JP2022085147A - 積層体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ナノ繊維本来の特性を損なうことなく、ナノ繊維層と基材層とが剥離しにくく加工性に優れた積層体を提供すること。また、ナノ繊維層と基材層とが剥離しにくく加工性に優れた積層体を、高い生産性と良好な操業性で製造する方法を提供すること。【解決手段】 ナノ繊維層と基材層とが積層された積層体であって、前記ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径が1nm以上、1000nm未満であり、前記基材層を構成する繊維の平均繊維径が1~100μmであり、前記基材層の比容積が1~10cm3/gであり、基材層の表面抵抗率が106~1012Ωである、積層体。【選択図】 なし

Description

本発明は、ナノ繊維を含む積層体、およびその製造方法に関する。
近年、数~数百ナノメートル(nm)の直径を有する極細繊維、いわゆるナノ繊維が注目されている。ナノ繊維は、それ自体の比表面積が大きいこと、ナノ繊維集合体において繊維間空隙が小さく、空隙径分布が均一であり、空隙率が大きいなどの特徴を有することから、フィルター用濾材や吸音材、マスク、防水透湿膜、二次電池用セパレータ、センサー材、細胞培養基材などへの応用が期待されている。
ナノ繊維を製造する方法として、静電紡糸法が知られている。一般的な静電紡糸法では、ポリマーを溶解させた紡糸溶液を金属製の噴射ニードルとともに高電圧で帯電させ、接地した捕集電極表面に向けて、噴射ニードルの先端から溶液を吐出させて、液滴を形成させる。溶液材料からなる液滴は、噴射ニードルの先端での強力な静電力によって捕集電極表面に引き寄せられ、テイラーコーンと呼ばれる円錐状の形状を形成する。そして、捕集電極表面に引き寄せられる力が、液滴の表面張力を上回ったとき、テイラーコーンの先端から紡糸溶液がジェットとして飛翔し、溶媒の揮発を伴いながら細化し、直径が数~数百nmのナノ繊維が捕集されて、不織布状のナノ繊維集合体を形成する。
しかしながら、ナノ繊維集合体を構成する繊維の直径が小さく、繊維1本あたりの力学強度が低いために、ナノ繊維集合体の表面が他の材、例えば製品への加工装置に触れただけで、単糸切れや不織布の破れを生じたり、また、ナノ繊維集合体の剛性が低いために加工性を低下させてしまうという問題がある。これらの問題に対して、ナノ繊維集合体を、強度や剛性に優れる基材層と積層一体化する方法が提案されている(例えば特許文献1、2)。
特許文献1には、「静電紡糸法により製造された、平均繊維径が0.01μm以上0.5μm未満の極細繊維集合体層と、平均繊維径が0.5μm以上、5μm以下の細繊維集合体層とを備えていることを特徴とする濾過材」が提案されている。しかしながら、極細繊維集合体層と細繊維集合体層との接着性が不十分であり、加工時に破れや剥離が生じてしまうという問題がある。また、カレンダーなどで圧力を加えて、一体化する方法が開示されているが、このような圧着によって、極細繊維層は少なからずダメージを受けて極細繊維集合体層が破断したり、繊維が押しつぶされて空隙率や通気性の低下を招くという問題がある。
また、特許文献2には、「静電紡糸法により製造された不織布と通気性シートとが接着剤により接着一体化した積層体であり、前記不織布の厚さ方向における、前記接着剤の不織布片表面からのしみ込み深さが不織布の厚さの40%以下である積層体」が提案されている。しかしながら、このような積層体は、層間の接着力は向上するものの、接着剤が繊維間空隙に染み込み細孔を閉塞させてしまうため、ナノ繊維本来の特性を十分に発揮させるには至らなかった。また、接着剤の成分が繊維素材に影響を及ぼしたり、液中や大気中に溶出して環境を汚染してしまうという問題がある。さらに、静電紡糸法により製造された不織布と通気性シートとを接着剤で一体化する工程を含むため、安定した操業性が得られなかったり、十分な生産性が得られないという問題がある。
特開2005-218909号 特開2007-30175号
本発明の目的は、上記のような問題を解決し、ナノ繊維本来の特性を損なうことなく、ナノ繊維層と基材層とが剥離しにくく加工性に優れた積層体を提供することである。また、ナノ繊維層と基材層とが剥離しにくく加工性に優れた積層体を、高い生産性と良好な操業性で製造する方法を提供することである。
本発明者らは、上記した課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の基材層とナノ繊維層を積層した積層体が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の構成を有する。
[1]ナノ繊維層と基材層とが積層された積層体であって、前記ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径が1nm以上、1000nm未満であり、前記基材層を構成する繊維の平均繊維径が1~100μmであり、前記基材層の比容積が1~10cm3/gであり、前記基材層の表面抵抗率が106~1012Ωである、積層体。
[2]前記基材層の目付が5~150g/m2であり、厚みが0.01~1mmである、[1]に記載の積層体。
[3]前記ナノ繊維層の目付が0.01~20g/m2であり、厚みが0.5~100μmであり、比容積が1~100cm3/gである、[1]または[2]に記載の積層体。
[4]前記ナノ繊維層を構成する繊維の成分がフッ素系樹脂を50重量%以上含み、前記基材層を構成する繊維の成分がポリエステル系樹脂またはセルロース系素材を30重量%以上含む、[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]前記基材層が、楕円形、扁平形、または半円形の断面形状を有する繊維を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6]前記積層体の目付が5~200g/m2であり、厚みが0.01~2mmであり、比容積が1~100cm3/gである、[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]前記積層体のフラジール通気度が0.1~200cm3/cm2/secである、[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
[8]前記積層体の通気抵抗が1×105~10000×105N・sec/m4である、[1]~[7]のいずれかに記載の積層体。
[9]前記積層体の平均孔径が0.1~15μmである、[1]~[8]のいずれかに記載の積層体。
[10]前記基材層に、前記ナノ繊維層を静電紡糸する、[1]~[9]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
以上の構成を有する本発明によれば、ナノ繊維本来の特性を損なうことなく、ナノ繊維層と基材層とが剥離しにくく加工性に優れた積層体を提供することが可能になる。また、接着加工やカレンダー加工などの一体化工程を経ることなく十分な接着強度(耐剥離性)を有するため、一体化工程を省くことができ、高い生産性と良好な操業性で積層体を提供することが可能となる。このような積層体は、加工性に優れ、ナノ繊維本来の特性を十分に発揮できるため、フィルター用濾材や吸音材、マスク、防水透湿膜、二次電池用セパレータ、センサー材、細胞培養基材などとして好適に使用することができる。
本発明の積層体は、ナノ繊維層と基材層とが積層されており、ナノ繊維層を構成する繊維は平均繊維径が1nm以上、1000nm未満であり、基材層を構成する繊維の平均繊維径が1~100μmであり、基材層の比容積が1~10cm3/gであり、基材層の表面抵抗率が106~1012Ωであることを特徴としている。
<ナノ繊維層>
本発明の積層体に用いるナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径は1nm以上、1000nm未満であり、10~600nmであることが好ましく、50~300nmであることがより好ましい。ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径が1000nm未満であれば、比表面積を高めたり、繊維間の空隙(以下、孔径という場合がある。)を小さくすることができるため好ましく、1nm以上であれば満足できる単糸強力となり、製品への加工時にナノ繊維層の破断や毛羽立ちなどを抑制できるため好ましい。また、ナノ繊維層を構成する繊維の繊維径の変動係数(CV値)は、特に限定されないが、50%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。CV値が50%以下であれば、均一な特性値を有する積層体が得られるため好ましい。また、CV値の下限は、特に限定されないが、現実的には1%以上である。一方、用途によってはCV値が50%を超える繊維を用いることもでき、例えば、気体フィルター用途に用いる場合には、圧力損失を低減させたり、フィルター寿命を延ばすことができる。この場合、ナノ繊維層の目付が高くなりすぎないようにするために、CV値の上限は、300%以下とすることが好ましく、200%以下とすることがより好ましい。
