JP2022117381A - アンジオテンシン転換酵素2(ace2)及び/若しくはtmprss2発現を阻害するための組成物、又は、コロナウィルス感染症の予防剤若しくは治療剤 - Google Patents

アンジオテンシン転換酵素2(ace2)及び/若しくはtmprss2発現を阻害するための組成物、又は、コロナウィルス感染症の予防剤若しくは治療剤 Download PDF

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Naoki Urushibata
勝幸 隠岐
Katsuyuki Oki
誠一 吉原
Seiichi Yoshihara
啓介 大西
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Abstract

【課題】アンジオテンシン転換酵素2(ACE2)及び/又はTMPRSS2の発現を阻害するための組成物を提供すること。【解決手段】アンジオテンシン転換酵素2(ACE2)及び/又はTMPRSS2の発現を阻害するための組成物であって、前記組成物は、フォークヘッド型転写因子FoxO1阻害剤を含む、組成物。【選択図】なし

Description

本開示は、アンジオテンシン転換酵素2(ACE2)及び/又はTMPRSS2(Transmembraneprotease, serine 2)の発現を抑制するための組成物、又は、コロナウィルス感染症の予防剤若しくは治療剤に関する。
2019年の終わりから人への感染が始まったとされる新型コロナウィルス(SARS-CoV2)による感染症(COVID-19)は世界中で猛威を振るい、その治療薬並びにウイルスに対するワクチンの研究開発が各国で盛んに行われている。COVID-19は発症するとサイトカインストームと呼ばれる過剰な炎症反応が引き起こされ、当初は異常な肺炎症状を引き起こすことにより死に至らしめると考えられていた。その後、肺のみならず、血管、脳神経系、肝臓、腎臓など全身に症状が見られることが明らかになりつつある。これまでの研究成果から、SARS-CoV2は全ての細胞に感染するというより、アンジオテンシン転換酵素2(ACE2)を細胞表面に発現している細胞に特異的に感染することが示唆されている。さらに最近ではTMPRSS2(Transmembrane Protease, Serine2)というタンパク質分解酵素によって、SARS-CoV2の表面にあるスパイクタンパク質(Spike protein)が切断されることでさらに感染力が高まる、などの報告も相次いでいる。非特許文献1では、これまでのSARS-CoV2に関する知見に関してまとめられている。
ACE2の遺伝子発現制御に関して、これまでにフォークヘッド型転写因子FoxAファミリーが、ACE2遺伝子のプロモーター領域に結合してmRNAの転写を促進するという文献報告(非特許文献2)はあった。そして、その文献で、FoxAファミリーに近いファミリー分子であるFoxO1に関しても検討しており、FoxO1はACE2遺伝子のプロモーター領域に結合することはできるが、FoxO1の過剰発現でACE2のmRNAの転写は有意に促進されない、という結果を報告している。しかし、この文献ではFoxO1の過剰発現自体が成功しているかの検証はなされておらず、さらにRNA干渉法やノックアウト、阻害剤などでFoxA2、FoxO1の必要性に関して検討もされておらず、FoxA2やFoxO1がどこまでACE2のmRNA発現に影響するかについては依然不明のままであった。
https://www.nature.com/articles/d41586-020-00502-w J Endocr Soc. 2017 Apr 1;1(4):370-384.(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29082356/)
SARS-CoV2の感染拡大に伴い、SARS-CoV2に対する治療法及び予防法が全世界で期待されている。SARS-CoV2はACE2を介して感染することは広く知られており、このACE2に対する中和抗体の作成などが急ピッチで進められているものの、いまだ実用化に至ってはいない。そこで、本開示は、COVID-19の治療・予防にも関係する、ACE2及び/又はTMPRSS2の遺伝子発現量(mRNA量)を抑制するための組成物を提供することを目的とする。
発明者が鋭意検討したところ、フォークヘッド型転写因子FoxO1の阻害剤を加えるだけで、ACE2並びにTMPRSS2のmRNA量を減少させることが明らかになり、FoxO1がACE2並びにTMPRSS2の遺伝子発現の誘導に関連し、FoxO1を阻害することでACE2並びにTMPRSS2の発現を抑制することを明らかにした。
さらに、上述のACE2の発現量の減少が、新型コロナウィルスのスパイクタンパク質の細胞内の取り込みの減少につながることを見出した。
本開示の発明は、上記知見に基づいて完成され、一側面において、以下の発明を包含する。
(発明1)
アンジオテンシン転換酵素2(ACE2)及び/又はTMPRSS2の発現を阻害するための組成物であって、
前記組成物は、フォークヘッド型転写因子FoxO1阻害剤を含む、組成物。
(発明2)
前記阻害剤が、以下の式で表される化合物又はその塩である、発明1の組成物。
Figure 2022117381000001
{ただし、
1は、NH又はCH2であり、
2は、N-R8又はCH-R8 (R8:C1~C3までのアルキル基)であり、
3は、F、Cl、Br、又はIであり、
4は、それぞれ独立して、H又はCH3であり、
5は、S又はOであり、
6は、カルボキシル基であり、
7は、NH2、又はCH3であり、
nは、1-11である。

