以下、本発明の実施形態に係る建設機械を、添付図面に従って詳細に説明する。
図1ないし図6は本発明の第1の実施形態を示している。第1の実施形態では、走行装置を備えた建設機械を、走行装置を備えた油圧ショベルに適用した場合を例示している。
図1において、油圧ショベル1の車体は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより構成されている。上部旋回体3の前部側には、フロント装置4が回動可能に設けられている。油圧ショベル1は、上部旋回体3を旋回させつつフロント装置4を回動させることによって土砂等の掘削作業を行う。
上部旋回体3は、左前側にキャブ5を備えている。このキャブ5内には、運転席、走行用の操作レバー、走行用の操作ペダル、作業用の操作レバー、各種スイッチ類(いずれも図示せず)等が設けられている。また、キャブ5内には、後述のディスプレイ40が設けられている。
下部走行体2は、前後方向に延びる左サイドフレーム6Aおよび右サイドフレーム(図示せず)を備えたトラックフレーム6と、各サイドフレーム6Aの長手方向の第1端に設けられた後述の走行装置9と、各サイドフレーム6Aの長手方向の第2端に設けられた遊動輪7と、遊動輪7と走行装置9に設けられた後述の駆動輪19とに巻回された履帯8とを含んで構成されている。
図2に示すように、走行装置9は、車体を走行させるものである。走行装置9は、各サイドフレーム6Aの長手方向の第1端に固定された走行装置ブラケット10と、走行装置ブラケット10に後述の固定側ハウジング13を介して取付けられた油圧モータ11と、油圧モータ11の回転を減速する後述の減速装置12とを含んで構成されている。走行装置9は、油圧モータ11の回転を減速装置12によって減速することにより駆動輪19を大きなトルクをもって回転させ、駆動輪19と遊動輪7とに巻回された履帯8を周回させる。
減速装置12は、油圧モータ11の回転を減速して駆動輪19に伝達する。この減速装置12は、後述の固定側ハウジング13、回転側ハウジング15、遊星歯車減速機構23,24,25を含んで構成されている。
固定側ハウジング13は、油圧モータ11が取付けられた状態で走行装置ブラケット10に固定して設けられている。固定側ハウジング13は、回転側ハウジング15の軸線O-O(回転中心線)に沿って延びる段付の円筒体として形成されている。
固定側ハウジング13は、大径なフランジ部13Aを有し、このフランジ部13Aは、複数本のボルト14(2本のみ図示)を用いて走行装置ブラケット10に固定されている。走行装置ブラケット10から突出した固定側ハウジング13の先端側には、回転側ハウジング15を支持するハウジング支持部13Bと、後述する遊星歯車減速機構72のキャリア25Cが結合される雄スプライン部13Cとが設けられている。フランジ部13Aとハウジング支持部13Bとの間には、回転側ハウジング15に向けて突出して円筒突出部13Dが設けられている。この円筒突出部13Dは、ハウジング支持部13Bよりも大径な段付き円筒体として形成されている。
図3に示すように、円筒突出部13Dの回転側ハウジング15側の先端面は、軸方向端面13Eとなっている。また、軸方向端面13Eよりも外周側は、軸方向端面13Eからフランジ部13A側に引っ込んだ段差からなる段部13Fとなっている。軸方向端面13Eは、回転側ハウジング15の軸方向端面15Eと対面している。また、段部13Fには、回転側ハウジング15のシール筒部15Fが隙間をもって配置されている。
円筒突出部13Dの内周側には、後述の固定側シールリング28と径方向で対面して固定側ハウジング13の内周面13Gが形成されている。内周面13Gは、回転側ハウジング15側に向けて内径寸法が大きくなる傾斜面として形成されている。内周面13Gには、固定側Oリング30が押付けられている。
図2に示すように、回転側ハウジング15は、固定側ハウジング13と軸方向(軸線O-Oの方向)で対向する位置に、固定側ハウジング13に対して同軸に回転可能に設けられている。回転側ハウジング15は、下部走行体2を走行させるために油圧モータ11によって駆動される。回転側ハウジング15は、全体として有蓋円筒体として形成され、その内部に遊星歯車減速機構23,24,25を収容している。回転側ハウジング15は、後述の軸受17を介して固定側ハウジング13のハウジング支持部13Bに支持され、外周側にフランジ部15A1を有する段付き円筒状の支持筒体15Aと、支持筒体15Aに複数本のボルト16を用いて固定され内周側に内歯車15B1と内歯車15B2が形成された円筒状のリングギヤ15Bと、リングギヤ15Bを施蓋する円板状の蓋体15Cとを含んで構成されている。
回転側ハウジング15の固定側ハウジング13側には、支持筒体15Aのフランジ部15A1の内径側に位置して、固定側ハウジング13に向けて突出する段付き円筒状の円筒突出部15Dが設けられている。円筒突出部15Dは、回転側ハウジング15を固定側ハウジング13に取付けた状態で、固定側ハウジング13の円筒突出部13Dと対面するように形成されている。
図3に示すように、円筒突出部15Dの固定側ハウジング13側の先端面は、軸方向端面15Eとなっている。また、軸方向端面15Eよりも外周側は、軸方向端面15Eよりも固定側ハウジング13側に突出したシール筒部15Fとなっている。軸方向端面15Eは、固定側ハウジング13の軸方向端面13Eと後述の隙間20をもって対面している。
また、シール筒部15Fは、固定側ハウジング13の段部13Fに対して径方向で重なるように隙間をもって配置されている。これにより、シール筒部15Fは、段部13Fとの間に土砂等が入り難くする後述のラビリンス21を形成している。
