JP2022088217A - セルロースナノファイバー含有成形体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】短時間で安定した立体形状の形成が可能なセルロースナノファイバー含有成形体及びその製造方法を提供する。【解決手段】成形体100は、抄紙によって立体形状に形成された紙材10を備え、紙材10の繊維間にセルロースナノファイバーを含む第一繊維体11が混入されている。【選択図】図1

Description

本発明は、セルロースナノファイバー含有成形体及びその製造方法に関する。
セルロースナノファイバー(以下では、「CNF」とも称する。)は、通常、水分散状態のパルプ等を微細化することにより得られる。従って、セルロースナノファイバーを含有するスラリー(水分散液、以下では、「スラリー」とも称する。)からセルロースナノファイバーを含む成形体(以下では、「CNF含有成形体」とも称する。)を得ようとする場合、スラリーから脱水して所望の形状に成形する必要がある(例えば、特許文献1、2)。
特許文献1には、CNF含有成形体の製造方法が記載されている。この方法では、メッシュ状部材を介してスラリーを脱水する工程を備え、当該脱水工程において、当該スラリーに対する加圧力を段階的又は連続的に高める。スラリーを機械的な加圧により脱水する場合、水と共にCNFが流出してしまう場合があるが、上記方法によれば、CNFの流出を抑制しつつ、効率的な脱水を行うことができる。
特許文献2には、CNFの成形方法及びその成形方法によって得られるCNF含有成形体が記載されている。この方法では、セラミック(セラミックス)や樹脂等の素材の多孔質体と、一方が開放された矩形のステンレス枠とを重ねた型枠にスラリーを入れて、別の多孔質体をそのスラリーの上に置く。その際、スラリーをメッシュやメンブレンで包むことによって型枠と多孔質体との隙間からのCNFのリークや多孔質体の目詰まりを抑制できる。
特開2018-59237号公報 特開2016-94683号公報
特許文献1及び2に記載されている方法では、スラリーを脱水する工程に長い時間を要する。CNF含有成形体の製造時間を短縮する方法として、スラリーを加熱等して濃縮した後に熱プレスする方法が考えられる、ただし、当該方法では、製造されたCNF成形体の靭性が低くなる傾向にあることが知られている。そのため、例えば、CNF成形体に曲率半径の小さい曲部が存在する場合において、当該曲部の表面等にヒビが入ることがある。したがって、短時間で安定した立体形状を有するCNF含有成形体を製造することが困難であった。
上記実情に鑑み、短時間で安定した立体形状の形成が可能なセルロースナノファイバー含有成形体及びその製造方法が求められている。
本発明の一態様に係るセルロースナノファイバー含有成形体の構成は、抄紙によって立体形状に形成された紙材を備え、前記紙材の繊維間にセルロースナノファイバーを含む第一繊維体が混入されているという特徴を有する。
本構成によれば、紙材が抄紙による立体形状に形成されることで、薄板状の紙材を用いてセルロースナノファイバー含有成形体の立体形状を容易に形成することができる。また、紙材の繊維間にセルロースナノファイバーを含む第一繊維体が混入されているので、紙材と同じ立体形状で且つ紙材単体よりも強度を高めたセルロースナノファイバー含有成形体を得ることができる。また、セルロースナノファイバーはバイオマス由来の材料であるので、セルロースナノファイバー含有成形体は廃棄後等における環境への負荷を抑制することができる。さらに、セルロースナノファイバー含有成形体の形状は、紙材を抄紙によって立体形状にすることで予め形成することが可能であるため、紙材の立体形状が複雑であったとしても、セルロースナノファイバー含有成形体の表面にヒビが入ることがほとんどなく形状が安定する。
このように、複雑な形状を効率よく形成できるセルロースナノファイバー含有成形体を提供することができた。
本構成に係るセルロースナノファイバー含有成形体において、前記第一繊維体の繊維長が1nm以上10nm以下であると好適である。
本構成であれば、セルロースナノファイバーを含む第一繊維体の繊維長が小さいため、セルロースナノファイバーを紙材の繊維間に効果的に混入させることができる。
本構成に係るセルロースナノファイバー含有成形体において、前記第一繊維体の含有量が10重量%以下であると好適である。
セルロースナノファイバー含有成形体において、紙材に混入されるセルロースナノファイバーの含有割合が高くなると、混入されるセルロースナノファイバーの影響により紙材が有する形状や素材感が損なわれるおそれがある。そこで、本構成では、セルロースナノファイバー含有成形体において、セルロースナノファイバーを含む第一繊維体の含有量を10重量%以下としている。これにより、セルロースナノファイバー含有成形体において、紙材の形状や素材感を確実に維持することができる。
本構成に係るセルロースナノファイバー含有成形体において、前記第一繊維体が混入された前記紙材の表面の少なくとも一部が、セルロースナノファイバーを含む第二繊維体で覆われていると好適である。
本構成であれば、第一繊維体が混入された後の紙材の表面にセルロースナノファイバーを含む第二繊維体による被覆層を形成することにより、セルロースナノファイバー含有成形体の強度を更に高めることができる。被覆層の形成方法としては、例えば、第一繊維体が混入された紙材の表面にスプレー等を用いてスラリーを塗布したり、スラリーによって形成された成形体を積層したりすることが挙げられる。これにより、第一繊維体が混入された紙材の表面にセルロースナノファイバーを含む第二繊維体を配置することができる。本構成において、第一繊維体が混入された紙材の表面にスプレー等を用いてスラリーを塗布した場合には、第一繊維体が混入された紙材の表面にセルロースナノファイバーを含む薄膜の第二繊維体が形成されるが、第二繊維体が薄膜であっても紙材にセルロースナノファイバーを含む第一繊維体が既に混入されているため、第二繊維体は、第一繊維体が混入された紙材に吸収されることなく第一繊維体が混入された紙材の表面において水素結合により結晶化される。これにより、薄膜の第二繊維体単体での強度が高くなり、セルロースナノファイバー含有成形体の強度を更に高めることができる。