(発明3)
前記阻害剤が、以下の式で表される化合物又はその塩である、発明1の組成物。
Figure 2022117381000002
{ただし、
1は、NHであり、
2は、N-R8 (R8:C1~C3までのアルキル基)であり、
3は、F、Cl、Br、又はIであり、
4は、それぞれ独立して、H又はCH3であり、
5は、Oであり、
6は、カルボキシル基であり、
7は、NH2であり、
nは、1-11である。

(発明4)
前記阻害剤が、AS1842856又はAS1708727である、発明1の組成物。
(発明5)
新型コロナウィルス(SARS-CoV2)感染症(COVID-19)を治療するための組成物である、発明1~4いずれか1つに記載の組成物。
(発明6)
新型コロナウィルス(SARS-CoV2)感染症(COVID-19)を予防するための組成物である、発明1~4いずれか1つに記載の組成物。
(発明7)
FoxO1阻害剤を有効成分として含むコロナウィルス感染症の予防剤または治療剤。
(発明8)
前記FoxO1阻害剤が、AS1842856又はAS1708727である発明7の予防剤または治療剤。
本開示の組成物は、フォークヘッド型転写因子FoxO1阻害剤を含む。これによって、ACE2及び/又はTMPRSS2遺伝子の発現量を減少させることができる。
フォークヘッド型転写因子FoxO1阻害剤AS1842856(濃度はグラフ下に示す)の添加によるHepG2細胞におけるACE2及びTMPRSS2遺伝子の発現量を相対化したグラフである。更には、FoxO1によるACE2及びTMPRSS2遺伝子の発現誘導メカニズムの模式図である。 SARS-CoV2表面タンパク質であるスパイクタンパク質中の、ACE2結合領域(RBD)の組換えタンパク質(RBD-mFc)の細胞内への取り込みアッセイの模式図である。S1及びRBDにはマウスIgG由来のFc配列(mFc)が融合しており、マウスIgGを認識する蛍光標識抗体を用いた免疫染色法により、細胞内に取り込まれたRBDの量を定量化することが可能である。 SARS-CoV2表面タンパク質であるスパイクタンパク質の中の、ACE2結合領域(RBD)の組換えタンパク質(RBD-mFc)のHepG2細胞内への取り込みアッセイにおける、実際に取り込まれたRBDタンパク質の典型的な顕微鏡画像である。 取り込まれたRBDタンパク質を、フローサイトメトリーを用いて定量し、平均蛍光強度を相対化したグラフである。 フォークヘッド型転写因子FoxO1阻害剤AS1842856によるACE2及び/又はTMPRSS2の発現抑制と、スパイクタンパク質との結合・取り込み抑制の関係を表した模式図である。
以下、本開示の発明を実施するための具体的な実施形態について説明する。以下の説明は、発明の理解を促進するためのものである。即ち、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
1. 定義
本明細書で記載される用語「アンジオテンシン転換酵素2(ACE2)及び/又はTMPRSS2のmRNA発現量を抑制するため」は、ACE2及び/又はTMPRSS2に関する特定の疾患を改善するという目的を包含する。更には、当該用語は、治療目的に限定されない。例えば、当該用語は、特定の疾患を有さないとしても、その疾患を発症することを予防する目的を包含する。
2.フォークヘッド型転写因子FoxO1阻害剤を用いたアンジオテンシン転換酵素2(ACE2)及び/又はTMPRSS2の発現量を抑制するための組成物
一実施形態においては、こうした組成物は、フォークヘッド型転写因子FoxO1阻害剤を含む。当該阻害剤により、ACE2及び/又はTMPRSS2の遺伝子の転写が阻害され、mRNA量が減少する。
また、本明細書で記載される「FoxO1阻害剤」は、FoxO1の転写因子としての作用を抑制する阻害剤を意味する。従って、本明細書で記載される「FoxO1阻害剤」は、FoxO1に直接結合して阻害する剤を含むことができ、更には、FoxO1の上流のシグナル経路に作用してFoxO1の転写因子としての作用を抑制する剤を含むことができる。好ましい「FoxO1阻害剤」は、FoxO1に直接結合して阻害する剤である。
好ましい実施形態において、FoxO1に直接結合して阻害する剤の例として、以下の式で表される化合物又はその塩が挙げられる。
Figure 2022117381000003
{ただし、
1は、NH又はCH2であり、
2は、N-R8又はCH-R8 (R8:C1~C3までのアルキル基)であり、
3は、F、Cl、Br、又はIであり、
4は、それぞれ独立して、H又はCH3であり、
5は、S又はOであり、
6は、カルボキシル基であり、
7は、NH2又はCH3であり、
nは、1-11である。
更に、好ましい実施形態において、FoxO1に直接結合して阻害する剤の例として、以下の式で表される化合物又はその塩が挙げられる。
Figure 2022117381000004
{ただし、
1は、NHであり、
2は、N-R8 (R8:C1~C3までのアルキル基)であり、
3は、F、Cl、Br、又はIであり、
4は、それぞれ独立して、H又はCH3であり、
5は、Oであり、
6は、カルボキシル基であり、
7は、NH2であり、
nは、1-11である。
上記式で表される化合物又はその塩の具体例として、AS1842856(CAS No. 836620-48-5)が挙げられる。
