JP2022119352A - リチウムイオン二次電池用負極バインダー - Google Patents

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Abstract

【課題】イオン伝導度及び輸率が高く、サイクル耐久性に優れ、放電容量が高いLiイオン二次電池を与える負極バインダー、負極、Liイオン二次電池、バインダーに用いるLiボレート型カフェ酸ポリマーを提供する。【解決手段】式(I)の繰り返し単位を有するLiボレート型カフェ酸ポリマーを含有するLiイオン二次電池用負極バインダー。TIFF2022119352000012.tif48166〔式中、R1及びR2は、H、水酸基又はC数1~4のアルキル基、R3はH又は-OR4基(R4はH又はハロゲン原子を有していてもよいC数1~6のアルキル基又はハロゲン原子を有していてもよいC数6~12のアリール基)で表わされる基〕【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極バインダーに関する。さらに詳しくは、本発明は、リチウムイオン二次電池用負極バインダー、前記負極バインダーを含む負極、前記負極バインダーを含む負極を有するリチウムイオン二次電池、ならびに前記リチウムイオン二次電池用負極バインダーに好適に用いることができるリチウムボレート型カフェ酸ポリマーおよびその製造方法に関する。
リチウムイオン二次電池用負極バインダーには、スチレン単量体およびエチレン性不飽和カルボン酸単量体を含む負極用単量体組成物を重合させてなるポリマーからなるバインダー(例えば、特許文献1の段落[0016]参照)、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリル酸系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂などの熱硬化性樹脂からなるバインダー(例えば、特許文献2の段落[0029]参照)などが提案されている。
近年においては、イオン伝導度およびリチウムイオン輸率が高く、充放電サイクルにおけるサイクル耐久性に優れ、放電容量が高いリチウムイオン二次電池を与える負極バインダーの開発が求められている。
国際公開第2011/122297号パンフレット 特開2012-124057号公報
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、イオン伝導度およびリチウムイオン輸率が高く、充放電サイクルにおけるサイクル耐久性に優れ、放電容量が高いリチウムイオン二次電池を与える負極バインダー、前記負極バインダーを含む負極、前記負極バインダーを含む負極を有するリチウムイオン二次電池、ならびに前記負極バインダーに好適に用いることができるリチウムボレート型カフェ酸ポリマーおよびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、
(1) 式(I):
Figure 2022119352000001
〔式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~4のアルキル基、R3は水素原子または式:-OR4基(式中、R4は水素原子またはハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基またはハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~12のアリール基を示す)で表わされる基を示す〕
で表わされる繰り返し単位を有するリチウムボレート型カフェ酸ポリマーを含有してなるリチウムイオン二次電池用負極バインダー、
(2) 前記(1)に記載のリチウムイオン二次電池用負極バインダーを含有してなるリチウムイオン二次電池用負極、
(3) 正極と負極と正極および負極の間に配置されたセパレータとを有するリチウムイオン二次電池であって、前記負極が前記(2)に記載のリチウムイオン二次電池用負極であるリチウムイオン二次電池、
(4) 式(I):
Figure 2022119352000002
〔式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~4のアルキル基、R3は水素原子または式:-OR4基(式中、R4は水素原子またはハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基またはハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~12のアリール基を示す)で表わされる基を示す〕
で表わされる繰り返し単位を有するリチウムボレート型カフェ酸ポリマー、および
(5) 式(II):
Figure 2022119352000003
(式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~4のアルキル基を示す)
で表わされるカフェ酸化合物と水素化ホウ素リチウムとを式:R4OH(式中、R4は水素原子またはハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基またはハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~12のアリール基を示す)で表わされるアルコールの存在下または非存在下で反応させることを特徴とする式(I):
Figure 2022119352000004
〔式中、R1およびR2は前記と同じであり、R3は水素原子または式:-OR4基(式中、R4は前記と同じ)で表わされる基を示す〕
で表わされる繰り返し単位を有するリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの製造方法
に関する。
本発明によれば、イオン伝導度およびリチウムイオン輸率が高く、充放電サイクルにおけるサイクル耐久性に優れ、放電容量が高いリチウムイオン二次電池を与える負極バインダー、前記負極バインダーを含む負極、前記負極バインダーを含む負極を有するリチウムイオン二次電池、ならびに前記負極バインダーに好適に用いることができるリチウムボレート型カフェ酸ポリマーおよびその製造方法が提供される。
実施例1で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーのNMRスペクトルを示すグラフである。 (a)は実施例1で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの1000/Tとlogσとの関係を示すグラフ、(B)は実施例1で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーのVogel-Fulcher-Tammannプロットを示すグラフである。 実施例1で得られたコイン電池の線形掃引ボルタンメトリーの測定結果を示すグラフである。 実施例1で得られたコイン電池を用いてリチウムボレート型カフェ酸ポリマーのリチウムイオン輸率を求める際の電流の経時変化を示すグラフである。 (a)は実施例1で得られたコイン電池のサイクリックボルタンメトリーの測定結果、(b)は実施例1で得られたコイン電池の放電容量および充放電効率(クーロン効率)の測定結果を示すグラフである。 実施例1で得られたコイン電池を用いてサイクリックボルタンメトリーを測定する際の走査速度とピーク電流との関係を示すグラフである。 実施例1で得られたコイン電池のサイクリックボルタンメトリーの測定前後におけるEISスペクトルを示すグラフである。 (a)は実施例1で得られたコイン電池のサイクリックボルタンメトリーの測定前におけるEISスペクトルを示すグラフ、(b)は実施例1で得られたコイン電池のサイクリックボルタンメトリーの測定後におけるEISスペクトルを示すグラフである。 実施例1で得られたコイン電池の充放電を繰り返したときの放電容量および充放電効率(クーロン効率)の測定結果を示すグラフである。
