JP2022115378A - 結晶体、蛍光素子および発光装置 - Google Patents

結晶体、蛍光素子および発光装置 Download PDF

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Abstract

【課題】点光源あるいは線光源などの発散光源を励起光源とした場合でも、レンズ形状などの高精度な加工を施すことなく、発散光源から拡がる光の向きによる蛍光強度差が少ない蛍光素子のための結晶体と、その結晶体を有する発光装置とを提供することである。【解決手段】添加元素を含む結晶体である。結晶体の断面における前記添加元素の濃度が連続的に変化し、断面の中央領域では中央領域の外側よりも高い。【選択図】図1

Description

本発明は、たとえば発光装置の蛍光素子などとして用いられる結晶体と、その結晶体を有する発光装置に関する。
励起光を発する発光素子と、この発光素子の光を受けて励起され蛍光を発する蛍光体とを備え、蛍光または蛍光と励起光の混合による発光装置が知らていれる。発光装置の高出力化に伴い、発光素子の発熱が顕著になる。蛍光体は一般に温度消光特性(温度上昇に伴う蛍光強度の低下)を有し、発光素子の高温化および励起光吸収による蛍光体の高温化(たとえば120°C)により、蛍光量が低下する課題がある。この課題に対し、蛍光体の単結晶化により温度消光を抑制する案が開示されている(特許文献1)。
また発光装置では、蛍光体を通過する励起光の光路長により蛍光量が変化するため、励起点光源または励起光発散光源に対し、蛍光体セラミックスをレンズ形状にする案が提示されている(特許文献2)。高温での蛍光量が多い単結晶をレンズ形状にするには、単結晶塊の高精度な研削・研磨加工が必要で、かつ研削により多量の材料ロスが発生する。成形性が高くレンズ形状に加工しやすいセラミックスは、高温での蛍光量の低下が回避できない。
特許第5649202号公報 特開2018-146656号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、点光源あるいは線光源などの発散光源を励起光源とした場合でも、レンズ形状などの高精度な加工を施すことなく、発散光源から拡がる光の向きによる蛍光強度差が少ない蛍光素子のための結晶体と、その結晶体を有する発光装置とを提供することである。
上記目的を達成するために、本発明に係る結晶体は、
添加元素を含む結晶体であって、
前記結晶体の断面における前記添加元素の濃度が、連続的に変化し前記断面の中央領域では前記中央領域の外側よりも高いことを特徴とする。
添加元素は、結晶体の内部で、蛍光のための賦活元素として機能し、添加元素の濃度が高いほど、蛍光の強度が高くなる。また、結晶体の内部を通過する光の光路長が長いほど、蛍光の強度が高くなる。本発明の結晶体では、結晶体の断面における添加元素の濃度が、連続的に変化し断面の中央領域では中央領域の外側よりも高い。
そのため、本発明の結晶体の中央領域に近い位置に点光源などの発散光源を設置し、その光源からの光を結晶体に照射することで、光源からの光は、結晶体の中央領域では光路長が短い状態で透過して蛍光を誘起し、結晶体の外側では、光路長が長い状態で透過して蛍光を誘起する。
その結果、結晶体を特殊なレンズ形状に加工することなく、単純な平板形状に加工するのみで、発散光源から拡がる光の向きによる蛍光強度差が少ない蛍光現象を実現することができる。すなわち、本発明の結晶体では、高精度な研削・研磨技術を必要とせず、製造工程をより簡素化することができると共に、研磨による材料のロスを低減することが可能になる。
なお、本発明に係る結晶体は、必ずしも発散光源と共に用いられる必要はなく、たとえば面光源と共に用いることで、中央部で蛍光強度が強く、外側で蛍光強度が弱い光を作り出す照明装置などとして利用することも可能である。
前記濃度の最高値となるピーク位置から外側に向かうにつれて前記濃度は漸次的に減少していてもよく、前記中央領域では、前記濃度が、実質的に一定であってもよい。中央領域で添加元素の濃度が高く、その外側で低くなっていれば、中央領域とその外側とで、蛍光強度の差を小さくすることが可能になる。
前記添加元素の偏析係数が1未満であってもよく、あるいは、添加元素の偏析係数は0.1以下でもよい。たとえばμ-PD法では、偏析係数が1未満の添加元素を含む結晶体の多くは、断面の中央領域の外側に添加元素が偏析していることが多く、中央領域よりも外側で添加元素の濃度が高くなる傾向にある。しかしながら本発明の結晶体では、仮にμ-PD法であっても、特殊な手法を用いているために、中央領域で添加元素の濃度が高く、その外側で低い結晶体を得ることができる。
本発明のその他の観点に係る結晶体は、
添加元素を含む結晶体であって、
前記結晶体の断面における熱伝導率が、連続的に変化し前記断面の中央領域では前記中央領域の外側よりも低いことを特徴とする。
本発明のその他の観点に係る結晶体では、結晶体の外側での熱伝導率が高いため、結晶体内部の熱を外側に排出しやすくなる。このことにより温度消光による蛍光量の低下を抑制する効果が得られる。なお、結晶体における添加元素の濃度が低いほど、熱伝導率が高くなる傾向にある。
本発明の蛍光素子は、上記のいずれかに記載の結晶体を有する。また、本発明の発光装置は、上記のいずれかに記載の結晶体と、その結晶体に照射する光を発する発散光源と、を有する。発散光源としては、たとえば点光源、あるいは線光源などが例示される。
本発明に係る結晶体の製造方法は、
結晶の原料となる融液を、ノズル部の端面に形成してあるノズル孔出口から吐出させる工程を有し、
