JP2022102718A - 窒素酸化物の浄化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】排ガス中に含まれる窒素酸化物、特にNOを低い温度でも高効率で浄化できる窒素酸化物の浄化方法を提供すること。【解決手段】気体中に含まれる窒素酸化物を金属が担持されたゼオライトと接触させることにより除去する窒素酸化物の浄化方法であって、前記ゼオライトが8員環構造を有し、かつゼオライト中のAlに対する金属担持量のモル比が0.5~2.0であることを特徴とする窒素酸化物の浄化方法。【選択図】なし

Description

本発明は、窒素酸化物浄化用触媒を用いた窒素酸化物の浄化方法に関するものであり、例えば、自動車や工場、発電所等の内燃機関から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物の浄化用に適用される。
自動車用エンジン、および工場や発電所等の内燃機関は、燃費向上のために酸素過剰な条件下で運転されることが多い。酸素過剰条件下では、内燃機関の燃焼室内で、窒素酸化物(以下「NO」と記載することがある。)が発生する。窒素酸化物はそれ自体が有害であるほか、光化学オキシダントの原因物質としても知られている。従って、排ガス中に含まれる窒素酸化物、その中でも特に一酸化窒素(NO)を浄化することが必要である。
NOを浄化するための従来技術としては、アンモニアや炭化水素、水素等の還元剤と触媒の組み合わせを用いる除去方法、及び還元剤を用いずに触媒のみでNOを窒素(N)と酸素(O)に直接分解する方法などが知られている。特に、自動車用エンジンから排出される排ガス中のNOの分解には、装置の簡便さ等の観点から、後者の触媒のみを用いた直接分解法が最も好ましいとされている。
直接分解法に用いる窒素酸化物浄化用触媒としては、これまでにゼオライト系、ペロブスカイト系などが報告されている。(非特許文献1~3)
また、AEI型ゼオライトにCuを担持したゼオライト触媒についても開示されている(特許文献1)。
日本化学会誌 1991 Vol.5、574-583 Comptes Rendus Chimie、19、1254-1265(2016) Catalysis Today、281、566-574(2017)
特開2017-81809号公報
直接分解法に触媒として用いられるペロブスカイト系触媒は、耐熱性に優れているため、工場排ガスのように800℃以上の高い温度で排出される排ガスに含まれる窒素酸化物浄化用に使用する事は可能と考えられている。しかし、自動車排ガスのような300~400℃の温度領域においては、触媒活性が低いという課題を有しており、適用範囲が限られている。
一方、ゼオライト系触媒ではCu/ZSM-5が知られており、300~400℃の温度領域でも高い触媒活性を示す(非特許文献1及び2)。しかしCu/ZSM-5のNO直接分解反応への適用例は1980年代に初めて報告されているが、実用に必要とされる触媒活性には至らずまた活性の向上も難しく、更に触媒活性の経時的な性能低下が早いという課題もある事から、未だに実用化の目途はたっていない。
最近では、Fe/ゼオライトを触媒に用いてマイクロウェーブ(MW)を使用することで瞬間的に触媒を加熱して窒素酸化物を浄化する方法について報告されている(非特許文献3)が、例えば自動車においてはMWを搭載する必要があり、エネルギー供給源も必要となる事から、実用化は困難と考えられる。
また、本発明者らは、Si/Al比の低い、かつ結晶性の高いAEI型ゼオライトの合成に成功し、これにCuを担持したゼオライト触媒についても開示した(特許文献1)。当該触媒は還元剤を用いることで極めて優れた脱硝性能を有することがわかっている。
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、排ガス中に含まれる窒素酸化物、特にNOを低い温度でも高効率で浄化できる窒素酸化物の浄化方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、窒素酸化物を含む雰囲気下において、8員環構造を有するゼオライトに活性点となる金属を、ゼオライト中のAlに対してモル比で0.5~2.0担持した触媒を用いると、効率よく窒素酸化物を浄化することが可能であることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[9]を提供する。
[1]気体中に含まれる窒素酸化物を金属が担持されたゼオライトと接触させることにより除去する窒素酸化物の浄化方法であって、前記ゼオライトが8員環構造を有し、かつゼオライト中のAlに対する金属担持量のモル比が0.5~2.0であることを特徴とする窒素酸化物の浄化方法。
[2]前記ゼオライトがアルミノシリケートゼオライトである上記[1]に記載の窒素酸化物の浄化方法。
[3]前記ゼオライトのSiO/Al(モル比)が3~100である上記[2]に記載の窒素酸化物の浄化方法。
[4]前記ゼオライトがAEI型、CHA型、AFX型、RHO型のいずれかである上記[2]又は[3]に記載の窒素酸化物の浄化方法。
[5]前記ゼオライトに担持する金属がCu及びFeからなる群から選ばれる少なくとも1種である上記[1]~[4]のいずれかに記載の窒素酸化物の浄化方法。
[6]前記ゼオライトに担持する金属の担持量が、触媒100質量部に対し1~15質量部である上記[1]~[5]のいずれかに記載の窒素酸化物の浄化方法。
[7]前記気体中に含まれる窒素酸化物に対するモル比が0.1以下の還元剤を使用する上記[1]~[6]のいずれかに記載の窒素酸化物の浄化方法。
[8]前記還元剤の合計のモル量に対する窒素を含む還元剤の合計のモル量の比が0.1以下である上記[7]に記載の窒素酸化物の浄化方法。
[9]前記気体中の窒素酸化物量が10~10000体積ppmである上記[1]~[8]のいずれかに記載の窒素酸化物の浄化方法。
本発明によれば、8員環構造を有するゼオライト(以下、「8員環ゼオライト」と記載する場合がある。)に、ゼオライト中のAlに対して金属(以下「M」と記載する場合がある。)の含有量(M/Al、モル比)が0.5~2.0になるように担持した触媒は、従来のCu/ZSM-5に比べてNOを含む排ガス中において、高い転化率でNOを除去する事が出来る。しかも、8員環ゼオライトは細孔入口サイズ(以下、「細孔径」と記載する場合がある。)が小さいことから、排ガス中に含まれる分子サイズの大きい炭化水素が細孔内に侵入しにくくなり、触媒活性点においてNOが炭化水素と競争吸着することがなく、活性低下に対しての影響も小さくなると考えられる。
図1は、実施例1の触媒1(CAT-A)及び比較例1の触媒2(CAT-B)の触媒活性の評価結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に何ら限定されない。
[窒素酸化物の浄化方法]
本発明に係る窒素酸化物の浄化方法は、気体中に含まれる窒素酸化物を金属が担持されたゼオライトと接触させることにより除去するものであり、該ゼオライトが8員環構造を有し、ゼオライトに含まれるAlに対する金属担持量のモル比が0.5~2.0であることを特徴とする。
ここで、気体とは、主に工場排ガス、自動車排ガス等の排ガス等が好ましい。
<窒素酸化物>
本発明が対象とする触媒により浄化される窒素酸化物としては、一酸化窒素、二酸化窒素、亜酸化窒素等が挙げられる。本明細書において窒素酸化物を浄化するとは、窒素酸化物を触媒上で反応させ、窒素と酸素等に分解することをいう。
この場合、還元剤を使用せずに窒素酸化物を直接触媒に接触させて反応することが好ましいが、実排ガス中に含まれる還元剤として機能する成分が共存することもある。還元剤としては、アンモニア、尿素、有機アミン類、一酸化炭素、炭化水素、水素等が用いられ、好ましくはアンモニア、尿素、炭化水素、水素が用いられる。
<排気浄化システム>
本発明の窒素酸化物の浄化方法は、上述のように、排ガス中に含まれる窒素酸化物を浄化するものであるが、該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていてもよい。したがって、窒素酸化物の浄化とともに、炭化水素、一酸化炭素、硫黄酸化物などの有害ガスも同時に浄化し得る排気浄化システムであることが好ましい。
また、窒素酸化物の浄化に際し、触媒使用時には、アンモニア、尿素、ヒドラジン、炭酸アンモニウム、カルバミン酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム及びギ酸アンモニウム等の窒素含有化合物(但し、窒素酸化物を除く)、炭化水素等の公知の還元剤を使用してもよいが、還元剤を構成する分子の中に窒素を含まない還元剤が好ましい。具体的には、本発明の排ガス処理用触媒により、ディーゼル自動車、ガソリン自動車、定置発電・船舶・農業機械・建設機械・二輪車・航空機用の各種ディーゼルエンジン、ボイラー、ガスタービン等から排出される多種多様の排ガスに含まれる窒素酸化物を浄化することができる。
