MIMOレーダは、例えば、時分割、周波数分割又は符号分割を用いて多重したレーダ送信信号(又は、レーダ送信波と呼ぶ)を複数の送信アンテナ(又は送信アレーアンテナと呼ぶ)から送信する。そして、MIMOレーダは、例えば、周辺物体において反射された信号(例えば、レーダ反射波と呼ぶ)を複数の受信アンテナ(又は受信アレーアンテナと呼ぶ)を用いて受信し、それぞれの受信信号から、多重された送信信号を分離して受信する。このような処理により、MIMOレーダは、送信アンテナ数と受信アンテナ数との積で示される伝搬路応答を取り出すことができ、これらの受信信号を仮想受信アレーとしてアレー信号処理を行う。
MIMOレーダでは、送受信アレーアンテナにおけるアンテナ素子の配置を工夫することにより、最大で送信アンテナ素子数と受信アンテナ素子数との積に等しい仮想的な受信アレーアンテナ(以下、仮想受信アレーと呼ぶ)を構成できる。これにより、少ない素子数によってアレーアンテナの実効的な開口長を増大させる効果が得られ、角度分解能を向上できる。
また、垂直方向又は水平方向の一次元走査(測角)以外にも、垂直方向及び水平方向の2次元におけるビーム走査(測角)を行う場合にもMIMOレーダが適用可能である(例えば、非特許文献2を参照)。
一例として、図1の(a)は、垂直方向(図1の(a)では縦方向)に配置された4個の送信アンテナ(Tx#1~Tx#4)を含む送信アレーアンテナ、及び、水平方向(図1の(a)では横方向)に配置された4個の受信アンテナ(Rx#1~Rx#4)を含む受信アレーアンテナを示す。図1の(a)において、送信アンテナは、垂直方向に等間隔(dV)に配置され、受信アンテナは、水平方向に等間隔(dH)に配置されている(例えば、非特許文献2を参照)。
図1の(b)は、図1の(a)に示すアンテナ配置の送受信アレーアンテナを含む仮想受信アレーを示す。図1の(b)に示す仮想受信アレーは、水平方向に4アンテナ及び垂直方向に4アンテナが矩形状に配置された16素子の仮想受信アンテナ(VA#1~VA#16)から構成される。図1の(b)では、仮想受信アレーの水平方向及び垂直方向の素子間隔は、それぞれ、dH、dVとなる。仮想受信アレーの水平方向及び垂直方向の開口長AH、AVは、それぞれ、3dH、3dVとなる。
図2の(a)及び図2の(b)は、図1の(a)に示したMIMOレーダのアンテナ配置において、水平方向の素子間隔dH=0.5λとし、垂直方向の素子間隔dV=0.5λとした場合の水平0°及び垂直0°方向に向けたフーリエビームパターンを示す。なお、λはレーダ搬送波の波長を示す。
図2の(a)及び図2の(b)に示すように、水平0°及び垂直0°方向にメインビーム(メインローブ)が形成される。ここで、メインビームのビーム幅が狭いほど、複数のターゲットに対する角度分離性能が向上する。例えば、図2の(a)及び図2の(b)では、電力値が3dBのビーム幅は26°程度である。また、図2の(a)及び図2の(b)に示すように、メインビームの周辺には、サイドローブが発生している。レーダ装置において、サイドローブは虚像として誤検出の要因となる。このため、サイドローブのピークレベルが低いほど、レーダ装置において虚像として誤検出される確率が低減される。図2の(a)及び図2の(b)では、例えば、メインビームのピークレベルによって正規化したサイドローブのピークレベルに対する電力比(ピークサイドローブレベル比(PSLR:Peak Sidelobe Level Ratio))は約-13dBとなる(ただし、等振幅ビームウェイトを用いた場合)。
また、特許文献1では、送信アンテナにおいて、垂直方向に等間隔で配置されたアンテナ素子(例えば、素子群)が水平方向に少なくとも2列で等間隔に対向して配置され、受信アンテナにおいて、水平方向に等間隔で配置されたアンテナ素子(例えば、素子群)が送信アンテナの各列が含まれる程度の間隔をあけて、垂直方向に少なくとも2列で等間隔に対向して配置される。このアンテナ配置により、非特許文献2と同様に矩形状および面的であって密に配置された仮想アレー配置が得られる。この場合も、例えば、メインビームのピークレベルによって正規化したサイドローブのピークレベルに対する電力比(PSLR)は約-13dBとなる(ただし、等振幅ビームウェイトを用いた場合)。
図1の(a)に示したMIMOレーダのアンテナ配置により、図1の(b)に示すように面的に一様に仮想受信アンテナが配置される。ここで、図1の(b)に示す仮想受信アンテナの垂直方向の開口は、送信アンテナの開口と同じである。換言すると、垂直方向に配置される仮想受信アンテナの素子数は送信アンテナの垂直方向に並ぶ素子数(例えば、Nt個)と同一である。同様に、図1の(b)に示す仮想受信アンテナの水平方向の開口は、受信アンテナの開口と同じである。換言すると、水平方向に配置される仮想受信アンテナの素子数は受信アンテナの水平方向に並ぶ素子数(例えば、Nr個)と同一である。
したがって、仮想受信アンテナの垂直方向に並ぶ素子数(Nt)と、水平方向に並ぶ素子数(Nr)との積は、Nt×Nrとなり、送受信アンテナ数の積Nt×Nrと等しくなり、仮想受信アンテナの開口の拡大は、Nt×Nrまでの値に設定(換言すると、限定又は制限)される。
