JP2022086174A - 神経障害の治療剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、神経障害の治療により有効な、間葉系幹細胞の培養上清を含む治療剤を提供することである。【解決手段】本発明は、神経障害の治療剤であって、前記治療剤は、間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養上清を含む治療剤であり、かつ、患者の神経への刺激付与と併用され、前記刺激は、神経損傷部、神経損傷部周辺、及び神経損傷部の機能を代償する部位からなる群から選択される1以上に優先的に付与される、治療剤を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、神経障害の治療剤に関する。
間葉系幹細胞や、その培養上清は、各種疾患の治療剤として応用されている。
特許文献1及び2には、間葉系幹細胞の投与と、リハビリテーションとの併用が神経疾患等の治療効果の向上をもたらし得ることが記載されている。
特許文献3には、歯髄幹細胞を無血清培養することによって得られた幹細胞培養上清を用いた損傷部治療について記載されている。
国際公開第2017/188457号 特表2013-508013号公報 日本特許第6296622号明細書
しかし、神経障害の治療効果の向上に対するさらなるニーズがある。
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、神経障害の治療により有効な、間葉系幹細胞の培養上清を含む治療剤の提供を目的とする。
本発明者らは、間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養上清の投与とともに患者の神経への刺激付与を併用すること、及び該刺激付与のタイミングや刺激を付与する部位を調整することで上記課題を解決できる点を見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
(1) 神経障害の治療剤であって、
前記治療剤は、間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養上清を含む治療剤であり、かつ、患者の神経への刺激付与と併用され、
前記刺激は、神経損傷部、神経損傷部周辺、及び神経損傷部の機能を代償する部位からなる群から選択される1以上に優先的に付与される、
治療剤。
(2) 神経障害の経鼻投与用治療剤であって、
前記治療剤は、間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養上清を含む治療剤であり、かつ、患者の神経への刺激付与と併用され、
前記刺激付与は、前記治療剤の投与前から投与後16時間までに行われる、
治療剤。
(3) 神経障害の静脈内投与用治療剤であって、
前記治療剤は、間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養上清を含む治療剤であり、かつ、患者の神経への刺激付与と併用され、
前記刺激付与は、前記治療剤の投与前から投与後3時間までに行われる、
治療剤。
(4) 神経障害の皮下投与用治療剤であって、
前記治療剤は、間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養上清を含む治療剤であり、かつ、患者の神経への刺激付与と併用され、
前記刺激付与は、前記治療剤の投与前から投与後16時間までに行われる、
治療剤。
(5) 前記刺激は、運動刺激、感覚刺激、電気刺激、磁気刺激、言語刺激、及び高次脳機能刺激からなる群から選択される1以上である、(1)から(4)のいずれかに記載の治療剤。
(6) 前記培養上清は、可溶性固形分量について希釈されていない又は濃縮されたものである、(1)から(5)のいずれかに記載の治療剤。
(7) 前記培養上清は、その凍結乾燥物を投与時に溶解させて用いられる、(1)から(5)のいずれかに記載の治療剤。
本発明によれば、神経障害の治療により有効な、間葉系幹細胞の培養上清を含む治療剤が提供される。
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
<治療剤>
本発明の神経障害の治療剤(以下、「本発明の治療剤」ともいう。)は、間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養上清を含む製剤であり、かつ、患者の神経への刺激付与と併用されるものであり、その使用態様において、以下の4態様を包含する。
本発明の治療剤は、以下の4態様のいずれか1つを備えるものでもよく、態様1と、態様2乃至4のうちのいずれかと、を組み合わせて備えるものであってもよい。
(態様1)刺激が、神経損傷部、神経損傷部周辺、及び神経損傷部の機能を代償する部位からなる群から選択される1以上に優先的に付与される態様。
(態様2)製剤が経鼻投与用治療剤である場合、刺激付与が、治療剤の投与前から投与後16時間までに行われる態様。
(態様3)製剤が静脈内投与用治療剤である場合、刺激付与が、治療剤の投与前から投与後3時間までに行われる態様。
(態様4)製剤が皮下投与用治療剤である場合、刺激付与が、治療剤の投与前から投与後16時間までに行われる態様。
幹細胞培養上清が神経疾患等の治療に有用であり得ることは従来知られていた(例えば、特許文献3)。
しかし、本発明者の検討の結果、間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養上清の投与と、患者の神経への刺激付与と、を併用することで、特に治療効果が高まることを見出した。
さらに、本発明者は、患者の神経へ付与する刺激は神経損傷部、神経損傷部周辺、及び神経損傷部の機能を代償する部位からなる群から選択される1以上に優先的に付与すると特に治療効果が高いという意外な知見も見出した。
さらにまた、本発明者は、培養上清の投与経路に応じて、刺激付与のタイミングを調整することで、治療効果をより高められるという意外な知見も見出した。
本発明によって神経障害の治療効果が高まる理由は、刺激を付与する部位、及び/又は、刺激付与のタイミングを上記のように調整することによって、培養上清に含まれる有効成分等が患部(神経損傷部等)に移行しやすくなり、培養上清による効果が促進されるためであると推察される。
本発明において「神経障害」とは、神経自体やその機能を損なう任意の障害を意味し、その原因疾患や、神経の損傷部位等は特に限定されない。
神経障害の原因疾患としては特に限定されず、神経障害をもたらす任意の疾患が挙げられる。これらの疾患としては、例えば、脳血管疾患、脳腫瘍、脳炎、認知症、神経変性疾患、脊髄損傷、脊髄炎、椎間板ヘルニア、及び、その他の中枢神経疾患や末梢神経障害等が挙げられる。
本発明において「神経障害の治療」とは、神経障害にともなう諸症状(運動障害、構音障害、嚥下障害、高次脳機能障害、認知症、失語症、パーキンソン症候群、運動失調、感覚障害、痛み、冷え、しびれ、ほてり等)が緩和、又は完治することを意味する。
