JP2022071781A - 汚泥脱水剤及び汚泥脱水方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献2及び3には、カチオン性単量体に由来する構成単位を含む、電荷内包率が高い水溶性イオン性高分子と、電荷内包率が低い水溶性イオン性高分子とを組み合せた凝集処理剤を、汚泥の脱水に用いることが記載されている。
しかしながら、上述したような近年の汚泥の多様化に伴い、汚泥の電気伝導率や有機物質の含有濃度等の性状の違いにより、脱水効果に大きなバラつきが生じる場合があり、カチオン度を高めた汚泥脱水剤が、必ずしも良好な脱水性能を有するとは言えないことがあった。
[1]カチオン性単量体に由来する構成単位と、架橋性単量体に由来する構成単位とを有するポリマーを含む汚泥脱水剤であって、
前記カチオン性単量体は、下記式(A)で表されるカチオン性単量体(a)、又は、下記式(A)で表されるカチオン性単量体(a)及び下記式(B)で表されるカチオン性単量体(b)を含み、
前記ポリマーの構成単位となる単量体(ただし、架橋性単量体を除く)の合計100モル%に対して、前記カチオン性単量体が60モル%以上であり、前記カチオン性単量体(b)が35モル%以下であり、前記架橋性単量体が0.001モル%以上0.025モル%以下であり、
前記ポリマーのコロイド当量値が下記式(1)を満たす、汚泥脱水剤。
(式(A)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であり、R3は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。A1は、酸素原子又はイミノ基であり、B1は炭素数2~4のアルキレン基である。X-は陰イオンである。)
(式(B)中、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であり、R6は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。A2は、酸素原子又はイミノ基であり、B2は炭素数2~4のアルキレン基である。Y-は陰イオンである。)
pH7におけるコロイド当量値(I)/pH5におけるコロイド当量値(II)×100≧92(%) (1)
[2]前記ポリマーの構成単位となる単量体(ただし、架橋性単量体を除く)の合計100モル%に対して、前記カチオン性単量体(b)が25モル%以下である、上記[1]に記載の汚泥脱水剤。
[3]前記ポリマーが、非イオン性単量体に由来する構成単位を含む、上記[1]又は[2]に記載の汚泥脱水剤。
[4]前記カチオン性単量体が、前記カチオン性単量体(a)及び前記カチオン性単量体(b)を含む、上記[1]~[3]のいずれかに記載の汚泥脱水剤。
[5]前記ポリマーが、アニオン性単量体に由来する構成単位を含む上記[4]に記載の汚泥脱水剤。
[6]前記カチオン性単量体(a)と、前記カチオン性単量体(b)とのモル比率[カチオン性単量体(a)/カチオン性単量体(b)]が、50/50以上85/15以下である、上記[4]又は[5]に記載の汚泥脱水剤。
[7]前記式(A)で表されるカチオン性単量体が、2-(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライドである、上記[1]~[6]のいずれかに記載の汚泥脱水剤。
[8]前記ポリマーが、油中水滴エマルション型、又は粉末状である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の汚泥脱水剤。
[9]上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の汚泥脱水剤を汚泥に添加して、前記汚泥を脱水する、汚泥脱水方法。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味するものであり、「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリロイル」との表記についても同様である。
本発明の汚泥脱水剤は、カチオン性単量体に由来する構成単位と、架橋性単量体に由来する構成単位とを有するポリマーを含むものである。
前記カチオン性単量体は、下記式(A)で表されるカチオン性単量体(a)、又は、下記式(A)で表されるカチオン性単量体(a)及び下記式(B)で表されるカチオン性単量体(b)を含む。
pH7におけるコロイド当量値(I)/pH5におけるコロイド当量値(II)×100≧92(%) (1)
本発明の汚泥脱水剤は、カチオン性単量体に由来する構成単位と、架橋性単量体に由来する構成単位とを有するポリマーを含むものである。
前記ポリマーの構成単位となる単量体は、カチオン性単量体と架橋性単量体を必須とし、さらに、非イオン性単量体及び/又はアニオン性単量体を含んでいてもよい。粗大な凝集フロックを形成することで脱水性能を向上させる観点から、前記ポリマーの構成単位となる単量体は、カチオン性単量体と、架橋性単量体と、非イオン性単量体を含むことが好ましく、カチオン性単量体と、架橋性単量体と、非イオン性単量体と、アニオン性単量体を含むことが好ましい。
前記カチオン性単量体は、下記式(A)で表されるカチオン性単量体(a)、又は、下記式(A)で表されるカチオン性単量体(a)及び下記式(B)で表されるカチオン性単量体(b)を含む。
