JP2022101155A - 成長の促進された植物を生産する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】植物の地上部の成長を促進させる有効な技術を提供する。【解決手段】成長の促進された植物を生産する方法であって、対象となる植物の細胞内において、アクチン結合タンパク質、又は、アクチン結合タンパク質を含む融合タンパク質を発現させることによりモノマーアクチン量を増加させることを含む方法。【選択図】図1

Description

本発明は、植物において特定の遺伝子を発現させることにより、成長を促進した植物を生産する方法に関する。
近年、世界的な人口増加及び気候変動による農作物生産可能地域の減少や不作により食料供給量の不足が危ぶまれている。また、バイオマスの様々な利用開発により今後バイオマス資源の増産は持続可能な社会実現の重要な因子の一つである。
従来、植物の改変によるバイオマス増産は様々な方法で試みられてきた。例えば、ミカン科の植物において、珠心胚を有糸分裂阻害物質で処理し、DNAを倍加させることで、植物器官を増大させた技術(特許文献1)や、シロイヌナズナ属の植物において、気孔の開閉に関連するタンパク質PATROL1を過剰発現させることにより、光合成活性を上昇させ、植物の成長を促進させた技術(非特許文献1)が報告されている。しかし、何れもその対象植物種が限られている上に、その効果も限定的であった。
一方、真核生物に普遍的に存在する細胞骨格タンパク質であるアクチンに着目し、これに結合するアクチン結合タンパク質を改変又は発現させることにより、植物の成長促進を試みた報告もある(特許文献2、特許文献3、非特許文献2)。アクチンのアミノ酸配列は植物種間でも高度に保存されていることから、アクチン結合タンパク質の改変による植物の成長促進は、植物種を問わず広く適用できることが期待される。
しかし、従来のアクチン結合タンパク質を用いた従来技術でも、その効果は限定的であった。例えば、アクチン結合タンパク質としてプロフィリンを過剰発現させることにより植物の成長促進を試みた例(非特許文献2)では、地下部において主根が野生型より50%、根毛は野生型より200%長くなったものの、胚軸の長さは野生型に比べてわずかに(3%程度)伸長した程度であった。
特開2006-050960号公報 米国特許第6344601号公報 米国特許出願公開第2013/0007915号公報
Hashimoto-Sugimoto et al., Nature Communications, 2013年, Vol.4, pp.2215 Ramachandran et al., Plant Physiology, 2000年, Vol.124, No.4, pp.1637-1647
本発明は、植物の地上部の成長を促進させる有効な技術を提供することを、その目的の一つとする。
本発明者らは、モノマーアクチン(単量体アクチン)に結合するタンパク質であるチモシン(Thymosin)に着目し、チモシン又はチモシン融合アクチンを植物体に導入して、植物細胞内のモノマーアクチン量を増加させることにより、植物の地上部の成長がベクターコントロールの植物より促進されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、例えば以下の何れかの態様を包含する。
[書類名]特許の範囲
[項1]成長の促進された植物を生産する方法であって、対象となる植物の細胞内において、アクチン結合タンパク質、又は、アクチン結合タンパク質を含む融合タンパク質を発現させることによりモノマーアクチン量を増加させることを含む方法。
[項2]前記アクチン結合タンパク質が、チモシン(Thymosin)又はその類似体である、項1に記載の方法。
[項3]アクチン結合タンパク質を含む融合タンパク質が、アクチン結合タンパク質とアクチンのイソフォームとの融合タンパク質である、項1又は2に記載の方法。
[項4]前記アクチン結合タンパク質又は融合タンパク質が、下記(ア)~(キ)の何れかに示されるタンパク質である、項2又は3に記載の方法;
(ア)配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質;
(イ)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1個~10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加してなるアミノ酸配列を有するタンパク質であって、アクチンに結合し、かつ、植物においてその成長を向上させる活性を有するタンパク質;
(ウ)配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、アクチンに結合し、かつ、植物においてその成長を向上させる活性を有するタンパク質;
(エ)配列番号2に示される塩基配列によりコードされるタンパク質;
(オ)配列番号2に示される塩基配列と少なくとも80%の同一性を有する塩基配列によりコードされるタンパク質であって、アクチンに結合し、かつ、植物においてその成長を向上させる活性を有するタンパク質;
(カ)配列番号2に示される塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によりコードされるタンパク質であって、アクチンに結合し、かつ、植物においてその成長を向上させる活性を有するタンパク質;及び