例えば、特許文献1では、送信アンテナにおいて、垂直方向に等間隔に配置されたアンテナ素子の列が水平方向に少なくとも2列対向して配置されることから、仮想受信アンテナの水平方向の開口は、送信アンテナ素子の列間に配置される受信アンテナ素子数の少なくとも2倍に拡大する。換言すると、仮想受信アンテナに配置される水平方向の素子数は、受信アンテナの水平方向の素子数の少なくとも2倍になる。
同様に、例えば、特許文献1では、受信アンテナにおいて、水平方向に等間隔に配置されたアンテナ素子の列が、垂直方向に送信アンテナの各列が含まれる程度の間隔で少なくとも2列対向して配置されることから、仮想受信アンテナの垂直方向の開口は、受信アンテナ素子の列間に配置される送信アンテナ素子数の少なくとも2倍に拡大する。換言すると、仮想受信アンテナに配置される垂直方向の素子数は、送信アンテナの垂直方向の素子数の少なくとも2倍になる。
ここで、送信アンテナが垂直方向に並ぶアンテナ数(又は、アンテナ素子数)を「Nta」個とし、Nta個のアンテナの列が水平方向に「Ntb」列対向して配置されるとする。また、受信アンテナが水平方向に並ぶアンテナ数(又は、アンテナ素子数)を「Nra」個とし、Nra個のアンテナの列が垂直方向に「Nrb」列対向して配置されるとする。すなわち、送信アンテナ数はNt=Nta×Ntb個であり、受信アンテナ数はNr=Nra×Nrb個である。
この場合、仮想受信アンテナの垂直方向に並ぶ素子数は、送信アンテナの垂直方向の素子数NtaのNrb倍(=Nta×Nrb)となる。また、仮想受信アンテナの水平方向に並ぶ素子数は、受信アンテナの水平方向の素子数のNtb倍(=Nra×Ntb)となる。したがって、仮想受信アンテナの垂直方向及び水平方向のそれぞれに並ぶ素子数の積は、Nta×Nrb×Nra×Ntb=Nt×Nrとなり、送受アンテナ数の積Nt×Nrとなり、例えば、図1のアンテナ配置と同様である。
以上のように、特許文献1に開示されるようなアンテナ配置では、仮想受信アンテナの垂直方向に並ぶ素子数と、水平方向に並ぶ素子数の増大効果は限定的であり、これによりアンテナ開口長の増大も限定的となるため、レーダ装置における測角性能の向上も限定的となり得る。
また、例えば、或るMIMOアレー配置では、レーダ装置が、受信レベル差を有する特定の角度の複数波の到来角を誤る可能性がある。一例として、図3の(a)は、送信アンテナ及び受信アンテナがL字型の配置(例えば、「送受L字配置」と呼ぶ)の例を示し、図3の(b)は、図3の(a)に示すアンテナ配置の送受信アレーアンテナを含む仮想受信アレーを示す。
例えば、図3の(b)に示す仮想受信アンテナ配置において、垂直(又は水平)方向に、1つの仮想アンテナ(例えば、VA#39、VA#40、VA#47及びVA#48(又は、VA#9-VA#13、VA#17-VA#21及びVA#25-VA#29))が配置される場合、レーダ装置は、水平(又は垂直)方向の複数波を分離困難となる可能性がある。
また、例えば、図3の(b)に示す仮想受信アンテナ配置において、垂直(又は水平)位置に、複数の仮想アンテナが配置される場合、レーダ装置は、水平(又は垂直)方向の複数波を分離可能である。しかし、水平位置(又は垂直)の仮想アンテナの間隔が1波長以上の場合、レーダ装置は、特定の水平(又は垂直)間隔(例えば、グレーティングローブが発生する方位(又は仰角)間隔)の複数波を分離困難となる可能性がある。
図4は、図3の(a)及び図3の(b)に示したMIMOレーダのアンテナ配置において、受信電力の等しい2波の到来角(H,V)がそれぞれ(20°, 20°)及び(-20°, -20°)の場合のフーリエビームパターン(推定結果の計算機シミュレーション)を示す。
図4に示すように、真値方向(20°, 20°)及び(-20°, -20°)と異なる方向、例えば、(20°, -20°)及び(-20°, 20°)方向に偽のピークが高いレベル(例えば、真値と同様のレベル)で発生し得る。
そこで、本開示の一実施例では、複数波を分離可能なMIMOアレー配置を用いることにより、2次元の測角性能を向上する方法について説明する。また、本開示の一実施例では、垂直方向及び水平方向の2次元で仮想受信アンテナの開口を拡大するMIMOアレー配置を用いることにより、2次元の測角性能を向上する方法について説明する。
以下、本開示の一実施例に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
以下では、送信ブランチが、複数の送信アンテナから符号分割多重された異なる送信信号を送出し、受信ブランチが、各送信信号を分離して受信処理を行う構成(換言すると、MIMOレーダ構成)のレーダ装置について説明する。ただし、レーダ装置の構成は、これに限定されず、送信ブランチが、複数の送信アンテナから周波数分割多重された異なる送信信号を送出し、受信ブランチが、各送信信号を分離して受信処理を行う構成でもよい。また、同様に、レーダ装置の構成は、送信ブランチで複数の送信アンテナから時分割多重された送信信号を送出し、受信ブランチで受信処理を行う構成でもよい。
