JP2022112279A - 害虫駆除用エアゾール製品及び害虫駆除方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ピペロニルブトキサイドによる共力作用を十分に発揮できるようにして害虫の駆除効果を高める。【解決手段】害虫駆除用エアゾール製品1は、空間噴霧用のエアゾール容器10と、エアゾール容器10に収容された原液と、エアゾール容器10に収容され、原液を噴射するための噴射剤とを備えている。原液は、少なくとも1種のピレスロイド系化合物と、ピペロニルブトキサイドとを含んでいる。【選択図】図1

Description

本発明は、害虫を駆除するための害虫駆除用エアゾール製品及び害虫駆除方法に関する。
ピレスロイド、あるいはピレスロイド様の殺虫剤の効力を増強させる共力剤として、ピペロニルブトキサイド(PBO)が知られている(例えば特許文献1、2参照)。特許文献1に開示されているエアゾール剤は、ピレスロイド及びピペロニルブトキサイドを混合した原液と、原液を噴射する噴射剤とを含んでいる。特許文献2に開示されている組成物は、ピレスロイド様の殺虫成分であるエトフェンプロックスと、ピペロニルブトキサイドとを含む動物用害虫駆除剤である。
また、特許文献3には、常温揮散性ピレスロイド化合物、難揮散性化合物及び溶剤からなる原液と、原液を噴射する噴射剤とを含むエアゾール剤を定量噴射バルブから噴射して害虫を駆除することが開示されている。
特開2014-136682号公報 特開2002-80308号公報 特開2011-63576号公報
ところで、ピペロニルブトキサイドがピレスロイド、あるいはピレスロイド様の殺虫剤の効力を増強させる作用(共力作用)については複数考えられ、例えば虫体内のピレスロイド解毒酵素の働きを阻害する作用、虫体表面へのピレスロイドの展着性を向上させる作用、ピレスロイドの揮発を抑制することで持続性を付与する作用などがあり、これらが複合的に働いているとも考えられる。
一方で、殺虫剤の剤型としては、例えばエアゾール剤、加熱燻蒸剤など様々あるが、本願発明者らの検討により、ある種の剤型(例えば加熱蒸散剤)においては、ピペロニルブトキサイドを配合しても所期の効果が得られないという知見が得られた。すなわち、ピペロニルブトキサイドは、単純に配合すれば効力が向上するというものではなく、適切な剤型を選択しなければ所期の効果が得られない。
この理由は必ずしも解明されていないが、ピレスロイド、ピペロニルブトキサイド、溶剤等の成分がどのような状態にあるか(液体か気体か、各成分の比率はどれくらいか等)、どのようにして虫体に取り入れられるか、などは剤型によって異なるところ、ピペロニルブトキサイドの共力作用は上記のように複数のメカニズムが複合的に働いていると考えられるので、剤型によってそれぞれのメカニズムの働きが変わってくるためと考えられる。
この点、特許文献3では、1回当たりの噴射量が0.4mlの定量バルブを有するエアゾールを部屋の中で噴霧し、その噴霧粒子が床面に沈降し、防除効果を発揮する技術を開示しているが、このような剤型においてピペロニルブトキサイドを配合した場合にどのような効果を示すか検討されたことは無い。
特に、特許文献3のように原液中に高濃度で薬剤を含有している剤型においては、仮にピペロニルブトキサイドを配合するとピレスロイドと溶剤との濃度バランスが崩れてしまい、かえって効果が下がってしまうことも考えられる。
本願発明者らが検討したところ、空間に噴霧して使用するエアゾールにピペロニルブトキサイドを配合すると、意外にも溶剤の割合が減ることの悪影響が無く、また空間への拡散性も良好であり、しかも共力作用が得られることから極めて有用であることが明らかになり、本発明を完成させた。すなわち、本開示の第1の側面は、害虫駆除用エアゾール製品を前提とすることができる。害虫駆除用エアゾール製品は、空間噴霧用のエアゾール容器と、前記エアゾール容器に収容された原液と、前記エアゾール容器に収容され、前記原液を噴射するための噴射剤とを備えている。前記原液は、少なくとも1種のピレスロイド系化合物と、ピペロニルブトキサイドとを含んでいる。
この構成によれば、空間処理エアゾール剤の原液にピペロニルブトキサイドを配合することで共力作用が発揮され、多種の害虫に対して高い効力が得られるとともに、特に隙間に潜む害虫に対して高い効力が得られる。その結果、少ない噴射量で空間内のダニ等の害虫を駆除できる。
本開示の第2の側面では、前記原液が、前記ピペロニルブトキサイド以外で前記ピレスロイド系化合物の溶媒となる成分を含まない構成である。
本開示の第3の側面では、前記原液が、前記ピレスロイド系化合物の溶媒を含み、前記溶媒の含有量は、前記ピペロニルブトキサイドの含有量よりも少なく設定されている。
すなわち、原液にピペロニルブトキサイドを配合した場合、ピレスロイド系化合物の溶媒となる成分の量が相対的に少なくなり、ピレスロイド化合物と溶媒とのバランスが崩れて害虫の駆除効力が低下することが懸念される。しかし本願発明者らの検討により、仮にピレスロイド系化合物の溶媒となる成分が全く含まれなくても、ピペロニルブトキサイドがピレスロイド系化合物の溶媒としても機能することにより、原液の空間噴霧によって高い駆除効果を発揮することが確認された。したがって、ピペロニルブトキサイド以外の溶媒となる成分を配合しないか、もしくはピペロニルブトキサイド以外の溶媒となる成分の配合量を減らし、ピレスロイド化合物およびピペロニルブトキサイドを高濃度に配合することができる。
本開示の第4の側面では、前記エアゾール容器が、噴射ボタンの1回の操作により前記原液を所定量だけ噴射する定量噴射型であり、例えば定量噴射バルブ等を備えた構造とすることができる。
