JP2022084971A - 光位相変調器、および光位相変調方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電気光学効果を利用して、光導波路を伝搬する光の位相を大きくかつ高速に変調することができる光位相変調器を提供する。
【解決手段】光位相変調器は、少なくとも第1の方向に延びた構造を有し、ポッケルス効果またはカー効果によって屈折率が変化する電気光学材料層と、前記電気光学材料層に接し、少なくとも前記第1の方向に延びた構造を有する電解質層と、前記電気光学材料層および前記電解質層に電圧を印加するための第1の電極および第2の電極と、前記電圧を制御して前記電気光学材料層の前記屈折率を変化させることにより、前記電気光学材料層または前記電解質層を前記第1の方向に沿って伝搬する光の位相を変調する制御回路と、を備える。
【選択図】図1A
【解決手段】光位相変調器は、少なくとも第1の方向に延びた構造を有し、ポッケルス効果またはカー効果によって屈折率が変化する電気光学材料層と、前記電気光学材料層に接し、少なくとも前記第1の方向に延びた構造を有する電解質層と、前記電気光学材料層および前記電解質層に電圧を印加するための第1の電極および第2の電極と、前記電圧を制御して前記電気光学材料層の前記屈折率を変化させることにより、前記電気光学材料層または前記電解質層を前記第1の方向に沿って伝搬する光の位相を変調する制御回路と、を備える。
【選択図】図1A
Description
本開示は、光位相変調器、および光位相変調方法に関する。
従来、屈折率を変化させる多くのデバイスが提案されている(例えば、特許文献1および2、ならびに非特許文献1から4)。屈折率は、様々な光学効果によって変化させることができる。光導波路の屈折率を変化させれば、光導波路を伝搬する光の位相を変調することができる。
N. Hosseini, et. Al., "Stress-optic modulator in TriPleX platform using a piezoelectric lead zirconate titanate (PZT) thin film"Opt. Exp., 23, 14018 (2015).
M. R. Watts, "Adiabatic thermo-optic Mach-Zehnder switch", Opc. Lett., 38, 733 (2013).
A. Yaacobi, "Integrated phased array for wide-angle beam steering", Opt. Lett., 39, 4575 (2014).
K. Fujiwara, et. al., "KTN optical waveguide devices with an extremely large electro-optic effect", Proc. of SPIE, 5623, 518 (2005).
本開示は、電気光学効果を用いて、光導波路を伝搬する光の位相を大きくかつ高速に変調することができる光位相変調器を提供する。
本開示の一態様に係る光位相変調器は、少なくとも第1の方向に延びた構造を有し、ポッケルス効果またはカー効果によって屈折率が変化する電気光学材料層と、前記電気光学材料層に接し、少なくとも前記第1の方向に延びた構造を有する電解質層と、前記電気光学材料層および前記電解質層に電圧を印加するための第1の電極および第2の電極と、前記電圧を制御して前記電気光学材料層の前記屈折率を変化させることにより、前記電気光学材料層または前記電解質層を前記第1の方向に沿って伝搬する光の位相を変調する制御回路と、を備える。
本開示によれば、電気光学効果を用いて、光導波路を伝搬する光の位相を大きくかつ高速に変調することができる。
本開示の実施形態を説明する前に、本開示の基礎となった知見を説明する。
非特許文献1は、応力によって屈折率が変化する応力光学効果(stress-optic effect)を用いた光位相変調器を開示している。非特許文献1に開示されている光位相変調器では、光導波路上に積層された圧電体に電圧を印加することにより、圧電体が変形する。圧電体の変形に起因して、光導波路に応力がかかり、光導波路の屈折率が変化する。屈折率の変化に起因して、光導波路中を伝搬する光の位相が変調される。圧電体による光導波路の屈折率の変化量は小さく、例えば10-6程度のオーダーである。このため、光導波路を長くしなければ、光の位相を大きく変調することができない。光導波路を長くすることは、光位相変調器の大型化を招く。
非特許文献2および3は、熱によって屈折率が変化する熱光学効果(thermo-optic effect)を用いた光位相変調器を開示している。熱光学効果による屈折率の変化量は大きく、例えば10-2程度のオーダーである。このため、光位相変調器が小さい場合でも、光の位相を大きく変調することができる。しかし、熱光学効果による屈折率の変調速度は低く、例えば数百kHzを超える高速の変調を実現することができない。
非特許文献4は、電界を印加することによって屈折率が変化する電気光学効果(electro-optic effect)を用いた光位相変調器を開示している。代表的な電気光学効果として、ポッケルス(Pockels)効果、およびカー(Kerr)効果が知られている。電界が印加されていないとき、屈折率の変化量はゼロである。ポッケルス効果では、屈折率の変化量は、電気光学材料固有の電気光学定数と、印加された電界の強度との積によって決定される。カー効果では、屈折率の変化量は、電気光学定数と、印加された電界の強度の2乗との積によって決定される。屈折率の変化により、電気光学材料を伝搬する光の位相が変調される。電気光学効果による屈折率の変調速度は高く、例えば数十MHz以上の変調を実現することができる。
電気光学効果を用いた光位相変調器では、印加された電界が強いほど、屈折率の変化量は大きい。しかし、印加される電界の強度は、電気光学材料の絶縁破壊電界強度よりも低い強度に制限される。このため、屈折率の変化量は10-4程度のオーダーであり、それほど大きくならない。
特許文献1は、電気光学効果を用いた光変調装置を開示している。特許文献1に開示されている装置では、電気光学材料層が電解質層に接している。電気光学材料層および電解質層に外部から電圧を印加すると、電気光学材料層と電解質層との界面付近で、強い電界が発生する。当該電界の強度は、電気光学材料層の絶縁破壊電界強度を超える。そのような強い電界が印加されることにより、電気光学材料層の屈折率を大きく変化させることができる。特許文献1に開示されている装置では、電気光学材料層の屈折率を変化させることにより、電気光学材料層を光が透過する状態と、電気光学材料層で光が反射される状態とを切り替えることができる。この光変調装置は、光スイッチング素子として利用される。電気光学材料層または電解質層を光導波路として利用することは想定されていない。