本発明を以下に記載の実施態様に基づいて詳細に説明するが、本発明は、当該実施態様のみに限定されるものではなく、本明細書に記載されている技術的思想の範囲内で当業者が種々の変更および修正をすることができる。
〔リチウムボレート型カフェ酸ポリマー〕
本発明のリチウムボレート型カフェ酸ポリマーは、前記したように、式(I):
Figure 2022119352000005
〔式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~4のアルキル基、R3は水素原子または式:-OR4基(式中、R4は水素原子またはハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基またはハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~12のアリール基を示す)で表わされる基を示す〕
で表わされる繰り返し単位を有する。
本発明のリチウムボレート型カフェ酸ポリマーは、リチウムイオン二次電池用負極バインダーに有用な化合物である。本発明のリチウムボレート型カフェ酸ポリマーをリチウムイオン二次電池用負極バインダーに用いることにより、イオン伝導度、リチウムイオン輸率およびリチウムイオン二次電池の放電容量を高めることができ、リチウムイオン二次電池の充放電に対する耐久性を向上させることができる。
式(I)において、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~4のアルキル基である。R1およびR2は、イオン伝導度およびリチウムイオン輸率を高め、充放電に対する耐久性に優れ、放電容量が高いリチウムイオン二次電池を得る観点から、それぞれ水素原子または炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
式(I)において、R3は、水素原子または式:-OR4基(式中、R4は水素原子またはハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基またはハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~12のアリール基を示す)で表わされる基である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。ハロゲン原子のなかでは、フッ素原子および塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基およびヘキシル基が挙げられる。ハロゲン原子を有する炭素数1~6のアルキル基の耐氷冷としては、ビス(トリフルオロメチル)メチル基などが挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ハロゲン原子を有する炭素数6~12のアリール基としては、例えば、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、ペンタフルオロフェニル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。R3のなかでは、水素原子または式:-OR4基(式中、R4はフッ素原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基またはフッ素原子を有していてもよい炭素数6~12のアリール基を示す)で表わされる基が好ましく、水素原子がより好ましい。
式(I)で表わされる繰り返し単位を有するリチウムボレート型カフェ酸ポリマーは、例えば、式(II):
Figure 2022119352000006
(式中、R1およびR2は、前記と同じ)
で表わされるカフェ酸化合物と水素化ホウ素リチウムとを式:R4OH(R4は前記と同じ)で表わされるアルコールの存在下または非存在下で反応させることによって調製することができる。水素化ホウ素リチウムは、式:LiBH4で表わされる化合物である。式(II)で表わされるカフェ酸化合物と水素化ホウ素リチウムとを反応させる際に、式:R4OHで表わされるアルコールを存在させた場合には、生成するリチウムボレート型カフェ酸ポリマーに式:-OR4基(R4は前記と同じ)で表わされる基を導入することができる。
式(II)において、R1およびR2が水素原子である化合物はカフェ酸であり、当該カフェ酸は、バイオベースの化合物として入手することができることから、自然環境に優しいという利点がある。
カフェ酸化合物と水素化ホウ素リチウムとの反応は、例えば、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの方法によって行なうことができるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの方法のなかでは、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーを効率よく調製する観点から、溶液重合法および塊状重合法が好ましく、溶液重合法がより好ましい。
カフェ酸化合物1モルあたりの水素化ホウ素リチウムの量は、理論的には1モルである。したがって、水素化ホウ素リチウム1モルに対するカフェ酸化合物の量についても理論的には1モルである。しかし、本発明のリチウムボレート型カフェ酸ポリマーを調製する際には、水素化ホウ素リチウムの量がカフェ酸化合物の量に対して過剰であってもよく、カフェ酸化合物の量が水素化ホウ素リチウムの量に対して過剰であってもよい。
水素化ホウ素リチウムとカフェ酸化合物との溶液重合によってリチウムボレート型カフェ酸ポリマーを調製する場合、有機溶媒を用いることができる。
前記有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジオキサン、ジエチルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記有機溶媒の量は、水素化ホウ素リチウムとカフェ酸化合物とを効率よく反応させることができる量であればよく、特に限定されない。前記有機溶媒の量は、通常、水素化ホウ素リチウムとカフェ酸化合物との合計量の(質量)の10~50倍程度の量であることが好ましい。
水素化ホウ素リチウムとカフェ酸化合物との反応は、例えば、カフェ酸化合物を前記有機溶媒に溶解させ、得られたカフェ酸化合物の溶液に水素化ホウ素リチウムを添加することよって行なうことができる。この場合、水素化ホウ素リチウムを前記有機溶媒に溶解させた溶液をカフェ酸化合物の溶液に添加することが好ましく、水素化ホウ素リチウムを前記有機溶媒に溶解させた溶液をカフェ酸化合物の溶液に滴下によって添加することがより好ましい。水素化ホウ素リチウムを前記有機溶媒に溶解させた溶液の液温は、通常、0~15℃程度である。