(キ)前記(ア)~(カ)から選択される何れかのタンパク質からなる第1のドメインと、他のタンパク質からなる第2のドメインとが融合してなるタンパク質であって、アクチンに結合し、かつ、植物においてその成長を向上させる活性を有するタンパク質。
[項5]前記タンパク質を発現させる工程が、恒常的に遺伝子発現を誘導するプロモータの下流に、前記(ア)~(キ)の何れかに示されるタンパク質をコードする核酸が作動可能に連結された発現カセットを含むベクターを用いて、植物を形質転換することを含む、項4に記載の方法。
[項6]恒常的に遺伝子発現を誘導するプロモータが、アクチン遺伝子のプロモータである、項5に記載の方法。
[項7]項5又は6に記載の植物の生産方法に使用される発現カセットであって、恒常的に遺伝子発現を誘導するプロモータの下流に、前記(ア)~(キ)の何れかに示されるタンパク質をコードする核酸が作動可能に連結された発現カセット。
[項8]項7に記載の発現カセットを含むベクター。
[項9]項8に記載のベクターを含むキット。
[項10]項1~6のいずれか一項に記載の方法により生産された、及び/又は、項8に記載のベクターにより形質転換された、植物若しくはその子孫、又はそれらの一部。
本発明によれば、アクチン結合タンパク質又はこれを含む融合タンパク質を植物体に導入して、植物細胞内のモノマーアクチン量を増加させることにより、成長(特に地上部の成長)が促進された植物を生産することが可能になる。これにより、植物個体あたりのバイオマス生産量を増やすことができる。植物の成長促進は、単位面積あたりの収量の増加により、食糧やバイオマス資源の増産に貢献することが期待できる。
図1は、実施例1で得られたACT7pro:thymosin導入植物及びACT7pro:ACT7-thymosin導入植物並びにベクターコントロール植物の各々の表現型を示す外観写真である。
図2は、実施例1で得られたACT7pro:thymosin導入植物及びACT7pro:ACT7-thymosin導入植物並びにベクターコントロール植物の各々について、栽培後43日目の植物体の各個体内で最も大きい葉の長軸の長さを比較した結果を表すグラフである。各植物の例数は、ベクターコントロール植物がN=26、ACT7pro:thymosin導入植物がN=24、ACT7pro:ACT7-thymosin導入植物がN=26であった。グラフ中*は、one-way ANOVA Bonferroni検定におけるp<0.01を表す。
図3は、実施例1で得られたACT7pro:thymosin導入植物及びACT7pro:ACT7-thymosin導入植物並びにベクターコントロール植物の各々について、栽培後43日目の植物体の地上部の茎の長さを比較した結果を表すグラフである。各植物の例数は、ベクターコントロール植物がN=26、ACT7pro:thymosin導入植物がN=24、ACT7pro:ACT7-thymosin導入植物がN=26であった。グラフ中*は、one-way ANOVA Bonferroni検定におけるp<0.01を表す。
図4は、実施例1で得られたACT7pro:thymosin導入植物及びACT7pro:ACT7-thymosin導入植物並びにベクターコントロール植物の各々について、栽培後43日目の植物体の地上部の湿重量を比較した結果を表すグラフである。各植物の例数は、ベクターコントロール植物がN=25、ACT7pro:thymosin導入植物がN=24、ACT7pro:ACT7-thymosin導入植物がN=26であった。グラフ中*は、one-way ANOVA Bonferroni検定におけるp<0.01を表す。
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
1.概要:
本発明の一側面は、成長の促進された植物を生産する方法(以下適宜「本発明の方法」と略称する。)に関する。斯かる本発明の方法は、対象となる植物の細胞内において、アクチン結合タンパク質又はそれを含む融合タンパク質を発現させることにより、モノマーアクチン量を増加することを含む。
本開示において、植物の「成長を向上させる活性」又は「成長を促進する活性」とは、前記のヒトチモシンが本来的に備えていると推定される、モノマーアクチンに結合してその重合化を阻害する活性をいう。本明細書においてはとりわけ、ヒトチモシンから誘導される前記の各種タンパク質を植物体内で発現させた際に、斯かる植物の成長が野生株と比べて促進されている場合、斯かるタンパク質は植物の成長を向上させるヒトチモシンの活性を維持しており、惹いては本発明の方法におけるアクチン結合タンパク質として使用可能であるということができる。
以下、まずは本発明の方法において使用されるアクチン結合タンパク質又はそれを含む融合タンパク質(以下適宜「成長促進タンパク質」と略称する。)について説明し、その後で本発明の方法の説明に移ることにする。
2.成長促進タンパク質:
本発明の方法では、成長促進タンパク質として、アクチン結合タンパク質又はそれを含む融合タンパク質を用いる。アクチン結合タンパク質としては、チモシン、アデニル酸シクラーゼ結合タンパク質、プロフィリン等が挙げられるが、特にチモシン又はその類似体が好ましい。
