JP2022100506A - 捺染用前処理装置、捺染布帛の製造方法及び捺染布帛の製造システム - Google Patents

捺染用前処理装置、捺染布帛の製造方法及び捺染布帛の製造システム Download PDF

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啓史 鈴木
Hiroshi Suzuki
拓也 岡田
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正樹 中村
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Abstract

【課題】本発明の課題は、布帛の種類に応じて、発色濃度と風合いを両立することができる捺染用前処理装置、捺染布帛の製造方法及び捺染布帛の製造システムを提供することである。【解決手段】本発明の捺染用前処理装置100は、布帛Cを染色可能にするために、前記布帛Cに前処理する捺染用前処理装置100であって、染着可能な樹脂を含む前処理液を、布帛情報に基づいて塗布条件を制御して前記布帛Cに塗布することを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、捺染用前処理装置、捺染布帛の製造方法及び捺染布帛の製造システムに関し、特に、布帛の種類に応じて、発色濃度と風合いを両立することができる捺染用前処理装置等に関する。
従来、布帛に対し、分散性染料を含むインクを用いて捺染を行う方法が知られている。
そのような方法としては、分散性染料を含むインクを布帛に直接付与して染色する方法(ダイレクト捺染)や、分散性染料を含むインクを転写媒体に付与した後、当該転写媒体から当該インクを転写して染色を行う方法(昇華転写)が知られている。この昇華転写による捺染方法は、加工が簡便であり、染料を含んだ排水による環境汚染の問題がない染色方法として広く使われてきている。
インクの付与は、短時間で染色でき、生産効率が高い観点などから、通常、インクジェット方式で行われる。
ところで、分散性染料は、一般的に疎水性を示すことから、疎水性を示すポリエステル繊維の布帛に対しては定着しやすく、適切に捺染を行いやすい。しかしながら、その他の素材の布帛、例えば天然繊維などの親水性繊維を含む布帛に対しては、分散性染料と布帛との極性差が大きいため、分散性染料の浸透及び定着性が十分ではなく、適切に捺染を行うことが困難であった。そのため、ポリエステル繊維の布帛以外の布帛(特に天然繊維などの親水性繊維を含む布帛)に対しても、分散性染料を含むインクの定着性を高めるための検討がなされている。
インクの定着性を高める方法としては、天然繊維などの布帛を前処理する方法や、インクにバインダー樹脂を含有させる方法などがある。
例えば、特許文献1では、分散性染料に非染着性の繊維からなる繊維製品を、特定のポリアクリロニトリル系樹脂により表面処理した後、表面処理された繊維製品に、転写シートの分散性染料を転写捺染する技術が開示されている。
また、特許文献2では、ポリエステル繊維以外の生地表面に、ターペン油、バインダー、乳化剤、水を混ぜたエマルジョン様の糊を付着させ、乾燥させた後、転写紙に昇華型分散インクで図柄を描き、転写紙の転写面とポリエステル繊維以外の生地のエマルジョン様の糊の付着面を合わせて熱転写する技術が開示されている。
しかしながら、布帛に前記した前処理を行うことによって、発色濃度が高まる一方で、風合いは低下する。また、布帛の素材や形状等に基づいて、前処理液の量を制御することまでは触れられていない。
なお、ダイレクト捺染用の前処理液の塗布量を布帛の素材や布帛構造に対応して適宜選択して付与する技術は開示されているものの(例えば、特許文献3及び4参照。)、このようなダイレクト捺染用の前処理液は、ピニング性向上のために布帛に前処理するものであって、昇華転写用の前処理液のように、後の発色工程(熱転写する工程)において染着可能な樹脂を含む前処理液とは異なるものであった。
特開2005-029900号公報 特開2003-201687号公報 特開2005-264021号公報 国際公開第2018/012229号
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、布帛の種類に応じて、発色濃度と風合いを両立することができる捺染用前処理装置、捺染布帛の製造方法及び捺染布帛の製造システムを提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、布帛に前処理する前処理液を、布帛情報に基づいて塗布条件を制御することによって、布帛の種類に応じて、発色濃度と風合いを両立することができることを見いだし本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.布帛を染色可能にするために、前記布帛に前処理する捺染用前処理装置であって、
染着可能な樹脂を含む前処理液を、布帛情報に基づいて塗布条件を制御して前記布帛に塗布することを特徴とする捺染用前処理装置。
2.前記布帛情報に基づいて、前記前処理液の塗布量を制御することを特徴とする第1項に記載の捺染用前処理装置。
3.前記布帛の繊維比率に応じて、前記前処理液の塗布量を制御することを特徴とする第2項に記載の捺染用前処理装置。
4.前記繊維比率が、ポリエステル繊維比率であることを特徴とする第3項に記載の捺染用前処理装置。
5.前記前処理液に含有する樹脂が、分散性染料によって染色可能であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の捺染用前処理装置。
6.染色材画像を布帛に熱転写した捺染布帛の製造方法であって、
第1項から第5項までのいずれか一項に記載の捺染用前処理装置を用いて前記布帛に前記前処理液を塗布する工程と、
転写媒体に、前記染色材画像を形成する工程と、
前記前処理液を塗布した前記布帛に、前記転写媒体に形成された前記染色材画像を熱転写する工程と、を具備することを特徴とする捺染布帛の製造方法。
7.染色材画像を布帛に熱転写した捺染布帛の製造システムであって、
第1項から第5項までのいずれか一項に記載の捺染用前処理装置と、
転写媒体に、前記染色材画像を形成し、前記捺染用前処理装置によって前記前処理液を塗布した布帛に、前記転写媒体に形成された染色材画像を熱転写する捺染装置と、を具備することを特徴とする捺染布帛の製造システム。
本発明の上記手段により、布帛の種類に応じて、発色濃度と風合いを両立することができる捺染用前処理装置、捺染布帛の製造方法及び捺染布帛の製造システムを提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
布帛情報、例えば繊維比率に基づいて、染着可能な樹脂を含む前処理液の塗布条件を制御するので、布帛の種類に応じて、布帛に対する染色材の染着量を調整でき、発色濃度と風合いに優れた高画質な捺染を行うことができる。
本発明の捺染用前処理装置を模式的に示した概略図 本発明の捺染用前処理装置の内部構成を示すブロック図 本発明の捺染布帛の製造システムを模式的に示した概略図
本発明の捺染用前処理装置は、布帛を染色可能にするために、前記布帛に前処理する捺染用前処理装置であって、染着可能な樹脂を含む前処理液を、布帛情報に基づいて塗布条件を制御して前記布帛に塗布することを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、前記布帛情報に基づいて、前記前処理液の塗布量を制御することが好ましく、特に、前記布帛の繊維比率、好ましくはポリエステル繊維比率に応じて、前記前処理液の塗布量を制御することが、容易に布帛の種類毎に発色濃度と風合いを両立させることができる点で好ましい。