触媒が接触するガス中に含まれる窒素酸化物に対する還元剤のモル比は、0.1以下が好ましく、0.08以下がより好ましく、0.07以下が更に好ましく、0.05以下が特に好ましく、0.03以下がとりわけ好ましく、0.01以下が最も好ましく、下限値は特に設定されない。すなわち、還元剤が存在しない状態でも本発明に係る触媒は有効に機能し、窒素酸化物を浄化することができる。
また、触媒が接触するガス中に含まれる還元剤の合計のモル量に対する窒素を含む還元剤の合計のモル量の比は、通常0.1以下であり、0.08以下が好ましく、0.06以下がより好ましく、0.05以下が更に好ましく、0.03以下がよりさらに好ましく、0.01以下が特に好ましい。
以上のように、本発明では、排ガス中に共存する還元剤として機能する成分以外に、さらに窒素を含む還元剤をガス中に存在させる必要がない。
本発明の方法では、窒素酸化物浄化用触媒を、排ガス中に設置することによって排ガスの浄化を行うとよい。また、本発明の方法は、例えば、公知の炭化水素吸着剤や、酸化触媒および三元触媒等の公知の窒素酸化物除去用触媒と併用してもよい。このように吸着剤や触媒を組み合わせた排気浄化システムにより、排ガス中の窒素酸化物以外にも、炭化水素、一酸化炭素、ススを有効に除去することが可能である。
本発明の方法に上記の公知の吸着剤や触媒を用いる場合、その設置場所は、特に制限されず、公知の吸着剤や触媒を窒素酸化物浄化用触媒の上流側に設置する、あるいは公知の吸着剤や触媒を窒素酸化物浄化用触媒の下流側に設置してもよい。また、公知の吸着剤は窒素酸化物浄化用触媒の上流側に設置し、触媒を窒素酸化物浄化用触媒の下流側に設置するのもよい。公知の吸着剤や触媒は、材料の特性に合わせて配置を決めればよい。
公知の吸着剤としては、例えばApplied Catalysis A, General 570(2019) 1-14に記載されているような、排ガスの温度が200℃以下の低温領域において窒素酸化物を吸着する吸着剤を用いてもよい。
本発明の方法を適用する処理対象の気体に含まれる窒素酸化物の量には特に制限はないが、窒素酸化物の量が好ましくは10~10000体積ppm、より好ましくは20~5000体積ppm、更に好ましくは25~4000体積ppm、特に好ましくは50~2000体積ppm、最も好ましくは100~1000体積ppmである排ガスの処理に好適に用いられる。
本発明の方法に三元触媒を組合せて使用する場合に、三元触媒としては特に制限されず、通常、炭化水素(以下「HC」と記載することがある)、NOx、COを同時に処理することができる触媒として用いられるものであればいずれでもよい。好ましくは、三元触媒は、触媒活性成分を、耐火性無機酸化物(好ましくは、多孔質の耐火性無機酸化物)に担持されてなる。ここで、耐火性無機酸化物としては、特に制限されず、公知の耐火性無機酸化物が使用できる。具体的には、活性アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリアなどの高表面積を有するもの、またはこれらの複合酸化物などを挙げることができる。これらのうち、活性アルミナ、ジルコニア、セリアが好ましく、特に活性アルミナが好ましい。また、上記耐火性無機酸化物は、単独で使用しても、あるいは2以上を混合して用いてもよい。
また、三元触媒に使用される触媒活性成分として、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(pd)およびそれらの混合物が挙げられ、好ましくはPt-Rh系、Pd-Rh系、Pt-Pd-Rh系、より好ましくはPd-Rh系が用いられる。特に、Pt-Rh、Pd-Rh、Pt-Pd-Rh系の貴金属を多孔質無機酸化物に担持したものが好ましく用いられる。
三元触媒は、他の添加成分を含むことができ、該添加成分としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)等の希土類金属;ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)およびニッケル(Ni)などの金属;上記金属の酸化物;上記金属の複合酸化物などが挙げられる。これらのうち、Zr、Ce、La、Y、Nd、Prの酸化物、あるいはそれらの複合酸化物が好ましく、Zr、Ce、Laの酸化物、あるいはそれらの複合酸化物がより好ましい。
ここで、三元触媒は、モノリス担体に被覆して用いられ得る。この際、モノリス担体は、特に制限されない。
本発明において、モノリス担体としては、特に制限されず、公知のものが使用される。具体的には、モノリス担体は、ガスがそのまま通過しうるフロースルー型、排ガス中のススをこすことができるフィルター型を用いることができる。
ここで、モノリス担体がフロースルー型である場合の、モノリス担体もまた、特に制限されず、公知のものが使用される。具体的には、ハニカム、メタルハニカム、プラグハニカム、メタルメッシュ、コルゲート形状など、軸方向に貫通する多数の貫通孔を有する筒状のモノリス担体およびフォーム型モノリス担体などが挙げられ、ハニカム型モノリス担体、コルゲート型モノリス担体が好ましく使用され、ハニカム型モノリス担体が特に好ましく使用される。
また、モノリス担体がハニカム型やコルゲート型である場合では、モノリス担体は、複数の孔を有するが、その際の構造や製造方法は、特に制限されず、公知の構造と同様のものが使用できる。例えば、モノリス担体は、押出成形法やシート状素子を巻き固める方法等で製造され得る。また、モノリス担体のガス通過口の形状(セル形状)は、6角形、4角形、3角形またはコルゲーション形など、いずれであってもよい。セル密度(セル数/単位断面積)は、100~600セル/平方インチであれば十分に使用可能である。
モノリス担体の材質は、特に制限されず、通常使用されるのと同様の材質が使用されうる。例えば、コージェライト、ムライト、ベタライト、アルミナ(α-アルミナ)、シリカ、ジルコニア、チタニア、リン酸チタン、アルミニウムチタネート、スポンジュメン、アルミノシリケート、マグネシウムシリケート、ゼオライト、シリカ等を材料とするハニカム担体が好ましく、なかでもコージェライト質のものが特に好ましい。そのほか、ステンレス鋼、Fe-Cr-Al合金等の酸化抵抗性の耐熱性金属を用いて一体構造としたものも使用される。
また、モノリス担体がフィルター型である場合には、モノリス担体は、壁に細孔を有し、ススをこすことができ、ガスは壁を通過することができる。また、フィルター型には、担体の排ガス入口側に市松状に穴を封じかつ、封じてない穴は排ガス出口側の穴が封じてあり、排ガス入口側の封じてある穴の排ガス出口側の穴は封じていないものがある。
モノリス担体への三元触媒の被覆(担持)量は、特に制限されず、公知の三元触媒での被覆(担持)量と同様の量とすることができる。
本発明の方法に酸化触媒を組合せて使用する場合は、通常HC、COを酸化できる酸化触媒として用いられるものであればいずれでもよく、公知の酸化触媒が使用できる。好ましくは、酸化触媒は、貴金属等の触媒活性成分が、耐火性無機酸化物(好ましくは、多孔質の耐火性無機酸化物)に担持されてなる。活性成分としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウムなどの貴金属が好ましく、耐火性無機酸化物としては、特にアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニアまたはこれらの複合酸化物を好適に用いることができる。より好ましくは、白金および/またはパラジウムである貴金属(触媒活性成分)と、アルミナ、チタニア、シリカ、ジルコニアまたはこれらの複合酸化物の耐火性無機酸化物とを含む。さらに、酸化ランタン(La)等の希土類酸化物や鉄、コバルト、ニッケル等の金属を1種または2種以上添加する場合がある。
ここで、酸化触媒は、モノリス担体に被覆して用いられ得る。この際、モノリス担体は、特に制限されない。また、モノリス担体への酸化触媒の被覆(担持)量は、特に制限されず、公知の酸化触媒での被覆(担持)量と同様の量とすることができる。
本発明の方法は、触媒に、窒素酸化物(特に一酸化窒素)を含む排ガスを接触させて、排ガス中の窒素酸化物を除去する。この処理を行う際の条件については特に制限はなく、最適な条件を適宜選択して処理を行うことができる。例えば、排ガスの空間速度(1時間において触媒体積当り通過する排ガス量)は、非特許文献1に記載の触媒活性評価ではおよそ10,000hr-1の条件で行われているが、実際に自動車等の排ガスを処理する際に比べて低い条件であり、本発明に用いる触媒に使用されている8員環ゼオライトのように、細孔サイズが小さいゼオライトではガスが細孔内に侵入しにくいことから、触媒とガスの境膜を薄くしてよりガスが触媒に接触しやすい条件の方が効率的に反応させる事が出来る。