特許文献2は、エレクトロクロミック効果(electrochromic effect)を用いた光スイッチを開示している。特許文献2に開示されている光スイッチでは、光導波路が、エレクトロクロミック材料層によって囲まれている。エレクトロクロミック材料層は電解質層に接している。エレクトロクロミック材料層および電解質層に電圧が印加される。これにより、当該エレクトロクロミック材料層内で、酸化還元反応が生じ、エレクトロクロミック材料層の電子構造が変化する。当該電子構造の変化により、エレクトロクロミック材料層の屈折率が変化する。酸化反応または還元反応は、外部から印加される電圧の極性に応じて可逆的に生じる。電圧を印加しなくても、酸化状態または還元状態が保持される。言い換えれば、一旦屈折率を変化させた後は、逆極性の電圧を印加しなければ、屈折率を戻すことはできない。この構造では、屈折率の変化量は10-3程度のオーダーである。変調速度は非常に遅く、せいぜい数Hzである。この光スイッチでは、電解質層は、エレクトロクロミック材料層を酸化または還元させるために設けられている。
以上のように、上記のデバイスのいずれにおいても、光導波路を伝搬する光の位相を大きくかつ高速に変調することはできない。
本発明者は、以上の検討に基づき、光導波路を伝搬する光の位相を大きくかつ高速に変調することができる以下の項目に記載の光位相変調器に想到した。
第1の項目に係る光位相変調器は、少なくとも第1の方向に延びた構造を有し、ポッケルス効果またはカー効果によって屈折率が変化する電気光学材料層と、前記電気光学材料層に接し、少なくとも前記第1の方向に延びた構造を有する電解質層と、前記電気光学材料層および前記電解質層に電圧を印加するための第1の電極および第2の電極と、前記電圧を制御して前記電気光学材料層の前記屈折率を変化させることにより、前記電気光学材料層または前記電解質層を前記第1の方向に沿って伝搬する光の位相を変調する制御回路と、を備える。
この光位相変調器では、電気光学材料層と電解質層との界面付近で発生する強電界、および電気光学材料層の速い応答性により、電気光学材料層または電解質層を伝搬する光の位相を大きくかつ高速に変調することができる。
第2の項目に係る光位相変調器は、第1の項目に係る光位相変調器において、前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方の幅が、前記電気光学材料層と前記電解質層との界面の幅よりも大きい。
この光位相変調器では、第1の電極と第2の電極と間に発生する電界は、界面に垂直な方向に、より平行になる。これにより、電気光学材料層および電解質層に、有効に電界を印加することができる。
第3の項目に係る光位相変調器は、第1または第2の項目に係る光位相変調器において、前記電解質層の幅が、前記電気光学材料層の幅よりも大きい。
この光位相変調器では、電気光学材料層のうち、電気光学材料層と電解質層と界面を含む表面全体に、電気二重層を形成することができる。
第4の項目に係る光位相変調器は、第1または第2の項目に係る光位相変調器において、前記電気光学材料層の幅が、前記電解質層の幅よりも大きい。
この光位相変調器では、電解質層のうち、電気光学材料層と電解質層と界面を含む表面全体に、電気二重層を形成することができる。
第5の項目に係る光位相変調器は、第1から第4の項目のいずれかに係る光位相変調器において、前記電気光学材料層が、前記電気光学材料層と前記電解質層との界面に垂直な方向に沿って配向した結晶構造を有する。
この光位相変調器では、電気光学材料層の屈折率は、界面に垂直な方向において最も大きく変化する。これにより、当該方向に平行な電界を有する光の位相を大きく変調することができる。
第6の項目に係る光位相変調器は、第1から第5の項目のいずれかに係る光位相変調器において、前記電気光学材料層が、前記電解質層に埋め込まれている。
この光位相変調器では、電気光学材料層および電解質層の上記の配置は、電気光学材料層の幅よりも広い領域に電解質層を堆積することによって容易に実現することができる。
第7の項目に係る光位相変調器は、第1から第6の項目のいずれかに係る光位相変調器において、前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方が、透明電極である。
この光位相変調器では、電気光学材料層または電解質層を伝搬する光のエバネッセント光が第1の電極または第2の電極に到達しても、光のロスを無視することができる。
第8の項目に係る光位相変調器は、第1から第7の項目のいずれかに係る光位相変調器において、前記電気光学材料層が、タンタル酸ニオブ酸カリウムから形成されている。
この光位相変調器では、電気光学材料層は、常温付近で高い電気光学効果を示す。
第9の項目に係る光位相変調器は、各々が少なくとも第1の方向に延びた構造を有し、ポッケルス効果またはカー効果によって各々の屈折率が変化する、複数の電気光学材料層と、前記複数の電気光学材料層の各々に接し、少なくとも前記第1の方向に延びた構造を有する電解質層と、各々が、前記複数の電気光学材料層の1つと前記電解質層との界面の少なくとも一部に交差する方向において、前記複数の電気光学材料層の前記1つおよび前記電解質層を直接的または間接的に挟む、複数対の電極と、前記複数対の電極の各々に電圧を印加して前記複数の電気光学材料層の1つの前記屈折率を変化させることにより、前記複数の電気光学材料層の前記1つを前記第1の方向に沿って伝搬する光の位相を変調する制御回路と、を備える。
この光位相変調器では、複数の電気光学材料層を伝搬する光の位相を、別々に、大きくかつ高速に調整することができる。
第10の項目に係る光位相変調方法は、光位相変調器を用いた光位相変調方法である。前記光位相変調器は、少なくとも第1の方向に延びた構造を有し、ポッケルス効果またはカー効果によって屈折率が変化する電気光学材料層と、前記電気光学材料層に接し、少なくとも前記第1の方向に延びた構造を有する電解質層と、前記電気光学材料層と前記電解質層とに電圧を印加するための第1の電極および第2の電極と、を備える。前記光位相変調方法は、前記電気光学材料層または前記電解質層に、前記第1の方向に沿って光を伝搬させ、前記電圧を制御して前記屈折率を変化させることにより、前記光の位相を変調する。
この光位相変調方法では、電気光学材料層と電解質層との界面付近で発生する強電界、および電気光学材料層の速い応答性により、電気光学材料層または電解質層を伝搬する光の位相を大きくかつ高速に変調することができる。
第11の項目に係る光位相変調方法は、第10の項目に係る光位相変調方法において、前記光の位相を変調する期間では、前記光が前記電気光学材料層と前記電解質層との界面で全反射する状態が保たれる。
この光位相変調方法では、電気光学材料層および電解質層のうち、一方を伝搬する光が、他方に移ることはない。
本開示において、回路、ユニット、装置、部材または部の全部または一部、またはブロック図における機能ブロックの全部または一部は、例えば、半導体装置、半導体集積回路(IC)、またはLSI(large scale integration)を含む1つまたは複数の電子回路によって実行され得る。LSIまたはICは、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップを組み合わせて構成されてもよい。例えば、記憶素子以外の機能ブロックは、1つのチップに集積されてもよい。ここでは、LSIまたはICと呼んでいるが、集積の度合いによって呼び方が変わり、システムLSI、VLSI(very large scale integration)、もしくはULSI(ultra large scale integration)と呼ばれるものであってもよい。LSIの製造後にプログラムされる、Field Programmable Gate Array(FPGA)、またはLSI内部の接合関係の再構成またはLSI内部の回路区画のセットアップができるreconfigurable logic deviceも同じ目的で使うことができる。