水素化ホウ素リチウムとカフェ酸化合物とを反応させているとき、反応系内を均一に保持する観点から、水素化ホウ素リチウムとカフェ酸化合物との混合物を攪拌することが好ましい。水素化ホウ素リチウムとカフェ酸化合物とを反応させる際の雰囲気は、特に限定されず、大気であってよいが、空気中に含まれている酸素による影響を回避する観点から、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
水素化ホウ素リチウムとカフェ酸化合物との反応温度は、特に限定されないが、反応効率を高める観点から0~60℃程度であることが好ましい。また、水素化ホウ素リチウムとカフェ酸化合物との反応時間は、使用される有機溶媒の量、反応温度などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、5~50時間程度である。
以上のようにして水素化ホウ素リチウムとカフェ酸化合物とを反応させることにより、式(I)で表わされる繰り返し単位を有するリチウムボレート型カフェ酸ポリマーを含む反応混合物が得られる。
反応終了後、得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーは、濾過することによって回収することができる。回収されたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーは、必要により、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ジクロロメタンなどの有機溶媒で洗浄してもよい。また、前記で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーは、例えば、減圧乾燥などにより、乾燥させてもよい。
本発明のリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの平均分子量は、特に限定されないが、リチウムイオン二次電池用負極バインダーとして使用したときにイオン伝導度およびリチウムイオン輸率を高め、充放電に対する耐久性を向上させ、リチウムイオン二次電池の放電容量を高める観点から、800~100000であることが好ましく、1000~50000であることがより好ましく、1000~10000であることがさらに好ましい。
本発明において、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの平均分子量は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF-MS)によって測定された平均分子量を意味する。リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの平均分子量は、具体的には以下の実施例に記載の方法に基づいて測定したときの値である。
なお、本発明のリチウムボレート型カフェ酸ポリマーには、本発明の目的が阻害されない範囲内で、式(I)で表わされる繰り返し単位以外の単位が含まれていてもよい。
〔リチウムイオン二次電池用負極バインダー〕
本発明のリチウムイオン二次電池用負極バインダーは、前記リチウムボレート型カフェ酸ポリマーを含有する。本発明のリチウムイオン二次電池用負極バインダーは、前記リチウムボレート型カフェ酸ポリマーのみで構成されていてもよく、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴムなどの他のバインダーが含まれていてもよい。また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極バインダーには、本発明の目的を阻害しない範囲内で溶媒などの他の成分が含まれていてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極バインダーは、前記リチウムボレート型カフェ酸ポリマーを含有していることから、本発明のリチウムイオン二次電池用負極バインダーをリチウムイオン二次電池の負極に用いることにより、イオン伝導度およびリチウムイオン輸率を高め、充放電に対する耐久性を向上させ、リチウムイオン二次電池の放電容量を高めることができる。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用負極バインダーは、極性溶媒に溶解させて用いることができる。極性溶媒としては、例えば、水、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。本発明のリチウムイオン二次電池用負極バインダーは、水に溶解することから、極性溶媒として水を用いることにより、大気中への揮発性有機化合物の放出などによる環境問題を回避することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極バインダーは、従来の負極バインダーと同様に、負極活物質同士を結合するためのバインダー、負極活物質と負極集電体とを結合させるためのバインダーなどとして用いることができる。
〔リチウムイオン二次電池〕
本発明のリチウムイオン二次電池は、一般に用いられているリチウムイオン二次電池と同様の構造を有する。
本発明のリチウムイオン二次電池は、通常、正極、負極、セパレータおよび電解質を有する。リチウムイオン二次電池の形状としては、例えば、円筒型、積層型などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
本発明のリチウムイオン二次電池が、例えば、CR2025型のコイン電池である場合、負極、セパレータおよび電解質は、ケース内に収容されている。以下においては、リチウムイオン二次電池がCR2025型のコイン電池である場合の実施態様について説明するが、本発明は、かかる実施態様のみに限定されるものではない。
CR2025型のコイン電池に使用されるケースは、その内部が中空であり、開口部を有し、正極容器を兼ねている。ケースの開口部には、蓋部が設けられており、蓋部は、負極蓋を兼ねている。ケースと蓋部との間には、ケースと蓋部との絶縁状態および密封状態を維持するために、ガスケットが設けられている。ケースと蓋部との間の空間には、電極および電解質が収容されている。
(1)電極
電極は、正極、セパレータおよび負極を有し、この順序で配列されている。正極は、ケースの内面に接触し、負極は、蓋部の内面と接触している。
[正極]
正極は、一般に用いられているリチウムイオン二次電池に用いられている正極と同様であればよく、本発明は、当該正極の組成および構造によって限定されるものではない。
正極は、例えば、正極活物質、導電材および正極バインダーを所定の比率で混合し、得られた混合物に溶媒、必要により活性炭、粘度調整用添加剤などを適量で添加し、得られた混合物を混練し、正極合材ペーストを調製した後、集電体の表面に塗布し、必要によりプレス成形し、乾燥させることにより、作製することができる。
正極活物質の代表例としては、リチウムマンガン系複合酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。導電材としては、例えば、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
