JP2022092383A - 電極 - Google Patents

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Abstract

【課題】固体電池の電池抵抗の低減および回り込み電流の低減が可能な電極を提供することを目的とする。【解決手段】固体電池用の電極であって、前記電極は、電極層、集電体、及び、当該電極層と集電体との間に配置され、かつ電極層と接するPTC層を備え、前記PTC層は、導電材、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びポリエチレン(PE)の粒子を含有し、前記PTC層中の前記PVDFに対する前記PEの体積比(PE/PVDF)が8より小さいことを特徴とする電極。【選択図】図3

Description

本開示は、電極に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。
電池の中でもリチウム二次電池は、金属の中で最大のイオン化傾向を持つリチウムを負極として用いるため、正極との電位差が大きく、高い出力電圧が得られるという点で注目されている。
また、固体電池は、正極と負極の間に介在する電解質として、有機溶媒を含む電解液に替えて固体電解質を用いるという点で注目されている。
特許文献1には、PTC層を有する全固体電池であって、PTC層はポリマー、導電材、絶縁性無機物を有する旨が開示されている。
特許文献2には、室温抵抗が十分低く、動作時と非動作時の抵抗変化率が大きく、温度-抵抗曲線のヒステリシスが小さく、動作温度の調整が容易であり、しかも、特性安定性が高い有機質正特性サーミスタが開示されている。
特許文献3には、PTC層にポリマーおよび導電性フィラーを含んで成る導電性ポリマー組成物が開示されている。
特開2019-079611号公報 特許第3911502号 国際公開第2007/66725号
固体電池は電池抵抗の低減および回り込み電流の低減が求められる。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、固体電池の電池抵抗の低減および回り込み電流の低減が可能な電極を提供することを主目的とする。
本開示の電極は、固体電池用の電極であって、
前記電極は、電極層、集電体、及び、当該電極層と集電体との間に配置され、かつ電極層と接するPTC層を備え、
前記PTC層は、導電材、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びポリエチレン(PE)の粒子を含有し、
前記PTC層中の前記PVDFに対する前記PEの体積比(PE/PVDF)が8より小さいことを特徴とする。
本開示は、固体電池の電池抵抗の低減および回り込み電流の低減が可能な電極を提供することができる。
図1は、PTC層中のPVDFに対するPEの体積比(PE/PVDF)を変化させたときのDSC測定結果である。 図2は、PE/PVDFの体積比に対するP3/P2比との関係を示す図である。 図3は本開示の固体電池の一例を示す断面模式図である。
本開示の電極は、固体電池用の電極であって、
前記電極は、電極層、集電体、及び、当該電極層と集電体との間に配置され、かつ電極層と接するPTC層を備え、
前記PTC層は、導電材、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びポリエチレン(PE)の粒子を含有し、
前記PTC層中の前記PVDFに対する前記PEの体積比(PE/PVDF)が8より小さいことを特徴とする。
ここで、「PTC」とは、「Positive Temperature Coefficient(正温度係数)」のことを意味する。「PTC層」とは、温度上昇に伴って、電子抵抗が正の係数を持って変化する性質であるPTC特性を備える層のことを意味する。
PTC層に含まれる樹脂は、温度上昇に伴って体積膨張し、層の抵抗を増加させることができる。しかしながら、固体電池では、通常、厚さ方向に沿って拘束圧を付与しているため、拘束圧の影響を受けて樹脂が変形または流動し、十分なPTC機能を発揮できない場合がある。そこで、従来技術では、PTC層に硬い無機フィラーを添加することで、拘束圧の影響を受けた場合であっても、良好なPTC特性を発揮させている。
しかしながら、硬い無機フィラーを添加することで電池抵抗の増加やエネルギー密度の低下等の懸念がある。例えば、無機フィラーセラミックスとしてアルミナ(Al)を用いた場合、PTC層が重くなるため、電池のエネルギー密度が低くなる。