R3は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基であり、好ましくはメチル基である。
A1は、酸素原子又はイミノ基であり、好ましくは酸素原子である。
B1は炭素数2~4のアルキレン基であり、好ましくはエチル基である。
X-は陰イオンであり、好ましくは、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、1/2・SO4 -、HSO4 -又はCH3SO4 -である。
前記カチオン性単量体が、前記式(A)で表されるカチオン性単量体(a)を含むことで、汚泥脱水剤は粗大な凝集フロックを形成することが可能となり、また、重力ろ過性が良好となり、より効率的な脱水処理が行い易くなる。
R6は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基であり、好ましくはメチル基である。
A2は、酸素原子又はイミノ基であり、好ましくは酸素原子である。
B2は炭素数2~4のアルキレン基であり、好ましくはエチル基である。
Y-は陰イオンであり、好ましくは、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、1/2・SO4 -、HSO4 -又はCH3SO4 -である。
前記カチオン性単量体が、前記式(B)で表されるカチオン性単量体(b)を含むことで、汚泥脱水剤に含まれるポリマーの汚泥脱水時の加水分解が抑制され、ポリマーのカチオン度の低下を抑制し、汚泥脱水剤は種々の汚泥に対して安定的な脱水効果を発揮することが可能となる。また、汚泥脱水処理後の脱水汚泥の含水率(ケーキ含水率)を低減することも可能となる。
本発明において、種々の汚泥に対してより安定的な脱水効果を発揮し、より効率的な脱水処理を実施する観点から、前記カチオン性単量体は、前記式(A)で表されるカチオン性単量体及び前記式(B)で表されるカチオン性単量体を含むことが好ましい。
前記カチオン性単量体の中でも、前記式(A)で表されるカチオン性単量体は、重合性や粗大な凝集フロックを形成する等の観点から、アクリロイルオキシアルキル第四級アンモニウム塩が好ましく、2-(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライドがより好ましい。前記式(B)で表されるカチオン性単量体は、ポリマーの加水分解を抑制し、種々の汚泥に対して安定的な脱水効果を発揮する観点、及びケーキ含水率低減の観点から、メタクリロイルオキシアルキル第四級アンモニウム塩、メタクリロイルオキシアルキル第3級アミン塩が好ましく、2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド、2-(メタクリロイルオキシ)エチルジメチルアミン塩酸塩がより好ましい。
前記ポリマーは、架橋性単量体に由来する構成単位を有する。ポリマーが前記カチオン性単量体に由来する構成単位と、架橋性単量体に由来する構成単位を有すると、ポリマーは三次元的に構造化され、入り組んだ複雑な構造となる。その結果、ポリマー中に含まれるカチオン基をポリマー内部にとどめ、カチオン基と汚泥中の水酸化物イオンとの接触を抑制し、カチオン基の加水分解反応を抑制することが可能となる。その結果、該反応に伴うカチオン度の低下を抑制することが可能となる。以上の理由により、種々の汚泥に対して安定的な脱水効果を発揮することができる。
架橋性単量体としては、例えば、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、トリアリルアンモニウムクロリド等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記架橋性単量体の中でも、種々の汚泥に対して安定的な脱水効果を発揮する観点から、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、トリアリルアンモニウムクロリドが好ましく、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジンがより好ましく、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミドがさらに好ましい。
非イオン性単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド類;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル系化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等の芳香族ビニル系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
前記非イオン性単量体の中でも、水溶性に優れ、前記ポリマー中の単量体組成比の調整が容易であり、良好な汚泥脱水性能が得られやすいこと等から、アミド類が好ましく、(メタ)アクリルアミドがより好ましく、アクリルアミドがさらに好ましい。