すなわち、エアゾール容器を定量噴射型とした場合、一定量の噴霧だけで空間全体を処理する必要があるところ、原液の濃度が高くなりがちである。この点、本構成によれば、溶媒が少ないまたは無くても良いため、ピレスロイド化合物およびピペロニルブトキサイドを高濃度に配合することができ、その結果、小容量の定量噴霧エアゾール剤であっても高い効果を得ることができる。
本開示の第5の側面では、前記ピレスロイド系化合物として、トランスフルトリンとエトフェンプロックスを含んでいる構成である。これにより、多種の害虫に対して高い駆除効果を得ることができる。
本開示の第6の側面は、少なくとも1種のピレスロイド系化合物とピペロニルブトキサイドとを含む原液と、前記原液を噴射するための噴射剤とをエアゾール容器に収容しておき、前記原液を前記噴射剤により前記エアゾール容器から空間に噴霧することによって害虫を駆除することを特徴とする害虫駆除方法である。
以上説明したように、空間処理エアゾール剤の原液にピペロニルブトキサイドを配合したので、ピペロニルブトキサイドによる共力作用が発揮され、特に隙間に潜む害虫に対して高い効力が得られ、その結果、少ない噴射量で空間内のダニ等の害虫を駆除できる。
本発明の実施形態に係る駆除用エアゾール製品の斜視図である。 隙間に潜む害虫に対する効力試験を実施した試験室における試験環境を説明する概略図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、害虫駆除用エアゾール製品1の斜視図である。害虫駆除用エアゾール製品1は、空間噴霧用のエアゾール容器10と、押し下げ式の操作ボタン(噴射ボタン)20と、エアゾール容器10に取り付けられる筒状ベース30と、筒状ベース30に設けられる筒状カバー40と、エアゾール容器10に収容されたエアゾール剤とを備えている。エアゾール容器10や、操作ボタン20の形状、構造は特に限定されるものではない。
害虫駆除用エアゾール製品1が駆除対象とする害虫は、昆虫のみならず、ダニ類、クモ類、多足類等を広く含む。害虫駆除用エアゾール製品1が駆除対象とする害虫の例として、アリ、カメムシ、クモ、ハチ、ゴミムシ、蛾、アブ、シロアリ、ムカデ、コバエ、ダニ等を挙げることができる。駆除対象のアリとしては、例えば、アミメアリ、アルゼンチンアリ、オオズアリ、トビイロシワアリ、ハネアリ、シリアゲアリ、クロオオアリ、ハヤトゲフシアリ、クロヤマアリ、アメイロアリ、ルリアリ、キイロケアリ、アカカミアリ、アワテコヌカアリ等を挙げることができる。駆除対象のカメムシとしては、例えば、クサギカメムシ、オオモンシロナガカメムシ、チャバネアオカメムシ、クモヘリカメムシ、アオクサカメムシ、ツヤマルシラホシカメムシ、オオホシカメムシ、ツチカメムシ、キマダラカメムシ、ホソヘリカメムシ、ツヤアオカメムシ、アカヒゲホソミドリカスミカメムシ、ウスモンミドリカスミカメムシ等を挙げることができる。駆除対象のクモとしては、例えば、セアカゴケグモ、ハラクロコモリグモ、ハナグモ、ササグモ、ユウレイグモ、チャスジハエトリ、マミジロハエトリ、シラヒゲハエトリ、ウロコアシナガグモ、アシダカグモ等を挙げることができる。駆除対象のハチとしては、例えば、セグロアシナガバチ、キアシナガバチ、アナバチ、コハナバチ等を挙げることができる。駆除対象のゴミムシとしては、例えば、オオナガゴミムシ、キアシヌレチゴミムシ等を挙げることができる。駆除対象の蛾としては、例えば、コブノメイガ、アカマエアオリンガ、カバイロシマコヤガ、シロケンモン、イガ、アメリカシロヒトリ、ハスモンヨトウ、クロテンシロヒメシャク等を挙げることができる。駆除対象のアブとしては、例えば、シオヤアブ、アメリカミズアブ等を挙げることができる。駆除対象のシロアリとしては、例えば、ヤマトシロアリ等を挙げることができる。駆除対象のムカデとしては、例えば、トビズムカデ等を挙げることができる。駆除対象のコバエとしては、例えば、ノミバエ、キイロショウジョウバエ、チョウバエ等を挙げることができる。その他の駆除対象の害虫としては、例えば、セスジユスリカ、ゲジ、シミ、ヒメコオロギ、タンボコオロギ、ツマグロオオヨコバイ、アオマツムシ、ヒナバッタ、カネタタキ、キスイムシ、タバコシバンムシ、アズキゾウムシ、ヒメカツオブシムシ、コクゾウムシ、アオドウガネ、コクヌストモドキ、オカダンゴムシ、ワラジムシ、イチモンジカメノコハムシ、ウリハムシ、スネブトクシヒゲガガンボ、ヒメサビキコリ、ヒゲナガカクトビケラ等を挙げることができる。
これら害虫に対して有意な駆除効果を発揮するように、原液が調製されるとともに、エアゾール剤の噴射量、エアゾール剤の噴射によって形成される噴霧の粒子径等が設定されている。また、害虫駆除用エアゾール製品1を使用することで、上記以外の害虫を駆除することも可能である。
尚、この実施形態の説明では、使用者が手で持って使用するときに使用者から見て左側及び右側をそれぞれ単に「左」及び「右」といい、使用者から見て手前側となる側を単に「後」といい、使用者から見て奥側となる側を単に「前」というものとする。
