JP2022119574A - 腎障害、非感染性炎症及び血管疾患を予防又は治療するための医薬 - Google Patents

腎障害、非感染性炎症及び血管疾患を予防又は治療するための医薬 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、カルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を予防又は治療し得る手段を提供する。【解決手段】本発明の一態様は、血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含有する、腎障害、非感染性炎症及び血管疾患を予防又は治療するための医薬に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、腎障害、非感染性炎症及び血管疾患を予防又は治療するための医薬に関する。特に、本発明の一態様は、血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含有する、腎障害、非感染性炎症又は血管疾患を予防又は治療するための医薬に関する。
腎障害の一種である慢性腎臓病は、慢性糸球体腎炎等の腎疾患だけでなく、糖尿病及び高血圧等の生活習慣病の腎合併症として起きる場合が多い。慢性腎臓病の進行を抑制するためには、腎障害の原因となった疾患を個々の患者で同定し、その疾患の治療を徹底する以外に方法がない。このため、慢性腎臓病患者に共通する普遍的な治療標的の同定及び治療法の開発が望まれている。
慢性腎臓病患者の主な死因は心血管イベントであり、その危険因子として血管石灰化が同定されている。例えば、非特許文献1は、ビスホスホネート製剤であるアレンドロン酸が血管石灰化に対して治療効果を有することを記載する。しかしながら、血管石灰化に対する有効な治療法は、現時点では確立していない。また、明らかな感染症がないにもかかわらず炎症所見が認められる病態は、非感染性炎症と呼ばれている。非感染性炎症は、生活習慣病及び/又は老化に関連しており、これらを加速することが指摘されている。しかしながら、非感染性炎症の原因となる「病原体」は、同定されていない。
慢性腎臓病の進行過程で普遍的に認められる病態は、機能的なネフロン数の減少である。ネフロンは、尿細管及び糸球体からなる腎臓の機能単位である。ネフロン数が減少すると、尿中に排泄すべき物質のネフロンあたりの排泄量を増やす代償機構が働く。この際に問題となるのがリンである。ネフロンあたりのリン排泄量が増えると、原尿中のリン濃度が上昇し、尿細管管腔内にリン酸カルシウム結晶を含む微粒子(以下、「カルシプロテイン粒子」とも記載する)が形成される。カルシプロテイン粒子は、リン酸カルシウム結晶と血清タンパク質であるフェチュインAとの複合体ナノ粒子である。カルシプロテイン粒子は、尿細管細胞を傷害する活性を有することが知られている。このため、カルシプロテイン粒子の形成は、腎障害の原因となる。
また、カルシプロテイン粒子は、血中にも出現することが知られている。このため、カルシプロテイン粒子の形成は、血管内皮障害及び血管石灰化のような血管疾患、並びに非感染性炎症の原因となる。
例えば、特許文献1は、カルシプロテイン粒子の測定方法及び慢性腎臓病の検査を補助する方法を記載する。
特許第6566697号公報
Okamoto M, Yamanaka S, Yoshimoto W, Shigematsu T, Alendronate as an effective treatment for bone loss and vascular calcification in kidney transplant recipients. Journal of transplantation. 2014年, 第2014巻, p. 269613
前記のように、カルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害についての知見は得られているものの、これらの疾患、症状又は障害を予防又は治療し得る手段は現在のところ開発されていない。
それ故、本発明は、カルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を予防又は治療し得る手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者らは、ビスホスホネート製剤投与又は血液凝固Xa因子阻害薬投与により、腎臓における炎症及び線維化を軽減し得ることを見出した。また、本発明者らは、血液凝固Xa因子阻害薬投与により、大動脈における炎症及び血管石灰化を抑制し得ることを見出した。本発明者らは、前記知見に基づき本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の態様及び実施形態を包含する。
(1) 血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含有する、腎障害、非感染性炎症又は血管疾患を予防又は治療するための医薬。
(2) 腎障害が、慢性腎臓病、尿細管障害、腎線維化、間質への炎症細胞浸潤及びネフロカルシノーシスからなる群より選択される1種以上の障害である、前記実施形態(1)に記載の医薬。
