JP2022106267A - 置換ポリアセチレン類の製造に使用するための新規精密重合触媒 - Google Patents

置換ポリアセチレン類の製造に使用するための新規精密重合触媒 Download PDF

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勝浩 前田
Katsuhiro Maeda
剛史 谷口
Takashi Taniguchi
達也 西村
Tatsuya Nishimura
栞 坂本
Shiori Sakamoto
幸祐 伊藤
Kosuke Ito
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Abstract

【課題】本発明の課題は、末端に置換基を有する立体規則性置換ポリアセチレンの製造に有用な新規精密重合触媒を提供することである。
【解決手段】本発明は、式(I):
Figure 2022106267000050
[式中の各記号の定義は、明細書に記載の通りである。]
で表される化合物及びその製造方法に関する。また、本発明は、前記式(I)で表される化合物を重合触媒として用いる、ポリアセチレン末端への置換基導入が可能な置換ポリアセチレン類の製造方法にも関する。
【選択図】なし

Description

本発明は、末端に置換基を有する立体規則性置換ポリアセチレン類の製造に使用するための新規精密重合触媒、及びその製造方法に関する。また、本発明は、前記精密重合触媒を使用する置換ポリアセチレン類の製造方法にも関する。
置換ポリアセチレン誘導体は、代表的な共役高分子の一つであり、剛直な主鎖に種々の側鎖を導入した構造を有することから、他の高分子材料には見られない特異的な性質を示し、実際に、気体分離膜や有機EL、液晶、有機ダイオード等の材料の開発に向けた研究が盛んに行われている。
置換ポリアセチレン誘導体は、対応するアセチレン誘導体を遷移金属触媒により連鎖重合することで得られる。遷移金属触媒の中でも、ロジウム錯体を主触媒とする重合系は、一置換アセチレン誘導体の重合に対して高活性を示し、且つシス-立体選択的に重合が進行することが報告されている(非特許文献1、2)。シス-立体規則性の置換ポリアセチレン誘導体は、側鎖置換基間の立体反発によりらせん構造を形成することも知られている(非特許文献3)。また、ロジウム錯体は、官能基許容性が高いために、様々な極性官能基を有するアセチレン誘導体の重合反応も可能である(非特許文献4)。そのため、このようなロジウム錯体の特徴を活かし、様々な光学活性基を導入した一方向巻きのらせん構造を有する置換ポリアセチレン誘導体が合成されており、光学分割カラムのキラル固定相、不斉選択合成の有機触媒をはじめ種々のキラルマテリアルとしての応用が期待されている。
置換アセチレン誘導体の重合反応においては、立体規則性だけでなく分子量の制御も高分子の物性や機能制御の上で重要であり、これまでにロジウム触媒を用いた一置換アセチレン誘導体のリビング重合を達成した例がいくつか報告されている(非特許文献2、5~9)。中でも、化学構造の明確なロジウム錯体を単離し、それをリビング重合の触媒として用いる手法は実験操作が非常に簡便であり、信頼性の高い方法である(非特許文献2、4、10)。しかし、公知のロジウム錯体には、(1)ロジウム触媒の調製に禁水性の試薬を用いる必要がある、(2)リビング重合を行うために過剰量の配位子の添加が必要であり、そのため触媒活性が不十分である、(3)高分子末端に任意の官能基を導入することができない等の問題があった(非特許文献2、4、10)。
特に、末端に所望の各種官能基を容易に導入可能な立体特異的なリビング重合系を開発できれば、構造が精密に制御されたブロック重合体、星形重合体、櫛形重合体等の特殊構造高分子の合成や、異種の材料との融合、及び様々な基板の修飾も自在に行うことができる。その応用例は、フレキシブル電子デバイスの半導体材料、表示材料の部材、物質輸送膜、超撥水コーティング材、センサー等の多岐にわたる(特許文献1、特許文献2)。
しかし、従来の一置換アセチレンの精密重合法(立体特異性リビング重合法)には、(1)高活性なロジウム触媒の調製が非常に煩雑である、(2)高分子末端に任意の官能基を導入することができない等の問題もあった(非特許文献6、特許文献1、特許文献2)。
一方、パラジウム触媒を用いることにより、一置換アセチレンの高分子の末端に極性官能基を直接導入できることが報告されている(非特許文献11)。しかし、パラジウム触媒を用いる重合系では、得られるポリマーの立体規則性は制御されておらず、リビング重合も達成されてはいない。
本発明者らは、最近、容易に入手可能なロジウム錯体(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエンロジウム(I)クロリドダイマー)、フェニルボロン酸誘導体、ジフェニルアセチレン、塩基及びトリフェニルホスフィンを組み合わせてなる、一置換アセチレン誘導体の新しい立体特異性リビング重合触媒系を開発した(非特許文献12)。この触媒系は、非常に高活性且つ高い開始剤効率を示すのみならず、ポリマー末端に任意の機能性官能基を容易に導入できるという利点を有しているが、触媒の要時調製が必要であり、とりわけ、超高分子量の置換ポリアセチレンを合成する際には、試薬の秤量や調製した触媒の添加時に高度な実験技術が要求される点が問題であった。
特開2004-91539号公報 特開2008-222796号公報
Polym. Bull. 16, 311 (1986) J. Am. Chem. Soc., 116, 12131 (1994) Chem. Rev., 109, 6102 (2009) J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem. 27, 75 (1989) Macromolecules, 29, 5054 (1996) Macromolecules, 31, 7572-7573 (1998) Macromol. Chem. Phys., 201, 2239 (2000) Macromolecules, 37, 4044 (2004) Macromolecules, 33, 6636 (2000) ACS Macro Lett. 9, 56 (2020) J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem. 48, 5549 (2010) Angew. Chem. Int. Ed. 59, 8670 (2020).
このような背景のもと、末端に置換基を有する立体規則性置換ポリアセチレンを簡便且つ効果的に製造するための、安定で取り扱い易く、且つ高い重合活性を有する精密重合触媒の開発が切望されている。
本発明の課題は、高度な実験技術を何ら必要とせず、簡便な操作により、末端に置換基を有し、且つ狭い分子量分布を有する立体規則性置換ポリアセチレンを再現性良く合成するための、安定で取り扱い易く、長期保存可能な精密重合触媒、及びその製造方法を提供することである。
本発明者らは、かかる状況下、鋭意検討を重ねた結果、下記式(I):
Figure 2022106267000001
[式中、
-X-は、下記式:
Figure 2022106267000002
又は-CH-で表される基を示し、
Arは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される置換基を有していてもよいアリール基を示し、及び
Ar及びArは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される置換基を有していてもよいアリール基を示す。]
で表される化合物(以下、「本発明の化合物」と称することもある。)が、予想外にも、空気中で安定且つ長期保存可能な固体として単離できることを初めて見出すと共に、本発明の化合物を、置換されていてもよいトリアリールホスフィン存在下、一置換アセチレン誘導体の重合反応の触媒として使用することにより高活性且つ高い開始剤効率を示すリビング重合触媒となることを初めて見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]下記式(I):
Figure 2022106267000003
[式中、
-X-は、下記式:
Figure 2022106267000004
又は-CH-で表される基を示し、
Arは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される置換基を有していてもよいアリール基を示し、及び
Ar及びArは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される置換基を有していてもよいアリール基を示す。]
で表される化合物。
[2]-X-が、-CH-である、前記[1]に記載の化合物。
[3]-X-が、下記式:
Figure 2022106267000005
で表される基である、前記[1]に記載の化合物。
[4]Arが、ハロゲン原子、シアノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有するフェニル基である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の化合物。
[5]Ar及びArが、それぞれ独立して、m位及び/又はp位に、ハロゲン原子、シアノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有していてもよいフェニル基である、前記[1]~[4]のいずれかに記載の化合物。
[6]下記式(II):
Figure 2022106267000006
[式中、
-X-は、下記式:
Figure 2022106267000007
又は-CH-で表される基を示し、及び
Yは、ハロゲン原子を示す。]
で表されるロジウム錯体、
下記式(III):
Figure 2022106267000008
[式中、
Arは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される置換基を有していてもよいアリール基を示し、及び
及びXは、共に水素原子又はアルキル基を示すか、或いは、OX及びOXは、互いに結合して、それらが結合しているホウ素原子と一緒になって、置換されていてもよい環状基を形成してもよい。]
で表される化合物、及び
下記式(IV):
Figure 2022106267000009
[式中、