エアゾール容器10は金属製であってもよいし、透光性を有する樹脂製であってもよく、透光性を有する場合、外部から内容物の残量を把握することができる。エアゾール容器10の上部には、定量噴射バルブ機構(図示せず)が設けられている。このバルブ機構は、上下方向に移動するとともにエアゾール容器10に収容されている内容物を吐出するための吐出管(図示せず)と、吐出管を上方に付勢するバネ等からなる付勢部材(図示せず)と、弁体(図示せず)とを有している。吐出管は上下方向に延びる姿勢とされており、上昇端位置にあるときには弁体によって吐出管の下端部(上流端部)が閉じられてエアゾール容器10の内部と吐出管とが連通しないようになる一方、吐出管が上昇端位置から下方へ押動操作されると吐出管の下端部が開かれてエアゾール容器10の内部と吐出管とが連通して内容物が吐出管の上端部から吐出されるように、上記バルブ機構が構成されている。また、吐出管を1回押動操作すると、吐出管の下端部が瞬間的に開かれた後、閉状態になり、内容物が少量(所定量)だけ噴射される。つまり、このエアゾール容器10は定量噴射型である。尚、定量噴射型のエアゾール容器10としては、例えば特開2014-28631号公報に記載されている容器を使用することができる。
操作ボタン20は、例えば樹脂材を射出成型して得ることができ、全体が一体成形されている。操作ボタン20は、エアゾール容器10の吐出管の上側に嵌合し、該吐出管を押動操作するためのものであり、ボタン本体21と、エアゾール容器10の吐出管の下流端に連通するノズル部23とを有している。ノズル部23は、ボタン本体21の前部から突出している。
ノズル部23は、エアゾール容器10の吐出管の中心線と交差する方向である前側へ突出しており、その前側へ行くほど上に位置するように傾斜している。ノズル部23の基端側がエアゾール容器10の吐出管13と連通している。ノズル部23の傾斜角度は、例えば吐出管の中心線と直交する平面とのなす角度が5度以上45度以下の範囲で設定することができる。ノズル部23を傾斜させることで、内容物を斜め上方へ向けて効果的に吐出することが可能になる。
筒状ベース30は、上下方向に延び、エアゾール容器10の上下方向中間部の外径と略同じ外径を有する円筒状に形成されている。筒状ベース30の下端部は全体が開放され、エアゾール容器10の上部が該筒状ベース30の下端部から挿入されて固定される。
筒状カバー40は、操作ボタン20の周囲を囲むように形成され、筒状ベース30に取り付けられる。この状態で、ノズル部23の外面が筒状カバー40によって覆われる。また、操作ボタン20のノズル部23の先端部は筒状カバー40よりも前方へ突出している。
エアゾール剤は、原液と、原液を噴射するための噴射剤とで構成されている。原液は、殺虫成分と、ピペロニルブトキサイドとを含んでいる。殺虫成分は、少なくとも1種のピレスロイド系化合物であり、例えば、トランスフルトリン、エトフェンプロックス、シフルトリン(βシフルトリン)、シフェノトリン、トラロメトリン、イミプロトリン、フタルスリン、レスメトリン等を使用できるが、これらに限られるものではない。これらの中のうち、任意の1種または2種以上を混合したものを殺虫成分として使用できる。
なお本実施形態では、トランスフルトリンおよびエトフェンプロックスを混合して用いている。トランスフルトリンは害虫を即効的にノックダウン(行動不能な状態)する作用に優れており、即効性に寄与する。従って、トランスフルトリンは、ノックダウン剤と呼ぶことができる。一方、エトフェンプロックスは、トランスフルトリンよりもノックダウン活性は低いが、最終的な致死率に優れる。従って、エトフェンプロックスは、致死剤と呼ぶことができる。また、エトフェンプロックスはトランスフルトリンよりも蒸気圧が低いので、残効性に優れる。ノックダウン剤と致死剤は何れか一方でも良いし、所望の効力に応じて適宜組み合わせることができる。
本実施形態では、トランスフルトリンの含有量をエトフェンプロックスの含有量よりも少なくしている。具体的には、トランスフルトリンの含有量は、エトフェンプロックスの含有量の1/3以下、好ましくは1/5以下に設定している。尚、トランスフルトリンの含有量とエトフェンプロックスの含有量とを同じにしてもよいし、トランスフルトリンの含有量をエトフェンプロックスの含有量よりも多くしてもよい。
ピペロニルブトキサイドは、ピレスロイド系化合物の効力を増強させる共力剤である。ピレスロイド系化合物とピペロニルブトキサイドとで害虫駆除の有効成分が構成されている。ピペロニルブトキサイドの含有量は、ピレスロイド系化合物の含有量よりも多くしている。具体的には、ピペロニルブトキサイドの含有量は、ピレスロイド系化合物の含有量の1.5倍以上、好ましくは2倍以上に設定している。尚、ピペロニルブトキサイドの含有量とピレスロイド系化合物の含有量とを同じにしてもよいし、ピペロニルブトキサイドの含有量をピレスロイド系化合物の含有量よりも少なくしてもよい。
ピペロニルブトキサイドにはピレスロイド系化合物が溶解するので、ピペロニルブトキサイドはピレスロイド系化合物の溶媒となる。このため、原液には、ピペロニルブトキサイド以外でピレスロイド系化合物の溶媒となる成分を含まなくてもよい。この場合、ピレスロイド系化合物を溶解させる成分として、ピペロニルブトキサイドのみが含まれる原液組成となる。
原液は、ピレスロイド系化合物の溶媒としてピペロニルブトキサイド以外の溶媒成分を含んでいてもよい。ピレスロイド系化合物の溶媒としては、炭化水素系溶媒を挙げることができ、具体的には、灯油(ケロシンともいう)を挙げることができる。本実施形態では、ケロシンとしてネオチオゾールFを使用している。炭化水素系溶媒を配合することにより、虫体への親和性が向上するので、直接噴霧で使うことも可能となる。なお、直接噴霧での使用を前提としない場合は、虫体への親和性が高い溶媒にかぎらず採用することができる。この場合の好適な溶媒としてはエタノールを挙げることができるが、これに限定されない。