そこで本開示においては、無機フィラーを用いないPTC層を作成し、低抵抗な固体電池を実現しつつ固体電池の異物による内部短絡時の発熱を抑制する。
本開示によれば、無機フィラーを添加した場合と同程度に、異物模擬試験の際に回り込み電流が抑制され、発熱を抑制することができる。
また、本開示によれば、無機フィラーを用いないため、電池抵抗を低減し、且つ、軽量化することができる。
本開示の電極は、電極層、集電体、及び、当該電極層と集電体との間に配置され、かつ電極層と接するPTC層を備える。
本開示の電極は、正極又は負極の少なくともいずれか一方として用いられていればよく、正極及び負極の両方として用いられてもよい。
電極層は、正極層又は負極層である。電極層が正極層であるか負極層であるかは、電極層に含まれる活物質の種類によって決定してもよい。活物質は後述する正極活物質及び負極活物質において例示するものと同様のものを例示することができる。
集電体は電極層が正極層の場合は正極集電体であり、電極層が負極層の場合は負極集電体である。
本開示におけるPTC層は、正極層と正極集電体との間、および、負極層と負極集電体との間の少なくとも一方に配置される。
PTC層は、導電材、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びポリエチレン(PE)の粒子を含有する。
PTC層の厚さについては特に限定されるものではなく、500nm~20μmであってもよい。本開示におけるPTC層の厚さは平均厚さであり、例えば、膜厚測定装置を用いることにより測定することができる。また、PTC層の厚さはSEM(走査型電子顕微鏡)による、PTC層の断面観察像から測定することもできる。
図1は、PTC層中のPVDFに対するPEの体積比(PE/PVDF)を変化させたときのDSC測定結果である。図1において、P2が吸熱ピークであり、P3が発熱ピークである。
図1における、P1、P2、P3のピーク面積、及び、P3/P2の値を表1に示す。なお、PE/PVDF=0.5の結果は図1では示していないが、表1に示す。
図2は、PE/PVDFの体積比に対するP3/P2比との関係を示す図である。
図1~2、表1の結果から、本開示においては、PTC層中のPVDFに対するPEの体積比(PE/PVDF)は8より小さければよい。P3>P2の場合は160℃以上では発熱が生じるため、発熱量を抑制する観点からは、PE/PVDFは0.3~5であってもよく、0.5~2であってもよく、0.5~1であってもよい。
Figure 2022092383000002
PTC層中のPEの体積割合は、20体積%~50体積%であってもよい。
PE粒子の平均粒径は、特に限定されず、20μm~200μmであってもよく、25μm~125μmであってもよい。
PEの融点は、特に限定されず、110℃~143℃であってもよく、120℃~143℃であってもよい。
PEのアスペクト比は、特に限定されず、2~30であってもよい。
本開示において、PEのアスペクト比は、PTC層厚みに対するPEの平均粒径の比(PE平均粒径/PTC層厚み)を意味する。
導電材としては、所望の電子伝導性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、炭素材料を挙げることができる。炭素材料としては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラックや、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等の炭素繊維や、活性炭、グラファイト、グラフェン、フラーレン等を挙げることができ、中でも上記カーボンブラックを用いてもよい。上記カーボンブラックは、添加量に対する電子伝導度が高いという利点を有するからである。導電材の形状は、特に限定されるものではないが、例えば、粒子状を挙げることができる。導電材の平均一次粒子径は、例えば、20nm以上1μm以下であってもよい。ここで、導電材の平均一次粒子径は、例えば、SEM(走査型電子顕微鏡)等の電子顕微鏡を用いた画像解析に基づいて30個以上の一次粒子径を測定し、それらの算術平均として得られる値を採用することができる。
PTC層における導電材の含有量は、特に限定されるものではなく1体積%~15体積%であってもよい。導電材の含有量が少なすぎる場合、形成される導電パスが減少し、PTC層の電子伝導性が低くなる可能性があるためである。また、導電材の含有量が多すぎる場合、ポリマーの体積膨張によって、導電材間の距離を長くすることができずに、電子抵抗の増加が不十分となる可能性があるためである。
