JP2022085074A - 圧電素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高温環境化においても電気抵抗値の低下抑制機能を保持しつつ、電荷の発生機能を付与できるようにして、機能性の安定化を図る。【解決手段】 圧電体1に電極10を付設して構成され、例えば、分極軸を有した基体2を備えるとともに基体2の分極軸に直交する一方面側をプラス面とし他方面側をマイナス面とした圧電体1と、圧電体1のプラス面及びマイナス面に夫々付設される電極10とを備えた圧電素子Sにおいて、基体2の一方面及び他方面の少なくとも何れかの面に積層体3を設け、積層体3を、ZnO中のZnサイトの一部をMgに置換して生成されるMgXZn1-XO(式中、Xは原子比率を示す)で構成し、0.1<X<0.6にした。【選択図】図1
Description
本発明は、電気エネルギーを機械エネルギーに変換し、あるいは、その逆の変換を行う圧電特性を備えた圧電素子に係り、特に、高温環境下での使用に有効な圧電素子に関する。
従来、この種の圧電素子としては、例えば、特許第5994135号公報(特許文献1)に記載の技術が知られている。図20に示すように、この圧電素子Saは、例えば内燃機関のグロープラグに取付けられる圧力センサに用いられるもので、分極軸を有した基体101を備えるとともにこの基体101の分極軸に直交する一方面側をプラス面とし他方面側をマイナス面とした圧電体100と、この圧電体100のプラス面及びマイナス面に夫々付設される電極110とを備えて構成されている。基体101の一方面及び他方面の両面には、夫々、積層体102が積層されている。具体的には、基体101としては、例えば、ZnOが用いられ、積層体102としては、SiO2が用いられている。
これにより、圧電素子Saの一方面及び他方面に圧力が印加されると、圧力に比例する分極電荷が出力されるので、この分極電荷を例えばチャージアンプなどで増幅し測定することで印加された圧力を測定することができる。この場合、基体101が抵抗温度係数の大きなZnOの場合、温度が上昇したときに、この温度上昇に伴い抵抗値が減少し、チャージアンプのオフセット電流が増加するため、チャージアンプ出力電圧のドリフト現象が発生するが、SiO2からなる積層体102が被覆されているので、高温環境化においても電気抵抗値の低下を抑制することができるようにしている。
ところで、上記従来の圧電素子Saにあっては、SiO2からなる積層体102を被覆して、高温環境化においても電気抵抗値の低下抑制を図っているが、基体101であるZnOの抵抗値が高温で著しく低下した場合、基体101に発生した電荷が基体内部で減少してしまうため、SiO2を積層してもドリフトを抑制できないという問題があった。
本発明は上記の点に鑑みて為されたもので、高温環境化においても電気抵抗値の低下抑制機能を保持しつつ、電荷の発生機能を付与できるようにして、機能性の安定化を図った圧電素子を提供することを目的とする。
本発明は上記の点に鑑みて為されたもので、高温環境化においても電気抵抗値の低下抑制機能を保持しつつ、電荷の発生機能を付与できるようにして、機能性の安定化を図った圧電素子を提供することを目的とする。
本願発明者は、長年の研究により、ZnO中のZnサイトの一部をMgに置換して生成される酸化亜鉛系混晶体としてのMgXZn1-XOに着目し、Mgの特定の原子比率において、高温環境化における特性が優れていることを見出し、上記の目的を達成するための圧電素子を発明した。
本発明の圧電素子は、圧電体に電極を付設して構成される圧電素子において、
上記圧電体の全部もしくは一部を、ZnO中のZnサイトの一部をMgに置換して生成されるMgXZn1-XO(式中、Xは原子比率を示す)で構成し、0.1<X<0.6にした構成としている。
本発明の圧電素子は、圧電体に電極を付設して構成される圧電素子において、
上記圧電体の全部もしくは一部を、ZnO中のZnサイトの一部をMgに置換して生成されるMgXZn1-XO(式中、Xは原子比率を示す)で構成し、0.1<X<0.6にした構成としている。
ZnOのZnのサイトをMgに置き換えることによって、バンドギャップエネルギーが大きくなるため、残留キャリア密度が低くなることで抵抗率が高抵抗率化する。
Xが0.1に満たないと十分な効果を発揮できず、0.6を超えると、Mgの量が多くなり高い抵抗値は確保できるが、結晶構造がウルツ鉱構造から岩塩型構造へ相転移してしまい圧電性が減少するので好ましくない。また、室温での抵抗値に及ぼすXの依存性、高温化におけるXの依存性を考慮すると、望ましくは、0.3≦X≦0.55、より望ましくは、0.35≦X≦0.5である。
Xが0.1に満たないと十分な効果を発揮できず、0.6を超えると、Mgの量が多くなり高い抵抗値は確保できるが、結晶構造がウルツ鉱構造から岩塩型構造へ相転移してしまい圧電性が減少するので好ましくない。また、室温での抵抗値に及ぼすXの依存性、高温化におけるXの依存性を考慮すると、望ましくは、0.3≦X≦0.55、より望ましくは、0.35≦X≦0.5である。
ここで、圧電体の一部をMgXZn1-XOで構成する場合、他の部分(後述の「基体」に相当)の材料は、特に限定されず、例えば、酸化亜鉛(ZnO),窒化ガリウム(GaN),窒化アルミニウム(AlN)等を挙げることができる。
また、電極を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、プラチナ(Pt),アルミニウム(Al),モリブデン(Mo),クロム(Cr),チタン(Ti),ニッケル(Ni),銅(Cu),タングステン(W),タルタル(Ta),ニオブ(Nb),鉄(Fe),コバルト(Co),亜鉛(Zn),ジルコニウム(Zr),銀(Ag),金(Au),ケイ素(Si)などを挙げることができる。これらの材料を層状にして用いることができる。
これにより、圧電素子の一方面及び他方面に圧力が印加されると、圧力に比例する分極電荷が出力されるので、この分極電荷を測定することで印加された圧力を測定することができる。一方、これとは逆に、分極方向に平行に電場を加えると、圧電体中に長さの変化等の変位が生じる。この場合、温度が上昇してZnOの抵抗値が低下しても、MgXZn1-XO(0.1<X<0.6)は、高抵抗体であるので、高温環境化においても高抵抗を維持することができる。また、MgXZn1-XO(0.1<X<0.6)は、圧電性があり電荷の発生機能を有するので、圧力の印加の場合には、電荷の出力が低下したり再現性を損なうことがなく、一方、電場の印加の場合には、圧電体の変位が低下したり再現性を損なうことがなく、そのため、機能性の安定化を図ることができる。