本開示において「チモシン」(Thymosin)とは、モノマーアクチンに結合して複合体を形成するタンパク質である。チモシンは、細胞内でモノマーアクチンに特異的に結合し、アクチンフィラメントの重合を調節することが知られている。ヒト(Homo sapiens)チモシンのアミノ酸配列を配列番号1に、斯かるチモシンをコードするヒトチモシン遺伝子のコード領域の塩基配列を配列番号2にそれぞれ示す。本開示においてチモシンの「類似体」とは、チモシンと類似のアミノ酸配列を有すると共に、チモシンと同様の作用効果を維持するタンパク質をいう。
後述の実施例から明らかなように、本発明の方法においてアクチン結合タンパク質として好ましく使用されるチモシン又はその類似体は、主にモノマーアクチンに結合してその重合を阻害することにより、植物細胞内のモノマーアクチン量を増加させているものと推測される。惹いては、チモシン又はその類似体以外であっても、モノマーアクチンに結合してその重合を阻害することが可能なアクチン結合タンパク質であれば、本発明の方法において好適に使用できる蓋然性が高い。本発明の方法は、これらの任意のアクチン結合タンパク質又はそれを含む融合タンパク質を用いる態様を広く包含するものとする。
本開示において、アクチン結合タンパク質を含む「融合タンパク質」とは、アクチン結合タンパク質からなる第1のドメインと、他のタンパク質からなる第2のドメインとが融合してなるタンパク質であって、チモシンと同様の作用効果を維持するタンパク質をいう。なお、第2のドメインの種類としては特に制限されず、第1のドメインが有するモノマーアクチンへの結合活性及びその重合化阻害活性を妨げない限りにおいて、任意のタンパク質からなるドメインを使用することができる。一態様によれば、斯かる第2のドメインとしては、アクチン、蛍光タンパク質等が好ましく、アクチンの各イソフォーム又はその類似体がより好ましく、アクチンのイソフォームACT7又はその類似体が特に好ましい。アクチンの一例として、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のアクチンのイソフォームACT7のアミノ酸配列を配列番号3に、シロイヌナズナのACT7遺伝子のコード領域の塩基配列を配列番号4にそれぞれ示す。具体的に、アクチン結合タンパク質を含む融合タンパク質の第2のドメインとしては、配列番号3に示されるアクチンのイソフォームACT7のアミノ酸配列と、少なくとも80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は92%以上、又は94%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上の相同性(好ましくは同一性)を有するアミノ酸配列からなるタンパク質が好ましい。
本発明の方法において、成長促進タンパク質として用いられる、アクチン結合タンパク質又はそれを含む融合タンパク質として、具体的には、下記(ア)~(キ)の何れかに示されるタンパク質が挙げられる。
(ア)配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質、即ち、ヒトチモシン。
(イ)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、通常1個~10個、又は1個~9個、又は1個~8個、又は1個~7個、又は1個~6個、又は1個~5個、又は1個~4個、又は1個~3個、又は1個~2個、又は1個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加してなるアミノ酸配列を有するタンパク質であって、アクチンに結合し、かつ、植物においてその成長を向上させる活性を有するタンパク質。
(ウ)配列番号1に示されるアミノ酸配列と、少なくとも80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は92%以上、又は94%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上の相同性(好ましくは同一性)を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、アクチンに結合し、かつ、植物においてその成長を向上させる活性を有するタンパク質。
なお、本開示において、2つのアミノ酸配列の「相同性」(homology)とは、両アミノ酸配列をアラインメントした際に各対応箇所に同一のアミノ酸残基又は類似の(即ち、物理化学的性質が類似する)アミノ酸残基が現れる比率であり、2つのアミノ酸配列の「同一性」(identity)とは、両アミノ酸配列をアラインメントした際に各対応箇所に同一のアミノ酸残基が現れる比率である。なお、2つのアミノ酸配列の「相同性」及び「同一性」は、例えばBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)プログラム(Altschul et al., J. Mol. Biol., (1990), 215(3):403-10)等を用いて求めることが可能である。
(エ)配列番号2に示される塩基配列、即ち、ヒトチモシン遺伝子によりコードされるタンパク質。
(オ)配列番号2に示される塩基配列と、少なくとも80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は92%以上、又は94%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上の相同性(好ましくは同一性)を有する塩基配列によりコードされるタンパク質であって、アクチンに結合し、かつ、植物においてその成長を向上させる活性を有するタンパク質。斯かる配列番号2に示される塩基配列と相同性(好ましくは同一性)の高い配列としては、ヒトチモシン遺伝子のオーソログやパラログ等のホモログや、ヒトチモシン遺伝子に1又は2以上の変異を導入して得られる塩基配列等が挙げられる。