正極バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、錫、インジウム、マグネシウム、鉄、クロム、モリブデンおよびそれらの合金などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
正極10は、例えば、正極活物質、導電助剤、バインダーおよび溶媒を混合し、ペースト状の正極スラリーを作製し、当該正極スラリーを正極集電体の片面または両面に塗布し、乾燥させることによって作製することができる。
[セパレータ]
セパレータは、正極と負極との間に用いられる。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するとともに、正極と負極と間のリチウムイオンの移動経路を形成する。セパレータには、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、セルロース、ガラスなどの箔膜を用いることができる。当該薄膜には、多数の微細孔が形成されていることが好ましい。
[負極]
負極には、本発明の負極バインダーが用いられる。負極は、例えば、負極活物質と本発明の負極バインダーとを混合し、得られた混合物に溶媒を添加することにより、ペースト状の負極合材を調製し、当該負極合材を銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥させ、必要により熱ロールプレス成形し、乾燥させることにより、作製することができる。
本発明の負極バインダーの量は、負極活物質の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、イオン伝導度、リチウムイオン輸率およびリチウムイオン二次電池の放電容量を高め、リチウムイオン二次電池の充放電に対する耐久性を向上させる観点から、負極合材における含有率が好ましくは1~20質量%、より好ましくは2~15質量%、さらに好ましくは3~10質量%となるように調整することが望ましい。
負極活物質としては、例えば、黒鉛、炭素繊維、活性炭などの炭素質材料、錫酸化物、シリコン、シリコン酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの負極活物質は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。負極活物質のなかでは、リチウムイオン二次電池の容量を高める観点から、シリコンが好ましい。シリコンは、アモルファスシリコンであってもよく、シリコン結晶子であってもよい。シリコンとしてシリコンナノ粒子を用いることができる。シリコンナノ粒子は、商業的に容易に入手することができる。
前記溶媒は、極性溶媒であることが好ましい。極性溶媒としては、前記した極性溶媒が挙げられる。極性溶媒のなかでは、水が好ましい。極性溶媒として水を用いた場合には、前記したように、大気中への揮発性有機化合物の放出などによる環境問題を回避することができるとともに、負極を安価で製造することができるので、経済性を向上させることができるという利点がある。
負極合材には、必要により、導電助剤が含まれていてもよい。導電助剤としては、例えば、アチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維、フッ化カーボン、銅、ニッケルなどの金属粉末、ポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。負極合材における導電助剤の含有率は、通常、10質量%以下であることが好ましい。
また、負極合材には、必要により、包接化合物が適量で含まれていてもよい。包接化合物は、電池内で発生したガスを吸収する性質を有する。包接化合物としては、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、12-クラウン-4、15-クラウン-5、18-クラウン-6などのクラウンエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。負極合材における包接化合物の含有率は、通常、3~10質量%程度であることが好ましい。
集電体としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、錫、インジウム、マグネシウム、鉄、クロム、モリブデンおよびそれらの合金などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
負極は、例えば、負極活物質、導電助剤、負極バインダーおよび溶媒を混合し、ペースト状の負極スラリーを作製し、当該負極スラリーを集電体の片面または両面に塗布し、乾燥させることによって作製することができる。
(2)電解質
電解質としては、例えば、エチレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート:ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの電解質は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極に本発明の負極バインダーが用いられているので、イオン伝導度、リチウムイオン輸率およびリチウムイオン二次電池の放電容量を高めることができ、リチウムイオン二次電池の充放電に対する耐久性を向上させることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池が、例えば、コイン型電池である場合、51℃におけるイオン伝導度が10-3S/cm以上であり、リチウムイオン輸率が0.8以上であり、1000回の充放電サイクルにおいて高いサイクル耐久性を有し、初期放電容量が2000mAh/g以上(Si重量換算)であり、充放電を100サイクル行なった後の充放電効率が約100%で維持されているので、本発明のリチウムイオン二次電池は、放電容量の維持性および充放電に対する耐久性に顕著に優れている。
次に、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
100mL容の三つ首の丸底フラスコ内に室温下でカフェ酸3mmol(540mg)およびテトラヒドロフラン30mLを入れ、カフェ酸をテトラヒドロフランに溶解させて淡褐色の溶液を得た。当該フラスコ内に窒素ガスを連続的に導入しながら、0℃の2M水素化ホウ素リチウム(LiBH4)水溶液2.5mLを滴下漏斗でフラスコ内に滴下したところ、当該フラスコ内の溶液の色が蛍光黄色に変化し、懸濁液が生成した。
前記で得られた懸濁液を室温下で12時間放置することにより、カフェ酸と水素化ホウ素リチウムとを反応させた後、生成したリチウムボレート型カフェ酸ポリマーを含有する懸濁液を濾過することによって溶媒を除去し、固形分を回収した。未反応化合物を除去するために当該固形分をテトラヒドロフラン50mLで洗浄し、引き続いて酢酸エチル30mLおよびジクロロメタン30mLで洗浄したところ、粘稠物が得られた。当該粘稠物を脱水されたジエチルエーテルで再沈殿させることにより、黄色の粉末を得た。前記で得られた粉末を減圧乾燥させることにより、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーを回収した(収率:約60質量%)。