さらに、回路、ユニット、装置、部材または部の全部または一部の機能または動作は、ソフトウェア処理によって実行することが可能である。この場合、ソフトウェアは1つまたは複数のROM、光学ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録され、ソフトウェアが処理装置(processor)によって実行されたときに、そのソフトウェアで特定された機能が処理装置(processor)および周辺装置によって実行される。システムまたは装置は、ソフトウェアが記録されている1つまたは複数の非一時的記録媒体、処理装置(processor)、および必要とされるハードウェアデバイス、例えばインターフェースを備えていてもよい。
本開示において、「光」とは、可視光(波長が約400nm~約700nm)だけでなく、紫外線(波長が約10nm~約400nm)および赤外線(波長が約700nm~約1mm)を含む電磁波を意味する。
以下、図面を参照しながら、本開示のより具体的な実施形態を説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明および実質的に同一の構成に対する重複する説明を省略することがある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。以下の説明において、同一または類似する構成要素については、同じ参照符号を付している。
(実施形態)
図1Aおよび図1Bは、本開示の例示的な実施形態における光位相変調器100を模式的に示す図である。以下の説明において、図1Aおよび図1Bに示す互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸からなる座標系を用いる。説明の便宜上、+Z方向を「上方向」と称し、-Z方向を「下方向」と称する。これらの呼称は、便宜上のものにすぎず、現実に使用される光位相変調器100の配置または姿勢を限定することを意図するものではない。以下の説明では、X方向における寸法を「長さ」と称し、Y方向における寸法を「幅」と称し、Z方向における寸法を「厚さ」と称する。
図1Aおよび図1Bは、本開示の例示的な実施形態における光位相変調器100を模式的に示す図である。以下の説明において、図1Aおよび図1Bに示す互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸からなる座標系を用いる。説明の便宜上、+Z方向を「上方向」と称し、-Z方向を「下方向」と称する。これらの呼称は、便宜上のものにすぎず、現実に使用される光位相変調器100の配置または姿勢を限定することを意図するものではない。以下の説明では、X方向における寸法を「長さ」と称し、Y方向における寸法を「幅」と称し、Z方向における寸法を「厚さ」と称する。
図1Aは、+X方向から見た光位相変調器100の構造を模式的に示している。図1Bは、-Y方向から見た光位相変調器100の構造を模式的に示している。
光位相変調器100は、基板10と、第1の電極20aおよび第2の電極20bと、電気光学材料層30と、電解質層40と、制御回路50とを備える。
基板10は、XY平面に平行な主面10sを有する。第1の電極20aは、基板10の主面10s上に位置する。電気光学材料層30は、第1の電極20a上に位置する。電解質層40は、電気光学材料層30上に位置する。第2の電極20bは、電解質層40上に位置する。すなわち、基板10、第1の電極20a、電気光学材料層30、電解質層40、および第2の電極20bは、この順に積層されている。第1の電極20aおよび第2の電極20bを、「一対の電極20」と称することがある。基板10と、第1の電極20aおよび第2の電極20bと、電気光学材料層30と、電解質層40とは、少なくともX方向に延びた構造を有する。
以下に、各構成要素をより具体的に説明する。
基板10は、一対の電極20、電気光学材料層30、および電解質層40を支持する。基板10は、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、スピネル(MgAl2O4)、およびα-アルミナ(α-Al2O3)からなる群から選択される少なくとも1つから形成され得る。基板10は、不要であれば省略してもよい。
一対の電極20は、Z方向において、電気光学材料層30および電解質層40を直接的または間接的に挟む。「直接的に挟む」とは、第1の電極20aと電気光学材料層30とが接し、第2の電極20bと電解質層40とが接することを意味する。「間接的に挟む」とは、第1の電極20aと電気光学材料層30との間、および/または、第2の電極20bと電解質層40との間に他の部材が位置することを意味する。当該他の部材は、誘電体部材であってもよいし、空気などの気体であってもよし、水などの液体であってもよい。本明細書では、X方向を「第1の方向」と称し、Y方向を「第2の方向」と称し、Z方向を「第3の方向」と称することがある。
一対の電極20の各々は、XY平面に平行な面を有する。一対の電極20には、直流電圧が印加される。これにより、電気光学材料層30および電解質層40に、電界が印加される。直流電圧は、直流パルス電圧であってもよい。直流パルス電圧の電圧値の時間平均を直流電圧の値として扱ってもよい。直流パルス電圧のデューティ比を変えることにより、電圧の時間平均値を調整することができる。一対の電極20の各々は、金属電極であってもよいし、透明電極であってもよい。第1の電極20aは、例えば、LaドープSrSnO3(LSSO)、およびAドープSrxBa1-xSnO3(A=La、Ta、またはNb)からなる群から選択された少なくとも1つから形成された透明電極であり得る。第1の電極20aの厚さは、例えば100nm以上200nm以下であり得る。第2の電極20bは、例えば、SnO2ドープIn2O3(ITO)、FドープSnO2(FTO)、およびSbドープTiO2(ATO)からなる群から選択された少なくとも1つから形成された透明電極であり得る。第2の電極20bの厚さは、例えば100nm以上200nm以下であり得る。
電気光学材料層30は、図1Bに示すように、全反射によって光32をX方向に沿って伝搬させる光導波層として機能する。図1Aに示す楕円は、光32の強度が当該楕円内で高いことを表している。電気光学材料層30の屈折率は、光位相変調器100の周辺の媒質の屈折率、ならびに基板10および電解質層40のそれぞれの屈折率よりも高い。第1の電極20aが透明電極である場合、電気光学材料層30の屈折率は、第1の電極20aの屈折率よりも高い。第1の電極20aの屈折率は、基板10の屈折率よりも高い。これにより、基板10は光導波層として機能しない。第1の電極20aが透明電極である場合、光32のロスは無視できる。
電気光学材料層30の屈折率は、ポッケルス効果またはカー効果により、印加された電界の強度に応じて変化する。印加された電界が強いほど、電気光学材料層30の屈折率の変化量が大きくなる。電界を印加しないときは、当該変化量はゼロになる。この点で、本実施形態の装置は、前述のエレクトロクロミック効果を利用した装置とは異なる。本実施形態によれば、電圧が印加されているときだけ屈折率が初期値から変化するので、光位相変調器100のオンおよびオフが容易である。電界印加による電気光学材料層30の屈折率の変化により、電気光学材料層30内を伝搬する光32の位相を変調することができる。電気光学効果の速い応答性により、位相の変調速度は高く、例えば数十MHz以上にすることができる。