本発明において、前記ポリマーは非イオン性単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。前記ポリマーが非イオン性単量体に由来する構成単位を含むことで、カチオン性単量体単位が密にならず、ポリマーの均一性が向上し、カチオンが有効に作用できるため、粗大な凝集フロックが得られ易くなる。
アニオン性単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、及びこれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
本発明において、前記ポリマーはアニオン性単量体に由来する構成単位を含むことが好ましい。前記ポリマーがアニオン性単量体に由来する構成単位を含むことで、ポリマーが水に溶解すると、ポリマー中のカチオンとアニオンとの反応も起こるため、ポリマーの構造が複雑化し、汚泥同士が凝集して凝集フロックを形成する際に粗大な凝集フロックを得られ易くなる。
なお、本発明においては、ポリマー中の単量体組成において、「ポリマーの構成単位となる単量体」の配合量を示す場合には、「ポリマーの構成単位となる単量体」には、前記架橋性単量体は含まないものとする。また、本発明においては、前記ポリマーの重合時の単量体の配合組成比を、前記ポリマーの構成単位となる単量体の組成比とみなす。
前記ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%に対して、前記カチオン性単量体は、重力ろ過性に優れた凝集フロックを形成する等の観点から、好ましくは60モル%以上、より好ましくは65モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上である。
前記カチオン性単量体が、前記カチオン性単量体(a)及びカチオン性単量体(b)を含む場合、前記ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%に対して、前記カチオン性単量体(b)は、ポリマーの加水分解を抑制し、種々の汚泥に対して安定的な脱水効果を発揮する観点、及びケーキ含水率低減等の観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは18モル%以上であり、重力ろ過性に優れた凝集フロックを形成する観点から、好ましくは35モル%以下、より好ましくは30モル%以下、さらに好ましくは25モル%以下である。
前記ポリマーの構成単位となる単量体の合計100モル%に対して、前記架橋性単量体は、前記カチオン性単量体の種類や、架橋性単量体の種類や重合条件等にもよるが、より種々の汚泥に対して安定的な脱水効果を発揮する等の観点から、好ましくは0.0013モル%以上、より好ましくは0.0015モル%以上、0.0017モル%以上であり、重力ろ過性に優れた凝集フロックを形成する等の観点から、好ましくは0.020モル%以下、より好ましくは0.010モル%以下、さらに好ましくは0.005モル%以下である。
一般に、フロックは、汚泥脱水剤としてのポリマーが有する電荷(例えば正電荷)が、汚泥成分が有する電荷(例えば負電荷)と静電的に相互作用し、ポリマーが有する電荷で汚泥成分が有する電荷を中和することで形成される。ポリマーが有する電荷は、コロイド当量値を測定することで求められる。ここで「コロイド当量値」とは、コロイド滴定で定量されるポリマーが有する電荷密度(meq/g)のことを指し、例えば、ポリマーがカチオン性ポリマーの場合は、カチオン密度のことを指す。本発明においては、ポリマーのコロイド当量値はカチオン密度を指し、「カチオン度」の指標である。
コロイド当量値が高いポリマーは、高い電荷中和能を有するといえる。しかしながら、上述のとおり、近年の汚泥の多様化に伴い、コロイド当量値が高いポリマーを含む汚泥脱水剤を用いても、汚泥によっては脱水効果に大きなバラつきが生じる場合があり、コロイド当量値が高いポリマーを含む汚泥脱水剤が、どのような汚泥に対しても、必ずしも汚泥脱水剤として、良好な脱水性能を有するとはいえない場合があった。その原因について詳細に検討した結果、次のような理由により、従来のポリマーでは、良好な脱水性能を発揮することができない場合があることを見出した。
従来の汚泥脱水剤に含まれるポリマーには、上述のとおり、一般的にエステル系のカチオン性ポリマーが含まれている。このポリマーを含む水溶液においては、pH3~5の範囲でコロイド当量値が最大となり、該水溶液のpHが5を超過するとコロイド当量値が低下する傾向がみられる。これは、pHの値が大きくなると共に前記水溶液中の水酸化物イオンが増加し、増加した水酸化物イオンにより、エステルであるポリマーの加水分解が進行し、ポリマーのカチオン度が低下するため、また、ポリマーが有するカチオンと水酸化物イオンが反応することで、ポリマーのカチオン度が低下するためであると考えられる。このようなコロイド当量値の低下は、電荷中和能の低下となり、脱水性能の低下につながる。
一方、多くの汚泥のpHは5~7程度である。したがって、従来の汚泥脱水剤では、pHが高い汚泥ほど、汚泥脱水剤に含まれるポリマーのコロイド当量値が低下し、良好な脱水性能を発揮することができず、汚泥によって脱水効果に大きなバラつきが生じていたものと考えられる。
pH7におけるコロイド当量値(I)/pH5におけるコロイド当量値(II)×100≧92(%) (1)
