JP2022101648A - 一本鎖アデノ随伴ウイルス9または自己相補型アデノ随伴ウイルス9の脳脊髄液への注射 - Google Patents

一本鎖アデノ随伴ウイルス9または自己相補型アデノ随伴ウイルス9の脳脊髄液への注射 Download PDF

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Abstract

【課題】処置を中枢神経系へターゲティングするための組成物および方法を提供する。【解決手段】非分泌型治療用タンパク質をコードする自己相補型アデノ随伴ウイルス血清型9(scAAV9)の有効量をヒト対象へ投与する工程を含む、非分泌型治療用タンパク質をその必要のあるヒト対象の中枢神経系へ送達する方法であって、scAAV9が、脳室内、くも膜下腔内大槽、またはくも膜下腔内腰椎の経路を介した脳脊髄液への注射によって投与される、方法である。【選択図】なし

Description

領域
処置を中枢神経系(CNS)へターゲティングするための組成物および方法;具体的には、処置をCNS内の異なる細胞へターゲティングするため、脳室内(ICV)またはくも膜下腔内(大槽もしくは腰椎)の経路を介した脳脊髄液(CSF)への注射によって投与されるアデノ随伴ウイルス(AAV)、具体的には、AAV9を利用する投薬計画が、記載される。
共同研究契約の当事者
Emory UniversityおよびRegenxbioは、共同研究契約の当事者である。
背景
中枢神経系(CNS)の疾患を処置するため、遺伝子治療が、動物モデルにおいて長い間研究されてきた。リソソーム蓄積症のような多様な遺伝性代謝疾患が、脳に影響を与え、精神遅滞および神経変性を引き起こす。CNS障害は、患者およびその家族の生活の質に実質的に影響を与え、自立の喪失およびコミュニケーションの困難をもたらす。治療用遺伝子の脳への直接送達は、全身治療で見出される問題を回避し得る、これらの疾患のための可能性のある処置を提示する。例えば、CNSにおける中和抗体には、懸念が少なく(Gray et al., 2013, Gene Therapy 20:450-459(非特許文献1))、ベクターおよび/またはトランスジーンに対する免疫応答のリスクは比較的低いようであるが(Mingozzi and High, Blood. 2013 Jul 4;122(1):23-36(非特許文献2))、このリスクはまだゼロではない(Ellinwood et al., Mol Ther. 2011 Feb;19(2):251-9(非特許文献3))。
リソソーム蓄積症のようなCNS全体の細胞に影響する障害を処置するため、遺伝子治療についての一つの難題は、脳および脊髄の全体において適切な形質導入を達成することである。あるベクター、アデノ随伴ウイルス血清型9(AAV9)は、CNSの細胞に形質導入する能力を有し、血液脳関門(BBB)をバイパスする能力を示す。高用量のAAV9ベクターの静脈内注射後、研究は、げっ歯類および非ヒト霊長類(NHP)におけるCNSの形質導入を示した(例えば、Foust,et al., 2009, Nat.Biotechnol. 27:59-65(非特許文献4);Duque et al., 2009, Mol.Ther. 17:1187-1196(非特許文献5);Fu et al., 2011, Mol.Ther, 19:1025-1033(非特許文献6);およびGray et al., 2011, Mol.Ther. 19:1058-1069(非特許文献7))。マウス、ブタ、およびサルの新生仔へのくも膜下腔内投与後のAAV9の脊髄への分布も、調査された(Passini et al., 2014, Human Gene Therapy 25:619-630(非特許文献8))。最近の研究は、NHPにおいてAAV9の血管送達をCSF送達と比較した。両方の送達経路が、類似の分布パターンおよび指向性(ニューロン指向性より大きいアストロサイト指向性)を生成することが報告された。CSF投与は、より大規模なCNSの形質導入を生成したが、AAV抗体に対して遮蔽しなかった(Samaranch et al., 2012, Hum Gene Ther 23:382-389(非特許文献9))。これらおよびその他の研究において提起された重大な課題に取り組むためには、相当の革新が必要とされることが予想される。
Gray et al., 2013, Gene Therapy 20:450-459 Mingozzi and High, Blood. 2013 Jul 4;122(1):23-36 Ellinwood et al., Mol Ther. 2011 Feb;19(2):251-9 Foust,et al., 2009, Nat.Biotechnol. 27:59-65 Duque et al., 2009, Mol.Ther. 17:1187-1196 Fu et al., 2011, Mol.Ther, 19:1025-1033 Gray et al., 2011, Mol.Ther. 19:1058-1069 Passini et al., 2014, Human Gene Therapy 25:619-630 Samaranch et al., 2012, Hum Gene Ther 23:382-389
概要
脳室内(ICV)またはくも膜下腔内(大槽もしくは腰椎)の投与経路を介して脳脊髄液(CSF)へssAAVベクターまたはscAAVベクターを注射することによって、治療用遺伝子産物(例えば、治療用タンパク質またはその他の治療剤)をコードする一本鎖アデノ随伴ウイルス(ssAAV)ベクターまたは自己相補型アデノ随伴ウイルス(scAAV)ベクター(例えば、ssAAV9ベクターまたはscAAV9ベクター)の治療的有効量を投与することによる、ヒト対象を処置するための組成物および方法が記載される。ICV経路が利用される場合、両側ICV注射が、臨床的状況において好ましい場合がある。
本発明は、部分的には、AAV9のような同一血清型のssAAVベクターおよびscAAVベクターが、CSFへ送達された場合、CNSにおいて異なる細胞指向性を示すという本発明者らの発見に基づく。本発明者らの知る限り、異なる細胞指向性を示す同一血清型のssAAVベクターおよびscAAVベクターは、以前に報告されていないため、これは驚くべきものである。
いくつかの態様において、scAAV9が、海馬、小脳、および大脳皮質において優れた形質導入を達成するため、CSFへ投与され、その場合、ニューロンおよび(アストロサイトのような)グリア細胞の両方が形質導入され、小脳の細胞、特に、プルキンエニューロンの実質的な形質導入が起こる。このアプローチは、トランスジーン産物が分泌されず、従って、非形質転換細胞のクロスコレクション(cross correction)をもたらさない場合に特に望ましい。しかしながら、アストロサイト増加症および/または脳炎が懸念される疾患においては、具体的な非限定的な例において、免疫抑制剤も投与される。
例えば、一つの態様は、非分泌型治療用タンパク質をコードするscAAV9の有効量をヒト対象へ投与する工程を含む、非分泌型治療用タンパク質をそれを必要とするヒト対象のCNSへ送達することを含み、ここで、scAAV9は、脳室内、くも膜下腔内大槽、またはくも膜下腔内腰椎の経路を介したCSFへの注射によって投与される。具体的な態様は、脳のニューロンおよびグリア細胞への治療用タンパク質の送達をもたらす。この方法は、治療的有効量の免疫抑制剤を同時治療として投与する工程をさらに含むことができる。ある種の態様において、治療用タンパク質は、SMN1ではない。
もう一つの例示的な態様は、治療用タンパク質をコードするscAAV9の有効量をヒト対象へ投与する工程を含む、治療用タンパク質をそれを必要とするヒト対象のニューロン、プルキンエニューロン、および/またはアストロサイトへ送達することを含み、ここで、scAAV9は、脳室内、くも膜下腔内大槽、またはくも膜下腔内腰椎の経路を介したCSFへの注射によって投与される。この方法は、治療的有効量の免疫抑制剤を同時治療として投与する工程をさらに含むことができる。
他の態様において、アストロサイトの形質導入を最小化するため、ssAAV9がCSFへ投与される。具体的な非限定的な例において、ssAAV9は、分泌型トランスジーン産物を発現させるために使用され得、この場合、クロスコレクションが、非形質転換CNS細胞の有効な処置をもたらすことができる。具体的な非限定的な例において、免疫抑制剤も投与される。
ヒト対象へのICV送達に適したssAAVおよびscAAVの製剤、ならびにssAAV9およびscAAV9の治療的に有効な用量が、開示される。
[本発明1001]
非分泌型治療用タンパク質をコードする自己相補型アデノ随伴ウイルス血清型9(scAAV9)の有効量をヒト対象へ投与する工程
を含む、非分泌型治療用タンパク質をその必要のあるヒト対象の中枢神経系(CNS)へ送達する方法であって、scAAV9が、脳室内、くも膜下腔内大槽、またはくも膜下腔内腰椎の経路を介した脳脊髄液(CSF)への注射によって投与される、方法。
[本発明1002]
治療用タンパク質をコードする自己相補型アデノ随伴ウイルス血清型9(scAAV9)の有効量をヒト対象へ投与する工程
を含む、治療用タンパク質をその必要のあるヒト対象のニューロン、プルキンエニューロン、および/またはアストロサイトへ送達する方法であって、scAAV9が、脳室内、くも膜下腔内大槽、またはくも膜下腔内腰椎の経路を介した脳脊髄液(CSF)への注射によって投与される、方法。
[本発明1003]
治療用タンパク質が非分泌型治療用タンパク質である、本発明1002の方法。
[本発明1004]
ヒト対象が乳児である、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1005]
約7.4×1012~約1.86×1014GCの全用量のscAAV9を対象へ投与する工程を含む、本発明1004の方法。
[本発明1006]
対象が成人である、本発明1001~1003のいずれかの方法。
[本発明1007]
約2.59×1013~約6.51×1014GCの全用量のscAAV9を対象へ投与する工程を含む、本発明1006の方法。
[本発明1008]
遺伝性障害がリソソーム蓄積症である、本発明1001~1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
治療的有効量の免疫抑制剤を対象へ投与する工程を含む、本発明1001~1008のいずれかの方法。
[本発明1010]
免疫抑制剤が細胞傷害性T細胞の活性を減少させる、本発明1009の方法。
[本発明1011]
免疫抑制剤が脳炎を減少させる、本発明1009または1010の方法。
[本発明1012]
免疫抑制剤が非ステロイド性抗炎症剤である、本発明1009~1011のいずれかの方法。
[本発明1013]
対象における脳炎のリスクを低下させる、本発明1001~1012のいずれかの方法。
[本発明1014]
scAAV9が脳における細胞に形質導入する、本発明1001~1013のいずれかの方法。
[本発明1015]
scAAV9が海馬、小脳、および大脳皮質における細胞に形質導入する、本発明1001~1013のいずれかの方法。
本発明の上記およびその他の目的、特色、および利点は、添付の図面を参照しながら進行する以下の詳細な説明から、より明らかになるであろう。
図1a~1f。ICV scAAV9送達後にCNSの広範な形質導入が起こる。scAAV9-GFPまたは生理食塩水のICV注射を受容してから3週間後、スプラーグドーリーラットを屠殺した。(a、b、d、e)脳および脊髄の切片を、GFPについて染色した(黒色染料)。十字縫合の約(a)2.1mmおよび(b)11.3mm尾側における高用量ラット由来の切片が示される。限定されたバックグラウンド染色を明らかにしている、生理食塩水によって処置されたラットに由来する比較可能な領域が示される(d、e)。注目すべきことに、(a)大脳皮質、海馬、および(b)小脳の実質的な形質導入が存在した。形質導入は、注射路の近傍の脳の右側でも高かった。より深い脳構造は、少ない形質導入を示した。(c)脊髄の形質導入を、免疫蛍光(緑色染料)によって評価した。(c)のボックス内の前角は、(f)に拡大して示される。脳とは対照的に、灰白質においては細胞体の染色がほとんど存在しなかった。その代わり、GFP染色の大部分が、軸索であるようであった。略語:BS、脳幹;Cb、小脳;Cpu、尾状核;Cx、大脳皮質;Hp、海馬;T、視床。(f)のスケールバーは100umを表す。 図2a~2g。scAAV9は、ラットにおいてICV注射によって送達された場合、数種の細胞型に形質導入する。(a)GFPについて染色(黒色)された、scAAV9-GFPによって処置されたラットに由来する脳切片は、特に、注射された脳室において、脈絡叢(矢じり)および上衣(矢印)の有意な形質導入を示す。(b~g)脳切片を、GFP(緑色)ならびに細胞マーカー(赤色):(b)NeuN、(c)Fox2、(d)カルビンディン、(e)GFAP、(f)GAD67、および(g)S100βについて共染色した。GFPと細胞マーカーとの間の共局在が、矢印によって示される。(b)高用量動物由来の代表的な画像は、海馬ニューロンにおけるNeuNおよびGFPの共局在を示す。NeuNとの共局在は、大脳皮質においても観察された。(c)低用量動物の小脳が示される。精巧な樹状突起樹および核内のFox2の存在によって同定されたプルキンエ細胞は、形質導入された主な細胞である。(d)プルキンエ細胞を含む多様なニューロンを染色するカルビンディンの染色も、GFP(橙色~黄色)との拡張的な共局在を示し、小脳におけるGFP発現の大部分がプルキンエ細胞の形質導入によるものであるという結論を支持した。アストロサイトに類似したモルホロジーを有するGFP+細胞が、大脳皮質において規則的に観察された。(d)アストロサイトのマーカーであるGFAP、および(e)介在ニューロンのマーカーであるGAD67についての染色は、これらの細胞についてのGFPとの共局在を示すことができなかった。(f)しかしながら、アストロサイトのサブセットのマーカーであるS100βは、このモルホロジーを有する細胞の全てではないにしても大部分を染色した。 図3a~3c。scAAV9形質導入の分布。五つの処置群(PBS対照、低用量、低用量/高体積、中用量、および高用量)において、三つの脳領域[(a)海馬、(b)大脳皮質、および(c)小脳])において、形質導入を定量化した。各群は、2匹を有していた中用量を除き、3匹の動物からなっていた。個々の動物がグラフ上にプロットされている。水平バーは各群の平均値を表し、エラーバーはSEMを示した。用量の増加に伴って形質導入が大きくなるという一般的な傾向が存在した。注射体積の増加は、形質導入の分布において主要な役割を果たさないようであった。大脳皮質および小脳については、中用量群および高用量群が、低用量群および低用量/高体積群と有意に異なっていた(p<0.05)。 図3Aの説明を参照のこと。 図3Aの説明を参照のこと。 図4a~4f。ブタにおけるscAAV9形質導入。一方の側脳室へのscAAV9-GFPのICV注射の3週間後、脳を採集し、切片化し、GFPについて染色した(茶色染料)。ラットにおける観察と一致して、(a)海馬、大脳皮質、および(b)小脳において実質的な形質導入が観察された。未処置のブタの脳は、GFPについての染色を示さない(c)。より大きい倍率で撮影された顕微鏡写真が、(d)大脳皮質、(e)海馬、および(f)小脳について示される。(d)において、矢印は、ニューロンのモルホロジーを有する細胞の例を示す。矢じりは、アストロサイトのモルホロジーを示す細胞の例を示す。モルホロジーに基づくニューロンおよびグリアの形質導入のパターンは、ラットにおいて見られたものと類似している。スケールバーは、(d)および(f)においては100um、(e)においては500umである。
詳細な説明
遺伝子治療による、CNSに影響する障害の、可能性のある処置のため、脳および脊髄(CNS)の全体において形質導入を達成することを目標として、脳脊髄液(CSF)へのウイルスベクターの送達のための様々な投与経路(くも膜下腔内、大槽内、または脳室内)を、動物モデルにおいて調査した。あるベクター、具体的には、アデノ随伴ウイルス血清型9(AAV9)は、CSF送達後にCNSの多くの領域に形質導入する能力を有する(Dayton et al., Expert Opin Biol Ther. 2012 Jun;12(6):757-66)。これに関して、AAV9の脳室内(ICV)送達は、脳脊髄液(CSF)を介してCNSへ遺伝子を送達するため、新生仔マウスまたは若年マウスのモデルにおいて研究されている(McClean et al., 2014, Neurosci.Lett. 576:73-8;Levites et al., J.Neurosci. 26:11923-8;Gholizadeh et al., 2013, 24:205-13;Dirren et al., 2014, Hum.Gene Ther. 25:109-20)。しかしながら、これらの動物モデルにおいては脳が完全に発達しておらず、処置齢が変動する場合、形質導入パターンの顕著な違いが認められた(Chakrabarty et al., 2013, PLoS One 8:e67680)。AAV9が、成体脳において、最も重要なことには、ヒト対象において、どのように機能するかは、不明である。あるイヌ研究(Haurigot et al., 2013, J.Clin.Invest. Jul 1)を除き、マウスより大型の動物へのICV注射後のAAV9の体内分布に関しては、ほとんど未知である。
実際、Chakrabarty et al.(2013)は、処置齢が変動する場合の形質導入パターンの顕著な違いを示した(9)。さらに、新生仔マウスの小さいサイズおよびレジリエンスは、臨床的状況においては実用的ではない場合がある大用量の送達を可能にする。例えば、あるマウス研究は、1キログラム当たり約3×1014ベクターゲノム(vg)の用量を投与した(10)。この用量は、静脈内投与された、血友病のための最近の臨床試験において使用されたものの100倍を超える(11)。
本開示より前に、マウスより大型の動物へのICV注射後のAAV9の体内分布については、ほとんど未知であった(12)。さらに、伝統的な一本鎖AAV9(ssAAV9)より優れた形質導入を与えると予想されるICV自己相補型AAV9(scAAV9)の分布は、新生仔マウス以外では調査されなかった。成体ラットにおけるICV送達されたscAAV9の用量応答関係は、ヒトの治験において臨床的に使用され得る範囲の用量を使用して調査された。この研究は、大型の動物モデル、家畜ブタにおける比較研究の基盤として役立った。本明細書に開示された研究は、ssAAV9またはscAAV9のICV投与の使用のような、ヒトのための投薬判断を提供する。本明細書に開示された研究は、(ICV送達された)同一血清型のssAAVベクターおよびscAAVベクターが、CNSにおいて異なる細胞指向性を示すことも立証する。この結果は、予測されていなかったものであり、治療用タンパク質をCNSへ送達するための、本明細書に記載された改善された方法および組成物の基礎を形成する。
