JP2022107396A - 熱硬化性樹脂組成物の製造方法及び電子部品装置の製造方法 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物の製造方法及び電子部品装置の製造方法 Download PDF

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Itaru Yamaura
岳博 中村
Takehiro Nakamura
昌勲 洪
Chang Xun Hong
東哲 姜
Dong-Cheol Kang
克至 平嶋
Katsushi Hirashima
博 野澤
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Abstract

【課題】無機充填材の高充填化が可能な熱硬化性樹脂組成物の製造方法を提供すること。【解決手段】熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、無機充填材と溶剤とを含むスラリーと、を混合した混合物を、前記溶剤を除去しながら混練するものであり、前記混合物に含まれる全溶剤に占める、沸点が50℃~180℃の溶剤の割合が、95質量%以上である。【選択図】なし

Description

本開示は、熱硬化性樹脂組成物の製造方法及び電子部品装置の製造方法に関する。
近年、電子部品装置の低コスト化、小型化、薄型化、軽量化、高性能化及び高機能化を図るために、素子の配線の微細化、多層化、多ピン化及びパッケージの小型薄型化による高密度実装化が進んでいる。これに伴い、IC(Integrated Circuit)等の素子とほぼ同じサイズの電子部品装置、すなわち、CSP(Chip Size Package)が広く用いられている。さらには、1つのパッケージに複数の素子を組み入れるSiP(System in Package)が開発されている。
電子部品装置の素子を封止する封止材料としては、生産性、コスト等の面から、熱硬化性樹脂、硬化剤及び無機充填材を含む熱硬化性樹脂組成物が広く使用されている。電子部品装置に搭載される素子のさらなる高密度化及び高機能化に伴い、CSPにおけるバンプ-チップ間距離又はSiPにおける素子間の距離が狭ギャップ化している。そのため、無機充填材のカットポイントの小径化が進行している。しかしながら、カットポイントの小径化に伴い、無機充填材の比表面積が増加して均一な分散が困難となり、その結果として無機充填材の高充填化が課題となっている。
熱硬化性樹脂組成物の製造方法の一例として、エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を含む原材料全てを溶剤に混合し、溶解して混合溶解物とし、次いで、溶剤を除去することを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂成形材料の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
特開2011-252041号公報 特開2011-252042号公報
特許文献1又は2に記載の製造方法は、半導体封止用エポキシ樹脂成形材料中の金属異物を除去するために原料を混合溶解物状態とするものである。しかしながら、特許文献1又は2に記載の製造方法では、混合溶解物に強いせん断力を付与することが困難であり、低カットポイントの無機充填材を均一に分散させることが困難な場合がある。
本開示の一態様は上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、無機充填材の高充填化が可能な熱硬化性樹脂組成物の製造方法、及び、この製造方法により得られた熱硬化性樹脂組成物を用いた電子部品装置の製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 熱硬化性樹脂と、硬化剤と、無機充填材と溶剤とを含むスラリーと、を混合した混合物を、前記溶剤を除去しながら混練するものであり、
前記混合物に含まれる全溶剤に占める、沸点が50℃~180℃の溶剤の割合が、95質量%以上である熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
<2> 前記スラリーが、カップリング剤をさらに含む<1>に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
<3> 前記無機充填材のトップカット径が、10μm以下である<1>又は<2>に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
<4> 前記スラリーに含まれる前記溶剤の沸点が、50℃~180℃である<1>~<3>のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
<5> 前記無機充填材の前記スラリー中における固形分比率が、40質量%~90質量%である<1>~<4>のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
<6> 前記混合物の固形分比率が、35質量%~95質量%である<1>~<5>のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
<7> <1>~<6>のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法により得られた熱硬化性樹脂組成物により素子を封止する工程を有する電子部品装置の製造方法。
本開示の一態様によれば、無機充填材の高充填化が可能な熱硬化性樹脂組成物の製造方法、及び、この製造方法により得られた熱硬化性樹脂組成物を用いた電子部品装置の製造方法を提供することができる。
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、該当する物質が複数種含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率又は含有量は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において、各成分に該当する粒子には、複数種の粒子が含まれていてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本開示において「固形分」とは、混合物、スラリー又は熱硬化性樹脂組成物から、溶剤等の揮発性成分を除いた残りの成分を意味する。
<熱硬化性樹脂組成物の製造方法>
本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、無機充填材と溶剤とを含むスラリーと、を混合した混合物を、前記溶剤を除去しながら混練するものであり、前記混合物に含まれる全溶剤に占める、沸点が50℃~180℃の溶剤(以下、特定溶剤と称することがある。)の割合が、95質量%以上である。
本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法によれば、無機充填材の高充填化が可能となる。その理由は明確ではないが、以下のように推察される。
混合物に含まれる溶剤が分散媒体として作用することで混合物の粘度が低下するため、混合物を混練する際のせん断熱の発生が抑制される。分散媒体として溶剤を使用しない従来の熱硬化性樹脂組成物の製造方法では、無機充填材の凝集力を低くすることが困難であり、特に低カットポイントの無機充填材を使用した場合に、大きなせん断熱が発生し、熱硬化性樹脂組成物のゲル化が生ずる場合があった。本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法では溶剤を用いるため、溶剤を使用しない場合に比較して、混合物の温度上昇が抑制され、ゲル化を懸念することなく混合物に対して十分なせん断力を付与することができるようになる。混合物に対して十分なせん断力を付与することで、熱硬化性樹脂組成物中の無機充填材が均一に分散されやすくなる。また、混合物を混練する際に溶剤を除去することから、溶剤の除去が進み混合物の粘度が徐々に高くなるにつれて混合物に対するせん断力が高くなり、無機充填材の分散性がより向上し、さらには熱硬化性樹脂組成物中での無機充填材の再凝集が抑制される。
一方、混合物に含まれる全溶剤に占める特定溶剤の割合が95質量%以上であるため、混合物に含まれる溶剤の除去が進みやすい。その結果、熱硬化性樹脂組成物への無機充填材の高充填化が可能になると推察される。
さらに、混合物に含まれる溶剤の除去をより低温で行うことができるため、混合物を混練する際に生じうる熱硬化性樹脂と硬化剤との反応を必要最小限にとどめることが可能になる。そのため、加熱により反応しやすい熱硬化性樹脂と硬化剤との組み合わせを熱硬化性樹脂組成物の成分として採用することが可能になり、熱硬化性樹脂組成物の設計の自由度が向上する。
(混合物の準備)
本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法では、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、無機充填材と溶剤とを含むスラリーと、を混合した混合物が用いられる。当該混合物には、必要に応じて硬化促進剤、応力緩和剤、イオン交換体等のその他の成分が含有されてもよい。
混合物は、熱硬化性樹脂と、硬化剤と、無機充填材と溶剤とを含むスラリーと、必要に応じて用いられる硬化促進剤、応力緩和剤、イオン交換体等のその他の成分とを、撹拌機、プラネタリミキサー等の混合機、超音波分散機、ジェットミル等の湿式の分散機などを用いて混合することで得られる。混合物を準備する際の混合条件は、混合物に含まれる成分の種類、成分の比率等によって適宜設定される。
混合物の固形分比率は、混練時の液搬送性の観点から、35質量%~95質量%であることが好ましく、60質量%~90質量%であることがより好ましく、65質量%~85質量%であることがさらに好ましい。