本構成に係るセルロースナノファイバー含有成形体において、前記第二繊維体の繊維長が30nm以上300nm以下であると好適である。
本構成のように、第二繊維体の繊維長が30nm以上300nm以下であると、第二繊維体の強度が高まるので、セルロースナノファイバー含有成形体の強度を高め易くなる。
本構成に係るセルロースナノファイバー含有成形体において、前記第二繊維体は、セルロースナノファイバーの繊維重量に対して、5重量%以上13重量%以下のクエン酸を含んでいると好適である。
紙材の表面を覆う第二繊維体をセルロースナノファイバーの前駆体から形成して第一繊維体が混入された後の紙材の表面に積層する場合、例えばスラリーを加熱濃縮した前駆体に対して熱プレス成形を行うことがある。加熱濃縮後の前駆体に対して熱プレス成形を行うことで熱プレス成形にかかる時間を短くすることができる。しかし、加熱濃縮後に熱プレス成形された前駆体は靭性が低いため、熱プレス成形によって得られた第二繊維体は表面にヒビ等の成形不良が生じることがある。そこで、本構成では、第二繊維体は、セルロースナノファイバーの繊維重量に対して、5重量%以上13重量%以下のクエン酸を含んでいる。第二繊維体を形成するスラリーにクエン酸を添加することで、第二繊維体にクエン酸を含ませることができる。クエン酸等の多価カルボン酸は、セルロースとのエステル化反応において、酸無水物形成を経由してセルロースの水酸基と反応してエステル架橋が生成する。したがって、スラリーにクエン酸を添加することにより、クエン酸とセルロースとの間で架橋反応が生じることとなり、セルロースナノファイバーの前駆体に伸縮性が付加されることになる。その結果、セルロースナノファイバー含有成形体においてヒビ等の成形不良を容易に抑制することができる。
本構成に係るセルロースナノファイバー含有成形体において、前記第二繊維体の表面の少なくとも一部が、セルロースナノファイバーを含む第三繊維体で覆われていると好適である。
本構成であれば、第二繊維体の表面にセルロースナノファイバーを含む第三繊維体による被覆層を形成することにより、セルロースナノファイバー含有成形体の強度を更に高めることができる。被覆層の形成方法としては、例えば、第二繊維体の表面にスプレー等を用いてスラリーを塗布することが挙げられる。これにより、第二繊維体の表面にセルロースナノファイバーを含む第三繊維体を配置することができる。
本構成に係るセルロースナノファイバー含有成形体において、前記第二繊維体が食紅により着色されていると好適である。
本構成であれば、セルロースナノファイバー含有成形体は、第二繊維体が着色されることで、第二繊維体が配置されている部位に任意の色を容易に付加することができる。また、着色に用いられる食紅は天然素材であるので、人間にとって無害であって、セルロースナノファイバー含有成形体の廃棄後の環境への負荷を低く抑えることもできる。
本構成に係るセルロースナノファイバー含有成形体において、前記第一繊維体が食紅により着色されていると好適である。
本構成であれば、第一繊維体が着色されることで、紙材に任意の色を容易に付加することができる。また、着色に用いられる食紅は天然素材であるので、人間にとって無害であって、セルロースナノファイバー含有成形体の廃棄後の環境への負荷を低く抑えることもできる。
本構成に係るセルロースナノファイバー含有成形体の製造方法は、抄紙法を用いて立体形状の紙材を生成する紙材生成工程と、前記紙材を、セルロースナノファイバーを含む第一繊維体のスラリーに浸す含浸工程と、前記紙材が前記スラリーに浸された状態で減圧して第一前駆体を得る減圧工程と、前記第一前駆体を立体形状の第一金型に入れて加熱及び/または加圧する第1脱水工程と、を含むという特徴を有する。
本製造方法であれば、紙材が抄紙による立体形状に形成されることで、セルロースナノファイバー含有成形体の形状が定まるので、例えば、薄板形状の構造物を容易に作成することができる。また、その後の含浸工程及び減圧工程によって、紙材の繊維の隙間にセルロースナノファイバーを含む第一繊維体を含浸させ易くなる。その結果、紙材にセルロースナノファイバーを含む第一繊維体が混入されたセルロースナノファイバー含有成形体を確実に製造することができる。製造されたセルロースナノファイバー含有成形体は、紙材の繊維間にセルロースナノファイバーを含む第一繊維体が混入されているので、紙材と同じ立体形状で且つ紙材単体よりも強度を高めたセルロースナノファイバー含有成形体を得ることができる。
本構成に係るセルロースナノファイバー含有成形体の製造方法において、前記第1脱水工程によって得られた第一成形体、及び、セルロースナノファイバーを含む第二繊維体によって形成された第二前駆体を、立体形状の第二金型に積層して載置する積層工程と、
前記第一成形体及び前記第二前駆体が載置された前記第二金型を加熱及び/又は加圧する第2脱水工程と、を含むと好適である。
本製造方法であれば、第1繊維体を含む紙材によって形成された第一成形体に、セルロースナノファイバーを含む第二繊維体によって形成された第二前駆体を積層することができ、セルロースナノファイバー含有成形体の強度を更に向上させることができる。
第1実施形態のセルロースナノファイバー含有成形体の斜視図である。 第1実施形態のセルロースナノファイバー含有成形体の製造工程を示すフローチャートである。 第1実施形態のセルロースナノファイバー含有成形体の製造工程を示す図である。 第1実施形態のセルロースナノファイバー含有成形体の製造工程を示す図である。 第1実施形態のセルロースナノファイバー含有成形体の製造工程を示す図である。 第1実施形態の変形例の断面図である。 第1実施形態の変形例の製造工程を示すフローチャートである。 第2実施形態にセルロースナノファイバー含有成形体の断面図である。 第2実施形態のセルロースナノファイバー含有成形体の製造工程を示すフローチャートである。 第2実施形態のセルロースナノファイバー含有成形体の製造工程を示す図である。 第2実施形態のセルロースナノファイバー含有成形体の製造工程を示す図である。 第2実施形態のセルロースナノファイバー含有成形体の製造工程を示す図である。 第2実施形態のセルロースナノファイバー含有成形体の製造工程を示す図である。 第2実施形態のセルロースナノファイバー含有成形体の製造工程を示す図である。 第2実施形態のセルロースナノファイバー含有成形体の製造工程を示す図である。 第2実施形態の変形例の断面図である。 別実施形態のセルロースナノファイバー含有成形体の斜視図である。 別実施形態のセルロースナノファイバー含有成形体の製造工程の一部を示すフローチャートである。