より具体的には、本発明の圧電素子は、分極軸を有した基体を備えるとともに該基体の分極軸に直交する一方面側をプラス面とし他方面側をマイナス面とした圧電体と、該圧電体のプラス面及びマイナス面に夫々付設される電極とを備えた圧電素子において、
上記基体を、ZnO中のZnサイトの一部をMgに置換して生成されるMgXZn1-XO(式中、Xは原子比率を示す)で構成し、0.1<X<0.6にした構成としている。
上記基体を、ZnO中のZnサイトの一部をMgに置換して生成されるMgXZn1-XO(式中、Xは原子比率を示す)で構成し、0.1<X<0.6にした構成としている。
これは、圧電体の全部を、MgXZn1-XOにしたものである。例えば、MgXZn1-XOの薄膜や板状に形成して作製することができる。
これにより、上述もしたが、圧電素子の一方面及び他方面に圧力が印加されると、圧力に比例する分極電荷が出力されるので、この分極電荷を測定することで印加された圧力を測定することができる。一方、これとは逆に、分極方向に平行に電場を加えると、圧電体中に長さの変化等の変位が生じる。温度が上昇してZnOの抵抗値が減少しても、MgXZn1-XOは、高抵抗体であるので、高温環境化においても高抵抗を維持することができる。また、圧電体の全部を、MgXZn1-XOにしたので、全体が均一になり、温度変化による素子インピーダンスの変化が小さくなることで、より一層機能性の安定化を図ることができる。
これにより、上述もしたが、圧電素子の一方面及び他方面に圧力が印加されると、圧力に比例する分極電荷が出力されるので、この分極電荷を測定することで印加された圧力を測定することができる。一方、これとは逆に、分極方向に平行に電場を加えると、圧電体中に長さの変化等の変位が生じる。温度が上昇してZnOの抵抗値が減少しても、MgXZn1-XOは、高抵抗体であるので、高温環境化においても高抵抗を維持することができる。また、圧電体の全部を、MgXZn1-XOにしたので、全体が均一になり、温度変化による素子インピーダンスの変化が小さくなることで、より一層機能性の安定化を図ることができる。
また、本発明の圧電素子は、分極軸を有した基体を備えるとともに該基体の分極軸に直交する一方面側をプラス面とし他方面側をマイナス面とした圧電体と、該圧電体のプラス面及びマイナス面に夫々付設される電極とを備えた圧電素子において、上記基体の一方面及び他方面の少なくとも何れかの面に積層体を設け、該積層体を、ZnO中のZnサイトの一部をMgに置換して生成されるMgXZn1-XO(式中、Xは原子比率を示す)で構成し、0.1<X<0.6にした構成としている。
これは、圧電体の一部を、MgXZn1-XOにしたものである。周知の液相法や気相法等を用い、基体に対して、MgXZn1-XOを被覆して作製することができる。液相法としては、例えば、液相エピタキシー法を挙げることができる。気相法としては、PVD法やCVD法等があり、PVD法として、分子線エピタキシー(MBE)法やイオンプレーティング法等の真空蒸着法,スパッタ法等を挙げることができる。CVD法としては、有機金属CVD法、ミストCVD法およびプラズマCVD法などが挙げられる。その他、塗布法,印刷法等を挙げることができる。適宜選択してよい。
これにより、上述もしたが、圧電素子の一方面及び他方面に圧力が印加されると、圧力に比例する分極電荷が出力されるので、この分極電荷を測定することで印加された圧力を測定することができる。一方、これとは逆に、分極方向に平行に電場を加えると、圧電体中に長さの変化等の変位が生じる。この場合、温度が上昇してZnOの抵抗値が減少しても、MgXZn1-XO(0.1<X<0.6)は、高抵抗体であるので、高温環境化においても高抵抗を維持することができる。また、MgXZn1-XO(0.1<X<0.6)は、電荷の発生機能を有するので、圧力の印加の場合には、電荷の出力が低下したり再現性を損なうことがなく、一方、電場の印加の場合には、圧電体の変位が低下したり再現性を損なうことがなく、そのため、機能性の安定化を図ることができる。
この場合、上記基体を、ZnOで構成し、該基体の厚さをT1、上記積層体の厚さをT2としたとき、10μm≦T1≦1000μm、0.1μm≦T2≦100μmにしたことが有効である。
そして、必要に応じ、0.3≦X≦0.55にした構成としている。より望ましくは、0.35≦X≦0.5である。上述もしたように、Xが0.1に満たないと十分な効果を発揮できず、0.6を超えると、Mgの量が多くなり高い抵抗値は確保できるが、結晶構造がウルツ鉱構造から岩塩型構造へ相転移してしまい圧電性が減少するので好ましくないが、これにより、より確実に、本発明の効果を発揮させることができる。
特に、試験によれば、Xが0.35未満の場合、MgXZn1-XOのバンドギャップは室温で4.0eV以下となる。
特に、試験によれば、Xが0.35未満の場合、MgXZn1-XOのバンドギャップは室温で4.0eV以下となる。
この場合、上記圧電体を支持して該基体の振動を許容する支持体を設けた構成とすることができる。
支持体を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、ケイ素(Si),二酸化ケイ素(SiO2)、それらの積層体であるSOI(Silicon On Insulatar)基板、サファイア、窒化アルミニウムおよび窒化ガリウムなどを挙げることができる。これらの材料を層状にして用いることができる。
これにより、電場を印加することにより、圧電体は振動し、これが支持体によって許容されるので、例えば、ミラーなどに用いられるカンチレバー型のアクチュエータやマイクロスピーカなどに用いられるメンブレン型のアクチュエータとして用いることができる。
また、必要に応じ、MgXZn1-XOを構成するOサイトの一部をNに置換した構成としている。