具体的には、海馬、小脳、および大脳皮質において、ニューロン細胞およびアストロサイトを含むグリア細胞の両方の優れた形質導入が、scAAV9によって達成される。(例えば、トランスジーン産物が分泌されず、クロスコレクションが起こらないかまたは信頼性がない)疾患を治療するため、(アストロサイトのようなグリア細胞を含む)全ての細胞に形質導入することが望ましい状態を処置するため、scAAV9を使用することができる。しかしながら、アストロサイト増加症/脳炎の懸念を伴う、ある種の疾患/状態においては、いくつかの態様において、免疫抑制剤も投与することができる。従って、いくつかの例において、副作用のリスクを最小化するため、免疫抑制治療を同時に使用することができる。
付加的な態様において、中枢神経系(CNS)炎症/脳炎が懸念される疾患を処置するため、アストロサイトの形質導入およびアストロサイト増加症/脳炎の誘導を最小化するため、ssAAV9を使用することができる。さらなる態様において、免疫抑制剤も投与することができる。さらに他の態様において、クロスコレクションが非形質転換CNS細胞の有効な処置をもたらすことができる分泌型トランスジーン産物のため、ssAAV9処置を使用することができる。
ヒト対象におけるCSFへの注射のために使用され得るssAAV9およびscAAV9および製剤の投薬量は、以下の通りである:
・乳児のため、約4.4×1013~約1.33×1014GCの全用量(一定用量)
・成人のため、約1.56×1014~約4.67×1014GCの全用量(一定用量)
・乳児のため、約7.4×1012~約1.86×1014GCの全用量(一定用量)
・成人のため、約2.59×1013~約6.51×1014GCの全用量(一定用量)
従って、用量は、以下の通りであり得る:
・乳児のため、4.4×1013~1.33×1014GCの全用量(一定用量)
・成人のため、1.56×1014~4.67×1014GCの全用量(一定用量)
・乳児のため、7.4×1012~1.86×1014GCの全用量(一定用量)
・大人のため、2.59×1013~6.51×1014GCの全用量(一定用量)
他の使用の用量は、以下の通りである:
・3~9か月齢:約6.0×1013~約1.9×1014GC;または約1.1×1014~約2.79×1014GCの全用量(一定用量);
・9~36か月齢:約1.0×1014~約3.3×1014GC;または約1.85×1013~約4.65×1014GCの全用量(一定用量);
・3~12歳:約1.2×1014~約3.96×1014GC;または約2.2×1013~約5.58×1014GCの全用量(一定用量);
・12歳超:約1.4×1014~約4.62×1014GC;または約2.59×1013GC~約6.51×1014GCの全用量(一定用量)。
従って、他の使用の用量は、以下の通りである:
・3~9か月齢:6.0×1013~1.9×1014GC;または1.1×1014~2.79×1014GCの全用量(一定用量);
・9~36か月齢:1.0×1014~3.3×1014GC;または1.85×1013~4.65×1014GCの全用量(一定用量);
・3~12歳:1.2×1014~3.96×1014GC;または2.2×1013~5.58×1014GCの全用量(一定用量);
・12歳超:1.4×1014~4.62×1014GC;または2.59×1013GC~6.51×1014GCの全用量(一定用量)。
もう一つの態様において、新生児のための用量は、以下の通りである:
・約4.4×1013~約1.32×1014(一定用量);または
・約7.4×1012~約1.86×1014GCの全(一定用量)。
従って、新生児のための用量は、以下の通りであり得る:
・4.4×1013~1.32×1014(一定用量);または
・7.4×1012~1.86×1014GCの全(一定用量)。
さらなる態様において、用量は2倍に増加し、従って、用量は、以下の通りであり得る:
・乳児のため、約8.8×1013~約2.66×1014GCの全用量(一定用量)
・成人のため、約3.21×1014~約9.34×1014GCの全用量(一定用量)
・乳児のため、約14.8×1012~約3.72×1014GCの全用量(一定用量)
・成人のため、約5.18×1013~約13.02×1014GCの全用量(一定用量)
従って、用量は、以下の通りであり得る:
・乳児のため、8.8×1013~2.66×1014GCの全用量(一定用量)
・成人のため、3.21×1014~9.34×1014GCの全用量(一定用量)
・乳児のため、14.8×1012~3.72×1014GCの全用量(一定用量)
・成人のため、5.18×1013~13.02×1014GCの全用量(一定用量)
他の使用の用量は、以下の通りである:
・3~9か月齢:約1.20×1014~約3.8×1014GC;または約2.2×1014~約5.58×1014GCの全用量(一定用量);
・9~36か月齢:約2.0×1014~約6.6×1014GC;または約3.7×1013~約9.3×1014GCの全用量(一定用量);
・3~12歳:約2.4×1014~約7.92×1014GC;または約4.4×1013~約1.116×1015GCの全用量(一定用量);
・12歳超:約2.8×1014~約9.24×1014GC;または約5.18×1013GC~約1.302×1015GCの全用量(一定用量)。
従って、他の使用の用量は、以下の通りである:
・3~9か月齢:1.20×1014~3.8×1014GC;または2.2×1014~5.58×1014GCの全用量(一定用量);
・9~36か月齢:2.0×1014~6.6×1014GC;または3.7×1013~約9.3×1014GCの全用量(一定用量);
・3~12歳:2.4×1014~7.92×1014GC;または4.4×1013~1.116×1015GCの全用量(一定用量);
・12歳超:2.8×1014~9.24×1014GC;または5.18×1013GC~1.302×1015GCの全用量(一定用量)。
もう一つの態様において、新生児のための用量は、
・約8.8×1013~約2.64×1014(一定用量);または
・約1.48×1013~約3.72×1014GCの全(一定用量)
である。
従って、新生児のための用量は、以下の通りであり得る:
・8.8×1013~2.64×1014(一定用量);または
・1.48×1013~3.72×1014GCの全(一定用量)。
他の態様において、用量は減少し、最初の用量の1/2が利用される。従って、用量は、以下の通りであり得る:
・乳児のため、約2.2×1013~約6.65×1013GCの全用量(一定用量)
・成人のため、約7.8×1013~約2.335×1014GCの全用量(一定用量)
・乳児のため、約3.7×1012~約9.3×1013GCの全用量(一定用量)
・成人のため、約1.295×1013~約3.225×1014GCの全用量(一定用量)
従って、用量は、以下の通りであり得る:
・乳児のため、2.2×1013~6.65×1013GCの全用量(一定用量)
・成人のため、7.8×1013~2.335×1014GCの全用量(一定用量)
・乳児のため、3.7×1012~9.3×1013GCの全用量(一定用量)
・成人のため、1.295×1013~3.225×1014GCの全用量(一定用量)
他の使用の用量は:以下の通りである:
・3~9か月齢:約3.0×1013~約9.5×1013GC;または約5.5×1013~約1.395×1014GCの全用量(一定用量);
・9~36か月齢:約5×1013~約1.65×1014GC;または約9.25×1012~約2.325×1014GCの全用量(一定用量);
・3~12歳:約6×1013~約1.98×1014GC;または約1.1×1013~約2.79×1014GCの全用量(一定用量);
・12歳超:約7×1013~約2.31×1014GC;または約1.295×1013GC~約3.225×1014GCの全用量(一定用量)。
従って、他の使用の用量は、以下の通りである:
・3~9か月齢:3.0×1013~9.5×1013GC;または5.5×1013~1.395×1014GCの全用量(一定用量);
・9~36か月齢:5×1013~1.65×1014GC;または9.25×1012~2.325×1014GCの全用量(一定用量);
・3~12歳:6×1013~1.98×1014GC;または1.1×1013~2.79×1014GCの全用量(一定用量);
・12歳超:7×1013~2.31×1014GC;または1.295×1013GC~3.225×1014GCの全用量(一定用量)。
もう一つの態様において、新生児のための用量は、
・約2.2×1013~約6.6×1013(一定用量);または
・約3.7×1012~約9.3×1013GCの全(一定用量)
である。
従って、新生児のための用量は、以下の通りであり得る:
・2.2×1013~6.6×1013(一定用量);または
・3.7×1012~9.3×1013GCの全(一定用量)。
用量に関して、上に示されたように、「約」とは、5%以内である。ゲノム含量「GC」は、ウイルスゲノム「vg」と等しいことに注意すること。当業者は、GCを容易に決定することができる。例えば、GCは、当技術分野において公知の方法を使用して、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)によって決定され得る。
用語
アデノ随伴ウイルス(AAV):AAVは、ヒトおよびいくつかのその他の霊長類種に感染する小さいウイルスである。AAVは、現在、疾患を引き起こすことは知られておらず、ウイルスは極めて軽度の免疫応答を引き起こす。AAVは、分裂細胞および非分裂細胞の両方に感染することができ、そのゲノムを宿主細胞のものに組み込むことができる。AAVゲノムは、約4.7キロ塩基長であるプラス鎖またはマイナス鎖のいずれかの一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)から構築されている。ゲノムは、DNA鎖の両端に末端逆位配列(ITR)を含み、2個のオープンリーディングフレーム(ORF):repおよびcapを含む。Repは、AAVの生活環に必要とされるRepタンパク質をコードする4種の重複する遺伝子から構成され、Capは、正二十面体対称のカプシドを形成するために共に相互作用するカプシドタンパク質:VP1、VP2、およびVP3の重複するヌクレオチド配列を含有している。遺伝子治療のため、ITRは、治療用遺伝子の隣にシスで必要とされる唯一の配列であるようであり:構造(cap)遺伝子およびパッケージング(rep)遺伝子は、トランスで送達され得る。現在、AAVの11の血清型(AAV1~11)が認識されている。
投与:有効な経路によって対象に剤を提供するかまたは与えること。例示的な投与経路には、経口、(皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、静脈内、および腫瘍内のような)注射、舌下、直腸、経皮、鼻腔内、膣、および吸入の経路が含まれるが、これらに限定されるわけではない。いくつかの態様において、投与は、脳室内(ICV)またはくも膜下腔内(大槽もしくは腰椎)の経路を介したCSFへの注射による。
剤:関心対象の任意のポリペプチド、化合物、低分子、有機化合物、塩、ポリヌクレオチド、またはその他の分子。剤には、治療剤、診断剤、または薬剤が含まれ得る。治療剤とは、疾患もしくは生理学的障害に関連した症状の軽減、または疾患の進行もしくは発症の遅延(防止を含む)のような、健康の回復または維持によって、何らかの治療効果を示す物質である。
動物:生存している多細胞脊椎動物であり、このカテゴリーには、例えば、哺乳動物およびトリが含まれる。哺乳動物という用語には、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方が含まれる。同様に、「対象」という用語には、ヒト対象および獣医学的対象の両方が含まれる。「乳児」とは、1歳未満のヒト対象である。成人対象は、18歳を超える者である。対象は、3~9か月齢、9~36か月齢、3歳未満、3~12歳、または12歳超であってもよい。
抗原:動物へ注射または吸収される組成物を含む、動物において抗体応答またはT細胞応答の生成のような免疫応答を刺激することができる化合物、組成物、または物質。抗原は、異種免疫原によって誘導されたものを含む、特異的な体液性免疫または細胞性免疫の生成物と反応する。「抗原」という用語には、全ての関連する抗原性エピトープが含まれる。
保存的置換:ポリペプチドの生物学的または生化学的機能の変化または喪失をもたらさない、1個または複数個のアミノ酸の、類似の生化学的特性を有するアミノ酸との置換を含むポリペプチドの修飾は、「保存的」置換と呼ばれる。これらの保存的置換は、得られるタンパク質の活性に対して最小の影響を及ぼす可能性が高い。表1は、タンパク質内の最初のアミノ酸と置換され得、保存的置換と見なされるアミノ酸を示す。
(表)
Figure 2022101648000001
タンパク質の生化学的機能を変化させることなく、1個もしくは複数個の保存的変化、または10個までの保存的変化(例えば、2個のアミノ酸の置換、3個のアミノ酸の置換、4個のアミノ酸の置換、もしくは5個のアミノ酸の置換等)をポリペプチドにおいて作成することができる。
発現制御配列:機能的に連結された異種核酸配列の発現を調節する核酸配列。発現制御配列が、核酸配列の転写を制御および調節し、適宜、翻訳も制御および調節する場合、その発現制御配列は、その核酸配列に機能的に連結されている。従って、発現制御配列には、適切なプロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、タンパク質をコードする遺伝子の前の開始コドン(即ち、ATG)、イントロンのスプライシングシグナル、mRNAの適切な翻訳を可能にするためのその遺伝子の正しいリーディングフレームの維持、および終止コドンが含まれ得る。「制御配列」という用語には、少なくとも、その存在が発現に影響を及ぼすことができる成分が含まれるものとし、その存在が有利である付加的な成分、例えば、リーダー配列および融合パートナー配列も含まれ得る。発現制御配列には、プロモーターが含まれ得る。発現制御配列は、治療用タンパク質をコードする核酸分子に機能的に連結され、AAVベクターに含まれていてよい。
異種:異種配列とは、通常(野生型配列において)第2の配列に隣接して見出されない配列である。一つの態様において、配列は、第2の配列とは異なるウイルスまたは生物のような遺伝子起源に由来する。
宿主細胞:ベクターが繁殖することができ、そのDNAが発現され得る細胞。細胞は、原核細胞または真核細胞であり得る。この用語には、当該宿主細胞の子孫も含まれる。複製中に変異が起こり得るため、全ての子孫が親細胞と同一であるとは限らないことが理解される。しかしながら、そのような子孫は、「宿主細胞」という用語が使用される場合に含まれる。
免疫応答:刺激に対するB細胞またはT細胞のような免疫系の細胞の応答。一つの態様において、応答は、特定の抗原に対して特異的である(「抗原特異的応答」)。
免疫抑制剤:炎症反応のような免疫応答を減少させることができる化学的化合物、低分子、ステロイド、核酸分子、またはその他の生物学的剤のような分子。免疫抑制剤の具体的な非限定的な例は、非ステロイド性抗炎症剤、シクロスポリンA、FK506、および抗CD4である。免疫抑制治療には、プレドニゾロン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、およびシロリムスまたはタクロリムスが含まれ得る。付加的な例において、剤は、KINERET(登録商標)(アナキンラ)、ENBREL(登録商標)(エタネルセプト)、もしくはREMICADE(登録商標)(インフリキシマブ)のような生物学的応答修飾剤、ARAVA(登録商標)(レフルノミド)のような疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、CELEBREX(登録商標)(セレコキシブ)およびVIOXX(登録商標)(ロフェコキシブ)のようなシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤のような非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、またはHYALGAN(登録商標)(ヒアルロン酸)およびSYNVISC(登録商標)(ハイランG-F20)のようなその他の生成物である。いくつかの態様において、免疫抑制剤は血液脳関門を通過する。
単離された:「単離された」(核酸、ペプチド、またはタンパク質のような)生物学的成分は、その成分が天然に存在する生物の細胞内の他の生物学的成分、即ち、他の染色体および染色体外のDNAおよびRNAならびにタンパク質から実質的に分離されているか、それらとは別に作製されているか、またはそれらから精製されている。従って、「単離された」核酸、ペプチド、およびタンパク質には、標準的な精製方法によって精製された核酸およびタンパク質が含まれる。この用語には、宿主細胞における組換え発現によって調製された核酸、ペプチド、およびタンパク質、ならびに化学合成された核酸も包含される。単離された細胞型は、器官に存在する異なる細胞型のような他の細胞型から実質的に分離されている。精製された細胞または成分は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%純粋であり得る。
標識:その分子の検出を容易にするため、抗体またはタンパク質のようなもう一つの分子に直接的または間接的にコンジュゲートされる検出可能な化合物または組成物。標識の具体的な非限定的な例には、蛍光タグ、酵素結合、および放射性同位体が含まれる。
リソソーム蓄積症/障害:リソソーム蓄積症/障害は、リソソーム加水分解酵素の部分的または完全な欠損を含む疾患の型である。この欠損は、加水分解酵素に特異的な基質の不完全なリソソーム消化をもたらす。経時的に、未消化の基質の蓄積は、進行性かつ重度の神経変性および筋肉変性を含む様々な異常をもたらし得る(Settembre et al., Human Mol.Genet., 17:119-129,2008;Fukuda et al., Curr.Neurol.Neurosci.Rep., 7:71-77,2007を参照すること)。リソソーム蓄積障害という語句は、リソソーム蓄積症と同義である。