以下に、本発明に係るセルロースナノファイバー含有成形体およびその製造方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
〔第1実施形態〕
図1に示す第1実施形態に係るセルロースナノファイバー含有成形体(以下では、単に「成形体」とも称する。)100は、芯材1として、紙材10を備え、紙材10の繊維間にセルロースナノファイバーを含む繊維体11(第一繊維体の一例)が混入されている。
セルロースナノファイバー(以下では「CNF」とも称する。)とは、微細なセルロース繊維のことをいい、例えば、繊維幅(繊維の直径、以下では「繊維径」と称する。)が1nm以上150nm以下、繊維長は、1nm以上300μm未満のものである。CNFの平均の繊維長は、例えば電子顕微鏡(SEM)による画像解析によって計測することができる。CNFの平均の繊維径は、上記繊維長と同様に、電子顕微鏡による画像解析によって計測することができる。CNFは、例えば、パルプ(パルプ繊維)等の植物原料を解繊して得られるものを用いることができる。
紙材10は、抄紙によって立体形状に形成されている。本実施形態では、紙材10が直方体の箱状であって天面が開放されている形状である。図1に示される紙材10の形状は一例であって、立体形状であれば他の形状でよい。ここで、立体形状とは、湾曲部や屈曲部を有して三次元の空間座標で記述できる形状をいう。繊維体11は、繊維長が1nm以上10nm以下である。繊維体11の繊維長を小さくすることで、CNFを紙材10の繊維間に効果的に混入させることができる。
成形体100において、繊維体11の含有量が10重量%以下である。成形体100において、紙材10に混入されるCNFの含有割合が高くなると、混入されるCNFの影響により紙材10が有する形状や素材感が損なわれるおそれがある。成形体100のうち繊維体11の含有量が10重量%以下であれば、成形体100において紙材10の形状や素材感を確実に維持することができる。
〔製造方法の概要〕
成形体100の製造方法は、図2に示されるように、紙材生成工程#1、含浸工程/減圧工程#2、及び、第1脱水工程#3を含む。
〔紙材生成工程〕
紙材生成工程#1において、抄紙法を用いて立体形状の紙材10を生成する。具体的には、原料のパルプを叩解したものを、水槽内にセットされた型にあわせて脱水し乾燥させることで、立体形状に成形された紙材10を得る。紙材生成工程#1は、一般的な紙漉き技術を用いて紙材10を成形する工程であるので、図は省略する。
〔含浸工程/減圧工程〕
続いて、含浸工程/減圧工程(#2)を行う。「含浸工程」では、紙材生成工程#1によって得られた立体形状の紙材10を、チャンバー5内においてCNF含有スラリー20(CNFを含有する水分散体であり、以下では、単に「スラリー20」と称する。)に浸す。具体的には、図3に示されるように、チャンバー5内にスラリー20を入れた容器8を設置し、スラリー20内に紙材10を浸漬させる。「減圧工程」では、図3に示されるように、紙材10の全体がスラリー20に浸された状態で真空ポンプ6を用いてチャンバー5内を減圧する。真空ポンプ6によってチャンバー15内を減圧することにより、紙材10の繊維間の隙間にCNFを含む繊維体11が入り込み、紙材10に繊維体11が混入される。このような含浸工程/減圧工程#2を行うことで、第一前駆体21(図4参照)を得ることができる。
紙材10を浸すスラリー20における、CNFの含有量は、0.5重量%以上10重量%未満が好ましく、1重量%以上3重量%未満がより好ましい。
〔第一脱水工程〕
第1脱水工程#3では、図4及び図5に示されるように、含浸工程/減圧工程#2によって得られた第一前駆体21を第一金型40に入れて加熱及び/または加圧する。例えば、第一金型40で第一前駆体21を挟み込み、不図示のプレス機で圧縮(プレス)しつつ加熱することで成形体100(図1参照)を得る。
第一金型40は、図4及び図5に示されるように、上型41(第一型)と下型42(第二型)とを含む。下型42は、凸部42aとベース部42bとを有する。図4に示されるように、第一前駆体21は、第一前駆体21の開口21a側を下にして下型42の凸部42aに沿うように配置される。その後、上型41及び下型42によって第一前駆体21を挟み込み、プレス機(不図示)により第一前駆体21を圧縮する。
第一前駆体21を脱水する際、第一金型40は、プレス機から供給される熱で第一前駆体21を加熱しながら脱水する。第一前駆体21の脱水時に加熱することで、第一前駆体21を早期に乾燥させることができる。
第一金型40の成形時の温度は、例えば100℃から150℃に設定される。プレス機は、第一金型40を加熱するヒータブロック(不図示)などの発熱体を有して構成される。これにより、第一前駆体21を挟み込んだ第一金型40をプレス機で圧縮しながらヒータブロックで加熱することができる。
プレス機による成形条件(第一金型40の温度、プレス圧力)は、所望の成形体100の形状や物性に合わせて適宜変更される。
本実施形態によれば、紙材10が抄紙による立体形状に形成されることで、薄板状の紙材10を用いて成形体100の立体形状を容易に形成することができる。また、成形体100において、紙材10の繊維間にCNFを含む繊維体11が混入されているので、紙材10と同じ立体形状で且つ紙材10単体よりも強度を高めた成形体100を得ることができる。また、CNFは、バイオマス由来の材料であって生分解可能であるので、成形体100は廃棄後等における環境への負荷を抑制することができる。さらに、成形体100の形状は、紙材10を抄紙によって立体形状にすることで予め形成することが可能であるため、紙材10の立体形状が複雑であったとしても、成形体100の表面にヒビが入ることがほとんどなく形状が安定する。
成形体100は、例えばスピーカの振動板などの音響機器やその他の構造部品に利用できる。スピーカの振動板以外の構造部品の一例は、家電製品や車載製品である。特に、軽量化と強度とを要求される車載製品の構造部品として好適である。
