JP2022067005A - 不織布 - Google Patents

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Abstract

【課題】柔らかい風合いを維持しつつ、毛羽抜けが抑えられる不織布を提供する。【解決手段】繊維同士の融着点を有し、表面及び裏面を有する不織布であって、水平板を用いて0.05kPa荷重を一方の面側から付加した状態での見かけ厚みが1.5mm以上であり、前記表面側の表面積に占める、3kPa加圧下の前記水平板と不織布との接触面積の割合が90%以下であり、ガラス転移点が10℃以下のポリマーが付着した繊維を少なくとも前記表面側に含んでおり、前記ポリマーが5質量%以上40質量%以下含有されている、不織布。【選択図】なし

Description

本発明は不織布に関する。
おむつ等の吸収性物品には不織布が用いられることが多い。この不織布について種々の機能を持たせる技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、吸収性物品の厚み回復性を高める観点から、接着剤を含浸又は塗布して形成されたレジンボンド不織布を吸収性物品に組み込むことが記載されている。具体的には、前記レジンボンド不織布は、吸収性物品の肌に触れない部材として配置されている。
特開2001-187088号公報
従来の不織布の中には、厚み方向に凹凸をつけて坪量以上に厚みを出した、すなわち、表裏面間の見かけ厚みを厚くした不織布がある。このような不織布は、肌触りが柔らかく、ふっくらした風合いが得られやすい。
一方で、上記のような不織布においては、肌との接触時に、摩擦の程度によっては毛羽抜けが生じる場合がある。毛羽抜けが毛玉となることもある。特に、繊維同士の融着点によってシート一体性が付与された不織布の場合、融着点の欠落部分があるとその部分で上記の毛羽抜け等が生じやすくなる。例えば、繊維ウェブを凹凸賦形し、その後に熱風処理で融着点を形成して不織布を製造する場合、凹凸賦形に支持体を用いるためにその分、熱風の通りが抑えられて上記の問題が生じやすくなる。このような毛羽抜け及び該毛羽抜けから派生する毛玉は、不織布の肌触りの点から、その発生を抑える必要があり改善の余地があった。
本発明は、上記の点に鑑み、柔らかい風合いを維持しつつ、毛羽抜けが抑えられる不織布に関する。
本発明は、繊維同士の融着点を有し、表面及び裏面を有する不織布であって、水平板を用いて0.05kPa荷重を一方の面側から付加した状態での見かけ厚みが1.5mm以上であり、前記表面側の表面積に占める、3kPa加圧下の前記水平板と不織布との接触面積の割合が90%以下であり、ガラス転移点が10℃以下のポリマーが付着した繊維を少なくとも前記表面側に含んでおり、前記ポリマーが5質量%以上40質量%以下含有されている、不織布を提供する。
本発明の不織布は、柔らかい風合いを維持しつつ、毛羽抜けが抑えられている。
(A)及び(B)本発明の不織布が有する凹凸形状の具体例を示す側面図である。 繊維に囲まれた微小空間に膜を張るように固着されているポリマーの膜を拡大して示す図面代用写真である。 不織布の凹凸形状の具体例1を模式的に示す一部断面斜視図である。 不織布の凹凸形状の具体例2の一方の面側の平面を示す図面代用写真である。 図4に示した不織布のC-C線部分断面図である。 図4に示した不織布のD-D線部分断面図である。 図4に示した不織布の反対面側の平面を示す図面代用写真である。 図7に示した不織布のE-E線部分断面図である。 図7に示した不織布のF-F線部分断面図である。 本発明の不織布の製造方法の好ましい実施形態を示す説明図であり、(A)は支持体雄材上に繊維ウェブを配し、支持体雌材を前記繊維ウェブ上から支持体雄材に押し込む工程を示しており、(B)は支持体雌材を支持体雄材に押し込んで繊維ウェブを賦形している工程を示ており、(C)は支持体雌材を取り除いて、賦形された繊維ウェブの上方から熱風を吹き付けて繊維同士を融着させる工程を示しており、(D)は賦形された原料不織布の支持体雄材から取り出した状態を示しており、(E)は取り出した原料不織布の一方の面側(おむつを例にとると肌面側となる面側)(熱風が吹き付けられた面の反対面側)にスプレーでポリマー塗布液を噴霧する工程を示している。
以下、本発明の不織布の好ましい実施形態について説明する。
本発明の不織布は、繊維同士の融着点(繊維交点における融着点)を有する。融着点は、交差する繊維同士の接点において、繊維同士が繊維自身の熱可塑性樹脂成分の融着によって結着している部分である。より具体的には、前記融着点は、不織布の製造過程において、例えば熱処理によって熱可塑性繊維の表面が溶融し、繊維同士が融着したものである。本発明の不織布としては、例えばサーマルボンド不織布が挙げられ、より具体的にはエアスルー不織布(熱風処理により前記融着点を形成した不織布。主に60mm以下の短繊維が用いられる。)やスパンボンド不織布(溶融状態にある樹脂を紡糸しながらそのまま不織布化したもので、エンボス処理によって前記融着点を形成した不織布。主に100mm以上の長繊維が用いられる。)が挙げられる。吸収性物品の材料の場合のように肌に触れて使用されるときは、特に肌触りの観点から、エアスルー不織布が好ましい。
本発明の不織布は、物品の目的に沿って使用される表面(使用面)側とその反対側の裏面側との表裏面を有する。前記表面は使用時において摩擦を受ける側の面である。
以下、説明の便宜上、本発明の不織布が吸収性物品の表面シート等の部材に用いられる場合として、前記表面側を肌面側、前記裏面側を非肌面側として説明する。本明細書において、肌面側と非肌面側とは、本発明の不織布の使用時において、使用者等の肌に向けられる面側とその反対面側とを意味する。この肌面側及び非肌面側は、使用者等の肌に直接接触しない場合であっても、相対的な位置関係を示すものとして定義される。上記の肌面側と非肌面側とは、不織布の表裏面であり、不織布を水平面に静置した際に、該水平面に対し鉛直方向に水平面から最も遠い面と、水平面に最も近い面とである。
本発明の不織布は、0.05kPa荷重下における見かけ厚みが1.5mm以上を有する。
ここで「見かけ厚み」とは、不織布を水平面に静置したときに、該水平面と、該水平面に接する不織布の一方の面とは反対面の側の最も外側の部位に接する仮想平面(水平板)との間の、該水平面に対する鉛直方向の距離を意味する(以下、この水平面に対する鉛直方向を単に「鉛直方向」ということがある)。前記見かけ厚みは、例えば本発明の不織布が両面に凹凸形状を有する場合、一方の面側の凸部の頂部の位置と他方の面側の凸部の頂部の位置との間の鉛直方向の距離である。
