JP2022116396A - 水性塗料組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】ガラス接着性に優れ、かつ鮮映性に優れた複層塗膜を形成することができる水性塗料組成物を提供すること。【解決手段】最低造膜温度が-20~50℃の範囲内であり、かつ周波数1Hzでの動的粘弾性測定におけるガラス転移温度が60~120℃の範囲内であるウレタン樹脂粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び架橋剤(C)を含む、水性塗料組成物。前記ウレタン樹脂粒子(A)の-20℃における破断伸び率が、200~350%の範囲内である、水性塗料組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、水性塗料組成物に関する。
近年、地球規模で環境問題に大きな関心が寄せられているが、自動車産業においても生産過程における環境改善の取り組みが積極的に進められている。自動車の製造工程からは、地球温暖化、産業廃棄物、揮発性有機溶剤(VOC)の排出等の問題が発生し、特にVOCについては、そのほとんどが塗装工程から発生するものであり、この対策が急務となっている。
自動車車体における塗膜形成方法としては、被塗物に電着塗装を施した後、「中塗塗料の塗装→焼付け硬化→水性ベースコート塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→クリヤ塗料の塗装→焼付け硬化」の3コート2ベーク(3C2B)方式により複層塗膜を形成する方法が広く採用されているが、近年では、省エネルギー及び低VOC化の観点から、中塗塗料として、水性中塗り塗料を使用し、水性中塗塗料の塗装後の焼付け硬化工程を省略し、被塗物に電着塗装を施した後、「水性中塗塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→水性ベースコート塗料の塗装→プレヒート(予備加熱)→クリヤ塗料の塗装→焼付け硬化」とする3コート1ベーク(3C1B)方式が試みられている。
しかしながら、上記3コート1ベーク方式においては、中塗り層とベースコート層において、塗膜層の混層が生じ、鮮映性に優れた複層塗膜が得られない場合があり、課題とされていた。
一方、自動車の製造仕様において、フロントガラスやリアガラス等のガラス部材は、一般的に上記クリヤ塗膜上にさらに、接着剤層が形成され、接着剤により固定されている。
特許文献1には、電着塗装された合金化溶融亜鉛めっき鋼板上に、下記工程(1)~(4)を順次行なう複層塗膜形成方法であって、工程(1):電着塗膜上に、水性中塗り塗料(A)を塗装して中塗り塗膜を形成する工程;工程(2):予備加熱後、中塗り塗膜上に、水性ベース塗料(B)を塗装してベース塗膜を形成する工程;工程(3):予備加熱後、ベース塗膜上に、クリヤー塗料(C)を塗装してクリヤー塗膜を形成する工程;工程(4):前記工程(1)~(3)で形成された中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜を加熱硬化する工程;前記水性中塗り塗料(A)が、ガラス転移温度(Tg)が5~15℃の範囲内であり、かつ重量平均分子量が30,000~40,000の範囲内である水酸基含有アクリル樹脂(a1)、ガラス転移温度(Tg)が-50℃以下であり、ポリエーテル骨格を有するポリウレタン樹脂(a2)、水酸基含有ポリエステル樹脂(a3)、メラミン樹脂(a4)及び活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物(a5)を含有し、該水酸基含有アクリル樹脂(a1)と該ポリウレタン樹脂(a2)との使用比が固形分比で、20/10~30/10の範囲内であり、該水性中塗り塗料(A)による加熱硬化後の形成塗膜の20℃における破断伸び率が20~30%の範囲内であり、ヤング率が5,000~6,000kgf/cm2の範囲内であり、ツーコン硬度が4~6の範囲内であり、かつ前記クリヤー塗料(C)が、水酸基含有アクリル樹脂(c1)及びアロファネート基含有ポリイソシアネート化合物(c2)を含有することを特徴とする複層塗膜形成方法が、鋼板として合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いる場合においても、従来と比較して優れた耐チッピング性を有し、さらにガラス部材等の部材を接着する際の接着強度、耐擦り傷性及び塗膜硬度にも優れた複層塗膜を形成できることが開示されている。
さらに最近では、更なる省エネルギー化の観点から、上記焼き付け硬化工程における加熱温度をより低くすることも望まれている。
また、使用されるエネルギーをさらに削減するため、上記3コート1ベーク(3C1B)方式において、水性中塗塗料の塗装後のプレヒートを省略することも望まれている。
特開2019-198861
特許文献1に記載の技術では、形成される複層塗膜にガラス部材を接着する際の接着強度(以下、「ガラス接着性」と称する場合がある)が不十分な場合があった。
また、特許文献1に記載の技術では、形成される複層塗膜の鮮映性が不十分な場合があった。
本発明の目的は、ガラス接着性に優れ、かつ鮮映性に優れた複層塗膜を形成することができる水性塗料組成物を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、最低造膜温度が-20~50℃の範囲内であり、かつ周波数1Hzでの動的粘弾性測定におけるガラス転移温度が60~120℃の範囲内であるウレタン樹脂粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び架橋剤(C)を含む、水性塗料組成物によれば、上記目的を達成できることを見出した。
すなわち、本発明は下記<1>~<14>に関するものである。
<1>最低造膜温度が-20~50℃の範囲内であり、かつ周波数1Hzでの動的粘弾性測定におけるガラス転移温度が60~120℃の範囲内であるウレタン樹脂粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び架橋剤(C)を含む、水性塗料組成物。
<2>前記ウレタン樹脂粒子(A)の-20℃における破断伸び率が、200~350%の範囲内である、<1>に記載の水性塗料組成物。
<3>前記ウレタン樹脂粒子(A)のポリオール成分(a1)として、融点が40~80℃の該ポリオール成分(A1)を含む、<1>又は<2>に記載の水性塗料組成物。
<4>前記ウレタン樹脂粒子(A)のポリオール成分(a1)として、ポリカーボネートポリオール(a1-1)を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の水性塗料組成物。
<5>前記ウレタン樹脂粒子(A)のポリオール成分(a1)として、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環式ジオールを含有するジオール成分から得られるポリカーボネートジオールを含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の水性塗料組成物。
<6>前記ウレタン樹脂粒子(A)がコアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の水性塗料組成物。
<7>前記コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)のコア部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-I)として、ポリエーテルポリオール(a1-2)を含む、<6>に記載の水性塗料組成物。
<8>前記コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)のシェル部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-II)として、ポリカーボネートポリオール(a1-1)を含む、<6>又は<7>に記載の水性塗料組成物。
<9>前記コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)の、前記コア部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-I)とシェル部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-II)の質量比率(a’1-I)/(a’1-II)が60/40~20/80の範囲内である、<6>~<8>のいずれか1つに記載の水性塗料組成物。
<10>前記反応性基含有樹脂(B)が水酸基含有樹脂(B’)を含む<1>~<9>のいずれか1つに記載の水性塗料組成物。
<11>前記架橋剤(C)が、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤を含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載の水性塗料組成物。
<12>被塗物上に、<1>~<11>のいずれか1つに記載の水性塗料組成物を塗装して未硬化の着色塗膜を形成することと、次いで、前記未硬化の着色塗膜を60~110℃の範囲内の温度で加熱して硬化させることとを含む、塗膜形成方法。
<13>工程(II-1):被塗物に、着色塗料組成物(X)を塗装して未硬化の着色塗膜を形成する工程、
工程(II-2):前記未硬化の着色塗膜上に、ベースコート塗料組成物(Y)を塗装して未硬化のベースコート塗膜を形成する工程、
工程(II-3):前記未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物(Z)を塗装して未硬化のクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
工程(II-4):前記未硬化の着色塗膜、前記未硬化のベースコート塗膜及び前記未硬化のクリヤーコート塗膜を加熱して、同時に硬化させる工程を含む複層塗膜形成方法であって、該着色塗料組成物(X)が<1>~<11>のいずれか1つに記載の水性塗料組成物である複層塗膜形成方法。
<14>前記工程(II-4)における加熱温度が60~110℃の範囲内である、<13>に記載の複層塗膜形成方法。
本発明の水性塗料組成物によれば、ガラス接着性及び鮮映性に優れた塗膜を形成することができる。特に、本発明の水性塗料組成物は、比較的低温で硬化させた場合においても、ガラス接着性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成することができる。また、本発明の水性塗料組成物は、被塗物上に、水性第1着色塗料、水性第2着色塗料及びクリヤ塗料を順次塗装し、得られる3層の複層塗膜を同時に加熱硬化する3コート1ベーク方式において、ガラス接着性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成することができる。特に、上記3コート1ベーク方式において、比較的低温で硬化させた場合においても、ガラス接着性及び鮮映性に優れた複層塗膜を形成することができる。さらに、上記水性第1着色塗料の塗装後のプレヒートを省略する3コート1ベーク方式においても、優れたガラス接着性及び鮮映性を有する複層塗膜を形成することができる。
以下、本発明について詳述するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
[水性塗料組成物]
本発明の水性塗料組成物は、最低造膜温度が-20~50℃の範囲内であり、かつ周波数1Hzでの動的粘弾性測定におけるガラス転移温度が60~120℃の範囲内であるウレタン樹脂粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び架橋剤(C)を含有する。
なお、本明細書において、水性塗料とは、有機溶剤型塗料と対比される用語であって、一般に、水又は水を主成分とする媒体(水性媒体)に、塗膜形成性樹脂、顔料等を分散及び/又は溶解させた塗料を意味する。また、上記有機溶剤型塗料とは、溶媒として実質的に水を含有しない又は溶媒の全て又はほとんどが有機溶剤である塗料である。
〔ウレタン樹脂粒子(A)〕
上記ウレタン樹脂粒子(A)は、最低造膜温度が-20~50℃の範囲内であり、かつ周波数1Hzでの動的粘弾性測定におけるガラス転移温度が60~120℃の範囲内である、ウレタン樹脂粒子である。
上記ウレタン樹脂粒子(A)の最低造膜温度(MFT;Minimum Film-forming Temperature)は、ウレタン樹脂粒子(A)を乾燥させたときに、き裂のない均一皮膜が形成される最低温度であって、JIS K 6828-2:2003に記載の方法により測定することができる。より具体的には、上記ウレタン樹脂粒子(A)を乾燥膜厚が50μmになるように塗布し、次いで、-25~90℃の範囲の温度勾配のもとで加熱し、造膜している部分と造膜していない部分との境界温度を測定することで求めることができる。
上記ウレタン樹脂粒子(A)の最低造膜温度は、形成される塗膜の鮮映性等の観点から、-20~50℃の範囲内であることが好ましく、-10~45℃の範囲内であることがより好ましく、0~40℃の範囲内であることがさらに好ましい。
また、上記ウレタン樹脂粒子(A)のガラス転移温度は、粘弾性測定装置「DMA Q800」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、周波数1Hz、昇温速度4℃/分で測定される動的粘弾性測定において、tanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)の極大値を示す温度として測定される動的ガラス転移温度である。ここで、上記ウレタン樹脂粒子(A)のガラス転移温度の測定に用いる試料は、以下のようにして作製される。まず、上記ウレタン樹脂粒子(A)をポリプロピレン板上に乾燥膜厚が50μmとなるように塗布し、80℃30分間の条件で予備乾燥を行い、次いで140℃60分間の条件で乾燥を行って乾燥塗膜を形成する。次いで、得られた乾燥塗膜をポリプロピレン板から剥離し、端部や欠損等がない部分において、長さ20mm、幅5mmの短冊状に裁断したものを試料とする。
上記ウレタン樹脂粒子(A)の周波数1Hzでの動的粘弾性測定におけるガラス転移温度は、形成される塗膜の、ガラス接着性及び硬度等の観点から、60~120℃の範囲内であることが好ましく、70~110℃の範囲内であることがより好ましく、80~100℃の範囲内であることがさらに好ましい。
また、上記ウレタン樹脂粒子(A)の-20℃における破断伸び率は、形成される塗膜の耐チッピング性及びガラス接着性等の観点から、200~350%の範囲内であることが好ましく、220~320%の範囲内であることがより好ましく、230~300%の範囲内であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、ウレタン樹脂粒子(A)の-20℃における破断伸び率は、引張試験機を用いて測定される値である。具体的には、ウレタン樹脂粒子(A)をポリプロピレン板に乾燥塗膜に基づく膜厚が約50μmになるように塗装し、80℃30分間の条件で予備乾燥を行い、次いで、140℃60分間の条件で乾燥を行って乾燥塗膜を形成する。次いで、得られた乾燥塗膜をポリプロピレン板から剥離し、端部や欠損等がない部分において、長さ30mm、幅5mmの短冊状に裁断して、試料を得る。次いで、「テンシロンUTM-II-20」(商品名、オリエンテック社製)を使用し、-20℃において、引張り速度4mm/min、チャック間距離20mmで、試料が破断するまで長手方向に引っ張る。破断伸び率は、下記式から求めることができる。
破断伸び率(%)=(破断時のチャック間距離-試験前のチャック間距離)/(試験前のチャック間距離)×100。
上記ウレタン樹脂粒子(A)は水酸基を含有していてもよい。
上記ウレタン樹脂粒子(A)は、一般に、ポリオール成分(a1)とポリイソシアネート成分(a2)と、必要に応じてさらに水分散基付与成分としての活性水素基とイオン形成基を併用する化合物とを含む構成成分から得ることができる。
ポリオール成分(a1)
ポリオール成分(a1)は、1分子中に少なくとも2個の水酸基を有する化合物である。なかでも、ウレタン樹脂粒子(A)の製造性の観点から、該ポリオール成分(a1)は、1分子中に2個の水酸基を有するジオールであることが好ましい。
上記ポリオール成分(a1)の融点は、形成される塗膜のガラス接着性等の観点から、融点が40~80℃の範囲内であることが好ましく、45~70℃の範囲内であることがさらに好ましく、48~60℃の範囲内であることが特に好ましい。
該ポリオール成分(a1)としては、例えば、低分子量のポリオールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサングリコール、2,5-ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を使用することができる。これらの低分子量のポリオールは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、上記ポリオール成分(a1)としては、高分子量のポリオールとして、例えば、ポリカーボネートポリオール(a1-1)、ポリエーテルポリオール(a1-2)、ポリエステルポリオール(a1-3)、ポリエーテルエステルポリオール(a1-4)等を使用することができる。これらの高分子量ポリオールは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記ポリオール成分(a1)としては、形成される塗膜のガラス接着性及び耐チッピング性等の観点から、ポリカーボネートポリオール(a1-1)を含むことが好ましい。
上記ポリカーボネートポリオール(a1-1)は、常法により、公知のポリオール成分とカルボニル化剤とを重縮合反応させることにより得られる化合物である。ポリオール成分としては、ジオール成分、3価以上のアルコール等の多価アルコール成分を挙げることができる。
上記ジオール成分としては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール及び1,10-デカンジオール等の直鎖状ジオール;2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3- プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール等の分岐ジオール;1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等の脂環式ジオール;p-キシレンジオール、p-テトラクロロキシレンジオール等の芳香族ジオール;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のエーテル系ジオール等を挙げることができる。これらのジオール成分は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
上記ジオール成分としては、形成される塗膜のガラス接着性及び硬度等の観点から、シクロアルキレン基を有する脂環式ジオールを含有することが好ましく、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環式ジオールを含有することがさらに好ましい。
上記シクロアルキレン基を有する脂環式ジオールとしては、具体的には、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等が挙げられ、上記炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環式ジオールとしては、具体的には、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
上記3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンの2量体、ペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの3価以上のアルコールは、単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
上記カルボニル化剤としては、公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、アルキレンカーボネート、ジアルキルカーボネート、ジアリルカーボネート、ホスゲン等を挙げることができ、これらの1種を又は2種以上を組合せて使用することができる。これらのうち好ましいものとして、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等を挙げることができる。
上記ポリカーボネートポリオール(a1-1)の数平均分子量は、製造性及び形成される塗膜のガラス接着性等の観点から、500~10000の範囲内であることが好ましく、600~5000の範囲内であることがさらに好ましく、700~4000の範囲内であることが特に好ましい。
前記ポリオール成分としては、形成される塗膜の鮮映性及び耐チッピング性等の観点から、ポリエーテルポリオール(a1-2)を含むことが好ましい。
上記ポリエーテルポリオール(a1-2)としては、前記低分子量のポリオールのアルキレンオキシド付加物、アルキレンオキシド又は環状エーテル(テトラヒドロフラン等)の開環(共)重合体等を使用することができる。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール-プロピレングリコールの(ブロック又はランダム)共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリオクタメチレングリコール等が挙げられる。
なかでも、上記ポリエーテルポリオール(a1-2)としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールを好適に使用することができる。また、該ポリエーテルポリオール(a1-2)の数平均分子量は、製造性、形成される塗膜の鮮映性及び耐チッピング性等の観点から、500~10000の範囲内であることが好ましく、1000~5000の範囲内であることがさらに好ましく、1600~4000の範囲内であることが特に好ましい。