前記で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの平均分子量を以下に記載の方法に基づいて測定した。その結果、前記で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの平均分子量は、2800であった。
〔リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの平均分子量の測定方法〕
リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの平均分子量は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF-MS)によって測定されたときの平均分子量である。より具体的には、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの平均分子量は、以下の方法に基づいて測定したときの値である。
2,5-ジヒドロキシ安息香酸をその濃度が10mg/mLとなるようにN,N-ジメチルホルムアミドに溶解させ、得られた溶液1μLとリチウムボレート型カフェ酸ポリマー3μLとを混合することにより、混合溶液を得た。前記で得られた混合溶液をプレート上に滴下し、当該プレートをサンプルホルダに入れ、マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型質量分析装置〔ブルカー社製、MALDI-TOF-MS、商品名:UltrafleXtreme(登録商標)、レーザー:波長337nmkN2スマートビームレーザー、パルスエネルギー:150μJ〕を用い、正反射モードで測定した。
実施例2
100mL容の三つ首の丸底フラスコ内に室温下でカフェ酸2mmol(360mg)およびテトラヒドロフラン30mLを入れ、カフェ酸をテトラヒドロフランに溶解させて淡褐色の溶液を得た。当該フラスコ内に窒素ガスを連続的に導入しながら、0℃の2M水素化ホウ素リチウム(LiBH4)水溶液2.0mLを滴下漏斗でフラスコ内に滴下したところ、当該フラスコ内の溶液の色が蛍光黄色に変化し、懸濁液が生成した。
前記で得られた懸濁液を室温下で12時間放置することにより、カフェ酸と水素化ホウ素リチウムとを反応させた後、生成したリチウムボレート型カフェ酸ポリマーを含有する懸濁液を濾過することによって溶媒を除去し、固形分を回収した。未反応化合物を除去するために当該固形分をテトラヒドロフラン50mLで洗浄し、引き続いて酢酸エチル30mLおよびジクロロメタン30mLで洗浄したところ、粘稠物が得られた。当該粘稠物を脱水されたジエチルエーテルで再沈殿させることにより、黄色の粉末を得た。前記で得られた粉末を減圧乾燥させることにより、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーを回収した(収率:約60質量%)。
前記で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの平均分子量を以下に記載の方法に基づいて測定した。その結果、前記で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの平均分子量は、3500であった。
実施例3
100mL容の三つ首の丸底フラスコ内に室温下でカフェ酸2mmol(360mg)およびテトラヒドロフラン30mLを入れ、カフェ酸をテトラヒドロフランに溶解させて淡褐色の溶液を得た。当該フラスコ内に窒素ガスを連続的に導入しながら、0℃の2M水素化ホウ素リチウム(LiBH4)水溶液3.0mLを滴下漏斗でフラスコ内に滴下したところ、当該フラスコ内の溶液の色が蛍光黄色に変化し、懸濁液が生成した。
前記で得られた懸濁液を室温下で12時間放置することにより、カフェ酸と水素化ホウ素リチウムとを反応させた後、生成したリチウムボレート型カフェ酸ポリマーを含有する懸濁液を濾過することによって溶媒を除去し、固形分を回収した。未反応化合物を除去するために当該固形分をテトラヒドロフラン50mLで洗浄し、引き続いて酢酸エチル30mLおよびジクロロメタン30mLで洗浄したところ、粘稠物が得られた。当該粘稠物を脱水されたジエチルエーテルで再沈殿させることにより、黄色の粉末を得た。前記で得られた粉末を減圧乾燥させることにより、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーを回収した(収率:約60質量%)。
前記で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの平均分子量を以下に記載の方法に基づいて測定した。その結果、前記で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの平均分子量は、5500であった。
次に、前記で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの物性として以下の物性を測定した。
(1)核磁気共鳴(NMR)
溶媒としてジメチルホルムアミド-d7を用い、BBFOプローブおよびATMAプローブを備えた核磁気共鳴測定装置(ブルカー社製、商品名:アドバンスII 400MHzスペクトロメーター)を用いて実施例1で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの1H-NMR、11B-NMRおよび13C-NMRを測定した。その結果を図1に示す。図1は、実施例1で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーのNMRスペクトルを示すグラフである。
図1において、(a)は、前記リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの1H-NMRスペクトルを示すグラフ、(b)は、前記リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの11B-NMRスペクトルを示すグラフ、(c)は、13C-NMRスペクトルを示すグラフである。なお、11B-NMRを測定する際には石英管を用いた。図1に示される各ピークの帰属は、以下のとおりである。
1H-NMR(400MHz、DMF-d7)(d/ppm):7.25(d, H-b), 6.8(s, H-c), 6.7(d, H-d), 6.5(d, H-e), 6.15(d, H-a)
13C-NMR(d/ppm):176(C-f), 152.5(C-h), 151(C-i), 142.5(C-b), 141(C-g), 126(C-d), 121.5(C-e), 119(C-a), 116(C-c)
(2)電気化学的特性
〔イオン伝導度〕
1-アリル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(AMImTFSI)150mgと実施例1で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマー50mgとを混合し、得られた混合物を攪拌下で超音波を12時間照射することにより、均一な組成となるように分散させて混合物を得た。