従って、通常、空間速度は10,000hr-1以上であり、好ましくは15,000hr-1以上であり、より好ましくは20,000hr-1以上であり、更に好ましくは30,000hr-1以上であり、特に好ましくは40,000hr-1以上であり、とりわけ好ましくは50,000hr-1以上であり、最も好ましくは60,000hr-1以上である。一方、滞留時間を長くして反応を促進させるためには、通常、200,000hr-1以下であり、好ましくは150,000hr-1以下であり、より好ましくは120,000hr-1以下であり、更に好ましくは100,000hr-1以下であり、特に好ましくは90,000hr-1以下であり、最も好ましくは80,000hr-1以下である。
また、窒素酸化物(特に一酸化窒素)を含む排ガスを本発明の触媒と接触させる温度は、反応速度を高くするには、通常、180℃以上であり、好ましくは200℃以上であり、より好ましく250℃以上であり、更に好ましくは280℃以上であり、特に好ましくは300℃以上である。一方、触媒が劣化し難い点では、通常、600℃以下であり、好ましくは500℃以下であり、より好ましくは450℃以下であり、更に好ましくは400℃以下であり、特に好ましくは350℃以下である。
[触媒]
本発明の対象とする触媒とは、上述の、窒素酸化物を浄化することができる触媒をいい、具体的には、金属が担持されたゼオライトを含む窒素酸化物浄化用触媒をいう。(以下、単に触媒ということがある。)
[ゼオライト]
本発明に用いられるゼオライトとは、International Zeolite Association(以下「IZA」と記載する)の規定によるゼオライト類をいい、具体的には、骨格構造を構成する原子として、少なくとも酸素、アルミニウム(Al)、リン(P)を含むもの(以下、「アルミノフォスフェート」ということがある。)あるいはアルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、リン(P)を含むもの(シリコアルミノフォスフェート)、及び少なくとも酸素、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)を含むもの(以下、「アルミノシリケート」ということがある。)等が挙げられる。
アルミノシリケートとは骨格構造を構成する原子として、少なくとも酸素、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)を含むものであり、これらの原子の一部がP以外の他の原子(Me)で置換されていてもよい。
他の原子Meは、1種でも2種以上含まれていてもよい。好ましいMeは、周期表の第3周期又は第4周期に属する元素である。
本発明に係る触媒のゼオライトとしては、水蒸気存在下における構造安定性が高いことからアルミノシリケートが好ましい。
一方、Pを骨格に有するアルミノフォスフェートは親水性が高く、水蒸気存在下における構造安定性がアルミノシリケートに対し低い。
ゼオライトは通常結晶性であり、メタン型のSiO四面体あるいはAlO四面体(以下、これらを一般化してTOとし、含有する酸素以外の原子をT原子という。)が、各頂点の酸素原子を共有し連結した規則的な網目構造を有する。T原子としてはAl、Si以外の原子も知られている。網目構造の基本単位のひとつに、8個のTO四面体が環状に連結したものがあり、これは8員環と呼ばれている。同様に、6員環、10員環などもゼオライト構造の基本単位となる。
なお、本発明に用いられるゼオライトの構造は、X線回折法(X-ray diffraction、以下「XRD」と記載する。)により決定される。
本発明に用いられるゼオライトとしては、骨格構造中に8員環構造を有し、ゼオライト結晶構造中の最大の細孔が酸素の8員環により形成されるゼオライトが好ましい。
具体的な8員環構造を有するゼオライトとしては、IZAが定めるコードで、ABW、AEI、AEN、AFN、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、ANA、APC、APD、ATN、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BIK、BPH、BRE、CAS、CDO、CGF、CGS、CHA、CLO、DAC、DDR、DFO、DFT、EAB、EDI、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、FER、GIS、GME、GOO、HEU、IHW、ITE、ITW、IWW、JBW、KFI、LAW、LEV、LOV、LTA、MAZ、MER、MFS、MON、MOR、MOZ、MTF、NAT、NSI、OBW、OFF、OSO、OWE、PAU、PHI、RHO、RRO、RSN、RTE、RTH、RWR、SAS、SAT、SAV、SBE、SFO、SIV、SOS、STI、SZR、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、VSV、WEI、WEN、YUG、ZON、MWFが挙げられるが、中でも、触媒活性の点から、AEI、CHA、AFX、RHOから選ばれるいずれかであるのが好ましく、特にAEI、CHAが好ましく、AEIが最も好ましい。
AEI型ゼオライトとは、IZAが定めるゼオライトの骨格構造を規定するコードでAEI構造のものである。その構造は、X線回折のデータにより特徴付けられる。ただし、実際に作製されたゼオライトを測定する場合には、ゼオライトの成長方向や、構成する元素の比、吸着した物質、欠陥の存在、乾燥状態などの影響を受け、各ピークの強度比やピーク位置に若干のずれを生じるためIZAの規定に記載されたAEI構造の各パラメータと全く同じ数値が得られるわけではなく、10%程度の幅は許容される。
X線回折における主だったピークとしては、例えば、線源にCuKα線を用いた場合、2θ=9.5°±0.2°に110面のピーク、2θ=16.1°±0.2°に202のピーク(非常に近いので重なることが多い)、16.9°±0.2°に022面のピーク、20.8°±0.2°に310面のピークなどが挙げられる。
本発明に用いるゼオライトとして、より好ましいものは、アルミノシリケート類であり、かつゼオライト結晶構造中の最大細孔が8員環構造を有するゼオライトである。
本発明におけるゼオライト類は、基本単位として有する骨格構造を構成する成分とは別に、他のカチオンとイオン交換可能なカチオンを持つものを含んでいてもよい。その場合のカチオンは特に限定されないが、プロトン、Li、Na、K、Csなどのアルカリ元素、Mg、Caなどのアルカリ土類元素、La、Ce等の希土類元素などが挙げられ、中でも、プロトン、アルカリ元素、アルカリ土類元素が好ましい。
本発明におけるゼオライト類のフレームワーク密度は(以下、「FD」と略すことがある。)、特に限定されるものではないが、通常13.0T/nm以上、好ましくは、13.5T/nm以上、より好ましくは14.0T/nm以上である。また、一方で、通常17.5T/nm以下、好ましくは17.0T/nm以下、より好ましくは16.5T/nm以下、更に好ましくは16.0T/nm以下であり、特に好ましくは15.5T/nm以下であり、最も好ましくは15.0T/nm以下である。なお、フレームワーク密度(T/nm)は、ゼオライトの単位体積nmあたり存在するT原子(ゼオライトの骨格を構成する酸素以外の元素の原子)の数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。FDが高いと、構造が安定であり、十分な耐久性が得られる傾向があり、一方、FDが低いと十分な吸着量及び触媒活性が得られ、触媒としての使用に適する。上記フレームワーク密度は、Ch.BaerlocherらによるATLAS OF ZEOLITE FRAME WORK TYPES(Sixth Revis ed Edition、2007、ELSEVIER)に記載の値である。
本発明に用いるゼオライトの結晶構造中の最大細孔径は、特に限定されるものではないが、排ガス中に含まれる炭化水素等の細孔内への侵入により、窒素酸化物の拡散を妨げられ難い点では細孔径は小さいことが好ましい。そのため、通常、5.0Å以下、好ましくは4.5Å以下、より好ましくは4.3Å以下、更に好ましくは4.2Å以下、特に好ましくは4.1Å以下であり、とりわけ好ましくは4.0Å以下であり、最も好ましくは3.8Å以下である。
一方、ガスの拡散性の観点では、細孔径が大きいことが好ましい。そのため、通常、3.0Å以上、好ましくは3.2Å以上、より好ましくは3.4Å以上、特に好ましくは3.5Å以上、最も好ましくは3.6Å以上である。上記細孔径は、Ch.BaerlocherらによるATLAS OF ZEOLITE FRAME WORK TYPES(Sixth Revis ed Edition、2007、ELSEVIER)に記載の値である。