前記前処理液に含有する樹脂が、分散性染料によって染色可能であることが、発色濃度の点で好ましい。
本発明の捺染布帛の製造方法は、染色材画像を布帛に熱転写した捺染布帛の製造方法であって、前記捺染用前処理装置を用いて前記布帛に前記前処理液を塗布する工程と、転写媒体に、前記染色材画像を形成する工程と、前記前処理液を塗布した前記布帛に、前記転写媒体に形成された染色材画像を熱転写する工程と、を具備することを特徴とする。
また、本発明の捺染布帛の製造システムは、染色材画像を布帛に熱転写した捺染布帛の製造システムであって、前記捺染用前処理装置と、転写媒体に、前記染色材画像を形成し、前記捺染用前処理装置によって前処理液を塗布した布帛に、前記転写媒体に形成された染色材画像を熱転写する捺染装置と、を具備することを特徴とする。
このような捺染布帛の製造方法又は捺染布帛の製造システムにより、布帛の種類に応じて、発色濃度と風合いに優れた高画質な捺染布帛を製造することができる。
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
[捺染用前処理装置]
本発明の捺染用前処理装置は、布帛を染色可能にするために、前記布帛に前処理する捺染用前処理装置であって、染着可能な樹脂を含む前処理液を、布帛情報に基づいて塗布条件を制御して前記布帛に塗布することを特徴とする。
本発明において「布帛情報」とは、例えば、布帛の繊維比率又は目付等が挙げられる。前記繊維比率としては、ポリエステル繊維比率であることが好ましい。
また、「塗布条件」とは、布帛に前処理液を塗布する際の条件をいい、例えば、前処理液の塗布量や塗布速度等をいう。
図1は、本発明の捺染用前処理装置を模式的に示した概略図、図2は、本発明の捺染用前処理装置の内部構成を示すブロック図である。
本発明の捺染用前処理装置100は、布帛繰り出し部101と、搬送部102と、前処理液塗布部103と、前処理液乾燥部104と、布帛回収部105と、制御部106等を備える。
捺染用前処理装置100は、制御部106の制御下で、布帛繰り出し部101から布帛Cを前処理液塗布部103に搬送し、前処理液塗布部103で布帛Cに前処理液を塗布し、前処理液が塗布された布帛(「前処理布帛C1」ともいう。)を布帛回収部105へと搬送する。その後、後述するように(図3参照。)、捺染装置200において、転写媒体に記録された染色材画像を、前処理布帛C1の前処理液が塗布された面に転写する。
布帛Cは、前処理液塗布部103の搬送方向上流側に設けられた布帛繰り出し部101に設置されている。
布帛繰り出し部101は、ロール状の布帛Cが装着される回転軸と、回転軸を所定の回転方向に回転駆動するモーター(図示しない)等を備える。布帛繰り出し部101は、モーターを駆動することにより回転軸の回転に沿って布帛Cを搬送方向下流側に繰り出す。
搬送部102は、布帛繰り出し部101から繰り出された布帛Cを搬送する。図1では、布帛Cを搬送ローラーによって搬送する構成としたが、例えば、布帛Cを搬送ベルトに貼り付けて搬送する構成としてもよい。
前処理液塗布部103における塗布方式としては、特に制限されず、スプレー法、マングル法(パッド法)、コーティング法、インクジェット法のいずれであってもよい。
例えば、後述する捺染装置200において、インク(記録インク)の塗布工程と連続的に行えるようにする観点では、インクジェット法が好ましく、短時間で所定量の前処理液を塗布する観点では、マングル法やコーター法が好ましい。
マングル法では、浴槽中に貯めた前処理液に、布帛を浸漬した後、絞りを行うことで前処理液の塗布量を調整する。前処理液の温度は、特に制限されないが、15~30℃の範囲内とすることが好ましい。
前処理液乾燥部104は、前処理液塗布部103で塗布された前処理液を乾燥する。乾燥手段としては、特に限定されず、温風、ホットプレート、又はヒートローラーによる加熱であることが好ましい。短時間で十分に溶媒成分を除去する観点では、加熱乾燥がより好ましい。乾燥温度は、100~130℃の範囲内であることが好ましい。
布帛回収部105は、前処理液乾燥部104の下流側に設けられ、前処理液乾燥部104で前処理液が乾燥された前処理布帛C1を巻き取りながら回収する。
制御部106は、布帛情報に基づいて前処理液の塗布条件を制御する。具体的には、布帛情報に基づいて、前処理液の塗布量を制御することが好ましい。
制御部106には、ユーザーが操作部(図示しない)を操作する際に入力された布帛情報(例えば、布帛の繊維比率、目付及び繊維種等)が入力される。
また、制御部106は、CPU107、RAM108及びROM109等を有する。CPU107は、ROM109等の記憶装置から処理内容に応じた各種のプログラムやデータ等を読み出して実行し、実行された処理内容に応じて捺染用前処理装置100の各部の動作を制御する。RAM108は、CPU107により処理される各種のプログラムやデータ等を一時的に記憶する。ROM109は、CPU107等により読み出される各種のプログラムやデータ等を記憶する。
具体的には、制御部106は、捺染用前処理装置100に対して次のような処理を行う。
すなわち、制御部106は、操作部(図示しない)から入力された布帛情報に応じて前処理液の塗布量が所定量となるように前処理液塗布部103を動作させて、布帛Cに前処理液を塗布する。具体的には、布帛情報として、例えば布帛Cの繊維比率(詳細にはポリエステル繊維比率)に応じて前処理液の塗布量を制御することが好ましい。
また、ROM109は、例えば、布帛Cの繊維比率に対応する前処理液の塗布量のデータが記憶されている。前処理液の塗布量データは、繊維比率に基づく数式から算出されたデータであったり、繊維比率の閾値に基づく塗布量のデータであることが好ましい。
前記数式としては、例えば、下記式(I)に示されるものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
式(I):y=-ax+100a
[式(I)において、yは塗布量[g/m]、xはポリエステル繊維比率(0~100質量%)、aは傾き(例えば、a=0.5[g/m])]
前記繊維比率の閾値に基づく塗布量のデータとしては、例えば、布帛中のポリエステル繊維比率が0質量%以上40質量%未満の場合には塗布量を50g/mとし、ポリエステル繊維比率が質量40%以上80質量%未満の場合には塗布量を25g/m、ポリエステル繊維比率が80%以上100%以下の場合には塗布量を0g/mとするといった情報である。
また、前記数式や前記閾値に基づく塗布量のデータは、例えば、目付によって補正されることが好ましい。
具体的には、目付が大きいほど前記塗布量を増大させることが望ましい。
<前処理液>
本発明に係る前処理液は、後述するインク(記録インク)を用いた捺染に用いられる布帛の前処理液であり、染着可能な樹脂を含有する。
染着可能な樹脂としては、後述する分散性染料によって染色可能な樹脂であることが好ましく、例えば、疎水性樹脂や親水性樹脂等が挙げられる。特に、本発明では、疎水性樹脂に由来する疎水性ブロックと、親水性樹脂に由来する親水性ブロックとを有するブロック共重合体を含有する樹脂であることが好ましい。
また、前処理液は、前記染着可能な樹脂のほか、水や、溶剤、防腐剤、pH調整剤等を含有することが好ましい。
(疎水性樹脂)