円筒突出部15Dの内周側には、後述の回転側シールリング29と径方向で対面して回転側ハウジング15の内周面15Gが形成されている。内周面15Gは、固定側ハウジング13の内周面13Gと対称形状をなすように、固定側ハウジング13側に向けて内径寸法が大きくなる傾斜面として形成されている。内周面15Gには、回転側Oリング31が押付けられている。
回転側ハウジング15の支持筒体15Aは、固定側ハウジング13のハウジング支持部13Bに軸受17を介して回転可能に取付けられている。支持筒体15Aのフランジ部15A1には、複数本のボルト18を用いてスプロケットからなる駆動輪19が取付けられている。
隙間20は、固定側ハウジング13の軸方向端面13Eと回転側ハウジング15の軸方向端面15Eとの間に、全周に亘って環状に形成されている。また、隙間20よりも径方向の外側には、ラビリンス21が形成されている。ラビリンス21は、隙間20に連通する断面でクランク状の迷路を形成し、土砂等が隙間20内に侵入するのを抑制する。
図2に示すように、回転軸22は、回転側ハウジング15内に設けられ、油圧モータ11によって回転される。回転側ハウジング15の軸線O-Oは、回転軸22の軸中心と一致している。回転軸22の基端側は、油圧モータ11の出力軸に連結され、回転軸22の先端側は、リングギヤ15B内を軸方向に伸長している。蓋体15Cの近傍に位置する回転軸22の先端部には、後述の太陽歯車23Aが一体形成されている。
3段の遊星歯車減速機構23,24,25は、回転側ハウジング15内に設けられている。これら3段の遊星歯車減速機構23,24,25は、油圧モータ11の回転を3段減速し、回転側ハウジング15のフランジ部15A1に取付けられた駆動輪19の回転トルクを増大する。
1段目の遊星歯車減速機構23は、回転軸22の先端部に一体形成された太陽歯車23Aと、太陽歯車23Aとリングギヤ15Bの内歯車15B1とに噛合し、太陽歯車23Aの周囲を自転しつつ公転する複数の遊星歯車23B(1個のみ図示)と、各遊星歯車23Bを回転可能に支持するキャリア23Cとを含んで構成されている。1段目の遊星歯車減速機構23は、太陽歯車23Aの回転を減速し、キャリア23Cを介して各遊星歯車23Bの公転を2段目の太陽歯車24Aに伝達する。
2段目の遊星歯車減速機構24は、回転軸22を取囲むように1段目のキャリア23Cにスプライン結合された円筒状の太陽歯車24Aと、太陽歯車24Aとリングギヤ15Bの内歯車15B1とに噛合し、太陽歯車24Aの周囲を自転しつつ公転する複数の遊星歯車24B(1個のみ図示)と、各遊星歯車24Bを回転可能に支持するキャリア24Cとを含んで構成されている。2段目の遊星歯車減速機構24は、太陽歯車24Aの回転を減速し、キャリア24Cを介して各遊星歯車24Bの公転を3段目の太陽歯車25Aに伝達する。
3段目の遊星歯車減速機構72は、回転軸22を取囲むように2段目のキャリア24Cにスプライン結合された円筒状の太陽歯車25Aと、太陽歯車25Aとリングギヤ15Bの内歯車15B2とに噛合し、太陽歯車25Aの周囲を自転しつつ公転する複数の遊星歯車25B(1個のみ図示)と、各遊星歯車25Bを回転可能に支持するキャリア25Cとを含んで構成されている。
3段目のキャリア25Cは、固定側ハウジング13の雄スプライン部13Cにスプライン結合されている。従って、キャリア25Cに支持された各遊星歯車25Bの公転は、リングギヤ15Bの内歯車15B2を介して回転側ハウジング15に伝達される。これにより、回転側ハウジング15は、遊星歯車減速機構23,24,25によって3段減速された状態で、固定側ハウジング13に対して回転する構成となっている。各遊星歯車減速機構23,24,25、軸受17等は、回転側ハウジング15内に充填された潤滑油26によって潤滑される構成となっている。
フローティングシール27は、固定側ハウジング13と回転側ハウジング15との間に設けられている。フローティングシール27は、固定側ハウジング13と回転側ハウジング15との間に形成された隙間20をシールする。これにより、フローティングシール27は、各遊星歯車減速機構23,24,25、軸受17等を潤滑する潤滑油26を、回転側ハウジング15内に封止する。フローティングシール27は、後述の固定側シールリング28、回転側シールリング29、固定側Oリング30、回転側Oリング31を含んで構成されている。
図3に示すように、固定側シールリング28は、固定側ハウジング13の円筒突出部13Dの内周側に内周面13Gと間隔をもって配置されている。固定側シールリング28は、回転側シールリング29と対をなすもので、例えば耐摩耗性、耐食性に優れた鉄系金属材料を用いて円筒状に形成されている。固定側シールリング28は、固定側Oリング30を挟んで固定側ハウジング13の内周面13Gと対面する外周面28Aと、回転側ハウジング15側に形成された摺接面28Bとを含んで構成されている。
外周面28Aは、固定側ハウジング13の内周面13Gに沿うように、回転側ハウジング15側に向けて外径寸法が大きくなる傾斜面として形成されている。外周面28Aには、固定側Oリング30が押付けられている。
また、摺接面28Bは、円環状の平坦面からなり、隙間20よりも径方向内側に配置されている。摺接面28Bは、回転側シールリング29の摺接面29Bと摺接することにより、摺接面29Bとの間で潤滑油26を封止するシール面を構成している。
回転側シールリング29は、回転側ハウジング15の円筒突出部15Dの内周側に内周面15Gと間隔をもって配置されている。回転側シールリング29は、固定側シールリング28と対をなすもので、固定側シールリング28と同じ鉄系金属材料を用いて円筒状に形成されている。また、回転側シールリング29は、固定側シールリング28と同形状の部材を軸方向で反転して配置されている。即ち、回転側シールリング29は、固定側シールリング28と同様に、外周面29Aと摺接面29Bとを含んで構成されている。
