オーステナイト系ステンレス鋼、Ni基合金、Ti基合金等の難削材の高速切削加工に供しても優れた耐久性を有する被覆工具を提供することを目的とする。
本発明の実施形態に係る表面被覆切削工具は、
工具基体と該工具基体に設けられた被覆層を有し、
1)前記被覆層はAl1-a-bTiN(0.30≦a≦0.70、0.00≦b≦0.30)からなるA層と、Ti1-c-dSiN(0.01≦c≦0.30、0.00≦d≦0.30)からなるB層を含み
2)前記XはB、Si、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Re、Ceより選ばれる1または2種以上の元素であり、前記MはB、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Re、Ceより選ばれる1または2種以上の元素であり、
3)前記工具基体の側の前記A層と該A層に隣接する工具表面の側の前記B層の組をC層とするとき、前記被覆層はn層(n≧2)の前記C層を有し、
4)前記工具基体の側からi番目にある前記C層をCi層とし、該Ci層を構成する前記A層をAi層、B層をBi層とする場合であって(ただし、i=1~n)、
前記Ai層の平均層厚をai(nm)としたとき、a1-an≧2、かつ、a1からanへの変化を最小自乗法によって直線近似すると負の勾配を有する直線となり、
前記Bi層の平均層厚をbi(nm)としたとき、bn-b1≧2、かつ、b1からbnへの変化を最小自乗法によって直線近似すると正の勾配を有する直線となり、
前記Ci層に含まれるSiの原子%であるγiを、前記Ai層に含まれるSiの原子%であるαiと前記Bi層に含まれるSiの原子%であるβiによりγi=αi×{ai/(ai+bi)}+βi×{bi/(ai+bi)}としたとき、γn-γ1≧0.1、かつ、γ1からγnへの変化を最小自乗法によって直線近似すると正の勾配を有する直線となり、
5)前記被覆層の縦断面において、前記工具基体の表面から前記工具表面に向かって0.1μmの位置、前記被覆層の平均層厚の半分の位置、および、前記工具表面から前記工具基体に向かって0.1μmの位置における平均結晶粒幅を、それぞれ、δ1、δ2、δ3とするとき、δ3<δ2<δ1、
である。
さらに、前記実施形態に係る表面切削被覆工具は、次の事項を満足してもよい。
(1)A1層の平均層厚は2nm以上5μm以下であること。
(2)前記Ai層(ただし、i=2~n)および前記Bi層(ただし、i=1~n)は、いずれも、その平均層厚が2~500nmであり、前記被覆層の平均層厚が1.0~8.0μmであること。
前記によれば、オーステナイト系ステンレス鋼、Ni基合金、Ti基合金等の難削材の高速切削加工において、優れた耐久性を有する表面被覆切削工具を得ることができる。
本発明の実施形態に係る被覆層の縦断面(工具基体の表面に垂直な断面)を模式的に示す図である。
本発明者は、高熱発生を伴い、切刃に対して大きな熱的、機械的負荷が作用するオーステナイト系ステンレス鋼、Ni基合金、Ti基合金等の難削材の高速切削加工(例えば、旋削用インサートによる、切削速度が200m/min以上の領域におけるオーステナイト系ステンレス鋼の湿式連続加工、エンドミルによる、切削速度が45m/min以上の領域におけるNi基合金の側面切削加工、旋削用インサートによる、切削速度が100m/min以上の領域におけるTi基合金の湿式連続加工)であっても、長期の使用にわたり優れた切削性を発揮する耐久性を有する被覆工具について、鋭意検討した。
すなわち、前記難削材を切削する際に発生する表面被覆工具の損傷の主要因である溶着について解析した。その結果、以下の「Si含有割合の変化」、「積層される各層の平均層厚の変化」および「結晶粒幅の変化」を制御すれば、前述の難削材の高速切削加工であっても、長期の使用にわたり優れた切削性を発揮する耐久性を有する被覆工具を得ることができるとの知見を得た。この知見を得た経緯は次のとおりである。
被削材である難削材に含まれる成分と被覆層とが化学的に反応することにより、溶着が発生する。そこで、被覆層の中に、被削材への固溶度が小さいSiを多く含有させることによって、被削材に含まれる前記成分との反応性が小さくなり溶着を低減することができる。しかしながら、Siを被覆層に単純に多く添加するだけでは、被覆層の圧縮残留応力の増大により、切削初期にチッピングが発生し被覆工具寿命が短くなってしまう。
そこで、工具基体の表面の側から工具表面に向かってSi含有量を増加させると、切削初期の溶着を低減すると共に、被覆層の圧縮残留応力の過度な増大を抑制することが可能となる。
しかし、このようにしても溶着を完全に無くすことはできず、溶着により被覆層の一部が脱離した際に被覆層の破壊を最小限に抑え、剥離、工具基体の露出およびチッピングを抑制するために、被覆層を微粒化させ破壊単位を小さくすることを思いついた。
そこで、さらに検討を行った結果、被覆層全体を微粒化させたときは、被覆層と工具基体との密着力が乏しくなり切削初期で工具基体の露出が発生してしまうが、被覆層を2層から構成される積層単位を積層し、被覆層を工具基体の側から工具表面側に向かって、この積層単位を構成する各層の平均層厚に所定の変化を与え、かつ、少なくとも所定の層厚位置で粒径が減少していると、被覆層の破壊単位の最小化と、被覆層と工具基体との密着力の確保の両立ができることを知見した。