神経障害の治療効果が奏されたかどうかは、NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)、mRS(modified Rankin scale)、AIS(ASIA Impairment Scale)、Frankel分類、SIAS(Stroke Impairment Assessment)、BRS(Brunnstrom stage)、FMA(Fugl Meyer Assessment)、MMT(manual muscle testing)、FMA(Fugl Meyer Assessment)、標準失語症検査(SLTA)、WAB失語症検査、トークン検査、MMSE(Mini-Mental State Examinaton)等の公知の基準や方法に基づき評価される。
本発明において「患者」とは、神経障害を発症している任意の生物を意味する。例えば、ヒト、サル、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ等の哺乳類、鳥類又は爬虫類、その他の任意の愛玩動物等が挙げられる。
以下、本発明の治療剤の構成について詳述する。
(間葉系幹細胞、間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養上清)
本発明の治療剤は、間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養上清(以下、「本発明における培養上清」ともいう。)を含む。
本発明の治療剤は、間葉系幹細胞の培養上清、及び、間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養上清の両方を含んでいてもよく、いずれか片方を含んでいてもよい。本発明の治療剤が間葉系幹細胞の培養上清、及び、間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養上清の両方を含む場合、それらの混合割合は特に限定されず、得ようとする治療効果等に応じて適宜調整される。
本発明において用いる間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell、MSC)は、間葉に由来し、自己複製能及び分化能を有する体性幹細胞であれば、その調製方法や由来する組織等は特に限定されない。
本発明において、「間葉系幹細胞に分化可能な細胞」とは、通常分裂増殖によって間葉系幹細胞に分化可能な細胞を意味する。このような細胞は、自己複製能、及び多様な細胞に分化できる分化万能性を併せ持つ。
間葉系幹細胞に分化可能な細胞の例としては、IPS細胞(Induced Pluriopotent Stem Cells)、ES細胞(Embryonic Stem Cells)等が挙げられる。
間葉系幹細胞、及び間葉系幹細胞に分化可能な細胞は、骨髄、脂肪、歯髄、血液(末梢血、臍帯血等)、胎盤、臍帯、その他体内の組織から単離されたものであってもよい。
間葉系幹細胞、及び間葉系幹細胞に分化可能な細胞は、投与しようとする患者の細胞(自家細胞)に由来するものであってもよく、該患者以外の細胞(他家細胞)に由来するものであってもよい。
間葉系幹細胞は、ES細胞から分化誘導された細胞、誘導多能性幹細胞(iPS細胞等)から分化誘導された細胞、株化細胞、Muse細胞(Multi-lineage differentiating Stress Euduring Cell)等であってもよい。
間葉系幹細胞としては、通常、分化マーカー(CD24等)が陰性である未分化状態を維持した細胞が使用される。
間葉系幹細胞は、各種マーカー発現が以下のいずれかを満たすものであってもよい。
・ CD73、CD90、CD105、及びCD200から選ばれる少なくとも1以上が陽性である。
・ CD19、CD34、CD45、CD74、CD79α、及びHLA-DRから選ばれる少なくとも1以上が陰性である。
間葉系幹細胞は、好ましくはCD73、CD90、CD105、及びCD200の2以上が陽性であり、CD19、CD34、CD45、CD74、CD79α、及びHLA-DRの4以上が陰性であるもの、より好ましくはCD73、CD90、CD105、及びCD200が陽性であり、CD19、CD34、CD45、CD74、CD79α、及びHLA-DRが陰性であるものが好ましい。
間葉系幹細胞としては、各種疾患の治療に応用可能であることが報告された間葉系幹細胞が挙げられ、例えば、国際公開第2017/188457号、国際公開第2009/002503号、特表2013-508013号公報等に記載された間葉系幹細胞等が挙げられる。
間葉系幹細胞としては特に限定されないが、間葉系幹細胞の調製方法として知られる任意の方法を採用できる。
好ましい調製方法としては、日本国特許第4061487号に記載された方法が挙げられる。この方法は、新鮮骨髄細胞を培養皿に添加して、培養皿に付着して増殖する工程、得られた細胞の一部を再度培養皿上で増殖させる工程等を含む。
本発明における培養上清は、上記の間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞を培養することで得られる。
本発明における培養上清を得る際に、使用する培地や、培養条件は特に限定されず、間葉系幹細胞や間葉系幹細胞に分化可能な細胞の種類等に応じて適宜選択できる。
間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養に用いる培地としては、DMEM培地、RPMI1640培地、HamF12培地、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
培地には、幹細胞の培養において使用される成分(各種血清、ウシ血清アルブミン、抗生物質、ビタミン、ミネラル等)が含まれていてもよい。
間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養後、得られた培養物から適宜細胞を必要に応じて処理し、本発明における培養上清が得られる。
このような処理としては、細胞の除去(濾過等による)、濃縮、凍結、乾燥、希釈等の通常知られる工程が挙げられる。
本発明における培養上清は、間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養物から細胞を除去したものが好ましい。
本発明者は、培養上清中の可溶性固形分量(有効成分(タンパク質等)等の含有量)が同一の場合、培養上清全体の量がより少ないほど(可溶性固形分量の濃度が高いほど)、本発明の効果を奏しやすいことを見出した。
したがって、本発明における培養上清は、間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養後、可溶性固形分量について希釈(培地、生理食塩水等による)されていないもの、又は、可溶性固形分量について濃縮(限外濾過等による)されたものが好ましい。
特に限定されないが、可溶性固形分量は0.02~200mg/mLであってよい。
間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の単離や培養は、市販のキットを用いてもよい。
本発明の治療剤において、本発明における培養上清の投与量や、投与回数は、得ようとする効果や、投与対象である患者の状況(年齢、体重、症状の程度等)に応じて適宜調整できる。