光32の空気中での波長をλ、電界が印加されていないときの電気光学材料層30の屈折率をn0、電界の印加による電気光学材料層30の屈折率の変化量をΔn、電気光学材料層30の長さをL、電気光学材料層30を伝搬する前の光32の位相をφ=0とする。このとき、電気光学材料層30を伝搬した後の光32の位相は、φ=(2π/λ)(n0+Δn)Lである。このうち、電界の印加による光32の位相の変化量は、Δφ=(2π/λ)ΔnLである。
前述のように、第1の電極20aおよび第2の電極20bの各々は、透明電極であってもよいし、金属電極であってもよい。第1の電極20aが透明電極である場合、光32のロスは無視できる。電解質層40の厚さが十分に大きい場合、光32のエバネッセント光は、第2の電極20bまで達しない。したがって、電解質層40の厚さが十分に大きい場合は、第2の電極20bが金属電極であっても、光32のロスは無視できる。
電気光学材料層30は、バルクから形成されていてもよいし、薄膜から形成されていてもよい。薄膜の厚さは、例えば0.1μm以上10μm以下であり得る。薄膜のコストは、バルクのコストよりも低い。ポッケルス効果を用いる場合、電気光学材料層30は、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)、およびリン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)からなる群から選択される少なくとも1つから形成され得る。カー効果を用いる場合、電気光学材料層30は、例えば、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸カリウム(KTaO3)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン((Pb1-xLax)(ZryTi1-y)1-x/4O3:PLZT)、およびタンタル酸ニオブ酸カリウム(KTa1-xNbxO3:KTN)からなる群から選択される少なくとも1つから形成され得る。この中でも、KTNは、NbとTaとの組成比を適切な比に設定することにより、常温付近で高い電気光学効果を示す。KTNは、光通信に用いられる光の波長1550nmで透明である。したがって、KTNの光デバイスへの応用が期待されている。
電解質層40は、電気光学材料層30の少なくとも一部に接している。電解質層40は、少なくともX方向に延びた構造を有する。電解質層40は、イオン伝導体から形成されている。イオン伝導体では、正イオンおよび負イオンの少なくとも一方が、外部からの電界の印加によって移動する。電解質層40は、典型的には固体電解質層である。固体電解質層は、その組成に応じて、10-8S/cmから10-2S/cm程度のオーダーのイオン伝導度を有し得る。電解質層40の厚さは、例えば500nm以上2.5μm以下であり得る。電解質層40の厚さが500nmよりも薄いと、光32のエバネッセント光が、第2の電極20bに達する可能性がある。電解質層40の厚さが2.5μmよりも厚いと、電解質層40の内部抵抗の増加により、電気光学材料層30および電解質層40に印加された電界の強度が減少する可能性がある。電解質層40は、例えば、薄膜化が容易であるリン酸リチウムオキシナイトライド(Li3PO4-yNy:LiPON)から形成され得る。LiPONのイオン伝導度は、10-6S/cm程度のオーダーである。
制御回路50は、一対の電極20に直流電圧を印加する。図1Aに示す矢印付きの破線は、制御回路50から一対の電極20に信号が入力されることを表している。制御回路50は、一対の電極20に電圧を印加して電気光学材料層30の屈折率を変化させることにより、電気光学材料層30をX方向に沿って伝搬する光32の位相を変調する。光32の位相を変調する期間において、光32が界面35で全反射する状態が保たれる。すなわち、光位相変調器100では、電気光学材料層30の屈折率を変化させても、電気光学材料層30の屈折率と、電解質層40の屈折率との大小関係は、逆転しない。したがって、電気光学材料層30および電解質層40のうち、一方を伝搬する光が、他方に移ることはない。
制御回路50は、例えばデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などのプログラマブルロジックデバイス(PLD)、または中央演算処理装置(CPU)もしくは画像処理用演算プロセッサ(GPU)とコンピュータプログラムとの組み合わせによって実現されてもよい。なお、以下の図では、制御回路50を省略することがある。
図2Aは、一対の電極20に電圧を印加したときの、一対の電極20、電気光学材料層30、および電解質層40内の電荷分布を模式的に示す図である。図2Aの上段は、図1に示す光位相変調器100を表している。図2Aの下段は、上段に示す太線によって囲まれた領域における電荷分布の例を模式的に表している。第2の電極20bの電位が第1の電極20aの電位よりも高い場合、一対の電極20間には、下向きの電界が発生する。図2の下段は、このときの第1の電極20a内の負の電荷(-)、第2の電極20b内の正の電荷(+)、電気光学材料層30内の分極(+-)、ならびに電解質層40内の正イオン(+)および負イオン(-)の分布を模式的に表している。
第1の電極20aに含まれる負の電荷は、電気光学材料層30の側に分布する。第2の電極20bに含まれる正の電荷は、電解質層40の側に分布する。一対の電極20の間に発生する下方向の電界により、電解質層40に含まれるイオンのうち、正イオンは、電気光学材料層30の側に移動し、負イオンは、第2の電極20bの側に移動する。電気光学材料層30内では、正の電荷および負の電荷を一対とする分極が発生する。電解質層40内の正イオンおよび負イオンの移動に起因して、電気光学材料層30と電解質層40との界面35には、破線によって囲まれた電気二重層が形成される。同様に、電解質層40と第2の電極20bとの界面にも、破線によって囲まれた電気二重層が形成される。電気二重層は、キャパシタとして機能する。
次に、図2Bおよび図2Cを参照して、電気光学材料層30、および電解質層40内に生じる電位および電界の強度を説明する。ただし、電気光学材料層30は、キャリア注入されたKTNから形成されているとする。
図2Bは、一対の電極20間での、第1の電極20aの上面からZ方向に沿った距離Zと、電位Vとの関係を模式的に示す図である。Z=0は、第1の電極20aの上面の位置を表している。Z=Z1は、電気光学材料層30と電解質層40との界面35の位置を表している。Z=Z2は、第2の電極20bの下面の位置を表している。V1は、第1の電極20aの電位を表し、V2は、第2の電極20bの電位を表している。Z=Z1付近およびZ=Z2付近では、電気二重層の形成により、電位Vが、距離Zの増加に伴い急峻に増加する。電気光学材料層30のうち、Z=Z1から離れた部分では、電位Vは、上記のキャリア注入に起因して、距離Zの増加に伴いほぼ放物線的に増加する。電解質層40のうち、Z=Z1およびZ=Z2から離れた部分では、電位Vはほぼ一定である。
