JP2022090601A - 発電用磁歪素子および磁歪発電デバイス - Google Patents

発電用磁歪素子および磁歪発電デバイス Download PDF

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Hiroaki Sakamoto
昌男 田邊
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晋一 寺嶋
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Abstract

【課題】低コスト且つ耐久性に優れ、従来の磁歪発電デバイスと同等またはそれらを超える発電量を達成しうる、磁歪発電デバイスを提供すること。【解決手段】少なくとも1枚の電磁鋼板を含む、少なくとも1つの電磁鋼板層を含む積層体で形成され、下記の条件Aおよび条件Bの少なくとも一方を満たす、発電用磁歪素子を提供する。条件A:前記少なくとも1つの電磁鋼板層が2枚以上の電磁鋼板を含み、前記2枚以上の電磁鋼板が互いにろう材部を介して接合されている、および条件B:前記積層体は少なくとも1つの弾性材料層をさらに含み、前記少なくとも1つの電磁鋼板層がろう材部を介して前記弾性材料層に接合されている。【選択図】図6

Description

本発明は、発電用磁歪素子および磁歪発電デバイスに関する。
近年発展しているモノのインターネット(Internet of Things、以下「IoT」と略す)の利用においては、モノとインターネットとの接続のために、センサ、電源、および無線通信装置等が一体となった無線センサモジュールを使用する。このような無線センサモジュールの電源として、電池交換や充電作業等の人手による定期的なメンテナンスの必要なしに、設置場所の環境で発生しているエネルギーから電力を発生させることが可能な発電装置の開発が望まれている。
このような発電装置の一例が、磁歪の逆効果である逆磁歪を使用した磁歪式振動発電装置である。逆磁歪とは、磁歪材料に振動などによって歪みが加えられたときに、磁歪材料の磁化が変化する現象である。磁歪式振動発電は、振動により磁歪材料に歪みを加えて、逆磁歪効果により発生する磁化の変化を、電磁誘導の法則により、磁歪素子の周囲に巻かれたコイルに起電力を発生させるものである。
従来、磁歪材料の発電性能を高めるためには、その磁歪量を増加させる方法が試みられてきた。これは、磁歪量が大きいほど、磁歪材料に引っ張り歪みと圧縮歪みを交互に負荷した場合、逆磁歪を利用した磁束密度の変化(ΔB)が大きくなり、発電出力も大きくなるからである。このような観点から、磁歪量の大きな材料として、FeGa合金、FeCo合金、FeAl合金等が開発され、これらの磁歪材料を用いた発電デバイスも開発されている(特許文献1~6)。
例えば、特許文献1に記載の発電デバイスにおいては、発電性能を向上させて品質のバラツキを低減するために、磁歪材料と軟磁性材料とを貼り合わせ、磁歪材料の磁化によって軟磁性材料の磁化を変化させる。こうすることで、磁歪材料の磁化の変化による電圧に加えて、軟磁性材料の磁化の変化による電圧も検出用コイルに誘起させる。使用する磁歪材料としては、FeCo、FeAl、Ni、NiFe、NiCo等が記載されており、軟磁性材としては、Fe、FeNi、FeSi、電磁ステンレスが記載されている。さらに磁歪材料と軟磁性材料とを貼り合わせる方法としては、熱拡散接合、熱間圧延、熱間引抜、接着、溶接、クラトッド圧延、爆発圧着等が記載されている。
特許文献2に記載の発電デバイスにおいては、起電力の向上、製造コストの低減、量産性の向上のために、磁歪材料と磁性材料とを合わせた平行梁構造を作製し、磁性材料をバイアス磁場によって磁気飽和させた状態で使用する構造を有するアクチュエータが開示されている。当該アクチュエータにおいては、バックヨークをコの字状とし、中立面を磁歪材料の外に設け、振動によるバイアス磁場の変化を磁歪材料の磁化の変化に重畳させて起電力を向上させる。磁歪材料としてFeGa、FeCo、FeAl、FeSiB、アモルファス材料等が記載されており、磁性材料としては、SPCC、炭素鋼(SS400、SC、SK、SK2)、フェライト系ステンレス鋼(SUS430)等が記載されている。特許文献2には、平行梁構造を作製する際に、磁歪材料と磁性材料の両端をはんだ付け、溶接、ろう付け、抵抗溶接、レーザー溶接、超音波接合、接着剤などで固定することが記載されている。
特許文献3には、発電効率の向上、一様な応力負荷のために、磁歪材料と補強材としての非磁性材料とを貼り合わせ、磁歪材料と補強材の断面積比を補強材/磁歪材料>0.8になるように規定した発電素子が開示されている。磁歪材料としてはFeGa、FeCo、FeNi等が記載されており、補強材としてはフィラー含有樹脂、Al、Mg、Zn、Cu等が記載されている。さらに磁歪材料と非磁性材料とを貼り合わせる方法としては、超音波接合、固相拡散接合、液相拡散接合、樹脂系接着剤による接合、金属ろう材による接合などが記載されている。
特許文献4の発電デバイスにおいては、発電出力を向上させるために、コイルの巻数を多くすることのできる構造が採用されている。具体的には、磁歪板と非磁性構造体とを面接合した構造を作製し、磁歪板からコイルが巻かれたUの字状ヨークに磁界を還流させる。磁歪板としては、FeGaおよびFeCoが記載されており、非磁性構造体としてはステンレス(SUS304、等)が記載されている。さらに磁歪板と非磁性構造体とを面接合する方法として、接着剤、接着シート(光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂)による接着が記載されている。
特許文献5の発電デバイスにおいては、発電効率の向上および一様な応力負荷のために、磁歪材料と非磁性材料(補強材)とを貼り合わせた構造体を作製し、当該構造体を2本の平行梁として用いている。磁歪材料としては、FeGa、FeCo、FeCo系アモルファス、Fe系アモルファス、Ni系アモルファス、メタ磁性形状記憶合金、強磁性形状記憶合金等が記載されており、非磁性材料としては、酸化シリコン、アルミナ、ポリイミド、ポリカーボネード、繊維強化プラスチック、非磁性金属(Al、Cu)等が記載されている。しかし、磁歪材料と非磁性材料とを貼り合わせる方法についての記載はない。
特許文献6の発電デバイスにおいては、発電出力の向上のために、磁歪材料と磁性材料とを離した平行梁とした構造を使用する。当該構造によって、磁性材料を磁気飽和させない状態で使用し、磁歪材料の磁束の変化によって磁性材料の磁束を変化させ、磁歪材料による誘起電圧に、磁性材料による誘起電圧を足し合せた電圧を取り出せる設計としている。磁歪材料としては、FeGa、FeCo、FeNi、FeDyTeが記載されており、磁性材料としては、フェライト系ステンレス鋼、FeSi、NiFe、CoFe、SmCo、NdFeB、CoCr、CoPtが記載されている。また、特許文献6の発電デバイスにおいては、磁歪材料を軟磁性材料または非磁性材料と貼り合わせることも開示されているが、貼り合わせには樹脂による接着剤が用いられている。
国際公開第2018/230154号 特開2018-148791号公報 国際公開第2014/021197号 国際公開第2013/038682号 国際公開第2013/186876号 特開2015-70741号公報
特許文献1~6の記載から明らかなように、磁歪発電素子および磁歪発電デバイスにおいては、種々の磁歪材料が他の材料と共に使用されている。磁歪材料としては、最も磁歪量の大きな材料として知られるFeGa合金が特許文献2~6に記載されているが、FeGa合金は単結晶引き上げ方法(CZ法)で製造されるため、非常に高価である。特許文献1~6に記載されているFeCo合金は圧延法で製造されるが、Coを含有しているため、やはり高価である。また、特許文献1および2に記載されているFeAl合金は、FeGa合金やFeCo合金と比べて安価ではあるものの、やはり高価である。さらに靭性が低く、通常の圧延法で板形状に製造することが容易ではないといった問題も有している。
このように従来使用されている磁歪材料であるFeGa合金、FeCo合金、FeAl合金は、その<100>方向の磁歪量であるλ100が80ppm以上と大きいため、発電用磁歪素子に用いる磁歪材料として数々の特許文献に記載されている。しかし、これら磁歪材料には、製造コストが高いことや、成形に限界があるといった問題が存在する。
このような問題を鑑みて、上述したようなコストの高い磁歪材料を使用して磁歪発電デバイスを製造する際には、磁歪材料とそこに貼り合わせる相手材とで構成される発電用磁歪素子を製造し、当該発電用磁歪素子を、より低コストの材料で製造したフレーム等に固定した構造を採用している。特許文献1および特許文献6には、軟磁性材料としてFeSi合金(電磁鋼板)が記載されているが、いずれも磁歪材料と貼り合わせる相手材としての使用であって、磁歪材料としての使用ではない。このようなFeSi合金の使用は、従来の磁気回路における一般的なFeSi合金の使用方法である。
磁歪材料を他の材料と接合して使用する際の接合方法としては、超音波接合、固相拡散接合、液相拡散接合、樹脂系の接着剤や接着シートを用いた接合などが開示されているが、主たる接合方法は、樹脂系の接着剤や接着シートを用いた接合であった。この方法は、接合強度を維持するのが難しく、耐久性の低下が課題であった。
また、特許文献2および特許文献3には、接合方法としてろう材による接合も記載されているが、ろう材を使用した実施例はない。
上記課題に鑑み、本発明の第一は、下記の発電用磁歪素子である。
[1] 少なくとも1つの電磁鋼板層を含む積層体で形成された発電用磁歪素子であって、前記電磁鋼板層は少なくとも1枚の電磁鋼板を含み、前記積層体は、下記の条件Aおよび条件Bの少なくとも一方を満たす、発電用磁歪素子。
条件A:前記少なくとも1つの電磁鋼板層が2枚以上の電磁鋼板を含み、前記2枚以上の電磁鋼板が互いにろう材部を介して接合されている、および
条件B:前記積層体は少なくとも1つの弾性材料層をさらに含み、前記少なくとも1つの電磁鋼板層がろう材部を介して前記弾性材料層に接合されている。
[2] 前記積層体は前記条件Aのみを満たす、[1]に記載の発電用磁歪素子。
[3] 前記積層体は少なくとも1つの弾性材料層をさらに含み、前記弾性材料層は前記電磁鋼板層に接合されている、[2]に記載の発電用磁歪素子。
[4] 前記積層体は前記条件Aおよび条件Bを満たす、[1]に記載の発電用磁歪素子。
[5] 前記少なくとも1つの電磁鋼板層が1枚の電磁鋼板からなり、前記積層体は前記条件Bのみを満たす、[1]に記載の発電用磁歪素子。
[6] 前記電磁鋼板層に含まれる電磁鋼板の少なくとも1枚が方向性電磁鋼板である、[1]~[5]のいずれかに記載の発電用磁歪素子。
[7] 前記電磁鋼板層に含まれる電磁鋼板の少なくとも1枚が無方向性電磁鋼板である、[1]~[5]のいずれかに記載の発電用磁歪素子。
[8] 前記弾性材料層が非磁性材料からなる、[1]~[7]のいずれかに記載の発電用磁歪素子。
[9] 前記ろう材部が、Niを主要元素とし、Cr、Si、Fe、B、P、C、Cu、およびMoからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含み、Mg酸化物、Cr酸化物、およびSi酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化物をさらに含む、[1]~[8]のいずれかに記載の発電用磁歪素子。
[10] 前記発電用磁歪素子中に存在する前記電磁鋼板と前記ろう材部との接触面の少なくとも1つにおいて、前記電磁鋼板に由来するFeと前記ろう材部に由来するNiとが合金化した領域が存在し、前記発電用磁歪素子の厚み方向の断面の元素分析において、前記合金化した領域が、2μm以上の幅にわたり存在する、[9]に記載の発電用磁歪素子。
[11] 前記ろう材部がFeを主要元素とし、Cr、Ni、Si、B、P、C、Cu、およびMoからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含み、Mg酸化物、Cr酸化物、およびSi酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化物をさらに含む、[1]~[8]のいずれかに記載の発電用磁歪素子。
[12] 前記ろう材部において、前記少なくとも一種の酸化物の形状は塊状である、[9]~[11]のいずれかに記載の発電用磁歪素子。
本発明の第二は、下記の磁歪発電デバイスである。
[13] [1]~[12]のいずれかに記載の発電用磁歪素子と、前記発電用磁歪素子と結合したフレームとを備える磁歪発電デバイス。
[14] 前記発電用磁歪素子と前記フレームとが連続しており、前記フレームの少なくとも一部が、前記発電用磁歪素子を形成する積層体で構成されている、[13]に記載の磁歪発電デバイス。
[15] 前記フレームの全体が、前記発電用磁歪素子を形成する積層体から延びた電磁鋼板と一体構成である、[14]に記載の磁歪発電デバイス。
[16] 前記積層体が弾性材料を含み、前記フレームの全体が、前記発電用磁歪素子を形成する積層体から延びた前記弾性材料と一体構成である、[14]に記載の磁歪発電デバイス。
[17] 前記フレームの全体が、前記発電用磁歪素子と一体構成である、[14]に記載の磁歪発電デバイス。
本発明によれば、発電用磁歪素子の磁歪材料として使用されているFeGa合金、FeCo合金、FeAl合金と比べて低コストでありながらも、従来技術と同等またはそれらを超える磁歪発電量と同時に、高い耐久性をも達成することのできる、発電用磁歪素子および磁歪発電デバイスが提供される。
電磁鋼板および弾性材料を含む積層体の変位-荷重曲線を示す。 磁歪素子の耐久性を試験するための装置の模式図である。 本発明の磁歪素子に曲げ歪みを加えて、磁束密度変化ΔBを測定するためのユニットの模式図である。 本発明の磁歪素子の断面組織をSEM-EDSで観察した結果である。 本発明の他の磁歪素子の断面組織をSEM-EDSで観察した結果である。 本発明の磁歪発電デバイスの構造を示す模式図である。 本発明の磁歪発電デバイスの構造を示す別の模式図である。 本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。 実施例14の磁歪素子の断面組織の元素分析の結果である。