上記ポリエーテルポリオール(a1-2)としては、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記ポリエステルポリオール(a1-3)としては、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸等のジカルボン酸(無水物)と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール等の前記低分子量のポリオールとを、水酸基過剰の条件で重縮合させて得られたものが挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコール-アジピン酸縮合物、ブタンジオール-アジピン縮合物、ヘキサメチレングリコール-アジピン酸縮合物、エチレングリコール-プロピレングリコール-アジピン酸縮合物、及びグリコールを開始剤としてラクトンを開環重合させて得られるポリラクトンポリオール等が挙げられる。これらのポリエステルポリオール(a1-3)は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記ポリエーテルエステルポリオール(a1-4)としては、エーテル基含有ポリオール(前記ポリエーテルポリオール(a1-2)又はジエチレングリコール等)又は、これと他のグリコールとの混合物を上記ポリエステルポリオール(a1-3)で例示したような(無水)ジカルボン酸に加えてアルキレンオキシドを反応させてなるもの、例えば、ポリテトラメチレングリコール-アジピン酸縮合物等が挙げられる。これらのポリエーテルエステルポリオール(a1-4)は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリイソシアネート成分(a2)
上記ポリイソシアネート成分(a2)としては、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート及び1分子中にイソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート等を挙げることができる
上記脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、トランス-1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等を挙げることができる。
上記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
上記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4及び/又は2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート等を挙げることができる。
上記1分子中にイソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネートとしては、例えば、上記例示のジイソシアネートのイソシアヌレート三量化物、ビューレット三量化物、トリメチロールプロパンアダクト化物等;トリフェニルメタントリイソシアネート、1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート等の三官能以上のポリイソシアネート等を挙げることができ、これらのイソシアネート化合物はカルボジイミド変性、イソシアヌレート変性、ビウレット変性等の変性物の形で用いてもよい。
上記のポリイソシアネートは、ブロッキング剤によってブロックされたブロックイソシアネートの形で用いてもよい。
活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物
また、前記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物としては、例えば、一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物、一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物、一分子中に2個以上のアミノ基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物としては、一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物、一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物を好適に使用することができる。本発明において、上記一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物、及び一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物等の、2個以上の水酸基とイオン形成基とを併有する化合物は、前記ポリオール成分(a1)に含まれるものとする。
上記一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールヘプタン酸、ジメチロールノナン酸、1-カルボキシ-1,5-ペンチレンジアミン、ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジアミノ安息香酸等のアルカノールカルボン酸化合物、ポリオキシプロピレントリオールと無水マレイン酸及び/又は無水フタル酸とのハーフエステル化合物等をあげることができる。
前記一分子中に2個以上の水酸基と1個以上のスルホン酸基を有する化合物としては、例えば、2-スルホン酸-1,4-ブタンジオール、5-スルホン酸-ジ-β-ヒドロキシエチルイソフタレート、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノエチルスルホン酸等をあげることができる。
上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物としては、形成される塗膜の柔軟性等の観点から、分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物を使用することが特に好ましい。
前記ウレタン樹脂粒子(A)は、水分散安定性等の観点から、上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を含むことが好ましい。
上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を使用する場合、その使用量は、水分散安定性及び形成される塗膜の耐水性等の観点から、ウレタン樹脂粒子(A)を構成する化合物の総量に対して、1~10質量%の範囲内であることが好ましく、1~7質量%の範囲内であることがさらに好ましく、1~5質量%の範囲内であることが特に好ましい。
前記ウレタン樹脂粒子(A)は、通常、水系溶媒中の分散体として合成されるものであり、ウレタン樹脂粒子(A)は水系溶媒中に分散されていればその形態は特に限定されない。ここで、水系溶媒とは、水を主成分とする溶媒(例えば、溶媒中70~100質量%が水である溶媒)を示す。
ウレタン樹脂粒子(A)の製造方法については、特に制限を受けず、従来既知の方法を適用することができる。製造方法としては、例えば、有機溶剤中で、ポリオール成分(a1)と、ポリイソシアネート成分(a2)とをウレタン化反応させるか、又は、必要に応じて活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物をさらに加えてウレタン化反応させて、プレポリマーを合成し、得られたプレポリマーを乳化し、必要に応じてさらに鎖伸長反応、脱溶剤を行なう方法が挙げられる。
上記ポリオール成分(a1)とポリイソシアネート成分(a1)のウレタン化反応には、必要に応じて触媒を使用することができる。
上記触媒としては、例えば、トリス(2-エチルヘキサン酸)ビスマス(III)等のカルボン酸ビスマス化合物;ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の有機スズ化合物;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン化合物等を挙げることができる。
これらのうち、比較的低毒性であり、環境適応性等の観点から、ビスマス系触媒が好ましい。
上記ウレタン化反応は、50~120℃で行なうことが好ましい。
以上により、ウレタン樹脂粒子(A)のプレポリマーを得ることができる。
上記プレポリマーの数平均分子量は、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される塗膜のガラス接着性等の観点から、2000~10000の範囲内であることが好ましく、3000~8000の範囲内であることがさらに好ましく、4000~7000の範囲内であることが特に好ましい。
上記プレポリマーの合成において、有機溶剤としては、イソシアネートと不活性で、ウレタン化反応に支障を及ぼさない有機溶剤が使用可能であり、このような有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤等を挙げることができる。なかでも上記のうち、水分散安定性等の観点から、ケトン系溶剤、エステル系溶剤を好適に使用することができる。
上記ウレタンプレポリマーに、必要に応じ上記イオン形成基に対する中和剤、及び脱イオン水を添加して、水分散(乳化)し、必要に応じてさらに、鎖伸長反応、脱溶剤を行うことによりウレタン樹脂粒子(A)の水分散液を得ることができる。
前記中和剤としては、上記イオン形成基を中和できるものであれば特に制限はなく、中和のための塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、ジエチルアミン、エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、エチルアミノエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチレントリアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等の有機アミン;或いは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等を挙げることができる。これらの中和剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記中和剤としては、形成される塗膜のガラス接着性、特に本発明の水性塗料組成物を比較的低温で硬化させた場合に形成される塗膜のガラス接着性等の観点から、N-メチルモルホリン及び/又はN-エチルモルホリンが好ましく、N-メチルモルホリンがより好ましい。
これらの中和剤は、最終的にウレタン樹脂粒子(A)の水分散液のpHが6.0~9.0程度となるような量で用いることが好ましい。
上記中和剤を添加する場合、中和剤の添加量は、カルボキシル基等の酸基に対して、0.1~1.5当量用いることが好ましく、0.3~1.2当量用いることがさらに好ましい。
上記ウレタン樹脂粒子(A)の水分散安定性を向上させるために、界面活性剤等の乳化剤を使用することもできる。
水分散液を得る手段としては、通常の撹拌機による分散で可能であるが、より粒子径の細かい均一な水分散液を得るためにホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー、ラインミキサー等を使用することができる。
ウレタンプレポリマーの鎖伸長反応(高分子量化)を行う場合、必要に応じて水以外の鎖伸長剤を添加して、ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤とを反応させることもできる。鎖伸長剤としては、活性水素を有する公知の鎖伸長剤を使用することができる。具体的には、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン化合物、ジエチレントリアミン等のトリアミン化合物、ヒドラジン等を挙げることができる。
鎖伸長度向上等の観点からは、ジエチレントリアミン等のトリアミン化合物等、3官能以上のアミン化合物を好適に使用することができる。また、得られる塗膜の柔軟性等の観点からは、エチレンジアミン等のジアミン化合物を好適に使用することができる。
また、反応性官能基を導入する目的で、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン等のアミンと水酸基を1分子中にそれぞれ1つ以上持つ化合物も、好適に使用できる。
ウレタン樹脂粒子(A)のポリオール成分(a1)とポリイソシアネート成分(a2)の含有割合は、製造性等の観点から、ポリオール成分(a1)の有する活性水素基/ポリイソシアネート成分(a2)の有するイソシアネート基のモル比で、1/1.01~1/3.0の範囲内であることが好ましく、1/1.05~1/2.0の範囲内であることがさらに好ましい。
前期乳化剤としては、ウレタン樹脂エマルションに使用される周知一般のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等を使用することができ、これらのうち、アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤を好適に使用することができる。該アニオン系乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等のナトリウム塩やアンモニウム塩を挙げることができる。また、ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等を挙げることができる。また、1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基とを有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤や、1分子中に該アニオン性基と重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤等を使用することもできる。
ウレタン樹脂粒子(A)の平均粒子径は、原材料(ポリイソシアネート成分、ポリオール成分、アミン成分等)組成、乳化剤の種類、乳化剤の量、乳化剤の仕込み配分、中和剤の種類、中和剤の量等の粒径制御要因を調整することにより、所望の平均粒子径とすることができる。
ウレタン樹脂粒子(A)の数平均分子量は、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される塗膜のガラス接着性等の観点から、10000以上であることが好ましく、50000以上であることがさらに好ましく、100000以上であることが特に好ましい。
ウレタン樹脂粒子(A)の平均粒子径は、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される塗膜の鮮映性等の観点から、10~5000nmの範囲内であることが好ましく、10~1000nmの範囲内であることがさらに好ましく、20~500nmの範囲内であることが特に好ましく、50~300nmの範囲内であることがさらに特に好ましい。
本明細書において、ウレタン樹脂粒子(A)の平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定装置を用いて、常法により脱イオン水で希釈してから20℃で測定した値である。動的光散乱法による粒度分布測定装置としては、例えば、「ELSZ-2000」(商品名、大塚電子社製)を用いることができる。
ウレタン樹脂粒子(A)は、水分散安定性及び形成される塗膜の耐水性等の観点から、酸価が5~40mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、5~30mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましく、10~30mgKOH/gの範囲内であることが特に好ましい。
ウレタン樹脂粒子(A)は形成される塗膜の耐水性等の観点から、水酸基価が0~100mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、0~50mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましく、0~10mgKOH/gの範囲内であることが特に好ましい。
ウレタン樹脂粒子(A)の水分散体中の固形分濃度は、20~50質量%の範囲内であることが好ましく、30~50質量%の範囲内であることがさらに好ましい。固形分濃度が50質量%以下であると、乳化が容易となり、水分散体を容易に得ることができる。固形分濃度が20質量%以上であると、溶媒成分が少なくなるので、水性塗料組成物の固形分を高くすることができる。
なお、本明細書において、「固形分」は、110℃で1時間乾燥させた後に残存する、樹脂、硬化剤、顔料等の不揮発性成分を意味する。 上記固形分は、例えば、アルミ箔カップ等の耐熱容器に試料を量り取り、容器底面に該試料を塗り広げた後、110℃で1時間乾燥させ、乾燥後に残存する成分の質量を秤量して求めることができる。
また、本明細書において、「固形分濃度」は、組成物中の上記固形分の含有質量割合を意味する。このため、組成物の固形分濃度は、例えば、アルミ箔カップ等の耐熱容器に組成物を量り取り、容器底面に該組成物を塗り広げた後、110℃で1時間乾燥させ、乾燥後に残存する組成物中の成分の質量を秤量して、乾燥前の組成物の全質量に対する乾燥後に残存する成分の質量の割合を求めることにより、算出することができる。
本発明の水性塗料組成物中の上記ウレタン樹脂粒子(A)の含有量は、形成される塗膜のガラス接着性及び耐チッピング性等の観点から、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、1~50質量%が好ましく、5~45質量%がより好ましく、10~40質量%が特に好ましい。なお、上記樹脂固形分量には、反応性基含有樹脂(B)との反応性を有する架橋剤(C)の固形分量も含まれるものとする。
ウレタン樹脂粒子(A)は、形成される塗膜のガラス接着性、鮮映性及び耐チッピング性等の観点から、コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)であることが好ましい。
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)は、通常、水系溶媒中の分散体として合成されるものであり、ウレタン樹脂粒子は水系溶媒中に分散されていればその形態は特に限定されないが、コア部を構成するウレタン樹脂(A’-I)のまわりに分散安定剤的に、シェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)が位置した構造を有する粒子として、水に分散されていることが好ましい。言い換えると、シェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)を外側に、コア部を構成するウレタン樹脂(A’-I)を内側にしたコアシェル構造を有する形態で水系溶媒中に分散していることが好ましい。実際にほぼそのような粒子形態を有していると考えられる。
ここで、水系溶媒とは、水を主成分とする溶媒(例えば、溶媒中70~100質量%が水である溶媒)を示す。
なお、コアシェル構造とは、具体的には同一粒子中に異なる樹脂組成の成分が存在し、中心部分(コア)と外殻部分(シェル)とで異なる樹脂組成からなっている構造をいう。
上記コアシェル構造は、通常、コア部がシェル部に完全に被覆された層構造が一般的であるが、コア部とシェル部の質量比率、その他の条件等により、シェル部が層構造を形成するのに不十分な場合もあり得る。そのような場合は、上記のような完全な層構造である必要はなく、コア部の一部をシェル部が被覆した構造であってもよい。
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)の製造方法としては、コアシェル構造を有する形態とすることができれば、従来既知のウレタン樹脂粒子の製造方法が使用可能であるが、製造安定性(得られる樹脂粒子の分散安定性)等の観点から、以下の方法(下記1~3の工程よりなる)により、製造することが好ましい。
1.まず最初に、親水性基を含有する水酸基末端のシェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)を合成する。
2.次にコア部を構成するウレタン樹脂(A’-I)を構成する原材料を追加して、シェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)にコア部を構成するウレタン樹脂(A’-I)がグラフトした、イソシアネート末端のプレポリマーを合成する。
3.得られたプレポリマーを乳化し、必要に応じてさらに、鎖伸長反応、脱溶剤を行うことによりコアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)を得る。
したがって、上記コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)は、例えば、シェル部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-II)及びシェル部を構成するウレタン樹脂のポリイソシアネート成分(a’2-II)を含むモノマー混合物を反応させてシェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)を得る工程、及び該シェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)の存在下で、コア部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-I)及びコア部を構成するウレタン樹脂のポリイソシアネート成分(a’2-I)を含むモノマー混合物を反応させてコア部を構成するウレタン樹脂のウレタン樹脂(A’-I)を合成する工程を含む製造方法によって得ることができる。