リソソーム蓄積障害には、GM2ガングリオシドーシス、αマンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿症、コレステリルエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損、シスチン症、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病、GM1ガングリオシドーシス、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児性遊離シアル酸蓄積症/ISSD、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損、クラッベ病、異染性白質ジストロフィー、ムコ多糖症(偽性ハーラー・ポリジストロフィー/ムコリピドーシスIIIA、MPSIハーラー症候群、MPSIシャイエ症候群、MPS Iハーラー・シャイエ症候群、MPS IIハンター症候群、サンフィリポ症候群、モルキオA型/MPS IVA、モルキオB型/MPS IVB、MPS IXヒアルロニダーゼ欠損、MPS VIマロテウス・ラミー、MPS VIIスライ症候群、ムコリピドーシスI/シアリドーシス、ムコリピドーシスIIIC、ムコリピドーシスIV型)、多種スルファターゼ欠損、ニーマン・ピック病、神経セロイドリポフスチン症(CLN6疾患、バッテン・シュピールマイアー・フォークト/若年性NCL/CLN3病、フィンランドバリアント後期乳児性CLN5、ヤンスキー・ビールショースキー病/後期乳児性CLN2/TPP1病、クッフス/成人発症NCL/CLN4病、北部てんかん(Northern Epilepsy)/バリアント後期乳児性CLN8、サンタブオリ・ハルチア(Santavuori-Haltia)/乳児性CLN1/PPT病、βマンノシドーシス)、ポンペ病/グリコーゲン蓄積症II型、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、サラ病/シアル酸蓄積症、テイ・サックス/GM2ガングリオシドーシス、およびウォルマン病が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
非リソソーム蓄積障害:本明細書に開示された方法を使用して処置され得る非リソソーム蓄積障害には、脊髄性筋萎縮症(SMA)1型、II型、III型、IV型(SMN1遺伝子、UBA1遺伝子、DYNC1H1遺伝子、VAPB遺伝子)、X連鎖筋細管ミオパチー(MTM1遺伝子)、カテコールアミン誘発性多形性脳室性頻拍(CASQ2遺伝子)、色覚異常(CNGB3遺伝子、CNGA3遺伝子、GNAT2遺伝子、PDE6C遺伝子)、全脈絡膜萎縮(CHM遺伝子)、フリートライヒ運動失調症CNS(FXN遺伝子)、全身性フリートライヒ運動失調症(FXN遺伝子)、副腎白質ジストロフィー(ABCD1遺伝子)、アルツハイマー病(APP遺伝子、PPARγ遺伝子)、筋萎縮性側索硬化症(SOD1遺伝子)、アンジェルマン症候群(UBE3A遺伝子)、毛細血管拡張性失調症(ATM遺伝子)、シャルコー・マリー・トゥース症候群(PMP22遺伝子)、コケイン症候群(ERCC6遺伝子、ERCC8遺伝子)、聴覚消失(GJB2遺伝子)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD遺伝子)、てんかん(SCN1A遺伝子)、脆弱X症候群(FMR1遺伝子)、ハンチントン病(HTT遺伝子)、レッシュ・ナイハン症候群(HGPRT遺伝子)、メープルシロップ尿症(BCKDHA遺伝子、BCKDHB遺伝子、DBT遺伝子)、メンケス症候群(ATP7A遺伝子)、筋緊張性ジストロフィー(DMPK)、ナルコレプシー(HLA遺伝子)、神経線維腫症(NF1遺伝子)、パーキンソン病(LRRK2遺伝子、PARK2遺伝子、PARK7遺伝子、PINK1遺伝子、SNCA遺伝子)、フェニルケトン尿症(PAH遺伝子)、プラダー・ウィリー症候群、レフサム病(PEX7遺伝子)、レット症候群(MECP2遺伝子)、脊髄小脳失調症(SCA1遺伝子)、タンジール病(ABCA1遺伝子)、結節硬化症(TSC1遺伝子、TSC2遺伝子)、フォンヒッペル・リンダウ症候群(VHL遺伝子)、ウィリアムズ症候群(CLIP2遺伝子、ELN遺伝子、GTF2I遺伝子、GTF2IRD1遺伝子、LIMK1遺伝子)、ウィルソン病(ATP7B遺伝子)、またはツェルウェーガー症候群(PEX1遺伝子)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
哺乳動物:この用語には、ヒトおよび非ヒト哺乳動物の両方が含まれる。同様に、「対象」という用語には、ヒト対象および獣医学的対象の両方が含まれる。
核酸:ホスホジエステル結合を介して連結されたヌクレオチド単位(リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、関連する天然に存在する構造的バリアント、および合成の天然に存在しないそれらの類似体)から構成されたポリマー、それらの関連する天然に存在する構造的バリアントおよび合成の天然に存在しない類似体。従って、この用語には、ヌクレオチドおよびそれらの間の結合が、例えば、非限定的に、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)等のような天然に存在しない合成類似体を含むヌクレオチドポリマーが含まれる。そのようなポリヌクレオチドは、例えば、自動DNA合成装置を使用して合成され得る。「オリゴヌクレオチド」という用語は、典型的には、一般に、約50ヌクレオチド以下である短いポリヌクレオチドをさす。ヌクレオチド配列がDNA配列(即ち、A、T、G、C)によって表される場合、これには、「T」が「U」に置換されたRNA配列(即ち、A、U、G、C)も含まれることが理解されるであろう。
ヌクレオチド配列を記載するため、従来の表記が本明細書において使用される:一本鎖ヌクレオチド配列の左側の末端が5'末端であり;二本鎖ヌクレオチド配列の左方が5'方向と呼ばれる。新生RNA転写物へのヌクレオチドの5'から3'への付加の方向は、転写方向と呼ばれる。mRNAと同一の配列を有するDNA鎖は、「コード鎖」と呼ばれ;そのDNAから転写されたmRNAと同一の配列を有し、RNA転写物の5'末端の5'側に位置するDNA鎖上の配列は、「上流配列」と呼ばれ;RNAと同一の配列を有し、コードRNA転写物の3'末端の3'側にあるDNA鎖上の配列は、「下流配列」と呼ばれる。
「cDNA」とは、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態の、mRNAに相補的または同一であるDNAをさす。
「コードする」とは、定義されたヌクレオチド配列(即ち、rRNA、tRNA、およびmRNA)または定義されたアミノ酸配列のいずれか、ならびにそれらに起因する生物学的特性を有する、生物学的過程の他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として役立つ、遺伝子、cDNA、またはmRNAのようなポリヌクレオチドの特定のヌクレオチド配列の固有の特性をさす。従って、遺伝子によって産生されたmRNAの転写および翻訳が、細胞またはその他の生物学的系においてタンパク質を産生する場合、その遺伝子はそのタンパク質をコードする。遺伝子またはcDNAの、ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常、配列表に提供されるコード配列、および転写の鋳型として使用される非コード鎖の両方が、その遺伝子またはcDNAのタンパク質またはその他の産物をコードしていると呼ばれ得る。他に特記されない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、相互の縮重バージョンであり、同一のアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質およびRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンを含み得る。
「組換え核酸」とは、天然には共に接合されていないヌクレオチド配列を有する核酸をさす。これには、適当な宿主細胞を形質転換するために使用され得る、増幅された核酸または組み立てられた核酸を含む核酸ベクターが含まれる。組換え核酸を含む宿主細胞は、「組換え宿主細胞」と呼ばれる。次いで、遺伝子は、「組換えポリペプチド」等を産生するよう組換え宿主細胞において発現される。組換え核酸は、(プロモーター、複製起点、リボソーム結合部位等のような)非コード機能も果たすことができる。
第1の配列を有するポリヌクレオチドが、第2の配列を有するポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする場合、その第1の配列は、その第2の配列に対して「アンチセンス」である。
2種以上のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の配列関係を記載するために使用される用語には、「参照配列」、「より選択される」、「比較ウィンドウ」、「同一」、「配列同一性のパーセンテージ」、「実質的に同一」、「相補的」、および「実質的に相補的」が含まれる。
核酸配列の配列比較のため、典型的には、一つの配列が、試験配列が比較される参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列がコンピュータに入力され、必要に応じて部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。デフォルトのプログラムパラメータが使用される。比較のための配列のアライメントの方法は、当技術分野において周知である。比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482,1981のローカルホモロジーアルゴリズム、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443,1970のホモロジーアライメントアルゴリズム、Pearson & Lipman,Proc.Nat'l.Acad.Sci.USA 85:2444,1998の類似性検索(search for similarity)法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software PackageのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA、Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI)、または手動アライメントおよび視覚的検査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al., eds 1995 supplement)を参照すること)によって実施され得る。
有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、Feng & Doolittle,J.Mol.Evol.35:351-360,1987のプログレッシブアライメント法の単純化を使用する。使用される方法は、Higgins & Sharp,CABIOS 5:151-153,1989によって記載された方法に類似している。PILEUPを使用して、参照配列は、以下のパラメータを使用して、配列同一性(%)関係を決定するため、他の試験配列と比較される:デフォルトギャップウェイト(3.00)、デフォルトギャップレングスウェイト(0.10)、および加重エンドギャップ。PILEUPは、バージョン7.0のようなGCG配列分析ソフトウェアパッケージから入手され得る(Devereaux et al., Nuc.Acids Res. 12:387-395, 1984)。
配列同一性(%)および配列類似性を決定するために適当なアルゴリズムのもう一つの例は、Altschul et al., J.Mol.Biol. 215:403-410,1990およびAltschul et al., Nucleic Acids Res. 25:3389-3402, 1977に記載されているBLASTアルゴリズムおよびBLAST 2.0アルゴリズムである。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して公に入手可能である。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、11のワードレングス(W)、50のアライメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、および両方の鎖の比較をデフォルトとして使用する。BLASTPプログラム(アミノ酸配列用)は、3のワードレングス(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスをデフォルトとして使用する(Henikoff & Henikoff, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915, 1989を参照すること)。
機能的に連結された:第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係に置かれている場合、その第1の核酸配列は、その第2の核酸配列と機能的に連結されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響する場合、そのプロモーターは、そのコード配列に機能的に連結されている。一般に、機能的に連結されたDNA配列は、連続しており、2個のタンパク質コード領域を接合する必要がある場合、同一のリーディングフレーム内にある。
ORF(オープンリーディングフレーム):終止コドンを含まないアミノ酸をコードするヌクレオチドトリプレット(コドン)の系列。これらの配列は、一般的に、ペプチドに翻訳可能である。
薬学的に許容される担体:本発明において有用な薬学的に許容される担体は、従来のものである。E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,PA,15th Edition(1975)によるRemington's Pharmaceutical Sciencesは、本明細書に開示されるAAVベクターの薬学的送達のために適当な組成物および製剤を記載している。
一般に、担体の性質は、利用される特定の投与様式に依るであろう。例えば、非経口製剤は、一般的に、水、生理食塩水、平衡塩溶液、水性デキストロース、グリセロール等のような薬学的にかつ生理学的に許容される液体を媒体として含む注射可能液を含む。固体組成物(例えば、粉末、丸剤、錠剤、またはカプセルの形態)のための従来の非毒性固体担体には、例えば、薬学的等級のマンニトール、乳糖、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムが含まれ得る。生物学的に中性の担体に加えて、投与される薬学的組成物は、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤等、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートのような少量の非毒性補助物質を含有していてよい。
薬剤:対象または細胞へ適切に投与された場合に所望の治療効果または予防効果を誘導することができる化学的化合物または組成物。「インキュベートすること」には、薬物が細胞と相互作用するために十分な時間が含まれる。「接触させること」には、固体または液体の形態の薬物を細胞と共にインキュベートすることが含まれる。
ポリペプチド:モノマーがアミド結合を介して共に接合されたアミノ酸残基であるポリマー。アミノ酸がαアミノ酸である場合、L-光学異性体またはD-光学異性体のいずれかが使用され得るが、L-異性体が好ましい。「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語には、本明細書において使用されるように、任意のアミノ酸配列が包含され、糖タンパク質のような修飾された配列が含まれるものとする。「ポリペプチド」という用語には、具体的には、天然に存在するタンパク質が包含され、組換えまたは合成によって作製されたものも包含されるものとする。
「ポリペプチド断片」という用語は、少なくとも1個の有用なエピトープを示すポリペプチドの一部分をさす。「ポリペプチドの機能性断片」という用語は、ポリペプチドの活性を保持しているポリペプチドの全ての断片をさす。生物学的に機能性の断片は、例えば、抗体分子に結合することができるエピトープのように小さいポリペプチド断片から、細胞内で表現型変化の特徴的誘導またはプログラミングに関与することができる大きいポリペプチドまで、様々なサイズであり得る。「エピトープ」とは、抗原との接触に応答して生成される免疫グロブリンに結合することができるポリペプチドの領域である。従って、インスリンの生物学的活性を含有しているより小さいペプチド、またはインスリンの保存的バリアントは、有用であるものとして含まれる。
「可溶性」という用語は、細胞膜に挿入されていないポリペプチドの形態をさす。
「実質的に精製されたポリペプチド」という用語は、本明細書において使用されるように、天然に会合している他のタンパク質、脂質、炭水化物、またはその他の材料を実質的に含まないポリペプチドをさす。一つの態様において、ポリペプチドは、天然に会合している他のタンパク質、脂質、炭水化物、またはその他の材料を、少なくとも50%、例えば、少なくとも80%含まない。もう一つの態様において、ポリペプチドは、天然に会合している他のタンパク質、脂質、炭水化物、またはその他の材料を、少なくとも90%含まない。さらにもう一つの態様において、ポリペプチドは、天然に会合している他のタンパク質、脂質、炭水化物、またはその他の材料を、少なくとも95%含まない。
保存的置換とは、あるアミノ酸を、サイズ、疎水性等が類似しているもう一つのアミノ酸と交換することである。アミノ酸変化をもたらすcDNA配列の変動は、保存的であるか否かに関わらず、コードされたタンパク質の機能的同一性および免疫学的同一性を保存するために最小化されるべきである。タンパク質の免疫学的同一性は、それが抗体によって認識されるか否かを決定することによって査定され得る;そのような抗体によって認識されるバリアントは、免疫学的に保存されている。cDNA配列バリアントは、好ましくは、20個以下、好ましくは、10個未満のアミノ酸置換を、コードされたポリペプチドに導入するであろう。バリアントアミノ酸配列は、例えば、ネイティブアミノ酸配列と80%、90%、またはさらには95%もしくは98%同一であり得る。
ポリヌクレオチド:任意の長さの(直鎖配列のような)核酸配列。従って、ポリヌクレオチドには、オリゴヌクレオチドが含まれ、染色体に見出される遺伝子配列も含まれる。「オリゴヌクレオチド」とは、ネイティブのホスホジエステル結合によって接合された、複数の接合されたヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドは、6~300ヌクレオチド長のポリヌクレオチドである。オリゴヌクレオチド類似体とは、オリゴヌクレオチドと類似の機能を有するが、天然に存在しない部分を有するモエティをさす。例えば、オリゴヌクレオチド類似体は、ホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドのような、変更された糖モエティまたは糖間結合のような天然に存在しない部分を含有していてよい。天然に存在するポリヌクレオチドの機能的類似体は、RNAまたはDNAに結合することができ、ペプチド核酸(PNA)分子を含む。