上述したように、従来技術において、磁歪発電デバイスを製造する際には、磁歪材料と他の材料とを接合した積層体を用いて発電用磁歪素子を製造し、当該発電用磁歪素子を、より低コストの材料で製造したフレーム等に固定した構造を採用している。磁歪材料と他の材料とを接合する方法としては、主として樹脂系の接着剤が使用されていた。しかし、樹脂はヤング率が小さな材料であり、ヤング率が比較的大きなエポキシ系の接着剤でも2000MPa(2GPa)程度であり、金属のヤング率の数十分の一である。そのため、電磁鋼板を磁歪材料として含む積層体において電磁鋼板が接着剤によって接合されていると、層間の接着剤からなる樹脂層のヤング率が小さいために、振動による曲げ歪が積層体に加えられた場合に、当該樹脂層によって歪が緩和され、積層体全体に加えられる歪が低減することを本発明者らは見出した。さらにこの歪の低減は、発電用磁歪素子の発電量の低減につながる。
また、上述した積層体を含む発電用磁歪素子を備えた磁歪発電デバイスを作動させた際、即ち、磁歪素子を振動させた際には、接着剤からなる接合部の強度が低いため、層間剥離による磁歪発電デバイスの耐久性の低下が問題となり得る。
また、金属と金属とを接合する方法におけるろう材の使用は知られているが、従来、電磁鋼板を積層する際には、ろう材は使用されていなかった。これは、市販されている電磁鋼板には、鉄損を低減させるための絶縁被膜や張力被膜として酸化物系の被膜が設けられており、ろう材を用いた接合では、上記被膜にダメージが生じる懸念があるためである。よって、トランスの鉄心やモータのコア材として用いるために電磁鋼板を積層する際には、機械的なかしめや樹脂による接着などによって電磁鋼板を接合していた。
このような状況において本発明者らは、磁歪材料として電磁鋼板を使用し、複数の電磁鋼板、または電磁鋼板と他の材料(例えば弾性材料)とを接合して積層体を形成する際に、ろう材部を介して接合すると、上述した歪みの低減による発電量の低減や、耐久性に関する問題が解消できることを見出した。金属のろう材は、接着剤と比べてヤング率の高い材質であることから、発電用磁歪素子に含まれる積層体において、電磁鋼板がろう材によって接合されていると、発電用磁歪素子に振動による曲げ歪が加えられたときに、積層間の歪の緩和を抑制することができる。よって、発電用磁歪素子の発電量の減少を抑制することができる。
さらにろう材は、樹脂系の接着剤と比べて接合強度が高く、紫外線、湿度などの環境因子による影響も受けにくいため、磁歪発電デバイスの耐久性の向上を可能とする。
以下に、例示的な実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
1.発電用磁歪素子
本発明は、少なくとも1つの電磁鋼板層を含む積層体で形成された発電用磁歪素子であって、電磁鋼板層は少なくとも1枚の電磁鋼板を含み、積層体は下記の条件Aおよび条件Bの少なくとも一方を満たす発電用磁歪素子に関する。
条件A:少なくとも1つの電磁鋼板層が2枚以上の電磁鋼板を含み、2枚以上の電磁鋼板が互いにろう材部を介して接合されている、および
条件B:積層体は少なくとも1つの弾性材料層をさらに含み、少なくとも1つの電磁鋼板層がろう材部を介して弾性材料層に接合されている。
本発明において「発電用磁歪素子」(以下、しばしば、「磁歪素子」と略す場合もある)とは、磁歪特性、即ち、磁場の印加による形状変化(即ち、歪み)、を示す磁性材料によって形成された磁歪部を有し、磁歪部の逆磁歪に基づく発電が可能な素子を意味する。
本発明の発電用磁歪素子を形成する積層体は、少なくとも1つの電磁鋼板層を含み、電磁鋼板層は、磁歪材料として少なくとも1枚の電磁鋼板を含む。本発明において「電磁鋼板」とは、鉄(Fe)にケイ素(Si)を添加して鉄の磁気特性を向上させた、「ケイ素鋼板」と呼ばれることもある機能材料である。本発明における電磁鋼板は、ケイ素の含有量が0.5%以上4%以下の電磁鋼板である。ケイ素の含有量が0.5%以上4%以下の電磁鋼板はケイ素添加による電気抵抗の増加によって、交流振動における磁化変化を妨げる渦電流の発生を抑制できるため、磁歪部に用いるのに適している。
本発明における電磁鋼板は、酸化物系の被膜の設けられているものでも、設けられていないものでもよい。後述するように、電磁鋼板とろう材との間により強固な金属結合が形成されることから、電磁鋼板は、酸化物系の被膜の設けられているものが好ましい。酸化物系の被膜は、鉄損の低減を目的として市販の電磁鋼板に設けられている絶縁被膜や張力被膜でよい。
さらに電磁鋼板層に含まれる少なくとも1枚の電磁鋼板は、方向性電磁鋼板でも、無向性電磁鋼板でもよい。電磁鋼板層は、方向性電磁鋼板と無向性電磁鋼板のいずれか一方のみで構成されたものであっても、両方を含むものであってもよい。方向性電磁鋼板とは、鋼板の圧延方向に金属結晶の結晶方位を揃えたものである。具体的には、その圧延方向に<001>方向を揃え、圧延面を{110}方位とした{110}<001>GOSS集合組織を有する電磁鋼板である。一方、無方向性電磁鋼板とは、金属結晶の結晶方位が一定の方向に揃えられていない、比較的ランダムな結晶方位を有するものである。方向性電磁鋼板も、無方向性電磁鋼板も、飽和磁歪がFeGa合金やFeCo合金よりも低い材料であるが、従来の磁歪材料と同等またはそれらを超える発電が可能である。その理由は明確ではないが、次のように推定される。
上述したように、方向性電磁鋼板は、その圧延方向に<001>方向を揃え、圧延面を{110}方位とした{110}<001>GOSS集合組織を有する。方向性電磁鋼板の<001>方向にバイアス磁場を印加した状態で、圧縮歪みを負荷した場合、方向性電磁鋼板の磁束密度は大きく変化する。これは、方向性電磁鋼板の<001>方向に所定の磁場を印加すると、<001>方向に平行な180°磁区と90°磁区との割合が、両者が上手く相互作用する割合となり、方向性電磁鋼板に歪みを負荷した際に、180°磁区から90°磁区への変換、あるいは、90°磁区から180°磁区への変換が生じやすくなるためと考えられる。具体的には、180°磁区の磁化の方向に平行(すなわち、<001>方向)に圧縮歪みを負荷すると、180°磁区が減少して90°磁区が増加し、<001>方向に引っ張り歪みを負荷すると、90°磁区が減少して180°磁区が増加する。また、180°磁区の磁化の方向に垂直(すなわち、<110>方向)に圧縮歪みを負荷すると、90°磁区が減少して180°磁区が増加し、<110>方向に引っ張り歪みを負荷すると180°磁区が減少して90°磁区が増加する。これらの磁区の変化によって、方向性電磁鋼板の磁化が変化し、磁歪素子として機能する。磁歪発電デバイスにおいては、上記磁化の変化によって、磁歪素子に巻かれた検出用コイルに電圧が誘起される。
また、無方向性電磁鋼板には方向性電磁鋼板のような結晶配向は存在しないが、バイアス磁場を印加した状態で歪みを負荷した場合には、磁束密度が大きく変化する。無方向性電磁鋼板では、結晶方位が比較的ランダムであるために、方向性電磁鋼板に比べて磁区が小さい。そのために、歪みを負荷した場合、多数ある磁区の中でより動きやすい磁区から動くことが可能になるため、磁歪素子として使用した際に、大きな磁束密度の変化が得られると考えられる。
本発明においては、方向性電磁鋼板の方が無方向性電磁鋼板よりも大きな磁化の変化を誘起しやすいことから、方向性電磁鋼板の方が磁歪素子に含まれる電磁鋼板として好ましい。
方向性電磁鋼板の具体例としては、例えば、日本製鉄のオリエントコア、オリエントコアハイビー(例えば、27ZH100)、オリエントコアハイビー・レーザー、オリエントコアハイビー・パーマネントが挙げられる。
無方向性電磁鋼板の具体例としては、例えば、日本製鉄のハイライトコア(例えば、35H210)、ホームコアが挙げられる。
電磁鋼板層に含まれる電磁鋼板の数に特に限定はなく、1枚でも、2枚以上でもよいが、電磁鋼板の枚数は1枚~100枚が好ましく、2枚~20枚がより好ましい。発電電圧は磁歪素子の断面積に比例するため、複数の電磁鋼板を積層して断面積を大きくすることで、発電電圧を大きくすることが可能となる。また、振動によって、電磁鋼板には振動周波数に応じた交流磁化が生じるが、磁性体である電磁鋼板に交流磁化が生じると、その磁化を妨げる渦電流が発生する。このとき、電磁鋼板の板厚が薄い場合の方が、板厚が厚い場合と比べて渦電流が発生し難くなるため、板厚の薄い電磁鋼板の使用が発電量の観点から有利になる。
発電用磁歪素子の寸法は、それを備える磁歪発電デバイスの寸法によっても異なるため、本発明の発電用磁歪素子において磁歪部を形成する電磁鋼板層の寸法にも特に限定はない。電磁鋼板層の寸法は、大きければ大きいほど、発電デバイスにおいてコイルの巻き数を多くして、より大きな電圧を得ることができるため好ましい。また、磁歪部を形成する電磁鋼板層の厚みにも特に限定はないが、通常、0.2mm以上10mm以下である。磁歪部の厚みが0.2mm以上であれば、磁束の変化を大きくできるため、発生電圧も大きくできるため有利であり、10mm以下であれば、振動に適した剛性の設計が容易となるため有利である。
電磁鋼板層が2枚以上の電磁鋼板を含む場合、電磁鋼板は互いにろう材部を介して接合されている。ろう材部とはろう材で構成された接合部であるが、その詳細については積層体の層構成に関連して後述する。
本発明の発電用磁歪素子を形成する積層体は、少なくとも1つの弾性材料層をさらに含んでもよい。本発明の磁歪素子において弾性材料層は応力制御部として機能する。本発明の磁歪素子における「応力制御部」とは、磁歪素子に曲げ歪み、等を加えた際に磁歪部全体に対して圧縮、または、引っ張りのどちらか一方の応力負荷を達成するために、応力を制御するための部分である。応力制御部を形成する材料は、上記目的を達成し得る弾性材料である限り特に限定はなく、非磁性材料および磁性材料のいずれも使用可能である。
応力制御部として機能する弾性材料を非磁性材料とすると、磁歪素子の磁歪部のみに磁場が優先的に流れるため、磁歪部のバイアス磁場の調整が容易であるため好ましい。さらに、磁歪部が方向性電磁鋼板で形成され、応力制御部が非磁性材料で形成された磁歪素子に曲げ歪みを負荷した場合には、他の組み合わせと比べてより大きな磁束密度の変化が生じる。これは、弾性材料に磁性材料を用いた場合には弾性材料と電磁鋼板の間に磁気的相互作用が生じ、90°磁区と180°磁区の変換が妨げられる場合があるが、弾性材料が非磁性材料の場合には、このような磁気的相互作用が生じないため、電磁鋼板の90°磁区と180°磁区の変換が生じ易くなるからであると考えられる。
非磁性材料である弾性材料としては、繊維強化プラスチック(例:ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP))、オーステナイト系ステンレス鋼(例:SUS304、SUS316、など)、銅合金(例:黄銅、りん青銅)、アルミ合金(例:ジュラルミン)、チタン合金(例:Ti-6Al-4V)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でも、ヤング率が比較的高く、曲げ歪みを負荷した場合の中立面を磁歪部の外に位置させることが容易である点で、繊維強化プラスチック、オーステナイト系ステンレス鋼が好ましい。
弾性材料として磁性材料を使用すると、コスト低減に効果がある。磁歪素子の磁歪部が方向性電磁鋼板または無方向性電磁鋼板であり、応力制御部として機能する弾性材料が磁性材料である鋼板の場合、バイアス磁場を印加したときに、磁歪部と応力制御部の両方にバイアス磁場が流れる。しかし、磁歪部を形成する方向性電磁鋼板または無方向性電磁鋼板はそもそも高透磁率材料であるため、磁歪部により多くのバイアス磁場が流れるため、発電に十分な磁区変化が生じると考えられる。しかし、応力制御部が非磁性材料の場合と比較すると、磁性材料で形成された応力制御部に流れる磁束分だけ磁歪部に印加される磁力が少なくなる。この磁力の減少を補うためには、磁歪発電デバイスの備える磁石の強度を高めれば良い。
磁性材料である弾性材料としては、一般構造用圧延鋼材(例:SS400)、一般構造用炭素鋼(例:S45C)、高張力鋼(例:HT80)、フェライト系ステンレス鋼(例:SUS430)、マルテンサイト系ステンレス鋼(例:SUS410)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
弾性材料層に含まれる弾性材料の数に特に限定はなく、1枚でも、2枚以上でもよい。複数の弾性材料が含まれる場合、同じ弾性材料を複数枚含むものでも、数種の異なる弾性材料を含むものでもよいが、弾性材料は互いに接合されている。弾性材料層内の弾性材料の接合方法に特に限定はないが、通常、接着剤や接着シートを間に介した貼り合わせ、ろう材接合、液相拡散接合等が挙げられる。
応力制御部として機能する弾性材料層の寸法に特に限定はないが、磁歪部を形成する電磁鋼板層の全体に対して圧縮、または、引っ張りのどちらか一方の応力負荷を達成するという観点から、電磁鋼板層と同じまたは電磁鋼板層より大きいことが望ましい。応力制御部として機能する弾性材料層の厚みにも特に限定はないが、通常、0.02mm以上50mm以下であり、好ましくは0.1mm以上10mm以下、より好ましくは0.2mm以上5mm以下である。弾性材料層の厚みが0.02mm以上であれば、磁歪部全体に対して圧縮、または、引っ張りのどちらか一方の応力負荷を達成する上で有利であり、50mm以下であれば、磁歪素子の振動の妨げを抑制することができる。
上述したように、本発明の発電用磁歪素子を形成する積層体は、少なくとも1枚の電磁鋼板を含む電磁鋼板層を有し、任意で少なくとも1つの弾性材料層さらに有する。電磁鋼板層および弾性材料層の数に限定はなく、電磁鋼板層のみからなる積層体、電磁鋼板層と弾性材料層とを1つずつ有する積層体、複数の電磁鋼板層と1つの弾性材料層とを有する積層体、複数の電磁鋼板層と複数の弾性材料層とを有する積層体が挙げられる。本発明の発電用磁歪素子を形成する積層体として、種々の層構成が考えられるが、いずれの場合も、下記の条件Aおよび条件Bの少なくとも一方を必ず満たすものである。
条件A:少なくとも1つの電磁鋼板層が2枚以上の電磁鋼板を含み、2枚以上の電磁鋼板が互いにろう材部を介して接合されている、および