図2Cは、一対の電極20間での、第1の電極20aの上面からZ方向に沿った距離Zと、電界の強度Eとの関係を模式的に示す図である。図2Cに示す電界の強度Eは、図2Bに示す電位Vの勾配の絶対値に相当する。電気光学材料層30のうち、Z=Z1から離れた部分では、電界の強度Eは、距離Zの増加に伴い、ほぼ直線的に増加する。電気光学材料層30のうち、Z=Z1付近の部分では、電界の強度Eは、最大になる(E=Em)。電解質層40のうち、Z=Z1付近の部分では、電界の強度Eは、距離Zの増加に伴い急峻に減少する。電解質層40のうち、Z=Z1およびZ=Z2から離れた部分では、電界の強度Eはほぼゼロである(E=0)。電解質層40のうち、Z=Z2付近の部分では、電界の強度Eは、距離Zの増加に伴い急峻に増加する。
図2Cに示すように、電気光学材料層30のうち、界面35付近の部分では、Emの強度を有する強い電界が発生する。当該電界の強度が局所的に絶縁破壊電界の強度を超えていても、電気光学材料層30は破壊されない。絶縁破壊電界の制限がないことから、電気光学材料層30のうち、界面35付近の部分の屈折率の変化量は、例えば10-2以上のオーダーになることが期待できる。当該屈折率の変化量は、電解質層40がない場合と比較して大きい。一方、界面35付近から離れた部分の屈折率の変化量は平均して10-3程度のオーダーである。このように、電気光学材料層30の屈折率の変化量は、場所によって異なる。簡単のために、電気光学材料層30の屈折率の変化量の空間での平均値を、電気光学材料層30の屈折率の変化量Δnとしてもよい。
以上の構成により、光位相変調器100では、速い応答性の電気光学効果を用いて、電気光学材料層30を伝搬する光32の位相を大きくかつ高速に変調することができる。
本実施形態における電気光学材料層30と電解質層40との界面35は平坦である。界面35は必ずしも厳密に平坦でなくてもよく、多少の傾斜または凹部もしくは凸部を有する部分が存在していてもよい。しかし、界面35が全体にわたって凹部または凸部を有する場合、凹部または凸部で発生する電界が弱め合い、界面35付近には、強い電界が集中しない可能性がある。その場合、電気光学材料層30のうち、界面35付近の部分の屈折率の変化量が小さくなる可能性がある。また、界面35の凹部または凸部による光32の散乱により、光32のロスが生じ得る。これに対し、界面35が平坦である場合、界面35付近には、Z方向に強い電界が集中する。これにより、電気光学材料層30の界面35付近の部分の屈折率の変化量を大きくできる。また、平坦な界面35により、光32のロスが抑制される。
電気光学材料層30の屈折率の変化量は、テンソルによって記述される。したがって、印加された電界の方向に応じて、電気光学材料層30の屈折率は、複数の方向において変化し得る。電気光学材料層30の屈折率の変化量は、当該複数の方向に応じて異なる。図1Aおよび図1Bに示す例において、Z方向に沿って配向した結晶構造を有する電気光学材料層30に、電界をZ方向に印加すると、電気光学材料層30の屈折率は、X方向、Y方向、およびZ方向において変化する。電気光学材料層30の屈折率の変化量は、Z方向において最大になる。これにより、TM(transverse magnetic)モードでの光32の位相を大きく変調することができる。TMモードでの光32は、Z方向に平行な電界を有する。
上記の例では、電気光学材料層30が光導波層として機能する。電気光学材料層30の代わりに、電解質層40が光導波層として機能するように光位相変調器100を構成してもよい。
図3Aおよび図3Bは、電解質層40が光導波層として機能する光位相変調器100の例を模式的に示す図である。図3Aは、+X方向から見た光位相変調器100の構造を模式的に示している。図3Bは、-Y方向から見た光位相変調器100の構造を模式的に示している。
この例における電解質層40は、図3Bに示すように、全反射によって光42をX方向に沿って伝搬させる光導波層として機能する。図3Aに示す実線の楕円は、光42の強度が当該実線の楕円内で高いことを表している。図3Aに示す破線の楕円は、光42が有するエバネッセント光44の広がりを表している。電解質層40の屈折率は、光位相変調器100の周辺の屈折率、および電気光学材料層30の屈折率よりも高い。第2の電極20bが透明電極である場合、電気光学材料層30の屈折率は、第2の電極20bの屈折率よりも高い。第2の電極20bが透明電極である場合、光42のロスは無視できる。
エバネッセント光44の一部は、電気光学材料層30に染み出す。したがって、一対の電極20に電圧を印加して電気光学材料層30の屈折率を変化させることにより、エバネッセント光44の一部を介して、光42の位相を変調することができる。第1の電極20aは、透明電極であってもよいし、金属電極であってもよい。電気光学材料層30の厚さが十分厚ければ、光42のエバネッセント光44は、第1の電極20aまで達しない。したがって、第1の電極20aが金属電極であっても、光42のロスは無視できる。
電気光学材料層30および/または電解質層40が、所定値以上の幅および厚さを有するとき、導波モードが存在する。これにより、電気光学材料層30および/または電解質層40は、光導波層として機能する。電気光学材料層30および電解質層40の各々の幅および厚さは、電気光学材料層30および電解質層40の少なくとも一方がX方向に沿って光32または光42を伝搬させる光導波層を形成する値に設定されている。
図1Aおよび図1Bに示す例では、基板10と、一対の電極20と、電気光学材料層30と、電解質層40とは、X方向に延びた構造を有する。すなわち、電気光学材料層30および/または電解質層40は、チャネル光導波路として機能する。基板10と、一対の電極20と、電気光学材料層30と、電解質層40とは、X方向だけでなく、Y方向にも延びた構造を有していてもよい。すなわち、電気光学材料層30および/または電解質層40は、平板光導波路として機能してもよい。
(変形例)
以下に、光位相変調器100の変形例を説明する。
以下に、光位相変調器100の変形例を説明する。
図4は、第1の変形例における光位相変調器110を模式的に示す図である。図4に示す例では、電気光学材料層30は、電解質層40に埋め込まれている。電解質層40は、電気光学材料層30の上面および両側面に接する部分を有する。このとき、電気光学材料層30および電解質層40は、XY平面に平行な第1の界面35a、ならびにXZ平面に平行な第2の界面35bおよび第3の界面35cを有する。一対の電極20は、電気光学材料層30および電解質層40を直接的または間接的に挟む。光32が電気光学材料層30内を全反射によってX方向に伝搬する場合、電気光学材料層30の屈折率は、電解質層40の屈折率よりも高い。
図4に示す電気光学材料層30および電解質層40の配置は、電気光学材料層30の幅よりも広い領域に電解質層40を堆積することによって容易に実現することができる。また、電界をY方向に印加することにより、第2の界面35bおよび第3の界面35c付近に、強い電界を発生させることができる。