以上のようにして、強度が高く形状が安定した成形体100を製造することができる。
〔第1実施形態の変形例〕
図6に示されるように、成形体200は、成形体100の表面の少なくとも一部がCNFを含む繊維体12(第二繊維体の一例)で覆われている。図6の成形体200では、成形体100の両面A,Bのうち、面Aのみが繊維体12で覆われている。ただし、成形体100の両面A,Bが繊維体12で覆われていてもよい。成形体200の製造方法は、図2に示される第1実施形態の成形体100の製造工程(#1~#3)に加え、図7に示される塗布工程#11及び乾燥工程#12を含む。繊維体12は、以下の塗布工程#11に用いられるスラリー25に含有されている。
〔塗布工程〕
塗布工程#11では、スラリー25を成形体100の表面に塗布する。具体的には、紙材10の表面に例えばスプレー等を用いてスラリー25を塗布する。成形体100に塗布されるスラリー25は、CNFの含有量が0.5重量%以上2重量%以下であることが好ましい。
〔乾燥工程〕
乾燥工程#12では、スラリー25が塗布された成形体100を高温槽等で入れて加熱し、スラリー25を乾燥させる。これにより、面Aに繊維体12に覆われた成形体200を製造することができる。スラリー25が塗布された成形体100は、130℃以下の雰囲気下で加熱されることが好ましい。
本構成の成形体200であれば、成形体100の表面に繊維体12による被覆層を形成することができるので、成形体100の強度を更に高めることができる。成形体100の表面にスプレー等を用いてスラリー25を塗布することで、成形体100の表面には薄膜の繊維体12が形成される。薄膜であっても成形体100は紙材10に繊維体11が混入されたものであるため、スラリー25は成形体100に吸収されずに成形体100の表面において繊維体12は水素結合により結晶化される。これにより、薄膜の繊維体12の強度は高くなり、成形体100の強度を更に高めた成形体200を得ることができる。
〔第2実施形態〕
図8に示されるように、第2実施形態の成形体300は、成形体100の表面の少なくとも一部が、CNFを含む繊維体13(第二繊維体の一例)で覆われている。具体的には、成形体100の表面に所定厚みを有する繊維体13が積層されている。図8に示される例では、成形体100の両面A,Bが繊維体13によって積層されている。成形体100の両面A,Bのうち一方のみが繊維体13によって積層されていてもよい。
本構成であれば、成形体100の表面に繊維体13を積層されているので、成形体100の強度を更に高めた成形体300を得ることができる。繊維体13の繊維長は、例えば30nm以上300nm以下が好ましい。繊維体13の繊維長が30nm以上300nm以下であると、繊維体13の強度が高まるので、成形体300の強度を高め易くなる。
〔製造方法の概要〕
成形体300の製造方法は、図9に示されるように、第1実施形態の成形体100(第一成形体の一例)の製造工程(#1~#3)に加え、濃縮工程#5、担持工程#6、予備成形工程#7、積層工程#8、及び、第2脱水工程#9を含む。
〔濃縮工程〕
濃縮工程#5では、図10に示されるように、CNF含有スラリー30(例えば、CNFを3重量%含有する水分散体であり、以下では、単に「スラリー30」と称する。)にマイクロ波W(例えば、周波数2.45GHz)を照射して加熱し、スラリー30を濃縮して第二前駆体32(図9参照)を得る。濃縮工程#5では、後述するように、MW照射工程、及び安定化工程が行われる。
濃縮工程#5では、有底筒状の濃縮容器50と、透水性膜材71,72と、板状の蓋部材55とを用いる。
濃縮容器50は、例えば円筒状の筒部51と、筒部51と別部材の底板52とを含む。
底板52は、多孔性のセラミックスで形成された板である。底板52は、その多孔性により、水蒸気がその板面を透過することを許容する。筒部51は、本実施形態では底板52と同様に多孔性のセラミックスで形成された筒である。筒部51の筒の直径は例えば5cmである。
透水性膜材71,72は、水や水蒸気の透過を許容する膜材料である。本実施形態の透水性膜材71,72は、セルロースを基材とした薄膜(セルロースで形成されたフィルム、いわゆるセロファン)である。透水性膜材71,72の厚みは、セロファンの場合、例えば、約30μm(300g/m2)である。
蓋部材55は、筒部51の内径よりもやや小さい直径(例えば80%)で、その材質が例えばポリイミド製の板(例えば、厚み1.5mm)である。蓋部材55の板面は、水蒸気の透過を許容しない。
濃縮工程#5では、図10に示されるように、底板52を覆うように透水性膜材71を敷き、次に、筒部51をその透水性膜材71上に載置する。この載置の際、本実施形態では、筒部51の底面の全周と底板52の上面との間に透水性膜材71を挟み込んでいる。
次に、濃縮容器50(透水性膜材71上に)に、所定量(例えば、15g)を計量したスラリー30を流し込むなどして投入する。スラリー30は、濃縮容器50内で透水性膜材71上に展延し、厚みのある膜状(例えば、厚みが3mmから5mm)になる。なお、スラリー30のCNFの含有量は、例えば3重量%である。
スラリー30を透水性膜材71上に展延後、さらに、スラリー30の表面を蓋部材55で覆う。このように覆う際、蓋部材55は、スラリー30の上面(表面)における中央部分、すなわち、筒部51の全内周と離間する位置に配置する。
その後、蓋部材55でスラリー30の表面を覆った状態で、濃縮容器50ごと例えば工業用の電子レンジ(マイクロ波加熱装置、図示せず)の槽内に投入するなどして、マイクロ波Wをスラリー30に照射してスラリー30を加熱する(以下では、「MW照射工程」と称する。)。このマイクロ波加熱により、スラリー30から水分が蒸発し、濃縮されて第二前駆体32(図11参照)を得る。なお、図10、図11は、本実施形態の説明ため、寸法やその比率はデフォルメして図示しており、スラリー30、第二前駆体32、及び透水性膜材71等の厚みなどは、実際の寸法や比率に対して厚肉に描かれている。後述する図12以降の図面についても同様である。