本発明に用いられるゼオライトは、後述するゼオライトの製造方法で、原料の仕込み組成比を変えること等により得ることができる。また、AEI型ゼオライトを用いる場合についても、後述するAEI型ゼオライトの製造方法で、原料の仕込み組成比を変えること等により、広い範囲のSiO/Alモル比のAEI型ゼオライトを製造することができる。よって、本発明に用いられるゼオライトのSiO/Alモル比は特に限定されるものではない。但し、触媒としての活性点が多い方が好ましいことからSiO/Alモル比は、通常、100以下であり、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、特に好ましくは25以下、とりわけ好ましくは22以下、最も好ましくは20以下である。一方、骨格内のAl量が多いゼオライトは水蒸気を含むガスにさらされた場合、骨格内Alが脱離して構造破壊が起きる可能性が高まるため、SiO/Alモル比は通常3以上であり、好ましくは5以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上、とりわけ好ましくは12以上、最も好ましくは15以上である。すなわち、本発明に用いられるゼオライトのSiO/Alモル比は、3~100であることが好ましい。
窒素酸化物浄化用触媒は、窒素酸化物を含む排ガスを浄化し、且つ650℃以上の水熱耐久性を有することが好ましい。結晶性に差が無ければ、SiO/Alモル比が低いゼオライトは、SiO/Alモル比の高い触媒よりも活性点が多いため、窒素酸化物を含む排ガスに対して高い浄化性能を示す。例えば、トラックでは、通常700℃以下と比較的低温で、水蒸気を含むガス雰囲気下に触媒として用いるため、水蒸気による骨格内Alの脱Alは進行しにくい。従って窒素酸化物を含む排ガスの浄化性能が優先され、ゼオライト骨格中の活性点が多い、SiO/Alモル比が通常は100以下、好ましくは50以下、更に好ましくは25以下、最も好ましくは22以下のゼオライトの使用が望まれる。一方で、SiO/Alモル比の高いゼオライトは、ゼオライト骨格中のAl量が少ないことから水蒸気を含む高温のガス雰囲気下でも構造が崩壊しにくい利点がある。ディーゼル乗用車やガソリン車では、通常800℃以上で水蒸気を含むガス雰囲気下に触媒として用いるため、高い水蒸気耐性を求められる。従ってSiO/Alモル比が5を超え、より好ましくは、10以上、更に好ましくは12以上、特に好ましくは15以上のゼオライトを使用することが望まれる。
本発明に用いられるゼオライトは、通常、酸量が0.3mmol/g以上であり、好ましくは0.6mmol/g以上、より好ましくは0.8mmol/g以上、更に好ましくは1.0mmol/g以上、特に好ましくは1.2mmol/g以上であり、3.0mmol/g以下が好ましく、2.5mmol/g以下がより好ましく、2.0mmol/g以下が更に好ましい。
本発明に用いられるゼオライトの平均一次粒子径は、特に限定されないが、触媒として用いた時のガス拡散性を高くするために、0.01~10μmが好ましく、より好ましくは0.02~8μm、更に好ましくは0.05~5μmである。特に本発明に用いられるゼオライトの平均一次粒子径は、0.01μm以上、3μm以下であることが好ましく、また、取扱いが容易である点から0.1~3μmの範囲であることが好ましい。
なお、ゼオライトの平均一次粒子径は、具体的には後述の実施例の項に記載される方法で測定することができる。
本発明に用いられるゼオライトの比表面積は、特に限定されないが、細孔内表面に存在する活性点が多くなることから、300~1000m/gが好ましく、より好ましくは350~800m/g、更に好ましくは450~750m/gである。
なお、ゼオライトの比表面積は、BET法により測定することができる。
<ゼオライトの製造方法>
本発明に用いられるゼオライトは、公知の化合物を用いることができる。また、本発明に用いられるゼオライトは、通常用いられる方法に準じて製造することができる。本発明におけるゼオライトの製造方法は、特に限定されないが、例えば、AEI型ゼオライトを用いる場合は、米国特許第5958370号公報、国際公開第2015/005369号公報、特開2017-81809号公開公報に記載されている方法に準じて製造することができる。以下、本発明に用いられるゼオライトとして特に好ましいAEI型ゼオライトを代表例として、AEI型ゼオライトとその製造方法について詳述する。
<AEI型ゼオライトの製造方法>
<アルミニウム原子原料>
本発明に用いられるAEI型ゼオライトを製造する際に使用するアルミニウム原子原料は特に限定されない。従って、結晶性アルミノシリケートゼオライトや非晶質のアルミノシリケートを用いても構わないが、好ましくは、製造過程において不純物として混入する以外は実質的にSiを含まないアルミニウム源がよく、アモルファスの水酸化アルミニウム、ギブサイト構造を持つ水酸化アルミニウム、バイヤーライト構造を持つ水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシドが好ましい。特に好ましくは、アモルファスの水酸化アルミニウム、ギブサイト構造を持つ水酸化アルミニウム、バイヤーライト構造を持つ水酸化アルミニウムであり、これらの中でもアモルファスの水酸化アルミニウムがとりわけ好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの原料は安定した品質のものを容易に入手でき、コストダウンを図ることができる。
アルミニウム原子原料の使用量は、反応前混合物ないしはこれを熟成して得られた水性ゲルの調製しやすさや生産効率の点から、本発明で添加するゼオライト以外の原料混合物に含まれるアルミニウム原子原料中のアルミニウム(Al換算)に対するケイ素(SiO換算)のモル比で、通常、100以下、好ましくは80以下、より好ましくは60以下、更に好ましくは50以下、特に好ましくは40以下である。また下限は特に限定されないが、水性ゲル中にアルミニウム原子原料を均一に溶解させやすい点から通常5以上、好ましくは10以上、より好ましくは15以上、更に好ましくは20以上、特に好ましくは25以上、最も好ましくは30以上である。
<ケイ素原子原料>
本発明に用いられるAEI型ゼオライトを製造する際に使用するケイ素原子原料としては、特に限定されず、公知の種々の物質を使用することができ、例えば、結晶性アルミノシリケートゼオライトや非晶質のアルミノシリケートを使用してもかまわない。好ましくは製造過程において不純物として混入する以外は実質的にAlを含まないアルミニウム源がよく、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、トリメチルエトキシシラン、テトラエチルオルトシリケートなどを用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、他の成分と十分均一に混合できる形態のものであって、特に水に溶解しやすい原料が好ましく、コロイダルシリカ、トリメチルエトキシシラン、テトラエチルオルトシリケートが好ましく、コロイダルシリカが最も好ましい。
ケイ素原子原料は、ケイ素原子原料に対する他の原料の使用量がそれぞれ前述ないしは後述の好適範囲となるように用いられる。
<アルカリ金属原子原料>
本発明に用いられるAEI型ゼオライトを製造する際に使用するアルカリ金属原子原料に含まれるアルカリ金属は、特に限定されず、ゼオライトの合成に使用される公知のものが使用できるが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属イオンを含むことが好ましい。
これらのアルカリ金属原子が含まれることにより、結晶化の進行が容易となり、また副生物(不純物結晶)が生成しにくくなる。
アルカリ金属原子原料としては、上記のアルカリ金属原子の水酸化物、酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩などを用いることができる。アルカリ金属原子原料は、1種でも2種以上含まれていてもよい。
アルカリ金属原子原料は、その適当量を使用することにより、結晶構造内の電荷補償に必要なアルカリ金属原子がアルミニウムに好適に配位し結晶構造を作りやすくできる。原料混合物中の本発明で添加するゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するアルカリ金属原子のモル比は通常、0.05以上であり、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.20以上、特に好ましくは0.25以上、とりわけ好ましくは0.30以上、最も好ましくは0.35以上である。
一方、アルカリ金属原子の量は、アルカリ金属原子による、有機構造規定剤のアルミニウムへの配位の阻害が起こり難い点では少ないことが好ましく、通常、1.0以下が好ましく、0.80以下がより好ましく、0.60以下が更に好ましく、0.50以下が特に好ましく、0.45以下がとりわけ好ましく、0.40以下が最も好ましい。
<有機構造規定剤>
有機構造規定剤(「テンプレート」とも呼称される。以下有機構造規定剤を「SDA」と称す場合がある。)としては、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド(TEAOH)やテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)などの公知の各種の物質を使用することができる。また、例えば、米国特許第5958370号公報に記載の窒素含有系有機構造規定剤として、以下のような物質を使用することができる。