ピレスロイド系化合物の溶媒の含有量は、ピペロニルブトキサイドの含有量よりも少なく設定されている。具体的には、ピレスロイド系化合物の溶媒の含有量を、ピペロニルブトキサイドの含有量の90%以下、好ましくは80%以下に設定することができる。尚、ピレスロイド系化合物の溶媒の含有量とピペロニルブトキサイドの含有量とは同じであってもよいし、ピレスロイド系化合物の溶媒の含有量がピペロニルブトキサイドの含有量よりも多くてもよい。
操作ボタン20の1回の操作による殺虫成分の噴射量(以下、Ai量ともいう。)は、効力や安全性等を考慮して適宜設定することができる。殺虫成分の種類によって最適なAi量は異なるが、例えば1mg以上600mg以下に設定することができる。Ai量は、殺虫成分の含有量及び操作ボタン20の1回の操作による原液の噴射量を変更することによって上記範囲にすることができる。Ai量が1mgよりも少ないと、空間に噴射される殺虫成分が少なすぎて殺虫成分による効果が低減してしまう。一方、Ai量が600mgよりも多いと、空間に噴射される殺虫成分が多くなり、特に狭い空間の場合に安全性の面で好ましくない場合が想定される。この点、Ai量は200mg以下とすることがより好ましい。
操作ボタン20の1回の操作によるピペロニルブトキサイドの噴射量は、例えば10mg以上300mg以下に設定されている。ピペロニルブトキサイドの噴射量は、原液中のピペロニルブトキサイドの含有量及び操作ボタン20の1回の操作による原液の噴射量を変更することによって上記範囲にすることができる。ピペロニルブトキサイドの噴射量が10mgよりも少ないと、ピペロニルブトキサイドの共力作用が低くなり、害虫駆除効果が低下してしまう。この点、ピペロニルブトキサイドの噴射量は1回あたり100mg以上とすることがより好ましい。一方、ピペロニルブトキサイドの噴射量が300mgよりも多いと、ピペロニルブトキサイドの共力作用の向上が頭打ちになる。
また、操作ボタン20の1回の操作による原液の噴射量は、0.1mL以上3.0mL以下に設定されている。操作ボタン20の1回の操作による原液の噴射量は、上記バルブ機構の構造変更等によって上記範囲にすることができる。操作ボタン20の1回の操作による上記液体の噴射量が0.1mLよりも少ないと、空間に噴射される殺虫成分が少なすぎて殺虫成分による効果が低減してしまう。一方、操作ボタン20の1回の操作による上記液体の噴射量が3.0mLよりも多いと、空間に噴射される原体が多くなり、特に狭い空間の場合に噴射された原液による汚染性の面で好ましくない場合が想定される。操作ボタン20の1回の操作による原液の噴射量の上限は、2.0mL以下が好ましく、1.0mL以下がより好ましい。
原液と噴射剤の容量の比(原液:噴射剤)は、3:97~45:55の範囲内となるように設定することが好ましく、10:90~35:65の範囲内とすることがより好ましい。このように噴射剤がリッチな処方とすることにより、ピレスロイド系化合物及びピペロニルブトキサイドがエアゾール容器10から噴射されるときに、小さな粒子になりやすく、また粒子の勢いが強くなる。そのため、噴射された粒子が広範囲に飛んでいき、空気中に漂いやすくなるので、隙間への効果も発揮できる。
すなわち、原液:噴射剤の容量比率が45:55となる比率よりも噴射剤が少なくなると、原液がエアゾール容器10から噴射されるときに、粒子が大きくなってしまい、その結果、粒子1つ当たりの重量が重くなり、空気中に漂い難くなって広範囲に飛んでいく前に落下してしまう。また、原液:噴射剤の容量比率が45:55となる比率よりも噴射剤が少なくなるということは、言い換えると原液の量が多くなるということであるが、原液の量が上記容量比率よりも多くなると、1回で噴射される原液の量が多すぎることになり、このことによっても粒子1つ当たりの重量が重くなり、空気中に漂い難くなる。
一方、原液:噴射剤の容量比率が3:97となる比率よりも噴射剤が多くなると、1回で噴射される原液の量が少なすぎて粒子が小さくなりすぎてしまい、床の表面、もしくは虫に粒子が付着しづらくなり、殺虫成分による駆除効果は低減してしまう。したがって、ある程度は原液の割合を大きくする必要があるが、虫の種類によってはごく少量の原液でも効力を発揮できる場合があるので、その場合は原液の割合は少なくても良い。このように、薬剤に対して弱い虫のみを対象とする場合は原液の割合が少なくて済み、より多くの種類の虫を駆除できるようにするには、ある程度原液の割合を増やす必要がある。
よって、噴射剤がリッチな処方を前提として、対象とする害虫の種類に応じて原液:噴射剤の容量比率が3:97~45:55、より好ましくは10:90~35:65の範囲となるように設定するのが好ましい。
なお、本発明においては、ピペロニルブトキサイドの共力作用によりピレスロイド系化合物の効力を増強するので、ピレスロイド系化合物の配合量が少なくても十分な効力を発揮する。また、ピペロニルブトキサイド自体がピレスロイド系化合物の溶媒として機能するので、他の溶媒を必ずしも必要としない。このため、一回あたりに噴霧する原液量の調整の自由度が向上し、ひいては原液と噴射剤の容量比を最適な値に設定することができる。
次に、上記のように構成された害虫駆除用エアゾール製品1を使用する場合について説明する。害虫駆除用エアゾール製品1は、家屋や事務所、店舗の室内等のような空間で使用することができる。この害虫駆除用エアゾール製品1を使用することで、少なくとも1種のピレスロイド系化合物とピペロニルブトキサイドとを含む原液と、原液を噴射するための噴射剤とをエアゾール容器10に収容しておき、原液を噴射剤によりエアゾール容器10から空間に噴霧することによって害虫を駆除することができる。これが本発明に係る害虫駆除方法である。