一般にZnOはO欠損や格子間Znに起因する欠陥等や金属元素などの不純物がドナー型欠陥となり、これらが電子を放出することで抵抗値が低下することが知られている。格子中のOをNで置換すると正孔を放出するアクセプタとして働くため、ドナー型欠陥による抵抗値低下を補償し抵抗値低下を抑制することが可能となるので、電荷の発生機能が担保され、機能性の安定化を図ることができる。
一般にZnOはO欠損や格子間Znに起因する欠陥等や金属元素などの不純物がドナー型欠陥となり、これらが電子を放出することで抵抗値が低下することが知られている。格子中のOをNで置換すると正孔を放出するアクセプタとして働くため、ドナー型欠陥による抵抗値低下を補償し抵抗値低下を抑制することが可能となるので、電荷の発生機能が担保され、機能性の安定化を図ることができる。
この場合、上記NのMgXZn1-XOに対するNの原子濃度を1012/cm3~1017/cm3にしたことが有効である。
本発明によれば、圧電素子の一方面及び他方面に圧力が印加されると、圧力に比例する分極電荷が出力されるので、この分極電荷を測定することで印加された圧力を測定することができる。一方、これとは逆に、分極方向に平行に電場を加えると、圧電体中に長さの変化等の変位が生じる。この場合、温度が上昇すると、この温度上昇に伴い抵抗値が減少しようとするが、MgXZn1-XOは、高抵抗体として機能し、高温環境化においても電気抵抗値の低下を抑制することができる。また、MgXZn1-XOは、電荷の発生機能を有するので、圧力の印加の場合には、電荷の出力が低下したり再現性を損なうことがなく、一方、電場の印加の場合には、圧電体の変位が低下したり再現性を損なうことがなく、そのため、機能性の安定化を図ることができる。
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る圧電素子について詳細に説明する。
図1には、本発明の第1の実施の形態に係る圧電素子を示している。この圧電素子Sは、圧電体1に電極10を付設して構成され、図2に示すように、圧電体1の全部もしくは一部(実施の形態では一部)を、ZnO中のZnサイトの一部をMgに置換して生成されるMgXZn1-XO(式中、Xは原子比率を示す)で構成されている。
図1には、本発明の第1の実施の形態に係る圧電素子を示している。この圧電素子Sは、圧電体1に電極10を付設して構成され、図2に示すように、圧電体1の全部もしくは一部(実施の形態では一部)を、ZnO中のZnサイトの一部をMgに置換して生成されるMgXZn1-XO(式中、Xは原子比率を示す)で構成されている。
詳しくは、この圧電素子Sは、分極軸を有した基体2を備えるとともに基体2の分極軸に直交する一方面側をプラス面とし他方面側をマイナス面とした圧電体1と、圧電体1のプラス面及びマイナス面に夫々付設される電極10とを備えて構成されている。基体2の一方面及び他方面の少なくとも何れかの面(実施の形態では一方面)には、積層体3が設けられている。そして、この積層体3が、ZnO中のZnサイトの一部をMgに置換して生成されるMgXZn1-XO(式中、Xは原子比率を示す)で構成されている。
圧電体1において、基体2を構成する材料は、特に限定されず、上述したように種々の材料から選択することができる。実施の形態では、酸化亜鉛(ZnO)で構成されている。ZnOは、板状に形成されており、分極軸を有し、+c面及び-c面を有して構成されている。実施の形態では、積層体3は、基体2の+c面に積層される。その結果、圧電体1において、積層体3の表面が一方面(+c面)として構成され、基体2の-c面が他方面(-c面)として構成される。
積層体3は、図2も参照し、ZnO中のZnサイトの一部をMgに置換して生成されるMgXZn1-XO(式中、Xは原子比率を示す)で構成されるが、原子比率Xの範囲は、0.1<X<0.6にしている。Xが0.6を超えると、Mgの量が多くなり高い抵抗値は確保できるが、結晶構造がウルツ鉱型構造から岩塩型構造へ相転移し圧電性が減少するので、好ましくない。望ましくは、0.3≦X≦0.55、より望ましくは、0.35≦X≦0.5である。
また、MgXZn1-XOを構成するOサイトの一部がNに置換されている。MgXZn1-XO中のNの原子濃度を1012/cm3~1017/cm3にしている。
そして、基体2の厚さをT1、積層体3の厚さをT2としたとき、10μm≦T1≦1000μm、0.1μm≦T2≦100μmにしている。実施の形態では、T1=500μm、T2=0.6μmにしている。
本実施の形態に係る圧電体1は、周知の液相法や気相法等を用い、基体2に対して、MgXZn1-XOを被覆して作製することができる。液相法としては、例えば、液相エピタキシー法を挙げることができる。気相法としては、PVD法やCVD法等があり、PVD法として、分子線エピタキシー(MBE)法やイオンプレーティング法等の真空蒸着法,スパッタ法等を挙げることができる。CVD法としては、有機金属CVD法、ミストCVD法およびプラズマCVD法などが挙げられる。その他、ゾルゲル法,塗布法,印刷法等を挙げることができる。適宜選択してよい。次に、圧電体1の製法例を挙げる。
(1)スパッタ法(図3参照)
高真空に保たれた真空チャンバー内に成膜用基板(基体2)を載置したステージと、板状の成膜用材料(ターゲット)を取り付けたカソードが取り付けられ、ステージとカソード間に電圧を印加しアルゴンガスをチャンバー内に流入させて放電させ、ターゲット材を基板(基体2)に成膜する物理的蒸着法の一種である。成膜用原料には、MgXZn1-XOターゲットやMg-Zn合金ターゲット、またはZnターゲットとMgターゲットの組み合わせやZnOターゲットとMgOターゲットの組み合わせが使用される。成膜中に反応性ガスとして酸素ガスを流入することで酸化を促進し酸素欠損欠陥の発生を防止することが可能となる。また、窒素ガスを流入することでMgXZn1-XO膜中のOと置換させることで窒素アクセプタのドープが可能である。
高真空に保たれた真空チャンバー内に成膜用基板(基体2)を載置したステージと、板状の成膜用材料(ターゲット)を取り付けたカソードが取り付けられ、ステージとカソード間に電圧を印加しアルゴンガスをチャンバー内に流入させて放電させ、ターゲット材を基板(基体2)に成膜する物理的蒸着法の一種である。成膜用原料には、MgXZn1-XOターゲットやMg-Zn合金ターゲット、またはZnターゲットとMgターゲットの組み合わせやZnOターゲットとMgOターゲットの組み合わせが使用される。成膜中に反応性ガスとして酸素ガスを流入することで酸化を促進し酸素欠損欠陥の発生を防止することが可能となる。また、窒素ガスを流入することでMgXZn1-XO膜中のOと置換させることで窒素アクセプタのドープが可能である。