本発明の積層体に用いるナノ繊維層を構成する繊維の成分としては、特に限定されず、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸、またはポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、または環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、またはポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、またはポリブチレンサクシネートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、または芳香族ポリアミドなどのポリアミド系樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、セルロース、酢酸セルロース、コラーゲン、グルコマンナン誘導体、キチン、キトサン、ポリリジン、ポリアミド酸、ポリイミド、ポリビニルホルマール、或いはシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、イットリウム安定化ジルコニア、チタン酸バリウム、またはハイドロキシアパタイトなどの金属酸化物系材料を例示できる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。この中でも、耐薬品性、耐熱性、機械的特性に優れ、細く均一な繊維を得やすいことから、ナノ繊維層を構成する繊維の成分としては、フッ素系樹脂を50重量%以上含むことが好ましく、80重量%以上含むことがより好ましく、90重量%以上含むことがさらに好ましい。また、フッ素系樹脂としては、繊維の均一性や操業安定性の点から、ポリフッ化ビニリデンまたはフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体であることが好ましい。
ナノ繊維層を構成する繊維としては、単成分繊維であっても、複数成分を含む複合繊維であってもよい。また、複合形態としては、特に限定されず、複数成分のブレンド、サイドバイサイドや鞘芯型などの複合形態を有していてもよい。また、ナノ繊維層は、本発明の効果を損なわない範囲で、抗菌剤や消臭剤、帯電防止剤、導電材料、蛍光材料、平滑剤、親水剤、撥水剤、親水撥油剤、酸化防止剤、耐候剤、界面活性剤、電荷安定剤などの添加剤を適宜必要に応じて含有してもよい。
ナノ繊維層を構成する繊維の融点またはガラス転移点としては、特に限定されないが、50℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることがさらに好ましい。融点またはガラス転移点が50℃以上であれば、製品への加工の際に、高温条件で加工してもナノ繊維層が溶融しにくくなり、ナノ繊維本来の特性を発揮しやすくなるため好ましい。
ナノ繊維層を構成する繊維は結晶性であっても、非晶性であってもよい。結晶性である場合、その結晶化度は10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。結晶化度が10%以上であれば、繊維の力学強度が高くなり、製品への加工の際にナノ繊維層が破断しにくくなるため好ましい。
ナノ繊維層を構成する繊維の表面形状としては、特に限定されず、平滑であっても、凹凸形状であってもよい。表面が平滑の場合には繊維の強度を高くすることができ、凹凸形状の場合には繊維の比表面積を高くすることができる。また、ナノ繊維層を構成する繊維の断面形状としては、円形であっても、楕円形であっても、扁平形であってもよく、紡糸溶液に用いる溶媒の種類や粘度、紡糸空間の湿度、静電紡糸条件などによって制御することが可能である。
ナノ繊維層を構成する繊維は、特に限定されず、異なる複数の繊維が積層されていても、混繊されていてもよい。例えば、繊維径が異なる複数の繊維、非エラストマー繊維とエラストマー繊維、高融点繊維と低融点繊維、高結晶性繊維と低結晶性繊維、親水性繊維と撥水性繊維などの積層や混繊を挙げることができる。繊維径や性状が異なる2種類の繊維を積層または混繊させる場合の繊維混合割合としては、特に限定されないが、重量比で1:10~10:1を例示できる。
ナノ繊維層を構成する繊維は、ナノ繊維層においてランダムな向きで配置されていてもよく、一次元、もしくは二次元に配列されていてもよい。ランダムに配置されている場合には、力学強度などの特性が等方的に発現し、一次元、もしくは二次元に配列されている場合には、種々の特性が異方的に発現する。また、ナノ繊維層を構成する繊維は、特に限定されないが、毛羽立ちなどの観点から、連続繊維であることが好ましい。
本発明の積層体に用いるナノ繊維層の目付としては、特に限定されないが、0.01~20g/m2であることが好ましく、0.1~5g/m2であることがより好ましく、0.2~3g/m2であることがさらに好ましい。ナノ繊維層の目付が0.01g/m2以上であれば、比表面積を高めたり、孔径を小さくすることができるため好ましく、20g/m2以下であれば、通気性や通液性を高めることができるため好ましい。
本発明の積層体に用いるナノ繊維層の厚みとしては、特に限定されないが、0.5~100μmであることが好ましく、1~50μmであることがより好ましく、2~30μmであることがさらに好ましい。ナノ繊維層の厚みが0.5μm以上であれば、比表面積を高めたり、孔径を小さくすることができるため好ましく、100μm以下であれば、通気性や通液性を高めることができるため好ましい。
ナノ繊維層の空隙率としては、特に限定されないが、50~99%であることが好ましく、70~95%であることがより好ましく、75~90%であることがさらに好ましい。ナノ繊維層の空隙率が50%以上であれば、高い比表面積と高い通気性を両立することができるため好ましく、99%以下であれば、ナノ繊維層の破断強度が向上し、製品加工時におけるナノ繊維層の破断や毛羽立ちなどを抑制できるため好ましい。
本発明の積層体に用いるナノ繊維層の比容積としては、特に限定されないが、1~100cm3/gであることが好ましく、2~20cm3/gであることがより好ましく、2.5~10cm3/gであることがさらに好ましい。ナノ繊維層の比容積が1cm3/g以上であれば、高い比表面積と高い通気性を両立することができるため好ましく、100cm3/g以下であれば、ナノ繊維層の破断強度が向上し、製品加工時におけるナノ繊維層の破断や毛羽立ちなどを抑制できるため好ましい。
ナノ繊維層の嵩密度としては、特に限定されないが、0.01~1g/cm3であることが好ましく、0.05~0.5g/cm3であることがより好ましく、0.1~0.4g/cm3であることがさらに好ましい。ナノ繊維層の嵩密度が0.01g/cm3以上であれば、ナノ繊維層の破断強度が向上し、製品加工時におけるナノ繊維層の破断や毛羽立ちなどを抑制できるため好ましく、1g/cm3以下であれば、高い比表面積と高い通気性を両立することができるため好ましい。ナノ繊維層の嵩密度としては、例えば、ナノ繊維層の目付を厚みで除することで得ることができる。
ナノ繊維層のフラジール通気度としては、特に限定されないが、0.5~400cm3/cm2/secであることが好ましく、1~200cm3/cm2/secであることがより好ましく、2~100cm3/cm2/secであることがさらに好ましい。ナノ繊維層のフラジール通気度が0.5cm3/cm2/sec以上であれば、積層体の通気性や通液性を高くすることができ、例えば、フィルター用濾材として用いた場合、圧力損失や通液抵抗などを低減できるため好ましく、400cm3/cm2/sec以下であれば、積層体の比表面積を大きくすることができ、例えば、フィルター用濾材として用いた場合、捕集性能を高くできるため好ましい。
ナノ繊維層の通気抵抗としては、特に限定されないが、0.1×108~100×108N・sec/m4であることが好ましく、0.2×108~50×108N・sec/m4であることがより好ましく、0.5×108~30×108N・sec/m4であることがさらに好ましい。ナノ繊維層の通気抵抗が0.1×108N・sec/m4以上であれば、積層体の比表面積を高くすることができ、例えば、フィルター用濾材として用いた場合、捕集性能を高くできるため好ましく、100×108N・sec/m4以下であれば、積層体の通気性や通液性を高くすることができ、例えば、フィルター用濾材として用いた場合、圧力損失や通液抵抗などを低減できるため好ましい。
<基材層>
本発明の積層体に用いる基材層を構成する繊維の平均繊維径は1~100μmであり、3~50μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましい。平均繊維径が1μm以上であれば、ナノ繊維層の強度や剛性不足を補い、製品への加工性に優れる積層体が得られるため好ましく、100μm以下であれば、基材層とナノ繊維層との接触面積が増加することによって、耐剥離性が向上するため好ましい。
