JP2022084340A - エレクトロスピニング不織布 - Google Patents

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Yoshiaki Kawatsu
佑太 若元
Yuta WAKAMOTO
隆 多羅尾
Takashi Tarao
芳徳 佐藤
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Abstract

【課題】更に様々な産業用途へ利用可能なエレクトロスピニング不織布を提供するため、構成繊維をなす樹脂に含まれる鉄の質量が少ないエレクトロスピニング不織布の実現を目的とする。【解決手段】エレクトロスピニングの製造方法および製造装置において、紡糸液が電圧印加部材と接触してから吐出部材より吐出されるまでの間に、紡糸液を重金属含有部材と接触させないことによって、構成繊維をなす樹脂1gあたりに含まれる鉄の質量が70.7μg未満であるという、従来技術にかかるエレクトロスピニング不織布よりも鉄の含有量が少ない、更に様々な産業用途へ利用可能なエレクトロスピニング不織布を提供できることを見出した。【選択図】図1

Description

本発明は、エレクトロスピニング不織布に関する。
近年、不織布は様々な産業用途、例えば、水処理膜などの液体分離膜や気体分離膜、医療用材料、イオン交換膜や透析膜、水電解膜、燃料電池の高分子電解質膜などといった複合膜の支持体として、あるいは、キャパシタや一次/二次電池などの電気化学素子用セパレータやセパレータの支持部材、粒子を担持したシートをなす粒子担持材、プリプレグ、気体フィルタや液体フィルタ、貼付薬用基材やマスクなどの医療用途、緩衝材やシーリング材、吸液材、内装用表皮材、細胞培養基材や細胞分離部材、導電性部材や絶縁材、放熱部材や保温材、芯地や中綿などに使用されている。
特に、不織布を構成する繊維の繊維径を細くすることで、不織布の繊維表面積を増大させ、上述した用途における機能性を向上できることが期待されている。このような繊維径が細い繊維で構成された不織布として、近年ではエレクトロスピニング不織布の活用が注目されている。なお、エレクトロスピニング不織布とは「エレクトロスピニング最前線(非特許文献1)」に記載されていることからも周知のように、給液路を通過しノズルなど吐出部材へと供給される紡糸液に電圧印加部材を接触させて電圧を印加し、電圧が印加された紡糸液を吐出部材から吐出することで紡糸液を繊維化すると共に、アースするなどした捕集体に捕集し形成された不織布である。
また、このようなエレクトロスピニング不織布の製造方法と製造装置について、特開2011-102455号公報(特許文献1)には、
・給液路である送液パイプ内に、電圧印加部材となる電極を設置する方法を採用できること、
・当該電極に金属やカーボン等の導電性材料を採用できること、
・吐出部材であるノズルの材質としては、例えば、テフロン(登録商標)やジュラコン(登録商標)等のエンジニアリングプラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシロキサン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニルなどの樹脂、ステンレス、鉄、銅、ニッケル、白金、金、銀などの金属、カーボンなどの導電性材料であることが好ましいこと、
が開示されている。そして、特許文献1の実施例には、紡糸液と接触する電圧印加部材として金属性のパイプ電極を採用すると共に、吐出部材として鉄の合金であるステンレスや樹脂製のノズルを用いてエレクトロスピニング不織布を製造したことが開示されている。
エレクトロスピニング最前線(著者:山下義裕、発行所:株式会社 繊維社、発行年:第1版 2007年1月20日) 特開2011-102455号公報(特許請求の範囲、0023、0088、表12など)
本願出願人は、上述したような従来技術が開示する知見に基づき、エレクトロスピニング不織布の提供を試みた。しかし、従来技術に係るエレクトロスピニング不織布は、様々な産業用途に使用するには限界のあるものであった。例えば、従来技術に係るエレクトロスピニング不織布を液体と触れる産業用途に使用した場合、当該液体中の重金属の一種である鉄の濃度が増大することがあった。また、従来技術に係るエレクトロスピニング不織布を電気化学用素子の構成部材として使用した場合、電気化学用素子の発電性能が意図せず低下するなどの問題が発生することがあった。