条件B:積層体は少なくとも1つの弾性材料層をさらに含み、少なくとも1つの電磁鋼板層がろう材部を介して前記弾性材料層に接合されている。
電磁鋼板と電磁鋼板との間および/または電磁鋼板層と弾性材料層との間に存在するろう材部とは、電磁鋼板に接合可能な金属ろう材によって構成された接合部である。
本発明の発電用磁歪素子を形成する積層体の電磁鋼板層に2枚以上の電磁鋼板が含まれるとき、当該積層体は条件Aを満たす。具体的には、電磁鋼板層に含まれる複数の電磁鋼板が互いにろう材部を介して接合されている。複数の電磁鋼板が互いにろう材部を介して接合されていると、磁歪発電デバイスの作動時に振動による曲げ歪が積層体に加えられたとき、ろう材部(電磁鋼板間のろう材からなる接合部)によって、積層体全体に加えられた歪の低減を抑制することができる。さらにこの歪の低減の抑制によって、発電用磁歪素子の発電量の低減を抑制することができる。
さらにろう材部を構成するろう材は、樹脂系の接着剤と比べて接合強度が高く、紫外線、湿度などの環境因子による影響も受けにくいため、磁歪素子の耐久性の向上を可能とする。
本発明の発電用磁歪素子を形成する積層体が上記条件Aを満たし、且つ弾性材料層を含む場合、電磁鋼板層と弾性材料層との接合方法に特に限定はない。弾性材料層は一般的な接合方法、例えば、接着剤や接着シートを間に介した貼り合わせ、液相拡散接合等の方法によって接合されていてもよいし、ろう材部介して接合されていてもよい。しかしながら、本発明に係る積層体の電磁鋼板層が条件Aを満たさないとき、例えば、1枚の電磁鋼板からなるときは、当該積層体は必ず条件Bを満たす。即ち、電磁鋼板層と弾性材料層とがろう材部を介して接合されている。電磁鋼板がろう材部を介して接合されていることによって、積層体全体に加えられた歪の低減を抑制して、発電量の低減を抑制し、さらには磁歪発電デバイスの耐久性の向上を可能とする。
また、本発明の発電用磁歪素子を形成する積層体は条件Aおよび条件Bを同時に満たしてもよい。積層体の強度やデバイスの耐久性の観点からは、積層体に含まれる全ての層がろう材部を介して接合されていることが好ましい。
上記の条件Aおよび条件Bの少なくとも一方を満たす積層体の積層構造の一例として、下記の構造(1)~(8)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。下記構造において、便宜上「接着剤部」と示した部分については、接着剤とろう材以外の別の接合手段による接合部に変更することができる。
(1)電磁鋼板/ろう材部/電磁鋼板
(2)電磁鋼板/ろう材部/弾性材料
(3)電磁鋼板/ろう材部/電磁鋼板/接着剤部/弾性材料
(4)電磁鋼板/ろう材部/電磁鋼板/ろう材部/弾性材料
(5)電磁鋼板/ろう材部/電磁鋼板/ろう材部/電磁鋼板/ろう材部/弾性材料
(6)電磁鋼板/ろう材部/弾性材料/ろう材部/電磁鋼板
(7)電磁鋼板/ろう材部/電磁鋼板/接着剤部/弾性材料/接着剤部/電磁鋼板/ろう材部/電磁鋼板
(8)電磁鋼板/ろう材部/電磁鋼板/ろう材部/弾性材料/ろう材部/電磁鋼板/ろう材部/電磁鋼板
構造(1)の積層体は、2枚以上の電磁鋼板を含む電磁鋼板層を有し、条件Aのみを満たす。
構造(2)の積層体は、1枚の電磁鋼板からなる電磁鋼板層を有し、弾性材料層を有し、条件Bのみを満たす。
構造(3)の積層体は、2枚以上の電磁鋼板を含む電磁鋼板層を有し、弾性材料層を有し、条件Aのみを満たす。
構造(4)および(5)の積層体は、2枚以上の電磁鋼板を含む電磁鋼板層を有し、弾性材料層を有し、条件Aおよび条件Bを満たす。
構造(6)の積層体は、1枚の電磁鋼板からなる電磁鋼板層を複数有し、弾性材料層を有し、条件Bのみを満たす。
構造(7)の積層体は、2枚以上の電磁鋼板を含む電磁鋼板層を複数有し、弾性材料層を有し、条件Aのみを満たす。
構造(8)の積層体は、2枚以上の電磁鋼板を含む電磁鋼板層を複数有し、弾性材料層を有し、条件Aおよび条件Bを満たす。
上記条件Aおよび/または条件Bを満たす積層体において、2枚以上の電磁鋼板、または電磁鋼板層と弾性材料層との間に存在するろう材部を構成するろう材は、電磁鋼板と金属結合を形成可能なものである限り特に限定はなく、例えば、銀ろう、銅ろう、ニッケルろう、鉄ろう、金ろう、アルミニウムろう、チタンろうなどの多くの種類のろう材が挙げられる。種々のろう材の中でも、ニッケル(Ni)を主要元素とするろう材(以下、しばしば、「Ni系ろう材」と略す場合もある)または鉄(Fe)を主要元素とするろう材(以下、しばしば、「Fe系ろう材」と略す場合もある)によって構成され得るろう材部が本発明においては好ましい。
本発明においてNi系ろう材からなるろう材部は、Niを主要元素とし、Cr、Si、Fe、B、P、C、Cu、およびMoからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含むことが好ましい。このようなろう材部を形成することが可能なろう材としては、JIS Z 3265に記載されている、BNi-1、BNi-1A、BNi-2、BNi-3、BNi-4、BNi-5、BNi-6、BNi-7等の組成を有するろう材が挙げられる。一般的に、Niを主要元素としたろう材は、金属と金属とのろう付けに使用されるものであり、上述したように、酸化物系の被膜を付した状態で市販されている電磁鋼板のろう付けには不向きと考えられていた。しかしながら、本発明者らがNiを主要元素とし、Cr、Si、Fe、B、P、C、Cu、およびMoからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含むろう材を用いて電磁鋼板の接合を行ったところ、驚くべきことに、強固な結合を形成することができた。その理由は定かではないが、電磁鋼板とろう材との間に、強固な金属結合、即ち、電磁鋼板由来のFeとろう材部由来のNiとが合金化した領域が形成されることが認められた。
上記合金化した領域は、発電用磁歪素子の厚み方向の断面の元素分析によって確認することができる。発電用磁歪素子の断面の元素分析の方法に特に限定はないが、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)を搭載した走査型電子顕微鏡(SEM)(「SEM-EDS」と略す場合もある)による断面の元素分析や、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)によるライン分析で行うことができる。本発明においては、SEM-EDSによる磁歪発電素子の断面の元素分析によって合金化した領域の確認および測定を行う。SEM-EDSの装置の一例としては、JEOL社製のJSM-7000F(EDSはJED-2300)が挙げられる。
SEM-EDSによる元素分析結果の一例として、本願の実施例14で作製した発電用磁歪素子の分析結果を図9に示した。図9においてFeの濃度プロファイルは、電磁鋼板内部では高く、ろう材部の中央部では非常に低い。一方、Niの濃度プロファイルは、ろう材部内では高く、電磁鋼板の中央部では非常に低い。これは使用したNi系のろう材には少量(3質量%)のFeしか含まれておらず、電磁鋼板にはNiが含まれていないためである。
FeとNiの濃度は、図9の分析ライン上の複数個所において、EDSによる点分析を行い、その部位の組成を定量化することで求めることができる。図9においては、電磁鋼板に由来するFeとNi系ろう材部に由来するNiとが合金化している部分を円で示した。
さらに電磁鋼板に由来するFeとNi系ろう材部に由来するNiとが合金化している領域では、ろう材部側には、使用したろう材のFe濃度よりもFe濃度が高い領域が存在する。このとき、ろう材部側のFe濃度の増加は、電磁鋼板側からろう材部へのFeの拡散によるものであり、0.2質量%以上のFeがろう材部に拡散することによって、拡散したFeとろう材部のNiとが互いに合金化するため好ましい。よって、Fe濃度が[使用したろう材に含有されるFe濃度]+0.2質量%以上である領域が、電磁鋼板由来のFeとろう材部由来のNiとが合金化した領域となる。電磁鋼板側からろう材部へと拡散するFeの量は0.5質量%以上であることがより好ましく、拡散量が多いほど合金化した領域が増加し、強固な接合が形成されると考えられる。
同様に、電磁鋼板側には、電磁鋼板に含まれるNi濃度よりもNi濃度が高い領域が存在する。電磁鋼板側のNi濃度の増加は、ろう材部側から電磁鋼板へのNiの拡散によるものであり、0.2質量%以上のNiが電磁鋼板に拡散することによって、拡散したNiと電磁鋼板のFeとが互いに合金化するため好ましい。よって、電磁鋼板側においては、Ni濃度が[使用した電磁鋼板のNi濃度]+0.2質量%以上である領域が、電磁鋼板由来のFeとろう材部由来のNiとが合金化した領域となる。ろう材部側から電磁鋼板へと拡散するNiの量は0.5質量%以上であることがより好ましく、拡散量が多いほど合金化した領域が増加し、強固な接合が形成されると考えられる。
本発明においては、合金化した領域の幅Lは、2μm以上であることが好ましい。幅Lが2μm以上であれば、高い接合強度を発現するのに十分である。幅Lは大きいほど接合強度が高くなるため、4μm以上であることがより好ましい。合金化した領域の幅Lは、電磁鋼板とNi系ろう材部との接触面の複数個所において、EDSによる点分析を行い、元素組成を定量化し、得られたFe濃度およびNi濃度に基づき、合金化した領域(即ち、ろう材部側のFe濃度が[使用したろう材に含有されるFe濃度]+0.2質量%以上である領域、および電磁鋼板側のNi濃度が[使用した電磁鋼板のNi濃度]+0.2質量%以上である領域)を決定することで求めることができる。尚、合金化した領域の幅Lが2μm以上であるか否かは、FeとNiのそれぞれの濃度プロファイルに基づき、Fe濃度とNi濃度とが近接する部分を含む任意の2μm以上の領域を接触面内部から選択し、選択した領域の元素組成を定量化することによって確認することもできる。
また、合金化した領域が電磁鋼板側およびNi系ろう材部側の両方に存在する場合には、Ni系ろう材部側の合金化した領域と電磁鋼板側の合金化した領域とは連続しており、Ni系ろう材部側の合金化した領域の幅L1および電磁鋼板側の合金化した領域の幅L2の合計が2μm以上であれば、高い接合強度を発現するのに十分である。さらに、幅L1および幅L2はそれぞれが1μm以上であることがより好ましく、2μm以上であることがより好ましい。これは幅L1および幅L2は大きいほど接合強度が高くなるためである。尚、ろう付け中にろう材は液相になるため、電磁鋼板のFeは液相のろう材部へ拡散し易くなり、そのため幅L1は幅L2よりも広くなる傾向がある。
本発明の発電用磁歪素子中に、電磁鋼板とNi系ろう材で形成されたろう材部との接触面が複数存在するときは、当該接触面の少なくとも1つにおいて合金化している領域が形成されていることが好ましい。さらに全接触面の70%以上で合金化している領域が形成されていることがより好ましく、当該接触面のすべてにおいて合金化している領域が形成されていることが最も好ましい。
さらに、Niを主要元素としたろう材は耐食性にも優れていることから、磁歪発電デバイスの耐久性にも寄与する。
本発明においてFe系ろう材からなるろう材部は、Feを主要元素とし、Cr、Ni、Si、B、P、C、Cu、およびMoからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含み、Mg酸化物、Cr酸化物、およびSi酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化物をさらに含むことが好ましい。このようなろう材部を形成することが可能なろう材としては、Fe-Cr-Ni-Si-P-Mo系、Fe-Ni-B-C系、Fe-B-Si系、などのろう材が使用可能である。具体的な組成の例としては以下が挙げられる。
Fe-20%Cr-30%Ni-5.0%Si-8.0%P-2.0%Mo
Fe-20%Cr-20%Ni-5.0%Si-8.0%P-2.0%Mo
Fe-20%Cr-15%Ni-5.0%Si-8.0%P-2.0%Mo
Fe-32%Ni-13%B-1.0%C
Fe-14%B-2.5%Si-1.0%C-1.2%P
本発明者らがFeを主要元素とする上述のようなろう材を用いて電磁鋼板の接合を行ったところ、驚くべきことに、強固な結合を形成することができた。その理由は定かではないが、次のように考えられる。通常、電磁鋼板のFeの含有量はろう材のFe含有量よりも多い。電磁鋼板とFe系ろう材をろう付け熱処理によって接合させた後に、接合断面において板厚方向にFe濃度プロファイルを上述したような元素分析によって測定した場合、接合界面近傍において、Fe濃度プロファイルは電磁鋼板からFe系ろう材に渡って連続的に変化するようになる。このようにFe濃度が連続的に変化している場合には、接合部位において電磁鋼板のFeとろう材のFeとが混ざり合って十分な接合強度が得られる。
本発明において好ましいろう材であるNi系ろう材およびFe系ろう材のそれぞれを用いたろう材部は、さらにMg酸化物、Cr酸化物、およびSi酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化物を含むことが好ましい。これら酸化物は、電磁鋼板の表面に存在していた酸化物被膜に由来するものであり、ろう材によって剥がされて、ろう材の中に取り込まれたものである。電磁鋼板の酸化物被膜から酸化物がろう材に取り込まれることによって、電磁鋼板とろう材との間に強固な金属結合が形成されると考えられる。Mg酸化物、Cr酸化物、Si酸化物は、いずれか1種が含まれていればよいが、2種または3種を含んでいてもよい。これらの酸化物は金属に比べて変形し難い。よって、当該酸化物を含むろう材部を含む磁歪素子は、酸化物を含まないろう材部を含む磁歪素子と比べて、振動による曲げ歪が加えられたときに変形しにくくなる。その結果、積層体の層間の歪の緩和が更に抑制されて、発電量が向上する。尚、ろう材部中において酸化物は、単独で存在していても良いし、少なくとも一種の当該酸化物を含む複合酸化物として存在していても良い。