すなわち、N,N-ジエチル-2,6-ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N-ジメチル-9-アゾニアビシクロ[3.3.1]ノナン、N,N-ジメチル-2,6-ジメチルピペリジニウムカチオン、N-エチル-N-メチル-2,6-ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N-ジエチル-2-エチルピペリジニウムカチオン、N,N-ジメチル-2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジニウムカチオン、N,N-ジメチル-2-エチルピペリジニウムカチオン、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムカチオン、N-エチル-N-メチル-2-エチルピペリジニウムカチオン、2,6-ジメチル-1-アゾニウム[5.4]デカンカチオン、N-エチル-N-プロピル-2,6-ジメチルピペリジニウムカチオン等が挙げられる。また、cis体やtrans体のような構造異性体がある場合は、いずれを使用しても構わず、cis体やtrans体の混合でもよい。このうち特に好ましい窒素含有系有機構造規定剤としては、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムカチオンがよく、具体的には、N,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイドを用いることが好ましい。
また、リン含有系有機構造規定剤としてChemistry Letters(2014)、Vol.43、No.3 P302-304に記載されている、テトラブチルホスホニウム、ジフェニルジメチルホスホニウムのような物質を使用することができる。
しかし、リン化合物は合成されたゼオライトを焼成してSDAを除去する時に有害物質である五酸化二リンを発生する可能性があるため、窒素含有系有機構造規定剤が好ましい。
これらの有機構造規定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機構造規定剤の使用量は、結晶の生成しやすさの観点から、本発明で用いるゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で、通常0.01以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.2以上である。また、コストダウンの観点から、通常1.0以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.4以下、とりわけ好ましくは0.3以下、最も好ましくは0.25以下である。
また、原料組成物に4級アンモニウムカチオンを混合しても構わない。具体的な4級アンモニウムカチオンとしては、テトラメチルアンモニウムカチオン、エチルトリメチルアンモニウムカチオン、トリメチルプロピルアンモニウムカチオン、イソプロピルトリメチルアンモニウムカチオン、ブチルトリメチルアンモニウムカチオン、イソブチルトリメチルアンモニウムカチオン、セカンダリーブチルトリメチルアンモニウムカチオン、ターシャリーブチルトリメチルアンモニウムカチオン、ヒドロキシメチルトリメチルアンモニウムカチオン、ジヒドロキシメチルトリメチルアンモニウムカチオン、トリヒドロキシメチルトリメチルアンモニウムカチオン、(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムカチオン、(1-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムカチオン、(1-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムカチオン、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムカチオン、(3-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムカチオン、(2-ヒドロキシ-1-メチルエチル)トリメチルアンモニウムカチオン、(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)トリメチルアンモニウムカチオン、(2,3-ジヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムカチオン、(1-ヒドロキシブチル)トリメチルアンモニウムカチオン、(2-ヒドロキシブチル)トリメチルアンモニウムカチオン、(3-ヒドロキシブチル)トリメチルアンモニウムカチオン、(4-ヒドロキシブチル)トリメチルアンモニウムカチオン、(1-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)トリメチルアンモニウムカチオン、(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)トリメチルアンモニウムカチオン、(3-ヒドロキシ-2-メチルプロピル)トリメチルアンモニウムカチオン、(1-ヒドロキシ-1-メチルプロピル)トリメチルアンモニウムカチオン、(2-ヒドロキシ-1-メチルプロピル)トリメチルアンモニウムカチオン、(3-ヒドロキシ-1-メチルプロピル)トリメチルアンモニウムカチオン、(2-アミノエチル)トリメチルアンモニウムカチオン、(2-メルカプトエチル)トリメチルアンモニウムカチオン、(2-クロロエチル)トリメチルアンモニウムカチオン、(2-オキソエチル)トリメチルアンモニウムカチオン、(3-アミノプロピル)トリメチルアンモニウムカチオ ン、(2-メトキシエチル)トリメチルアンモニウムカチオン、(2-オキソプロピル)トリメチルアンモニウムカチオン、(4-オキソブチル)トリメチルアンモニウムカチオン、(2-アミノ-2-オキソエチル)トリメチルアンモニウムカチオン、(2-カルボキシエチル)トリメチルアンモニウムカチオン、(2-ヒドロキシイミノエチル)トリメチルアンモニウムカチオン、及び(3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムカチオンからなる群から選ばれる少なくとも1種、更にはテトラメチルアンモニウムカチオン(以下、「TMA」ともいう。)、エチルトリメチルアンモニウムカチオン(以下、「ETMA」ともいう。)、トリメチルプロピルアンモニウムカチオン(以下、「TMPA」ともいう。)、イソプロピルトリメチルアンモニウムカチオン(以下、「IPTMA」ともいう。)、ブチルトリメチルアンモニウムカチオン(以下、「BTMA」ともいう。)、イソブチルトリメチルアンモニウムカチオン(以下、「IBTMA」ともいう。)、セカンダリーブチルトリメチルアンモニウムカチオン(以下、「SIBTMA」ともいう。)、ヒドロキシメチルトリメチルアンモニウムカチオン(以下、「HMTMA」ともいう。)、(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムカチオン(以下、「2-HETMA」ともいう。)、(2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムカチオン(以下、「2-HPTMA」ともいう。)、及び(2-ヒドロキシブチル)トリメチルアンモニウムカチオン(以下、「2-HPTMA」ともいう。)等が挙げられる。
4級アンモニウムカチオンの使用量は、原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で0.0001以上0.1以下、更には0.001以上0.05以下、また更には0.001以上0.01以下であることが好ましい。この範囲とすることで、AEI型ゼオライトの結晶化が促進されやすくなる。
<水>
水の使用量は、結晶が生成しやすいという観点から、本発明で用いるゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で、通常5以上、好ましくは7以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは10以上、特に好ましくは12以上である。また、一方で、廃液処理にかかるコストダウンの観点から、本発明で用いるゼオライト以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で、通常100以下、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、特に好ましくは25以下、とりわけ好ましくは20以下、最も好ましくは15以下である。
<原料の混合(反応前混合物の調製)>
本発明に用いられるAEI型ゼオライトの製造方法においては、以上に述べた、アルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、及び水を混合する。ここで、この混合物に、種晶としてゼオライトを添加して十分に混合してから、得られた反応前混合物を水熱合成してもよい。