PTC層は、ポリマーとしてPVDFを含む。
PVDFの形状は特に限定されず、粒子状であってもよい。
PTC層におけるPVDFの含有量は、特に限定されるものではなく30体積%~65体積%であってもよい。PVDFの含有量が少なすぎる場合、体積膨張したポリマーによって、導電材間の距離を長くすることができずに、電子抵抗の増加が不十分となる可能性があるためである。PVDFの含有量が多すぎる場合、導電材により形成される導電パスがPVDFにより阻害され、PTC層の電子伝導性が低くなる可能性があるためである。
電極の製造方法は、例えば、以下の通りである。ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びポリエチレン(PE)の粒子と、上述した導電材とを、N-メチルピロリドン等の有機溶媒と混合してスラリー化する。当該スラリーを集電体上に塗布して、スラリーを乾燥し、焼成することで集電体上にPTC層を形成する。その後PTC層上に電極活物質を含む電極層用合剤を配置して電極層を形成し、集電体、PTC層、電極層をこの順に有する電極を得てもよい。
電極は50Nm~200Nmの拘束圧で拘束してもよい。
本開示の電極は、固体電池用の電極である。
図3は、本開示の固体電池の一例を示す断面模式図である。
図3に示すように、固体電池100は、負極集電体11と負極層12と固体電解質層13と正極層14と正極集電体15をこの順に備え、正極集電体15と正極層14との間にPTC層16を備える。
[正極]
正極は、正極層、正極集電体を含み、必要に応じて、正極層と正極集電体の間にPTC層を有していてもよい。すなわち、正極が本開示の電極であってもよい。
[正極層]
正極層は、正極活物質を含み、任意成分として、固体電解質、導電材、及びバインダー等が含まれていてもよい。
正極活物質の種類について特に制限はなく、固体電池の活物質として使用可能な材料をいずれも採用可能である。固体電池が固体リチウム二次電池の場合は、正極活物質は、例えば、金属リチウム(Li)、リチウム合金、LiCoO、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiNiCo1-x(0<x<1)、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiMnO、異種元素置換Li-Mnスピネル、チタン酸リチウム、リン酸金属リチウム、LiCoN、LiSiO、及びLiSiO、遷移金属酸化物、TiS、Si、SiO、Si合金及びリチウム貯蔵性金属間化合物等を挙げることができる。異種元素置換Li-Mnスピネルは、例えばLiMn1.5Ni0.5、LiMn1.5Al0.5、LiMn1.5Mg0.5、LiMn1.5Co0.5、LiMn1.5Fe0.5、及びLiMn1.5Zn0.5等である。チタン酸リチウムは、例えばLiTi12等である。リン酸金属リチウムは、例えばLiFePO、LiMnPO、LiCoPO、及びLiNiPO等である。遷移金属酸化物は、例えばV、及びMoO等である。リチウム貯蔵性金属間化合物は、例えばMgSn、MgGe、MgSb、及びCuSb等である。
リチウム合金としては、Li-Au、Li-Mg、Li-Sn、Li-Si、Li-Al、Li-B、Li-C、Li-Ca、Li-Ga、Li-Ge、Li-As、Li-Se、Li-Ru、Li-Rh、Li-Pd、Li-Ag、Li-Cd、Li-In、Li-Sb、Li-Ir、Li-Pt、Li-Hg、Li-Pb、Li-Bi、Li-Zn、Li-Tl、Li-Te、及びLi-At等が挙げられる。Si合金としては、Li等の金属との合金等が挙げられ、その他、Sn、Ge、及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属との合金であってもよい。
正極活物質の形状は特に限定されるものではないが、粒子状であってもよい。正極活物質が粒子状である場合、正極活物質は一次粒子であってもよく、二次粒子であってもよい。正極活物質の平均粒子径(D50)は、例えば、1nm以上100μm以下であってもよく、10nm以上30μm以下であってもよい。
正極活物質の表面には、Liイオン伝導性酸化物を含有するコート層が形成されていても良い。正極活物質と、固体電解質との反応を抑制できるからである。