本発明の治療剤は、本発明における培養上清の投与方法や、投与回数等に応じて、1回あたりの投与に要する時間を調整することが出来る。
本発明に係る培養上清の投与及び刺激付与の組み合わせの実施頻度は特に限定されないが、それぞれ1回ずつ行ってもよく、2回以上繰り返して行ってもよい。2回以上繰り返して行う場合、数週間(例えば1週間)以上~数ヶ月(例えば36ヶ月)にわたって実施してもよい。
培養上清の投与回数及び刺激付与回数は同じであってもよく、異なっていてもよい。
(治療剤の形態)
本発明の治療剤には、投与方法等に応じて、従来知られる成分を配合できる。
本発明の治療剤は、経鼻投与用治療剤、静脈内投与用治療剤、及び皮下投与用治療剤のいずれかであり得る。
本発明の治療剤が、経鼻投与用治療剤である場合、本発明における培養上清とともに、媒体(生理緩衝液、滅菌水、生理食塩水、ブドウ糖液、培地)や、経鼻投与用治療剤に配合されることが知られる成分(乳化剤、界面活性剤、安定化剤等)が必要に応じて配合されていてもよい。
本発明の治療剤が、静脈内投与用治療剤である場合、本発明における培養上清とともに、媒体(生理緩衝液、滅菌水、生理食塩水、ブドウ糖液、培地)や、静脈内投与用治療剤に配合されることが知られる成分(乳化剤、界面活性剤、安定化剤等)が必要に応じて配合されていてもよい。
本発明の治療剤が、静脈内投与用治療剤である場合、通常、注射又は点滴を介して投与される。
本発明の治療剤が、皮下投与用治療剤である場合、本発明における培養上清とともに、媒体(生理緩衝液、滅菌水、生理食塩水、ブドウ糖液、培地)や、静脈内投与用治療剤に配合されることが知られる成分(乳化剤、界面活性剤、安定化剤等)が必要に応じて配合されていてもよい。
本発明の治療剤の保存方法は特に限定されないが、凍結保存、凍結乾燥、冷蔵保存等が挙げられる。凍結保存された治療剤は解凍することで治療に用いられる。凍結乾燥された治療剤は媒体(生理緩衝液、滅菌水、生理食塩水、ブドウ糖液、培地)に溶解させて治療に用いられる。
本発明の治療剤は、本発明における培養上清の凍結乾燥物を溶解させた溶液を含むことが好ましい。溶液の溶媒は、生理緩衝液、滅菌水、生理食塩水、ブドウ糖液、培地等が挙げられる。
本発明の治療剤は、単回分又は複数回分の用量ごとに容器(バイアル等)に小分けされていてもよい。
利便性等の観点から、本発明における培養上清は、用量ごとに容器に小分けされた状態で凍結保存されたものが好ましい。
(刺激付与)
本発明の治療剤は、患者の神経への刺激付与とともに併用され、該刺激付与は以下の4要件のうち1つ、又は要件1と、要件2乃至4のいずれかと、を組み合わせて満たす。
(要件1)刺激が、神経損傷部、神経損傷部周辺、及び神経損傷部の機能を代償する部位からなる群から選択される1以上に優先的に付与される。
(要件2)製剤が経鼻投与用治療剤である場合、刺激付与が、治療剤の投与前から投与後16時間までに行われる。
(要件3)製剤が静脈内投与用治療剤である場合、刺激付与が、治療剤の投与前から投与後3時間までに行われる。
(要件4)製剤が皮下投与用治療剤である場合、刺激付与が、治療剤の投与前から投与後16時間までに行われる。
投与された本発明における培養上清が患部(脳等の神経損傷部位等)やその周辺に残存する間に、患部への血流量等が増加したり、同部の代謝量が増加したりすると、本発明における培養上清が患部に移行し、治療効果を効率的に高めることが出来る。その具体的手法が上記要件1乃至4である。
上記要件1を満たす態様で本発明の治療剤を使用する場合、任意のタイミング(好ましくは要件2乃至4のいずれかを満たすタイミング)で刺激(後述する運動刺激、感覚刺激、電気刺激、磁気刺激、言語刺激、及び高次脳機能刺激等)を付与する。
上記要件1)を満たすように刺激付与を行うことで、患部(神経損傷部位等)の血流量や同部の代謝量が他の神経領域よりも優先的に増加するので、患部に移行する本発明における培養上清の量を増やすことが出来る。
上記要件2乃至4のいずれかを満たす態様で本発明の治療剤を使用する場合、治療剤のこれらの要件に規定される投与期間内に、刺激(全身運動、局部運動や、後述する運動刺激、感覚刺激、電気刺激、磁気刺激、言語刺激、及び高次脳機能刺激等)を付与する。
上記要件2乃至4のいずれかを満たすように刺激付与を行うことで、血中や脳脊髄液中の本発明における培養上清の残存量が多いタイミングで、患部(脳等)への血流量が増えたり同部の代謝量が増加したりすることで、患部に移行する本発明における培養上清の量を増やすことが出来る。
上記要件2乃至4において、「刺激付与が、治療剤の投与前に行われる」とは、刺激付与の開始時点が治療剤の投与開始時点よりも前であることを意味する。
上記要件2乃至4において、「刺激付与が、治療剤の投与後n時間までに行われる」とは、刺激付与の開始時点が、治療剤の投与開始時点からn時間経過した時点よりも前であることを意味する。
上記要件2において、本発明の効果が奏されやすいという観点から、刺激付与は、好ましくは、治療剤の投与前から投与後10時間までに行われる。
かかる場合、特に本発明の効果が奏されやすいという観点から、本発明における培養上清を経鼻投与した後、刺激付与は、治療剤の投与から投与後3時間までに行われることが好ましい。
上記要件2において、本発明の効果が奏されやすいという観点から、好ましくは経鼻投与の直後~1時間後の時点、より好ましくは経鼻投与の5分後~1時間後の時点、最も好ましくは経鼻投与の30分後~1時間後の時点で刺激付与を行うことが好ましい。
上記要件2において、経鼻投与の直後~1時間後の時点で刺激付与を行うことが好ましい理由は以下のとおりである。
投与された本発明における培養上清は、通常、投与直後から血中濃度や脳脊髄液中濃度は高まる。次いで、血中では24時間程度、脳脊髄液中では12時間程度で培養上清濃度は急激に下がり、投与24時間後には患部(脳等)中で検出不能なレベルまで低下する。
経鼻投与の場合、培養上清が脳脊髄液中に移行する経路としては、血中を介する以外にも、より早期の直接的な移行経路、すなわち、投与された培養上清が鼻粘膜上皮細胞を透過した後、嗅神経束周辺の脳脊髄液に達し、さらにクモ膜下腔の脳脊髄液に移行するという移行経路がある。
このような経路を経て、培養上清は、例えば投与後15分~30分程度で脳脊髄液濃度が血中濃度の数十倍以上に高まる。なお、脳脊髄液と脳組織の間には物質の移行障壁が存在しないことから、脳脊髄液中の薬物(培養上清)量は、脳組織の細胞外液における薬物(培養上清)量に相当し得る。
したがって、経鼻投与の直後~1時間後の時点は、脳組織の細胞外液における薬物量が最も高いタイミングであるため、この時点で刺激付与を行うことで、より効率的に本発明の効果を奏することができる。
上記要件2の別の態様において、本発明の効果が奏されやすいという観点から、睡眠前(例えば、睡眠0~3時間前)に本発明における培養上清を経鼻投与し、睡眠後(例えば、覚醒直後~覚醒5時間後)に刺激付与を行ってもよい。
睡眠をとることで、培養上清(上清液)の血中濃度及び脳脊髄液濃度は高まると考えられる。また、睡眠刺激にて神経回路の再合成が起きやすくなる。以上のことから、経鼻投与後に睡眠刺激を併用することで、より効率的に本発明の効果を奏することができる。