また、同様に、送信ブランチが、複数の送信アンテナからドップラ分割多重された異なる送信信号を送出し、受信ブランチが、各送信信号を分離して受信処理を行う構成でもよい。同様に、送信ブランチが、複数の送信アンテナから符号分割多重、時分割多重、ドップラ分割多重の少なくとも2つを組み合わせて多重した送信信号を送出し、受信ブランチが、各送信信号を分離して受信処理を行う構成でもよい。
また、以下では、一例として、チャープ(chirp)パルスのような周波数変調したパルス波を用いたレーダ方式(例えば、チャープパルス送信(fast chirp modulation)とも呼ぶ)の構成について説明する。ただし、変調方式は、周波数変調に限定されない。例えば、本開示の一実施例は、単パルス又は符号化パルスを用いたレーダ方式についても適用可能である。
[レーダ装置の構成]
図5は、本実施の形態に係るレーダ装置10の構成例を示すブロック図である。
レーダ装置10は、レーダ送信部(送信ブランチ)100と、レーダ受信部(受信ブランチ)200と、測位出力部300とを有する。
レーダ送信部100(例えば、送信回路に相当)は、例えば、レーダ信号(レーダ送信信号)を生成し、複数の送信アンテナ106によって構成される送信アレーアンテナを用いて、レーダ送信信号を規定された送信周期にて送信する。
レーダ受信部200(例えば、受信回路に相当)は、例えば、ターゲット(物標。図示せず)において反射されたレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ202(例えば、Na個)を含む受信アレーアンテナを用いて受信する。レーダ受信部200は、各受信アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理し、例えば、物標の有無検出又は反射波信号の到来距離、ドップラ周波数(換言すると相対速度)、及び到来方向の推定を行い、推定結果に関する情報(換言すると、測位情報)を出力する。
測位出力部300は、レーダ受信部200から入力される到来方向の推定結果に関する情報に基づいて、測位出力処理を行う。
なお、レーダ装置10は、例えば、車両といった移動体に搭載されてよく、レーダ受信部200もしくは測位出力部300の測位出力(推定結果に関する情報)は、例えば、衝突安全性を高める先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)又は自動運転システムといったの制御装置ECU(Electronic Control Unit)(図示なし)に接続され、車両駆動制御又は警報発呼制御に利用されてもよい。
また、レーダ装置10は、例えば、路側の電柱又は信号機といった比較的高所の構造物(図示なし)に取り付けられてよく、レーダ装置10は、例えば、通行する車両又は歩行者の安全性を高める支援システム又は不審者の侵入防止システム(図示なし)におけるセンサとして利用してもよく、レーダ受信部200もしくは測位出力部300の測位出力は、例えば、安全性を高める支援システムや不審者侵入防止システムにおける制御装置(図示なし)に接続され、警報発呼制御や異常検出制御に利用されてもよい。なお、レーダ装置10の用途はこれらに限定されず、他の用途に利用されてもよい。
なお、ターゲットはレーダ装置10が検出する対象の物体であり、例えば、車両(4輪及び2輪を含む)、人、ブロック又は縁石を含む。
[レーダ送信部100の構成]
レーダ送信部100は、レーダ送信信号生成部101と、符号生成部104と、位相回転部105と、送信アンテナ106と、を有する。
レーダ送信信号生成部101は、例えば、レーダ送信信号(換言すると、ベースバンド信号)を生成する。レーダ送信信号生成部101は、例えば、変調信号発生部102及びVCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発信器)103を有する。以下、レーダ送信信号生成部101における各構成部について説明する。
変調信号発生部102は、例えば、図6の上段に示すように、のこぎり歯形状の変調信号(換言すると、VCO制御用の変調信号)をレーダ送信周期Tr毎に発生させる。
VCO103は、変調信号発生部102から出力されるレーダ送信信号(変調信号)に基づいて、周波数変調信号(以下、例えば、周波数チャープ信号又はチャープ信号と呼ぶ)を位相回転部105へ出力する。
また、レーダ送信信号生成部101において生成されたチャープ信号は、レーダ受信部200(後述するミキサ部204へ)出力される。
符号生成部104は、符号多重送信を行う送信アンテナ106毎に異なる符号を生成する。符号生成部104は、生成した符号に対応する位相回転量を位相回転部105へ出力する。また、符号生成部104は、生成した符号に関する情報をレーダ受信部200(後述する出力切替部209)へ出力する。
位相回転部105は、例えば、レーダ送信信号生成部101から入力されるチャープ信号に対して、符号生成部104から入力される位相回転量を付与し、位相回転後の信号を送信アンテナ106(例えば、第1の送信アンテナ106-1及び第2の送信アンテナ106-2)に出力する。例えば、位相回転部105は、位相器及び位相変調器を含んでよい(図示せず)。