前記ノズル孔出口から吐出された原料融液を、結晶成長面に沿って結晶の外側から内側に向けて流しながら結晶成長を行うことを特徴とする。
また、本発明の別の観点に係る結晶体の製造方法は、
結晶の原料となる融液を、ノズル部の端面に形成してあるノズル孔出口から吐出させる工程を有し、
前記ノズル孔出口からの原料融液を引き出すための種結晶を、引き出し方向と略垂直な方向に移動させながら引き出し方向にも移動させて、結晶成長を行うことを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、断面における添加元素の濃度が、連続的に変化し断面の中央領域では中央領域の外側よりも高い結晶体を、きわめて容易に製造することができる。
図1は本発明の一実施形態に係る結晶体を蛍光素子として用いた発光装置の概略図である。 図2は図1に示す結晶体の製造方法に用いる結晶製造装置の概略断面図である。 図3Aは図2に示す坩堝のIII部分の拡大断面図である。 図3Bは本発明の他の実施形態に係る坩堝の拡大断面図である。 図4は図3Aに示すノズル部端面のIV-IV線に沿う平面図である。 図5は本発明の実施例と比較例に係る結晶体中の添加元素の濃度分布の比較を示すグラフである。 図6は本発明の実施例と比較例に係る蛍光放射分布の比較を示すグラフである。 図7は濃度が連続的に変化するか否かを概念的に説明するための概略図である。
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
第1実施形態
図1に示すように、本実施形態の結晶体52は、たとえば平板状の蛍光素子として、発光装置50の内部に組み込まれて用いられる。発光装置50は、発散光源54と、その発散光源54が設置される凹部56aを有する設置基板56とを有する。
本実施形態では、基板56に形成してある凹部56aのX軸方向およびY軸方向の中央部に、発散光源54が配置してある。また、結晶体52は、その製造時の引き下げ方向(Z軸方向)に略垂直な方向に輪切りに切断して形成してある。本実施形態では、結晶体52は、好ましくは円形板形状を有するが、矩形板形状、多角板形状、楕円板形状、その他の異形板形状であってもよい。
結晶体52のX軸およびY軸の略中央部で、Z軸の下方に、発散光源54が配置してある。本実施形態では、発散光源54が点状光源として機能することとする。発散光源54が線状光源として機能する例としては、別の実施形態で説明する。なお、図面において、X軸とY軸とZ軸とは、相互に垂直であり、Z軸は、結晶体の製造方法における引き下げ方向と略一致する。
本実施形態では、発散光源54としては、結晶体52に含まれる蛍光成分を励起するための励起光である青色光を発する発光素子が用いられる。青色発光素子の青色光は通常ピーク波長が425nm~475nmである。結晶体52入射した青色光のうちの一部は結晶体52に吸収されて波長変換され、蛍光を発する。このようにして発せられた蛍光と青色光が混合して結晶体52の出射面から白色光を発する。
青色発光素子から成る発散光源54としては、蛍光と混合することにより白色光を発し、なおかつ結晶体52により蛍光に波長変換されることができる青色光を発することが好ましいが、特に限定されず、たとえば青色発光ダイオード(青色LED)または青色半導体レーザー(青色LD)が挙げられる。
結晶体52としては、特に限定されず、M元素(偏析係数1未満の添加元素)がドープしてあるYAGまたはLuAGの単結晶に限らず、Al(サファイア)、GAGG(GdAlGa12)、GGG(GdGa12)、GPS(GdSi)などの単結晶が例示される。また、単結晶に限らず、YAG-Al、LuAG-Alなどの共晶体でもよい。添加されるM元素としては、特に限定されないが、母体となる結晶組成に対して蛍光特性を発揮させる元素であることが好ましく、たとえばCe、Pr、Sm、Eu、Tb、Dy、TmおよびYbからなる群から選ばれる少なくとも1つである。不活元素は好ましくはCeまたはEuであり、より好ましくはCeである。
本実施形態では、結晶体52は、Ce:YAGの単結晶で構成してあり、添加元素としてのCeの濃度が連続的に変化し断面の中央領域52aではその外側領域52bよりも高い。結晶体52における断面の中央領域52aとは、結晶体52が円形板状である場合には、結晶体の外径をD0とした場合に、その外径D0の1/2を中央領域52aとして定義する。
すなわち、D1=D0×1/2を外径とする内側領域を中央領域52aとし、その外側の領域を外側領域52bとする。中央領域52aの平面側形状(図1に示すZ軸の方向から観察する形状)は、結晶体52の平面形状に対応し、結晶体の平面形状が円形であれば、その1/2の倍率で相似形の円形となる。また、結晶体の平面形状が矩形、多角形、楕円またはその他の異形形状であれば、その1/2の倍率で相似形の矩形、多角形、楕円またはその他の異形形状を、中央領域52aが有することになる。
「添加元素としてのCeの濃度が連続的に変化する」とは、たとえば図5に示す実施例1および実施例2に示すように、中央領域52aおよび外側領域52bの双方で、しかも、それらの境界でも、Ceの濃度が連続的に変化することを意味する。連続的か否かは、たとえば図5に示すような結晶の断面の中心から外側に向かう距離に対する濃度の変化を示すグラフにおいて、後述する図7に示すような方法により判断する。また、「添加元素としてのCeの濃度が、断面の中央領域52aでは、その外側領域52bよりも高い」とは、中央領域52aでのCeの平均濃度C1が、外側領域52bでのCeの平均濃度C2よりも高いことを意味する。