疾患の防止、処置、または寛解:疾患の「防止」とは、疾患の完全な発症の阻害をさす。「処置」とは、発症開始後の疾患または病理学的状態の徴候または症状を寛解させる治療的介入をさす。「寛解」とは、疾患の徴候または症状の数または重症度の低下をさす。
プロモーター:プロモーターとは、核酸の転写を指図する核酸制御配列のアレイである。プロモーターは、ポリメラーゼII型プロモーターの場合のTATA要素のような、転写開始部位の近くに必要な核酸配列を含む。プロモーターには、任意で、転写の開始部位から数千塩基対も離れて位置していてよい遠位のエンハンサー要素またはリプレッサー要素も含まれる。プロモーター依存性遺伝子発現を、細胞型特異的、組織特異的に制御可能にするため、または外的なシグナルもしくは剤によって誘導可能にするために十分なプロモーター要素も含まれる;そのような要素は、遺伝子の5'領域または3'領域に位置し得る。構成性プロモーターおよび誘導可能プロモーターの両方が含まれる(例えば、Bitter et al., Methods in Enzymology 153:516-544, 1987を参照すること)。
精製された:「精製された」という用語は、絶対的な純度を必要とせず;むしろ、相対的な用語であるものとする。従って、例えば、精製されたペプチド、タンパク質、ウイルス、またはその他の活性化合物は、天然に会合しているタンパク質およびその他の汚染物質から完全にまたは部分的に単離されたものである。ある種の態様において、「実質的に精製された」という用語は、細胞、細胞培養培地、またはその他の粗調製物から単離され、タンパク質、細胞片、およびその他の成分のような一次調製物の様々な成分を除去するため、分画に供されたペプチド、タンパク質、ウイルス、またはその他の活性化合物をさす。
組換え:組換え核酸とは、天然に存在しない配列を有するか、または、そうでなければ分離されている2個の配列セグメントの人工的な組み合わせによって作製される配列を有するものである。この人工的な組み合わせは、しばしば、化学合成、またはより一般的には、遺伝子改変技術のような核酸の単離されたセグメントの人工的な操作によって達成される。同様に、組換えタンパク質とは、組換え核酸分子によってコードされるものである。さらに、組換えウイルスとは、天然に存在しないか、または異なる起源の少なくとも2個の配列の人工的な組み合わせによって作製される(ゲノム配列のような)配列を含むウイルスである。「組換え」という用語には、天然の核酸分子、タンパク質、またはウイルスの一部分の付加、置換、または欠失によってのみ変更された核酸、タンパク質、およびウイルスも含まれる。本明細書において使用されるように、「組換えAAV」とは、(治療用タンパク質をコードする組換え核酸分子のような)組換え核酸分子がパッケージングされたAAV粒子をさす。
選択可能マーカー:細胞傷害性剤もしくは細胞分裂阻害剤に対する耐性(例えば、抗生物質耐性)、原栄養性、またはタンパク質を発現する細胞と発現しない細胞とを区別するための基礎として使用され得る特定のタンパク質の発現のような、選択可能な表現型を細胞に付与する遺伝子、RNA、またはタンパク質。蛍光性もしくは発光性のタンパク質、または基質に作用して有色、蛍光性、もしくは発光性の物質を生じる酵素のような、発現が容易に検出され得るタンパク質(「検出可能マーカー」)は、選択可能マーカーのサブセットを構成する。多能性細胞において選択的または排他的に通常発現される遺伝子にネイティブの発現制御要素に連結された選択可能マーカーの存在は、関心対象の特定の細胞を同定し選択することを可能にする。ネオマイシン耐性遺伝子(neo)、ピューロマイシン耐性遺伝子(puro)、グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(gpt)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、アデノシンデアミナーゼ(ada)、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ(PAC)、ハイグロマイシン耐性遺伝子(hyg)、多剤耐性遺伝子(mdr)、チミジンキナーゼ(TK)、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、およびhisD遺伝子のような多様な選択可能マーカー遺伝子が使用され得る。検出可能マーカーには、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質、サファイア蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、橙色蛍光タンパク質、およびシアン蛍光タンパク質、ならびにこれらのいずれかのバリアントが含まれる。ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼまたはウミシイタケルシフェラーゼ)のような発光タンパク質も、有用である。「選択可能マーカー」という用語は、本明細書において使用されるように、遺伝子または遺伝子の発現産物、例えば、コードされたタンパク質をさすことができる。
アミノ酸配列の配列同一性:アミノ酸配列間の類似性は、配列同一性とも呼ばれる配列間の類似性によって表される。配列同一性は、同一性(または類似性もしくは相同性)のパーセンテージによって測定されることが多く;パーセンテージが高いほど、二つの配列はより類似している。ポリペプチドの相同体またはバリアントは、標準的な方法を使用して整列化された場合、比較的高度の配列同一性を保有するであろう。
比較のための配列のアライメントの方法は、当技術分野において周知である。様々なプログラムおよびアライメントアルゴリズムが、Smith and Waterman, Adv.Appl.Math. 2:482, 1981;Needleman and Wunsch, J.Mol.Biol. 48:443, 1970;Pearson and Lipman, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 85:2444, 1988;Higgins and Sharp, Gene 73:237, 1988;Higgins and Sharp, CABIOS 5:151, 1989;Corpet et al., Nucleic Acids Research 16:10881, 1988;およびPearson and Lipman, Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 85:2444, 1988に記載されている。Altschul et al., Nature Genet. 6:119, 1994は、配列アライメント法および相同性計算の詳細な考察を提示している。
NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al., J.Mol.Biol. 215:403, 1990)は、配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn、およびtblastxと関連させて使用するため、National Center for Biotechnology Information(NCBI,Bethesda,MD)を含むいくつかの供給元から、またはインターネット上で入手可能である。このプログラムを使用して配列同一性を決定する方法の説明は、インターネット上のNCBIウェブサイトで入手可能である。
タンパク質の相同体およびバリアントは、典型的には、デフォルトパラメータに設定されたNCBI Blast 2.0、ギャップ(gapped)blastpを使用して、抗体のアミノ酸配列との全長アライメントにおいて計数された、少なくとも約75%、例えば、少なくとも約80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を保有していることを特徴とする。約30アミノ酸を超えるアミノ酸配列の比較のため、デフォルトパラメータに設定されたBLOSUM62マトリックスを使用して、Blast 2 sequences機能が利用される(ギャップ存在コスト11、1残基当たりのギャップコスト1)。短いペプチド(約30アミノ酸未満)を整列化する場合には、デフォルトパラメータ(オープンギャップペナルティ9、エクステンションギャップペナルティ1)に設定されたPAM30マトリックスを利用して、Blast2 sequences機能を使用して、アライメントが実施されるべきである。参照配列とのさらに大きい類似性を有するタンパク質は、この方法によって査定された場合、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性のような増加する同一性のパーセンテージを示すであろう。全長未満の配列が配列同一性について比較される場合、相同体およびバリアントは、典型的には、10~20アミノ酸の短いウインドウにおいて少なくとも80%の配列同一性を保有し、参照配列との類似性に依って、少なくとも85%または少なくとも90%もしくは95%の同一性を保有していてもよい。そのような短いウィンドウにおいて配列同一性を決定する方法は、インターネット上のNCBIウェブサイトで入手可能である。当業者は、これらの配列同一性の範囲が案内のために提供されているに過ぎないことを理解するであろう;提供された範囲に含まれない強力に有意な相同体が入手されることも可能である。
対象:特定の処置を受容するヒト、非ヒト霊長類、ブタ、ヒツジ、ウシ、齧歯類等のような哺乳動物。二つの非限定的な例において、対象は、ヒト対象またはマウス対象である。
治療剤:包括的な意味で使用され、処置剤、予防剤、および補充剤を含む。治療剤は、治療用タンパク質であり得る。治療剤、例えば、治療用タンパク質は、疾患を防止し、処置し、かつ/または寛解させるため、対象へ送達され得る。疾患は、リソソーム蓄積障害または非リソソーム蓄積障害のような中枢神経系の疾患であり得る。
治療的有効量:剤によって処置されている対象または細胞において、インスリン産生の増加のような所望の効果を達成するために十分な、特定の薬剤または治療剤(例えば、組換えAAV)の量。剤の有効量は、処置されている対象または細胞および治療用組成物の投与の様式を含むが、これらに限定されるわけではない、いくつかの因子に依存するであろう。
形質導入されたおよび形質転換された:ウイルスまたはベクターが、核酸を細胞へ移入する場合、そのウイルスまたはベクターは、その細胞に「形質導入する」。核酸の細胞ゲノムへの組み込み、またはエピソーム複製のいずれかによって、DNAが細胞によって安定的に複製される場合、その細胞は、細胞に形質導入された核酸によって「形質転換されている」または「トランスフェクトされている」。
化学的方法(例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション)、物理的方法(例えば、電気穿孔、微量注入、微粒子銃)、融合(例えば、リポソーム)、受容体によって媒介されるエンドサイトーシス(例えば、DNA-タンパク質複合体、ウイルスエンベロープ/カプシド-DNA複合体)、および組換えウイルスのようなウイルスによる生物学的感染のような多くのトランスフェクションの方法が、当業者に公知である(Wolff, J.A. ed, Gene Therapeutics, Birkhauser, Boston, USA(1994))。レトロウイルスによる感染の場合には、感染性レトロウイルス粒子が標的細胞に吸収され、レトロウイルスRNAゲノムの逆転写および得られたプロウイルスの細胞DNAへの組み込みをもたらす。膵内分泌細胞への遺伝子の導入の方法は、公知である(例えば、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,110,743号を参照すること)。これらの方法は、本明細書に記載された方法によって作製された膵内分泌細胞または本明細書に記載された方法によって作製された人工島に形質導入するために使用され得る。
標的細胞の遺伝学的修飾は、成功したトランスフェクションの証拠である。「遺伝学的に修飾された細胞」とは、トランスフェクションによる外来性ヌクレオチド配列の細胞取り込みの結果として遺伝子型が変更された細胞をさす。トランスフェクトされた細胞または遺伝学的に修飾された細胞への言及は、ベクターまたはポリヌクレオチドが導入されている特定の細胞およびその細胞の子孫の両方を含む。
トランスジーン:ベクターによって供給される外来性遺伝子。
ベクター:宿主細胞へ導入され、それによって、形質転換宿主細胞を生じる核酸分子。ベクターは、複製起点のような、宿主細胞における複製を可能にする核酸配列を含み得る。ベクターは、1種または複数種の治療用遺伝子および/または選択可能マーカー遺伝子ならびに当技術分野において公知のその他の遺伝要素も含んでいてよい。ベクターは、細胞に形質導入するか、細胞を形質転換するか、または細胞に感染し、それによって、細胞にネイティブのもの以外の核酸および/またはタンパク質の細胞による発現を引き起こすことができる。ベクターは、任意で、ウイルス粒子、リポソーム、タンパク質コーティング等のような、核酸の細胞への侵入の達成を助ける材料を含む。本明細書中のいくつかの態様において、ベクターはAAVベクターである。
他に説明されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同一の意味を有する。単数形の用語「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、文脈がそうでないことを明白に示さない限り、複数の指示対象を含む。「AまたはBを含む」とは、A、またはB、またはAおよびBを含むことを意味する。さらに、核酸またはポリペプチドについて与えられた全ての塩基サイズまたはアミノ酸サイズ、および全ての分子量または分子量値は、近似であり、説明のために提供される。本明細書に記載されたものと類似または等価の方法および材料を、本開示の実施または試行において使用することができるが、適当な方法および材料が以下に記載される。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参照は、その全体が参照によって組み入れられる。矛盾する場合には、用語の説明を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法、および例は、例示的なものに過ぎず、限定するためのものではない。
ssAAV9ベクター
ウイルスベクター、例えば、アデノウイルスベクターまたはAAVのような一つまたは複数のベクターを含む方法および組成物が、本明細書に開示される。ウイルス遺伝子を完全にまたはほぼ完全に欠く欠陥ウイルスを使用することができる。欠陥ウイルスベクターの使用は、ベクターが他の細胞に感染する懸念なしに、特定の細胞への投与を可能にする。有用なアデノウイルスベクターおよびAAVベクターには、複製能を有する型、複製欠損型、ガットレス(gutless)型が含まれる。理論に拘束されるものではないが、アデノウイルスベクターは、インビトロでの強力な発現、優れた力価、ならびにインビボで分裂細胞および非分裂細胞に形質導入する能力を示すことが公知である(Hitt et al., Adv in Virus Res 55:479-505, 2000)。インビボで使用された場合、これらのベクターは、ベクター骨格に対して誘発される免疫応答のため、強力であるが一時的な遺伝子発現をもたらす。いくつかの非限定的な例において、有用なベクターは、Stratford-Perricaudet et al.(J.Clin.Invest., 90:626-630 1992;La Salle et al., Science 259:988-990, 1993)によって記載されたベクターのような弱毒化アデノウイルスベクター;または欠陥AAVベクター(Samulski et al., J.Virol., 61:3096-3101, 1987;Samulski et al., J.Virol., 63:3822-3828, 1989;Lebkowski et al., Mol.Cell Biol., 8:3988-3996, 1988)である。
組換えAAVベクターは、標的細胞において、選択されたトランスジェニック産物の発現および産生を指図し得ることを特徴とする。従って、組換えベクターは、カプシド形成に必須のAAVの配列および標的細胞の感染のための物理的構造の全てを少なくとも含む。
AAVは、パルボウイルス(Parvoviridae)科のディペンドウイルス(Dependovirus)属に属する。AAVは、直鎖状の一本鎖DNAゲノムをパッケージングする小さい非エンベロープウイルスである。AAV DNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方が、等しい頻度でAAVカプシドにパッケージングされる。いくつかの態様において、AAV DNAは、治療用タンパク質をコードする核酸を含む。本明細書に開示される核酸分子を含む組換えアデノウイルスベクターおよび組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターのような組換えベクターが、さらに提供される。いくつかの態様において、AAVはAAV9である。
AAVゲノムは、2個のオープンリーディングフレーム(ORF)に隣接する2個の末端逆位配列(ITR)を特徴とする。AAV2ゲノムにおいて、例えば、ITRの最初の125ヌクレオチドはパリンドロームであり、塩基対合を最大化するためにそれ自体折り畳まれ、T字型ヘアピン構造を形成する。D配列と呼ばれるITRの他の20塩基は、対合しないままである。ITRは、AAV DNA複製にとって重要なシス作用性配列である;ITRは複製起点であり、DNAポリメラーゼによる第二鎖合成のためのプライマーとして役立つ。この合成において形成される二本鎖DNAは、複製型モノマーと呼ばれ、自己プライミング複製の第2ラウンドのために使用され、複製型ダイマーを形成する。これらの二本鎖中間体は、鎖置換機序を介してプロセシングされ、パッケージングのために使用される一本鎖DNAおよび転写のために使用される二本鎖DNAをもたらす。Rep結合要素および末端解離部位(TRS)がITR内に位置している。これらの特色は、二本鎖中間体をプロセシングするため、AAV複製中にウイルス調節タンパク質Repによって使用される。AAV複製における役割に加えて、ITRは、AAVゲノムのパッケージング、転写、非許容条件下での負の調節、および部位特異的組み込みにも必須である(Daya and Berns, Clin Microbiol Rev 21(4):583-593, 2008)。いくつかの態様において、これらの要素はAAVベクターに含まれる。