さらにろう材部中の酸化物の形状は塊状であることが好ましい。塊状の酸化物がろう材部中に存在することによって、ろう材部の変形がより発生しにくくなる。ろう材部中の塊状の酸化物の存在を確認する方法に特に限定はないが、積層体を板面に垂直に切断し、その断面のろう材部を走査電子顕微鏡(SEM)などを用いて観察することができる。このとき、観察した視野内に存在する酸化物の最大径を測定し、塊状の酸化物の大きさとすることができる。塊状の酸化物の大きさは、90μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましい。塊状の酸化物の大きさが90μm以下であれば、酸化物とろう材母相とが剥離しがたいため好ましい。また、当該積層体の板厚方向に測定したときの酸化物の大きさが、ろう材部の厚みの95%以下であること好ましく、70%以下であることがより好ましい。酸化物の大きさが、ろう材部の厚みの95%以下であれば、酸化物とろう材母相とが剥離しがたいため好ましい。
さらにろう材は、ろう材自体の強度改善のために、CuやMoを含有するものでもよい。
また、磁歪素子が複数のろう材部を有する場合、当該複数のろう材部は同じろう材によって形成されていてもよいし、異なるろう材によって形成されたろう材部が混在してもよい。
ろう材部の厚みは、電磁鋼板が接合される限り特に限定はないが、5~100μmであることが好ましい。ろう材部の厚みが5μm未満では、ろう材と電磁鋼板との金属結合が不十分な場合がある。特に電磁鋼板がその表面に酸化物被膜を有する場合、ろう材部の厚みが5μm未満では、当該酸化物被膜を電磁鋼板から剥離させてろう材の中に取り込む作用が低下して、ろう材と電磁鋼板の金属結合が不十分となり、接合強度が低下する。尚、ろう材部の厚みが100μm超となっても、接合の強度や耐久性について、それ以上の効果は認められない。
さらにろう材部には体積率で50%以下の空隙が存在しても良い。空隙には歪の緩和作用があり、体積率で50%以下であれば、耐久性がさらに向上する効果がある。尚、空隙の体積率が0%の場合でも耐久性に問題は生じない。また、ろう材部の空隙は、積層体の層間における歪の緩和が生じるが、空隙が体積率で50%以下であれば、発電量に与える影響を最小限に抑えることができる。これは、層間の体積率の50%超が金属系で剛性の高いろう材で占められ、電磁鋼板に強固に接合されているためと考えられる。
磁歪素子の製造方法について簡単に説明する。
初めにろう材で結合する部分のみを作製する。電磁鋼板(および弾性材料)を所定の大きさにシャーリング切断し、使用する枚数の電磁鋼板(および弾性材料)を準備する。次に、所望の枚数および順番で電磁鋼板(および弾性材料)をろう材を挟みながら積層する。ろう材は、例えば、板厚が25μm~75μm程度の箔形状のものや、粒径が150μm以下の粉ろうの使用も可能である。箔形状のろう材を使用する場合は、ろう材も電磁鋼板(および弾性材料)と同じサイズに切断し、電磁鋼板(および弾性材料)と積層する。粉ろうを使用する場合は、電磁鋼板および/または弾性材料に粉ろうを塗布して積層していく。電磁鋼板、弾性材料およびろう材は、電磁鋼板、ろう材、電磁鋼板といった順番にろう材と電磁鋼板を積層することで、2枚以上の電磁鋼板を含む電磁鋼板層を作製することができる。また、電磁鋼板、ろう材、弾性材料のように積層することで、電磁鋼板層と弾性材料層とを含む積層体を作製することもできる。
ろう付けするために、上記で重ね合わせた材料を熱処理に付す。1つの積層体を熱処理に付してもよいが、複数の積層体を重ねた状態で熱処理に付すこともできる。例えば、電磁鋼板、ろう材、電磁鋼板の順番に積層したものを複数個重ねた、電磁鋼板/ろう材/電磁鋼板/電磁鋼板/ろう材/電磁鋼板/...電磁鋼板/ろう材/電磁鋼板という状態や、電磁鋼板、ろう材、弾性材料を積層したものを複数個重ねた、電磁鋼板/ろう材/電磁鋼板/ろう材/弾性材料/...電磁鋼板/ろう材/電磁鋼板/ろう材/弾性材料という状態で熱処理に付すことができる。電磁鋼板の表面には酸化被膜が存在するため、電磁鋼板同士または電磁鋼板と磁性材料とが接触した状態でろう付けのための熱処理に付しても、処理後にろう付けされた積層体を容易に分離することができる。しかし、分離をより容易にするために、電磁鋼板の表面に離型剤を散布してから重ね合わせることもできる。
ろう付けのための熱処理は、Arなどの不活性ガス雰囲気中または真空中、好ましくは真空中で加熱が可能な炉を用いて実施する。ろう付け温度は、使用するろう材によって異なるが、ろう材の融点+70℃以内の温度が好ましい。ろう付け温度がろう材の融点+70℃を超えても、ろう付け部の強度や耐久性の向上は認められない。熱処理の時間は5~120分程度が好ましい。積層体の層数が多い場合には、炉の温度が所定温度まで上昇した後でも積層体の内部は所定温度に達していない場合があるため、積層体の温度が均一になるためには時間が必要となる。よって、処理温度を長めに、例えば120分間保定することによって、積層体内部を均一に加熱することができる。
さらにろう付けのための熱処理の際には、積層体に荷重を加える。積層体の単位面積あたりの荷重に特に限定はないが、通常、0.1g/mm~5g/mmが好ましい。荷重が0.1g/mm未満ではろう材部内の空隙率が50%超になって接合の強さが低下する場合があるため好ましくない。また、5g/mm超の荷重を加えても、ろう材部の大きな変化は生じない。積層体に荷重を加えるためには、真空中、またはArなどの不活性ガス雰囲気中で処理可能なホットプレスを用いることが可能である。
すべての層がろう材部を介して接合された積層体は、上記方法によって作製することができる。ろう材以外の材料を用いて層の接合を行う場合には、上記方法によって作製したろう材部を有する層と、他の層(例えば弾性材料の板や、接着剤などによって複数の層を接合した積層体)とを、ろう付け以外の方法、例えば、接着剤を用いて接合する。
磁歪素子の性能を評価するための指標として、磁歪素子に外部応力を負荷した際に生じる素子の磁束密度変化ΔBを用いることができる。ΔB(単位:mTまたはT)とは、以下の方法で求めることができる。
断面積Sの磁歪素子を巻き数Nのコイルに挿入して、外部応力を負荷する。このとき、時間Δtの間に磁束密度ΔBの変化が生じた場合、コイルにはV=-N(S・ΔB/Δt)の電圧が発生する。したがって、ΔBはコイルに発生した電圧信号の時間積分値として求めることができる。磁歪振動発電素子の性能指標は、Δtの間に発生する総電圧として評価することができる。すなわち、電圧の時間積分値である磁束密度の変化ΔBとして評価することができる。ΔBの測定は、コイルに発生する電圧をフラックスメータに繋ぐことによって行うことができる。
尚、ΔB(単位:mTまたはT)の詳細な測定方法および測定装置については、下記実施例において説明する。
2.磁歪発電デバイス
本発明は、上述した本発明の発電用磁歪素子と、当該発電用磁歪素子と結合したフレームとを備える、磁歪発電デバイスに関する。
本発明の磁歪発電デバイスは、上述した本発明の磁歪素子、即ち、少なくとも1つの電磁鋼板層を含む積層体で形成されており、電磁鋼板層は少なくとも1枚の電磁鋼板を含み、当該積層体が上述した条件Aおよび条件Bの少なくとも一方を満たす磁歪素子を備える限り、その構造に特に限定はない。よって、従来の磁歪材料(FeGa合金、FeCo合金、FeAl合金等)を磁歪部に用いた、逆磁歪効果を用いた発電装置と同様の構造とすることができる。
本発明の磁歪発電デバイスはさらに磁歪素子と結合したフレームを備える。本発明において磁歪発電デバイスの「フレーム」とは、磁歪素子、錘、磁石のそれぞれと接合されて、磁歪発電デバイスの本体を構成する部分である。さらに本発明においてフレームは、磁歪素子と連続しており、且つフレームの少なくとも一部が、磁歪素子を形成する積層体で構成されていることが好ましい。これは、少なくとも磁歪素子に隣接するフレームの部分(コイル近傍の、コイルの巻かれていない部分)が磁歪素子と一体構成であることを意味し、フレーム全体が磁歪素子と一体構成である必要はない。
以下、フレームの少なくとも一部が、磁歪素子を形成する積層体で構成された磁歪発電デバイスについて説明する。
本発明のデバイスにおける磁歪素子とは、電磁鋼板から形成される磁歪部と、弾性材料から形成される応力制御部とを含み、磁歪部の逆磁歪(即ち、磁歪部の形状変化(歪み)に伴う磁場の発生)に基づく発電が可能な素子を意味する。構造的には、磁歪部と応力制御部とを含む積層体の周りに検出用コイルの巻かれた、発電に寄与する領域である。実際の発電デバイスにおいては、コイルの巻かれた領域の外側の隣接部分も発電に寄与するが、本願明細書においては、コイルの巻かれる領域を磁歪発電素子と定義する。
磁歪発電デバイスのフレームにおいて、磁歪素子の両端のそれぞれから(コイルからはみ出すように)、磁歪素子を形成する積層体(即ち、電磁鋼板と、所望により弾性材料とを含む積層体)で構成されている領域が存在する。この領域の長さは、コイルの長さに相当する長さの50%以上、好ましくは、コイルの長さに相当する長さ以上である。このような磁歪発電デバイスにおいては、発電用磁歪素子とフレームとの接合部が磁歪素子中もしくは磁歪素子の近傍に存在しないことから、発電のために磁歪素子に連続的な曲げ歪みが加えられた際に、接合部に応力集中が起こりにくく、デバイスの耐久性が向上する。また、磁歪素子から延びた電磁鋼板(および弾性材料)を含む積層体は、磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘の接合位置まで延びていることが、錘の振動によって生じる曲げ歪が効率的に磁歪素子に伝達されるために好ましい。
さらに磁歪素子を形成する積層体で構成されているフレームの部分は、フレーム全長の20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。フレーム全長の20%以上が上記積層体で構成されていることによって、電磁鋼板層に含まれる2枚以上の電磁鋼板同士および/または電磁鋼板と弾性材料との接合面を広げることが可能になる。その結果、磁気回路を構成する部材内の連続性が高まるため、磁気的なギャップの発生が低減されて、磁石によるバイアス磁場の調整が容易となり、電圧を安定させることができる。
フレームの一部のみが、磁歪素子を形成する積層体で構成されている場合には、フレームの残りの部分の材料に特に限定はなく、他の鋼板や弾性材料などを接合してフレームを完成させることができる。しかしながら、デバイスの耐久性や製造の容易性の観点から、フレーム全体が磁歪素子を形成する積層体から延びた電磁鋼板一体構成であることが好ましい。特に磁歪素子を形成する積層体が電磁鋼板層と弾性材料層とを含む場合、電磁鋼板が磁歪素子に相当する部分およびフレーム全体に存在し、フレームの一部と磁歪素子に相当する部分には弾性材料が積層されている構造、または弾性材料が磁歪素子に相当する部分およびフレーム全体に存在し、フレームの一部と磁歪素子に相当する部分には電磁鋼板が積層されている構造が好ましい。磁歪素子を構成する電磁鋼板または弾性材料がフレーム全体に延びているこのような構造では、電磁鋼板と弾性材料とを含む積層体を作製することで磁歪素子とフレームの両方を製造することができる。よって、製造工程を簡素化することが可能となる。また、磁歪発電デバイスを振動源等に固定するための固定部にまで磁歪素子を構成する電磁鋼板および弾性材料の少なくとも一部が延びていることによって、振動源等からの振動を効率良く磁歪素子部に伝達することが可能となるため特に好ましい。
また、フレーム全体が、磁歪素子を形成する積層体で構成されていてもよい。特に磁歪素子を形成する積層体が電磁鋼板層と弾性材料層とを含む場合、このような構成においては、電磁鋼板と弾性材料とを含む積層体が、磁歪素子およびフレームの両方を連続的に形成しており、磁歪素子とフレームとの接合部が全く存在しないため、耐久性の観点から好ましい。さらに磁気回路を構成する部材内の連続性が高まるために、磁気的なギャップの発生が低減されて、磁石によるバイアス磁場の調整が容易となり、電圧をさらに安定させることができる。
磁歪素子を含むフレームの寸法に特に限定はないが、一般的に磁歪素子を含むフレームの長さは30mm以上700mm以下、好ましくは60mm以上500mm以下、より好ましくは120mm以上300mm以下である。一般的なフレームの幅は、4mm以上70mm以下、好ましくは6mm以上50mm以下、より好ましくは8mm以上30mm以下である。フレームの寸法は、機器を動作させるために必要な電力の大きさに合わせて設計に反映させれば良い。
フレームの形状にも特に限定はなく、板状や、コ字状、U字状、V字状といった曲部を有する形状とすることも可能である。尚、本発明においては、靱性の高い電磁鋼板を磁歪素子に用いることから、板状のみならず、曲部を有するU字状等のフレームも磁歪素子を形成する磁歪材料によって製造することが可能である。
本発明の磁歪発電デバイスにおける発電用磁歪素子の寸法は、大きければ大きいほど、発電デバイスにおいてコイルの巻き数を多くして、より大きな電圧を得ることができる。よって、磁歪素子の寸法(コイルを巻く領域の長さ)に特に限定はないが、通常、5mm以上150mm以下であり、好ましくは10mm以上100mm以下、より好ましくは20mm以上70mm以下である。
磁歪素子の電磁鋼板層およびフレームを形成する電磁鋼板層の厚みに特に限定はないが、通常、0.2mm以上10mm以下である。磁歪素子に相当する部分の厚みが0.2mm以上であれば、磁束の変化を大きくできるため、発生電圧も大きくできるため有利であり、10mm以下であれば、振動に適した剛性の設計が容易となるため有利である。電磁鋼板層の厚みは、磁歪素子を形成する積層体中と、フレームを構成する積層体中とで同じでも良いし、異なっていてもよい。
磁歪素子の弾性材料層およびフレームを形成する弾性材料層の厚みに特に限定はないが、通常、0.02mm以上50mm以下であり、好ましくは0.1mm以上10mm以下、より好ましくは0.2mm以上5mm以下である。磁歪素子に相当する部分の厚みが0.02mm以上であれば、磁歪部全体に対して圧縮、または、引っ張りのどちらか一方の応力負荷を達成する上で有利であり、50mm以下であれば、磁歪素子の振動を妨げることが抑制できる。弾性材料層の厚みは、磁歪素子を形成する積層体中と、フレームを構成する積層体中とで同じでも良いし、異なっていてもよい。