以下では、本発明の実施形態の被覆工具について詳細に説明する。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、数値範囲を「L~M」(L、Mは共に数値)で表現するときは、その範囲は上限値(M)および下限値(L)を含んでおり、上限値(M)と下限値(L)の単位は同じである。
また、本明細書、特許請求の範囲でいう工具基体の表面とは、被覆層の最も工具基体の表面に近い層と工具基体との界面の粗さ曲線について、平均線を算術的に求めたものである。この決定方法によれば、工具基体が曲面の表面を有する場合であっても、被覆層の層厚に対して工具径が十分に大きければ、被覆層と工具基体の界面は平面と扱うことできるため、同様に工具基体の表面を求めることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る被覆工具の被覆層の縦断面(インサートのときは工具基体の表面に垂直な断面。ドリルのような軸物工具のときは、この中心軸に垂直な断面。)を模式的に示した図である。工具基体(1)から工具表面、すなわち、被覆層(2)の表面に向かって、Ai層(6)とBi層(7)を積層単位とするCi層(8)が積層されている(i=1~n)。以下、この図1に示す実施形態について説明する。
1.被覆層
本実施形態に係る被覆層は、図1に模式的に示すように、工具基体の側から工具表面(被覆層の表面)に向かって、以下に述べるA層(Ai層(6))とB層(Bi層(7))を積層単位とするC層(Ci層(8))を有することが好ましい。
被覆層の平均層厚は特段の制約はないが、1.0~8.0μmであることがより好ましい。その理由は、平均膜厚が1.0μm未満であった場合、被覆層が十分な耐摩耗性を発揮しなくなることがあり、8.0μmを超えた場合は被覆層の内部歪みが大きくなり自壊しやすくなることがあるためである。
(1)A層
ア 組成
A層の組成を組成式:Al1-a-bTiN(X=B、Si、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Re、Ce)で表すと、0.30≦a≦0.70、0.00≦b≦0.30であることが好ましい。
a、bを前記範囲とする理由は、次のとおりである。aが0.30未満の場合には、相対的なAlの含有割合の増加により六方晶構造の結晶粒が形成されやすくなり、A層の硬度が低下し十分な耐摩耗性を得ることができなくなり、一方、aが0.70を超えると、A層の高温硬さおよび高温耐酸化性が低下する。また、bがゼロ、すなわち、X成分は含まれなくてもよいが、bが0.30を超えると、A層が脆くなり、十分な耐摩耗性を得ることができなくなるためである。
イ 平均層厚
A層の一層当たりの平均層厚は制約がないが、2~500nmがより好ましい。
その理由は、平均層厚が2nm未満の場合には、耐摩耗性向上効果、耐欠損性が十分でないときがあり、一方、500nmを超えると、隣接するB層との格子不整合(ミスマッチ)によりB層の内部歪みが大きくなりB層が自壊しやすくなることがあるためである。
ただし、A層の前記工具基体の直上にある、A層、すなわち、A1層の平均層厚は2nm以上5μm以下がより好ましい。
その理由は、平均層厚が2nm未満の場合には、耐摩耗性向上効果、耐欠損性が十分でないときがあり、一方、5μmを超えると、A1層の内部歪みが大きくなり同層が自壊しやすくなることがあるためである。
ウ 平均層厚の変化
工具基体の表面側から工具表面側(被覆層の表面側)に向かってi番目のA層をAi層とし、その平均層厚をai(nm)とするとき、a1-an≧2、かつ、a1からanへの変化を最小自乗法によって直線近似すると負の勾配を有する直線となることが好ましい。
このように、A層の平均層厚が工具表面側に向かって減少することによって、被覆層と工具基体との間の密着力の確保と被覆層のSi含有による溶着低減の効果を両立することができる。
(2)B層
ア 組成
B層の組成を組成式:Ti1-c-dSiN(M=B、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Re、Ce)で表すと、0.01≦c≦0.30、0.00≦d≦0.30であることが好ましい。
ここで、c、dを前記範囲とする理由は、次のとおりである。cが0.01未満の場合にはSi含有による溶着低減の効果が十分に発揮されず、一方、cが0.30を超えると、B層中の圧縮残留応力の過度な増加によって耐摩耗性や耐欠損性の低下がみられるようになる。また、dはゼロ、すなわち、Mは含まれなくてもよいが、dが0.30を超えると、B層が脆くなり、被覆工具が十分な耐摩耗性を得ることができなくなるためである。
イ 平均層厚
B層の一層当たりの平均層厚は制約がないが、2~500nmがより好ましい。
その理由は、平均層厚が2nm未満の場合には、耐摩耗性向上効果、耐欠損性が十分でないときがあり、一方、500nmを超えると、B層の内部歪みが大きくなり自壊しやすくなることがあるためである。
ウ 平均層厚の変化
工具基体の表面側から工具表面側(被覆層の表面側)に向かってi番目のB層をBi層とし、その平均層厚をbi(nm)とするとき、b1からbnへの変化を最小自乗法によって直線近似すると正の勾配を有する直線となることが好ましい。