混合物に含まれる全溶剤に占める特定溶剤の割合は、95質量%以上とされ、97質量%以上が好ましく、99質量%以上がより好ましく、99.9質量%以上がさらに好ましい。特定溶剤の割合を95質量%以上とすることで、混合物に含まれる溶剤の除去が進みやすい傾向にある。さらには、混合物の混練条件を適宜変更する等の方法により、熱硬化性樹脂組成物の残留溶剤量を望まし範囲に容易に調整可能となる傾向にある。
混合物に含まれる全溶剤に占める特定溶剤の割合は、ガスクロマトグラフ法等により求めることができる。また、混合物の組成が明らかな場合には、混合物の組成から特定溶剤の割合を求めることができる。
(混合物の混練及び溶剤の除去)
本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法では、混合物を、溶剤を除去しながら混練する。混合物を混練するための混練装置は、特に限定されるものではない。混練装置としては、一軸混練機、二軸混練機、三軸以上の多軸混練機等のスクリュー式混練機、二本ロールミル、三本ロールミル等のロールミルなどが挙げられる。
スクリュー式混練機が有する撹拌羽根は、根本及び先端で支持されていても、根本のみで支持されていてもよい。混合性及び生産性を向上する観点から、撹拌羽根は根本のみで支持されていることが好ましい。
これらの中でも、減圧による溶剤の除去が可能となる密閉系の混練装置の一例である、スクリュー式混練機が好ましく、せん断力を容易に制御可能な観点から二軸混練機がより好ましい。
また、第一の混練温度で混合物を混練して得られた一次混練物に硬化促進剤を加え、引き続き第二の混練温度で硬化促進剤を加えた一次混練物をさらに混練して二次混練物を得ることが容易なことから、混練装置としてスクリュー式混練機を用いることが好ましい。
混合物の混練温度は特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂の偏在化抑制の観点から熱硬化性樹脂の融点又は軟化点付近の温度であることが好ましい。熱硬化性樹脂を2種類以上併用する場合、混合物の混練温度は、融点又は軟化点が最も高い熱硬化性樹脂についての融点又は軟化点付近の温度であることが好ましい。
混合物の混練温度は、熱硬化性樹脂(複数種の熱硬化性樹脂を併用する場合には、融点又は軟化点が最も高い熱硬化性樹脂)の融点又は軟化点よりも10℃低い温度から70℃高い温度の範囲であることが好ましく、8℃低い温度から60℃高い温度の範囲であることがより好ましく、6℃低い温度から30℃高い温度の範囲であることがさらに好ましい。かかる温度で混練を行うことにより、熱硬化性樹脂を溶融させて流動性を維持することができるため、撹拌混合を良好に行うことができる。
ある態様では、混合物の混練温度は、30℃~150℃が好ましく、50℃~140℃がより好ましく、60℃~130℃がさらに好ましい。
本開示において、「混合物の混練温度」とは、混合物を混練装置により混練するときにおける混練装置の加熱部温度をいう。
混合物を混練する際に混合物に含まれる溶剤を除去する方法は特に限定されるものではない。混練装置としてスクリュー式混練機を用いる場合、スクリュー式混練機内を減圧して溶剤を除去することが好ましい。
混練装置としてスクリュー式混練機を用いる場合、溶剤の留去の観点から、スクリュー式混練機内の圧力は、0.001MPa~0.08MPaが好ましく、0.003MPa~0.06MPaがより好ましく、0.005MPa~0.05MPaがさらに好ましい。
(後処理)
本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法では、混練を経て得られた熱硬化性樹脂組成物を冷却及び粉砕し、粉体状の熱硬化性樹脂組成物を得てもよい。また、混練を経て得られた熱硬化性樹脂組成物を粒状、タブレット状、ペレット状又はグラニュール状(円柱状の顆粒等)に成形してもよい。熱硬化性樹脂組成物の粉砕方法又は成形方法は特に限定されるものではなく、従来から公知の方法を用いることができる。
以下、熱硬化性樹脂組成物の製造方法で用いられる混合物に含有される、各種成分の詳細について説明する。
(熱硬化性樹脂)
混合物は、熱硬化性樹脂を含有する。
熱硬化性樹脂の種類は特に制限されず、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、チオール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。本開示では、エポキシ基を含有するアクリル樹脂等の、熱可塑性と熱硬化性の両方の性質を示すものは「熱硬化性樹脂」に含めるものとする。熱硬化性樹脂は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)で固体であっても液体であってもよく、固体であることが好ましい。熱硬化性樹脂は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであればその種類は特に制限されない。
具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物とを酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールS等のジグリシジルエーテルである硫黄原子含有型エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。さらにはシリコーン樹脂のエポキシ化物、アミノフェノールのグリシジルエーテルであるアミノフェノール型エポキシ樹脂等もエポキシ樹脂として挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記エポキシ樹脂の中でも、耐熱性と流動性のバランスの観点から、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、共重合型エポキシ樹脂及びアラルキル型エポキシ樹脂からなる群より選ばれるエポキシ樹脂(これらを「特定エポキシ樹脂」と称する)が好ましい。特定エポキシ樹脂は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ樹脂が特定エポキシ樹脂を含む場合、特定エポキシ樹脂の性能を発揮する観点からは、その含有率がエポキシ樹脂全体の30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
特定エポキシ樹脂の中でも、流動性の観点からは、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂又は硫黄原子含有型エポキシ樹脂がより好ましく、耐熱性の観点からは、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂又はアラルキル型エポキシ樹脂が好ましい。以下、好ましいエポキシ樹脂の具体例を示す。
ビフェニル型エポキシ樹脂は、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(II)で表されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(II)で表されるエポキシ樹脂の中でもRのうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基であり、それ以外のRが水素原子であるYX-4000H(三菱ケミカル株式会社、商品名)、全てのRが水素原子である4,4’-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ビフェニル、全てのRが水素原子の場合及びRのうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基でそれ以外のRが水素原子である場合の混合品であるYL-6121H(三菱ケミカル株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2022107396000001
式(II)中、Rは水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数4~18の芳香族基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
スチルベン型エポキシ樹脂は、スチルベン骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(III)で表されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(III)で表されるエポキシ樹脂の中でも、Rのうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基であり、それ以外のRが水素原子であり、R10の全てが水素原子である場合と、Rのうち3,3’,5,5’位のうちの3つがメチル基であり、1つがt-ブチル基であり、それ以外のRが水素原子であり、R10の全てが水素原子である場合との混合品等が挙げられる。
Figure 2022107396000002
式(III)中、R及びR10は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
ジフェニルメタン型エポキシ樹脂は、ジフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(IV)で表されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(IV)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R11の全てが水素原子であり、R12のうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基であり、それ以外のR12が水素原子であるYSLV-80XY(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2022107396000003
式(IV)中、R11及びR12は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