Liイオン伝導性酸化物としては、例えば、LiNbO、LiTi12、及び、LiPO等が挙げられる。コート層の厚さは、例えば、0.1nm以上であり、1nm以上であっても良い。一方、コート層の厚さは、例えば、100nm以下であり、20nm以下であっても良い。正極活物質の表面におけるコート層の被覆率は、例えば、70%以上であり、90%以上であっても良い。
固体電解質としては、固体電解質層において例示するものと同様のものを例示することができる。
正極層における固体電解質の含有量は、特に限定されないが、正極層の総質量を100質量%としたとき、例えば1質量%~80質量%の範囲内であってもよい。
導電材としては、公知のものを用いることができ、例えば、炭素材料、及び金属粒子等が挙げられる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、VGCF、カーボンナノチューブ、及び、カーボンナノファイバーからなる群より選ばれる少なくとも一種を挙げることができる。中でも、電子伝導性の観点から、VGCF、カーボンナノチューブ、及び、カーボンナノファイバーからなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。金属粒子としては、Ni、Cu、Fe、及びSUS等の粒子が挙げられる。
正極層における導電材の含有量は特に限定されるものではない。
結着剤(バインダー)としては、アクリロニトリルブタジエンゴム(ABR)、ブタジエンゴム(BR)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等を例示することができる。正極層におけるバインダーの含有量は特に限定されるものではない。
正極層の厚みについては特に限定されるものではない。
正極層は、従来公知の方法で形成することができる。
例えば、正極活物質、及び、必要に応じ他の成分を溶媒中に投入し、撹拌することにより、正極層用スラリーを作製し、当該正極層用スラリーを正極集電体等の支持体の一面上に塗布して乾燥させることにより、正極層が得られる。
溶媒は、例えば酢酸ブチル、酪酸ブチル、ヘプタン、及びN-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が挙げられる。
正極集電体等の支持体の一面上に正極層用スラリーを塗布する方法は、特に限定されず、ドクターブレード法、メタルマスク印刷法、静電塗布法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、及びスクリーン印刷法等が挙げられる。
支持体としては、自己支持性を有するものを適宜選択して用いることができ、特に限定はされず、例えばCu及びAlなどの金属箔等を用いることができる。
また、正極層の形成方法の別の方法として、正極活物質及び必要に応じ他の成分を含む正極合剤の粉末を加圧成形することにより正極層を形成してもよい。正極合剤の粉末を加圧成形する場合には、通常、1MPa以上600MPa以下程度のプレス圧を負荷する。
加圧方法としては、特に制限されないが、例えば、平板プレス、及びロールプレス等を用いて圧力を付加する方法等が挙げられる。
[正極集電体]
正極集電体としては、固体電池の集電体として使用可能な公知の金属を用いることができる。そのような金属としては、Cu、Ni、Al、V、Au、Pt、Mg、Fe、Ti、Co、Cr、Zn、Ge、及びInからなる群から選択される一又は二以上の元素を含む金属材料を例示することができる。正極集電体としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等が挙げられる。
正極集電体の形態は特に限定されるものではなく、箔状、及びメッシュ状等、種々の形態とすることができる。正極集電体の厚さは、形状によって異なるものであるが、例えば1μm~50μmの範囲内であってもよく、5μm~20μmの範囲内であってもよい。
[負極]
負極は、負極集電体及び負極層を含み、必要に応じて、負極層と負極集電体の間にPTC層を有していてもよい。すなわち、負極が本開示の電極であってもよい。
[負極層]
負極層は、少なくとも負極活物質を含有し、必要に応じ、導電材、結着剤、及び、固体電解質等を含有する。
負極活物質としては、グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン、リチウム単体、リチウム合金、Si単体、Si合金、及びLiTi12等が挙げられる。リチウム合金及びSi合金としては、正極活物質において例示するものと同様のものを用いることができる。