上記式(1)において、pH7におけるコロイド当量値(I)とは、pHが7である前記ポリマーを含む水溶液を用意し、コロイド滴定法にて滴定量を求め、当該滴定量から算出した値である。
また、上記式(1)において、pH5におけるコロイド当量値(I)とは、pHが5である前記ポリマーを含む水溶液を用意し、コロイド滴定法にて滴定量を求め、当該滴定量から算出した値である。
コロイド滴定に用いる指示薬は、特に限定されないが、トルイジンブルーが好ましく用いられる。また、コロイド滴定に用いる滴定液は、特に限定されないが、ポリビニル硫酸カリウム標準液が好ましく用いられる。
固有粘度[η]は、ポリマー鎖の広がりや収縮の程度の指標となるポリマー物性である。
なお、固有粘度[η]は、ポリマーの分子量が大きいほど、大きくなる傾向にあり、分子量の一応の目安にもなり得る。ただし、固有粘度[η]は、ポリマーの構成単位となる単量体の構造や重合条件等にも左右され、必ずしも分子量の大小に対応するとは限らない。
本発明において、前記ポリマーは、1mol/L硝酸ナトリウム水溶液の30℃での固有粘度[η]が、0.5~5.0dL/gであることが好ましく、より好ましくは1.0~4.5dL/g、さらに好ましくは1.5~4.0dL/gである。
固有粘度[η]が上記数値範囲内のポリマーであれば、種々の汚泥中で、ポリマー鎖が適度に広がることができ、粗大な凝集フロックが形成され易くなる。
ηSP/C=[η]+k’[η]2C (2)
式(2)中、ηSP:比粘度(=ηrel-1)、k’:ハギンス定数、C:ポリマー濃度、ηrel:相対粘度を表す。
なお、ハギンス定数k’は、ポリマーの種類や溶媒の種類によって定まる定数であるが、式(2)から分かるように、縦軸をηSP/C、横軸をCとしたグラフにプロットした際の傾きとして求めることができる。具体的には、ポリマー濃度が異なる複数のポリマー溶液試料を調製し、各濃度のポリマー溶液試料の比粘度ηSPを求め、縦軸をηSP/C、横軸をCとしたグラフにプロットし、Cを0に外挿した切片の値が固有粘度[η]である。
比粘度ηSPは、後述する実施例に示すような方法により求めることができる。
前記溶媒は、前記汚泥脱水剤中に前記ポリマーを適度な濃度で存在させるために用いられ、前記ポリマーを安定的に、均一な状態で維持するため、また、該汚泥脱水剤の取り扱い容易性等の観点から、含まれ得る。前記溶媒としては、通常、水であるが、後述する前記ポリマーの製造方法に起因する油性溶媒等の有機溶媒等も挙げられる。
前記ポリマーは、該ポリマーの構成単位となる単量体及び架橋性単量体を、重合開始剤等を用いて重合することにより製造することができる。
前記ポリマーの重合に用いる重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化ベンゾイル等の有機化酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノバレリン酸、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルアミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩等のアゾ系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩が好ましい。
前記重合開始剤の添加量は、ポリマーの構成単位となる単量体の組成等に応じて、適宜設定することができるが、前記単量体の合計質量100質量部に対して、通常0.001~0.5質量部程度である。
重合方法の態様としては、例えば、乳化重合法、水溶液重合法、懸濁重合法等が挙げられる。これらの重合方法のうち、製造容易性や、製造したポリマーの汚泥脱水剤として取り扱い容易性や汚泥への溶解性等の観点から、ポリマーがW/Oエマルション型で得られる乳化重合法が好ましい。
乳化重合法は、公知の方法を用いることができ、例えば、油性溶媒と界面活性剤とを含む油相を調製し、該油相中に、前記ポリマーの構成単位となる単量体の水溶液を添加して撹拌混合し、乳化させて重合を行う。前記重合開始剤は、水溶性の場合は前記単量体の水溶液に混合しておけばよく、また、油溶性の場合は乳化後に添加すればよい。
前記油性溶媒としては、例えば、灯油、軽油等の鉱物油及びこれらの精製品であるノルマルパラフィン、イソパラフィン、ナフテン油等を使用することができ、また、これらと同等の性状を有する合成油、植物油、動物油又はこれらの混合物を使用することもできる。
前記界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ペンタオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤が好適に用いられる。
乳化重合時間は、種々の汚泥に対してより安定的な脱水効果を発揮する観点から、2~24時間であることが好ましく、より好ましくは4~12時間、さらに好ましくは6~10時間である。
本発明の汚泥脱水方法は、汚泥に、前記汚泥脱水剤を添加して、前記汚泥を脱水する方法である。
前記汚泥脱水方法の適用対象である汚泥としては、例えば、下水の余剰汚泥、混合生汚泥、消化汚泥、食品工場や化学工場等の余剰汚泥や凝沈混合汚泥、し尿処理場等の混合汚泥等が挙げられる。