固定側Oリング30は、固定側ハウジング13の内周面13Gと固定側シールリング28の外周面28Aとの間に設けられている。固定側Oリング30は、回転側Oリング31と対をなすもので、例えばニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム等の耐油性を有するゴム材料を用いて、円形の断面形状を有する環状体として形成されている。固定側Oリング30は、固定側ハウジング13の内周面13Gと固定側シールリング28との間をシールすると共に、固定側シールリング28を回転側シールリング29に向けて軸方向に押圧する。
回転側Oリング31は、回転側ハウジング15の内周面15Gと回転側シールリング29の外周面29Aとの間に設けられている。回転側Oリング31は、固定側Oリング30と同じゴム材料からなる環状体として形成されている。回転側Oリング31は、回転側ハウジング15の内周面15Gと回転側シールリング29との間をシールすると共に、回転側シールリング29を固定側シールリング28に向けて軸方向に押圧する。
環状空隙32は、各シールリング28,29の外周側に位置して各Oリング30,31間に形成された環状の空間として形成されている。環状空隙32は、外周側が隙間20に接続されている。
ここで、固定側Oリング30は、図3に示す所定位置に配置された状態では、固定側シールリング28を回転側シールリング29に対し、全周に亘って均等な力で押付けることができる。同様に、回転側Oリング31は、図3に示す所定位置に配置された状態では、回転側シールリング29を固定側シールリング28に対し、全周に亘って均等な力で押付けることができる。従って、固定側シールリング28の摺接面28Bと回転側シールリング29の摺接面29Bとを潤滑油26の油膜を介して密着させることができる。これにより、フローティングシール27は、固定側ハウジング13に対して回転側ハウジング15が回転するのを許しつつ、潤滑油26の漏洩を抑制することができる。
次に、本実施形態の特徴部分となる温度センサ33と制御装置34の構成および機能について説明する。
温度センサ33は、フローティングシール27の温度を検出する。温度センサ33は、フローティングシール27に対向するように固定側ハウジング13に設けられている。温度センサ33は、一例として、変形、変位可能な接触部33Aを有し、その接触部33Aをフローティングシール27の固定側Oリング30に接触させている。接触部33Aは、固定側Oリング30の変形や移動に追従できるように、固定側Oリング30の回転(供回り)を許容できるように、例えば、弾性変形が可能なアーチ構造、ばねを用いた可変構造等を有している。
温度センサ33は、後述する制御装置34の情報入力装置35、サブバッテリ43(図4参照)に電気的に接続されている。そして、温度センサ33は、固定側Oリング30の温度をフローティングシール27全体の温度として検出し、この検出結果を制御装置34に出力する。
図4に示すように、制御装置34は、例えばキャブ5内を含む上部旋回体3に設けられ、車体をなす下部走行体2、上部旋回体3および走行装置9の制御を行う。制御装置34は、多くの機能の一つとして、温度センサ33の検出結果に基づいて下部走行体2を制御する。制御装置34は、情報入力装置35、判定演算CPU36、内部メモリ37、正常・異常入出力装置38等を備えている。
情報入力装置35には、温度センサ33が接続されており、この温度センサ33がフローティングシール27の温度を検出した結果(情報)が電気信号として入力される。情報入力装置35は、入力された温度センサ33からの温度情報を判定演算CPU36に送信する。
判定演算CPU36は、内部メモリ37に保存されている判定基準となる規定値を参照し、温度情報と比較することによって正常か、異常かを判定する。判定演算CPU36には、図5に示す判定処理のプログラム、図6に示す特性線図等が格納されている。また、判定演算CPU36は、正常・異常入出力装置38に接続されている。判定演算CPU36で判定された情報は、内部メモリ37や後述の外部メモリ39に記録される。
正常・異常入出力装置38は、制御に関する情報を出し入れするための外部メモリ39とキャブ5内のディスプレイ40とに接続されている。また、正常・異常入出力装置38は、携帯タブレット41に無線接続されている。これにより、正常・異常入出力装置38は、必要に応じて内部メモリ37や外部メモリ39に記録された情報を報知装置としてのディスプレイ40や携帯タブレット41に出力し、オペレータ、作業者等の使用者や管理者に報知する。
また、制御装置34は、メインバッテリ(車載バッテリ)42に接続されており、このメインバッテリ42から外付けのサブバッテリ43への給電を行う。この上で、サブバッテリ43は、温度センサ33を含む各種センサ類に給電を行う。
ここで、判定演算CPU36で行われる処理について、図5の流れ図を参照して説明する。この流れ図では、「ステップ」を省略して「S」と示している。
ステップ1で、エンジン(図示せず)が始動されると、ステップ2で、温度センサ33が検出したフローティングシール27の温度Tを入力する。続く、ステップ3では、入力したフローティングシール27の温度Tが規定値(判定基準値)となる温度Tminよりも高いか否かを判定する。
ここで、温度Tminは、環状空隙32に入り込んだ泥水が、フローティングシール27のシール機能に影響を及ぼす凍結状態にあるか否かの判定基準値となる温度である。即ち、フローティングシール27の温度Tが温度Tminよりも高い場合には、走行装置9を駆動してもフローティングシール27のシール機能を維持することができる。一方、フローティングシール27の温度Tが温度Tminよりも低い場合には、環状空隙32で泥水が凍結していることが考えられ、この状態で、走行装置9を駆動すると、環状空隙32で凍結した泥水がフローティングシール27のOリング30,31を押圧してシール機能が損なわれる虞がある。