上記要件2において、刺激付与の開始に関わらず、培養上清を経鼻投与後鼻腔内にできるだけ留めやすくするため、投与後少なくとも15分~30分程度、臥位の状態を保ってもよい。また、投与直後から短時間(例えば、1時間以内)の睡眠状態に移行してもよい。
上記要件2において、特に好ましい態様は以下のとおりである。
本発明における培養上清を経鼻投与した直後に任意の刺激(好ましくは、臥位の状態での磁気刺激)を、例えば1~20分かけて付与する。刺激付与中、睡眠状態に移行してもよい。刺激付与後、別の任意の刺激(好ましくは、運動刺激)をさらに付与してもよい。
刺激付与中、睡眠状態に移行する場合には、入眠前に経鼻投与を行ない、できるだけ速やかに(例えば、投与後1時間以内)入眠することが好ましい。
上記態様において、経鼻投与は1回、又は2回以上行ってもよく、例えば、睡眠状態に移行する前や、刺激付与の直前に行ってもよい。
上記要件3において、本発明の効果が奏されやすいという観点から、刺激付与は、好ましくは、治療剤の投与前から投与後1時間までに行われる。
上記要件4において、本発明の効果が奏されやすいという観点から、刺激付与は、好ましくは、治療剤の投与前から投与後10時間、より好ましくは投与後4時間、さらに好ましくは投与後3時間までに行われる。
本発明において「刺激」とは、刺激を付与した部位へ、生理的変化(電気的変化、血流量の変化、代謝量の変化等の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上)をもたらすものを意味する。本発明において付与される刺激の強さは、得ようとする効果や、投与対象である患者の状況(年齢、体重、症状の程度等)に応じて適宜調整できる。
本発明において「患者の神経への刺激付与」とは、刺激付与が、患者の身体の全体又は一部に対して刺激を付与することで神経に任意の反応を生じさせることを意味する。ただし、神経に隣接する任意の組織等へも刺激が付与される態様は排除されない。患者への刺激付与は、神経における1箇所のみで行ってもよく、複数箇所で行ってもよい。
本発明の刺激の付与は、本発明の治療剤の投与前、投与中、投与後のいずれか1以上の時点で行ってもよい。
患者に付与される刺激の種類は、神経への刺激を実現できるものであれば特に限定されない。本発明による治療効果を高めやすいという観点から、刺激は、運動刺激、感覚刺激、電気刺激、磁気刺激、言語刺激、及び高次脳機能刺激からなる群から選択される1以上であることが好ましい。
1つの刺激付与手段によって、これらの刺激のうちの1つ又は複数を同時に付与し得る。例えば、随意運動介助型電気刺激装置によれば、運動刺激、感覚刺激(体性感覚刺激)、及び電気刺激を同時に患者へ付与し得る。ロボット補助訓練装置(例えば、「ロボットスーツHAL」(商標))を併用すれば、運動刺激、感覚刺激を同時に患者へ付与し得る。
[運動刺激]
本発明において「運動刺激」とは、患部を対象とした運動刺激を意味する。ただし、患部を対象とした運動刺激としては、全身運動(トレッドミル等を用いた運動等)をともなう運動刺激を排除しない。
運動刺激としては、目的とする神経路への刺激量を高めるために、神経筋促通法(PNF法、ブルンストローム法、ボバース法等)を併用した態様、川平法(促通反復療法)、Arm Basisis training等の集中した反復運動刺激である態様、非麻痺側拘束運動療法(CI療法:Constrain-Induced Movement Therapy)等の強制的に運動刺激を行わせる態様、付与する刺激を運動刺激だけでなく感覚刺激、電気刺激、磁気刺激を併用する態様が挙げられる。
また、ロボット補助訓練装置(例えば、「ロボットスーツHAL」(商標))を用いることで、反復した運動刺激、感覚刺激を同時に患者へ付与し得る。
例えば、嚥下障害患者に付与する刺激としては、任意の運動刺激と、嚥下訓練との併用が好ましい刺激として挙げられる。
構音障害患者に対しては、任意の運動刺激と、構音訓練との併用が好ましい刺激として挙げられる。
運動刺激は、運動神経経路への刺激である。
運動神経経路とは、運動情報を、上位運動ニューロン(大脳皮質一次運動野や脳幹から始まる)から下位運動ニューロンに伝える経路である。この経路には、外側皮質脊髄路、赤核脊髄路、網様体脊髄路、前庭脊髄路、視蓋脊髄路、皮質延髄路等がある。
また、運動神経経路は、下位運動ニューロンにシナプスし、その軸索が末梢神経となって伸び、錐外筋線維にシナプスすることで目的とする筋肉を収縮させ運動を起こす。
なお、一次運動野は運動前野、補足運動野、帯状皮質運動野、視床、一次体性感覚野、上頭頂小葉等からの調節を受けており、絶えず運動神経経路及び感覚神経経路が調節し合いながら働く。
[感覚刺激]
本発明において「感覚刺激」とは、神経障害に関連する感覚(視覚、聴覚、触覚等)のいずれかに対する刺激を意味する。本発明の効果を奏しやすいという観点から、本発明における感覚刺激としては、体性感覚刺激、聴覚刺激、及び視覚刺激が好ましい。
本発明において「体性感覚刺激」とは、皮膚感覚、深部感覚、及び内臓感覚の総称を意味する。具体的には、皮膚、粘膜、関節、筋、及び腱等から得られる感覚(痛覚、温度(低温~高温)覚、触圧覚等)が挙げられる。
体性感覚刺激を患者に付与する手段としては特に限定されないが、触圧、鍼灸、温熱、重錘、振動等が挙げられる。
触圧としては、神経障害を有する部位(手、足等)に対するリハビリテーション(例えば、視覚的に障害を有する部位を確認しながら行うマッサージ)等が挙げられる。
鍼灸としては、針や灸(モグサの燃焼)を用いた方法が挙げられる。
温熱としては、灸(モグサの燃焼)やホットパック、水治等を用いた方法が挙げられる。
重錘としては、リハビリテーションに用いられる軽度な抵抗運動を行うための重錘バンドを用いた方法が挙げられる。
振動としては、バイブレーションを用いた方法が挙げられる。
本発明において「聴覚刺激」とは、音によって付与される刺激を意味する。音としては特に限定されないが、ヒト等の声、任意の音楽(一定の律動的なリズム等)等が挙げられる。
聴覚刺激を患者に付与する手段としては特に限定されないが、リズム聴覚刺激(Rhythmic Auditory Stimulation、RAS)等であってもよい。
本発明において「視覚刺激」とは、視覚情報によって付与される刺激を意味する。視覚情報としては特に限定されないが、空間に存在する任意の情報(文字、絵、映像等)が挙げられる。
視覚刺激を患者に付与する手段としては特に限定されないが、機能訓練(視覚探索課題、視覚走査訓練等)、日常生活動作(食事、更衣、排泄、整容、入浴、読書、絵画等)、プリズムアダプテーション等が挙げられる。
感覚刺激は、通常、体性感覚(皮膚、粘膜、関節、筋、腱等から得られる感覚)への刺激である。
体性感覚としては、大別して4つのモダリティ(痛覚、温度覚、触圧覚、深部(固有)知覚)があり、それぞれの受容のために特殊化した感覚受容器、神経線維、伝導路等が使われている。
体性感覚が大脳皮質に至る感覚神経経路は明らかにされており、例えば、以下の経路が知られている。