スラリー30の上面中央部分を蓋部材55で覆うことで、中央部分と外周部分との乾燥速度を均質化することができる。スラリー30の中央部分は電子レンジ内でマイクロ波Wの照射を受けやすく、濃縮容器50の側壁近傍部分よりも相対的に乾燥が進行しやすいので、蓋部材55で覆うことにより、中央部分の過剰な速度での乾燥の進行(局所的な過乾燥)や、これに伴うひび割れなどの乾燥不良を防ぐことができる。また、局所的な過乾燥の防止により、CNFが水素結合で強化される前に紙状の構造を形成して成形体の強度が低下してしまう不具合を防止することもできる。
スラリー30から蒸発した水分(水蒸気)の一部は、スラリー30の上面における蓋部材55で覆われていない部分から外部へ漏出する。スラリー30から蒸発した水分の他の一部は、透水性膜材71を透過し、さらに多孔性のセラミックスの板である底板52を透過して外部へ漏出する。透水性膜材71をスラリー30と底板52との間に介在させることで、スラリー30から蒸発した水分が底板52を透過して外部へ漏出する際に、CNFが底板52の孔に侵入して目詰まりすることを防止できる。
MW照射工程では、スラリー30が含有する水分のおよそ半分を蒸発させる。MW照射工程は、例えばスラリー30について15gあたり、200Wの出力で、合計4分から8分程度行うのが好ましく、本実施形態では6分間マイクロ波Wを照射する場合を例示して説明する。マイクロ波Wの照射により、例えば、約7.5gの第二前駆体32(図11参照)が得られる。200Wを超える出力でマイクロ波Wを照射する場合は、その出力におよそ反比例させて照射時間を短縮するとよい。過剰に長時間マイクロ波Wを照射(加熱)すると、CNFが水素結合で強化される前に第二前駆体32の内部で紙状の構造を形成して繊維体13の強度が低下してしまう不具合が生じることがある。マイクロ波Wの照射時間は、スラリー30に対して第二前駆体32(図11参照)の重量が45%から55%となる程度に調整すると良い。
MW照射工程では、濃縮容器50内においてスラリー30を所定の時間間隔で上下反転させてもよい。例えば、まず、2分間マイクロ波Wを照射し、スラリー30を反転させる。更に2分間マイクロ波Wを照射し、反転させる。再度1分間マイクロ波Wを照射し、反転させる。最後に1分間マイクロ波Wを照射し、MW照射工程を終了して第二前駆体32(図11参照)を得る。第二前駆体32は、その外周の外形が筒部51の筒の内周側の形状に沿う、柔らかいゲル状で板状(円板状)の形状に成形される。
MW照射工程の後、第二前駆体32を一定時間(例えば5分間)放置(以下では安定化工程と称する)するとよい。安定化工程により、第二前駆体32を放置することで、第二前駆体32中における各部(例えば、上下面間や、中央付近と外周付近)の水分量のバラつきが低減して均質化する。
安定化工程では、図12に示されるように、第二前駆体32を透水性膜材72で覆い、第二前駆体32を二枚の透水性膜材71,72で包んだ状態にする。これにより、第二前駆体32から水分が蒸発しにくくなって、安定化工程における第二前駆体32の水分量のバラつきがより一層均質化する。
安定化工程では、図12に示されるように、濃縮容器50に容器蓋59で蓋をするとよい。容器蓋59で濃縮容器50の内部と外部とを遮断して空気の入れ替わりを阻害し、濃縮容器50の内部に放置された第二前駆体32の乾燥の進行を一時的に停止させることで、安定化工程における第二前駆体32の水分量のバラつきがより一層均質化する。本実施形態では、容器蓋59として多孔性のセラミックスの板を用いている。容器蓋59として多孔性のセラミックスの板を用いることで、濃縮容器50の内部の湿度を高めつつも、容器蓋59や濃縮容器50の内側面に結露したり、結露水が第二前駆体32に戻って第一前駆体21の水分量のバラつきを生じさせたりする不具合を防止できる。
〔担持工程〕
担持工程#6では、図13に示されるように、第二前駆体32を加温容器60に移し替える。加温容器60は、例えば高さの低い円筒状の胴部61の一端が閉じられた底部62になる有底筒状(皿状)の容器である。加温容器60は、多孔性のセラミックス(例えば、アルミナセラミックス、多孔質体の一例)で形成されている。加温容器60は、その多孔性により、胴部61や底面からの水蒸気の透過を許容する。加温容器60の胴部61の直径は例えば4.9cmである。
担持工程#6では、濃縮容器50から第二前駆体32を取出し、第二前駆体32を加温容器60の筒の内側領域における底部62上に敷く(担持の一例)。濃縮容器50から第二前駆体32を取出す際は、透水性膜材71,72で第二前駆体32が包まれたまま、透水性膜材71,72ごと取り出す。そして、透水性膜材71もしくは透水性膜材72の何れか一方が底部62に接する位置関係で、透水性膜材71,72ごと、第二前駆体32を底部62上に敷く。この際、第二前駆体32及び透水性膜材71,72は、しわが寄らないようにしつつ底部62上に敷くとよい。なお、図13では、透水性膜材71が底部62に接している場合を図示している。
第二前駆体32を底部62上に敷いた後、第二前駆体32上に、錘部材65を載置する。なお、錘部材65は、ステンレスなどの金属製の重量物であり、例えば直径が加温容器60の内径よりもやや小さい(例えば80%)の円柱状の部材である。図13では、透水性膜材72上に錘部材65を載置した場合を図示している。錘部材65を第二前駆体32上に載置することで、第二前駆体32を底部62に押し付けて、第二前駆体32にしわがよることを防止できる。
〔予備成形工程〕
予備成形工程#7では、図14に示されるように、加温容器60中で第二前駆体32に所定時間、遠赤外線I(赤外線の一例)を照射してCNF同士の水素結合を促進させるIR照射工程と、第二前駆体32から透水性膜材71,72を剥離する剥離工程とを行う。
IR照射工程は、セラミックス製の加温容器60の底部62を、例えば電熱コイルなどの発熱体を有する加熱装置69で加熱することで、加温容器60(底部62)から遠赤外線Iを放射させ、この遠赤外線Iを第二前駆体32に照射することで行う。
IR照射工程では、遠赤外線Iを第二前駆体32に照射することで、CNFの分子に赤外領域のエネルギーを与え、化学結合(特にヒドロキシ基)に振動を生じさせる。この振動により、例えばCNFの分子の側鎖同士が近接するなどして、CNFの分子間の水素結合が促進される。すなわち、第二前駆体32を遠赤外線Iで加温することで、第二前駆体32において水素結合が促進される。その結果、成形体300において、繊維体13(図8参照)の強度が向上する。
