(実施例1)
本開示の実施例を具体的に説明する前に、実施例1の概要を説明する。本実施例は、室内に対して、温度および湿度を調節するとともに、空気浄化成分を含む水を噴霧する空気浄化システムに関する。空気浄化システムは、空調制御を実行する空気調和装置と、湿度調節と空気浄化成分を含む水の噴霧とを実行する空気浄化装置とを有する。空気調和装置は、室内の温度の設定値(以下、「温度設定値」という)に、室内の温度の計測値(以下、「温度計測値」という)が近づくように空調制御を実行する。空気浄化装置は、室内の湿度の設定値(以下、「湿度設定値」という)に、室内の湿度の計測値(以下、「湿度計測値」という)が近づくように、空気浄化成分を含む水の噴霧を制御する。
空気浄化システムでは、室内の湿度を上昇させたい場合、空気調和装置により温度を上昇させながら、空気浄化装置により水の噴霧量が増やされる。しかしながら、温度計測値が温度設定値に近づくと空気調和装置による温度の上昇がなされなくなるので、湿度が上昇しにくくなる。本実施例では、空気浄化成分を含む水による湿度の上昇を安定的に実行するために、空気浄化装置は、現在の設定温度値では所望の湿度の実現が困難であると判定すると、設定温度値を上昇させるための指示を空気調和装置に送信する。空気調和装置は、指示を受信すると、設定温度値を上昇させて、前述の処理を実行する。
以下に説明する実施例は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示す。よって、以下の実施例で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、並びに、ステップ(工程)及びステップの順序などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。したがって、以下の実施例における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
図1は、実施例1の空気浄化システム100の構成を示す。空気浄化システム100は、屋内空間18(「室内」ともいう)の空気を循環させる際に、屋内空間18からの空気8(RA)に対して必要に応じて冷却処理(除湿処理)または加熱処理を行うとともに、内部を流通する空気8に対して微細化された水とともに空気浄化を行う成分(以下、単に「空気浄化成分」という)を含ませる装置である。空気浄化システム100は、内部を流通した空気9(SA)を屋内空間18に供給することで、屋内空間18の殺菌と消臭を行う。
空気浄化システム100は、空気浄化装置10及び空気調和装置15を有して構成される。空気調和装置15は、吸込口2、送風機13、冷媒コイル14、及び空気調和制御部42を含む。空気浄化装置10は、吹出口3、空気浄化部11、浄化成分供給部12、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタ30、送風機31、及び空気浄化制御部41を含む。空気浄化装置10と空気調和装置15のそれぞれは、装置の外枠を構成する筐体を有し、空気浄化装置10と空気調和装置15とは、ダクト24により接続される。また、空気調和装置15の側面に吸込口2が形成され、空気浄化装置10の側面に吹出口3が形成される。
吸込口2は、屋内空間18からの空気8を空気調和装置15に取り入れる取入口である。吸込口2は、屋内空間18の天井等に設けられた屋内吸込口16aとの間でダクト16を介して連通されている。これにより、吸込口2は、屋内吸込口16aから空気調和装置15内に屋内空間18の空気を吸い込むことができる。
吹出口3は、空気浄化装置10内を流通した空気9(SA)を屋内空間18に吐き出す吐出口である。吹出口3は、屋内空間18の天井等に設けられた屋内吹出口17aとの間でダクト17を介して連通されている。これにより、吹出口3は、屋内吹出口17aから屋内空間18に向けて、空気浄化装置10内を流通した空気9を吹き出すことができる。
また、空気調和装置15と空気浄化装置10の内部には、ダクト24を介して吸込口2と吹出口3とを連通する風路(前段風路4、第一風路5a、第二風路5b、後段風路6)が構成されている。前段風路4は、吸込口2に隣接する風路であり、前段風路4には、送風機13及び冷媒コイル14が設けられている。
第一風路5aは、前段風路4(ダクト24)に隣接した位置において、前段風路4を流通した空気8の一部分(空気8a)が流通する風路である。第一風路5aには、その風路内にHEPAフィルタ30、送風機31、空気浄化部11が設けられている。一方、第二風路5bは、前段風路4(ダクト24)に隣接した位置において、前段風路4を流通した空気8の他の部分(空気8b)が流通する風路である。第二風路5bには、その風路内にHEPAフィルタ30及び送風機31が設けられている。つまり、第一風路5aと第二風路5bとは、互いに並列に配置されている。本実施例では、第一風路5aを流通する空気8aの流量と、第二風路5bを流通する空気8bの流量とが同程度となるように風路寸法(流路面積)が設定されている。
第一風路5aは、吸込口2と吹出口3との間に設けられ、吸込口2より吸い込まれた空気8の一部分(空気8a)が流通する風路であり、第二風路5bは、吸込口2と吹出口3との間に設けられ、吸込口2より吸い込まれた空気8の他の部分(空気8b)が第一風路5aをバイパスして流通する風路であるともいえる。
後段風路6は、吹出口3に隣接する風路であり、後段風路6では、後段風路6内で第一風路5aを流通した空気8aと第二風路5bを流通した空気8aとが合流して混合される。空気調和装置15と空気浄化装置10では、吸込口2から吸い込まれた空気8は、前段風路4を流通し、第一風路5aと第二風路5bの2系統に分流して流れ、後段風路6にて合流して、空気9として吹出口3から吹き出される。
空気調和装置15の送風機13は、屋内空間18の空気8(RA)を吸込口2から空気調和装置15内に搬送するための装置である。送風機13は、前段風路4内において、冷媒コイル14の上流側に設置されている。送風機13では、空気調和制御部42からの送風出力情報に応じて運転動作のオン/オフが制御される。送風機13が運転動作することにより、屋内空間18の空気8は、空気調和装置15に取り込まれて冷媒コイル14に向かう。送風機13は、空気浄化装置10の内部に必ずしも設ける必要はなく、例えば、ダクト16内に設けてもよい。また、送風機13が省略されてもよい。