具体的には、ユーザーが室内の端にいる場合には、ノズル部23の先端が上に向くように害虫駆除用エアゾール製品1を手で持った後、ノズル部23の先端を室内の中央またはその近傍へ向け、その後、操作ボタン20を押し下げる。また、ユーザーが室内の中央またはその近傍にいる場合には、ノズル部23の先端が上に向くように害虫駆除用エアゾール製品1を手で持った後、ノズル部23の先端を室内の端や隅の壁またはそれらの近傍へ向け、その後、操作ボタン20を押し下げる。また、ユーザーが室内の隅にいる場合には、ノズル部23の先端が上に向くように害虫駆除用エアゾール製品1を手で持った後、ノズル部23の先端を室内の別の隅の壁またはその近傍へ向け、その後、操作ボタン20を押し下げる。このように、ノズル部23の先端を室内の隙間へ向けず、空間を遮る物(家具、電化製品等)が存在しない空間へ向けて噴射動作を行うことが好ましい。これにより、噴射された粒子が水平方向に広く拡散し、遠くまで飛んでいくとともに、空気中に漂っている時間が長くなる。噴霧された粒子は、やがて床まで落下して床の表面に付着し、害虫が床にいれば害虫にも付着する。また、噴霧された粒子は、家具や電化製品の側面に沿って奥の方まで飛び、それらの背面側へ周り込んで背面に沿って飛んで空気中に漂い、その後、自重によって下部付近まで落ちていく。このように、狭い隙間であっても粒子が広範囲に飛んでいく。ここで、隙間とは、例えば部屋に置かれた家具と壁との間、家具と家具との間、家具と電化製品との間、電化製品と壁との間等であり、例えば幅が10cm以下の狭い所を挙げることができる。また、殺虫成分を含んだ粒子は、壁にとまっている害虫にも付着する。
尚、ノズル部23の先端を隙間へ向けて操作ボタン20を押し下げてもよく、この場合、エアゾール剤を隙間へ向けて直接噴霧できる。また、害虫が見える場合には、ノズル部23の先端を害虫へ向けてエアゾール剤を直接噴霧してもよい。この場合、炭化水素系溶媒の虫体への高い親和性によって駆除効果が向上する。
噴射時のノズル部23の高さは、床面から80cm以上にするのが好ましく、より好ましくは100cm以上である。噴射時のノズル部23の高さが低すぎると噴射された粒子の拡散量が低下してしまうからである。また、エアゾール容器10が定量噴射型であるため、上述のように広範囲に粒子が飛んだとしても、殺虫成分の量は規定量以上噴射されることはなく、安全性が高くなるとともに、取り扱いが容易になる。さらに、使用箇所が隙間に限定されないので、汎用性が高まる。
原液及び噴射剤の噴射量は、床面積15平方メートル当たり0.1ml以上とすることができ、好ましくは2.0ml以上である。原液及び噴射剤の噴射量の上限は、床面積15平方メートル当たり6ml以下とすることができる。この噴射量に達するまで操作ボタン20を複数回操作してもよい。尚、部屋の天井高は、例えば2.5m~2.7m程度である。
(多種害虫に対する効力試験)
この効力試験では、多種の供試虫に対する害虫駆除用エアゾール製品1の駆除効果を確認した。供試虫は、アミメアリ、アルゼンチンアリ、オオズアリ、トビイロシワアリ、ハネアリ、シリアゲアリ、クロオオアリ、ハヤトゲフシアリ、クロヤマアリ、アメイロアリ、ルリアリ、キイロケアリ、アカカミアリ、アワテコヌカアリ、クサギカメムシ、オオモンシロナガカメムシ、チャバネアオカメムシ、クモヘリカメムシ、アオクサカメムシ、ツヤマルシラホシカメムシ、オオホシカメムシ、ツチカメムシ、キマダラカメムシ、ホソヘリカメムシ、ツヤアオカメムシ、アカヒゲホソミドリカスミカメ、ウスモンミドリカスミカメ、セアカゴケグモ、ハラクロコモリグモ、ハナグモ、ササグモ、ユウレイグモ、チャスジハエトリ、マミジロハエトリ、シラヒゲハエトリ、ウロコアシナガグモ、アシダカグモ、セグロアシナガバチ、キアシナガバチ、アナバチ、コハナバチ、オオナガゴミムシ、キアシヌレチゴミムシ、コブノメイガ、アカマエアオリンガ、カバイロシマコヤガ、シロケンモン、イガ、アメリカシロヒトリ、ハスモンヨトウ、クロテンシロヒメシャク、シオヤアブ、アメリカミズアブ、ヤマトシロアリ、トビズムカデ、ノミバエ、キイロショウジョウバエ、チョウバエ、セスジユスリカ、ゲジ、シミ、ヒメコオロギ、タンボコオロギ、ツマグロオオヨコバイ、アオマツムシ、ヒナバッタ、カネタタキ、キスイムシ、タバコシバンムシ、アズキゾウムシ、ヒメカツオブシムシ、コクゾウムシ、アオドウガネ、コクヌストモドキ、オカダンゴムシ、ワラジムシ、イチモンジカメノコハムシ、ウリハムシ、スネブトクシヒゲガガンボ、ヒメサボキコリ、ヒゲナガカクトビケラ、ジョロウグモ、クサグモ、アシブトハエトリ、デーニッツハエトリ、ハサミムシ、ジムカデ、イッスンムカデ、ヒラタチャタテムシである。
多種害虫に対する効力試験は温度が25℃に設定された無風恒温室で行った。無風恒温室の広さは約8畳である。無風恒温室の床面近傍に供試虫を置いた。その後、害虫駆除用エアゾール製品1を無風恒温室の中央において高さ100cmに配置し、そこから壁へ向けて2回噴霧した。1回の噴射量は、0.8mLである。
供試剤の組成は表1に示すとおりである。なお、表中の「消臭剤」は油性(油溶性)の消臭剤であり、油性悪臭物質の揮散性を低減することで消臭するものである。すなわち、この供試材は、屋内空間に噴霧することで、害虫の駆除のみならず屋内の消臭も行うことができる。なお、消臭剤が含まれていなくても害虫駆除効果には有意に影響しない。消臭剤を配合する場合は、ピペロニルブトキサイドに溶解させる必要があるため、上記のように油性消臭剤が好適である。また、噴射剤はLPGであるが、DME等の噴射剤を使用しても害虫駆除効果には有意に影響しない。この供試剤の原液:噴射剤の容量比率は30:70である。