本願出願人がその原因を探求したところ、従来技術に係るエレクトロスピニング不織布においては、その構成繊維をなす樹脂に含まれる鉄の質量が、当該エレクトロスピニング不織布を製造するため使用した紡糸液をなす樹脂に含まれる鉄の質量よりも増大していることを見出した。つまり、従来技術に係るエレクトロスピニング不織布である限り、構成繊維をなす樹脂に含まれる鉄の質量が少ないエレクトロスピニング不織布を提供できないものであった。
これらの新たな知見のもと、更に様々な産業用途へ利用可能なエレクトロスピニング不織布を提供するため、構成繊維をなす樹脂に含まれる鉄の質量が少ないエレクトロスピニング不織布の実現が必要であると考えられた。
また、本願出願人が上述した問題の発生原因を探求するため、エレクトロスピニング不織布を製造した後の従来技術に係るエレクトロスピニング不織布の製造装置に対し、顕微鏡を用いた詳細な観察や各構成部品を分解して確認したところ、電圧が印加された紡糸液と接触する、鉄などの重金属を含有する重金属含有部材(例えば、少なくとも鉄とクロムを含む合金であるステンレス製のパイプ電極やステンレス製のノズル)に、溶融したような痕跡の存在や金属塩だと考えられる水垢状物質の析出が認められた。
この分析結果から本願出願人は、従来技術に係るエレクトロスピニング不織布の製造装置において、電圧が印加された紡糸液が重金属含有部材(例えば、少なくとも鉄とクロムを含む合金であるステンレス製のパイプ電極やステンレス製のノズル)と接触した際に、当該重金属含有部材が電気分解され、当該金属含有部材に含まれている重金属が当該紡糸液へ溶出するという現象が発生しているのではないかと推測した。具体的には、電圧が印加された紡糸液がステンレス製のパイプ電極やステンレス製のノズルと接触した際に、当該パイプ電極やノズルが電気分解され、当該パイプ電極やノズルに含まれている鉄が当該紡糸液へ溶出するという現象が発生しているのではないかと推測した。
本発明は、
「構成繊維をなす樹脂1gあたりに含まれる鉄の質量が70.7μg未満である、エレクトロスピニング不織布。」
である。
本願出願人は検討の結果、構成繊維をなす樹脂1gあたりに含まれる鉄の質量が70.7μg未満であるという、従来技術にかかるエレクトロスピニング不織布よりも鉄の含有量が少ない、更に様々な産業用途へ利用可能なエレクトロスピニング不織布を提供するに至った。
エレクトロスピニング不織布の製造装置を表した、模式側面図である。
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。なお、本発明で説明する各種測定は特に記載のない限り、常圧のもと25℃(室温)温度条件下で測定を行った。また、本発明で説明する各種測定結果は特に記載のない限り、求める値よりも一桁小さな値まで測定で求め、当該値を四捨五入することで求める値を算出した。具体例として、小数第一位までが求める値である場合、測定によって小数第二位まで値を求め、得られた小数第二位の値を四捨五入することで小数第一位までの値を算出し、この値を求める値とした。そして、本発明で例示する各上限値および各下限値は、任意に組み合わせることができる。
本発明に係るエレクトロスピニング不織布の、目付や厚さならびに空隙率などは用途や要求物性などによって適宜調整できる。その目付は0.01~100g/mであることができ、0.05~50g/mであることができ、0.1~25g/mであることができる。なお、「目付」とは測定対象物の主面における1m2あたりに換算した質量をいう。そして、その厚みは100μm以下であるのが好ましく、75μm以下であるのが好ましく、50μm以下であるのが好ましい。一方、厚みは1μm以上であるのが現実的である。なお、「厚み」とは、定対象物の主面と垂直を成す方向におけるシックネスゲージ((株)ミツトヨ製、コードNo.:547-401、測定力3.5N以下)を用いて測定した長さを意味する。
また、その空隙率は70~99%であることができ、80~95%であることができ、85~90%であることができる。なお、「空隙率」とは、定対象物の外観上の体積に占める、定対象物を構成している成分の体積の百分率を意味する。
エレクトロスピニング不織布を構成する繊維の平均繊維径は、用途や要求物性などによって適宜調整できる。その平均繊維径は、0.01~10μmであることができ、0.02~5μmであることができ、0.05~3μmであることができ、0.1~1μmであることができる。なお、「平均繊維径」とは、繊維を含む測定対象部分を撮影した5000倍の電子顕微鏡写真をもとに測定した、50点の繊維における各繊維径の算術平均値をいう。また、繊維の断面形状が非円形である場合には、断面積と同じ面積の円の直径を繊維径とみなす。
エレクトロスピニング不織布を構成する繊維の断面形状は、用途や要求物性などによって適宜調整できる。円形や略円形あるいは楕円形の繊維以外にも異形断面繊維であっても。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