Figure 2022117381000005
FoxO1に直接結合して阻害する剤の更なる例として、上述したAS1842856(CAS No. 836620-48-5)などのキノロン誘導体に加えて、KIS-154、カルコン類、トリテルペン類、フラボン類、モノテルペノイド類、リグナン類、クマリン類、及びフィトケミカル類からなるFOXO1活性阻害剤(再表2018/079715)などが挙げられる。
また、FoxO1に直接結合して阻害する剤の具体例として、AS1708727等も利用可能である。
好ましくは、AS1842856又はAS1708727である。
FoxO1は、アンジオテンシン転換酵素2(ACE2)及び/又はTMPRSS2の遺伝子の転写を促す転写因子として作用する。従って、FoxO1の作用を阻害することで、これらの遺伝子の発現を抑制することができる。これによって、ウイルスがスパイクタンパク質を利用して細胞内に取り込まれることを低減することができる。
3.用途
一実施形態において、本開示の組成物は、アンジオテンシン転換酵素2(ACE2)及び/又はTMPRSS2が関与する疾患の治療及び/又は予防に利用することができる。具体的には、これらが関与する感染症の治療及び/又は予防に利用することができる。感染症の例としては、SARS-CoV又はSARS-CoV2などのウイルスによる感染症が挙げられる。好ましくは、SARS-CoV2による感染症(COVID19)である。これらのウイルスは、ヒト細胞のACE2受容体に、自身のスパイクタンパク質を結合させ、これを足掛かりとして細胞内に侵入する。また、SARS-CoV2は、ヒト細胞の表面のACE2と結合した後、ヒト細胞のTMPRSS2の酵素処理によって、細胞内への侵入効率が増強される。従って、ACE2及び/又はTMPRSS2の発現を抑制することで、こうしたウイルスによる細胞の侵入を抑制することができる。これによって感染を抑制することができる。
こうしたアプローチのメリットは、ウイルス側の変異による影響を受けにくい点にある。一般にSARS-CV2をはじめとするRNA型ウイルスは、変異を起こしやすい。そして、ウイルス表面のタンパク質(例えば、スパイクタンパク質)は、ワクチンのターゲットとされるものの、このタンパク質に変異が起こることにより、ワクチンによる効果が回避されてしまう問題があった。しかし、このアプローチでは、変異による直接的な影響は受けにくいという点で、有利である。
また、特筆すべきは、本開示の組成物は、感染の治療のみならず、感染の予防にも寄与することができる。例えば、感染の治療には、抗炎症作用などに基づいたアプローチがあるが、こうしたアプローチは、感染が起こった後での対処法となるため、予防には寄与できない。しかし、本開示の組成物は、いったん感染が起こってウイルスが増殖した後でも、他の細胞への更なる感染を防ぐという意味では、治療薬としても寄与できる。しかし、それだけではなく、感染する前の状態であっても、予め投与することで、ウイルスが感染する際の足掛かりとなる遺伝子の発現を抑制することで、細胞への感染を防ぐという意味で予防薬としても寄与できる。
従って、一実施形態において、本開示の組成物は、投与形態に応じて、適切な追加成分を配合してもよい。例えば、本開示の組成物は、医薬品に一般的に含まれる成分を含んでもよい。当該成分の例として、保存料、防腐剤、香料、pH調整剤、酸化防止剤、防カビ剤などが挙げられる。
さらに、本開示の組成物AS1842856は、マウスを用いた動物実験において経口投与による効果が確認されている。従って、一実施形態において、本開示の組成物は、錠剤化、経口用カプセル封入、などの加工をしてもよい。
4.実施例
4-1.実施例1(HepG2細胞の培養)
HepG2細胞はATCC(American Type Culture Collection、HB-8065)から購入した。当該細胞はDMEM(SIGMA,D8900)+10%FBS(SIGMA,F7524)の血清培地を用いて継代・維持した。
4-2.実施例2(FoxO1阻害剤の効果)
HepG2細胞を12 well plate(Corning,3336)の各ウェルに50,000cells/cm2で播種し、一晩培養した。翌日(播種後16~24時間)、FoxO1阻害剤AS1842856を複数の濃度で添加(1nM、10nM、50nM、100nM、1μM)し、又はその溶媒として用いたDMSOをコントロールとして加え、1日(約24時間)培養した。培養後、ReliaPrep RNA Miniprep system(Promega, Z6012)を用いてHepG2細胞からTotal RNAを抽出した。抽出後、500ngのRNAを用いてcDNA合成(PrimeScript RT Master Mix; Takara, RR036A)を行い、更に、定量的PCR(Thunderbird Sybr qPCR Mix; TOYOBO, QPS-201X5)を行った。
cDNA合成のためのミクスチャは以下の組成に従って調製した。
5xPrimeScript RT Master Mix 2 μl(最終濃度 1 x)
Total RNA 500 ng
RNase free H2O 合計10 μlに調整
上記ミクスチャを、Applied Biosystems社のVeriti 96 well Thermal Cyclerを用いて、以下の条件で処理した。
37℃ 15分