(2)分子線エピタキシー(MBE)法(図4参照)
分子線エピタキシー法は超高真空に保たれた真空チャンバー内で、成膜用材料を蒸発させ、蒸発した材料が他の分子と衝突せずに基板(基体2)に到達することで高純度な成膜が可能な真空蒸着法の一種である。成膜用チャンバーには、高純度PBN製るつぼとヒーターからなるクヌーセンセル(Kセル)、酸素ラジカルを発生する酸素ラジカルガン、窒素ラジカルを発生する窒素ラジカルガンがチャンバー下部に載置される。成膜用原料には、MgとZnが使用され、各々専用のKセルに補充され、成膜時はKセル温度を250℃から450℃の範囲で制御して蒸発させる。そして酸素ラジカルガンから酸素ラジカルを基板(基体2)へ照射することでMgとZnを酸化させてMgXZn1-XO薄膜を成膜することが可能となる。尚、酸素ラジカルに加え、窒素ラジカルを照射することで、MgXZn1-XO薄膜中に窒素をドープすることが出来る。
分子線エピタキシー法は超高真空に保たれた真空チャンバー内で、成膜用材料を蒸発させ、蒸発した材料が他の分子と衝突せずに基板(基体2)に到達することで高純度な成膜が可能な真空蒸着法の一種である。成膜用チャンバーには、高純度PBN製るつぼとヒーターからなるクヌーセンセル(Kセル)、酸素ラジカルを発生する酸素ラジカルガン、窒素ラジカルを発生する窒素ラジカルガンがチャンバー下部に載置される。成膜用原料には、MgとZnが使用され、各々専用のKセルに補充され、成膜時はKセル温度を250℃から450℃の範囲で制御して蒸発させる。そして酸素ラジカルガンから酸素ラジカルを基板(基体2)へ照射することでMgとZnを酸化させてMgXZn1-XO薄膜を成膜することが可能となる。尚、酸素ラジカルに加え、窒素ラジカルを照射することで、MgXZn1-XO薄膜中に窒素をドープすることが出来る。
このように形成された圧電体1においては、基体2に結晶欠陥が少ないMgXZn1-XOの薄膜の積層体3が積層される。図11に示すように、後述する実施例1に係る積層体の表面の電子顕微鏡写真を見て分かるように、積層体3は、粗さが極めて小さく、平坦な膜として生成される。
また、原子比率Xの範囲は、0.1<X<0.6にしているので、ウルツ鉱型構造を維持し、図2に示すように、ZnOとの原子の配列が綺麗に並んで、格子整合する。そのため、圧電素子Sとしての性能が極めて良くなる。望ましくは、0.3≦X≦0.55、より望ましくは、0.35≦X≦0.5である。Xをこの範囲にすることによって、ウルツ構造を維持するだけでなく、МgとZnのイオン半径の違いに起因して発生する歪も許容範囲となる。その結果、結晶欠陥の発生を抑制した上でワイドバンドギャップ化するので、圧電特性と高抵抗率の両立が可能となる。
また、原子比率Xの範囲は、0.1<X<0.6にしているので、ウルツ鉱型構造を維持し、図2に示すように、ZnOとの原子の配列が綺麗に並んで、格子整合する。そのため、圧電素子Sとしての性能が極めて良くなる。望ましくは、0.3≦X≦0.55、より望ましくは、0.35≦X≦0.5である。Xをこの範囲にすることによって、ウルツ構造を維持するだけでなく、МgとZnのイオン半径の違いに起因して発生する歪も許容範囲となる。その結果、結晶欠陥の発生を抑制した上でワイドバンドギャップ化するので、圧電特性と高抵抗率の両立が可能となる。
そして、この圧電体1には、電極10が付設される。電極は2層になっており、圧電体1に積層される第1電極層11と第1電極層11に積層される第2電極層12とからなる。電極10を構成する材料としては、特に限定されず、上述したように種々の材料から選択することができる。実施の形態では、第1電極層11を構成するチタン(Ti)と、第2電極層12を構成するプラチナ(Pt)とが選択され、圧電体1の一方面(+c面)及び他方面(-c面)に夫々、Ti,Ptの順に積層されている。Tiの厚さは、10~30nm、Ptの厚さは、20~100nmにしている。
この電極10を圧電体1に付設するときは、例えば、電極10膜の成膜には電子線蒸着装置やRFマグネトロンスパッタ装置が使用され、電極10膜のパターニングには、フォトレジストを使用したリフトオフ法が用いられる。
この場合、Tiは、ZnOやMgXZn1-XOからなる酸化物との密着性がよく、PtのTiに対する密着性も優れるので、電極10は圧電素子Sに確実に付設される。また、耐熱性にも優れる。
この場合、Tiは、ZnOやMgXZn1-XOからなる酸化物との密着性がよく、PtのTiに対する密着性も優れるので、電極10は圧電素子Sに確実に付設される。また、耐熱性にも優れる。
従って、この実施の形態に係る圧電素子Sによれば、圧電素子Sの一方面及び他方面に圧力が印加されると、圧力に比例する分極電荷が出力されるので、この分極電荷を測定することで印加された圧力を測定することができる。一方、これとは逆に、分極方向に平行に電場を加えると、圧電体1中に長さの変化等の変位が生じる。この場合、温度が上昇してZnOの抵抗値が低下しても、MgXZn1-XOは、高抵抗体であるので、高温環境化においても高抵抗を維持することができる。また、MgXZn1-XOは、圧電性があり電荷の発生機能を有するので、圧力の印加の場合には、電荷の出力が低下したり再現性を損なうことがなく、一方、電場の印加の場合には、圧電体1の変位が低下したり再現性を損なうことがなく、そのため、機能性の安定化を図ることができる。
また、MgXZn1-XOを構成するOサイトの一部をNに置換したので、Nが正孔を放出するアクセプタとして働くため、ドナー型欠陥による抵抗値低下を補償し抵抗値低下を抑制することが可能となるので、電荷の発生機能が担保され、機能性の安定化を図ることができる。
図5には、本発明の第2の実施の形態に係る圧電素子Sを示している。この圧電素子Sは、第1の実施の形態に係る圧電素子Sと異なって、圧電体1において、MgXZn1-XOからなる積層体3は、基体2の-c面に積層される。その結果、圧電体1において、基体2の+c面が一方面(+c面)として構成され、積層体3の表面が他方面(-c面)として構成される。他は上記と同様である。これによっても、上記と同様の作用,効果を奏する。