好ましくは、それらの濃度比C1/C2は、1.5以上、さらに好ましくは2以上であり、その上限は、特に限定されないが10以下である。各領域52a,52bでの濃度の平均は、たとえば結晶体の中心を含むZ軸に平行な断面において、各領域の断面の濃度を中心から外側に向けて略等間隔に、それぞれ2点以上(好ましくは3点以上)の測定点となる間隔で測定し、それらの平均値として求めることができる。
図5に示すように、中央領域52aでは、添加物としてのCe濃度が実質的に一定な部分を有する(たとえば実施例2)か、あるいは、濃度のピーク位置から漸次的に減少している(たとえば実施例1)。なお、図5に示す実施例2では、中央領域52aの大部分において、Ce濃度が略一定であるが、本実施形態では、中央領域52aの一部の範囲のみにおいて、Ce濃度が略一定の部分を有すればよく、その平坦な領域範囲は、0.1~1.0mm程度が好ましい。
また、本実施形態では、図5の実施例1にも示すように、上に凸の二次元関数グラフなどで近似される山形状の濃度分布、あるいは、図5の実施例2にも示すように、中央領域52aの少なくとも一部(領域52aの中央部のみ)では濃度分布が平坦で、その他の中央領域52aおよび外側領域52bで濃度がなだらかに減少する山形状の濃度分布などが例示される。本実施形態では、いずれの濃度分布も、上に凸の山形状の濃度分布として定義する。
たとえば外側領域52bの濃度勾配の平均をS2とし、中央領域52aの内の最も中央に位置する±0.5mmの範囲内の濃度勾配の平均をS1とした場合に、S2/S1は、好ましくは1.1以上、さらに好ましくは、1.5以上である。なお、結晶体54の添加物濃度は、LA-ICP-MS、EPMA、EDXなどで測定できる。
さらに、本実施形態では、図5に示す断面での添加物濃度のプロファイルに対応して、熱伝導率の変化が連続的であり、中央領域52aでは、外側領域52bよりも、熱伝導率の平均が低くなっている。なお、結晶体における添加元素としてのCe濃度が低いほど、熱伝導率が高くなる傾向にある。
次に、濃度(または熱伝導率)が連続的に変化するか否かの判断基準について説明する。たとえば図7は、横軸が測定対象としての断面における測定点の位置を示し、縦軸が濃度(または熱伝導率)を示している。各プロットの丸点が測定結果を示す点である。濃度(または熱伝導率)が連続的に変化するか否かに関しては、まず、たとえば隣り合う二つの測定点xおよびxn+1 を境として、右側と左側の測定点の変化を関数(たとえば二次関数)で近似して標準偏差を算出する。それらの標準偏差を含めた測定点のバラツキを、各測定点を中心として上下に延びる線の幅(バラツキ幅)として図7のグラフに示す。
たとえば隣り合う測定点xおよびxn+1 に関して、縦軸に沿って、隣り合うそれぞれのバラツキ幅が重なる場合には、「連続的に変化する」と判断する。また、同様にして、たとえば別の隣り合う測定点x-nおよびx-n-1に関して、同様な計算を行い、縦軸に沿って、隣り合うそれぞれのバラツキ幅が重ならない場合には、「連続的に変化する」とはいえないと判断する。
次に、結晶体52の製造方法について説明する。
本実施形態に係る結晶体54は、たとえばμ-PD法(マイクロ引き下げ法)により製造されることができる。図2に本実施形態の結晶製造装置2を示す。
結晶製造装置2は、坩堝4と、耐火炉6とを有する。坩堝4については、後述する。耐火炉6は、坩堝4の周りを2重に覆っている。耐火炉6には、坩堝4からの融液の引き下げ状態を観察するための観察窓が形成してあってもよい。
耐火炉6は、さらに外ケーシング8により覆われており、外ケーシング8の外周には、坩堝4の全体を加熱するための主ヒータ10が設置してある。本実施形態では、外ケーシングは、たとえば石英管で形成してあり、主ヒータ10としては、誘導加熱コイル10を用いている。坩堝4の下方には、種結晶保持治具12により保持された種結晶14が配置される。
種結晶14としては、製造されるべき結晶と同一または同種類の結晶が用いられる。たとえば製造すべき結晶がCeドープのYAG結晶であれば、添加物を含まないYAG単結晶などが用いられる。
種結晶保持治具12の素材は特に限定されないが、使用温度である1900℃付近において影響の少ない緻密アルミナ等で構成されることが好ましい。種結晶保持治具12の形状と大きさも特に限定されないが、耐火炉6に接触しない程度の径である棒状の形状であることが好ましい。
坩堝4の下端外周には、筒状のアフターヒータ16が設置されている。アフターヒータ16には、耐火炉6の観察窓と同位置に観察窓が形成してあってもよい。アフターヒータ16は、坩堝4に連結して用いられ、筒状のアフターヒータ16の内部空間に、図3Aに示す坩堝4のノズル部34のノズル孔出口38が位置するように配置され、ノズル部34とノズル孔出口38から引き出される融液とを加熱可能になっている。アフターヒータ16は、たとえば坩堝4と同様(同一である必要はない)な材質などで構成され、坩堝4と同様に高周波コイル10によりアフターヒーター16が誘導加熱されることで、アフターヒーター16の外表面から輻射熱が発生し、アフターヒータ16の内部を加熱可能になっている。
なお、図示しないが、結晶製造装置2には、耐火炉6の内部を減圧する減圧手段、減圧をモニターする圧力測定手段、耐火炉6の温度を測定する温度測定手段および耐火炉6の内部に不活性ガスを供給するガス供給手段などが設けられている。