AAVの左ORFは、Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40という4種のタンパク質をコードするRep遺伝子を含有している。右ORFは、3種のウイルスカプシドタンパク質(VP1、VP2、およびVP3)を産生するCap遺伝子を含有している。AAVカプシドは、正二十面体対称に配置された60種のウイルスカプシドタンパク質を含有している。VP1、VP2、およびVP3は、1:1:10のモル比で存在する(Daya and Berns, Clin Microbiol Rev 21(4):583-593, 2008)。いくつかの態様において、これらの要素は、AAV9ベクターのようなAAVベクターに含まれる。
AAVは、ヒトおよびいくつかのその他の霊長類種に感染するが、疾患を引き起こすことは知られておらず、極めて軽度の免疫応答を誘発する。AAVを利用する遺伝子治療ベクターは、分裂細胞および静止細胞の両方に感染し、宿主細胞のゲノムに組み込まれることなく染色体外状態で持続する。AAVは、標的細胞に結合し侵入し、核に侵入する能力、長期間にわたり核において発現される能力、および低い毒性を含む、遺伝子治療ベクターのためのいくつかの付加的な望ましい特色を保有している。AAVは、細胞をトランスフェクトするために使用され得、適当なベクターは、当技術分野において公知である(例えば、参照によって本明細書に組み入れられる米国公開特許出願第2014/0037585号を参照すること)。遺伝子治療のために適当なrAAVを作製する方法は、当技術分野において周知であり(例えば、米国公開特許出願第2012/0100606号;第2012/0135515号;第2011/0229971号;および第2013/0072548号;ならびにGhosh et al., Gene Ther 13(4):321-329, 2006を参照すること)、本明細書に開示された方法において利用され得る。
本明細書に開示される方法において有用なベクターは、単一のAAV血清型(例えば、参照によって本明細書に組み込まれるWO2005/033321に開示されるように、例えば、AAV9)に由来し得る完全AAVカプシドをコードする核酸配列を含有していてよい。米国特許第8,692,332号に開示されるように、有用なベクターは、組換えであってもよく、従って、異種AAVまたは非AAVカプシドタンパク質(またはそれらの断片)に融合されたAAV9カプシドの1個または複数個の断片を含有している人工カプシドをコードする配列を含有していてもよい。これらの人工カプシドタンパク質は、AAV9カプシドの非連続部分またはその他のAAV血清型のカプシドから選択される。例えば、rAAVベクターは、VP2および/もしくはVP3もしくはVP1より選択されるAAV9カプシド領域、またはAAV9カプシドのアミノ酸1~184、アミノ酸199~259;アミノ酸274~446;アミノ酸603~659;アミノ酸670~706;アミノ酸724~738より選択されるそれらの断片のうちの1個または複数個を含むカプシドタンパク質を有していてよい。もう一つの例において、VP3タンパク質の開始コドンをGTGに変更することが望ましい場合がある。あるいは、rAAVは、AAV血清型9カプシドタンパク質超可変領域のうちの1個または複数個を含有していてよい(例えば、参照によって本明細書に組み入れられるWO2005/033321を参照すること)。
いくつかの態様において、AAV血清型9のカプシドを有する組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)が生成される。ベクターを作製するため、本明細書において定義されるAAV血清型9カプシドタンパク質をコードする核酸配列またはその断片;機能性rep遺伝子;AAV末端逆位配列(ITR)および治療用タンパク質をコードするトランスジーンのようなトランスジーンから少なくとも構成されるミニ遺伝子;ならびにAAV8カプシドタンパク質におけるパッケージングを可能にするために十分なヘルパー機能を含有している宿主細胞を、培養することができる。AAVミニ遺伝子をAAVカプシドにパッケージングするための、宿主細胞において培養されることが必要とされる成分は、トランスに宿主細胞に提供されてもよい。あるいは、必要とされる成分(例えば、ミニ遺伝子、rep配列、cap配列、および/またはヘルパー機能)の一つまたは複数は、当業者に公知の方法を使用して、必要とされる成分の一つまたは複数を含有するよう操作された安定宿主細胞によって提供され得る。いくつかの態様において、安定宿主細胞は、誘導可能プロモーターの制御下に、必要とされる成分を含有するであろう。しかしながら、必要とされる成分は、構成性プロモーターの制御下にあってもよい。適当な誘導可能プロモーターおよび構成性プロモーターの例は、当技術分野において公知である。
さらにもう一つの別法において、選択された安定宿主細胞は、構成性プロモーターの制御下に、選択された成分を含有し、1個または複数個の誘導可能プロモーターの制御下に、他の選択された成分を含有していてもよい。例えば、(構成性プロモーターの制御下にE1ヘルパー機能を含有している)293細胞に由来するが、誘導可能プロモーターの制御下にrepタンパク質および/またはcapタンパク質を含有している安定宿主細胞を生成することができる。さらに他の安定宿主細胞が、当業者によって生成され得る。
rAAVを作製するために必要とされるミニ遺伝子、rep配列、cap配列、およびヘルパー機能は、保持された配列を移入する任意の遺伝子要素の形態で、パッケージング宿主細胞へ送達され得る。選択された遺伝子要素は、本明細書に記載された方法を含む任意の適当な方法によって送達され得る。ベクターを構築するために使用される方法は、核酸操作の当業者に公知であり、遺伝学的改変、組換え改変、および合成技術を含む。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y.を参照すること。同様に、rAAVビリオンを生成する方法は、周知であり、適当な方法の選択は、本発明を限定するものではない。例えば、参照によって本明細書に組み入れられるK.Fisher et al., J.Virol., 70:520-532(1993)、米国特許第5,478,745号、およびPCT公開番号WO2005/033321を参照すること。いくつかの態様において、選択されたAAV成分は、AAV9を含むAAV血清型から、当業者に利用可能な技術を使用して容易に単離され得る。そのようなAAVは、単離されてもよいし、または学術的、商業的、もしくは公的な供給元(例えば、American Type Culture Collection, Manassas, Va.)から入手されてもよい。あるいは、AAV配列は、文献またはGENBANK(登録商標)のようなデータベースにおいて利用可能であるような公開された配列を参照することによって、合成またはその他の適当な手段を通して入手され得る。
scAAVベクター
scAAVベクターは、全て、参照によって本明細書に組み入れられるMcCarty et al., 2001, Gene Ther. 8:1248-1254;Carter PCT公開番号WO 2001/011034;およびSamulski、PCT公開番号WO 2001/092551に開示されている。
PCT公開番号に開示されるように、(前記のような)「二重鎖」DNAパルボウイルスベクターを、遺伝子送達のために有利に利用することができる。二重鎖パルボウイルスは、改善された形質導入粒子(transducing to particle)比、より迅速なトランスジーン発現、より高レベルのトランスジーン発現、および/またはより持続的なトランスジーン発現を提供することができる。二重鎖パルボウイルスベクターは、典型的には、AAV形質導入に対して抵抗性である宿主細胞への遺伝子送達のために使用され得る。従って、AAV9のような二重鎖パルボウイルスベクターは、ssAAVベクターとは異なる宿主範囲を有する。
これらのベクターは、パルボウイルスカプシドのようなウイルスカプシド、例えば、AAV9のようなAAVカプシドにパッケージングされたダイマー自己相補型(sc)ポリヌクレオチド(典型的には、DNA)である。いくつかの点において、カプシドにパッケージングされたウイルスゲノムは、本質的に、プラス極性およびマイナス極性のパルボウイルスDNA鎖を生じるために解離し得ない「トラップされた(trapped)」複製中間体である。従って、二重鎖パルボウイルスベクターは、従来の組換えAAV(ssAAV)ベクターに固有の、相補的DNAの宿主細胞によって媒介される合成の必要性を回避することができる。
この結果は、一方の末端において接合された両方の鎖が単一の感染性カプシドに含有されるよう、ウイルスが、一本鎖パルボウイルス(例えば、ssAAV9のようなssAAV)ベクターゲノムの本質的にダイマーの逆方向反復をパッケージングすることを可能にすることによって達成される。カプシドから放出されると、標的細胞内で、相補配列が再アニールして、転写的に活性な二本鎖DNAが形成される。vDNAが鎖内塩基対合のために二本鎖ヘアピン構造を形成することができ、両方のDNA鎖がカプシドに包まれるという点で、二重鎖パルボウイルスベクターは、従来のパルボウイルス(例えば、ssAAV9のようなssAAV)ベクターおよび親パルボウイルス(例えば、AAV9のようなAAV)とは基本的に異なる。従って、二重鎖パルボウイルスベクターは、それが由来するパルボウイルス(例えば、AAV9のようなssAAV)よりむしろ二本鎖DNAウイルスベクターに機能的に類似している。
ウイルスカプシドは、任意のパルボウイルス、自律性パルボウイルスまたはディペンドウイルスのいずれかに由来し得る。好ましくは、ウイルスカプシドは、AAVカプシド(例えば、AAV9カプシド)である。パルボウイルスカプシドの選択は、当技術分野において公知の多数の考慮、例えば、標的細胞の型、所望の発現レベル、発現される異種ヌクレオチド配列の性質、ウイルス作製に関連する課題等に基づいていてよい。具体的な例において、カプシドはAAV9カプシドである。
パルボウイルス粒子は、ウイルスTRおよびウイルスカプシドが異なるパルボウイルスに由来する「ハイブリッド」粒子であってもよい。好ましくは、ウイルスTRおよびカプシドは、(例えば、国際特許公開WO00/28004、米国仮出願第60/248,920号;およびChao et al., (2000)Molecular Therapy 2:619(これらの開示はその全体が本明細書に組み入れられる)に記載されているように)AAVの異なる血清型に由来する。同様に、パルボウイルスは、これらの刊行物に記載されるように、(例えば、異なるパルボウイルスに由来する配列を含有している)「キメラ」カプシドまたは「標的型」カプシド(例えば、定方向の指向性)を有していてもよい。本明細書において使用されるように、「二重鎖パルボウイルス粒子」には、ハイブリッド、キメラ、および標的型のウイルス粒子が包含される。好ましくは、二重鎖パルボウイルス粒子は、AAVカプシドを有し、それは、さらに、前記のようなキメラまたは標的型のカプシドであり得る。
二重鎖パルボウイルスベクターは、任意の適当な方法によって作製され得る。好ましくは、vDNAを作製するための鋳型は、二本鎖vDNAを形成する能力を有するモノマーvDNAよりむしろ、二重鎖を優先的に生じる(即ち、作製されるvDNAの大部分が二重鎖である)ものである。いくつかの態様において、鋳型からの複製産物の少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、またはそれ以上が二重鎖である。一つの具体的な態様において、鋳型は、1個または複数個の末端反復(TR)配列を含むDNA分子である。鋳型は、パルボウイルスRepタンパク質によって解離し得ない(即ち、ニッキングされ得ない)修飾型TRを含む。複製中、Repタンパク質が修飾型TRを解離させることができないことから、2個の「モノマー」が非分解可能TRによって共有結合性に付着した安定的な中間体がもたらされるであろう。この「二重鎖」分子は、scAAV9ベクターのような新規二重鎖パルボウイルスベクターを作製するため、パルボウイルス(AAV)カプシドにパッケージングされ得る。
特定の理論に拘束されることは望まないが、ビリオンゲノムは、ウイルスカプシド内にパッケージングされている間、一本鎖形態で保持されている可能性が高い。ウイルス感染中にカプシドから放出されると、ダイマー分子は、「スナップバック(snaps back)」するかまたはアニールし、一方の末端において非解離可能TR配列が共有結合性に閉じたヘアピン構造を形成している二本鎖分子を鎖内塩基対合によって形成する。この二本鎖vDNAは、AAV形質導入のための律速段階であると仮定されている、宿主細胞によって媒介される第二鎖合成を省く。
いくつかの態様において、鋳型は、標的細胞への送達のためにパッケージングされる(下記の)異種ヌクレオチド配列をさらに含む。この具体的な態様によると、異種ヌクレオチド配列は、基質のいずれかの末端においてウイルスTRの間に位置する。さらに好ましい態様において、パルボウイルス(例えば、AAV)cap遺伝子およびパルボウイルス(例えば、AAV)rep遺伝子は、鋳型(およびそれから作製されるvDNA)から欠失している。この構成は、パルボウイルスカプシドが保持することができる異種核酸配列のサイズを最大化する。
一つの具体的な態様において、二重鎖パルボウイルスベクターを作製するための鋳型は、(下記の)関心対象の異種ヌクレオチド配列に隣接する少なくとも1個のTRを5'末端および3'末端に含有している。基質の一方の末端におけるTRは、非解離可能であり、即ち、Repタンパク質によって解離し得ない(ニッキングされ得ない)。複製中、Repタンパク質がTRのうちの1個を解離させ得ないことから、非機能性(即ち、非解離可能)TRによって2個の「モノマー」が共有結合性に付着した安定的な中間体がもたらされるであろう。異種ヌクレオチド配列は、非解離可能TRに対していずれの方向にあってもよい。
「隣接」という用語は、必ずしも配列が連続していることを示すものではない。例えば、前パラグラフの例において、異種ヌクレオチド配列とTRとの間に介在配列が存在してもよい。2個の他の要素が「隣接」している配列とは、1個の要素が配列の5'側に位置し、他方の要素が配列の3'側に位置することを示す;しかしながら、それらの間に介在配列が存在してもよい。
この態様によると、二重鎖パルボウイルスvDNAを作製するための鋳型は、vDNAがパッケージングされるカプシドに対応する野生型パルボウイルスゲノム(例えば、AAV)のサイズの約半分である。言い換えると、鋳型は、好ましくは、約40重量%~約55重量%、より好ましくは、約45重量%~約52重量%である。従って、この鋳型から作製された二重鎖vDNAは、好ましくは、およそ、vDNAがパッケージングされるカプシドに対応する野生型パルボウイルスゲノム(例えば、AAV)のサイズであり、例えば、約80重量%~約105重量%である。AAVの場合、AAVカプシドは、wt AAVゲノムからサイズが実質的に逸脱したvDNAのパッケージングにとって不都合であることが、当技術分野において周知である。AAVカプシドの場合、鋳型は、好ましくは、約5.2kb以下のサイズである。他の態様において、鋳型は、好ましくは、約3.6kb長、3.8kb長、4.0kb長、4.2kb長、または4.4kb長より大きく、かつ/または約5.4kb長、5.2kb長、5.0kb長、または4.8kb長より小さい。言い換えると、異種ヌクレオチド配列は、典型的には、パルボウイルス(例えば、AAV)カプシドによる二重鎖鋳型のパッケージングを容易にするため、約2.5kb未満の長さ(より好ましくは、約2.4kb未満、さらに好ましくは、約2.2kb未満、さらに好ましくは、約2.1kb未満の長さ)である。もう一つの具体的な態様において、鋳型自体が、二重鎖、即ち、ダイマー自己相補型分子である。この態様によると、鋳型は、いずれかの末端に解離可能TRを含む。鋳型は、(前記のような)中央に位置する非解離可能TRをさらに含む。換言すると、非解離可能TRのいずれかの側の鋳型の各半分は、およそ同一の長さである。鋳型の各半分(即ち、解離可能TRと非解離可能TRとの間)は、1個または複数個の関心対象の異種ヌクレオチド配列を含む。分子の各半分における異種ヌクレオチド配列には、解離可能TRおよび中央の非解離可能TRが隣接している。
鋳型のいずれかの半分の配列は、鋳型からの複製産物が相補的配列間の塩基対合によって二本鎖分子を形成することができるよう、実質的に相補的である(即ち、少なくとも約90%、95%、98%、99%、またはそれ以上のヌクレオチド配列相補性)。換言すると、鋳型は、本質的に、2個の半分が非解離可能TRによって接合されている逆方向反復である。
いくつかの非限定的な例において、鋳型の各半分の異種ヌクレオチド配列は、本質的に完全に自己相補的である(即ち、少数のミスマッチ塩基を含有しているか、またはミスマッチ塩基を含有していない)。付加的な非限定的な例において、ヌクレオチド配列の2個の半分は、本質的に完全に自己相補的である。
この態様によると、鋳型(およびそれから作製されるvDNA)は、即ち、パルボウイルスカプシドへの効率的なパッケージングを容易にするため、好ましくは、パルボウイルスカプシド(例えば、AAV)によって天然に包まれているwtゲノムとおよそ同一のサイズである。例えば、AAVカプシドの場合、鋳型は、好ましくは、およそ、野生型(wt)AAVゲノムのサイズである。具体的な態様において、鋳型は、約5.2kb以下のサイズである。他の態様において、鋳型は、好ましくは、約3.6kb長、3.8kb長、4.0kb長、4.2kb長、または4.4kb長より大きく、かつ/または約5.4kb長、5.2kb長、5.0kb長、または4.8kb長より小さい。言い換えると、鋳型は、好ましくは、野生型パルボウイルスゲノム(例えば、AAV)の80%~105%の範囲である。
TR(解離可能および非解離可能)は、好ましくは、AAV配列であり、血清型1、2、3、4、5、および6が好ましい。「末端反復」という用語には、その開示全体が参照によって本明細書に組み入れられるSamulskiらの米国特許第5,478,745号に記載されるような「二重D配列」のような、AAV末端逆位配列として機能する合成配列が含まれる。解離可能AAV TRは、TRが所望の機能、例えば、ウイルスパッケージング、組み込み、および/またはプロウイルスレスキュー等を媒介する限り、野生型TR配列を有していなくてもよい(例えば、挿入、欠失、短縮、またはミスセンス変異によって野生型配列が変更されていてもよい)。必ずしもそうではないが、典型的には、TRは同一のパルボウイルスに由来し、例えば、両方のTR配列がAAV2に由来する。
二重鎖ベクターを作製するために使用されるウイルスRepタンパク質は、ウイルスTRの起源を考慮して選択される。例えば、AAV5 TRは、AAV5 Repタンパク質とより効率的に相互作用する。