位相回転部105の出力信号は、規定された送信電力に増幅され、各送信アンテナ106から空間に放射される。換言すると、レーダ送信信号は、符号に対応する位相回転量が付与されることによって、複数の送信アンテナ106から符号多重送信される。
次に、レーダ装置10において設定される符号(例えば、直交符号)の一例について説明する。
符号生成部104は、例えば、符号多重送信を行う送信アンテナ106毎に異なる符号を生成してよい。
例えば、以下では、送信アンテナ106の数を「NTx」個とする。ここで、NTx≧2である。
また、符号多重数を「NCM」とする。図5では、一例として、NCM=NTXについて説明するが、これに限定されず、例えば、複数の送信アンテナ106の組において同一の符号が送信(例えば、アレー送信又はビームフォーミング送信)されてもよい。この場合、NCM<NTXとなる。
符号生成部104は、例えば、符号長(換言すると、符号要素数)Locの符号系列(例えば、互いに直交する関係となる直交符号系列(又は、単に符号又は直交符号とも呼ぶ))に含まれるNallcode個(又は、Nallcode(Loc)個と表すこともある)の直交符号のうち、NCM個の直交符号を、符号多重送信用の符号に設定する。
例えば、符号多重数NCMは、直交符号数Nallcodeよりも少なく、NCM<Nallcodeである。換言すると、直交符号の符号長Locは、符号多重数NCMよりも大きい。例えば、符号長LocのNCM個の直交符号をCodencm=[OCncm(1), OCncm(2),…, OCncm(Loc)]と表記する。ここで、「OCncm(noc)」は、第ncm番の直交符号Codencmにおける第noc番の符号要素を表す。また、「ncm」は符号多重に用いる直交符号のインデックスを表し、ncm=1,…, NCMである。また、「noc」は符号要素のインデックスであり、noc=1,…,Locである。
ここで、符号長LocのNallcode個の直交符号のうち、(Nallcode-NCM)個の直交符号は、符号生成部104において用いられない(換言すると、符号多重送信に用いられない)。以下、(Nallcode-NCM)個の符号生成部104において用いられない直交符号を「未使用直交符号」と呼ぶ。未使用直交符号の少なくとも一つは、例えば、後述するレーダ受信部200の折り返し判定部212におけるドップラ周波数の折り返し判定に用いられる(一例は後述する)。
未使用直交符号の使用により、レーダ装置10は、例えば、複数の送信アンテナ106から符号多重送信された信号を、符号間干渉を抑制した状態で、個別に分離して受信でき、かつ、検出可能なドップラ周波数の範囲を拡大できる(一例は後述する)。
上述したように、符号生成部104において生成されるNCM個の直交符号は、例えば、互いに直交する符号(換言すると、無相関の符号)である。例えば、直交符号系列には、Walsh-Hadamard符号が用いられてよい。Walsh-Hadamard符号の符号長は2のべき乗であり、各符号長の直交符号には、符号長と同数の直交符号が含まれる。例えば、符号長2、4、8又は16のWalsh-Hadamard符号には、それぞれ2、4、8又は16個の直交符号が含まれる。
以下では、一例として、符号数N
CM個の直交符号系列の符号長Locは次式(1)を満たすように設定してよい。
ここで、ceil[x]は実数x以上の最小の整数を出力する演算子(天井関数)である。符号長LocのWalsh-Hadamard符号の場合、Nallcode(Loc)=Locの関係が成り立つ。例えば、符号長Loc=2、4、8、又は16のWalsh-Hadamard符号は、それぞれ2、4、8又は16個の直交符号を含むため、Nallcode(2)=2、Nallcode(4)=4、Nallcode(8)=8、及び、Nallcode(16)=16が成立する。符号生成部104は、例えば、符号長LocのWalsh-Hadamard符号に含まれるNallcode(Loc)個の符号のうち、NCM個の直交符号を用いてよい。
ここで、符号長について説明する。例えば、ターゲット又はレーダ装置10の移動速度に加速度が含まれる場合、符号長が長いほど符号間干渉を受けやすくなる。また、符号長が長いほど、後述するドップラ折り返し判定の際のドップラ折り返し範囲の候補が増大する。このため、同一の距離インデックスに異なる折り返し範囲に亘って複数のドップラ周波数のターゲットが存在する場合には、異なる折り返し範囲において検出されるドップラ周波数インデックスが重複する確率が増大するめた、レーダ装置10は、折り返しを適切に判定することが困難になる確率が増加し得る。
このため、レーダ装置10は、後述するレーダ受信部200の折り返し判定部212における折り返し判定の性能面及び演算量の観点から、符号長のより短い符号を用いてもよい。一例として、レーダ装置10は、式(1)を満たす符号長Locのうち最も短い符号長の直交符号系列を用いてもよい。
なお、符号長LocのWalsh-Hadamard符号に、例えば、符号長Locの符号[OCncm(1), OCncm(2),…, OCncm(Loc-1), OCncm(Loc)]が含まれる場合、符号長LocのWalsh-Hadamard符号には、当該符号の奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号[OCncm(1), -OCncm(2),…, OCncm(Loc-1), -OCncm(Loc)]も含まれる。