(3) 非感染性炎症が、生活習慣病、癌及び老化からなる群より選択される1種以上の疾患、症状又は障害に関連する非感染性慢性炎症である、前記実施形態(1)に記載の医薬。
(4) 血管疾患が、動脈硬化症、血管内皮障害、血管石灰化、粥状硬化、大動脈又は冠動脈における炎症反応、及び平滑筋の骨芽細胞様形質変換からなる群より選択される1種以上の障害である、前記実施形態(1)に記載の医薬。
(5) 1種以上の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物が、Toll様受容体とカルシプロテイン粒子との結合を阻害することによって腎障害、非感染性炎症及び血管疾患を予防又は治療する、前記実施形態(1)~(4)のいずれかに記載の医薬。
本発明により、カルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を予防又は治療し得る手段を提供することが可能となる。
図1は、試験Iにおいて、高リン酸食を給餌し、且つビスホスホネート製剤を投与したマウスにおける各種マーカーの相対的mRNAレベルを示すグラフである。図中のデータは、平均値±標準偏差を示す。*は、マン・ホイットニーのU検定で、ビヒクルに対してP<0.05であることを示す。 図2は、試験IIにおいて、通常食又は高リン酸食を給餌し、且つ血液凝固Xa因子阻害薬を投与したマウスにおける尿細管障害マーカー又は尿細管障害で発現が減少することが知られている遺伝子の相対的mRNAレベルを示すグラフである。図中、白抜きの棒は、通常食の結果を、黒塗りの棒は、高リン酸食の結果を、それぞれ示す。図中のデータは、平均値±標準偏差を示す。 図3-1は、試験IIにおいて、通常食又は高リン酸食を給餌し、且つ血液凝固Xa因子阻害薬を投与したマウスにおける炎症マーカーの相対的mRNAレベルを示すグラフである。図中、白抜きの棒は、通常食の結果を、黒塗りの棒は、高リン酸食の結果を、それぞれ示す。図中のデータは、平均値±標準偏差を示す。 図3-2は、試験IIにおいて、通常食又は高リン酸食を給餌し、且つ血液凝固Xa因子阻害薬を投与したマウスにおける炎症マーカーの相対的mRNAレベルを示すグラフである。図中、白抜きの棒は、通常食の結果を、黒塗りの棒は、高リン酸食の結果を、それぞれ示す。図中のデータは、平均値±標準偏差を示す。 図4は、試験IIIにおいて、健常者又は透析患者の血清試料から分離したカルシプロテイン粒子をSDS-PAGEで分析した結果を示す写真である。図中、Aは、銀染色したゲルの写真であり、Bは、ウェスタンブロッティングしたゲルの写真である。 図5は、試験IIIにおいて、透析患者の血漿又は血清試料をリン酸処理した後、該試料から分離したカルシプロテイン粒子をSDS-PAGEで分析した結果を示す写真である。図中、Aは、銀染色したゲルの写真であり、Bは、抗フェチュインA抗体(F-180、ウサギ由来)を用いてウェスタンブロッティングしたゲルの写真であり、Cは、抗血液凝固X因子抗体(AMX-5050、マウス由来)を用いてウェスタンブロッティングしたゲルの写真であり、Dは、抗血液凝固X因子抗体(H-120、ウサギ由来)を用いてウェスタンブロッティングしたゲルの写真であり、Eは、抗プロトロンビン抗体(ab184015、ウサギ由来)を用いてウェスタンブロッティングしたゲルの写真であり、Fは、抗血液凝固VII因子抗体(MAB2338、マウス由来)を用いてウェスタンブロッティングしたゲルの写真である。 図6は、試験IIIにおいて、健常者又は透析患者の血清試料を組換えタンパク質処理した後、該試料から分離したカルシプロテイン粒子をSDS-PAGEで分析し、抗GST抗体を用いてウェスタンブロッティングした結果を示す写真である。
本発明者らは、ビスホスホネート製剤投与又は血液凝固Xa因子阻害薬投与により、腎臓における炎症及び線維化を軽減し得ることを見出した。また、本発明者らは、血液凝固Xa因子阻害薬投与により、大動脈における炎症及び血管石灰化を抑制し得ることを見出した。それ故、本発明の一態様は、血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含有する、腎障害、非感染性炎症及び血管疾患を予防又は治療するための医薬に関する。本態様の医薬により、腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を予防又は治療することができる。
本発明の各態様において、カルシプロテイン粒子は、リン酸カルシウム結晶と血清タンパク質であるフェチュインAとの複合体ナノ粒子を意味する。慢性腎臓病の進行過程で普遍的に認められる病態である機能的なネフロン数の減少に伴い、ネフロンあたりのリン排泄量が増加することで原尿中のリン濃度が上昇し、尿細管管腔内にカルシプロテイン粒子が形成される。
本発明の各態様において、Toll様受容体は、自然免疫に関与する膜結合型受容体であるToll様受容体(以下、「TLR」とも記載する)を意味する。近位尿細管において発現するToll様受容体としては、例えば、TLR4を挙げることができる。TLR4は、マクロファージにおいて、カルシプロテイン粒子によって誘導される炎症応答を媒介するパターン認識受容体として知られている(Koppert, S., et al. Front Immunol 9, 1991 (2018))。加えて、TLR4は、皮髄境界部に分布する近位尿細管の頂端側で発現している(El-Achkar, T.M., et al. Am J Physiol Renal Physiol 295, F534-544 (2008))。