本発明に係る前処理液に含有される疎水性樹脂としては、例えば、ポリエステル(SP値:10.7)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(SP値:6.2)、ポリイソブチレン(SP値:7.7)、ポリエチレン(SP値:8.1)、ポリイソプレン(SP値:8.15)、ポリラウリルメタクリレート(SP値:8.2)、ポリステアリルメタクリレート(SP値:8.2)、ポリイソボニルメタクリレート(SP値:8.2)、ポリ-t-ブチルメタクリレート(SP値:8.2)、ポリブタジエン(SP値:8.4)、ポリスチレン(SP値:9.1)、ポリエチルメタクリレート(SP値:9.1)、ポリエチルアクリレート(9.2)、ポリメチルメタクリレート(9.3)、ポリメチルアクリレート(SP値:9.7)、ポリ塩化ビニル(SP値:10.1)が含まれる。中でも、ポリエステル(SP値:10.7程度)が好ましい。
前記ポリエステルは、特に制限されず、ジカルボン酸と、ジオールとを反応させて得られる重合体である。すなわち、ポリエステルは、ジカルボン酸に由来する成分単位と、ジオールに由来する成分単位とを含む。
《ジカルボン酸に由来する成分単位》
ジカルボン酸に由来する成分単位は、特に制限されないが、ポリエステル繊維を含む布帛との親和性を高める観点では、芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位を含むことが好ましい。
芳香族ジカルボン酸の例には、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸(オルトフタル酸)、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などが含まれ、好ましくはテレフタル酸である。
これらの芳香族ジカルボン酸は、アニオン性基(例えばカルボキシル基、スルホニル基など)をさらに有してもよい。アニオン性基を有する芳香族ジカルボン酸の例には、トリメリット酸、スルホテレフタル酸、スルホイソフタル酸、スルホフタル酸などが含まれる。
芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位は、ジカルボン酸に由来する成分単位の総モル数に対して5~100モル%、好ましくは10~100モル%でありうる。
ジカルボン酸に由来する成分単位は、必要に応じて上記以外の他のジカルボン酸に由来する成分単位をさらに含んでもよい。他のジカルボン酸の例には、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸や、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸が含まれる。
《ジオールに由来する成分単位》
ジオールに由来する成分単位は、特に制限されないが、ポリエステル繊維を含む布帛との親和性を高める観点では、脂肪族ジオールに由来する成分単位を含むことが好ましい。
脂肪族ジオールは、炭素原子数が1~10、好ましくは1~4の脂肪族ジオールであることが好ましい。そのような脂肪族ジオールの例には、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどのアルキレンジオールが含まれ、好ましくはエチレングリコールである。
脂肪族ジオールは、前述と同様に、アニオン性基をさらに有してもよい。アニオン性基を有する脂肪族ジオールの例には、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(CAS番号:10191-18-1)、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールなどが含まれる。
脂肪族ジオールに由来する成分単位は、ジオールに由来する成分単位の総モル数に対して5~100モル%、好ましくは10~100モル%でありうる。
ジオールに由来する成分単位は、必要に応じて上記以外の他のジオールに由来する成分単位をさらに含んでもよい。他のジオールの例には、キシリレングリコールなどの芳香族ジオールや、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオールが含まれる。
疎水性樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、500~10000の範囲内であることが好ましい。疎水性樹脂の重量平均分子量が500以上であると、疎水性樹脂の特性が発現しやすく、分散性染料との親和性をより高めやすい。疎水性樹脂の重量平均分子量が10000以下であると、布帛の風合いが損なわれにくい。
また、後述するように、疎水性樹脂に由来する疎水性ブロックと親水性樹脂に由来する親水性ブロックのブロック共重合体として用いた場合に、その結晶性も高くなりすぎないため、発色工程(熱転写する工程)の加熱時の分散性染料の浸透性や染着性が損なわれにくい。同様の観点から、疎水性樹脂の重量平均分子量は、500~5000の範囲内であることがより好ましい。
疎水性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算して測定することができる。
具体的には、高速液体クロマトグラフィー(日本Water社製の「Waters 2695(本体)」及び「Waters 2414(検出器)」)に、カラム(Shodex(登録商標) GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm))を3本直列に配置し、測定することができる。
疎水性樹脂は、親水性樹脂よりも結晶性が高いことが好ましく、親水性樹脂よりも高いガラス転移温度Tgを有しうる。例えば、疎水性樹脂のTgは、50~110℃でありうる。親水性樹脂のTgの測定方法は、後述するブロック共重合体のTgの測定方法と同様としうる。
(親水性樹脂)
本発明に係る前処理液に含有される前記親水性樹脂としては、例えば、ポリアルキレンオキサイド(SP値:11.0~14.6)やポリビニルアルコール(SP値:12.6)、ポリアミド(SP値:13.6)、ポリアクリロニトリル(SP値:14.8)、ポリビニルピロリドンなどが含まれ、好ましくはポリアルキレンオキサイドである。
ポリアルキレンオキサイドは、特に制限されないが、ポリ(C2~6アルキレンオキサイド)であることが好ましい。ポリアルキレンオキサイドの例には、ポリ(1)、ポリ(プロピレンオキサイド)、ポリ(トリメチレンオキサイド)、ポリ(テトラメチレンオキサイド)、ポリ(ヘキサメチレンオキサイド)、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、ポリ(プロピレンオキサイド)のエチレンオキシド付加物、及びエチレンオキサイドとテトラヒドロフランの共重合体が含まれる。中でも、綿などの親水性繊維を含む布帛との親和性が高く、良好に結着させやすい観点では、ポリエチレンオキサイドが好ましい。
親水性樹脂の重量平均分子量は、特に制限されないが、500~6000の範囲内であることが好ましい。親水性樹脂の重量平均分子量が500以上であると、親水性樹脂の特性が発現しやすいため、後述するように、疎水性樹脂に由来する疎水性ブロックと親水性樹脂に由来する親水性ブロックのブロック共重合体として用いた場合に、例えば綿などの親水性繊維を含む布帛に対して良好に結着させやすい。親水性樹脂の重量平均分子量が6000以下であると、布帛の風合いが損なわれにくい。同様の観点から、親水性樹脂の重量平均分子量は、500~5000の範囲内であることがより好ましい。親水性樹脂の重量平均分子量は、前記した疎水性樹脂の重量平均分子量と同様の方法で測定することができる。