また、符号長LocのWalsh-Hadamard符号と異なる他の符号であっても、例えば、符号長Locの符号[OCncm(1), OCncm(2),…, OCncm(Loc-1), OCncm(Loc)]が含まれる場合、符号長Locの符号は、当該符号の奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号[OCncm(1), -OCncm(2),…, OCncm(Loc-1), -OCncm(Loc)]であってもよいし、又は、当該符号の偶数番目の符号要素が同一であり、奇数番目の符号要素が符号反転している符号[-OCncm(1), OCncm(2),…, -OCncm(Loc-1), OCncm(Loc)]であってよい。
未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)が2以上の場合、レーダ装置10は、例えば、上述した関係の符号の組を未使用直交符号に含まないように、符号を選択してもよい。例えば、上述した関係の符号の組において一方の符号は符号多重送信に用いられ、他方の符号は未使用直交符号に含まれてもよい。この未使用直交符号の選択により、後述するレーダ受信部200の折り返し判定部212におけるドップラ周波数の折り返し判定精度を向上できる(一例は後述する)。
次に、各符号多重数NCMにおける直交符号の一例について説明する。
<NCM=2又は3の場合>
NCM=2又は3の場合、例えば、符号長Loc=4、8、16、32、…のWalsh-Hadamard符号を適用してよい。これらの符号長Locの場合、NCM<Nallcode(Loc)となる。また、符号多重数がNCM=2又は3の場合、これらの符号長Locのうち、符号長が最も短いWalsh-Hadamard符号(例えば、Loc=4)を用いる場合について説明する。
例えば、符号長LocのWalsh-Hadamard符号をWHLoc(nwhc)と表す。なお、nwhcは符号長LocのWalsh-Hadamard符号に含まれる符号インデックスを表し、nwhc=1,…, Locである。例えば、符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号には、直交符号WH4(1)=[1,1, 1, 1]、WH4(2)=[1,-1, 1, -1]、WH4(3)=[1,1, -1, -1]、及び、WH4(4)=[1,-1, -1, 1]が含まれる。
ここで、符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号のうち、WH4(1)= [1,1, 1, 1]とWH4(2) = [1,-1, 1, -1]とは、相互の符号間において、奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号の組である。また、WH4(3)= [1,1, -1, -1]及びWH4 (4)= [1,-1, -1, 1]も、WH4(1)及びWH4(2)の組と同様な関係の符号の組である。
例えば、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)が2以上の場合には、レーダ装置10は、このような関係の符号の組を未使用直交符号に含まないように、符号を選択してもよい。
例えば、符号多重数NCM=2の場合、符号生成部104は、符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号のうち、2個の直交符号を符号多重送信用の符号に決定する。この場合、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)は2個となる。
例えば、符号生成部104は、WH4(1)とWH4(2)の符号の組、又は、WH4(3)とWH4(4)の符号の組が未使用直交符号に含まれないように、符号多重送信用の符号を選択してもよい。例えば、符号多重送信用の符号(Code1及びCode2)の組み合わせは、Code1=WH4(1)(= [1,1, 1, 1])及びCode2=WH4(3)(= [1,1, -1, -1])の組み合わせ、Code1=WH4(1)及びCode2=WH4(4)の組み合わせ、Code1=WH4(2)及びCode2=WH4(3)の組み合わせ、又は、Code1=WH4(2)及びCode2=WH4(4)の組み合わせでもよい。
また、符号多重数NCM=2の場合、例えば、レーダ受信部200における折り返し判定部212は、符号長Loc=4のNallcode=4個のWalsh-Hadamard符号のうち、符号生成部104において用いられない(換言すると、符号多重送信に用いられない)2個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号の少なくとも一つを、折り返し判定に用いてよい(一例は後述する)。
