JP2022068873A - 衛生マスク - Google Patents
衛生マスク Download PDFInfo
- Publication number
- JP2022068873A JP2022068873A JP2021173397A JP2021173397A JP2022068873A JP 2022068873 A JP2022068873 A JP 2022068873A JP 2021173397 A JP2021173397 A JP 2021173397A JP 2021173397 A JP2021173397 A JP 2021173397A JP 2022068873 A JP2022068873 A JP 2022068873A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- fiber layer
- silver
- copper
- cloth material
- gold
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Disinfection, Sterilisation Or Deodorisation Of Air (AREA)
- Laminated Bodies (AREA)
- Chemical Or Physical Treatment Of Fibers (AREA)
Abstract
【課題】従来のマスクよりも、ウィルスや細菌に対する抗菌性及び殺菌性に優れる衛生マスクを提供することを目的とする。【解決手段】この目的を達成するために、殺菌性繊維層を備える衛生マスクであって、当該殺菌性繊維層は、第一繊維層と第二繊維層とを接触した状態で任意の層数を積層したものであり、当該第一繊維層は、表面に銅又は銀が付着した繊維からなる布材であり、当該第二繊維層は、表面に、第一繊維層が含有する銅又は銀よりもイオン化傾向が小さい金属が付着した繊維からなる布材であることを特徴とする衛生マスクを採用する。【選択図】図1
Description
本件出願は、衛生マスクに関する。具体的には、細菌やウィルスを含有する飛沫等が、鼻や口を通して人体に侵入すること、及び、人体から口等を通して発せられる飛沫等が、空気中に拡散することを防止するための衛生マスクに関するものである。
衛生マスクは、他者の咳、くしゃみ等に伴い発せられる飛沫中に含まれる細菌やウィルスが、呼吸する際に体内に取り込まれるのを防止する目的で、或いは、風邪等に罹患した者が自ら発する飛沫等を空気中に拡散させることを防止する目的で、使用されている。一般的な衛生マスクは、人体の鼻と口とを覆うのに適切な大きさを有する数層に折り畳んだガーゼ又は、複数層からなる不織布等の両端に、ループ状のゴム紐等を取り付けた構造を有し、ガーゼや不織布自体がフィルターとなり細菌やウィルスを捕捉する。また、近年では、衛生マスクは、インフルエンザウィルスやコロナウィルス等への飛沫感染を未然に防ぐために、着用が推奨されている。抗菌性、殺菌性を有する衛生マスクは、特に市場ニーズが高く、様々な形態のマスクが提案されている。
これまでに提案された抗菌性の衛生マスクとして、繊維表面に銀を蒸着したマスクや、銀や銅等の金属で作られた金属メッシュを備えるマスク等が挙げられる。無機系金属は、抗菌作用を有することが知られており、安全性の観点から、亜鉛、銅、銀等が抗菌成分として使用されている。特に、銅及び銀は比較的安価且つ安定な材料として注目されており、衛生マスクに好適に用いることができる。銀の殺菌性については周知のとおりであるが、銅が有害微生物を死滅させる効果を有することは米国環境保護庁(EPA)にも認められている。
特許文献1には、「樹脂繊維と、当該樹脂繊維の周りに螺旋状に巻かれた銅線と、を有する糸を経糸及び緯糸として織られたシートを含むマスクフィルター」を備えるマスクが開示されている。特許文献1によれば、このマスクは、銅自体の殺菌作用に加えて、人体に溜まった静電気をこのマスクフィルターを用いて放電させることで、細菌やウィルスを滅殺菌する。
しかし、特許文献1のマスクでは、期待される効果を十分に得ることができない可能性がある。なぜなら、特許文献1のマスクの形態では、銅線と細菌やウィルスとの接触面積が比較的少ないためである。また、銅の殺菌性は、より正確には銅から溶出した銅イオンによるものであると考えるのが妥当であるが、実際に使用者がマスクを装着して利用する環境においては、マスクに付着する細菌やウィルスの量に対して、銅線から水(大気中又は使用者の呼気中の水分)の中への銅イオンの溶出量が不十分であると考えられるためである。
以上のことから、本件出願は、従来のマスクよりもウィルスや細菌に対する抗菌性及び殺菌性(以下、単に「殺菌性等」と称する場合がある。)に優れる衛生マスクを提供することを目的とする。
本件出願の発明者は、鋭意研究の結果、以下の構成を有する衛生マスクを採用することで、上記課題を達成するに至った。
A.衛生マスクタイプ1
衛生マスクタイプ1-1: 本件出願にかかる衛生マスクは、殺菌性繊維層を備える衛生マスクであって、当該殺菌性繊維層は、第一繊維層と第二繊維層とを接触した状態で任意の層数を積層したものであり、当該第一繊維層は、銅が付着した繊維からなる布材であり、当該第二繊維層は、銅よりもイオン化傾向が小さい金属が付着した繊維からなる布材であることを特徴とする。
衛生マスクタイプ1-1: 本件出願にかかる衛生マスクは、殺菌性繊維層を備える衛生マスクであって、当該殺菌性繊維層は、第一繊維層と第二繊維層とを接触した状態で任意の層数を積層したものであり、当該第一繊維層は、銅が付着した繊維からなる布材であり、当該第二繊維層は、銅よりもイオン化傾向が小さい金属が付着した繊維からなる布材であることを特徴とする。
本件出願にかかる衛生マスク(タイプ1-1)において、前記第一繊維層は、銅を89mg/m2~890mg/m2含有することが好ましい。
本件出願にかかる衛生マスク(タイプ1-1)において、前記第二繊維層は、銀を105mg/m2~1,050mg/m2又は金を38.6mg/m2~386mg/m2含有することが好ましい。
衛生マスクタイプ1-2: 本件出願にかかる衛生マスクは、殺菌性繊維層を備える衛生マスクであって、当該殺菌性繊維層は、第一繊維層と第二繊維層とを接触した状態で任意の層数を積層したものであり、当該第一繊維層は、銀が付着した繊維からなる布材であり、当該第二繊維層は、銀よりもイオン化傾向が小さい金属が付着した繊維からなる布材であることを特徴とする。
本件出願にかかる衛生マスク(タイプ1-2)において、前記第一繊維層は、銀を105mg/m2~1,050mg/m2含有することが好ましい。
本件出願にかかる衛生マスクにおいて、前記第二繊維層は、金を38.6mg/m2~386mg/m2含有することが好ましい。
以上に述べた本件出願にかかる衛生マスクにおいて、前記第一繊維層及び前記第二繊維層は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、綿、絹のいずれかの材質の繊維を用いることが好ましい。また、本件出願にかかる衛生マスクにおいて、前記第一繊維層と前記第二繊維層とは、織布タイプ又は不織布タイプのいずれかの布材を用いることも好ましい。
B.衛生マスクタイプ2
衛生マスクタイプ2-1: 本件出願にかかる衛生マスクは、殺菌性繊維層を備える衛生マスクであって、当該殺菌性繊維層として、単一の織布タイプ又は不織布タイプのいずれかの布材に対し、銅及び銅よりもイオン化傾向が小さい金属を含ませた異種成分併有布材を用いたことを特徴とする。
衛生マスクタイプ2-1: 本件出願にかかる衛生マスクは、殺菌性繊維層を備える衛生マスクであって、当該殺菌性繊維層として、単一の織布タイプ又は不織布タイプのいずれかの布材に対し、銅及び銅よりもイオン化傾向が小さい金属を含ませた異種成分併有布材を用いたことを特徴とする。
本件出願にかかる衛生マスク(タイプ2-1)において、前記異種成分併有布材は、銅を89mg/m2~890mg/m2、銅よりもイオン化傾向が小さい金属として銀を105mg/m2~1,050mg/m2又は金を38.6mg/m2~386mg/m2付着させたものであることが好ましい。
衛生マスクタイプ2-2: 本件出願にかかる衛生マスクは、殺菌性繊維層を備える衛生マスクであって、当該殺菌性繊維層として、単一の織布タイプ又は不織布タイプのいずれかの布材に対し、銀及び銀よりもイオン化傾向が小さい金属を含ませた異種成分併有布材を用いたことを特徴とする。
本件出願にかかる衛生マスク(タイプ2-2)において、前記異種成分併有布材は、銀を105mg/m2~1,050mg/m2、銀よりもイオン化傾向が小さい金属として金を38.6mg/m2~386mg/m2付着させたものであることが好ましい。
以上に述べた本件出願にかかる衛生マスクにおいて、使用者が着用したとき、大気側にあたる最外層に、繊維表面に光触媒が付着した光触媒付繊維層を設けることが好ましい。また、この光触媒は、二酸化チタンであることが好ましい。そして、この光触媒は、二酸化チタンに窒素、硫黄、遷移金属元素、ランタノイド系元素、アクチノイド系元素から選ばれた一種以上の元素をドープした酸化チタンであることも好ましい。
本件出願の衛生マスクは殺菌性繊維層を備えることにより、従来のマスクと比べ、細菌やウィルスに対する抗菌効果及び殺菌効果が格段に優れている。そのため、サルネモラ菌や黄色ブドウ球菌等の様々な細菌のほか、インフルエンザウィルスやコロナウィルス等の各種エンベロープウィルス、ノロウィルス等のノンエンベロープウィルスに対する優れた抵抗力を発揮できる。しかも、この殺菌性繊維層は、簡便で量産性に優れた方法で製造できるため、高品質なマスクの提供が可能となる。
以下に、図1~図6を参照して、本件出願にかかる衛生マスクに関して説明する。
1.本件出願にかかる衛生マスクが採用する基本的技術思想
本件出願にかかる衛生マスク1の特徴は、当該衛生マスクを装着した人が呼吸をする際に、吸気経路となるマスク本体2の内部に、細菌やウィルスに対する殺菌作用を有する「殺菌性繊維層」を設けた点にある。このときの殺菌性繊維層は、「銅」及び「銅よりもイオン化傾向が小さい金属」又は、「銀」及び「銀よりもイオン化傾向が小さい金属」を含むものである。本願に係る発明の内容の理解を容易なものとするために、以下では主に、殺菌性繊維層が銅を含有する場合について説明する。
本件出願にかかる衛生マスク1の特徴は、当該衛生マスクを装着した人が呼吸をする際に、吸気経路となるマスク本体2の内部に、細菌やウィルスに対する殺菌作用を有する「殺菌性繊維層」を設けた点にある。このときの殺菌性繊維層は、「銅」及び「銅よりもイオン化傾向が小さい金属」又は、「銀」及び「銀よりもイオン化傾向が小さい金属」を含むものである。本願に係る発明の内容の理解を容易なものとするために、以下では主に、殺菌性繊維層が銅を含有する場合について説明する。