Ar及びArは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される置換基を有していてもよいアリール基を示す。]
で表される化合物を塩基存在下で反応させることを特徴とする、
下記式(I):
Figure 2022106267000010
[式中、各記号は前記と同義である。]
で表される化合物の製造方法。
[7]前記式(III)中のX及びXが、共に水素原子である、前記[6]に記載の製造方法。
[8]塩基が、水酸化カリウムである、前記[6]又は[7]に記載の製造方法。
[9]前記[1]~[5]のいずれかに記載の化合物、及び置換されていてもよいトリアリールホスフィンの存在下、下記式(V):
Figure 2022106267000011
[式中、Rは、置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基を示す。]
で表される化合物を重合させる工程を含む、置換ポリアセチレンの製造方法。
[10]置換されていてもよいトリアリールホスフィンが、トリフェニルホスフィン、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフィン又はトリス(4-クロロフェニル)ホスフィンである、前記[9]に記載の製造方法。
本発明の化合物は、入手容易且つ取り扱い容易な原料を室温下で混合するだけで調製することができ、また、空気中で安定且つ長期保存可能な固体として単離することができるので、調製した触媒の秤量時や使用時に厳密な無水条件等の高度な実験技術が要求されることがなく、簡便な操作で再現性良く重合反応の触媒として、実験室スケールから工業スケールまで幅広く使用することができるという利点を有する。また、本発明の化合物を、置換されていてもよいトリアリールホスフィン存在下で、一置換アセチレン誘導体の重合反応の触媒、兼開始剤として使用することにより、非常に高活性、高いシス選択性、高い開始剤効率、且つリビング性を示すだけでなく、末端に置換基を有し、末端基の構造が揃った置換ポリアセチレンを容易に合成できることから、従来法ではポリアセチレン末端に導入するのが難しい機能性官能基を、簡便且つ高い精度で自在に導入できるという利点も有する。さらに、本発明の化合物は、従来法では、分子量分布の狭い(1.2以下)ポリマーを得ることが困難であった、脂肪族アセチレン類の重合反応においても、非常に高活性、且つ高い開始剤効率を示すリビング重合を達成することができる点で極めて有用である。
図1は、実施例1で得られた化合物(I-1)の単結晶X線結晶構造解析の結果を示す。 図2は、実施例6で得られたポリ(フェニルアセチレン)のH NMRの結果を示す。 図3は、実施例9で得られたポリ(フェニルアセチレン)のH NMRの結果を示す。 図4は、実施例6と同様の条件下でフェニルアセチレン(モノマー)が完全に消費された後(1時間後)に、更に同量のフェニルアセチレンを追加して得られたポリ(フェニルアセチレン)のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定の結果を示す。図4中の破線は、1時間後に得られたポリマーの結果を示し、実線は、更に同量のフェニルアセチレンを追加して得られたポリマーの結果を示す。
本明細書中に用いられる用語及び各記号の定義について、以下に説明する。
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
本明細書中、「アルキル(基)」とは、直鎖状または分岐鎖状の炭素原子数1以上のアルキル基を意味し、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくは、C1-20アルキル基であり、中でも、C1-6アルキル基がより好ましく、C1-4アルキル基が特に好ましい。
本明細書中、「C1-20アルキル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~20のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、エイコシル等が挙げられる。
本明細書中、「C1-6アルキル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1-エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル等が挙げられる。
本明細書中、「C1-4アルキル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~4のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等が挙げられる。
本明細書中、「シクロアルキル(基)」とは、環状アルキル基を意味し、特に炭素数範囲の限定がない場合には、好ましくは、C3-8シクロアルキル基である。
本明細書中、「C3-8シクロアルキル(基)」とは、炭素原子数3~8の環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。中でも、C3-6シクロアルキル基が好ましい。
本明細書中、「アルコキシ(基)」とは、直鎖または分岐鎖のアルキル基が酸素原子と結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-20アルコキシ基であり、より好ましくは、C1-6アルコキシ基である。
本明細書中、「C1-20アルコキシ(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~20のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、イソヘキシルオキシ、1,1-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、2-エチルブトキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、エイコシルオキシ等が挙げられる。
本明細書中、「C1-6アルコキシ(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1~6のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。中でも、C1-4アルコキシ基が好ましい。
本明細書中、「置換スルファニル基」とは、スルファニル基の水素原子が水素原子以外の基で置換された基を意味する。
本明細書中、「置換スルファニル基」を構成する置換基としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons(第3版、1999年)に記載のスルファニル基(チオール基)の保護基等を使用し得、当該置換基の好適な例としては、例えば、C7-22アラルキル基、C6-10アリール基、アシル基(例、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-22アラルキル-カルボニル基)、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニル基等が挙げられる。上記置換基は、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基又はニトロ基により更に置換されていてもよい。当該置換基の好適な具体例としては、例えば、ジフェニルメチル、トリチル、アセチル、トリフルオロアセチル、ピバロイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル等が挙げられる。
本明細書中、「C1-6アルキルスルホニル(基)」とは、スルホニル基に前記「C1-6アルキル」基が結合した基、すなわち、炭素数が1~6の直鎖または分岐鎖アルキルスルホニル基を意味する。該「C1-6アルキルスルホニル(基)」としては、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec-ブチルスルホニル、tert-ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、1-エチルプロピルスルホニル、へキシルスルホニル等が挙げられる。
本明細書中、「アルコキシ-カルボニル(基)」とは、前記アルコキシ基が酸素原子とカルボニル基に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-20アルコキシ-カルボニル基であり、より好ましくは、C1-8アルコキシ-カルボニル基である。
本明細書中、「アシル(基)」とは、アルカノイル又はアロイルを意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-7アルカノイル基又はC7-11アロイルである。
本明細書中、「C1-7アルカノイル(基)」とは、炭素原子数1~7の直鎖又は分枝鎖状のホルミル又はアルキルカルボニル(すなわち、C1-6アルキル-カルボニル)であり、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ピバロイル、イソブチリル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル等が挙げられる。
本明細書中、「C7-11アロイル(基)」とは、炭素原子数7~11のアリールカルボニル(すなわち、C6-10アリール-カルボニル)であり、ベンゾイル等が挙げられる。
本明細書中、「アシルオキシ(基)」とは、前記アルカノイル基又はアロイル基が酸素原子と結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-7アルカノイルオキシ基又はC7-11アロイルオキシ基である。
本明細書中、「C1-7アルカノイルオキシ(基)」としては、例えば、ホルミルオキシ、アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec-ブチルカルボニルオキシ、tert-ブチルカルボニルオキシ(ピバロイルオキシ)、ペンチルカルボニルオキシ、イソペンチルカルボニルオキシ、ネオペンチルカルボニルオキシ、ヘキシルカルボニルオキシ等が挙げられ、好ましくは、アセトキシ又はピバロイルオキシである。
本明細書中、「C7-11アロイルオキシ(基)」としては、例えば、ベンゾイルオキシ、1-ナフトイルオキシ、2-ナフトイルオキシ等が挙げられる。