本態様の医薬の有効成分である化合物は、血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物である。ビスホスホネート製剤は、エチドロン酸、アレンドロン酸、ビスホスホネート、イバンドロン酸、リセドロン酸、ミノドロン酸又はゾレドロン酸であることが好ましく、エチドロン酸又はアレンドロン酸であることがより好ましい。血液凝固Xa因子阻害薬は、リバーロキサバン、アビキサバン、フォンダバリヌクスナトリウム又はエドキサバントシルであることが好ましい。以下の実施例において示すように、ビスホスホネート製剤投与又は血液凝固Xa因子阻害薬投与により、腎臓における炎症及び線維化を軽減することができる。また、血液凝固Xa因子阻害薬投与により、大動脈における炎症及び血管石灰化を抑制することができる。それ故、前記で例示した化合物を有効成分として含有する本態様の医薬を対象、例えばヒト患者に投与することにより、腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を予防又は治療することができる。
本発明の各態様において、前記のような作用効果を奏する理由は、以下のように説明することができる。なお、本発明の各態様は、以下の作用及び原理に限定されるものではない。カルシプロテイン粒子は、Toll様受容体に結合してエンドサイトーシスされることで、細胞傷害、血管石灰化又は炎症のような病原活性を発現する。前記のように、カルシプロテイン粒子は、リン酸カルシウム結晶とフェチュインAとの複合体ナノ粒子である。リン酸カルシウムには、結晶構造を有するリン酸カルシウム結晶と、結晶構造を有しない非晶質リン酸カルシウムとの2種類の異なる相が存在するが、病原活性を有するカルシプロテイン粒子は、リン酸カルシウム結晶を含む。ビスホスホネート製剤は、非晶質リン酸カルシウムからリン酸カルシウム結晶への相転移を阻害する活性を有することが知られている。このため、ビスホスホネート製剤投与により、リン酸カルシウム結晶への相転移を阻害して、カルシプロテイン粒子が病原活性を獲得することを抑制すると推測される。また、カルシプロテイン粒子は、タンパク質成分として、フェチュインAの他に、活性型血液凝固X因子である血液凝固Xa因子を含む場合がある。このため、血液凝固Xa因子阻害薬投与により、病原活性を有するカルシプロテイン粒子に含まれる血液凝固Xa因子の酵素活性を阻害して、カルシプロテイン粒子の活性及び/又はToll様受容体への結合親和性を変化させると推測される。このような作用機序により、本態様の医薬の有効成分として使用される血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物は、カルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を抑制すると推測される。このため、本態様の医薬を対象、例えばヒト患者に投与することにより、カルシプロテイン粒子の病原活性を抑制したり、Toll様受容体とカルシプロテイン粒子との結合を阻害したりすることによって、腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を予防又は治療することができる。
本発明の各態様において、予防又は治療対象となる腎障害は、慢性腎臓病、尿細管障害、腎線維化、間質への炎症細胞浸潤及びネフロカルシノーシスからなる群より選択される1種以上の障害であることが好ましい。予防又は治療対象となる非感染性炎症は、生活習慣病、癌及び老化からなる群より選択される1種以上の疾患、症状又は障害に関連する非感染性慢性炎症であることが好ましい。予防又は治療対象となる血管疾患は、動脈硬化症、血管内皮障害、血管石灰化、粥状硬化、大動脈又は冠動脈における炎症反応、及び平滑筋の骨芽細胞様形質変換からなる群より選択される1種以上の障害であることが好ましい。本態様の医薬を、前記で例示した疾患、症状又は障害を有する対象、例えば該疾患、症状又は障害を有するヒト患者に投与することにより、カルシプロテイン粒子の形成に関連する該疾患、症状又は障害を予防又は治療することができる。
本発明の各態様において、腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を有する対象、例えば該疾患、症状又は障害を有するヒト患者における該疾患、症状又は障害の予防又は治療効果は、例えば、血中線維芽細胞増殖因子23(FGF23)、血中クレアチニン、血中尿素窒素、尿中L型脂肪酸結合タンパク質(L-FABP)、尿中N-アセチルグルコサミニダーゼ(NAG)、尿中ベータ2-ミクログロブリン又は尿中クレアチニン等の量を指標とすることにより、決定することができる。
本明細書において、「予防」は、腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を有する対象、例えば該疾患、症状又は障害を有するヒト患者において、疾患、症状又は障害の発生(発症又は発現)を実質的に防止することを意味する。また、本明細書において、「治療」は、腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を有する対象、例えば該疾患、症状又は障害を有するヒト患者において、発生(発症又は発現)した疾患、症状又は障害を抑制(例えば進行の抑制)、軽快、修復及び/又は治癒することを意味する。