深部感覚・精細な触圧覚:後索-内側毛様体路経系を通る(受容器→1次ニューロン(脊髄に入り、同側後索を上行、同側延髄後索核に終止)→ニ次ニューロン(交差し対側内側毛帯を上行、対側視床VPLに終止)→三次ニューロン(対側大脳皮質体性感覚野)に至る。)。
温痛覚・粗大な触圧覚:脊髄視床路を通る(受容器→1次ニューロン(脊髄に入り、脊髄後角に終止)→ニ次ニューロン(交差し対側前側索を上行、対側脊髄視床路を上行、対側視床VPLに終止)→三次ニューロン(対側大脳皮質体性感覚野)に至る。)。
[電気刺激]
本発明において「電気刺激」とは、電流を用いて電気的に与えられる刺激を意味する。例えば、患部へ電極を貼り、電気(低周波、中周波、高周波、干渉波等)で神経回路を興奮させる刺激が挙げられる。
電気刺激を患者に付与する手段としては特に限定されないが、随意運動介助型電気刺激装置(IVES等)を利用した方法や、電流刺激療法として従来知られる方法(経皮的電気刺激(transcutaneous electrical nerve stimulation、TENS)法、機能的電気刺激(functional electrical stimulation、FES)法、治療的電気刺激(therapeutic electrical stimulation、TES)法、経頭蓋直流電気刺激(Transcranial Direct Current Stimulatiuon、tDCS)、脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation、DBS)法等)を用いてもよい。
電気刺激とは、通常、麻痺した四肢に対して電極を貼り、低周波、中周波、高周波、干渉波等による刺激によって、神経回路を繰り返し興奮させるものである。
電気刺激によって神経回路を興奮させることで、ゲートコンロール理論で説明されるような疼痛閾値を上昇させたり、運動閾値を低下させて麻痺肢を動かしやすくさせたりすることが出来る。
[磁気刺激]
本発明において「磁気刺激」とは、静磁石又は電磁石を用いて磁気的に与えられる刺激を意味する。
磁気刺激を患者に付与する手段としては特に限定されないが、磁気刺激として従来知られる方法(例えば、経頭蓋磁気刺激(Transcranial Magnetic Stimulation、TMS)、微弱な電流で刺激する経頭蓋直流電気刺激(Transcranial Direct Current Stimulatiuon:tDCS)、電極を脳深部に入れ神経系に持続的に電気刺激を加えその機能の制御治療を行う脳深部刺激療法(Deep Brain Stimulation:DBS))等を用いてもよい。
なお、TMSでは抑制性に作用する低頻度rTMS(1Hz以下)や、興奮性に作用する高頻度rTMS(5Hz以上)のような古典的rTMS手法が代表的であるが、50Hzの3連発刺激からなるburst刺激を5Hzの頻度で実施する「theta burst stimulation(TBS)」を用いてもよい。間欠的TBS(iTBS:intermittent TBS)では、シーターバースト刺激(50Hzの3連発刺激を5Hz)を2秒間行い、8秒間休止する方法でパルス刺激を行うと運動野の興奮性を亢進する。また、持続的TBS(cTBS: continuous TBS)では、シーターバースト刺激(50Hzの3連発刺激を5Hz)を連続的に行う方法で運動野の興奮性を抑制する。つまり、TBSは連続的に行うと抑制作用を奏し、断続的に行うと興奮性作用を奏する。TBSは低頻度又は高頻度のrTMSよりも弱い刺激強度で実施でき、作用時間がより持続する特徴がある。
[言語刺激]
本発明において「言語刺激」とは、言語を介したコミュニケーションによって与えられる刺激を意味する。
言語刺激を患者に付与する手段としては特に限定されないが、読む、書く、描く、聞く、話す、復唱する、計算する等の行動を患者に促すことが挙げられる。
言語刺激とは、通常、言語に関係する脳部位(ブローカ野、ウェルニッケ野、左角回(ブロードマンの39野)、左縁上回(ブロードマンの40野)、小脳、視床、大脳基底核等)への刺激である。
[高次脳機能刺激]
本発明において「高次脳機能」とは、認知過程(知覚、記憶、学習、思考、判断等)と行為の感情(情動)を含めた精神(心理)機能の総称である。
本発明において「高次脳機能刺激」とは、記憶訓練、注意訓練、遂行機能訓練、社会的行動訓練を意味する。
高次脳機能刺激を患者に付与する手段としては特に限定されないが、記憶訓練、注意訓練、遂行機能訓練、社会的行動訓練等を患者に促すことが挙げられる。
高次脳機能刺激とは、刺激の付与対象が前頭葉機能等である場合、通常、最下層から覚醒→抑制・発動性→注意力と集中力→情報処理→記憶→遂行機能・論理的思考の様にピラミッド状の階層性(「総合リハビリテーション2006年5月号(医学書院)」)のいずれかの段階への刺激である。
[その他の刺激]
本発明における「刺激」は上記のほか、患者の生理的変化をもたらし得る任意の刺激を包含する。
例えば、刺激付与が、治療剤の投与前から投与後6時間までに行われる態様である場合、刺激は全身運動等であってもよい。
[刺激の確認及び評価]
本発明において、患者に刺激が付与されたかどうかやその強さは、患者における生理的変化の有無や程度によって特定される。
刺激付与に関する指標となる生理的変化としては、電気的変化、血流量の変化、代謝量(酸素等の代謝量)の変化等が挙げられる。通常、付与された刺激が強いほど、これらの生理的変化の変化量は大きくなる。例えば、付与された刺激が強いほど、脳の血流量及び代謝量が増える。
電気的変化は、例えば、頭皮脳波(electroencephalography、EEG)、脳磁図(Magnetoencephalography、MEG)等の非侵襲的脳機能計測法によって特定される。
血流量の変化は、例えば脳の血流量の変化について、機能的MRI(functional magnetic resonance imaging)、SPECT(single photon emission CT)等の非侵襲的脳機能計測法によって特定される。
脳の血流変化及び酸素代謝量の変化は、光トポグラフィー、PET(Positron Emission Tomography)検査等によって特定される。
[刺激付与のタイミング]
刺激付与は、本発明において規定される期間内の任意の時点で、1回又は複数回行ってもよい。ただし、本発明において規定される期間以降の時点でも刺激付与を行うことは排除されない。
刺激付与を治療剤の投与前に行う場合、刺激の種類や、患者の状況等に応じて、刺激付与のタイミングは適宜設定できる。
刺激の種類に応じて、刺激付与から患部(神経損傷部位等)への血流量及び代謝量が増加するまでの時間や、血流量及び代謝量増加の維持時間が異なる可能性がある。したがって、治療剤の投与のタイミングが、患部の血流量及び代謝量がより高いタイミングと重なるように調整することが好ましい。
具体的には、刺激が感覚刺激や言語刺激である場合、刺激が電気刺激や磁気刺激である場合よりも、刺激付与から患部への血流量が増加したり、代謝量が増加したりするまでの時間が長くなる傾向にある。
そのため、刺激が感覚刺激や言語刺激である場合、刺激付与から治療剤投与までの間を長めに設定、又は、治療剤投与から刺激付与までの間を短めに設定することが好ましい。