なお、図6に示すように、温度Tminは、例えば、温度Tmin1または温度Tmin2に設定することができる。温度Tmin1は、環状空隙32に入り込んだ泥水が凍結していない状態、または環状空隙32に入り込んで凍結した泥水が解凍された状態と判定される値である。通常、温度Tminは、温度Tmin1に設定することが望ましい。
一方、温度Tmin2は、Oリング30,31の材質に応じた一般的な使用可能温度であり、温度Tmin1よりも低い温度となっている。例えば、作業現場が極寒冷地であったり、フローティングシール27を温めるためのヒータ等の設備が脆弱であったりした場合には、フローティングシール27を温度Tmin1まで温めることができない。このような作業現場では、温度Tminを温度Tmin2に設定することができる。
そして、ステップ3で「YES」と判定されたら、環状空隙32で泥水が凍結していない状態であるから、ステップ14に移って使用者による機械操作を開始する。
一方、ステップ3で「NO」と判定されたら、ステップ4に移って車体の動作、即ち、上部旋回体3の旋回動作、フロント装置4の回動動作、下部走行体2(走行装置9)の走行動作を完全にロックする。ステップ4で車体の動作を完全ロックしたら、ステップ5で、使用者に走行装置9の暖機の推奨を報知する。
具体的には、キャブ5内のディスプレイ40や携帯タブレット41に、走行装置9の暖機が必要であることを表示する。報知装置としては、ディスプレイ40や携帯タブレット41以外にも、暖機を示すランプや音声を用いることができる。
ステップ5で、使用者に走行装置9の暖機の推奨を報知したら、適切な暖機が行われたか否かを判定するために、ステップ6に移って、ステップ3と同様に、入力したフローティングシール27の温度Tが設定された温度Tminよりも高いか否かを判定する。ステップ6で「YES」と判定されたら、適切な暖機によって環状空隙32で凍結した泥水が解凍された状態であるから、ステップ14に移って使用者による機械操作を開始する。
一方、ステップ6で「NO」と判定されたら、ステップ7に移って、車体の動作ロックの部分解除方法と完全解除方法をディスプレイ40や携帯タブレット41に表示し、使用者に報知する。ここで、動作ロックの部分解除が必要な状況としては、走行装置9の暖機措置に時間を要するために、下部走行体2を固定したままでの掘削作業等を暖機措置と並行して行うことが考えられる。また、動作ロックの完全解除が必要な状況としては、例えば、落石、崩落、増水等が発生し、走行装置9が損傷しても退避を優先したい場合が考えられる。
ステップ8に移って、使用者は、周囲の安全を確認した後、ステップ9では、ステップ7で報知した部分解除方法に準じて動作ロックの部分解除信号が入力されたか否かを判定する。このステップ9で「YES」と判定されたら、ステップ10に移ってシステムによる動作ロックの部分解除が行われる。これにより、上部旋回体3の旋回動作とフロント装置4の回動動作が可能になるから、ステップ14に移って使用者による機械操作を開始する。
一方、ステップ9で「NO」と判定されたら、ステップ11に移って、ステップ7で報知した完全解除方法に準じて動作ロックの完全解除信号が入力されたか否かを判定する。このステップ11で「YES」と判定されたら、ステップ12で、完全解除信号が入力された瞬間のフローティングシール27の温度Tを含むログ(操作、処理の履歴等)を内部メモリ37に記録する。続いて、ステップ13では、システムによる動作ロックの完全解除が行われる。これにより、上部旋回体3の旋回動作とフロント装置4の回動動作と下部走行体2(走行装置9)の走行動作との全てが可能になるから、ステップ14に移って使用者による機械操作を開始する。
さらに、ステップ11で「NO」と判定されたら、部分解除信号も完全解除信号も入力されていない状態である。この状態は、走行装置9の暖機措置が行われていないか、暖機措置を継続中であり、緊急な動作を必要としていない状態である。そこで、ステップ11で「NO」と判定されたら、ステップ5以降の処理を繰り返す。
第1の実施形態による走行装置9を備えた油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、油圧ショベル1の動作について説明する。
油圧ショベル1の下部走行体2を走行させるために、油圧モータ11を回転すると、この油圧モータ11の回転が減速装置12の遊星歯車減速機構23,24,25によって3段減速され、回転側ハウジング15に伝達される。これにより、回転側ハウジング15が大きなトルクをもって回転し、この回転側ハウジング15に固定した駆動輪19と遊動輪7とに巻回された履帯8が周回して油圧ショベル1が走行する。
ここで、フローティングシール27の回転側シールリング29は、回転側ハウジング15と一体に回転し、その摺接面29Bを固定側シールリング28の摺接面28Bに摺接させることにより、回転側ハウジング15と固定側ハウジング13との隙間20を液密にシールする。これにより、回転側ハウジング15内に潤滑油26を保持し、この潤滑油26によって軸受17、遊星歯車減速機構23,24,25等を潤滑することができ、回転側ハウジング15を円滑に回転させることができる。
この油圧ショベル1の走行時には、土砂を含んだ泥水がラビリンス21、隙間20を通過して環状空隙32に入り込んでしまう場合がある。この状態で、外気温度が氷点下まで低くなると、環状空隙32に入り込んだ泥水がフローティングシール27の周囲で凍結して氷塊となる。このように、フローティングシール27の周囲の泥水が凍結した状態で、固定側ハウジング13に対して回転側ハウジング15を回転させると、凍結した泥水からなる氷塊が各Oリング30,31を押圧し、Oリング30,31を所定の位置から逸脱させてしまう。これにより、Oリング30,31によるシールリング28,29の押付け力が不均一になって潤滑油26が漏れ出してしまう虞がある。