本発明の積層体に用いる基材層を構成する繊維の成分としては、特に限定されず、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリ乳酸などのポリエステル系樹脂、ナイロン6やナイロン6,6などのポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリフッ化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、セルロールや酢酸セルロースなどのセルロース系素材を例示できる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。この中でも、積層体に機械的特性や剛性を付与し、製品への加工性を向上させる観点から、基材層を構成する繊維の成分としては、ポリエステル系樹脂またはセルロース系素材を30重量%以上含むことが好ましく、50重量%以上含むことがより好ましい。また、加工性や入手しやすさから、ポリエステル系樹脂としてはポリエチレンテレフタレートであることが好ましく、セルロース系素材としてはセルロースであることが好ましい。
基材層を構成する繊維としては、単成分繊維であっても複合繊維であってもよい。また、複合繊維としては、複数成分のブレンド、或いは、同心鞘芯型、偏心鞘芯型、並列型、海島型、または放射状型などの複合形態を有していてもよい。また、融点差がある2種類以上の素材からなる複合繊維としてもよく、高融点成分としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリ-L-乳酸を例示でき、低融点成分としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリ-DL-乳酸、ポリプロピレン共重合体、ポリプロピレンを例示できる。複合繊維の高融点成分と低融点成分の融点差は、特に限定されないが、熱融着の加工温度幅を広くするためには、15℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。
基材層を構成する繊維は、本発明の効果を妨げない範囲で、抗菌剤や消臭剤、帯電防止剤、導電材料、蛍光材料、平滑剤、親水剤、撥水剤、酸化防止剤、耐候剤、界面活性剤、電荷安定剤などの添加剤を適宜必要に応じて含有してもよい。また、本発明の効果を妨げない範囲で、繊維の表面が繊維仕上げ剤で処理されていてもよく、これによって親水性や撥水性、制電性、表面平滑性、耐摩耗性などの機能を付与することができる。
本発明の積層体に用いる基材層を構成する繊維の断面形状としては、特に限定されず、円形、楕円形、扁平形、半円形、星形、三角形、四角形、五角形、多葉形、アレイ形、T字形、または馬蹄形を例示できるが、ナノ繊維層と基材層との耐剥離性を向上させるという観点から、楕円形、扁平形、または半円形であることが好ましい。楕円形、扁平形、または半円形の断面形状を有する繊維を含む基材層は、例えば、断面形状が楕円形、扁平形、または半円形の繊維をウェブ状にした後、熱や接着剤により接着する方法や、断面形状が円形の繊維から構成される不織布を熱カレンダー加工する方法によって得ることができる。
基材層は、特に限定されず、織物、編み物、不織布、抄紙、フェルト、またはネットを例示できるが、加工性や入手しやすさの点から、不織布または抄紙であることが好ましい。不織布としては、特に限定されず、サーマルボンド不織布、熱カレンダー不織布、スルーエアー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、湿式不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ケミカルボンド不織布、フラッシュ紡糸不織布、または静電紡糸不織布を例示できるが、特定範囲の比容積と表面抵抗率を満たしやすくする点から、熱カレンダー不織布、スパンレース不織布、ケミカルボンド不織布、または湿式不織布であることが好ましく、熱カレンダー不織布または湿式不織布であることがより好ましい。また、基材層は、特に限定されないが、ナノ繊維層と基材層との耐剥離性を向上させる観点から、エンボス点や賦形といった凹凸形状を有していないことが好ましい。また、基材層は、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維径や性状などが異なる複数の繊維が積層されていても、混繊されていてもよい。
本発明の積層体に用いる基材層の目付としては、特に限定されないが、5~150g/m2であることが好ましく、10~105g/m2であることがより好ましく、15~85g/m2であることがさらに好ましい。基材層の目付が5g/m2以上であれば、積層体の剛性を高め、製品への加工性を向上させることができるため好ましく、150g/m2以下であれば、積層体の通気性や通液性を高めることができるため好ましい。
本発明の積層体に用いる基材層の厚みとしては、特に限定されないが、0.01~1mmであることが好ましく、0.05~0.8mmであることがより好ましい。基材層の厚みが0.01mm以上であれば、積層体の剛性を高め、製品への加工性を向上させることができるため好ましく、1mm以下であれば、積層体の通気性や通液性を高めることができるため好ましい。
本発明の積層体に用いる基材層の比容積は1~10cm3/gであり、2~8cm3/gであることが好ましく、3~6cm3/gであることがより好ましい。基材層の比容積を小さくするほど、基材層を構成する繊維が密となり、基材層の表面の凹凸や孔径が小さくなり、ナノ繊維層との接触面積が増加して、ナノ繊維層と基材層との耐剥離性を向上させることができる。かかる観点から、基材層の比容積が10cm3/g以下であれば満足できる耐剥離性が得られ、8cm3/g以下であれば良好な耐剥離性が得られ、6cm3/g以下であれば十分な耐剥離性を得ることができる。一方、基材層の比容積を大きくするほど、基材層を構成する繊維が疎となり、積層体の通気性や通液性が向上する。かかる観点から、基材層の比容積は1cm3/g以上であれば満足できる通気性や通液性が得られ、2cm3/g以上であれば良好な通気性や通液性が得られ、3cm3/g以上であれば十分な通気性や通液性を得ることができる。
本発明の積層体に用いる基材層の表面抵抗率は106~1012Ωであり、107~1011Ωであることが好ましく、108~1010Ωであることがより好ましい。基材層の表面抵抗率を小さくするほど、ナノ繊維層と基材層とが電気的な反発をすることなく安定に堆積できるため、操業性を向上させることができ、さらに、ナノ繊維層を構成する繊維が基材層を構成する繊維上に集まりやすくなるため、耐剥離性を向上させることができる。かかる観点から、基材層の表面抵抗率が1012Ω以下であれば満足できる操業性と耐剥離性が得られ、1011Ω以下であれば良好な操業性と耐剥離性が得られ、1010Ω以下であれば十分な操業性と耐剥離性を得ることができる。一方、基材層の表面抵抗率を大きくするほど、ナノ繊維層を構成する繊維が基材層を構成する繊維上に集まりにくくなり、均一なナノ繊維層を得ることができる。かかる観点から、基材層の表面抵抗率が106Ω以上であれば満足できる均一性が得られ、107Ω以上であれば良好な均一性が得られ、108Ω以上であれば十分な均一性を得ることが可能となる。
基材層の嵩密度としては、特に限定されないが、0.1~1g/cm3であることが好ましく、0.13~0.5g/cm3であることがより好ましく、0.17~0.33g/cm3であることがさらに好ましい。基材層の嵩密度が0.1g/cm3以上であれば、積層体の通気性や通液性を高めることができるため好ましく、1g/cm3以下であれば、ナノ繊維層と基材層との耐剥離性を向上させることができるため好ましい。基材層の嵩密度としては、例えば、基材層の目付を厚みで除することで得ることができる。
基材層の破断強度としては、特に限定されないが、縦方向と横方向の破断強度の平均値が、30N/50mm以上であることが好ましく、60N/50mm以上であることがより好ましい。縦方向と横方向の破断強度の平均値が、30N/50mm以上であれば、積層体の強度や剛性が向上し、製品への加工性を向上させることができる。
基材層のフラジール通気度としては、特に限定されないが、1cm3/cm2/sec以上であることが好ましく、10cm3/cm2/sec以上であることがより好ましく、100cm3/cm2/sec以上であることがさらに好ましく、200cm3/cm2/sec以上であることが特に好ましい。基材層のフラジール通気度が1cm3/cm2/sec以上であれば、積層体の通気性や通液性を高くすることができるため好ましい。特に、基材の通気度が100cm3/cm2/sec以上のときに、フィルター用濾材やマスク、吸音材などとして好適に用いることができる。
基材層の平均孔径は、特に限定されないが、1~100μmであることが好ましく、3~80μmであることがより好ましく、5~60μmであることがさらに好ましく、10~50μmであることが特に好ましい。基材層の平均孔径が1μm以上であれば、積層体の通気性や通液性を向上させることができるため好ましく、100μm以下であれば、均一なナノ繊維層を得ることができるため好ましい。
基材層は、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、制電加工、撥水加工、親水加工、制菌加工、紫外線吸収加工、近赤外線吸収加工、エレクトレット加工などを目的に応じて施されていてもよい。
<積層体>
本発明の積層体は、上述したナノ繊維層と基材層とが積層されていることから、ナノ繊維本来の特性を損なうことなく、ナノ繊維層と基材層とが剥離しにくく、加工性に優れた積層体を高い生産性と良好な操業性で提供することができる。