他方で、刺激が電気刺激や磁気刺激である場合、刺激付与から治療剤投与までの時間を短めに設定することが好ましく、また、治療剤投与から刺激付与までの間を長めに設定することが出来る。
[刺激を付与する部位]
刺激が、神経損傷部、神経損傷部周辺、及び神経損傷部の機能を代償する部位からなる群から選択される1以上に優先的に付与される場合、刺激付与がこれらの部位以外に付与されることは排除されない。
本発明において「(所定の部位に)優先的に付与される」とは、刺激付与を開始する際に、神経損傷部、神経損傷部周辺、及び神経損傷部の機能を代償する部位のうち少なくとも1以上に対して最初に刺激付与を行うことを意味する。
本発明において「神経損傷部」とは、神経の損傷(萎縮、神経遮断、離断、断裂、欠損、脳損傷、脊髄損傷等)が生じた部位そのものを意味する。通常、神経損傷部は神経障害の病因である。
本発明において「神経損傷部周辺」とは、神経損傷部そのものではないが神経損傷部の周辺の部位(例えば、神経損傷部位の周囲を取り囲む部位や神経損傷部位に近接した部位)を意味する。
本発明において「神経損傷部の機能を代償する部位」とは、神経損傷部の機能を代償しようと働く部位(例えば、第一次運動野が障害を受けた場合は、患側の周辺部の右頭頂葉及び健側の第一次運動野、運動前野、補足運動野等)を意味する。
患者への刺激付与が行われる部位としては、例えば、頭部(脳等)、顔面、眼、耳、口、上肢、下肢、体幹、構音器官、嚥下器官等が挙げられる。
刺激を付与し得る部位や、刺激の付与方法について、刺激の種類ごとに以下に例示する。
[運動刺激の付与例]
右側一次運動野(手指支配部)が神経損傷した場合、「神経損傷部」とは、右側一次運動野(手指支配部)である。
右側一次運動野(手指支配部)が神経損傷した場合、「神経損傷部周辺」とは、損傷を免れた右側一次運動野(手指支配部以外)~運動前野、補足運動野、右側一次感覚野等である。
右側一次運動野(手指支配部)が神経損傷した場合、「神経損傷部の機能を代償する部位」とは、右側頭頂葉、左側一次運動野~運動前野、補足運動野等である。
右側一次運動野(手指支配部)が神経損傷した場合、麻痺している左手指を動かそうとすることで神経損傷部への刺激を優先的に与えることが出来る。
右側一次運動野(手指支配部)が神経損傷した場合、麻痺している左手指に近接する部位(損傷を免れた左手指、左手首等)を動かそうとすることで、神経損傷部周辺に優先的に刺激を与えることが出来る。
右側一次運動野(手指支配部)が神経損傷した場合、麻痺している左手指を使用する各種課題や粗大な動作を促すことで、神経損傷部の機能を代償する部位へ優先的に刺激を与えることが出来る。
[感覚刺激の付与例]
右側一次感覚野(三次ニューロン)が神経損傷した場合、「神経損傷部」とは右側一次感覚野である。
右側一次感覚野(三次ニューロン)が神経損傷した場合、「神経損傷部周辺」とは、損傷を免れた右側一次感覚野~右側一次運動野等である。
右側一次感覚野(三次ニューロン)が神経損傷した場合、「神経損傷部の機能を代償する部位」とは、左側一次感覚野、一次感覚野と連絡する二次体性感覚野、頭頂葉連合野、運動野、視覚野等である。
右側一次感覚野(三次ニューロン)が神経損傷した場合、感覚障害のある患部に感覚刺激を与えることで神経損傷部への刺激を優先的に与えることが出来る。
右側一次感覚野(三次ニューロン)が神経損傷した場合、感覚障害のある部位に近接する部位に刺激を与えることで神経損傷部周辺部に優先的に刺激を与えることが出来る。
右側一次感覚野(三次ニューロン)が神経損傷した場合、感覚障害のある部位や周辺に感覚刺激を与える際に患者に目で見て確認させたり、健側と同時に同程度の感覚刺激を与えたりすることで、神経損傷部の機能を代償する部位へ優先的に刺激を与えることが出来る。
[電気刺激の付与例]
右側第二指が神経損傷した場合、「神経損傷部」とは右側第二指である。
右側第二指が神経損傷した場合、「神経損傷部周辺」とは、神経損傷を免れた右側第一、三、四、及び五指等である。
右側第二指が神経損傷した場合、「神経損傷部の機能を代償する部位」とは、右側手首、前腕、上腕、及び肩等である。
右側第二指が神経損傷した場合、神経損傷部である右第二指への電気刺激を与えることで神経損傷部への刺激を優先的に与えることが出来る。
右側第二指が神経損傷した場合、神経障害のある右第二指に近接する右側第一、三、四、又は五指に電気刺激を与えることで神経損傷部周辺部に優先的に刺激を与えることが出来る。
右側第二指が神経損傷した場合、右側手首、前腕、上腕、又は肩に電気刺激を与えることで、神経損傷部の機能を代償する部位へ優先的に刺激を与えることが出来る。
[磁気刺激の付与例]
右側一次運動野(手指支配部)が神経損傷した場合、「神経損傷部」とは右側一次運動野(手指支配部)である。
右側一次運動野(手指支配部)が神経損傷した場合、「神経損傷部周辺」とは、損傷を免れた右側一次運動野(手指支配部以外)~運動前野、補足運動野、右側一次感覚野等である。
右側一次運動野(手指支配部)が神経損傷した場合、「神経損傷部の機能を代償する部位」とは、右側頭頂葉、左側一次運動野~運動前野、補足運動野等である。
右側一次運動野(手指支配部)が神経損傷した場合、右側一次運動野(手指支配部)に興奮性磁気刺激(高頻度rTMS〈5Hz以上〉あるいは間欠的TBS等)を与えることで神経損傷部への刺激を優先的に与えることが出来る。
右側一次運動野(手指支配部)が神経損傷した場合、神経損傷部に近接する部位である右側一次運動野(手指支配部以外)~運動前野、補足運動野、右側一次感覚野に興奮性磁気刺激を与えることで神経損傷部周辺部に優先的に刺激を与えることが出来る。
右側一次運動野(手指支配部)が神経損傷した場合、右側頭頂葉に対して興奮性磁気刺激を与えることで、神経損傷部の機能を代償する部位へ優先的に刺激を与えることが出来る。
また、左側一次運動野に抑制性磁気刺激(低頻度rTMS〈1Hz以下〉あるいは持続的TBS)を与えることで、左側大脳から右側大脳にかかる活動の抑制(半球間抑制)を低下させ、結果的に、神経損傷部(右側一次運動野〈手指支配部〉)、周辺部(右側一次運動野〈手指支配部以外〉~運動前野、補足運動野、右側一次感覚野)、代償部(右側頭頂葉)を抑制から開放し、それらの血流や興奮性を上げることが出来る。
[言語刺激の付与例]
ウェルニッケ野が神経損傷した場合、「神経損傷部」とはウェルニッケ野である。
ウェルニッケ野が神経損傷した場合、「神経損傷部周辺」とは、神経損傷を免れたウェルニッケ野、ブローカ野、及び両者を結ぶ伝導路(弓状束)を含む言語回路等である。
ウェルニッケ野が神経損傷した場合、「神経損傷部の機能を代償する部位」とは、左角回(ブロードマンの39野)、左縁上回(ブロードマンの40野)、小脳、視床、大脳基底核等である。
ウェルニッケ野が神経損傷した場合、感覚性言語刺激を与えることで神経損傷部への刺激を優先的に与えることが出来る。
ウェルニッケ野が神経損傷した場合、復唱させたり、運動性言語刺激を与えたりすることで神経損傷部周辺部に優先的に刺激を与えることが出来る。
ウェルニッケ野が神経損傷した場合、音韻、単語、文法、読解、計算等の課題を与えることで、神経損傷部の機能を代償する部位へ優先的に刺激を与えることが出来る。
[高次脳機能刺激の付与例]