この「見かけ厚み」は、水平板を用いて0.05kPaの荷重を一方の面側から付加した状態での厚みを意味する。具体的には、下記方法により測定され得る。ここで「0.05kPa荷重」とは、不織布表面の毛羽立ちなどを抑える程度の荷重を意味し、不織布の見かけ厚みを適正に測定するために必要な軽微な荷重(不織布の厚みを潰すような圧縮力に値しない軽微な荷重。)である。0.05kPaの荷重は、水平板、例えば、直径2.5cm、質量2.45gの円形プレートを不織布の一方の面側に載置することで不織布に加えられる。
(0.05kPa荷重下の不織布の見かけ厚みの測定方法)
測定対象の不織布を10cm×10cmに裁断し、測定試料を作製する。レーザー厚さ計(オムロン株式会社製、高精度変位センサZS-LD80(商品名)。本明細書で用いられるレーザー厚さ計は全てこれである。)を使用し、前記測定試料に対して、水平板を用いて0.05kPaの荷重を一方の面側に加え、その状態で厚さを測定する。3箇所測定し、平均値を測定対象の不織布の見かけ厚みとする。
なお、測定対象の不織布が製品に組み込まれている場合は、コールドスプレー等の冷却手段で接着剤等の接着力を弱め、製品から不織布を取り出して上記の測定を行う。この不織布を取り出す方法は、本明細書中の他の測定においても同様に適用される。
測定対象の不織布として10cm×10cmの大きさを取り出せない場合には、なるべく大きいサイズで取り出す。
本発明の不織布の0.05kPa荷重下における見かけ厚みが1.5mm以上あることにより、使用開始時に厚みを感じることができる。この観点から、前記見かけ厚みは2mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。また、前記見かけ厚みは、保管効率及び加工しやすさの観点から、12mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、9mm以下が更に好ましい。
加えて、本発明の不織布は、肌面側の表面積に占める、水平板と不織布との接触面積の割合が90%以下である。この接触面積は、下記の方法により3kPa加圧をして測定され得る。前記「肌面側の表面積」は、測定される不織布の肌面を上方から観察して得られる該不織布の外形の面積を意味する。そのため、凹凸がある場合のその起伏に沿った部分の面積は捨象される。
この接触面積が90%以下であることは、不織布の肌面側が凹凸形状を有することを意味し、下記の3kPaの加圧下において潰れが抑えられていることを意味する。なお。3kPaの加圧は、本発明の不織布をおむつの表面シートとし、該おむつを装着した低月例児(0歳1ヶ月から0歳4ヶ月)が仰向けに寝ている際の、おむつ背側にかかる圧力を想定したものである。前記凹凸形状は、不織布を厚み方向に見たときに、厚み方向に突出する凸部と窪んだ凹部とが隣接して存在し、これら凸部と凹部とが平面方向に交互に配されている形状を意味する。該凹凸形状は、不織布の肌面側にある限り、これに加えて非肌面側にあってもよい。すなわち、本発明の不織布の肌面側だけが凹凸形状である場合に限らず、肌面側及び非肌面側の両方が凹凸形状であってもよい。
前記接触面積は、肌触り向上の観点から、80%以下が好ましく、70%以下がより好ましい。また、前記接触面積は、他部材との接合強度向上の観点から、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。
(接触面積の測定方法)
(1)不織布から50mm×50mmの大きさの測定試料を切り出す。
(2)測定試料の測定面を上にして静置する。
(3)前記測定面に対して、高精度形状計測システムKS-1100(商品名、株式会社キーエンス製)を用いて、レーザー光を照射して無荷重状態(荷重をかけない自然状態)での前記測定面の表面形状(測定面の面方向に沿って起伏する厚みの高低形状)を測定し、画像を取り込む。その際、測定範囲1cm(測定ピッチ:縦20μm、横20μm)、移動速度10cm/秒とする。
(4)次いで、前記測定試料の測定面に質量170gの透明のアクリル板を載置し、更にアクリル板上に質量600gのおもりを置き、3kPaの加圧をかけた状態で、前記(3)と同様の方法により、前記測定面の表面形状を測定し画像を取り込む。
(5)前記(3)及び(4)にて取り込んだ画像に対し、形状解析アプリケーションKS-Analyzer(商品名、株式会社キーエンス製)を用いて解析を行う。具体的には、無荷重状態から3kPa加圧をかけた状態で厚みが変化した部分(最小測定可能スケール0.01μm)を抽出し二値化処理して、その部分の表面画像を得る。
(6)前記(3)で得た厚みが変化した部分の表面画像を、画像処理ソフトウエアNewQube(Ver.4.22、商品名、株式会社ネクサス製)を用いて取り込んで処理を行い、その面積を測定する。この面積が、測定試料の不織布に3kPa加圧した際に肌と接触する部分に相当する面積、すなわち接触面積となる。
(7)測定した面積を、測定試料の面積(測定点:251,001点(=501×501))で除することで、測定対象の不織布の測定面における「接触面積率」を算出する。
本発明の不織布は、ガラス転移点が10℃以下のポリマー(以下、付着ポリマーといもいう。)が付着した繊維を少なくとも肌面側に含んでいる。この付着ポリマーは、不織布の質量(付着ポリマーを除く質量)に対して、5質量%以上40質量%以下含有されている。
前記付着ポリマーは、不織布を構成する繊維に固着状態で付着し、繊維同士の接着強度を高めている。しかも、付着ポリマーが前述のとおり低いガラス転移点を有することにより繊維表面に弾性又は柔軟性を付与して硬さを低減し、上記の含有質量割合で存在することにより肌への貼り付きを抑えて、不織布の滑らかさ及び風合いの向上をもたらす。このようなポリマーの付着した繊維は、本発明の不織布の肌面側にある限り、不織布の内部及び非肌面側にあってもよい。
このような作用をする前記付着ポリマーが本発明の不織布の肌面側にあることで、肌面側から加えられる摩擦力に対して毛羽抜けが抑制され、不織布の滑らかさ及び風合いが向上する。特に、本発明の不織布が凹凸形状を有する場合(例えば、図1(A)の不織布10及び図1(B)の不織布20の両面が凹凸形状を有する場合、肌面側1Aのみが凹凸形状を有する場合(図示せず))、凸部に摩擦力及び圧力が集中しても、毛羽抜けの抑制効果、凸部における肌に感じる風合いが良くなる。