加温容器60の加熱は、加熱装置69の伝熱面69a上に加温容器60を載置してから加熱装置69の電熱コイルなどに通電開始してもよいし、あらかじめ通電等して余熱された加熱装置69の伝熱面69a上に加温容器60を載置してもよい。本実施形態では、あらかじめ通電等して約100度に余熱された加熱装置69の伝熱面69a上に、上述の担持工程終了後(図13参照)の加温容器60を載置して加温容器60の加熱を開始する場合を例示して説明する。
第二前駆体32への遠赤外線Iの照射(加熱装置69による加温容器60の加熱)は、例えば加熱装置69の伝熱面69aと伝熱可能に接触している加温容器60の底部62の受熱面の温度(表面温度の一例)を50℃以上120℃以下程度に設定して行うのが好ましい。
IR照射工程では、必ずしも第二前駆体32の乾燥を進行させる必要はなく、第二前駆体32の温度を所定範囲(加温容器60の底部62の受熱面の温度よりもやや低い温度、例えば45℃から115℃)に保つことで、遠赤外線Iの照射によるCNFの化学結合の振動を促進して水素結合の促進を促すことができればよい。すなわち、受熱面の温度が50℃よりも低いとCNFの分子運動の低下に伴いCNFの化学結合の振動が抑制されるため水素結合が促進されず、好ましくない。また、受熱面の温度が120℃よりも高くなると、第一前駆体21中の水分減少により水素結合が進む前に乾燥し、紙状物質となるため、好ましくない。
第二前駆体32への遠赤外線Iの照射時間(加熱装置69による加温容器60の加熱時間)は、5分から15分とするのが好ましい。本実施形態では10分間照射する場合を例示して説明する。照射時間は、加温容器60の底部62の受熱面の温度が高い場合に短くしてもよく、受熱面の温度が低い場合は長くすると良い。例えば、受熱面の温度が120℃の場合は照射時間を6分とする。例えば、受熱面の温度が50℃の場合は照射時間を15分とする。
IR照射工程では、加温容器60からの伝熱と遠赤外線Iの照射とにより第二前駆体32が加熱され、第二前駆体32に含まれる水分が蒸発する。第二前駆体32から蒸発した水分の一部は、透水性膜材72を透過して外部に放出される。第二前駆体32から蒸発した水分の他の一部は、透水性膜材71を透過し、さらに多孔性のセラミックス製の加温容器60を透過して外部に放出される。
本実施形態では、第二前駆体32の水分を少し残した状態でIR照射工程を終える。これにより、第二前駆体32が可撓性を有することとなり、後述する積層工程で第二前駆体32を成形体100の形状に沿うように変形させることができる。なお、IR照射工程では、加温容器60内において第二前駆体32を所定の時間間隔で上下反転させてもよい。例えば、5分間加熱して第二前駆体32を反転させ、更に5分間加熱すると、第二前駆体32は、ほとんどの水分が蒸発し、ある程度の剛性のある形状に成形される。
IR照射工程を終えた後、透水性膜材71,72ごと第二前駆体32を加温容器60から取り出して、透水性膜材71,72を第二前駆体32から剥離し、第二前駆体32を単離する。
〔積層工程〕
積層工程#8では、図15に示されるように、成形体100(第一成形体の一例)に、第二前駆体32を積層する。積層工程#8では、例えば、図15に示されるように、上型46(第一型)と下型47(第二型)によって構成される第二金型45を用いる。下型47は、凸部47aとベース部47bとを有する。下型47の凸部47aの形状に沿うように、第二前駆体32A(32)、成形体100、及び、第二前駆体32B(32)順に積層して載置する。本実施形態では、成形体100よりも第二前駆体32の方が大きく、中央側が第二前駆体32A,成形体100、第二前駆体32Bの3層構造となり、両端側が、第二前駆体32(第二前駆体32A,32B)のみで構成される。これにより、成形体100が第二前駆体32A,32Bによって完全に被覆された形態となる。これに代えて、第二前駆体32A,成形体100、第二前駆体32Bの3層構造のみで構成されていてもよい。また、第二前駆体32は、成形体100の両面A,Bのうち一方の表面のみに積層されていてもよい。
〔第2脱水工程〕
第2脱水工程#9では、成形体100及び第二前駆体32A(32),32B(32)が載置された第二金型45を加熱及び/又は加圧する。すなわち、図15に示される第二金型45で成形体100及び第二前駆体32A,32Bを挟み込み、プレス機(不図示)で圧縮(プレス)しつつ加熱することで成形体300(図8参照)を得る。プレス機による圧縮時の上型46と下型47との間の圧力(以下では、単に「プレス圧力」と称する。)は、例えば1MPaから20MPaの圧力に設定される。プレス圧力は、典型的には、3MPaから8MPaである。プレス圧力を適切な範囲(1MPaから20MPaの範囲)で増減させることで、成形体300の密度を増減させることができる。例えば、成形体300の密度を増大させたい場合は、プレス圧力を大きくし、成形体300の密度を低下させたい場合は、プレス圧力を低下させる。成形体300の密度を大きくすれば、成形体300の強度は高くなる。
成形体300を成形する際、第二金型45は、プレス機から供給される熱で第二前駆体32を加熱しながら成形する。成形体300の成形時に加熱することで、第二前駆体32A,32Bを十分に乾燥させつつ第二前駆体32A,32Bが破れるなどの成形不良を防止できると共に、成形体300の強度(特に、引張弾性率)を増大させることができる。乾燥された第二前駆体32は、成形体300においては積層体33となる。
第二金型45の成形時の温度は、例えば100℃から150℃に設定される。第二金型45の成形時の温度を適切な範囲(100℃から150℃の範囲)で増減させることで、成形体300の引張弾性率や曲げ弾性率を増減する調整を行える。成形体300の引張弾性率を増大させたい場合は、第二金型45の成形時の温度を高めに設定し、成形体300の引張弾性率を低下させたい場合は、第二金型45の成形時の温度を低めに設定する。
成形体300を成形する際、第二金型45における上型46の温度と下型47の温度とを同じにしてもよいし、互いに違えてもよい。また、成形中に第二金型45の温度を変更してもよい。