(カ)配列番号2に示される塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によりコードされるタンパク質であって、アクチンに結合し、かつ、植物においてその成長を向上させる活性を有するタンパク質。
なお、本開示において「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。上記(カ)の文脈では、配列番号2に示される塩基配列と塩基配列の相同性が高い核酸、例えば配列番号2に示す塩基配列と前記下限値以上の相同性(又は同一性)を有する塩基配列からなるDNAの相補鎖がハイブリダイズし、それよりも相同性(又は同一性)が低い核酸の相補鎖がハイブリダイズしない条件が挙げられる。このようなストリンジェントな条件については、T. Maniatis et al., “Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd ed.” 1989, Cold Spring Harbor Laboratory等に記載の通常のハイブリダイゼーション操作におけるT値を高めた条件として当業者には自明である。例えば、0.5%SDS、5×デンハルツ[Denhardt’s、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%フィコール400]及び100μg/mLサケ精子DNAを含む6×SSC(1×SSCは0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)中で、50℃で4時間~一晩保温を行う条件等である。
(キ)前記(ア)~(カ)から選択される何れかのタンパク質からなる第1のドメインと、他のタンパク質からなる第2のドメインとが融合してなるタンパク質であって、アクチンに結合し、かつ、植物においてその成長を向上させる活性を有するタンパク質。融合タンパク質における第2のドメインとしては、先に詳述したとおりである。
3.成長の促進された植物を生産する方法:
本発明の方法では、対象となる植物の細胞内において、成長促進タンパク質として前述のアクチン結合タンパク質又はそれを含む融合タンパク質を発現させることにより、モノマーアクチン量を増加させることにより、その成長を促進する。
本発明の方法において、植物体内でその量が増加される対象となるモノマーアクチン(単量体アクチン)の種類は特に制限されない。具体的に、モノマーアクチンには複数のイソフォームが存在するが、何れか一つ又は二つ以上のイソフォームの量が増加されれば、そのイソフォームの種類によらず、本発明の方法に含まれるものとする。しかし、本発明の方法の一態様によれば、少なくともアクチンイソフォームACT7の量が増加されることが好ましい。アクチンイソフォームACT7のアミノ酸配列(配列番号3)やその遺伝子のコード領域の塩基配列(配列番号4)については、先に述べた通りである。
本発明の方法の対象となる植物は制限されず、任意の植物の育種一般に適用できる。例としては、被子植物でも裸子植物でもよく、被子植物の場合には双子葉植物でも単子葉植物でもよい。双子葉植物の例としては、制限されるものではないが、イモ類、豆類、ナス科類等が挙げられる。裸子植物としては、スギ、ヒノキ、マツ、トウヒ等が挙げられる。一態様によれば、本発明の方法の対象となる植物としては、バイオマス資源の観点から、ポプラ、ユーカリ、アカシア等の双子葉木本植物や、ミスカンザス、エリアンサス、ダンチク、ソルガム、ススキ等の単子葉エネルギー植物等が挙げられる。
本発明の方法において、植物体内でアクチン結合タンパク質を発現させる手法は制限されず、任意の手法を用いることが可能である。例としては、アクチン結合タンパク質をコードする核酸を、適切なプロモータの制御下で発現させればよい。プロモータとしては、植物細胞のゲノム内に存在する内因性プロモータを用いてもよく、外因性プロモータを用いてもよい。前者の植物細胞の内因性プロモータを使用する場合には、アクチン結合タンパク質をコードする核酸を、植物細胞ゲノム内の所望の内因性プロモータの下流に対して、内因性プロモータと作動可能に連結されるような配置で組み込まれるようにすればよい。後者の外因性プロモータを使用する場合には、アクチン結合タンパク質をコードする核酸を、外因性プロモータの核酸の下流に対して、内因性プロモータと作動可能に連結されるような配置で連結した発現カセットを含むコンストラクト(組換えベクター)を作成し、斯かる組換えベクターを用いて植物を形質転換することにより遺伝子導入を行えばよい。