本発明の不織布を吸収性物品における吸収体よりも肌面側の部材として用いた場合に、肌との接触による摩擦が加わり続けても、上記の効果が続き、つけ心地の良さが持続しやすくなる。
従来、不織布の製造工程において凹凸賦形するために金型を用いると熱風の通りが悪くなり、毛羽抜けしやすくなっていた。例えば、繊維ウェブを凹凸賦形し、その後に熱風処理で融着点を形成して製造された不織布の場合、風合いのために坪量を抑えながら見かけ厚みを大きくするために金型の凹凸を大きくすると、より毛羽抜けしやすくなっていた。特に、エアスルー不織布の場合、スパンボンド不織布のように毛羽抜けし難い長繊維を用いる場合に比べて、短繊維を用いて熱融着しているためなおさらであった。従来は、毛羽抜け対策として熱風処理の温度を強くしたり、スパンレースする回数を増やしたりするなどの手段があったが、不織布の硬化や風合いの低下につながりかねなかった。
これに対し、本発明の不織布が前記見かけ厚みと接触面積で規定される凹凸形状を備えながら、前記付着ポリマーを肌面側に有することにより、柔らかい風合いを維持しつつ、毛羽抜けの抑制が実現されている。
本発明の不織布は、凹凸形状を有し、該不織布の表裏面を繋ぐ厚み方向の壁面を有することが好ましい。例えば、図1(A)に示す凹凸形状の不織布10は、肌面側1Aの錐体状の凸部12の頂部12Aと非肌面側1Bの錐体状の凸部13の頂部13Aとを繋ぐ、やや傾斜した壁面14を有する。また、図1(B)に示す凹凸形状の不織布20は、肌面側1Aの柱状の凸部22の平坦な頂部22Aと非肌面側1Bの柱状の凸部23の平坦な頂部23Aとを繋ぐ、垂直な壁面24を有する。
前記付着ポリマーは、上記の作用をより高める観点から、ガラス転移点が0℃以下であることが好ましく、-10℃以下であることがより好ましい。また、前記付着ポリマーは、入手性の観点から、ガラス転移点が-120℃以上であることが好ましく、-100℃以上であることがより好ましく、-80℃以上であることが更に好ましい。
本発明の不織布において、前述の付着ポリマーの含有質量割合は、毛羽抜け抑制の観点から、本発明の不織布の質量に対して6質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、8質量%以上が更に好ましい。前述の付着ポリマーの含有質量割合は、不織布の風合いを良くする観点から、本発明の不織布の質量に対して20質量%以下が好ましく、17質量%以下がより好まし、14質量%以下が更に好ましい。なお、この含有質量割合は、繊維処理剤などの添加剤が通常添加される量よりも遥かに多いものである。
また、本発明の不織布において、前述のように毛羽抜けを抑制しながら、前述の厚みの下で前記付着ポリマーによる滑らかさと風合いの良さを良好にし、柔らかく柔軟な風合いを有するものとする観点から、坪量は70g/m以下が好ましく、60g/m以下がより好ましく、50g/m以下が更に好ましい。
また、坪量の下限は特に制限されるものでは無いが、不織布の地合を良好にする観点から、15g/m以上が好ましく、20g/m以上がより好ましく、25g/m以上が更に好ましい。
前述の付着ポリマーのガラス転移点及び付着ポリマーの不織布における含有質量割合は、下記の方法により測定することができる。
(付着ポリマーのガラス転移点及び付着ポリマーの不織布における含有質量割合の測定方法)
(1) 製品から不織布を取り出し、測定試料として0.3gの不織布試料を用意する。この時点での不織布試料の質量を測定し、質量Aとする。次いで、酢酸エチル100mLを入れたビーカーに該不織布試料を入れて30分間撹拌し、該不織布試料を取り出し乾燥させる。これにより、スキンケア剤、ホットメルト型接着剤等の不織布試料に付着していた成分を洗い流す。これを繰り返し、試料を1.0g以上用意する。
(2) 前記不織布試料を水平に静置したときの水平方向断面を切り取り、0.1mm程度の長さに裁断する。この不織布試料1.0gをビーカーへ入れてヘキサフルオロイソプロパノール(以下、HFIPともいう)を加え、HFIP不溶分とHFIP可溶分に分離する。これにより、繊維のポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう)成分を溶解させる。
(3) 前記(2)で得られたHFIP不溶分に130℃の加熱キシレンを加え、充分に撹拌、ろ過することで加熱キシレン不溶分と加熱キシレン可溶分に分離する。これにより、繊維のポリプロピレン(以下、PPともいう)成分、ポリエチレン(以下、PEともいう)成分を溶解させる。セルロース系繊維は残る。前記加熱キシレン不溶分の質量を測定し、質量Bとする。
(4) 前記(3)で得られた加熱キシレン不溶分に対して、フーリエ変換型赤外分光法(以下、FT-IRともいう)による測定を行い、モノマー構成を割り出し、ガラス転移点を下記のFoxの式(S1)から算出する(「粘着ハンドブック」第2版、144ページ、1995年10月12日、日本粘着テープ工業会発行)。ただし、FT-IRでセルロース由来のピークが観測された場合はそのピークは算出には用いない。
(5) 前記(3)で得られた加熱キシレン不溶分に対して、600℃まで熱質量分析(TGA)測定を行う。これにより残ったものの質量を測定し、質量Cとする。前記(3)で得られた質量Bから質量C差し引いて(質量B-質量C)、付着ポリマーの質量(質量D)を算出する。この付着ポリマーの質量(質量D)を不織布の質量(質量A)で除して、不織布試料における付着ポリマーの含有質量割合とする。
Figure 2022067005000001
式中、Tgは付着ポリマーのガラス転移点を示し、Tgiはモノマーiをポリマーにした際のガラス転移点を示し、Wiは付着ポリマー中のモノマーiの質量分率を示す。
前述の「ガラス転移点が10℃以下のポリマー」は、固着して流れ落ちない結着性を有する。同時に、前記付着ポリマーは、不織布表面の滑らかさを高める弾性又は柔軟性を有する。前記付着ポリマーは、本発明の不織布を構成する繊維の表面を被覆(コーティング)して固着されている。前記被覆は繊維表面の部分的なものであってもよい。また、前記付着ポリマーは、繊維の表面に固着しつつ、繊維同士が交差してできる、繊維に囲まれた空間に膜を張るように固着されている(例えば、図2に示す、繊維7に囲まれた空間に形成された付着ポリマーの膜61)。前記付着ポリマーが固着する繊維の表面には繊維同士の融着点の表面を含む。融着点の表面に存在する前記付着ポリマーは、繊維同士が交差して重なる部分の外側表面(融着した繊維の外側表面)を覆っていることが好ましい。