種晶として用いられるゼオライトは、ゼオライト結晶構造中に含まれるComposition Building Unit(以下、「CBU」と称す。)にdouble 8 ring(以下、「D8r」と称す。)を有するものが好ましく、具体的にはAEI、AFT、AFX、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SZR、TSC、WENが挙げられる。その中でも、AEI、AFX、CHAがより好ましく、AEI、CHAが特に好ましい。
これらの原料の混合順序は、特に限定はないが、好ましくはアルカリ溶液を調製した後にケイ素原子原料、アルミニウム原子原料を添加した方がより均一に原料が溶解しやすい点から、水、有機構造規定剤、及びアルカリ金属原子原料を混合してアルカリ溶液を調製した後、このアルカリ溶液へアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、種晶のゼオライトの順番で添加して混合することが好ましい。
なお、本発明に用いられるAEI型ゼオライトの製造方法においては、上記のアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、水及び種晶としてのゼオライト以外に、ゼオライトの合成を助けるための成分となる補助剤、たとえば反応を促進させる酸成分や、ポリアミンのような金属の安定化剤などの他の添加剤を必要に応じて任意の工程で添加混合して反応前混合物を調製してもよく、又後述のように触媒として働く銅などの金属を水熱合成時に添加してもよい。
<アルカリ土類金属の添加>
また、ゼオライトの合成時にアルカリ土類金属を添加して合成することもできる。アルカリ土類金属を添加すると、ゼオライトの耐水熱特性が向上しやすくなる。本発明の方法に用いられるAEI型ゼオライトを製造する際も、水熱合成前の原料混合物に、アルカリ土類金属を含有する化合物を添加することができる。アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが使用でき、好ましくはマグネシウム又はカルシウム、最も好適にはカルシウムである。アルカリ土類金属は、通常化合物の形で供給することができ、酸化物、水酸化物、硫化物等が挙げられる。これらの供給形態は、いずれも用いることができ、特に限定されないが、好ましくは水酸化物のかたちで添加するとよい。
<熟成>
上記のようにして調製された反応前混合物は、調製後直ちに水熱合成してもよいが、より高い結晶性を有するゼオライトを得るために、所定の温度条件下で一定時間熟成することが好ましい。特に、スケールアップする場合は、均一に撹拌することが難しくなり、原料の混合状態が不十分となりやすい。そのため、一定期間原料を撹拌しながら熟成させることにより、原料をより均一な状態に改善することが好ましい。熟成温度は、通常100℃以下、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下、特に好ましくは80℃以下であり、その下限は特に限定されないが、通常0℃以上、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは40℃以上、特に好ましくは50℃以上である。熟成温度は熟成中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。熟成期間は特に限定されないが、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上であって、通常30日以下、好ましくは10日以下、さらに好ましくは4日以下である。
<水熱合成>
水熱合成は、上記のようにして調製された反応前混合物ないしはこれを熟成して得られる水性ゲルを耐圧容器に入れ、自己発生圧力下、又は結晶化を阻害しない程度の気体加圧下で、撹拌下、又は、容器を回転ないしは揺動させながら、或いは静置状態で、所定温度を保持することにより行われる。
水熱合成の際の反応温度は、通常、120℃以上であり、好ましくは130℃以上、より好ましくは140℃以上、更に好ましくは150℃以上、特に好ましくは160℃以上、最も好ましくは170℃以上であり、また、一方で、通常230℃以下、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは190℃以下、特に好ましくは180℃以下である。反応時間は特に限定されないが、通常5時間以上、好ましくは10時間以上、より好ましくは1日以上、更に好ましくは1.5日以上、より更に好ましくは2日以上、特に好ましくは3日以上であり、また、一方で、通常30日以下、好ましくは10日以下、より好ましくは7日以下、更に好ましくは5日以下である。反応温度は反応中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。
上記の条件で反応させることにより、目的とするAEI型ゼオライトの収率が向上し、異なるタイプのゼオライトが生成し難くなるため好ましい。
<ゼオライトの回収>
上記の水熱合成後、生成物であるゼオライトを、水熱合成反応液より分離する。
得られたゼオライト(以下、「SDA等含有ゼオライト」と称する。)は、細孔内に有機構造規定剤及びアルカリ金属原子の両方又はいずれか一方を含有している。水熱合成反応液からのSDA等含有ゼオライトの分離方法は特に限定されないが、通常、濾過、デカンテーション、又は直接乾燥等による方法が挙げられる。
水熱合成反応液から分離回収したSDA等含有ゼオライトは、製造時に使用した有機構造規定剤等を除去するために、必要に応じて水洗、乾燥した後、焼成等を行って有機構造規定剤等を含有しないゼオライトとすることができる。
本発明に用いられるゼオライトを触媒(触媒担体も含む)や吸着材等の用途で使用する場合、必要に応じてこれらを除去した後に使用に供する。
<有機構造規定剤を含む分離液のリサイクル>
水熱合成反応液からゼオライトを分離、回収した後に得られる分離液には、未反応の構造規定剤が含まれる。未反応の構造規定剤を含む分離液を用いて、水熱合成前のゲルと同じ仕込み組成となるように不足分のケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、有機構造規定剤、および水等を加えて混合物を調製し、この混合物を水熱合成に供することで、分離液中の未反応の構造規定剤を再利用してもよい。また、回収された濾液に含まれる微量成分の影響により、同じ仕込み組成でもゼオライトに結晶成長しない、あるいは不純物を含む混相になることもある。その場合は、濾液を用いてもゼオライトが単相で得られるように、仕込み組成や水熱合成条件を調整してもよい。
具体的な未反応の構造規定剤のリサイクル方法として、例えば、米国特許2015/0118150号公報や特開2019-202929号公開公報に記載の方法を用いてもよい。
<SDA等含有ゼオライトからの有機構造規定剤等の除去>
SDA等含有ゼオライトからの有機構造規定剤及びアルカリ金属の両方又はいずれか一方の除去処理は、酸性溶液や有機構造規定剤分解成分を含んだ薬液を用いた液相処理、レジンなどを用いたイオン交換処理、熱分解処理を採用することができ、これらの処理を組合せて用いてもよい。通常、空気又は酸素含有の不活性ガス、あるいは不活性ガス雰囲気下に300℃から1000℃の温度で焼成したり、エタノール水溶液などの有機溶剤により抽出したりする等の方法により、含有される有機構造規定剤等を除去することができる。製造性の面で焼成による有機構造規定剤等の除去が好ましい。この場合、焼成温度については、好ましくは400℃以上、より好ましくは450℃以上、さらに好ましくは500℃以上であり、また、一方で、好ましくは900℃以下、より好ましくは850℃以下、さらに好ましくは800℃以下である。不活性ガスとしては、窒素などを用いることができる。
本発明に用いられるゼオライトのイオン交換能は、アルカリ金属原子原料、あるいはアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、有機構造規定剤、及び種晶のゼオライトに含まれるアルカリ金属原子由来のアルカリ金属部分を、プロトン型やNH 型に変換して用いることもできる。その方法は、公知の技術を採用することができる。例えば、NHNO、NaNOなどアンモニウム塩あるいは塩酸などの酸で、通常、室温から100℃で処理後、水洗する方法などにより行うことができる。
<金属の後担持による耐熱性向上>
本発明に用いられるゼオライトは、後述する触媒として使用するために、活性点となる金属(例えばCuやFe)を担持した後の触媒に更に金属を担持させてもよい。金属を担持させる効果としては、ゼオライト骨格中のAlに金属が配位することで、水蒸気からの保護効果が発現されると考えられる。担持させる金属としては、Mg、Ca、Sr、La、Pr、B、Zr、Ceが挙げられる。これらの金属は、2種類以上併用してもよい。また、AEI型ゼオライトの水熱合成前のゲルにこれらの金属の塩を加えて、金属を含有したゼオライトを製造してもよい。この場合、通常、遷移金属の硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩、ペンタカルボニル、フェロセン等の有機金属化合物などが使用される。これらの塩のうち、水に対する溶解性の観点から、無機酸塩、有機酸塩が好ましい。