冷媒コイル14は、前段風路4内において、送風機13の下流側に配置され、導入される空気8を冷却または加熱するための部材である。冷媒コイル14は、空気調和制御部42からの出力信号に応じて出力状態(冷却、加熱またはオフ)を変化させ、導入される空気8に対する冷却能力(冷却量)または加熱能力(加熱量)を調整する。冷媒コイル14では、導入される空気8を冷却すると、導入された空気8の除湿がなされることになるので、空気8に対する冷却能力(冷却量)は、空気8に対する除湿能力(除湿量)ともいえる。
冷媒コイル14は、圧縮機と放熱器と膨張器と吸熱器とを含んで構成される冷凍サイクルにおいて、吸熱器または放熱器として機能し、室外機20から導入される冷媒が内部を流通する際に吸熱(冷却)または放熱(加熱)するように構成されている。より詳細には、冷媒コイル14は、冷媒が流れる冷媒回路21を介して室外機20と接続されている。室外機20は、屋外空間19に設置される室外ユニットであり、圧縮機20aと、膨張器20bと、屋外熱交換器20cと、送風ファン20dと、四方弁20eとを有する。室外機20には、一般的な構成のものを用いるので、各機器(圧縮機20a、膨張器20b、屋外熱交換器20c、送風ファン20d、四方弁20e)の詳細な説明は省略する。
冷媒コイル14を含む冷凍サイクルには、四方弁20eが接続されているので、空気調和装置15では、四方弁20eによって第一方向に冷媒が流通して空気(空気8)を冷却して除湿する冷却モード(除湿モード)の状態と、四方弁20eによって第二方向に冷媒が流通して空気(空気8)に対して加熱を行う加熱モードの状態とを切り替え可能である。
ここで、第一方向は、圧縮機20aと屋外熱交換器20cと膨張器20bと冷媒コイル14とをこの順序で冷媒が流通する方向である。また、第二方向は、圧縮機20aと冷媒コイル14と膨張器20bと屋外熱交換器20cとをこの順序で冷媒が流通する方向である。冷媒コイル14では、導入される空気(空気8)に対して冷却または加熱することが可能であるが、本実施例では、日本の冬期を想定しているので、加熱モードにおいて導入される空気を加熱する部材として用いられる。
空気浄化装置10のHEPAフィルタ30は、エアフィルタであり、空気浄化装置10に流入された空気中からゴミ、塵埃などを取り除き、清浄された空気を出力する。送風機31は、HEPAフィルタ30を通過した空気を第一風路5aと第二風路5bに沿って吹出口3に搬送するための装置である。送風機31では、空気浄化制御部41からの出力信号に応じて風量、つまり回転数が制御される。送風機31が運転動作することにより、空気浄化部11に対して風が送られる。
空気浄化部11は、内部に取り入れた空気(空気8a)を加湿するためのユニットであり、加湿の際に、空気に対して微細化された水とともに空気浄化成分を含ませる。より詳細には、空気浄化部11は、加湿モータ11aと加湿ノズル11bとを有している。空気浄化部11は、加湿モータ11aを用いて加湿ノズル11bを回転させ、空気浄化部11の貯水部に貯水されている水(空気浄化成分を含む水)を遠心力で吸い上げて周囲(遠心方向)に飛散・衝突・破砕させ、通過する空気に水分を含ませる遠心破砕式の構成をとる。空気浄化部11は、空気浄化制御部41からの出力信号に応じて加湿モータ11aの回転数(以下、回転出力値)を変化させ、加湿能力(加湿量)を調整する。加湿量は、空気に対して空気浄化成分を付加する付加量ともいえる。
浄化成分供給部12は、水道等の給水管から給水される水に対して、空気浄化成分のタブレット等を添加して、空気浄化成分を含む水を生成するためのユニットである。空気浄化部11の貯水部への空気浄化成分を含む水の供給は、浄化成分供給部12により行われる。ここで、空気浄化成分には、例えば、殺菌性あるいは消臭性を備えた次亜塩素酸が用いられる。これにより、空気浄化成分を含む水として次亜塩素酸水を流通する空気8aに含ませて屋内空間18に供給することになるので、屋内空間18の殺菌あるいは消臭を行うことができる。より詳細には、浄化成分供給部12は、内部に電解槽12aを有し、電解槽12aによって生成した次亜塩素酸水を一定量貯留して、空気浄化制御部41からの出力信号に応じて空気浄化部11に供給する。
電解槽12aは、一対の電極間で、電解質として塩化物水溶液(例えば、塩水)を電気分解することで次亜塩素酸水を生成する。電解槽12aには、一般的な装置が使用されるので、詳細な説明は省略する。ここで、電解質は、次亜塩素酸水を生成可能な電解質であり、少量でも塩化物イオンを含んで入れば特に制限はなく、例えば、溶質として塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等を溶解した水溶液が挙げられる。また、塩酸でも問題ない。本実施例では、電解質として、水道等の給水管から給水される水に対して、塩化ナトリウムを加えた塩化物水溶液(塩水)を使用している。また、空気浄化部11に供給する次亜塩素酸水の濃度に関しては、空気浄化制御部41からの出力信号に応じて調節される。次亜塩素酸水の濃度は、次亜塩素酸水を希釈する際の水の量により調節される。
このように空気浄化部11は、空気浄化成分を含む水を遠心破砕することによって、空気浄化成分を含む水を屋内空間18に対して噴霧する。また、空気浄化部11は、空気浄化成分を含む水として、次亜塩素酸水を噴霧する。
屋内空間18の壁面には、操作装置43が設置される。操作装置43は、ユーザが操作可能なユーザインターフェースを備え、ユーザから温度設定値と湿度設定値を受けつける。操作装置43には、温湿度センサ44が含まれており、温湿度センサ44は、屋内空間18の空気の温度及び湿度を計測する。計測結果が、前述の温度計測値と湿度計測値とに相当する。温湿度センサ44における温度及び湿度の計測には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。
操作装置43は、空気浄化制御部41及び空気調和制御部42に対して有線あるいは無線で接続されており、温度設定値、湿度設定値、温度計測値、及び湿度計測値を空気浄化制御部41及び空気調和制御部42に送信する。これらの情報は、すべてまとめて送信されてもよく、任意の2つ以上をまとめて送信されてもよく、それぞれを送信されてもよい。また、操作装置43が空気浄化制御部41に情報を送信し、空気浄化制御部41が空気調和制御部42に情報を転送してもよい。