親水性樹脂は、上記のとおり、疎水性樹脂よりも結晶性が低いことが好ましく、疎水性樹脂よりも低いガラス転移温度Tg又は融点Tmを有しうる。例えば、親水性樹脂のTg又はTmは、-110~60℃でありうる。
(ブロック共重合体)
本発明に係る前処理液に含有されるブロック共重合体は、前記疎水性樹脂に由来する疎水性ブロックと、前記親水性樹脂に由来する親水性ブロックとを有することが好ましい。特に、SP値が11未満の疎水性樹脂に由来する疎水性ブロックと、SP値が11以上の親水性樹脂に由来する親水性ブロックとを有することが好ましい。
そして、親水性ブロックを構成する親水性樹脂のSP値(SPB)と、疎水性ブロックを構成する)疎水性樹脂のSP値(SPA)との差ΔSP(SPB-SPA)は、1.0以上であることが好ましい。ΔSPが1.0以上であると、親水性ブロックは、天然繊維などの親水性繊維を含む布帛に対して高い親和性を有するため、ブロック共重合体の布帛への結着性を高めやすく;疎水性ブロックは、疎水性を示す分散性染料に対して親和性を有するため、分散性染料を布帛に浸透及び定着させやすくしうる。同様の観点から、ΔSPは、2.0以上であることがより好ましい。
SP値とは、溶解度パラメータ(Solubility Parameter)と呼ばれるものである。本発明における樹脂材料のSP値は、分子引力定数から求める方法、すなわち、樹脂分子を構成する各官能基又は原子団の分子引力定数(G)及びモル容積(V)から、SP値=ΣG/Vにより求める方法(D.A.Small,J.Appl.Chem.,3,71,(1953)、K.L.Hoy,J.Paint Technol.,42,76(1970))により求めることができる。
ブロック共重合体に含まれる疎水性ブロックと親水性ブロックの少なくとも一方が2種類以上ある場合、ΔSP値は、SP値が11未満の疎水性ブロックのうちSP値が最大となる疎水性ブロックのSP値と、SP値が11以上の親水性ブロックのうちSP値が最小となる親水性ブロックのSP値との差を、ΔSP値とすることが好ましい。
(疎水性ブロック)
疎水性ブロックは、SP値が11未満の疎水性樹脂に由来するブロックである。そのような疎水性ブロックは、分散性染料との親和性を有するため、分散性染料を(ブロック共重合体を介して)布帛に浸透及び定着させやすくしうる。
SP値が11未満の疎水性樹脂は、分散性染料との親和性をさらに高める観点から、ΔSPが上記範囲を満たすだけでなく、インク中の分散性染料のSP値との差が一定以下(例えば±2以下)であることが好ましい。例えば、疎水性ブロックを構成する疎水性樹脂のSP値は、8.7~11であることが好ましく、9.5~11であることがより好ましく、10.2~11であることがさらに好ましい。
また、SP値が11未満の疎水性樹脂は、親水性樹脂よりも結晶性が高い樹脂であることが好ましく、結晶性樹脂であることがより好ましい。結晶性樹脂は、通常、融点を有する。
前記SP値が11未満の疎水性樹脂の例には、前記した疎水性樹脂が挙げられる。
ブロック共重合体における疎水性ブロックの質量基準の含有量は、親水性ブロックの質量基準の含有量よりも少ないことが好ましい。具体的には、疎水性ブロックの含有量は、疎水性ブロックと親水性ブロックの合計含有量に対して5~40質量%であることが好ましい。疎水性ブロックの含有量が5質量%以上であると、(当該疎水性ブロックを介して)ブロック共重合体がインク中の分散性染料とより親和しやすく、分散性染料の布帛への浸透性や定着性を高めやすい。疎水性ブロックの含有量が40質量%以下であると、親水性ブロックの含有量が少なくなりすぎないため、ブロック共重合体の布帛に対する結着性が損なわれにくい。同様の観点から、疎水性ブロックの含有量は、疎水性ブロックと親水性ブロックの合計含有量に対して10~30質量%であることがより好ましい。
(親水性ブロック)
親水性ブロックは、SP値が11以上の親水性樹脂に由来するブロックである。そのような親水性ブロックは、天然繊維などの親水性繊維を含む布帛との親和性が高いため、ブロック共重合体の布帛への結着性を高めうる。
SP値が11以上の親水性樹脂は、SP値が11以上であり、かつ使用する布帛を構成する親水性繊維のSP値±2以下であることが好ましく、±1.0以下であることがより好ましく、±0.5以下であることがさらに好ましい。布帛を構成する親水性繊維が、SP値が15.7のセルロース繊維である場合、親水性ブロックを構成する親水性樹脂のSP値は、13.7~17.7であることが好ましく、14.7~16.7であることがより好ましく、15.2~16.2であることがさらに好ましい。
また、SP値が11以上の親水性樹脂は、結晶性が疎水性樹脂よりも低い樹脂であることが好ましく、非晶性樹脂であることがより好ましい。親水性ブロックが非晶性樹脂であると、得られる画像形成物が硬くなりにくく、風合いが損なわれにくい。また、そのような親水性ブロックは、加熱により当該ブロックが軟化しやすく、自由体積が大きくなりやすいため、発色工程での加熱により分散性染料を布帛により浸透させやすい。非晶性樹脂は、実質的には、融点を有しない。
前記SP値が11以上の親水性樹脂の例には、前記した親水性樹脂が挙げられる。
親水性ブロックの質量基準の含有量は、ブロック共重合体における親水性ブロックの質量基準の含有量よりも多いことが好ましい。具体的には、親水性ブロックの含有量は、疎水性ブロックと親水性ブロックの合計含有量に対して60~95質量%であることが好ましい。親水性ブロックの含有量が60質量%以上であると、ブロック共重合体の天然繊維などの親水性繊維を含む布帛に対する結着性を高めやすい。親水性ブロックの含有量が95質量%以下であると、疎水性ブロックの含有量が少なくなりすぎないため、インク中の分散性染料との親和性が損なわれにくく、分散性染料の布帛への浸透性及び定着性が損なわれにくい。同様の観点から、親水性ブロックの含有量は、疎水性ブロックと親水性ブロックの合計含有量に対して70~90質量%であることがより好ましい。
前記ブロック共重合体は、上記の疎水性ブロックと親水性ブロックとを有するが、ウレタン結合を有しないことが好ましい。ウレタン結合を有する樹脂は、光劣化により布帛に対する定着性が損なわれやすいからである。
前記ブロック共重合体の重量平均分子量は、特に制限されないが、例えば1000~30000であることが好ましい。ブロック共重合体の重量平均分子量が1000以上であると、ブロック共重合体の布帛に対する結着性を高めやすく、30000以下であると、布帛が硬くなりにくく、風合いが損なわれにくい。同様の観点から、前記ブロック共重合体の重量平均分子量は、2000~25000であることがさらに好ましい。
前記ブロック共重合体のガラス転移温度Tg又は融点Tmは、特に制限されないが、30℃未満であることが好ましい。Tg又はTmが30℃未満であるブロック共重合体は、適度な柔軟性を有するため、前処理布帛に分散性染料を含むインクを付与し、定着させる際に、分散性染料が前処理布帛中に浸透するのを妨げにくい。例えば、転写捺染では、転写媒体上のインクを、布帛の表面に載せて加熱圧着して転写するが、加熱圧着時の熱で、ブロック共重合体が軟化しやすいため、分散性染料が布帛に入り込むのを妨げにくくしうる。それにより、分散性染料による染着性が高まり、定着性をさらに高めやすい。同様の観点から、前記ブロック共重合体のTg又はTmは、-20℃以上25℃未満であることがより好ましく、0~20℃であることがさらに好ましい。