このようにして、前記付着ポリマーは繊維に固着した部分で繊維表面の硬さを低減し、繊維の柔らかい触感をもたらす。また、前記付着ポリマーは繊維同士を接着し、融着点以上の接着強度を本発明の不織布に付与する。特に、図2に示すように、付着ポリマーの膜61が、融着点以上の広がりを持って繊維同士の接着強度を高めている。前記付着ポリマーと融着点との区別は、卓上走査電子顕微鏡(SEM)を用いて目視にて行うことができる。
前記付着ポリマーは、不織布の構成繊維とは異なる樹脂成分であり、不織布化した後の構成繊維の表面に固着されている。不織布の一面(肌面側)に対して、例えばスプレーやコーター、含浸等によって固着させることができる。これにより、本発明の不織布において、肌面側の全体に亘って前記付着ポリマーが一様に固着した状態となる。特に、本発明の不織布の肌面側が凹凸形状を有する場合、該凹凸形状に沿って前記付着ポリマーを固着させる観点から、スプレーによる吹付けや、含浸が好ましい。
前記付着ポリマーを固着させる際、付着ポリマーの塗布前の塗布剤を100%の溶液として塗布してもよいが、塗布量を好適に制御する観点から希釈して塗布することが好ましい。希釈液としては、水、エタノール等が挙げられる。希釈してなるポリマー塗布液は、作業性の観点から、ガラス転移点が10℃以下のポリマーの含有濃度を3質量%以上55質量%以下とする液体であることが好ましく、5質量%以上10質量%以下する液体であることがより好ましい。
なお、付着ポリマーの塗布前の塗布剤(以下、付着ポリマー塗布剤ともいう)は、塗布後の架橋等の反応が生じる前のものを意味する。該付着ポリマー塗布剤は主には固体であるが、液体であってもよい。前記付着ポリマー塗布剤の100%の溶液のもの及び希釈したものを付着ポリマー塗布液という(なお、希釈する前の状態で溶液となっているものを付着ポリマー溶液ということがある。)。
前記付着ポリマーとしては、上記のガラス転移点を有するものを種々用いることができる。
例えば、構成成分としてポリエチレン成分を有するポリマー、ブタジエン成分を有するポリマー、イソプレン成分を有するポリマー、下記式(I)においてRが炭素数2以上のアルキル基であるアクリル酸エステル成分を有するポリマーが挙げられる。例えば、ポリエチレンポリマー、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、(メタ)アクリルポリマーなどが挙げられる。ここで「(メタ)アクリルポリマー」とは、アクリルポリマー及びメタクリルポリマーの両者を含む意味である。
Figure 2022067005000002
前記式(I)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rはアルキル基又は水素原子を示す。
例えば、ポリマーに含まれるエチレン成分が、全成分の合計質量に対して、40質量%以上80質量%以下のポリマーであることが好ましい。また、ブタジエン成分、イソプレン成分及び上記式(I)に示されるアクリル酸エステル成分から選ばれる1又は複数の成分が、全成分の合計質量に対して、40質量%以上のポリマーであることが好ましい。
これにより、前記付着ポリマーは融点を有さないものとなってより柔軟性が高まり、繊維表面の硬化低減作用が高まる。これにより、本発明の不織布における風合い悪化を抑える。
更に、ポリマーに含まれるエチレン成分が、全成分の合計質量に対して、60質量%以上80質量%以下のポリマーであることがより好ましい。また、ブタジエン成分、イソプレン成分及び上記式(I)に示されるアクリル酸エステル成分から選ばれる1又は複数の成分が、全成分の合計質量に対して、60質量%以上のポリマーであることがより好ましい。
これにより、前記付着ポリマーはガラス転移点が0℃以下となり、外気温に依存せずに付着ポリマーによる前述の作用が効果的に発現され得る。
本発明の不織布において、毛羽抜け抑制、滑らかな肌触り及び風合いを良好なものとする観点から、肌面側の表面積に占める前記付着ポリマーの付着面積割合は、20%以上が好ましく、25%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましい。これにより、前記付着ポリマーが肌面側により満遍なく付着され、前述の効果がより高まる。
また、不織布の風合いを良くする観点から、肌面側の表面積に占める前記付着ポリマーの付着面積割合は、60%以下が好ましく、55%以下がより好ましく、50%以下が更に好ましい。
また、本発明の不織布において、肌面側における前記付着ポリマーの付着面積が、前記非肌面側における前記付着ポリマーの付着面積の2倍以上であることが好ましく、2.5倍以上であることがより好ましく、3倍以上であることが更に好ましい。これにより、不織布全体における前記付着ポリマーの含有質量の中で、肌面側により多く配され、前述の効果がより高まる。
また、不織布の風合いを良くする観点から、肌面側における前記付着ポリマーの付着面積が、前記非肌面側における前記付着ポリマーの付着面積の5倍以下であることが好ましく、4.5倍以下であることがより好ましく、4倍以下であることが更に好ましい。
(肌面側及び非肌面側における前記付着ポリマーの付着面積及び付着面積割合の測定方法)
(1a) 前述の(付着ポリマーのガラス転移点の測定方法)における(1)の処理を行う。
(1b) 繊維表面に固着している付着ポリマーを繊維と異なる色に染色して両者を識別する鑑別試薬(繊維鑑別試薬ボウケンステインII、一般財団法人ボーケン品質評価機構製)を用いて、不織布試料の染色処理を行う。
(1c) 不織布試料の非肌面側を上にして水平面に静置した状態で、露出する面側(非肌面側を下にした場合の肌面側、肌面側を下にした場合の非肌面側)それぞれを、デジタルマイクロスコープVHX-900(商品名、株式会社キーエンス製、本明細書におけるデジタルマイクロスコープは全てこれである。)を用いて150倍で観察画像を撮像する。撮像した画像を観察画像とする。観察画像サイズは1600×1200ピクセルとする。
(1d) 肌面側及び非肌面側それぞれの観察画像について3値化処理し、3値化した色によって、付着ポリマーに覆われていない繊維領域、付着ポリマー領域、その他の領域(繊維間の空隙など)を特定することで、付着ポリマーが肌面側及び非肌面側それぞれに存在することを確認する。そして、観察画像から、肌面側及び非肌面側それぞれにおける前記付着ポリマーの付着面積及び付着面積割合を算出する。