硫黄原子含有型エポキシ樹脂は、硫黄原子を含有するエポキシ樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(V)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(V)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R13のうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’位がt-ブチル基であり、6,6’位がメチル基であり、それ以外のR13が水素原子であるYSLV-120TE(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2022107396000004
式(V)中、R13は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
ノボラック型エポキシ樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂をエポキシ化して得られるエポキシ樹脂であれば、特に限定されない。例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂をグリリシジルエーテル化等の手法を用いてエポキシ化して得られるエポキシ樹脂が好ましく、下記一般式(VI)で表されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(VI)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R14の全てが水素原子であり、R15がメチル基であり、i=1であるESCN-190及びESCN-195(住友化学株式会社、商品名)、R14の全てが水素原子であり、i=0であるN-770及びN-775(DIC株式会社、商品名)、R14の全てが水素原子であり、i=0である部分とi=1であり、R15が-CH(CH)-Phである部分を有するスチレン変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂であるYDAN-1000-10C(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社、商品名)、R14の全てが水素原子であり、i=1であり、R15がメチル基である部分とi=2であり、R15のうち一つがメチル基で一つがベンジル基である部分を有するベンジル基変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が市販品として入手可能である。
Figure 2022107396000005
式(VI)中、R14は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R15は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料としてエポキシ化して得られるエポキシ樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(VII)で表されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(VII)で表されるエポキシ樹脂の中でも、i=0であるHP-7200(DIC株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2022107396000006
式(VII)中、R16は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂は、トリフェニルメタン骨格を持つ化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば特に制限されない。例えば、芳香族アルデヒド化合物とフェノール性化合物とから得られたトリフェニルメタン型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂が好ましく、下記一般式(VIII)で表されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(VIII)で表されるエポキシ樹脂の中でも、iが0であり、kが0である1032H60(三菱ケミカル株式会社、商品名)、EPPN-502H(日本化薬株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2022107396000007
式(VIII)中、R17及びR18は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数、kは各々独立に0~4の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
ナフトール化合物及びフェノール化合物と、アルデヒド化合物とから得られるノボラック樹脂をエポキシ化した共重合型エポキシ樹脂は、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されない。例えば、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を用いたノボラック型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂が好ましく、下記一般式(IX)で表されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(IX)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R21がメチル基でiが1であり、jが0であり、kが0であるNC-7300(日本化薬株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2022107396000008
式(IX)中、R19~R21は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数、jは各々独立に0~2の整数、kは各々独立に0~4の整数を示す。l及びmはそれぞれ平均値であり、0~10の数であり、(l+m)は0~10の数を示す。式(IX)で表されるエポキシ樹脂の末端は、下記式(IX-1)又は(IX-2)のいずれか一方である。式(IX-1)及び(IX-2)において、R19~R21、i、j及びkの定義は式(IX)におけるR19~R21、i、j及びkの定義と同じである。nは1(メチレン基を介して結合する場合)又は0(メチレン基を介して結合しない場合)である。
Figure 2022107396000009
上記一般式(IX)で表されるエポキシ樹脂としては、l個の構造単位及びm個の構造単位をランダムに含むランダム共重合体、交互に含む交互共重合体、規則的に含む共重合体、ブロック状に含むブロック共重合体等が挙げられる。これらのいずれか1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
共重合型エポキシ樹脂としては、下記2種の構造単位をランダム、交互又はブロックの順序で含むメトキシナフタレン・クレゾールホルムアルデヒド共縮合型エポキシ樹脂であるエピクロンHP-5000(DIC株式会社、商品名)もまた好ましい。下記一般式では、n及びmはそれぞれ平均値であり、0~10の数であり、(n+m)は0~10の数を示し、好ましくはn及びmはそれぞれ平均値であり、1~9の数であり、(n+m)は2~10の数を示す。
Figure 2022107396000010
アラルキル型エポキシ樹脂は、フェノール、クレゾール等のフェノール化合物及びナフトール、ジメチルナフトール等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル又はこれらの誘導体と、から合成されるフェノール樹脂を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されない。例えば、フェノール、クレゾール等のフェノール化合物及びナフトール、ジメチルナフトール等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル又はこれらの誘導体とから合成されるフェノール樹脂をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂が好ましく、下記一般式(X)及び(XI)で表されるエポキシ樹脂がより好ましい。
下記一般式(X)で表されるエポキシ樹脂の中でも、iが0であり、R38が水素原子であるNC-3000S(日本化薬株式会社、商品名)、iが0であり、R38が水素原子であるエポキシ樹脂と一般式(II)の全てのRが水素原子であるエポキシ樹脂を質量比80:20で混合したCER-3000(日本化薬株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。また、下記一般式(XI)で表されるエポキシ樹脂の中でも、lが0であり、jが0であり、kが0であるESN-175(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2022107396000011
式(X)及び(XI)において、R38は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R37、R39~R41は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iはそれぞれ独立に0~3の整数であり、jはそれぞれ独立に0~2の整数であり、kはそれぞれ独立に0~4の整数であり、lはそれぞれ独立に0~4の整数を示す。nは平均値であり、それぞれ独立に0~10の数である。