Figure 2022112279000002
また、この供試剤に係る害虫駆除用エアゾール製品1から1回の操作で噴射される各成分量(噴射量0.8mL中の各成分量)は表2に示すとおりである。害虫駆除用エアゾール製品1から1回の操作で噴射されるピペロニルブトキサイドの量は約167mgとなる。
Figure 2022112279000003
供試剤の噴霧後、供試虫を無風恒温室内に30分間置いて無風恒温室内の空気に暴露させた。その後、無風恒温室から出して25℃の室内に移した。供試剤の噴霧から24時間経過後、48時間経過後のそれぞれの供試虫の致死数を確認し、24時間後致死率(%)及び48時間後致死率(%)を算出した。
その結果、48時間後致死率が100%の供試虫は、キマダラカメムシ、ホソヘリカメムシ、ウロコアシナガグモ、トビズムカデ、アオドウガネであった。48時間経過しても致死が確認されなかった供試虫は、ジョロウグモ、クサグモ、アシブトハエトリ、デーニッツハエトリ、ハサミムシ、ジムカデ、イッスンムカデであった。上記以外の供試虫(50種以上)は、全て24時間後致死率が100%であった。したがって、本実施形態によれば、害虫の種類を問わず、多種の害虫に対して高い駆除効果を発揮することが分かる。なお、上記試験で48時間致死が確認されなかった供試虫に対しても、噴霧回数を増やせば十分な効力が得られる。
(隙間に潜む害虫に対する効力試験)
この効力試験では、隙間に潜む害虫に対する害虫駆除用エアゾール製品1の駆除効果を確認した。供試虫は、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、アミメアリ、クサギカメムシである。
隙間に潜む害虫に対する効力試験は、温度が25℃に設定された無風恒温室100(図2に試験環境を示す)で行った。無風恒温室100の広さは約8畳であり、この無風恒温室100には、段ボールで作製した3つの模型家具101を設置した。模型家具101の横寸法Aは34cm、縦寸法Bは52cm、高さは160cmとした。模型家具101の側面と壁との隙間の寸法C1は5cmであり、また、模型家具101の奥側の面と壁との隙間の寸法C2も5cmであり、また、模型家具101同士の隙間の寸法C3も5cmである。
供試虫は、隙間の奥(符号102で示す破線で囲まれた領域)に置いた。害虫駆除用エアゾール製品1は、無風恒温室100の模型家具101から離れた箇所(符号Dで示す円近傍位置)において高さ100cmに配置し、そこから矢印103の方向へ向けて1回ずつ、計2回噴霧した。1回の噴射量は、0.8mLである。供試剤は、上記「多種害虫に対する効力試験」で使用した供試剤と同じである。
供試剤の噴霧後、供試虫を無風恒温室内に30分間置いて無風恒温室内の空気に暴露させた。その後、無風恒温室から出して25℃の室内に移した。供試剤の噴霧から24時間経過後の供試虫の致死数を確認し、24時間後致死率(%)を算出した。その結果を表3に示す。
Figure 2022112279000004
このように、全ての供試虫について3回の反復試験を行ったところ、全て供試虫及び全ての回で24時間後致死率が100%であった。したがって、本実施形態によれば、隙間に潜む害虫に対して高い駆除効果を発揮することが分かる。尚、試験資源の関係上、供試虫は上記5種のみで試験しているが、上記「多種害虫に対する効力試験」の結果を考慮すると、他の供試虫の大部分に対しても同様に隙間でも高い駆除効果を発揮するものであることが推定される。
(ピペロニルブトキサイドの共力作用)
本願発明者らの検討により、例えばアミメアリ、セアカゴケグモはピレスロイド系化合物に対して特異的に強い害虫であることが判明している。例えば、表1の供試剤からピペロニルブトキサイドを省略し、代わりの溶媒(ネオチオゾールF)を配合した比較例を用いて「隙間に潜む害虫に対する効力試験」と同様の試験を行ったところ、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、クサギカメムシに対しては表1に示す処方と同等の駆除効果を発揮したものの、アミメアリの24時間後致死率は30%、セアカゴケグモの24時間後致死率は0%であった。このようにピレスロイド系化合物に対して特異的に強い害虫の場合、隙間に潜んでいるものを駆除することが極めて困難である。そこで、本発明に基づきピペロニルブトキサイドを配合した処方(表1に記載の処方)とすることにより、前述のように隙間に潜むアミメアリ及びセアカゴケグモの24時間後致死率が100%まで向上する。
また、例えばワモンゴキブリの場合、上記同様にピペロニルブトキサイドを省略した比較例で試験をおこなったところ24時間後致死率が84%であった。したがってワモンゴキブリはピペロニルブトキサイドを配合しなくても、隙間に潜んでいるものをある程度駆除することはできる。しかし、本発明に基づきピペロニルブトキサイドを配合した処方(表1に記載の処方)とすることにより、前述のように24時間致死率を100%として駆除効果をより一層向上させることができる。
続いて、ピペロニルブトキサイドの量を表1から減らし、溶媒を追加した例(すなわち、ピペロニルブトキサイドと溶媒の両方を含む例)について説明する。表4に示す処方では、表1に示す処方に比べてピペロニルブトキサイドの含有量を減らすとともに、原液に炭化水素系溶媒としてネオチオゾールFを配合している。
Figure 2022112279000005
Figure 2022112279000006