図6には、本発明の第3の実施の形態に係る圧電素子Sを示している。この圧電素子Sは、第1及び第2の実施の形態に係る圧電素子Sと異なって、圧電体1において、MgXZn1-XOからなる積層体3は、基体2の+c面及び-c面の両面に積層されている。その結果、圧電体1において、積層体3の両表面が、夫々、一方面(+c面)及び他方面(-c面)として構成される。積層体を2面に形成することで、臨界膜厚に制限される膜厚を2倍に出来るので、圧電素子抵抗をより高抵抗化することが可能となる。他は上記と同様である。これによっても、上記と同様の作用,効果を奏する。
図7には、本発明の第4の実施の形態に係る圧電素子Sを示している。この圧電素子Sは、第1乃至第3の実施の形態に係る圧電素子Sと異なって、圧電体1は、その全部がMgXZn1-XOで構成されている。MgXZn1-XOの原子比率Xは上記と同様である。圧電体1の厚さは、例えば、0.05mm~3.0mmに設定される。この圧電体1は、例えば、Zn化合物とMg化合物を原料とした液相成長法やミスト化学気相成長法によりMgXZn1-XOの基板に形成して作製することができる。または、サファイア基板等にMgXZn1-XO厚膜を形成後、レーザー剥離法などでMgXZn1-XO厚膜を基板から剥離して自立基板とすることができる。これにより、圧電体1の全部を、MgXZn1-XOにしたので、全体が均一になり素子抵抗も高抵抗化するので、より一層機能性の安定化を図ることができる。他の作用,効果は上記と同様である。
図8には、本発明の第5の実施の形態に係る圧電素子Sを示している。この圧電素子Sは、第4の実施の形態に係る圧電素子S(図7)と同様に、圧電体1の全部がMgXZn1-XOで構成されている。また、この圧電素子Sは、圧電体1のプラス面及びマイナス面の何れか一方に付設される電極10に、圧電体1を支持してこの圧電体1の振動を許容する支持体20を設けて構成されている。詳しくは、一方の電極10(A)は、圧電体1より大きく形成されたベース電極13と、ベース電極13の圧電体1側の露出面に付設された通電電極14とを備えて構成されている。通電電極14は、ベース電極13に積層される上記と同様の第1電極層11及び第2電極層12からなる。ベース電極13としては、ジルコニウム(Zr)が選択され、他方の電極10(B)及び通電電極14として、上記と同様に、第1電極層11を構成するチタン(Ti)と、第2電極層12を構成するプラチナ(Pt)とが選択されている。電極10の材質はこれに限定されない。
支持体20は、ベース電極13の圧電体1とは反対側の外側面の全面に付設されており、その材料としては、特に限定されないが、例えば、ケイ素(Si),二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)などを挙げることができる。これらの材料を層状にして用いることができる。実施の形態では、ケイ素(Si)を用いて構成している。例えば光スキャナー用ミラーとして使用する場合、支持体20となるシリコンを片持ち梁形状等に加工する。またマイクロスピーカとして使用する場合は、シリコンをメンブレン状に加工する。
これにより、電場を印加することにより、圧電体1は振動し、これが支持体20によって許容されるので、アクチュエータとして用いることができる。
図9には、本発明の第6の実施の形態に係る圧電素子Sを示している。この圧電素子Sは、第4の実施の形態に係る圧電素子S(図7)と同様に、圧電体1の全部がMgXZn1-XOで構成されている。また、この圧電素子Sは、圧電体1のプラス面及びマイナス面の何れか一方に付設される電極10に、圧電体1を支持してこの圧電体1の振動を許容する支持体20を設けて構成されている。詳しくは、一方の電極10(A)は、圧電体1より大きく形成されたベース電極13と、ベース電極13の圧電体1側の露出面に付設された通電電極14とを備えて構成されている。通電電極14は、ベース電極13に積層される上記と同様の第1電極層11及び第2電極層12からなる。ベース電極13の材料として、MgXZn1-XO薄膜との格子整合を考慮してジルコニウム(Zr)を選択している。他方の電極10(B)及び通電電極14として、上記と同様に、第1電極層11を構成するチタン(Ti)と、第2電極層12を構成するプラチナ(Pt)とが選択されている。電極10の材質はこれに限定されない。
支持体20は、ベース電極13に積層される第1支持体21と、第1支持体21を支持する第2支持体22とからなり、第1支持体21はベース電極13の圧電体1とは反対側の外側面の全面に付設されており、その材料としては、特に限定されないが、例えば、ケイ素(Si),二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ガリウム(GaN)、窒化アルミニウム(AlN)などを挙げることができる。これらの材料を層状にして用いることができる。実施の形態では、SOI基板上活性層のケイ素(Si)を用いて構成している。ベース電極13,他方の電極10(B)及び第1支持体21は、片持ち梁形状に形成されており、第2支持体22は第1支持体21を片持ち支持している。第2支持体21は、第1支持体21に積層される一方部23と、一方部23に積層される他方部14とからなり、一方部23は、二酸化ケイ素(SiO2)で構成され、他方部24は、ケイ素(Si)で構成されている。
実施の形態において、例えば、ベース電極13の厚さaは、a=50nm、第1支持体21の厚さbは、b=30μm、第2支持体22の二酸化ケイ素(SiO2)からなる一方部23の厚さcは、c=1μm、ケイ素(Si)からなる他方部24の厚さdは、d=0.5mmに設定されている。また、第2支持体22から突出する圧電体1,ベース電極13及び第1支持体21の長さLは、L=100μmに設定されている。
これにより、電場を印加することにより、圧電体1は振動するが、圧電体1,ベース電極13及び第1支持体21が第2支持体22に片持ち支持されてその振動が許容されるので、レーザー光等をスキャンするカンチレバー型の光ミラーとして用いることができる。