上記(1b)の染色処理の処理内容を説明する。
(1b-1) ボウケンステインIIの容器をよく振りまぜ、充分に混合させる。
(1b-2) 混合させたボウケンステインIIを200mL程度の大きさのビーカーに5mL取り、水道水を加え、全量が100mLとなるように、染液を作成する。
(1b-3) 染液を加熱し、沸とう前の90℃程度のときに不織布試料を投入し、2分間95℃で煮沸させる。
(1b-4) 不織布試料を取り出し、充分水洗いした後、乾燥させる。
(1b-5) 鑑別色と比較し判定する。例えば、アクリル系樹脂又はスチレン・ブタジエンゴムを含む付着ポリマーは赤色に染色され、繊維が白色のままとなる。ただし、付着ポリマーの染色の色は、付着ポリマー成分によって異なる。
上記(1d)の算出処理の具体例を下記に示す。この具体例では、繊維鑑別試薬ボウケンステインIIを用いて、アクリル系樹脂又はスチレン・ブタジエンゴムを含む付着ポリマー領域が赤色に染色され、繊維領域が白色のままであり、付着ポリマー領域及び繊維領域以外のその他の領域(繊維間の空隙など)は黒色となる。
(1d-1) 観察画像を3値化処理(白・赤・黒)する。これは、コンピューターでの画像処理によって行い、RGBカラーモデルでの赤色面積となる。
(1d-2) RGBカラーモデルからHSVカラーモデルに変換する。HSVカラーモデルにおいて、赤色は、H:0°以上30°以下及び270°以上360°以下、S:30%以上100%以下、V:40%以上100%以上と定義する。白色は、H:0°以上360°以下、S:0%以上20%以下、V:40%以上100%以下と定義する。黒色は、上記以外の範囲と定義する。
(1d-3) このようにしてHSVカラーモデルにおいて赤色面積(付着ポリマー)と白色面積(繊維)を算出し、前記(1d)の処理を行う。
具体的には、観察画像中にて赤色と判定されたピクセル数を、肌面側及び非肌面側それぞれにおける付着ポリマーの付着面積(単位:px)とする。
得られた値から下記式(S2)基づいて付着ポリマーの付着面積割合を算出する。
付着ポリマーの付着面積割合(%)=付着ポリマーの付着面積(px)÷画像全体のピクセル数(1600px×1200px)×100 (S2)
観察画像3点の平均値を、測定対象の不織布の肌面側及び非肌面側それぞれにおける付着ポリマーの付着面積割合とする。
本発明の不織布は、前述のようにして付着ポリマーを有することにより、肌面側の滑らかさが高められ、風合いの良いものとなっている。この滑らかさの観点から、肌面側における摩擦係数の平均偏差(MMD)が0.011以下であることが好ましく、0.0105以下であることがより好ましい。
また、毛羽抜け抑制観点から、肌面側における摩擦係数の平均偏差(MMD)が0.004以上であることが好ましく、0.005以上であることがより好ましく、0.006以上であることが更に好ましい。(MMDが低いということは繊維が動きやすく、融着が弱いということなので。)
前記摩擦係数の平均偏差(MMD)は、不織布の表面粗さの指標となるもので、値が小さいほど不織布表面の肌との摩擦が小さく滑らかであることを示す。
(摩擦係数の平均偏差の測定方法)
市販の測定機器(カトーテック株式会社製、KES-FB4表面試験機)を用い、該測定機器が有する測定端子を不織布の肌面側に接触させて、表面の摩擦係数(μ)を測定する。測定条件は、スピード:1mm/秒、初期張力:150g、粗さ加圧:50gf、端子の移動距離L:0mmから30mmとする。
得られた摩擦係数(μ)から、下記式(S3)に基づいて摩擦係数の平均偏差(MMD)を算出する。不織布の肌面側を測定し、不織布の肌面側の摩擦係数の平均偏差とする。
Figure 2022067005000003
L:端子の移動距離、μ:摩擦係数、μ(-):平均摩擦係数
本発明の不織布は、前述のようにして付着ポリマーを有することにより、摩擦を受けたとしても毛羽抜けが効果的に抑えられている。この観点から、肌面側に対する下記毛羽試験において発生した毛玉の個数が3個以下であることが好ましく、2個以下であることがより好ましく、1個以下であることが更に好ましい。
(毛羽試験)
ウレタンフォーム(株式会社イノアックコーポレーション製モルトフィルターMF-30、厚さ5mm)で表面を覆った円盤(直径70mm、350g)を、回転軸に取り付ける。取り付け位置は円盤中心から20mmずれた位置とする。
測定対象の不織布の下面に、上記と同じウレタンフォームを敷く。次いで、不織布の肌面側を表面にして、台上に固定する。不織布の上に前記円盤を載せる。このとき、不織布に加わる荷重は円盤の自重のみとする。この状態下、回転軸を回転させて、円盤を不織布上で周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、15セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。15セットの周動後、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した毛玉を集め、数える。
毛玉は直径500μmの真球よりも大きい略球状のものとする。
本発明1の不織布が凹凸形状を有する場合、種々の凹凸形状を用いることができる。また、肌に触れる素材として通常用いられる種々のものを用いることができる。
例えば、不織布の凹凸形状としては、凸部が中実のもの、凸部が中空のもの、繊維層が一層構造のもの、繊維層が二層構造のもの、凸部が平面方向に散点状に配置されているもの、凸部及び凹部が畝溝状に配置されているものなど様々な種類がある。また、片面に限らず、両面に凹凸する形状を有するのものであってもよい。
その中でも、凹凸形状の凸部が中空であり、不織布の両面に凹凸形状を有する、一層構造の不織布が好ましい。例えば、下記の不織布80(具体例1)や不織布90(具体例2)がある。
これらについて以下に説明する。
不織布80(具体例1)は、熱可塑性繊維を含む一層構造を有し、下記に示す凹凸形状を有する。
すなわち、第1面(肌面)1A側及び第2面(非肌面)1B側の外面繊維層81、82と、第1面1A側の外面繊維層1と第2面1B側の外面繊維層2との間に配在した複数の連結部83とを有する。第1面1A側の外面繊維層81及び第2面1B側の外面繊維層82と連結部83とは相互に一部繊維が融着している。