銅と銅よりもイオン化傾向が小さい金属とを接触した状態にすると、大気中又は衛生マスク使用者の呼気中の水分を介して、局部電池が形成される。その結果、銅よりもイオン化傾向が小さい金属が銅のイオン化を促進し、優れた殺菌性等の効果を得ることができる。このような効果を効率よく発揮するためには、「銅」と「銅よりもイオン化傾向が小さい金属」との間の電位差は、0.3V~0.8Vであることが好ましい。電位差が0.3V未満の場合、銅のイオン化を十分に促進することができず好ましくない。一方、電位差が0.8Vを超えると、銅がイオン化する速度が過剰になり、殺菌性繊維層の殺菌性等の効果が短命化するおそれがある。但し、殺菌性繊維層の殺菌性等の効果の継続期間の長さよりも殺菌効果の即効性をより重視する使用形態等においては、「銅」と「銅よりもイオン化傾向が小さい金属」との間の電位差は、0.3V~1.2Vであることも好ましい。
ここでいう「銅よりもイオン化傾向が小さい金属」としては、銀、白金、金等が挙げられ、銅のイオン化促進ができる限り、特段の限定は要さない。ところが、局部電池としての寿命、コストを考慮すると、銀を用いることが最も好ましい。銀は、銅と並んで殺菌性が高く、銀と銅との間の電位差が0.4V~0.6Vの範囲内であり、過剰に銅のイオン化を促すものではなく衛生マスクの寿命を長く維持できる成分である。また、材料の安定性、銅のイオン化を促進する能力等を考慮すると、金を用いることも好ましい。なお、本願に係る発明の内容の理解を容易なものとするために、以下の説明においては、「銅よりもイオン化傾向が小さい金属」として銀を主に取り上げて説明する。
2.殺菌性繊維層
本件出願における「殺菌性繊維層」には、「殺菌性繊維層(I)」と「殺菌性繊維層(II)」との2つの形態が存在する。以下、「殺菌性繊維層に用いる繊維」、「殺菌性繊維層(I)」、「殺菌性繊維層(II)」との順に説明する。
本件出願における「殺菌性繊維層」には、「殺菌性繊維層(I)」と「殺菌性繊維層(II)」との2つの形態が存在する。以下、「殺菌性繊維層に用いる繊維」、「殺菌性繊維層(I)」、「殺菌性繊維層(II)」との順に説明する。
2-1.殺菌性繊維層に用いる繊維
本件出願における殺菌性繊維層は、いわゆる布材により構成されている。この殺菌性繊維層の厚さに関しては、衛生マスクとして使用したときの使用者の顔への装着性を阻害しない限り、特段の限定はない。そして、この布材の製造に用いる繊維には、後述する製造方法として採用する無電解めっき法、マグネトロンスパッタリング法、金ナノ粒子溶液への浸漬法及びこれらの製造条件等で損傷を受けない材質のものであれば、特段の限定は要さない。しかしながら、衛生マスクとしての耐久性、後述する製造方法による金属成分の定着安定性を考慮すると、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、綿、絹のいずれかの繊維を用いた布材であることが好ましい。
本件出願における殺菌性繊維層は、いわゆる布材により構成されている。この殺菌性繊維層の厚さに関しては、衛生マスクとして使用したときの使用者の顔への装着性を阻害しない限り、特段の限定はない。そして、この布材の製造に用いる繊維には、後述する製造方法として採用する無電解めっき法、マグネトロンスパッタリング法、金ナノ粒子溶液への浸漬法及びこれらの製造条件等で損傷を受けない材質のものであれば、特段の限定は要さない。しかしながら、衛生マスクとしての耐久性、後述する製造方法による金属成分の定着安定性を考慮すると、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、綿、絹のいずれかの繊維を用いた布材であることが好ましい。
そして、上述の繊維を用いた布材としては、「織布タイプ」、「不織布タイプ」のいずれのものでも構わない。なお、複数の布材を積層して殺菌性繊維層を構成する場合、織布タイプ又は不織布タイプのいずれか一種類を用いてもよいし、織布タイプと不織布タイプとを任意に組み合わせて用いても構わない。さらに、繊維材質の異なる布材を組み合わせて殺菌性繊維層として使用することも何ら制限はない。殺菌性繊維層を構成する布材が不織布タイプであると、当該布材において繊維が幾重にも重なっているため、殺菌又はウィルスの捕捉効果が高まり、大気中又は衛生マスク使用者の呼気中の水分への銅イオンの溶出もより効率的に進行する。
なお、誤解を招かないように、以下の内容を記載しておく。厳密にいえば、繊維と糸とは、細長い繊維である糸を引き揃えて束ね、これに撚りをかけて得られたものが繊維という関係があると捉えられる。しかしながら、本出願においては、糸と繊維とを明確に区別せず、双方を含む概念として単に「繊維」と称している。
2-2.殺菌性繊維層(I)
(a)殺菌性繊維層(I)の構成
殺菌性繊維層(I)4は、「第一繊維層6」と「第二繊維層7」とを接触した状態で任意の層数を積層したものである。このとき「第一繊維層6」は、表面に銅又は銀が付着した繊維からなる布材である。そして、「第二繊維層7」は、第一繊維層6が銅を含有する場合は銅よりもイオン化傾向が小さい金属が、第一繊維層6が銀を含有する場合は銀よりもイオン化傾向が小さい金属が、表面に付着した繊維からなる布材であることを特徴とする。
(a)殺菌性繊維層(I)の構成
殺菌性繊維層(I)4は、「第一繊維層6」と「第二繊維層7」とを接触した状態で任意の層数を積層したものである。このとき「第一繊維層6」は、表面に銅又は銀が付着した繊維からなる布材である。そして、「第二繊維層7」は、第一繊維層6が銅を含有する場合は銅よりもイオン化傾向が小さい金属が、第一繊維層6が銀を含有する場合は銀よりもイオン化傾向が小さい金属が、表面に付着した繊維からなる布材であることを特徴とする。
殺菌性繊維層(I)4を構成する「第一繊維層6」と「第二繊維層7」とは、各々が一層以上の層数を有し、これらが積層した状態であればよい。そのため、「第一繊維層6」と「第二繊維層7」とは、互いに異なる層数とすることもできる。また、殺菌性繊維層(I)4における「第一繊維層6」と「第二繊維層7」との積層の順序は、特に限定されない。例えば、「第一繊維層6と第二繊維層7とを交互に繰り返し積層する。」、「第一繊維層6、第二繊維層7、第一繊維層6の順に3層を積層する。」、「第一繊維層6、第二繊維層7、第二繊維層7、第一繊維層6の順に4層を積層する。」等の「第一繊維層6」と「第二繊維層7」とが接触した状態を維持している限り、何ら限定はない。
(b)殺菌性繊維層(I)を構成する第一繊維層及び第二繊維層の金属成分付着量
殺菌性繊維層(I)は、任意の枚数の第一繊維層及び第二繊維層を重ね合わせて得られるものであり、各繊維層が以下の金属成分付着量を備えていることが好ましい。
殺菌性繊維層(I)は、任意の枚数の第一繊維層及び第二繊維層を重ね合わせて得られるものであり、各繊維層が以下の金属成分付着量を備えていることが好ましい。
なお、第一繊維層及び第二繊維層が含有する金属成分の組合せとしては、第一繊維層が銅を含有する場合には、第二繊維層が含有する金属成分は銅よりもイオン化傾向が小さい銀又は金であることが好ましく、第一繊維層が銀を含有する場合には、第二繊維層が含有する金属成分は銀よりもイオン化傾向が小さい金であることが好ましい。そのため、以下の金属成分付着量については、各実施形態ごとに順に説明する。
<殺菌性繊維層(I)-1>
第一繊維層の銅付着量: 第一繊維層が含有する金属成分が銅である場合、第一繊維層6における銅の付着量は、89g/m2~890mg/m2の範囲内であることが好ましい。ここで、銅の付着量が89mg/m2未満の場合には、殺菌性等の能力が低下するとともに、衛生マスクとしての使用寿命が短命化し、繰り返し使用が困難となるため好ましくない。一方、銅の付着量が890mg/m2を超えても、殺菌性等の能力が飽和して単なる資源の無駄遣いとなり、布材としてのフレキシビリティも低下する傾向にあるため好ましくない。例えば、銅の付着量が大きくなり布材表面に対する銅の厚さが0.2μm以上になると、布材の柔軟性は低くなる場合がある。なお、ここで述べておくが、布材を構成する繊維に付着した銅は、繊維表面の全面を均一に被覆している必要はなく、分散して不均一に存在していてもかまわない。
第一繊維層の銅付着量: 第一繊維層が含有する金属成分が銅である場合、第一繊維層6における銅の付着量は、89g/m2~890mg/m2の範囲内であることが好ましい。ここで、銅の付着量が89mg/m2未満の場合には、殺菌性等の能力が低下するとともに、衛生マスクとしての使用寿命が短命化し、繰り返し使用が困難となるため好ましくない。一方、銅の付着量が890mg/m2を超えても、殺菌性等の能力が飽和して単なる資源の無駄遣いとなり、布材としてのフレキシビリティも低下する傾向にあるため好ましくない。例えば、銅の付着量が大きくなり布材表面に対する銅の厚さが0.2μm以上になると、布材の柔軟性は低くなる場合がある。なお、ここで述べておくが、布材を構成する繊維に付着した銅は、繊維表面の全面を均一に被覆している必要はなく、分散して不均一に存在していてもかまわない。
第二繊維層の銀付着量: 第一繊維層が含有する金属成分が銅である場合、第二繊維層7における「銅よりもイオン化傾向が小さい金属である銀」の付着量は、105mg/m2~1,050mg/m2の範囲内であることが好ましい。ここで、銅よりもイオン化傾向が小さい銀の付着量が105mg/m2未満の場合には、前述の銅成分と局部電池を形成し、銅のイオン化を促進することが困難となり、殺菌性等の能力が不足するため好ましくない。一方、「銅よりもイオン化傾向が小さい金属である銀」の付着量が1,050mg/m2を超えても、銅のイオン化の促進効果が飽和し殺菌性等の効果も向上せず、布材としてのフレキシビリティも損なわれるため好ましくない。
なお、この布材を構成する繊維に付着した銀も、繊維表面の全面を均一に被覆している必要はなく、分散して不均一に存在していてもかまわない。
なお、この布材を構成する繊維に付着した銀も、繊維表面の全面を均一に被覆している必要はなく、分散して不均一に存在していてもかまわない。
第二繊維層の金付着量: 第一繊維層が含有する金属成分が銅である場合、第二繊維層7における「銅よりもイオン化傾向が小さい金属である金」の付着量は、38.6mg/m2~386mg/m2の範囲内であることが好ましい。ここで、「銅よりもイオン化傾向が小さい金」の付着量が38.6mg/m2未満の場合には、前述の銅成分と局部電池を形成し、銅のイオン化を促進することが困難となり、殺菌性等の能力が不足するため好ましくない。一方、「銅よりもイオン化傾向が小さい金属である金」の付着量が386mg/m2を超えても、銅のイオン化の促進効果が飽和し殺菌性等の効果も向上せず、単なる資源の無駄遣いとなるため好ましくない。なお、この布材を構成する繊維に付着した金も、繊維表面の全面を均一に被覆している必要はなく、分散して不均一に存在していてもかまわない。