図10には、本発明の第7の実施の形態に係る圧電素子Sを示している。この圧電素子Sは、第6の実施の形態に係る圧電素子S(図9)の変形例であり、第6の実施の形態に係るベース電極13を取り去って、第1支持体21に低抵抗率シリコンを使用することで、これをベース電極13として共用したものである。また、他方の電極10(B)及び通電電極14として、上記と同様に、第1電極層11を構成するチタン(Ti)と、第2電極層12を構成するプラチナ(Pt)とが選択されている。これによっても、電場を印加することにより、圧電体1は振動するが、圧電体1,ベース電極13(第1支持体21)が第2支持体22に片持ち支持されてその振動が許容されるので、レーザー光等をスキャンするカンチレバー型の光ミラーとして用いることができる。
次に、実施例について説明する。実施例は、上記第1の実施の形態に係る圧電素子Sの形態のものであり、MgXZn1-XOからなる積層体3は、基体2の+c面に積層している。
<実施例1>
この圧電素子Sの圧電体1は、図4に示すように、上記の分子線エピタキシー(MBE)法(ユニバーサルシステムズ社製「分子線エピタキシー装置(UMB-200)」使用)によって作製した。基体2として10mm×10mmで厚さT1が0.5mmのZnO基板を用いる。ドーピングをしていないc面ZnO基板を使用し、抵抗率は1~1011Ω・cmのものを使用する。成膜手順は次の通りである。10-8Pa台まで真空引きされた真空チャンバー内に成膜用ZnO基板(基体2)を成膜用ステージに設置した後、基板(基体2)の表面についた有機物などの除去を目的として基板(基体2)の温度を850℃まで加熱し、酸素ガスを1.5sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)流しラジカルガンで酸素ラジカルを発生させ、酸素ラジカルによる基板(基体2)の表面のクリーニングと酸化を3分間、さらに30分間サーマルクリーニングを行う。次に、低温バッファ層を形成するため基板(基体2)の温度を400℃まで10℃/分の降温速度で降温後、酸素ガス(純度6N)を1.5sccm流しラジカルガンで酸素ラジカルを発生させ、酸素ラジカルによる基板(基体2)の表面のクリーニングと酸化を3分間行う。その後、酸素ラジカルを発生させた状態でMg(純度4N)とZn(純度6N)の原料を真空中に設置されたKセルで加熱し蒸発させてMgXZn1-XOの薄膜をZnO基板の+c面上に形成する。
<実施例1>
この圧電素子Sの圧電体1は、図4に示すように、上記の分子線エピタキシー(MBE)法(ユニバーサルシステムズ社製「分子線エピタキシー装置(UMB-200)」使用)によって作製した。基体2として10mm×10mmで厚さT1が0.5mmのZnO基板を用いる。ドーピングをしていないc面ZnO基板を使用し、抵抗率は1~1011Ω・cmのものを使用する。成膜手順は次の通りである。10-8Pa台まで真空引きされた真空チャンバー内に成膜用ZnO基板(基体2)を成膜用ステージに設置した後、基板(基体2)の表面についた有機物などの除去を目的として基板(基体2)の温度を850℃まで加熱し、酸素ガスを1.5sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)流しラジカルガンで酸素ラジカルを発生させ、酸素ラジカルによる基板(基体2)の表面のクリーニングと酸化を3分間、さらに30分間サーマルクリーニングを行う。次に、低温バッファ層を形成するため基板(基体2)の温度を400℃まで10℃/分の降温速度で降温後、酸素ガス(純度6N)を1.5sccm流しラジカルガンで酸素ラジカルを発生させ、酸素ラジカルによる基板(基体2)の表面のクリーニングと酸化を3分間行う。その後、酸素ラジカルを発生させた状態でMg(純度4N)とZn(純度6N)の原料を真空中に設置されたKセルで加熱し蒸発させてMgXZn1-XOの薄膜をZnO基板の+c面上に形成する。
ここで、例えば、MgのKセル温度370℃、ZnのKセル温度320℃で、低温バッファ層の典型的な成膜時間は5分間にする。次に、基板(基体2)の温度を750℃まで10℃/分の昇温速度で昇温後、低温バッファ層成膜と同様のKセル温度条件において、酸素ラジカルを発生させた雰囲気においてさらに窒素ガス(純度6N)を0.5sccm流し窒素ラジカルガンで窒素ラジカルを発生させ、MgとZnのKセルからMgとZnを蒸発させることで窒素ドープされたMgXZn1-XO薄膜を1.5時間から3時間成膜する。成膜されたMgXZn1-XO薄膜の膜厚は0.3~1 μmである。図11に、実施例1に係る積層体(MgXZn1-XO薄膜)の表面の電子顕微鏡写真を示す。MgXZn1-XO薄膜は、粗さが極めて小さく、平坦な膜として生成される。また、成膜されたMgXZn1-XO薄膜はZnO基板の極性を引き継ぎ分極方向が揃ったZn極性の膜となる。
MgXZn1-XO薄膜成膜後、試料の表裏にリフトオフ法でTiとPtを各々膜厚20nm、80nm、1.5mm×1.5mmの正方形パターンに形成した。尚、MgXZn1-XO薄膜を成膜したZn面側には、Zn面の同定のため正方形電極10パターンの1コーナーを面取りし、表裏の区別ができるようにしてある。Pt/Ti電極10が形成された基板は、ダイシングソーにより2.0mm×2.0mmサイズにダイシングされ、圧力センサ素子が完成する。
<実施例2>
この圧電素子Sの圧電体1は、図3に示すように、上記のスパッタ法(ULVAC社製「三元スパッタ装置(MPS-3000)」使用)によって作製した。成膜用基板を成膜用ステージに設置後、真空チャンバー内を10-5Pa台まで真空引きし、基板温度を500℃まで加熱する。次に、アルゴンガス(純度6N)を20sccm、反応性ガスとして酸素ガス(純度5N)と窒素ガス(純度6N)をそれぞれ10sccmおよび5sccm流し圧力を0.5Paに制御してMgO(純度4N)とZnO(純度4N)のターゲットを同時放電させてMgXZn1-XOの薄膜を形成する。原料となるターゲットは、MgOとZnOの金属酸化物ターゲットとする。あるいは、MgOとZnOを混合して焼結させたMgXZn1-XOを用いる。あるいはMgとZnの合金ターゲットを用いる。あるいはまた、金属MgとZnのターゲットとを同時放電させて成膜することもできる。成膜時に窒素ガスを流すことで成膜したMgXZn1-XOに微量ながら窒素が取り込まれ、それがアクセプタとして働くことで高抵抗化することができる。成膜されたMgXZn1-XO薄膜の膜厚は0.3~1μmである。