プレス機による成形条件(第二金型45の温度、プレス圧力)は、所望の成形体300の形状や物性に合わせて適宜変更される。
本構成の成形体300であれば、成形体100の表面に繊維体12による積層体33を形成することができるので、成形体100の強度を更に高めることができる。成形体100の表面に第二前駆体32を積層することで、成形体300においては、成形体100の表面に積層体33が形成される。薄膜であっても成形体100は紙材10に繊維体11が混入されたものであるため、第二前駆体32は成形体100に吸収されずに成形体100の表面において第二前駆体32は水素結合により結晶化される。これにより、積層体33の強度は高くなり、成形体100の強度を更に高めた成形体300を得ることができる。
〔第2実施形態の変形例1〕
第2実施形態の成形体300において、第二前駆体32に含まれる繊維体13は、CNFの繊維重量に対して、5重量%以上13重量%以下のクエン酸を含んでいてもよい。
繊維体13によって第二前駆体32を形成する場合、スラリー30を加熱して濃縮することで熱プレス成形の工程時間を短くすることができる。しかし、加熱濃縮後に熱プレス成形して得られた第二前駆体32は靭性が低いため、成形体300における第二前駆体32の表面にヒビ等の成形不良が生じることがある。そこで、本実施形態では、繊維体13は、セルロースナノファイバーの繊維重量に対して、5重量%以上13重量%以下のクエン酸を含んでいる。クエン酸は、成形体300を形成するスラリー30に含まれている。クエン酸等の多価カルボン酸は、セルロースとのエステル化反応において、酸無水物形成を経由してセルロースの水酸基と反応してエステル架橋が生成する。したがって、スラリー30にクエン酸を添加することにより、クエン酸とセルロースとの間で架橋反応が生じることとなり、第二前駆体32に伸縮性が付加されることになる。その結果、成形体300のヒビ等の成形不良を容易に抑制することができる。例えば、適量のクエン酸をスラリー30に添加することにより、熱プレス成形後の第二前駆体32はクエン酸の添加前よりも第二前駆体32の面部分に沿う方向の伸び率が8%~10%程度向上した。
クエン酸に代えて、酒石酸やリンゴ酸等の他の多価カルボン酸を使用することができる。ただし、三価カルボン酸であるクエン酸の方が、二価カルボン酸である酒石酸やリンゴ酸よりも無酸水物形成能が高く、架橋が生成され易い。
〔第2実施形態の変形例2〕
第2実施形態の成形体300は、積層体33の表面の少なくとも一部が、繊維体14(第三繊維体の一例)で覆われていてもよい。図16に示される成形体400では、成形体300の一方の面(成形体100の面A側の面)が繊維体14で覆われている。繊維体14は、スラリーを塗布した後にスラリーを乾燥させることで形成される。
〔製造方法の概要〕
成形体400の製造方法は、図9に示される第2実施形態の成形体300の製造工程に加え、図7に示される塗布工程#11及び乾燥工程#12を含む。塗布工程#11及び乾燥工程#12は、第1実施形態の変形例において説明した工程と同じであるのでここでは省略する。
〔比較例及び実施例について〕
以下に示す、比較例及び実施例1~3において夫々の靭性を比較した。比較例及び実施例1~3の靭性は、夫々のヤング率に基づいて比較した。夫々のヤング率は、引張り試験機を用いて得られた応力―歪み特性から求めた。
〔比較例〕
比較例は、CNFを含む繊維体が混入されていない紙材であって、以下の実施形態では芯材として用いられる。比較例である紙材は、NBKP(Needle Bleached Kraft Pulp)を原料とし、叩解度をカナダ標準濾水度測定器で700ccのものを使用し、抄造方式としてウェットプレス式が用いられている。比較例の紙材は、平板状のサンプルであって、縦15mm、横5mm、厚み0.5mmである。比較例のヤング率は、前記のサンプルにおいて測定した。
〔実施例1〕
実施例1は、第1実施形態の成形体100と同じく、紙材にCNFを含む繊維体が混入されたものである。実施例1で用いられる紙材の原料に対し、第1実施形態において示した製造工程を行うことで、紙材にCNFを含む繊維体が混入された実施形態1の成形体を得た。減圧状態の真空チャンバー内で、芯材(比較例)を繊維長3~30nm、1重量%のスラリーに含浸した。真空チャンバーは0.02Mpaに減圧し、含浸時間は30分とした。実施例1のヤング率は、比較例のサンプルと同形状(平板状)サンプルにおいて測定した。
〔実施例2〕
実施例2は、第2実施形態の成形体300と同じく、実施例1の成形体の両面に、CNFの積層体を積層したものである。したがって、実施例2は、紙材が1層、CNFの積層体が2層を有する3層構造である。積層体の前駆体は、繊維長3~30nmのCNFを1重量%含むスラリーを原料とし、第2実施形態の製造工程と同じ工程を経ることで、実施例1の成形体の両面に積層体が積層された成形体を得た。積層体の厚みが0.2mmであり、測定サンプル(成形体)は縦15mm、横5mm、厚み0.8mmである。実施例2のヤング率は、比較例のサンプルと同形状(平板状)のサンプルにおいて測定した。
〔実施例3〕
実施例3は、実施例2の成形体の積層体の表面にスラリーが塗布されたものである。具体的には、実施例2の成形体の積層体の表面に、繊維長3~30nmのCNFを1重量%含むスラリーを塗布して、当該スラリーを乾燥することで、実施例3の成形体を得た。実施例3のヤング率は、比較例と同形状(平板状)のサンプルにおいて測定した。
〔測定結果〕
比較例(比較用サンプル)及び実施例1~3(評価用サンプル)について、測定されたヤング率を以下の表1に示す。
Figure 2022088217000002
表1からわかるように、実施例1~3では、比較例よりもヤング率が大きく向上した。実施例1では、紙材の繊維の中にCNFの繊維体が入り込んで定着することで、紙パルプの繊維とCNFの繊維との間で多数の水素結合が存在するようになったため、強度が飛躍的に向上したものと考えられる。
実施例2では、さらに両面にCNF積層体を積層することで、実施例1よりも強度が向上した。また、実施例3では、実施例2の成形体の表面にCNF膜が形成されることで、成形体の表面とCNF膜との間で水素結合が存在するようになったため、強度がさらに向上したものと考えられる。