本発明の各態様において、有効成分として使用される化合物は、該化合物自体だけでなく、その塩も包含する。有効成分として使用される化合物が塩の形態である場合、製薬上許容される塩であることが好ましい。有効成分として使用される化合物の塩の対イオンとしては、限定するものではないが、例えば、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、若しくは置換若しくは非置換のアンモニウムイオンのようなカチオン、又は塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、炭酸イオン、炭酸水素イオン、過塩素酸イオン、ギ酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、乳酸イオン、マレイン酸イオン、ヒドロキシマレイン酸イオン、メチルマレイン酸イオン、フマル酸イオン、アジピン酸イオン、安息香酸イオン、2-アセトキシ安息香酸イオン、p-アミノ安息香酸イオン、ニコチン酸イオン、ケイ皮酸イオン、アスコルビン酸イオン、パモ酸イオン、コハク酸イオン、サリチル酸イオン、ビスメチレンサリチル酸イオン、シュウ酸イオン、酒石酸イオン、リンゴ酸イオン、クエン酸イオン、グルコン酸イオン、アスパラギン酸イオン、ステアリン酸イオン、パルミチン酸イオン、イタコン酸イオン、グリコール酸イオン、グルタミン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、シクロヘキシルスルファミン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、イセチオン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、若しくはナフタレンスルホン酸イオンのようなアニオンが好ましい。有効成分として使用される化合物が前記の対イオンとの塩の形態である場合、その薬理活性を、該化合物自体と実質的に略同等のものとすることができる。
本発明の各態様において、有効成分として使用される化合物は、前記化合物自体だけでなく、該化合物又はその塩の溶媒和物も包含する。有効成分として使用される化合物、又はその塩が溶媒和物の形態である場合、製薬上許容される溶媒和物であることが好ましい。前記化合物又はその塩と溶媒和物を形成し得る溶媒としては、限定するものではないが、例えば、水、或いはメタノール、エタノール、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸、エタノールアミン、アセトニトリル又は酢酸エチルのような有機溶媒が好ましい。有効成分として使用される化合物又はその塩が前記の溶媒との溶媒和物の形態である場合、その薬理活性を、該化合物自体と実質的に略同等のものとすることができる。
また、本発明の各態様において、有効成分として使用される化合物は、該化合物の個々のエナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ体のような、該化合物の立体異性体の混合物も包含する。
本態様の医薬において、有効成分として使用される化合物を単独で使用してもよく、1種以上の製薬上許容される成分と組み合わせて使用してもよい。本態様の医薬は、所望の投与方法に応じて、当該技術分野で通常使用される様々な剤形に製剤されることができる。それ故、本態様の医薬はまた、ビスホスホネート製剤及び血液凝固Xa因子阻害薬からなる群より選択される1種以上の化合物と、1種以上の製薬上許容される担体とを含有する医薬組成物の形態で提供されることもできる。本実施形態の場合、医薬組成物は、前記成分に加えて、製薬上許容される1種以上の媒体(例えば、滅菌水のような溶媒又は生理食塩水のような溶液)、賦形剤、結合剤、ビヒクル、溶解補助剤、防腐剤、安定剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、膨化剤、潤滑剤、界面活性剤、乳化剤、油性液(例えば、植物油)、懸濁剤、緩衝剤、無痛化剤、酸化防止剤、甘味剤及び香味剤等の添加剤を含んでもよい。
本態様の医薬の剤形は、特に限定されず、非経口投与に使用するための製剤であってもよく、経粘膜(例えば、経鼻、舌下又は経口腔粘膜等)、経皮、経肛門(注腸)、又は経膣等の投与に使用するための製剤であってもよく、或いは経口投与に使用するための製剤であってもよい。また、本態様の医薬の剤形は、単位用量形態の製剤であってもよく、複数投与形態の製剤であってもよい。非経口投与に使用するための製剤としては、例えば、水若しくはそれ以外の製薬上許容される液体との無菌性溶液又は懸濁液等の注射剤を挙げることができる。注射剤に混和することができる添加剤としては、限定するものではないが、例えば、生理食塩水、ブドウ糖若しくはその他の補助薬(例えば、D-ソルビトール、D-マンニトール若しくは塩化ナトリウム)を含む等張液のようなビヒクル、アルコール(例えばエタノール若しくはベンジルアルコール)、エステル(例えば安息香酸ベンジル)、ポリアルコール(例えばプロピレングリコール若しくはポリエチレングリコール)のような溶解補助剤、ポリソルベート80又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油のような非イオン性界面活性剤、ゴマ油又は大豆油のような油性液、リン酸塩緩衝液又は酢酸ナトリウム緩衝液のような緩衝剤、塩化ベンザルコニウム又は塩酸プロカインのような無痛化剤、ヒト血清アルブミン又はポリエチレングリコールのような安定剤、保存剤、並びに酸化防止剤等を挙げることができる。調製された注射剤は、通常、適当な容器(例えば、バイアル又はアンプル)に充填され、使用時まで適切な環境下で保存される。