さらに具体的に、製造方法とともに、コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)について詳述するが、コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)は、下記製造方法で得られるものに何ら限定されるものではない。
シェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)の合成
シェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)は、コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)のシェル部を構成するものであり、シェル部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-II)、シェル部を構成するウレタン樹脂のポリイソシアネート成分(a’2-II)、及び必要に応じてさらに水分散基付与成分としての活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を使用して合成することができる。
前記シェル部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-II)としては、前記ポリオール成分(a1)を使用することができ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なかでも、形成される塗膜のガラス接着性及び耐チッピング性等の観点から、上記シェル部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-II)が、少なくともその一種として前記ポリカーボネートポリオール(a1-1)を含有することが好ましい。
上記ポリカーボネートポリオール(a1-1)は、常法により、公知のポリオール成分とカルボニル化剤とを重縮合反応させることにより得られる化合物であるが、形成される塗膜のガラス接着性及び硬度等の観点から、該ポリオール成分が、シクロアルキレン基を有する脂環式ジオールを含有することが好ましく、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環式ジオールを含有することがさらに好ましい。
上記シクロアルキレン基を有する脂環式ジオールとしては、具体的には、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール等が挙げられ、上記炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環式ジオールとしては、具体的には、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
このため、上記シェル部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-II)は、形成される塗膜のガラス接着性、耐チッピング性及び硬度等の観点から、少なくともその一種として、シクロアルキレン基を有するポリカーボネートポリオールを含有することが好ましく、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有するポリカーボネートポリオールを含有することがさらに好ましい。
上記シェル部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-II)が、上記ポリカーボネートポリオール(a1-1)を含有する場合、上記ポリカーボネートポリオール(a1-1)の数平均分子量は、製造性等の観点から、500~10000の範囲内であることが好ましく、600~5000の範囲内であることがさらに好ましく、700~4000の範囲内であることがさら特に好ましい。
上記シェル部を構成するウレタン樹脂のポリイソシアネート成分(a’2-II)としては、前記ポリイソシアネート成分(a2)を使用することができ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
シェル部を構成するウレタン樹脂のポリイソシアネート成分(a’2-II)としては、形成される塗膜の耐黄変性等の観点から、飽和脂肪族構造を有するポリイソシアネート化合物及び/又は飽和脂環式構造を有するポリイソシアネート化合物を好適に使用することができる。上記飽和脂肪族構造を有するポリイソシアネート化合物としては、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等が挙げられ、飽和脂環式構造を有するポリイソシアネート化合物としては、具体的には、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)等が挙げられる。
また、前記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物としては、例えば、前記ウレタン樹脂粒子(A)において例示した、活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を使用することができる。ここで、2個以上の水酸基とイオン形成基とを併有する化合物は、上記シェル部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-II)に含まれるものとする。
前記シェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)は、水分散安定性等の観点から、上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を含むことが好ましい。
上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物としては、形成される塗膜の柔軟性等の観点から、分子中に2個以上の水酸基と1個以上のカルボキシル基を有する化合物を好適に使用することができる。
上記活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物を使用する場合、その使用量は、水分散安定性及び形成される塗膜の耐水性等の観点から、シェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)を構成する化合物の総量に対して、2~40質量%の範囲内であることが好ましく、3~30質量%の範囲内であることがさらに好ましく、5~20質量%の範囲内であることが特に好ましい。
活性水素基とイオン形成基とを併有する化合物として、カルボキシル基、又はスルホン酸基を含有する化合物を使用した場合、塩を形成し親水性化するために中和剤として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のアミン化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物を用いることができる。これらの中和剤も、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記中和剤としては、形成される塗膜のガラス接着性、特に本発明の水性塗料組成物を比較的低温で硬化させた場合に形成される塗膜のガラス接着性等の観点から、N-メチルモルホリン及び/又はN-エチルモルホリンが好ましく、N-メチルモルホリンがより好ましい。ここで、上記比較的低温で硬化させる場合の加熱温度は60~110℃の範囲内であることが好ましく、65~100℃の範囲内であることがより好ましく、70~90℃の範囲内であることがさらに好ましい。
カルボキシル基もしくはスルホン酸基に対する中和率、は通常50~100モル%とすることができる。
シェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)は、後に記述するコア部を構成するウレタン樹脂(A’-I)のグラフト工程において、グラフト効率を向上させる観点から、水酸基が残存するよう水酸基過剰の条件で合成されることが好ましい。
シェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)の、シェル部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-II)とシェル部を構成するウレタン樹脂のポリイソシアネート成分(a’2-II)の含有割合は、製造性等の観点から、シェル部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-II)の有する活性水素基/シェル部を構成するウレタン樹脂のポリイソシアネート成分(a’2-II)の有するイソシアネート基のモル比で、1.01/1~3.0/1の範囲内であることが好ましく、1.05/1~2.0/1の範囲内であることがさらに好ましい。
シェル部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-II)とシェル部を構成するウレタン樹脂のポリイソシアネート成分(a’2-II)のウレタン化反応には、必要に応じて触媒を使用することができる。
上記触媒としては、例えば、トリス(2-エチルヘキサン酸)ビスマス(III)等のカルボン酸ビスマス化合物;ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の有機スズ化合物;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン化合物等を挙げることができる。
これらのうち、比較的低毒性であり、環境適応性等の観点から、ビスマス系触媒が好ましい。
上記ウレタン化反応は、50~120℃で行なうことが好ましい。
上記シェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)の合成において、有機溶剤としては、イソシアネートに不活性で、ウレタン化反応に支障を及ぼさない有機溶剤が使用可能である。このような有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤等を挙げることができる。なかでも上記のうち、水分散安定性等の観点から、ケトン系溶剤、エステル系溶剤を好適に使用することができる。
以上により、シェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)を得ることができる。
プレポリマーの合成(コア部を構成するウレタン樹脂(A’-I)のグラフト)
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)は、上記シェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)の存在下にコア部を構成するウレタン樹脂(A’-I)を合成(すなわち、ウレタン樹脂(A’-II)ユニットに続き、ウレタン樹脂(A’-I)ユニットを合成)して、シェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)にコア部を構成するウレタン樹脂(A’-I)をグラフトすることにより、2段階でプレポリマーを合成し、水系媒体中に分散(必要に応じてさらに鎖伸長反応)することにより得られるコアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子であることが好ましい。
コア部を構成するウレタン樹脂(A’-I)は、コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)のコア部を構成するものであり、例えば、コア部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-I)及びコア部を構成するウレタン樹脂のポリイソシアネート成分(a’2-I)を使用して合成することができる。
前記コア部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-I)としては、前記ポリオール成分(a1)を使用することができ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なかでも、形成される塗膜の鮮映性及び耐チッピング性等の観点から、上記コア部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-I)が、少なくともその一種として、前記ポリエーテルポリオール(a1-2)を含有することが好ましい。
上記ポリエーテルポリオール(a1-2)としては、形成される塗膜の鮮映性及び耐チッピング性等の観点から、ポリテトラメチレングリコールを含有することが好ましい。
上記コア部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-I)が、上記ポリエーテルポリオール(a1-2)を含有する場合、該ポリエーテルポリオール(a1-2)の数平均分子量は、製造性及び形成される塗膜の鮮映性等の観点から、500~10000の範囲内であることが好ましく、1000~5000の範囲内であることがさらに好ましく、1600~4000の範囲内であることが特に好ましい。
前記コア部を構成するウレタン樹脂のポリイソシアネート成分(a’2-I)としては、前記ポリイソシアネート成分(a2)を使用することができ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
コア部を構成するウレタン樹脂(A’-I)は、最終的に得られるプレポリマーをイソシアネート末端とする観点から、イソシアネート基が残存するようイソシアネート基過剰の条件で合成されることが好ましい。
コア部を構成するウレタン樹脂(A’-I)の、コア部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-I)とコア部を構成するウレタン樹脂のポリイソシアネート成分(a’2-I)の含有割合は、製造性等の観点から、コア部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-I)の有する活性水素基/コア部を構成するウレタン樹脂のポリイソシアネート成分(a’2-I)の有するイソシアネート基とのモル比で、1/1.01~1/3.0の範囲内であることが好ましく、1/1.05~1/2.5の範囲内であることがさらに好ましい。
コア部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-I)とコア部を構成するウレタン樹脂のポリイソシアネート成分(a’2-I)のウレタン化反応には、必要に応じて触媒を使用することができる。
上記触媒としては、例えば、トリス(2-エチルヘキサン酸)ビスマス(III)等のカルボン酸ビスマス化合物;ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクトエート、スタナスオクトエート等の有機スズ化合物;トリエチルアミン、トリエチレンジアミン等の3級アミン化合物等を挙げることができる。
これらのうち、比較的低毒性であり、環境適応性の観点からビスマス系触媒が好ましい。
上記ウレタン化反応は、50~120℃で行なうことが好ましい。
上記プレポリマーの合成(コア部を構成するウレタン樹脂(A’-I)のグラフト)において、有機溶剤としては、イソシアネートと不活性で、ウレタン化反応に支障を及ぼさない有機溶剤が使用可能であり、このような有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤等を挙げることができる。なかでも上記のうち、水分散安定性等の観点から、ケトン系溶剤、エステル系溶剤を好適に使用することができる。
また、上記プレポリマーのイソシアネート基は、必要に応じて一部又は全部をブロック剤によりブロックして、ブロックイソシアネート基としてもよい。
以上により、コア部を構成するウレタン樹脂(A’-I)とシェル部を構成するウレタン樹脂(A’-II)がグラフトした構造を有するプレポリマーを製造することができる。
上記プレポリマーの酸価は、水分散安定性及び形成される塗膜の耐水性等の観点から、5~40mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、5~30mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましく、10~30mgKOH/gの範囲内であることが特に好ましい。
上記プレポリマーの水酸基価は、製造安定性及び形成される塗膜の鮮映性及び耐水性等の観点から、0~100mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、1.0~50mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましく、1.0~30mgKOH/gの範囲内であることが特に好ましい。
上記プレポリマーの数平均分子量は、製造性等の観点から、2000~50000の範囲内であることが好ましく、2000~30000の範囲内であることがさらに好ましく、3000~15000の範囲内であることが特に好ましい。
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)の合成
上記プレポリマーに、必要に応じ前記イオン形成基に対する中和剤、及び脱イオン水を添加して、水分散(乳化)を行い、必要に応じてさらに、鎖伸長反応、脱溶剤を行うことによりコアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)の水分散液を得ることができる。
該中和剤としては、上記イオン形成基を中和できるものであれば特に制限はなく、中和のための塩基性化合物としては、例えば、前記ウレタン樹脂粒子(A)の中和剤において例示した中和剤を挙げることができる。これらの中和剤は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記中和剤のうち、形成される塗膜のガラス接着性、特に本発明の水性塗料組成物を比較的低温で硬化させた場合に形成される塗膜のガラス接着性等の観点から、N-メチルモルホリン及び/又はN-エチルモルホリンが好ましく、N-メチルモルホリンがより好ましい。ここで、上記比較的低温で硬化させる場合の加熱温度は60~110℃の範囲内であることが好ましく、65~100℃の範囲内であることがより好ましく、70~90℃の範囲内であることがさらに好ましい。
これらの中和剤は、コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)の水分散液のpHが最終的に6.0~9.0程度となるような量で用いることが望ましい。
上記中和剤を添加する場合、中和剤の添加量としては、カルボキシル基等の酸基に対して、0.1~1.5当量の範囲内であることが好ましく、0.3~1.2当量の範囲内であることがさらに好ましい。
水分散液を得る手段としては、通常の撹拌機による分散で可能であるが、より粒子径の細かい均一な水分散液を得るためにホモミキサー、ホモジナイザー、ディスパー、ラインミキサー等を使用することができる。
上記プレポリマーの鎖伸長反応(高分子量化)を行う場合、必要に応じて水以外の鎖伸長剤を添加して、ウレタンプレポリマーと鎖伸長剤とを反応させることもできる。鎖伸長剤としては、活性水素を有する公知の鎖伸長剤を使用することができる。具体的には、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、シクロヘキサンジアミン、シクロヘキシルメタンジアミン、イソホロンジアミン等のジアミン化合物、ジエチレントリアミン等のトリアミン化合物、ヒドラジン等を挙げることができる。
鎖伸長度向上等の観点からは、ジエチレントリアミン等のトリアミン化合物等、3官能以上のアミン化合物を好適に使用することができる。また、形成される塗膜の柔軟性等の観点からは、エチレンジアミン等のジアミン化合物を好適に使用することができる。
また、反応性官能基を導入する目的で、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン等のアミンと水酸基を1分子中にそれぞれ1つ以上持つ化合物も、好適に使用できる。
前記コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)の、前記コア部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-I)と及びシェル部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-II)の質量比率(a’1-I)/(a’1-II)は、ガラス接着性、鮮映性及び耐チッピング性等の観点から、60/40~20/80の範囲内であることが好ましく、50/50~20/80の範囲内であることがさらに好ましく、40/60~20/80の範囲内であることが特に好ましい。
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)の数平均分子量は、水分散安定性及び製造性等の観点から、2000以上であることが好ましく、5000以上であることがさらに好ましく、10000以上であることが特に好ましい。
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)の平均粒子径は、水分散安定性及び貯蔵安定性等の観点から、10~5000nmの範囲内であることが好ましく、10~1000nmの範囲内であることがさらに好ましく、20~500nmの範囲内であることが特に好ましく、50~300nmの範囲内であることがさらに特に好ましい。