然るに、本実施形態によれば、走行装置9の固定側ハウジング13には、フローティングシール27の温度を検出する温度センサ33が設けられ、制御装置34は、フローティングシール27の温度Tが規定値(温度Tmin)以下の場合、走行装置9の動作を制限しつつ上部旋回体3、フロント装置4の制御を行う構成としている。
これにより、フローティングシール27の周囲の環状空隙32で泥水等が凍結した状態では、制御装置34によって下部走行体2の走行を規制することができる。この結果、フローティングシール27の損傷を未然に防ぐことができ、減速装置12の油漏れを防止することができる。
また、制御装置34による車体の制御経過を報知する報知装置としてのディスプレイ40や携帯タブレット41を備えているから、使用者に現状や最適な対処方法を詳細に知られることができ、短い時間で簡単に油圧ショベル1を動作させることができる。
次に、図7ないし図11は本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、走行装置を備えた建設機械を、走行装置を備えたダンプトラックに適用したことにある。なお、第2の実施形態に用いる制御装置は、部分解除方法に関する処理が省略されていること以外は第1の実施形態による制御装置34と同様であるために、説明を省略する。
図7において、ダンプトラック51は、頑丈なフレーム構造をなす車体52と、車体52上に起伏可能に搭載された荷台としてのベッセル53とにより大略構成されている。ベッセル53は、大型の容器として形成され、その後側底部が車体52の後端側に連結ピン54等を介して起伏(傾転)可能に連結されている。
キャブ55は、車体52の前部に設けられている。キャブ55は、ダンプトラック51のオペレータが乗降する運転室を形成し、その内部には運転席、アクセルペダル、ブレーキペダル、ハンドルおよび複数のスイッチ類(いずれも図示せず)が設けられている。また、キャブ55内には、第1の実施形態によるディスプレイ40と同様のディスプレイが設けられている。
左側と右側の前輪56は、車体52の前部側に回転可能に設けられている。各前輪56は、ダンプトラック51のオペレータによってステアリング操作される操舵輪を構成している。車体52の前部と前輪56との間には、油圧緩衝器等からなる前輪側サスペンション56Aが設けられている。
左側と右側の後輪57は、車体52の後部側に回転可能に設けられている。各後輪57は、ダンプトラック51の駆動輪を構成し、後述の走行装置60によって車輪取付筒67と一体に回転駆動される。後輪57は、車幅方向の内側と外側のタイヤ57Aと、各タイヤ57Aの径方向の内側に配設されたリム57Bとを含んで構成されている。車体52の後部と後輪57との間には、油圧緩衝器等からなる後輪側サスペンション57Cが設けられている。
エンジン58は、キャブ55の下側に位置して車体52内に設けられている。エンジン58は、例えばディーゼルエンジン等により構成され、車載の発電機、油圧源となる油圧ポンプ(いずれも図示せず)等を回転駆動する。油圧ポンプから吐出される圧油は、後述のホイストシリンダ59、パワーステアリング用の操舵シリンダ(図示せず)等に供給される。
ホイストシリンダ59は、ベッセル53を起伏させるための油圧シリンダである。ホイストシリンダ59は、前輪56と後輪57との間に位置して車体52の左右両側に配設され、車体52とベッセル53との間に上下方向で伸縮可能に取付けられている。ホイストシリンダ59は、圧油が給排されることにより上下方向に伸縮し、後部側の連結ピン54を中心にしてベッセル53を起伏(傾転)させる。
走行装置60は、車体を走行させるものである。走行装置60は、ダンプトラック51の後輪57側に設けられている。走行装置60は、後述のアクスルハウジング61、走行用モータ65、車輪取付筒67、減速装置71を含んで構成されている。走行装置60は、走行用モータ65の回転を減速装置71により減速し、車両の駆動輪となる後輪57を回転駆動する。
アクスルハウジング61は、後輪57を回転させるために車体52の後部側に設けられている。図8に示すように、アクスルハウジング61は、左側の後輪57と右側の後輪57との間を車幅方向に延びる筒状の固定側ハウジングとして形成されている。アクスルハウジング61は、後輪側サスペンション57Cを介して車体52の後部側に取付けられる中間の懸架筒62と、懸架筒62の左右両側にそれぞれ設けられた後述のスピンドル63とにより構成されている。
スピンドル63は、筒状をなし、アクスルハウジング61の軸方向両端側にそれぞれ設けられている。図9に示すように、スピンドル63は、軸方向の一側に位置してテーパ形状をなし懸架筒62にボルト64等を介して着脱可能に固着された大径筒部63Aと、大径筒部63Aの軸方向の他側に一体形成された円形筒部63Bとにより構成されている。円形筒部63Bは、後述の車輪取付筒67内を軸方向に延びるように配置され、円形筒部63Bの外周側は、後述の軸受68を介して後輪57側の車輪取付筒67を回転可能に支持する。
ここで、スピンドル63の外周側には、大径筒部63Aの長さ方向(軸方向)の中間部から径方向の外向きに突出した環状フランジ部63Cと、後述のリテーナ82を軸方向に位置決めするために円形筒部63Bの軸方向一側に設けられた環状の段差部63Dとが一体に形成されている。環状フランジ部63Cには、後述の湿式ブレーキ78が取付けられる。また、大径筒部63Aの軸方向の一側には、後述の走行用モータ65が取付けられている。
一方、円形筒部63Bの軸方向の他側(先端側)は、開口端となり、その内側には、後述するキャリア74Dの筒状突出部74Eがスプライン結合されている。円形筒部63Bの軸方向の中間部は、後述の回転軸用軸受76を介して回転軸66を回転可能に支持している。