結晶の融点が高いなどの理由から、坩堝4の材質はイリジウム、レニウム、モリブデン、タンタル、タングステン、白金、または、これらの合金であることが好ましい。また、坩堝4はカーボン製であってもよい。坩堝4を、坩堝4以外の部材の発熱により間接的に加熱する場合、結晶化する材料の融液と反応せず、融点で軟化等の現象が生じない坩堝4が好適である。誘導加熱(高周波加熱)等により坩堝4自体が発熱体となる場合、さらに電気伝導性を有し、外部磁界により加熱する材料が好適である。例としてIr(イリジウム)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Re(レニウム)、Pt(白金)、白金合金が挙げられる。また、坩堝4の材質の酸化による結晶への異物混入を防止するために、坩堝4の材質としては、イリジウム(Ir)を用いることがより好ましい。
なお、1500℃以下の融点の物質を対象とする場合は、坩堝4の材質としてPtを使用することが可能である。また、坩堝4の材質としてPtを使用する場合には、大気中での結晶成長が可能である。1500℃を超える高融点物質を対象とする場合は、坩堝4の材質として、Ir等を用いるため、結晶成長はAr等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。耐火炉6の材質は特に限定されないが、保温性や使用温度、結晶への不純物混入防止の観点からアルミナであることが好ましい。
次に、本実施形態の結晶製造装置2に用いる坩堝4について詳細に説明する。図3Aに示すように、本実施形態に係る坩堝4は、結晶の原料となる融液30を溜める融液貯留部24と、結晶の形状を制御するノズル部34とを有し、これらは一体的に形成してある。なお、坩堝4が大型の場合には、融液貯留部24の長手方向の途中で複数の部材を接合して坩堝4を構成してもよい。融液貯留部24は、有底筒状の収容壁26を有する。収容壁26の内面に一定量の融液30を融液貯留部24に貯留可能になっている。
本実施形態では、坩堝4は、μ-PD法に用いられ、ノズル部34は、ノズル部34が融液貯留部24の鉛直方向の下側に位置し、融液貯留部24に貯留してある融液30は、ノズル部34の下端面35に形成してあるノズル孔出口38から、種結晶14により鉛直方向の下側に引き出されるようになっている。
ノズル部34は、融液貯留部24を構成する収容壁26の底部外面28の略中央部から突出しているノズル外側面37を有する。ノズル外側面37の最下端が、ノズル部34の下端面35と交差し、下端面35と外側面37との境界に位置する角部が、下端面35の外周縁35aとなる。
結果として、ノズル部34の下端面35は、収容壁26の底部外面28から鉛直下方(引き出し方向Z)に向けて所定距離Z1で突出している。所定距離Z1は、好ましくは、ノズル孔出口38から引き出される融液が底部外面28には付着しないように決定され、好ましくは、1~5mm、さらに好ましくは1~2mmである。ノズル部34は、融液を溜める融液貯留部24からノズル部34の下端面35に流出させるノズル孔36を有する。ノズル部34の下端面35は、引出方向Zに実質的に垂直で平坦な面である。
融液貯留部24を構成する収容壁26の底部内面は、中央に位置するノズル部34に向けてテーパ状に傾斜する傾斜面を有し、貯留部24に貯留してある融液30は、ノズル部34に形成してあるノズル孔36のノズル孔入口32に向けて流れ込むようになっている。ノズル孔36は、融液貯留部24の底部に向けて開口するノズル孔入口と、ノズル部34の下面35で開口するノズル孔出口38とを有する。
図4に示すように、本実施形態では、ノズル部34の下端面35から見た外形形状は円形であり、下端面35の外周縁35aも円形となるが、外周縁35aの形状は、円形に限らず、六角形、あるいは四角形、その他の多角形状、楕円形状、あるいは、その他の異形形状であってもよい。外周縁35aの形状が、図3Aに示す坩堝4を用いたμ-PD法により製造される結晶体52の外側面形状を規定する。
本実施形態では、たとえば図4に示すように、ノズル孔36の下端面35でのノズル孔出口38は、下端面35の外周縁35aの近くに位置するノズル孔形成領域40に配置してある。また、本実施形態では、ノズル孔出口38は、ノズル孔形成領域40の範囲内で、周方向に沿って所定間隔で断続的に形成してある複数の個別な出口38で構成してある。複数の出口38は、図3Aに示す複数の個別なノズル孔36を通して、対応する複数のノズル孔入口32に繋がっている。
本実施形態では、各ノズル孔36の流路断面は、入口32および出口38と共に円形であり、それぞれのノズル孔36は、結晶の引き下げ方向Zと平行に成っている。ただし、本実施形態では、出口38のみを周方向に沿って複数の個別な円形出口で構成し、ノズル孔36は、これらの複数の円形出口38を周方向に沿って繋ぐ単一のリング状孔としてもよい。また、ノズル孔入口32に関しも、ノズル孔36と同様に、複数の円形出口38を周方向に沿って繋ぐ単一のリング状開口としてもよい。また、個別のノズル孔出口38の断面形状も、円形に限らず、多角形、楕円形、その他の形状にすることも可能である。
図4に示すように、ノズル孔形成領域40の内側に位置する下端面35の中心42を含む領域は、ノズル孔出口38が実質的に形成されないノズル孔非形成領域44である。なお、本実施形態において、下端面35の中心42とは、下端面35の平面形状の幾何学的中心あるいは重心を意味する。たとえば図4に示すように、下端面35の外周縁35aの形状が円の場合には、下端面35の中心42とは、円の中心を意味する。また、外周縁35aの形状が六角または四角の多角形状、楕円形状、その他の異形形状の場合には、下端面35の重心を意味する。