一態様によれば、本発明の方法では、アクチン結合タンパク質を植物細胞内で恒常的に発現させることが好ましい。斯かる恒常発現を達成する手法としては、アクチン結合タンパク質をコードする核酸を、遺伝子発現を恒常的に誘導するプロモータや過剰発現型プロモータ等の制御下で発現させることが好ましい。斯かる恒常発現プロモータの具体例としては、アクチンACT7プロモータ又はそのオルソログ遺伝子のプロモータ、カリフラワーモザイクウイルス(CaMC)由来35Sプロモータ、トウモロコシ由来ユビキチンプロモータ等、或いはこれらの類似配列が挙げられる。特に、アクチン由来のACT7遺伝子のプロモータ又はその類似配列が、アクチン発現部位において強い発現を促す点において好ましい。ACT7遺伝子のプロモータの塩基配列を配列番号5に示す。本発明の方法で使用するプロモータとしては、斯かる配列番号5に示されるACT7遺伝子のプロモータの塩基配列と、少なくとも80%以上、又は85%以上、又は90%以上、又は92%以上、又は94%以上、又は95%以上、又は96%以上、又は97%以上、又は98%以上、又は99%以上の相同性(好ましくは同一性)を有する塩基配列が好ましい。
本開示において、「発現カセット」とは、所望のタンパク質をコードする核酸(遺伝子又はその断片)と、当該遺伝子又はその断片の発現に必要な核酸(種々の発現調節配列)とを含み、これらの核酸が作動可能に連結されてなる、自律的に発現可能な核酸単位をいう。その詳細については後述するが、少なくとも、アクチン結合タンパク質をコードする核酸を、植物細胞内において(好ましくは恒常的に)発現させることができ、その植物において成長を向上させる活性を発揮させることが可能な発現カセットであれば、本発明の方法に使用することが可能である。
本開示において、「ベクター」とは、前記の発現カセットを組み込んで、各種の宿主細胞(例えば、遺伝子導入対象となる植物細胞や大腸菌等の微生物細胞など)に導入することが可能な核酸構造体を意味する。斯かるベクターは種々知られているが、本発明の方法では如何なるベクターを用いてもよく、遺伝子導入対象となる宿主細胞の種類や遺伝子導入手法等に応じて適宜選択すればよい。ベクターの詳細については後述するが、少なくとも、アクチン結合タンパク質をコードする核酸を、植物細胞内において(好ましくは恒常的に)発現させることができ、その植物において成長を向上させる活性を発揮させることが可能なベクターであれば、本発明の方法に使用することが可能である。一例として、後述の実施例にて使用するpRI101-AN(Takara#3262)等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
前記の発現カセット又はベクターを植物細胞内に導入する方法としては、アグロバクテリウム法、PEG-リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、リポソーム法、パーティクルガン法、マイクロインジェクション法等、従来周知の方法を任意に選択して使用することが可能である。
こうして前記の発現カセット又はベクターを導入した植物細胞を植物体に生育させると共に、斯かる植物体内でアクチン結合タンパク質を(好ましくは恒常的に)発現させることにより、アクチンの重合を阻害することができ、惹いてはその成長(特に地上部の成長)が促進された植物を生産することが可能になる。
このように、本発明の方法によれば、アクチン結合タンパク質(チモシン等)又はこれを含む融合タンパク質(チモシンとアクチンイソフォームACT7との融合タンパク質等)を植物体に導入して、植物細胞内のモノマーアクチン量を増加させることにより、成長(特に地上部の成長)が促進された植物を生産することが可能になる。これにより、植物個体あたりのバイオマス生産量を増やすことができる。惹いては、単位面積あたりの収量の増加により、食糧やバイオマス資源の増産に貢献することが期待できる。
4.成長の促進された植物若しくはその子孫、又はそれらの一部:
本発明の一態様によれば、前述した本発明の方法により生産された、及び/又は、後述する本発明のベクターにより形質転換された、植物若しくはその子孫、又はそれらの一部(以下適宜「本発明の植物若しくはその子孫、又はそれらの一部」という。)が提供される。本開示において植物の「子孫」とは、当該植物の有性生殖又は無性生殖により得られる子孫をいい、当該植物のクローンを含む。例えば、当該植物体やその子孫から繁殖材料(例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラスト等)を得て、それらを基に当該植物の子孫を作出することが可能である。本開示において植物又はその子孫の「一部」としては、当該植物又はその子孫の植物における、種子(発芽種子、未熟種子を含む)、器官又はその部分(葉、根、茎、花、雄蕊、雌蘂、それらの片を含む)、植物培養細胞、カルス、プロトプラスト等が挙げられる。
本発明の植物若しくはその子孫、又はそれらの一部では、アクチン結合タンパク質(好ましくはチモシン若しくはその類似体、又は、チモシン若しくはその類似体を含む融合タンパク質)が発現され、若しくはその発現が強化されることにより、植物の成長が促進又は改善された表現型を有することを特徴とする。ここで、ある形質転換植物について、その成長が促進又は改善された表現型を有するか否かを評価するには、例えば評価対象の形質転換植物と比較対照となる植物とを同一条件下で育成し、成長した植物の葉の大きさ、茎の長さ、地上部の重量等を測定・比較すればよい。具体例としては、後述する実施例において用いた評価方法を用いることができる。