エレクトロスピニング不織布を構成する繊維を成す樹脂の種類は、用途や要求物性などによって適宜調整できる。例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をニトリル基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース繊維、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の有機ポリマーを用いて構成できる。
なお、他の樹脂の種類は複数種類であっても良く、これらの樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でもよい。また、樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでもよい。
また、海島型や芯鞘型あるいはオレンジ型やサイドバイサイド型などの、複数の異なる樹脂で構成された複合繊維であってもよい。しかし、更に様々な産業用途へ利用可能なエレクトロスピニング不織布を提供できるよう、一種類の樹脂からなる繊維のみで構成されたエレクトロスピニング不織布であるのが好ましい。
本発明にかかるエレクトロスピニング不織布は、重金属の一種である鉄の含有量が少ないことを特徴としており、具体的には、構成繊維をなす樹脂1gあたりに含まれる鉄の質量が70.7μg未満と少ないことを特徴とする。
なお、ここでいう重金属とは、広辞苑(第五版、編者:新村出、発行所:岩波書店、発行年:1998年11月11日)に記載されているように、比重4~5以上の金属の総称を指すものであり、例えば、鉄(比重:7.9)やクロム(比重:7.2)やニッケル(比重:8.9)あるいは亜鉛(比重:7.1)などの金属を指す。
当該質量が少ないほど、様々な産業用途へ利用可能なエレクトロスピニング不織布を提供できる。そのため、エレクトロスピニング不織布の構成繊維をなす樹脂1gあたりに含まれる、鉄の質量は70.0μg以下であるのが好ましく、65.0μg以下であるのが好ましく、60.0μg以下であるのが好ましく、57.1μg以下であるのが好ましい。
また、エレクトロスピニング不織布に含有される、鉄以外の重金属の含有量もまた少ないほど、更に様々な産業用途へ利用可能なエレクトロスピニング不織布を提供できる。そのため、エレクトロスピニング不織布の構成繊維をなす樹脂1gあたりに含まれる、鉄以外の重金属の含有量もまた70.7μg未満であるのが好ましい。具体例として、クロムの質量は1.5μg以下であるのが好ましく、1.3μg以下であるのが好ましく、1.0μg以下であるのが好ましく、0.8μg以下であるのが好ましい。そして、ニッケルの質量は2.0μg以下であるのが好ましく、1.5μg以下であるのが好ましく、1.0μg以下であるのが好ましく、0.5μg未満であるのが好ましい。更に、亜鉛の質量は6.0μg以下であるのが好ましく、5.5μg以下であるのが好ましく、4.0μg以下であるのが好ましく、2.4μg以下であるのが好ましい。
なお、理想的には、エレクトロスピニング不織布の構成繊維をなす樹脂1gあたりに含まれる重金属の質量は60.8μg未満であるのが好ましく、60.3μg以下であるのが好ましく、50μg以下であるのが好ましく、40μg以下であるのが好ましく、30μg以下であるのが好ましく、20μg以下であるのが好ましく、10μg以下であるのが好ましく、0μgであるのが最も好ましい。なお、本発明で規定する鉄などの重金属は、それらの塩を含む概念であってもよい。なお、樹脂に含まれる鉄などの各種重金属の質量は、以下の方法で確認できる。
(樹脂に含まれる鉄などの各種重金属の質量の確認方法)
1.測定対象となる樹脂100mgを用意し、これを試料とする。具体例として、エレクトロスピニング不織布から構成繊維を100mg採取し、これを試料とする。あるいは、エレクトロスピニング不織布が当該樹脂からなる繊維のみで構成されている場合には、エレクトロスピニング不織布を100mg用意し、これを試料とする。
2.濃度95wt%の硫酸10mlを入れたコニカルビーカーへ試料を入れる。
3.硫酸白煙が生じると共に硫酸が茶色~黒色に変色するまでコニカルビーカーを加熱し、その後、室温となるまで放冷する。
4.コニカルビーカーへ濃度60wt%の硝酸3mlを加え、再度、硫酸白煙が生じるまでコニカルビーカーを加熱し、その後、硫酸を室温まで放冷する。
5.加熱によって硫酸白煙が生じたとしても硫酸が茶色~黒色に変色しなくなるまで、上述の3~4の操作を繰り返し行う。