以下では、符号長LocのNallcode個の直交符号のうち、未使用直交符号を「UnCodenuc=[UOCnuc(1), UOCnuc(2),…, UOCnuc(Loc) ]」と表す。なお、UnCodenucは第nuc番の未使用直交符号を表す。また、nucは未使用直交符号のインデックスを表し、nuc =1,…, (Nallcode-NCM)である。また、UOCnuc(noc)は第nuc番の未使用直交符号UnCodenucにおけるnoc番の符号要素を表す。また、nocは符号要素のインデックスを表し、noc=1,…,Locである。
例えば、符号多重数がNCM=2であり、符号生成部104が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH4(1)(= [1,1, 1, 1])及びCode2=WH4(3)(= [1,1, -1, -1])の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH4(2)(= [1,-1, 1, -1])及びUnCode2=WH4(4)(= [1,-1, -1, 1])となる。なお、未使用直交符号(UnCode1及びUnCode2)の組み合わせは、WH4(2)及びWH4(4)の組み合わせに限らず、他の符号の組み合わせでもよい。
同様に、符号多重数NCM=3の場合、符号生成部104は、例えば、符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号のうち、3個の直交符号を符号多重送信用の符号に決定する。この場合、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)は1個となる。
例えば、符号生成部104は、Code1=WH4(3)=[1,1, -1, -1]、Code2=WH4(4)=[1,-1, -1, 1]、及び、Code3=WH4(2)=[1,-1, 1, -1]を選択してもよい。
また、レーダ受信部200の折り返し判定部212は、符号長Loc=4のNallcode=4個のWalsh-Hadamard符号のうち、1個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号を折り返し判定に用いてよい(一例は後述する)。例えば、符号多重数がNCM=3であり、符号生成部104が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH4(3)=[1,1, -1, -1]、Code2=WH4(4)=[1,-1, -1, 1]、Code3=WH4(2)=[1,-1, 1, -1]の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH4(1)=[1,1, 1, 1]となる。なお、符号多重送信用の符号(Code1、Code2及びCode3)及び未使用直交符号(UnCode1)の組み合わせは、これらに限らず、他の符号の組み合わせでもよい。
なお、レーダ装置10は、符号多重数NCM=5以上の場合も、符号多重数NCM=2~4の場合と同様に符号多重送信用の符号、及び、未使用直交符号を決定してもよい。
例えば、符号生成部104は、式(2)に示す符号長LocのWalsh-Hadamard符号のうち、N
CM個の直交符号を符号多重送信用の符号に選択してもよい。この場合、N
CM<Loc=N
allcodeとなる。
また、レーダ受信部200における折り返し判定部212は、符号長LocのNallcode=Loc個のWalsh-Hadamard符号のうち、(Nallcode-NCM)個の未使用直交符号を折り返し判定に用いてよい(一例は後述する)。また、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)が2個以上の場合、符号生成部104は、例えば、符号長LocのWalsh-Hadamard符号のうち、相互の符号間において奇数番目及び偶数番目の何れか一方の符号要素が同一であり、奇数番目及び偶数番目の他方の符号要素が符号反転している符号の組が未使用直交符号に含まれないように、符号多重送信用の符号を選択してもよい。
換言すると、符号長LocのWalsh-Hadamard符号のうち、相互の符号間において奇数番目及び偶数番目の何れか一方の符号要素が同一であり、奇数番目及び偶数番目の他方の符号要素が符号反転している符号の組の何れか一方が未使用直交符号に含まれ、他方が未使用直交符号に含まれなくてよい。
なお、直交符号系列を構成する要素は実数に限らず、複素数値が含まれてもよい。
また、符号は、Walsh-Hadamard符号と異なる他の直交符号でもよい。例えば、符号は、直交M系列符号又は擬似直交符号でもよい。
以上、各符号多重数NCMにおける直交符号の一例について説明した。
次に、符号生成部104において生成された符号多重送信用の符号に基づく位相回転量の一例について説明する。
レーダ装置10は、例えば、符号多重送信を行う送信アンテナTx#1~Tx#NTXに対して、それぞれ異なる直交符号を用いた符号多重送信を行う。そこで、符号生成部104は、例えば、第m番の送信周期Trにおいて、第ncm番の送信アンテナTx#ncmに対して付与する、直交符号Codencmに基づく位相回転量ψncm(m)を設定し、位相回転部105に出力する。ここで、ncm=1,…, NCMである。