様々な自律性パルボウイルスおよびAAVの異なる血清型のゲノム配列、ならびにTR、カプシドサブユニット、およびRepタンパク質の配列は、当技術分野において公知である。そのような配列は、文献またはGENBANK(登録商標)のような公的なデータベースに見出され得る。例えば、その開示全体が参照によって本明細書に組み入れられるGENBANK(登録商標)アクセッション番号NC002077、NC001863、NC001862、NC001829、NC001729、NC001701、NC001510、NC001401、AF063497、U89790、AF043303、AF028705、AF028704、J02275、J01901、J02275、X01457、AF288061、AH009962、AY028226、AY028223、NC001358、NC001540を参照すること。例えば、その開示全体が参照によって本明細書に組み入れられるChiorini et al., (1999)J.Virology 73:1309;Xiao et al., (1999)J.Virology 73:3994;Muramatsu et al., (1996)Virology 221:208;国際特許公開WO 00/28061、WO 99/61601、WO 98/11244;米国特許第6,156,303号も参照すること。
非解離可能TRは、当技術分野において公知の任意の方法によって作製され得る。例えば、TRへの挿入は、ニッキング部位(即ち、trs)を置換し、非解離可能TRを生じる。TR内の様々な領域または要素の命名は、当技術分野において公知である。AAV TR内の領域の図示は、図6に提供される(BERNARD N.FIELDS et al., VIROLOGY, volume 2, chapter 69, Figure 5, 3d ed., Lippincott-Raven Publishersも参照すること)。挿入は、好ましくは、末端解離部位(trs)の配列においてなされる。あるいは、A要素内のRep結合要素(RBE)とD要素内のtrsとの間の部位において、挿入がなされてもよい(図6を参照すること)。AAV trs部位のコア配列は、当技術分野において公知であり、Snyder et al., (1990)Cell 60:105;Snyder et al., (1993)J.Virology 67:6096;Brister & Muzyczka, (2000)J.Virology 74:7762;Brister & Muzyczka, (1999)J.Virology 73:9325(これらの開示全体が参照によって本明細書に組み入れられる)に記載されている。例えば、Brister & Muzyczka, (1999)J.Virology 73:9325は、D要素内の3'-CCGGT/TG-5*というコアtrs配列を記載している。Snyder et al., (1993)J.Virology 67:6096は、最小trs配列を3'-GGT/TGA-5'として同定し、これは、Brister & Muzyczkaによって同定された配列と実質的に重複している。好ましくは、挿入は、trs部位の領域においてなされる。挿入は、(例えば、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上)TRの解離を低下させるかまたは実質的に排除する任意の適当な長さであり得る。いくつかの態様において、挿入は、少なくとも約3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、10ヌクレオチド、15ヌクレオチド、20ヌクレオチド、もしくは30ヌクレオチド、またはそれ以上である。適当なレベルのウイルスの複製およびパッケージングが達成される限り、挿入される配列のサイズの上限は特に存在しない(例えば、挿入は、50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、200ヌクレオチド、もしくは500ヌクレオチド、またはそれ以上のように長くてもよい)。
もう一つの態様において、TRは、trs部位の欠失によって非解離可能にされ得る。鋳型が所望の機能を保持する限り、欠失は、trs部位を超えて1ヌクレオチド、3ヌクレオチド、5ヌクレオチド、8ヌクレオチド、10ヌクレオチド、15ヌクレオチド、20ヌクレオチド、30ヌクレオチド、またはそれ以上、延長されてもよい。trs部位に加えて、D要素の一部または全部が欠失していてもよい。欠失は、さらにA要素まで延長されてもよいが、例えば、効率的なパッケージングを容易にするため、A要素内にRBEを保持することが有利であり得ることを、当業者は理解するであろう。非解離可能TRが他の所望の機能を保持する限り、A要素内の欠失は、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、8ヌクレオチド、10ヌクレオチド、もしくは15ヌクレオチド、またはそれ以上の長さであり得る。変更されたTRを修正するための遺伝子変換を防止するため、TR配列外のD要素を超えた(例えば、図6のD要素の右側の)パルボウイルス(例えば、AAV)配列の一部または全部を欠失させることが、さらに好ましい。
さらなる別法として、Repタンパク質による解離が低下するかまたは実質的に排除されるよう、ニッキング部位の配列を変異させることができる。例えば、A塩基および/またはC塩基は、ニッキング部位またはその近くにおいてG塩基および/またはT塩基と置換され得る。末端解離部位における置換のRep切断に対する効果は、Brister & Muzyczka,(1999)J.Virology 73:9325(その開示は参照によって本明細書に組み入れられる)によって記載されている。さらなる別法として、末端解離部位におけるRep切断を低下させるため、ステムループ構造を形成すると仮定されている、ニッキング部位の周囲の領域におけるヌクレオチド置換を使用することもできる。
もしあれば、変更されたTRの所望の機能(例えば、パッケージング、Rep認識、部位特異的組み込み等)を維持するため、非解離可能TRにおける変更を選択することができることを、当業者は理解するであろう。より好ましい態様において、TRは、Samulski et al., (1983)Cell 33:135に記載されるような遺伝子変換の過程に対して耐性であろう。非解離可能TRにおける遺伝子変換は、trs部位を回復させ、それによって、解離可能TRが生成され、モノマー複製産物の頻度の増加がもたらされるであろう。遺伝子変換は、解離可能TRと変更されたTRとの間の相同組換えによって起こる。
当技術分野において公知の、DNA修復に欠陥のある細胞系(好ましくは、哺乳動物)は、ウイルス鋳型に導入された変異を修正する能力が損なわれているため、遺伝子変換を低下させる一つの戦略は、これらの細胞系を使用してウイルスを作製することである。あるいは、非相同領域を非解離可能TRへ導入することによって、実質的に低下した遺伝子変換速度を有する鋳型を生成することもできる。鋳型上の非解離可能TRと変更されていないTRとの間のtrs要素の周囲の領域における非相同性は、遺伝子変換を低下させるかまたはさらには実質的に排除するであろう。
遺伝子変換が低下するかまたは実質的に排除される限り、非相同領域を生成するため、任意の適当な挿入または欠失を非解離可能TRへ導入することができる。非相同性を作出するために欠失を利用する戦略が好ましい。欠失は、鋳型の複製およびパッケージングを過度に損なわないことが、さらに好ましい。欠失の場合、同一の欠失が、trs部位の解離を損ない、遺伝子変換を低下させるために十分であり得る。さらなる別法として、非解離可能TR、あるいはRBEとtrs部位との間のA因子への挿入によって、遺伝子変換を低下させることができる。挿入は、典型的には、少なくとも約3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、10ヌクレオチド、15ヌクレオチド、20ヌクレオチド、もしくは30ヌクレオチド、またはそれ以上の長さである。挿入される配列のサイズの上限は特に存在せず、50ヌクレオチド、100ヌクレオチド、200ヌクレオチド、もしくは500ヌクレオチド、またはそれ以上であり得るが、挿入は、鋳型の複製およびパッケージングを過度に損なわないことが好ましい。
別の態様において、非解離可能TRは、使用される条件の下で非解離可能である天然に存在するTR(またはその変更された型)であり得る。例えば、非解離可能TRは、鋳型からvDNAを作製するために使用されるRepタンパク質によって認識され得ない。例示すると、非解離可能TRは、AAV Repタンパク質によって認識されない自律性パルボウイルス配列であり得る。さらなる別法として、非解離可能配列は、ヘアピン構造を形成し、Repタンパク質によって切断され得ない逆方向反復配列であり得る。さらにもう一つの別法として、本明細書中の実施例およびHirata & Russell,(2000)J.Virology 74:4612に記載されたように、ゲノムのサイズの半分の鋳型から作製された二重鎖vDNAを保持しているパルボウイルス粒子を作製するため、ゲノムのサイズの半分の鋳型を使用することができる。この報告は、AAVゲノムがwtAAVゲノムのサイズの半分未満(<2.5kb)に縮小された場合の、対合したモノマーおよび一過性のRF中間体のパッケージングを記載している。これらの研究者は、モノマーゲノムが、相同組換えによる遺伝子修正のための好ましい基質であり、このアッセイにおいて、二重鎖ゲノムの機能性がモノマーゲノムより低いことを見出した。この報告は、遺伝子送達のためのベクターとしての二重鎖ゲノムの使用を調査せず、示唆もしなかった。
いくつかの態様において、鋳型は、パルボウイルスカプシドによってパッケージングされ得るvDNAのサイズのおよそ半分であろう。例えば、AAVカプシドの場合、鋳型は、好ましくは、前記のように、wt AAVゲノムのおよそ半分の長さである。(前記の)鋳型は、適切な条件の下で二本鎖DNAを形成することができる二重鎖ベクターゲノム(vDNA)を作製するため、複製される。二重鎖分子は、二本鎖ウイルスDNAを形成することができるよう、実質的に自己相補的である(即ち、少なくとも90%、95%、98%、99%、またはそれ以上のヌクレオチド配列相補性)。個々のヌクレオチド塩基またはポリヌクレオチド配列の間の塩基対合は、当技術分野において十分に理解されている。好ましくは、二重鎖パルボウイルスウイルスDNAは、本質的に完全に自己相補的である(即ち、ミスマッチ塩基を含有していないがまたは有意でない数のみ含有している)。特に、異種ヌクレオチド配列(例えば、細胞によって転写される配列)は、本質的に完全に自己相補的であることが好ましい。
一般に、二重鎖パルボウイルスは、二重鎖パルボウイルスベクターからの異種ヌクレオチド配列の発現が、対応するモノマーベクターより効率的である程度に、非相補性を含有していてよい。二重鎖パルボウイルスは、宿主細胞が一本鎖rAAV vDNAを二本鎖DNAへ変換する必要性に対処する二本鎖分子を、宿主細胞に提供する。ビリオンDNA内、特に、異種ヌクレオチド配列内の実質的な非相補領域の存在は、宿主細胞によって認識される可能性が高く、ミスマッチ塩基を修正するためのDNA修復機序のリクルートをもたらし、それによって、二重鎖パルボウイルスベクターの有利な特徴に対抗するであろう。例えば、ベクターは、宿主細胞がウイルス鋳型をプロセシングする必要性を低下させるかまたは排除する。
リソソーム蓄積障害およびトランスジーン
scAAV9およびssAAV9の脳室内投与後の異なる発現パターンの驚くべき発見が、本明細書に開示される。いくつかの態様において、scAAV9またはssAAV9の脳室内投与は、リソソーム蓄積障害を処置するために使用され得る。
リソソーム蓄積障害は、リソソーム加水解離酵素の部分的または完全な欠損を含む疾患の型である。この欠損は、加水解離酵素に特異的な基質の不完全なリソソーム消化をもたらす。経時的に、未消化の基質の蓄積が、進行性かつ重度の神経変性および筋肉変性を含む様々な異常をもたらし得る(Settembre et al., Human Mol.Genet., 17:119-129, 2008;Fukuda et al., Curr.Neurol.Neurosci.Rep., 7:71-77 2007)。
リソソームタンパク質の欠損は、一般的に、代謝物の有害な蓄積をもたらす。例えば、ハーラー症候群、ハンター症候群(ムコ多糖症II)、モルキオ症候群、およびサンフィリポ症候群においては、ムコ多糖の蓄積が存在し;テイ・サックス症候群、ゴーシェ症候群、クラッベ症候群、ニーマン・ピック症候群、およびファブリー症候群においては、スフィンゴ脂質の蓄積が存在し;フコシドーシスおよびマンノシドーシスにおいては、フコース含有スフィンゴ脂質および糖タンパク質断片の蓄積、ならびにマンノース含有オリゴ糖の蓄積がそれぞれ存在する。
リソソーム蓄積症(LSD)の処置としての酵素補充治療(ERT)は、1966年もの以前にDe DuveおよびWattiauxによって提唱された。しかし、リソソーム蓄積障害(1型ゴーシェ病)のためのERTの安全性および有効性を証明するには、35年以上がかかった(Charrow, Expert Opin.Biol.Ther.,9:121-31, 2009)。ゴーシェ病の処置の開発において精査された原則は、その後、他のLSDのERTの開発に適用された。ファブリー病(Zarate and Hopkin, Lancet, 18:1427-1435, 2008)、ムコ多糖症(MPS)I、MPS II、およびMPS VI(Clarke,Expert Rev.Mol.Med.,10:e1,2008)、ならびにポンペ病(van der Beek, Acta Neurol.Belg., 106:82-86, 2006)のためのERTの安全性および有効性は、よく設計された臨床試験において証明されており、処置は現在市販されている(概説については、例えば、Rohrbach and Clarke, Drugs, 67:2697-2716, 2007およびBurrow et al., Curr.Opin.Pediatr., 19:628-625, 2007を参照すること)。しかしながら、LSDのいくつかの所見は、ERT処置に応答しない。さらに、大部分の処置の長期的な有効性は、未だ確立されていない。
ポンペ病(別名、糖原病II型(GSDII))は、リソソーム酸性αグルコシダーゼ(GAA)の部分的なまたは完全な欠損によって引き起こされるリソソーム蓄積障害の型である。GAAは、リソソーム内のグリコーゲンの分解を担い、酵素欠損は、主に、骨格筋および心筋において、グリコーゲンの蓄積をもたらす。この疾患は、乳児発症型および遅発型という二つの広いカテゴリに分けられる。乳児型を有する患者は、一般に、心肺不全のために生後1年以内に死亡する。遅発型は、乳児期後の任意の時点で起こり、一般に、心臓の関与はないが、進行性骨格筋ミオパチーが最終的な呼吸不全をもたらす。4万人に1人の個体が何らかの型のポンペ病を有すると推定されている。概説については、Fukuda et al., Curr.Neurol.Neurosci.Rep., 7:71-77 2007を参照すること。
ポンペ病のERT処置は、マンノース-6-リン酸(M6P)基を含有している組換えGAA(rhGAA)前駆体の静脈内注射を含む。Genzyme Corporationは、商品名Myozyme(登録商標)(注射可能アルグルコシダーゼアルファ)およびLumizyme(登録商標)の下で市販の補充酵素を販売している。M6P基が、細胞表面上のカチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体(CI-MPR)に結合する。CI-MPR/rhGAA複合体が、細胞表面からエンドソームと融合する輸送小胞へ内部移行する。後期エンドソームの酸性pHにおいて、rhGAAはCI-MPRから解離し、リソソームに輸送され、そこでGAA欠損をレスキューする。ポンペ病のためのERTは、例えば、Fukuda et al. (Curr.Neurol.Neurosci.Rep., 7:71-77, 2007)によって概説されている。
ポンペ病のためのERTは、心筋におけるグリコーゲンクリアランスには有効であるが、骨格筋からのグリコーゲンクリアランスには有効でない(Raben et al., Acta Myologica, 26:45-48, 2007)。同様に、GAAの発現を欠く遺伝学的に改変されたマウス(ポンペ病のマウスモデル)において、ERTは、I型筋線維からのグリコーゲンの除去に有効であるが、骨格筋において優勢なII型筋線維からの除去には有効でない(Raben et al., Molecular Therapy, 11:48-56, 2005)。
ファブリー病は、小血管の壁、神経、後根神経節、腎糸球体および尿細管上皮細胞、ならびに心筋細胞における中性スフィンゴ糖脂質グロボトリオシルセラミド(Gb3)の蓄積をもたらす、αガラクトシダーゼAの欠損によって引き起こされるX連鎖遺伝性リソソーム蓄積症である。それは、慢性疼痛および先端異常感覚、胃腸障害、特徴的な皮膚病変(被角血管腫)、進行性腎障害、心筋症、ならびに脳卒中を臨床的な特徴とする複雑な多系統障害である。組換えヒトαガラクトシダーゼAの静脈内注入による酵素補充治療は、血漿中のGb3レベルを一貫して減少させ、血管内皮細胞からリソソーム封入体を除去する。ERTの他の組織に対する効果は、さほど明瞭ではなく、このことは、最適に有効であるためには疾患の経過の早期に処置が開始されなければならないこと、または疾患のいくつかの合併症が静脈内送達された酵素に応答しないことを示唆している(概説については、Clarke,Ann.Intern Med.,20:425-433,2007およびDesnick,Ann.Intern Med.,138:338-346,2003を参照すること)。
ゴーシェ病は、リソソームに主に見出される酵素グルコセレブロシダーゼの活性の欠損によって引き起こされる遺伝性障害である。これは、主に、細網内皮系において、マクロファージのリソソームにおけるグルコセレブロシドの蓄積をもたらす。この異常な貯蔵の結果には、疲労、不快感、感染、出血、および挫傷を引き起こす、肝腫大、脾腫、貧血、および血小板減少のような内臓問題;疼痛(急性または慢性)および骨クリーゼならびに無血管性壊死のような骨問題;ならびに肺疾患、成長障害、および思春期遅発症のようなその他の問題が含まれる。症状の重症度および進行の速度は、患者によって相当に異なり、無症候性から早期死亡を伴う重度にまで及ぶ。ゴーシェ病は、臨床的特色によって三つのサブタイプに分類される。I型は、任意の年齢で起こり得、神経学的効果を含まない内臓症状を主に有する。II型は、重度の進行性脳疾患を引き起こし、乳児期に死亡が起こる。III型は、小児期に起こり、神経学的症状および内臓症状を有する。Connock et al., Health Technology Assessment, 10:iii-136, 2004;およびBeutler, PLoS Med., 1:e21, 2004を参照すること。