本発明の汚泥脱水剤を用いた汚泥脱水方法によれば、種々の汚泥について、脱水処理を安定的かつ効率的に行うことができる。
なお、ここで言うSSの含有量は、下記実施例に記載の分析方法により求められた値である。
前記汚泥脱水剤を添加する際の添加液における前記ポリマーの濃度は、汚泥に対して該ポリマーを均一に分散させる等の観点から、0.01~1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.03~0.6質量%、さらに好ましくは0.05~0.4質量%である。
そして、前記凝集フロックを脱水機で脱水処理し、固液分離することにより、脱水ケーキが得られる。
前記脱水機としては、特に限定されないが、例えば、ベルトプレスろ過機、スクリュープレス脱水機、多重円板型脱水機、遠心脱水機等が挙げられる。
前記脱水ケーキは、運搬や処分、再利用加工等において取り扱いやすいものとする観点から、塊状のケーキ形状が崩壊せず、かつ、含水分ができる限り少ないことが好ましい。本発明の汚泥脱水方法によれば、このような取り扱い性が良好な脱水ケーキを得ることができる。
前記他の汚泥脱水剤も、本発明の汚泥脱水剤の添加と同様の添加方法で添加されることが好ましい。
各種ポリマーを準備し、該ポリマーを用いた汚泥脱水剤試料の評価試験を行った。
下記実施例及び比較例の汚泥脱水剤試料に用いる各種ポリマーを、以下に示す各合成例により準備した。
各ポリマーにおける各種構成単量体は、以下のように略称する。
<カチオン性単量体(a)>
・DAA:2-(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド;分子量193.7
<カチオン性単量体(b)>
・DAM-1:2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド;分子量207.7
・DAM-2:2-(メタクリロイルオキシ)エチルジメチルアミン塩酸塩;分子量193.67
<非イオン性単量体>
・AAM:アクリルアミド;分子量71.1
<アニオン性単量体>
・AA:アクリル酸;72.1
<架橋性単量体>
・(i):N,N’-メチレンビスアクリルアミド;分子量154.17
・(ii):1,3,5-トリアクリロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン;分子量249.27
・(iii):エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート;分子量423.37
・(iv):トリアリルアンモニウムクロリド;分子量173.686
撹拌機、冷却管、窒素導入管及び温度計を付した1L4ツ口セパラブルフラスコに、ノルマルパラフィン301g、ペンタオキシエチレンオレイルエーテル40g、及びソルビタンモノオレート12gを仕込み、撹拌混合し、油層混合物を調製した。
次いで、DAAの80質量%水溶液384g、DAM-1の80質量%水溶液110g、AAM7.5g、AA0.5g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.0065g、及び水150gの混合水溶液を前記油層混合物に添加して、ホモジナイザー撹拌により乳化させた。これを、撹拌下、50℃に調整し、窒素ガスを30分間バブリングした。窒素ガス気流下、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩の4質量%トルエン溶液1.0gを加え、45~55℃で8時間重合させ、W/Oエマルション型ポリマー(ポリマー1)を得た。
約10gのW/Oエマルション型ポリマー(ポリマー1)をビーカーに入れて精秤した後、該W/Oエマルション型ポリマーの10質量倍以上のアセトンを加えてポリマーを析出させ、上澄み液を除去した。再びアセトンを加えて上澄み液を除去し、この操作を計3回繰り返して、ポリマーを精製した後、真空乾燥機にて、室温(25℃)で48時間乾燥させて、粉末状のポリマーを得た。
得られた粉末状のポリマーを精秤し、最初に測定したW/Oエマルション型ポリマーの質量に対する該粉末状ポリマーの質量の比率を算出し、この値をポリマー濃度[質量%]とした。
合成例1において、合成原料として用いる構成単量体及び重合開始剤を下記表1の各合成例に示すものに変更し、それ以外は合成例1と同様にして、各W/Oエマルション型ポリマー(ポリマー2~10、比較ポリマー1~5)を得た。
前記の合成例1~10及び比較合成例1~5で得られたW/Oエマルション型ポリマー(ポリマー1~10、比較ポリマー1~5)について、以下の(1)~(9)の手順に従って、pH5及びpH7におけるコロイド当量値を求め、pH7におけるコロイド当量値(I)をpH5におけるコロイド当量値(II)で除して100を乗じた値を算出した。
(1)室温25℃で、マグネティックスターラーを用いて、脱イオン水を1500rpmで攪拌下、ポリマー濃度が0.2質量%となるように、W/Oエマルション型ポリマーをうず内面に沿って速やかに投入し、1時間撹拌した。なお、溶解不十分の場合は、さらに1時間攪拌した。その後、室温で一晩静置し溶解させた。
(2)(1)で調製したポリマー濃度0.2質量%の水溶液25mLをホールピペットで計り取り、200mLメスシリンダーに入れ、脱イオン水を用いてメスアップして、転倒攪拌を行い、ポリマー濃度250mg/Lの水溶液(測定試料)を調製した。