回転源としての走行用モータ65は、アクスルハウジング61内に着脱可能に設けられている。走行用モータ65は、車体52に搭載された発電機(図示せず)からの電力供給によって回転駆動される電動モータにより構成されている。走行用モータ65は、左側の後輪57と右側の後輪57とを互いに独立して回転駆動するため、懸架筒62の左右両側に位置してスピンドル63内にそれぞれ取付けられている。走行用モータ65は、スピンドル63の大径筒部63Aの軸方向の一側にボルト等を用いて取付けられている。走行用モータ65は、発電機から電力が供給されることにより、後述の回転軸66を回転駆動する。
回転軸66は、走行用モータ65の出力軸を構成している。回転軸66は、走行用モータ65によって正方向または逆方向に回転駆動される。回転軸66は、スピンドル63の内周側を軸方向(左右方向ないし車幅方向)に延びる1本の長尺な棒状体により構成され、回転軸66の一端側は、走行用モータ65の出力側に連結されている。一方、回転軸66の他端側は、スピンドル63を構成する円形筒部63Bの開口端側から突出し、その突出端側には、後述の太陽歯車72Aが取付けられている。さらに、回転軸66は、後述する2個の軸受68の間に位置する軸方向の中間部が後述の回転軸用軸受76等を用いて回転可能に支持されている。
車輪取付筒67は、車輪としての後輪57と一体に回転する筒状の回転側ハウジングを構成している。車輪取付筒67は、アクスルハウジング61に対して同軸に回転可能に設けられている。車輪取付筒67は、所謂ホイールハブを構成し、その外周側には、各後輪57のリム57Bが圧入等の手段を用いて着脱可能に取付けられている。車輪取付筒67は、各軸受68間に亘って軸方向に延びる中空構造をなした中空筒部67Aと、中空筒部67Aよりも大径で、中空筒部67Aの端部から後述の内歯車74Bに向けて軸方向に一体に延びた延設筒部67Bとにより段付筒状体として形成されている。
また、車輪取付筒67の延設筒部67Bには、後述の内歯車74Bと外側ドラム69とが長尺ボルト70等を用いて一体的に固着されている。従って、車輪取付筒67は、内歯車74Bと一体に回転される。即ち、車輪取付筒67には、走行用モータ65の回転を減速装置71で減速することにより、大トルクとなった回転が内歯車74Bを介して伝えられる。
2個の軸受68は、スピンドル63の外周側に位置して車輪取付筒67を回転可能に支持している。各軸受68は、例えば円錐ころ軸受等を用いて構成されている。各軸受68は、スピンドル63の円形筒部63Bと車輪取付筒67の中空筒部67Aとの間に軸方向に離間して配設されている。
外側ドラム69は、後述の内歯車74Bと共に車輪取付筒67の一部を構成している。外側ドラム69は、車輪取付筒67の軸方向外側となる位置に内歯車74Bを挟んで取付けられ、複数の長尺ボルト70を用いて車輪取付筒67に着脱可能に固着されている。
減速装置71は、スピンドル63と車輪取付筒67との間に設けられている。減速装置71は、後述する1段目の遊星歯車減速機構72と2段目の遊星歯車減速機構74とにより構成され、後輪57側の車輪取付筒67に対し走行用モータ65(回転軸66)の回転を減速して伝える。これにより、後輪57側の車輪取付筒67は、減速して得られた大きな回転力(トルク)をもって後輪57と一緒に回転駆動される。
1段目の遊星歯車減速機構72は、減速装置71の一部を構成している。1段目の遊星歯車減速機構72は、回転軸66の自由端となる先端側にスプライン結合された太陽歯車72Aと、太陽歯車72Aとリング状の内歯車72Bとに噛合する複数個(例えば、3~4個)の遊星歯車72Cと、各遊星歯車72Cを回転可能に支持するキャリア72Dとにより構成されている。このキャリア72Dの外周側は、外側ドラム69の開口端にボルト等を介して固定され、キャリア72Dは、車輪取付筒67、外側ドラム69と一体に回転する。
リング状の内歯車72Bは、太陽歯車72A、各遊星歯車72Cを径方向外側から取囲むリングギヤとして形成されている。内歯車72Bは、外側ドラム69の内周面との間に小さな径方向隙間を介して相対回転可能に配置されている。内歯車72Bの回転(公転)は、後述のカップリング73を介して2段目の遊星歯車減速機構74に伝えられる。
1段目の遊星歯車減速機構72は、走行用モータ65によって回転軸66と一体に太陽歯車72Aが回転すると、この太陽歯車72Aの回転を各遊星歯車72Cの自転運動と公転運動とに変換する。そして、各遊星歯車72Cの自転(回転)は、リング状の内歯車72Bに減速した回転として伝えられ、この内歯車72Bの回転がカップリング73を介して2段目の遊星歯車減速機構74に伝達される。一方、各遊星歯車72Cの公転は、キャリア72Dの回転となって車輪取付筒67側の外側ドラム69に伝達される。しかし、車輪取付筒67は、後述する2段目の内歯車74Bと一体に回転するため、各遊星歯車72Cの公転は、内歯車74B(車輪取付筒67)に同期した回転に抑えられる。
カップリング73は、1段目の遊星歯車減速機構72と2段目の遊星歯車減速機構74との間に位置する環状の回転伝達部材として形成されている。カップリング73の外周側は、1段目の内歯車72Bにスプライン結合され、カップリング73の内周側は、後述する2段目の太陽歯車74Aにスプライン結合されている。これにより、カップリング73は、1段目の内歯車72Bの回転を2段目の太陽歯車74Aに伝達し、この太陽歯車74Aを1段目の内歯車72Bと一体に回転させる。
2段目の遊星歯車減速機構74は、回転軸66と車輪取付筒67との間に1段目の遊星歯車減速機構72を介して配設されている。2段目の遊星歯車減速機構74は、1段目の遊星歯車減速機構72と共に回転軸66の回転を減速する。遊星歯車減速機構74は、回転軸66と同軸に配置されカップリング73と一体に回転する円筒状の太陽歯車74Aと、太陽歯車74Aとリング状の内歯車74Bとに噛合する複数個の遊星歯車74C(1個のみ図示)と、各遊星歯車74Cを回転可能に支持するキャリア74Dとにより構成されている。