本態様の医薬は、医薬として有用な1種以上の他の薬剤と併用することもできる。この場合、本態様の医薬は、血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物と1種以上の他の薬剤とを含む単一の医薬の形態で提供されてもよく、血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物と1種以上の他の薬剤とが別々に製剤化された複数の製剤を含む医薬組合せ又はキットの形態で提供されてもよい。医薬組合せ又はキットの形態の場合、それぞれの製剤を同時又は別々に(例えば連続的に)投与することができる。
本態様の医薬において、有効成分として使用される化合物は、該化合物自体だけでなく、該化合物の製薬上許容される塩、及びそれらの製薬上許容される溶媒和物も包含する。有効成分として使用される化合物の製薬上許容される塩、及びそれらの製薬上許容される溶媒和物としては、限定するものではないが、例えば、前記で例示した塩又は溶媒和物が好ましい。有効成分として使用される化合物が前記の塩又は溶媒和物の形態である場合、該化合物を所望の医薬用途に適用することができる。
血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物を医薬用途に適用する場合、該化合物は、それ自体だけでなく、該化合物のプロドラッグ形態も包含する。本明細書において、「プロドラッグ」は、生体内で親薬物に変換される化合物を意味する。本態様の医薬において、有効成分として使用される化合物のプロドラッグ形態としては、限定するものではないが、例えば、該化合物のヒドロキシル基と任意のカルボン酸とのエステル、該ヒドロキシル基と任意のアミンとのアミド、及び該化合物のアミノ基と任意のカルボン酸とのアミド等を挙げることができる。有効成分として使用される化合物が前記のプロドラッグ形態である場合、親薬物の活性を実質的に低下させることなく、対象へのプロドラッグ形態の投与時の薬物動態を向上させることができる。
本態様の医薬は、腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害の予防又は治療を必要とする様々な対象に適用することができる。前記対象は、ヒト又は非ヒト哺乳動物(例えば、ブタ、イヌ、ウシ、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ヒツジ、ネコ、サル、マントヒヒ若しくはチンパンジー等の温血動物)の被験体又は患者であることが好ましく、ヒトの患者であることがより好ましい。前記対象に本態様の医薬を投与することにより、該対象における腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を予防又は治療することができる。
本態様の医薬を、対象、特にヒト患者に投与する場合、正確な用法及び用量は、対象の年齢、性別、予防又は治療されるべき症状、疾患及び/又は障害の正確な状態(例えば重症度)、並びに投与経路等の多くの要因を鑑みて、担当医が治療上有効な用法及び用量を最終的に決定すべきである。それ故、本態様の医薬において、有効成分である血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物は、治療上有効な用法及び用量(例えば、投与量及び投与経路)で、対象に投与される。例えば、本態様の医薬を対象、特にヒト患者に投与する場合、有効成分として使用される化合物の投与量は、通常は、0.01~1000 μg/kg体重/日の範囲であり、例えば、0.5~200 μg/kg体重/日の範囲である。
本態様の医薬は、任意の投与経路で投与されてよい。例えば、本態様の医薬は、静脈投与、注腸投与、皮下投与、筋肉内投与、経口投与又は腹腔内投与のような経路で投与されることができる。
本態様の医薬の有効成分として使用される血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物は、腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を有する対象、例えば該疾患、症状又は障害を有するヒト患者における該疾患、症状又は障害の予防又は治療に使用することができる。それ故、本発明の別の一態様は、血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物を有効成分として含有する、腎障害の予防又は治療剤に関する。本態様の予防又は治療剤は、前記で説明した本態様の医薬と同様の特徴を有する。また、本態様の予防又は治療剤は、前記で説明した本態様の医薬と同様の用法及び用量で使用することができる。