6.上述した5の操作を行った後、硫酸の量が2ml以下となるまでコニカルビーカーを加熱し、その後、室温となるまで放冷する。
7.放冷した後の硫酸へ濃度60wt%の硝酸1mlを加え、更に、超純水を加え50mlまでメスアップして試験液を調製する。
8.試験液を原子吸光分析装置へ供することで、当該試験液中に含まれる鉄などの各種重金属の質量を測定する。
9.測定された鉄などの各種重金属の質量(単位:μg)を各々10倍した値を、エレクトロスピニング不織布の構成繊維をなす樹脂1g中に含まれる鉄などの各種重金属の質量(単位:μg)とする。なお、樹脂に含まれている金属の種類は、試験液を原子吸光分析装置へ供することで確認できる。
本発明に係るエレクトロスピニング不織布は、構成繊維同士を接着するバインダや、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。しかし、更に様々な産業用途へ利用可能なエレクトロスピニング不織布を提供できるよう、繊維のみで構成されたエレクトロスピニング不織布であるのが好ましい。
本発明に係るエレクトロスピニング不織布を製造可能な、エレクトロスピニング不織布の製造装置について、図1を用いて説明する。なお、本発明に係るエレクトロスピニング不織布を製造可能な、エレクトロスピニング不織布の製造方法については当該製造装置の説明と併せて行う。
図1に図示するエレクトロスピニング不織布の製造装置(100)は、エレクトロスピニング不織布(11)の構成繊維をなす樹脂を含んだ紡糸液を貯蔵できる貯液部(1)、紡糸液を吐出できる吐出部材(2)、貯液部(1)から吐出部材(2)へ紡糸液を給液できる給液路(3)、給液路(3)を通過する紡糸液と接触して紡糸液へ電圧を印加できる給液路を構成する電圧印加部材(4)、吐出部材(2)から吐出され繊維化した紡糸液(10)を捕集できる捕集体(5)とを備えている。なお、紡糸液が電圧印加部材(4)と接触してから吐出部材(2)より吐出されるまでの間を(6)として図示している。
更に、図1に図示するエレクトロスピニング不織布の製造装置(100)は、加えて、貯液部(1)から紡糸液を給液路(3)へ送り出す送液手段(7)、電圧印加部材(4)へ電気を供給するパワーサプライ(8)、パワーサプライ(8)および捕集体(5)のアース(9)を備えている。なお、電圧印加部材(4)とパワーサプライ(8)の間、パワーサプライ(8)とアース(9)の間、捕集体(5)とアース(9)の間をつなぐ波線は、電線を図示したものである
まず、貯液部(1)に貯蔵されている紡糸液は、送液手段(7)の働きによってパイプなどの給液路(3)内を通過し、ノズルなどの吐出部材(2)より吐出される。給液路(3)の途中には給液路(3)の一部を構成する電圧印加部材(4)が存在しおり、電圧印加部材(4)は紡糸液と接触する。なお、電圧印加部材(4)は給液路(3)の内壁面から突出した形状をしていてもよい。そして、パワーサプライ(8)によって電圧印加部材(4)へ電圧が印加されることで、電圧印加部材(4)と接触した紡糸液へ電圧が印加される。ノズルなどの吐出部材(2)より吐出された電圧が印加された紡糸液は、アース(9)されている捕集体(5)へ向かい誘引されると共に細径化することで繊維化しながら吐出部材(2)と捕集体(5)の間の空間を飛翔し、捕集体(5)上に捕集されることでエレクトスピニング不織布(11)が製造される。
本願出願人は検討の結果、貯液部(1)から吐出部材(2)へ給液路(3)を通過して供給される紡糸液と接触する給液路を構成する電圧印加部材(4)により、給液路(3)を通過する紡糸液へ電圧を印加する工程を備えるエレクトロスピニング不織布の製造方法において、紡糸液が電圧印加部材(4)と接触するときから吐出部材(2)より吐出されるまでの間(6)に、紡糸液を、重金属含有部材と接触させないことによって、本発明に係るエレクトロスピニング不織布(11)を製造できることを見出した。
また同様に、貯液部(1)と吐出部材(2)を結ぶ給液路(3)、ならびに、当該給液路(3)を通過する紡糸液と接触することで紡糸液へ電圧を印加可能な、当該給液路を構成する電圧印加部材(4)を備える、エレクトロスピニング不織布の製造装置(100)において、紡糸液が電圧印加部材(4)と接触するときから吐出部材(2)より吐出されるまでの間(6)に、紡糸液と接触する重金属含有部材を有していないことによって、本発明に係るエレクトロスピニング不織布(11)を製造できることを見出した。
つまり、電圧が印加されている紡糸液を重金属含有部材と接触させることなく吐出部材(2)から吐出させ繊維化する、エレクトロスピニング不織布の製造方法および製造装置(100)によって、構成繊維をなす樹脂に含まれる重金属の質量が少ないエレクトロスピニング不織布(11)を提供できることを見出した。