上記一般式(II)~(XI)中のR~R21及びR37~R41について、「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」とは、例えば、式(II)中の8~88個のRの全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。他のR~R21及びR37~R41についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。また、R~R21及びR37~R41はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、RとR10の全てについて同一でも異なっていてもよい。
また、一般式(III)~(XI)における炭素数1~18の1価の有機基はアルキル基又はアリール基であることが好ましい。
上記一般式(II)~(XI)中のnは、平均値であり、それぞれ独立に0~10の範囲であることが好ましい。nが10以下であると樹脂成分の溶融粘度が高くなりすぎず、熱硬化性樹脂組成物の溶融成形時の粘度が低下し、充填不良、ボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形等の発生が抑制される傾向にある。nは0~4の範囲に設定されることがより好ましい。
以上、熱硬化性樹脂組成物に使用可能な好ましいエポキシ樹脂の具体例を上記一般式(II)~(XI)に沿って説明したが、より具体的な好ましいエポキシ樹脂として、耐熱性の観点からは、4,4’-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニルが挙げられ、成形性及び耐熱性の観点からは、4,4’-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)-ビフェニルが挙げられる。
エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に制限されない。成形性、耐熱性及び電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、60g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
エポキシ樹脂は、液状であっても固形であってもよい。エポキシ樹脂が固形である場合、エポキシ樹脂の軟化点又は融点は特に制限されない。成形性と耐熱性の観点からは40℃~180℃であることが好ましく、熱硬化性樹脂組成物の調製の際の取扱い性の観点からは50℃~130℃であることがより好ましい。
本開示において、軟化点は、JIS K 7234:1986の環球法により測定された値をいう。
本開示において、融点は、JIS K 0064:1992の目視による方法に則って測定された値をいう。
熱硬化性樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有率は、強度、流動性、耐熱性、成形性等の観点から0.5質量%~60質量%であることが好ましく、2質量%~50質量%であることがより好ましい。
(硬化剤)
混合物は、硬化剤を含有する。
硬化剤の種類は特に制限されず、併用する熱硬化性樹脂と硬化反応を生じる化合物であれば特に制限されない。例えば、エポキシ樹脂と併用する硬化剤としては、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリメルカプタン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化剤は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)で固体であっても液体であってもよく、固体であることが好ましい。
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、硬化剤は、耐熱性の観点から、フェノール系硬化剤又はアミン系硬化剤が好ましい。
フェノール系硬化剤としては、例えば、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂及び多価フェノール化合物が挙げられる。具体的には、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の多価フェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等とから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジシクロペンタジエンとから共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂;これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。これらのフェノール系硬化剤は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノール系硬化剤の中でも、耐熱性の観点からはアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂、及びノボラック型フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種(これらを「特定フェノール系硬化剤」と称する)が好ましい。特定フェノール系硬化剤は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
フェノール系硬化剤が特定フェノール系硬化剤を含む場合、それらの性能を充分に発揮する観点から、特定フェノール系硬化剤の含有率はフェノール系硬化剤全体の30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
アラルキル型フェノール樹脂としては、フェノール性化合物と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等とから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等が挙げられる。アラルキル型フェノール樹脂は、さらに他のフェノール樹脂と共重合していてもよい。共重合したアラルキル型フェノール樹脂としては、トリフェニルメタン型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂等が挙げられる。
アラルキル型フェノール樹脂は、フェノール化合物及びナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル又はこれらの誘導体と、から合成されるフェノール樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(XII)~(XIV)で表されるフェノール樹脂が好ましい。
Figure 2022107396000012
式(XII)~(XIV)において、R23は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R22、R24、R25及びR28は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R26及びR27は水酸基又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iはそれぞれ独立に0~3の整数であり、jはそれぞれ独立に0~2の整数であり、kはそれぞれ独立に0~4の整数であり、pはそれぞれ独立に0~4の整数である。nは平均値であり、それぞれ独立に0~10の数である。
上記一般式(XII)で表されるフェノール樹脂の中でも、iが0であり、R23が全て水素原子であるMEH-7851(明和化成株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
上記一般式(XIII)で表されるフェノール樹脂の中でも、iが0であり、kが0であるXL-225、XLC(三井化学株式会社、商品名)、MEH-7800(明和化成株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
上記一般式(XIV)で表されるフェノール樹脂の中でも、jが0であり、kが0であり、pが0であるSN-170(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社、商品名)、jが0であり、kが1であり、R27が水酸基であり、pが0であるSN-395(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂は、ジシクロペンタジエン骨格を有する化合物を原料として得られるフェノール樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(XV)で表されるフェノール樹脂が好ましい。下記一般式(XV)で表されるフェノール樹脂の中でも、iが0であるフェノール樹脂が市販品として入手可能である。
Figure 2022107396000013
式(XV)中、R29は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
トリフェニルメタン型フェノール樹脂は、芳香族アルデヒド化合物を原料として得られるフェノール樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(XVI)で表されるフェノール樹脂が好ましい。
下記一般式(XVI)で表されるフェノール樹脂の中でも、iが0であり、kが0であるMEH-7500(明和化成株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2022107396000014
式(XVI)中、R30及びR31は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iはそれぞれ独立に0~3の整数であり、kはそれぞれ独立に0~4の整数である。nは平均値であり、0~10の数である。
トリフェニルメタン型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂は、ベンズアルデヒド骨格を有する化合物を原料として得られるフェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(XVII)で表されるフェノール樹脂が好ましい。