例えば、位相回転量ψ
ncm(m)は、次式(3)に示すように、符号長Loc回の送信周期の期間毎に、直交符号Code
ncmのLoc個の各符号要素OC
ncm(1),…, OC
ncm(Loc)に相当する位相量を巡回的に付与する。
ここで、angle(x)は実数xのラジアン位相を出力する演算子であり、angle(1)=0、angle(-1)=π、angle(j)=π/2、及び、angle(-j)=-π/2である。jは虚数単位である。また、OC_INDEXは、直交符号系列Code
ncmの要素を指示する直交符号要素インデックスであり、送信周期(Tr)毎に、次式(4)のように1からLocの範囲で巡回的に可変する。
ここで、mod(x,y)はモジュロ演算子であり、xをyで割った後の余りを出力する関数である。また、m=1,…,Ncである。Ncは、レーダ装置10がレーダ測位に用いる所定の送信周期数(以下では、「レーダ送信信号送信回数」と呼ぶ)である。また、レーダ装置10は、例えば、Locの整数倍(例えば、Ncode倍)となるレーダ送信信号送信回数Ncの送信を行う。例えば、Nc=Loc×Ncodeである。
また、符号生成部104は、送信周期(Tr)毎に、直交符号要素インデックスOC_INDEXをレーダ受信部200の出力切替部209へ出力する。
位相回転部105は、例えば、NTx個の送信アンテナ106にそれぞれ対応する位相器又は位相変調器を備える。位相回転部105は、例えば、送信周期Tr毎に、レーダ送信信号生成部101から入力されるチャープ信号に対して、符号生成部104から入力される位相回転量ψncm(m)をそれぞれ付与する。
例えば、位相回転部105は、送信周期Tr毎にレーダ送信信号生成部101から入力されるチャープ信号に対して、第ncm番の送信アンテナTx#ncmに対して付与する、直交符号Codencmに基づく位相回転量ψncm(m)を付与する。ここで、ncm=1,…,NCMであり、m=1,..,Ncである。
NTx個の送信アンテナ106に対する位相回転部105からの出力は、例えば、所定の送信電力に増幅後に、NTx個の送信アンテナ106(例えば、送信アレーアンテナ)から空間に放射される。
一例として、送信アンテナ106の数NTx =3、符号多重数NCM=3の符号多重送信する場合について説明する。なお、送信アンテナ数NTx及び符号多重数NCMは、これらの値に限定されない。
例えば、位相回転量ψ1(m), ψ2(m)及びψ3(m)が、第m番の送信周期Tr毎に符号生成部104から位相回転部105へ出力される。
第1番(ncm=1)の位相回転部105(換言すると、送信アンテナ106(例えば、Tx#1)に対応する位相器)は、送信周期Tr毎にレーダ送信信号生成部101において生成されたチャープ信号に対して、送信周期Tr毎に、次式(5)のように位相回転を付与する。第1番の位相回転部105の出力は、送信アンテナ106(Tx#1)から送信される。ここで、cp(t)は、レーダ送信信号生成部101から出力される送信周期Tr毎のチャープ信号を表す。
同様に、第2番(ncm=2)の位相回転部105は、送信周期Tr毎にレーダ送信信号生成部101において生成されたチャープ信号に対して、送信周期Tr毎に、次式(6)のように位相回転を付与する。第2番の位相回転部105の出力は、送信アンテナ106(例えば、Tx#2)から送信される。
同様に、第3番(ncm=3)の位相回転部105は、送信周期Tr毎にレーダ送信信号生成部101において生成されたチャープ信号に対して、送信周期Tr毎に、次式(7)のように位相回転を付与する。第3番の位相回転部105の出力は、送信アンテナ106(例えば、Tx#3)から送信される。
なお、レーダ装置10は、レーダ測位を継続的に行う場合に、レーダ測位毎(例えば、Nc回の送信周期(Nc×Tr)毎)に、直交符号Codencmに用いる符号を可変に設定してもよい。
また、レーダ装置10は、例えば、NTx個の位相回転部105の出力を送信する送信アンテナ106(換言すると、位相回転部105の各出力に対応する送信アンテナ106)を可変に設定してもよい。例えば、複数の送信アンテナ106と、符号多重送信用の符号系列との対応付けは、レーダ装置10におけるレーダ測位毎に異なってもよい。レーダ装置10は、例えば、送信アンテナ106毎に異なる他レーダからの干渉の影響を受けて、信号を受信する場合に、レーダ測位毎に送信アンテナ106から出力される符号多重信号が変わることになり、干渉の影響のランダマイズ効果を得ることができる。
以上、レーダ送信部100の構成例について説明した。
[レーダ受信部200の構成]
図5において、レーダ受信部200は、Na個の受信アンテナ202(例えば、Rx#1~Rx#Naとも表す)を備え、アレーアンテナを構成する。また、レーダ受信部200は、Na個のアンテナ系統処理部201-1~201-Naと、CFAR(Constant False Alarm Rate)部211と、折り返し判定部212と、符号多重分離部213と、方向推定部214と、を有する。