このように、B層の平均層厚が工具表面側に向かって増加することによって、被覆層と工具基体との間の密着力の確保と被覆層のSi含有による溶着低減の効果を両立することができる。
(3)C層
ア 積層数
C層は、工具基体の側のA層、工具表面側のB層の組とする積層単位層であって、被覆層内に最低2層存在する。
ここで、C層の数(積層数)の上限は、特段の制約はないが、100層以下が好ましい。
イ Siの含有割合
工具基体の表面の側からi番目にある、前記C層をCi層とし、該Ci層を構成する前記A層をAi層、B層をBi層とするとき(ただし、i=1~n、nは2以上であって、積層総数を表す)、
Ci層に含まれるSiの原子%であるγiを、前記Ai層に含まれるSiの原子%であるαiと前記Bi層に含まれるSiの原子%であるβiによりγi=αi×{ai/(ai+bi)}+βi×{bi/(ai+bi)}としたとき、γn-γ1≧0.1、かつ、γ1からγnへの変化を最小自乗法によって直線近似すると正の勾配を有する直線となることが好ましい。
このようにすると、切削初期の溶着を低減すると共に、被覆層の圧縮残留応力の増大を抑制することが可能となる。
イ 結晶粒径の変化
被覆層の縦断面において、前記工具基体の表面から前記工具表面(被覆層の表面)に向かって0.1μmの位置、前記被覆層の平均層厚の半分の位置、および、前記工具表面から前記工具基体に向かって0.1μmの位置における平均結晶粒幅を、それぞれ、δ1、δ2、δ3とするとき、δ3<δ2<δ1であることが好ましい。
このようにすることによって、被覆層の破壊単位の最小化と、被覆層と工具基体との密着力の確保の両立ができる。
ここで、δ1、δ2、δ3で表される平均結晶粒幅とは、工具基体の表面に平行な長さL(μm)の直線を引いたとき、この直線が横切る結晶粒界の数で除したもの
すなわち、L/(横切る結晶粒界の数)
である。
直線Lの長さとして、5μmを例示することができる。
また、理由は定かになっていないが、Ci層に含まれるSiの原子%であるγiが大きくなるほど、平均結晶粒幅が小さくなるなることが判明した。
2.工具基体
(1)材質
本実施形態に使用する工具基体は、従来公知の工具基体の材質であれば、前述の目的を達成することを阻害するものでない限り、いずれのものも使用可能である。一例をあげるならば、超硬合金(WC基超硬合金、WCの他、Coを含み、さらに、Ti、Ta、Nb等の炭窒化物を添加したものも含むもの等)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの等)、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなど)、cBN焼結体、またはダイヤモンド焼結体のいずれかであることが好ましい。
(2)形状
工具基体の形状は、切削工具として用いられる形状であれば特段の制約はなく、インサートの形状、ドリルの形状、エンドミルの形状が例示できる。
3.製造方法
本実施形態の被覆層は、例えば、次のようなPVD法により製造できる。
すなわち、アークイオンプレーティング(Arc Ion Plating:AIP)装置内を窒素雰囲気とし、Al1-a-bTiN(0.30≦a≦0.70、0.00≦b≦0.30、X=B、Si、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Re、Ceの1または2種以上)合金ターゲットとアノード電極との間にアーク放電を発生させて所定の平均層厚のA層を形成する。次に、同じく窒素雰囲気で、Ti1-c-dSiN(0.01≦c≦0.30、0.00≦d≦0.30、M=B、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Re、Ceの1または2種以上)合金ターゲットとアノード電極との間にアーク放電を発生させて、所定の平均層厚のB層を成膜する。以下、これを繰り返し、所定層厚の被覆層を得る。
以下、実施例をあげて本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
原料粉末として、いずれも0.5~5μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370~1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(インサート)1~4を製造した。
そして、工具基体1~4のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥させた。
AIP装置の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に、工具基体1~4のそれぞれを外周部にそって装着し、AIP装置の一方に所定組成のAlTiXN合金からなるターゲット(カソード電極)を、他方側に所定組成のTiSiMN合金からなるターゲット(カソード電極)を配置した。
前記工具基体1~4に対して、以下の工程で被覆層を形成し、図1の実施形態に対応する表面被覆インサート1~10(以下、実施例1~10という)をそれぞれ製造した。
被覆層の製造
次の1)~5)の工程により、表3に示す実施例の被覆層を製造した。
1)A層の成膜