ブロック共重合体のTg又はTmは、DSC(示差走査熱量測定装置)を用いて-30~100℃の温度域で昇温速度10℃/分の条件で昇温させたときの吸熱ピークから、ガラス転移温度Tg又はTmを読み取ることによって特定することができる。
ブロック共重合体のTg又はTmは、例えば親水性ブロックと疎水性ブロックの含有比率などによって調整することができる。ブロック共重合体のTg又はTmを低くするためには、親水性ブロックや疎水性ブロックを構成する樹脂の種類にもよるが、例えば親水性ブロックの含有比率を高くすることが好ましい。
前記ブロック共重合体の含有量は、特に限定されないが、前処理液に対して2~60質量%であることが好ましい。当該ブロック共重合体の含有量が2質量%以上であると、ブロック共重合体の付量(付着量)を十分な量としやすいため、画像濃度を高めやすく、60質量%以下であると、布帛への付量が多くなりすぎないため、布帛の風合いが損なわれにくい。同様の観点から、前記ブロック共重合体の含有量は、前処理液に対して5~20質量%であることがより好ましい。
(他の成分)
本発明に係る前処理液は、必要に応じて上記以外の他の成分をさらに含んでもよい。他の成分の例には、溶剤や防腐剤、pH調整剤などが含まれる。
(溶剤)
溶剤は、特に制限されないが、保湿性や粘度調整などの観点から、水溶性有機溶剤を含むことが好ましい。特にインクジェット方式で前処理液を布帛に付与する場合、前処理液は、水溶性有機溶剤をさらに含むことが好ましい。
水溶性有機溶剤の例には、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、下記式(1)で表される化合物)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル)、アミン類(例えば、エタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、モルホリン、N-エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド)、複素環類(例えば、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、2-オキサゾリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジン)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)、スルホン類(例えば、スルホラン)が含まれる。
Figure 2022100506000002
[式(1)中、R11は、いずれもエチレングリコール基又はプロピレングリコール基を表し、x、y及びzはいずれも正の整数であり、x+y+z=3~30である。]
中でも、発色工程での加熱時(特に転写捺染の場合)において、分散性染料の布帛の繊維への浸透を促進する観点では、布帛に含まれる親水性繊維との親和性が高い水溶性有機溶剤を含むことが好ましい。そのような水溶性有機溶剤は、分子量400以上1000以下の多価アルコール類、例えば分子量400以上1000以下のポリエチレングリコール、分子量400以上1000以下のポリプロピレングリコール、グリセリン、及び式(1)で表される化合物などであることが好ましく、グリセリンであることがより好ましい。
上記の多価アルコール類の含有量は、水溶性有機溶剤に対して25~100質量%、好ましくは50~100質量%としうる。
水溶性有機溶剤の含有量は、前処理液に対して10~50質量%、好ましくは20~40質量%としうる。
(防腐剤)
防腐剤の例には、芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン(例えば、PROXEL GXL)などが含まれる。
(pH調整剤)
pH調整剤の例には、クエン酸、クエン酸ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウムなどが含まれる。
なお、布帛の素材の風合いを損なわないようにする観点では、前処理液は、水溶性樹脂や水分散性樹脂(樹脂粒子)などのバインダー樹脂を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、例えば前処理液に対して5質量%未満であること、好ましくは0質量%以下であることをいう。
(前処理液の物性)
前処理液の、25℃における粘度は、布帛への付与方法にもよって適宜調整されうる。
例えば、前処理液をインクジェット方式で付与する場合、前処理液の粘度は、4~20mPa・sであることが好ましい。前処理液の粘度は、E型粘度計により、25℃で測定することができる。
<布帛>
本発明に係る布帛を構成する繊維素材は、特に制限されないが、綿(セルロース繊維)、麻、羊毛、絹などの天然繊維(親水性繊維)を含むことが好ましく、上記以外の他の繊維をさらに含んでもよい。
他の繊維の例には、レーヨン、ビニロン、ナイロン、アクリル、ポリウレタン、ポリエステル又はアセテートなどの化学繊維でありうる。布帛は、これらの繊維を、織布、不織布、編布など、いずれの形態にしたものであってもよい。また、布帛は、2種類以上の繊維の混紡織布又は混紡不織布であってもよい。中でも、布帛は、綿及びポリエステル繊維の少なくとも一方を含むことが好ましい。
[捺染布帛の製造方法]
本発明の捺染布帛の製造方法は、染色材画像を布帛に熱転写した捺染布帛の製造方法であって、(1)前記した本発明の捺染用前処理装置を用いて前記布帛に前記前処理液を塗布する工程と、(2)転写媒体に、前記染色材画像を形成する工程と、(3)前記前処理液を塗布した前記布帛に、前記転写媒体に形成された染色材画像を熱転写する工程と、を具備することを特徴とする。
染色材画像は、染色材が転写媒体に塗布されて形成される画像である。染色材の塗布方法としては、インクジェット法が挙げられ、インクジェット法を用いることで高精度に画像形成できる。
<染色材>
本発明に係る染色材は、インクジェット方式により付与されるインクであることが好ましい。
当該インクは、分散性染料と、水とを含有する。
(分散性染料)
分散性染料は、水に不溶又は難溶な染料であり、分散性染料だけでなく、昇華染料(昇華分散性染料ともいう)も含まれる。分散性染料の種類は、特に制限されず、アゾ系、アントラキノン系などが含まれる。
具体的には、分散性染料の例には、
C.I.Disperse Yellow 3、4、5、7、9、13、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224等、
C.I.Disperse Orange 1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142等、
C.I.Disperse Red 1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、289、298、302、303、310、311、312、320、324、328等、
C.I.Disperse Violet1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77等、
C.I.Disperse Green 9等、
C.I.Disperse Brown 1、2、4、9、13、19等、
C.I.Disperse Blue 3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333等、 C.I.Disperse Black 1、3、10、24等、
が挙げられる。