下記一般式(XVII)で表されるフェノール樹脂の中でも、iが0であり、kが0であり、qが0であるHE-510(エア・ウォーター・ケミカル株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2022107396000015
式(XVII)中、R32~R34は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iはそれぞれ独立に0~3の整数であり、kはそれぞれ独立に0~4の整数であり、qはそれぞれ独立に0~5の整数である。l及びmはそれぞれ平均値であり、それぞれ独立に0~11の数である。ただし、lとmの合計は1~11の数である。
ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール化合物及びナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるフェノール樹脂であれば特に限定されない。例えば、下記一般式(XVIII)で表されるフェノール樹脂が好ましい。
下記一般式(XVIII)で表されるフェノール樹脂の中でも、iが0であり、R35が全て水素原子であるタマノル758、759(荒川化学工業株式会社、商品名)、H-4(明和化成株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
Figure 2022107396000016
式(XVIII)中、R35は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R36は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
上記一般式(XII)~(XVIII)におけるR22~R36について記載した「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」は、例えば、式(XII)中のi個のR22の全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。他のR23~R36についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。また、R22~R36は、それぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、R22及びR23の全てについて同一でも異なっていてもよく、R30及びR31の全てについて同一でも異なっていてもよい。
上記一般式(XII)~(XVIII)におけるnは、0~10の範囲であることが好ましい。10以下であると樹脂成分の溶融粘度が高くなりすぎず、熱硬化性樹脂組成物の溶融成形時の粘度も低くなり、充填不良、ボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形等が発生し難くなる。1分子中の平均nは0~4の範囲に設定されることが好ましい。
アミン系硬化剤としては、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n-プロピルアミン、2-ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタン等の脂肪族アミン化合物、ジエチルトルエンジアミン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ジメチルチオトルエンジアミン、2-メチルアニリン等の芳香族アミン化合物、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール等のイミダゾール化合物、イミダゾリン、2-メチルイミダゾリン、2-エチルイミダゾリン等のイミダゾリン化合物などが挙げられる。これらの中でも保存安定性の観点からは、芳香族アミン化合物が好ましく、ジエチルトルエンジアミン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン及びジメチルチオトルエンジアミンがより好ましい。
硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量、アミン系硬化剤の場合は活性水素当量)は、特に制限されない。成形性、耐熱性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、10g/eq~1000g/eqであることが好ましく、30g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
フェノール硬化剤の場合における水酸基当量は、JIS K0070:1992に準拠して測定された水酸基価に基づいて算出された値をいう。また、アミン系硬化剤の場合における活性水素当量は、JIS K7237:1995に準拠して測定されたアミン価に基づいて算出された値をいう。
硬化剤が固体である場合の軟化点又は融点は、特に制限されない。成形性と耐熱性の観点からは、40℃~180℃であることが好ましく、熱硬化性樹脂組成物の製造時における取扱い性の観点からは、50℃~130℃であることがより好ましい。
熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合、エポキシ樹脂と硬化剤との当量比(樹脂中のエポキシ基のモル数/硬化剤の活性水素のモル数)は、特に制限はないが、それぞれの未反応分を少なく抑える観点から、例えば、0.7~1.6であることが好ましく、0.8~1.4であることがより好ましく、0.9~1.2であることがさらに好ましい。
(スラリー)
混合物は、無機充填材と溶剤とを含むスラリーを含有する。
スラリーは、無機充填材と溶剤と必要に応じて用いられるカップリング剤、分散剤等とを、撹拌機、プラネタリミキサー等の混合機、超音波分散機、ジェットミル等の湿式の分散機などを用いて混合することで得られる。スラリーを準備する際の混合条件は、スラリーに含まれる成分の種類、成分の比率等によって適宜設定される。
また、スラリーに含まれる無機充填材に対して、湿式のふるい分け処理を施してもよい。乾式のふるい分けに比較して湿式のふるい分け処理の方が、後述のトップカット径を容易に小さくすることができる傾向にある。
無機充填材のスラリー中における固形分比率は、沈降抑制の観点から40質量%~90質量%であることが好ましく、50質量%~85質量%であることがより好ましく、60質量%~80質量%であることがさらに好ましい。
-無機充填材-
スラリーは、無機充填材を含有する。
無機充填材の種類は、特に制限されない。具体的には、球状シリカ、結晶シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ベーマイト、ベリリア、酸化マグネシウム、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ、チタン酸塩等の無機材料が挙げられる。難燃効果を有する無機充填材を用いてもよい。難燃効果を有する無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。中でも、線膨張係数低減の観点からは球状シリカが好ましく、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。無機充填材は1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。無機充填材の状態としては粉体状、粉体を球形化したビーズ、繊維等が挙げられる。
無機充填材のトップカット径は特に制限されない。30μm以下の狭い隙間への充填性の観点からは、無機充填材のトップカット径は10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることがさらに好ましく、5μm以下であることが特に好ましい。無機充填材のトップカット径は、熱硬化性樹脂組成物の粘度の上昇抑制の観点から、1μm以上であってもよい。
本開示において、無機充填材のトップカット径とは、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置により、小径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、体積積算値が90体積%となるときの粒径値をいう。
無機充填材の平均粒子径は、特に制限されない。例えば、体積平均粒子径が10μm以下であることが好ましく、0.1μm~10μmであることがより好ましく、0.1μm~8μmであることがさらに好ましく、0.2μm~6μmであることが特に好ましい。体積平均粒子径が10μm以下であると、狭い隙間への充填性が向上する傾向にある。また、体積平均粒子径が0.1μm以上であると、熱硬化性樹脂組成物の粘度の上昇がより抑制される傾向がある。
無機充填材の体積平均粒子径は、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置により、体積平均粒子径(D50)として測定することができる。
熱硬化性樹脂組成物の流動性の観点からは、無機充填材の粒子形状は角形よりも球形が好ましく、また無機充填材の粒度分布は広範囲に分布したものが好ましい。
熱硬化性樹脂組成物中の無機充填材の含有率は特に制限されない。流動性及び強度の観点からは、熱硬化性樹脂組成物全体の30体積%~95体積%であることが好ましく、35体積%~90体積%であることがより好ましく、40体積%~80体積%であることがさらに好ましい。無機充填材の含有率が熱硬化性樹脂組成物全体の30体積%以上であると、硬化物の熱膨張係数、熱伝導率、弾性率等の特性がより向上する傾向にある。無機充填材の含有率が熱硬化性樹脂組成物全体の95体積%以下であると、熱硬化性樹脂組成物の粘度の上昇が抑制され、流動性がより向上して成形性がより良好になる傾向にある。
-溶剤-
スラリーは、溶剤を含有する。
溶剤の種類は特に限定されるものではなく、混合物を混練する際に混合物から容易に除去可能なものから適宜選択される。
混合物中に含有される溶剤は、熱硬化性樹脂及び硬化剤の一方を溶解するものであってもよいし溶解しないものであってもよい。