ゼオライトに上述の金属を担持させる場合、金属担持ゼオライト中の金属の含有量は、ゼオライト中のアルミニウムに対する金属のモル比として通常0.0001以上、好ましくは0.0005以上、より好ましくは、0.001以上、更に好ましくは0.005以上である。金属含有量の上限は特に限定されないが、触媒として使用する場合は活性点となる遷移金属もイオン交換する必要があるため、通常1以下、好ましくは0.95以下、更に好ましくは0.8以下、より好ましくは0.5以下である。
[窒素酸化物浄化用触媒]
ゼオライトを触媒として使用する際には、バインダーと混合し、造粒して用いることやハニカム状等の所定の形状に成形して用いることができる。触媒を、特に排ガス処理に用いる場合については、例えば、該触媒をシリカ、アルミナ、粘土鉱物等の無機バインダーや、アルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維と混合した後、造粒するかまたは押出法や圧縮法等によりハニカム状等の所定の形状に成形し、続いて焼成することにより、粒状の触媒やハニカム触媒、触媒成形品を得ることができる。
ゼオライトを触媒として使用する際は、シートやハニカム等の基材に塗布して用いてもよい。具体的には、例えば、本発明に用いるゼオライトを含む触媒と、シリカ、アルミナ、粘土鉱物等の無機バインダーとを混合し、スラリーを作製し、コージェライト等の無機物で作製された基材の表面に塗布し、焼成する方法等が挙げられる。好ましくは、この際にハニカム形状の基材に塗布することにより、触媒が塗布されたハニカム状のハニカム触媒を得ることができる。
ここでは排ガス処理用触媒を例にして説明しているため無機バインダーを用いているが、用途や使用条件によっては有機バインダーを用いてもよいことは言うまでもない。
ゼオライトを触媒として使用する際は、ゼオライトに金属を担持させる。担持させる金属は、Si及びAl以外の金属である。ゼオライトに担持させる金属は遷移金属が好ましく、鉄、コバルト、パラジウム、イリジウム、白金、銅、銀、金、セリウム、ランタン、プラセオジウム、チタン、ジルコニウム等が好ましい。更に好ましくは、銅あるいは鉄であり、最も好ましくは銅である。これらの金属の2種以上を組み合わせてもよい。
金属の担持量は、触媒全量中、通常1.0質量%以上、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上、特に好ましくは6.0質量%以上、とりわけ好ましくは8.0質量%以上、最も好ましくは10質量%以上であり、また、一方で、通常20質量%以下、好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。すなわち、ゼオライトに担持する金属の担持量は、触媒全量に対して、1.0~20質量%が好ましい。
ゼオライト中のAlに対する金属担持量のモル比としては、通常0.5以上であり、0.55以上が好ましく、0.6以上がより好ましく、0.65以上が更に好ましく、0.7以上が特に好ましく、0.75以上がとりわけ好ましく、0.8以上が最も好ましい。また、上限としては、通常2.0以下であり、1.95以下が好ましく、1.9以下がより好ましく、1.85以下が更に好ましく、1.8以下が特に好ましい。すなわち、ゼオライトに担持する金属の担持量は、ゼオライト中のAlに対するモル比として0.5~2.0であることが好ましい。
<金属担持触媒の製造方法>
ゼオライトに金属を担持させる方法としては、特に限定されないが、一般的に用いられるイオン交換法、含浸担持法、沈殿担持法、固相イオン交換法、CVD法、噴霧乾燥法等が挙げられ、これらのうち、好ましくは、固相イオン交換法、含浸担持法、噴霧乾燥法により、AEI型ゼオライトに金属を担持させる方法が好ましく、含浸担持法が最も好ましい。
含侵担持法によってゼオライトに金属を担持させる場合、減圧蒸留により処理を行ってもよい。減圧蒸留を行う場合のゼオライトと担持金属原料を含む水溶液の温度は、通常0℃以上であり、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上が更に好ましく、50℃以上が特に好ましい。また、一方で、上限値としては、通常100℃以下であり、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、70℃以下が更に好ましく、60℃以下が特に好ましい。
含侵担持を行う際の水溶液中の金属原料の濃度は特に限定されないが、効率的に含侵担持を行うには濃度が濃いほうがよく、通常は0.1質量%であり、0.3質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、0.8質量%以上が更に好ましく、1.0質量%以上が特に好ましく、1.2質量%以上がとりわけ好ましく、1.5質量%以上が最も好ましい。一方、ゼオライトに金属を担持する際の分散性が良くなりやすいことから、通常10質量%以下であり、8質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、3質量%以下が特に好ましく、2質量%以下がとりわけ好ましい。
ゼオライトに遷移金属を担持させる場合、イオン交換法、含侵法などの方法を用いると、大量の廃液を排出するため廃液処理が問題となり、また、ゼオライト浸漬スラリーの濾過、洗浄などの工程数が多くなりがちである。これに対して、遷移金属原料である遷移金属酸化物や遷移金属塩をゼオライト合成工程のゲル、即ち、前述の反応前混合物に導入することにより、遷移金属を含むAEI型ゼオライトを一工程で合成するワンポット合成法であれば、この問題が解決される。
ワンポット合成法で用いる遷移金属原料は特に限定されず、通常、遷移金属の硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩、ペンタカルボニル、フェロセン等の有機金属化合物などが使用される。これらのうち、水に対する溶解性の観点からは無機酸塩、有機酸塩が好ましく、より具体的には例えば硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩酸塩等が好ましい。場合によってはコロイド状の酸化物、あるいは微粉末状の酸化物を用いてもよい。
またゲル中で遷移金属を安定化させるためにポリアミンを用いて錯塩を形成させてもよい。
具体的なポリアミンとしては、中でもジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが安価であり、好ましく、中でもトリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが特に好ましい。これらのポリアミンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、分岐状のポリアミンを含んでいてもよい。
ゼオライトに上記金属を担持させた後は、好ましくは300℃ ~900℃、より好ましくは350℃~850℃、さらに好ましくは400℃ ~800℃で、1秒~24時間、好ましくは10秒~8時間、さらに好ましくは30分~5時間程度焼成することが好ましい。この焼成は必ずしも必要ではないが、焼成を行うことにより、ゼオライトの骨格構造に担持させた金属の分散性を高めることができ、触媒活性の向上に有効である。
また、本発明に用いられる触媒は、主に原料に由来するアルカリ金属原子、例えばナトリウム、カリウム、セシウム等を含んでいてもよい。このうち容易に除去できるナトリウムに関しては、特に限定されないが、比較的除去の難しいカリウム、セシウム等に関しては、触媒中のアルミニウムに対するモル比として、0.001以上、1.0以下であることが好ましい。触媒から無理に除去することにより、ゼオライトの骨格などにダメージを与えることを防ぐ点から、触媒中のアルミニウムに対するカリウム及び/又はセシウムのモル比は、上述の範囲が好ましい。
本発明に用いられる触媒の比表面積は、ゼオライトの比表面積として前述したとおりである。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例により何ら限定されるものではない。
〔分析・評価〕
以下の実施例及び比較例において得られたゼオライトの分析及び性能評価は、以下の方法により行った。
[粉末XRDの測定]
<試料の調製>
めのう乳鉢を用いて人力で粉砕したゼオライト試料約100mgを同一形状のサンプルホルダーを用いて試料量が一定となるようにした。
<装置仕様及び測定条件>
粉末XRD測定装置仕様及び測定条件は、以下の表1及び表2に示す通りである。
Figure 2022102718000001
Figure 2022102718000002
[平均一次粒子径の測定]