本明細書中、「アリール(基)」とは、芳香族性を示す単環式あるいは多環式(縮合)の炭化水素基を意味し、具体的には、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、ビフェニリル、2-アンスリル、フルオレニル等のC6-14アリール基が挙げられ、中でもC6-10アリール基が好ましい。
本明細書中、「C6-10アリール(基)」とは、例えば、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチルが挙げられ、フェニル又は1-ナフチルが特に好ましい。
本明細書中、「アラルキル(基)」とは、アルキル基に1個~3個のアリール基が置換した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C7-46アラルキルであり、より好ましくは、C7-22アラルキルである。
本明細書中、「C7-46アラルキル(基)」とは、「C1-4アルキル基」に、1個~3個の「C6-14アリール基」が置換した基を意味し、例えば、ベンジル、1-フェニルエチル、2-フェニルエチル、(ナフチル-1-イル)メチル、(ナフチル-2-イル)メチル、1-(ナフチル-1-イル)エチル、1-(ナフチル-2-イル)エチル、2-(ナフチル-1-イル)エチル、2-(ナフチル-2-イル)エチル、ジフェニルメチル、フルオレニルメチル、トリチル等が挙げられる。中でも、C7-22アラルキルが好ましい。
本明細書中、「アラルキルオキシ(基)」とは、前記アラルキル基が酸素原子と結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C7-46アラルキルオキシ基であり、より好ましくは、C7-22アラルキルオキシ基である。
本明細書中、「アラルキルオキシ-カルボニル(基)」とは、前記アラルキルオキシ基がカルボニル基に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C7-46アラルキルオキシ-カルボニル基であり、より好ましくは、C7-22アラルキルオキシ-カルボニル基である。
本明細書中、「アリールスルホニル(基)」とは、アリール基がスルホニル基に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C6-10アリールスルホニル基である。
本明細書中、「C6-10アリールスルホニル(基)」とは、「C6-10アリール基」がスルホニル基に結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニル、1-ナフチルスルホニル、2-ナフチルスルホニル等が挙げられる。
本明細書中、「アルキルスルホニルオキシ(基)」とは、アルキルスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C1-6アルキルスルホニルオキシ基である。
本明細書中、「C1-6アルキルスルホニルオキシ(基)」とは、C1-6アルキルスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、例えば、メチルスルホニルオキシ、エチルスルホニルオキシ、プロピルスルホニルオキシ、イソプロピルスルホニルオキシ、ブチルスルホニルオキシ等が挙げられる。
本明細書中、「アリールスルホニルオキシ(基)」とは、アリールスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、特に炭素数範囲は限定されないが、好ましくは、C6-10アリールスルホニルオキシ基である。
本明細書中、「C6-10アリールスルホニルオキシ(基)」とは、C6-10アリールスルホニル基が酸素原子に結合した基を意味し、例えば、フェニルスルホニルオキシ、1-ナフチルスルホニルオキシ、2-ナフチルスルホニルオキシ等が挙げられる。
本明細書中、「トリ置換シリル(基)」とは、同一又は異なる3個の置換基(例、C1-6アルキル基、C6-10アリール基等)により置換されたシリル基を意味し、当該基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基等のトリアルキルシリル基(好ましくは、トリC1-6アルキルシリル基)、tert-ブチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等が好ましい。
本明細書中、「トリ置換シリルオキシ(基)」とは、トリ置換シリル基が酸素原子に結合した基を意味し、当該基としては、トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、tert-ブチルジメチルシリルオキシ基等のトリアルキルシリルオキシ基(好ましくは、トリC1-6アルキルシリルオキシ基)、tert-ブチルジフェニルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基等が好ましい。
本明細書中、「置換アミノ基」とは、アミノ基の2個の水素原子のうちの少なくとも1個が水素原子以外の基で置換された基を意味し、2個の水素原子の両方が置換基により置換されている場合には、該置換基は、同一又は異なっていてもよい。
本明細書中、「置換アミノ基」を構成する置換基としては、例えば、Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley and Sons(第3版、1999年)に記載のアミノ基の保護基等を使用し得、例えば、C1-6アルキル基、C1-6アルキルスルホニル、C7-22アラルキル基、C6-10アリール基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-22アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-22アラルキルオキシ-カルボニル基、C6-10アリールスルホニル、トリC1-6アルキルシリル基(例、トリ-C1-6アルキルシリル基(例、トリメチルシリル、tert-ブチル(ジメチル)シリル)等の保護基が挙げられる。上記の保護基は、ハロゲン原子、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基又はニトロ基により更に置換されていてもよい。当該アミノ基の好ましい保護基の具体例としては、例えば、C1-6アルキルスルホニル基、C1-7アルカノイル基、C7-11アロイル基、C7-22アラルキル基、C7-22アラルキル-カルボニル基、C1-6アルコキシ-カルボニル基、C7-22アラルキルオキシ-カルボニル基及びC6-10アリールスルホニル基等が挙げられ、中でも、アセチル、トリフルオロアセチル、ピバロイル、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ベンジル、ジフェニルメチル、トリチル、トリフルオロメタンスルホニル、p-トルエンスルホニル等が挙げられる。
「置換されていてもよい」とは、無置換、又は置換可能な位置に1個~5個(好ましくは、1個~3個)の置換基を有することを意味し、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
「置換されていてもよい」の置換基としては、例えば、(1)ハロゲン原子、(2)ヒドロキシ基、(3)シアノ基、(4)ニトロ基、(5)アジド基、(6)置換アミノ基、(7)C1-6アルキル基、(8)C1-6アルコキシ基、(9)C3-8シクロアルキル基、(10)C6-10アリール基、(11)C7-22アラルキル基、(12)C1-7アルカノイル基、(13)C7-11アロイル基、(14)C1-7アルカノイルオキシ基、(15)C7-11アロイルオキシ基、(16)C1-6アルコキシ-カルボニル基、(17)C1-6アルキル基でモノ又はジ-置換されていてもよいカルバモイル基、(18)C1-6アルキルスルホニルオキシ基、(19)C6-10アリールスルホニルオキシ基、(20)置換スルファニル基、(21)トリ置換シリル基、(22)トリ置換シリルオキシ基等が挙げられる。中でも、ハロゲン原子、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、ベンジル、ジフェニルメチル、トリチル、アセチル、ホルミル、カルバモイル、アジド、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert-ブチルジメチルシリル、tert-ブチルジメチルシリルオキシ、フェニル、トリチルスルファニル、アセチルスルファニル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ジメチルアミノ、アセチルアミノ、tert-ブトキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が好ましい。
上記置換基は、また、さらに、それぞれ1個以上の、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、フェニル基等で置換されていてもよい。
本明細書中、「トリアリールホスフィン」とは、同一又は異なる3個のアリール基がリン原子に結合した化合物を意味する。「置換されていてもよいトリアリールホスフィン」としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン、トリス(メチルフェニル)ホスフィン、トリス(フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(クロロフェニル)ホスフィン等が挙げられる。中でも、トリフェニルホスフィン、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフィン又はトリス(4-クロロフェニル)ホスフィンが好ましく、トリフェニルホスフィンがより好ましい。
本明細書中、前記式(III)の定義における「OX及びOXは、互いに結合して、それらが結合しているホウ素原子と一緒になって、置換されていてもよい環状基」の「環状基」としては、特に限定されないが、例えば、下記式:
Figure 2022106267000012
で表される基等が挙げられ、中でも、下記式:
Figure 2022106267000013
で表される基が好ましい。該環状基は、それぞれ置換可能な位置に更に1個以上の置換基(例、C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基等)を有していてもよい。