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)は、水分散安定性及び形成される塗膜の耐水性等の観点から、酸価が5~40mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、5~30mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましく、10~30mgKOH/gの範囲内であることが特に好ましい。
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)は、形成される塗膜の耐水性等の観点から、水酸基価が0~100mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、0~50mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましく、0~10mgKOH/gの範囲内であることが特に好ましい。
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)の水分散体中の固形分濃度は、20~50質量%の範囲内であることが好ましく、30~50質量%の範囲内であることがより好ましい。固形分濃度が50質量%以下であると、乳化が容易となり、水分散体を容易に得ることができる。固形分濃度が20質量%以上であると、溶媒成分が少なくなるので、水性塗料組成物の固形分濃度を高くすることができる。
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)の含有量は、得られる水性塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される塗膜の鮮映性等の観点から、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、1~50質量%の範囲内であることが好ましく、5~45質量%がさらに好ましく、10~40質量%が特に好ましい。
反応性基含有樹脂(B)
反応性基含有樹脂(B)はウレタン樹脂粒子(A)以外の樹脂であり、反応性基含有樹脂(B)の種類については、反応性基を含有する樹脂であれば、特に制限されるものではなく、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。なかでも、形成される塗膜のガラス接着性、平滑性及び耐チッピング性等の観点から、上記反応性基含有樹脂(B)が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びアクリル変性ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有することが好ましく、アクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
また、上記反応性基とは、架橋反応をすることができる反応性を有する官能基をいう。該反応性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、カルボニル基、N-メチロールアルキルエーテル基、イソシアネート基、アミノ基、アルコキシシリル基、カルボジイミド基、ヒドラジド基等を挙げることができる。なかでも、形成される塗膜のガラス接着性、平滑性及び耐チッピング性等の観点から、上記反応性基含有樹脂(B)が、反応性基の少なくともその一種として、水酸基及び/又はカルボキシル基を有することが好ましく、水酸基を有することがさらに好ましい。すなわち、上記反応性基含有樹脂(B)は、形成される塗膜のガラス接着性、平滑性及び耐チッピング性等の観点から、水酸基含有樹脂(B’)を含むことが好ましい。
上記反応性基含有樹脂(B)が、水酸基を有する場合、水酸基価が1~200mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~180mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、5~170mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。また、上記反応性基含有樹脂(B)が、カルボキシル基等の酸基を有する場合、酸価は1~200mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~150mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、5~120mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
本発明の水性塗料組成物中の上記反応性基含有樹脂(B)の含有量は、形成される塗膜のガラス接着性及び耐チッピング性等の観点から、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、20~70質量%が好ましく、25~65質量%がより好ましく、30~60質量%が特に好ましい。
〔水酸基含有樹脂(B’)〕
水酸基含有樹脂(B’)は、1分子中に少なくとも1個の水酸基を有する樹脂である。
上記水酸基含有樹脂(B’)としては、例えば、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有アクリル変性ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリエーテル樹脂、水酸基含有ポリカーボネート樹脂、水酸基含有エポキシ樹脂、水酸基含有アルキド樹脂等の樹脂が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。ただし、本発明において、前記ウレタン樹脂粒子(A)に該当する水酸基含有樹脂は、水酸基含有樹脂(B’)に含まないこととする。
また、上記水酸基含有樹脂(B’)は、水中での分散安定性の観点から、イオン形成基を有することが好ましい。該イオン形成基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる、また、上記反応性基含有樹脂(B)が上記イオン形成基を有する場合、塩を形成し親水性化するために中和剤としてトリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のアミン化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物を用いることができる。これらの中和剤も、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記中和剤としては、形成される塗膜のガラス接着性、特に本発明の水性塗料組成物を比較的低温で硬化させた場合に形成される塗膜のガラス接着性等の観点から、N-メチルモルホリン及び/又はN-エチルモルホリンが好ましく、N-メチルモルホリンがより好ましい。ここで、上記比較的低温で硬化させる場合の加熱温度は60~110℃の範囲内であることが好ましく、65~100℃の範囲内であることがより好ましく、70~90℃の範囲内であることがさらに好ましい。
本発明の水性塗料組成物が上記水酸基含有樹脂(B’)を含有する場合、該水酸基含有樹脂(B’)の含有量は、形成される塗膜のガラス接着性及び耐チッピング性等の観点から、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、20~70質量%が好ましく、25~65質量%がより好ましく、30~60質量%が特に好ましい。
上記水酸基含有樹脂(B’)としては、形成される塗膜の鮮映性及び耐チッピング性等の観点から、水酸基含有ポリエステル樹脂(B’1)を含有することが好ましい。
また、上記水酸基含有樹脂(B’)としては、形成される塗膜のガラス接着性及び耐チッピング性等の観点から、水酸基含有アクリル樹脂(B’2)を含有することが好ましい。
水酸基含有ポリエステル樹脂(B’1)
前記水酸基含有ポリエステル樹脂(B’1)は、例えば、アルコール成分として2個以上の水酸基を有するポリオールを使用し、酸成分として2個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸を使用し、該アルコール成分及び酸成分を縮合させることによって得ることができる。
上記ポリオールとしては、1分子中に2以上の水酸基を有する多価アルコールを好適に使用することができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、ジメチロールプロピオン酸等の2価アルコール;これらの2価アルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレート等のエステルジオール化合物;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルジオール化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、ソルビトール、マンニット等の3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε-カプロラクトン等のラクトン化合物を付加させたポリラクトンポリオール化合物;グリセリンの脂肪酸エステル化物等が挙げられる。
また、上記ポリオール以外のアルコール成分を使用することもできる。かかるアルコール成分としては、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ステアリルアルコール、2-フェノキシエタノール等のモノアルコール;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、「カージュラE10」(商品名、HEXION社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)等のモノエポキシ化合物と酸を反応させて得られるアルコール化合物等が挙げられる。
前記ポリカルボン酸としては、ポリエステル樹脂の製造に際して、通常使用される化合物を使用することができる。かかるポリカルボン酸としては、例えば、脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸、芳香族多塩基酸等を挙げることができる。
上記脂肪族多塩基酸は、一般に、1分子中に2以上のカルボキシル基を有する脂肪族化合物、該脂肪族化合物の酸無水物及び該脂肪族化合物のエステル化物である。脂肪族多塩基酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、オクタデカン二酸、クエン酸、ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;該脂肪族多価カルボン酸の無水物;該脂肪族多価カルボン酸の炭素数1~6、好ましくは1~4の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記脂肪族多塩基酸はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記脂環族多塩基酸は、一般に、1分子中に1以上の脂環式構造と2以上のカルボキシル基を有する化合物、該化合物の酸無水物及び該化合物のエステル化物である。脂環式構造は、主として4~6員環構造であることができる。脂環族多塩基酸としては、例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、3-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、4-メチル-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;該脂環族多価カルボン酸の無水物;該脂環族多価カルボン酸の炭素数1~6、好ましくは1~4の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記脂環族多塩基酸はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
上記芳香族多塩基酸は、一般に、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する芳香族化合物、該芳香族化合物の酸無水物及び該芳香族化合物のエステル化物である。芳香族多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多価カルボン酸;該芳香族多価カルボン酸の無水物;該芳香族多価カルボン酸の炭素数1~6、好ましくは1~4の低級アルキルエステル化物等が挙げられる。上記芳香族多塩基酸はそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。上記芳香族多塩基酸としては、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸を使用することが好ましく、なかでも、無水トリメリット酸を用いることがより好ましい。
また、上記脂肪族多塩基酸、脂環族多塩基酸及び芳香族多塩基酸以外の酸成分を使用することもできる。かかる酸成分としては、特に限定されず、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等の脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、シクロヘキサン酸、10-フェニルオクタデカン酸等のモノカルボン酸;乳酸、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシ-4-エトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。これらの酸成分は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
前記水酸基含有ポリエステル樹脂(B’1)の製造方法は、特に限定されるものではなく、通常の方法に従って行なうことができる。例えば、前記アルコール成分と前記酸成分とを、窒素気流中、150~250℃程度で、5~10時間程度加熱し、該アルコール成分と該酸成分のエステル化反応又はエステル交換反応を行なう方法により、該水酸基含有ポリエステル樹脂(B’1)を製造することができる。
上記アルコール成分及び上記酸成分をエステル化反応又はエステル交換反応せしめる際には、反応容器中に、これらの成分を一度に添加してもよいし、一方又は両者を数回に分けて添加してもよい。また、まず、水酸基含有ポリエステル樹脂を合成した後、得られる水酸基含有ポリエステル樹脂に酸無水物を反応させてハーフエステル化させてカルボキシル基及び水酸基含有ポリエステル樹脂としてもよい。また、まず、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂を合成した後、上記アルコール成分を付加させて上記水酸基含有ポリエステル樹脂を製造してもよい。
前記エステル化又はエステル交換反応の際には、反応を促進させるための触媒として、ジブチル錫オキサイド、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸鉛、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等のそれ自体既知の触媒を使用することができる。
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(B’1)は、該樹脂の製造中又は製造後に、脂肪酸、モノエポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物等で変性することができる。
上記脂肪酸としては、例えば、ヤシ油脂肪酸、綿実油脂肪酸、麻実油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸、大豆油脂肪酸、アマニ油脂肪酸、桐油脂肪酸、ナタネ油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸等が挙げられ、上記モノエポキシ化合物としては、例えば、「カージュラE10P」(商品名、HEXION社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)を好適に用いることができる。
また、上記ポリイソシアネート化合物としては、前記ポリイソシアネート成分(a2)において例示したポリイソシアネートを使用することができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記水酸基含有ポリエステル樹脂(B’1)の水酸基価は、形成される塗膜のガラス接着性及び耐チッピング性等の観点から、1~200mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~180mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましく、5~170mgKOH/gの範囲内であることが特に好ましい。
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(B’1)の数平均分子量は、形成される塗膜の耐チッピング性及びガラス接着性等の観点から、500~50,000の範囲内であることが好ましく、1,000~30,000の範囲内であることがさらに好ましく、1,200~10,000の範囲内であることが特に好ましい。
また、前記水酸基含有ポリエステル樹脂(B’1)のガラス転移温度(Tg)は、形成される塗膜の耐チッピング性及びガラス接着性等の観点から、-20℃~50℃の範囲内であることが好ましく、-10℃~40℃の範囲内であることがさらに好ましく、-5℃~-35℃の範囲内であることが特に好ましい。
上記水酸基含有ポリエステル樹脂(B’1)は、水性塗料組成物の安定性等の観点から、カルボキシル基を有することが好ましい。
上記水酸基含有ポリエステル樹脂(B’1)がカルボキシル基を有する場合、該水酸基含有ポリエステル樹脂(B’1)の酸価は、水性塗料組成物の安定性等の観点から、5~150mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、10~140mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましく、15~120mgKOH/gの範囲内であることが特に好ましい。
本発明の水性塗料組成物が上記水酸基含有ポリエステル樹脂(B’1)を含有する場合、該水酸基含有ポリエステル樹脂(B’1)の含有量は、形成される塗膜のガラス接着性及び耐チッピング性等の観点から、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、1~45質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましく、10~35質量%が特に好ましい。
水酸基含有アクリル樹脂(B’2)
水酸基含有アクリル樹脂(B’2)は、通常、水酸基含有重合性不飽和モノマー及び該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、例えば、有機溶媒中での溶液重合法、水性媒体中での乳化重合法等のそれ自体既知の方法によって共重合させることにより製造することができる。
上記乳化重合は、シード重合法、ミニエマルション重合法等の従来公知の方法により行うことができ、例えば、乳化剤の存在下で、重合開始剤を使用して重合性不飽和モノマーを乳化重合することにより、行うことができる。
上記乳化重合は、さらに具体的には、水、又は必要に応じてアルコール等の有機溶剤を含む水性媒体中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下、重合性不飽和モノマー及び重合開始剤を滴下することにより行うことができる。乳化剤と水とを用いて予め乳化した重合性不飽和モノマーを同様に滴下することもできる。
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和基をそれぞれ少なくとも1個有する化合物であり、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ-ト、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物;これらのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール;分子末端に水酸基を有するポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
但し、本発明においては、後述する(xvii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマーに該当するモノマーは、前記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとして規定されるべきものであり、該水酸基含有重合性不飽和モノマーからは除かれる。上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、本明細書において、重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、マレイミド基等が挙げられる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル又はメタクリロイルを意味する。さらに、「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
前記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、前記水酸基含有アクリル樹脂に望まれる特性に応じて適宜選択して使用することができる。該前記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーの具体例としては、以下の(i)~(xix)に記載するものを挙げることができる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