<殺菌性繊維層(I)-2>
第一繊維層の銀付着量: 第一繊維層が含有する金属成分が銀である場合、第一繊維層6における銀の付着量は、105mg/m2~1,050mg/m2の範囲内であることが好ましい。ここで、銀の付着量が105mg/m2未満の場合には、殺菌性等の能力が低下するとともに、衛生マスクとしての使用寿命が短命化し、繰り返し使用が困難となるため好ましくない。一方、銀の付着量が1,050mg/m2を超えても、殺菌性等の能力が飽和して単なる資源の無駄遣いとなり、布材としてのフレキシビリティも低下する傾向にあるため好ましくない。なお、布材を構成する繊維に付着した銀も、繊維表面の全面を均一に被覆している必要はなく、分散して不均一に存在していてもかまわない。
第一繊維層の銀付着量: 第一繊維層が含有する金属成分が銀である場合、第一繊維層6における銀の付着量は、105mg/m2~1,050mg/m2の範囲内であることが好ましい。ここで、銀の付着量が105mg/m2未満の場合には、殺菌性等の能力が低下するとともに、衛生マスクとしての使用寿命が短命化し、繰り返し使用が困難となるため好ましくない。一方、銀の付着量が1,050mg/m2を超えても、殺菌性等の能力が飽和して単なる資源の無駄遣いとなり、布材としてのフレキシビリティも低下する傾向にあるため好ましくない。なお、布材を構成する繊維に付着した銀も、繊維表面の全面を均一に被覆している必要はなく、分散して不均一に存在していてもかまわない。
第二繊維層の金付着量: 第一繊維層が含有する金属成分が銀である場合、第二繊維層7における「銀よりもイオン化傾向が小さい金属である金」の付着量は、38.6mg/m2~386mg/m2の範囲内であることが好ましい。ここで、「銀よりもイオン化傾向が小さい金」の付着量が38.6mg/m2未満の場合には、前述の銀成分と局部電池を形成し、銀のイオン化を促進することが困難となり、殺菌性等の能力が不足するため好ましくない。一方、「銀よりもイオン化傾向が小さい金属である金」の付着量が386mg/m2を超えても、銀のイオン化の促進効果が飽和し殺菌性等の効果も向上せず、単なる資源の無駄遣いとなるため好ましくない。なお、この布材を構成する繊維に付着した金も、繊維表面の全面を均一に被覆している必要はなく、分散して不均一に存在していてもかまわない。
(c)第一繊維層及び第二繊維層の形成方法
第一繊維層と第二繊維層との形成方法は、「織布タイプ又は不織布タイプのいずれかの布材の状態で構成繊維の表面に金属を付着させる方法」と、「繊維の段階で表面に金属を付着させ、この繊維を用いて織布タイプ又は不織布タイプのいずれかの布材とする方法」とに大別できる。これらの方法に関しては、「銅を含有する第一繊維層」及び「銀を含有する第一繊維層又は第二繊維層」を形成する場合には、無電解めっき法を用いることが好ましい。そして、この場合の無電解めっき法の特徴としては、無電解めっき前に慣用される触媒(例えば、パラジウム触媒)付与を行わないという点にある。
第一繊維層と第二繊維層との形成方法は、「織布タイプ又は不織布タイプのいずれかの布材の状態で構成繊維の表面に金属を付着させる方法」と、「繊維の段階で表面に金属を付着させ、この繊維を用いて織布タイプ又は不織布タイプのいずれかの布材とする方法」とに大別できる。これらの方法に関しては、「銅を含有する第一繊維層」及び「銀を含有する第一繊維層又は第二繊維層」を形成する場合には、無電解めっき法を用いることが好ましい。そして、この場合の無電解めっき法の特徴としては、無電解めっき前に慣用される触媒(例えば、パラジウム触媒)付与を行わないという点にある。
一方、「金を含有する第二繊維層」を形成する場合には、マグネトロンスパッタリング法又は金ナノ粒子溶液への浸漬法を用いることが好ましい。第二繊維層における好適な金の含有量は、前述のとおり銅又は銀に比べてより少ない量であるため、構成繊維等の表面へのより精密な析出量調整が必要となり、当該調整がより容易なこれらの方法が好適なためである。以下では、無電解めっき法、マグネトロンスパッタリング法及び金ナノ粒子溶液への浸漬法の順に、各形成方法について説明する。
<無電解めっき法>
(c-1)布材の状態で構成繊維の表面に金属(銅又は銀)を付着させる方法
この方法は、以下のような工程により、布材に対して直接めっきを行うものである。以下、工程を列挙し説明する。
(c-1)布材の状態で構成繊維の表面に金属(銅又は銀)を付着させる方法
この方法は、以下のような工程により、布材に対して直接めっきを行うものである。以下、工程を列挙し説明する。
めっき前の準備工程: 布材を、布材の弾性範囲内における一定の張力を付与した状態で保持できる枠体治具に装着する。この枠体治具は、「布材に均一な張力を付加した状態で保持するもの」であり、例えば、四角の布材の外縁を把持する枠体治具等である。このとき、無電解めっき液浸漬工程の前に、予め布材表面に低圧水銀灯等を用いて紫外線を照射してもよい。布材の構成繊維に1分開~5分開の紫外線照射を行うと、繊維表面に対する無電解めっき液の濡れ性が上がり、より均一に銅又は銀を付与することができるためである。
無電解めっき液浸漬工程: 無電解めっき液として用いるのは、無電解銅めっき液、無電解銀めっき液のいずれかである。そして、この無電解銅めっき液、無電解銀めっき液の組成に関しては、特段の限定はない。この無電解めっき液の場合、還元剤成分を含まないものを用いる。銅の場合には還元剤成分を含まない硫酸銅系無電解めっき液等、銀の場合には還元剤成分を含まない硝酸銀系無電解めっき液等を用いることができる。この無電解めっき液の中に、枠体治具に装着した布材を浸漬し、布材に当該無電解めっき液を含浸させる。その後、枠体治具に装着したまま布材を、無電解めっき液中から引き上げ、十分に液切りを行う。
還元剤含有水溶液浸漬工程: 無電解めっき液に浸漬した後の枠体治具に装着した布材を、還元剤含有水溶液に浸漬し、布材を構成する繊維の表面に銅又は銀を析出させる。還元剤水溶液に浸漬あるいは塗布した後は、枠体治具に装着したまま布材を、還元剤含有水溶液中から引き上げ、液切りを行い、水洗し、十分に乾燥させる。以上のようにして、銅を析出させたものが第一繊維層を構成する布材となり、銀を析出させたものが第一繊維層又は第二繊維層を構成する布材となる。このときの還元剤水溶液に関しては、銅及び銀を還元析出可能である限り、特段の限定はなく、トリメチルアミンボランを含む水溶液等を用いることができる。なお、図4~図6に、布材を構成する繊維表面に銅又は銀を付着させる前後の不織布の走査型電子顕微鏡観察像を示している。
(c-2)繊維の状態で表面に金属(銅又は銀)を付着させ布材を得る方法
この方法は、以下のような工程により、繊維の状態で表面に金属を付着させた状態とし、事後的に布材に加工するものである。以下、工程を列挙し説明するが、上述の製造方法と重複する記載に関しては、二重記載を避けるため省略する。
この方法は、以下のような工程により、繊維の状態で表面に金属を付着させた状態とし、事後的に布材に加工するものである。以下、工程を列挙し説明するが、上述の製造方法と重複する記載に関しては、二重記載を避けるため省略する。
めっき前の準備工程: 繊維を、弾性範囲内における一定の張力を付与した状態で保持できる枠体治具に装着する。この枠体治具は、繊維に均一な張力を付加した状態で保持するものであり、例えば、矩形の枠体(以下、単に「繊維保持枠体」と称する。)からなる治具に繊維を伸長させながら巻き付けることにより行うことができる。繊維を上記治具に巻き付ける際、繊維同士が重なっていると金属皮膜が成膜できない部分が生じることがあり好ましくない。
無電解めっき液浸漬工程: 無電解めっき液の中に、繊維保持枠体に装着した繊維を浸漬し、繊維に当該無電解めっき液を含浸させる。その後、繊維保持枠体に装着したまま繊維を、無電解めっき液中から引き上げ、十分に液切りを行う。なお、無電解めっき液に関する概念は、上述と同様であるため記載を省略する。
還元剤含有水溶液浸漬工程: 無電解めっき液に浸漬した後の繊維保持枠体に装着した繊維を、還元剤含有水溶液に浸漬あるいは塗布し、繊維の表面に銅又は銀を析出させる。還元剤水溶液に浸漬あるいは塗布した後は、繊維保持枠体に装着したまま繊維を、還元剤含有水溶液中から引き上げ、液切りを行い、水洗し、十分に乾燥させる。以上のようにして、銅を析出させた銅付着繊維、銀を析出させた銀付着繊維を得る。なお、還元剤水溶液に関する概念は、上述と同様であるため記載を省略する。
布化工程: この工程では、上述の「銅を析出させた銅付着繊維」と「銀を析出させた銀付着繊維」とを用いて、「銅が付着した繊維からなる布材(第一繊維層6)」と「銀が付着した繊維からなる布材(第一繊維層6又は第二繊維層7)」とに織る工程である。このときの織りの方法は、従来の布材の製造方法のすべての使用が可能であり、結果的に織布又は不織布のいずれかの状態にできる限り、特段の限定はない。なお、一旦、布材とした後に、表面に金属成分の付着した繊維の変形を防止し、布材としての形状の安定化を図るため、当該布材を加熱板に挟み込んで、繊維の劣化を引き起こさない程度の短時間加熱を行い、金属の付着した繊維同士を融着させることも好ましい。このときの短時間加熱の方法は、高温プレス法、高周波加熱、大電流の瞬間的通電等の方法を採用することが好ましい。
<マグネトロンスパッタリング法>
(c-1)布材の状態で構成繊維の表面に金を付着させる方法
この方法は、以下のような工程により、布材に対して直接マグネトロンスパッタリングを行うものである。以下、工程を列挙し説明するが、上述の製造方法と重複する記載に関しては、二重記載を避けるため省略する。
(c-1)布材の状態で構成繊維の表面に金を付着させる方法
この方法は、以下のような工程により、布材に対して直接マグネトロンスパッタリングを行うものである。以下、工程を列挙し説明するが、上述の製造方法と重複する記載に関しては、二重記載を避けるため省略する。
マグネトロンスパッタリング前の準備工程: 当該工程は、上述の「無電解めっき法」における(c-1)の「めっき前の準備工程」と同様である。そのため、当該工程については、記載を省略する。
マグネトロンスパッタリング工程: マグネトロンスパッタリング法のターゲット材料は金である。そして、このマグネトロンスパッタリング法の条件には周知のものを用いればよく、特段の限定はない。例えば、市販のマグネトロンスパッタリング装置の中に、枠体治具に装着した布材を固定し、これと対向する位置に金ターゲットを配置する。そして、真空度18Pa~20Paの空気中で、イオン化電圧1.8kV~2.0kV、イオン化電流0.13mA/cm2付近にて、直流電圧を2秒間~20秒間印加することにより、構成繊維の表面に金を析出させたものが第二繊維層を構成する布材となる。