本発明の磁歪素子とフレームとを有する限り、本発明の磁歪発電デバイスの他の構成に特に限定はなく、従来の磁歪発電デバイスと同様に構成することができる。具体的には、当該装置において、磁歪素子の周りにはコイルが装填されており、フレームと、フレームに取り付けられた錘と磁石とを含む。このような装置においては、磁石の磁力線は、磁歪素子を通過して、磁歪部に対してバイアス磁場を印加する。そして錘の振動によってフレームが振動し、磁歪素子に引張力および圧縮力を加える。このとき、磁歪素子に対して曲げ歪を加える方向と、磁歪素子に対してバイアス磁場を印可する方向とが平行関係にあり、逆磁歪効果によって磁歪素子の磁化を変化させ、コイルに誘導電流(または誘導電圧)を発生させることができる。
磁歪素子が方向性電磁鋼板から形成される場合には、方向性電磁鋼板の<001>方向にバイアス磁場が印加されるようにデバイスを構成することで、より大きな電圧が得られるため好ましい。
磁歪発電デバイスにおける磁石のサイズや数に特に限定はなく、デバイスの構成に応じて選択することができる。バイアス磁場の発生には永久磁石を用いることが好ましく、これは、永久磁石は小型化可能であり、バイアス磁場の制御が容易であるためである。また、永久磁石としては、より大きなバイアス磁場を発生させることができるという理由から、NdFeB磁石が好ましい。
次に、実施例11~13で製造したデバイスの模式図である図6~8に参照しながら本発明の磁歪発電デバイスの基本的な構成について説明するが、本発明のデバイスはこれらに限定されるものではない。
図6は、U字型のフレーム全体が、応力制御部から延びた弾性材料と一体構成である磁歪発電デバイス200の模式図である。磁歪発電デバイス200の備える磁歪素子210は、電磁鋼板層221と弾性材料層222(実施例11では方向性電磁鋼板と非磁性材料であるSUS304)とがろう材部(図示しない)を介して接合された積層体220で構成されている。磁歪素子210においては、電磁鋼板層221が磁歪部211となり、弾性材料層222が応力制御部212となり、磁歪素子210の周りには検出用コイル260が装填されている。さらにフレーム230の全体が、応力制御部212から延びた弾性材料層222と一体構成であり、フレームの一部(約71%)が、積層体220で構成されている。デバイス200はさらに磁歪部211に歪みを与えるための錘240およびバイアス磁場を印加するための磁石250を有し、固定部270で振動源等の上に固定することができる。
図7は、U字型のフレーム全体が、応力制御部から延びた弾性材料と一体構成である磁歪発電デバイス300の模式図である。磁歪発電デバイス300の備える磁歪素子310は、電磁鋼板層321と弾性材料層322(実施例12では方向性電磁鋼板と磁性材料であるSUS430)とがろう材部(図示しない)を介して接合された積層体320で構成されている。磁歪素子310においては、電磁鋼板層321が磁歪部311となり、弾性材料層322が応力制御部312となり、磁歪素子310の周りには検出用コイル360が装填されている。さらにフレーム330の全体が、応力制御部312から延びた弾性材料層322と一体構成であり、フレームの一部(約71%)が、積層体320で構成されている。デバイス300はさらに磁歪部311に歪みを与えるための錘340およびバイアス磁場を印加するための磁石350を有し、固定部370で振動源等の上に固定することができる。
図8は、磁歪素子およびU字型のフレームの一部が、電磁鋼板/ろう材部/弾性材料/ろう材部/電磁鋼板という積層構造を有する積層体で構成された磁歪発電デバイス400の模式図である。磁歪発電デバイス400の備える磁歪素子410は、2枚の電磁鋼板層421と弾性材料層422(実施例13では方向性電磁鋼板と非磁性材料であるSUS304)とがろう材部(図示しない)を介して接合された、電磁鋼板/ろう材部/弾性材料/ろう材部/電磁鋼板という積層構造を有する積層体420で構成されている。磁歪素子410においては、電磁鋼板層421は磁歪部411となり、弾性材料層422が応力制御部412となり、磁歪素子410の周りには検出用コイル460が装填されている。デバイス400はさらに磁歪部411に歪みを与えるための錘440およびバイアス磁場を印加するための磁石450を有する。さらにデバイス400のフレーム430は、その大部分が磁歪素子410から延びた積層体420で構成されているが、U字型フレーム430の外側の電磁鋼板層421は、固定部470においては、弾性材料層422に開けた孔を貫通して内側に配置した他方の電磁鋼板層421と接触している。さらに、錘440を配置した側の先端においても、U字型フレーム430の外側と内側の電磁鋼板層421は接触している。このように、外側と内側の電磁鋼板を接触させることによって、磁石によって電磁鋼板を効率良く磁化させることが可能となる。また、デバイス400には、検出用コイル460内の磁歪素子410の振動を生じやすくするために、フレーム430のU字部に支柱480が設けられている。また、デバイス400は固定部470で振動源等の上に固定することができるが、ここには高さ調整板490として電磁鋼板と同じ厚みのSUS304が接着されている。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例において、特に記載のない限り、「%」は「質量%」である。
(実施例1)
接合強度の比較
電磁鋼板として、日本製鉄(株)製の方向性電磁鋼板35ZH115、被膜付き、を使用した。当該電磁鋼板の厚みは0.35mm、結晶方位は{110}<001>GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を<001>方向とし、長さ40mm、幅6.0mmにシャーリング切断した。切断時の歪みを除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍し、磁歪部用の方向性電磁鋼板を得た。
接合強度を測定するための引っ張り試験用の積層体(試験片)を製造するために、長さ40mm、幅6.0mmの方向性電磁鋼板2枚を、その接合部が長手方向で20mm、幅6.0mmになるように、長手方向に20mmずらして積層した。
接合には、ろう材として、BNi-2組成の25μm厚のアモルファス箔、または活性Agろう箔(AgCuTi系、50μm厚)を用いた。各ろう材の組成は以下のとおりである。
BNi-2組成: Ni-7.0%Cr-4.5%Si-3.0%B-3.0%Fe、
活性Agろう組成: Ag-28%Cu-2%Ti-5%Sn
それぞれのろう材箔を長さ20mm、幅6.0mmに切断して、方向性電磁鋼板2枚の積層部の間に1枚ずつ挟み、以下の条件でろう付け処理を行い、条件Aを満たす積層体を得た。
BNi-2箔の場合には、1050℃で10分間、真空中でろう付け処理。
活性Agろう箔の場合には、1000℃で10分間、真空中でろう付け処理。
比較として、上記と同じ方向性電磁鋼板を2枚用意し、ろう材箔の代わりにエポキシ系の接着剤を用いて2枚の方向性電磁鋼板を室温で貼り合わせ、積層体(試験片)を得た。
さらに長さ40mm、幅6.0mmの方向性電磁鋼板1枚も試験片として用意した。
上記で用意した各試験片について、引張試験を実施した。具体的には、試験片の両端を挟んで、変位-荷重曲線を測定した。変位の速度は、1mm/分とし、破断するまで測定した。結果を図1に変位-荷重曲線として示した。
BNi-2箔で接合した積層体では、接合部では破断せず、母材で破断が生じた。また、活性Agろう箔で接合した積層体では、接合部破断が生じ、破断強度は50N以下とBNi-2箔接合積層体に比べて低い値であった。一方、エポキシ系接着剤で接合した積層体では接合部破断が生じた。破断強度は母材強度に近い値であったが、BNi-2箔に比べて延びがほとんど無かった。上記結果から、接着剤による接合よりも、母材破断したBNi-2箔の接合が優れていることがわかる。
(実施例2)
電磁鋼板/ろう材部(Ni系)/電磁鋼板からなる磁歪素子の耐久性
磁歪材料として、日本製鉄(株)製の方向性電磁鋼板35ZH115、被膜付き、を使用した。当該電磁鋼板の厚みは0.35mm、結晶方位は{110}<001>GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を<001>方向とし、長さ40mm、幅6.0mmにシャーリング切断した。切断時の歪みを除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍し、磁歪部用の方向性電磁鋼板を得た。
この方向性電磁鋼板2枚の間に、ろう材として、長さ40mm、幅6.0mm、厚み25μmのBNi-2組成アモルファス箔1枚を挟んで、1050℃で10分間、真空中でろう付け処理をして、本発明の条件Aを満たす磁歪素子を得た。当該磁歪素子は2組作製した。
比較として、上記と同じ方向性電磁鋼板2枚をエポキシ系の接着剤で貼り合わせた磁歪素子を2組作製した。
作製した磁歪素子の各1組について、図2に示したように、振動を加えた。具体的には、磁歪素子1の長手方向の片側端部を固定部2で固定した状態で、他方の自由端を上下に繰り返し振動させた。振幅を±1.0mm、振動周波数を30Hzの条件で10万回振動させた。
次に、曲げ歪を加えた時のΔBを測定するために、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、厚み0.5mmをカーボン繊維の方向を長手方向として、長さ40mm、幅6.3mmに切断し、上記で作成した磁歪素子(振動前と10万回振動後)のそれぞれにエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせた。得られたCFRP付きの磁歪素子を用いて磁束密度変化ΔBを測定した。
磁束密度変化ΔBの測定には、図3に示した、曲げ歪みを磁歪素子に加える測定ユニット100を使用した。図3には、例として、磁歪部111および応力制御部112を有する磁歪素子110の左側端部を固定支持台150に固定し、その右側端部を下方向に押し込んで曲げ歪みを加えるユニットを示した。
ユニット100においては、磁歪素子110の右側端部に下方への圧力170を加える(即ち、押し込む)。このとき、磁歪部111(磁歪材料)は圧縮歪みを加えられた状態となり、押し込んだ時の磁歪部111の移動距離171が長くなるほど、圧縮歪みは大きくなる。押し込みはマイクロメーターのシリンダヘッドを用いて行い、押し込みの深さΔh(移動距離171)は0.5mmとした。
さらに図3の測定ユニットでは、ヘルムホルツ型のコイルをバイアス磁場用コイル120とし、そこに電流を流して、磁歪素子110に磁場を印加した。磁場の大きさは直流電源140の大きさによって調整し、磁場の大きさは予めガウスメータで校正した。このとき、磁歪素子110に印加される磁場を8000A/m(1000e)として評価した。磁歪素子110の磁束変化は、検出用コイル130(巻き数:3500ターン)によって誘起電圧として検出し、その誘起電圧をフラックスメータ160で磁束の変化として計測した。さらに、下記式Iに基づき、磁束の変化を検出用コイルの巻き数と磁歪材料の断面積で割って、磁束密度変化ΔBを求めた。結果を表1に示した。
Figure 2022090601000002
(式中、Vは発生電圧、Nはコイルの巻き数、Sは磁歪部の断面積である。)
尚、この測定方法で得られる磁束密度変化ΔBは電圧変化の時間積分値であるため、歪を加える速さには依存しない。
Figure 2022090601000003
表1の結果から明らかなように、2枚の電磁鋼板をろう付け接合した、条件Aを満たす発明例1の磁歪素子は、接着剤で接合した比較例1の磁歪素子と比較して、ΔBの低下が減少し、耐久性が向上した。
(実施例3)
ろう材部の断面構造: 電磁鋼板/ろう材部/電磁鋼板からなる磁歪素子
磁歪材料として、日本製鉄(株)製の方向性電磁鋼板35ZH115、被膜付き、を使用した。当該電磁鋼板の厚みは0.35mm、結晶方位は{110}<001>GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を<001>方向とし、長さ40mm、幅6.0mmにシャーリング切断した。切断時の歪みを除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍し、磁歪素子用の方向性電磁鋼板を得た。
得られた方向性電磁鋼板2枚の間に、ろう材として、長さ40mm、幅6.0mm、厚み50μmのBNi-2組成アモルファス箔1枚を挟んで、1050℃で10分間、真空中でろう付け処理をして条件Aを満たす(即ち、2枚の電磁鋼板の間にろう材部を有する)磁歪素子を得た。
得られた磁歪素子を幅方向に切断し、断面組織をSEM-EDS(JEOL JSM-7000F)で観察した。結果を図4に示した。
図4から明らかなように、Niを主要元素としたろう材によって酸化物皮膜を有する電磁鋼板をろう付けすると、その断面に酸化物層は見られない。酸化物皮膜はろう材によって剥がされて、ろう材の中に取り込まれたと考えられる。その結果、電磁鋼板とろう材とがFeとNiを主体とした金属結合を形成した。
さらに図4中のろう材部に見られる酸化物の最大径を測定したところ、約0.3μm~約63μmの大きさの塊状のMg酸化物、約0.3μm~約20μmの大きさの塊状のCr酸化物、約0.3μm~約20μmの大きさの塊状のSi酸化物が存在することがわかる。さらにSi酸化物とMg酸化物との複合酸化物も存在していた。
(実施例4)
ろう材部の断面構造: 電磁鋼板/ろう材部/弾性材料からなる磁歪素子
磁歪材料として、日本製鉄(株)製の方向性電磁鋼板35ZH115、被膜付き、を使用した。当該電磁鋼板の厚みは0.35mm、結晶方位は{110}<001>GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を<001>方向とし、長さ40mm、幅6.1mmにシャーリング切断した。切断時の歪みを除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍し、磁歪素子用の方向性電磁鋼板を得た。
弾性材料として非磁性材料であるSUS304、厚み0.5mmの冷延板を用いた。長さ40mm、幅6.1mmに切断した後、真空中、1050℃で1分間保持し、ガス急冷よる溶体化処理を行って、切断歪みによる影響を取り除き、応力制御部用の非磁性材料を得た。
上述の方向性電磁鋼板1枚とSUS304の間に、ろう材として、長さ40mm、幅6.1mm、厚み38μmのBNi-2組成アモルファス箔1枚を挟んで、1050℃で10分間、真空中でろう付け処理をして、条件Bを満たす(即ち、電磁鋼板と弾性材料との間にろう材部を有する)磁歪素子を得た。