なお、ここでいう「重金属含有部材」とは、鉄などの重金属を含有する部材を指すものである。
特に、従来技術にかかるエレクトロスピニング不織布(11)の製造方法および製造装置(100)では、紡糸液に電圧を印加する金属含有部材に、鉄とクロムを含む合金または加えてニッケルを含む合金であるステンレス製のパイプ電極やステンレス製のノズルを採用しているものであった。そのため、従来技術にかかるエレクトロスピニング不織布(11)の製造方法および製造装置(100)を採用する限り、少なくとも、構成繊維をなす樹脂1gあたりに含まれる鉄の質量が70.7μg未満であるエレクトロスピニング不織布(11)を実現することはできないものであった。同様に、構成繊維をなす樹脂に含まれるクロムやニッケルの含有量が少ないエレクトロスピニング不織布(11)を実現することもできないものであった。
しかし、上述したエレクトロスピニング不織布の製造方法および製造装置(100)では、電圧が印加されている紡糸液を重金属含有部材と接触させることなく、吐出部材(2)から吐出させ繊維化させる。その結果、構成繊維をなす樹脂1gあたりに含まれる鉄の質量が70.7μg未満であるエレクトロスピニング不織布(11)を提供できる。
以降、上述したエレクトロスピニング不織布の製造方法および製造装置(100)の詳細について、説明する。
本発明に係るエレクトロスピニング不織布の製造方法は、次の構成を有することができる。
エレクトロスピニング不織布の製造方法であって、
(1)前記エレクトロスピニング不織布の構成繊維をなす樹脂を含んだ紡糸液を用意する工程、
(2)前記紡糸液を貯蔵している貯液部を用意する工程、
(3)前記貯液部から前記紡糸液を吐出する吐出部材へ、給液路を通し、前記紡糸液を供給する工程、
(4)前記給液路を通過する前記紡糸液と接触して前記紡糸液へ電圧を印加できる、前記給液路を構成する電圧印加部材により、前記給液路を通る前記紡糸液へ電圧を印加する工程、
(5)前記吐出部材から吐出され繊維化した前記紡糸液を、捕集体に捕集する工程、
を備えており、前記紡糸液が前記電圧印加部材と接触してから前記吐出部材より吐出されるまでの間に、前記紡糸液が重金属含有部材と接触しない、
エレクトロスピニング不織布の製造方法。
また、本発明に係るエレクトロスピニング不織布の製造装置(100)は、次の構成を有することができる。
エレクトロスピニング不織布の製造装置であって、
(1)前記エレクトロスピニング不織布の構成繊維をなす樹脂を含んだ紡糸液を貯蔵できる、貯液部、
(2)前記紡糸液を吐出できる、吐出部材、
(3)前記貯液部から前記吐出部材へ前記紡糸液を給液できる、給液路、
(4)前記給液路を通過する前記紡糸液と接触して前記紡糸液へ電圧を印加できる、前記給液路を構成する電圧印加部材、
(5)前記吐出部材から吐出され繊維化した前記紡糸液を捕集できる、捕集体、
を備えており、前記紡糸液が前記電圧印加部材と接触してから前記吐出部材より吐出されるまでの間に、前記紡糸液と接触する重金属含有部材を有していない、
エレクトロスピニング不織布の製造装置。
紡糸液は、例えば、有機ポリマーや無機ポリマーあるいはこれらポリマーの前駆体を溶媒に溶解させた溶液などを使用できる。
紡糸液を構成する有機ポリマーや無機ポリマーあるいはこれらポリマーの前駆体の種類は、本発明において紡糸することができる限り、特に限定されるものではないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなど)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、アクリル系樹脂、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂などの公知の有機ポリマーや、導電性を有していないケイ素などの金属酸化物からなるポリマーなどを用いることができる。
これらのポリマーは、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、またポリマーがブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、またポリマーの立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。また、これら例示以外のポリマーも使用可能であり、例示以外の樹脂も含め、2種以上のポリマーからなる紡糸液とすることもできる。
なお、紡糸液を構成する成分が、無機ポリマーを形成可能な前駆体(モノマー化合物やオリゴマー化合物)である場合、その種類は、本発明において紡糸することができる限り、特に限定されるものではないが前記化合物として、例えば、導電性を有していない金属のアルコキシド、アセチルアセトネート、酢酸塩、シュウ酸塩等の、導電性を有していない金属の金属有機化合物を単一あるいは複数混合して用いることができる。