この圧電素子Sの圧電体1は、図3に示すように、上記のスパッタ法(ULVAC社製「三元スパッタ装置(MPS-3000)」使用)によって作製した。成膜用基板を成膜用ステージに設置後、真空チャンバー内を10-5Pa台まで真空引きし、基板温度を500℃まで加熱する。次に、アルゴンガス(純度6N)を20sccm、反応性ガスとして酸素ガス(純度5N)と窒素ガス(純度6N)をそれぞれ10sccmおよび5sccm流し圧力を0.5Paに制御してMgO(純度4N)とZnO(純度4N)のターゲットを同時放電させてMgXZn1-XOの薄膜を形成する。原料となるターゲットは、MgOとZnOの金属酸化物ターゲットとする。あるいは、MgOとZnOを混合して焼結させたMgXZn1-XOを用いる。あるいはMgとZnの合金ターゲットを用いる。あるいはまた、金属MgとZnのターゲットとを同時放電させて成膜することもできる。成膜時に窒素ガスを流すことで成膜したMgXZn1-XOに微量ながら窒素が取り込まれ、それがアクセプタとして働くことで高抵抗化することができる。成膜されたMgXZn1-XO薄膜の膜厚は0.3~1μmである。
MgXZn1-XO薄膜成膜後、試料の表裏にリフトオフ法でTiとPtを各々膜厚20nm、80nm、1.5mm×1.5mmの正方形パターンに形成した。尚、MgXZn1-XO薄膜を成膜したZn面側には、Zn面の同定のため正方形電極10パターンの1コーナーを面取りし、表裏の区別ができるようにしてある。Pt/Ti電極10が形成された基板は、ダイシングソー(東京精密社製「セミオートダイシングソー(A-WD-10A)」)により2.0mm×2.0mmサイズにダイシングされ、圧力センサ素子が完成する。
<試験例>
次に、試験例について示す。この試験例に用いる試料は、上記の実施例1に示す分子線エピタキシー(MBE)法によって、MgのKセル温度とMgのKセル温度を制御することで成膜して作製した。そして、MgXZn1-XO薄膜におけるMgとZnの原子比率が、X=0、X=0.1、X=0.3、X=0.35、X=0.5、X=0.55、X=0.6、およびX=0.9の8種類を選択した。MgとZnの原子比率は、分光光度計(日本分光社製「紫外可視分光光度計(V-550)」)により測定した分光反射スペクトルにおける励起子からの反射ピークエネルギー、X線光電子分光装置(KRATOS ANALYTICAL社製「ESCA表面解析装置(AXIS-Nova)」)の感度係数法によるMgとZnの組成比、およびX線回折装置(BRUKER AXS社製「全自動多目的X線回折装置(D8 DISCOVER)」)で測定したMgXZn1-XO薄膜のc軸長を勘案して求めた。
次に、試験例について示す。この試験例に用いる試料は、上記の実施例1に示す分子線エピタキシー(MBE)法によって、MgのKセル温度とMgのKセル温度を制御することで成膜して作製した。そして、MgXZn1-XO薄膜におけるMgとZnの原子比率が、X=0、X=0.1、X=0.3、X=0.35、X=0.5、X=0.55、X=0.6、およびX=0.9の8種類を選択した。MgとZnの原子比率は、分光光度計(日本分光社製「紫外可視分光光度計(V-550)」)により測定した分光反射スペクトルにおける励起子からの反射ピークエネルギー、X線光電子分光装置(KRATOS ANALYTICAL社製「ESCA表面解析装置(AXIS-Nova)」)の感度係数法によるMgとZnの組成比、およびX線回折装置(BRUKER AXS社製「全自動多目的X線回折装置(D8 DISCOVER)」)で測定したMgXZn1-XO薄膜のc軸長を勘案して求めた。
ここで、MgXZn1-XO薄膜中の窒素濃度を波長分散型蛍光エックス線装置(BRUKER AXS社製「波長分散型蛍光エックス線装置(S8 TIGER)」)で測定したところ検出限界未満であったことから、その窒素濃度は100ppm未満である。尚、窒素濃度を1017/cm3より高くしすぎるとMgXZn1-XO薄膜がp形半導体化して抵抗率が低下する虞がある。一方1012/cm3より低くしすぎると、MgXZn1-XO薄膜中に存在する酸素欠損欠陥、格子間亜鉛及び不純物等に由来するドナーに起因する自由電子の補償が不十分になり高抵抗化出来なくなる虞がある。また、二次イオン質量分析装置等の高感度定量分析装置の検出下限値以下にもなるため定量分析が困難である。そして、完成した圧力センサ素子は、半導体パラメータアナライザ(Keithley社製「半導体特性評価装置(4200-SCS)」)による直流における電流電圧特性、そしてインピーダンスアナライザ(Agilent Technologies社製「インピーダンスアナライザ(4294A)」)によるインピーダンスの周波数特性測定を行い、素子特性を評価した。
図12に、X線回折装置(X線源:CuKα1)で測定した2θ-ωスキャン結果を示す。これによれば、ZnO基板由来のZnO(002)のピークが34.4°に観測される。MgXZn1-XO薄膜中の原子比率Xが高くなるにつれてc軸長が短くなるため、MgXZn1-XO薄膜由来のMgXZn1-XO(002)ピークがX=0.1の場合34.6°付近、X=0.6では34.8°に観測される。しかし、X=0.6以上Mg原子比率を高めた場合、Xの値は一気に増加してX=0.9となり、結晶構造もウルツ鉱型構造から岩塩型構造へ相転移することでMgXZn1-XO(200)のピークが出現する。これはMg原子比率が高まるにつれてc軸長が短くなると同時にa軸長が長くなるため、下地のZnO基板との格子不整合が大きくなることで弾性変形の限界を過ぎるためと考えられる。そのため、Mg原子比率の上限値はMgXZn1-XO薄膜の膜厚依存性や使用する基板材料の格子定数依存性、さらにはバッファ層依存性をもつ。
図13に、X=0.1、X=0.3、X=0.35、X=0.5、X=0.55、X=0.6、およびX=0.9の7種類の圧電素子Sについて、バンドギャップエネルギー及び室温における素子抵抗を示す。Mgのモル濃度Xが増加するにつれてバンドギャップエネルギーは増加しワイドバンドギャップ化する。しかし、素子抵抗はX=0.55までは増加したがその後減少した。これは、Mg濃度が増加するに従いワイドバンドギャップ化することで残留キャリア密度が低下して抵抗率は増加するが、Mg濃度が高くなりすぎるとMgXZn1-XOのa軸がZnOのa軸とミスマッチが大きくなることで結晶欠陥が増加し、結晶欠陥が電流のパスとなることで抵抗率が低下すると考えられる。この結果から、Xには最適範囲があることが分かる。