本発明の積層体の目付としては、特に限定されないが、5~200g/m2であることが好ましく、10~150g/m2であることがより好ましく、15~120g/m2であることがさらに好ましい。積層体の目付が5g/m2以上であれば、積層体の剛性が高まり、製品への加工性を向上させることができるため好ましく、200g/m2以下であれば、積層体の通気性や通液性を高めることができ、例えば、フィルター濾材やマスク、吸音材などとして用いる場合、軽量化することができるため好ましい。
本発明の積層体の厚みとしては、特に限定されないが、0.01~2mmであることが好ましく、0.05~1.5mmであることがより好ましく、0.06~1mmであることがさらに好ましい。積層体の厚みが0.01mm以上であれば、積層体の剛性が高まり、製品への加工性を向上させることができるため好ましく、2mm以下であれば、積層体の通気性や通液性を高めることができ、例えば、フィルター濾材やマスク、吸音材などとして用いる場合、省スペース化することができるため好ましい。
本発明の積層体の比容積としては、特に限定されないが、1~100cm3/gであることが好ましく、2~50cm3/gであることがより好ましく、3~30cm3/gであることがさらに好ましい。積層体の比容積が1cm3/g以上であれば、積層体の通気性や通液性を高めることができるため好ましく、100cm3/g以下であれば、積層体の剛性が高まり、製品への加工性を向上させることができるため好ましい。
積層体の嵩密度としては、特に限定されないが、0.01~1g/cm3であることが好ましく、0.02~0.5g/cm3であることがより好ましく、0.03~0.3g/cm3であることがさらに好ましい。積層体の嵩密度が0.01g/cm3以上であれば、積層体の剛性が高まり、製品への加工性を向上させることができるため好ましく、1g/cm3以下であれば、積層体の通気性や通液性を高めることができるため好ましい。積層体の嵩密度としては、例えば、積層体の目付を厚みで除することで得ることができる。
積層体の破断強度としては、特に限定されないが、例えば、縦方向と横方向の破断強度の平均値が、30N/50mm以上であることが好ましく、60N/50mm以上であることがより好ましい。縦方向と横方向の破断強度の平均値が、30N/50mm以上であれば、積層体の強度や剛性が向上し、製品への加工性を向上させることができるため好ましい。
本発明の積層体のフラジール通気度としては、特に限定されないが、0.1~200cm3/cm2/secであることが好ましく、0.5~100cm3/cm2/secであることがより好ましく、1~80cm3/cm2/sec以上であることがさらに好ましい。積層体のフラジール通気度が0.1cm3/cm2/sec以上であれば、積層体の通気性や通液性を高くすることができ、例えば、フィルター用濾材として用いた場合、圧力損失や通液抵抗などを低減できるため好ましく、200cm3/cm2/sec以下であれば、積層体の比表面積を大きくすることができ、例えば、フィルター用濾材として用いた場合、捕集性能を高めることができるため好ましい。
積層体のガーレ通気度としては、特に限定されないが、0.1~10sec/300ccであることが好ましく、0.1~8sec/300ccであることがより好ましく、0.2~6sec/300ccであることがさらに好ましい。積層体のガーレ通気度が0.1sec/300cc以上であれば、積層体の比表面積を大きくすることができるため好ましく、10sec/300cc以下であれば、積層体の通気性や通液性を高くすることができ、例えば、フィルター用濾材として用いた場合、圧力損失や通液抵抗などを低減できるため好ましい。
本発明の積層体の通気抵抗としては、特に限定されないが、1×105~10000×105N・sec/m4であることが好ましく、10×105~1000×105N・sec/m4であることがより好ましく、15×105~500×105N・sec/m4であることがさらに好ましい。積層体の通気抵抗が1×105N・sec/m4以上であれば、積層体の比表面積を大きくすることができ、例えば、フィルター用濾材として用いた場合、捕集性能を高くできるため好ましく、10000×105N・sec/m4以下であれば、積層体の通気性や通液性を高くすることができ、例えば、フィルター用濾材として用いた場合、圧力損失や通液抵抗などを低減できるため好ましい。
本発明の積層体の平均孔径としては、0.1~15μmであることが好ましく、0.2~5μmであることがよりに好ましく、0.3~3μmであることがさらに好ましい。積層体の平均孔径が0.1μm以上であれば、例えば、フィルター用濾材として用いた場合、目詰まりしにくいため好ましく、15μm以下であれば、良好な捕集性能が得られるため好ましい。また、積層体の最大孔径としては、特に限定されず、0.15~50μmであることが好ましく、0.3~20μmであることがより好ましく、0.5~10μmであることがさらに好ましい。また、積層体の最大孔径と平均孔径の比(最大孔径/平均孔径)としては、特に限定されず、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。最大孔径と平均孔径の比が小さいということは、孔径のばらつきが小さいことを意味し、この値が3以下であれば、ピンホールなどができにくく、局所的な性能低下が生じにくいため好ましい。
積層体は、特に限定されないが、その片面、好ましくはナノ繊維層側の面、または両面に、織物、編み物、不織布、抄紙、フェルト、ネット、または通気性フィルムなどの保護層が積層されていてもよい。このような構成とすることで、ナノ繊維層が表面に露出しなくなり、製品への加工時に性能が低下しにくくなる。保護層は、1種類からなる単層品であってもよく、2種類以上からなる多層品であってもよく、機能やその効果に応じて、適宜選択することが可能である。
保護層を積層する方法としては、基材層とナノ繊維層が積層された積層体に、保護層を重ね合わせて一体化する方法や、保護層を直接紡糸する方法を例示できる。一体化の方法は、特に限定されず、加熱したフラットロールまたはエンボスロールなどによる熱圧着、ホットメルト剤または化学接着剤などによる接着、循環熱風または輻射熱による熱接着を例示できるが、一体化によるナノ繊維層の物性低下を抑制するという観点から、循環熱風または輻射熱による熱接着が好ましい。フラットロールまたはエンボスロールなどによる熱圧着の場合、ナノ繊維層が溶融フィルム化したり、エンボス点周辺部分に破れが発生したりするなど、少なからずダメージを受け、例えば、このような積層体をフィルター用濾材として使用する場合には、溶融フィルム化によって通気性や通液性が低下したり、破れによって捕集性能が低下したりするなどの性能低下が生じやすい。また、ホットメルト剤または化学接着剤などによる接着の場合には、該成分によってナノ繊維層の繊維間空隙が埋められ、やはり性能低下を生じやすい。一方で、循環熱風または輻射熱による熱接着で一体化した場合には、ナノ繊維層へのダメージがほとんどなく、かつ十分な層間剥離強度で一体化できるため好ましい。
循環熱風または輻射熱による熱接着によって一体化する場合、保護層としては、特に限定されないが、熱融着性複合繊維を含む不織布を使用することが好ましい。保護層を構成する熱融着性複合繊維の低融点成分の融解温度は、特に限定されないが、熱処理による一体化の加工条件幅を広げるという観点からは、ナノ繊維層の融解温度よりも20℃以上低いことが好ましく、30℃以上低いことがより好ましい。また、循環熱風または輻射熱による熱接着温度についても、特に限定されないが、熱融着性複合繊維の低融点成分の融解温度以上、かつ、ナノ繊維層の融解温度以下の範囲で、層間剥離強度と寸法安定性のバランスを見ながら、設定することができる。
積層体は、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、制電加工、撥水加工、親水加工、抗菌加工、紫外線吸収加工、近赤外線吸収加工、またはエレクトレット加工などを目的に応じて施されていてもよい。ナノ繊維層単独では力学強度が十分でなく、またシートが柔軟すぎるためにハンドリング性が低いという課題があったが、本発明の積層体は、十分な力学強度と適度な剛性を有しており、静電加工、撥水加工、親水加工、制菌加工、紫外線吸収加工、近赤外線吸収加工、またはエレクトレット加工などの二次加工性に優れるという特徴を有する。
本発明の積層体は、ナノ繊維層と基材層とが剥離しにくく、接着剤などの成分が少ないため、特に限定されないが、高機能フィルター用濾材として好適に用いることができる。濾過の対象物は特に限定されるものではなく、エアコンやクリーンルームなどで使用される気体フィルター用濾材であってもよく、排水や塗料、研磨粒子などの濾過に使用される液体フィルター用濾材であってもよい。フィルターの種類も特に限定されるものではなく、平膜型フィルターであってもよく、プリーツ加工したプリーツフィルターであってもよく、円筒状に巻き上げたデプスフィルターであっても何ら問題ない。