本明細書中、「繰り返し単位」とは、ポリマー化合物(本発明のポリアセチレン)を構成する部分単位構造を意味する。該繰り返し単位は、本発明のポリアセチレン中に複数個連続して存在する。本発明のポリアセチレン中に複数種の繰り返し単位が存在する場合には、それら複数種の繰り返し単位が、ポリアセチレン中にランダムで存在していてもよく、それぞれ複数個のブロックを形成して存在していてもよい。
本明細書中、「リビング性」とは、ポリマーの生長末端が重合活性を維持している性質である。
本明細書中、「開始剤効率」とは、重合反応に加えた開始剤(開始剤系)のうちどれだけが有効に使用されているかを示す指標である。開始剤効率は、以下の式により算出することができる。
開始剤効率(%) ={[モノマーの分子量×(モノマーのモル数/触媒のモル数)+末端基の分子量]/[得られたポリマーの数平均分子量]} × 100
本明細書中、「分子量分布」とは、重量平均分子量(M)を、数平均分子量(M)で除した値(M/M)を意味し、この値が1に近いほど、ポリマー化合物の分子量が揃っていることを意味する。後述する実施例に記載の分子量分布は、紫外可視検出器を備えたゲル浸透クロマトグラフィーにより概算され、ポリスチレン標準により校正されたものである。
本明細書中、「空気中で安定」とは、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、及び/又は、厳密な無水条件下で取り扱う必要はなく、例えば、空気中でも分解又は触媒活性を低下させることなく、容易に取り扱えること(具体的には、例えば、秤量、機器分析等が可能であること)を意味する。
本明細書中、「長期保存可能」とは、室温で少なくとも1週間以上、又は冷蔵条件(0℃~10℃)下で1カ月以上保存後も分解又は触媒活性が低下しない状態を意味する。
(本発明の化合物(以下、「化合物(I)」、「本発明の重合触媒」又は「本発明の重合開始剤」ともいう。))
本発明の化合物は、下記式(I):
Figure 2022106267000014
[式中、
-X-は、下記式:
Figure 2022106267000015
又は-CH-で表される基を示し、
Arは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される置換基を有していてもよいアリール基を示し、及び
Ar及びArは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される置換基を有していてもよいアリール基を示す。]
で表される化合物(化合物(I))である。
以下、化合物(I)の各基について説明する。
-X-は、下記式:
Figure 2022106267000016
又は-CH-で表される基を示す。
Xは、好ましくは、-CH-である。
Xの別の好ましい態様は、下記式:
Figure 2022106267000017
で表される基である。
Arは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される置換基を有していてもよいアリール基を示す。
Arは、好ましくは、ハロゲン原子、シアノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有するフェニル基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基(例、C1-4アルキル基)、置換されていてもよいアルコキシ基(例、C1-4アルコキシ基)、トリチルスルファニル基、アシルスルファニル基、アルコキシ-カルボニル基(例、C1-4アルコキシ-カルボニル基)、アジド基、及び置換アミノ基(例、C1-6アルキルスルホニルアミノ基、C1-7アルカノイルアミノ基、C7-11アロイルアミノ基、C7-22アラルキル-カルボニルアミノ基、C1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニルアミノ基及びC6-10アリールスルホニルアミノ基)からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有するフェニル基である。
Ar及びArは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される置換基を有していてもよいアリール基を示す。
Ar及びArは、好ましくは、それぞれ独立して、m位及び/又はp位に、ハロゲン原子、シアノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有していてもよいフェニル基であり、より好ましくは、それぞれ独立して、p位に、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよいアルキル基(例、C1-4アルキル基)、置換されていてもよいアルコキシ基(例、C1-4アルコキシ基)、アルコキシ-カルボニル基(例、C1-4アルコキシ-カルボニル基)、アジド基、及び置換アミノ基(例、C1-6アルキルスルホニルアミノ基、C1-7アルカノイルアミノ基、C7-11アロイルアミノ基、C7-22アラルキル-カルボニルアミノ基、C1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニルアミノ基及びC6-10アリールスルホニルアミノ基)からなる群より選択される置換基を有していてもよいフェニル基である。
化合物(I)としては、以下の化合物が好適である。
[化合物(IA)]
Xが、-CH-であり、
Arが、ハロゲン原子、シアノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有するフェニル基であり、及び
Ar及びArが、それぞれ独立して、m位及び/又はp位に、ハロゲン原子、シアノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有していてもよいフェニル基である、
化合物(I)。
[化合物(IB)]
Xが、-CH-であり、
Arが、ハロゲン原子、シアノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有するフェニル基であり、及び
Ar及びArが、それぞれ独立して、p位に、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよいアルキル基(例、C1-4アルキル基)、置換されていてもよいアルコキシ基(例、C1-4アルコキシ基)、アルコキシ-カルボニル基(例、C1-4アルコキシ-カルボニル基)、アジド基、及び置換アミノ基(例、C1-6アルキルスルホニルアミノ基、C1-7アルカノイルアミノ基、C7-11アロイルアミノ基、C7-22アラルキル-カルボニルアミノ基、C1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニルアミノ基及びC6-10アリールスルホニルアミノ基)からなる群より選択される置換基を有していてもよいフェニル基である、
化合物(I)。
[化合物(IC)]
Xが、-CH-であり、
Arが、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基(例、C1-4アルキル基)、置換されていてもよいアルコキシ基(例、C1-4アルコキシ基)、トリチルスルファニル基、アシルスルファニル基、アルコキシ-カルボニル基(例、C1-4アルコキシ-カルボニル基)、アジド基、及び置換アミノ基(例、C1-6アルキルスルホニルアミノ基、C1-7アルカノイルアミノ基、C7-11アロイルアミノ基、C7-22アラルキル-カルボニルアミノ基、C1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニルアミノ基及びC6-10アリールスルホニルアミノ基)からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有するフェニル基であり、及び
Ar及びArが、それぞれ独立して、p位に、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよいアルキル基(例、C1-4アルキル基)、置換されていてもよいアルコキシ基(例、C1-4アルコキシ基)、アルコキシ-カルボニル基(例、C1-4アルコキシ-カルボニル基)、アジド基、及び置換アミノ基(例、C1-6アルキルスルホニルアミノ基、C1-7アルカノイルアミノ基、C7-11アロイルアミノ基、C7-22アラルキル-カルボニルアミノ基、C1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニルアミノ基及びC6-10アリールスルホニルアミノ基)からなる群より選択される置換基を有していてもよいフェニル基である、
化合物(I)。
化合物(I)の別の好ましい態様は、以下の化合物である。
[化合物(ID)]
Xが、下記式:
Figure 2022106267000018
で表される基であり、
Arが、ハロゲン原子、シアノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有するフェニル基であり、及び
Ar及びArが、それぞれ独立して、m位及び/又はp位に、ハロゲン原子、シアノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有していてもよいフェニル基である、
化合物(I)。
[化合物(IE)]
Xが、下記式:
Figure 2022106267000019
で表される基であり、
Arが、ハロゲン原子、シアノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有するフェニル基であり、及び
Ar及びArが、それぞれ独立して、p位に、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよいアルキル基(例、C1-4アルキル基)、置換されていてもよいアルコキシ基(例、C1-4アルコキシ基)、アルコキシ-カルボニル基(例、C1-4アルコキシ-カルボニル基)、アジド基、及び置換アミノ基(例、C1-6アルキルスルホニルアミノ基、C1-7アルカノイルアミノ基、C7-11アロイルアミノ基、C7-22アラルキル-カルボニルアミノ基、C1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニルアミノ基及びC6-10アリールスルホニルアミノ基)からなる群より選択される置換基を有していてもよいフェニル基である、