(3)コニカルビーカーを4つ用意し、それぞれのコニカルビーカーに脱イオン水80mLを入れ、さらに(2)で調製した測定試料20mLを添加し、マグネティックスターラーで十分に撹拌して、それぞれ滴定対象試料とした。
(4)滴定対象資料をpH3、5、7、9となるように、pH計で確認しながら塩酸水溶液又は水酸化ナトリウム水溶液を添加し、それぞれの滴定対象試料のpHを調整した。
(5)pH3、5、7、9に調整したそれぞれの滴定対象試料に対して、予め指示薬としてトルイジンブルー1~2滴をただちに添加し、10秒撹拌した。
(6)次いで、ただちに、滴定液として0.0025mol/L(1/400N)のポリビニル硫酸カリウム標準液を用い2mL/分の速度で撹拌しながら滴定し、青色からピンク色に変化してピンク色を10秒以上保持する点を終点とし、滴定量AmLを求めた。
(7)その一方で、脱イオン水についても、前記の滴定対象試料に対して行った方法と同様に滴定を行い、ブランク滴定量BmLを求めた。pH3、5、7、9に調整した滴定対象試料のコロイド当量値は、滴定量AmL、及びブランク滴定量BmLの結果から下記の式(3)よりそれぞれ算出した。
なお、上記の式(3)における滴定剤とはポリビニル硫酸カリウムを指す。
(8)pH3、5、7、9に調整した滴定対象試料のそれぞれは、滴定終了後にpH値を計測し、計測したpH値をグラフのX軸に、上記の式(3)より算出したコロイド当量値をグラフのY軸にそれぞれプロットした。
グラフにプロットした4点を結んだ曲線からpH5及びpH7に相当する値におけるコロイド当量値を読み取り、pH5及びpH7におけるコロイド当量値(meq/g)とした。
(9)(8)で得られたpH7におけるコロイド当量値(I)とpH5におけるコロイド当量値(II)から、pH7におけるコロイド当量値(I)をpH5におけるコロイド当量値(II)で除して100を乗じた値を算出した。その値を表1に示す。
コロイド当量値の理論値[meq/g]=[ポリマーの構成単位となる単量体(架橋性単量体を除く)の合計100モル%に対するカチオン性単量体の割合[モル%]×1000]/[X(a)×Mw(a)+X(b)×Mw(b)+X(c)×Mw(c)+X(d)×Mw(d)](4)
X(a):ポリマーの構成単位となる単量体(架橋性単量体を除く)の合計100モル%に対するカチオン性単量体(a)の割合[モル%]
Mw(a):カチオン性単量体(a)の分子量
X(b):ポリマーの構成単位となる単量体(架橋性単量体を除く)の合計100モル%に対するカチオン性単量体(b)の割合[モル%]
Mw(b):カチオン性単量体(b)の分子量
X(c):ポリマーの構成単位となる単量体(架橋性単量体を除く)の合計100モル%に対する非イオン性単量体(c)の割合[モル%]
Mw(c):非イオン性単量体(c)の分子量
X(d):ポリマーの構成単位となる単量体(架橋性単量体を除く)の合計100モル%に対するアニオン性単量体(d)の割合[モル%]
Mw(d):アニオン性単量体(d)の分子量
前記の合成例1~10及び比較合成例1~5で得られたW/Oエマルション型ポリマー(ポリマー1~10、比較ポリマー1~5)について、以下の(I)~(VI)の手順に従って、固有粘度を求めた。
(I)キャノンフェンスケ粘度計(株式会社草野化学製No.75)5本をガラス器具用中性洗剤に1日以上浸漬後、水で十分洗浄し、乾燥させた。
(II)前述したコロイド当量値の測定操作と同じ手順で、W/Oエマルション型ポリマーを水で希釈し、ポリマー濃度0.2質量%の水溶液を調製した。
(III)(II)で調製したポリマー濃度0.2質量%の水溶液50mLに2モル/L硝酸ナトリウム水溶液50mLを加え、マグネティックスターラーにて500rpmで20分間撹拌し、ポリマー濃度0.1質量%の1モル/L硝酸ナトリウム水溶液を得た。これを1モル/L硝酸ナトリウム水溶液で希釈して、0.02、0.04、0.06、0.08、0.1質量%の5段階のポリマー濃度のポリマー溶液試料を調製した。なお、ポリマー未添加の1モル/L硝酸ナトリウム水溶液をブランク液とした。
(IV)温度30℃(±0.02℃内)に調整した恒温水槽内に、(I)で準備した粘度計5本を垂直に取り付けた。各粘度計にホールピペットにてブランク液10mLを入れた後、温度を一定にするために約30分間静置した。その後、スポイト栓を用いて液を吸い上げ、自然落下させて、標線を通過する時間をストップウォッチで1/100秒単位まで測定した。この測定を、各粘度計について5回繰り返し、平均値をブランク値(t0)とした。
(V)(III)で調製した5段階のポリマー濃度のポリマー溶液試料各10mLを、ブランク液の測定を行った粘度計5本に入れ、温度を一定にするために約30分間静置した。その後、ブランク液の測定と同様の操作を3回繰り返し、濃度ごとの通過時間の平均値を測定値(t)とした。
ブランク値t0、測定値t、及びポリマー溶液試料の濃度[質量/体積%](=C[g/dL])から、下記式(5)及び(6)に示す関係式より、相対粘度ηrel、比粘度ηSP及び還元粘度ηSP/C[dL/g]を求めた。
ηrel=t/t0 (5)
ηSP=(t-t0)/t0=ηrel-1 (6)