得られた磁歪素子を幅方向に切断し、断面組織をSEM-EDS(JEOL JSM-7000F)で観察した。結果を図5に示した。
図5から明らかなように、Niを主要元素としたろう材によって酸化物皮膜を有する電磁鋼板をろう付けすると、その断面に酸化物層は見られない。酸化物皮膜はろう材によって剥がされて、ろう材の中に取り込まれたと考えられる。その結果、電磁鋼板とろう材とがFeとNiを主体とした金属結合を形成した。
さらに図5中のろう材部に見られる酸化物の最大径を測定したところ、約0.3μm~約20μmの大きさの塊状のMg酸化物、約0.3μm~約20μmの大きさの塊状のCr酸化物が存在することがわかる。また、Si酸化物とMg酸化物の複合酸化物も存在していた。さらにSUS304とろう材も、FeとNiを主体とした金属結合を形成していた。
(実施例5)
方向性電磁鋼板/ろう材部/SUS304からなる磁歪素子のΔB
磁歪材料として、日本製鉄(株)製の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。当該電磁鋼板の厚みは0.27mm、結晶方位は{110}<001>GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を<001>方向とし、長さ40mm、幅5.9mmにシャーリング切断した。切断時の歪みを除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍し、磁歪素子用の方向性電磁鋼板を得た。
弾性材料として非磁性材料であるSUS304、厚み0.5mmの冷延板を用いた。長さ40mm、幅6.3mmに切断した後、真空中、1050℃で1分間保持し、ガス急冷を行って、切断歪みによる影響を取り除き、磁歪素子用の弾性材料を得た。
ろう材として、Niろう材であるBNi-2組成の25μm厚のアモルファス箔または活性Agろう箔(AgCuTi系、50μm厚)を用いた。箔を長さ40mm、幅5.9mmに切断して、方向性電磁鋼板とSUS304の間に1枚挟んだ。以下の条件でろう付け処理をして、条件Bを満たす磁歪素子を得た。
ろう付けのための条件は以下の通りである。
BNi-2ろう箔: 真空中、1050℃で10分間
活性Agろう箔: 真空中、1000℃で10分間
比較例として、上記の方向性電磁鋼板27ZH100とSUS304をエポキシ系の接着剤で室温で貼り合わせた磁歪素子を作製した。
作製した磁歪素子のΔBを、図3に示した、曲げ歪みを磁歪素子に加える測定ユニット100を使用し、実施例2と同様に測定した。但し、本実施例では、振動の1周期を考慮して、磁歪素子110の右側端部に下方への圧力170を加えて1mm押し込んだ時のΔBと、上方に1mm引き上げたとき時のΔBとを測定し、それらの和をΔBの値とした。押し込みはマイクロメーターのシリンダヘッドを用いて行った。さらにマイクロメーターのシリンダヘッドでは磁歪素子の端部を引き上げることができないため、磁歪素子の上下をひっくり返して設置し、磁歪素子110の右側端部に下方への圧力170を加えて1mm押し込むことで、磁歪素子110の端部を引き上げたときと同じ状態を再現した。また、磁歪素子110に印加される磁場を2800A/m(350e)として評価した。結果を表2に示した。
Figure 2022090601000004
表2の結果から明らかなように、電磁鋼板と弾性材料であるSUS304をろう付け接合した、条件Bを満たす発明例2および発明例3の磁歪素子は、接着剤による接合を用いた比較例2の磁歪素子と比べて、ΔBは発明例2が約1.6倍、発明例3が1.5倍に向上した。これは、樹脂などの接着剤を用いた積層から、ヤング率が大きな金属のろう材を用いた積層に替えることによって、曲げ歪が加えられた場合の積層間の歪の緩和が抑制されて、ΔBが向上したためと考えられる。
また、実施例1においては、電磁鋼板2枚を活性Agろう材で接合した磁歪素子の接合強度は50N以下であったが、電磁鋼板とSUS304とを活性Agろう材で接合した発明例3においては、2枚の電磁鋼板よりも強固な接合が得られたと考えられる。よって、片持ち梁形式の曲げで下方に1mm押し込む程度では、接合部に剥離が生じ難くなり、ΔBが接着剤による接合と比べて向上したと考えられる。
(実施例6)
方向性電磁鋼板/ろう材部/SUS430からなる磁歪素子のΔB
磁歪材料として、日本製鉄(株)製の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。当該電磁鋼板の厚みは0.27mm、結晶方位は{110}<001>GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を<001>方向とし、長さ40mm、幅6.1mmにシャーリング切断した。切断時の歪みを除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍し、磁歪素子用の方向性電磁鋼板を得た。
弾性材料として、磁性を有するフェライト系ステンレス鋼であるSUS430、厚み0.5mmを用いた。長さ40mm、幅6.5mmに切断した後、真空中、1050℃で1分間保持し、ガス急冷を行って、切断歪みによる影響を取り除き、磁歪素子用の弾性材料を得た。
ろう材として、BNi-2組成の25μm厚のアモルファス箔を用いた。箔を長さ40mm、幅6.1mmに切断して、方向性電磁鋼板とSUS430の間に1枚挟んだ。1050℃で10分間、真空中でろう付け処理をして、条件Bを満たす磁歪素子を得た。
比較例として、上記の方向性電磁鋼板27ZH100とSUS430をエポキシ系の接着剤で室温で貼り合わせて磁歪素子を得た。
印加したバイアス磁場は3600A/m(450e)に変更した以外は、実施例5と同様にΔBを測定した。結果を表3に示した。
Figure 2022090601000005
表3の結果から明らかなように、電磁鋼板と弾性材料として磁性材料であるSUS430をろう付け接合した、条件Bを満たす発明例4の磁歪素子は、接着剤による接合を用いた比較例3の磁歪素子と比べて、ΔBが約1.5倍に向上した。これは、樹脂などの接着剤を用いた積層から、ヤング率が大きな金属のろう材を用いた積層に替えることによって、曲げ歪が加えられた場合の積層間の歪の緩和が抑制されて、ΔBが向上したためと考えられる。
(実施例7)
無方向性電磁鋼板枚/ろう材部/SUS304からなる磁歪素子のΔB
磁歪材料として、日本製鉄(株)製の無方向性電磁鋼板35H210、被膜付き、を使用した。当該電磁鋼板の厚みは0.35mmとした。無方向性電磁鋼板の圧延方向を長手方向とし、長さ40mm、幅6.1mmにシャーリング切断し、切断時の歪みを除去するために740℃、2時間、真空中で焼鈍し、磁歪素子用の無方向性電磁鋼板を得た。
弾性材料として、非磁性材料であるSUS304、厚み0.5mmの冷延板を用いた。長さ40mm、幅6.5mmに切断した後、真空中、1050℃で1分間保持し、ガス急冷を行って、切断歪みによる影響を取り除き、磁歪素子用の弾性材料を得た。
ろう材として、BNi-2組成の25μm厚のアモルファス箔を用いた。箔を長さ40mm、幅6.1mmに切断して、無方向性電磁鋼板とSUS304の間に1枚挟んだ。1050℃で10分間、真空中でろう付け処理をして、条件Bを満たす磁歪素子を得た。
比較例として、上記の方向性電磁鋼板35H210とSUS304をエポキシ系の接着剤で室温で貼り合わせて磁歪素子を得た。
印加したバイアス磁場を3200A/m(400e)に変更した以外は、実施例5と同様にΔBを測定した。結果を表4に示した。
Figure 2022090601000006
表4の結果から明らかなように、無方向性電磁鋼板と弾性材料としてSUS304をろう付け接合した、条件Bを満たす発明例5の磁歪素子は、接着剤による接合を用いた比較例4の磁歪素子と比べて、ΔBが約1.4倍に向上した。これは、樹脂などの接着剤を用いた積層から、ヤング率が大きな金属のろう材を用いた積層に替えることによって、曲げ歪が加えられた場合の積層間の歪の緩和が抑制されて、ΔBが向上したためと考えられる。
(実施例8)
方向性電磁鋼板/ろう材部/方向性電磁鋼板/接着剤部/CFRPからなる磁歪素子のΔB
磁歪材料として、日本製鉄(株)製の方向性電磁鋼板35ZH115、被膜付き、を使用した。当該電磁鋼板の厚みは0.35mm、結晶方位は{110}<001>GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を<001>方向とし、長さ40mm、幅6.0mmにシャーリング切断した。切断時の歪みを除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍し、磁歪素子用の方向性電磁鋼板を4枚作製した。
ろう材として、BNi-2組成の25μm厚のアモルファス箔を用いた。箔を長さ40mm、幅6.0mmに切断して、方向性電磁鋼板2枚の間に挟んだ。1050℃で10分間、真空中でろう付け処理をして方向性電磁鋼板2枚をろう付けし、電磁鋼板層を得た。
弾性材料として、非磁性材料である炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、厚み0.5mmを用いた。カーボン繊維の方向を長手方向として、長さ40mm、幅6.4mmに切断し、磁歪素子用の弾性材料を得た。
2枚の方向性電磁鋼板をろう付けした電磁鋼板層と弾性材料(CFRP)とをエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて、条件Aを満たす磁歪素子を得た。
比較例として、2枚の上記の方向性電磁鋼板35ZH115をエポキシ系の接着剤で室温で貼り合わせた後、そこにCFRPをエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて、磁歪素子を得た。
マイクロメーターのシリンダヘッドによる押し込み深さを0.5mmとし、印加したバイアス磁場を8000A/m(1000e)に変更した以外は、実施例5と同様にΔBを測定した。結果を表5に示した。
Figure 2022090601000007
表5の結果から明らかなように、条件Aを満たし、条件Bを満たさない発明例6の磁歪素子は、ろう材部を含まない比較例5の磁歪素子と比べて、ΔBが約1.2倍に向上した。これは、樹脂などの接着剤を用いた積層から、ヤング率が大きな金属のろう材を用いた積層に替えることによって、曲げ歪が加えられた場合の積層間の歪の緩和が抑制されて、ΔBが向上したためと考えられる。
(実施例9)
方向性電磁鋼板/ろう材部/方向性電磁鋼板/ろう材部/SUS304からなる磁歪素子のΔB
磁歪材料として、日本製鉄(株)製の方向性電磁鋼板35ZH115、被膜付き、を使用した。当該電磁鋼板の厚みは0.35mm、結晶方位は{110}<001>GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を<001>方向とし、長さ40mm、幅6.0mmにシャーリング切断した。切断時の歪みを除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍し、磁歪素子用の方向性電磁鋼板を得た。
弾性材料として、非磁性材料であるSUS304、厚み0.83mmの冷延板を用いた。長さ40mm、幅6.0mmに切断した後、真空中、1050℃で1分間保持し、ガス急冷を行って、切断歪みによる影響を取り除き、磁歪素子用の弾性材料を得た。
ろう材として、BNi-2組成の25μm厚のアモルファス箔を長さ40mm、幅6.0mmに切断した。2枚の電磁鋼板と1枚のSUS304を積層するために、電磁鋼板/ろう材/電磁鋼板/ろう材/SUS304の順番に積層した。1050℃で10分間、真空中でろう付け処理をして方向性電磁鋼板2枚とSUS304をろう付けし、条件Aおよび条件Bを満たす磁歪素子を得た。
実施例8と同様に、得られた磁歪素子のΔBを測定した。結果を表6に示した。
Figure 2022090601000008
表6から明らかなように、条件Aおよび条件Bを満たす、接合部が全てろう付けである発明例7の磁歪素子は、接合部が全て接着である上記比較例5の磁歪素子と比べて、ΔBが約1.4倍に向上した。また、発明例7の磁歪素子は、条件Aのみを満たし、弾性材料層を接着した発明例6の磁歪素子と比べて、ΔBが約1.2倍に向上した。これは、樹脂などの接着剤を用いた積層から、ヤング率が大きな金属のろう材を用いた積層に替えることによって、曲げ歪が加えられた場合の積層間の歪の緩和が抑制されて、ΔBが向上したためと考えられる。
(実施例10)
方向性電磁鋼板/ろう材部/SUS304からなる磁歪素子のΔB
磁歪材料として、日本製鉄(株)製の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。当該電磁鋼板の厚みは0.27mm、結晶方位は{110}<001>GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を<001>方向とし、長さ40mm、幅6.0mmにシャーリング切断した。切断時の歪みを除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍し、磁歪素子用の方向性電磁鋼板を得た。
弾性材料として、非磁性材料であるSUS304、厚み0.5mmの冷延板を用いた。長さ40mm、幅6.3mmに切断した後、真空中、1050℃で1分間保持し、ガス急冷を行って、切断歪みによる影響を取り除き、磁歪素子用の弾性材料を得た。
ろう材として、BNi-1組成またはBNi-3組成の35μm厚のアモルファス箔を用いた。ろう材の組成は以下の通りである。
BNi-1組成: Ni-14%Cr-4.0%Si-3.5%B-4.5%Fe(mass%)、融点:1040℃
BNi-3組成: Ni-4.5%Si-3.2%B、(mass%)、融点:1040℃
それぞれの箔を長さ40mm、幅6.0mmに切断して、方向性電磁鋼板とSUS304の間に1枚挟んだ。1100℃で10分間、真空中でろう付け処理をして、条件Bを満たす磁歪素子を得た。
実施例5と同様に、得られた磁歪素子のΔBを測定した。結果を表7に示した。
Figure 2022090601000009