図5は、第2の変形例における光位相変調器120を模式的に示す図である。図5に示す例では、電気光学材料層30の代わりに、第1の電気光学材料層30a、第2の電気光学材料層30b、および第3の電気光学材料層30cが位置している。第1の電気光学材料層30a、第2の電気光学材料層30b、および第3の電気光学材料層30cの各々の屈折率は、電解質層40の屈折率よりも高い。図5に示す例では、図4に示す第2の電極20bの代わりに、第3の電極20ba、第4の電極20bb、および第5の電極20bcが位置している。第3の電極20ba、第4の電極20bb、および第5の電極20bcには、それぞれ、直流電圧が印加される。第3の電極20ba、第4の電極20bb、および第5の電極20bcの各々と、対向する第1の電極20aの一部とを、一対の電極と考えることができる。
図5に示す例では、第3の電極20ba、第4の電極20bb、および第5の電極20bcにより、第1の電気光学材料層30a、第2の電気光学材料層30b、および第3の電気光学材料層30cの屈折率をそれぞれ別々に変化させることができる。これにより、第1の電気光学材料層30a、第2の電気光学材料層30b、および第3の電気光学材料層30cをそれぞれ伝搬する第1の光32a、第2の光32b、および第3の光32cの位相を別々に調整することができる。
以上のように、本変形例における光位相変調器120は、複数の電気光学材料層と、電解質層40と、複数対の電極と、制御回路50とを備える。複数の電気光学材料層の各々は、少なくともX方向に延びた構造を有する。複数の電気光学材料層の各々の屈折率は、ポッケルス効果またはカー効果によって変化する。電解質層40は、複数の電気光学材料層の各々の少なくとも一部に接する。電解質層40は、少なくともX方向に延びた構造を有する。複数対の電極の各々は、複数の電気光学材料層の1つと、電解質層40との界面に交差する方向において、電気光学材料層の当該1つおよび電解質層40を直接的または間接的に挟む。複数の電気光学材料層の各々の幅および厚さは、X方向に沿って光を伝搬させる光導波層を形成する値に設定されている。制御回路50は、複数の電極の各々に電圧を印加して複数の電気光学材料層の1つの屈折率を変化させることにより、複数の電気光学材料層の当該1つを伝搬する光の位相を変調する。
図6Aから図6Gは、それぞれ第3から第9の変形例における光位相変調器130aから光位相変調器130gを模式的に示す図である。光位相変調器130aから光位相変調器130gのうち、光位相変調器130e以外は、図1Aに示す構成要素に加えて、誘電体部材60をさらに備える。図6Aから図6Cに示す例では、電気光学材料層30が光導波層として機能する。図6Dから図6Gに示す例では、電解質層40が光導波層として機能する。
図6Aから図6Fに示す例では、一対の電極20の少なくとも一方が、界面35の幅以上である。一対の電極20間に発生する電界は、よりZ方向に平行になる。これにより、Z方向から見たとき、電気光学材料層30のうち、界面35に重なる部分全体、および、電解質層40のうち、界面35に重なる部分全体に、有効に電界を印加することができる。その結果、電気光学材料層30の屈折率の変化量は大きくなる。図6Aおよび図6Dに示すように、一対の電極20の両方が、界面35の幅以上であるとき、上記の部分全体に、より有効に電界を印加することができる。図6Aに示す例では、一対の電極20の両方が、電気光学材料層30の幅以上である。図6Bに示す例では、第1の電極20aが、電気光学材料層30の幅以上である。図6Cに示す例では、第2の電極20bが、電気光学材料層30の幅以上である。図6Dに示す例では、一対の電極20の両方が、電解質層40の幅以上である。図6Eに示す例では、第1の電極20aが、電解質層40の幅以上である。図6Fに示す例では、第2の電極20bが、電解質層40の幅以上である。
図6Aから図6Gに示す例では、電気光学材料層30および電解質層40の一方の幅が、他方の幅以上である。図6Aから図6Cに示す例では、電解質層40の幅が、電気光学材料層30の幅以上である。図6Dから図6Gに示す例では、電気光学材料層30の幅が、電解質層40の幅以上である。すなわち、電気光学材料層30および電解質層40のうち、光導波層として機能しない方の幅が、光導波層として機能する方の幅以上に設定されている。これにより、図6Aから図6Gに示す例では、光導波層として機能する方のうち、界面35を含む表面全体に、電気二重層が形成される。図1Aおよび図3Aに示す例では、電気光学材料層30の幅と、電解質層40の幅とを等しく設計したとしても、実際には、光導波層として機能しない方の幅が、光導波層として機能する方の幅よりも狭くなり得る。このため、光導波層として機能する方のうち、界面35を含む表面の両端には、電気二重層が形成されない可能性がある。この場合、当該両端付近では、屈折率を大きく変調することができない可能性がある。図6Aから図6Gに示す例では、そのような可能性はない。
図6Aおよび図6Bに示す例では、誘電体部材60は、電気光学材料層30の両側に位置する。図6Cに示す例では、誘電体部材60は、第1の電極20aの両側および電気光学材料層30の両側に位置する。図6Aから図6Cに示す誘電体部材60により、電解質層40の幅を電気光学材料層30の幅以上に積層することができる。図6Aから図6Cに示す例では、誘電体部材60の屈折率は、電気光学材料層30の屈折率よりも低い。
図6Dに示す例では、誘電体部材60は、電解質層40の両側に位置する。図6Fに示す例では、誘電体部材60は、第1の電極20aの両側、および電解質層40の両側に位置する。図6Gに示す例では、誘電体部材60は、第1の電極20aの両側に位置する。図6Dおよび図6Fに示す、電解質層40の両側に位置する誘電体部材60により、第2の電極20bの幅を、電解質層40の幅以上にすることができる。図6Fおよび図6Gに示す、第1の電極20aの両側に位置する誘電体部材60により、電気光学材料層30の幅を、電解質層40の幅以上にすることができる。図6Dから図6Gに示す例では、誘電体部材60の屈折率は、電解質層40の屈折率よりも低い。なお、図6Fおよび図6Gに示す、第1の電極20aの両側に位置する誘電体部材60の屈折率は、電解質層40の屈折率よりも低い必要はなく、電解質層40の屈折率以上であってもよい。
(製造方法)
以下に、光位相変調器100の製造方法を説明する。
以下に、光位相変調器100の製造方法を説明する。
図7は、光位相変調器100の製造工程を示すフローチャートである。光位相変調器100の製造方法は、以下のステップS101からステップS104を含む。
ステップS101において、MgO(100)単結晶から形成されたMgO基板が用意される。MgO基板は、図1Aおよび図1Bに示す基板10に相当する。
ステップS102において、MgO基板の主面上に、LSSO層およびKTN層が、この順に、エピタキシャル成長によって形成される。LSSO層は、図1Aおよび図1Bに示す第1の電極20aに相当する。LSSO層は、電気伝導性を示す。LSSO層は、[100]方向に配向している。LSSO層の厚さは、200nmである。KTN層は、図1Aおよび図1Bに示す電気光学材料層30に相当する。KTN層の厚さは500nmである。