表5に示すように、この害虫駆除用エアゾール製品1から1回の操作で噴射されるピペロニルブトキサイドの量は100mgとなる。表4に示す処方で「隙間に潜む害虫に対する効力試験」と同様の試験を行ったところ、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、クサギカメムシに対しては表1に示す処方とほぼ同程度の駆除効果を発揮する。ワモンゴキブリに対しては24時間後致死率が90%であった。また、アミメアリの24時間後致死率は50%、セアカゴケグモの24時間後致死率は0%であった。
以上のように、ピペロニルブトキサイドを省略した比較例であっても、一部の害虫に対してはある程度の効力を発揮するが、ピペロニルブトキサイドをより多く配合することにより更に効力が向上する。また、比較例では効力が見られなかった害虫に対しても効力を発揮するようになる。
また、ピペロニルブトキサイドはピレスロイド系化合物の溶媒としても作用するので、これ以外の溶媒成分(上記の場合はネオチオゾールF)の代わりとして、あるいはこのような溶媒成分と混合して配合することができる。ところで、この種のエアゾール剤においては、溶媒の種類によって噴霧粒子の拡散性等に影響があると考えられるが、上記のように、ピペロニルブトキサイドを配合しても噴霧粒子の拡散性や駆除効力への悪影響は見られない。特に表1に示す処方では、ピペロニルブトキサイド以外には溶媒となる成分を全く含んでいないにもかかわらず、空間噴霧することにより、当該空間の開けた場所にいる害虫のみならず、空間内の隙間の奥の害虫に対しても高い駆除効果が得られている。つまり、ピペロニルブトキサイド自体が溶媒として作用し、空間および隙間への噴霧粒子の拡散性等も問題ないことが分かる。
(原液:噴射剤の容量比率に関する試験)
次に、原液:噴射剤の容量比率を変化させた場合の試験結果について説明する。供試剤として、原液:噴射剤の容量比率が30:70のもの、35:65のもの、40:60のもの、50:50のものを用意した。30:70の供試剤は、表1に示す処方と同じである。他の供試剤は、表1の処方よりも噴射剤の割合を減らすとともに、同量の溶媒(ネオチオゾールF)を増やすことで作成し、一回あたりの殺虫成分およびピペロニルブトキサイドの噴射量が全ての供試剤で同じとなるように調整した。各供試剤を用いて、「隙間に潜む害虫に対する効力試験」と同様の試験を行った。その結果、30:70の供試剤は、前述のようにすべての供試虫で24時間後致死率が100%であった。これに対し、35:65の供試剤は、クロゴキブリの24時間後致死率が90%、ワモンゴキブリが83%、アミメアリが45%、クサギカメムシが50%であった。40:60の供試剤は、クロゴキブリの24時間後致死率が80%、ワモンゴキブリが50%、アミメアリが30%、クサギカメムシが0%であった。50:50の供試剤は、クロゴキブリの24時間後致死率が10%、ワモンゴキブリが17%、アミメアリが25%、クサギカメムシが0%であった。(なお、チャバネゴキブリはすべての供試剤で100%であった。)
以上のように、原液:噴射剤の容量比率が30:70よりも噴射剤の割合を増やしていくと、一回あたりの殺虫成分およびピペロニルブトキサイドの噴射量は同じにもかかわらず、特定の害虫に対する隙間での効力が低下することがわかる。これは、原液の割合が大きくなりすぎると、噴霧粒子の拡散性が低下して隙間まで薬剤が広がらないためであると考えられる。
(忌避効力試験)
この効力試験では、供試虫に対して発揮される忌避効果を確認した。供試虫は、屋内塵性ダニとしてコナヒョウヒダニ、ケナガコナダニである。忌避効力試験では、まず、8畳の広さの無風恒温室の床面近傍に金巾を置き、その後、害虫駆除用エアゾール製品1を無風恒温室の中央において高さ100cmに配置し、そこから壁へ向けて2回噴霧した。1回の噴射量は、0.8mLである。
供試剤の噴霧後、金巾を無風恒温室内に30分間置いて無風恒温室内の空気に暴露させた。これにより、金巾に供試剤が付着する。その後、無風恒温室から回収した。この金巾を「処理区」とする。また、供試材を付着させない金巾を用意し、「無処理区」とした。
次いで、別の部屋で、1万匹のダニを含んだ培地をシャーレ(大)に広げ、シャーレ(大)の中央部にシャーレ(小)を設置し、処理区または無処理区の金巾をシャーレ(小)内に設置した。上記金巾上には、ダニを誘引するための誘引用飼料を置いた。誘引用飼料を置いてから1日経過後、3日経過後、7日経過後、14日経過後のそれぞれについて上記金巾上に存在するダニの数をカウントし、忌避率を算出した。その結果を表6に示す。
ダニ忌避率(%)=(無処理区のダニ数-処理区のダニ数)/無処理区のダニ数×100
Figure 2022112279000007
このように、コナヒョウヒダニに対しては14日経過後であっても80%以上の極めて高い忌避率を発揮した。また、ケナガコナダニに対しては7日経過後であっても80%以上の高い忌避率を発揮した。したがって、本実施形態によれば、高いダニよけ効果を発揮することが分かる。尚、市販の燻蒸型やエアゾール型のダニよけ製品で同様な試験を行ったところ、1日後の忌避率で既に70%程度であったことから、7日経過後に80%以上の忌避率を発揮する本実施形態に係るエアゾール剤はダニよけ剤として見たときには格別の効果を発揮する剤である。
また、別の供試剤を使用した場合の試験結果を表7及び表8に示す。表7は供試虫がケナガコナダニである場合の結果を示し、また表8は供試虫がコナヒョウヒダニである場合の結果を示している。表7及び表8中、「Tr」はトランスフルトリンであり、「Et」はエトフェンプロックスであり、「PBO」はピペロニルブトキサイドである。