積層体を気体フィルター用濾材として用いる場合、空気を流速5.3cm/秒で通過させたときの圧力損失が10~1500Paであることが好ましく、20~300Paであることがより好ましく、50~200Paであることがさらに好ましい。圧力損失が10Pa以上であれば十分な捕集効率が得られ、1500Pa以下であれば気体フィルターの通気性が高まり、消費電力の低減やファンへの負荷低減などの効果を奏する。また、粒子径0.3μm程度の粒子を含む空気を5.3cm/秒で通過させたときの該粒子の捕集効率は、30%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。さらに、QF値(=log(1-捕集効率/100)/圧力損失×1000)は、12以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましい。QF値は気体フィルターの捕集性能の大小を示す指標として使用されている値であり、QF値が大きいほど高性能であることを意味する。気体フィルター用濾材としての寿命は、特に限定されないが、例えば、粒子径0.3μm程度の粒子を含む空気を流速5.3cm/秒で連続通風し、圧力損失が250Pa分だけ上昇したときの粒子の付着重量で評価可能であり、付着重量が多いほど、長寿命の気体フィルター用濾材として使用できることを意味する。捕捉粒子としては、塩化ナトリウムなどの固体粒子であってもよいし、ポリアルファオレフィンやジオクチルフタレートなどの液状粒子であってよい。ポリアルファオレフィンを用いた場合の付着重量としては、特に限定されないが、5mg/100cm2以上であることが好ましく、20mg/100cm2以上であることがより好ましく、30mg/100cm2以上であることがさらに好ましい。
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法としては、特に限定されないが、上述した基材層上に、ナノ繊維層を静電紡糸する方法が好ましい。静電紡糸法を用いることによって、広範な材料を繊維化することができ、また、ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径を小さくかつ均一にすることができるため好ましい。
静電紡糸法とは、紡糸溶液を吐出させるとともに、電界を作用させて、吐出された紡糸溶液を繊維化し、コレクター上に繊維径が非常に小さい繊維を得る方法である。例えば、紡糸溶液をノズルから押し出すとともに電界を作用させて紡糸する方法、紡糸溶液を泡立たせるとともに電界を作用させて紡糸する方法、円筒状電極の表面に紡糸溶液を導くとともに電界を作用させて紡糸する方法を挙げることができる。
紡糸溶液としては、曳糸性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、繊維形成性高分子を溶媒に分散させたもの、繊維形成性高分子を溶媒に溶解させたもの、繊維形成性高分子を熱やレーザー照射などによって溶融させたものを用いることができる。
繊維形成性高分子としては、良好な曳糸性が得られるものであれば特に限定されず、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸、またはポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、または環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン共重合体、またはポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、またはポリブチレンサクシネートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6、または芳香族ポリアミドなどのポリアミド系樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、セルロース、酢酸セルロース、コラーゲン、グルコマンナン誘導体、キチン、キトサン、ポリリジン、ポリアミド酸、ポリイミド、またはポリビニルホルマールを例示できる。これらの繊維形成性高分子は1種類で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよく、求める曳糸性や分散性、得られる繊維、ナノ繊維層、積層体などの物性を鑑みて、適宜設定することができる。
繊維形成性高分子の重量平均分子量としては、特に限定されないが、10,000~10,000,000であることが好ましく、50,000~5,000,000であることがより好ましく、100,000~1,000,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が10,000以上であれば、曳糸性に優れるため好ましく、10,000,000以下であれば、溶解性や熱可塑性に優れ、加工が容易になるため好ましい。また、繊維形成性高分子の数平均分子量としては、特に限定されないが、1,000~7,000,000であることが好ましく、5,000~3,500,000であることがより好ましく、10,000~700,000であることがさらに好ましい。また、繊維形成性高分子の重量平均分子量と数平均分子量との比(重量平均分子量/数平均分子量)としては、特に限定されないが、1.5~10であることが好ましく、2~8であることがより好ましい。繊維形成性高分子の重量平均分子量と数平均分子量との比が1.5以上であれば、曳糸性に優れ、ばらつきの小さい繊維が得られやすいため好ましく、10以下であれば、平均繊維径が小さい繊維が得られやすいため好ましい。
繊維形成性高分子を分散または溶解させる溶媒としては、特に限定されず、水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、トリエチルホスフェート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トルエン、キシレン、ピリジン、蟻酸、酢酸、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノールを例示できる。これら溶媒は、1種類で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。混合して使用する場合の混合率は、特に限定されず、曳糸性や分散性、得られる繊維、ナノ繊維層、積層体などの物性を鑑みて、適宜設定することができる。
紡糸溶液中における繊維形成性高分子の濃度としては、特に限定されないが、1~50重量%であることが好ましく、2~40重量%であることがより好ましく、5~30重量%であることがさらに好ましい。紡糸溶液中における繊維形成性高分子の濃度が1重量%以上であれば、良好な曳糸性と高い生産性が得られやすくなるため好ましく、50重量%以下であれば、平均繊維径が小さい繊維が得られやすいため好ましい。
静電紡糸の安定性や曳糸性を向上させる目的で、紡糸溶液はさらに界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウムなどの陰イオン性界面活性剤、臭化テトラブチルアンモニウムなどの陽イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタモンモノラウレートなどの非イオン性界面活性剤を例示できる。界面活性剤の濃度は、特に限定されないが、紡糸溶液に対して0.001~5重量%であれば、使用に見合う効果が得られるため好ましい。
本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、上記以外の成分も紡糸溶液の成分として含んでもよく、例えば、抗菌剤や消臭剤、帯電防止剤、導電材料、蛍光材料、平滑剤、親水剤、撥水剤、親水撥油剤、酸化防止剤、耐候剤、電荷安定剤などの添加剤を例示できる。
紡糸溶液の調製方法としては、特に限定されず、撹拌や超音波処理などの方法を挙げることができる。また、混合の順序も特に限定されず、同時に混合しても、逐次に混合してもよい。撹拌により紡糸溶液を調製する場合の撹拌時間は、繊維形成性高分子が溶媒に均一に溶解または分散していれば特に限定させず、例えば、-50~200℃にて、1~24時間程度撹拌してもよい。
紡糸溶液の粘度としては、特に限定されないが、10~10000cPであることが好ましく、50~8000cPであることがより好ましく、200~5000cPであることがさらに好ましい。紡糸溶液の粘度が10cP以上であれば、良好な曳糸性と静電紡糸の安定性が得られるため好ましく、10000cP以下であれば、紡糸溶液の調製や静電紡糸時の吐出が容易となるため好ましい。紡糸溶液の粘度は、繊維形成性高分子の分子量や濃度、溶媒の種類や混合率を適宜変更することで調整することができる。
紡糸溶液の温度は、常温で紡糸してもよく、加熱や冷却をしながら、例えば、0~200℃にして紡糸してもよい。紡糸溶液を吐出させる方法としては、例えば、ポンプを用いてシリンジに充填した紡糸溶液をノズルから吐出させる方法を挙げることができる。ノズルの内径としては、特に限定されないが、0.1~1.5mmであることが好ましく、0.2~0.8mmであることがより好ましく、0.3~0.6mmであることがさらに好ましい。また、紡糸溶液の単孔吐出量としては、特に限定されないが、0.1~50ml/hrであることが好ましく、0.2~20ml/hrであることがより好ましく、0.5~10ml/hrであることがさらに好ましい。