空気調和装置15の空気調和制御部42は、温度設定値と温度計測値とを受けつけ、温度計測値が温度設定値に近づくように、冷媒コイル14及び室外機20を制御する。空気調和制御部42は、加熱モードにおいて、温度計測値が温度設定値よりも低い場合に、温度計測値と温度設定値との差異が大きくなるほど、加熱の程度を増加させる。
図2は、空気浄化制御部41の構成を示す。空気浄化制御部41は、取得部60、記憶部62、制御部64、及び指示部66を含む。取得部60は、湿度設定値、湿度計測値、及び温度設定値を取得する。
制御部64は、湿度設定値から湿度計測値を減算することによって、不足している湿度の値(以下、「不足湿度値」という)を導出する。湿度設定値よりも湿度計測値が大きい場合、不足湿度値はマイナスの値になり、これは湿度が不足していない状況に相当する。制御部64は、不足湿度値「0」よりも小さい第1しきい値と、不足湿度値「0」よりも大きい第2しきい値とを予め設定する。制御部64は、不足湿度値が第1しきい値よりも小さい場合に「除湿モード」の実行を決定し、制御部64は、不足湿度値が第1しきい値から第2しきい値との間の場合に「調湿待機モード」の実行を決定し、不足湿度値が第2しきい値よりも大きい場合に「加湿モード」の実行を決定する。
加湿モードの実行を決定した場合、制御部64は、湿度設定値に近づく、つまり不足湿度値をゼロに近づくように、空気浄化成分を含む水の噴霧量を制御する。噴霧量の制御は、不足湿度値が大きくなるほど、噴霧量を多くするようになされる。例えば、噴霧量を制御するために、制御部64は、遠心破砕するための加湿モータ11aの回転数を制御する。噴霧量を多くするために、制御部64は、加湿モータ11aの回転数を多くさせる。
不足湿度値と加湿モータ11aの回転数との関係は記憶部62に記憶される。図3は、記憶部62に記憶されるテーブルの概要を示す。横軸に加湿モータ11aの回転数が示され、縦軸に不足湿度値が示される。20度対応関係200は、温度設定値が20度である場合の不足湿度値と回転数との対応関係を示す。25度対応関係202は、温度設定値が25度である場合の不足湿度値と回転数との対応関係を示す。30度対応関係204は、温度設定値が30度である場合の不足湿度値と回転数との対応関係を示す。説明を明瞭にするために、ここでは、温度設定値を「20度」、「25度」、「30度」としているが、テーブルに示される対応関係は、これらの温度設定値に限定されない。図示のごとく、1つの設定温度値に対して、不足湿度値が大きくなるほど、回転数を多くする必要がある。しかしながら、当該設定温度値において回転数を最大にしても、到達可能な不足湿度値には限界がある。到達可能な不足湿度値よりも、所望の不足湿度値が大きい場合、設定温度値を高くしなければならない。
例えば、現在の温度設定値が「20度」である場合、不足湿度値がP1以下であれば、温度設定値「20度」を維持したまま、回転数が増加される。しかしながら、不足湿度値がP1よりも大きく、且つ、P2以下である場合、温度設定値を「25度」に変更してから、回転数を調節しなければならない。また、不足湿度値がP2よりも大きい場合、温度設定値を「30度」に変更してから、回転数を調節しなければならない。図2に戻る。
制御部64は、記憶部62に記憶したテーブルを参照しながら、不足湿度値をもとに回転数を決定する。制御部64は、温度設定値によって不足湿度値の実現が困難である場合、温度設定値の変更も決定する。これは、前述のごとく、温度設定値によって実現可能な湿度値より不足湿度値の方が高い場合、温度設定値の変更として温度設定値の上昇を決定することに相当する。その際、制御部64は、変更した温度設定値における加湿モータ11aの回転数も決定する。制御部64は、決定した回転数が示された出力信号を生成し、指示部66は出力信号を加湿モータ11aに送信する。また、制御部64は、温度設定値の変更を決定した場合、変更すべき温度設定値への変更指示が含まれた出力信号を生成し、指示部66は出力信号を空気調和装置15に送信する。図1に戻る。
空気調和装置15は、空気浄化装置10から受信した出力信号に、温度設定値の変更指示が含まれている場合、温度設定値の変更指示に応じて変更した温度設定値に近づくように空調制御を実行する。例えば、温度設定値の変更指示が温度設定値の上昇指示である場合、空気調和装置15は、温度設定値の上昇指示に応じて上昇させた温度設定値に近づくように空調制御を実行する。
図2の制御部64が「除湿モード」あるいは「調湿待機モード」の実行を決定した場合、制御部64は、「加湿モード」の場合よりも噴霧量を少なくするように制御すればよい。本実施例では、これらの処理の説明を省略する。
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM(Read Only Memory)、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
以上の構成による空気浄化システム100の動作を説明する。図4は、空気調和装置15における制御手順を示すフローチャートである。空気調和装置15は、温度設定値と温度計測値を受信する(ステップS10)。上昇指示を受信しない場合(ステップS12のN)、空気調和装置15は、温度計測値が温度設定値に近づくように空調制御を実行する(ステップS14)。上昇指示を受信した場合(ステップS12のY)、空気調和装置15は、上昇指示において温度設定値を修正し(ステップS16)、温度計測値が、修正した温度設定値に近づくように空調制御を実行する(ステップS18)。
本実施例によれば、温度設定値によって湿度設定値の実現が困難である場合、温度設定値の変更指示を空気調和装置に送信し、空気調和装置は、温度設定値の変更指示に応じて変更した温度設定値に近づくように空調制御を実行するので、加熱を維持できる。また、加熱が維持されるので、浄化された水による湿度を上昇させることができる。また、温度設定値によって実現可能な湿度値より湿度設定値の方が高い場合、温度設定値の変更指示として温度設定値の上昇指示を送信するので、空気調和装置15における加熱を維持させることができる。