神経損傷により遂行機能障害が生じた場合、「神経損傷部」とは遂行機能を支配する脳の部位である。
神経損傷により遂行機能障害が生じた場合、「神経損傷部周辺」とは、遂行機能の下層にある記憶や情報処理を支配する脳の部位である。
神経損傷により遂行機能障害が生じた場合、「神経損傷部の機能を代償する部位」とは、記憶や情報処理のさらに下層にある、注意力、集中力、抑制、発動性、覚醒等を支配する脳の部位である。
神経損傷により遂行機能障害が生じた場合、遂行機能訓練を行うことで神経損傷部への刺激を優先的に与えることが出来る。
神経損傷により遂行機能障害が生じた場合、遂行機能の下層にある記憶や情報処理訓練を行うことで神経損傷部周辺部に優先的に刺激を与えることが出来る。
神経損傷により遂行機能障害が生じた場合、記憶や情報処理のさらに下層にある、注意力、集中力、抑制、発動性、覚醒に対する訓練を行うことで、神経損傷部の機能を代償する部位へ優先的に刺激を与えることが出来る。
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<間葉系幹細胞の培養上清の準備>
以下の方法で、各組織に由来する間葉系幹細胞を培養し、その培養上清を回収した。
なお、以下の培養は、いずれも、温度37℃、CO濃度5%のインキュベータ内にて3週間培養を行った。
(1)骨髄由来間葉系幹細胞の培養
「KBM ADSC-2」(コージンバイオ株式会社製)を用いて、ヒト骨髄組織から骨髄由来間葉系幹細胞の分離を行い、得られた間葉系幹細胞の培養を行った。
得られた培養物から、0.1~0.22μm PVDFフィルターにより細胞を除去し、骨髄由来間葉系幹細胞の培養上清(以下、「培養上清-1」ともいう。)を得た。
得られた培養上清は、可溶性固形分量が2mg/mlだった。
(2)脂肪由来間葉系幹細胞の培養
上記「(1)骨髄由来間葉系幹細胞の培養」と同様の方法で、ヒト脂肪組織から得られた間葉系幹細胞を用いて、脂肪由来間葉系幹細胞の培養上清を得た。
得られた培養物から0.1~0.22μm PVDFフィルターにより細胞を除去し、骨髄由来間葉系幹細胞の培養上清(以下、「培養上清-2」ともいう。)を得た。
得られた培養上清は、可溶性固形分量が2mg/mlだった。
(3)歯髄由来間葉系幹細胞の培養
上記「(1)骨髄由来間葉系幹細胞の培養」と同様の方法で、ヒト歯髄組織から得られた間葉系幹細胞を用いて、歯髄由来間葉系幹細胞の培養上清を得た。
得られた培養物から0.1~0.22μm PVDFフィルターにより細胞を除去し、骨髄由来間葉系幹細胞の培養上清(以下、「培養上清-3」ともいう。)を得た。
得られた培養上清は、可溶性固形分量が2mg/mlだった。
(4)臍帯由来間葉系幹細胞の培養
上記「(1)骨髄由来間葉系幹細胞の培養」と同様の方法で、ヒト臍帯組織から得られた間葉系幹細胞を用いて、臍帯由来間葉系幹細胞の培養上清を得た。
得られた培養物から0.1~0.22μm PVDFフィルターにより細胞を除去し、骨髄由来間葉系幹細胞の培養上清(以下、「培養上清-4」ともいう。)を得た。
得られた培養上清は、可溶性固形分量が2mg/mlだった。
<患者への処置>
後記の神経障害の諸症状を有する患者に、上記で調製した培養上清を投与した。投与は、各患者に、経鼻投与、静脈内投与、又は皮下投与のいずれか1種の方法で行った。
あわせて、刺激付与(運動刺激、感覚刺激、電気刺激、磁気刺激、言語刺激、及び高次脳機能刺激のいずれか1つ)を行った。
(培養上清の投与)
以下の各方法によって各患者に培養上清を投与した。
培養上清の投与のタイミングは、投与方法に応じて個々の患者ごとに変えた。培養上清の投与のタイミングの詳細は、表1~15の各表の最左欄に示すとおりである。
なお、「投与n時間前」とは、刺激付与の開始時点が、培養上清の投与開始時点のn時間前であったことを意味する。
「投与直後」とは、刺激付与の開始時点が、培養上清の投与直後(培養上清投与後から15分以内のいずれかの時点)であったことを意味する。
「投与n時間後」とは、刺激付与の開始時点が、培養上清の投与開始時点のn時間後であったことを意味する。
投与した培養上清の種類(培養上清-1乃至5のいずれか)は、表1~15の各表の「培養上清」の項に示すとおりである。
(1)経鼻投与
各患者に、通常の点鼻用容器を用いて、培養上清1mlを両側鼻腔内に投与した。投与は、14週間にわたって、毎日おこなった。
なお、経鼻投与は、投与開始直後、投与30分後、投与3時間後、10時間後及び20時間後の例において、投与直後から1時間の睡眠を挟んだ場合、及び、睡眠を挟まない場合の2例ずつを実施した。
(2)静脈内投与
各患者に、培養上清5mlを点滴で1時間かけて投与した。投与は、4週間にわたって、7日ごとにおこなった。
(3)皮下投与
各患者に、培養上清2mlを上腕伸側に投与した。投与は、4週間にわたって、7日ごとにおこなった。
(刺激の付与)
各患者に与えた刺激の詳細は下記のとおりである。
[運動刺激]
40~50歳代の脳出血患者群に対して、運動刺激付与として促通反復療法を施行した。
本例では、刺激付与の部位を神経損傷部(左手指、左足~下腿部)、神経損傷周辺部(左手関節部~前腕、左膝関節部~大腿部)、神経損傷部の機能を代償する部位(左肘関節部~肩関節部、左股関節部)に設定した。
1回あたりの刺激付与時間は各部位30分に設定した。
また、同様の症状を有する40~50歳代の患者群に全身運動(1回あたり30分のトレッドミルによる運動)を行わせ、上記同様に培養上清を投与した。
[感覚刺激]
40~50歳代の脳出血患者群に対して、感覚障害のある患者の上下肢への感覚刺激付与として、麻痺肢に氷嚢にて冷却刺激を与えながら、聴覚的刺激(声かけ)を与え、さらには上下肢の位置を視覚的にも確認するよう指示した。
本例では、刺激付与の部位を神経損傷部(左手指、左足~下腿部)、神経損傷周辺部(左手関節部~前腕、左膝関節部~大腿部)、神経損傷部の機能を代償する部位(左肘関節部~肩関節部、左股関節部)に設定した。
1回あたりの刺激付与時間は各部位30分に設定した。
上記の感覚刺激は、患側上下肢に対して行った。
また、同様の症状を有する40~50歳代の患者群の健側上下肢に対して感覚刺激(1回あたり30分)を行い、上記同様に培養上清を投与した。
[電気刺激]
40~50歳代の脳出血患者群に対して、麻痺した患者の上下肢に、電気刺激付与として、手足の麻痺した患者の手足に貼った電極を介して低周波刺激を付与した。
本例では、刺激付与の部位を神経損傷部(左手指、左足~下腿部)、神経損傷周辺部(左手関節部~前腕、左膝関節部~大腿部)、神経損傷部の機能を代償する部位(左肘関節部~肩関節部、左股関節部)に設定した。
1回あたりの刺激付与時間は各部位20分に設定した。
上記の電気刺激は、患側上下肢に対して行った。
また、同様の症状を有する40~50歳代の患者群の健側上下肢に対して電気刺激(1回あたり20分)を行い、上記同様に培養上清を投与した。
[磁気刺激]
経頭蓋磁気刺激によって、TMS装置(CRTechnology社製)を用いて、40~50歳代の脳出血患者群の頭部に磁気刺激付与を行った。具体的には、間欠的TBS(iTBS: intermittent TBS;1burst 50Hz,3 stimuli)にて、80%の運動時閾値の強度で5Hz(時間間隔200ms)で与え、刺激を2秒間行い8秒間休止する方法で合計2000パルス刺激とした。