85℃ 5秒

4℃ ∞
合成したcDNA(10 μl)は90μlのTE(10mM Tris-HCl pH8.0 + 1mM EDTA pH8.0)を用いて10倍に希釈した。当該希釈物を、定量PCRに供した。
4-3.実施例3(HepG2細胞におけるACE2及びTMPRSS2遺伝子発現の解析)
より具体的には、当該希釈物を、以下の条件で混合した。
2×THUNDERBIRD Probe qPCR Mix 10μl
5mM Forward Primer 0.4μl
5mM Reverse Primer 0.4μl
2O 8.2μl
cDNA(10倍希釈) 1 μl
上記混合物を、Bio-Rad社のCFX-Connectを用いて、cDNAを増幅させた。PCRサイクルの条件は以下の通りであった。
1.95℃ 1分 (初期変性)
2.95℃ 15秒 (変性)
3.60℃ 30秒 (伸長)
(2-3のステップを40回繰り返し、ステップ3が終わるたびに蛍光シグナルを検出)
4.65 ℃ ~ 95 ℃まで0.5 ℃刻みで温度を上昇させ、5秒ずつ温度を保持してから蛍光シグナルを検出
上記サイクルにて、PCR産物の検出を行い、併せて、Melting curveによるPCR産物の単一性の確認を行った。
内部標準(すべての細胞・条件において同じ発現をしているハウスキーピング遺伝子)として、GAPDH(lycerldehyde 3-hosphate ydrogenase)を用いた。
各遺伝子を検出するためのプライマー配列は以下の通りであった。
GAPDH Forward primer: 5’ - agccacatcgctcagacac - 3’
GAPDH Reverse primer: 5’ - gcctaatacgaccaaatcc - 3’
ACE2 Forward primer: 5’ - ttctgtcacccgattttcaa - 3’
ACE2 Reverse primer: 5’ - tcccaacaatcgtgagtgc - 3’
TMPRSS2 Forward primer: 5’ - cgctggcctactctggaa - 3’
TMPRSS2 Reverse primer: 5’ - ctgaggagtcgcactctatcc - 3’
全てのプライマーは株式会社ファスマックから購入した(逆相カラム精製グレード)。
各遺伝子の発現量は、定量PCRで得られた各遺伝子の発現量を、さらにGAPDHの発現量で割って標準化したものを示している。さらに、FoxO1阻害剤で処理をしていないコントロール条件(DMSO処理)での発現量を「1」になるように標準化している。以上のプライマーを用いて増幅したPCR産物は全て単一のものであること(つまり、同一のプライマーで、複数種類の配列が増幅されていないこと)をMelting curveによって確認した。
結果を図1に示す。コントロールのDMSO処理と比較すると、FoxO1阻害剤AS1842856を加えると、その濃度依存的にACE2及びTMPRSS2のmRNAの発現が減少することが観察された(多重比較検定(Tukey-Kramer法))。この結果は、FoxO1がACE2及びTMPRSS2のmRNAの発現に必要であることを示している。
4-4.実施例4(スパイクタンパク質の細胞内への取り込みへの影響)
次に、FoxO1阻害剤によるACE2の発現抑制が、SARS-CoV2とホスト細胞の結合及び細胞内への取り込みを阻害できるか検討した。この目的で、SARS-CoV2のスパイクタンパク質のS1の中でACE2に結合するために必要十分な領域RBD(eceptor inding omain、R319~F541)にマウスIgGのFc領域が融合されたリコンビナントタンパク質RBD-mFc(Sino Biological、40592-V05H2)を準備した。実験の模式図を図2に示す。