この不織布80においては、第1面側1A又は第2面側1Bのいずれかを肌面側(表面、使用面)とし、少なくとも前記肌面側において、付着ポリマーが繊維表面に存在し、また、繊維交絡点を覆うように付着ポリマーが付着している。
この外面繊維層81、82と連結部83とにより、不織布80は、その厚み方向において中空の凸部、凹部及び該凸部と該凹部とを繋ぐ壁面を具備する凹凸形状を有する。この凹凸形状は、第1面1A側及び第2面1B側の両方に形成されている。具体的には、第1面1A側において外面繊維層81がなす凸部81と外面繊維層81間の凹部88とが凹凸形状を有する。第2面1B側において外面繊維層82がなす凸部82と外面繊維層82間の凹部89とが凹凸形状を有する。外面繊維層81がなす凸部81及び外面繊維層82がなす凸部82はいずれも中空である。連結部83は、凸部81と凹部88(凸部82と凹部89)とを繋ぐ壁面83をなしている。
この不織布80について、特開2019-44319号公報の段落[0010]~[0048]に記載の種々の構成を採用することができる。例えば、不織布80の凹凸形状は、第1面1A側において外面繊維層81がなす凸部81とその間の凹部88とが畝溝状に配置された形状であってもよい。同様に、第2面1B側において外面繊維層82がなす凸部82とその間の凹部89とが畝溝状に配置された形状であってもよい。また、外面繊維層81、82は、平面方向に繊維が配向していてもよい。連結部83がなす壁面83は縦配向(不織布の厚み方向に配向)した繊維を有していてもよい。第1面1A側の凸部となる外面繊維層1が、不織布の平面視交差する異なる方向のそれぞれに沿って延出する長さを有する2種(第1外面繊維層81A及び第2外面繊維層81B)を有していてもよい。複数の連結部83は、不織布の平面視交差する異なる方向のそれぞれの方向に沿って配され、該連結部83の壁面の向きを互いに異ならせた2種(第1連結部83A及び第2連結部83B)を有していてもよい。この場合、第1連結部83A及び第2連結部83Bは、互いに壁面の向きが異なっていても、繊維が縦配向(不織布の厚み方向に配向)していてもよい。
この不織布80は典型的には図3に示された形状を有する。
このような不織布80の凹凸形状は、特開2019-44319号公報の段落[0049]~[0057]に記載の方法によって製造することができる。
不織布90(具体例2)は、熱可塑性繊維を含む一層構造を有し、下記に示す凹凸形状を有する。
すなわち、第1面(肌面)1A側には、不織布の厚み方向において第1面1A側に突出する複数の縦畝部911が、平面視した第1面1A側の一方向に延びて配されている。縦畝部911は、第1面1A側の一方向とは異なる平面視した第1面1A側の他方向に離間して並んで配されている。加えて、第1面1A側の他方向に延びる横畝部921が縦畝部911を繋いで配されている。縦畝部911及び横畝部921はそれぞれ中空の凸部を形成している。不織布90は、その厚み方向において、縦畝部911及び横畝部921とその間の凹部922とによって、凸部、凹部、及び該凸部と該凹部とを繋ぐ壁面911Wを具備する凹凸形状を有する。第1面1A側において、縦畝部911及び横畝部921がなす凸部は、不織布90の平面視交差する異なる方向のそれぞれに沿って延出する長さを有する。この場合、不織布90の第1面側における凹凸形状は、縦畝部911及び横畝部921のそれぞれがなす凸部とその間の凹部とが畝溝状に配置された形状であってもよい。
また、第2面(反対面)1B側には、平面視した第2面1B側の一方向に延び、かつ第2面1B側の一方向とは異なる第2面1B側の他方向に並ぶ複数の中空の凸条部931が配されている。また、複数の凸条部931に挟まれた凹条部936が第2面1B側の一方向に延びている。不織布90の第2面1B側における凹凸形状は、凸条部931と凹条部936とが畝溝状に配置された形状を有する。凸条部931は、複数の凸部934が尾根状に連なってなり、平面視において幅が細い部分と太い部分とが交互に繋がって配されている。尾根状に連なっている凸部934の間はやや低い窪み935がある。不織布90は、その厚み方向において、凸条部931及び凹条部936によって、凸部、凹部及び該凸部と該凹部とを繋ぐ壁面931Wを具備する凹凸形状を有する。
この不織布90においては、第1面側1A又は第2面側1Bのいずれかを肌面側(表面、使用面)とし、少なくとも前記肌面側において、付着ポリマーが繊維表面に存在し、また、繊維交絡点を覆うように付着ポリマーが付着している。
不織布90について、特開2019-44320号公報の段落[0012]~[0058]に記載の種々の構成を採用することができる。例えば、縦畝部911を構成する繊維と横畝部921を構成する繊維の配向方向が異なっていてもよい。縦畝部911の高さと横畝部921の高さが異なっていてもよく、横畝部921が不織布90の厚み方向に湾曲していてもよく、均等の高さとしていてもよい。また、第2面1B側から平面視した凸条部931の幅方向の輪郭を構成する二本の線のそれぞれが複数の弧を有する曲線であってもよい。凸条部931の側部に毛羽が配されていてもよい。
この不織布90は典型的には図4~9に示された形状を有する。
このような不織布90の凹凸形状は、特開2019-44320号公報の段落[0059]~[0065]に記載の方法によって製造することができる。
本発明の不織布の製造方法としては、上記のような凹凸形状を賦形した後の不織布を原料不織布とし、スプレー等により付着ポリマー塗布液を噴霧して、乾燥させる工程を有することが好ましい。これにより、繊維ウェブから不織布を製造する際に用いる凹凸賦形のための金型と不織布との接着(貼り付き)を回避することができる。加えて、付着ポリマーを噴霧する前の状態で凹凸賦形すると、付着ポリマーの無い状態で繊維の移動が高く保たれているので、賦形性をより良好にすることができる。
また、噴霧する方法をとると、不織布への付着ポリマーの塗布量を好適に制御することができ好ましい。
また、上記の製造方法においては、付着ポリマー塗布液の噴霧を原料不織布の肌面側となる面側から行うことが好ましい。これにより、本発明の不織布の肌面側への付着ポリマーの固着がより確実となり好ましい。
例えば、図10に示すような工程で本発明の不織布の製造方法を行うことが好ましい。