表7から明らかなように、電磁鋼板と弾性材料であるSUS304をろう付け接合した、条件Bを満たす発明例8および9の磁歪素子は、同じ電磁鋼板と弾性材料とを接着剤で接合した比較例2の磁歪素子と比べて、ΔBが約1.5~1.6倍に向上した。これは、樹脂などの接着剤を用いた積層から、ヤング率が大きな金属のろう材を用いた積層に替えることによって、曲げ歪が加えられた場合の積層間の歪の緩和が抑制されて、ΔBが向上したためと考えられる。
(実施例11)
方向性電磁鋼板/ろう材部(Ni系)/SUS304からなる磁歪素子を備えた磁歪発電デバイス
実施例11において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板層221として用い、SUS304を弾性材料層222として用いて、図6に示した構造を有する磁歪発電デバイス200を作製した。
電磁鋼板層221として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}<001>GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を<001>方向とし、長さ100mm、幅6.0mmにシャーリング切断した。それを図6に示したようにU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部270に相当する長さは約40mm、上側の検出用コイル260、錘240をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、方向性電磁鋼板をU字型に曲げた後、歪を除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍した。
弾性材料層222として、非磁性材料であるSUS304、厚み0.5mm、幅6.0mmを用いた。U字型の電磁鋼板と一体化できるように長さを140mmに切断し、U字形状に成型して形状を整えた。
尚、U字状に成型したSUS304を真空中で1050℃、1分間保持後をガス急冷よる溶体化処理を行って、切断歪による影響を取り除いた。
ろう材として、BNi-2組成の35μm厚のアモルファス箔を用いた。箔を長さ100mm、幅6.0mmに切断して、U字型に曲げた方向性電磁鋼板とSUS304の間で方向性電磁鋼板の位置に合わせて1枚挟み、ずれないように固定した。1050℃で10分間、真空中でろう付け処理をして積層体とし、フレームの一部(100mm/140mm=約71%)が上記積層体220で構成され、磁歪素子210の応力制御部212から延びた弾性材料層222とフレーム230の全体とが一体構成である、一体構成体を得た。
比較として、上記と同様のサイズのU字型に曲げた方向性電磁鋼板とSUS304をエポキシ系接着剤を用いて室温で貼り合わせた一体構成体を作製した。
得られた一体構成体の磁歪素子に対応する部位に5000ターンの検出用コイル260を装填した。コイルの長さは15mmだった。次に、7gのタングステンの錘240を磁歪素子210のとなりに接着固定した。さらにU字形状の下側の固定部の電磁鋼板側にNdFeB磁石250を貼り付けて、フレームの全体が磁歪素子と一体構成である磁歪発電デバイス200を得た。
作製した磁歪発電デバイス200の検出用コイルに誘起される交流電圧をデジタルオシロスコープで取り込み、電圧を測定した。測定した電圧波形のピーク電圧によって、磁歪発電デバイスの性能を評価した。具体的には、磁歪発電デバイスのU字形状の下側の固定部270を接着剤で加振機の上に固定した。次に、バイアス磁場をNdFeB磁石によって印加した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えてピーク電圧が最大になった時の磁石を使った。
尚、磁歪素子に印加される磁場の強さは、方向性電磁鋼板では約2800A/m(350e)と推定した。
加振機を0.5Gで加振させて、周波数を変えて共振周波数におけるピーク電圧をオシロスコープで測定した。
測定した共振周波数は、ろう付け接合体で105Hz、接着接合体で97Hzであった。ピーク電圧を表8に示した。
Figure 2022090601000010
表8から明らかなように、条件Bを満たす(即ち、電磁鋼板と、弾性材料であるSUS304をろう付け接合した)磁歪素子を備える発明例10のデバイスは、電磁鋼板と弾性材料とを接着剤で接合した磁歪素子を備える比較例6のデバイスと比べて、ピーク電圧が約1.4倍に向上した。これは、樹脂などの接着剤を用いた積層から、ヤング率が大きな金属のろう材を用いた積層に替えることによって、曲げ歪が加えられた場合に生じる積層間の歪の緩和が抑制されてピーク電圧が向上したためと考えられる。
(実施例12)
方向性電磁鋼板/ろう材部/SUS430からなる磁歪素子を備えた磁歪発電デバイス
実施例12において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板層321として用い、磁性材料であるSUS430を弾性材料層322として用いて、図7に示した構造を有する磁歪発電デバイス300を作製した。
電磁鋼板層321として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}<001>GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を<001>方向とし、長さ100mm、幅6.0mmにシャーリング切断した。それを図7に示したようにU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部370に相当する長さは約40mm、上側の検出用コイル360、錘340をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、方向性電磁鋼板をU字型に曲げた後、歪を除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍した。
弾性材料層322として、磁性材料であるSUS430、厚み0.5mm、幅6.0mmを用いた。U字型の電磁鋼板と一体化できるように長さを140mmに切断し、U字形状に成型して形状を整えた。
尚、U字状に成型したSUS430を真空中で1050℃、1分間保持後をガス急冷よる溶体化処理を行って、切断歪による影響を取り除いた。
ろう材として、BNi-2組成の35μm厚のアモルファス箔を用いた。箔を長さ100mm、幅6.0mmに切断して、U字型に曲げた方向性電磁鋼板とSUS430の間で方向性珪素鋼板の位置に合わせて1枚挟み、ずれないように固定した。1050℃で10分間、真空中でろう付け処理をして積層体とし、フレームの一部(100mm/140mm=約71%)が上記積層体320で構成され、磁歪素子310の応力制御部312から延びた弾性材料層322とフレーム330の全体とが一体構成である、一体構成体を得た。
比較として、上記と同様のサイズのU字型に曲げた方向性電磁鋼板とSUS430をエポキシ系接着剤を用いて室温で貼り合わせた一体構成体を作製した。
得られた一体構成体の磁歪素子に対応する部位に5000ターンの検出用コイル360を装填した。コイルの長さは15mmだった。次に、7gのタングステンの錘340を磁歪素子310のとなりに接着固定した。さらにU字形状の下側の固定部の電磁鋼板側にNdFeB磁石350を貼り付けて、フレームの全体が磁歪素子と一体構成である磁歪発電デバイス300を得た。
磁歪発電デバイス300の電圧を実施例11と同様に測定し、測定した電圧波形のピーク電圧によって、磁歪発電デバイスの性能を評価した。
尚、磁歪素子に印加される磁場の強さは、方向性電磁鋼板では約3600A/m(450e)と推定した。
測定した共振周波数は、ろう付け接合体で109Hz、接着接合体で101Hzであった。ピーク電圧は表9に示した。
Figure 2022090601000011
表9から明らかなように、条件Bを満たす(即ち、電磁鋼板と弾性材料であるSUS430をろう付け接合した)磁歪素子を備える発明例11のデバイスは、電磁鋼板と弾性材料とを接着剤で接合した比較例7のデバイスと比べて、ピーク電圧が約1.3倍に向上した。これは、樹脂などの接着剤を用いた積層から、ヤング率が大きな金属のろう材を用いた積層に替えることによって、曲げ歪が加えられた場合に生じる積層間の歪の緩和が抑制されて、ピーク電圧が向上したためと考えられる。
(実施例13)
電磁鋼板/ろう材部/SUS304/ろう材部/電磁鋼板からなる磁歪素子を備えた磁歪発電デバイス
実施例13において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板層421として用い、SUS304を弾性材料層422として用いて、図8に示した構造を有する磁歪発電デバイス400を作製した。
電磁鋼板層421として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付きを使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}<001>GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を<001>方向とし、長さ120mm、幅6.0mmのものと、長さ125mm、幅6.0mmのものとをシャーリング切断した。それを図8に示したようにU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部470に相当する長さは約80mm、上側の検出用コイル460、錘440をつける部位の長さは約50mmとした。
尚、方向性電磁鋼板をU字型に曲げた後、歪を除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍した。
弾性材料層422として、非磁性材料であるSUS304を用いた。厚み0.5mm、長さ約140mm、固定部470を含まない部位の幅は6.0mm、固定部470を含む部位の幅は12mmとし、固定部470の一部に方向性電磁鋼板層421が貫通する孔を開けた。
図8に示したように、SUS304の両側に方向性電磁鋼板を配置した。外側の磁歪材料は固定部において、SUS304に開けた孔を貫通し内側に配置した電磁鋼板と接触させている。錘440を配置する側の先端においても、外側と内側の電磁鋼板を接触させている。このように、外側と内側の電磁鋼板を接触させることによって、磁石によって電磁鋼板を効率良く磁化させることが可能となる。さらに固定部には高さ調整板490として電磁鋼板と同じ厚みのSUS304を接着した。
尚、U字状に成型したSUS304を真空中で1050℃、1分間保持後をガス急冷よる溶体化処理を行って、切断歪による影響を取り除いた。
ろう材として、BNi-2組成の35μm厚のアモルファス箔を用い、箔を長さ100mm、幅6.0mmに切断した。U字型に曲げた外側と内側の方向性電磁鋼板のそれぞれと、弾性材料(SUS304)とが接触する位置にろう材を挟み、位置がずれないように固定した。1050℃で10分間、真空中でろう付け処理をして積層体420とし、フレームの一部(100mm/140mm=約71%)が上記積層体420で構成され、磁歪素子410の応力制御部412から延びた弾性材料層422とフレーム430の全体とが一体構成である、一体構成体を得た。さらにSUS304のブロックを支柱480として方向性電磁鋼板にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けた。
比較として、上記と同様のサイズのU字型に曲げた方向性電磁鋼板とSUS304をエポキシ系接着剤を用いて室温で貼り合わせた一体構成体を作製した。
得られた一体構成体の磁歪素子に対応する部位に5000ターンの検出用コイル460を装填した。コイルの長さは15mmだった。次に、7gのタングステンの錘440を磁歪素子410のとなりに接着固定した。さらにU字形状の下側の固定部の電磁鋼板側にNdFeB磁石450を貼り付けて、フレームの全体が磁歪素子と一体構成である磁歪発電デバイス400を得た。
磁歪発電デバイス400の電圧を実施例11と同様に測定し、測定した電圧波形のピーク電圧によって、磁歪発電デバイスの性能を評価した。
尚、磁歪素子に印加される磁場の強さは、内側と外側のそれぞれの方向性電磁鋼板で約2800A/m(350e)と推定した。
測定した共振周波数は、ろう付け接合体で221Hz、接着接合体で205Hzであった。ピーク電圧は表10に示した。
Figure 2022090601000012
表10から明らかなように、2つの電磁鋼板層を有し、条件Bを満たす(即ち、電磁鋼板と弾性材料であるSUS304をろう付け接合した)磁歪素子を備える発明例12のデバイスにおいては、電磁鋼板と弾性材料とを接着剤で接合した磁歪素子を備える比較例8のデバイスと比べて、ピーク電圧が約1.3倍に向上した。これは、樹脂などの接着剤を用いた積層から、ヤング率が大きな金属のろう材を用いた積層に替えることによって、曲げ歪が加えられた場合に生じる積層間の歪の緩和が抑制されて、ピーク電圧が向上したためと考えられる。
(実施例14)
ろう材部の断面構造: 電磁鋼板/ろう材部/電磁鋼板からなる磁歪素子
磁歪材料として、日本製鉄(株)製の方向性電磁鋼板35ZH115、被膜付き、を使用した。当該電磁鋼板の厚みは0.35mm、結晶方位は{110}<001>GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を<001>方向とし、長さ40mm、幅6.0mmにシャーリング切断した。切断時の歪みを除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍し、磁歪素子用の方向性電磁鋼板を得た。
得られた方向性電磁鋼板2枚の間に、ろう材として、長さ40mm、幅6.0mm、厚み59μmのNiろう材であるBNi-2組成アモルファス箔1枚を挟んで、1050℃で60分間、真空中でろう付け処理をして条件Aを満たす(即ち、2枚の電磁鋼板の間にろう材部を有する)磁歪素子を得た。尚、ろう材の組成は以下の通りであった。
BNi-2組成: Ni-7.0%Cr-4.5%Si-3.0%B-3.0%Fe
得られた磁歪素子を幅方向に切断し、断面組織をSEM-EDS(JEOL JSM-7000F)で積層厚み方向に沿って元素分析を行った。断面組織とその元素分析の結果を図9に示した。