図4に示すように、ノズル孔形成領域40は、下端面35の中心42から外周縁35aまでの距離Rの1/2を周方向に結ぶ仮想境界線46と、外周縁35aとの間の範囲内に位置する。さらに好ましくは、ノズル孔形成領域40は、下端面35の中心42から外周縁35aまでの距離Rの2/3(さらに好ましくは3/4)を周方向に結ぶ仮想境界線46と、前記外周縁との間の範囲内に位置する。
なお、仮想境界線46の中心42からの距離は、α×Rとして表すことができ、αは、好ましくは1/2以上、さらに好ましくは2/3以上、特に好ましくは3/4以上であり、αの上限は、1未満であり、(R-α×R)で示されるノズル孔形成領域40の範囲内に、ノズル孔出口38が形成されるように決定される。ノズル孔出口38は、可能な限り、外周端35aの近くに形成されることが好ましい。
各ノズル孔出口38の内径(または開口面積)は、特に限定されず。各ノズル孔出口36がノズル孔形成領域40の範囲(R-α×R)内に収まるように決定される。各ノズル孔出口38が円形の場合には、出口38の内径は、たとえば(R-α×R)の1/10~9/10程度である。また、ノズル孔形成領域40の範囲内に位置するノズル孔出口38の配置数は、特に限定されないが、たとえば周方向に沿って、好ましくは4以上であり、さらに好ましくは6以上であり、特に好ましくは8以上である。
図4に示すように、外周縁35aの形状が円の場合には、仮想境界線46の形状も円となり、その仮想境界線46の円の半径の大きさが、外周縁35aの距離(半径)Rのα倍となる。また、図3Bに示すように、外周縁35aの形状が六角形の場合には、仮想境界線46の形状も六角形となり、その仮想境界線46の形状は、外周縁35aの形状のα倍の相似形となる。さらに、外周縁35aの形状が四角形の場合には、仮想境界線46の形状も四角形となり、その仮想境界線46の形状は、外周縁35aの形状のα倍の相似形となる。外周縁35aの形状が、その他の異形形状の場合でも、その仮想境界線46の形状は、外周縁35aの形状のα倍の相似形となる。
なお、仮想境界線46の内側(中心42を含む領域)が、ノズル孔非形成領域44となり、その領域には、ノズル孔出口38が実質的に形成されない。ノズル孔非形成領域44において、「ノズル孔出口が実質的に形成されない」とは、ノズル孔出口38が全く形成されないことが好ましいが、本実施形態の作用効果を機能させる限りにおいて、多少はノズル孔出口が形成されていてもよいという趣旨である。すなわち、「原料融液がノズル孔36を通過した後、結晶成長面に沿って移動する際の流れの方向を、結晶の外周から内側にすることができる」限りにおいては、ノズル孔非形成領域44にも、ノズル孔出口を形成してもよい。
たとえばノズル孔出口非形成領域44には、ノズル孔形成領域40に形成してあるノズル孔出口38の内径よりも小さいノズル孔出口を多少は形成してもよい。あるいは、ノズル孔出口38の内径が同じだとしても、ノズル孔出口非形成領域44には、ノズル孔形成領域40に形成してあるノズル孔出口38の数よりも、たとえば1/10以下程度に少ない数でノズル孔出口38を多少は形成してもよい。
図2に示す本実施形態の結晶製造装置2では、まず、坩堝4の融液貯留部24に、得ようとする結晶体の原料を入れ、主ヒータ10を起動させ融液貯留部24を加熱する。融液貯留部24が加熱されることで原料は融液貯留部24内で溶融し融液30となり、ノズル部34のノズル孔入口32からノズル孔36に流れる。融液30は、ノズル孔36を経て、ノズル孔出口38で種結晶14の上端に接触する。
その前後で、アフターヒータ―16も起動され、ノズル部34付近を加熱する。本実施形態の坩堝4を用いることで、ノズル部34の端面35の外周縁35aの近くに位置するノズル孔形成領域40に配置してあるノズル孔出口38から、種結晶14により引き下げられる融液は、下端面35に沿ってノズル孔非形成領域44の中心42に向けて流れて結晶成長を行う。
種結晶14を引き下げるときに、同時に、種結晶14の引下方向Zに沿う中心を軸(中心軸O2)として回転させながら種結晶14を引き下げてもよい。こうすることで、得られる結晶体の引下方向Zに垂直な断面での対称性が向上する。本実施形態では、ノズル部34の端面35の中心42を含む坩堝4の中心軸O1と、種結晶14の中心軸O2とが同芯状となるように、種結晶14を回転させながら(または回転させずに)引き下げる。これらの中心軸O1およびO2は、引き下げ方向Zと略平行である。
本実施形態の坩堝4を用いることで、結晶成長はノズル部34の端面35の外周縁35a近くから始まり内側に向けて進行する。そのため、偏析係数が1未満の添加元素が融液に含まれている場合であっても、その添加元素は、結晶中に取り込まれにくく、育成過程で徐々に濃くなるため、育成初期の外縁部に添加元素(たとえばCe)が偏析する現象を効果的に抑制することができる。しかも、本実施形態の方法によれば、引き下げ方向Zに略垂直な断面における添加元素の濃度が、連続的に変化し断面の中央領域52aでは外側領域52bよりも高い結晶体を、きわめて容易に製造することができる。
図3Aに示す種結晶14により引き下げられて形成された円柱状の結晶体は、引き下げ方向Zに略垂直に輪切りに切断されることで、図1に示す結晶体52が得られる。得られた結晶体52は、たとえば図1に示す発光装置50などに用いられる。本実施形態の製造方法では、結晶成長の安定化が確保され、結晶体の形状精度が向上する。また、結晶体の加工ロスが少なくなり、高品質の結晶体を高効率で製造することができる。