これらの値から、上述したハギンスの式に基づく固有粘度の求め方に従って、各ポリマーの固有粘度[η]を求めた。
(VI)(III)において、硝酸ナトリウム水溶液の濃度を変更し、ポリマー濃度0.1質量%の0.01モル/L硝酸ナトリウム水溶液を調製した。これを0.01モル/L硝酸ナトリウム水溶液で希釈して、前記(III)と同様にして、5段階のポリマー濃度のポリマー溶液試料を調製し、(III)~(V)の手順に従って、各ポリマーの固有粘度[η]を求めた。
汚泥脱水剤試料の評価試験で用いた汚泥の詳細を下記表2に示す。表2に示す汚泥の性状を表す各項目の略称及び分析方法(下水道試験法に準拠)は、以下のとおりである。
汚泥100mLを秤量した後、3000rpmで10分間遠心分離して上澄み液を除去した。沈殿物を水洗しながら秤量済みのルツボに流し込み、105~110℃の範囲内の温度で15時間乾燥させた後、秤量し、乾燥後の前記ルツボ内の残留物の質量を求めた。
乾燥前の汚泥100mLの質量に対する前記残留物の質量の割合を、汚泥100mL中の浮遊物質(SS:Suspended Solids)の含有量[質量%]とした。
前記(1)において前記ルツボ内の残留物(SS)の質量を求めた後、該残留物(SS)がルツボに入った状態で、600±25℃の範囲内の温度で2時間強熱し、放冷後に秤量し、強熱後の前記ルツボ内の残留物の質量を求めた。
強熱前の前記ルツボ内の残留物(SS)と強熱後の該ルツボ内の残留物との質量の差分は、汚泥100mL中の揮発性浮遊物質(VSS:Volatile Suspended Solids)の質量である。SSの質量に対する強熱後の前記残留物(VSS)の質量の割合を、VSSの含有率[質量%/SS]として求めた。
汚泥100mLを秤量して、秤量済みのルツボに入れ、105~110℃の範囲内の温度で15時間乾燥させた後、秤量し、乾燥後の前記ルツボ内の残留物の質量を求めた。
乾燥前の汚泥100mLの質量に対する前記残留物の質量の割合を、汚泥100mL中の蒸発残留物(TS:Total Solids;全固形分)の含有率[質量%]として求めた。
前記(3)において前記ルツボ内の残留物(TS)の質量を求めた後、該残留物(TS)がルツボに入った状態で、600±25℃の範囲内の温度で2時間強熱し、放冷後に秤量し、強熱後の前記ルツボ内の残留物の質量を求めた。
強熱前の前記ルツボ内の残留物(TS)と強熱後の該ルツボ内の残留物との質量の差分は、汚泥100mL中の揮発性浮遊物質(VTS:Volatile Total Solids)の質量である。TSの質量に対する強熱後の前記残留物(VTS)の質量の割合を、VTSの含有率[質量%/TS]として求めた。
汚泥100mLを100メッシュ(目開き149μm)のふるいでろ過し、ふるい上の残留物を水洗しながら秤量済みのルツボに流し込み、105~110℃の範囲内の温度で15時間乾燥させた後に秤量し、乾燥後の前記ルツボ内の残留物の質量を求めた。
その後、前記残留物がルツボに入った状態で、600±25℃の範囲内の温度で2時間強熱し、放冷後に秤量し、強熱後の前記ルツボ内の残留物の質量を求めた。
強熱前の前記ルツボ内の残留物と強熱後の該ルツボ内の残留物との質量の差分は、汚泥100mL中の粒径約149μm以上の揮発性浮遊物質の質量であり、主に揮発性の繊維分の質量である。SSの質量に対する強熱後の前記残留物(粒径約149μm以上の揮発性浮遊物質)の質量の割合を、繊維分の含有率[質量%/SS]として求めた。
JIS Z 8802:2011に準拠して、ガラス電極法の操作に基づいて、pHを測定した。なお、pHの校正には、市販のフタル酸塩、中性リン酸塩及び炭酸塩の各pH標準液を用いた。
JIS K 0102:2016に準拠して、電気伝導率を測定した。
上記において準備したポリマー(ポリマー1~10、比較ポリマー1~5)を用いた汚泥脱水剤試料を用いて、汚泥処理の机上試験を行い、下記の評価方法により、汚泥脱水剤試料の汚泥脱水性能の評価を行った。
合成例1で得られたW/Oエマルション型ポリマー(ポリマー1)を水で希釈し、ポリマー濃度0.2質量%の水溶液を調製し、これを汚泥脱水剤試料1とした。
汚泥A 200mLを300mLビーカーに採取し、汚泥脱水剤試料1を添加濃度80mg/Lとなるように添加し、180rpmで30秒間撹拌して、凝集フロックを形成させ、処理汚泥を得た。
実施例1において、汚泥、汚泥脱水剤試料及びその添加濃度を下記表3に示すように変更し、それ以外は実施例1と同様にして、汚泥に汚泥脱水剤試料を添加し、凝集フロックを形成させ、処理汚泥を得た。
上記実施例及び比較例における処理汚泥について、以下に示す各項目の評価を行った。これらの評価結果を下記表3にまとめて示す。
ビーカー内の凝集フロックのうち、該ビーカーの上方から観察できる任意の約100個を対象として、各凝集フロックの最大径をメジャーで測定し、これらの平均値をフロック径とした。
フロック径は、汚泥脱水剤のフロック形成力の指標である。フロック径が大きいほど、粗大な凝集フロックが形成されたと評価することができ、汚泥脱水剤試料のフロック形成力が高いと言える。ただし、フロック径が大きすぎる場合、後述するケーキ含水率が高くなる傾向にある。フロック径は4.5mm以上であることが好ましい。