(c-2)繊維の状態で表面に金を付着させ布材を得る方法
この方法は、以下のような工程により、繊維の状態で表面に金を付着させた状態とし、事後的に布材に加工するものである。以下、工程を列挙し説明するが、上述の製造方法と重複する記載に関しては、二重記載を避けるため省略する。
この方法は、以下のような工程により、繊維の状態で表面に金を付着させた状態とし、事後的に布材に加工するものである。以下、工程を列挙し説明するが、上述の製造方法と重複する記載に関しては、二重記載を避けるため省略する。
マグネトロンスパッタリング前の準備工程: 当該工程は、上述の「無電解めっき法」における(c-2)の「めっき前の準備工程」と同様である。そのため、当該工程については、記載を省略する。
マグネトロンスパッタリング工程: マグネトロンスパッタリング装置内に、繊維保持枠体に装着した繊維を固定し、これと対向する位置に金ターゲットを配置して、繊維保持枠体と金ターゲットとの間に所定の電圧を印加する。以上のようにして、金を析出させた金付着繊維を得る。なお、マグネトロンスパッタリングに関する概念は、上述と同様であるため記載を省略する。
布化工程: この工程では、上述の「金を析出させた金付着繊維」を用いて、「金が付着した繊維からなる布材(第二繊維層7)」に織る工程である。なお、当該工程は、上述の「無電解めっき法」における(c-2)の「布化工程」と同様である。そのため、当該工程については、記載を省略する。
<金ナノ粒子溶液への浸漬法>
(c-1)布材の状態で構成繊維の表面に金を付着させる方法
この方法は、以下のような工程により、布材に対して直接金ナノ粒子溶液への浸漬を行うものである。以下、工程を列挙し説明するが、上述の製造方法と重複する記載に関しては、二重記載を避けるため省略する。
(c-1)布材の状態で構成繊維の表面に金を付着させる方法
この方法は、以下のような工程により、布材に対して直接金ナノ粒子溶液への浸漬を行うものである。以下、工程を列挙し説明するが、上述の製造方法と重複する記載に関しては、二重記載を避けるため省略する。
金ナノ粒子溶液への浸漬前の準備工程: 当該工程は、上述の「無電解めっき法」における(c-1)の「めっき前の準備工程」と同様である。そのため、当該工程については、記載を省略する。
金ナノ粒子溶液の調製工程: 金ナノ粒子溶液は、ソリューションプラズマ法等を用いて調整することができる。例えば、塩化金酸溶液に塩酸等を加えてpHを調整し、これをプラズマリアクター内に注ぎ入れる。液温を30℃~36℃に制御しながら、交流200kHzで1200V程度の電圧を印加すると、金ナノ粒子溶液を得ることができる。例えば、塩化金酸溶液と塩酸水溶液とを接触させて、pH2.9~3.2とし、電気伝導率27.0~28.0mS/mの条件で電圧を印加すると、金粒径が40nm~50nmの金ナノ粒子溶液が調整できる。また、塩化金酸溶液とクエン酸水溶液とを接触させて、pH3.0付近とし、電気伝導率0.32mS/m付近の条件で電圧を印加すると、金粒径が30nm~50nmの金ナノ粒子溶液が調整できる。そして、塩化金酸溶液と苛性ソーダ(水酸化ナトリウム水溶液)とを接触させて、pH6.9~7.5付近とし、電気伝導率13.37mS/m付近の条件で電圧を印加すると、金粒径が50nm~80nmの金ナノ粒子溶液が調整できる。更に、塩化金酸溶液と苛性ソーダ(水酸化ナトリウム水溶液)とを接触させて、pH11.0~11.7とし、電気伝導率28.0~58.0mS/mの条件で電圧を印加すると、金粒径が15nm~20nmの金ナノ粒子溶液が調整できる。
金ナノ粒子溶液への浸漬工程: 金ナノ粒子溶液の中に、枠体治具に装着した布材を含浸した後、十分に液切り及び水洗を行い、乾燥することにより、構成繊維の表面に金を析出させたものが第二繊維層を構成する布材となる。
(c-2)繊維の状態で表面に金を付着させ布材を得る方法
この方法は、以下のような工程により、繊維の状態で表面に金を付着させた状態とし、事後的に布材に加工するものである。以下、工程を列挙し説明するが、上述の製造方法と重複する記載に関しては、二重記載を避けるため省略する。
この方法は、以下のような工程により、繊維の状態で表面に金を付着させた状態とし、事後的に布材に加工するものである。以下、工程を列挙し説明するが、上述の製造方法と重複する記載に関しては、二重記載を避けるため省略する。
金ナノ粒子溶液への浸漬前の準備工程: 当該工程は、上述の「無電解めっき法」における(c-2)の「めっき前の準備工程」と同様である。そのため、当該工程については、記載を省略する。
金ナノ粒子溶液への浸漬工程: 金ナノ粒子溶液の中に、繊維保持枠体に装着した繊維を2分間~5分間含浸した後、十分に水洗して乾燥する。以上のようにして、金を析出させた金付着繊維を得る。なお、金ナノ粒子溶液の概念は、上述と同様であるため記載を省略する。
布化工程: この工程では、上述の「金を析出させた金付着繊維」を用いて、「金が付着した繊維からなる布材(第二繊維層7)」に織る工程である。なお、当該工程は、上述の「無電解めっき法」における(c-2)の「布化工程」と同様である。そのため、当該工程については、記載を省略する。
2-3.殺菌性繊維層(II)
(a)殺菌性繊維層(II)の構成
殺菌性繊維層(II)9は、「銅及び銅よりもイオン化傾向が小さい金属(銀又は金)」又は「銀及び銀よりもイオン化傾向が小さい金属(金)」を含む布材(以下、単に「異種成分併有布材」と称する。)を用い、この任意枚数を積層したものである。そして、殺菌性繊維層(II)9を構成する「異種成分併有布材」は一層で用いても、一層以上の複数層として用いても構わない。
(a)殺菌性繊維層(II)の構成
殺菌性繊維層(II)9は、「銅及び銅よりもイオン化傾向が小さい金属(銀又は金)」又は「銀及び銀よりもイオン化傾向が小さい金属(金)」を含む布材(以下、単に「異種成分併有布材」と称する。)を用い、この任意枚数を積層したものである。そして、殺菌性繊維層(II)9を構成する「異種成分併有布材」は一層で用いても、一層以上の複数層として用いても構わない。
(b)殺菌性繊維層(II)を構成する異種成分併有布材の金属成分付着量
殺菌性繊維層(II)は、任意の枚数の異種成分併有布材で構成されるものである。この異種成分併有布材は、以下の金属成分付着量を備えている。異種成分併有布材の場合、同一の布材の中に銅及び銀、銅及び金、銀及び金の何れかが併存するため、これらの成分は近接した位置にある。
殺菌性繊維層(II)は、任意の枚数の異種成分併有布材で構成されるものである。この異種成分併有布材は、以下の金属成分付着量を備えている。異種成分併有布材の場合、同一の布材の中に銅及び銀、銅及び金、銀及び金の何れかが併存するため、これらの成分は近接した位置にある。
<殺菌性繊維層(II)-1>
異種成分併有布材の銅付着量: 同一の布材の中に銅と銀又は金とが併存する場合、銅付着量は、89mg/m2~890mg/m2の範囲内であることが好ましい。ここで、銅の付着量が89mg/m2未満の場合には、銅成分が過少となり、殺菌能力が低下するため好ましくない。一方、銅の付着量が890mg/m2を超えると、同一の布材に併存させる銀又は金の分布状態を良好な状態とできなくなるため、むしろ殺菌能力が低下する等の不具合が生じるため好ましくない。
異種成分併有布材の銅付着量: 同一の布材の中に銅と銀又は金とが併存する場合、銅付着量は、89mg/m2~890mg/m2の範囲内であることが好ましい。ここで、銅の付着量が89mg/m2未満の場合には、銅成分が過少となり、殺菌能力が低下するため好ましくない。一方、銅の付着量が890mg/m2を超えると、同一の布材に併存させる銀又は金の分布状態を良好な状態とできなくなるため、むしろ殺菌能力が低下する等の不具合が生じるため好ましくない。
異種成分併有布材の銀付着量: 同一の布材の中に銅と銀とが併存する場合、銀の付着量は、105mg/m2~1,050mg/m2の範囲内であることが好ましい。ここで、銀の付着量が105mg/m2未満の場合には、前述の銅のイオン化を促進することが困難で殺菌性等の能力が低下するため好ましくない。一方、銀の付着量が1,050mg/m2を超えても、併存する銅の存在量が低下し、殺菌性等の効果も低下するため好ましくない。
異種成分併有布材の金付着量: 同一の布材の中に銅と金とが併存する場合、金の付着量は、38.6mg/m2~386mg/m2の範囲内であることが好ましい。ここで、金の付着量が38.6mg/m2未満の場合には、前述の銅のイオン化を促進することが困難で殺菌性等の能力が低下するため好ましくない。一方、金の付着量が386mg/m2を超えても、併存する銅の存在量が低下し、殺菌性等の効果も低下するため好ましくない。
<殺菌性繊維層(II)-2>
異種成分併有布材の銀付着量: 同一の布材の中に銀と金とが併存する場合、銀の付着量は、105mg/m2~1,050mg/m2の範囲内であることが好ましい。ここで、銀の付着量が105mg/m2未満の場合には、銀成分が過少となり、殺菌能力が低下するため好ましくない。一方、銀の付着量が1,050mg/m2を超えると、同一の布材に併存させる金の分布状態を良好な状態とできなくなるため、むしろ殺菌能力が低下する等の不具合が生じるため好ましくない。
異種成分併有布材の銀付着量: 同一の布材の中に銀と金とが併存する場合、銀の付着量は、105mg/m2~1,050mg/m2の範囲内であることが好ましい。ここで、銀の付着量が105mg/m2未満の場合には、銀成分が過少となり、殺菌能力が低下するため好ましくない。一方、銀の付着量が1,050mg/m2を超えると、同一の布材に併存させる金の分布状態を良好な状態とできなくなるため、むしろ殺菌能力が低下する等の不具合が生じるため好ましくない。
異種成分併有布材の金付着量: 同一の布材の中に銀と金とが併存する場合、金の付着量は、38.6mg/m2~386mg/m2の範囲内であることが好ましい。ここで、金の付着量が38.6mg/m2未満の場合には、前述の銀のイオン化を促進することが困難で殺菌性等の能力が低下するため好ましくない。一方、金の付着量が386mg/m2を超えても、併存する銀の存在量が低下し、殺菌性等の効果も低下するため好ましくない。
また、異種成分併有布材の銅付着量と銀付着量との存在割合は、[銅付着量(mg/m2)]/[銀付着量(mg/m2)]=0.5~1.2(以下、この指標を単に「成分存在割合」と称する。)であることが好ましい。この成分存在割合が0.5未満の場合には、銀に対する銅の存在量が少なく、繰り返し使用が困難となり、十分な殺菌能力を発揮する期間が短命化するため好ましくない。一方、この成分存在割合が1.2を超える場合には、銅に対する銀の存在量が低下し、銅のイオン化を促進することができなくなるため好ましくない。