〔別実施形態〕
(1)第1実施形態(変形例を含む)及び第二実施形態(変形例を含む)において、繊維体11~14が食紅により着色されていてもよい。図17に、第1実施形態の成形体100の変形例として、紙材10の繊維間に混入される繊維体11が食紅23によって着色された成形体500を示す。食紅23として、例えば、赤色、青色、黄色、緑色等のものを用いることができる。これらの食紅23うちの1つを用いてもよいし、複数の色を混合して用いてもよい。
紙材10に混入される繊維体11を食紅23によって着色するには、図18に示されるように、含浸工程/減圧工程#2に用いられるスラリー20に食紅23を混入する。成形体100,300の表面を被覆する繊維体12,14を食紅によって着色するには、塗布工程#11に用いられるスラリー25に食紅23を混入する。第2実施形態の成形体300において積層される繊維体13を食紅によって着色するには、濃縮工程#5に用いられるスラリー30に食紅23を混入する。
第1実施形態(変形例を含む)の成形体100、200において、食紅23による着色は、繊維体11及び繊維体12のいずれか一方でもよいし、両方でもよい。また、第2実施形態(変形例を含む)の成形体300、400において、食紅23による着色は、繊維体11~14のうちいずれか1つまたは2つでもよいし、全てでもよい。なお、食紅で着色される成形体200~500は130℃以下の温度で製造することが好ましい。CNFを含む成形体200~500は、CNFを含むため、130℃以上の温度で製造された場合には茶色に変色してしまう。このため、130℃以上の温度で製造された成形体100~500では、食紅23によって適正に着色できない場合が起こり得る。
成形体200~500において、繊維体11~14が着色されることで、繊維体11~14が配置されている部位に任意の色を容易に付加することができる。また、着色に用いられる食紅23は天然素材であるので、人間にとって無害であって、成形体100~500の廃棄後の環境への負荷を低く抑えることもできる。
(2)上記第2実施形態では、CNFを3重量%含有する水分散体であるスラリー30から第二前駆体32を形成する場合を例示したが、スラリー30はCNFのみを含有する場合に限定されない。スラリー30は、CNFに加えて、他の添加剤を含有してもよく、これにより、当該添加剤により機能性を付与された成形体300,400を得ることもできる。
添加剤の一例としては、例えば、ガラス微小中空球(いわゆる、グラスバブルズ)、セルロース球体、カーボンナノチューブが挙げられる。ガラス微小中空球やセルロース球体を添加すれば、成形体300,400の軽量化を実現できる。カーボンナノチューブを添加すれば、成形体300,400の更なる強度アップや、導電性の付与を実現できる。
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
本発明は、セルロースナノファイバー含有成形体及びその製造方法に適用可能である。
1 :芯材
5 :チャンバー
10 :紙材
11 :繊維体(第一繊維体)
12 :繊維体(第二繊維体)
13 :繊維体(第二繊維体)
14 :繊維体(第三繊維体)
20,25,30 :スラリー(CNF含有スラリー)
21 :第一前駆体
23 :食紅
32 :第二前駆体
33 :積層体
40 :第一金型
45 :第二金型
100 :成形体(セルロースナノファイバー含有成形体)
200 :成形体(セルロースナノファイバー含有成形体)
300 :成形体(セルロースナノファイバー含有成形体)
400 :成形体(セルロースナノファイバー含有成形体)
500 :成形体(セルロースナノファイバー含有成形体)

Claims (11)

  1. 抄紙によって立体形状に形成された紙材を備え、
    前記紙材の繊維間にセルロースナノファイバーを含む第一繊維体が混入されているセルロースナノファイバー含有成形体。
  2. 前記第一繊維体の繊維長が1nm以上10nm以下である請求項1に記載のセルロースナノファイバー含有成形体。
  3. 前記第一繊維体の含有量が10重量%以下である請求項1又は2に記載のセルロースナノファイバー含有成形体。
  4. 前記第一繊維体が混入された前記紙材の表面の少なくとも一部が、セルロースナノファイバーを含む第二繊維体で覆われている請求項1から3のいずれか一項に記載のセルロースナノファイバー含有成形体。
  5. 前記第二繊維体の繊維長が30nm以上300nm以下である請求項4に記載のセルロースナノファイバー含有成形体。
  6. 前記第二繊維体は、セルロースナノファイバーの繊維重量に対して、5重量%以上13重量%以下のクエン酸を含んでいる請求項4又は5に記載のセルロースナノファイバー含有成形体。
  7. 前記第二繊維体の表面の少なくとも一部が、セルロースナノファイバーを含む第三繊維体で覆われている請求項4から6の何れか一項に記載のセルロースナノファイバー含有成形体。
  8. 前記第二繊維体が食紅により着色されている請求項4から7の何れか一項に記載のセルロースナノファイバー含有成形体。
  9. 前記第一繊維体が食紅により着色されている請求項1から8の何れか一項に記載のセルロースナノファイバー含有成形体。
  10. セルロースナノファイバー含有成形体の製造方法であって、
    抄紙法を用いて立体形状の紙材を生成する紙材生成工程と、
    前記紙材を、セルロースナノファイバーを含む第一繊維体のスラリーに浸す含浸工程と、
    前記紙材が前記スラリーに浸された状態で減圧して第一前駆体を得る減圧工程と、
    前記第一前駆体を立体形状の第一金型に入れて加熱及び/又は加圧する第1脱水工程と、を含むセルロースナノファイバー含有成形体の製造方法。
  11. 前記第1脱水工程によって得られた第一成形体、及び、セルロースナノファイバーを含む第二繊維体によって形成された第二前駆体を、立体形状の第二金型に積層して載置する積層工程と、
    前記第一成形体及び前記第二前駆体が載置された前記第二金型を加熱及び/又は加圧する第2脱水工程と、を含む請求項10に記載のセルロースナノファイバー含有成形体の製造方法。

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