(Genzyme CorporationからCEREZYME(商標)として市販されている)イミグルセラーゼは、細胞への取り込みおよびリソソームへの送達を増強するため、マンノースを含有するよう修飾された組換え酵素である。これは、欠損酵素を補充するために静脈内に与えられ、症候性I型疾患において使用するため、III型疾患の内臓症状を処置するため、認可されている。静脈内CEREZYME(登録商標)は、血液脳関門を通過することができず、神経学的所見には有効でない。しかしながら、イミグルセラーゼをコードするトランスジーンを、scAAV9ベクターまたはssAAV9ベクターに含め、開示された方法において使用することが可能である。
ムコ多糖症I型(MPS I)、ハーラー病、またはガーゴイル様顔貌としても公知のハーラー症候群は、リソソーム内のムコ多糖の分解を担う酵素であるαLイズロニダーゼの欠損によるムコ多糖の集積をもたらす遺伝性障害である(Tolar and Orchard, Biologics., 2:743-751, 2008)。この酵素がない場合、体内にヘパラン硫酸およびデルマタン硫酸の集積が起こる。小児期に症状が出現し、器官傷害のために早期死亡が起こり得る。MPS Iは、症状の重症度に基づき、三つのサブタイプに類別される。三つの型は、全て、酵素αL-イズロニダーゼの欠如または不十分なレベルに起因する。MPS I Hまたはハーラー症候群は、MPS Iサブタイプの中で最も重度である。他の二つの型は、MPS I Sまたはシャイエ症候群およびMPS I H-Sまたはハーラー・シャイエ症候群である。組換えαL-イズロニダーゼ(IDUA)は、MPS IのためのERTに使用され、MPS I対象におけるIDUA基質蓄積を低下させる(Tolar and Orchard, Biologics., 2:743-751, 2008)。これらのトランスジーンを、scAAV9ベクターまたはssAAV9ベクターに含め、開示された方法において使用することが可能である。
ハンター症候群(ムコ多糖症II)は、グリコサミノグリカン(GAG)異化の遺伝性障害のファミリーの一つであるムコ多糖症(MPS)である(Neufeld et al., The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease. New York., NY:McGraw-Hill;3421-3452, 2001)。ハンター症候群は、稀なX連鎖障害である。各MPSは、GAG、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ケラタン硫酸、およびコンドロイチン硫酸の段階的分解のために必要とされる別個のリソソーム酵素の活性の欠損によって引き起こされる(Neufeld et al., The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease. New York, NY:McGraw-Hill;3421-3452, 2001)。罹患した患者においては、未分解のGAGまたは部分的に分解されたGAGが、リソソーム内に蓄積され、尿中に過剰に排泄される(Dorfman et al., Proc Natl Acad Sci USA, 43:443-4462, 1957)。これらの障害の徴候および症状に寄与するのは、リソソーム内のGAGの蓄積または貯蔵である。MPSは慢性かつ進行性である。ハンター症候群の生化学的原因は、デルマタン硫酸およびヘパリン硫酸においてL-イズロン酸の2位の硫酸基の除去を触媒するリソソーム酵素、イズロン酸-2-スルファターゼ(I2S)の活性の欠損である(Bach et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA., 70:2134-2213, 1973;Neufeld et al., The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease. New York, NY:McGraw-Hill;3421-3452, 2001)。従って、この遺伝子を、scAAV9ベクターまたはssAAV9ベクターに含め、開示された方法において使用することが可能である。
イズルスルファーゼ(Elaprase、Shire Human Genetic Therapies, Inc, Cambridge, MA)は、ハンター症候群の処置のために米国および欧州連合において認可された、ヒト細胞株において作製された組換えヒトI2Sである。無作為化プラセボ対照二重盲検臨床試験は、プラセボによって処置された患者と比較された、イズルスルファーゼによって処置された患者における臨床効果を示している。イズルスルファーゼによって処置された患者は、プラセボと比較して統計的に有意な改善率を示す。さらに、尿中GAG排泄ならびに肝臓および脾臓の体積が、両方のイスルスルファーゼ投薬計画によって、基線から有意に低下した。イズルスルファーゼは、一般に、耐容性が高く、処置下で発現した有害事象の大部分が、未処置のハンター症候群の自然経過と一致していた。EOW群と比較した、週1回群におけるより大きい臨床応答に基づき、イズルスルファーゼは、週1回、0.5mg/kgの用量で、米国および欧州連合の両方において、MPS IIの処置のために認可された(Muenzer et al., Genet.Med.,8:465-473, 2006)。
ムコ多糖症IV(MPS IV;別名、モルキオ症候群)は、ケラタン硫酸の蓄積を含む常染色体劣性リソソーム蓄積障害である(Tomatsu et al., Hum.Mol.Genet., 17:815-824, 2007)。二つの型が認識されている:A型は酵素N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸スルファターゼの欠損であり;B型は、酵素βガラクトシダーゼの欠損である。臨床的特色は両方の型において類似しているが、B型においてより軽度に出現する。発症は1~3歳である。神経学的合併症には、特に、肋骨および胸部における、極度の進行性骨格変化に起因する脊髄神経および神経根の圧迫;伝音性難聴および/または感音性難聴ならびに角膜混濁が含まれる。水頭症を発症し、未処置にされない限り、知能は正常である。身体の成長は遅く、しばしば、4~8歳で止まる。骨格異常には、釣鐘状の胸部、脊椎の平板化または湾曲、長管骨の短縮、ならびに臀部、膝、足首、および手首の形成異常が含まれる。組換えN-アセチルガラクトサミン-6-硫酸スルファターゼによるERTが、N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸スルファターゼの発現を欠くMPSIVのマウスモデルを処置するために使用されている(Tomatsu et al., Hum.Mol.Genet., 17:815-824, 2007)。
これらのリソソーム蓄積障害のいずれかを、本明細書に開示された方法を使用して処置することができる。処置には、酵素補充治療、ならびに治療用遺伝子をコードするssAAV9ベクターおよび/またはscAAV9ベクターのICV投与が含まれ得る。
非リソソーム蓄積障害およびトランスジーン
本明細書に開示された方法を使用して処置され得る非リソソーム蓄積障害には、脊髄性筋萎縮症(SMA)1型、II型、III型、IV型(SMN1遺伝子、UBA1遺伝子、DYNC1H1遺伝子、VAPB遺伝子)、X連鎖筋細管ミオパチー(MTM1遺伝子)、カテコールアミン誘発性多形性脳室性頻拍(CASQ2遺伝子)、色覚異常(CNGB3遺伝子、CNGA3遺伝子、GNAT2遺伝子、PDE6C遺伝子)、全脈絡膜萎縮(CHM遺伝子)、フリートライヒ運動失調症CNS(FXN遺伝子)、全身性フリートライヒ運動失調症(FXN遺伝子)、副腎白質ジストロフィー(ABCD1遺伝子)、アルツハイマー病(APP遺伝子、PPARγ遺伝子)、筋萎縮性側索硬化症(SOD1遺伝子)、アンジェルマン症候群(UBE3A遺伝子)、毛細血管拡張性失調症(ATM遺伝子)、シャルコー・マリー・トゥース症候群(PMP22遺伝子)、コケイン症候群(ERCC6遺伝子、ERCC8遺伝子)、聴覚消失(GJB2遺伝子)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD遺伝子)、てんかん(SCN1A遺伝子)、脆弱X症候群(FMR1遺伝子)、ハンチントン病(HTT遺伝子)、レッシュ・ナイハン症候群(HGPRT遺伝子)、メープルシロップ尿症(BCKDHA遺伝子、BCKDHB遺伝子、DBT遺伝子)、メンケス症候群(ATP7A遺伝子)、筋緊張性ジストロフィー(DMPK)、ナルコレプシー(HLA遺伝子)、神経線維腫症(NF1遺伝子)、パーキンソン病(LRRK2遺伝子、PARK2遺伝子、PARK7遺伝子、PINK1遺伝子、SNCA遺伝子)、フェニルケトン尿症(PAH遺伝子)、プラダー・ウィリー症候群、レフサム病(PEX7遺伝子)、レット症候群(MECP2遺伝子)、脊髄小脳失調症(SCA1遺伝子)、タンジール病(ABCA1遺伝子)、結節硬化症(TSC1遺伝子、TSC2遺伝子)、フォンヒッペル・リンダウ症候群(VHL遺伝子)、ウィリアムズ症候群(CLIP2遺伝子、ELN遺伝子、GTF2I遺伝子、GTF2IRD1遺伝子、LIMK1遺伝子)、ウィルソン病(ATP7B遺伝子)、またはツェルウェーガー症候群(PEX1遺伝子)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
免疫抑制剤
いくつかの態様において、免疫抑制剤は、KINERET(登録商標)(アナキンラ)、ENBREL(登録商標)(エタネルセプト)、もしくはREMICADE(登録商標)(インフリキシマブ)のような生物学的応答修飾剤、ARAVA(登録商標)(レフルノミド)のような疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、プレドニゾンもしくはコルチゾンのようなステロイド、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)のような免疫抑制剤、シロリムス(ラパマイシン)もしくはタクロリムスのようなIL-2のマクロライド阻害剤、セレコキシブ、トリサリチル酸コリンマグネシウム、ジクロフェナク、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクXR、ジフルニサル、エトドラク、エトドラクER、フェノプロフェン、経口フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、インドメタシンSR、インドメタシン坐剤、ケトプロフェン、ケトプロフェンER、メクロフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンCR、、ナプロキセンER、オキサプロジン、ピロキシカム、ロフェコキシブ、サルサラート、スリンダク、もしくはトルメチンナトリウムのような非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、またはHYALGAN(登録商標)(ヒアルロン酸)もしくはSYNVISC(登録商標)(ハイランG-F20)のようなその他の生成物である。
免疫抑制治療は、プレドニゾロン、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)、およびシロリムスまたはタクロリムスによる処置を含むことができる。
いくつかの態様において、免疫抑制剤は、血液脳関門を通過しない。
中枢神経系の遺伝子治療は、多数の神経学的障害の強力な処置になり得る。血清型9に基づくアデノ随伴ウイルスベクター(AAV9)は、静脈内、くも膜下腔内、大槽内、および脳室内(ICV)へ投与された場合、脳および脊髄の全体に遺伝子に基づく治療を送達するための強力な候補である。ICV送達された自己相補型AAV9の以前の研究は、新生仔マウスにおいて、単回用量の送達によって実施された。しかしながら、臨床試験を検討する前には、成体動物における形質導入効率についての用量応答関係に関して、より多くの情報が必要とされる。以下に開示されるように、三つの用量の自己相補型AAV9を成体ラットへ投与した。海馬、小脳、および大脳皮質において高レベルの形質導入が観察され、用量の増加に伴い形質導入が増加した。ニューロンおよびアストロサイトの両方が形質導入された。試験された用量で、アストロサイト増加症の証拠は存在しなかった。ICV自己相補型AAV9を受容したブタからの予備的結果も提示される。大型動物モデルにおけるこれらの投薬研究の結果は、この方法が臨床的に有効である証拠を提供する。
実施例1
材料および方法
ベクター:自己相補型AAV9(scAAV9)を利用した。発現ベクターは、増強緑色蛍光タンパク質(GFP)cDNAの発現を駆動するための専有のミニニワトリβアクチンプロモーターを使用する。ラット研究において、ベクター力価は1ml当たり1.2×1013ベクターゲノム(vg)である。ブタ研究のため、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβアクチンプロモーターからGFPを発現するscAAV9を、Nationwide Children's Hospitalのベクターコアから購入した。それを1.34×1013vg/mlの濃度で使用した。
動物手術:雄スプラーグドーリーラットをCharles River Labs(カタログ番号400、体重276~300g)から入手し、手術を実施する前に2~7日間動物施設に順化させた。ラットは、自由摂取の飼料(Labdiet 5001;Labdiet,St.Louis,MO)および水道水を供給され、12時間:12時間の明暗サイクルで維持された。個々のラットを、下記の処置群にランダムに割り当てた。
ラットに麻酔を施し、手技の間中、2%イソフルラン/98%酸素で維持した(0.6L/分)。ノーズコーンおよびイヤーバーを使用して、頭部を定位フレームに固定した。頭頂部を剃毛し、エタノールおよびベタジンで滅菌し、滅菌ドレープを手術部位の周囲に適用した。リドカインを皮下投与し、術後疼痛を軽減するため、ブプリノルフィン(0.1mg/kg)を投与した。歯科用ドリルを使用して、十字縫合の0.8mm後方、正中線から1.6mm側方の位置において片側性に頭蓋に穿頭孔を開けた。ベクターを、マイクロマニピュレーターに取り付けられた27ゲージ針を有するハミルトン注射器を使用して送達した。3.1ul(低用量、3.7×1010vg;n=3)、15.5ul(中用量、1.9×1011vg;n=2)、および77.5ul(高用量、9.3×1011vg;n=3)という三つの用量を評価した。さらに、送達体積の違いを説明するため、最高体積(77.5μl)で送達される最低用量のウイルス(3.7×1010vg)を使用する第4のコホートを含めた(低用量/高体積;n=3)。ベクターを、マイクロマニピュレーター上の手動注射ノブによって制御された、約25ul/分の速度で注射した。針を注射後1分間その場に放置し、次いで、徐々に引き抜いた。皮膚を閉鎖し、回復中、動物を保温した。3週間後、動物を安楽死させ、生理食塩水で灌流し、続いて、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で灌流した。脳、脊髄、および肝臓組織を、4%PFA中で一晩後固定し、続いて、ショ糖中で凍結保管した。組織をドライアイスで凍結させ、-80℃で保管した後、切片化した。
家畜ブタ(30kg)を、Palmetto Research Swine(Reevesville,SC)から入手した。0.8mg/kgのアセプロマジン、33mg/kgのケタミン、および0.04mg/kgのアトロピンによって、動物を鎮静させた。イソフルランを使用して麻酔を維持した。フェタニルパッチ(100μg/時間、3日間)によって疼痛を管理した。皮膚を傍正中方向に切開し、後頭キール(keel)まで解剖を実施した。高速Midas Legendによって、同側眼窩上孔から約1cm後方、内側において穿頭孔を開けた。硬膜を18ゲージ針で穿刺した。近位脳室腹腔シャントカテーテルを、脳室を貫通していることを感知するまで、右側脳室の同側前角に向かって、後方、わずかに内側の方向で、脳内に約2.5cm挿入した。針の正確な位置は、スタイレットが取り出された後、脳脊髄液(CSF)の流れを観察することによって決定された。位置は、Omnipaque-300造影色素を使用したコントラスト脳室造影によって確認された。カテーテルをさらに1cm進め、3mlのCSFを除去した。MINJ-PDポンプ(Tritech Research, Los Angeles,California)を使用してAAV9-GFP(20mM Tris pH8.0、1mM MgCl2、200mM NaCl+0.001%プルロニックF68中の1.34×1013vg/ml)1.5~4.5mlを10分間にわたって送達した。カテーテルをさらに15分間放置し、次いで、除去した。ゼルフォームの小片を実質部の貫通部位の上に置き、穿頭孔をボーンワックスで密封した。3-0ビクリルで断続縫合し、続いて、2-0エチロンで連続縫合して、皮膚を閉鎖した。22日後、動物に静脈内ヘパリンを与え、続いて、生理食塩水および4%PFAで灌流し、脳を採集した。組織を30%ショ糖中で凍結保管した後、切片化した。
組織学:40μmの冠状切片をLeica CM1950クリオスタットで切断した。GFP(Millipore AB3080P,Billerica,MA)、GFAP(Millipore MAB360)、NeuN(Millipore MAB377)、S100β(Millipore MAB079-1)、Fox-2(Abcam ab167282,Cambridge,MA)、カルビンディン(Sigma C9848,Saint Louis,MO)、およびGAD67(Millipore MAB5406)の一次抗体を、免疫組織化学のため、1:500で使用した。S100βおよびFox-2の抗原賦活化を、クエン酸緩衝液(10mMクエン酸ナトリウム、pH6.0)を使用して、それぞれ52℃または95℃で20分間実施した。蛍光顕微鏡法のため、GFPを検出するため、AlexaFluor(登録商標)488がコンジュゲートされたヤギ抗ウサギ二次抗体(Life Technologies A11070,Grand Island,NY)を使用し、細胞型マーカーを検出するため、AlexaFluor(登録商標)596がコンジュゲートされたヤギ抗マウス二次抗体(Life Technologies A11032)を1:500希釈で使用した。GFP+細胞の発色検出のため、ビオチンがコンジュゲートされたヤギ抗ウサギ二次抗体(Jackson Immunoresearch 111-065-144,West Grove,PA)を1:250希釈で使用し、続いて、Vector ABCキットおよびHRP検出系(Vector,Burlingame,CA)を使用した。蛍光フィルター(UV-2E/C、B-2E/C、およびG-2E/C)を有するNikon(Tokyo,Japan)Eclipse E400顕微鏡ならびにDS-Qi1McカメラおよびDS-Fi1カメラを有するNikon Digital Sightコントローラーによって、スライドを画像化した。