前記で得られた混合物をアルゴンガスの雰囲気中で2枚の金製の電極板の間に厚さが2~3cmとなるように挟み、電極板をフッ素樹脂製のフィルムで包んで密封した。電極板を温度調整器と接続し、インピーダンス/ゲイン-位相アナライザ〔ソーラトン・アナリティカル(Solartron Analytical)社製〕を用いて周波数0.1Hz~1MHzの範囲でインピーダンスを測定した。なお、イオン伝導度は、ACインピーダンス法を用いて30~60℃の温度範囲で3℃刻みにて式:R=ρL/A〔式中、Rは抵抗、ρは前記混合物の固有抵抗、Lは前記混合物の厚さ、Aは電極板の面積(0.25cm2)を示す〕に基づいて測定した。また、回路R(QR)(QR(W))を用いて抵抗値を求めた。その結果を表1に示す。
Figure 2022119352000007
表1に示された結果から、前記リチウムボレート型カフェ酸ポリマーは、イオン伝導度が324K(51℃)で1.053×10-3Scm-1であることから、イオン伝導性に優れていることがわかる。
次に、1000/Tとlogσとのアレニウスプロットから活性化エネルギーを求めた。その結果を図2(a)に示す。また、イオン電導度の測定後のVogel-Fulcher-Tammannプロットから活性化エネルギーを求めた。その結果を図2(b)に示す。
なお、図2(a)は、前記リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの1000/Tとlogσとの関係を示すグラフ、図2(B)は、前記リチウムボレート型カフェ酸ポリマーのVogel-Fulcher-Tammannプロットを示すグラフである。
図2に示された結果から、前記リチウムボレート型カフェ酸ポリマーには、温度と活性化エネルギーとの間に相関関係があることがわかる。
〔線形掃引ボルタンメトリー(LSV)〕
1-アリル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(AMImTFSI)150mgと実施例1で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマー50mgとを混合し、得られた混合物を攪拌下で超音波を12時間照射し、均一な組成となるように分散させることにより、混合物を得た。得られた混合物を電解質として用いた。
窒素ガス雰囲気中で直径が20mmである基板、直径が13mmであり、厚さが1mmである円形リチウム板、電解質、直径が13mmである円形鋼板、スプリングおよび蓋を用いてCR2025型のコイン電池を作製した。
線形掃引ボルタンメトリーは、電気化学測定システム(バイオロジック社製、品番:VSP1190)を用い、走査速度10mV/sで測定した。酸化安定性は開回路(OCP)から6Vまでの電位で調べ、還元安定性は開回路(OCP)から0Vまでの電位で調べた。
線形掃引ボルタンメトリーの測定結果を図3に示す。図3は、前記で得られたコイン電池の線形掃引ボルタンメトリーの測定結果を示すグラフである。図3に示された結果から、前記で得られたコイン電池の安定している電位は、2.5Vであることがわかる。
〔リチウムイオン輸率〕
1-アリル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(AMImTFSI)150mgと実施例1で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマー50mgとを混合し、得られた混合物を攪拌下で超音波を12時間照射し、均一な組成となるように分散させることにより、混合物を得た。前記で得られた混合物を電解質として用いた。
窒素ガス雰囲気中にて、直径が20mmである基板、直径が13mmであり、厚さが1mmである円形リチウム板、前記電解質、直径が13mmであり、厚さが1mmである円形リチウム板、直径が13mmである円形鋼板、スプリングおよび蓋を用いてCR2025型のコイン電池を作製した。
周波数応答アナライザー(バイオロジック社製)を備えたポテンシオスタット(バイオロジック社製、品番:VSP)で走査速度10mV/sにて周波数100kHz~10mHz、直流電圧0.03V(対Li/Li+)にて電流の経時変化を測定した。その結果を図4に示す。図4は、前記で得られたコイン電池を用いてリチウムボレート型カフェ酸ポリマーのリチウムイオン輸率を求める際の電流の経時変化を示すグラフである。
次に、式:
Li+=[Is(ΔV-I00)]/[I0(ΔV-I)]
〔式中、I0は初期電流(7.164×10-2A)、R0は初期抵抗(397Ω)、Iは定常状態の電流(4.709×10-2A)、Rは定常状態の抵抗(408Ω)を示す〕
で表わされるエヴァンス-ヴィンセント・ブルース式(Evans-Vincent Bruce equation)に基づき、前記で得られたコイン電池を用いて前記リチウムボレート型カフェ酸ポリマーのリチウムイオン輸率(tLi+)を求めた。その結果、前記リチウムボレート型カフェ酸ポリマーのリチウムイオン輸率(tLi+)は、0.87であった。このことから、前記で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーは、ホウ素によるリチウムイオンの移動により、そのリチウムイオン輸率が高いことから、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度および充電速度を高めることができることがわかる。
〔グラファイト系負極の電気化学的特性(1)〕
グラファイト160mg、アセチレンブラック20mg、実施例1で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマー20mgおよびN-メチル-2-ピロリドン3~4mLを均一な組成となるように混合することにより、混合物を得た。
粉砕機〔フリテッシュ・ゲー・エム・ベー・ハー(FRITISCH GmbH)社製、商品名:Planetary Micro Mill PULVERISETTE 7〕および直径が約5mmであるジルコニアビーズを用いて前記で得られた混合物を粉砕することにより、スラリー状の電極材料を得た。前記で得られた電極材料を厚さが100μmとなるようにドクターブレードでの銅箔(厚さ:20μm)に塗布し、80℃で約12時間減圧乾燥させることにより、電極を得た。
前記で得られた電極をホットロールプレス機(ホーセン社製)で80℃の温度で70μmの厚さにホットロールプレスした。この電極から直径が13mmである円形の負極板を作製した。
窒素ガス雰囲気中にて、直径が20mmである基板、直径が13mmであり、厚さが1mmである円形リチウム板、厚さが25μmであるポリプロピレン製のセパレータ、非水電解質(エチレンカーボネート50体積%とジエチレンカーボネート50体積%とからなる溶媒に溶解させた濃度が1MのLiPF6溶液70μL、前記で得られた負極板、直径が13mmである円形鋼板、スプリングおよび蓋を用いてCR2025型のコイン電池を作製し、安定化のため約12時間室温下で放置した。
ポテンシオスタット(バイオロジカル社製、品番:VSM)を用い、室温下で0.01~2.1Vの電位における前記コイン電池のサイクリックボルタンメトリーを調べた。その結果を図5(a)に示す。図5(a)は、前記で得られたコイン電池のサイクリックボルタンメトリーの測定結果を示すグラフである。図5(a)において、符号aは1サイクル目のサイクリックボルタモグラム、符号bは2サイクル目のサイクリックボルタモグラムである。
また、サイクリックボルタンメトリーを調べる際に、サイクル数と放電容量および充放電効率(クーロン効率)との関係を調べた。その結果を図5(b)に示す。図5(b)は、前記で得られたコイン電池の放電容量および充放電効率(クーロン効率)の測定結果を示すグラフである。図5(b)において、符号Aは放電容量を示すグラフ、符号Bは充放電効率を示すグラフである。