2段目の内歯車74Bは、太陽歯車74A、各遊星歯車74C等を径方向外側から取囲むリングギヤとして形成されている。2段目の内歯車74Bは、車輪取付筒67の一部を構成する延設筒部67Bと外側ドラム69との間に長尺ボルト70を用いて一体的に固着されている。
また、2段目のキャリア74Dには、スピンドル63の円形筒部63B内に向けて延び、円形筒部63Bに嵌合される筒状突出部74Eが一体形成されている。筒状突出部74Eは、円形筒部63Bの内周側にスプライン結合されている。
2段目の遊星歯車減速機構74は、筒状突出部74Eがスピンドル63の円形筒部63Bにスプライン結合されることにより、各遊星歯車74Cの公転(キャリア74Dの回転)が拘束される。従って、2段目の遊星歯車減速機構74は、太陽歯車74Aがカップリング73と一体に回転すると、この太陽歯車74Aの回転を各遊星歯車74Cの自転に変換しつつ、各遊星歯車74Cの自転を2段目の内歯車74Bに伝達し、この内歯車74Bを減速して回転させる。これにより、内歯車74Bが固定された車輪取付筒67に対しては、1段目の遊星歯車減速機構72と2段目の遊星歯車減速機構74との2段階で減速された大出力の回転トルクが伝達される。ここで、車輪取付筒67の内部には、潤滑油75が貯留されている。これにより、各遊星歯車減速機構72,74には、常に潤滑油75が供給されている。
回転軸用軸受76は、回転軸66とスピンドル63の円形筒部63Bとの間に配設されている。回転軸用軸受76は、回転軸66の軸方向中間部を回転可能に支持している。
ブレーキハウジング77は、スピンドル63の環状フランジ部63Cに固定して設けられている。即ち、ブレーキハウジング77は、固定側ハウジングの一部を構成している。ブレーキハウジング77は、基部77Aとの間に後述する湿式ブレーキ78の各ディスク78C,78Dを挟む端板77Bを有している。端板77Bには、湿式ブレーキ78と反対側に突出する円環状のシール受筒77Cが設けられている。このシール受筒77Cの内周側には、後述の第1フローティングシール83が設けられている。
湿式ブレーキ78は、車輪取付筒67の回転に制動力を与えるもので、湿式多板型の油圧ブレーキとして構成されている。湿式ブレーキ78は、アクスルハウジング61のスピンドル63と車輪取付筒67との間に、ブレーキハウジング77と後述のブレーキハブ80を介して設けられている。湿式ブレーキ78は、車輪取付筒67と一体に回転するブレーキハブ80に対して制動力を付与する。
図9、図10に示すように、湿式ブレーキ78は、ブレーキハウジング77の基部77Aに摺動可能に挿嵌された複数個のピストン78Aと、基部77Aに対面して設けられ、各ピストン78Aによって端板77Bに向けて押動されるブレーキ可動体78Bと、ブレーキ可動体78Bとブレーキハウジング77の端板77Bとの間に設けられ、後述のブレーキハブ80と一体に回転する複数枚の回転側ディスク78Cと、端板77Bとブレーキ可動体78Bとの間に位置してブレーキハウジング77内に設けられ各回転側ディスク78Cとに対して摩擦接触する複数枚の非回転側ディスク78Dと、ブレーキ可動体78Bをピストン78Aと一緒に制動力の解除方向に向けて付勢するばね部材(図示せず)とを含んで構成されている。
各回転側ディスク78Cは、内周側が後述のブレーキハブ80に対して廻止めされた状態で、かつ軸方向に移動可能に係合されている。また、各非回転側ディスク78Dは、外周側がブレーキハウジング77に対して廻止めされた状態で、かつ軸方向に移動可能に係合されている。
ここで、湿式ブレーキ78は、ダンプトラック51のオペレータがブレーキペダル(図示せず)を踏込み操作したときに、これに伴ってピストン78Aに供給される圧油によりブレーキ可動体78Bがばね部材の付勢力に抗して押動される。これにより、ブレーキ可動体78Bは、各回転側ディスク78Cを両側から挟むように各非回転側ディスク78Dを押圧し、車輪取付筒67と一体に回転するブレーキハブ80に対して制動力を付与する。一方、ブレーキペダルによる圧油の供給を停止すると、ブレーキ可動体78Bが付勢ばねによって押戻され、制動力は解除される。
また、湿式ブレーキ78は、制動時の摩擦熱が作用する各回転側ディスク78Cと各非回転側ディスク78Dとを冷却するための冷却液79中に浸漬して設けられている。冷却液79は、潤滑油75とは異なる種類の油液により構成されている。後述の第1フローティングシール83は、冷却液79がブレーキハウジング77の端板77Bとブレーキハブ80との間から外部に漏洩するのを防ぐ機能を有している。一方、後述の第2フローティングシール88は、後述のリテーナ82とブレーキハブ80との間に設けられ、潤滑油75と冷却液79とが混ざらないように遮断している。
ブレーキハブ80は、スピンドル63と湿式ブレーキ78との間を軸方向に延びる筒状体として形成されている。ブレーキハブ80は、車輪取付筒67と一体に回転する回転側ハウジングの一部を構成している。ブレーキハブ80の軸方向一側には、湿式ブレーキ78の各回転側ディスク78Cが廻止め状態で、軸方向に移動可能に係合している。ブレーキハブ80の軸方向他側は、車輪取付筒67の中空筒部67Aに複数のボルトを介して着脱可能に固定されている。
ブレーキハブ80の軸方向中間部には、ブレーキハウジング77の端板77Bに向けて径方向外側へと斜めに延びる外側シール受筒80Aと、後述のリテーナ82側に向けて径方向内側へと斜めに延びる内側シール受筒80Bとが設けられている。ブレーキハブ80の外側シール受筒80Aには、第1フローティングシール83が設けられ、内側シール受筒80Bには、第2フローティングシール88が設けられている。