化合物(I)。
[化合物(IF)]
Xが、下記式:
Figure 2022106267000020
で表される基であり、
Arが、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基(例、C1-4アルキル基)、置換されていてもよいアルコキシ基(例、C1-4アルコキシ基)、トリチルスルファニル基、アシルスルファニル基、アルコキシ-カルボニル基(例、C1-4アルコキシ-カルボニル基)、アジド基、及び置換アミノ基(例、C1-6アルキルスルホニルアミノ基、C1-7アルカノイルアミノ基、C7-11アロイルアミノ基、C7-22アラルキル-カルボニルアミノ基、C1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニルアミノ基及びC6-10アリールスルホニルアミノ基)からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有するフェニル基であり、及び
Ar及びArが、それぞれ独立して、p位に、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよいアルキル基(例、C1-4アルキル基)、置換されていてもよいアルコキシ基(例、C1-4アルコキシ基)、アルコキシ-カルボニル基(例、C1-4アルコキシ-カルボニル基)、アジド基、及び置換アミノ基(例、C1-6アルキルスルホニルアミノ基、C1-7アルカノイルアミノ基、C7-11アロイルアミノ基、C7-22アラルキル-カルボニルアミノ基、C1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニルアミノ基及びC6-10アリールスルホニルアミノ基)からなる群より選択される置換基を有していてもよいフェニル基である、
化合物(I)。
化合物(I)の好ましい具体例としては、例えば、下記実施例に記載の実施例1~6の化合物(I-1)~化合物(I-6)が挙げられる。
(本発明の化合物(化合物(I))の製造方法)
以下、化合物(I)の製造方法について説明する。
化合物(I)の製造法の例として、代表的な製造法を以下に述べるが、製造法はこれらに限定されない。
化合物(I)は、下記の製造法で示される方法、後述する実施例、又はそれらに準じた方法等により製造することができる。
原料化合物は、市販されているものを容易に入手して用いることができるか、又は自体公知の方法、或いはそれに準ずる方法に従って製造することができる。
以下に化合物(I)の製造工程の反応式の略図を示すが、略図中の化合物の各記号は、前記と同義を示す。
本明細書において、明示的に引用される全ての特許文献、非特許文献、若しくは参考文献の内容は、すべて本明細書の一部としてここに引用し得る。
化合物(I)は、以下の方法によって製造することができるが、この方法に限定されるものではない。
(製造方法)
Figure 2022106267000021
化合物(I)は、ロジウム錯体(化合物(II))、化合物(III)及び化合物(IV)を窒素雰囲気下、溶媒中で混合し、塩基を加えて撹拌し、ろ過により不溶物を除去し、溶媒を留去することにより、固体として得ることができる。
本反応に使用される溶媒としては、反応に影響を及ぼさない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、トルエン、n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系溶媒;又はそれらの混合溶媒が挙げられ、中でも、テトラヒドロフランが好ましい。
化合物(II)としては、前記式(II)中のXが、好ましくは、-CH-であり、且つYが、好ましくは、塩素原子である、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエンロジウム(I)クロリドダイマー([RhCl(nbd)])(化合物(II-1))である。
化合物(II)の別の好ましい態様としては、前記式(I)中のXが、下記式:
Figure 2022106267000022
で表される基であり、且つYが、好ましくは、塩素原子である、テトラフルオロベンゾバレレンロジウム(I)クロリドダイマー([RhCl(tfb)])(化合物(II-2))である。
化合物(II)は、市販品をそのまま使用してもよいし、自体公知の方法(例えば、D. M. Roe, A. G. Massey, J. Organomet. Chem. 1971, 28, 273-279参照)により調製したものを使用することができる。
化合物(III)の好ましい態様としては、前記式(III)中の
Arが、好ましくは、ハロゲン原子、シアノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有するフェニル基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、置換されていてもよいアルキル基(例、C1-4アルキル基)、置換されていてもよいアルコキシ基(例、C1-4アルコキシ基)、トリチルスルファニル基、アシルスルファニル基、アルコキシ-カルボニル基(例、C1-4アルコキシ-カルボニル基)、アジド基、及び置換アミノ基(例、C1-6アルキルスルホニルアミノ基、C1-7アルカノイルアミノ基、C7-11アロイルアミノ基、C7-22アラルキル-カルボニルアミノ基、C1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニルアミノ基及びC6-10アリールスルホニルアミノ基)からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有するフェニル基であり、且つ
及びXが、好ましくは、共に水素原子であるか、又はOX及びOXが、互いに結合して、それらが結合しているホウ素原子と一緒になって、下記式:
Figure 2022106267000023
で表される基を形成し、より好ましくは、X及びXが、共に水素原子である、化合物が挙げられる。
化合物(III)の好ましい具体例としては、例えば、下記式:
Figure 2022106267000024
で表される化合物等が挙げられる。
化合物(III)は、市販品を容易に入手して、そのまま使用することができるか、又は自体公知の方法(例えば、Ishiyama, T. et al., J. Org. Chem. 1995, 60, 7508;Murata, M. et al., J. Org. Chem. 1997, 62, 6458;Ishiyama, T. et al., Angew. Chem., Int. Ed. 2002, 41, 3056等参照)、若しくはそれに準ずる方法に従って製造することが可能である。
化合物(IV)としては、前記式(IV)中のAr及びArが、好ましくは、それぞれ独立して、m位及び/又はp位に、ハロゲン原子、シアノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有していてもよいフェニル基であり、より好ましくは、それぞれ独立して、p位に、ハロゲン原子、シアノ基、ハロゲン原子又はヒドロキシ基で置換されていてもよいアルキル基(例、C1-4アルキル基)、置換されていてもよいアルコキシ基(例、C1-4アルコキシ基)、アルコキシ-カルボニル基(例、C1-4アルコキシ-カルボニル基)、アジド基、及び置換アミノ基(例、C1-6アルキルスルホニルアミノ基、C1-7アルカノイルアミノ基、C7-11アロイルアミノ基、C7-22アラルキル-カルボニルアミノ基、C1-6アルコキシ-カルボニルアミノ基、C7-14アラルキルオキシ-カルボニルアミノ基及びC6-10アリールスルホニルアミノ基)からなる群より選択される置換基を有していてもよいフェニル基である、ジアリールアセチレンが挙げられる。
化合物(IV)の好ましい具体例としては、例えば、下記式:
Figure 2022106267000025
で表される化合物等が挙げられる。
化合物(IV)は、市販品を容易に入手して、そのまま使用することができるか、又は自体公知の方法(例えば、Coleman, G. H. et al., J. Am, Chem. Soc., 1936, 58, 2310;Sonogashira, K. et al., Tetrahedron Lett. 1975, 4467;Sonogashira, K. In Metal-Catalyzed Cross-Coupling Reactions, Diederich, F. and Stang, P. J., Eds., Wiley-VCH: Weinheim, 1998, Chapter 5, pp 203-229等参照)、若しくはそれに準ずる方法に従って製造することが可能である。
塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム等の無機塩基類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジエチルアニリン,N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン、ピリジン、α-ピコリン、β-ピコリン、γ-ピコリン、4-エチルモルホリン、トリエチレンジアミン、1,
5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネン、1,3-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、N-エチルピペリジン、キノリン、イソキノリン、N,N-ジメチルピペラジン、N,N-ジエチルピペラジン、キナルジン、2-エチルピリジン、4-エチルピリジン、3,5-ルチジン、2,6-ルチジン、4-メチルモルホリン、2,4,6-コリジン等の有機塩基類等が挙げられるが、好ましくは、無機塩基類であり、より好ましくは、水酸化カリウムである。
ロジウム錯体(化合物(II))、化合物(III)、化合物(IV)及び塩基の各々の配合割合は、化合物(II)1モル(ロジウム錯体のモル数は、二核錯体のモル数を2倍にし、単核錯体として換算した。)に対して、化合物(III)は、1.0~2.0モル(好ましくは、1.0~1.5モル、より好ましくは、1.0~1.3モル、特に好ましくは、1.1モル)であり、化合物(IV)は、5.0~15.0モル(好ましくは、6.0~13.0モル、より好ましくは、8.0~12.0モル、特に好ましくは、10.0モル)であり、及び塩基は、1.0~2.0モル(好ましくは、1.0~1.5モル、より好ましくは、1.0~1.3モル、特に好ましくは、1.1モル)である。