(i)アルキル又はシクロアルキル(メタ)アクリレート:例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート等。
(ii)イソボルニル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート等。
(iii)アダマンチル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、アダマンチル(メタ)アクリレート等。
(iv)トリシクロデセニル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、トリシクロデセニル(メタ)アクリレート等。
(v)芳香環含有重合性不飽和モノマー:例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等。
(vi)アルコキシシリル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等。
(vii)フッ素化アルキル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、パーフルオロブチルエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート;フルオロオレフィン等。
(viii)マレイミド基等の光重合性官能基を有する重合性不飽和モノマー。
(ix)ビニル化合物:例えば、N-ビニルピロリドン、エチレン、ブタジエン、クロロプレン、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル等。
(x)カルボキシル基含有重合性不飽和モノマー:例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、クロトン酸、β-カルボキシエチルアクリレート等。
(xi)含窒素重合性不飽和モノマー:例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、グリシジル(メタ)アクリレートとアミン類との付加物等。
(xii)重合性不飽和基を1分子中に2個以上有する重合性不飽和モノマー:例えば、アリル(メタ)アクリレート、エチレングリコ-ルジ(メタ)アクリレ-ト、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等。
(xiii)エポキシ基含有重合性不飽和モノマー:例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等。
(xiv)分子末端にアルコキシ基を有するポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート。
(xv)スルホン酸基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、アリルスルホン酸、4-スチレンスルホン酸等;これらスルホン酸のナトリウム塩、アンモニウム塩等。
(xvi)リン酸基を有する重合性不飽和モノマー:アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシエチレン)グリコール(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシポリ(オキシプロピレン)グリコール(メタ)アクリレート等。
(xvii)紫外線吸収性官能基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、2-ヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-(3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタクリロイルオキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール等。
(xviii)光安定性重合性不飽和モノマー:例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-(メタ)アクリロイル-4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、1-クロトノイル-4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等。
(xix)カルボニル基を有する重合性不飽和モノマー:例えば、アクロレイン、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、アセトアセトキシエチルメタクリレート、ホルミルスチロール、4~7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等。
前記水酸基含有アクリル樹脂(B’2)は、該樹脂中の水酸基の一部にポリイソシアネート化合物をウレタン化反応させることにより伸長させ高分子量化した、いわゆるウレタン変性アクリル樹脂と併用することもできる。
前記水酸基含有重合性不飽和モノマーの含有量は、該水酸基含有重合性不飽和モノマー及び前記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーの合計量を基準にして、1~50質量%の範囲内であることが好ましく、2~40質量%の範囲内であることがさらに好ましく、3~30質量%の範囲内であることが特に好ましい。
前記水酸基含有アクリル樹脂(B’2)の水酸基価は、形成される塗膜のガラス接着性及び耐チッピング性等の観点から、一般に1~200mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~150mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましく、5~100mgKOH/gの範囲内の範囲内であることが特に好ましい。
前記水酸基含有アクリル樹脂(B’2)の酸価は、形成される塗膜のガラス接着性及び耐水性等の観点から、1~200mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~150mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましく、5~80mgKOH/gの範囲内であることが特に好ましい。
前記水酸基含有アクリル樹脂(B’2)の重量平均分子量は、形成される塗膜のガラス接着性及び耐チッピング性等の観点から、一般に2,000~5,000,000の範囲内であることが好ましく、4,000~1,000,000の範囲内であることがさらに好ましく、8,000~500,000の範囲内であることが特に好ましい。
なお、本明細書において、数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)に基づいて、ポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置として、「HLC-8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(商品名、いずれも東ソー社製)の計4本を使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
前記乳化剤としては、アニオン性乳化剤又はノニオン性乳化剤が好適である。該アニオン性乳化剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸等の有機酸のナトリウム塩やアンモニウム塩が挙げられ、また、該ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等が挙げられる。
1分子中にアニオン性基とポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を有するポリオキシアルキレン基含有アニオン性乳化剤や、1分子中に該アニオン性基とラジカル重合性不飽和基とを有する反応性アニオン性乳化剤を使用してもよく、なかでも、反応性アニオン性乳化剤を使用することが好適である。
上記反応性アニオン性乳化剤としては、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基等のラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のナトリウム塩やアンモニウム塩を挙げることができる。なかでも、形成塗膜の耐水性に優れるため、ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩が好ましい。該スルホン酸化合物のアンモニウム塩としては、例えば、「ラテムルS-180A」(商品名、花王社製)等の市販品を挙げることができる。
上記ラジカル重合性不飽和基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩の中でも、ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩がさらに好ましい。上記ラジカル重合性不飽和基とポリオキシアルキレン基を有するスルホン酸化合物のアンモニウム塩としては、例えば、「アクアロンKH-10」(商品名、第一工業製薬社製)、「SR-1025A」(商品名、旭電化工業社製)等の市販品を挙げることができる。
上記乳化剤は、使用される全モノマーの合計量を基準にして、0.1~15質量%の範囲内で使用することが好ましく、0.5~10質量%の範囲内で使用することがさらに好ましく、1~5質量%の範囲内で使用することが特に好ましい。
前記重合開始剤としては、油溶性、水溶性のいずれのタイプのものであってもよく、例えば、ベンゾイルパーオキシド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、ステアロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシラウレート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルパーオキシアセテート、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2-メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4、4’-アゾビス(4-シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2-メチルプロピオネート)、アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]-プロピオンアミド}等のアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて用いることができる。
また、上記重合開始剤に、必要に応じて、例えば、糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、鉄錯体等の還元剤を併用し、レドックス重合系としてもよい。
上記重合開始剤は、使用される全モノマーの合計質量を基準にして、通常0.1~5質量%の範囲内、特に0.2~3質量%の範囲内で使用することが好ましい。該重合開始剤の添加方法は、特に制限されるものではなく、その種類や量等に応じて適宜選択することができる。例えば、該重合開始剤は、予めモノマー混合物又は水性媒体に含ませてもよく、或いは重合時に一括して添加してもよく又は滴下してもよい。
本発明の水性塗料組成物が上記水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’2)を含有する場合、該水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’2)の含有量は、形成される塗膜のガラス接着性及び耐チッピング性等の観点から、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、1~50質量%が好ましく、5~45質量%がより好ましく、10~40質量%が特に好ましい。
上記水酸基含有アクリル樹脂(B’2)は、形成される塗膜の耐水性、ガラス接着性及び鮮映性等の観点から、コアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子を含むことが好ましい。なかでも、本発明の水性塗料組成物を比較的低温で硬化させた場合に形成される塗膜のガラス接着性及び鮮映性等の観点から、上記水酸基含有アクリル樹脂(B’2)が、グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)を含むことが好ましい。
上記グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)のグラジエントポリマー層とは、組成が連続的に変化する(組成勾配を有する)層構造を有するポリマー層を意味するものである。
より具体的には、例えばモノマーA(モノマー混合物A)からモノマーB(モノマー混合物B)へとモノマー(モノマー混合物)組成が連続的に変化した、組成勾配を有するポリマー層を意味するものである。
上記グラジエントポリマー層は一般に、パワーフィード重合とよばれる公知の重合方法により得ることができる。具体的には、例えば2種類のモノマーA(モノマー混合物A)とモノマーB(モノマー混合物B)とを重合反応する場合には、モノマーB(モノマー混合物B)を、モノマーA(モノマー混合物A)を収容する容器内に滴下しながら、モノマーA(モノマー混合物A)を反応容器に導入して重合反応を行うことにより、グラジエントポリマー層を得ることができる。
上記パワーフィード重合において、合成条件(モノマーA(モノマー混合物A)とモノマーB(モノマー混合物B)との混合開始のタイミング、モノマーB(モノマー混合物B)を、モノマーA(モノマー混合物A)を収容する容器内に滴下する速度と、モノマーA(モノマー混合物A)を反応容器に導入する速度の設定等)により、所望の組成勾配を有するグラジエントポリマー層を得ることができる。
また、上記グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)の「シェル部」は樹脂粒子の最外層に存在する重合体層を意味し、「コア部」は上記シェル部を除く樹脂粒子内層の重合体層を意味し、「コアシェル構造を有する」は上記コア部とシェル部を有する構造を意味するものである。
上記コアシェル構造は、通常、コア部がシェル部に完全に被覆された層構造が一般的であるが、コア部とシェル部の質量比率等によっては、シェル部のモノマー量が層構造を形成せしめるのに不十分な場合もあり得る。そのような場合は、上記のような完全な層構造である必要はなく、コア部の一部をシェル部が被覆した構造であってもよい。
グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)は、重合性不飽和モノマーを共重合成分とする共重合体(I)であるコア部、重合性不飽和モノマーを共重合成分とする共重合体(II)であるシェル部、及びコア部とシェル部の間に存在するグラジエントポリマー層、からなるアクリル樹脂粒子である。
上記重合性不飽和モノマーは、前記水酸基含有重合性不飽和モノマー、及び前記該水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーを、適宜組み合わせて使用することができる。
上記グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)を製造するためには、まず、重合性不飽和モノマー混合物を乳化重合してコア部共重合体(I)のエマルションを調製する。
コア部共重合体(I)のエマルションを調製するための乳化重合は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、乳化剤の存在下で、重合開始剤を使用して重合性不飽和モノマー混合物を乳化重合することにより行うことができる。該乳化剤及び重合開始剤としては、例えば前記の乳化剤及び重合開始剤等を使用することができる。
上記グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)を得るために、続いて、グラジエントポリマー層を形成する。該グラジエントポリマー層は、前記したパワーフィード重合等により形成することができる。
グラジエントポリマー層の形成には、通常、コア部共重合体(I)の乳化重合に使用する重合性不飽和モノマー混合物と、シェル部共重合体(II)の乳化重合に使用する重合性不飽和モノマー混合物とを用いることができる。
上記グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)は、さらに、シェル部共重合体(II)を形成することにより得ることができる。
上記シェル部共重合体(II)を形成するためのモノマー混合物は、必要に応じて、前記重合開始剤、連鎖移動剤、還元剤、乳化剤等の成分を適宜含有することができる。また、当該モノマー混合物は、そのまま滴下することもできるが、該モノマー混合物を水性媒体に分散して得られるモノマー乳化物として滴下することが好ましい。この場合におけるモノマー乳化物の粒子径は特に制限されるものではない。
シェル部共重合体(II)を形成するためのモノマー混合物を重合させる方法としては、例えば、該モノマー混合物又はその乳化物を、一括で滴下するか又は徐々に滴下して、上記コア部共重合体(I)のエマルションに添加し、攪拌しながら適当な温度に加熱する方法を挙げることができる。
グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)中におけるグラジエントポリマー層の比率は、得られる塗膜の耐水性等の観点から、グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)の全共重合成分の総量に対して、20~80質量%程度が好ましく、特に25~75質量%程度が好ましく、さらに特に30~70質量%程度であることが好ましい。
グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)は、得られる塗膜の硬化性、耐チッピング性、密着性及び仕上がり外観等の観点から、水酸基価が、1~150mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~120mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、5~100mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)のコア部は、得られる塗膜の耐水性及び耐チッピング性等の観点から、水酸基価が、0~150mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、5~120mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、10~100mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)のシェル部は、得られる塗膜の耐水性及び耐チッピング性等の観点から、水酸基価が、0~150mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、2~120mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、5~100mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)は、塗料の貯蔵安定性及び得られる塗膜の耐水性等の観点から、酸価が、1~80mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、5~50mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、5~30mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)のコア部は、製造安定性及び塗料の貯蔵安定性等の観点から、酸価が、0~50mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、0~30mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、0~10mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)のシェル部は、塗料の貯蔵安定性及び得られる塗膜の耐水性等の観点から、酸価が、1~100mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、5~80mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、10~50mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)は、得られる塗膜の耐水性、硬度及び耐チッピング性等の観点から、ガラス転移温度が、20℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、30~100℃であることがさらに好ましい。
グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)のコア部は、得られる塗膜の耐水性、硬度、造膜性及び耐チッピング等性の観点から、ガラス転移温度が、-50~50℃の範囲内であることが好ましく、-30~50℃の範囲内であることがより好ましく、0~50℃の範囲内であることがさらに好ましい。
グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)のシェル部は、得られる塗膜の硬度及び耐水性等の観点から、ガラス転移温度が、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、50~100℃の範囲内であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)のガラス転移温度Tgは、下記式により算出される値である。