形質導入の定量化:4倍対物レンズを使用して、海馬、大脳皮質、および小脳のJPEG画像を撮影した。光源の強度および露光時間は一定に保たれた。画像を、分析のため、ImageJ(http://imagej.nih.gov_ij/)にインポートした。四つのAAV処置群は、分析を実施する個体に対して盲検化された。各画像について、関心領域外の区域を最初にマスクした(分析には含めなかった)。海馬および大脳皮質については、これらの区域に隣接する脳領域を分析から排除した。小脳については、分子層外の画像の領域を排除した。3種のカラーチャンネル(赤、緑、および青)を、3個の別々の8ビットグレースケール画像に分割した。緑色チャネルからの画像を使用して、0と予め決定された閾値との間の値を有する画像におけるピクセルの割合を計算した。組織化学的染色は黒色であるため、この値の範囲内のピクセルは、切片の染色された部分をカバーするものに相当するはずである。バックグラウンド染色の検出を最小化するため、各領域についての閾値を経験的に設定するため、PBSによって処置された対照を使用した。赤色チャネルを使用して、関心領域(即ち、マスクされていないピクセル)のピクセルの割合も同様に決定した。陽性染色されたピクセルの割合を、関心領域をカバーするピクセルの割合で割り、100を掛けることによって、GFP+である関心領域の割合を得た。大脳皮質および海馬については、注射された側と注射されていない側との違いを平均化するため、脳の左側および右側から均等に採取された動物1匹あたり4個の画像を分析した。同様に、各動物について6個の小脳の画像を分析した(右2個、中央2個、左2個)。処置群間の違いを、両側t検定によって決定した。
実施例2
形質導入の体内分布
臨床的に使用され得る用量を決定するため、二つの主要な制限因子:合理的な時間内に安全に送達され得るウイルス力価および体積を考察した。臨床等級のベクターのウイルス力価は、一般に、1013~1014ベクターゲノム(vg)/mlの範囲である。本発明者らは、成人において約8~16mlに相当する、CSF体積の5~10%が、単一ボーラスICV注射で送達され得ると推定する。これらの推定値に基づき、成人ICV最大用量は、約1015vgであろう。ラットCSF体積に基づき用量をスケールダウンすると、この用量は、成体ラットにおいて約3×1012vgに相当する。この用量は、理想的な条件の下での最大値を表すため、この研究において試験された最高用量は、この最大値の3分の1であった。
成体スプラーグドーリーラットに、scAAV9-GFPの側脳室への片側注入を与え、3週間後に屠殺した。3.1ul(低用量、3.7×1010vg)、15.5ul(中用量、1.9×1011vg)、および77.5ul(高用量、9.3×1011vg)という三つの用量を評価した。さらに、送達体積の違いを説明するため、最高体積(77.5μl)で送達される最低用量のウイルス(3.7×1010vg)を使用する第4のコホートを含めた(低用量/高体積)。GFPについて染色された高用量によって処置されたラットの脳の代表的な画像を図1に提示する。二つの型の分布が、低倍率で明らかであった。大脳皮質および小脳においては、細胞はこれらの領域に均一に分布していた。定性分析は、高度のGFP発現を示した注射路に隣接する区域を除き、注射された半球および注射されていない半球において類似のGFP発現を示した。対照的に、海馬および線条体のような辺縁領域は、側脳室への片側注入後に脳の二つの側の間で異なる形質導入パターンを示した。頸部脊髄の切片は、特に高用量群において、GFPについて陽性に染色された(図1c)。しかしながら、腹側灰白質における細胞体の形質導入の証拠はほとんど存在しなかった。代わりに、染色の大部分が、脊髄外にあるニューロンからの軸索突起であるようであった。
ニューロン細胞およびグリア細胞の両方がICV送達によって形質導入された。ベクターは側脳室へ送達されたため、本発明者らは、最初に、脈絡叢および上衣細胞層における形質導入を探した。両方の構造に多くのGFP+細胞が存在した(図2a)。ニューロンも形質導入された。GFPおよびニューロン核マーカーであるNeuNについての染色は、大脳皮質および海馬の顆粒層の両方における細胞を共標識した(図2b)。ニューロンは大脳皮質全体で形質導入されたが、GAD67発現GABA作動性ニューロンは形質導入されなかった(図2f)。小脳においては、プルキンエ細胞を標識する核マーカーであるFox2が、GFP染色と共局在し、このことから、この細胞型の形質導入が示された(図2c)。これらのGFP+細胞は、プルキンエ細胞を含むいくつかの型のニューロンによって発現されるカルビンディンについても陽性に染色された(図2d)(13)。アストロサイトのモルホロジーを有する多くの細胞が形質導入された。しかしながら、注射路の近傍を除き、GFAPおよびGFPの共局在は観察されなかった(図2e)。しかしながら、アストロサイトのもう一つのマーカーであるS100βは、これらのGFP+細胞と共局在し、アストロサイトの形質導入を示した(図2g)。
実施例3
脳における形質導入効率
GFP+区域を、大脳皮質、海馬、および小脳という三つの脳領域において測定した(図3)。scAAV9の用量を増加させると、一般に、三つの脳領域の全てにおいて形質導入が増加した。海馬においては、区域の25%~35%がGFP+であり、染色の多くは顆粒層外で起こっていた。小脳においては、GFP+細胞は、主にプルキンエニューロンの形質導入から、分子層の区域の5%~32%を占めていた。大脳皮質は、定量化された三つの領域の中で最低レベルの形質導入を有し、区域の1%~10%がGFP+であった。
実施例4
非CNSの形質導入
ICV注入後にscAAV9が末梢に逃避したか否かを決定するため、肝臓試料をGFPについて染色した。極めて少ないGFP細胞が同定され(示されないデータ、中用量ラットから評価された組織18cm2当たり1個の陽性細胞)、CNSから逃避したscAAV9の量は小さいことが示唆された。
実施例5
アストロサイト活性化
外来のウイルスおよびタンパク質の導入は、CNSにおいて免疫応答を誘発することができ、しばしば、アストログリオーシスを起こす。活性化されたアストロサイトの存在を探すため、本発明者らは、PBSによって処置された2匹のラットおよび高用量scAAV9によって処置された2匹のラットに由来する脳切片を、GFAPについて染色した。図1に図示されたものに隣接する領域から採取された、動物1匹当たり8個の切片(小脳由来4個、海馬および大脳皮質を含む4個)を評価した。GFAP染色を、アストロサイトの活性化の総体的な変化を探すため、低倍率で評価し、局所的変化を探すため、小脳、海馬、および大脳皮質において高倍率で評価した。生理的食塩水によって処置された動物と比べて、AAVによって処置された動物において、染色の識別可能な変化は観察されなかった。
実施例7
成体ブタへのICV注射
3匹の成体家畜ブタに、1.5~4.5mlの体積で、2.01×1013~6.03×1013vgの範囲の用量で、scAAV9-GFPの片側注射を与えた。3週間後、動物を安楽死させた。3匹の全てのブタからの結果は、類似していた。代表的な切片を図4に示す。ラットと同様に、大脳皮質、海馬、および小脳の実質的な形質導入が存在する。形態学的には、これらの細胞は、ラットにおいて見出されたものと外観が類似しているようであり、プルキンエ細胞およびアストロサイトを含む両方のニューロンの形質導入が示唆された。
将来の臨床試験において予想される用量の範囲を使用して、ベクターの体内分布を調査するため、ラットにおけるICV scAAV9-GFPの用量漸増研究を利用し、これらの観察を大型動物モデルに拡張した。scAAV9-GFPの片側ICV注射は、大脳皮質および小脳の全体において均一な形質導入をもたらしたが、海馬のようなより深い構造においては、二つの半球の間に実質的な差異が観察された(図1)。
理論に拘束されるものではないが、小脳および大脳皮質に到達したウイルスの大部分は、脳室系を通って、くも膜下腔に移動し、次いで、組織に移動することによって、形質導入を行うことができるが、より深い構造は、おそらく、針路を通って、上衣層を通過したベクターによって形質導入される。この差異の起源が何であれ、これらの結果は、両側ICV注射が臨床的状況において好ましい可能性を示唆している。ブタへのICV-scAAV9-GFP注射は、ラットにおいて観察された形質導入パターンを模倣する(図1および4)。これらのデータは、ラットにおいて観察された形質導入パターンが、より大型の哺乳動物の脳に拡張されることを示唆している。
ssAAV9ベクターのICV送達は、マウスおよびイヌの両方において達成されている。これらの種において観察された形質導入パターンには、二つの顕著な違いがある。P21において処置されたマウスにおいて、形質導入プロファイルは主にニューロン性であるが、プルキンエニューロンの形質導入はほとんど存在しない。アストロサイトは不十分に形質導入される(7)。ICV-scAAV9によって処置された成体イヌにおいて、同一の形質導入のパターンが見出される(12)。対照的に、本明細書に開示されるように、ICV-scAAV9によって処置されたラットおよびブタは、アストロサイトおよびニューロンの実質的な形質導入を有し、小脳の細胞、特に、プルキンエニューロンの実質的な形質導入が存在する。従って、この研究における細胞指向性および分布パターンは、他の種における以前に発表されたICV研究とは著しく異なる。
scAAV9またはssAAV9のいずれかであるAAV9のICV送達は、霊長類においては未だ実施されていない。しかしながら、scAAV9-GFPの大槽送達は、マカクにおいて評価されている(14)。この研究の著者は、GFPとニューロンマーカーおよびアストロサイトマーカーとの共局在を報告しており、大脳皮質および小脳における形質導入の全体的パターンは、ラットおよびブタにおいて観察されたものと類似しているようである。このマカク研究と本発明における研究との一つの顕著な違いは、霊長類はS100β+アストロサイトに加えてGFAP+アストロサイトの形質導入も示すが、本発明者らのげっ歯類研究は、脳全体におけるS100β+アストロサイトの形質導入を主に見出し、GFPのGFAPとの共局在は注射路の周辺のみであった点である。
AAV形質導入の違いは、用量、送達方法、年齢、および種の違いから生じ得る。近年、アストロサイトはモノリシックな細胞の集合体ではないことが明白になっている。アストロサイトのマーカーとして一般的に使用されているGFAPは、これらの細胞の亜集団において免疫組織化学的に検出されない(15)。さらに、異なるアストロサイトの亜集団は、異なる方式で刺激に応答し(16)、アストロサイトの亜型の多様性は種によって変動し得る(17)。理論に拘束されるものではないが、霊長類とラットのアストロサイトの形質導入の違いは、ラットにおけるアストロサイトの特定の亜集団(S100βによって標識されたサブセット)についてのAAV9の優先性によって説明され得る。あるいは、霊長類において形質導入されたGFAP+アストロサイトが、ラットには存在しないという可能性がある。
進化系統から、ラット、ブタ、および霊長類が示すAAV9についての形質導入パターン(ニューロンの形質導入およびアストロサイトの形質導入の混合物、高レベルの小脳の形質導入)と、マウスおよびイヌが有するパターン(ニューロンの形質導入、不十分な小脳の形質導入)とが異なることは、予想外である。以前の研究をより詳細に調査する中で、本発明者らは、形質導入パターンと相関する一つの変数を同定した。本発明者らの研究および霊長類研究(14)は、scAAV9を用いたが、マウス研究(7)およびイヌ研究(12)は、ssAAV9を利用した。scAAVベクターは、第二鎖合成の必要性をバイパスするため、ssAAVベクターより優れている(18~22)。これは、形質導入される細胞数の増加、より速いトランスジーン発現、およびより高いレベルのトランスジーンの産生をもたらす。しかしながら、異なる細胞指向性を示す同一の細胞型のssAAVベクターおよびscAAVベクターは、以前には報告されていない。上で観察された違いは、プルキンエニューロンおよびアストロサイトが、scAAV9ベクターと比較した場合、ssAAV9ベクターによるターゲティングを受け入れにくいことを示唆している。これは、これらの細胞型を標的とするためのssAAVを使用した治療にとって可能性のある障壁を表す。
理論に拘束されるものではないが、この違いの一つの説明は、これらの細胞型が皮質ニューロンと比べて実質的に低い第二鎖合成の効率を示し、ssAAVベクターが転写活性状態に達する確率を低下させるというものである。これは、プルキンエ細胞がある種の疾患において変性をより受けやすいことに寄与する可能性のある、これらの細胞型の間のDNA修復経路の違いをさすかもしれない。
外来タンパク質、単純には、(2個のヌル変異を有する個体の場合)マーカーまたは治療用遺伝子の送達は、形質導入された細胞の喪失を引き起こし得る、そのタンパク質に対する免疫応答のリスクを保持している。アストロサイトは、特に、抗原提示細胞として役立つことができる(23)。従って、scAAV9送達後に見られるS100β+アストロサイトの形質導入が、懸念され得る。実際、Samaranchらは、AAV9のくも膜下腔内送達から3週間後に、プルキンエニューロンの喪失と相関する行動障害を霊長類において観察した。興味深いことに、この喪失はトランスジーン依存性であった。外来タンパク質GFPの発現は行動異常を引き起こしたが、自己認識タンパク質hAADCの発現は、ほとんどまたは全く有害効果を及ぼさなかった(24)。開示された研究において使用されたラットにおいては顕性の行動変化は観察されず、GFAPの染色は、アストログリオーシスの兆候を明らかにしなかった。しかしながら、本発明者らが使用した最高用量は、Samaranchらによる霊長類研究において使用された用量より幾分低かった。両方の研究がウイルスのCSFへの送達を調査したが、送達方法も異なっていた(ICV対大槽)。臨床的情況においては、免疫抑制が必要される場合がある(3)。
限定されるわけではないが、リソソーム蓄積症のような多数の障害が、ICV AAV9によって媒介される治療のための良好な候補である。これらの障害の大部分が、単一の酸性加水分解酵素の欠損による(25)。これらの酵素は、全ての細胞において本質的に必要とされるが、クロスコレクションとして公知の過程において、形質導入された細胞から分泌され、近くの欠損細胞によって取り込まれる場合がある(26)。本発明者らが観察した広範な形質導入は、この型の障害の処置のために理想的であるようである。実際、ムコ多糖症IIIBマウスのICV AAV9処置は、疾患の生化学的測定値および組織学的測定値の実質的な改善、ならびに正常またはほぼ正常なレベルへの寿命の増加をもたらした(12)。本発明者らの研究において観察された高レベルのプルキンエニューロンの形質導入から、脊髄小脳失調症のようなこれらの細胞に影響を与える疾患は、明白に、ICV scAAV9によって媒介される遺伝子治療の標的である。この送達経路は、実質への直接注射を避け、より安全であるべきである(27、28)。
実施例8
参考文献
Figure 2022101648000002
Figure 2022101648000003
Figure 2022101648000004
Figure 2022101648000005
開示された本発明の原理が適用され得る多くの可能な態様を考慮すると、例示された態様は、本発明の好ましい例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことが認識されるべきである。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。従って、本発明者らは、これらの特許請求の範囲の範囲および本旨に含まれる全てのものを、本発明として主張する。

Claims (15)

  1. 非分泌型治療用タンパク質をコードする自己相補型アデノ随伴ウイルス血清型9(scAAV9)の有効量をヒト対象へ投与する工程
    を含む、非分泌型治療用タンパク質をその必要のあるヒト対象の中枢神経系(CNS)へ送達する方法であって、scAAV9が、脳室内、くも膜下腔内大槽、またはくも膜下腔内腰椎の経路を介した脳脊髄液(CSF)への注射によって投与される、方法。
  2. 治療用タンパク質をコードする自己相補型アデノ随伴ウイルス血清型9(scAAV9)の有効量をヒト対象へ投与する工程
    を含む、治療用タンパク質をその必要のあるヒト対象のニューロン、プルキンエニューロン、および/またはアストロサイトへ送達する方法であって、scAAV9が、脳室内、くも膜下腔内大槽、またはくも膜下腔内腰椎の経路を介した脳脊髄液(CSF)への注射によって投与される、方法。
  3. 治療用タンパク質が非分泌型治療用タンパク質である、請求項2記載の方法。
  4. ヒト対象が乳児である、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
  5. 約7.4×1012~約1.86×1014GCの全用量のscAAV9を対象へ投与する工程を含む、請求項4記載の方法。
  6. 対象が成人である、請求項1~3のいずれか一項記載の方法。
  7. 約2.59×1013~約6.51×1014GCの全用量のscAAV9を対象へ投与する工程を含む、請求項6記載の方法。
  8. 遺伝性障害がリソソーム蓄積症である、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
  9. 治療的有効量の免疫抑制剤を対象へ投与する工程を含む、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
  10. 免疫抑制剤が細胞傷害性T細胞の活性を減少させる、請求項9記載の方法。
  11. 免疫抑制剤が脳炎を減少させる、請求項9または10記載の方法。
  12. 免疫抑制剤が非ステロイド性抗炎症剤である、請求項9~11のいずれか一項記載の方法。
  13. 対象における脳炎のリスクを低下させる、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
  14. scAAV9が脳における細胞に形質導入する、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
  15. scAAV9が海馬、小脳、および大脳皮質における細胞に形質導入する、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
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