(実施例2)
実施例2では、空気浄化装置と空気調和装置の構成が実施例1と異なるが、温度設定値によって湿度設定値の実現が困難である場合、温度設定値の変更指示を空気調和装置に送信し、空気調和装置は、温度設定値の変更指示に応じて変更した温度設定値に近づくように空調制御を実行する制御は実施例1と同じである。以下、実施例1との相違点を中心に説明する。
図5は、実施例2の空気浄化システム300の構成を示す。空気浄化システム300は、屋内空間162の空気を循環させる際に、屋内空間162からの空気(RA)に対して必要に応じて冷却処理(除湿処理)または加熱処理を行うとともに、内部を流通する空気に対して微細化された水とともに空気浄化成分を含ませる装置である。空気浄化システム300は、内部を流通した空気(SA)を屋内空間162に供給することで、屋内空間162の殺菌と消臭を行う。
空気浄化システム300は、空気浄化装置110、空気調和装置150、室外機160、操作装置170、ダクト164a、ダクト164b、ダクト164c、低反応性ダクト167a、及び高反応性ダクト167bを備える。
空気調和装置150は、例えば、屋内空間162の天井等に埋め込まれた4方向カセットエアコンである。空気調和装置150は、天井裏に位置する本体部151と、本体部151の屋内空間162側に配置された化粧パネル152とを備える。化粧パネル152には吸込口153及び吹出口154が設けられている。化粧パネル152には4つの吹出口154が設けられるが、そのうち2つは閉じられて空気を送出しないように構成される。そこで、図5では閉じられた吹出口154の図示を省略し、1つの吹出口154を示す。空気調和装置150は、本体部151の側面にも吹出口155が設けられる。なお、化粧パネル152の4つの吹出口154が空気を送出できてもよいし、4つの吹出口154がすべて閉じられて空気を送出しないようにしてもよい。
空気調和装置150は、空気の加熱と冷却の少なくとも一方を実行可能である。空気調和装置150は、屋内空間162から吸込口153を介して吸い込んだ空気108b(RA)に対して空調制御を実行し、空調制御した空気のうち一部の空気108d(AC)を吹出口155から空気浄化装置110に送出し、空調制御した空気のうち残りの空気108eを2つの吹出口154から屋内空間162に送出する。
空気調和装置150には室外機160が接続されている。室外機160は、屋外空間に設置される室外ユニットである。室外機160は、実施例1の室外機20と同じ構成であってよい。
図5に加え図6から図8も参照して、空気浄化システム300の構成をさらに説明する。図6は、図5の空気浄化装置110の構成を示す。図6は、図5の空気浄化装置110の内部を上面側から見た概略図である。図7は、図6の空気浄化装置110のA-A線に沿った概略的な縦断面図である。なお、図7では一部の構成の図示を省略している。図8は、図6の空気浄化装置110の内部構成を示す斜視図である。なお、図8は、空気浄化装置110の筐体の上面側を取り除いた状態を示す。
図6に示すように、空気浄化装置110は、筐体101、浄化風路105a、非浄化風路105b、微細化部114、次亜塩素酸水生成部119、次亜塩素酸水供給部128、水供給部132、第1HEPAフィルタ111a、第2HEPAフィルタ111b、浄化搬送ファン112a、非浄化搬送ファン112b、第1温湿度センサ140a、第2温湿度センサ140b、及び制御部141を含む。
筐体101は、図6~図8に示すように、空気浄化装置110の外郭を形成する。筐体101は、吸込口102a、吸込口102b、吸込口102c、吹出口103a、吹出口103b、隔壁106、第1ダンパー107a、第2ダンパー107b、第3ダンパー107c、及び第4ダンパー107dを有する。吸込口102a、吸込口102b、及び吸込口102cを総称して吸込口102と呼び、吹出口103a及び吹出口103bを総称して吹出口103と呼ぶ。第1ダンパー107a、第2ダンパー107b、第3ダンパー107c、及び第4ダンパー107dを総称してダンパー107と呼ぶ。
図6及び図8に示すように、吸込口102a、吸込口102b、及び吸込口102cは、筐体101の一方の側面に配置される。吸込口102aと吸込口102cとの間に吸込口102bが配置される。吹出口103a及び吹出口103bは、筐体101の他方の側面(筐体101の一方の側面と対向する側面)に配置される。
吸込口102a及び吸込口102cは、屋内空間162から取得された筐体101外の空気108a及び空気108cをそれぞれ空気浄化装置110に取り入れる取入口である。屋内空間162から取得された空気108a及び空気108cは、筐体101外の温度調節されていない非温調空気とも呼べる。吸込口102a及び吸込口102cは、非温調空気吸込口とも呼べる。
図5に示すように、吸込口102aは、屋内空間162の天井等に設けられた屋内吸込口165aとの間でダクト164aを介して連通されている。吸込口102cは、屋内空間162の天井等に設けられた屋内吸込口165cとの間でダクト164cを介して連通されている。これにより、吸込口102aは、屋内吸込口165aから空気浄化装置110内に屋内空間162の空気108aを吸い込むことができる。吸込口102cは、屋内吸込口165cから空気浄化装置110内に屋内空間162の空気108cを吸い込むことができる。
なお、屋内吸込口165cを設けなくてもよく、この場合、ダクト164aの一端を屋内吸込口165aに接続し、ダクト164aの他端側を分岐させて吸込口102aと吸込口102cとに接続してもよい。
吸込口102bは、空気調和装置150からの空気108d、即ち筐体101外にて空気調和装置150により温度調節された温調空気を空気浄化装置110に取り入れる取入口である。吸込口102bは、温調空気吸込口とも呼べる。吸込口102bは、空気調和装置150の吹出口155との間でダクト164bを介して連通されている。
吹出口103aは、空気浄化装置110内を流通した空気109a(SA)を屋内空間162に吐き出す吐出口である。空気109aは、微細化された次亜塩素酸水を含む。吹出口103bは、空気浄化装置110内を流通した空気109b(SA)を屋内空間162に吐き出す吐出口である。