図10(A)及び(B)においては、支持体雄材120上に、熱可塑性繊維を含む繊維ウェブ110を配し、繊維ウェブ110上から、支持体雌材130を支持体雄材120に押し込む。このとき、支持体雄材120の突起121を支持体雌材130の支持体凹部132に挿入する。また、支持体雄材120の支持体凹部122に支持体雌材130の突起131を挿入する。これにより繊維は厚さ方向と平面方向に配向されるようになる。次いで、図10(C)に示すように、支持体雌材130を取り除いて、賦形された繊維ウェブの上方から熱風Wを吹き付けて繊維同士を融着させる。これにより、原料不織布140を形成する。
その後、図10(D)及び(E)に示すように、原料不織布140を支持体雄材120から取り出し、スプレー等で付着ポリマー塗布液66を噴霧し、付着ポリマー6を固着させて本発明の不織布を得る。このとき、原料不織布に対し付着ポリマー塗布液66を噴霧する面側は、図10(D)において熱風を吹き付けた面側1Bとは反対面側1Aであることが好ましい。これにより、熱風による繊維の融着が比較的抑えられて柔らかい肌触りの点で相対的に優れている面1Aを付着ポリマーの固着面とし、その面側1Aを使用時の肌面側とすることができる。
乾燥温度は60℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、110℃以上が更に好ましい。これにより、噴霧した付着ポリマー塗布液中の付着ポリマー塗布剤の架橋反応がより促進しやすく、繊維表面の強度及び融着点における接着強度がより向上しやすく好ましい。また、乾燥温度は、不織布の風合い向上の観点から、130℃以下が好ましく、125℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましい。更に、乾燥時間は、ポリマーの架橋反応を良好にする観点から、1分以上が好ましく、3分以上がより好ましく、5分以上が更に好ましい。
付着ポリマー塗布剤の噴霧質量は、毛羽抜け抑制の観点から、原料不織布の単位面積あたり、6g/m以上が好ましく、8g/m以上がより好ましい。また、付着ポリマー塗布剤の噴霧質量は、生産効率向上及び製造ラインの汚染を防止する観点から、原料不織布の単位面積あたり、25g/m以下が好ましく、20g/m以下がより好ましい。
また、上記の範囲において、付着ポリマー塗布剤の噴霧質量は、不織布の用途によって適宜設定することができる。本発明の不織布が衛生製品(吸収性物品、ワイピングシート、マスクなど)に用いられる場合、付着ポリマー塗布剤の噴霧質量は、不織布の風合い向上の観点から、原料不織布の単位面積あたり、5g/m以上20g/m以下が好ましく、7g/m以上15g/m以下がより好ましい。
次に、本発明の不織布を構成する熱可塑性繊維について説明する。
熱可塑性繊維としては、不織布の素材として通常用いられるものを特に制限なく採用できる。例えば、単一の樹脂成分からなる繊維や、複数の樹脂成分からなる複合繊維などであってもよい。複合繊維としては、例えば芯鞘構造、サイドバイサイド構造などがある。
熱可塑性繊維として低融点成分及び高融点成分を含む複合繊維(例えば鞘が低融点成分、芯が高融点成分である芯鞘構造の複合繊維)を用いる場合、製造工程において繊維ウェブに吹き付ける熱風の温度は、低融点成分の融点以上で、かつ高融点成分の融点未満であることが好ましい。より好ましくは、低融点成分の融点以上高融点成分の融点より10℃以上低い温度であり、さらに好ましくは、低融点成分の融点より5℃以上高く高融点成分の融点より20℃以上低い温度である。また弾力性の観点から、芯鞘構造の複合繊維の中でも、高融点成分である芯が多いほど弾力性が高い。そのため断面面積比で芯成分が大きいほうが好ましい。鞘が低融点成分、芯が高融点成分である芯鞘構造の複合繊維の具体例としては、鞘がポリエチレン樹脂(以下、PEともいう)、芯がポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PETともいう)である芯鞘構造の複合繊維が挙げられる。
また、芯鞘構造の複合繊維において、芯の樹脂成分よりも鞘の樹脂成分の方が、ガラス転移点が低い場合(以下、低ガラス転移点樹脂という)(例えば、芯の樹脂成分がPETで鞘の樹脂成分がPE)、低ガラス転移点樹脂成分の質量比を小さくすることで、不織布の厚みの回復性をより高められる。
このような本発明の不織布は各種用途に用いることができる。
例えば、本発明の不織布は、おむつ、生理用ナプキン、パンティーライナー、尿取りパッド等の吸収性物品に用いることができる。吸収性物品は、典型的には液透過性の表面シート、裏面シート、それらに挟まれた吸収体を有する。本発明の不織布は、その中でも特に表面シートとして好適に使用することができる。さらに、吸収性物品のギャザー部のシート、外装シート、ウイング部のシートとして利用する形態も挙げられる。
また、本発明の不織布は、アイマスクやマスクの構成部材として用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。なお、本実施例において「部」および「%」は、特に断らない限りいずれも質量基準である。下記表1中における、「-」は、項目に該当する値を有さないこと等を意味する。
(実施例1)
(1)原料不織布の作製
まず、繊度1.8dtexの芯鞘型(ポリエチレンテレフタレート(PET)(芯):ポリエチレン(PE)(鞘)=5:5(質量比))の熱可塑性繊維を用いて繊維ウェブを作製した。該繊維ウェブに対し、特開2019-44320号公報に記載の実施例1と同様の支持体雄材及び支持体雌材を用いて凹凸賦形を行った(同文献の図13(A)~(C))。その際、支持体雌材の押込みを1mmとした。
次いで、支持体雌材を取り外し、支持体雄材上に保持された賦形後の繊維ウェブを搬送速度10m/minで搬送しながら、前記繊維ウェブの上方から熱風による吹き付け処理(エアスルー処理)を2回行った。1回目の吹き付け処理は、温度140℃、風速68m/秒、吹き付け時間5秒の条件で行った。2回目の吹き付け処理は、温度140℃、風速6.0m/秒、吹き付け時間5秒の条件で行った。
これにより、構成繊維の繊度1.8dtex、坪量40±4g/mで、図4~9に示す凹凸形状の原料不織布を作製した。原料不織布の大きさは、100mm×100mmとした。
(2)付着ポリマー塗布液の調製