1/Tg(K)=W1/T1+W2/T2+・・・Wn/Tn
Tg(℃)=Tg(K)-273
式中、W1、W2、・・・Wnは各モノマーの質量分率であり、T1、T2・・・Tnは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度Tg(K)である。
なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、POLYMER HANDBOOK Fourth Edition,J.Brandrup,E.h.Immergut,E.A.Grulke編(1999年)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が50,000程度になるようにして合成し、そのガラス転移温度を示差走査型熱分析により測定したときの値を使用する。
本発明の水性塗料組成物における、グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)の含有量は、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、2~70質量%の範囲内であることが好ましく、5~50質量%の範囲内であることがより好ましく、10~40質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
〔架橋剤(C)〕
架橋剤(C)は特に制限されるものではない。例えば、反応性基含有樹脂(B)の反応性基との反応性を有する架橋剤を使用することができる。
架橋剤(C)としては、公知の架橋剤、具体的には、例えば、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、ポリヒドラジド化合物、ポリセミカルバジド化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン基含有化合物、エポキシ化合物、ポリカルボン酸等を挙げることができる。架橋剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
上記架橋剤(C)は、形成される塗膜のガラス接着性及び耐チッピング性等の観点から、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤を含むことが好ましく、アミノ樹脂及び/又はブロック化ポリイソシアネート化合物を含むことがさらに好ましく、アミノ樹脂及びブロック化ポリイソシアネート化合物を含むことが特に好ましい。
アミノ樹脂
上記アミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を適当なアルコールによって部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いうるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-エチル-1-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール等が挙げられる。
上記アミノ樹脂としてはメラミン樹脂が好ましい。特に、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂が好ましく、メチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂がより好ましい。
また、上記メラミン樹脂の重量平均分子量は、450~6,000の範囲内であることが好ましく、500~4,000の範囲内であることがさらに好ましく、550~3,000の範囲内であることが特に好ましい。
メラミン樹脂としては市販品を使用することができる。市販品の商品名としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル211」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル254」、「サイメル303」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル370」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1130」(以上、オルネクスジャパン社製);「ユーバン20SE60」、「ユーバン28-60」(以上、三井化学社製);等が挙げられる。
架橋剤(C)として、上記メラミン樹脂を使用する場合、必要に応じて硬化触媒として、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸;該スルホン酸とアミンとの中和塩;リン酸エステル化合物とアミンとの中和塩等を使用することができる。
前記アミノ樹脂は、例えば、水酸基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
ポリイソシアネート化合物
前記ポリイソシアネート化合物は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物である。
前記ポリイソシアネート化合物は、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、該ポリイソシアネートの誘導体等が包含される。
上記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート;2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)又はその混合物、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート等を挙げることができる。
前記芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-もしくは1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)又はその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート等を挙げることができる。
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4’-もしくは4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート又はその混合物、2,4-もしくは2,6-トリレンジイソシアネート又はその混合物、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタン-2,2’,5,5’-テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート等を挙げることができる。
前記ポリイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。
上記ポリイソシアネート及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。これらポリイソシアネートのうち、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらの誘導体をそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することが好適である。
また、前記ポリイソシアネート化合物としては、上記ポリイソシアネート及びその誘導体と、多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂又は水とをイソシアネート基過剰の条件でウレタン化反応させてなるプレポリマーを使用することもできる。 架橋剤(C)としてポリイソシアネート化合物を使用する場合、必要に応じて硬化触媒として、有機金属化合物、酸化合物、塩基化合物等を使用することができる。
ポリイソシアネート化合物は、例えば、水酸基或いはアミノ基を含有する樹脂の架橋剤として使用することができる。
ブロック化ポリイソシアネート化合物
前記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、前記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物である。
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、tert-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等のアミン系;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N-フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール又はイミダゾール誘導体;2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
ブロック剤としては、なかでも、オキシム系のブロック剤、活性メチレン系のブロック剤、ピラゾール又はピラゾール誘導体が好適である。
また、上記ブロック剤として、1個以上のヒドロキシル基と1個以上のカルボキシル基を有するヒドロキシカルボン酸、例えば、ヒドロキシピバリン酸、ジメチロールプロピオン酸等を使用することもできる。
本発明の水性塗料組成物において、上記ブロック化ポリイソシアネートを使用する場合、上記ヒドロキシカルボン酸を用いてイソシアネート基をブロックした後、該ヒドロキシカルボン酸のカルボキシル基を中和して水分散性を付与したブロック化ポリイソシアネート化合物を好適に用いることができる。
上記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、形成される塗膜のガラス接着性及び鮮映性、特に本発明の水性塗料組成物を比較的低温で硬化させた場合に形成される塗膜のガラス接着性及び鮮映性等の観点から、少なくとも2個のイソシアネート反応性官能基を有するスペーサーに由来する構造を含むものであることが好ましい。
上記官能基は、イソシアネート基に対して反応性を有している官能基であれば特に制限されない。該イソシアネート反応性官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基等が挙げられ、なかでも水酸基、アミノ基が好ましく、特に、水酸基が好ましい。
したがって、スペーサー、少なくとも2個の水酸基を有する化合物であるか、又は少なくとも2個のアミノ基を有する化合物であることが好ましく、なかでも少なくとも2個の水酸基を有する化合物であることが好ましい。
上記少なくとも2個の水酸基を有する化合物としては、例えば、低分子量のものとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコールなどの2価のアルコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトールなどの3価アルコールなどを挙げることができ、高分子量のものとして、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオールなどを挙げることができる。なかでも、得られる塗膜の耐水性及び耐チッピング性の観点から、ポリエーテルポリオールが好ましい。
上記ポリエーテルポリオールとしては、前記ポリオール成分(a1)において例示したポリエーテルポリオールを使用することができる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
また、前記少なくとも2個のアミノ基を有する化合物としては、例えば、ポリエーテルアミンを挙げることができる。
上記ポリエーテルアミンは、市販品を使用することもできる。該市販品としては、例えば、HUNTSMAN社製の「JEFFAMINE D-400」、「JEFFAMINE D-2000」、「JEFFAMINE D-4000」、「JEFFAMINE ED-600」、「JEFFAMINE ED-900」、「JEFFAMINE ED-2003」、「ELASTAMINE RT-1000」、「JEFFAMINE T-403」、「JEFFAMINE T-3000」、「JEFFAMINE T-5000」などを挙げることができる。
上記スペーサーの分子量としては、本発明の水性塗料組成物の低温硬化性及び形成される塗膜の硬度、耐チッピング性並びに耐水性の観点から、500~6,000の範囲内であることが好ましく、800~5,000の範囲内であることがより好ましく、1,500~3,500の範囲内であることがさらに好ましい。
上記スペーサーの官能基数としては、本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性の観点から、2~3個であることが好ましく、2個であることがさらに好ましい。
ポリイソシアネート化合物中の一部のイソシアネート基と、スペーサーとを反応させることにより、スペーサーに由来する構造を含むポリイソシアネート化合物を形成することができる。この場合、本発明の水性塗料組成物の貯蔵安定性及び形成される塗膜の硬度、耐水性並びにブロック化ポリイソシアネート化合物の製造安定性の観点から、ポリイソシアネート化合物とスペーサーとの比率は、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基1モルを基準として、スペーサー中の活性水素のモル数が0.03~0.6モルの範囲内にあることが好ましい。スペーサーに由来する構造を含むポリイソシアネート化合物をブロック化することにより、スペーサーに由来する構造を含むブロック化ポリイソシアネート化合物を形成することができる。
上記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、形成される塗膜のガラス接着性及び鮮映性、特に本発明の水性塗料組成物を比較的低温で硬化させた場合に形成される塗膜のガラス接着性及び鮮映性等の観点から、重量平均分子量が20,000~200,000の範囲内であるブロック化ポリイソシアネート化合物を含むことが好ましい。ここで、上記比較的低温で硬化させる場合の加熱温度は60~110℃の範囲内であることが好ましく、65~100℃の範囲内であることがより好ましく、70~90℃の範囲内であることがさらに好ましい。
架橋剤(C)としてポリイソシアネート化合物を使用する場合、必要に応じて硬化触媒として、有機金属化合物、酸化合物、塩基化合物等を使用することができる。
本発明の水性塗料組成物において、上記架橋剤(C)の含有量は、形成される塗膜のガラス接着性及び耐チッピング性等の観点から、水性塗料組成物中の樹脂固形分量を基準として、5~55質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、15~45質量%が特に好ましい。
〔その他の成分〕
本発明の水性塗料組成物は、さらに必要に応じて、ウレタン樹脂粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び架橋剤(C)以外の樹脂、顔料、有機溶剤、硬化触媒、分散剤、沈降防止剤、消泡剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面調整剤等を含有することができる。
上記ウレタン樹脂粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び架橋剤(C)以外の樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂粒子(A)以外の反応性基を有しないポリウレタン樹脂、反応性基を有しないアクリル樹脂、反応性基を有しないポリエステル樹脂、反応性基を有しないアクリル変性ポリエステル樹脂、反応性基を有しないアクリル変性ポリウレタン樹脂、反応性基を有しないポリエーテル樹脂、反応性基を有しないポリカーボネート樹脂、反応性基を有しないエポキシ樹脂、反応性基を有しないアルキド樹脂、反応性基を有しないポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
上記顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等を挙げることができる。該顔料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明の水性塗料組成物が、上記顔料を含有する場合、該顔料の配合量は、該水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、1~200質量部の範囲内であることが好ましく、20~160質量部の範囲内であることがさらに好ましく、50~140質量部の範囲内であることが特に好ましい。
上記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサジン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などが挙げられ、なかでも、酸化チタン、カーボンブラックを好適に使用することができる。
水性塗料組成物が、上記着色顔料を含有する場合、該着色顔料の配合量は該水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、1~180質量部の範囲内であることが好ましく、5~150質量部の範囲内であることがさらに好ましく、15~130質量部の範囲内であることが特に好ましい。
また、前記体質顔料としては、例えば、硫酸バリウム、タルク、クレー、カオリン、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナホワイト等が挙げられる。該体質顔料としては、塗料安定性及び平滑性等の観点から硫酸バリウム、タルクを好適に使用することができる。
水性塗料組成物が、上記体質顔料を含有する場合、該体質顔料の配合量は該水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、1~180質量部の範囲内であることが好ましく、5~140質量部の範囲内であることがさらに好ましく、10~120質量部の範囲内であることが特に好ましい。
また、前記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム(蒸着アルミニウムも含む)、銅、亜鉛、真ちゅう、ニッケル、ガラスフレーク、酸化アルミニウム、雲母、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された酸化アルミニウム、酸化チタン及び/又は酸化鉄で被覆された雲母等が挙げられる。なかでもが好ましい。アルミニウム顔料には、ノンリーフィング型アルミニウム顔料、アルミニウム顔料を使用することとリーフィング型アルミニウム顔料があるが、いずれも使用することができる。
上記光輝性顔料はりん片状であることが好ましい。また、該光輝性顔料としては、長手方向寸法が1~100μmの範囲内、特に5~40μmの範囲内、厚さが0.001~5μmの範囲内、特に0.01~2μmの範囲内にあるものが適している。
水性塗料組成物が、上記光輝性顔料を含有する場合、該光輝性顔料の配合量は、該水性塗料組成物中の樹脂固形分100質量部を基準として、0.1~100質量部の範囲内であることが好ましく、1~50質量部の範囲内であることがさらに好ましく、3~25質量部の範囲内であることが特に好ましい。
前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル等のエステル系溶剤;イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル系溶剤;芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤等が挙げられる。
水性塗料組成物は、その使用に際して、必要に応じて水及び/又は有機溶剤等を添加して希釈し、適正粘度に調整することにより塗装することができる。
適正粘度は、塗料組成により異なるが、例えば、フォードカップ粘度計No.4を用いて調整した場合、20℃において、通常、20~70秒程度とすることができ、25~50秒程度の粘度とすることが好ましい。
また、上記において、水性塗料組成物の塗装固形分濃度は、通常、5~70質量%程度であり、10~60質量%程度であることが好ましい。
水性塗料組成物は、一液型塗料又は多液型塗料のいずれであっても良いが、塗料の混合工程が無く生産性に優れる、塗装機械のメンテナンスの簡略化ができる等の観点から、一液型塗料であることが好ましい。
水性塗料組成物は、それ自体既知の方法、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等により被塗物に塗装することができ、塗装の際、静電印加を行ってもよい。これらの内、エアスプレー塗装、回転霧化塗装が好ましい。また、かかる塗装方法は、所望の膜厚が得られるまで、1回ないし数回に分けて行うことができる。
水性塗料組成物の塗布量は、乾燥膜厚として、通常、5~40μmとなる塗布量であり、7~35μmとなる塗布量であることが好ましく、10~30μmとなる塗布量であることがさらに好ましい。
本発明の水性塗料組成物を塗装して得られる15μmの乾燥膜厚の塗膜の鉛筆硬度は、形成される塗膜のガラス接着性等の観点から、HB以上であることが好ましく、F以上であることがさらに好ましい。
上記鉛筆硬度は、例えば、試料をガラス板に乾燥塗膜に基づく膜厚が15μmになるように塗装し、80℃30分間の乾燥条件によって乾燥塗膜を形成した後、塗膜面に対し約45°の角度に鉛筆の芯を当て、芯が折れない程度に強く塗膜面に押し付けながら、鉛筆を前方に均一な速さで焼く10mm動かした結果、塗膜が破れなかった最も硬い鉛筆の硬度記号である。
[塗膜形成方法]