上述の有機ポリマーや無機ポリマーあるいはこれらポリマーの前駆体を溶解させる溶媒は、紡糸条件によっても変化するため、特に限定されるものではないが、例えば、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル、ギ酸、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどを挙げることができる。これら例示以外の溶媒も使用可能であり、例示以外の溶媒も含め、2種以上の溶媒が混和した混和溶媒を使用することもできる。
また、紡糸液における、有機ポリマーや無機ポリマーあるいはこれらポリマーの前駆体の濃度も、紡糸条件によって適宜調整するが、前記濃度(紡糸液の質量に占める溶解しているポリマーあるいはポリマーの前駆体の質量の百分率)が濃すぎても薄すぎても紡糸を行うことが困難になる傾向があることから、前記濃度は0.1質量%~90質量%であるのが好ましく、0.5質量%~50質量%であるのがより好ましく、1質量%~30質量%であるのが最も好ましい。
また、紡糸液は必要に応じて、例えば、抗菌剤粒子、抗ウイルス剤粒子、抗カビ剤粒子、光触媒粒子、脱臭粒子、色素粒子、難燃剤粒子、防虫剤粒子、殺菌剤粒子、芳香剤粒子、導電性粒子などの機能性成分を混合しても良い。
紡糸液の紡糸性を向上するため、紡糸液の導電性を高めてもよい。例えば、塩を溶解させた紡糸液や、カーボン粒子などの導電性粒子を含んだ紡糸液などを用いても良い。紡糸液の導電性を向上させるために使用できる塩の種類として、例えば、酢酸アンモニウムやギ酸アンモニウムあるいはシュウ酸アンモニウムなどの有機塩などを挙げることができる。紡糸液の質量に占める塩の質量の百分率は適宜調整するものであるが、0.001質量%~90質量%であるのが好ましい。
貯液部(1)の種類は適宜選択でき、例えば、タンク、シリンジ、袋であることができる。その素材は紡糸液により、溶融や溶解あるいは変性しないものを選択する。また本発明に係るエレクトロスピニング不織布(11)を容易に提供できるよう、鉄などの重金属を含んでいない素材であるのが好ましい。
なお、紡糸液として、エレクトロスピニング不織布(11)の構成繊維をなす樹脂と、その溶媒や分散媒を含んでいる紡糸液を採用できる。溶媒や分散媒の種類は適宜選択でき、例えば、水、アセトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,4-ジオキサン、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、2-ブタノン、3-ペンタノン、アセトニトリル、ギ酸、トルエン、ベンゼン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、四塩化炭素、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネートなどを挙げることができる。これら例示以外の溶媒も使用可能であり、例示以外の溶媒も含め、2種以上の溶媒が混和した混和溶媒を使用することもできる。
上述した通り、溶媒や分散媒の組成は適宜調整できるものではあるが、本発明に係るエレクトロスピニング不織布(11)を容易に提供できるよう、鉄などの重金属を含んでいない溶媒や分散媒を用いるのが好ましい。
なお、紡糸液の紡糸性を向上するため、特開2012-046844号に開示されている発明を参照のうえ、紡糸液へ加熱処理によって揮発する、有機酸と窒素化合物からなる塩を添加してもよい。また紡糸液に機能性成分を添加してもよい。
なお、溶融した樹脂を紡糸液として採用してもよい。
送液手段(7)の種類は適宜選択でき、例えば、ポンプ、加圧タンクであることができる。なお、貯液部(1)と送液手段(7)として、例えばシリンジなどの貯液部(1)と送液手段(7)を合わせた部材を採用しても良い。その素材は紡糸液により、溶融や溶解あるいは変性しないものを選択する。また本発明に係るエレクトロスピニング不織布(11)を容易に提供できるよう、鉄などの重金属を含んでいない素材であるのが好ましい。
なお、送液手段(7)が送り出す紡糸液の量は、製造しようとするエレクトスピニング不織布(11)の用途や要求物性などによって適宜調整でき、吐出部材(2)における紡糸液の吐出口一か所あたり(例えば、ノズル一本あたり)0.05~50g/hであることができ、0.1~20g/hであることができ、0.5~10g/hであることができる。