異種成分併有布材の銅付着量と金付着量との存在割合は、[銅付着量(mg/m2)]/[金付着量(mg/m2)]=1.8~2.7(以下、この指標も単に「成分存在割合」と称する。)であることが好ましい。この成分存在割合が1.8未満の場合には、金に対する銅の存在量が少なく、繰り返し使用が困難となり、十分な殺菌能力を発揮する期間が短命化するため好ましくない。一方、この成分存在割合が2.7を超える場合には、銅に対する金の存在量が低下し、銅のイオン化を促進することができなくなるため好ましくない。
異種成分併有布材の銀付着量と金付着量との存在割合は、[銀付着量(mg/m2)]/[金付着量(mg/m2)]=2.4~3.1(以下、この指標も単に「成分存在割合」と称する。)であることが好ましい。この成分存在割合が2.4未満の場合には、金に対する銀の存在量が少なく、繰り返し使用が困難となり、十分な殺菌能力を発揮する期間が短命化するため好ましくない。一方、この成分存在割合が3.1を超える場合には、銀に対する金の存在量が低下し、銀のイオン化を促進することができなくなるため好ましくない。
(c)異種成分併有布材の形成方法
この異種成分併有布材も「織布タイプ又は不織布タイプのいずれかの布材の状態で構成繊維の表面に金属を付着させる方法」、「繊維の段階で表面に金属を付着させ、この繊維を用いて織布タイプ又は不織布タイプのいずれかの布材とする方法」を採用することができる。これらの方法に関しては、異種成分併有布材に対して銅又は銀を含ませる場合には、無電解めっき法を用いることが好ましい。
この異種成分併有布材も「織布タイプ又は不織布タイプのいずれかの布材の状態で構成繊維の表面に金属を付着させる方法」、「繊維の段階で表面に金属を付着させ、この繊維を用いて織布タイプ又は不織布タイプのいずれかの布材とする方法」を採用することができる。これらの方法に関しては、異種成分併有布材に対して銅又は銀を含ませる場合には、無電解めっき法を用いることが好ましい。
一方、異種成分併有布材に対して金を含ませる場合には、マグネトロンスパッタリング法又は金ナノ粒子溶液への浸漬法を用いることが好ましい。以下では、無電解めっき法、マグネトロンスパッタリング法及び金ナノ粒子溶液への浸漬法の順に、各形成方法について説明する。
<無電解めっき法>
(c-1)布材の状態で構成繊維の表面に金属(銅又は銀)を付着させる方法
この方法は、以下のような工程により、布材に対して直接めっきを行うものである。そして、異種成分併有布材の場合、同一の布材の中に銅と銀とを併存させる必要がある。以下、工程を列挙し説明する。
(c-1)布材の状態で構成繊維の表面に金属(銅又は銀)を付着させる方法
この方法は、以下のような工程により、布材に対して直接めっきを行うものである。そして、異種成分併有布材の場合、同一の布材の中に銅と銀とを併存させる必要がある。以下、工程を列挙し説明する。
めっき前の準備工程: 布材を、枠体治具に装着する点においては、上述と同様である。よって、ここでの詳説は省略する。
無電解銀めっき液浸漬工程: 無電解銀めっき液として用いるのも、上述と同様である。よって、ここでのめっき液に関する詳説は省略する。枠体治具に装着した布材を無電解銀めっき液に浸漬し、布材に当該無電解銀めっき液を含浸させる。その後、枠体治具に装着したまま布材を、無電解銀めっき液中から引き上げ、十分に液切りを行う。
銀還元剤含有水溶液浸漬工程: 無電解銀めっき液に浸漬した後の枠体治具に装着した布材を、銀還元剤含有水溶液に浸漬あるいは塗布し、布材を構成する繊維の表面に銀を析出させる。その後、枠体治具に装着したまま布材を、銀還元剤含有水溶液中から引き上げ、液切りを行い、水洗し、十分に乾燥させる。
無電解銅めっき液浸漬工程: 無電解銅めっき液として用いるのも、上述と同様である。よって、ここでのめっき液に関する詳説は省略する。枠体治具に装着した銀を析出させた布材を無電解銅めっき液に浸漬し、布材に当該無電解銅めっき液を含浸させる。その後、枠体治具に装着したまま布材を、無電解銅めっき液中から引き上げ、十分に液切りを行う。
銅還元剤含有水溶液浸漬工程: 無電解銅めっき液に浸漬した後の枠体治具に装着した布材を、銅還元剤含有水溶液に浸漬し、布材を構成する繊維の表面に銅を析出させ、銅と銀とが繊維表面に併存した状態とする。その後、枠体治具に装着したまま布材を、銅還元剤含有水溶液中から引き上げ、液切りを行い、水洗し、十分に乾燥させる。以上のめっき方法を採用した場合、めっき後の布材を加熱板に挟み込んで、繊維の劣化を引き起こさない程度の短時間加熱を行い、金属の付着した繊維同士を融着させると同時に、銅と銀との相互拡散を促すことも好ましい。このときの短時間加熱の方法は、上述と同様である。
(c-2)繊維の状態で表面に金属(銅及び銀)を付着させ布材を得る方法
この方法は、上述の方法で得られた「銅を析出させた銅付着繊維」、「銀を析出させた銀付着繊維」を用いている。
この方法は、上述の方法で得られた「銅を析出させた銅付着繊維」、「銀を析出させた銀付着繊維」を用いている。
布化工程では、上述の「銅を析出させた銅付着繊維」及び「銀を析出させた銀付着繊維」を用いる。例えば、「銅を析出させた銅付着繊維」を縦糸に用い、「銀を析出させた銀付着繊維」を横糸として用いて織布を得る。「銅を析出させた銅付着繊維」と、「銀を析出させた銀付着繊維」とを混合して用いて不織布とする等である。かかる場合も布材を加熱板に挟み込んで、繊維の劣化を引き起こさない程度の短時間加熱を行い、金属の付着した繊維同士を融着させると同時に、銅と銀との相互拡散を促すことも好ましい。このときの短時間加熱の方法は、上述と同様である。
(d)その他のめっき方法
触媒を用いない形成方法に対して、触媒を用いる方法も使用することが可能である。この触媒を用いる方法としては、従来のいかなる触媒を使用した方法も使用することが可能であり、特段の限定は要さない。これは、上述の殺菌性繊維層(I)における「第一繊維層及び第二繊維層の形成方法」においても同じである。以下に、念のために、触媒を使用する方法を簡単に述べておく。
触媒を用いない形成方法に対して、触媒を用いる方法も使用することが可能である。この触媒を用いる方法としては、従来のいかなる触媒を使用した方法も使用することが可能であり、特段の限定は要さない。これは、上述の殺菌性繊維層(I)における「第一繊維層及び第二繊維層の形成方法」においても同じである。以下に、念のために、触媒を使用する方法を簡単に述べておく。
めっき前の準備工程: ここでのめっき対象は、上述の布材及び繊維の双方である。従って、ここでは、単に「被めっき対象物」と称する。布材及び繊維に対する張力付与は上述と同様であるため、ここでの説明は省略する。
触媒付与(キャタライザー)工程: 触媒(例えば、パラジウム及びスズのコロイド触媒等である。)を被めっき対象物の表面に吸着させる。このコロイド触媒溶液は、キャタライザーとして市販されているものを用いることもできる。触媒付与は、「被めっき対象物を当該コロイド触媒を浴成分として含む溶液に浸漬することによって行う方法」、「被めっき対象物をスズ水溶液に浸漬した後にパラジウム水溶液に浸漬する方法」等を採用することができる。なお、被めっき対象物の表面への触媒付与前に、被めっき対象物の表面調整処理(コンディショニング)を行っておくことも、触媒成分(パラジウム)を均一に吸着させるという観点から好ましい。このときの被めっき対象物の表面調整処理は、被めっき対象物を界面活性剤(カチオン系界面活性剤等)を含むコンディショニング溶液に液温25℃~60℃で1分間~20分間浸漬することにより行う等である。
触媒活性化処理工程: 被めっき対象物の表面に吸着しているパラジウムを活性化するためのアクセレーター処理を行う行程である。具体的には、被めっき対象物を濃度が0.1%~10%程度の硫酸に浸漬することで、被めっき対象物の表面に付着しているスズを酸化させてパラジウムを還元し、後述する無電解めっき反応における初期析出を促進する。なお、アクセレーター処理後に、必要に応じて、0.01g/L~1g/Lの塩化パラジウム溶液に浸漬し、無電解めっき反応における初期析出をより均一にするためのアクチベーター処理を採用することも好ましい。
無電解めっき工程: 被めっき対象物の表面に金属皮膜(銅又は銀)を成膜する。触媒を付与した被めっき対象物を、無電解めっき液に浸漬することにより、被めっき対象物の表面に吸着したパラジウム金属を触媒として金属を析出させ金属皮膜を成膜する。その後、被めっき対象物を、無電解めっき液中から引き上げ、十分に液切りを行い乾燥する。このようにして、被めっき対象物の表面に金属成分の付着した繊維又は布材が得られる。
<マグネトロンスパッタリング法>
(c-1)布材の状態で構成繊維の表面に金を付着させる方法
この方法は、以下のような工程により、布材に対して直接マグネトロンスパッタリングを行うものである。そして、異種成分併有布材の場合、同一の布材の中に銅又は銀と金とを併存させる必要がある。以下、工程を列挙し説明する。
(c-1)布材の状態で構成繊維の表面に金を付着させる方法
この方法は、以下のような工程により、布材に対して直接マグネトロンスパッタリングを行うものである。そして、異種成分併有布材の場合、同一の布材の中に銅又は銀と金とを併存させる必要がある。以下、工程を列挙し説明する。
マグネトロンスパッタリング前の準備工程: 無電解銀めっき液又は無電解銀めっき液に浸漬した後の布材を、枠体治具に装着する概念においては、上述と同様である。よって、ここでの詳説は省略する。
マグネトロンスパッタリング工程: 無電解銀めっき液又は無電解銀めっき液に浸漬した後の布材に対して、マグネトロンスパッタリングを行う際の概念も、上述と同様である。よって、ここでのマグネトロンスパッタリングに関する詳説は省略する。枠体治具に装着した布材に対して金ターゲットを用いてマグネトロンスパッタリングを行い、銅又は銀と金とが繊維表面に併存した状態とする。その後、布材に対して行う後処理も、上述と同様である。
(c-2)繊維の状態で表面に金を付着させ布材を得る方法
この方法は、上述の方法で得られた「銅又は銀を析出させた銅又は銀付着繊維」、「金を析出させた金付着繊維」を用いている。
この方法は、上述の方法で得られた「銅又は銀を析出させた銅又は銀付着繊維」、「金を析出させた金付着繊維」を用いている。
布化工程では、上述の「銅を析出させた銅付着繊維」又は「銀を析出させた銀付着繊維」及び「金を析出させた金付着繊維」を用いる。なお、織布の方法及び布化後の後処理は、上述と同様である。
<金ナノ粒子溶液への浸漬法>
(c-1)布材の状態で構成繊維の表面に金を付着させる方法
この方法は、以下のような工程により、布材に対して直接金ナノ粒子溶液への浸漬を行うものである。そして、異種成分併有布材の場合、同一の布材の中に銅又は銀と金とを併存させる必要がある。以下、工程を列挙し説明する。