分散性染料の分子量は、特に制限されないが、例えば転写媒体上に付与したインクを布帛に転写して画像形成(昇華捺染)を行う場合、分散性染料を昇華させやすくする観点では、分子量は小さいこと(例えば200~350)が好ましい。一方、布帛に浸透した分散性染料を抜けにくくする観点では、分子量は適度に大きいこと(例えば350~500)が好ましい。
分散性染料の平均粒子径は、特に制限されないが、インクジェット方式による射出安定性の観点では、例えば300nm以下としうる。平均粒子径は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機により求めることができ、粒径測定装置としては、例えばマルバーン社製ゼータサイザー1000等を挙げることができる。
分散性染料の含有量は、特に制限されないが、インクに対して2~10質量%の範囲内であることが好ましい。分散性染料の含有量が2質量%以上であると、高濃度の画像を形成しやすく、10質量%以下であると、インクの粘度が高くなりすぎないため、射出安定性が損なわれにくい。分散性染料の含有量は、同様の観点から、インクに対して5~10質量%の範囲内であることがより好ましい。
(他の成分)
インクは、必要に応じて他の成分をさらに含みうる。他の成分の例には、溶剤や顔料分散剤、防腐剤、pH調整剤などが含まれる。
(溶剤)
溶媒は、特に制限されないが、好ましくは水溶性有機溶剤である。水溶性有機溶剤は、前処理液に用いられる水溶性有機溶剤と同様のものを用いることができる。中でも、インクを前処理布帛の内部まで浸透させやすくする観点、インクジェット方式での射出安定性を損なわれにくくする観点では、インクが乾燥により増粘しにくいことが好ましい。したがって、インクは、沸点が200℃以上の高沸点溶剤を含むことが好ましい。
沸点が200℃以上の高沸点溶剤は、沸点が200℃以上である水溶性有機溶剤であればよく、ポリオール類やポリアルキレンオキサイド類であることが好ましい。沸点が200℃以上のポリオール類の例には、1,3-ブタンジオール(沸点208℃)、1,6-ヘキサンジオール(沸点223℃)、ポリプロピレングリコールなどの2価のアルコール類;グリセリン(沸点290℃)、トリメチロールプロパン(沸点295℃)などの3価以上のアルコール類が含まれる。沸点が200℃以上のポリアルキレンオキサイド類の例には、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(沸点202℃)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点245℃)、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点305℃)、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点256℃);及びポリプロピレングリコールなどの2価のアルコール類のエーテルや、グリセリン(沸点290℃)、ヘキサントリオールなどの3価以上のアルコール類のエーテルが含まれる。
水溶性有機溶剤の含有量は、特に制限されないが、インクに対して20~70質量%の範囲内が好ましい。水溶性有機溶剤の含有量がインクに対して20質量%以上であると、分散性染料の分散性や射出性をより高めやすく、70質量%以下であると、インクの乾燥性が損なわれにくい。
(分散剤)
分散剤は、分散性染料の種類に応じて選択することができる。分散剤の例には、クレオソート油スルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸ナトリウムと2-ナフトール-6-スルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、フェノールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、β-ナフトールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、β-ナフタリンスルホン酸ナトリウム及びβ-ナフトールスルホン酸ナトリウムを含むホルマリン縮合物、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドを含むアルキレンオキシド、脂肪アルコール、脂肪アミン、脂肪酸、フェノール類、アルキルフェノール及びカルボン酸アミンを含むアルキル化可能な化合物、リグニンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンと無水マレイン酸の共重合物、ならびに公知のくし型ブロックポリマーが含まれる。
くし型ブロックポリマーの例には、DISPERBYK-190、DISPERBYK-194N、DISPERBYK-2010、DISPERBYK-2015、及びBYK-154、ビックケミー社(「DISPERBYK」及び「BYK」は同社の登録商標)が含まれる。
分散剤の含有量は、特に制限されないが、分散性染料100質量部に対して、20~200質量部の範囲内が好ましい。分散剤の含有量が20質量部以上であると、分散性染料の分散性がより高まりやすく、200質量部以下であると、分散剤による射出性の低下を抑制しやすい。
(防腐剤、pH調整剤)
防腐剤、pH調整剤は、前処理液に用いられうる防腐剤、pH調整剤と同様のものを使用できる。
(物性)
インクの25℃における粘度は、インクジェット方式による射出性が良好となる程度であればよく、特に制限されないが、3~20mPa・sの範囲内であることが好ましく、4~12mPa・sの範囲内であることがより好ましい。インクの粘度は、E型粘度計により、25℃で測定することができる。
<転写媒体>
本発明で用いられる転写媒体の種類は、染色材画像(インク層)を形成でき、布帛に転写可能なもの(転写時に染料の昇華を妨害しないもの)であれば特に制限されず、例えばシリカなどの無機微粒子でインク受容層が表面上に形成されている紙が好ましく、インクジェット用の専用紙や転写紙が挙げられる。
(1)前処理液を塗布する工程
前処理液を塗布する工程では、前記した本発明の捺染用前処理装置を用いて布帛に前処理液を塗布する。
布帛への前処理液の塗布は、布帛の表面全体に行ってもよいし、染色材(インク)を付与する領域のみに選択的に行ってもよい。
前処理液を布帛に塗布した後、布帛に塗布した前処理液を乾燥させることが好ましい。乾燥方法は、特に限定されず、温風、ホットプレート、又はヒートローラーによる加熱であることが好ましい。短時間で十分に溶媒成分を除去する観点では、加熱乾燥がより好ましい。乾燥温度は、100~130℃の範囲内であることが好ましい。
(2)転写媒体に染色材画像を形成する工程
転写媒体に染色材画像を形成する工程では、インクジェット方式で転写媒体上に染色材(インク)を付与した後、乾燥させて転写媒体上に染色材画像(インク画像)を形成する。具体的には、後述する捺染装置を用いることが好ましい。
(3)染色材画像を熱転写する工程(発色工程)
染色材画像を熱転写する工程では、前処理液を塗布した布帛に、転写媒体に形成された染色材画像を熱転写する。具体的には、転写媒体上の染色材画像の表面を、前処理後の布帛の処理面と接触させて加熱(熱プレス)する。これにより、転写媒体に形成された染色材画像中の分散性染料を、布帛中の繊維に昇華転写させて染色させる。
転写温度(熱プレス温度)は、分散性染料の昇華温度にもよるが、例えば190~210℃の範囲内であることが好ましい。また、プレス圧力は、平型の場合は200~500g/cmの範囲内、連続式の場合は2~6kg/cmの範囲内であることが好ましい。
[捺染布帛の製造システム]