溶剤の常圧での沸点は、混合物から容易に除去可能になることから、50℃~180℃であることが好ましく、60℃~170℃であることがより好ましく、70℃~160℃であることがさらに好ましく、70℃~140℃であることが特に好ましく、70℃~120℃であることが極めて好ましい。
溶剤は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
2種類以上の溶剤が併用される場合、最も沸点の高い溶剤についての常圧での沸点が、上述の範囲内であることが好ましい。
また、本開示において、混合物に含まれる全溶剤に占める、沸点が50℃~180℃の溶剤(特定溶剤)の割合が95質量%以上であり、沸点が60℃~170℃の溶剤の割合が95質量%以上であることが好ましく、沸点が70℃~160℃の溶剤の割合が95質量%以上であることがより好ましく、沸点が70℃~140℃の溶剤の割合が95質量%以上であることがさらに好ましく、沸点が70℃~120℃の溶剤の割合が95質量%以上であることが特に好ましい。
溶剤の具体例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらの中でも、メチルイソブチルケトン又はメチルエチルケトンが好ましい。
-カップリング剤-
スラリーは、カップリング剤をさらに含有してもよい。カップリング剤の種類は特に制限されず、公知のカップリング剤を使用することができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。カップリング剤は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン及びメタクリロキシオクチルトリメトキシシランを挙げることができる。
チタンカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等が挙げられる。
スラリーがカップリング剤を含有する場合、カップリング剤の含有量は、熱硬化性樹脂と無機充填材との界面の密着性の観点から、無機充填材100質量部に対して、0.001質量部~10質量部であることが好ましく、0.01質量部~8質量部であることがより好ましく、0.05質量部~5質量部であることがさらに好ましい。
スラリーがカップリング剤を含有することで、乾式処理法に比較して、無機充填材のカップリング剤による均一な表面処理を行うことができる。そのため、本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法により製造される熱硬化性樹脂組成物の流動性が、さらに向上する。
(硬化促進剤)
本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法により製造される熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤の種類は特に制限されず、熱硬化性樹脂の種類、熱硬化性樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。
具体的には、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)等のジアザビシクロアルケン、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール等の環状アミジン化合物;前記環状アミジン化合物の誘導体;前記環状アミジン化合物又はその誘導体のフェノールノボラック塩;これらの化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;DBUのテトラフェニルボレート塩、DBNのテトラフェニルボレート塩、2-エチル-4-メチルイミダゾールのテトラフェニルボレート塩、N-メチルモルホリンのテトラフェニルボレート塩等の環状アミジニウム化合物;ピリジン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物;前記三級アミン化合物の誘導体;酢酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、リン酸テトラ-n-ブチルアンモニウム、酢酸テトラエチルアンモニウム、安息香酸テトラ-n-ヘキシルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム等のアンモニウム塩化合物;エチルホスフィン、フェニルホスフィン等の1級ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の2級ホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニル(p-トリル)ホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(アルキルアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルキルフェニル)ホスフィン、トリス(ジアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(トリアルコキシフェニル)ホスフィン、トリス(テトラアルコキシフェニル)ホスフィン、トリアルキルホスフィン、ジアルキルアリールホスフィン、アルキルジアリールホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の3級ホスフィンなどの、有機ホスフィン;前記有機ホスフィンと有機ボロン類との錯体等のホスフィン化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン、アントラキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタンなどの、π結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;前記有機ホスフィン又は前記ホスフィン化合物と4-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、2-ブロモフェノール、4-クロロフェノール、3-クロロフェノール、2-クロロフェノール、4-ヨウ化フェノール、3-ヨウ化フェノール、2-ヨウ化フェノール、4-ブロモ-2-メチルフェノール、4-ブロモ-3-メチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジメチルフェノール、4-ブロモ-3,5-ジメチルフェノール、4-ブロモ-2,6-ジ-t-ブチルフェノール、4-クロロ-1-ナフトール、1-ブロモ-2-ナフトール、6-ブロモ-2-ナフトール、4-ブロモ-4’-ヒドロキシビフェニル等のハロゲン化フェノール化合物を反応させた後に、脱ハロゲン化水素の工程を経て得られる、分子内分極を有する化合物;テトラフェニルホスホニウム等のテトラ置換ホスホニウム、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート等のテトラ置換ホスホニウムのテトラフェニルボレート塩、テトラ置換ホスホニウムとフェノール化合物との塩などの、テトラ置換ホスホニウム化合物;ホスホベタイン化合物;ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物などが挙げられる。
例えば熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合に特に好適な硬化促進剤としては、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンとキノン化合物との付加物等が挙げられる。
また、例えば熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合において、低温硬化が可能な硬化促進剤としては、トリブチルホスフィンと1,4-ベンゾキノンの付加物、ジメチルアミノピリジン、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
硬化促進剤は1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
熱硬化性樹脂組成物が硬化促進剤を含有する場合、その含有率は、熱硬化性樹脂と硬化剤との合計量に対して、0.1質量%~8質量%であることが好ましく、0.3質量%~6質量%であることがより好ましく、0.5質量%~5質量%であることがさらに好ましい。
熱硬化性樹脂組成物が硬化促進剤を含有する場合、熱硬化性樹脂組成物を製造するに際し、硬化促進剤は、混合物中に添加されてもよい。また、混合物に硬化促進剤を添加しない状態で混合物を溶剤を除去しながら一次混練して一次混練物を得た後、一次混練物に硬化促進剤を添加して一次混練物を二次混練してもよい。この場合、混練の際の熱硬化性樹脂と硬化剤との硬化反応を抑制するため、二次混練の際の第二の混練温度は、一次混練の際の第一の混練温度よりも低いことが好ましい。
(着色剤)
本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法により製造される熱硬化性樹脂組成物は、着色剤を含有してもよい。
着色剤としてはカーボンブラック、黒色酸化チタン、有機染料、有機顔料、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を挙げることができる。着色剤の含有量は目的等に応じて適宜選択できる。着色剤は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
熱硬化性樹脂組成物が着色剤を含有する場合、その含有率は、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~3質量%であることがより好ましい。
熱硬化性樹脂組成物が着色剤を含有する場合、着色剤は、混合物中に添加すればよい。
(イオン交換体)
本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法により製造される熱硬化性樹脂組成物は、イオン交換体を含有してもよい。