負極活物質の形状は特に限定されず、粒子状、及び板状等が挙げられる。負極活物質が粒子状である場合、負極活物質は一次粒子であってもよく、二次粒子であってもよい。また、負極活物質の平均粒子径(D50)は、例えば、1nm以上100μm以下であってもよく、10nm以上30μm以下であってもよい。
負極活物質の形状は特に限定されず、粒子状、及び板状等が挙げられる。
負極層に用いられる導電材、及び、結着剤は、正極層において例示するものと同様のものを用いることができる。負極層に用いられる固体電解質は、固体電解質層において例示するものと同様のものを用いることができる。
負極層の厚さは、特に限定されないが、例えば、10~100μmであってもよい。
負極層における負極活物質の含有量は、特に限定されないが、例えば、20質量%~90質量%であってもよい。
[負極集電体]
負極集電体の材料は、Liと合金化しない材料であってもよく、例えばSUS及び、銅及び、ニッケル等を挙げることができる。負極集電体の形態としては、例えば、箔状及び、板状等を挙げることができる。負極集電体の平面視形状は、特に限定されるものではないが、例えば、円状及び、楕円状及び、矩形状及び、任意の多角形状等を挙げることができる。また、負極集電体の厚さは、形状によって異なるものであるが、例えば1μm~50μmの範囲内であってもよく、5μm~20μmの範囲内であってもよい。
[固体電解質層]
固体電解質層は、少なくとも固体電解質を含む。
固体電解質層に含有させる固体電解質としては、固体電池に使用可能な公知の固体電解質を適宜用いることができ、酸化物系固体電解質、及び硫化物系固体電解質等が挙げられる。本開示においては、固体電解質として、硫化物系固体電解質を用いてもよい。硫化物系固体電解質は、高イオン伝導度を有する反面、温度上昇によって硫化水素が発生する可能性がある。そのため、PTC層を用いて電子抵抗を増加させて、効果的に温度上昇を抑制することで、硫化水素の発生を抑制しつつ、イオン伝導度の高い固体電池とすることができる。
硫化物系固体電解質としては、例えば、LiS-P、LiS-SiS、LiX-LiS-SiS、LiX-LiS-P、LiX-LiO-LiS-P、LiX-LiS-P、LiX-LiPO-P、及びLiPS等が挙げられる。なお、上記「LiS-P」の記載は、LiSおよびPを含む原料組成物を用いてなる材料を意味し、他の記載についても同様である。また、上記LiXの「X」は、ハロゲン元素を示す。上記LiXを含む原料組成物中にLiXは1種又は2種以上含まれていてもよい。LiXが2種以上含まれる場合、2種以上の混合比率は特に限定されるものではない。
硫化物系固体電解質における各元素のモル比は、原料における各元素の含有量を調整することにより制御できる。また、硫化物系固体電解質における各元素のモル比や組成は、例えば、ICP発光分析法で測定することができる。
硫化物系固体電解質は、硫化物ガラスであってもよく、結晶化硫化物ガラス(ガラスセラミックス)であってもよく、原料組成物に対する固相反応処理により得られる結晶質材料であってもよい。
硫化物系固体電解質の結晶状態は、例えば、硫化物系固体電解質に対してCuKα線を使用した粉末X線回折測定を行うことにより確認することができる。
硫化物ガラスは、原料組成物(例えばLiSおよびPの混合物)を非晶質処理することにより得ることができる。非晶質処理としては、例えば、メカニカルミリングが挙げられる。
ガラスセラミックスは、例えば、硫化物ガラスを熱処理することにより得ることができる。
熱処理温度は、硫化物ガラスの熱分析測定により観測される結晶化温度(Tc)よりも高い温度であればよく、通常、195℃以上である。一方、熱処理温度の上限は特に限定されない。
硫化物ガラスの結晶化温度(Tc)は、示差熱分析(DTA)により測定することができる。
熱処理時間は、ガラスセラミックスの所望の結晶化度が得られる時間であれば特に限定されるものではないが、例えば1分間~24時間の範囲内であり、中でも、1分間~10時間の範囲内が挙げられる。
熱処理の方法は特に限定されるものではないが、例えば、焼成炉を用いる方法を挙げることができる。
酸化物系固体電解質としては、例えばLi元素と、La元素と、A元素(Aは、Zr、Nb、Ta、及びAlの少なくとも1種である)と、O元素とを有するガーネット型の結晶構造を有する物質等が挙げられる。酸化物系固体電解質としては、例えばLi3+xPO4-x(1≦x≦3)等であってもよい。
固体電解質の形状は、取扱い性が良いという観点から粒子状であってもよい。