元素分析は図9に記載した分析ライン上で行った。Feの濃度プロファイルは、電磁鋼板内部では高く、ろう材部の中央部では非常に低い。一方、Niの濃度プロファイルは、ろう材部内では高く、電磁鋼板の中央部では非常に低い。しかし、図中に円で示した電磁鋼板とろう材部との接触面およびその近傍では、電磁鋼板に由来するFeとNi系ろう材部に由来するNiとが合金化した領域が存在した。FeとNiの濃度は、図9に示した分析ライン上の複数個所において、EDSによる点分析を行い、その部位の組成を定量化することによって求めた。図9中の左側の電磁鋼板とNi系ろう材の接触面位置からろう材部側に1μmの位置において、Fe濃度は約64質量%であり、これは[使用したろう材のFe濃度:3質量%]+0.2質量%以上の値であった。さらに電磁鋼板とNi系ろう材の接触面位置から電磁鋼板側に1μmの位置において、Ni濃度は約1.1質量%であり、これは[使用した電磁鋼板のNi濃度:0質量%]+0.2質量%以上の値であった。したがって、電磁鋼板とNi系ろう材部との接触面には、電磁鋼板側およびろう材部側のそれぞれに幅1μm以上、即ち、合計でに2μm以上、のFeとNiとが合金化した領域が存在していた。
(実施例15)
方向性電磁鋼板/ろう材部(Fe系)/SUS304からなる磁歪素子のΔB
磁歪材料として、日本製鉄(株)製の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。当該電磁鋼板の厚みは0.27mm、結晶方位は{110}<001>GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を<001>方向とし、長さ40mm、幅6.0mmにシャーリング切断した。切断時の歪みを除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍し、磁歪素子用の方向性電磁鋼板を得た。
弾性材料として非磁性材料であるSUS304、厚み0.5mmの冷延板を用いた。長さ40mm、幅6.3mmに切断した後、真空中、1050℃で1分間保持し、ガス急冷を行って、切断歪みによる影響を取り除き、磁歪素子用の弾性材料を得た。
ろう材として、以下の組成の粉末状のFeろう材を用いた。粉末サイズは150μm以下であり、ろう材の組成は次の通りであった。
Fe系ろう材組成: Fe-20%Cr-20%Ni-5.0%Si-8.0%P-2.0%Mo
粉末状のろう材を有機系のバインダ-と混合してSUS304の片面に塗布した後、塗布した面に電磁鋼板を重ね合わせて、真空中、1100℃、30分のろう付け処理をして、条件Bを満たす磁歪素子を得た。ろう材の厚みは23μmであった。有機系バインダ-はろう付けの昇温中に揮発して除去された。
作製した磁歪素子のΔBを実施例5と同様に測定した。結果を、実施例5で作製した、ろう材の代わりに接着剤を用いた比較例2の磁歪素子の測定結果と共に表11に示した。
Figure 2022090601000013
表11の結果から明らかなように、電磁鋼板と弾性材料であるSUS304をろう付け接合した、条件Bを満たす発明例13の磁歪素子は、接着剤による接合を用いた比較例2の磁歪素子と比べて、ΔBは約1.5倍に向上した。これは、樹脂などの接着剤を用いた積層から、ヤング率が大きな金属のろう材を用いた積層に替えることによって、曲げ歪が加えられた場合の積層間の歪の緩和が抑制されて、ΔBが向上したためと考えられる。
(実施例16)
電磁鋼板/ろう材部(Fe系)/SUS304からなる磁歪素子を備えた磁歪発電デバイス
図6に示した磁歪発電デバイス200と同様の構造を有する磁歪発電デバイスを実施例11と同様に作製した。但し、実施例11で使用したNi系のろう材を、実施例15で使用したのと同じFe系ろう材に変更した。ろう材の変更以外は実施例11と同様に、方向性電磁鋼板を電磁鋼板層221として用い、SUS304を弾性材料層222として用いた。
電磁鋼板層221として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}<001>GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を<001>方向とし、長さ100mm、幅6.1mmにシャーリング切断した。それを図6に示したようにU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部270に相当する長さは約40mm、上側の検出用コイル260、錘240をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、方向性電磁鋼板をU字型に曲げた後、歪を除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍した。
弾性材料層222として、非磁性材料であるSUS304、厚み0.5mm、幅6.1mmを用いた。U字型の電磁鋼板と一体化できるように長さを140mmに切断し、U字形状に成型して形状を整えた。
尚、U字状に成型したSUS304を真空中で1050℃、1分間保持後をガス急冷よる溶体化処理を行って、切断歪による影響を取り除いた。
ろう材として、実施例15と同じ有機系のバインダ-と混合したFe系ろう材を用いた。U字型に曲げた方向性電磁鋼板とSUS304の間にろう材を塗布し、ずれないように固定した。1100℃で30分間、真空中でろう付け処理をして積層体とし、フレームの一部(100mm/140mm=約71%)が上記積層体220で構成され、磁歪素子210の応力制御部212から延びた弾性材料層222とフレーム230の全体とが一体構成である、発明例14の一体構成体を得た。ろう材の厚みは33μmであった。有機系バインダ-はろう付けの昇温中に揮発して除去された。
得られた一体構成体の磁歪素子について、実施例11と同様にピーク電圧を測定した。結果を、実施例11で作製した、ろう材の代わりに接着剤を用いた比較例6の磁歪素子の測定結果と共に表12に示した。測定した共振周波数は、107Hzであった。
Figure 2022090601000014
表12から明らかなように、条件Bを満たす(即ち、電磁鋼板と、弾性材料であるSUS304をろう付け接合した)磁歪素子を備える発明例14のデバイスは、電磁鋼板と弾性材料とを接着剤で接合した磁歪素子を備える比較例6のデバイスと比べて、ピーク電圧が約1.4倍に向上した。これは、樹脂などの接着剤を用いた積層から、ヤング率が大きな金属のろう材を用いた積層に替えることによって、曲げ歪が加えられた場合に生じる積層間の歪の緩和が抑制されてピーク電圧が向上したためと考えられる。
(実施例17)
Fe系ろう材の接合強度
ろう材を実施例15で使用したFe系ろう材に変更した以外は実施例1と同様に、接合強度を測定するための引っ張り試験用の積層体(試験片)を作製した。
ろう材として、以下の組成の粉末状のFeろう材を用いた。
Fe系ろう材組成: Fe-20%Cr-20%Ni-5.0%Si-8.0%P-2.0%Mo
粉末状のろう材を有機系のバインダ-と混合して1枚の電磁鋼板の片面に塗布した後、塗布した面にもう1枚の電磁鋼板を重ね合わせて、真空中、1100℃、30分のろう付け処理をして、条件Aを満たす積層体を得た。ろう材の厚みは26μmであった。有機系バインダ-はろう付けの昇温中に揮発して除去された。
得られた試験片について、実施例1と同様に引張試験を実施した結果、接合部では破断せず、母材で破断が生じた。
(実施例18)
電磁鋼板/ろう材部(Fe系)/電磁鋼板からなる磁歪素子の耐久性
ろう材を実施例15で使用したFe系ろう材に変更した以外は実施例2と同様に、耐久性を測定するための積層体を作製した。
ろう材として、以下の組成の粉末状のFeろう材を用いた。
Fe系ろう材組成: Fe-20%Cr-20%Ni-5.0%Si-8.0%P-2.0%Mo
粉末状のろう材を有機系のバインダ-と混合して1枚の電磁鋼板の片面に塗布した後、塗布した面にもう1枚の電磁鋼板を重ね合わせて、真空中、1100℃、30分のろう付け処理をして、条件Aを満たす積層体を得た。ろう材の厚みは25μmであった。有機系バインダ-はろう付けの昇温中に揮発して除去された。
実施例2と同様に耐久試験後のΔBの減少率を測定した。結果を、実施例2で作製した、ろう材の代わりに接着剤を用いた比較例1の磁歪素子の測定結果と共に表13に示した。
Figure 2022090601000015
表13の結果から明らかなように、2枚の電磁鋼板をFe系ろう材でろう付け接合した、条件Aを満たす発明例15の磁歪素子は、接着剤で接合した比較例1の磁歪素子と比較して、ΔBの低下が減少し、耐久性が向上した。
本発明によって、発電用磁歪素子の磁歪材料として使用されているFeGa合金、FeCo合金、FeAl合金と比べて低コストでありながらも、従来技術と同等またはそれらを超える磁歪発電量と同時に、高い耐久性をも達成することのできる、発電用磁歪素子および磁歪発電デバイスが提供される。本発明の発電用磁歪素子は、従来の磁歪素子よりも低コストでありながら、従来と同等またはそれらを超える発電量の達成を可能にすることから、IoT等における無線センサモジュールのみならず、様々な機器の電源として有用である。
1 磁歪素子
2 固定部
100 磁束密度変化ΔB測定用ユニット
110 磁歪素子
111 磁歪部
112 応力制御部
120 バイアス磁場用コイル
130 検出用コイル
140 直流電源
150 固定支持台
160 フラックスメータ
170 圧力
171 移動距離
200、300、400 磁歪発電デバイス
210、310、410 発電用磁歪素子
211、311、411 磁歪部(電磁鋼板層)
212、312、412 応力制御部(弾性材料層)
220、320、420 積層体
221、321、421 電磁鋼板層
222、322、422 弾性材料層
230、330、430 フレーム
240、340、440 錘
250、350、450 磁石
260、360、460 検出用コイル
270、370、470 固定部
480 支柱
490 高さ調節板

Claims (17)

  1. 少なくとも1つの電磁鋼板層を含む積層体で形成された発電用磁歪素子であって、
    前記電磁鋼板層は少なくとも1枚の電磁鋼板を含み、
    前記積層体は、下記の条件Aおよび条件Bの少なくとも一方を満たす、発電用磁歪素子。
    条件A:前記少なくとも1つの電磁鋼板層が2枚以上の電磁鋼板を含み、前記2枚以上の電磁鋼板が互いにろう材部を介して接合されている、および
    条件B:前記積層体は少なくとも1つの弾性材料層をさらに含み、前記少なくとも1つの電磁鋼板層がろう材部を介して前記弾性材料層に接合されている。
  2. 前記積層体は前記条件Aのみを満たす、請求項1に記載の発電用磁歪素子。
  3. 前記積層体は少なくとも1つの弾性材料層をさらに含み、前記弾性材料層は前記電磁鋼板層に接合されている、請求項2に記載の発電用磁歪素子。
  4. 前記積層体は前記条件Aおよび前記条件Bを満たす、請求項1に記載の発電用磁歪素子。
  5. 前記少なくとも1つの電磁鋼板層が1枚の電磁鋼板からなり、
    前記積層体は前記条件Bのみを満たす、請求項1に記載の発電用磁歪素子。
  6. 前記電磁鋼板層に含まれる電磁鋼板の少なくとも1枚が方向性電磁鋼板である、請求項1~5のいずれか一項に記載の発電用磁歪素子。
  7. 前記電磁鋼板層に含まれる電磁鋼板の少なくとも1枚が無方向性電磁鋼板である、請求項1~5のいずれか一項に記載の発電用磁歪素子。
  8. 前記弾性材料層が非磁性材料からなる、請求項1~7のいずれか一項に記載の発電用磁歪素子。
  9. 前記ろう材部が、Niを主要元素とし、Cr、Si、Fe、B、P、C、Cu、およびMoからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含み、Mg酸化物、Cr酸化物、およびSi酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化物をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の発電用磁歪素子。
  10. 前記発電用磁歪素子中に存在する前記電磁鋼板と前記ろう材部との接触面の少なくとも1つにおいて、前記電磁鋼板に由来するFeと前記ろう材部に由来するNiとが合金化した領域が存在し、
    前記発電用磁歪素子の厚み方向の断面の元素分析において、前記合金化した領域が2μm以上の幅にわたり存在する、請求項9に記載の発電用磁歪素子。
  11. 前記ろう材部が、Feを主要元素とし、Cr、Ni、Si、B、P、C、Cu、およびMoからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を含み、Mg酸化物、Cr酸化物、およびSi酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種の酸化物をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の発電用磁歪素子。
  12. 前記ろう材部において、前記少なくとも一種の酸化物の形状は塊状である、請求項9~11のいずれか一項に記載の発電用磁歪素子。
  13. 請求項1~12のいずれか一項に記載の発電用磁歪素子と、
    前記発電用磁歪素子と結合したフレームと
    を備える磁歪発電デバイス。
  14. 前記発電用磁歪素子と前記フレームとが連続しており、前記フレームの少なくとも一部が、前記発電用磁歪素子を形成する積層体で構成されている、請求項13に記載の磁歪発電デバイス。
  15. 前記フレームの全体が、前記発電用磁歪素子を形成する積層体から延びた電磁鋼板と一体構成である、請求項14に記載の磁歪発電デバイス。
  16. 前記積層体が弾性材料を含み、前記フレームの全体が、前記発電用磁歪素子を形成する積層体から延びた前記弾性材料と一体構成である、請求項14に記載の磁歪発電デバイス。
  17. 前記フレームの全体が、前記発電用磁歪素子と一体構成である、請求項14に記載の磁歪発電デバイス。
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