吐出部材(2)の種類は適宜選択でき、例えば、ノズル、メルトブローダイなどのスリットを備えた部材などを採用できる。その素材は鉄などの重金属を含んでいない素材から適宜選択するのが望ましく、紡糸液により、溶解あるいは変性しないものを選択する。一例として、有機樹脂製やカーボン製の吐出部材(2)を採用できる。特に、吐出部材(2)自体にも電圧を印加可能であり、より平均繊維径が細く均一なエレクトロスピニング不織布を製造できるという効果が発揮され易いことから、カーボン製(例えば、カーボン製のノズル、カーボンなど非金属の導電性材料を含んだ導電性を有する有機樹脂製のノズル)であるのが好ましい。
また、吐出部材(2)の紡糸液を吐出する開孔径や、吐出部材(2)が備える紡糸液を吐出する部分の数や形状、また当該部分間の間隔は適宜調整できる。
給液路(3)の種類は適宜選択でき、取り回しが容易であるなどの観点からパイプであるのが好ましい。その素材は鉄などの重金属を含んでいない素材から適宜選択するのが望ましく、紡糸液により、溶解あるいは変性しないものを選択する。一例として、ポリエチレン樹脂製のパイプであるのが好ましい。
電圧印加部材(4)の種類は適宜選択でき、給液路(3)を構成できると共に紡糸液と接触して電圧を印加できるよう、パイプであることができる。その素材は鉄などの重金属を含んでいない素材から適宜選択するのが望ましく、紡糸液により、溶解あるいは変性しないものを選択する。一例として、導電性を有する有機樹脂やカーボンを含んだパイプを採用できる。特に、効率よく紡糸液へ電圧を印加できることから、カーボンを含んでいるのが好ましい。また、電圧印加部材(4)は給液路(3)としての役割を担うことがあり取り回しが容易であるなどの観点から、有機樹脂製のパイプであって紡糸液と接触するパイプ内周面にカーボンが露出しているパイプであるのが好ましい。このようなパイプとして、ニチアス社製内外面帯電防止機能付きPFAチューブなどを例示できる。
パワーサプライ(8)の種類は適宜選択でき、例えば、直流高電圧発生装置やヴァン・デ・グラフ起電機などを使用できる。なお、パワーサプライ(8)により電圧印加部材(4)へ印加する電圧の値は、製造しようとするエレクトスピニング不織布(11)の用途や要求物性などによって適宜調整でき、0.1~50kVであることができ、1~30kVであることができる。なお、パワーサプライは電圧印加部材(4)へ正の電圧を印加しても、負の電圧を印加してもよい。また、電圧の印加のため電圧印加部材(4)へ流す電気が直流であるか交流であるか、または、脈流であるかは適宜選択できる。
捕集体(5)の種類は適宜選択でき、カーボン製や導電性有機樹脂製あるいは金属製のメッシュや平板あるいは棒状の部材などであることができる。
エレクトスピニング不織布(11)を捕集体(5)と接触させたくない場合には、捕集体(5)におけるエレクトスピニング不織布(11)を捕集する部分に、不織布などの布帛やフィルムあるいは発泡体を積層し、当該布帛やフィルムあるいは発泡体上にエレクトスピニング不織布(11)を捕集してもよい。また、当該布帛やフィルムあるいは発泡体とエレクトスピニング不織布(11)の積層体を製造してもよい。
なお、吐出部材(2)における紡糸液が吐出される部分と捕集体(5)との距離は、製造しようとするエレクトスピニング不織布(11)の用途や要求物性などによって適宜調整でき、1~100cmであることができ、2~50cmであることができ、3~20cmであることができる。
また、紡糸雰囲気も適宜調整でき、紡糸雰囲気の温度は0~100℃であることができ、5~80℃℃であることができ、10~50℃であることができる。また、紡糸雰囲気の湿度は0~100%であることができ、5~80%であることができ、10~50%であることができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
(紡糸液の調製)
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルスルホン(PESU)の各々をジメチルホルムアミド(沸点:153℃)へ溶解させ、PVDF紡糸液、PAN紡糸液、PESU紡糸液を調製した。なお、ジメチルホルムアミドは鉄などの重金属を含有していなかった。
また、PVDF紡糸液中のPVDF1gあたりに含まれる、鉄の質量は57.1μg以下であり、クロムの質量は0.8μg以下であり、ニッケルの質量は0.5μg未満であり、亜鉛の質量は2.4g以下であった。
そして、PAN紡糸液中のPAN1gあたりに含まれる鉄の質量は4.5μg以下であり、PESU紡糸液中のPESU1gあたりに含まれる鉄の質量は2.2μg以下であった。
(比較例1)