作製した圧電素子の圧電特性は、大気中で素子温度を室温から400℃の温度範囲において、MgXZn1-XO薄膜とZnOの2層の圧電体を1つの均一圧電体と仮定し、共振反共振法により評価した。図14乃至図17に、X=0、X=0.1、X=0.3、X=0.35、X=0.5、X=0.55、X=0.6、およびX=0.9の8種類の圧電素子Sについて、インピーダンスアナライザで測定した面積振動モードにおけるインピーダンスの周波数特性の結果を示す。図中、インピーダンスが最低となる周波数と最高となる周波数においてピークが各々観測され、作製した素子が圧電性を有していることが確認された。また、反共振点近傍のインピーダンス値は素子抵抗を反映している。
この結果から、X=0.1のものは、高温(400℃)での特性は劣る。X=0.3以上については、何れも300℃以上においても特性は良好と判断されるが、上述もしたように、X=0.6を超えると、結晶構造がウルツ鉱構造から岩塩型構造へ相転移してしまい圧電性が減少するので好ましくない。
この結果から、X=0.1のものは、高温(400℃)での特性は劣る。X=0.3以上については、何れも300℃以上においても特性は良好と判断されるが、上述もしたように、X=0.6を超えると、結晶構造がウルツ鉱構造から岩塩型構造へ相転移してしまい圧電性が減少するので好ましくない。
図18には、上記の試験結果等に基づいて、直流で測定した素子抵抗値のX依存性(室温での測定)についてグラフ化した。尚、ZnO基板とMgXZn1-XO薄膜の直列抵抗値を直流で測定しているため、インピーダンスとは異なる。この結果から、0.3≦X≦0.55の範囲で素子抵抗が最も高く、このXの範囲の特性が良好なことが分かる。
図19には、窒素ドープ品とノンドープ品の抵抗値比較データを示す。上記の分子線エピタキシー(MBE)法において、窒素ドープ品のガス条件は、酸素ガス流量1.7sccm、窒素ガス流量0.5sccm、圧力は5.0×10-3Pa、ノンドープ品は酸素ガス流量1.7sccm、圧力は3.8×10-3Paである。成膜したMgXZn1-XO薄膜中の窒素濃度を波長分散型蛍光エックス線装置で測定したところ検出限界以下であったことから、その窒素濃度は100ppm(1018/cm3)未満であり、MgXZn1-XOの原子数が1022/cm3台であることからMgXZn1-XO中のN濃度の上限は1017/cm3台、下限は、1012/cm3程度と考えられる。尚、窒素濃度を1017/cm3より高くしすぎるとMgXZn1-XO薄膜がp形半導体化して抵抗率が低下する虞がある。また、1012/cm3より低くしすぎるとMgXZn1-XO薄膜中に存在する酸素欠損欠陥、格子間亜鉛及び不純物等に由来するドナーに起因する自由電子の補償が不十分になり高抵抗化出来なくなる虞がある。なお、高抵抗化するためドープする元素はNに限定されるものではなく、P、AsおよびSb、または、Liなどでもよい。
図19において、50℃から150℃の間では両者に抵抗値の大きな差はないが、200℃から300℃ではノンドープに比較して窒素ドープした素子の抵抗値が高いことが分かる。この結果から温度上昇につれてドープした窒素がアクセプタ化して、ドナー性欠陥による自由電子を補償し、高抵抗化が図られていると予想される。
尚、本発明は、上述した本発明の実施の形態に限定されず、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
S 圧電素子
1 圧電体
2 基体
3 積層体
10 電極
11 第1電極層
12 第2電極層
13 ベース電極
14 通電電極
20 支持体
21 第1支持体
22 第2支持体
23 一方部
24 他方部
1 圧電体
2 基体
3 積層体
10 電極
11 第1電極層
12 第2電極層
13 ベース電極
14 通電電極
20 支持体
21 第1支持体
22 第2支持体
23 一方部
24 他方部
Claims (9)
- 圧電体に電極を付設して構成される圧電素子において、
上記圧電体の全部もしくは一部を、ZnO中のZnサイトの一部をMgに置換して生成されるMgXZn1-XO(式中、Xは原子比率を示す)で構成し、0.1<X<0.6にしたことを特徴とする圧電素子。 - 分極軸を有した基体を備えるとともに該基体の分極軸に直交する一方面側をプラス面とし他方面側をマイナス面とした圧電体と、該圧電体のプラス面及びマイナス面に夫々付設される電極とを備えた圧電素子において、
上記基体を、ZnO中のZnサイトの一部をMgに置換して生成されるMgXZn1-XO(式中、Xは原子比率を示す)で構成し、0.1<X<0.6にしたことを特徴とする圧電素子。 - 分極軸を有した基体を備えるとともに該基体の分極軸に直交する一方面側をプラス面とし他方面側をマイナス面とした圧電体と、該圧電体のプラス面及びマイナス面に夫々付設される電極とを備えた圧電素子において、
上記基体の一方面及び他方面の少なくとも何れかの面に積層体を設け、
該積層体を、ZnO中のZnサイトの一部をMgに置換して生成されるMgXZn1-XO(式中、Xは原子比率を示す)で構成し、0.1<X<0.6にしたことを特徴とする圧電素子。 - 上記基体を、ZnOで構成し、該基体の厚さをT1、上記積層体の厚さをT2としたとき、10μm≦T1≦1000μm、0.1μm≦T2≦100μmにしたことを特徴とする請求項3記載の圧電素子。
- 0.3≦X≦0.55にしたことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載の圧電素子。
- 0.35≦X≦0.5にしたことを特徴とする請求項5記載の圧電素子。
- 上記圧電体を支持して該基体の振動を許容する支持体を設けたことを特徴とする請求項1乃至6何れかに記載の圧電素子。
- MgXZn1-XOを構成するOサイトの一部をNに置換したことを特徴とする請求項1乃至7何れかに記載の圧電素子。
- 上記NのMgXZn1-XOに対するNの原子濃度を1012/cm3~1017/cm3にしたことを特徴とする請求項8記載の圧電素子。
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