LSSO層およびKTN層の形成には、パルスレーザ堆積(Pulsed Laser Deposition:PLD)が用いられる。真空チャンバ内に、MgO基板と、LSSOから形成されたターゲットとが対向して配置される。対向距離は40mmである。真空チャンバ内を真空排気した後O2ガスを注入することにより、真空チャンバ内の圧力が10Paになる。MgO基板は700℃に加熱される。LSSOから形成されたターゲットは、エキシマレーザで照射される。これにより、MgO基板の主面10s上に、LSSO層が堆積される。同様の手法により、LSSO層が主面10s上に形成されたMgO基板が700℃に加熱され、KTNから形成されたターゲットがエキシマレーザで照射される。これにより、LSSO層上に、KTN層が堆積される。冷却後、LSSO層およびKTN層を含むMgO基板が、真空チャンバから取り出される。
ステップS103において、KTN層上に、LiPON層が形成される。LiPON層は、図1Aおよび図1Bに示す電解質層40に相当する。LiPON層の厚さは、600nmである。LiPON層の形成には、スパッタ法が用いられる。高周波スパッタ装置の真空チャンバ内に、LSSO層およびKTN層を含むMgO基板と、LiPONから形成されたターゲットが対向して配置される。対向距離は45mmである。真空チャンバ内を真空排気した後Ar/O2(7:3)ガスを注入することにより、真空チャンバ内の圧力が1.5Paになる。RFパワー50Wで1時間スパッタリングすることにより、LiPON層が、KTN層上に堆積される。
ステップS104において、LiPON層上に、10wt%SnO2ドープIn2O3から形成されたITO層が形成される。ITO層は、図1Aおよび図1Bに示す第2の電極20bに相当する。第2の電極20bの厚さは、100nmである。ITO層の形成には、上記と同様のスパッタ法が用いられる。
LSSO層、KTN層、およびLiPON層の屈折率は、それぞれ、2.0、2.2および1.7程度である。したがって、一番高い屈折率のKTN層が、光導波層として機能する。一対の電極20に電圧を印加することにより、KTN層の屈折率を、約2.0から約2.2の範囲内で変化させることができる。これにより、KTN層を伝搬する光32の位相を変調することができる。
ステップS101からステップS104によって製造された積層構造は、フォトリソグラフィおよびドライエッチングにより、任意の形状にパターニングすることができる。上記のKTN層において、空気中での波長が1550nmである0次のTMモードが存在するために、当該積層構造の幅は、例えば1μmに設計される。当該積層構造は、後述するマッハ・ツェンダー(Mach-Zehnder)型の光スイッチングデバイス、または光フェーズドアレイにパターニングしてもよい。
(応用例)
本実施形態における光位相変調器100では、制御回路50は、一対の電極20に印加される直流電圧の値を変化させることにより、電気光学材料層30の屈折率を変化させる。これにより、電気光学材料層30内を伝搬する光32の位相が変調される。以下に、光32の位相変調を利用した応用例を説明する。
本実施形態における光位相変調器100では、制御回路50は、一対の電極20に印加される直流電圧の値を変化させることにより、電気光学材料層30の屈折率を変化させる。これにより、電気光学材料層30内を伝搬する光32の位相が変調される。以下に、光32の位相変調を利用した応用例を説明する。
本実施形態における光位相変調器100は、例えば、マッハ・ツェンダー型の光スイッチングデバイスに適用することができる。図8は、マッハ・ツェンダー型の光スイッチングデバイス200の例を模式的に示す平面図である。光スイッチングデバイス200は、入力導波路200a、分岐された2つの光導波路200b、および出力導波路200cを備える。分岐された2つの光導波路200bは、入力導波路200aと出力導波路200cとの間に位置する。図8に示す例では、入力導波路200a側の分岐点A、および出力導波路200c側の分岐点Bでの光の反射は考慮されない。分岐された2つの光導波路200bのうち、一方の光導波路は、本実施形態における光位相変調器100を含む。
当該一方の光導波路内を伝搬する光の位相は、他方の光導波路内を伝搬する光の位相と比較して、Δφ=(2π/λ)ΔnLだけシフトする。光位相変調器100における一対の電極20に印加する直流電圧の値が0Vのとき、Δφ=0である。このとき、分岐された2つの光導波路200bからそれぞれ出力された光の位相は、同位相である。このため、同位相の2つの光が出力導波路200cに入力すると、当該2つの光は重なり合う。したがって、出力導波路200cから出力された光の強度Ioutは、入力導波路200aに入力された光の強度Iinに等しい。
一方、光位相変調器100における一対の電極20に印加する直流電圧の値を調整することにより、Δφ=πにすることができる。このとき、分岐された2つの光導波路200bからそれぞれ出力された光の位相は、逆位相になる。このため、逆位相の2つの光が出力導波路200cに入力すると、当該2つの光は打ち消しあう。したがって、出力導波路200cから出力された光の強度Ioutは0になる。
以上のように、光位相変調器100における一対の電極20に印加する直流電圧を変化させることにより、光スイッチングデバイス200の出力導波路200cから出力された光の強度Ioutを、Iinから0まで連続的に調整することができる。屈折率を大きくかつ高速に変調することができる光位相変調器100により、光スイッチングデバイス200の小型化、および光スイッチングデバイス200から出力された光の強度変調の高速化が可能になる。
また、本実施形態における光位相変調器100は、例えば、光フェーズドアレイ300に適用することができる。図9Aおよび図9Bは、光フェーズドアレイ300の例を模式的に示す図である。光フェーズドアレイ300は、Y方向に配列された複数の光導波路300wを備える。複数の光導波路300wの各々は、本実施形態における光位相変調器100を含む。複数の光導波路300wからそれぞれ出力された複数の光は、互いに干渉する。これにより、光フェーズドアレイ300から出力された干渉光は、特定の方向に伝搬する。図9Aおよび図9Bに示す例において、破線は、複数の光導波路300wからそれぞれ出力された複数の光の波面を表している。実線は、光フェーズドアレイ300から出力された干渉光の波面を表している。図9Aおよび図9Bに示す例において、複数の光導波路300wは、等間隔で配列されているが、異なる間隔で配列されていてもよい。
図9Aに示す例では、光位相変調器100における一対の電極20に印加する直流電圧の値が0Vのとき、複数の光導波路300wから出力される光の位相は、同位相である。したがって、光フェーズドアレイ300から出力された干渉光は、複数の光導波路300wが延びるX方向と同じ方向に伝搬する。
図9Bに示す例では、光位相変調器100における一対の電極20に印加する直流電圧の値を調整することにより、複数の光導波路300wから出力される光の位相は、Y方向に沿ってΔφずつ増加する。したがって、光フェーズドアレイ300から出力された干渉光は、複数の光導波路300wが延びるX方向とは異なる方向に伝搬する。
以上のように、光位相変調器100における一対の電極20に印加する直流電圧を変化させることにより、光フェーズドアレイ300から出力された干渉光の伝搬方向を調整することができる。すなわち、光ビームスキャンが可能になる。さらに、光フェーズドアレイ300は、特定の方向から入射する光を検出することも可能である。図9Aおよび図9Bに示す例では、光フェーズドアレイ300は、矢印とは逆の方向から入射した光を検出することができる。屈折率を大きくかつ高速に変調することができる光位相変調器100により、光フェーズドアレイ300の小型化、ならびに、光フェーズドアレイ300における光スキャンの高速化および広角度化が可能になる。