また、固体電解質の粒子の平均粒径(D50)は、特に限定されないが、下限が0.5μm以上であってもよく、上限が2μm以下であってもよい。
本開示において、粒子の平均粒径は、特記しない限り、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定により測定される体積基準のメディアン径(D50)の値である。また、本開示においてメディアン径(D50)とは、粒径の小さい粒子から順に並べた場合に、粒子の累積体積が全体の体積の半分(50%)となる径(体積平均径)である。
固体電解質は、1種単独で、又は2種以上のものを用いることができる。また、2種以上の固体電解質を用いる場合、2種以上の固体電解質を混合してもよく、又は2層以上の固体電解質それぞれの層を形成して多層構造としてもよい。
固体電解質層中の固体電解質の割合は、特に限定されるものではないが、例えば50質量%以上であり、60質量%以上100質量%以下の範囲内であってもよく、70質量%以上100質量%以下の範囲内であってもよく、100質量%であってもよい。
固体電解質層には、可塑性を発現させる等の観点から、バインダーを含有させることもできる。そのようなバインダーとしては、正極層に用いられるバインダーとして例示した材料等を例示することができる。ただし、高出力化を図り易くするために、固体電解質の過度の凝集を防止し且つ均一に分散された固体電解質を有する固体電解質層を形成可能にする等の観点から、固体電解質層に含有させるバインダーは5質量%以下としてもよい。
固体電解質層の厚みは特に限定されるものではなく、通常0.1μm以上1mm以下である。
固体電解質層を形成する方法としては、固体電解質を含む固体電解質材料の粉末を加圧成形する方法等が挙げられる。固体電解質材料の粉末を加圧成形する場合には、通常、1MPa以上600MPa以下程度のプレス圧を負荷する。
加圧方法としては、特に制限されないが、正極層の形成において例示する加圧方法が挙げられる。
固体電池は、必要に応じ、正極集電体、正極層、固体電解質層、負極層および負極集電体をこの順に備えた積層体を収容する外装体及び拘束部材等を備える。
外装体の材質は、電解質に安定なものであれば特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、及び、アクリル樹脂等の樹脂等が挙げられる。
拘束部材は、積層体に、積層方向の拘束圧力を与えることができればよく、固体電池の拘束部材として使用可能な公知の拘束部材を用いることができる。例えば、積層体の両表面を挟む板状部と、2つの板状部を連結する棒状部と、棒状部に連結され、ねじ構造等により拘束圧力を調整する調整部を有する拘束部材が挙げられる。調整部によって、積層体に所望の拘束圧力を与えることができる。
拘束圧力は、特に限定されるものではないが、例えば、0.1MPa以上であってもよく、1MPa以上であってもよく、5MPa以上であってもよい。拘束圧力を大きくすることで、各層の接触を良好にしやすいという利点があるためである。一方、拘束圧力は、例えば、100MPa以下であってもよく、50MPa以下であってもよく、20MPa以下であってもよい。拘束圧力が大きすぎると、拘束部材に高い剛性が求められ、拘束部材が大型化する可能性があるためである。
固体電池は、上記積層体を1つのみ有するものであってもよいし、積層体を複数個積層してなるものであってもよい。
固体電池としては、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも二次電池であってもよい。二次電池は繰り返し充放電が可能である。二次電池は、例えば車載用電池として有用である。また、固体電池は、固体リチウム二次電池であってもよい。
固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型、及び角型等を挙げることができる。
本開示の固体電池の製造方法は、例えば、まず、固体電解質材料の粉末を加圧成形することにより固体電解質層を形成する。そして、固体電解質層の一面に正極活物質を含む正極合剤の粉末を加圧成形することにより正極層を得る。その後、負極集電体の一面上に負極材料の粉末を加圧成形することにより負極層を得る。固体電解質層の正極層を形成した面とは反対側の面上に負極層が固体電解質層と接するように負極集電体-負極層積層体を取り付ける。そして、正極集電体上にPTC層を形成する。そして、正極層の固体電解質層とは反対側の面上にPTC層が接するように正極集電体を取り付ける。これにより、本開示の固体電池としてもよい。