200mLメスシリンダー上に、ブフナーロート(内径80mm、孔径約1mm)を設置し、次いで、該ブフナーロートのろ過面の上側に、直径50mmのポリ塩化ビニル製の筒を設置した。処理汚泥を前記筒内に一気に注ぎ、注ぎ始めてから20秒後までのろ液をメスシリンダーで採取し、該メスシリンダーの目盛から読み取ったろ液の量を、20秒ろ過量とした。
20秒ろ過量は、重力ろ過性の指標である。20秒ろ過量が多いほど、重力ろ過性に優れた凝集フロックが形成されたと評価することができる。ただし、20秒ろ過量が多くても、後述するSSリーク量が多ければ、処理汚泥が良好な状態で脱水処理されているとは言えず、汚泥脱水剤試料の汚泥脱水性能の評価においては、20秒ろ過量及びSSリーク量を併せて判断する必要がある。
前記(2)で20秒ろ過量を測定後、さらに、40秒後に、前記メスシリンダーを別のメスシリンダーに替えて、処理汚泥を注ぎ始めてから60秒後以降に該ブフナーロートの孔を通過して採取された液の量を、該メスシリンダーの目盛から読み取った。この読み取った液量をSSリーク量とした。
ここで言うSSリーク量とは、処理汚泥中で、粗大な凝集フロックが形成されていない、又は、崩壊した微小なフロック等の浮遊物質(SS)の量の目安となる数値である。
SSリーク量が少ないほど、粗大な凝集フロックが形成されたと評価することができる。
前記(3)でSSリーク量を測定後、該ブフナーロート上に残った凝集フロックを、ポリ塩化ビニル製カラム(内径30mm、高さ17.5mm)に詰めた。前記カラムを外し、底面が約30mmの略円形の塊状の凝集フロックを、上面から0.1MPaで60秒間圧搾し、脱水ケーキを得た。
前記脱水ケーキの質量、及び、該脱水ケーキを105℃で15時間乾燥させた後の脱水ケーキの質量を測定した。前記脱水ケーキの乾燥前と乾燥後の質量の差分を、脱水ケーキの含水量とみなした。乾燥前の前記脱水ケーキの質量に対する前記含水量の割合を、ケーキ含水率[質量%]として求めた。脱水ケーキの廃棄処理等における取り扱い性等の観点から、ケーキ含水率は低い方が好ましい。
また、表3に示した結果から分かるように、本発明の汚泥脱水剤によれば、処理汚泥におけるフロック径、20秒ろ過量、SSリーク量及びケーキ含水率がいずれも良好であった。すなわち、本発明の汚泥脱水剤は、種々の汚泥に対して安定的な脱水効果を発揮することが確認された。
Claims (9)
- カチオン性単量体に由来する構成単位と、架橋性単量体に由来する構成単位とを有するポリマーを含む汚泥脱水剤であって、
前記カチオン性単量体は、下記式(A)で表されるカチオン性単量体(a)、又は、下記式(A)で表されるカチオン性単量体(a)及び下記式(B)で表されるカチオン性単量体(b)を含み、
前記ポリマーの構成単位となる単量体(ただし、架橋性単量体を除く)の合計100モル%に対して、前記カチオン性単量体が60モル%以上であり、前記カチオン性単量体(b)が35モル%以下であり、前記架橋性単量体が0.001モル%以上0.025モル%以下であり、
前記ポリマーのコロイド当量値が下記式(1)を満たす、汚泥脱水剤。
(式(A)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であり、R3は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。A1は、酸素原子又はイミノ基であり、B1は炭素数2~4のアルキレン基である。X-は陰イオンである。)
(式(B)中、R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であり、R6は、水素原子、炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基である。A2は、酸素原子又はイミノ基であり、B2は炭素数2~4のアルキレン基である。Y-は陰イオンである。)
pH7におけるコロイド当量値(I)/pH5におけるコロイド当量値(II)×100≧92(%) (1) - 前記ポリマーの構成単位となる単量体(ただし、架橋性単量体を除く)の合計100モル%に対して、前記カチオン性単量体(b)が25モル%以下である、請求項1に記載の汚泥脱水剤。
- 前記ポリマーが、非イオン性単量体に由来する構成単位を含む、請求項1又は2に記載の汚泥脱水剤。
- 前記カチオン性単量体が、前記カチオン性単量体(a)及び前記カチオン性単量体(b)を含む、請求項1~3のいずれかに記載の汚泥脱水剤。
- 前記ポリマーが、アニオン性単量体に由来する構成単位を含む請求項4に記載の汚泥脱水剤。
- 前記カチオン性単量体(a)と、前記カチオン性単量体(b)とのモル比率[カチオン性単量体(a)/カチオン性単量体(b)]が、50/50以上85/15以下である、請求項4又は5に記載の汚泥脱水剤。
- 前記式(A)で表されるカチオン性単量体が、2-(アクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライドである、請求項1~6のいずれかに記載の汚泥脱水剤。
- 前記ポリマーが、油中水滴エマルション型、又は粉末状である、請求項1~7のいずれかに記載の汚泥脱水剤。
- 請求項1~8のいずれか1項に記載の汚泥脱水剤を汚泥に添加して、前記汚泥を脱水する、汚泥脱水方法。
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