固形分50%程の付着ポリマー溶液を10質量%、脱イオン水を90質量%となるように混ぜ、付着ポリマー塗布液を調製した。付着ポリマー溶液は、固形分(付着ポリマー塗布剤)のガラス転移点が-40℃のもの(DIC株式会社製のボンコートAB-886(商品名)。成分:アクリル樹脂50.8質量%、水45-55質量%、アクリル酸ノルマル-ブチル1質量%未満、イソプロピルアルコール1%未満、その他1%未満)を用いた。また該付着ポリマー溶液はpH6.6、粘度40mPa・sであった。
(3)付着ポリマー塗布液の吹き付け
次いで、原料不織布の、図4に示す縦畝部911及び横畝部921が配された第1面1A側を肌面側(表面)とし、該第1面1A側に対し、スプレーによって付着ポリマー塗布液を均等に塗布した。次いで、電気乾燥機にて、100℃の条件で5分間乾燥させた。
これにより、表1に示す見かけ厚み及び接触面積を有する実施例1の不織布試料A1を作製した。なお、見かけ厚み及び接触面積は、前述の(0.05kPa荷重下の不織布の見かけ厚みの測定方法)及び(接触面積の測定方法)に基づいて測定した。
付着ポリマー溶液の固形分の塗布量(原料不織布の質量に対する含有質量割合)は8.37質量%であった。これは付着ポリマー塗布前後の不織布質量変化により測定した。
(実施例2)
原料不織布の肌面側となる面の側(図4に示す第1面1A側)から付着ポリマー塗布液に含浸させる塗布方法を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2の不織布試料A2を作製した。
付着ポリマー溶液の固形分の塗布量(原料不織布の質量に対する含有質量割合)は12.9質量%であった。
(比較例1)
付着ポリマー溶液として、固形分のガラス転移点が40℃のもの(DIC株式会社製のDICFINE AJ-1820(商品名)。成分:水50-60質量%、アクリル樹脂44.5質量%、アンモニア(含水)1%未満、その他1%未満)を用い、原料不織布の肌面側となる面の側(図4に示す第1面1A側)から付着ポリマー塗布液に含浸させる塗布方法を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1の不織布試料C1を作製した。前記付着ポリマー溶液はpH6.1、粘度588mPa・sであった。
ポリマー溶液の固形分の塗布量(原料不織布の質量に対する含有質量割合)は11.5質量%であった。
(比較例2)
実施例1において作製した原料不織布を比較例2の不織布試料C2とした。すなわち、不織布試料C2は、付着ポリマーの固着がないものとした。
上記の各実施例及び各比較例について下記の測定及び試験を行った。
(1)肌面側及び非肌面側における付着ポリマーの付着面積、及び肌面側における付着ポリマーの付着面積割合:
前述の(肌面側及び非肌面側における前記付着ポリマーの付着面積及び肌面側における前記付着面積割合の測定方法)に基づいて測定した。
(2)肌面側における摩擦係数の平均偏差(MMD):
前述の(摩擦係数の平均偏差の測定方法)に基づいて測定した。
(3)毛羽抜け試験:
前述の(毛羽試験)に基づいて測定した。
Figure 2022067005000004
表1に示すように、各実施例の不織布試料は、同じ原料不織布を用いながらガラス転移点が40℃の付着ポリマーを用いた比較例1の不織布試料C1に比して、摩擦係数の平均偏差(MMD)が低く、風合いの良いものとなっていた。同時に、各実施例の不織布試料は、ポリマーを付着させていなかった比較例2の不織布試料C2に比して、毛玉が少なく、毛羽抜けの発生を低く抑えていた。すなわち、本発明の具体例である各実施例の不織布試料は、柔らかい風合いを維持しつつ、毛羽抜けが抑えられていた。
10、20 不織布
1A 肌面側
1B 非肌面側
12、22 肌面側の凸部
12A、22A 肌面側の凸部の頂部
13、23 非肌面側の凸部
13A、23A 非肌面側の凸部の頂部
14、24 壁面
6 付着ポリマー
61 付着ポリマーの膜
66 付着ポリマー塗布液
7 繊維

Claims (10)

  1. 繊維同士の融着点を有し、表面及び裏面を有する不織布であって、
    水平板を用いて0.05kPa荷重を一方の面側から付加した状態での見かけ厚みが1.5mm以上であり、前記表面側の表面積に占める、3kPa加圧下の前記水平板と不織布との接触面積の割合が90%以下であり、
    ガラス転移点が10℃以下のポリマーが付着した繊維を少なくとも前記表面側に含んでおり、前記ポリマーが5質量%以上40質量%以下含有されている、不織布。
  2. 前記不織布がエアスルー不織布である、請求項1記載の不織布。
  3. 前記表面側の表面積に占める前記ポリマーの付着面積割合が20%以上である、請求項1又は2に記載の不織布。
  4. 前記表面側における前記ポリマーの付着面積が、前記裏面側における前記ポリマーの付着面積の2倍以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の不織布。
  5. 前記表面側における摩擦係数の平均偏差が0.011以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の不織布。
  6. 前記表面側に対する下記毛羽試験において発生した毛玉が3個以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の不織布。
    (毛羽試験)
    ウレタンフォームで表面を覆った直径70mm、350gの円盤に対し、回転軸を円盤中心から20mmずれた位置に取り付け、該円盤を不織布の表面側に対して周動させる。周動は時計周りに3回転、反時計周りに3回転を1セットとして、15セット行う。このときの周動速度は1周動あたり約3秒である。15セットの周動後、円盤を覆っているウレタンフォームの表面に付着した毛玉を集め、数える。毛玉は直径500μmの真球よりも大きい略球状のものとする。
  7. 前記不織布が吸収性物品用である、請求項1~6のいずれか1項に記載の不織布。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の不織布を有する吸収性物品。
  9. 請求項1~7のいずれか1項に記載の不織布の製造方法であって、原料不織布にガラス転移点が10℃以下のポリマーを含むポリマー塗布液を噴霧し、乾燥させる工程を有する不織布の製造方法。
  10. ポリマー塗布液が、ガラス転移点が10℃以下のポリマーを3質量%以上55質量%以下含む液体である、請求項9に記載の製造方法。
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