図1に示す本実施形態の結晶体52によれば、結晶体42の断面(中心軸を含む断面)における添加元素(たとえばCe)の濃度が、連続的に変化し中央領域52aでは外側領域52bよりも高い。添加元素は、結晶体52の内部で、蛍光のための賦活元素として機能し、添加元素の濃度が高いほど、蛍光の強度が高くなる。また、結晶体52の内部を通過する光の光路長が長いほど、蛍光の強度が高くなる。本実施形態の結晶体52では、結晶体52の中央領域52aに近い位置に点光源などの発散光源54を設置し、その光源54からの光を結晶体52に照射することで、光源54からの光は、結晶体52の中央領域52aでは光路長が短い状態で透過して蛍光を誘起し、結晶体52の外側領域52bでは、光路長が長い状態で透過して蛍光を誘起する。
その結果、結晶体52を特殊なレンズ形状に加工することなく、単純な平板形状に加工するのみで、発散光源54から拡がる蛍光

の方向による強度差が少ない蛍光現象を実現することができる。すなわち、本実施形態の結晶体52では、高精度な研削・研磨技術を必要とせず、製造工程をより簡素化することができると共に、研磨による材料のロスを低減することが可能になる。
なお、本実施形態に係る結晶体52は、必ずしも発散光源54と共に用いられる必要はなく、たとえば面光源と共に用いることで、中央部領域で蛍光強度が強く、外側領域52bで蛍光強度が弱い光を作り出す照明装置などとして利用することも可能である。
本実施形態では、図5に示すように、添加物の濃度の最高値となるピーク位置から外側に向かうにつれて濃度は漸次的に減少していてもよく、中央領域52aでは、濃度が、実質的に一定であってもよい。中央領域52aで添加元素の濃度が高く、その外側で低くなっていれば、中央領域52aとその外側の外側領域52bとで、蛍光強度の差を小さくすることが可能になる。
本実施形態では、結晶体に含まれる添加元素の偏析係数が1未満であってもよい。たとえばμ-PD法では、偏析係数が1未満の添加元素を含む結晶体の多くは、断面の中央領域52aの外側に添加元素が偏析していることが多く、中央領域52aよりも外側で添加元素の濃度が高くなる傾向にある。しかしながら本実施形態の結晶体52では、仮にμ-PD法であっても、特殊な手法を用いているために、中央領域52aで添加元素の濃度が高く、その外側の外側領域52bで低い結晶体を得ることができる。
また、本実施形態の結晶体52では、中央領域52aに比較して、外側領域52bでの熱伝導率が高いため、結晶体52内部の熱を外側に排出しやすくなる。このことにより温度消光による蛍光量の低下を抑制する効果が得られる。なお、結晶体52における添加元素の濃度が低いほど、熱伝導率が高くなる傾向にある。
第2実施形態
図3Bに示すように、本実施形態に係る結晶体を第1実施形態とは異なる製造方法で製造している以外は第1実施形態と同様であり、共通する部分の説明は省略し、以下、異なる部分について主として詳細に説明する。以下において説明しない部分は、第1実施形態の説明と同様である。
本実施形態に係る結晶体の製造方法では、図3Bに示すように、ノズル部34の端面35の中心42を含む坩堝4の中心軸O1と、種結晶14の中心軸O2とを、ΔOの距離でオフセットさせるように、種結晶14を配置する。また、種結晶14の中心軸O2が中心軸O1の回りを相対回転可能に、種結晶14を図2に示す種結晶保持治具12で保持する。
そして種結晶14を、引き下げるときに、同時に、中心軸O1に対して種結晶14の中心軸O2を回転させながら、種結晶14をZ軸に沿って引き下げる。なお、オフセット距離ΔOは、好ましくは図4に示す距離Rの0.01倍以上で、0.7倍以下であり、さらに好ましくは0.1倍~0.5倍である。なお、本実施形態では、中心軸O1に対して種結晶14の中心軸O2を回転させると共に、オフセット距離ΔOの範囲内で、変化させてもよい。
本実施形態の製造方法によれば、得られる結晶体の添加元素(たとえばCe)の濃度は、図5に示す実施例2で示すように、中央領域52aで実質的に一定となり、外側領域52bにおいて、添加元素(たとえばCe)の濃度が連続的に急激に低下する。
第3実施形態
本実施形態に係る結晶体を第1または第2実施形態とは異なる製造方法で製造している以外は第1または第2実施形態と同様であり、共通する部分の説明は省略し、以下、異なる部分について主として詳細に説明する。以下において説明しない部分は、第1または第2実施形態の説明と同様である。
本実施形態に係る結晶体の製造方法では、図3Bに示すように、ノズル部34の端面35の中心42を含む坩堝4の中心軸O1と、種結晶14の中心軸O2とを、図1に示すX軸に沿ってのみ最大±ΔOの距離で相対移動可能に、種結晶14を図2に示す種結晶保持治具12で保持する。また、本実施形態では、ノズル部34の下端面35の平面形状が矩形であり、種結晶14の横断面(Z軸に垂直な断面)の形状も、下端面35の平面形状に合わせた矩形である。
そして種結晶14を、Z軸に沿って引き下げるときに、同時に、中心軸O1に対して種結晶14の中心軸O2をX軸に沿って最大±ΔOのオフセット距離の範囲内で往復移動させながら(オフセット距離を変化させながら)、種結晶14をZ軸に沿って引き下げる。なお、オフセット距離ΔOの最大値は、好ましくは図4に示す距離Rの0.01倍以上で、0.5倍以下であり、さらに好ましくは0.1倍~0.3倍である。本実施形態では、中心軸O1に対して種結晶14の中心軸O2を回転させない。