装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して表2に示す下層成膜用の窒素分圧とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する前記工具基体の温度を表2に示す温度範囲内に維持すると共に、表2に示す直流バイアス電圧を印加し、かつ前記AlTiXN合金ターゲットとアノード電極との間に80~150Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記工具基体の表面に、表3に示される組成および一層当たりの平均層厚のA層を蒸着形成した。
ここで、各Ai層を蒸着形成する際、アーク電流値を変化させることにより前記工具基体に到達するイオンの量を変化させることができ、結果として、各Ai層の膜厚であるaiを変化させることができる。Ai層を蒸着形成する際のアーク電流値をIAi(A)としたとき、IA1=150、IAn=80、IAi≧IAi+1とすることにより、a1からanへの変化を最小自乗法によって直線近似すると負の勾配を有する直線を満たすA層を蒸着形成した。
2)B層の成膜
次に、表2に示す下部積層単位層用の窒素分圧へ変更とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する前記工具基体の温度を表2に示す温度範囲内に維持すると共に表3に示す直流バイアス電圧を印加し、かつ前記TiSiMN合金ターゲットとアノード電極との間に80~150Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記工具基体の表面に、表3に示される組成および一層当たりの平均層厚のB層を蒸着形成した。
ここで、各Bi層を蒸着形成する際、アーク電流値を変化させることにより前記工具基体に到達するイオンの量を変化させることができ、結果として、各Bi層の膜厚であるbiを変化させることができる。Bi層を蒸着形成する際のアーク電流値をIBi(A)としたとき、IB1=80、IBn=150、IBi≦IBi+1とすることにより、b1からbnへの変化を最小自乗法によって直線近似すると正の勾配を有する直線を持つB層を蒸着形成した。
3)被覆層に関して
前記のように各Ai層と各Bi層の膜厚を変化させることにより、前記Ci層に含まれるSiの原子%であるγiを、前記Ai層に含まれるSiの原子%であるαiと前記Bi層に含まれるSiの原子%であるβiによりγi=αi×{ai/(ai+bi)}+βi×{bi/(ai+bi)}としたとき、γ1からγnへの変化を最小自乗法によって直線近似すると正の勾配を有する直線を持つC層を得た。
γiは工具基体の表面の側から工具表面に向かって増加しているため、前記被覆層の縦断面において、前記工具基体の表面から前記工具表面に向かって0.1μmの位置、前記被覆層の平均層厚の半分の位置、および、前記工具表面から前記工具基体に向かって0.1μmの位置における平均結晶粒幅を、それぞれ、δ1、δ2、δ3とするとき、δ3<δ2<δ1を満たした。
比較のために、前記工具基体(インサート)1~4のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、AIP装置の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、実施例1~10と同様にボンバード処理を行い表2に示す成膜条件1’~6に従って、表3に示される比較例の表面被覆インサート1’~6’(以下、比較例1’~6’という)をそれぞれ製造した。
前記で製造した実施例1~10および比較例1’~6’について、収束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)装置を用いて縦断面を切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたエネルギー分散型X線分析法(EDS)、オージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:AES)や電子線マイクロアナライザー(Electron Probe Micro Analyzer:EPMA)を用いた断面測定により、A層およびB層の成分組成、各層厚を5箇所測定し、その平均値から平均組成および平均層厚を算出した。
表3に、測定・算出したそれぞれの値を示す。なお、表3には明示していないが、Ai層、Bi層(i=1~n)は、すべて、2~500nmの範囲にあった。
Figure 2022127644000002
Figure 2022127644000003
Figure 2022127644000004
次に、上記実施例1~10および比較例1’~6’について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、下記の切削条件によるオーステナイト系ステンレス鋼の湿式連続切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
<切削条件>
被削材:オーステナイト系ステンレス鋼(Cr19質量%-Ni9質量%-Mn1.5質量%-Si0.4質量%-C0.05質量%-Fe残部)の丸棒
切削速度:300 m/min.