反応温度は、通常、0℃~50℃、好ましくは、室温(15℃~30℃)であり、反応時間は、通常、10分~10時間程度、好ましくは、30分~2時間程度である。
化合物(I)は、単一化合物として固体状態で得られ、必要に応じて、再結晶により精製することもできる。また、化合物(I)は、空気中で安定であり、長期保存も可能であることから、特殊な実験装置(例、グローブボックス)や高度な実験技術を必要とすることなく、容易に取り扱うこと(具体的には、例えば、秤量、機器分析等が可能であること)ができるという利点を有する。
(本発明の化合物(化合物(I))を用いる置換ポリアセチレンの製造方法)
化合物(I)を用いる置換ポリアセチレンの製造方法は、化合物(I)を触媒兼重合開始剤として使用し、化合物(I)と置換されていてもよいトリアリールホスフィンとを混合後、前記式(V)で表される置換アセチレンを添加し、重合反応させることにより、置換ポリアセチレンを得る工程を含むことを特徴とする。
本重合反応に用いる置換アセチレンは、下記式(V):
Figure 2022106267000026
[式中、Rは、置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基を示す。]
で表される置換アセチレンである。
前記式(V)中のRは、好ましくは、シアノ基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される置換基により置換されていてもよいアルキル基であり;又は、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいアルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいアルコキシ基、アルコキシ-カルボニル基、及びモノ又はジ置換されていてもよいカルバモイル基からなる群より選択される置換基により置換されていてもよいC6-10アリール基であり、より好ましくは、シアノ基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される置換基により置換されていてもよいアルキル基(例、C1-6アルキル基)であり;又は、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基(例、メチル、トリフルオロメチル)、C1-6アルコキシ基(例、メトキシ)、C1-6アルコキシ-カルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル)、及びモノ又はジ置換されていてもよいカルバモイル基(例、デシロキシアラニルカルバモイル)からなる群より選択される置換基により置換されていてもよいフェニル基である。
本重合反応における触媒兼重合開始剤としての化合物(I)の添加量は、化合物(I)に対する置換アセチレン(モノマー)のモル比([モノマー]/[Rh])で、10~10000、好ましくは50~5000、より好ましくは50~1000である。
本重合反応に使用する溶媒としては、原料を溶解でき、反応に不活性な溶媒であれば、特に制限なく用いることができる。例えば、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いることもできる。中でも、テトラヒドロフラン又はジクロロメタンが好ましい。
本重合反応に使用する置換されていてもよいトリアリールホスフィンとしては、好ましくは、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(4-クロロフェニル)ホスフィン等が挙げられ、より好ましくは、トリフェニルホスフィン、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフィン又はトリス(4-クロロフェニル)ホスフィンであり、特に好ましくは、トリフェニルホスフィンである。
置換されていてもよいトリアリールホスフィンは、市販品をそのまま使用することができる。
置換されていてもよいトリアリールホスフィンの使用量は、化合物(I)1モルに対して、通常、1~5モル、好ましくは、1~3モル、より好ましくは、3モルである。
化合物(I)と置換されていてもよいトリアリールホスフィンとを混合する際の温度は、通常、-30℃~30℃、好ましくは、-20℃~30℃、より好ましくは、0℃~20℃である。
本重合反応の温度は、置換アセチレン(モノマー)の種類により適宜好適な温度条件を選択することが好ましいが、通常、0℃~60℃、好ましくは、10℃~50℃、より好ましくは、20℃~40℃である。また、重合開始剤系調製後、置換アセチレンを添加してから重合完結までの重合反応時間は、重合を行う置換アセチレンの種類や反応液の濃度等により異なるが、多くの場合、1時間以内である。
重合反応終了後、反応液に過剰量の酸(例、酢酸、塩酸等)を加えて重合を停止させた後、当該溶液を大量の貧溶媒(例、メタノール、ジエチルエーテル等)に注ぎ込むことにより沈殿化等を行うことにより、目的とする置換ポリアセチレンを得ることができる。
目的とする置換ポリアセチレンは、下記式(VI):
Figure 2022106267000027
[式中、Rは、前記と同義を示す。]
で表される繰り返し単位、及び下記式(VII):
Figure 2022106267000028
[式中の各記号は、前記と同義を示し、は、繰り返し単位との結合位置を示す。]
で表される末端基を有する構造を有する。
本重合反応の反応液中の置換アセチレン(モノマー)の濃度は、置換アセチレンの反応溶媒に対する溶解性により適宜最適化し得るものであり、特に制限されないが、通常、0.1M~1.0Mの濃度範囲内であれば、短時間(1時間以内)で重合反応が完結する。
前記式(V)で表される置換アセチレンの重合反応は、リビング重合であり、シス特異的に進行する。また、本発明の製造方法は、開始剤効率が95%以上(最高99%以上)と極めて高い。
本重合反応により得られる置換ポリアセチレンは、数平均分子量(M)が、1000~500000であり、好ましくは、5000~100000であり、ゲル浸透クロマトグラフィー測定による分子量分布(M/M)は、1.20以下(好ましくは、1.10以下)である。
(本発明の化合物(化合物(I))を用いる2種以上の置換アセチレンの共重合反応)
本発明の置換ポリアセチレンの製造方法において、前記式(V)で表される置換アセチレン(第1のモノマー)が消費されたことを確認後、下記式(V’):
Figure 2022106267000029
[式中、R’は、置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基を示し、前記式(V)のRとは異なる基を示す。]
で表される置換アセチレン(第2のモノマー)を反応液に添加し、混合することにより、下記式(VI):
Figure 2022106267000030
[式中、Rは、前記と同義を示す。]
で表される繰り返し単位、下記式(VI’):
Figure 2022106267000031
[式中、R’は、前記と同義を示す。]
で表される繰り返し単位、及び下記式(VII):
Figure 2022106267000032
[式中の各記号は、前記と同義を示し、は、繰り返し単位との結合位置を示す。]
で表される末端基を有する置換ポリアセチレン、すなわち、前記式(V)で表される置換アセチレン(第1のモノマー)と、前記式(V’)で表される置換アセチレン(第2のモノマー)とのブロック共重合体、を製造することができる。
共重合反応に用いる前記式(V’)で表される第2の置換アセチレン(第2のモノマー)の好ましい態様(前記式(V’)中のR’の好ましい態様)は、前記式(V)中のRの好ましい態様と同様である。
共重合反応において、前記式(V)で表される置換アセチレン(第1のモノマー)が消費されたかどうかは、薄層クロマトグラフィー若しくはガスクロマトグラフィーにより容易に確認することが可能である。
上記と同様の操作を繰り返すことにより、複数種の置換アセチレンから構成される、分子量の揃ったブロック共重合体を製造することも可能である。
本発明の化合物(化合物(I))を用いる置換ポリアセチレンの製造方法の利点として、以下の点が挙げられる。
(1)本発明の化合物(化合物(I))は、入手が容易且つ取り扱い容易な原料を室温下で混合するだけで簡便に調製することができ、また、空気中で安定且つ長期保存可能な固体として単離することができる。それ故、化合物(I)の秤量時や使用時に厳密な無水条件等の高度な実験技術が要求されることなく、簡便な操作で再現性良く置換アセチレンの重合反応の触媒として、実験室スケールから工業スケールまで幅広く使用することができるという利点を有する。
(2)本発明の化合物(化合物(I))を用いる置換アセチレン(モノマー)の重合反応は、置換されていてもよいトリアリールホスフィン、及びモノマーを順次添加して混合するだけで緩和な条件下で重合反応が効率良く、且つ立体特異的(シス特異的)に進行するので、操作が極めて簡便であり、再現性良く行うことができる。
(3)本発明の化合物(化合物(I))を用いる置換アセチレン(モノマー)の重合反応は、リビング重合である。また、化合物(I)の重合開始剤としての開始剤効率は、極めて高く(最高99%以上)、分子量分布も狭く、比較的重合度の低いポリマーから重合度の高いポリマーまで幅広い範囲のポリアセチレンの製造に使用でき、スケールアップも容易である。また、複数種の置換アセチレンを順次添加することにより分子量の揃ったブロック共重合体を得ることも可能である。また、従来法では、分子量分布の狭い(1.2以下)ポリマーを得ることが困難であった、脂肪族アセチレン類に対しても、化合物(I)は、非常に高活性、且つ高い開始剤効率を示すリビング重合を達成することができるので、従来法よりも分子量分布の狭いポリマーを得ることができる。
(4)本発明の化合物(化合物(I))を用いる置換アセチレン(モノマー)の重合反応により得られるポリマーは、ポリマー末端に、化合物(I)由来の任意の官能基を導入することが可能であり、それにより、当該官能基を足掛かりとして、各種有機材料及び/又は無機材料との融合が可能である。また、化合物(I)は、単一構造を有しているので、開始剤として使用することにより、末端基が完全に制御された置換ポリアセチレンを得ることができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、実施例及び試験例により限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。また、本発明において使用する試薬や原料化合物は特に言及されない限り、商業的に入手可能である。