本例では、刺激付与の部位を神経損傷部(患側一次運動野手指支配部)、神経損傷周辺部(患側一次運動野手指支配部以外)、神経損傷部の機能を代償する部位(右側頭頂葉)に設定した。
1回あたりの刺激付与時間は各部位2000パルス、約11分に設定した。
上記の磁気刺激は、患側頭部に対して行った。
また、同様の症状を有する40~50歳代の患者群に対して、音のみを発するプラセボ患部頭部磁気刺激(1回あたり2000パルス、約11分)を行い、上記同様に培養上清を投与した。なお、プラセボ患部頭部磁気刺激は、実際には患者へ磁気刺激を付与しないものである。
[言語刺激]
70~80歳代の脳出血患者群のうち、失語症を認める患者に対して言語刺激付与を行った。言語刺激としては、コミュニケーション課題(読む、書く、聞く、話す、復唱、計算)を用いた刺激を付与した。
刺激付与時間は60分に設定した。
[高次脳機能刺激]
70~80歳代の脳出血患者群のうち、高次脳機能障害(注意障害)が認められた患者に対して高次脳機能刺激付与を行った。高次脳機能刺激としては、注意訓練としてAttention Process Trainingを行った。
刺激付与時間は60分に設定した。
[参考試験]
参考として、70~80歳代の脳出血患者群のうち、失語症を認める患者に対して、1時間、受動的に、ラジオを聴かせるか、又はテレビを視聴させた。
<神経障害の治療効果>
患者へ各処置を行った後、各症状について下の指標で治療効果を評価し、下の基準で評価結果を分類した。その結果を表1に示す。
なお、各評価基準における「培養上清投与から最長の試験時間経過後」とは、各方法による投与から最長の試験時間が経過した時点を意味する。例えば、経鼻投与の場合、「培養上清投与から最長の試験時間経過後」とは「投与20時間後」を意味する。
(評価)
麻痺・感覚障害: SIAS(Stroke Impairment Assessment)、FMA(Fugl-Meyer assessment)
脳梗塞: NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)
失語症: 標準失語症検査(SLTA)
高次脳機能:MMSE(Mini-Mental State Examinaton)
(評価基準-運動刺激)
◎:全身運動(培養上清投与から最長の試験時間経過後)の結果に比べて著明な治療効果が認められた。
○:全身運動(培養上清投与から最長の試験時間経過後)の結果に比べて治療効果が認められた。
△:全身運動(培養上清投与から最長の試験時間経過後)の結果に比べて若干の治療効果が認められた。
(評価基準-感覚刺激、電気刺激)
◎:健側刺激(培養上清投与から最長の試験時間経過後)の結果に比べて著明な治療効果が認められた。
○:健側刺激(培養上清投与から最長の試験時間経過後)の結果に比べて治療効果が認められた。
△:健側刺激(培養上清投与から最長の試験時間経過後)の結果に比べて若干の治療効果が認められた。
(評価基準-磁気刺激)
◎:プラセボ患側磁気刺激(培養上清投与から最長の試験時間経過後)の結果に比べて著明な治療効果が認められた。
○:プラセボ患側磁気刺激(培養上清投与から最長の試験時間経過後)の結果に比べて治療効果が認められた。
△:プラセボ患側磁気刺激(培養上清投与から最長の試験時間経過後)の結果に比べて若干の治療効果が認められた。
(評価基準-言語刺激、高次脳機能刺激、参考試験)
◎:培養上清投与及び刺激付与前と比べて顕著な治療効果が認められた。
○:培養上清投与及び刺激付与前と比べて治療効果が認められた。
△:培養上清投与及び刺激付与前と比べて若干の治療効果が認められた。
×:培養上清投与及び刺激付与前と比べて変化が認められなかった。
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上記のとおり、本発明の要件を満たす用法で用いた治療剤によれば、神経障害の症状の大幅な改善が認められた。
なお、各投与方法において、上記<間葉系幹細胞の培養上清の準備>で得られた培養上清を、細胞培養に用いた培地で3~10倍程度に希釈し、かつ、可溶性固形分量を揃えて投与したところ、上記同様に神経障害の症状の改善が認められた。
ただし、その効果は、培養上清を希釈しない場合が最も高かった。また、希釈した場合には、希釈倍率が低いほど効果が高かった。
経鼻投与を行った場合、経鼻投与の5分後~30分後の時点で刺激付与を行うと、治療効果が高い傾向にあった。
また、経鼻投与を行った場合、データには示していないが、培養上清の種類にかかわらず、培養上清を経鼻投与した5分後に、臥位の状態で磁気刺激を30分かけて付与した後、その直後に運動刺激を付与した場合、治療効果が特に高かった。
経鼻投与を行った場合、投与と刺激の間隔が同じであっても、患者の睡眠を挟んだ場合のほうが、睡眠を挟まない場合よりも効果がより高い傾向にあった。
かかる場合、経鼻投与後1時間以内に入眠すると、1時間以上かけて入眠するよりも効果がより高い傾向にあった。

Claims (7)

  1. 神経障害の治療剤であって、
    前記治療剤は、間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養上清を含む治療剤であり、かつ、患者の神経への刺激付与と併用され、
    前記刺激は、神経損傷部、神経損傷部周辺、及び神経損傷部の機能を代償する部位からなる群から選択される1以上に優先的に付与される、
    治療剤。
  2. 神経障害の経鼻投与用治療剤であって、
    前記治療剤は、間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養上清を含む治療剤であり、かつ、患者の神経への刺激付与と併用され、
    前記刺激付与は、前記治療剤の投与前から投与後16時間までに行われる、
    治療剤。
  3. 神経障害の静脈内投与用治療剤であって、
    前記治療剤は、間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養上清を含む治療剤であり、かつ、患者の神経への刺激付与と併用され、
    前記刺激付与は、前記治療剤の投与前から投与後3時間までに行われる、
    治療剤。
  4. 神経障害の皮下投与用治療剤であって、
    前記治療剤は、間葉系幹細胞及び/又は間葉系幹細胞に分化可能な細胞の培養上清を含む治療剤であり、かつ、患者の神経への刺激付与と併用され、
    前記刺激付与は、前記治療剤の投与前から投与後16時間までに行われる、
    治療剤。
  5. 前記刺激は、運動刺激、感覚刺激、電気刺激、磁気刺激、言語刺激、及び高次脳機能刺激からなる群から選択される1以上である、請求項1から4のいずれかに記載の治療剤。
  6. 前記培養上清は、可溶性固形分量について希釈されていない又は濃縮されたものである、請求項1から5のいずれかに記載の治療剤。
  7. 前記培養上清は、その凍結乾燥物を投与時に溶解させて用いられる、請求項1から5のいずれかに記載の治療剤。
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