図5に示すように、吹出口103aは、屋内空間162の天井等に設けられた屋内吹出口168aとの間で低反応性ダクト167aを介して連通されている。吹出口103bは、屋内空間162の天井等に設けられた屋内吹出口168bとの間で高反応性ダクト167bを介して連通されている。これにより、吹出口103aは、屋内吹出口168aから屋内空間162に向けて、空気浄化装置110内を流通した空気109aを吹き出すことができる。吹出口103bは、屋内吹出口168bから屋内空間162に向けて、空気浄化装置110内を流通した空気109bを吹き出すことができる。
低反応性ダクト167aは、浄化風路105aの下流に接続された、次亜塩素酸水との反応に乏しい低反応性素材を内壁に用いたダクトである。低反応性素材は、例えば、ポリオレフィン系素材である。ポリオレフィン系素材は、例えば、ポリエチレンとポリプロピレンの少なくとも一方を含む。
高反応性ダクト167bは、非浄化風路105bの下流に接続された、低反応性素材よりも次亜塩素酸水との反応に富む高反応性素材を内壁に用いたダクトである。高反応性素材は、例えば、ポリエチレンテレフタレートである。高反応性素材の比表面積は、低反応性素材の比表面積より大きい。
図6に示すように、浄化風路105aは、筐体101内に設けられ、吸込口102a及び吸込口102bと、吹出口103aとを連通する。非浄化風路105bは、筐体101内に浄化風路105aとは独立して設けられ、吸込口102c及び吸込口102bと、吹出口103bとを連通する。
隔壁106は、吸込口102の下流から吹出口103までの間で浄化風路105aと非浄化風路105bとを分離する。浄化風路105aと非浄化風路105bとは、互いに並列に配置されている。
ダンパー107は、吸込口102の下流にて浄化風路105aと非浄化風路105bとに空気を分配する。ダンパー107は、温調空気と非温調空気の少なくとも一方を浄化風路105aと非浄化風路105bとに分配する。
ダンパー107は、開閉度を調整することで、吸込口102から筐体101内に流通させる空気の風量を増減させる。より詳細には、第1ダンパー107aは、吸込口102aから浄化風路105a内に流通させる空気108aの風量を増減させる。第2ダンパー107bは、吸込口102bから浄化風路105a内に流通させる空気108dの風量を増減させる。第3ダンパー107cは、吸込口102bから非浄化風路105b内に流通させる空気108dの風量を増減させる。第4ダンパー107dは、吸込口102cから非浄化風路105b内に流通させる空気108cの風量を増減させる。ダンパー107による空気の分配の詳細は後述する。
第1温湿度センサ140aは、吸込口102bの下流に配置され、吸込口102bから流入した空気108dの温度及び湿度を計測し、計測値を制御部141に出力する。
浄化風路105aは、ダンパー107の開閉度に応じて空気108a及び空気108dの少なくとも一方が流通する風路である。浄化風路105aには、その風路内に第1HEPAフィルタ111a、浄化搬送ファン112a、及び微細化部114が上流側から下流側に向けてこの順に設けられている。また、浄化風路105aにおける浄化搬送ファン112aと微細化部114との間に第2温湿度センサ140bが設けられている。第2温湿度センサ140bは、浄化搬送ファン112aと微細化部114との間の空気の温度及び湿度を計測し、計測値を制御部141に出力する。
非浄化風路105bは、ダンパー107の開閉度に応じて空気108c及び空気108dの少なくとも一方が流通する風路である。非浄化風路105bには、その風路内に第2HEPAフィルタ111b、非浄化搬送ファン112b、及び次亜塩素酸水生成部119が上流側から下流側に向けてこの順に設けられている。非浄化風路105bには、さらに次亜塩素酸水供給部128、水供給部132、ストレーナ136、排水ポンプ138、及び排水ドレン139が非浄化搬送ファン112bの下流であって次亜塩素酸水生成部119の近くに設けられている。非浄化風路105bでは、微細化部114の次亜塩素酸水による空気の浄化は行われないが、第2HEPAフィルタ111bによる空気の浄化は行われる。
このように、浄化搬送ファン112a、非浄化搬送ファン112b、次亜塩素酸水生成部119、次亜塩素酸水供給部128、水供給部132、ストレーナ136、排水ポンプ138、及び排水ドレン139は、微細化部114の下流に配置されない。
第1HEPAフィルタ111a及び第2HEPAフィルタ111bは、エアフィルタであり、空気浄化装置110に流入された空気中からゴミ、塵埃などを取り除き、清浄された空気を出力する。
浄化搬送ファン112aは、第1HEPAフィルタ111aを通過した空気を浄化風路105aに沿って吹出口103aに搬送するための装置である。浄化搬送ファン112aは、浄化風路105aの空気の流れを生成する。
非浄化搬送ファン112bは、第2HEPAフィルタ111bを通過した空気を非浄化風路105bに沿って吹出口103bに搬送するための装置である。非浄化搬送ファン112bは、非浄化風路105bの空気の流れを生成する。
浄化搬送ファン112a及び非浄化搬送ファン112bのそれぞれでは、制御部141からの出力信号に応じて風量、つまり回転数が制御される。浄化搬送ファン112aが運転動作することにより、微細化部114に対して風が送られる。非浄化搬送ファン112bが運転動作することにより、次亜塩素酸水生成部119に対して風が送られる。
図9は、図6の微細化部114、次亜塩素酸水生成部119、及びそれらの周辺構成を示す。微細化部114は、浄化風路105a内部に取り入れた空気を加湿するためのユニットであり、加湿の際に、空気に対して微細化された水とともに空気浄化成分として次亜塩素酸を含ませる。微細化部114は、実施例1の空気浄化部11に対応する。微細化部114は、次亜塩素酸水生成部119が生成した次亜塩素酸水を遠心破砕により微細化して空気中に放出する。微細化された次亜塩素酸水は、液体成分が蒸発した状態で筐体101外へ放出される。
微細化部114は、図9に示すように、遠心破砕ユニット115、混合槽116、及び水位センサ117を有する。微細化部114は、図示しない加湿モータを用いて遠心破砕ユニット115を回転させ、混合槽116に貯水されている次亜塩素酸水を遠心力で吸い上げて周囲(遠心方向)に飛散・衝突・破砕させ、通過する空気に水分を含ませる遠心破砕式の構成をとる。混合槽116は、実施例1の空気浄化部11の貯水部に対応する。