図1に示すような、エレクトロスピニング不織布の製造装置を用意した。なお、電圧印加部材として鉄とクロムならびにニッケルを含む合金であるステンレス製パイプを用いた。また、吐出部材として重金属を含有しない、カーボン練り込みポリエーテルエーテルケトン製ノズル(内径:0.33mm)を用いた。更に、給液路として重金属を含有しない、ポリエチレン樹脂製のパイプを用いた。
なお、ノズルから吐出される紡糸液の量が3g/hとなるように、送液手段として用いるポンプによる紡糸液の送液速度を調整した。また、電圧印加部材と接触することで紡糸液へ印加される電圧が21kVとなるように、パワーサプライによる電圧の印加量を調整した。そして、ノズルの紡糸液を吐出する部分と捕集体の距離を9cm離した。
このようにして調整したエレクトロスピニング不織布の製造装置では、紡糸液が電圧印加部材と接触するときから吐出部材より吐出されるまでの間に、紡糸液が重金属含有部材(電圧印加部材であるステンレス製パイプ)と接触するものであった。
当該構成を備えるエレクトロスピニング不織布の製造装置を用いて、PVDF紡糸液を繊維化しエレクトロスピニング不織布を製造した。
(実施例1)
電圧印加部材として、重金属を含有しないPFA樹脂(四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体)製のパイプであって紡糸液と接触する内周面に重金属を含有しないカーボンが露出しているパイプを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、エレクトロスピニング不織布を製造した。
このようにして調整したエレクトロスピニング不織布の製造装置では、紡糸液が電圧印加部材と接触するときから吐出部材より吐出されるまでの間に、紡糸液は重金属含有部材と接触しないものであった。
(実施例2~3)
PVDF紡糸液の代わりに、紡糸液としてPAN紡糸液あるいはPESU紡糸液を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエレクトロスピニング不織布を製造した。
比較例および実施例において、エレクトロスピニング不織布を製造するため使用した紡糸液の種類と電圧印加部材の種類、そして、製造したエレクトロスピニング不織布の各種物性を表1にまとめ記載した。なお、測定していない項目については、表中に「-」を記載した。
Figure 2022084340000002
比較例1と実施例1を比較した結果から、構成繊維をなす樹脂1gあたりに含まれる鉄の質量が70.7μg未満(57.1μgであり比較例1よりも13.6μg少ない)であり、構成繊維をなす樹脂1gあたりに含まれるクロムの質量が1.6μg未満(0.8μgであり比較例1よりも0.8μg少ない)であり、構成繊維をなす樹脂1gあたりに含まれるニッケルの質量が2.3μg未満(0.5μg未満であり比較例1よりも1.8μgよりも少ない)であり、構成繊維をなす樹脂1gあたりに含まれる亜鉛の質量が6.2μg未満(2.4μgであり比較例1よりもが3.8μg少ない)である、エレクトロスピニング不織布を実現できた。
また、同様に実施例2~3の結果から、構成繊維をなす樹脂1gあたりに含まれる鉄の質量が70.7μg未満である、エレクトロスピニング不織布を実現できた。
以上から、本発明によって、構成繊維をなす樹脂に含まれる鉄などの重金属の質量が少ないエレクトロスピニング不織布を提供できた。
本発明に係るエレクトロスピニング不織布は、様々な産業用途、例えば、水処理膜などの液体分離膜や気体分離膜、医療用材料、イオン交換膜や透析膜、水電解膜、燃料電池の高分子電解質膜などといった複合膜の支持体として、あるいは、キャパシタや一次/二次電池などの電気化学素子用セパレータやセパレータの支持部材、粒子を担持したシートをなす粒子担持材、プリプレグ、気体フィルタや液体フィルタ、貼付薬用基材やマスクなどの医療用途、緩衝材やシーリング材、吸液材、内装用表皮材、細胞培養基材や細胞分離部材、導電性部材や絶縁材、放熱部材や保温材、芯地や中綿などに使用できる。
100・・・エレクトロスピニング不織布の製造装置
1・・・貯液部
2・・・吐出部材
3・・・給液路
4・・・電圧印加部材
5・・・捕集体
6・・・紡糸液が電圧印加部材と接触するときから吐出部材より吐出されるまでの間
7・・・送液手段
8・・・パワーサプライ
9・・・アース
10・・・吐出部材から吐出され繊維化した紡糸液
11・・・エレクトロスピニング不織布

Claims (1)

  1. 構成繊維をなす樹脂1gあたりに含まれる鉄の質量が70.7μg未満である、エレクトロスピニング不織布。
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