本願発明者等は、後述する実施例に説明するように、成長促進タンパク質としてチモシン(アクチン結合タンパク質)、又は、チモシンとACT7との融合タンパク質(アクチン結合タンパク質を含む融合タンパク質:以下適宜「チモシン融合ACT7」とする)を用い、これらをACT7プロモータの下流に配置した遺伝子コンストラクトを用いてシロイヌナズナ植物を形質転換し、得られたチモシン又はチモシン融合ACT7を発現するシロイヌナズナ植物の大きさを定量し比較した。その結果、チモシンを発現する植物は、好ましい実施形態において平均で葉の長軸の長さが50%、地上部の茎の長さが50%、地上部の湿重量が360%、対照となるコントロールベクターのみを形質転換した植物より大きく成長していることがわかった(図2、3、4)。また、同様にチモシン融合ACT7を発現するシロイヌナズナ植物の大きさを定量し比較したところ好ましい実施形態において平均で葉の長軸の長さが60%、地上部の茎の長さが70%、地上部の湿重量が420%、対照となるコントロールベクターのみを形質転換した植物より大きく成長していることがわかった(図2、3、4)。
5.成長の促進された植物を生産するための発現カセット、ベクター、又はキット
本発明の一態様によれば、前述した本発明の方法に使用するための、即ち、成長の促進された植物を生産するための発現カセット、ベクター、及びキットも提供される(以下それぞれ適宜「本発明の発現カセット」、「本発明のベクター」、及び「本発明のキット」と称する。)。
本発明の発現カセットにおいて、アクチン結合タンパク質をコードする核酸の他に組み込まれる発現調節配列の例としては、プロモータ、ターミネータ、エンハンサ、ポリA付加シグナル、5’-UTR(非翻訳領域)、標識若しくは選抜マーカー遺伝子、マルチクローニング部位、複製開始点等が挙げられる。中でも、少なくともプロモータを含む発現カセットであることが好ましく、少なくともプロモータ及びターミネータを含む発現カセットであることがより好ましい。既存の発現カセットとしては、特定の遺伝子等を発現させる上で必要な複数種の発現調節配列の組み合わせからなる一組の発現系単位を単一種の生物のゲノムからそのまま取り出したものや、複数種の生物に由来する複数種の発現調節配列を組み合わせて人工的に構築したものなどが存在するが、本発明の方法では何れの種類の発現カセットを使用してもよい。少なくとも、アクチン結合タンパク質をコードする核酸を、植物細胞内において(好ましくは恒常的に)発現させることができ、その植物において成長を向上させる活性を発揮させることが可能な発現カセットであれば、本発明の方法に使用することが可能である。
本発明のベクターにおいて、その形態は任意であり、直鎖状の形態であっても環状の形態であってもよい。但し、一態様によれば、環状の形態、例えばプラスミドの形態であることが好ましい。ベクターの具体的な態様の例としては、植物ウイルスベクター、アグロバクテリウムベクター等が挙げられる。植物ウイルスベクター法は、標的遺伝子を挿入した植物ウイルスゲノムのcDNAを試験管内転写し、得られたRNAをベクターとして植物に接種して感染させ、ウイルス自身の増殖能及び全身移行能を利用して、発現対象遺伝子を植物に発現させる手法である。植物ウイルスベクターの例としては、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)ベクター、キュウリモザイクウイルス(CMV)ベクター、タバコモザイクウイルス(TMV)ベクター、ジャガイモXウイルス(PVX)ベクター等が挙げられる。アグロバクテリウムベクター(T-DNAベクター)法は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)のTiプラスミドが有するT-DNA(transfer DNA)配列を利用した手法である。T-DNA配列は右境界配列(right border sequence:RB配列)と左境界配列(left border sequence:LB配列)とを両端に有し、これらの配列に挟まれた領域の遺伝子を植物ゲノムへ組み込む作用を有する。現在は、Tiプラスミドを改変した2種のプラスミド、即ち、バイナリープラスミドとヘルパープラスミドとを組み合わせたT-DNAバイナリー系が確立されており、植物の形質転換による外来遺伝子の導入を行うことが主流である。
本発明のキットとしては、少なくとも前述した本発明のベクターを、本発明の方法を実施可能な態様で含んでいればよいが、更に他の構成要素を含んでいてもよい。斯かる他の構成要素としては、本発明のベクターを植物細胞に導入して本発明の方法を実施するための試薬群や実験用素材等が挙げられる。試薬群としては、形質転換の種類に応じた酵素やバッファー等を挙げることができる。実験用素材としては、マイクロ遠心チューブ等が挙げられる。
6.その他
本開示におけるその他の用語や概念は、当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものであり、本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。例えば、遺伝子工学的技術については、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd edition), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989);D. M. Glover et al. ed., DNA Cloning, 2nd ed., Vol. 1 to 4, (The Practical Approach Series), IRL Press, Oxford University Press (1995)等に記載の方法により、又はそれらと実質的に同様な方法や改変法により行うことができる。また、本発明で使用する各種蛋白質やペプチド、あるいはそれらをコードするDNAについては、既存のデータベース(URL:http://www.arabidopsis.org/又はhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=