微細化部114は、制御部141からの出力信号に応じて加湿モータの回転数を変化させ、加湿能力(加湿量)を調整する。制御部141は、第3温湿度センサ172で検出された温度計測値と湿度計測値に基づいて、遠心破砕ユニット115の回転数を制御する。
水位センサ117は、混合槽116内の次亜塩素酸水の水位を計測し、計測値を制御部141に出力する。
次亜塩素酸水生成部119は、電解槽120、電極121、電磁弁122、塩水タンク123、塩水搬送ポンプ124、及び逆止弁125を含む。
塩水タンク123は、塩水(塩化ナトリウム水溶液)を貯めており、制御部141からの出力信号に応じて、塩水搬送ポンプ124と逆止弁125を介して電解槽120に塩水を供給する。電解槽120は、塩水タンク123から供給された電気分解対象である塩水を貯める。電解槽120には、制御部141からの出力信号に応じて、水道等の給水管からストレーナ136と電磁弁122を介して水道水も供給され、供給された水道水と塩水とが混合され、予め定められた濃度の塩水が貯められる。電極121は、電解槽120内に配置され、制御部141からの出力信号に応じて、通電により塩水の電気分解を行い、予め定められた濃度の次亜塩素酸水を生成する。
次亜塩素酸水供給部128は、制御部141からの出力信号に応じて、電解槽120から微細化部114の混合槽116に次亜塩素酸水を供給する。次亜塩素酸水供給部128は、次亜塩素酸水搬送ポンプ129と送水管130とを有する。次亜塩素酸水搬送ポンプ129は、制御部141からの出力信号に応じて電解槽120の次亜塩素酸水を送水管130に送り出す。送水管130は、次亜塩素酸水搬送ポンプ129と混合槽116との間に接続され、次亜塩素酸水を混合槽116に向けて送水する。
水供給部132は、制御部141からの出力信号に応じて、混合槽116に水を供給する。水供給部132は、電磁弁133と送水管134とを有する。電磁弁133は、制御部141からの出力信号に応じて、空気浄化装置110の外部の水道管からストレーナ136を介して供給される水を送水管134に流すか否か制御する。送水管134は、電磁弁133と混合槽116との間に接続され、水を混合槽116に向けて送水する。
このようにして、微細化部114の混合槽116で次亜塩素酸水と水とが混合される。次亜塩素酸水と水との混合水も次亜塩素酸水と呼べる。微細化部114は、混合槽116に貯められた次亜塩素酸水と水との混合水を遠心破砕することによって、次亜塩素酸水を屋内空間162に対して噴霧する。
ドレンパン137は、図7及び図9に示すように、微細化部114、次亜塩素酸水生成部119(電解槽120、塩水タンク123)、次亜塩素酸水供給部128、及び水供給部132の下に配置され、これらから落下する水を受ける。排水ポンプ138は、ドレンパン137内の水位が所定値に達した場合、ドレンパン137内の水を排水ドレン139に流して排水する。
制御部141は、水位センサ117で計測された混合槽116内の混合水の水位に基づいて、次亜塩素酸水供給部128による次亜塩素酸水の供給量と、水供給部132による水の供給量とを制御する。電解槽120では予め定められた濃度の次亜塩素酸水が生成されるため、混合槽116内の混合水の水位に応じて、次亜塩素酸水供給部128による次亜塩素酸水の供給量と水供給部132による水の供給量とを制御することで、混合水における次亜塩素酸の濃度を制御できる。具体的には、制御部141は、混合水の水位が所定値まで下がった場合、所定量の次亜塩素酸水と、所定量の水とを混合槽116に供給し、混合水の水位を上昇させると共に、混合水における次亜塩素酸の濃度を概ね一定に保つように制御する。
制御部141は、要求される加湿量に基づいて混合水における次亜塩素酸の濃度を制御する。例えば、制御部141は、要求される次亜塩素酸量が少ない場合、要求される加湿量が多くなるほど混合水における次亜塩素酸の濃度を低くする。一方、多量の加湿要求がある場合、混合水における次亜塩素酸の濃度が高いと多量の次亜塩素酸が屋内空間162に供給されてしまう。この場合、屋内空間162で次亜塩素酸の臭いが強くなり、量によっては利用者にとって不快になる可能性もある。本実施例では、供給される次亜塩素酸水を水で希釈することで、加湿量が大きい場合にも屋内空間162の次亜塩素酸量を適正に保つことができる。
日本の夏季(特に梅雨時期)などのように、少量の加湿要求となる場合、混合水における次亜塩素酸の濃度を高くすることで、要求される次亜塩素酸量を満たした上で、湿度を適正に保つことができる。
制御部141は、要求される次亜塩素酸量に基づいて混合水における次亜塩素酸の濃度を制御する。例えば、制御部141は、要求される加湿量が少ない場合、要求される次亜塩素量が多くなるほど混合水における次亜塩素酸の濃度を高くする。
悪臭が強い場合などで多量の次亜塩素酸の要求がある場合、混合水における次亜塩素酸の濃度が低いと、次亜塩素酸と共に多量の水分が屋内空間162に供給されてしまい、湿度が上昇してしまう。特に日本の夏季などでは湿度を下げたいため、このような要求される加湿量が少ない場合には、混合水における次亜塩素酸の濃度を高めることで、加湿量を減らして次亜塩素酸を多量に屋内空間162に送り込むことができる。一方、悪臭が無い状況では、混合水における次亜塩素酸の濃度を低くすることで、屋内空間162に送り込む次亜塩素酸量及び加湿量を少なくできる。よって、放出される次亜塩素酸量と湿度を同時にコントロールできる。
日本の冬季などのように、多量の加湿要求となる場合、混合水における次亜塩素酸の濃度を低くすることで、要求される次亜塩素酸量を満たした上で、湿度を適正に保つことができる。
制御部141は、要求される次亜塩素酸量に基づいて混合水における次亜塩素酸の濃度を制御する。例えば、制御部141は、要求される加湿量が多い場合、要求される次亜塩素量が多くなるほど混合水における次亜塩素酸の濃度を低くする。