図5(b)に示された結果から、最大放電容量が約228mAh/gであり、サイクリックボルタンメトリーの1000サイクル後では放電容量が約180mAh/gであることから、容量維持率が約79%であるので、電池寿命が長く、1400サイクル後でも充放電効率(クーロン効率)が約100%に維持されており、放電容量が約150mAh/g以上であることがわかる。したがって、前記で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーは、1400サイクル後であっても活物質との電気的接触を維持し、活物質に対する結合性を維持することがわかる。
次に、前記で得られたコイン電池を用いてサイクリックボルタンメトリーを測定する際に走査速度とピーク電流との関係を調べた。その結果を図6に示す。図6は、前記で得られたコイン電池を用いてサイクリックボルタンメトリーを測定する際の走査速度とピーク電流との関係を示すグラフである。
図6に示された結果から、走査速度とピーク電流との関係が直線的であることから、リチウムイオンの拡散が制御されていることがわかる。リチウムイオン拡散係数をRandles-Sevcik式に基づいて求めたところ、当該リチウムイオン拡散係数は7.8×10-9cm2/sであった。このことから、前記で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーは、効率よくリチウムを拡散させる性質を有することがわかる。
〔グラファイト系負極の電気化学的特性(2)〕
実施例1で得られたリチウムボレート型カフェ酸ポリマーを用い、アセチレンブラック20mgと、リチウムボレート型カフェ酸ポリマー2mgおよびグラファイト178mgの混合物、リチウムボレート型カフェ酸ポリマー4mgおよびグラファイト176mgの混合物、リチウムボレート型カフェ酸ポリマー6mgおよびグラファイト174mgの混合物、リチウムボレート型カフェ酸ポリマー8mgおよびグラファイト172mgの混合物、リチウムボレート型カフェ酸ポリマー10mgおよびグラファイト170mgの混合物、リチウムボレート型カフェ酸ポリマー14mgおよびグラファイト166mgの混合物、またはリチウムボレート型カフェ酸ポリマー20mgおよびグラファイト160mgの混合物とを混合し、さらに溶媒として水3~4mLを均一な組成となるように混合することにより、それぞれ混合物を得た。
粉砕機〔フリテッシュ・ゲー・エム・ベー・ハー(FRITISCH GmbH)社製、商品名:Planetary Micro Mill PULVERISETTE 7〕および直径が約5mmであるジルコニアビーズを用いて前記で得られた混合物を粉砕することにより、スラリー状の電極材料を得た。前記で得られた電極材料を厚さが100μmとなるようにドクターブレードで銅箔(厚さ:20μm)に塗布し、80℃にて約12時間減圧乾燥させることにより、電極を得た。
前記で得られた電極をホットロールプレス機(ホーセン社製)で80℃の温度で70μmの厚さにホットロールプレスした。この電極から直径が13mmである円形の負極板を作製した。
窒素ガス雰囲気中にて、直径が20mmである基板、直径が13mmであり、厚さが1mmである円形リチウム板、厚さが25μmであるポリプロピレン製のセパレータ、電解質(エチレンカーボネート50体積%とジエチレンカーボネート50体積%とからなる溶媒に溶解させた濃度が1MのLiPF6溶液70μL、前記で得られた負極板、直径が13mmである円形鋼板、スプリングおよび蓋を用いてCR2025型のコイン電池を作製し、安定化のため約12時間室温下で放置した。
前記で得られたコイン電池を用い、0.1~2.1Vの電位で電気化学測定システム(バイオロジック社製、品番:VSP No.1190)を用い、走査速度を0.1mV/sに調整して開回路電位から開始してサイクリックボルタンメトリーを調べた。リチウムイオン拡散係数は、走査速度を0.1mV/s、0.3mV/s、0.5mV/s、0.7mV/sまたは1.0mV/sに調節してサイクリックボルタンメトリーを調べることによって求めた。
サイクリックボルタンメトリーを調べる前後において、前記で得られたコイン電池のインピーダンスを調べた。インピーダンスは、周波数100kHz~10mHzの範囲で周波数特性分析器(FRA)を備えた電気化学測定システム(バイオロジック社製、品番:VSP No.1190)を用いて調べた。
リチウムボレート型カフェ酸ポリマー20mgおよびグラファイト160mgが用いられているコイン電池を用いてサイクリックボルタンメトリーの測定前後にインピーダンスを測定することによって求められたEISスペクトルを図7に示す。図7は、サイクリックボルタンメトリーの測定前後におけるEISスペクトルを示すグラフである。なお、図7中のCV前は、サイクリックボルタンメトリーの測定前を意味し、CV後はサイクリックボルタンメトリーの測定後を意味する。図7に示された結果から、サイクリックボルタンメトリーの後では界面抵抗の低下により、前記コイン電池のインピーダンスが低下していることがわかる。
次に、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量を変更したときのEISスペクトルを調べた。その結果を図8に示す。図8(a)はサイクリックボルタンメトリーの測定前におけるEISスペクトルを示すグラフ、図8(b)はサイクリックボルタンメトリーの測定後におけるEISスペクトルを示すグラフである。
図8において、Aはリチウムボレート型カフェ酸ポリマーを2mgまたは8mgの量で用いたときのEISスペクトル、Bはリチウムボレート型カフェ酸ポリマーを4mgの量で用いたときのEISスペクトル、Cはリチウムボレート型カフェ酸ポリマーを6mgの量で用いたときのEISスペクトルを示す。
図8に示された結果から、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が増大するにしたがって界面抵抗が増大するが、図8(a)の符号Aおよび図8(b)の符号Aに示されるように、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が少ない場合にも界面抵抗が高くなることがわかる。
次に、前記サイクリックボルタンメトリーの測定結果に基づき、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が2mg(含有率:1質量%)、6mg(含有率:3質量%)または20mg(含有率:10質量%)であるときの脱リチウムのピーク電位およびリチウムイオン拡散係数を調べた。その結果、脱リチウムのピーク電位は、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が2mgであるとき0.18Vであり、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が6mgであるとき0.19Vであり、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が20mgであるとき0.23Vであった。また、リチウムイオン拡散係数は、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が2mgであるとき1.35×10-10cm2/sであり、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が6mgであるとき1.72×10-10cm2/sであり、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が20mgであるとき2.13×10-10cm2/sであった。これらの結果から、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの含有率が高くなるにしたがって脱リチウムのピーク電位が高くなり、リチウムイオンの拡散性が向上することがわかる。