pubmed等)から入手することができる。
なお、本開示において引用した技術文献、特許公報、特許出願明細書等の記載内容は、その全体が援用により本明細書の記載内容として組み込まれるものとする。
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例)ACT7pro:thymosin及びACT7pro:ACT7-thymosinで形質転換したシロイヌナズナ植物体の作成
(1)形質転換用ベクターACT7pro:thymosin及びACT7pro:ACT7-thymosinの構築
以下の手順にて2種類の形質転換用ベクターACT7pro:thymosin及びACT7pro:ACT7-thymosinをそれぞれ構築した。
(1-1)形質転換用ベクターACT7pro:thymosinの構築
タンパク質ACT7-チモシン(ヒトチモシンとシロイヌナズナアクチンイソフォームACT7との融合タンパク質)のコード領域を含む公知のプラスミドpTIKL-ART-ACT7-thymosin(詳細はKijima et al., Plant and Cell Physiology, 57 (1) 46-56 (2016)参照)に含まれるACT7-チモシンのコード領域のうち、チモシンのコード領域のみをPCR反応により増幅した。本PCR反応には、フォワードプライマー及びリバースプライマーとしてそれぞれ以下に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(配列番号6及び配列番号7)を化学合成して用いた。なお、フォワードプライマーの塩基配列の5’末端にはSalI制限酵素サイト(下記表中下線)を、リバースプライマーの塩基配列の5’末端にはNotI制限酵素サイト(下記表中下線)を含む配列をそれぞれ付加した。
Figure 2022101155000002
次に、市販のベクターpRI101-AN(タカラバイオ社製)のプロモータ領域をシロイヌナズナアクチンイソフォームACT7のプロモータ(配列番号5)に置換したpRI101-AN_ACT7proベクターを用意し、このプロモータ下流のSalI-NotI制限酵素サイトに、前記のチモシンタンパク質のコード領域を公知の手法で移し替えることによって、形質転換用ベクターACT7pro:thymosinを構築した。
(1-2)形質転換用ベクターACT7pro:ACT7-thymosinの構築
前記の公知のプラスミドpTIKL-ART-ACT7-thymosinに含まれるACT7-チモシンのコード領域をPCR反応により増幅した。本PCR反応には、フォワードプライマー及びリバースプライマーとしてそれぞれ以下に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチド(それぞれ配列番号8及び配列番号7)を化学合成して用いた。なお、フォワードプライマーの塩基配列の5’末端にはSalI制限酵素サイト(下記表中下線)を、リバースプライマーの塩基配列の5’末端にはNotI制限酵素サイト(下記表中下線)を含む配列をそれぞれ付加した。
Figure 2022101155000003
次に、前記のpRI101-AN_ACT7proベクターを用意し、このプロモータ下流のSalI-NotI制限酵素サイトに、前記のACT7-チモシン融合タンパク質のコード領域を公知の手法で移し替えることによって、形質転換用ベクターACT7pro:ACT7-thymosinを構築した。
(2)フローラルディップ法を用いたACT7pro:thymosin及びACT7pro:ACT7-thymosinによるシロイヌナズナの形質転換
上記(1)で得られた各形質転換用ベクターを、土壌細菌アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)GV3101 (C58C1 Rifr) pMP90 (Gmr)株(詳細はKoncz et al, Mol. Gen. Genet., (1986), 204:383-396参照)に対して、エレクトロポレーション法で導入した。導入した遺伝子導入菌を、200mLの抗生物質(カナマイシン(Km)50mg/L、ゲンタマイシン(Gm)25mg/L、及びリファンピシリン(Rif)50mg/L)を含むLB培地で2日間培養した。
次いで、培養液から菌体を回収し、500mLの浸潤培地(Infiltration medium)に懸濁した。形質転換させる植物体として、米国シロイヌナズナバイオリソースセンター(ABRC)から取り寄せたシロイヌナズナ野生株Col-0を45~60日間育てて花を咲かせ、主茎を切った後にさらに10日間育ててから形質転換に用いた。形質転換は、前記の形質転換用ベクターを導入した各菌体を懸濁させた浸潤培地にシロイヌナズナを2分間浸して感染させ、通常通り育成しT1種子を収穫した。その後、T1種子を50%ブリーチ、0.02%Triton X-100溶液で7分間滅菌し、滅菌水で3回リンスし、50mg/Lのカナマイシン(Km)を含むMS選択培地に播種した。