(c-1)布材の状態で構成繊維の表面に金を付着させる方法
この方法は、以下のような工程により、布材に対して直接金ナノ粒子溶液への浸漬を行うものである。そして、異種成分併有布材の場合、同一の布材の中に銅又は銀と金とを併存させる必要がある。以下、工程を列挙し説明する。
金ナノ粒子溶液への浸漬前の準備工程: 無電解銀めっき液又は無電解銀めっき液に浸漬した後の布材を、枠体治具に装着する概念においては、上述と同様である。よって、ここでの詳説は省略する。
金ナノ粒子溶液への浸漬工程: 無電解銀めっき液又は無電解銀めっき液に浸漬した後の布材に対して、金ナノ粒子溶液への浸漬を行う際の概念も、上述と同様である。よって、ここでの金ナノ粒子溶液への浸漬に関する詳説は省略する。枠体治具に装着した布材を金ナノ粒子溶液の中に浸漬した後、十分に液切り及び水洗を行い、乾燥して、銅又は銀と金とが繊維表面に併存した状態とする。その後、布材に対して行う後処理も、上述と同様である。
(c-2)繊維の状態で表面に金を付着させ布材を得る方法
この方法は、上述の方法で得られた「銅を析出させた銅付着繊維」又は「銀を析出させた銀付着繊維」及び「金を析出させた金付着繊維」を用いている。
この方法は、上述の方法で得られた「銅を析出させた銅付着繊維」又は「銀を析出させた銀付着繊維」及び「金を析出させた金付着繊維」を用いている。
布化工程では、上述の「銅を析出させた銅付着繊維」又は「銀を析出させた銀付着繊維」及び「金を析出させた金付着繊維」を用いる。なお、織布の方法及び布化後の後処理は、上述と同様である。
3.光触媒付繊維層
この光触媒付繊維層5は、繊維表面に光触媒が付着したものであり、繊維表面に付着した汚れや匂い成分等を分解し、殺菌効果を高めるためである。そして、この光触媒付繊維層5は、衛生マスク1を着用したとき、殺菌性繊維層よりも大気側の位置に配するものである。このように光触媒付繊維層5に太陽光が当たりやすいようにする。光触媒は、太陽光に含まれる紫外光又は可視光を吸収し、正孔と電子とを生じ、大気中又は衛生マスク使用者の呼気中の水分に含まれる水酸化物イオン及び酸素分子と各々反応し、ウィルスや細菌に対する殺菌作用を有する活性酸素種(水酸化物ラジカル及びスーパーオキサイドイオン等)を発生させる。
この光触媒付繊維層5は、繊維表面に光触媒が付着したものであり、繊維表面に付着した汚れや匂い成分等を分解し、殺菌効果を高めるためである。そして、この光触媒付繊維層5は、衛生マスク1を着用したとき、殺菌性繊維層よりも大気側の位置に配するものである。このように光触媒付繊維層5に太陽光が当たりやすいようにする。光触媒は、太陽光に含まれる紫外光又は可視光を吸収し、正孔と電子とを生じ、大気中又は衛生マスク使用者の呼気中の水分に含まれる水酸化物イオン及び酸素分子と各々反応し、ウィルスや細菌に対する殺菌作用を有する活性酸素種(水酸化物ラジカル及びスーパーオキサイドイオン等)を発生させる。
ここでいう光触媒としては、二酸化チタンを用いることが好ましい。中でも、光触媒効果を発揮しやすいアナターゼ構造又はルチル構造を有するものがより好ましい。また、衛生マスク1が主に紫外光が少ない屋内で使用する場合を想定すると、光触媒は、可視光で光触媒作用を生じやすくなるように、二酸化チタンに窒素、硫黄、遷移金属元素、ランタノイド系元素、アクチノイド系元素等から選ばれた一種以上の元素をドープした酸化チタン等を用いることも好ましい。これらの光触媒を繊維又は布材の表面に付着させる方法としては、パルスレーザー堆積法、スパッタ法、スプレー法、ディップ法等の公知の方法を用いることができる。
4.フィルター層
このフィルター層8は、繊維表面に金属を付着させていない布材からなり、その布材は、殺菌性繊維層を構成する布材よりも目が細かい(繊維間の隙間である孔径が小さい)ことを特徴とする。そして、フィルター層8は、殺菌性繊維層と、使用者が着用したとき顔側にあたる最外層に配置した外装布との間に配置する。衛生マスク1がフィルター層8を備えるものであると、殺菌性繊維層で殺菌又は捕捉されなかった細菌やウィルスを捕捉することができる。そのため、フィルター層8の平均孔径は、10nm~0.5μmであることが好ましい。ここで、平均孔径が10nm未満の場合には、空気抵抗が大きくなり、衛生マスク1を着用したときに使用者が息苦しく感じるおそれがあるため好ましくない。一方、平均孔径が0.5μmを超えると、細菌やウィルス等の微細な物質がフィルター層8を構成する繊維間の隙間(孔)を通過してしまうため好ましくない。
このフィルター層8は、繊維表面に金属を付着させていない布材からなり、その布材は、殺菌性繊維層を構成する布材よりも目が細かい(繊維間の隙間である孔径が小さい)ことを特徴とする。そして、フィルター層8は、殺菌性繊維層と、使用者が着用したとき顔側にあたる最外層に配置した外装布との間に配置する。衛生マスク1がフィルター層8を備えるものであると、殺菌性繊維層で殺菌又は捕捉されなかった細菌やウィルスを捕捉することができる。そのため、フィルター層8の平均孔径は、10nm~0.5μmであることが好ましい。ここで、平均孔径が10nm未満の場合には、空気抵抗が大きくなり、衛生マスク1を着用したときに使用者が息苦しく感じるおそれがあるため好ましくない。一方、平均孔径が0.5μmを超えると、細菌やウィルス等の微細な物質がフィルター層8を構成する繊維間の隙間(孔)を通過してしまうため好ましくない。
5.衛生マスクの具体的層構成
本件出願にかかる衛生マスクは、その層構成の中に上述の殺菌性繊維層を含むものであり、その殺菌性繊維層の両面に外装布を設けることが好ましい。したがって、衛生マスクは、「外装布/殺菌性繊維層/外装布」の積層形態、「外装布/光触媒付繊維層/殺菌性繊維層/外装布」の積層形態、「光触媒付繊維層/殺菌性繊維層/外装布」の積層形態等を備えるものとなる。衛生マスクが、更にフィルター層を備えるものであると、衛生マスクは、上述のいずれかの積層形態において、殺菌性繊維層と、使用者が着用したとき顔側にあたる最外層に配置した外装布との間にフィルター層を備える積層形態となる。
本件出願にかかる衛生マスクは、その層構成の中に上述の殺菌性繊維層を含むものであり、その殺菌性繊維層の両面に外装布を設けることが好ましい。したがって、衛生マスクは、「外装布/殺菌性繊維層/外装布」の積層形態、「外装布/光触媒付繊維層/殺菌性繊維層/外装布」の積層形態、「光触媒付繊維層/殺菌性繊維層/外装布」の積層形態等を備えるものとなる。衛生マスクが、更にフィルター層を備えるものであると、衛生マスクは、上述のいずれかの積層形態において、殺菌性繊維層と、使用者が着用したとき顔側にあたる最外層に配置した外装布との間にフィルター層を備える積層形態となる。
以下、実施例を挙げて本件出願をより具体的に説明するが、本件出願は当該実施例に限定されるものではない。
以下、第一繊維層及び第二繊維層の形成には、同様の布材を用いている。従って、双方の「めっき前の準備工程」では、ポリプロピレンからなる布材(不織布)を準備した。この布材の弾性範囲内における一定の張力を付与した状態で枠体治具に装着し、市販の低圧水銀灯を用いて5分間の紫外線照射を行った後、後述するめっき操作を行っている。
A.第一繊維層の形成
以下の工程を経て、第一繊維層として用いる銅が付着した布材を得た。以下、工程ごとに説明する。
以下の工程を経て、第一繊維層として用いる銅が付着した布材を得た。以下、工程ごとに説明する。
銅めっき液浸漬工程: 以下に列挙した成分を含有する銅めっき水溶液A1を建浴した。この無電解銅めっき水溶液A1に、枠体治具に装着した「第一繊維層を構成する布材」を1分間浸漬し、布材に銅めっき水溶液を含浸させた。その後、銅めっき水溶液A1から枠体治具ごと布材を引き上げ、液切りを行った。
[無電解銅めっき水溶液A1の組成]
CuSO4・5H2O 280g/L
界面活性剤 適宜
液温 30℃
CuSO4・5H2O 280g/L
界面活性剤 適宜
液温 30℃
還元剤含有水溶液浸漬あるいは塗布工程: その後、枠体治具に装着した布材を、以下に示す還元剤含有水溶液A2に浸漬及び塗布し、布材を構成する繊維の表面に銅を析出させた。還元剤水溶液に浸漬あるいは塗布した後は、枠体治具に装着したまま布材を、還元剤含有水溶液中から引き上げ、液切りを行い、水洗、塗布する場合はその後水洗し、十分に乾燥させた。このようにして、「銅を析出させた第一繊維層」を構成する銅付着量が150mg/m2の布材を得た。
[還元剤含有水溶液A2]
トリメチルアミンボラン(TMAB) 7.3g/L
水酸化ナトリウム 0.04g/L
pH 10
液温 30℃
トリメチルアミンボラン(TMAB) 7.3g/L
水酸化ナトリウム 0.04g/L
pH 10
液温 30℃
B.第二繊維層の形成
以下の工程を経て、第二繊維層として用いる銀が付着した布材を得た。以下、工程ごとに説明する。
以下の工程を経て、第二繊維層として用いる銀が付着した布材を得た。以下、工程ごとに説明する。
無電解銀めっき液浸漬工程: 以下に列挙した成分を含有する銀めっき水溶液B1を建浴した。この銀めっき水溶液B1に、枠体治具に装着した「第二繊維層を構成する布材」を1分間浸漬し、布材に無電解銀めっき水溶液を含浸させた。その後、銀めっき水溶液B1から枠体治具ごと布材を引き上げ、液切りを行った。
[無電解銀めっき液B1]
硝酸銀 60g/L
界面活性剤 適宜
液温 30℃
硝酸銀 60g/L
界面活性剤 適宜
液温 30℃
銀還元剤含有水溶液浸漬あるいは塗布工程: その後、枠体治具に装着した布材を、以下に示す銀還元剤含有水溶液B2に浸漬あるいは塗布し、布材を構成する繊維の表面に銀を析出させた。銀還元剤水溶液に浸漬あるいは塗布した後は、枠体治具に装着したまま布材を、銀還元剤含有水溶液から引き上げ、液切りを行い、水洗、塗布の場合はそのまま水洗し、十分に乾燥させた。このようにして、「銀を析出させた第二繊維層」を構成する銀付着量が340mg/m2の布材を得た。
[銀還元剤含有水溶液B2]
トリメチルアミンボラン(TMAB) 7.3g/L
水酸化ナトリウム 0.04g/L
pH 10
液温 30℃
トリメチルアミンボラン(TMAB) 7.3g/L
水酸化ナトリウム 0.04g/L
pH 10
液温 30℃
C.衛生マスクの製造
ここでは、上述の「繊維の表面に銅を析出させた第一繊維層」と「繊維の表面に銀を析出させた第二繊維層」を用いて、殺菌性繊維層(I)を構成した。このとき殺菌性繊維層(I)は、「一つの第一繊維層と一つの第二繊維層とを重ねて得られたもの」と、「二つの第一繊維層と二つの第二繊維層とを、第一繊維層/第二繊維層/第一繊維層/第二繊維層の順に重ねて得られたもの」の二種類を得た。そして、この殺菌性繊維層(I)の両面に肌触りの良い外装布(不織布)を配置し縫製し、マスクとして必要な耳にかけるための耳掛け部を取り付け、本件出願にかかる2種類の衛生マスクを得た。