本実施形態の製造方法によれば、得られる結晶体の添加元素(たとえばCe)の濃度は、図1に示すX軸に沿ってのみ、図5に示すような添加元素の濃度分布となる。本実施形態の方法により得られる結晶体は、図1に示す発散光源54が、Y軸方向に沿って長い線状光源であっても、第1実施形態と同様な作用効果を奏する。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
図2に示す結晶製造装置2を用い、Ce:YAG(CeがドープしてあるYAG)の単結晶から成る蛍光体を製造した。育成に用いた坩堝1はイリジウム製で、外径20mm、内径18mm、高さ50mmの円筒形状であった。装置2は、図3Aおよび図4に示す構造のノズル部34を有し、合計4個のノズル孔36のノズル孔出口38が、ノズル端面35の外周縁35aより0.5mm内側の位置で、しかも図4に示す中心42から半径1mmの位置に、周方向に等間隔で配置してあった。ノズル孔36は、鉛直方向(引下方向)に貫通していた。
ノズル端面35の平面形状は、半径Rが1.5mmの円形であり、各ノズル孔36の内径は、0.3mmであった。各ノズル孔出口38は、ノズル形成領域40の内部に配置され、ノズル孔非形成領域44には、全くノズル孔が形成されていなかった。
それぞれ純度99.99%のAl、Y、CeO各酸化物粉末を、モル比でY:Al=3.0:5.0、かつCeO/(CeO+1/2Y)=0.01となる組成比で、計10gの原料を配合し、結晶育成用の原料とした。同原料を充填した坩堝4を単結晶育成装置2内に設置して、約2000°Cまで1時間かけて加熱した。
ガス流雰囲気にて、結晶方位<111>を長手方向とするYAl12単結晶を種結晶14として用い、図2Aに示すように、種結晶14の中心軸O2は、ノズル部34の下端面35の中心42を含む中心軸O1とZ軸方向に沿って一致するように配置した。種結晶14の先端を、ノズル部34の下端面35に接触させ、ノズル部34のノズル孔出口38から出た原料融液が、種結晶14の先端に濡れ拡がる状態を経て、種結晶14を回転速度5rpmで回転させながら、徐々に降下させて、毎分0.20mmの引下げ速度で結晶成長を行った。
直径約3.0mm、長さ40mmの円柱状のCe:YAG単結晶が得られた。単結晶10は、濃黄色かつ透明で、外観目視では結晶内部にインクルージョン等の析出物が観られなかった。結晶体の側面は何れも平滑であり、引下方向に直交する断面は、結晶全体に渡りほぼ円形状であった。
得られた結晶体について、以下のようにして、評価用の試料をサンプリングして、以下の評価を行った。
(評価用試料のサンプリング)
マイクロ引下げ法により育成した一つの結晶から引下げ方向に異なる位置で3つの評価用サンプルを作製した。各サンプルは、引下げ育成時の結晶体の外側面が外周縁となるように、引下げ方向と直交する切断面で試料を切り出して作製した。さらに結晶内部が観察できるように両面を鏡面研磨し、厚さ約1mmの評価用平板サンプルを用意した。合計で3点のサンプルを用いて、濃度分布と蛍光放射分析によって評価した。
(濃度分布の評価)
育成した結晶内の組成分布は、YAG単結晶中のCeの分布状態を、ICP-MS分析装置(Agilent社製7500S)を用いて、レーザーアブレーションICP質量分析法により評価した。
図5に結晶中のCe濃度分布測定結果を示す。図5の横軸は径方向の位置を示し、横軸の数値の0が結晶体の中心位置を示す。図5の縦軸は濃度最大値を1に規格化したCe濃度を示している。
(蛍光放射分布の評価)
結晶体の蛍光放射は、コニカミノルタ社製LEDモジュールゴニオフォトメータ―(LEDGON 100)を用いて評価した。
三次元極座標系で表記をすると、原点に設置し、主面が+Z方向を向いた蛍光体(図1に示す結晶体52)に対して、-Z位置に配した光源より励起光を入射した。+Z側半球の蛍光放射分布を、仰角θに関しては10度間隔で-60°~+60°の範囲を、方位角φに関しては30°間隔で0°~150°の範囲で計測した。
波長450nm、配光角30°のGaN系青色LEDを励起光源(図1に示す発散光源54)として用い、Ce3+の5d-4f遷移に相当する波長530~550nmの蛍光強度を測定した。各方位で計測した測定結果より、蛍光帯域のピーク強度を求め、各方位角に対する平均値を算出した。
図6に、蛍光放射分布測定の結果を示す。図6の横軸は、法線方向(Z軸方向)を0とした時の観察角度θを示す。縦軸は、各角度での蛍光強度を、θ=0での蛍光強度で規格した値を示す。
実施例2
種結晶14を引き下げるときに、以下に示す以外は、実施例1と同様なマイクロ引下げ法により、Ce:YAG単結晶を育成した。
種結晶14としては、横断面が3.0mm角の正方形の種結晶を用い、その中心軸O2を、ノズル部34の下端面35の中心42を含む中心軸O1からΔO=1.5mmの位置でオフセットさせた。そして、1分間の周期で、中心軸O2を中心軸O1の回りで回転させながら、種結晶14を引き下げて単結晶の育成を行い、横断面が円形(外径3mm)で長さ40mmの円柱状のCe:YAG単結晶体を得た。結晶体のサンプルについて、実施例1と同様な評価を行った。結果を、図5および図6に示す。
比較例1
結晶回転引き上げ法(チョクラルスキー法)により、Ce:YAG(CeがドープしてあるYAG)の単結晶から成る蛍光体を製造した。育成に用いた坩堝はイリジウム製で、外径100mm、高さ100mm、厚さ1.5mmの円筒形状であった。
それぞれ純度99.99%のAl、Y、CeO各酸化物粉末を、モル比でY:Al=3.0:5.0、かつCeO/(CeO+1/2Y)=0.002となる組成比で、計1.2kgの原料を配合し、結晶育成用の原料とし、坩堝に充填した。体積比でO:N=2:98、全圧1気圧となる雰囲気下で、原料が融解するまで加熱した。