Figure 2022112279000008
Figure 2022112279000009
本発明の実施例1は、トランスフルトリン、エトフェンプロックス及びピペロニルブトキサイドが原液に含まれている例であり、また本発明の実施例2は、エトフェンプロックスが含まれず、トランスフルトリン及びピペロニルブトキサイドが原液に含まれている例であり、また本発明の実施例3は、トランスフルトリンが含まれず、エトフェンプロックス及びピペロニルブトキサイドが原液に含まれている例である。比較例1として、ピレスロイド系化合物が含まれておらず、ピペロニルブトキサイドが含まれた原液を用意した。実施例1の処方は表1に示す処方である。実施例2、実施例3及び比較例1の処方をそれぞれ表9、表10及び表11に示す。
Figure 2022112279000010
Figure 2022112279000011
Figure 2022112279000012
表7、表8に示すいずれの結果からも、ピペロニルブトキサイド単体では全体として忌避率は低いが、このピペロニルブトキサイドをトランスフルトリン及び/またはエトフェンプロックスと組み合わせることで、共力作用が発揮され、高い忌避効果が長期間に亘って持続することが分かる。
(殺ダニ試験)
殺ダニ試験は、温度が25℃に設定された無風恒温室で行った。無風恒温室の広さは約8畳であり、供試虫を入れた腰高シャーレを無風恒温室の床面に設置した。無風恒温室の中央において高さ100cmから供試剤を2回噴霧した。1回の噴射量は、0.8mLである。供試剤は、実施例1~3、表12に示す比較例2及び表13に示す比較例3である。比較例2では、トランスフルトリンを含んでいるが、エトフェンプロックス及びピペロニルブトキサイドを含んでいない。また、比較例3では、エトフェンプロックスを含んでいるが、トランスフルトリン及びピペロニルブトキサイドを含んでいない。
Figure 2022112279000013
Figure 2022112279000014
殺ダニ試験結果を表14に示す。表14においても表7、8と同様に、「Tr」はトランスフルトリンであり、「Et」はエトフェンプロックスであり、「PBO」はピペロニルブトキサイドである。
Figure 2022112279000015
ピレスロイド系化合物とピペロニルブトキサイドの両方を含んでいる実施例1~3では、コナヒョウヒダニの24時間後致死率が90%以上であり、また、ケナガコナダニの24時間後致死率が50%以上であり、高い殺ダニ効果を発揮している。よって、本発明に係るエアゾール製品1はダニ駆除用エアゾール製品ということもできる。これに対し、ピペロニルブトキサイドを含んでいない比較例2、3ではコナヒョウヒダニ及びケナガコナダニの24時間後致死率が30%未満であり、殺ダニ効果は不十分なものであった。
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、少なくとも1種のピレスロイド系化合物を含む空間処理エアゾール剤の原液にピペロニルブトキサイドを配合することで共力作用が発揮される。しかも、ピペロニルブトキサイドを多量に配合したとしても、空間への拡散性に問題はない。その結果、少ない噴射量で空間内の害虫を駆除できる。さらに、害虫の忌避効果を長期間に亘って得ることができる。
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
以上説明したように、本発明に係る害虫駆除用エアゾール製品及び害虫駆除方法は、各種害虫に対して使用することができる。
1 害虫駆除用エアゾール製品
10 エアゾール容器
20 操作ボタン

Claims (6)

  1. 害虫駆除用エアゾール製品において、
    空間噴霧用のエアゾール容器と、
    前記エアゾール容器に収容された原液と、
    前記エアゾール容器に収容され、前記原液を噴射するための噴射剤とを備え、
    前記原液は、少なくとも1種のピレスロイド系化合物と、ピペロニルブトキサイドとを含むことを特徴とする害虫駆除用エアゾール製品。
  2. 請求項1に記載の害虫駆除用エアゾール製品において、
    前記原液は、前記ピペロニルブトキサイド以外で前記ピレスロイド系化合物の溶媒となる成分を含まないことを特徴とする害虫駆除用エアゾール製品。
  3. 請求項1に記載の害虫駆除用エアゾール製品において、
    前記原液は、前記ピレスロイド系化合物の溶媒を含み、
    前記溶媒の含有量は、前記ピペロニルブトキサイドの含有量よりも少なく設定されていることを特徴とする害虫駆除用エアゾール製品。
  4. 請求項2または3に記載の害虫駆除用エアゾール製品において、
    前記エアゾール容器は、噴射ボタンの1回の操作により前記原液を所定量だけ噴射する定量噴射型であることを特徴とする害虫駆除用エアゾール製品。
  5. 請求項1から4のいずれか1つに記載の害虫駆除用エアゾール製品において、
    前記ピレスロイド系化合物として、トランスフルトリンとエトフェンプロックスを含んでいることを特徴とする害虫駆除用エアゾール製品。
  6. 少なくとも1種のピレスロイド系化合物とピペロニルブトキサイドとを含む原液と、
    前記原液を噴射するための噴射剤とをエアゾール容器に収容しておき、
    前記原液を前記噴射剤により前記エアゾール容器から空間に噴霧することによって害虫を駆除することを特徴とする害虫駆除方法。
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