多量の加湿量の要求がある場合、混合水における次亜塩素酸の濃度が高いと、多量の水分と共に多量の次亜塩素酸が屋内空間162に供給されてしまい、屋内空間162の次亜塩素酸濃度が上昇してしまう。これにより、屋内空間162で次亜塩素酸の臭いが強くなり、量によっては利用者にとって不快になる可能性もある。このため、このような要求される加湿量が多い場合には、混合水における次亜塩素酸の濃度を低くすることで、屋内空間162に送り込む加湿量を多くしつつ、次亜塩素酸量を少なくできる。よって、放出される次亜塩素酸量と湿度を同時にコントロールできる。
屋内空間162の壁面には、図5に示すように、操作装置170が設置される。操作装置170は、実施例1の操作装置43に対応する。操作装置170は、ユーザから温度設定値、湿度設定値、及び運転モードの設定を受けつける。運転モードは、脱臭モード、殺菌モード、通常モードなどの空気中の次亜塩素酸量を指定するモードを含む。操作装置170には、第3温湿度センサ172が含まれており、第3温湿度センサ172は、屋内空間162の空気の温度及び湿度を計測する。
操作装置170は、制御部141に対して有線あるいは無線で接続されており、温度設定値、湿度設定値、温度計測値、湿度計測値、及び運転モード情報を制御部141に送信する。制御部141は、受信した情報を空気調和装置50に転送する。これらの情報は、すべてまとめて送信されてもよく、任意の2つ以上をまとめて送信されてもよく、それぞれを送信されてもよい。また、操作装置170は、制御部141及び空気調和装置150に対して情報を送信してもよい。
空気調和装置150は、温度設定値と温度計測値とを受けつけ、温度計測値が温度設定値に近づくように、運転モードを暖房モードまたは冷房モードに切り替え、空気108bの加熱または冷却を実行する。
制御部141は、ダンパー107、浄化搬送ファン112a、非浄化搬送ファン112b、次亜塩素酸水生成部119、及び微細化部114を制御する。制御部141は、次亜塩素酸水生成部119による次亜塩素酸水の生成中は非浄化搬送ファン112bを動作させ続け、停止しない。制御部141は、電解槽120に次亜塩素酸水が残っている間、非浄化搬送ファン112bを動作させ続けてもよい。
制御部141は、空気調和装置150の運転モードと温調空気吸込口(吸込口102b)から取り入れる空気の温度との少なくとも一方に基づいてダンパー107による空気の分配を制御する。
制御部141は、浄化風路105aと非浄化風路105bとを通る風量比を固定とする。制御部141は、温調空気吸込口(吸込口102b)から取り入れる温調空気が温風の場合、ダンパー107を制御して、浄化風路105aを通る温調空気の量を、非浄化風路105bを通る温調空気の量よりも増加させる。ここで、温調空気吸込口(吸込口102b)から取り入れる空気が温風の場合とは、空気調和装置150が暖房モードの場合、または、温調空気吸込口(吸込口102b)から取り入れる空気の温度が非温調空気吸込口(吸込口102a、吸込口102c)から取り入れる空気の温度より高い場合に相当する。温調空気吸込口(吸込口102b)から取り入れる空気の温度は、第1温湿度センサ140aの温度計測値である。非温調空気吸込口(吸込口102a、吸込口102c)から取り入れる空気の温度は、第3温湿度センサ172の温度計測値である。なお、温調空気吸込口(吸込口102b)から取り入れる空気の温度は、空気調和装置150に対する設定温度によって推定した温度値としてもよい。
制御部141は、ダンパー107の開度と非浄化搬送ファン112bの出力と浄化搬送ファン112aの出力とに基づいて、浄化風路105a及び非浄化風路105bにおける、温調空気と非温調空気の風量及び温調空気と非温調空気の混合比を制御する。
図10は、図5の空気浄化装置110における暖房時の風の経路と風量の例を示す。制御部141は、第2ダンパー107b及び第4ダンパー107dの開度を最大に制御し、第3ダンパー107c及び第1ダンパー107aを閉じる。つまり、第1ダンパー107aは、吸込口102aから浄化風路105a内に流通させる空気108aの風量をゼロとする。第2ダンパー107bは、吸込口102bから浄化風路105a内に流通させる空気108dの風量を最大とする。第3ダンパー107cは、吸込口102bから非浄化風路105b内に流通させる空気108dの風量をゼロとする。第4ダンパー107dは、吸込口102cから非浄化風路105b内に流通させる空気108cの風量を最大とする。
よって、風量「350」の温風である空気108dが浄化風路105aを通り、この空気108dが微細化部114で微細化された次亜塩素酸水により加湿され、吹出口103aから風量「350」の空気109aとして吹き出される。空気調和装置150で加熱された空気108dの温度は、屋内空間162の空気108aの温度より高いため、空気108aに対して加湿する場合よりも次亜塩素酸水による加湿量を高めることができる。風量「350」は、空気調和装置150により定められる。浄化搬送ファン112aも風量「350」に相当する回転数で動作する。
また、風量「400」の空気108cが非浄化風路105bを通り、吹出口103bから風量「400」の空気109bとして吹き出される。風量「400」は、非浄化搬送ファン112bの回転数により定められる。
一方、制御部141は、温調空気吸込口(吸込口102b)から取り入れる温調空気が冷風であり、次亜塩素酸水の放出を除湿よりも優先する場合、非浄化風路105bを通る温調空気の量を、浄化風路105aを通る温調空気の量よりも増加させる。ここで、温調空気吸込口(吸込口102b)から取り入れる空気が冷風の場合とは、空気調和装置150が冷房モードの場合、または、温調空気吸込口(吸込口102b)から取り入れる空気の温度が非温調空気吸込口(吸込口102a、吸込口102c)から取り入れる空気の温度より低い場合に相当する。
図11は、図5の空気浄化装置110における冷房時の風の経路と風量の例を示す。制御部141は、第1ダンパー107a、第3ダンパー107c、及び第4ダンパー107dの開度を最大に制御し、第2ダンパー107bを閉じる。つまり、第1ダンパー107aは、吸込口102aから浄化風路105a内に流通させる空気108aの風量を最大とする。第2ダンパー107bは、吸込口102bから浄化風路105a内に流通させる空気108dの風量をゼロとする。第3ダンパー107cは、吸込口102bから非浄化風路105b内に流通させる空気108dの風量を最大とする。第4ダンパー107dは、吸込口102cから非浄化風路105b内に流通させる空気108cの風量を最大とする。