HepG2細胞を6 well plate(CellBIND; Corning, 3335)の各ウェルに100,000個を播種し、一晩培養した。翌日(播種後16~24時間)、FoxO1阻害剤AS1842856を1μMの濃度で添加、又はその溶媒として用いたDMSOをコントロールとして加え、3日間培養した(約72時間)。培養後、最終濃度が100nMとなるようにRBD-mFc、またはコントロールとして何も融合していないマウスIgG由来Fc領域(mFc;Abcam,ab179982)を添加し、さらに3時間培養した。その後、PBS(-)で細胞を洗浄後、剥離し細胞を回収した。回収した細胞は4%パラホルムアルデヒド(PFA)(富士フィルム和光純薬、163-204115)で15分間室温で固定した。固定後、PBS(-)で洗浄し、マウスIgGを認識する抗体にAlexa Fluor 488蛍光色素が共有結合した二次抗体(JacksonImmunoResearch,715-545-150)で細胞表面や細胞内に取り込まれたmFcを染色し、フローサイトメトリー(Beckman Coulter,FC500)を用いて一細胞あたりのAlexa Fluor 488の蛍光強度を測定し、定量した。解析にはKaluza Analysis 2.1(Beckman Coulter)を用いた。典型的な細胞の写真は、蛍光顕微鏡(Keyence、BX-700)を用いて撮影した。
結果を図3に示す。まず、S1及びRBDがHepG2細胞に取り込まれ得るのか、免疫染色法及び蛍光顕微鏡を用いて観察した。コントロールのmFcを添加した場合には、全くほとんど蛍光シグナルが検出されなかったのに対し、RBD-mFcは50%近くの細胞で観察された。これらの結果から、HepG2細胞はRBDを取り込むことが示唆された。
次に、FoxO1阻害剤AS1842856を用いて、あらかじめACE2の発現を抑制した時、取り込まれるRBDの量が抑制されるかフローサイトメトリーを用いて検討した。蛍光強度の違いを図4に示す。まず、ネガティブコントロールであるmFcを添加した際の細胞の示す蛍光強度は、ACE2を介さずにmFcのみで取り込まれてしまったもの、二次抗体が非特異的に結合してしまったもの、及び細胞のもつ自家蛍光、の3つに由来し、これはバックグラウンドシグナルと考えられる。従って、mFcでの蛍光強度を引くことで、より正確に取り込まれたRBD由来のシグナルの差を正確に比較することが可能になる。すると、コントロールのDMSOを添加した際のRBDの蛍光シグナルと比較すると、FoxO1阻害剤AS1842856で予め処理することで、RBD由来の蛍光シグナルの強度が有意に減少した(T検定;p<0.0005)。すなわち、この結果はFoxO1阻害剤によってRBDのHepG2細胞への取り込みが抑制されたことを示しており、FoxO1阻害剤によるACE2等のmRNA発現量の抑制が、RBDのHepG2細胞への取り込みを抑制できるレベルまで抑えていることを示唆している。
さらに、この結果はFoxO1阻害剤によって、SARS-CoV2がホスト細胞に結合し感染する(取り込まれる)ことが抑制されることを示唆している。
また、こうした効果は、AS1842856の化学構造をある程度改変したとしても同様の効果が得られると考えられる。例えば、AS1842856のフルオロ基の部分は、他のハロゲン基に変えても同様の効果が得られると考えられる。また、AS1842856の水素部分は例えばメチル基に変えても同様の効果が得られると考えられる。AS1842856の(=O)の部分は同族元素Sに変えても同様の効果が得られると考えられる。また、エチル基部分は、炭素数が1個増減したアルキル基でも同様の効果が得られると考えられる。アミノ基部分は、同程度のサイズであるメチル基に変えたとしても同様の効果が得られると考えられる。
以上の実験結果から示される、一実施形態における本開示の作用機序を図5にまとめる。FoxO1阻害剤は、細胞に作用して、ACE2及び/又はTMPRSS2の遺伝子の発現を抑制する。これによって、細胞表面のACE2及び/又はTMPRSS2の量が減少する。そして、ウイルス表面に存在するスパイクタンパク質とACE2との結合が阻害される。また、TMPRSS2によるウイルスの細胞内への侵入の促進効果も抑制される。
以上、具体的な実施形態について説明してきた。上記実施形態は、具体例に過ぎず、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上述の実施形態の1つに開示された技術的特徴は、他の実施形態に適用することができる。また、特記しない限り、特定の方法については、一部の工程を他の工程の順序と入れ替えることも可能であり、特定の2つの工程の間に更なる工程を追加してもよい。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定される。