特に、半導体装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、イオン交換体を含有することが好ましい。イオン交換体は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、ハイドロタルサイト化合物、並びに、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物が挙げられる。イオン交換体は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、下記一般式(A)で表されるハイドロタルサイトが好ましい。
Mg(1-X)Al(OH)(COX/2・mHO ……(A)
(0<X≦0.5、mは正の数)
熱硬化性樹脂組成物がイオン交換体を含有する場合、その含有量は、ハロゲンイオン等のイオンを捕捉するのに充分な量であれば特に制限はない。例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~5質量部であることがより好ましい。
熱硬化性樹脂組成物がイオン交換体を含有する場合、イオン交換体は、混合物中に添加すればよい。
(離型剤)
本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法により製造される熱硬化性樹脂組成物は、成形時における金型との良好な離型性を得る観点から、離型剤を含有してもよい。離型剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
熱硬化性樹脂組成物が離型剤を含有する場合、その含有量は熱硬化性樹脂100質量部に対して0.01質量部~15質量部が好ましく、0.1質量部~10質量部がより好ましい。離型剤の量が熱硬化性樹脂100質量部に対して0.01質量部以上であると、離型性が充分に得られる傾向にある。離型剤の量が熱硬化性樹脂100質量部に対して15質量部以下であると、より良好な接着性が得られる傾向にある。
熱硬化性樹脂組成物が離型剤を含有する場合、離型剤は、混合物中に添加すればよい。
(難燃剤)
本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法により製造される熱硬化性樹脂組成物は、難燃剤を含有してもよい。難燃剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む有機又は無機の化合物、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
熱硬化性樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、その含有量は、所望の難燃効果を得るのに充分な量であれば特に制限されない。例えば、熱硬化性樹脂100質量部に対して1質量部~30質量部であることが好ましく、2質量部~20質量部であることがより好ましい。
熱硬化性樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、難燃剤は、混合物中に添加すればよい。
(応力緩和剤)
本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法により製造される熱硬化性樹脂組成物は、シリコーンオイル、シリコーンゴム粒子等の応力緩和剤を含有してもよい。熱硬化性樹脂組成物が応力緩和剤を含有することにより、パッケージの反り変形及びパッケージクラックの発生をより低減させることができる。応力緩和剤としては、一般に使用されている公知の応力緩和剤(可とう剤)が挙げられる。具体的には、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子、メタクリル酸メチル-スチレン-ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル-シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル共重合体等のコア-シェル構造を有するゴム粒子などが挙げられる。応力緩和剤は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、シリコーン系応力緩和剤が好ましい。シリコーン系応力緩和剤としては、エポキシ基を有するもの、アミノ基を有するもの、これらをポリエーテル変性したもの等が挙げられる。
熱硬化性樹脂組成物が応力緩和剤を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~5質量部であることがより好ましい。
熱硬化性樹脂組成物が応力緩和剤を含有する場合、応力緩和剤は、混合物中に添加すればよい。
(溶剤)
本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法により製造される熱硬化性樹脂組成物は、溶剤を含有してもよい。熱硬化性樹脂組成物に含有される溶剤の種類は特に限定されず、スラリーに含有される溶剤と同じであってもよいし、異なっていてもよいし、特定溶剤であってもよいし、特定溶剤でなくともよい。
熱硬化性樹脂組成物が溶剤を含有することで、成形時の流動性が向上する傾向にある。
熱硬化性樹脂組成物が溶剤を含有する場合、熱硬化性樹脂組成物全体に占める溶剤の含有率は、0.1質量%~2質量%であることが好ましく、0.1質量%~0.5質量%であることがより好ましい。熱硬化性樹脂組成物全体に占める溶剤の含有率が2質量%以下であると、熱硬化性樹脂組成物のブロッキングが生じにくく、プレス機等の成形機への熱硬化性樹脂組成物の供給が、容易になる傾向にある。熱硬化性樹脂組成物全体に占める溶剤の含有率が0.1質量%以上であると、成形時の流動性がより向上する傾向にある。
(熱硬化性樹脂組成物の物性)
熱硬化性樹脂組成物の粘度は、特に制限されない。成形方法、熱硬化性樹脂組成物の組成等に応じて所望の粘度となるよう調整することが好ましい。熱硬化性樹脂組成物を封止材用途で使用する場合には、成形時のワイヤ流れの起こりやすさに応じて熱硬化性樹脂組成物の粘度を調整することが好ましい。
例えば、熱硬化性樹脂組成物を封止材用途で使用する場合、ワイヤ流れの低減等の観点から、熱硬化性樹脂組成物の粘度は175℃で200Pa・s以下であることが好ましく、150Pa・s以下であることがより好ましく、100Pa・s以下であることがさらに好ましく、70Pa・s以下であることが特に好ましく、50Pa・s以下であることが極めて好ましい。熱硬化性樹脂組成物の粘度の下限値は特に限定されず、例えば、175℃で2Pa・s以上であってもよい。
熱硬化性樹脂組成物の粘度は、高化式フローテスター(例えば、株式会社島津製作所製)によって測定することができる。
(熱硬化性樹脂組成物の用途)
本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法により製造される熱硬化性樹脂組成物の用途は特に制限されず、例えば電子部品装置の封止材として種々の実装技術に用いることができる。また、本開示の熱硬化性樹脂組成物は、各種モジュール用樹脂成形体、モーター用樹脂成形体、車載用樹脂成形体、電子回路用保護材用封止材等、樹脂組成物が良好な流動性及び硬化性を有することが望ましい種々の用途に用いることができる。
<電子部品装置の製造方法>
本開示の電子部品装置の製造方法は、上述の本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法により得られた熱硬化性樹脂組成物により素子を封止する工程を有する。
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ、有機基板等の支持部材に、素子(半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子など)を搭載して得られた素子部を熱硬化性樹脂組成物で封止したものが挙げられる。
より具体的には、リードフレーム上に素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部とをワイヤボンディング、バンプ等で接続した後、熱硬化性樹脂組成物を用いてトランスファー成形等によって封止した構造を有するDIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC;テープキャリアにバンプで接続した素子を熱硬化性樹脂組成物で封止した構造を有するTCP(Tape Carrier Package);支持部材上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した素子を、熱硬化性樹脂組成物で封止した構造を有するCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール等;裏面に配線板接続用の端子を形成した支持部材の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と支持部材に形成された配線とを接続した後、熱硬化性樹脂組成物で素子を封止した構造を有するBGA(Ball Grid Array)、CSP、MCP(Multi Chip Package)、SiPなどが挙げられる。また、プリント配線板においても熱硬化性樹脂組成物を好適に使用することができる。
熱硬化性樹脂組成物を用いて電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファー成形法、インジェクション成形法、圧縮成形法等が挙げられる。
<熱硬化性樹脂組成物>
本開示の熱硬化性樹脂組成物は、上述の本開示の熱硬化性樹脂組成物の製造方法により得られる。
熱硬化性樹脂組成物は、25℃において固体であっても液状であってもよく、取り扱い容易性の観点から、固体であることが好ましい。
本開示において、熱硬化性樹脂組成物が「25℃で固体」であるとは、25℃において熱硬化性樹脂組成物が流動性を有しないことをいう。