切り込み:0.4 mm
送り:0.12 mm/rev.
切削時間:10 分、
切削油:水溶性クーラント
表4に、それぞれ、実施例1~10と比較例1’~6’切削試験の結果を示す。
Figure 2022127644000005
表4に示される結果から、実施例1~10は、難削材の高速切削加工であっても、被覆層の剥離、溶着、チッピングや摩耗がなく、優れた耐久性を有することがわかる。
これに対して、比較例1’~6’は、高速切削加工時の熱的負荷、機械的負荷により被覆層の剥離、溶着、チッピングや摩耗が発生し、短時間の工具寿命であった。
1 工具基体
2 被覆層
3 A1層
4 B1層
5 C1層
6 Ai層
7 Bi層
8 Ci層
9 An層
10 Bn層
11 Cn層

Claims (3)

  1. 工具基体と該工具基体に設けられた被覆層を有する表面被覆切削工具であって、
    1)前記被覆層はAl1-a-bTiN(0.30≦a≦0.70、0.00≦b≦0.30)からなるA層と、Ti1-c-dSiN(0.01≦c≦0.30、0.00≦d≦0.30)からなるB層を含み
    2)前記XはB、Si、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Re、Ceより選ばれる1または2種以上の元素であり、前記MはB、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Re、Ceより選ばれる1または2種以上の元素であり、
    3)前記工具基体の側の前記A層と該A層に隣接する工具表面の側の前記B層の組をC層とするとき、前記被覆層はn層(n≧2)の前記C層を有し、
    4)前記工具基体の側からi番目にある前記C層をCi層とし、該Ci層を構成する前記A層をAi層、B層をBi層とする場合であって(ただし、i=1~n)、
    前記Ai層の平均層厚をai(nm)としたとき、a1-an≧2、かつ、a1からanへの変化を最小自乗法によって直線近似すると負の勾配を有する直線となり、
    前記Bi層の平均層厚をbi(nm)としたとき、bn-b1≧2、かつ、b1からbnへの変化を最小自乗法によって直線近似すると正の勾配を有する直線となり、
    前記Ci層に含まれるSiの原子%であるγiを、前記Ai層に含まれるSiの原子%であるαiと前記Bi層に含まれるSiの原子%であるβiによりγi=αi×{ai/(ai+bi)}+βi×{bi/(ai+bi)}としたとき、γn-γ1≧0.1、かつ、γ1からγnへの変化を最小自乗法によって直線近似すると正の勾配を有する直線となり、
    5)前記被覆層の縦断面において、前記工具基体の表面から前記工具表面に向かって0.1μmの位置、前記被覆層の平均層厚の半分の位置、および、前記工具表面から前記工具基体に向かって0.1μmの位置における平均結晶粒幅を、それぞれ、δ1、δ2、δ3とするとき、δ3<δ2<δ1、
    であることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. A1層の平均層厚は2nm以上5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記Ai層(ただし、i=2~n)および前記Bi層(ただし、i=1~n)は、いずれも、その平均層厚が2~500nmであり、前記被覆層の平均層厚が1.0~8.0μmであることを特徴する請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
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