この場合、負極材料の粉末、固体電解質材料の粉末、及び正極合剤の粉末を加圧成形する際のプレス圧は、通常1MPa以上600MPa以下程度である。
加圧方法としては、特に制限されないが、正極層の形成において例示した加圧方法が挙げられる。
[負極の作製]
負極活物質(Si粒子、平均粒径0.5μm)と、硫化物系固体電解質(10LiI-15LiBr-75(0.75LiS-0.25P)(mol%)平均粒径0.5μm)と、導電材(VGCF-H)と、バインダー(SBR)とを準備した。
これらを、質量比で、負極活物質:硫化物系固体電解質:導電材:バインダー=47.0:44.6:7.0:1.4となるように秤量し、分散媒(ジイソブチルケトン)とともに混合した。得られた混合物を、超音波ホモジナイザー(UH-50、株式会社エスエムテー製)で分散させることにより、負極スラリーを得た。
得られた負極スラリーを、負極集電体(Ni箔、厚さ22μm)上にアプリケーターによるブレードコート法により塗工し、100℃30分間の条件で乾燥させ負極集電体上に負極層を有する負極を得た。その後、負極集電体の反対側の面にも同様に塗工を行うことで、負極集電体の両面に負極層を有する両面負極構造体を得た。各負極層の厚さは60μmであった。
[正極層の作製]
転動流動造粒コーティング装置でLiNbOコートを行った正極活物質(LiNi0.8Co0.15Al0.05、平均粒径10μm)と、硫化物系固体電解質(10LiI-15LiBr-75(0.75LiS-0.25P)(mol%)、平均粒径0.5μm)と、導電材(VGCF-H)と、バインダー(SBR)とを準備した。
これらを、質量比で、正極活物質:硫化物系固体電解質:導電材:バインダー=83.3:14.4:2.1:0.2となるように秤量し、分散媒(ジイソブチルケトン)とともに混合した。
得られた混合物を、超音波ホモジナイザー(UH-50、株式会社エスエムテー製)で分散させることにより、正極スラリーを得た。得られた正極スラリーを、支持体(アルミニウム箔(厚さ15μm))上にアプリケーターによるブレードコート法により塗工し、100℃30分間の条件で乾燥させ、支持体上に正極層を形成し、正極層-Al箔を得た。
正極層の厚さは100μmであった。
[固体電解質層の作製]
硫化物系固体電解質(10LiI・15LiBr・75(0.75LiS・0.25P)(mol%)、平均粒径2.0μm)とバインダー(SBR)を、質量比で、硫化物系固体電解質:バインダー=99.6:0.4となるように秤量し、分散媒(ジイソブチルケトン)とともに混合した。得られた混合物を、超音波ホモジナイザー(UH-50、株式会社エスエムテー製)で分散させることにより、固体電解質層スラリーを得た。得られた固体電解質層スラリーを、Al箔(厚さ15μm)上に、アプリケーターによるブレードコート法により塗工し、100℃で30分間乾燥させることでAl箔上に固体電解質層を得た。固体電解質層の厚さは30μmであった。
(実施例1)
[PE含有PTC層の作製]
導電材として平均一次粒子径20nmのカーボンブラック(東海カーボン社製)と、ポリマーとしてPVDF(クレハ社製KFポリマーL♯9130)とPE1(融点140℃)の粒子(平均粒径125μm)を、体積比で10:60:30となるように分散媒としてのNMPとともに混合してペーストを作製した。すなわち、PVDFに対するPEの体積比が0.5となるようにした。作製したペーストを厚さ15μmの集電体としてのアルミニウム箔(UACJ社製1N30)に乾燥後の厚さが10μmとなるように塗工し、60℃10minで乾燥させ、その後100℃一時間、乾燥炉で乾燥させ、集電体-PTC層を得た。
[固体電池の作製]
層面積が7.2 x 7.2cmとなるように切り出された両面負極構造体と、層面積が7.2 x 7.2cmとなるように切り出された固体電解質層-Al箔とを、負極構造体の一方の負極層と固体電解質層とが直接接触するように張り合わせ、1.6t/cmでプレスし、その後、固体電解質層からAl箔を剥がした。続いて、層面積が7.0 x 7.0cmとなるように切り出された正極層-Al箔を、正極層と固体電解質層とが直接接触するように張り合わせ、1.6t/cmでプレスした。その後、正極層からAl箔を剥がし、さらに5t/cmプレスした。そして、正極層の固体電解質層とは反対側の面に集電体-PTC層を正極層とPTC層とが直接接触するように張り合わせた。両面負極構造体のもう一方の負極層にも上記と同様の方法で固体電解質層、正極層、PTC層、正極集電体を積層した。これにより、正極集電体、PTC層、正極層、固体電解質層、負極層、負極集電体、負極層、固体電解質層、正極層、PTC層、正極集電体をこの順に有する電極積層体を得た。得られた電極積層体の各端子を溶接後、ラミネートセル化して固体電池を作製した。