電界を作用させる方法としては、安定に静電紡糸できる方法であれば特に限定されず、例えば、ノズルまたは紡糸溶液に高電圧を印加させてコレクターを接地してもよい。印加させる電圧は、繊維が形成でき、かつ安定に紡糸できる範囲であれば特に限定されず、5~100kVを例示できる。また、ノズルとコレクターとの距離は、溶媒が十分に揮発する範囲であれば特に限定されず、5~100cmを例示できる。また、電界強度としては、特に限定されないが、1~10kV/cmであることが好ましく、2~5kV/cmであることがより好ましい。電界強度が1kV/cm以上であれば、ナノ繊維層と基材層との耐剥離性を向上させることができるため好ましく、10kV/cm以下であれば、ナノ繊維層の空隙率を高くすることができ、高い比表面積と高い通気度を両立しやすくなるため好ましい。コレクターの素材としては、静電紡糸された繊維を捕集できるものであれば、特に限定されないが、金属などの導電性材料を好適に用いることができる。コレクターの形状としては、特に限定されないが、平板状、シャフト状、またはコンベア状を例示できる。コレクターが平板状であると、シート状に積層体を得ることができ、シャフト状であると、チューブ状の積層体を得ることができる。コンベア状であれば、シート状の積層体を連続的に製造することができる。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はそれらによって限定されるものではない。尚、実施例中に示した物性値の測定方法または定義を以下に示す。
<ナノ繊維層および基材層を構成する繊維の平均繊維径>
日立株式会社の走査型電子顕微鏡(SU-8000)を使用して、ナノ繊維層および基材層を500~30000倍で観察し、画像解析ソフトを用いて繊維50本以上の繊維径を測定し、その平均値を平均繊維径とした。
<ナノ繊維層を構成する繊維の繊維径の変動係数(CV値)>
日立株式会社の走査型電子顕微鏡(SU-8000)を使用して、ナノ繊維層を2000~30000倍で観察し、画像解析ソフトを用いて繊維50本以上の繊維径を測定し、その平均値および標準偏差から、下記式によりCV値を算出した。
CV値(%)=標準偏差(nm)/平均値(nm)×100
<基材層を構成する繊維の断面形状>
日立株式会社製の走査型電子顕微鏡SU-8000を使用して、基材層の断面を2000倍で観察し、繊維の断面形状を確認した。
<ナノ繊維層の厚み>
日立株式会社製の走査型電子顕微鏡SU-8000を使用して、積層体の断面を2000倍で観察し、画像解析ソフトを用いてナノ繊維層の厚みを測定した。
<基材層および積層体の厚み>
株式会社東洋精機製作所製DIGI THICKNESS TESTERを用い、基材層および積層体に3.5g/cm2の荷重をかけて厚みを測定した。
<ナノ繊維層、基材層、および積層体の比容積>
目付および厚みから、下記式により比容積を算出した。
比容積(cm3/g)=厚み(mm)÷目付(g/m2)×1000
<基材層の表面抵抗率>
JIS K 6911リング法に準拠した方法・装置を用いて、測定・算出した。
<基材層および積層体のフラジール通気度>
JIS L 1913に準拠し、株式会社東洋精機製作所製 織布通気度試験機を用いて測定した。
<積層体の通気抵抗>
積層体のフラジール通気度および厚みから、下記式により通気抵抗を算出した。
通気抵抗(105N・sec/m4)=125÷積層体のフラジール通気度(cm3/cm2/sec)÷積層体の厚み(mm)
<積層体の平均孔径>
JIS K 3832バブルポイント法に準拠し、Porous Materials社製のAutometed Perm Porometerを用いて、平均孔径を測定した。
<ナノ繊維層と基材層との耐剥離性>
積層体を加工ラインへ通過させたときのナノ繊維層の剥離度合を目視で判断し、以下のように、◎、○、×の3段階で耐剥離性を評価した。
◎:加工ラインを通過させたときに、ナノ繊維層の剥離や破断が全く発生せず、満足できるレベルである。
○:加工ラインを通過させたときに、毛羽がわずかに発生するが、ナノ繊維層の剥離は見られず、許容できるレベルである。
×:加工ラインを通過させたときに、ナノ繊維層が剥離または破断箇所が発生し、製品へ加工することができない。
<基材層の準備>
[基材層A]
鞘/芯=高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート(40/60(重量比))の同芯鞘芯型複合繊維(平均繊維径17μm)からなるウェブを、熱カレンダー加工により得られた不織布を基材層Aとした。
基材層Aを構成する繊維の平均繊維径は17μmであり、基材層Aの目付は18.0g/m2、厚みは0.08mm、比容積は4.4cm3/g、フラジール通気度は292cm3/cm2/sec、表面抵抗率は108Ωであった。また、半円形の断面形状を有する繊維を含んでいた。
[基材層B]
鞘/芯=共重合ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート(50/50(重量比))の同芯鞘芯型複合繊維(平均繊維径17μm)と、ポリエチレンテレフタレートの単成分繊維(平均繊維径17μm)とを、重量比で67/33となるように混綿して得られたウェブを、熱カレンダー加工により得られた不織布を基材層Bとした。
基材層Bを構成する繊維の平均繊維径は17μmであり、基材層Bの目付は18.0g/m2、厚みは0.06mm、比容積は3.3cm3/g、フラジール通気度は327cm3/cm2/sec、表面抵抗率は108Ωであった。また、半円形の断面形状を有する繊維を含んでいた。
[基材層C]
ポリエチレンテレフタレートの単成分繊維(平均繊維径42μm)からなるウェブを、バインダー溶液に浸潤・乾燥させることで得られた不織布を基材層Cとした。
基材層Cを構成する繊維の平均繊維径は42μmであり、基材層Cの目付は43.0g/m2、厚みは0.19mm、比容積は4.4cm3/g、フラジール通気度は921cm3/cm2/sec、表面抵抗率は1010Ωであった。また、繊維は全て円形の断面形状を有していた。
[基材層D]
鞘/芯=共重合ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート(50/50(重量比))の同芯鞘芯型複合繊維(平均繊維径20μm)と、鞘/芯=共重合ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート(50/50(重量比))の同芯鞘芯型複合繊維(平均繊維径40μm)とを、重量比で50/50となるように混綿して得られたウェブを、熱カレンダー加工により得られた不織布を基材層Dとした。
基材層Dを構成する繊維の平均繊維径は24μmであり、基材層Dの目付は80.0g/m2、厚みは0.25mm、比容積は3.1cm3/g、フラジール通気度は82cm3/cm2/sec、表面抵抗率は108Ωであった。また、半円形の断面形状を有する繊維を含んでいた。
[基材層E]
鞘/芯=共重合ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート(50/50(重量比))の同芯鞘芯型複合繊維(平均繊維径30μm)からなるウェブを、高圧水流により交絡させることで得られた不織布を基材層Eとした。
基材層Eを構成する繊維の平均繊維径は30μmであり、基材層Eの目付は75.0g/m2、厚みは0.38mm、比容積は5.1cm3/g、フラジール通気度は147cm3/cm2/sec、表面抵抗率は1012Ωであった。また、繊維は全て円形の断面形状を有していた。
[基材層F]
セルロース繊維(平均繊維径15μm)とバインダーを水に分散させ、抄紙機で抄紙・乾燥させることで得られた不織布を基材層Fとした。
基材層Fを構成する繊維の平均繊維径は15μmであり、基材層Fの目付は200.0g/m2、厚みは0.60mm、比容積は3.0cm3/g、フラジール通気度は0.9cm3/cm2/sec、表面抵抗率は109Ωであった。また、扁平形の断面形状を有する繊維を含んでいた。
[基材層G]
セルロース繊維(平均繊維径15μm)とバインダーを水に分散させ、抄紙機で抄紙・乾燥させることで得られた不織布を基材層Gとした。
基材層Gを構成する繊維の平均繊維径は15μmであり、基材層Gの目付は100.0g/m2、厚みは0.40mm、比容積は4.0cm3/g、フラジール通気度は8cm3/cm2/sec、表面抵抗率は109Ωであった。また、扁平形の断面形状を有する繊維を含んでいた。
[基材層H]
ポリプロピレンの単成分繊維(平均繊維径23μm)からなるスパンボンド不織布を基材層Hとした。
基材Hを構成する繊維の平均繊維径は23μmであり、基材層Hの目付は41.0g/m2、厚みは0.32mm、比容積は7.8cm3/g、フラジール通気度は210cm3/cm2/sec、表面抵抗率は1013Ωを超えていた。また、繊維はエンボス点を除き、全て円形の断面形状を有していた。
[基材層I]
鞘/芯=高密度ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート(40/60(重量比))の同芯鞘芯型複合繊維(平均繊維径17μm)からなるウェブを、循環熱風によるスルーエアー加工ラインにより得られた不織布を基材層Iとした。