本態様の予防又は治療剤は、腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を有する対象、例えば該疾患、症状又は障害を有するヒト患者における該疾患、症状又は障害を予防又は治療するために使用することができる。本態様の予防又は治療剤において、予防又は治療対象となる腎障害は、慢性腎臓病、尿細管障害、腎線維化、間質への炎症細胞浸潤及びネフロカルシノーシスからなる群より選択される1種以上の障害であることが好ましい。予防又は治療対象となる非感染性炎症は、生活習慣病、癌及び老化からなる群より選択される1種以上の疾患、症状又は障害に関連する非感染性慢性炎症であることが好ましい。予防又は治療対象となる血管疾患は、動脈硬化症、血管内皮障害、血管石灰化、粥状硬化、大動脈又は冠動脈における炎症反応、及び平滑筋の骨芽細胞様形質変換からなる群より選択される1種以上の障害であることが好ましい。腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を有する対象、例えば該疾患、症状又は障害を有するヒト患者に、血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物の有効量を投与することにより、前記で例示した疾患、症状又は障害を予防又は治療することができる。
本発明の別の一態様は、腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を有する対象、例えば該疾患、症状又は障害を有するヒト患者に、血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物の有効量を投与することを含む、前記疾患、症状又は障害の予防又は治療方法である。本態様の方法において投与される化合物は、前記で説明した本態様の医薬の有効成分として使用される化合物と同様の特徴を有する。また、本態様の方法は、前記で説明した本態様の医薬と同様の用法及び用量で実施することができる。本態様の方法において、予防又は治療対象となる腎障害は、慢性腎臓病、尿細管障害、腎線維化、間質への炎症細胞浸潤及びネフロカルシノーシスからなる群より選択される1種以上の障害であることが好ましい。予防又は治療対象となる非感染性炎症は、生活習慣病、癌及び老化からなる群より選択される1種以上の疾患、症状又は障害に関連する非感染性慢性炎症であることが好ましい。予防又は治療対象となる血管疾患は、動脈硬化症、血管内皮障害、血管石灰化、粥状硬化、大動脈又は冠動脈における炎症反応、及び平滑筋の骨芽細胞様形質変換からなる群より選択される1種以上の障害であることが好ましい。腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を有する対象、例えば該疾患、症状又は障害を有するヒト患者に、血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物の有効量を投与することにより、前記で例示した疾患、症状又は障害を予防又は治療することができる。
本発明の別の一態様は、腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を有する対象、例えば該疾患、症状又は障害を有するヒト患者における腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害の予防又は治療に使用するための、血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物である。本発明のさらに別の一態様は、腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を有する対象、例えば該疾患、症状又は障害を有するヒト患者における腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害の予防又は治療のための医薬の製造における、血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物の使用である。本発明のさらに別の一態様は、腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を有する対象、例えば該疾患、症状又は障害を有するヒト患者における腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害の予防又は治療のための、血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物の使用である。本態様の化合物は、前記で説明した本態様の医薬において有効成分として使用される化合物と同様の特徴を有する。また、本態様の化合物は、前記で説明した本態様の医薬と同様の用法及び用量で使用することができる。本態様の化合物又は使用において、予防又は治療対象となる腎障害は、慢性腎臓病、尿細管障害、腎線維化、間質への炎症細胞浸潤及びネフロカルシノーシスからなる群より選択される1種以上の障害であることが好ましい。予防又は治療対象となる非感染性炎症は、生活習慣病、癌及び老化からなる群より選択される1種以上の疾患、症状又は障害に関連する非感染性慢性炎症であることが好ましい。予防又は治療対象となる血管疾患は、動脈硬化症、血管内皮障害、血管石灰化、粥状硬化、大動脈又は冠動脈における炎症反応、及び平滑筋の骨芽細胞様形質変換からなる群より選択される1種以上の障害であることが好ましい。腎障害、非感染性炎症又は血管疾患のようなカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害を有する対象、例えば該疾患、症状又は障害を有するヒト患者に、ビスホスホネート製剤及び血液凝固Xa因子阻害薬からなる群より選択される1種以上の化合物の有効量を投与することにより、前記で例示した疾患、症状又は障害を予防又は治療することができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