(実施例2)
平均粒径25μm、融点143℃のPE2の粒子を用いたこと以外は実施例1と同様の方法でPTC層を作製した。PTC層の厚みは5μmとした。そして、実施例1と同様の方法で固体電池を作製した。
(実施例3)
平均粒径40μm、融点120℃のPE3の粒子を用いたこと以外は実施例1と同様の方法でPTC層を作製した。PTC層の厚みは7μmとした。そして、実施例1と同様の方法で固体電池を作製した。
(実施例4)
上記[PE含有PTC層の作製]において、導電材として平均一次粒子径20nmのカーボンブラック(東海カーボン社製)と、ポリマーとしてPVDF(クレハ社製KFポリマーL♯9130)とPE1(融点140℃)の粒子(平均粒径125μm)を、体積比で10:45:45となるように分散媒としてのNMPとともに混合してペーストを作製したこと以外は実施例1と同様の方法でPTC層を作製した。すなわち、PVDFに対するPEの体積比が1となるようにした。PTC層の厚みは12μmとした。そして、実施例1と同様の方法で固体電池を作製した。
(比較例1)
PE含有PTC層を作製せず、集電体としてカーボンコートアルミニウム箔を準備した。そして、集電体を正極集電体として、正極集電体、正極層、固体電解質層、負極層、負極集電体、負極層、固体電解質層、正極層、正極集電体の順となるように、これらを配置し、固体電池を作製した。カーボンコートの厚みは4μmであった。
(比較例2)
上記[PE含有PTC層の作製]において、導電材として平均一次粒子径20nmのカーボンブラック(東海カーボン社製)と、ポリマーとしてPVDF(クレハ社製KFポリマーL♯9130)とPE1の代わりにアルミナを、体積比で10:60:30となるように分散媒としてのNMPとともに混合してペーストを作製したこと以外は実施例1と同様の方法でPTC層を作製した。PTC層の厚みは5μmとした。そして、実施例1と同様の方法で固体電池を作製した。
[評価方法]
実施例1~4および比較例1~2の各固体電池に対して次に示す釘刺し試験および充放電試験を行い評価した。
[充放電試験]
実施例1~4および比較例1~2で得られた各固体電池を、5MPaの拘束圧で定寸拘束し、0.0194Aで4.05Vまで定電流-定電圧(CC-CV)充電した。その後、0.0194Aで3.0VまでCC-CV放電を行った。その後、再度各固体電池を充電した。この時の充電を初回充電とした。初回充電後の放電時の任意のタイミングで電圧と電流を測定し、これらから電池抵抗を測定した。結果を表2に示す。
[釘刺し試験]
実施例1~4および比較例1~2の各固体電池に対して1/3Cで4.05Vまで定電流充電し、4.05V、20Aの条件で定電圧充電した。
そして、室温(25℃±5℃)、4.05V定電圧充電中に固体電池の側面から直径3.0mm、釘先端角度30度の鉄釘を0.1mm/secの速度で突き刺して内部短絡を発生させた。その時の回り込み電流を計算した。結果を表2に示す。
釘刺し試験の条件は以下の通りである。
釘速度:0.1mm/sec
拘束圧:5MPa
印加電流:20A(max設定)
温度:室温(25℃±5℃)
釘刺し深度:正極接触位置から0.4~0.8mm
釘:フランス刺繍針3号(φ3.0mm)
Figure 2022092383000003
[評価結果]
実施例1~4は、比較例1と比較して回り込み電流が小さい。実施例1であれば、比較例2よりも回り込み電流が小さい。
実施例1~4は、比較例1~2と同程度の電池抵抗に低減することができることがわかる。
11 負極集電体
12 負極層
13 固体電解質層
14 正極層
15 正極集電体
16 PTC層
100 固体電池

Claims (1)

  1. 固体電池用の電極であって、
    前記電極は、電極層、集電体、及び、当該電極層と集電体との間に配置され、かつ電極層と接するPTC層を備え、
    前記PTC層は、導電材、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びポリエチレン(PE)の粒子を含有し、
    前記PTC層中の前記PVDFに対する前記PEの体積比(PE/PVDF)が8より小さいことを特徴とする電極。
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