光フェーズドアレイ300は、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging)システムなどの光スキャンシステムおよび/または光検出システムにおけるアンテナとして用いられ得る。LiDARシステムでは、ミリ波などの電波を用いたレーダシステムと比較して、可視光、赤外線、または紫外線などの短波長の電磁波が用いられる。このため、物体の距離分布を高い分解能でスキャンおよび検出することができる。そのようなLiDARシステムは、例えば自動車、UAV(Unmanned Aerial Vehicle、所謂ドローン)、またはAGV(Automated Guided Vehicle)などの移動体に搭載され、衝突回避技術の1つとして使用され得る。
本開示の実施形態における光デバイスは、例えば、マッハ・ツェンダー型の光スイッチングデバイス、または自動車、UAV、もしくはAGVなどの車両に搭載されるLiDARシステムの用途に利用できる。
10 :基板
10s :主面
20 :電極
20a :第1の電極
20b :第2の電極
20ba :第3の電極
20bb :第4の電極
20bc :第5の電極
30 :電気光学材料層
30a :第1の電気光学材料層
30b :第2の電気光学材料層
30c :第3の電気光学材料層
32 :光
32a :第1の光
32b :第2の光
32c :第3の光
35 :界面
35a :第1の界面
35b :第2の界面
35c :第3の界面
40 :電解質層
42 :光
44 :エバネッセント光
50 :制御回路
60 :誘電体部材
100、110、120:光位相変調器
130a、130b、130c、130d、130e、130f、130g:光位相変調器
200 :光スイッチングデバイス
200a :入力導波路
200b :光導波路
200c :出力導波路
300 :光フェーズドアレイ
300w :光導波路
10s :主面
20 :電極
20a :第1の電極
20b :第2の電極
20ba :第3の電極
20bb :第4の電極
20bc :第5の電極
30 :電気光学材料層
30a :第1の電気光学材料層
30b :第2の電気光学材料層
30c :第3の電気光学材料層
32 :光
32a :第1の光
32b :第2の光
32c :第3の光
35 :界面
35a :第1の界面
35b :第2の界面
35c :第3の界面
40 :電解質層
42 :光
44 :エバネッセント光
50 :制御回路
60 :誘電体部材
100、110、120:光位相変調器
130a、130b、130c、130d、130e、130f、130g:光位相変調器
200 :光スイッチングデバイス
200a :入力導波路
200b :光導波路
200c :出力導波路
300 :光フェーズドアレイ
300w :光導波路
Claims (11)
- 少なくとも第1の方向に延びた構造を有し、ポッケルス効果またはカー効果によって屈折率が変化する電気光学材料層と、
前記電気光学材料層に接し、少なくとも前記第1の方向に延びた構造を有する電解質層と、
前記電気光学材料層および前記電解質層に電圧を印加するための第1の電極および第2の電極と、
前記電圧を制御して前記電気光学材料層の前記屈折率を変化させることにより、前記電気光学材料層または前記電解質層を前記第1の方向に沿って伝搬する光の位相を変調する制御回路と、
を備える、
光位相変調器。 - 前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方の幅は、前記電気光学材料層と前記電解質層との界面の幅よりも大きい、
請求項1に記載の光位相変調器。 - 前記電解質層の幅は、前記電気光学材料層の幅よりも大きい、
請求項1または2に記載の光位相変調器。 - 前記電気光学材料層の幅は、前記電解質層の幅よりも大きい、
請求項1または2に記載の光位相変調器。 - 前記電気光学材料層は、前記電気光学材料層と前記電解質層との界面に垂直な方向に沿って配向した結晶構造を有する、
請求項1から4のいずれかに記載の光位相変調器。 - 前記電気光学材料層は、前記電解質層に埋め込まれている、
請求項1から5のいずれかに記載の光位相変調器。 - 前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方は、透明電極である、
請求項1から6のいずれかに記載の光位相変調器。 - 前記電気光学材料層は、タンタル酸ニオブ酸カリウムから形成されている、
請求項1から7のいずれかに記載の光位相変調器。 - 各々が少なくとも第1の方向に延びた構造を有し、ポッケルス効果またはカー効果によって各々の屈折率が変化する、複数の電気光学材料層と、
前記複数の電気光学材料層の各々に接し、少なくとも前記第1の方向に延びた構造を有する電解質層と、
各々が、前記複数の電気光学材料層の1つと前記電解質層との界面の少なくとも一部に交差する方向において、前記複数の電気光学材料層の前記1つおよび前記電解質層を直接的または間接的に挟む、複数対の電極と、
前記複数対の電極の各々に電圧を印加して前記複数の電気光学材料層の1つの前記屈折率を変化させることにより、前記複数の電気光学材料層の前記1つを前記第1の方向に沿って伝搬する光の位相を変調する制御回路と、を備える、
光位相変調器。 - 光位相変調器を用いた光位相変調方法であって、
前記光位相変調器は、
少なくとも第1の方向に延びた構造を有し、ポッケルス効果またはカー効果によって屈折率が変化する電気光学材料層と、
前記電気光学材料層に接し、少なくとも前記第1の方向に延びた構造を有する電解質層と、
前記電気光学材料層と前記電解質層とに電圧を印加するための第1の電極および第2の電極と、を備え、
前記電気光学材料層または前記電解質層に、前記第1の方向に沿って光を伝搬させ、
前記電圧を制御して前記屈折率を変化させることにより、前記光の位相を変調する、
光位相変調方法。 - 前記光の位相を変調する期間において、前記光が前記電気光学材料層と前記電解質層との界面で全反射する状態が保たれる、
請求項10に記載の光位相変調方法。
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JP2019076230A JP2022084971A (ja) | 2019-04-12 | 2019-04-12 | 光位相変調器、および光位相変調方法 |
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JP2019076230A JP2022084971A (ja) | 2019-04-12 | 2019-04-12 | 光位相変調器、および光位相変調方法 |
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JP2019076230A Pending JP2022084971A (ja) | 2019-04-12 | 2019-04-12 | 光位相変調器、および光位相変調方法 |
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-
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