ここでは、上述の「繊維の表面に銅を析出させた第一繊維層」と「繊維の表面に銀を析出させた第二繊維層」を用いて、殺菌性繊維層(I)を構成した。このとき殺菌性繊維層(I)は、「一つの第一繊維層と一つの第二繊維層とを重ねて得られたもの」と、「二つの第一繊維層と二つの第二繊維層とを、第一繊維層/第二繊維層/第一繊維層/第二繊維層の順に重ねて得られたもの」の二種類を得た。そして、この殺菌性繊維層(I)の両面に肌触りの良い外装布(不織布)を配置し縫製し、マスクとして必要な耳にかけるための耳掛け部を取り付け、本件出願にかかる2種類の衛生マスクを得た。
この実施例2では、実施例1で得られた第一繊維層と第二繊維層に加えて、「光触媒付繊維層」及び「フィルター層」を用いた衛生マスクを得た。このときの衛生マスクは、使用者が衛生マスクを装着したとき、大気と接触し太陽光の照射を受ける最外層に「光触媒付繊維層5」を、そして、殺菌性繊維層と、使用者が着用したとき使用者の口元と接触する最外層に配置した外装布との間に「フィルター層」を設けたものである。したがって、衛生マスクとしては、「光触媒繊維層/殺菌性繊維層(I)/フィルター層/外装布(不織布)」の層構成を供えている。
ここでいう光触媒繊維層は、窒素をドープしたアナターゼ構造の二酸化チタンを含むコーティング剤を用い、これを不織布に吹き付け、不織布の構成繊維の表面に光触媒成分を定着させたものである。また、フィルター層には、第一繊維層及び第二繊維層と同じポリプロピレンからなる布材(不織布)であって、平均孔径0.5μmのものを用いている。
この実施例では、「銅」と「銅よりもイオン化傾向が小さい金属(銀)」を同時に含む布材(異種成分併有布材)を用いて殺菌性繊維層(II)を構成した。この殺菌性繊維層(II)は、「銅を表面に付着させた繊維」と「銀を表面に付着させた繊維」を用いて、事後的に布材に加工したものである。以下、工程を列挙し説明するが、上述の製造方法と重複する記載に関しては、二重記載を避けるため省略する。
以下、「銅を表面に付着させた繊維」及び「銀を表面に付着させた繊維」を製造するに際し、「めっき前の準備工程」では、ポリプロピレンからなる繊維を準備した。この繊維の弾性範囲内における一定の張力を付与した状態で矩形の枠体治具に装着し、市販の低圧水銀灯を用いて5分間の紫外線照射を行った後、後述するめっき操作を行っている。
A.銅を表面に付着させた繊維の形成
以下の工程を経て、銅を表面に付着させた繊維を得た。以下、工程ごとに説明する。
以下の工程を経て、銅を表面に付着させた繊維を得た。以下、工程ごとに説明する。
無電解銅めっき液浸漬工程: 実施例1と同様の無電解銅めっき水溶液A1を建浴し、枠体治具に装着した繊維を30秒間浸漬し、繊維に無電解銅めっき水溶液を含浸させた。その後、無電解銅めっき水溶液A1から枠体治具ごと繊維を引き上げ、液切りを行った。
硫酸銅含有水溶液浸漬工程: その後、枠体治具に装着した繊維を、実施例1に示す還元剤含有水溶液A2に浸漬し、繊維の表面に銅を析出させた。銅還元剤水溶液に浸漬あるいは塗布した後は、枠体治具に装着したまま繊維を、還元剤含有水溶液中から引き上げ、液切りを行い、水洗し、十分に乾燥させた。このようにして、「銅を表面に付着させた繊維」を得た。
B.銀を表面に付着させた繊維の形成
以下の工程を経て、銀を表面に付着させた繊維を得た。以下、工程ごとに説明する。
以下の工程を経て、銀を表面に付着させた繊維を得た。以下、工程ごとに説明する。
無電解銀めっき液浸漬工程: 実施例1と同様の無電解銀めっき水溶液B1を建浴し、枠体治具に装着した繊維を1分間浸漬し、繊維に無電解銀めっき水溶液を含浸させた。その後、無電解銀めっき水溶液B1から枠体治具ごと繊維を引き上げ、液切りを行った。
銀還元剤含有水溶液浸漬工程: その後、枠体治具に装着した繊維を、実施例1に示す銀還元剤含有水溶液B2に浸漬あるいは塗布し、繊維の表面に銀を析出させた。銀還元剤水溶液に浸漬あるいは塗布した後は、枠体治具に装着したまま繊維を、還元剤含有水溶液中から引き上げ、液切りを行い、水洗し、十分に乾燥させた。このようにして、「銀を表面に付着させた繊維」を得た。
C.布化工程
上述の「銅を析出させた銅付着繊維」及び「銀を析出させた銀付着繊維」を用い、「銅を析出させた銅付着繊維」を縦糸に用い、「銀を析出させた銀付着繊維」を横糸として用いて異種成分併有布材(織布)を得た。この織布は、銅付着量が180mg/m2、銀付着量が340mg/m2、成分存在割合が0.53であった。
上述の「銅を析出させた銅付着繊維」及び「銀を析出させた銀付着繊維」を用い、「銅を析出させた銅付着繊維」を縦糸に用い、「銀を析出させた銀付着繊維」を横糸として用いて異種成分併有布材(織布)を得た。この織布は、銅付着量が180mg/m2、銀付着量が340mg/m2、成分存在割合が0.53であった。
D.衛生マスクの製造
実施例3に係る「異種成分併有布材」を殺菌性繊維層(II)として用いた。このとき殺菌性繊維層(II)の両面に肌触りの良い外装布(不織布)を配置し縫製し、マスクとして必要な耳にかけるための耳掛け部を取り付け、本件出願にかかる衛生マスクを得た。
実施例3に係る「異種成分併有布材」を殺菌性繊維層(II)として用いた。このとき殺菌性繊維層(II)の両面に肌触りの良い外装布(不織布)を配置し縫製し、マスクとして必要な耳にかけるための耳掛け部を取り付け、本件出願にかかる衛生マスクを得た。
この実施例では、「銅」と「銅よりもイオン化傾向が小さい金属(金)」を同時に含む布材(異種成分併有布材)を用いて殺菌性繊維層(II)を構成した。この殺菌性繊維層(II)は、「銅を表面に付着させた繊維」と「金を表面に付着させた繊維」を用いて、事後的に布材に加工したものである。以下、工程を列挙し説明するが、上述の製造方法と重複する記載に関しては、二重記載を避けるため省略する。
以下、「銅を表面に付着させた繊維」及び「金を表面に付着させた繊維」を製造するに際し、「銅めっき前の準備工程」及び「金のマグネトロンスパッタリング前の準備工程」として、ポリプロピレンからなる繊維を準備した。この繊維の弾性範囲内における一定の張力を付与した状態で矩形の枠体治具に装着した。そして、「銅めっき前の準備工程」においては、市販の低圧水銀灯を用いて5分間の紫外線照射を行った後、後述する銅めっき操作を行った。
A.銅を表面に付着させた繊維の形成
以下の工程を経て、銅を表面に付着させた繊維を得た。以下、工程ごとに説明する。
以下の工程を経て、銅を表面に付着させた繊維を得た。以下、工程ごとに説明する。
無電解銅めっき液浸漬工程: 実施例1と同様の無電解銅めっき水溶液A1を建浴し、枠体治具に装着した繊維を30秒間浸漬し、繊維に無電解銅めっき水溶液を含浸させた。その後、無電解銅めっき水溶液A1から枠体治具ごと繊維を引き上げ、液切りを行った。
硫酸銅含有水溶液浸漬工程: その後、枠体治具に装着した繊維を、実施例1に示す還元剤含有水溶液A2に浸漬し、繊維の表面に銅を析出させた。銅還元剤水溶液に浸漬あるいは塗布した後は、枠体治具に装着したまま繊維を、還元剤含有水溶液中から引き上げ、液切りを行い、水洗し、十分に乾燥させた。このようにして、「銅を表面に付着させた繊維」を得た。
B.金を表面に付着させた繊維の形成
以下の工程を経て、金を表面に付着させた繊維を得た。
以下の工程を経て、金を表面に付着させた繊維を得た。
マグネトロンスパッタリング装置(株式会社サンユー電子製のSL-701MC)内に枠体治具に装着した繊維を固定し、その対向面に金ターゲットを配置して、真空度1.9Paの空気中で、イオン化電圧1.9kV、イオン化電流0.13mA/cm2にて直流電圧を枠体治具及び金ターゲット間に10秒間印加した。このようにして、「金を表面に付着させた繊維」を得た。
C.布化工程
上述の「銅を析出させた銅付着繊維」及び「金を析出させた金付着繊維」を用い、「銅を析出させた銅付着繊維」を縦糸に用い、「金を析出させた銀付着繊維」を横糸として用いて異種成分併有布材(織布)を得た。この織布は、銅付着量が180mg/m2、金付着量が78.6mg/m2、成分存在割合が2.29であった。
上述の「銅を析出させた銅付着繊維」及び「金を析出させた金付着繊維」を用い、「銅を析出させた銅付着繊維」を縦糸に用い、「金を析出させた銀付着繊維」を横糸として用いて異種成分併有布材(織布)を得た。この織布は、銅付着量が180mg/m2、金付着量が78.6mg/m2、成分存在割合が2.29であった。
D.衛生マスクの製造
実施例4に係る「異種成分併有布材」を殺菌性繊維層(II)として用いた。このとき殺菌性繊維層(II)の両面に肌触りの良い外装布(不織布)を配置し縫製し、マスクとして必要な耳にかけるための耳掛け部を取り付け、本件出願にかかる衛生マスクを得た。
実施例4に係る「異種成分併有布材」を殺菌性繊維層(II)として用いた。このとき殺菌性繊維層(II)の両面に肌触りの良い外装布(不織布)を配置し縫製し、マスクとして必要な耳にかけるための耳掛け部を取り付け、本件出願にかかる衛生マスクを得た。
この実施例では、「銀」と「銀よりもイオン化傾向が小さい金属(金)」を同時に含む布材(異種成分併有布材)を用いて殺菌性繊維層(II)を構成した。この殺菌性繊維層(II)は、「銀を表面に付着させた繊維」と「金を表面に付着させた繊維」を用いて、事後的に布材に加工したものである。以下、工程を列挙し説明するが、上述の製造方法と重複する記載に関しては、二重記載を避けるため省略する。
以下、「銀を表面に付着させた繊維」及び「金を表面に付着させた繊維」を製造するに際し、「銀めっき前の準備工程」及び「金ナノ粒子溶液への浸漬前の準備工程」では、ポリプロピレンからなる繊維を準備した。この繊維の弾性範囲内における一定の張力を付与した状態で矩形の枠体治具に装着し、市販の低圧水銀灯を用いて5分間の紫外線照射を行った後、後述するめっき操作及び繊維表面への金ナノ粒子付着処理を行っている。
A.銀を表面に付着させた繊維の形成
以下の工程を経て、銀を表面に付着させた繊維を得た。以下、工程ごとに説明する。
以下の工程を経て、銀を表面に付着させた繊維を得た。以下、工程ごとに説明する。
無電解銀めっき液浸漬工程: 実施例1と同様の無電解銀めっき水溶液B1を建浴し、枠体治具に装着した繊維を1分間浸漬し、繊維に無電解銀めっき水溶液を含浸させた。その後、無電解銀めっき水溶液B1から枠体治具ごと繊維を引き上げ、液切りを行った。
銀還元剤含有水溶液浸漬工程: その後、枠体治具に装着した繊維を、実施例1に示す銀還元剤含有水溶液B2に浸漬あるいは塗布し、繊維の表面に銀を析出させた。銀還元剤水溶液に浸漬あるいは塗布した後は、枠体治具に装着したまま繊維を、還元剤含有水溶液中から引き上げ、液切りを行い、水洗し、十分に乾燥させた。このようにして、「銀を表面に付着させた繊維」を得た。
B.金を表面に付着させ金を表面に付着させた繊維を得た。以下、工程ごとに説明する。