また、各工程において、反応後の処理は、通常行われる方法で行えばよく、単離精製は、必要に応じて、結晶化、再結晶、蒸留、分液、シリカゲルクロマトグラフィー、分取HPLC等の慣用の方法を適宜選択し、また組み合わせて行えばよい。
下記実施例で使用された試薬及び原料化合物である、フェニルアセチレン及び各種ボロン酸誘導体(東京化成工業株式会社(TCI)製)、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエンロジウム(I)クロリドダイマー(Sigma-Aldrich社製)、ジフェニルアセチレン及び水酸化カリウム(和光純薬株式会社製)、トリフェニルホスフィン(ナカライテスク株式会社製)、並びにテトラヒドロフラン(脱水)(関東化学株式会社製)は、それぞれ市販品をそのまま使用した。
%は、収率についてはmol/mol%を示し、その他については特記しない限り、重量%を示す。また、室温とは、特記しない限り、15から30℃の温度を示す。
H-NMRスペクトルは、JEOL JNM-ECA 500又はJNM-ECA600を用い、重クロロホルム、重メタノール又は重ジクロロメタンを溶媒として測定した。H-NMRについてのデータは、化学シフト(δppm)、多重度(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、quint=クインテット、m=マルチプレット、dd=ダブルダブレット、dt=ダブルトリプレット、brs=ブロードシングレット)、カップリング定数(Hz)、積分及び割当てとして報告する。
赤外分光スペクトルは、日本分光製フーリエ変換赤外分光光度計IR-4700を用いて測定した。
平均分子量は、テトラヒドロフラン又は0.1%(w/v)の塩化リチウムを含むジメチルアセトアミドを移動相としたゲル浸透クロマトグラフィー(日本分光製高速液体クロマトグラフィーポンプ PU-4180、日本分光製紫外可視検出器 MD-4010、日本分光製カラムオーブン CO-4060、Shodex製カラム KF-805Lもしくは東ソー製カラム TSKgel G4000HXL+G3000HXL+G3000HXL)によりポリスチレン換算で算出した。
単結晶X線結晶構造解析は、BRUKER SMART APEX II(線源:Cu Kα radiation, l=1.54178Å)で行った。
質量分析スペクトルは、サーモフィッシャーサイエンティフィック製Exactive Plusを用いて測定した。
[実施例1]
本発明の化合物(化合物(I-1))の合成
Figure 2022106267000033
窒素雰囲気下、10mLナスフラスコにビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエンロジウム(I)クロリドダイマー([RhCl(nbd)])(化合物(II-1))(46.1mg,0.100mmol)、4-メチルフェニルボロン酸(化合物(III-2))(29.9mg,0.220mmol)、及びジフェニルアセチレン(化合物(IV-1))(356mg,2.00mmol)を加え、テトラヒドロフラン(1.0mL)に溶解させた。この混合物に0℃下で50%水酸化カリウム水溶液(24.7μL,0.220mmol)を加え、室温で1時間撹拌後、ろ過により不溶物を取り除き溶媒を留去した。残渣をジエチルエーテルで数回洗浄した後、-20℃下でジクロロメタンとジエチルエーテルの混合液から再結晶を行うことにより、標題化合物(113.5mg,0.133mmol,66%)を赤色結晶として得た。
1H NMR (600 MHz, CD2Cl2, 20℃): δ 7.52 (d, J = 9.6 Hz, 2H), 7.49 (br, 1H), 7.41 (d, J = 9.6 Hz, 2H), 7.36 (br, 1H), 6.50-7.25 (m, 23H), 6.49 (br, 1H), 6.25-6.33 (m, 4H), 3.36-3.39 (m, 2H), 3.24 (t, J = 4.2 Hz, 1H), 2.96 (br, 1H), 2.60 (s, 3H), 2.37 (q, J = 4.2 Hz, 1H), 1.87 (t, J = 9.6 Hz, 1H), 1.35 (dt, J = 9.6, 1.2 Hz, 1H), 1.12 (d, J = 10.2 Hz, 1H);
13C NMR (125 MHz, CD2Cl2, 20℃): δ 184.8 (d, JC-Rh = 34.5 Hz), 153.1, 150.0, 148.0, 144,7, 144.5, 143.3, 142.3, 141.7, 140.5, 136.9, 136.5, 133.2, 132.6, 131.0, 130.8, 130.4 (br), 129.0, 127.7 (br), 127.4, 127.3, 127.2, 127.0, 126.9, 126.5, 126.3 (br), 126.1 (br), 125.4, 125.2, 124.9, 122.3, 116.5 (br), 82.2 (d, JC-Rh= 3.6 Hz), 79.5 (d, JC-Rh = 4.8 Hz), 66.0 (d, JC-Rh = 6.0 Hz), 59.7 (d, JC-Rh = 16.8 Hz), 56.8 (d, JC-Rh = 14.3 Hz), 47.7, 47.4, 22.0;
IR (KBr, cm-1): 3052, 3015, 1595, 1488, 1474, 1441;
HR-APCI-TOFMS (m/z): calcd for C56H46Rh+ [M + H]+ 821.2649, found 821.2660.
得られた赤色結晶の単結晶X線結晶構造解析を行った結果を図1に示す。
[実施例1’]
実施例1に使用した4-メチルフェニルボロン酸に代えて、4-メチルフェニルボロン酸ピナコールエステル(化合物(III-9))を用い、50%水酸化カリウム水溶液(24.7μL,0.220mmol)に代えて、10%水酸化カリウム水溶液(123.5μL,0.220mmol)を用いた以外は、実施例1と同条件下で反応を行い、化合物(I-1)(収率:33%)を合成した。
[実施例2~3]
実施例1に使用した4-メチルフェニルボロン酸に代えて、4-プロポキシフェニルボロン酸(化合物(III-1))又は4-エトキシカルボニルフェニルボロン酸(化合物(III-6))を用いて、反応温度を50℃に変更した以外は、実施例1と同条件下で反応を行い、下記式(I-2)及び(I-3):
Figure 2022106267000034
で表されるロジウム錯体(化合物(I-2)(収率:57%)及び化合物(I-3)(収率:36%))を合成した。
[実施例4~5]
実施例1に使用したジフェニルアセチレンに代えて、0.80mmolのジ(4-トリフルオロメチルフェニル)アセチレン(化合物(IV-4))又は1.0mmolのジ(4-ブロモフェニル)アセチレン(化合物(IV-3))を用いた以外は、実施例1と同条件下で反応を行い、下記式(I-4)及び(I-5):
Figure 2022106267000035
で表されるロジウム錯体(化合物(I-4)(収率:72%)及び化合物(I-5)(収率:38%))を合成した。
[実施例6]
実施例1に使用したビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエンロジウム(I)クロリドダイマー([RhCl(nbd)])(化合物(II-1))に代えて、テトラフルオロベンゾバレレンロジウム(I)クロリドダイマー([RhCl(tfb)])(化合物(II-2))を用いた以外は、実施例1と同条件下で反応を行い、下記式(I-6):
Figure 2022106267000036
で表されるロジウム錯体(化合物(I-6))(収率:44%)を合成した。
[実施例7]
化合物(I-1)を用いたフェニルアセチレン(化合物(V-1))の重合
Figure 2022106267000037
(式中、n1は、繰り返し数を示す。)
窒素雰囲気下、10mLナスフラスコに化合物(I-1)(18.0mg,20μmol)を入れ、テトラヒドロフラン(4.0mL)に溶解させた。0℃下でトリフェニルホスフィン(15.8mg,60μmol)を加えた後、フェニルアセチレン(化合物(V-1))(204mg,220μL,2.00mmol)を加え、30℃下で1時間撹拌した。酢酸を数滴加えて重合を停止させた後、重合溶液を大量のメタノールに注ぎ込み、得られた沈殿物を遠心分離により単離した。得られた沈殿物を真空乾燥することにより、ポリ(フェニルアセチレン)(P-1)(206mg,95%,M=7,700,M/M=1.06)を黄色固体として得た。
1H NMR (600 MHz, CDCl3, 20℃): δ 6.94 (d, J = 6.9 Hz, 3H), 6.64 (d, J = 6.9 Hz, 2H), 5.84 (s, 1H), 末端メチル基のシグナルは、δ 1.58 (s) 及び 2.05 (s) ppmに観測された(図2)。
図2によれば、高分子主鎖のオレフィン部分と末端メチル基由来のプロトンのピークの積分比は、モノマー/ロジウム錯体(触媒)の比と概ね一致した。この結果から、本発明の化合物を用いる一置換アセチレンの重合反応により、ポリアセチレン末端に本発明の化合物由来の官能基(化合物(I-1)の場合、4-メチルフェニルのメチル基)が効率良く導入できることが確認された。
[実施例8~12]
実施例7におけるモノマー/ロジウム錯体(触媒)([モノマー]/[Rh])の比を100から25、50、250、500又は1000に代えた以外は、実施例1と同条件下でそれぞれ重合反応を行って得られたポリ(フェニルアセチレン)(P-1)の数平均分子量(M)及び分子量分布(M/M)の結果を下表1に示す。
Figure 2022106267000038
表1によれば、化合物(I-1)を重合触媒兼開始剤として用いることにより、ほぼ定量的に分子量分布の狭いポリ(フェニルアセチレン)(P-1)が得られることが分かった。また、表1の結果によれば、数平均分子量(M)から見積もられた開始剤効率は非常に高く(最高99%以上)、ポリ(フェニルアセチレン)(P-1)の重合度は、モノマー/ロジウム錯体(触媒)([モノマー]/[Rh])の比に対応することが確認されたことから、本重合反応においては、[モノマー]/[Rh]の比を任意に選択することにより、ポリ(フェニルアセチレン)(P-1)の分子量を自在に制御できることが裏付けられる。