<試験I:リン酸によって誘導される腎線維化におけるビスホスホネート製剤の効果>
マウス(4週齢のC57BL/6雄)を、2.0%無機リン酸を含む高リン酸食に8週間置き、1日おきにエチドロン酸(100 mg/kg、N=9)、アレンドロン酸(10 mg/kg、N=6)又はビヒクル(生理食塩水、N=7)を皮下注射した。所定のマーカーの相対的mRNAレベルを、定量的RT-PCRで決定した。各種マーカーの相対的mRNAレベルを図1に示す。図中のデータは、平均値±標準偏差を示す。*は、マン・ホイットニーのU検定で、ビヒクルに対してP<0.05であることを示す。αSMAは、α-平滑筋アクチンであり、Nlrp3は、ヌクレオチド結合オリゴマー形成ドメイン様受容体ファミリーピリンドメイン含有3であり、MCP1は、単球走化性タンパク質-1であり、TGFβ1は、トランスフォーミング成長因子-β1である。
図1に示すように、ビスホスホネート製剤であるエチドロン酸又はアレンドロン酸の投与により、腎線維化に関連するマーカーの発現レベルが顕著に低下した。前記結果から、ビスホスホネート製剤投与により、腎臓における炎症及び線維化を軽減し得ることが明らかとなった。
<試験II:リン酸によって誘導される腎線維化における血液凝固Xa因子阻害薬の効果>
マウス(12週齢のC57BL/6雄)を、0.35%無機リン酸を含む通常食又は2.0%無機リン酸を含む高リン酸食に4週間置き、リバーロキサバン(12 ppm)又はビヒクル(生理食塩水)を毎日混餌投与した。16週齢の時点で、それぞれのマウスから腎臓を採取した。腎臓における所定のマーカーの相対的mRNAレベルを、定量的RT-PCRで決定した。各種マーカーの相対的mRNAレベルを図2、3-1及び3-2に示す。図中、白抜きの棒は、通常食の結果を、黒塗りの棒は、高リン酸食の結果を、それぞれ示す。図中のデータは、平均値±標準偏差を示す。Opnは、オステオポンチンであり、Ngalは、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリンであり、Kim1は、腎臓傷害分子-1であり、Klothoは、抗老化ホルモンである。Il-6は、インターロイキン-6であり、Il-1bは、インターロイキン-1bであり、Mcp1は、単球走化性タンパク質-1であり、Tnfaは、腫瘍壊死因子αであり、Tgfbは、トランスフォーミング成長因子-βであり、C3は、補体第3成分である。Opn、Ngal及びKim1は、尿細管障害マーカーであり、Klothoは、尿細管障害で発現が減少することが知られている遺伝子である。Il-6、Il-1b、Mcp1、Tnfa、Tgfb及びC3は、炎症マーカーである。
図2、3-1及び3-2に示すように、血液凝固Xa因子阻害薬であるリバーロキサバンの投与により、尿細管障害及び炎症に関連するマーカーの発現レベルが顕著に低下した。前記結果から、血液凝固Xa因子阻害薬投与により、腎臓における炎症及び尿細管障害を軽減し得ることが明らかとなった。
<試験III:腎障害患者におけるカルシプロテイン粒子と血液凝固Xa因子との関係>
Xa因子阻害薬投与によるカルシプロテイン粒子の形成に関連する疾患、症状又は障害の予防又は治療効果の作用機序を明らかにするため、腎障害を発症して透析を受けている患者の血中カルシプロテイン粒子を分析した。リン酸カルシウム結晶と結合するビスホスホネート製剤であるアレンドロン酸をマグネティックビーズに結合させて、固相化アレンドロン酸ビーズを調製した。血漿又は血清試料に固相化アレンドロン酸ビーズを添加すると、カルシプロテイン粒子のリン酸カルシウム結晶がアレンドロン酸と結合して、カルシプロテイン粒子を特異的に分離することができる。磁石を用いてビーズを回収し、洗浄した後、ビーズをEDTA溶液に添加すると、カルシプロテイン粒子をビーズから溶出することができる。
健常者又は腎障害を発症して透析を受けている患者から採血して、血清を調製した。健常者又は透析患者の血清試料に固相化アレンドロン酸ビーズをそれぞれ添加して、カルシプロテイン粒子を分離した。EDTA溶液を用いてビーズからカルシプロテイン粒子を溶出した。溶出液をSDS-PAGEで分離して、ゲルを銀染色した。また、このゲルを、抗フェチュインA抗体(F-180、ウサギ由来)又は抗血液凝固X因子抗体(AMX-5050、マウス由来)を用いてウェスタンブロッティングした。健常者又は透析患者の血清試料から分離したカルシプロテイン粒子をSDS-PAGEで分析した結果を図4に示す。図中、Aは、銀染色したゲルの写真であり、Bは、ウェスタンブロッティングしたゲルの写真である。