本発明の水性塗料組成物は、比較的低温で硬化させた場合においても、高い硬度や耐水性等の優れた塗膜性能を示す塗膜を形成することができるため、被塗物上に、本発明の水性塗料組成物を塗装して未硬化の着色塗膜を形成した後、該未硬化の着色塗膜を60~110℃の範囲内、好ましくは65~100℃の範囲内、より好ましくは70~90℃の範囲内の温度で加熱して硬化させる塗膜形成方法において好適に用いることができる。
上記塗膜形成方法の好ましい態様としては、下記の方法(I)を挙げることができる。
方法(I)
工程(I-1):被塗物上に本発明の水性塗料組成物を塗装して、未硬化の着色塗膜を形成する工程、及び
工程(I-2):前記工程(I-1)で形成された未硬化の着色塗膜を60~110℃の範囲内の温度で加熱して硬化させる工程、を含む塗膜形成方法。
被塗物としては、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バスなどの自動車車体の外板部及び内板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器などの家庭電気製品の外板部などを挙げることができる。これらの内、自動車車体の外板部、内板部及び自動車部品が好ましい。
これらの被塗物の材質としては、特に限定されるものではない。例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、亜鉛合金(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Feなど)メッキ鋼などの金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂類、各種のFRPなどのプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリートなどの無機材料;木材;紙、布などの繊維材料などを挙げることができる。これらの内、金属材料及びプラスチック材料が好ましい。
また、塗膜が適用される被塗物面としては、自動車車体外板部及び内板部、自動車部品、家庭電気製品、これらを構成する鋼板などの金属基材などの金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理などの表面処理が施されたものであってもよい。
表面処理が施されていても施されていなくてもよい対象物の上には、さらに塗膜を形成してもよい。例えば、基材である被塗物に、必要に応じて表面処理を施し、その上に下塗り塗膜を形成してもよい。上記下塗り塗膜は、例えば被塗物が自動車車体である場合には、自動車車体の塗装において通常使用されるそれ自体既知の下塗り用の塗料を使用して形成することができる。
なかでも、上記被塗物が、表面処理が施されていても施されていなくてもよい金属基材上に、電着塗料、好ましくはカチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成されたものであることが好ましく、該電着塗料、好ましくはカチオン電着塗料によって形成された下塗り塗膜が加熱硬化されたものであることがさらに好ましい。
[複層塗膜形成方法]
本発明の水性塗料組成物は、着色塗膜、ベースコート塗膜及びクリヤーコート塗膜からなる複層塗膜を、3コート1ベーク方式で自動車車体等の被塗物に形成する場合に、該着色塗膜形成用として、好適に用いることができる。この場合の塗膜形成方法は、下記方法IIに従って、行うことができる。
方法(II)
工程(II-1):被塗物に、着色塗料組成物(X)を塗装して未硬化の着色塗膜を形成する工程、
工程(II-2):(II-2)前記未硬化の着色塗料組成物(X)によって形成された塗膜上に、ベースコート塗料組成物(Y)を塗装して未硬化のベースコート塗膜を形成する工程、
工程(II-3):前記未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物(Z)を塗装して未硬化のクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
工程(II-4):前記未硬化の着色塗膜、前記未硬化のベースコート塗膜及び前記未硬化のクリヤーコート塗膜を加熱して、同時に硬化させる工程、を含む複層塗膜形成方法であって、該着色塗料組成物(X)が本発明の水性塗料組成物である複層塗膜形成方法。
被塗物としては、例えば、前記塗膜形成方法の被塗物において例示した被塗物を挙げることができる。なかでも、被塗物としては、下塗り塗膜を形成した自動車車体等が好ましい。なかでも、上記被塗物が、表面処理が施されていても施されていなくてもよい金属基材上に、電着塗料、好ましくはカチオン電着塗料によって下塗り塗膜が形成されたものであることが好ましく、該電着塗料、好ましくはカチオン電着塗料によって形成された下塗り塗膜が加熱硬化されたものであることがさらに好ましい。 上記ベースコート塗料組成物としては、カルボキシル基、水酸基などの架橋性官能基を有するアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂などのアミノ樹脂、ブロックされていてもよいポリイソシアネート化合物などの架橋剤とを、顔料、増粘剤、及び任意選択のその他の成分と共に塗料化したものを使用することができる。
なかでも、上記ベースコート塗料組成物が、上記基体樹脂として水酸基含有樹脂を含有し、かつ上記架橋剤として水酸基との反応性を有する架橋剤を含有することが好ましい。上記水酸基含有樹脂としては、前記水酸基含有樹脂(B’)の説明欄において記載した水酸基含有樹脂を使用することができる。また、上記水酸基との反応性を有する架橋剤としては、前記架橋剤(C)の説明欄において記載した架橋剤を使用することができる。
上記水酸基含有樹脂は、水中での分散安定性の観点から、イオン形成基を有することが好ましい。該イオン形成基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる、また、上記水酸基含有樹脂が上記イオン形成基を有する場合、塩を形成し親水性化するために中和剤としてトリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン等のアミン化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物を用いることができる。これらの中和剤も、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記中和剤としては、上記方法IIにおいて複層塗膜を比較的低温で硬化させた場合に形成される複層塗膜のガラス接着性及び鮮映性等の観点から、N-メチルモルホリン及び/又はN-エチルモルホリンが好ましく、N-メチルモルホリンがより好ましい。
また、上記反水酸基含有樹脂は、上記方法IIにおいて複層塗膜を比較的低温で硬化させた場合に形成される複層塗膜のガラス接着性及び鮮映性等の観点から、前記グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)を含むことが好ましい。
また、上記架橋剤は、上記方法IIにおいて複層塗膜を比較的低温で硬化させた場合に形成される複層塗膜のガラス接着性及び鮮映性等の観点から、重量平均分子量が20,000~200,000の範囲内であるブロック化ポリイソシアネート化合物を含むことが好ましい。
また、上記比較的低温で硬化させる場合の加熱温度は60~110℃の範囲内であることが好ましく、65~100℃の範囲内であることがより好ましく、70~90℃の範囲内であることがさらに好ましい。
上記クリヤー塗料組成物としては、自動車車体等の塗装用として公知の熱硬化性クリヤー塗料組成物をいずれも使用できる。該熱硬化性クリヤー塗料組成物としては、例えば、架橋性官能基を有する基体樹脂及び硬化剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物、水性熱硬化性塗料組成物、粉体熱硬化性塗料組成物等を挙げることができる。なかでも、形成される複層塗膜の仕上がり外観等の観点から、架橋性官能基を有する基体樹脂及び架橋剤を含有する有機溶剤型熱硬化性塗料組成物が好ましい。
上記基体樹脂が有する架橋性官能基としては、例えば、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、シラノール基等を挙げることができる。基体樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂などを挙げることができる。硬化剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、カルボキシル基含有化合物、カルボキシル基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、エポキシ基含有化合物などを挙げることができる。
上記クリヤー塗料組成物の基体樹脂/硬化剤の組合せとしては、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物、カルボキシル基含有樹脂/エポキシ基含有樹脂、水酸基含有樹脂/ブロック化ポリイソシアネート化合物、水酸基含有樹脂/メラミン樹脂等が好ましく、水酸基含有樹脂/ポリイソシアネート化合物がより好ましい。
また、上記クリヤー塗料組成物は、一液型塗料であってもよいし、二液型ウレタン樹脂塗料等の多液型塗料であってもよい。
また、上記クリヤー塗料組成物には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有させることができ、さらに体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、表面調整剤等を適宜含有せしめることができる。
クリヤー塗料組成物の塗装方法としては、特に限定されないが、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の塗装方法でウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法において、必要に応じて、静電印加を行なってもよい。このうちエアスプレー塗装又は回転霧化塗装が特に好ましい。クリヤー塗料組成物の塗布量は、通常、硬化膜厚として、10~70μmとなる量とすることが好ましく、20~50μmとなる量とすることがさらに好ましい。
また、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装及び回転霧化塗装を行なう場合には、クリヤー塗料組成物の粘度を、該塗装に適した粘度範囲、通常、フォードカップNo.4粘度計において、20℃で15~60秒程度、特に20~50秒程度の粘度範囲となるように、有機溶剤等の溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
前記加熱は公知の手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉などの乾燥炉を適用できる。加熱温度は60~110℃の範囲内であることが好ましく、65~100℃の範囲内であることがさらに好ましく、70~90℃の範囲内であることが特に好ましい。加熱時間は、特に制限されないが、10~40分間の範囲内であることが好ましく、20~40分間の範囲内であることがさらに好ましい。
以下、製造例、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらにより限定されるものではない。各例において、「部」および「%」は、特記しない限り、質量基準による。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づくものである。
ウレタン樹脂粒子(A)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、「ETERNACOLL UC-100」(商品名、宇部興産社製、平均分子量が1000であり、炭素数6のシクロアルキレン基を有するポリカーボネートジオール)70部、「PTMG3000」(商品名、三菱ケミカル社製、平均分子量が3000、融点が21℃であるポリテトラメチレンエーテルグリコール)30部、ジメチロールプロピオン酸6.7部、「ネオスタン U-600」(商品名、日東化成製、ビスマス系触媒)0.06部及びメチルエチルケトン28.0部を仕込み、撹拌しながら70℃まで昇温させた後、イソホロンジイソシアネート33部を30分かけて滴下し、70℃を保持して撹拌を続け、遊離イソシアネート基含有量8.0%のNCO末端プレポリマーを得た。得られた反応物を30℃に冷却し、N-メチルモルホリン4.1部及び脱イオン水150部を加え、乳化後、これに5%ジエチレントリアミン水溶液18部を添加し、120分間撹拌して、鎖伸長反応を行なった。次いで、メチルエチルケトンを減圧加熱下に留去し、脱イオン水で濃度調整して、固形分濃度40%、酸価20mgKOH/g、平均粒子径110nm、最低造膜温度31℃、ガラス転移温度85℃、-20℃における破断伸び率387%のウレタン樹脂粒子分散液(A-1)を得た。なお、上記最低造膜温度は、JIS K 6828-2:2003に準じ、温度勾配試験装置(理学工業社製)を用いて、設定温度域-25~90℃、乾燥膜厚50μmの条件により測定した。
製造例2~5
製造例1において、配合組成を下記表1に示す通りとする以外は、製造例1と同様にして、ウレタン樹脂粒子分散液(A-2)~(A-5)を得た。
Figure 2022116396000001
なお、表中の(注1)~(注3)は以下の意味を有する。
(注1)「ETERNACOLL UM-90(3/1)」:商品名、宇部興産社製、平均分子量が900、融点が50±5℃であり、炭素数6のシクロアルキレン基を有するポリカーボネートジオール、
(注2)「ETERNACOLL UH-200」:商品名、宇部興産社製、平均分子量が2000、融点が50±3℃であり、シクロアルキレン基を有しないポリカーボネートジオール、
(注3)「PTMG2000」:商品名、三菱ケミカル社製、数平均分子量が2000、融点が20℃であるポリテトラメチレンエーテルグリコール。
コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)の製造
製造例6
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、シェル部の原材料である「ETERNACOLL UC-100」(商品名、宇部興産社製、平均分子量が1000、融点が54±5℃であり、炭素数6のシクロアルキレン基を有するポリカーボネートジオール)70部、ジメチロールプロピオン酸6.8部、「ネオスタン U-600」(商品名、日東化成社製、ビスマス系触媒)0.06部及びメチルエチルケトン28部を仕込み、撹拌しながら80℃まで昇温させた後、イソホロンジイソシアネート22.8部を添加し、80℃を保持して撹拌を続け、遊離イソシアネート基含有量0.5%のNCO末端プレポリマーを得た。
次いで、この反応生成物に、コア部の原材料である「PTMG3000」(商品名、三菱ケミカル社製、数平均分子量が3000、融点が21℃であるポリテトラメチレンエーテルグリコール)30.6部、イソホロンジイソシアネート10.6部及びメチルエチルケトン28.0部をさらに添加して撹拌し、遊離イソシアネート基含有量7.9%のNCO末端プレポリマーを得た。得られた反応物を30℃に冷却し、N-メチルモルホリン4.1部及び脱イオン水150部を加え、乳化後、これに5%ジエチレントリアミン水溶液20.0部を添加し、120分間撹拌して、鎖伸長反応を行なった。次いで、メチルエチルケトンを減圧加熱下に留去し、脱イオン水で濃度調整して、固形分濃度40%、酸価20mgKOH/g、平均粒子径120nm、最低造膜温度31℃、ガラス転移温度80℃、-20℃における破断伸び率245%のコアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子分散液(A’-1)を得た。
製造例7~27
製造例6において、配合組成を下記表2に示す通りとする以外は、製造例6と同様にして、ウレタン樹脂粒子分散液(A’-2)~(A’-22)を得た。
Figure 2022116396000002
Figure 2022116396000003
Figure 2022116396000004
Figure 2022116396000005
なお、表中の(注4)~(注6)は以下の意味を有する。
(注4)「ETERNACOLL UM-90(1/3)」:商品名、宇部興産社製、平均分子量が900であり、炭素数6のシクロアルキレン基を有するポリカーボネートジオール
(注5)「ETERNACOLL UH-100」:商品名、宇部興産社製、平均分子量が1000、融点が45±5℃であり、シクロアルキレン基を有しないポリカーボネートジオール、
(注6)「PTMG1000」:商品名、三菱ケミカル社製、数平均分子量が1000、融点が17℃であるポリテトラメチレンエーテルグリコール。
製造例28
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、シェル部の原材料である「ETERNACOLL UC-100」(商品名、宇部興産社製、平均分子量が1000、融点が54±5℃であり、炭素数6のシクロアルキレン基を有するポリカーボネートジオール)70部、ジメチロールプロピオン酸6.8部、「ネオスタン U-600」(商品名、日東化成社製、ビスマス系触媒)0.06部及びメチルエチルケトン28部を仕込み、撹拌しながら80℃まで昇温させた後、イソホロンジイソシアネート22.7部を添加し、80℃を保持して撹拌を続け、遊離イソシアネート基含有量0.5%のNCO末端プレポリマーを得た。
次いで、この反応生成物に、コア部の原材料である「PTMG3000」(商品名、三菱ケミカル社製、数平均分子量が3000、融点が21℃であるポリテトラメチレンエーテルグリコール)31.2部、イソホロンジイソシアネート10.6部及びメチルエチルケトン28.0部をさらに添加して撹拌し、遊離イソシアネート基含有量7.9%のNCO末端プレポリマーを得た。得られた反応物を30℃に冷却し、N-メチルモルホリン4.4部及び脱イオン水186部を加え、乳化後、これに5% 2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール水溶液19.3部を添加し、120分間撹拌して、鎖伸長反応を行なった。次いで、メチルエチルケトンを減圧加熱下に留去し、脱イオン水で濃度調整して、固形分濃度40%、酸価20mgKOH/g、水酸基価2.9mgKOH/g、平均粒子径120nm、最低造膜温度31℃、ガラス転移温度80℃、-20℃における破断伸び率245%のコアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子分散液(A’-23)を得た。
ベースコート塗料組成物(Y)用ウレタン樹脂粒子の製造
製造例29
温度計、撹拌機及び還流コンデンサーを備えた反応槽に、「PTMG1000」(商品名、三菱ケミカル社製、数平均分子量が1000、融点が17℃であるポリテトラメチレンエーテルグリコール)316.0部、2,2-ジメチロールプロピオン酸17.0部、トリメチロールプロパン21.9部、イソホロンジイソシアネート113.0部、「ネオスタン U-600」(商品名、日東化成社製、ビスマス系触媒)0.19部及びメチルエチルケトン235.0部を仕込み、反応系を窒素ガスで置換した後、撹拌下80℃で反応させ遊離イソシアネート基含有量3.2%のNCO末端ウレタンプレポリマーを得た。得られた該メチルエチルケトン溶液を40℃に冷却し、N-メチルモルホリン13.8部を含む脱イオン水764.5gを加えて乳化した後、これに5%N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン水溶液96.4部を添加し、120分間撹拌後、メチルエチルケトンを減圧加熱下に留去し、脱イオン水で濃度調整して、固形分濃度35%、酸価15mgKOH/g、水酸基価12mgKOH/g、平均粒子径120nm、最低造膜温度-5℃、ガラス転移温度-7℃、-20℃における破断伸び率200%のウレタン樹脂粒子分散液(Ur-1)を得た。
水酸基含有ポリエステル樹脂(B’1)の製造
製造例30
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器及び水分離器を備えた反応容器に、トリメチロールプロパン174部、ネオペンチルグリコール327部、アジピン酸352部、イソフタル酸109部及び1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物101部を仕込み、160℃から230℃まで3時間かけて昇温させた後、生成した縮合水を水分離器により留去させながら230℃で保持し、酸価が3mgKOH/g以下となるまで反応させた。この反応生成物に、無水トリメリット酸59部を添加し、170℃で30分間付加反応を行った後、50℃以下に冷却し、N-メチルモルホリンを酸基に対して当量添加し中和してから、脱イオン水を徐々に添加することにより、固形分濃度45%、pH7.2の水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(B’1-1)を得た。得られた水酸基含有ポリエステル樹脂は、水酸基価が128mgKOH/g、酸価が35mgKOH/g、重量平均分子量が13,000であった。
水酸基含有アクリル樹脂(B’2)の製造
製造例31
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水70.7部及び「アクアロンKH-10」(商品名、第一工業製薬社製、乳化剤、有効成分97%)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。次いで、下記のモノマー乳化物のうちの全量の1%量及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5部を反応容器内に導入し80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成した後、5%N-メチルモルホリン水溶液40部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、固形分濃度45%の水酸基含有アクリル樹脂(B’2-1)水分散液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(B’2-1)の水酸基価は43mgKOH/g、酸価は12mgKOH/gであった。