基材層Iを構成する繊維の平均繊維径は17μmであり、基材層Iの目付は18.0g/m2、厚みは0.36mm、比容積は20.0cm3/g、フラジール通気度は920cm3/cm2/sec、表面抵抗率は108Ωであった。また、繊維は全て円形の断面形状を有していた。
[基材層J]
ポリエチレンテレフタレートの単成分繊維(平均繊維径145μm)からなるネットを基材Jとした。
基材Jを構成する繊維の平均繊維径は145μmであり、基材層Jの目付は200.0g/m2、厚みは0.60mm、比容積は3.0cm3/g、フラジール通気度は820cm3/cm2/sec、表面抵抗率は1012Ωであった。また、繊維は全て円形の断面形状を有していた。
[実施例1]
ARKEMA社製のフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体20重量部、N,N-ジメチルアセトアミド48重量部、アセトン32重量部、臭化テトラブチルアンモニウム0.05重量部を混合し、紡糸溶液を調製した。次いで、ノズルと接地されたコレクターとの間に基材層Aを配置し、シリンジポンプにより内径0.3mmのノズルに紡糸溶液を1.0ml/hrで供給するとともに、ノズルに25kVの電圧を印加し、基材層上にナノ繊維層を静電紡糸することで積層体を作製した。ノズルとコレクターとの距離は20cmであった。
ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径は200nm、繊維径のCV値は27%であり、ナノ繊維層の目付は2.0g/m2、厚みは11.3μm、比容積は5.7cm3/gであった。
また、積層体の目付は20.0g/m2、厚みは0.091mm、比容積は4.6cm3/g、フラジール通気度は4.5cm3/cm2/sec、通気抵抗は305×105N・sec/m4、平均孔径は1.0μmであり、ナノ繊維層と基材層との耐剥離性は許容できるものであった。
[実施例2]
基材層Aに変えて、基材層Bを用いたこと以外、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径は200nm、繊維径のCV値は27%であり、ナノ繊維層の目付は2.0g/m2、厚みは11.3μm、比容積は5.7cm3/gであった。
また、積層体の目付は20.0g/m2、厚みは0.071mm、比容積は3.6cm3/g、フラジール通気度は5.0cm3/cm2/sec、通気抵抗は352×105N・sec/m4、平均孔径は1.0μmであり、ナノ繊維層と基材層との耐剥離性は満足できるものであった。
[実施例3]
基材層Aに変えて、基材層Cを用いたこと以外、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径は200nm、繊維径のCV値は27%であり、ナノ繊維層の目付は2.0g/m2、厚みは11.3μm、比容積は5.7cm3/gであった。
また、積層体の目付は45.0g/m2、厚みは0.201mm、比容積は4.5cm3/g、フラジール通気度は8.3cm3/cm2/sec、通気抵抗は75×105N・sec/m4、平均孔径は1.5μmであり、ナノ繊維層と基材層との耐剥離性は許容できるものであった。
[実施例4]
ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のポリフッ化ビニリデン18重量部、N,N-ジメチルアセトアミド82重量部、ドデシル硫酸ナトリウム0.025重量部を混合し、紡糸溶液を調製した。次いで、ノズルと接地されたコレクターとの間に基材層Bを配置し、シリンジポンプにより内径0.3mmのノズルに、紡糸溶液を1.5ml/hrで供給するとともに、ノズルに45kVの電圧を印加し、基材層上にナノ繊維層を静電紡糸することで積層体を作製した。ノズルとコレクターとの距離は15cmであった。
ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径は70nm、繊維径のCV値は30%であり、ナノ繊維層の目付は0.2g/m2、厚みは0.8μm、比容積は4.0cm3/g、であった。
また、積層体の目付は18.2g/m2、厚みは0.061mm、比容積は3.4cm3/g、フラジール通気度は46.3cm3/cm2/sec、通気抵抗は44×105N・sec/m4、平均孔径は5.8μmであり、ナノ繊維層と基材層との耐剥離性は満足できるものであった。
[実施例5]
ナノ繊維層の目付を0.6g/m2とした以外は、実施例4と同様にして、積層体を作製した。
ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径は70nm、繊維径のCV値は30%であり、ナノ繊維層の目付は0.6g/m2、厚みは2.3μm、比容積は3.8cm3/gであった。
また、積層体の目付は18.6g/m2、厚みは0.062mm、比容積は3.3cm3/g、フラジール通気度は15.4cm3/cm2/sec、通気抵抗は131×105N・sec/m4、平均孔径は1.9μmであり、ナノ繊維層と基材層との耐剥離性は満足できるものであった。
[実施例6]
ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のポリフッ化ビニリデン18重量部、N,N-ジメチルアセトアミド82重量部、撥水剤2重量部を混合し、紡糸溶液を調製した。次いで、ノズルと接地されたコレクターとの間に基材層Dを配置し、シリンジポンプにより内径0.3mmのノズルに、紡糸溶液を1.5ml/hrで供給するとともに、ノズルに45kVの電圧を印加し、基材層上にナノ繊維層を静電紡糸することで積層体を作製した。ノズルとコレクターとの距離は15cmであった。
ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径は100nm、繊維径のCV値は41%であり、ナノ繊維層の目付は2.4g/m2、厚みは9.0μm、比容積は3.8cm3/gであった。
また、積層体の目付は82.4g/m2、厚みは0.259mm、比容積は3.1cm3/g、フラジール通気度は2.4cm3/cm2/sec、通気抵抗は201×105N・sec/m4、平均孔径は0.7μmであり、ナノ繊維層と基材層との耐剥離性は許容できるものであった。
[実施例7]
ノズルとコレクターとの距離を10cmとし、ナノ繊維層の目付を1.6g/m2とした以外は、実施例6と同様にして、積層体を作製した。
ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径は100nm、繊維径のCV値は41%であり、ナノ繊維層の目付は1.6g/m2、厚みは4.5μm、比容積は2.8cm3/gであった。
また、積層体の目付は81.6g/m2、厚みは0.255mm、比容積は3.1cm3/g、フラジール通気度は2.4cm3/cm2/sec、通気抵抗は204×105N・sec/m4、平均孔径は0.7μmであり、ナノ繊維層と基材層との耐剥離性は満足できるものであった。
[実施例8]
ARKEMA社製のポリフッ化ビニリデン20重量部、N,N-ジメチルホルムアミド72重量部、メチルエチルケトン8重量部を混合し、紡糸溶液Aを調製した。また、ARKEMA社製のフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体25重量部、N、N-ジホルムアミド37.5重量部、テトラヒドロフラン37.5重量部を混合し、紡糸溶液Bを調製した。次いで、ノズルと接地されたコレクターとの間に基材層Eを配置し、シリンジポンプにより内径0.3mmの2本のノズルに、紡糸溶液Aを2.0ml/hr、紡糸溶液Bを1.6ml/hrで供給するとともに、ノズルに47.5kVの電圧を印加し、基材層上に、ナノ繊維層を静電紡糸することで積層体を作製した。紡糸溶液Aを吐出したノズルとコレクターとの距離は12.5cm、紡糸溶液Bを吐出したノズルとコレクターとの距離は17.5cmであった。
ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径は60nm、繊維径のCV値は129%であり、ナノ繊維層の目付は1.7g/m2、厚みは6.4μm、比容積は3.8cm3/gであった。
また、積層体の目付は76.7g/m2、厚みは0.386mm、比容積は5.0cm3/g、フラジール通気度は20.8cm3/cm2/sec、通気抵抗は16×105N・sec/m4、平均孔径は2.5μmであり、ナノ繊維層と基材層との耐剥離性は許容できるものであった。
[実施例9]
ナノ繊維層の目付を5.0g/m2とした以外、実施例8と同様にして、積層体を作製した。
ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径は60nm、繊維径のCV値は129%であり、ナノ繊維層の目付は5.0g/m2、厚みは18.7μm、比容積は3.7cm3/gであった。
また、積層体の目付は80.0g/m2、厚みは0.399mm、比容積は5.0cm3/g、フラジール通気度は6.9cm3/cm2/sec、通気抵抗は45×105N・sec/m4、平均孔径は1.6μmであり、ナノ繊維層と基材層との耐剥離性は許容できるものであった。
[実施例10]
ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のポリフッ化ビニリデン18重量部、N,N-ジメチルアセトアミド82重量部、ドデシル硫酸ナトリウム0.1重量部を混合し、紡糸溶液を調製した。次いで、ノズルと接地されたコレクターとの間に基材層Fを配置し、シリンジポンプにより内径0.3mmのノズルに、紡糸溶液を2.0ml/hrで供給するとともに、ノズルに45kVの電圧を印加し、基材層上にナノ繊維層を静電紡糸することで積層体を作製した。ノズルとコレクターとの距離は10cmであった。
ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径は90nm、繊維径のCV値は40%であり、ナノ繊維層の目付は0.2g/m2、厚みは0.6μm、比容積は3.0cm3/gであった。
また、積層体の目付は200.2g/m2、厚みは0.601mm、比容積は3.0cm3/g、フラジール通気度は0.8cm3/cm2/sec、通気抵抗は260×105N・sec/m4、平均孔径は5.2μmであり、ナノ繊維層と基材層との耐剥離性は満足できるものであった。
[実施例11]
ソルベイスペシャルティポリマーズ社製のポリフッ化ビニリデン18重量部、N,N-ジメチルアセトアミド82重量部、ドデシル硫酸ナトリウム0.025重量部を混合し、紡糸溶液を調製した。次いで、ノズルと接地されたコレクターとの間に基材層Gを配置し、シリンジポンプにより内径0.3mmのノズルに、紡糸溶液を2.0ml/hrで供給するとともに、ノズルに45kVの電圧を印加し、基材層上にナノ繊維層を静電紡糸することで積層体を作製した。ノズルとコレクターとの距離は15cmであった。
ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径は70nm、繊維径のCV値は22%であり、ナノ繊維層の目付は0.1g/m2、厚みは0.6μm、比容積は6.0cm3/gであった。
また、積層体の目付は100.1g/m2、厚みは0.401mm、比容積は4.0cm3/g、フラジール通気度は7.0cm3/cm2/sec、通気抵抗は45×105N・sec/m4、平均孔径は6.3μmであり、ナノ繊維層と基材層との耐剥離性は満足できるものであった。
[比較例1]
基材層Aに変えて、基材層Hを用いたこと以外、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径は200nm、繊維径のCV値は27%であり、ナノ繊維層の目付は2.0g/m2、厚みは11.3μm、比容積は5.7cm3/gであった。
また、積層体の目付は43.0g/m2、厚みは0.331mm、比容積は7.7cm3/g、フラジール通気度は4.5cm3/cm2/sec、通気抵抗は84×105N・sec/m4、平均孔径は1.0μmであり、ナノ繊維層がロールとの接触により剥離し、製品へ加工することができなかった。基材層の表面抵抗率が大きく、ナノ繊維層と基材層との接触面積が小さくなったためと考えられる。
[比較例2]
基材層Aに変えて、基材層Iを用いたこと以外、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径は200nm、繊維径のCV値は27%であり、ナノ繊維層の目付は2.0g/m2、厚みは11.3μm、比容積は5.7cm3/gであった。
また、積層体の目付は20.0g/m2、厚みは0.371mm、比容積は18.6cm3/g、フラジール通気度は7.1cm3/cm2/sec、通気抵抗は47×105N・sec/m4、平均孔径は1.3μmであったが、ナノ繊維層がロールとの接触により剥離し、製品へ加工することができなかった。基材層の比容積が大きく、ナノ繊維層と基材層との接触面積が小さくなったためと考えられる。
[比較例3]
ARKEMA社製のフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体30重量部、N,N-ジメチルホルムアミド17.5重量部、テトラヒドロフラン52.5重量部を混合し、紡糸溶液を調製した。次いで、ノズルと接地されたコレクターとの間に基材層Bを配置し、シリンジポンプにより内径0.3mmのノズルに、紡糸溶液を10.0ml/hrで供給するとともに、ノズルに45kVの電圧を印加し、基材層上に、ナノ繊維層を静電紡糸することで積層体を作製した。ノズルとコレクターとの距離は25cmであった。
ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径は1500nm、繊維径のCV値は29%であり、ナノ繊維層の目付は3.0g/m2、厚みは8.3μm、比容積は2.8cm3/gであった。
また、積層体の目付は21.0g/m2、厚みは0.068mm、比容積は3.2cm3/g、フラジール通気度は36.8cm3/cm2/sec、通気抵抗は50×105N・sec/m4、平均孔径は15.8μmであったが、ナノ繊維層がロールとの接触により剥離し、製品へ加工することができなかった。また、積層体の平均孔径が大きく、積層体の特性として満足できるものが得られなかった。ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径が大きく、ナノ繊維層と基材層との接触面積が小さくなったためと考えられる。
[比較例4]
基材層Aに変えて、基材層Jを用いたこと以外、実施例1と同様にして、積層体を作製した。
ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径は200nm、繊維径のCV値は27%であり、ナノ繊維層の目付は2.0g/m2、厚みは11.3μm、比容積は5.7cm3/gであった。
また、積層体の目付は202.0g/m2、厚みは0.611mm、比容積は3.0cm3/g、フラジール通気度は8.9cm3/cm2/sec、通気抵抗は23×105N・sec/m4、平均孔径は2.3μmであったが、ナノ繊維層がロールとの接触により剥離し、製品へ加工することができなかった。基材層を構成する繊維の平均繊維径が大きく、ナノ繊維層と基材層との接触面積が小さくなったためと考えられる。
実施例1~11、比較例1~4の結果を表1にまとめる。
Figure 2022085147000001
本発明の積層体は、ナノ繊維本来の特性を損なうことなく、ナノ繊維層と基材層とが剥離しにくく優れた加工性を有し、また、接着加工やカレンダー加工などの一体化工程を経ることなく十分な接着強度(耐剥離性)を有するため、一体化工程を省くことができ、高い生産性と良好な操業性で積層体を提供することができることから、フィルター用濾材や吸音材、マスク、防水透湿膜、二次電池用セパレータ、センサー材、細胞培養基材などとして好適に使用することができる。

Claims (10)

  1. ナノ繊維層と基材層とが積層された積層体であって、前記ナノ繊維層を構成する繊維の平均繊維径が1nm以上、1000nm未満であり、前記基材層を構成する繊維の平均繊維径が1~100μmであり、前記基材層の比容積が1~10cm3/gであり、前記基材層の表面抵抗率が106~1012Ωである、積層体。
  2. 前記基材層の目付が5~150g/m2であり、厚みが0.01~1mmである、請求項1に記載の積層体。
  3. 前記ナノ繊維層の目付が0.01~20g/m2であり、厚みが0.5~100μmであり、比容積が1~100cm3/gである、請求項1または2に記載の積層体。
  4. 前記ナノ繊維層を構成する繊維の成分がフッ素系樹脂を50重量%以上含み、前記基材層を構成する繊維の成分がポリエステル系樹脂またはセルロース系素材を30重量%以上含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 前記基材層が、楕円形、扁平形、または半円形の断面形状を有する繊維を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
  6. 前記積層体の目付が5~200g/m2であり、厚みが0.01~2mmであり、比容積が1~100cm3/gである、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層体。
  7. 前記積層体のフラジール通気度が0.1~200cm3/cm2/secである、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体。
  8. 前記積層体の通気抵抗が1×105~10000×105N・sec/m4である、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体。
  9. 前記積層体の平均孔径が0.1~15μmである、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層体。
  10. 前記基材層に、前記ナノ繊維層を静電紡糸する、請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
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CN117230572A (zh) * 2023-09-18 2023-12-15 浙江杰上杰新材料股份有限公司 一种高端装备用中低频段吸音功能性纳米纤维的制备方法

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