図4Aに示すように、健常者及び透析患者のいずれからの血清試料からも、約50 kDa付近に濃いバンドが検出された。ウェスタンブロッティングの結果、このバンドは、フェチュインAであることが確認された。また、透析患者の血清試料からは、血液凝固X因子のバンドも検出された(図4B)。ゲルからバンドを切り出し、質量分析及びエドマン解析を行った結果、フェチュインA及び血液凝固X因子であることが同定された。
透析患者の血漿又は血清試料に、所定濃度のリン酸を添加して、カルシプロテイン粒子の形成を促進した。リン酸の添加濃度は、0(リン酸非添加)、3(試料中のリン濃度を3 mM増加させる量)又は10(試料中のリン濃度を10 mM増加させる量)とした。処理後の血漿又は血清試料から、前記と同様の手順でカルシプロテイン粒子を分離した。SDS-PAGEのゲルを、銀染色した。また、このゲルを、各種抗体を用いてウェスタンブロッティングした。透析患者の血漿又は血清試料をリン酸処理した後、該試料から分離したカルシプロテイン粒子をSDS-PAGEで分析した結果を図5に示す。図中、Aは、銀染色したゲルの写真であり、Bは、抗フェチュインA抗体(F-180、ウサギ由来)を用いてウェスタンブロッティングしたゲルの写真であり、Cは、抗血液凝固X因子抗体(AMX-5050、マウス由来)を用いてウェスタンブロッティングしたゲルの写真であり、Dは、抗血液凝固X因子抗体(H-120、ウサギ由来)を用いてウェスタンブロッティングしたゲルの写真であり、Eは、抗プロトロンビン抗体(ab184015、ウサギ由来)を用いてウェスタンブロッティングしたゲルの写真であり、Fは、抗血液凝固VII因子抗体(MAB2338、マウス由来)を用いてウェスタンブロッティングしたゲルの写真である。
図5Aに示すように、血漿及び血清試料のいずれのカルシプロテイン粒子もいくつかのタンパク質を含んでいた。ウェスタンブロッティングの結果、これらのタンパク質は、フェチュインA及び血液凝固X因子に加えて、血液凝固因子であるプロトロンビン及び血液凝固VII因子であることが明らかとなった。
透析患者の血中カルシプロテイン粒子に含まれる血液凝固X因子を特性解析するため、血液凝固X因子をGSTタグに連結した組換えタンパク質を調製した。血液凝固X因子は、セリンプロテアーゼで切断されることにより、酵素活性を有する活性型血液凝固Xa因子となる。前記と同様の手順で、健常者又は透析患者の血清試料に、組換えタンパク質を添加した。処理後の血清試料から、前記と同様の手順でカルシプロテイン粒子を分離した。SDS-PAGEのゲルを、銀染色した。また、このゲルを、抗GST抗体を用いてウェスタンブロッティングした。健常者又は透析患者の血清試料を組換えタンパク質処理した後、該試料から分離したカルシプロテイン粒子をSDS-PAGEで分析し、抗GST抗体を用いてウェスタンブロッティングした結果を図6に示す。
図6に示すように、健常者の血清試料では、全長タンパク質のみが検出されたのに対し、透析患者の血清試料では、切断タンパク質も検出された。前記結果から、透析患者のカルシプロテイン粒子は、酵素活性を有する活性型の血液凝固Xa因子を含むことが明らかとなった。
<試験IV:リン酸によって誘導される血管疾患における血液凝固Xa因子阻害薬の効果>
klothoノックアウトマウス(5週齢/雌)を、2.0%無機リン酸を含む高リン酸食に13週間置き、リバーロキサバン(50 mg/kg、N=3)又はビヒクル(生理食塩水、N=3)を毎日混餌投与した。18週齢の時点で、それぞれのマウスから大動脈を採取した。大動脈における所定のマーカーの相対的mRNAレベルを、定量的RT-PCRで決定した。その結果、血液凝固Xa因子阻害薬であるリバーロキサバンの添加により、血管石灰化マーカー及び炎症マーカーの発現レベルが低下した。前記結果から、血液凝固Xa因子阻害薬投与により、血管疾患を軽減し得ることが明らかとなった。
なお、本発明は、前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除及び/又は置換をすることが可能である。

Claims (5)

  1. 血液凝固Xa因子阻害薬及びビスホスホネート製剤からなる群より選択される1種以上の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物を有効成分として含有する、腎障害、非感染性炎症又は血管疾患を予防又は治療するための医薬。
  2. 腎障害が、慢性腎臓病、尿細管障害、腎線維化、間質への炎症細胞浸潤及びネフロカルシノーシスからなる群より選択される1種以上の障害である、請求項1に記載の医薬。
  3. 非感染性炎症が、生活習慣病、癌及び老化からなる群より選択される1種以上の疾患、症状又は障害に関連する非感染性慢性炎症である、請求項1に記載の医薬。
  4. 血管疾患が、動脈硬化症、血管内皮障害、血管石灰化、粥状硬化、大動脈又は冠動脈における炎症反応、及び平滑筋の骨芽細胞様形質変換からなる群より選択される1種以上の障害である、請求項1に記載の医薬。
  5. 1種以上の化合物若しくはその製薬上許容される塩、又はそれらの製薬上許容される溶媒和物が、Toll様受容体とカルシプロテイン粒子との結合を阻害することによって腎障害、非感染性炎症及び血管疾患を予防又は治療する、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬。
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