上記カナマイシンプレートで生育する形質転換植物体を選抜し、土壌に植え換えて、22℃、明期16時間、暗期8時間で播種日から43日間生育することにより、最終的に形質転換T1植物を得た(それぞれACT7pro:thymosin導入植物及びACT7pro:ACT7-thymosin導入植物とする。)。
(3)形質転換植物の表現型解析
上記(2)で栽培したACT7pro:thymosin導入T1植物及びACT7pro:ACT7-thymosin導入T1植物について、最も大きい葉の長軸の長さ、地上部の茎の長さ、及び葉を含まない地上部の湿重量を測定した。また、対照として、チモシン遺伝子又はACT7-チモシン遺伝子を導入していない前記のpRI101-AN_ACT7proベクターのみを形質転換したシロイヌナズナ(ベクターコントロール植物)についても、同様の測定を行った。その結果、ベクターコントロール植物に比べて、ACT7pro:thymosin導入植物及びACT7pro:ACT7-thymosin導入植物では、成長が促進されていることが示された(図1~4)。
前述のように、本発明によれば、アクチン結合タンパク質又はこれを含む融合タンパク質を植物体に導入して、植物細胞内のモノマーアクチン量を増加させることにより、成長が促進された植物、特に地上部の成長が促進された植物を生産することが可能になる。これにより、植物個体あたりのバイオマス生産量を増やすことができる。植物の成長促進は、単位面積あたりの収量の増加により、食糧やバイオマス資源の増産に貢献することが期待できる。よって、本発明は、作物育種やエネルギー生産等の産業分野において高い利用可能性を有する。

Claims (10)

  1. 成長の促進された植物を生産する方法であって、対象となる植物の細胞内において、アクチン結合タンパク質、又は、アクチン結合タンパク質を含む融合タンパク質を発現させることによりモノマーアクチン量を増加させることを含む方法。
  2. 前記アクチン結合タンパク質が、チモシン(Thymosin)又はその類似体である、請求項1に記載の方法。
  3. アクチン結合タンパク質を含む融合タンパク質が、アクチン結合タンパク質とアクチンのイソフォームとの融合タンパク質である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記アクチン結合タンパク質又は融合タンパク質が、下記(ア)~(キ)の何れかに示されるタンパク質である、請求項2又は3に記載の方法;
    (ア)配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するタンパク質;
    (イ)配列番号1に示されるアミノ酸配列において1個~10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加してなるアミノ酸配列を有するタンパク質であって、アクチンに結合し、かつ、植物においてその成長を向上させる活性を有するタンパク質;
    (ウ)配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%の相同性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質であって、アクチンに結合し、かつ、植物においてその成長を向上させる活性を有するタンパク質;
    (エ)配列番号2に示される塩基配列によりコードされるタンパク質;
    (オ)配列番号2に示される塩基配列と少なくとも80%の同一性を有する塩基配列によりコードされるタンパク質であって、アクチンに結合し、かつ、植物においてその成長を向上させる活性を有するタンパク質;
    (カ)配列番号2に示される塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列によりコードされるタンパク質であって、アクチンに結合し、かつ、植物においてその成長を向上させる活性を有するタンパク質;及び
    (キ)前記(ア)~(カ)から選択される何れかのタンパク質からなる第1のドメインと、他のタンパク質からなる第2のドメインとが融合してなるタンパク質であって、アクチンに結合し、かつ、植物においてその成長を向上させる活性を有するタンパク質。
  5. 前記タンパク質を発現させる工程が、恒常的に遺伝子発現を誘導するプロモータの下流に、前記(ア)~(キ)の何れかに示されるタンパク質をコードする核酸が作動可能に連結された発現カセットを含むベクターを用いて、植物を形質転換することを含む、請求項4に記載の方法。
  6. 恒常的に遺伝子発現を誘導するプロモータが、アクチン遺伝子のプロモータである、請求項5に記載の方法。
  7. 請求項5又は6に記載の植物の生産方法に使用される発現カセットであって、恒常的に遺伝子発現を誘導するプロモータの下流に、前記(ア)~(キ)の何れかに示されるタンパク質をコードする核酸が作動可能に連結された発現カセット。
  8. 請求項7に記載の発現カセットを含むベクター。
  9. 請求項8に記載のベクターを含むキット。
  10. 請求項1~6のいずれか一項に記載の方法により生産された、及び/又は、請求項8に記載のベクターにより形質転換された、植物若しくはその子孫、又はそれらの一部。
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