次に、リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が2mg、10mgまたは20mgであるコイン電池を用いて充放電サイクル特性を調べた。
コイン電池の充放電サイクル特性は、充放電装置として自動電池評価装置〔(株)エレクトロフィールド製、品番:ABE1024-05RI〕およびバッテリーサイクラー(バイオロジック社製、品番:BCS)を用い、電位の範囲を0.1~2.1V(対Li/Li+)に調整し、1Cの定電流で調べた。前記電池の充放電サイクル特性として充放電を繰り返したときの放電容量および充放電効率(クーロン効率)を調べた。その結果を図9に示す。図9は、前記で得られたコイン電池の充放電を繰り返したときの放電容量および充放電効率(クーロン効率)の測定結果を示すグラフである。
なお、前記1Cとは公称容量値の容量を有する電池セルを定電流充電または定電流放電したときに1時間で充電および放電が終了する電流値を意味する。例えば、電流値が2Cであることは、2時間で充電および放電が終了することを意味する。
図9において、符号A~Cは、放電容量の測定結果を示すグラフであり、符号Aはリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が2mg(含有率:1質量%)であるときの放電容量の測定結果を示すグラフ、符号Bはリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が6mg(含有率:3質量%)であるときの放電容量の測定結果を示すグラフ、符号Cはリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が20mg(含有率:10質量%)であるときの放電容量の測定結果を示すグラフである。
また、図9において、符号a~cは、充放電効率(クーロン効率)の測定結果を示すグラフであり、符号aはリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が2mg(含有率:1質量%)であるときの充放電効率の測定結果を示すグラフ、符号bはリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が6mg(含有率:3質量%)であるときの充放電効率の測定結果を示すグラフ、符号cはリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が20mg(含有率:10質量%)であるときの充放電効率の測定結果を示すグラフである。
図9に示された結果から、前記リチウムボレート型カフェ酸ポリマーの量が2mg、10mgまたは20mgであるコイン電池の放電容量は、いずれも10サイクル後においても約330mAh/gであることから、前記電池は、充放電サイクル特性に優れていることがわかる。
また、前記電池の充放電サイクルと充放電効率(充電時に充電された充電容量に対する放電時の放電容量の比の百分率)の測定結果から、前記電池の充放電効率が約100%であることから、前記電池は、充放電特性に優れていることがわかる。
本発明のリチウムイオン二次電池用負極バインダーおよび当該リチウムイオン二次電池用負極バインダーを含む負極が用いられているリチウムイオン二次電池は、イオン伝導度およびリチウムイオン輸率が高く、充放電サイクルにおけるサイクル耐久性に優れ、放電容量が高いリチウムイオン二次電池を与えることから、例えば、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータ、ハイブリッド自動車、電気自動車などに使用することが期待される。

Claims (5)

  1. 式(I):
    Figure 2022119352000008
    〔式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~4のアルキル基、R3は水素原子または式:-OR4基(式中、R4は水素原子またはハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基またはハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~12のアリール基を示す)で表わされる基を示す〕
    で表わされる繰り返し単位を有するリチウムボレート型カフェ酸ポリマーを含有してなるリチウムイオン二次電池用負極バインダー。
  2. 請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極バインダーを含有してなるリチウムイオン二次電池用負極。
  3. 正極と負極と正極および負極の間に配置されたセパレータとを有するリチウムイオン二次電池であって、前記負極が請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用負極であるリチウムイオン二次電池。
  4. 式(I):
    Figure 2022119352000009
    〔式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~4のアルキル基、R3は水素原子または式:-OR4基(式中、R4は水素原子またはハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基またはハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~12のアリール基を示す)で表わされる基を示す〕
    で表わされる繰り返し単位を有するリチウムボレート型カフェ酸ポリマー。
  5. 式(II):
    Figure 2022119352000010
    (式中、R1およびR2は、それぞれ独立して水素原子、水酸基または炭素数1~4のアルキル基を示す)
    で表わされるカフェ酸化合物と水素化ホウ素リチウムとを式:R4OH(式中、R4は水素原子またはハロゲン原子を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基またはハロゲン原子を有していてもよい炭素数6~12のアリール基を示す)で表わされるアルコールの存在下または非存在下で反応させることを特徴とする式(I):
    Figure 2022119352000011
    〔式中、R1およびR2は前記と同じであり、R3は水素原子または式:-OR4基(式中、R4は前記と同じ)で表わされる基を示す〕
    で表わされる繰り返し単位を有するリチウムボレート型カフェ酸ポリマーの製造方法。

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