実施例11で得られた数平均分子量33,700のポリフェニルアセチレンのH-NMRスペクトルでは、5.8ppm付近に主鎖のプロトンに由来する鋭いシグナルが観測された(図3)ことから、本発明の重合触媒(化合物(I-1))を用いた重合反応により合成したポリフェニルアセチレンは、非常に高い立体規則性(cis-transoid構造)を有していることが示唆された。ポリフェニルアセチレンのシス含量は、%cis=[A/{(A+A+A)/6}]×100(Aは各ピークの面積)の式によって算出できることが報告されており(例えば、J. Polym. Sci., Part A: Polym. Chem. 15, 2497 (1977) 参照)、図3の結果から、本発明の重合触媒を用いた重合反応により得られたポリフェニルアセチレンのシス含量は、ほぼ100%であると算出された。
[実施例13]
化合物(I-1)を用いたN-プロパルギルイソ酪酸アミド(化合物(V-2))の重合
Figure 2022106267000039
窒素雰囲気下、10mLナスフラスコにN-プロパルギルイソ酪酸アミド(化合物(V-2))(139.2mg,1.0mmol)を入れ、ジクロロメタン(1.5mL)に溶解させた。窒素雰囲気下、別の5mLナスフラスコに化合物(I-1)(34.0mg,40μmol)を入れ、ジクロロメタン(1.0mL)に溶解させた。室温でトリフェニルホスフィン(31.5mg,0.12mmol)を加えた後、この触媒溶液0.5mLをモノマー溶液に加え、0℃下で1時間撹拌した。酢酸を数滴加えて重合を停止させた後、反応溶液を大量のヘキサンに注ぎ込み、得られた沈殿物を遠心分離によって単離した。この沈殿物を真空乾燥することにより、ポリ(N-プロパルギルイソ酪酸アミド)(P-2)(148.6mg,98%,M=18,600,M/M=1.02)を黄色固体として得た。
1H NMR (500 MHz, CD3OD, 20 ℃): δ 8.09 (br, 1H), 6.15 (br, 1H), 3.94 (br, 2H), 2.13 (br, 3H), 0.95 (br, 6H), 末端芳香環プロトンのシグナルは、δ 5.35-7.85 (m) に観測された。
上記結果によれば、本発明の化合物を用いることにより、従来法では、分子量分布の狭い(1.2以下)ポリマーを得ることが困難であった、脂肪族アセチレン類の重合反応においても、高収率、且つ極めて狭い分子量分布で対応するポリマーが得られることが確認された。
[実施例14]
実施例6と同様の条件下で、フェニルアセチレン(モノマー)が完全に消費された重合開始から1時間後に、さらに同量のフェニルアセチレンを追加して得られたポリ(フェニルアセチレン)のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)測定の結果を図4に示した。
図4によれば、重合開始から1時間後に得られたポリマー(図4中の破線)に対して、さらに同量のフェニルアセチレンを追加して得られたポリ(フェニルアセチレン)(図4中の実線)の数平均分子量は、約2倍になり、分子量分布は、1.1以下という狭い値を保持したままであった。以上の結果から、本重合系では、モノマーが完全に消費された後も、高分子終末端が重合活性を維持していること、すなわち、リビング重合であること、が確認された。
[実施例15]
化合物(I-6)を用いたフェニルアセチレン(化合物(V-1))の重合
Figure 2022106267000040
窒素雰囲気下、10mLナスフラスコにフェニルアセチレン(204mg,220μL,2.00mmol)を入れ、テトラヒドロフラン(3.96mL)に溶解させた。窒素雰囲気下、別の10mLナスフラスコにロジウム錯体(化合物(I-6))(9.6mg,10μmol)をテトラヒドロフラン(1.0mL)に溶解させた。0℃でトリフェニルホスフィン(7.9mg,30μmol)を加えた後、この触媒溶液40μLをモノマー溶液に0℃で加え、その後、30℃で1時間撹拌した。酢酸を数滴加えて重合を停止させた後、重合溶液を大量のメタノールに注ぎ込み、得られた沈殿物を遠心分離によって単離した。この沈殿物を真空乾燥することにより、ポリ(フェニルアセチレン)(P-1)(176.5mg,86%,M=257,000,M/M=1.37)を黄色固体として得た。
上記結果から、本重合系では、分子量の制御が難しい、[モノマー]/[Rh]の比が5000であるような超高分子量体の合成においても、比較的分子量分布の狭いポリマーが高収率で得られることが確認された。
本発明の化合物は、入手容易且つ取り扱い容易な原料を室温下で混合するだけで調製することができ、また、空気中で安定且つ長期保存可能な固体として単離することができるので、調製した触媒の秤量時や使用時に厳密な無水条件等の高度な実験技術が要求されることがなく、簡便な操作で再現性良く重合反応の触媒として、実験室スケールから工業スケールまで幅広く使用することができるという利点を有する。また、本発明の化合物を、置換されていてもよいトリアリールホスフィン存在下で、一置換アセチレン誘導体の重合反応の触媒、兼開始剤として使用することにより、非常に高活性、高いシス選択性、高い開始剤効率、及びリビング性を示すだけでなく、末端に置換基を有し、末端基の構造が揃った置換ポリアセチレンを容易に合成できることから、従来法ではポリアセチレン末端に導入するのが難しい機能性官能基を、簡便且つ高い精度で自在に導入できるという利点も有する。さらに、本発明の化合物は、従来法では、分子量分布の狭い(1.2以下)ポリマーを得ることが困難であった、脂肪族アセチレン類に対しても、非常に高活性、且つ高い開始剤効率を示すリビング重合を達成することができる点で極めて有用である。

Claims (10)

  1. 下記式(I):
    Figure 2022106267000041
    [式中、
    -X-は、下記式:
    Figure 2022106267000042
    又は-CH-で表される基を示し、
    Arは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される置換基を有していてもよいアリール基を示し、及び
    Ar及びArは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される置換基を有していてもよいアリール基を示す。]
    で表される化合物。
  2. -X-が、-CH-である、請求項1に記載の化合物。
  3. -X-が、下記式:
    Figure 2022106267000043
    で表される基である、請求項1に記載の化合物。
  4. Arが、ハロゲン原子、シアノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有するフェニル基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
  5. Ar及びArが、それぞれ独立して、m位及び/又はp位に、ハロゲン原子、シアノ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアルキルスルファニル基、置換されていてもよいアシルスルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される1乃至3個の置換基を有していてもよいフェニル基である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
  6. 下記式(II):
    Figure 2022106267000044
    [式中、
    -X-は、下記式:
    Figure 2022106267000045
    又は-CH-で表される基を示し、及び
    Yは、ハロゲン原子を示す。]
    で表されるロジウム錯体、
    下記式(III):
    Figure 2022106267000046
    [式中、
    Arは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される置換基を有していてもよいアリール基を示し、及び
    及びXは、共に水素原子又はアルキル基を示すか、或いは、OX及びOXは、互いに結合して、それらが結合しているホウ素原子と一緒になって、置換されていてもよい環状基を形成してもよい。]
    で表される化合物、及び
    下記式(IV):
    Figure 2022106267000047
    [式中、
    Ar及びArは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換スルファニル基、置換されていてもよいアシル基、置換されていてもよいアシルオキシ基、アルコキシ-カルボニル基、置換されていてもよいカルバモイル基、アジド基、及び置換アミノ基からなる群より選択される置換基を有していてもよいアリール基を示す。]
    で表される化合物を塩基存在下で反応させることを特徴とする、
    下記式(I):
    Figure 2022106267000048
    [式中、各記号は前記と同義である。]
    で表される化合物の製造方法。
  7. 前記式(III)中のX及びXが、共に水素原子である、請求項6に記載の製造方法。
  8. 塩基が、水酸化カリウムである、請求項6又は7に記載の製造方法。
  9. 請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物、及び置換されていてもよいトリアリールホスフィンの存在下、下記式(V):
    Figure 2022106267000049
    [式中、Rは、置換されていてもよいアルキル基、又は置換されていてもよいアリール基を示す。]
    で表される化合物を重合させる工程を含む、置換ポリアセチレンの製造方法。
  10. 置換されていてもよいトリアリールホスフィンが、トリフェニルホスフィン、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフィン又はトリス(4-クロロフェニル)ホスフィンである、請求項9に記載の製造方法。
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