Claims (8)

  1. アンジオテンシン転換酵素2(ACE2)及び/又はTMPRSS2の発現を阻害するための組成物であって、
    前記組成物は、フォークヘッド型転写因子FoxO1阻害剤を含む、組成物。
  2. 前記阻害剤が、以下の式で表される化合物又はその塩である、請求項1の組成物。
    Figure 2022117381000006
    {ただし、
    1は、NH又はCH2であり、
    2は、N-R8又はCH-R8 (R8:C1~C3までのアルキル基)であり、
    3は、F、Cl、Br、又はIであり、
    4は、それぞれ独立して、H又はCH3であり、
    5は、S又はOであり、
    6は、カルボキシル基であり、
    7は、NH2、又はCH3であり、
    nは、1-11である。
  3. 前記阻害剤が、以下の式で表される化合物又はその塩である、請求項1の組成物。
    Figure 2022117381000007
    {ただし、
    1は、NHであり、
    2は、N-R8 (R8:C1~C3までのアルキル基)であり、
    3は、F、Cl、Br、又はIであり、
    4は、それぞれ独立して、H又はCH3であり、
    5は、Oであり、
    6は、カルボキシル基であり、
    7は、NH2であり、
    nは、1-11である。
  4. 前記阻害剤が、AS1842856又はAS1708727である、請求項1の組成物。
  5. 新型コロナウィルス(SARS-CoV2)感染症(COVID-19)を治療するための組成物である、請求項1~4いずれか1項に記載の組成物。
  6. 新型コロナウィルス(SARS-CoV2)感染症(COVID-19)を予防するための組成物である、請求項1~4いずれか1項に記載の組成物。
  7. FoxO1阻害剤を有効成分として含むコロナウィルス感染症の予防剤または治療剤。
  8. 前記FoxO1阻害剤が、AS1842856又はAS1708727である請求項7の予防剤または治療剤。
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