よって、風量「350」の空気108aが浄化風路105aを通り、この空気108aが微細化部114で微細化された次亜塩素酸水により加湿され、吹出口103aから風量「350」の空気109aとして吹き出される。空気108aの温度は、温調空気(空気108d)の温度より高いため、冷却された空気108dに対して加湿する場合よりも次亜塩素酸水による加湿量を高めることができ、空気中の次亜塩素酸量を多くできる。風量「350」は、浄化搬送ファン112aの回転数により定められる。
また、風量「350」の冷風である空気108d及び風量「50」の空気108cが非浄化風路105bを通り、吹出口103bから風量「400」の空気109bとして吹き出される。空気調和装置150で冷却された空気108dは、微細化部114による加湿がなされずに排出されるため、屋内空間162に供給される空気109aと空気109bにより全体としては除湿できる。空気108cの風量「50」は、非浄化搬送ファン112bの回転数により定められる風量「400」と、空気調和装置150により定められる空気108dの風量「350」との差である。
ここで、制御部141は、上述の機能に加え、実施例1の空気浄化制御部41の機能も有する。つまり、制御部141は、温度設定値によって湿度設定値の実現が困難である場合、温度設定値の変更指示を空気調和装置150に送信する。空気調和装置150は、温度設定値の変更指示に応じて変更した温度設定値に近づくように空調制御を実行する。従って、実施例1の作用効果も得ることができる。
本実施例によれば、空気調和装置150は、空調制御した空気のうち一部の空気108dを空気浄化装置110に送出し、空調制御した空気のうち残りの空気108eを屋内空間162に送出するので、空気108eを空気浄化装置110で加湿せずに室内に送出できる。よって、暖房時に加湿に伴う室内の空気の温度低下を抑制できる。冷房時に室内の空気の湿度上昇を抑制できる。
また、次亜塩素酸水生成部119は、非浄化風路105bに配置され、微細化部114は、浄化風路105aに配置されるので、次亜塩素酸水生成部119から次亜塩素酸水(または気化した次亜塩素酸)が漏れた場合、非浄化風路105bを通過する空気により、漏れ出た次亜塩素酸水を筐体101外に排出し、空気浄化装置110の内部の腐食を抑制できる。次亜塩素酸水生成部119を浄化風路105aに設けたと仮定すると、微細化された次亜塩素酸水が次亜塩素酸水生成部119に付着しやすいため次亜塩素酸水生成部119自体も耐腐食性を高める必要があるが、本実施例の構成では次亜塩素酸水生成部119の耐腐食性を不要にできるか、または、低くできる。
また、次亜塩素酸水生成部119による次亜塩素酸水の生成中、非浄化搬送ファン112bが回転し続けることで非浄化風路105bの空気の流れが生成され続けるので、より確実に筐体101内の腐食を抑制できる。
さらに、浄化搬送ファン112a、非浄化搬送ファン112b、次亜塩素酸水生成部119、次亜塩素酸水供給部128、水供給部132、ストレーナ136、排水ポンプ138、及び排水ドレン139は、微細化部114の下流に配置されないので、微細化部114から放出された微細化された次亜塩素酸水によるこれらの構成要素の腐食を抑制できる。よって、これらの構成要素の耐腐食性を不要にできるか、または、低くできる。
また、次亜塩素酸水生成部119から非浄化風路105bに漏れ出た次亜塩素酸水を高反応性ダクト167bの高反応性素材により吸収または吸着することで、漏れ出た次亜塩素酸水の室内への到達を抑制できる。高反応性素材の比表面積は、低反応性素材の比表面積より大きいため、高反応性素材は次亜塩素酸水を吸収または吸着しやすい。よって、室内の次亜塩素酸の量を精度よく制御しやすい。室内の次亜塩素酸の量を精度よく制御するためには、非浄化風路105bに漏れ出た次亜塩素酸水は室内に放出されないことが望ましい。
一方、浄化風路105aを通った空気109aに含まれる次亜塩素酸水に対しては、低反応性ダクト167aの低反応性素材により反応、吸収、または吸着を抑制することで、低反応性ダクト167aの通過による次亜塩素酸濃度の低下を抑制できる。
また、混合槽116に次亜塩素酸水と水を供給するので、混合水の濃度を調整しやすい。よって、空気中に放出される次亜塩素酸の濃度を調節しやすい。
また、ダンパー107により温調空気と非温調空気の少なくとも一方を浄化風路と非浄化風路とに分配するので、暖房時及び冷房時のそれぞれで温調空気と非温調空気の分配を調整することで、次亜塩素酸水による加湿をより適切に実行できる。
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の空気浄化システム(100,300)は、温度設定値と湿度設定値を受けつける操作装置(43,170)と、操作装置(43,170)において受けつけた温度設定値に近づくように空調制御を実行する空気調和装置(15,150)と、操作装置(43,170)において受けつけた湿度設定値に近づくように、空気浄化成分を含む水を噴霧する空気浄化装置(10,110)と、を備える。空気浄化装置(10,110)は、温度設定値によって湿度設定値の実現が困難である場合、温度設定値の変更指示を空気調和装置(15,150)に送信し、空気調和装置(15,150)は、空気浄化装置(10,110)から温度設定値の変更指示を受信した場合、温度設定値の変更指示に応じて変更した温度設定値に近づくように空調制御を実行する。
空気浄化装置(10,110)は、温度設定値によって実現可能な湿度値より湿度設定値の方が高い場合、温度設定値の変更指示として温度設定値の上昇指示を空気調和装置(15,150)に送信し、空気調和装置(15,150)は、空気浄化装置(10,110)から温度設定値の上昇指示を受信した場合、温度設定値の上昇指示に応じて上昇させた温度設定値に近づくように空調制御を実行してもよい。
空気調和装置(150)は、室内から吸い込んだ空気に対して空調制御を実行し、空調制御した空気の一部を空気浄化装置(110)に送出し、空調制御した空気の残りを室内に送出してもよい。
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。