モノマー乳化物:脱イオン水50部、スチレン10部、メチルメタクリレート40部、エチルアクリレート35部、n-ブチルメタクリレート3.5部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート10部、アクリル酸1.5部、「アクアロンKH-10」1.0部及び過硫酸アンモニウム0.03部を混合攪拌して、モノマー乳化物を得た。
製造例32
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水130部及び「アクアロンKH-10」(商品名、第一工業製薬社製、乳化剤、有効成分97%)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。
次いで下記のモノマー乳化物(1)1.72部及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し、80℃で15分間保持した。その後、残りのモノマー乳化物(1)を3時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後1時間熟成を行なった。その後、下記のモノマー乳化物(2)を1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%N-メチルモルホリン水溶液20部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出し、固形分濃度30%の水酸基含有アクリル樹脂(B’2-2)水分散液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(B’2-2)は、酸価が16mgKOH/g、水酸基価が66mgKOH/g、ガラス転移温度が21℃であった。
モノマー乳化物(1): 脱イオン水42部、「アクアロンKH-10」0.72部、メチレンビスアクリルアミド2部、スチレン5部、メチルメタクリレート15部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート5部及びn-ブチルアクリレート23部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
モノマー乳化物(2): 脱イオン水42部、「アクアロンKH-10」0.72部、過硫酸アンモニウム0.05部、メタクリル酸2.5部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート10部、スチレン5部、メチルメタクリレート12.5部、n-ブチルアクリレート10部及びn-ブチルメタクリレート10部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
製造例33
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、脱イオン水130部及び「アクアロンKH-10」(商品名、第一工業製薬社製、乳化剤、有効成分97%)0.52部を仕込み、窒素気流中で撹拌混合し、80℃に昇温した。
次いで下記のモノマー乳化物(1)1.72部及び6%過硫酸アンモニウム水溶液5.3部を反応容器内に導入し、80℃で15分間保持した。その後、モノマー乳化物(1)35.4部を1時間かけて、同温度に保持した反応容器内に滴下し、滴下終了後すぐに残りのモノマー乳化物(1)55.6部を反応容器内に滴下し始めた。それと同時に、モノマー乳化物(2)55.6部を、モノマー乳化物(1)に対して滴下を行い、2時間かけて、モノマー乳化物(1)及びモノマー乳化物(2)の滴下を終了した。その後、残りのモノマー乳化物(2)37.17部を反応容器内に1時間かけて滴下し、1時間熟成した後、5%N-メチルモルホリン水溶液20部を反応容器に徐々に加えながら30℃まで冷却し、次いで100メッシュのナイロンクロスで濾過しながら排出して、固形分濃度30%の水酸基含有アクリル樹脂(B’2-3)水分散液を得た。得られた水酸基含有アクリル樹脂(B’2-3)は、酸価が16mgKOH/g、水酸基価が66mgKOH/g、ガラス転移温度が21℃であった。上記水酸基含有アクリル樹脂(B’2-3)は、前記グラジエントポリマー層を含むコアシェル構造を有する水酸基含有アクリル樹脂粒子(B’21)に該当する。
モノマー乳化物(1): 脱イオン水42部、「アクアロンKH-10」0.72部、メチレンビスアクリルアミド2部、スチレン5部、メチルメタクリレート15部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート5部及びn-ブチルアクリレート23部を混合攪拌して、モノマー乳化物(1)を得た。
モノマー乳化物(2): 脱イオン水42部、「アクアロンKH-10」0.72部、過硫酸アンモニウム0.05部、メタクリル酸2.5部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート10部、スチレン5部、メチルメタクリレート12.5部、n-ブチルアクリレート10部及びn-ブチルメタクリレート10部を混合攪拌して、モノマー乳化物(2)を得た。
ブロック化ポリイソシアネート化合物の製造
製造例34
温度計、サーモスタット、攪拌装置、還流冷却器、窒素導入管、及び滴下装置を備えた反応容器に、「スミジュールN-3300」(商品名、住化バイエルウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート由来のイソシアヌレート構造含有ポリイソシアネート、固形分濃度100%、イソシアネート基含有率21.8%)1650部、「PTMG2000」(商品名、三菱ケミカル社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、平均分子量2,000、固形分濃度100%)1100部及び2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール0.9部を仕込み、よく混合して、窒素気流下で、130℃で3時間加熱した。次いで、酢酸エチル1200部及びマロン酸ジイソプロピル1200部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液14部を加え、65℃で8時間攪拌した。次いで、最終固形分濃度が70%となるよう酢酸エチルで希釈して、固形分濃度70%、重量平均分子量40,000のブロック化ポリイソシアネート化合物(C-1)を得た。
リン酸基含有アクリル樹脂の製造
製造例35
温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、メトキシプロパノール27.5部及びイソブタノール27.5部の混合溶剤を入れ、110℃に加熱した。次いで、スチレン25部、n-ブチルメタクリレート27.5部、「イソステアリルアクリレート」(商品名、大阪有機化学工業社製、分岐高級アルキルアクリレート)20部、4-ヒドロキシブチルアクリレート7.5部、下記リン酸基含有重合性モノマー15部、2-メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート12.5部、イソブタノール10部及びt-ブチルパーオキシオクタノエート4部からなる混合物121.5部を、4時間かけて上記混合溶剤に加え、さらにt-ブチルパーオキシオクタノエート0.5部とイソプロパノール20部からなる混合物を1時間滴下した。その後、1時間攪拌熟成して固形分濃度50%のリン酸基含有アクリル樹脂溶液(R-1)を得た。本樹脂のリン酸基による酸価は83mgKOH/g、水酸基価は29mgKOH/g、重量平均分子量は10,000であった。
リン酸基含有重合性モノマー:温度計、サーモスタット、撹拌器、還流冷却器及び滴下装置を備えた反応容器に、モノブチルリン酸57.5部及びイソブタノール41部を入れ、90℃に昇温した、次いで、グリシジルメタクリレート42.5部を2時間かけて滴下した後、さらに1時間攪拌熟成した。その後、イソプロパノ-ル59部を加えて、固形分濃度50%のリン酸基含有重合性モノマー溶液を得た。得られたモノマーのリン酸基による酸価は285mgKOH/gであった。
顔料分散液の製造
製造例36
製造例30で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(B’1-1)44.4部(固形分20部)、「JR-806」(商品名、テイカ社製、ルチル型二酸化チタン)90部、「バリエース B-35」(商品名、堺化学工業社製、硫酸バリウム粉末)30部、「カーボンMA100」(商品名、三菱化学社製、カーボンブラック)0.8部及び脱イオン水10部を混合し、2-(ジメチルアミノ)エタノールでpH8.0に調整した。次いで、得られた混合液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて30分間分散して、顔料分散液(P-1)を得た。
製造例37
撹拌装置を備える容器に、製造例30で得た水酸基含有ポリエステル樹脂溶液(B’1-1)44.4部(固形分20部)、「カーボンMA-100」(商品名、三菱ケミカル社製、カーボンブラック)10部及び脱イオン水50部を入れ、均一に混合し、混合溶液にN-エチルモルホリンを0.5部添加して、pH7.5に調整した。次いで、得られた混合溶液を広口ガラスビン中に入れ、分散メジアとして直径約1.3mmφのガラスビーズを加えて密封し、ペイントシェイカーにて4時間分散して、顔料分散液(P-2)を得た。
水性塗料組成物の製造
実施例1
製造例36で得た顔料分散液(P-1)165.2部(固形分140.8部)、製造例1で得たウレタン樹脂粒子分散液(A-1)62.5部(固形分25部)、製造例33で得た水酸基含有アクリル樹脂溶液(B’2-3)83.3部(固形分25部)、製造例34で得たブロック化ポリイソシアネート化合物(C-1)28.6部(固形分20部)及び「サイメル325」(商品名、オルネクスジャパン社製、メチル/ブチル混合エーテル化メラミン樹脂、固形分濃度80%)12.5部(固形分10部)を均一に混合した。次いで、得られた混合物に、「UH-752」(商品名、ADEKA社製、増粘剤)、N-メチルモルホリン及び脱イオン水を添加し、PH8.0、塗料固形分濃度48%、20℃におけるフォードカップNO.4による粘度が30秒の水性塗料組成物NO.1を得た。
実施例2~27、比較例1~7
配合組成を下記表3に示すものとする以外は、実施例1と同様にして、20℃におけるフォードカップNO.4による粘度が30秒の各水性塗料組成物NO.2~34を得た。
Figure 2022116396000006
Figure 2022116396000007
Figure 2022116396000008
Figure 2022116396000009
Figure 2022116396000010
なお、表中の(注7)は以下の意味を有する。
(注7)「バイヒジュールVPLS2310」:商品名、住化バイエルウレタン社製、ブロック化ポリイソシアネート化合物、固形分濃度38%
ベースコート塗料組成物(Y-1)の製造
製造例38
製造例37で得た顔料分散液(P-2)104.7部、製造例33で得た水酸基含有アクリル樹脂(B’2-3)100部(固形分30部)、製造例29で得たウレタン樹脂粒子分散液(Ur-1)57.1部(固形分20部)、製造例34で得たブロック化ポリイソシアネート化合物(C-1)42.9部(固形分30部)及び製造例35で得たリン酸基含有アクリル樹脂溶液(R-1)4部(固形分2部)を均一に混合した。次いで、得られた混合物に、「UH-752」(商品名、ADEKA社製、増粘剤)、N-メチルモルホリン及び脱イオン水を添加し、pH7.7、塗料固形分濃度25%、20℃におけるフォードカップNO.4による粘度が30秒のベースコート塗料組成物(Y-1)を得た。
製造例39~43
製造例38において、配合組成を下記表4に示す通りとする以外は、製造例38と同様にして、ベースコート塗料組成物(Y-2)~(Y-6)を得た。
Figure 2022116396000011
なお、表中の(注7)は以下の意味を有する。
(注7)「バイヒジュールVPLS2310」:商品名、住化バイエルウレタン社製、ブロック化ポリイソシアネート化合物、固形分濃度38%
試験用被塗物の作製
リン酸亜鉛処理された冷延鋼板に、熱硬化性エポキシ樹脂系カチオン電着塗料組成物(商品名「エレクロンGT-10」、関西ペイント社製)を膜厚20μmになるように電着塗装し、170℃で30分加熱して硬化させた。かくして、鋼板上に電着塗膜を形成してなる被塗物を作製した。
実施例28
試験用塗装板の作製
上記試験用被塗物に、着色塗料組成物(X)として実施例1で得た水性塗料組成物NO.1を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、乾燥膜厚で25μmとなるように静電塗装し、5分間放置した。次いで、該未硬化の着色塗膜上にベースコート塗料組成物(Y)として製造例38で得たベースコート塗料組成物(Y-1)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、乾燥膜厚で15μmとなるように静電塗装し、5分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行なった。さらに、該ベースコート塗膜上にクリヤーコート塗料組成物(Z)として「ソフレックス#520クリヤー」(関西ペイント社製、商品名、水酸基含有アクリル樹脂及びポリイソシアネート化合物を含有する2液型アクリルウレタン系有機溶剤型クリヤー塗料)(Z-1)を乾燥膜厚で35μmとなるように静電塗装し、7分間放置した。次いで、80℃で30分間加熱して、第1着色塗膜、第2着色塗膜及びクリヤー塗膜を加熱硬化させることにより試験用塗装板を作製した。
実施例29~59、比較例8~14
実施例28において、水性塗料組成物の種類を下記表5の通りに変更すること以外は、実施例28と同様にして各試験用塗装板を作製した。
上記で得られた各試験用塗装板について、下記の試験方法により評価を行った。評価結果を下記表5に示す。
試験方法
ガラス接着性
上記実施例及び比較例で得られた各試験用塗装板にさらにウレタン系接着剤(商品名「3740」、サンスター株式会社製、自動車用ウインドシールド剤)を、塗布形状が幅20mm、厚さ3mm、長さ100mm以上となるように塗布し、離型紙を被せた後、平板で均一に押さえつけた。平板を取り除いた後、温度23±2℃、湿度50±5%で72時間放置して硬化させた。その後、離型紙を剥がした。次いで、各試験用塗装板を50℃に設定した恒温水槽中に240時間浸漬させ、その後、23℃の水中に1時間浸漬させて冷却した後、以下の剥離試験を行った。
硬化した接着剤層を塗膜に対して90度以上の方向に手で引っ張りながら2~3mm間隔で、塗膜に対して約60度の角度で塗膜表面に達するところまでカッターナイフでカットを入れる。接着剤層を剥がした後の剥離状態を下記基準により評価した。S、A及びBが合格である。
S:接着剤層の剥れが認められず、塗膜の露出も認められない、
A:塗膜は破壊されず、接着剤層のみが凝集破壊を起こして剥れるが、塗膜と接着剤層の付着はほぼ保たれている、
B:塗膜が凝集破壊を起こして剥れ、その幅がカッターナイフでカットを入れた部分から1mm未満であった、
C:塗膜が凝集破壊を起こして剥れ、その幅がカッターナイフを入れた部分から1mm以上であった、
D:塗膜と接着剤層との界面で剥れが認められる。
鮮映性
上記実施例及び比較例で得られた各試験用塗装板について、「Wave Scan」(商品名、BYK Gardner社製)によって測定されるShort Wave(SW)値に基づいて、鮮映性を下記基準により評価した。SW値が小さいほど塗面の鮮映性が高いことを示す。S、A及びBが合格である。
S:SW値が8未満であった、
A:SW値が8以上、10未満であった、
B:SW値が10以上、15未満であった、
C:SW値が15以上、20未満であった、
D:SW値が20以上であった。
耐チッピング性
飛石試験機「JA-400型」(商品名、スガ試験機社製、耐チッピング性試験装置)の試片保持台に上記実施例及び比較例で得られた各試験用塗装板を設置し、0℃において、該試験用塗装板から30cm離れた所から0.39MPa(4kgf/cm2)の圧縮空気により、粒度7号の花崗岩砕石50gを試験用塗装板に45度の角度で衝突させた。その後、得られた該試験用塗装板を水洗して、乾燥し、塗面に布粘着テープ(ニチバン社製)を貼着して、それを剥離した後、塗膜のキズの発生程度等を目視で観察し、下記基準により評価した。S、A及びBが合格である。
A:キズの大きさが極めて小さく、電着面や素地の鋼板が露出していない、
B:キズの大きさが小さく、電着面や素地の鋼板が露出していない、
C:キズの大きさは小さいが、電着面や素地の鋼板が露出している、
D:キズの大きさはかなり大きく、電着面や素地の鋼板が露出している、
E:キズの大きさはかなり大きく、素地の鋼板も大きく露出している。
Figure 2022116396000012
Figure 2022116396000013
Figure 2022116396000014
Figure 2022116396000015
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Claims (14)

  1. 最低造膜温度が-20~50℃の範囲内であり、かつ周波数1Hzでの動的粘弾性測定におけるガラス転移温度が60~120℃の範囲内であるウレタン樹脂粒子(A)、反応性基含有樹脂(B)及び架橋剤(C)を含む、水性塗料組成物。
  2. 前記ウレタン樹脂粒子(A)の-20℃における破断伸び率が、200~350%の範囲内である、請求項1に記載の水性塗料組成物。
  3. 前記ウレタン樹脂粒子(A)のポリオール成分(a1)として、融点が40~80℃の該ポリオール成分(A1)を含む、請求項1又は2に記載の水性塗料組成物。
  4. 前記ウレタン樹脂粒子(A)のポリオール成分(a1)として、ポリカーボネートポリオール(a1-1)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
  5. 前記ウレタン樹脂粒子(A)のポリオール成分(a1)として、炭素数6以上のシクロアルキレン基を有する脂環式ジオールを含有するジオール成分から得られるポリカーボネートジオールを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
  6. 前記ウレタン樹脂粒子(A)がコアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)である、請求項1~5のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
  7. 前記コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)のコア部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-I)として、ポリエーテルポリオール(a1-2)を含む、請求項6に記載の水性塗料組成物。
  8. 前記コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)のシェル部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-II)として、ポリカーボネートポリオール(a1-1)を含む、請求項6又は7に記載の水性塗料組成物。
  9. 前記コアシェル構造を有するウレタン樹脂粒子(A’)の、前記コア部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-I)とシェル部を構成するウレタン樹脂のポリオール成分(a’1-II)の質量比率(a’1-I)/(a’1-II)が60/40~20/80の範囲内である、請求項6~8のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
  10. 前記反応性基含有樹脂(B)が水酸基含有樹脂(B’)を含む請求項1~9のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
  11. 前記架橋剤(C)が、アミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種の架橋剤を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の水性塗料組成物。
  12. 被塗物上に、請求項1~11のいずれか1項に記載の水性塗料組成物を塗装して未硬化の着色塗膜を形成することと、次いで、前記未硬化の着色塗膜を60~110℃の範囲内の温度で加熱して硬化させることとを含む、塗膜形成方法。
  13. 工程(II-1):被塗物に、着色塗料組成物(X)を塗装して未硬化の着色塗膜を形成する工程、
    工程(II-2):前記未硬化の着色塗膜上に、ベースコート塗料組成物(Y)を塗装して未硬化のベースコート塗膜を形成する工程、
    工程(II-3):前記未硬化のベースコート塗膜上に、クリヤーコート塗料組成物(Z)を塗装して未硬化のクリヤーコート塗膜を形成する工程、並びに
    工程(II-4):前記未硬化の着色塗膜、前記未硬化のベースコート塗膜及び前記未硬化のクリヤーコート塗膜を加熱して、同時に硬化させる工程、を含む複層塗膜形成方法であって、該着色塗料組成物(X)が請求項1~11のいずれか1項に記載の水性塗料組成物である複層塗膜形成方法。
  14. 前記工程(II-4)における加熱温度が60~110℃の範囲内である、請求項13に記載の複層塗膜形成方法。
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