ここで、ブレーキハウジング77のシール受筒77Cの軸方向端面77C1とブレーキハブ80の外側シール受筒80Aの軸方向端面80A1との間には、隙間81が形成されている。この隙間81をシールするために、ブレーキハウジング77とブレーキハブ80との間に第1フローティングシール83が設けられている。
リテーナ82は、スピンドル63の円形筒部63Bの外周面に嵌合して設けられ、固定側ハウジングの一部を構成している。リテーナ82には、ブレーキハブ80の内側シール受筒80Bに向けて径方向外側へと斜めに延びるシール受筒82Aが設けられている。シール受筒82Aには、第2フローティングシール88が設けられている。
ここで、リテーナ82のシール受筒82Aの軸方向端面とブレーキハブ80の内側シール受筒80Bの軸方向端面との間には、隙間が形成されている。この隙間をシールするために、リテーナ82とブレーキハブ80との間に第2フローティングシール88が設けられている。
第1フローティングシール83は、湿式ブレーキ78の冷却液79が外部に漏洩するのを防ぐ漏洩防止用のシールである。第1フローティングシール83は、隙間81をシールするためにブレーキハウジング77のシール受筒77Cとブレーキハブ80の外側シール受筒80Aとの間に設けられている。また、第1フローティングシール83は、例えば土砂、雨水等の異物が隙間81を通じて湿式ブレーキ78内に入り込むのを防止する機能も有している。
図10に示すように、第1フローティングシール83は、第1の実施形態によるフローティングシール27と同様に、外周面84Aと摺接面84Bを有する固定側シールリング84と、外周面85Aと摺接面85Bを有する回転側シールリング85と、固定側シールリング84とブレーキハウジング77のシール受筒77Cの内周面との間に挟持して設けられ、固定側シールリング84とシール受筒77Cとの間をシールすると共に固定側シールリング84に対して軸方向の押圧力を付与する固定側Oリング86と、回転側シールリング85とブレーキハブ80の外側シール受筒80Aの内周面との間に挟持して設けられ、回転側シールリング85と外側シール受筒80Aとの間をシールすると共に回転側シールリング85に対して軸方向の押圧力を付与する回転側Oリング87とにより構成されている。
第2フローティングシール88は、リテーナ82のシール受筒82Aの軸方向端面とブレーキハブ80の内側シール受筒80Bの軸方向端面との間の隙間をシールするために、ブレーキハブ80の内側シール受筒80Bとリテーナ82のシール受筒82Aとの間に設けられている。第2フローティングシール88は、軸受68、減速装置71側の潤滑油75と湿式ブレーキ78側の冷却液79とが混ざらないように分離(シール)している。第2フローティングシール88は、第1フローティングシール83よりも小型なこと以外は、同様の構成であるので構成の説明を省略する。
温度センサ89は、第1フローティングシール83の温度を検出する。温度センサ89は、第1フローティングシール83に対向するようにブレーキハウジング77のシール受筒77Cに設けられている。温度センサ89は、一例として、固定側シールリング84に変位可能に接触する接触部89Aと、この接触部89Aを固定側シールリング84に押付けるばね部材89Bとを含んで構成されている。
温度センサ89は、第1の実施形態による温度センサ33と同様に、図示しない制御装置の情報入力装置等に電気的に接続されている。そして、温度センサ89は、固定側シールリング84の温度を第1フローティングシール83全体の温度として検出し、この検出結果を制御装置に出力する。制御装置は、温度センサ89から入力された第1フローティングシール83の温度を、図11に示す温度Tmin3(またはTmin4)と比較して凍結の可能性があるか否かを判定し、適した情報を報知する。
第2の実施形態による走行装置60を備えたダンプトラック51は、上述の如き構成を有するもので、次に、ダンプトラック51の動作について説明する。
まず、ダンプトラック51のキャブ55に乗り込んだオペレータが、エンジン58を起動すると、油圧源となる油圧ポンプが回転駆動されると共に、発電機(いずれも図示せず)により発電が行われる。ダンプトラック51の走行時には、発電機から走行用モータ65に電力が供給されることにより、走行用モータ65が作動して回転軸66が回転する。
回転軸66の回転は、1段目の遊星歯車減速機構72の太陽歯車72Aから各遊星歯車72Cに減速されて伝達され、各遊星歯車72Cの回転は、内歯車72Bおよびカップリング73を介して2段目の遊星歯車減速機構74の太陽歯車74Aに減速されて伝達される。2段目の遊星歯車減速機構74では、太陽歯車74Aの回転が各遊星歯車74Cに減速されて伝達される。このとき、各遊星歯車74Cを支持するキャリア74Dは、筒状突出部74Eがスピンドル63の円形筒部63Bにスプライン結合されているため、各遊星歯車74Cの公転(キャリア74Dの回転)は拘束される。
これにより、各遊星歯車74Cは、太陽歯車74Aの周囲で自転のみを行い、車輪取付筒67に固定された内歯車74Bには、遊星歯車74Cの自転により減速された回転が伝達され、車輪取付筒67は、1段目の遊星歯車減速機構72と2段目の遊星歯車減速機構74とで2段階に減速された大出力の回転トルクをもって回転する。この結果、ダンプトラック51は、車輪取付筒67と一緒に駆動輪となる左右の後輪57を回転して走行することができる。
かくして、このように建設機械としてダンプトラック51を用いた第2の実施形態においても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
なお、第1の実施形態では、走行装置9を備えた油圧ショベル1に適用した場合を例示し、第2の実施形態では、走行装置60を備えたダンプトラック51に適用した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、走行装置を備えたホイールローダ、クレーン等の建設機械に広く適用することができる。