熱硬化性樹脂組成物が固体である場合の形状は特に制限されず、粉体状、粒状、タブレット状、ペレット状、グラニュール状等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物がタブレット状又はペレット状である場合の寸法及び質量は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び質量となるようにすることが取り扱い性の観点から好ましい。
以下に、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
<熱硬化性樹脂組成物の作製>
まず、下記に示す各成分を準備した。
(熱硬化性樹脂)
・エポキシ樹脂1:NC-3000(商品名、日本化薬株式会社、エポキシ当量265g/eq~285g/eq、軟化点53℃~63℃のアラルキル型エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂2:jER YX-4000H(商品名、三菱ケミカル株式会社、エポキシ当量180g/eq~192g/eq、融点105℃のビフェニル型エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂3:EPPN501HY(商品名、日本化薬株式会社、エポキシ当量163g/eq~175g/eq、軟化点57℃~63℃のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂)
(硬化剤)
・硬化剤1:MEHC-7851(商品名、明和化成株式会社、水酸基当量205g/eqのアラルキル型フェノール樹脂、軟化点60℃~70℃)
・硬化剤2:MEHC-7800(商品名、明和化成株式会社、水酸基当量170g/eqのアラルキル型フェノール樹脂、軟化点60℃~70℃)
(カップリング剤)
・カップリング剤:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン
(無機充填材)
・スラリー1:体積平均粒子径1.5μm(トップカット径5μm)の球状シリカのメチルエチルケトン溶液 固形分70質量%(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン処理)
・スラリー2:体積平均粒子径0.3μm(トップカット径5μm)の球状シリカのメチルエチルケトン溶液 固形分60質量%(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン処理)
・無機充填材::体積平均粒子径1.5μm(トップカット径5μm)の球状シリカ(表面処理なし)
(硬化促進剤)
・硬化促進剤:リン系硬化促進剤
(他の添加剤)
・離型剤:ヘキストワックス(ヘキスト社)
・着色剤:カーボンブラック
・MEK:メチルエチルケトン(沸点:80℃)
・MIBK:メチルイソブチルケトン(沸点:116℃)
・NMP:N-メチル-2-ピロリドン(沸点:202℃)
実施例1~7並びに比較例1の熱硬化性樹脂組成物は以下の方法(「製造方法A」とする)で作製した。表1に示される成分を容器中で混合し、撹拌機で1時間撹拌した。その後、二軸混練機(二軸エクストルーダ)を用いて、0.02MPaの減圧下、表1に記載の混練温度条件で約7分間溶融混練した。その後、溶融物を10℃の冷水を循環したプレスロールで冷却し、シート状になったものを粉砕することにより、粉体状の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
比較例2及び3の熱硬化性樹脂組成物は以下の方法(「製造方法B」とする)で作製した。表1に示される各成分を容器中で混合し、撹拌機で1時間撹拌した。その後、真空乾燥機を用いて0.02MPaの減圧下、140℃で2時間溶剤を留去した。その後、固体状になったものを粉砕することにより、粉体状の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
比較例4の熱硬化性樹脂組成物は以下の方法(「製造方法C」とする)で作製した。表1に示される各成分を容器中で混合した。その後、二軸混練機(二軸エクストルーダ)を用いて、100℃で約7分間溶融混練した。その後、溶融物を10℃の冷水を循環したプレスロールで冷却し、シート状になったものを粉砕することにより、粉体状の熱硬化性樹脂組成物を調製した。
<熱硬化性樹脂組成物の評価>
作製された熱硬化性樹脂組成物を、以下に示す各種試験によって評価した。評価結果を表1に示す。なお、熱硬化性樹脂組成物の成形は、明記しない限りトランスファー成形機により、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で成形した。また、必要に応じて後硬化を175℃、6時間の条件で行った。
〔スパイラルフロー〕
EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、熱硬化性樹脂組成物を上記条件で成形し、流動距離(cm)を求めた。
〔溶融粘度〕
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製)を用いて、175℃における熱硬化性樹脂組成物の最低溶融粘度を測定した。
〔フィラー凝集〕
トランスファー成形機を用いた熱硬化性樹脂組成物の成形物の外観を目視により観察し、フィラー凝集の有無を評価した。フィラー凝集が観察された場合を「A」とし、フィラー凝集が観察されなかった場合を「B」とした。
〔ゲルタイム〕
熱硬化性樹脂組成物3gに対し、JSRトレーディング株式会社のキュラストメータを用いた測定を温度175℃で実施し、トルク曲線の立ち上がりまでの時間をゲルタイム(GT、秒)とした。
〔溶剤含有率〕
熱硬化性樹脂組成物5gに対して、防爆乾燥機を用いて175℃/1時間で処理し、式1から溶剤含有率を算出し、成形後のボイド発生の観点から溶剤含有率が0.5質量%以下を「A」とし、溶剤含有率が0.5質量%を超え2質量%以下を「B」とし、2質量%を超える場合を「C」とした。
溶剤含有率(質量%)=((熱処理前の質量-熱処理後の質量)/熱処理前の質量)×100
〔ブロッキング性〕
実施例及び比較例で得られた、プレスロール後のシート状熱硬化性樹脂組成物を約50mm×50mmサイズに裁断してブロッキング性評価用の試験片とした。試験片を複数枚重ね5℃で12時間静置した。静置後、シート状熱硬化性樹脂組成物の外観と、シート状熱硬化性樹脂組成物の結着状態を観察した。シートの端部のダレがなく、シート同士の結着が見られないものを「A」とし、シート端部のダレが生じているか、又は数枚程度のシート同士の結着があるものの、シート状熱硬化性樹脂組成物を容器に収容し当該容器を揺り動かすことで簡単にシート同士を剥離できるものを「B」とし、容器を揺り動かしてもシート同士の結着が剥離できないものを「C」とした。
Figure 2022107396000017
表1において、「不揮発成分」とは、各成分を容器中に加えたときの不揮発成分の質量基準の含有率をいい、混合物の固形分比率に該当する。表1において、「フィラー含有率」とは、熱硬化性樹脂組成物に含まれる無機充填材の体積基準の含有率をいい、「特定溶媒割合」とは、混合物に含まれる全溶剤に占める特定溶剤の割合をいう。
表1の評価結果から明らかなように、フィラー充填率を70体積%以上とした場合に、実施例の製造方法で得られた熱硬化性樹脂組成物の特性は、比較例の製造方法で得られた熱硬化性樹脂組成物の特性に比較して優れるものであった。このことから、実施例の製造方法によれば、比較例の製造方法に比較して熱硬化性樹脂組成物の特性を低下させることなく無機充填材の高充填化が可能になることがわかる。
なお、特定溶剤の割合が90質量%である比較例1についてのフィラー凝集評価はAランクであり、無機充填材の分散性に優れるものであった。しかしながら、比較例1で得られた熱硬化性樹脂組成物の最低溶融粘度及びGTは、特定溶剤の含有率が異なる以外は同じ組成の混合物から得られた実施例1の熱硬化性樹脂組成物についての最低溶融粘度及びGTに比較して、劣るものであった。これは、比較例1では特定溶剤ではないNMPを混合物中から除去するために混練温度が150℃に設定されているため、その結果として混練時にエポキシ樹脂と硬化剤との硬化反応が進行したことが原因であると推察される。最低溶融粘度及びGTは、熱硬化性樹脂組成物を封止材として用いる場合に重要な特性であり、最低溶融粘度及びGTに劣る熱硬化性樹脂組成物は、封止材としての使用に好適でない場合がある。

Claims (7)

  1. 熱硬化性樹脂と、硬化剤と、無機充填材と溶剤とを含むスラリーと、を混合した混合物を、前記溶剤を除去しながら混練するものであり、
    前記混合物に含まれる全溶剤に占める、沸点が50℃~180℃の溶剤の割合が、95質量%以上である熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
  2. 前記スラリーが、カップリング剤をさらに含む請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
  3. 前記無機充填材のトップカット径が、10μm以下である請求項1又は請求項2に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
  4. 前記スラリーに含まれる前記溶剤の沸点が、50℃~180℃である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
  5. 前記無機充填材の前記スラリー中における固形分比率が、40質量%~90質量%である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
  6. 前記混合物の固形分比率が、35質量%~95質量%である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
  7. 請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法により得られた熱硬化性樹脂組成物により素子を封止する工程を有する電子部品装置の製造方法。
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