本発明の捺染布帛の製造システムは、染色材画像を布帛に熱転写する捺染布帛の製造システムであって、前記した本発明の捺染用前処理装置と、下記捺染装置とを具備する。
図3は、本発明の捺染布帛の製造システムの一例を示した概略模式図である。
図3に示す製造システム300は、連続式の転写捺染法によって布帛を捺染する製造システムである。この製造システム300は、前記した捺染用前処理装置100(布帛繰り出し部101、前処理液塗布部103、前処理液乾燥部104、布帛回収部105、制御部106等)と、捺染装置200とを備える。
捺染装置200は、転写媒体に、染色材画像(インク層)を形成し、前記捺染用前処理装置100によって前処理液を塗布し乾燥させた前処理布帛C1に、前記転写媒体に形成された染色材画像を熱転写する装置である。具体的には、転写媒体繰り出し部201と、インクジェット記録部203と、インク乾燥部204と、転写部301と、転写媒体回収部205とを備える。さらに、剥離部302や転写媒体を搬送する搬送部202を備えることが好ましい。
なお、図3は、本発明の製造システム300の一例であって、この構成に限定されるものではない。また、捺染用前処理装置100は、前記したとおりの構成のためここではその説明を省略する。
転写媒体繰り出し部201は、転写媒体としてロール状の転写紙基材Pが装着されている。図示しないモーターを駆動することによって、転写紙基材Pが繰り出されたとき、転写紙基材Pの転写面がインクジェット記録部203のインクジェットヘッドに対向するように取り付けられている。
インクジェット記録部203は、インクジェットヘッドを用いて転写媒体繰り出し部201から繰り出された転写紙基材P上に染色材画像(インク画像)を形成することにより転写紙(画像形成後の転写紙)P1を形成する。
インク乾燥部204は、インクジェット記録部203の下流側に設けられ、染色材画像(インク画像)に含まれる定着樹脂の架橋温度よりも低温で転写紙P1を乾燥させる。
転写部301は、例えば、内部に熱源を有する加熱ローラー301aと、加熱ローラー301aに圧接される加圧ローラー301bとを備えた構成が好ましい。
そして、インクジェット記録部203により染色材画像が形成され、インク乾燥部204により乾燥された転写紙P1は、捺染用前処理装置100により前処理された前処理布帛C1に画像面(染色材画像)を対向させて積層された状態で、加熱ローラー301aと加圧ローラー301bのニップ部を通過する。
このとき、転写紙P1と前処理布帛C1の積層体に加熱・加圧処理が施され、転写紙P1の染色材画像が前処理布帛C1の前処理された表面に転写されて捺染布帛Nとなる。転写部301による加熱処理は、染色材画像に含まれる定着樹脂の架橋温度よりも高温で行われることが好ましい。
剥離部302は、転写部301の下流側に設けられている。剥離部302は、転写部301において転写処理が施された後の積層体から転写紙基材Pを剥離して捺染布帛Nとする。
捺染用前処理装置100の布帛回収部105は、剥離部302の下流側に設けられている。そして、剥離部302において剥離工程が施された捺染布帛Nを巻き取りながら回収する。
転写媒体回収部205は、剥離部302の下流側に設けられている。そして、剥離部302において積層体から剥離した使用済の転写紙基材Pを巻き取りながら回収する。
なお、図3に示す製造システム300は、布帛Cを繰り出して前処理液を塗布し、一方で、転写紙基材Pを繰り出して、染色材画像を形成し転写紙P1とした後、前処理後の前処理布帛C1と、転写紙P1とを重ねて積層体とし、その後、転写部301により前処理布帛C1上に染色材画像を転写させた後、転写紙基材Pと前処理布帛C1から剥離する連続式のシステムとしたが、転写紙P1を前処理布帛C1に重ね合わせた積層体を上下からプレスするバッチ式のシステムとしてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
1.前処理液の調製
<材料の準備>
(樹脂)
(ブロック共重合体1の調製)
ジメチルテレフタレートを97g、エチレングリコールを20g、無水酢酸ナトリウム0.2g、チタニウム触媒(堺化学SPC-124)0.1gを添加し、不活性ガス置換の後、165~220℃の温度でエステル交換し、同時に常圧でメタノールを留去した。 次いで、メチルポリエチレングリコール750を36g、メチルポリエチレングリコール1820を46g、ポリエチレングリコール1500を193g添加し、不活性ガス置換の後、160~240℃の温度で縮合反応を行い、過剰のグリコール成分を留去した。その後、冷却して、ポリエチレンテレフタレート(PET、Tg:75℃)・(PEO、Tg:-60℃)ブロック共重合体(ブロック共重合体1)を含む溶液を得た。得られたブロック共重合体の物性は、以下のとおりであった。
Tg(又はTm):25℃
Mw:6200
疎水性ブロック(PET)のSP値:10.7、Mw:1100
親水性ブロック(PEO)のSP値:15.0、Mw:1500
親水性ブロックの含有量:70質量%
樹脂濃度:60質量%
樹脂のTg(又はTm)や重量平均分子量、ブロックのSP値や重量平均分子量は、以下の方法で測定した。
(Tg又はTm)
得られた樹脂分散液から分離した樹脂について、DSC (メトラー・トレド社製)を用いて-30~100℃の温度域で昇温速度10℃/分の条件で昇温させたときの吸熱ピークから、ガラス転移温度Tg又はTmを読み取った。
(重量平均分子量)
樹脂の重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィー(日本Water社製の「Waters 2695(本体)」及び「Waters 2414(検出器)」)に、カラム(Shodex(登録商標) GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm))を3本直列に配置し、測定することができる。
(SP値)
ブロックのSP値は、前記した分子引力定数から求める方法により求めた。
(溶剤)
エチレングリコール(沸点197.6℃)
グリセリン(沸点290℃)
(他の成分)
防腐剤:プロキセルGXL(1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン)
pH調整剤:クエン酸Na水和物
<前処理液Aの調製>
樹脂、溶剤及び他の成分を、下記に示される組成となるように混合して、前処理液Aを得た。
ブロック共重合体1 33.3質量部
グリセリン 10.0質量部
エチレングリコール 25.0質量部
防腐剤 0.1質量部
イオン交換水 31.6質量部
2.インクの調製
<インク1の調製>
(分散液の調製)
分散剤としてDisperbyk-190(ビックケミー・ジャパン株式会社製、酸価10mgKOH/g)とイオン交換水とを均一になるまで撹拌混合した後、分散性染料としてDisperse Red 92を加えて、予備混合し、動的光散乱法によって測定されるZ-平均粒子径が150~200nmの範囲内になるまで分散させて、分散性染料濃度が20質量%の分散液を調製した。このとき、分散性染料の含有量が分散剤の全質量に対して20質量%となり、分散剤の固形分の量が分散性染料の全質量に対して30%になるよう、分散剤、イオン交換水及び分散性染料の量を調整した。なお、動的光散乱法によるZ-平均粒子径の測定は、0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーで、ゼータサイザー1000、Malvern社製(「ゼータサイザー」は同社の登録商標)を使用して行った。