金ナノ粒子製造工程: 以下に列挙した成分を含有する金ナノ粒子製造溶液を、ソリューションプラズマ発生リアクター装置(株式会社山本鍍金試験器製)のプラズマリアクター内に注ぎ込み、電気伝導率0.32mS/m、交流200kHzにて1200Vの電圧を10分間印加し、粒径約40nmの金粒子が分散した「金ナノ粒子溶液」を得た。
[金ナノ粒子製造溶液の組成]
塩化金酸溶液 50mg/L
クエン酸水溶液 15g/L
pH 3.0
液温 33℃
塩化金酸溶液 50mg/L
クエン酸水溶液 15g/L
pH 3.0
液温 33℃
繊維表面への金ナノ粒子付着工程: 上述の方法で得た金ナノ粒子溶液の中に、枠体治具に装着した繊維を4分間浸漬した後、金ナノ粒子溶液から枠体治具ごと繊維を引き上げ、十分に液切り及び水洗を行い、乾燥させた。このようにして、「金を表面に付着させた繊維」を得た。
C.布化工程
上述の「銀を析出させた銀付着繊維」及び「金を析出させた金付着繊維」を用い、「銀を析出させた銀付着繊維」を縦糸に用い、「金を析出させた金付着繊維」を横糸として用いて異種成分併有布材(織布)を得た。この織布は、銀付着量が300mg/m2、銀付着量が111mg/m2、成分存在割合が2.70であった。
上述の「銀を析出させた銀付着繊維」及び「金を析出させた金付着繊維」を用い、「銀を析出させた銀付着繊維」を縦糸に用い、「金を析出させた金付着繊維」を横糸として用いて異種成分併有布材(織布)を得た。この織布は、銀付着量が300mg/m2、銀付着量が111mg/m2、成分存在割合が2.70であった。
D.衛生マスクの製造
実施例5に係る「異種成分併有布材」を殺菌性繊維層(II)として用いた。このとき殺菌性繊維層(II)の両面に肌触りの良い外装布(不織布)を配置し縫製し、マスクとして必要な耳にかけるための耳掛け部を取り付け、本件出願にかかる衛生マスクを得た。
実施例5に係る「異種成分併有布材」を殺菌性繊維層(II)として用いた。このとき殺菌性繊維層(II)の両面に肌触りの良い外装布(不織布)を配置し縫製し、マスクとして必要な耳にかけるための耳掛け部を取り付け、本件出願にかかる衛生マスクを得た。
本件出願にかかる衛生マスクは、上述の殺菌性繊維層を備えるため、従来のマスクに比べ、細菌やウィルスに対する抗菌効果及び殺菌効果が期待できる。しかも、本件出願にいう殺菌性繊維層は、従来からある設備を利用して製造することが可能である。したがって、新たな設備投資を要することなく、良好な殺菌作用を発揮するマスクを迅速に市場に提供できる。
1 衛生マスク
2 マスク本体
3 耳掛け部
4 殺菌性繊維層(I)
5 光触媒付繊維層
6 第一繊維層
7 第二繊維層
8 フィルター層
9 殺菌性繊維層(II)
2 マスク本体
3 耳掛け部
4 殺菌性繊維層(I)
5 光触媒付繊維層
6 第一繊維層
7 第二繊維層
8 フィルター層
9 殺菌性繊維層(II)
Claims (15)
- 殺菌性繊維層を備える衛生マスクであって、
当該殺菌性繊維層は、第一繊維層と第二繊維層とを接触した状態で任意の層数を積層したものであり、
当該第一繊維層は、銅が付着した繊維からなる布材であり、
当該第二繊維層は、銅よりもイオン化傾向が小さい金属が付着した繊維からなる布材であることを特徴とする衛生マスク。 - 前記第一繊維層は、銅を89mg/m2~890mg/m2含有したものである請求項1に記載の衛生マスク。
- 前記第二繊維層は、銀を105mg/m2~1,050mg/m2又は金を38.6mg/m2~386mg/m2含有したものである請求項1又は請求項2に記載の衛生マスク。
- 殺菌性繊維層を備える衛生マスクであって、
当該殺菌性繊維層は、第一繊維層と第二繊維層とを接触した状態で任意の層数を積層したものであり、
当該第一繊維層は、銀が付着した繊維からなる布材であり、
当該第二繊維層は、銀よりもイオン化傾向が小さい金属が付着した繊維からなる布材であることを特徴とする衛生マスク。 - 前記第一繊維層は、銀を105mg/m2~1,050mg/m2含有したものである請求項4に記載の衛生マスク。
- 前記第二繊維層は、金を38.6mg/m2~386mg/m2含有したものである請求項4又は請求項5に記載の衛生マスク。
- 前記第一繊維層及び前記第二繊維層は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、綿、絹のいずれかの材質の繊維を用いた請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の衛生マスク。
- 前記第一繊維層と前記第二繊維層とは、織布タイプ又は不織布タイプのいずれかの布材を用いたものである請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の衛生マスク。
- 殺菌性繊維層を備える衛生マスクであって、
当該殺菌性繊維層として、単一の織布タイプ又は不織布タイプのいずれかの布材に対し、銅及び銅よりもイオン化傾向が小さい金属を含ませた異種成分併有布材を用いたことを特徴とする衛生マスク。 - 前記異種成分併有布材は、銅を89mg/m2~890mg/m2、銅よりもイオン化傾向が小さい金属として銀を105mg/m2~1,050mg/m2又は金を38.6mg/m2~386mg/m2付着させたものである請求項9に記載の衛生マスク。
- 殺菌性繊維層を備える衛生マスクであって、
当該殺菌性繊維層として、単一の織布タイプ又は不織布タイプのいずれかの布材に対し、銀及び銀よりもイオン化傾向が小さい金属を含ませた異種成分併有布材を用いたことを特徴とする衛生マスク。 - 前記異種成分併有布材は、銀を105mg/m2~1,050mg/m2、銀よりもイオン化傾向が小さい金属として金を38.6mg/m2~386mg/m2付着させたものである請求項11に記載の衛生マスク。
- 使用者が着用したとき、大気側にあたる最外層に、繊維表面に光触媒が付着した光触媒付繊維層を設けた請求項1~請求項12のいずれか一項に記載の衛生マスク。
- 前記光触媒は、二酸化チタンである請求項13に記載の衛生マスク。
- 前記光触媒は、二酸化チタンに窒素、硫黄、遷移金属元素、ランタノイド系元素、アクチノイド系元素から選ばれた一種以上の元素をドープした酸化チタンである請求項13に記載の衛生マスク。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020177358 | 2020-10-22 | ||
JP2020177358 | 2020-10-22 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2022068873A true JP2022068873A (ja) | 2022-05-10 |
Family
ID=81460062
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2021173397A Pending JP2022068873A (ja) | 2020-10-22 | 2021-10-22 | 衛生マスク |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2022068873A (ja) |
-
2021
- 2021-10-22 JP JP2021173397A patent/JP2022068873A/ja active Pending
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR102168209B1 (ko) | 마스크용 항균필터와 이의 제조방법 및 항균 마스크 | |
JP2008002007A (ja) | ナノ粒子担持材料およびその製造方法 | |
WO2016206638A1 (zh) | 一种含有螯合银纤维的伤口敷料 | |
US20070232486A1 (en) | Photocatalytic fiber and fabric using thereof, and fabric product using the fabric | |
WO2008145175A1 (en) | Breathing means | |
JP6857173B2 (ja) | 光触媒機能性不織布およびこの製造方法 | |
CN111096500A (zh) | 一种主动吸附的防雾霾广谱杀病菌口罩及方法 | |
US20210340682A1 (en) | Electrolytic Devices and Methods for Dry Hydrogen Peroxide Production | |
JP2022068873A (ja) | 衛生マスク | |
JPH1119238A (ja) | 抗菌効果を有するマスク | |
JP2000197711A (ja) | マスク及びマスクカバ― | |
KR102473426B1 (ko) | 금속 나노 와이어를 포함한 마스크 | |
KR100693011B1 (ko) | 전이금속의 미세 입자를 섬유에 담지하는 방법 | |
JP2021193222A (ja) | 衛生マスク | |
BG3922U1 (bg) | Филтър на маска за лице срещу патогени и вируси | |
CN212017087U (zh) | 一种纳米滤片及应用该纳米滤片的口罩 | |
JP2021194129A (ja) | 殺菌フィルタおよび当該殺菌フィルタの製造方法および空気殺菌装置 | |
CN111729402B (zh) | 一种电活性空气过滤材料及其制备方法 | |
CZ2022359A3 (cs) | Substrát s antimikrobiální povrchovou vrstvou, zejména pro respirační masky a vzduchové filtry | |
CZ36670U1 (cs) | Substrát s antimikrobiální povrchovou vrstvou, zejména pro respirační masky a vzduchové filtry | |
US11925928B2 (en) | Self-cleaning fabric and article | |
US20210269949A1 (en) | Personal protective equipment | |
US20210029992A1 (en) | Personal protective equipment | |
BG113208A (bg) | Филтър на маска за лице срещу патогени и вируси | |
JP6758578B2 (ja) | 金属皮膜付シクロオレフィン糸の製造方法 |