本発明に用いられるゼオライトの平均一次粒子径とは、一次粒子の粒子径の平均値に相当する。平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡による粒子の観察において、任意に選択した30個の一次粒子について粒子径を測定し、その一次粒子の粒子径を平均して求めた。粒子径は、粒子の投影面積と等しい面積を持つ円の直径(円相当径)とした。
[Cu含有量とゼオライト組成の分析]
標準試料であるゼオライト中のケイ素原子とアルミニウム原子の含有量、及び銅原子の含有量は、以下の方法で定量した。
ゼオライト試料を塩酸水溶液に加熱溶解させた後、ICP分析によりケイ素原子、アルミニウム原子と銅原子の含有量(質量%)を求めた。そして、標準試料中の分析元素の蛍光X線強度と分析元素の原子濃度との検量線を作成した。
この検量線により、蛍光X線分析法(XRF)でゼオライトよりなる触媒試料中のケイ素原子、アルミニウム原子及び銅原子の含有量(質量%)を求めた。ICP分析は、株式会社堀場製作所製 装置名:ULTIMA 2Cを用いて行った。XRFは、株式会社島津製作所製 装置名:EDX-700を用いて行った。
[触媒活性の評価]
調製した触媒試料をプレス成形後、破砕して篩に通し、0.6~1mmに整粒した。整粒した触媒試料1mlを常圧固定床流通式反応管に充填した。触媒層に下記表3の組成のガスを空間速度SV=60000h-1で流通させながら、触媒層を加熱した。300℃において、出口のNO濃度が一定となったとき、以下の式により求められるNO浄化率(%)の値によって、触媒試料の窒素酸化物除去活性を評価した。
NO浄化率(%)={(入口NO濃度)-(出口NO濃度)}/(入口NO濃度)×100
Figure 2022102718000003
[実施例1]
〔ゼオライトの合成〕
4.0gの水と、有機構造規定剤(SDA)として5.4gのN,N-ジメチル-3,5-ジメチルピペリジニウムハイドロオキサイド(35質量%水溶液、セイケム社製)と、0.8gのNaOH顆粒(和光純薬株式会社製)を混合したものに、アモルファスAl(OH)(Al:53.5質量% 、Aldrich社製)0.29gを加えて撹拌し、溶解させて透明溶液とした。これにスノーテックス40(シリカ濃度:40質量%、日産化学株式会社製)8.9gを加えて室温で5分間撹拌した後、種晶として未焼成品のCHA型ゼオライト(SiO/Al比=22)0.18gを添加し、室温で2時間撹拌して反応前混合物を得た。
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、170℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、3日間水熱合成を行った。この水熱合成反応後、反応液を冷却して、濾過により生成した結晶を回収した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉のXRDを測定したところ、格子面間隔表示で、表4に示すような位置にピーク及び相対強度を有するXRDパターンを示すAEI型のアルミノシリケートゼオライト1を合成できたことが確認された。XRF分析によるアルミノシリケートゼオライト1のSiO/Alモル比は15であった。
Figure 2022102718000004

〔触媒の調製・触媒活性の評価〕
ゼオライト中の有機物を除去するために、実施例1で合成したアルミノシリケートゼオライト1を600℃の空気気流下で5時間焼成した。次に焼成したゼオライト中のNaイオンを除去するために、焼成したゼオライトを1モル/Lの硝酸アンモニウム水溶液に分散させ、60℃で5時間イオン交換を行った。濾過によりゼオライトを回収し、イオン交換水での洗浄を3回行った。その後、前記のイオン交換と洗浄を更に繰り返し2回行った。得られたゼオライト粉を100℃で12時間乾燥して、NH 型のアルミノシリケートゼオライト2を得た。その後、空気下において500℃で2時間焼成し、H型のアルミノシリケートゼオライト3を得た。
アルミノシリケートゼオライト3に含侵担持処理を行うことによりCuを担持させた。10質量%のCuが担持出来るように、1gのアルミノシリケートゼオライト3に対して0.3gの酢酸銅(II)(キシダ化学株式会社製)を20gの水に溶解して、酢酸銅(II)水溶液を得た。アルミノシリケートゼオライト3をこの酢酸銅(II)水溶液中に分散させ、50℃のウォーターバスで加温しながら、エバポレーターを用いて減圧蒸留により水分を除去した。水分を除去した後、10gのイオン交換水を加えて再分散させ、50℃のウォーターバスで加温しながら、減圧蒸留により水分を除去した。水分除去後、再度10gのイオン交換水を加えて再分散させ、50℃のウォーターバスで加温しながら、減圧蒸留により水分を除去した。以上のように、合計3回の減圧蒸留を行い、含侵担持処理を終了して触媒1を得た。触媒1についてXRF分析を行った結果、Cu/Alモル比は0.8であった。
[比較例1]
東ソー株式会社製のZSM-5(SiO/Alモル比が40)を用いて、実施例1と同様にエバポレーターを用いた減圧蒸留による操作で4.0質量%のCuを担持する処理を行い、触媒2を得た。触媒2についてXRF分析を行った結果、Cu/Alモル比は0.75であった。
触媒1及び触媒2の触媒活性の評価結果は、触媒1のNOの転化率が39%であり、触媒2の転化率が35%であった。なお、触媒1及び触媒2の触媒活性の評価結果を図1にも示した。排ガス処理において重要とされる300℃程度の低温での活性について、触媒1(図1中ではCAT-Aと記載)は、触媒2(図1中ではCAT-Bと記載)よりも高い活性を持つ触媒であることが分かった。なお、図1において、NO転化率(%)は「NO conversion (%)」と記載する。
通常、8員環ゼオライトは10員環構造を有するゼオライトに比べると細孔サイズが小さいことから、金属を担持する際に細孔内が金属で閉塞しやすく、活性点として機能する金属を増やすことは難しい。例えば、非特許文献1のTable 1において、ZSM-5(細孔サイズ:5.5×5.1Å)よりも小さいサイズの細孔を持つFerrierite(細孔サイズ:5.4×4.2Å)のCuイオン交換後の物性を示しており、ゼオライト中のCuイオン交換量はZSM-5に比べて多いにもかかわらず、NO吸着量がZSM-5よりも少ないことから、触媒活性点となる有効なCuはZSM-5に比べて少ないことを示している。従って、ZSM-5よりも小さい細孔径を持つゼオライトにおいて、イオン交換率100%を超えるようなCuの過剰担持は、通常考えない。
一方、本発明に用いた8員環ゼオライトはいずれもZSM-5と比べて細孔サイズは小さいが、活性点となるCuをCu/Al=0.5(イオン交換率100%)以上に担持した場合において高い触媒活性を示した。これは、非特許文献1の579頁にCu-Cuダイマーが本反応系における活性点とされているが、本発明に係る8員環ゼオライトの場合は細孔サイズが小さいため近接Alの距離が近く、Alに担持したCuの距離も近くなることからより触媒活性に効果的なCu-Cuダイマーを作りやすく、細孔閉塞の影響よりも高活性が得られる効果があったと考えられる。
本発明により、工場や自動車排ガス中等に含まれる窒素酸化物に対して、処理能力に優れた触媒を用いることで無害な物質に浄化する方法を提供することができる。特に、還元剤のインフラ整備が難しい場所に使用できることから、幅広い環境下に適用可能である。

Claims (9)

  1. 気体中に含まれる窒素酸化物を金属が担持されたゼオライトと接触させることにより除去する窒素酸化物の浄化方法であって、前記ゼオライトが8員環構造を有し、かつゼオライト中のAlに対する金属担持量のモル比が0.5~2.0であることを特徴とする窒素酸化物の浄化方法。
  2. 前記ゼオライトがアルミノシリケートゼオライトである請求項1に記載の窒素酸化物の浄化方法。
  3. 前記ゼオライトのSiO/Al(モル比)が3~100である請求項2に記載の窒素酸化物の浄化方法。
  4. 前記ゼオライトがAEI型、CHA型、AFX型、RHO型のいずれかである請求項2又は3に記載の窒素酸化物の浄化方法。
  5. 前記ゼオライトに担持する金属がCu及びFeからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1~4のいずれか1項に記載の窒素酸化物の浄化方法。
  6. 前記ゼオライトに担持する金属の担持量が、触媒全量に対して1.0~20質量%である請求項1~5のいずれか1項に記載の窒素酸化物の浄化方法。
  7. 前記気体中に含まれる窒素酸化物に対するモル比が0.1以下の還元剤を使用する請求項1~6のいずれか1項に記載の窒素酸化物の浄化方法。
  8. 前記還元剤の合計のモル量に対する窒素を含む還元剤の合計のモル量の比が0.1以下である請求項7に記載の窒素酸化物の浄化方法。
  9. 前記気体中の窒素酸化物量が10~10000体積ppmである請求項1~8のいずれか1項に記載の窒素酸化物の浄化方法。
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