原料融液の温度が一定化するまで、2時間加熱状態を保持した後、結晶方位<111>を長手方向とするYAl12単結晶を、上方から降下させて原料融液に接触させた後、10rpmの回転速度で回転しながら、時間1mmの速度で上昇させて、結晶育成を行った。
直径約52mm、直胴長約40mmの大きさの単結晶が得られた。3カ所の直胴部からウェハをスライスし、各ウェハ部からランダムに10個の評価用チップを選択した。
実施例1と同様な評価を行った。結果を、図5および図6に示す。
評価
図5に示すように、実施例1で得られた結晶体では、Ce濃度が中央ほど高く、また外側に向かうほど漸次的(連続的)に減少していた。すなわち、実施例1で得られた結晶体の縦断面(中心軸O2を含み中心軸O2に略平行な断面)でのCe濃度分布の近似曲線は、負の二次導関数のグラフに近い形状(上に凸の山形)となった。実施例1における中央領域52aでのCeの平均濃度C1と、外側領域52bでのCeの平均濃度C2との濃度比C1/C2は、1.5以上であった。
また、外側領域52bの濃度勾配の平均をS2とし、中央領域52aの濃度勾配の内の最も中央に位置(位置0.0)する±0.5mmの範囲内の平均をS1とした場合に、実施例1では、濃度勾配の比率S2/S1は、1.1以上であった。
また、実施例2で得られた結晶では、結晶体の中央領域52aには、Ce濃度が実質的に一定な領域が形成され、外側領域52bでは、Ce濃度が外側に向けて所定の勾配で連続的に減少していた。実施例2における中央領域52aの内の最も中央に位置(位置0.0)する±0.5mmの範囲内でのCeの平均濃度C1と、外側領域52bでのCeの平均濃度C2との濃度比C1/C2は、2以上であった。実施例2では、濃度勾配の比率S2/S1は、1.5以上であった。
一方、比較例1で得られた結晶体では、Ce濃度は、中央領域52aと外側領域52aとでほとんど差異がなく、ほぼ均一に分布していた。比較例1における中央領域52aでのCeの平均濃度C1と、外側領域52bでのCeの平均濃度C2との濃度比C1/C2は、1.1未満であった。比較例1では、濃度勾配の比率S2/S1は、1.1未満であった。
図6に示すように、実施例1および2で得られた結晶体では、法線方向から離れた場合の蛍光強度の増加が抑制され、角度による蛍光強度さが大幅に改善されていた。たとえば実施例1では、角度θが0±20度以内における平均の蛍光強度に比較して、角度θが20度~60度または角度θが-20~-60度の蛍光強度の最大値は、3倍以内の2.2倍以内に抑えることができた。
また、実施例2では、角度θが0±20度以内における平均の蛍光強度に比較して、角度θが20度~60度または角度θが-20~-60度の蛍光強度の最大値は、3倍以内の2.8倍以内に抑えることができた。
これに対して、比較例1では、法線方向から離れるに従い、蛍光強度が増加し、角度による蛍光強度差が顕著に観察された。具体的には、比較例1では、角度θが0±20度以内における平均の蛍光強度に比較して、角度θが20度~60度または角度θが-20~-60度の蛍光強度の最大値は、3倍以上である6倍以上となった。
なお、図6に示すように、実施例1と実施例2とを比較すると、蛍光強度を角度θによらずに均一に近づける観点からは、実施例1の方が幾分優れていることが確認できた。すなわち、図5に示すように、添加物の濃度分布は、中央領域と外側領域とで連続して上に凸の二次元関数グラフなどで近似される山形状の分布が好ましいことが確認できた。ただし、実施例2では、中央領域の最中央部に、濃度分布の平坦領域を有することから、点光源の位置が最中央部から±0.5mmの範囲内で多少ずれたとしても、均一な蛍光強度を実現することができるなどの利点もある。
2… 結晶製造装置
4…坩堝
6… 耐火炉
8… 外ケーシング
10… 主ヒータ
12… 種結晶保持治具
14… 種結晶
16… アフターヒータ
24… 融液貯留部
26… 収容壁
28… 底部外面
30… 融液
32… ノズル孔入口
34… ノズル部
35… 端面
35a… 外周縁
36… ノズル孔
37… 外側面
38… ノズル孔出口
40… ノズル孔形成領域
42… 中心
44… ノズル孔非形成領域
46… 仮想境界線
50… 発光装置
52… 結晶体
52a… 中央領域
52b… 外側領域
54… 発散光源
56… 基体
56a… 凹部

Claims (7)

  1. 添加元素を含む結晶体であって、
    前記結晶体の断面における前記添加元素の濃度が、連続的に変化し前記断面の中央領域では前記中央領域の外側よりも高いことを特徴とする結晶体。
  2. 前記濃度の最高値となるピーク位置から外側に向かうにつれて前記濃度は漸次的に減少していることを特徴とする請求項1に記載の結晶体。
  3. 前記中央領域では、前記濃度が、実質的に一定であることを特徴とする請求項1に記載の結晶体。
  4. 前記添加元素の偏析係数が1未満であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の結晶体。
  5. 母体結晶に添加元素を含む結晶体であって、
    前記結晶体の断面における熱伝導率が、連続的に変化し前記断面の中央領域では前記中央領域の外側よりも低いことを特徴とする結晶体。
  6. 請求項1~5のいずれかに記載の結晶体を有する蛍光素子。
  7. 請求項1~5のいずれかに記載の結晶体と、
    前記結晶体に照射する光を発する光源と、を有する発光装置。
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