(インクの調製)
得られた分散液を30質量%、溶剤としてグリセリン10質量%、エチレングリコール25質量%、防腐剤としてプロキセルGXL0.1質量%及びpH調整剤としてクエン酸Na水和物を適量添加し、イオン交換水で合計100質量%となるように混合した後、1μmメッシュのフィルターでろ過して、インク1(マゼンタ分散インク)を得た。
[実施例1]
(1)前処理液を塗布する工程
以下の布帛を準備した。
布帛1:綿ブロード40(綿100質量%)
布帛2:T/Cブロード(ポリエステル65質量%/綿35質量%)
布帛3:ポリエステルトロピカル(ポリエステル100質量%)
次いで、下記表Iに示される各布帛の表面に、前記で調製した前処理液Aを同表に示される塗布量となるように、布帛の繊維比率に応じて塗布した。その後、110℃で3分間乾燥させて、前処理液を付与した布帛(前処理布帛)をそれぞれ得た。
なお、前処理液の塗布は、インクジェット法により行い、当該インクジェット法は、後述のインクジェットヘッドプリンターを用いて、転写紙へのインクの塗布と同様の条件で行った。
(2)転写紙に染色材画像を形成する工程
次いで、画像形成装置として、インクジェット用ヘッド(コニカミノルタヘッド KM 1024iMAE)を有するインクジェットプリンターを準備した。そして、前記で調製したインク1を、上記インクジェット用ヘッドのノズルから吐出させて、転写紙としてA4昇華転写紙糊付(システムグラフィ製)上にベタ画像を形成した。
具体的には、主走査540dpi×副走査720dpiにて、細線格子、諧調、及びベタ部を含んだ画像(全体で200mm×200mm)を形成した。dpiとは、2.54cm当たりのインク液滴(ドット)の数を表す。吐出周波数は、22.4kHzとした。その後、インクを付与した転写紙を、乾燥機にて50~80℃で30秒間乾燥させ、転写紙に染色材画像を形成した。
(3)染色材画像を熱転写する工程
次いで、染色材画像を形成した(インクを塗布した)転写紙を、転写装置(ヒートプレス機)を用いて、200℃で50秒間、プレス圧300g/cmで熱圧着を行った。それにより、転写紙上の染色材画像を、各前処理布帛上にそれぞれ熱転写させて、各捺染布帛を得た。
[比較例1]
前記実施例1における前処理液を塗布しないこと以外は同様にして、各布帛1~3に染色材画像を熱転写し、各捺染布帛を得た。
[比較例2]
前記実施例1における前処理液の塗布量を下記表Iに示すとおりに、各布帛1~3のいずれも50g/mとした以外は同様にして、染色材画像をそれぞれ熱転写し、各捺染布帛を得た。
3.評価
上記で得られた各捺染布帛について、画像濃度及び風合いを、以下の方法で評価した。
<画像濃度>
画像濃度は、分光測色機(X-Rite社製)により測定し、K/S値を算出した。K/S値は、下記式で定義される表面色濃度の指数である。
Kubelka-Munk式:K/S=(1-R)/2S(K:光の吸収係数、S:光の散乱係数、R:表面反射率)。
ここで、K/S値が大きいほど色濃度は高く、小さいほど色濃度は低いことを意味する。
また、ポリエステル100%の布帛3(ポリエステル布帛)に対して、前処理液を塗布しないで同様に画像形成したときの捺染布帛(比較対象用捺染布帛)についてK/S値を算出しておき、当該比較対象用捺染布帛のK/S値に対する相対値で評価した。そして、以下の評価基準に基づいて評価した。
(基準)
5:K/S値の相対値が100%以上
4:K/S値の相対値が80%以上100%未満
3:K/S値の相対値が60%以上80%未満
2:K/S値の相対値が40%以上60%未満
1:K/S値の相対値が40%未満
<風合い>
得られた各捺染布帛の生地の風合いを手指で触って、官能的に評価した。そして、以下の基準に基づいて評価した。
5:生地本来の柔らかさを維持しており、ほとんど(画像形成前と)変わらない
4:画像形成前と比べてわずかに硬くなっているが、生地の風合いは損なわれておらず、実用上問題ないレベル
3:画像形成前と比べてわずかに硬くなっており、生地の風合いがわずかに変わっているが、実用上問題ないレベル
2:画像形成前と比べて少し硬くなっており、生地の風合いが少し変わっているが、実用上問題ないレベル
1:画像形成前と比べて硬くなっており、生地の風合いが顕著に損なわれており、実用上問題となるレベル
Figure 2022100506000003
上記結果に示されるように、本発明のように、布帛情報(ポリエステル繊維比率)に基づいて前処理液の塗布量を制御して前処理液を塗布した場合、比較例のように前処理液の塗布量を制御しない場合に比べて、画像濃度及び風合いのいずれにおいても優れることが認められる。
100 捺染用前処理装置
101 布帛繰り出し部
102 搬送部
103 前処理液塗布部
104 前処理液乾燥部
105 布帛回収部
106 制御部
107 CPU
108 RAM
109 ROM
200 捺染装置
201 転写媒体繰り出し部
202 搬送部
203 インクジェット記録部
204 インク乾燥部
205 転写媒体回収部
300 捺染布帛の製造システム
301 転写部
302 剥離部
C 布帛
C1 前処理布帛
P 転写紙基材
P1 転写紙
N 捺染布帛

Claims (7)

  1. 布帛を染色可能にするために、前記布帛に前処理する捺染用前処理装置であって、
    染着可能な樹脂を含む前処理液を、布帛情報に基づいて塗布条件を制御して前記布帛に塗布することを特徴とする捺染用前処理装置。
  2. 前記布帛情報に基づいて、前記前処理液の塗布量を制御することを特徴とする請求項1に記載の捺染用前処理装置。
  3. 前記布帛の繊維比率に応じて、前記前処理液の塗布量を制御することを特徴とする請求項2に記載の捺染用前処理装置。
  4. 前記繊維比率が、ポリエステル繊維比率であることを特徴とする請求項3に記載の捺染用前処理装置。
  5. 前記前処理液に含有する樹脂が、分散性染料によって染色可能であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の捺染用前処理装置。
  6. 染色材画像を布帛に熱転写した捺染布帛の製造方法であって、
    請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の捺染用前処理装置を用いて前記布帛に前記前処理液を塗布する工程と、
    転写媒体に、前記染色材画像を形成する工程と、
    前記前処理液を塗布した前記布帛に、前記転写媒体に形成された前記染色材画像を熱転写する工程と、を具備することを特徴とする捺染布帛の製造方法。
  7. 染色材画像を布帛に熱転写した捺染布帛の製造システムであって、
    請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の捺染用前処理装置と、
    転写媒体に、前記染色材画像を形成し、前記捺染用前処理装置によって前記前処理液を塗布した布帛に、前記転写媒体に形成された染色材画像を熱転写する捺染装置と、を具備することを特徴とする捺染布帛の製造システム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US20220402290A1 (en) * 2021-06-17 2022-12-22 Konica Minolta, Inc. Precoating agent, image forming method, and image forming apparatus
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