各受信アンテナ202は、レーダ測定のターゲットを含む反射物体に反射したレーダ送信信号である反射波信号をそれぞれ受信し、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力する。
各アンテナ系統処理部201は、受信無線部203と、信号処理部206とを有する。
受信無線部203は、ミキサ部204と、LPF(low pass filter)205と、を有する。ミキサ部204は、例えば、受信した反射波信号に対して、レーダ送信信号生成部101から入力される、レーダ送信信号であるチャープ信号をミキシングする。LPF205は、ミキサ部204の出力信号に対してLPF処理を施すことによって、反射波信号の遅延時間に応じた周波数となるビート信号を出力する。例えば、図2に示すように、送信チャープ信号(送信周波数変調波)の周波数と、受信チャープ信号(受信周波数変調波)の周波数との差分周波数がビート周波数(換言すると、ビート信号)として得られる。
各アンテナ系統処理部201-z(ただし、z=1~Naの何れか)の信号処理部206は、AD変換部207と、ビート周波数解析部208と、出力切替部209と、ドップラ解析部210と、を有する。
信号処理部206において、AD変換部207は、例えば、LPF205から出力された信号(例えば、ビート信号)を、離散的にサンプリングされた離散サンプルデータに変換する。
ビート周波数解析部208は、例えば、送信周期Tr毎に、規定された時間範囲(レンジゲート)において得られたNdata個の離散サンプルデータをFFT(Fast Fourier Transform)処理する。これにより、信号処理部206では、反射波信号(レーダ反射波)の遅延時間に応じたビート周波数にピークが現れる周波数スペクトラムが出力される。なお、ビート周波数解析部208は、FFT処理として、例えば、Han窓又はHamming窓といった窓関数係数を乗算してもよい。レーダ装置10は、窓関数係数を用いることにより、ビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。
また、Ndata個の離散サンプリングデータ数が2のべき乗ではない場合、ビート周波数解析部208は、例えば、ゼロ埋めしたデータを含めることで2べき乗個のFFTサイズとしてFFT処理してもよい。
なお、例えば、ミキサ部204が直交ミキサ構成である場合、ミキサ部204の出力としてI信号成分(同相位相成分、In-phase成分)及びQ信号成分(直交位相成分、Quadrature成分)が得られる。この場合、例えば、ミキサ部204の出力のI信号成分又はQ信号成分毎にLPFが適用され、その出力にAD変換が適用されることにより、I信号成分のAD変換出力、及び、Q信号成分のAD変換出力が得られてよい。ミキサ部204が直交ミキサ構成である場合、例えば、LPF205の遮断周波数(又は、カットオフ周波数)fLPFを、2fmb程度に設定することにより、ビート周波数解析部208は、fmbから2fmbの範囲の折り返したビート周波数を、負のビート周波数として検出でき、距離検出範囲を拡大できる。なお、fmbはビート周波数解析部208のFFT処理において、サンプリング定理に基づいて折り返しなく検出可能な最大のビート周波数を示し、例えば、fmb =Ndata/(2TRG)=fsa/2で表されてよい。ここで、TRGは、レンジゲートの時間範囲を示し、fsaは、ADサンプリング周波数を示す。
ここで、第m番目のチャープパルス送信によって得られる第z番目の信号処理部206におけるビート周波数解析部208から出力されるビート周波数応答をRFTz(fb, m)で表す。ここで、fbはビート周波数インデックスを表し、FFTのインデックス(ビン番号)に対応する。例えば、fb=0,…,Ndata/2-1であり、z=1,…,Naであり、m=1,…,NCである。ビート周波数インデックスfbが小さいほど、反射波信号の遅延時間が小さい(換言すると、ターゲットとの距離が近い)ビート周波数を示す。
また、ビート周波数インデックスf
bは、次式(8)を用いて距離情報に変換してよい。以下では、ビート周波数インデックスf
bを「距離インデックスf
b」とも呼ぶ。
ここで、Bwは、チャープ信号におけるレンジゲート内での周波数変調帯域幅を表し、C0は光速度を表す。
なお、ミキサ部204が直交ミキサ構成の場合、例えば、負のビート周波数(例えば、fb= Ndata /2、…、-1)として検出される信号を、正のビート周波数(fb= Ndata /2、…、Ndata-1)の折り返しと見なすことが可能である。このため、例えば、fb=0,…, Ndata-1と表記してよい。
出力切替部209は、符号生成部104から出力される直交符号要素インデックスOC_INDEXに基づいて、送信周期毎のビート周波数解析部208の出力を、Loc個のドップラ解析部210のうち、OC_INDEX番目のドップラ解析部210に選択的に切り替えて出力する。換言すると、出力切替部209は、第m番目の送信周期Trにおいて、OC_INDEX番目のドップラ解析部210を選択する。
信号処理部206は、例えば、Loc個のドップラ解析部210-1~210-Locを有する。例えば、第noc番のドップラ解析部210には、出力切替部209によってLoc回の送信周期(Loc×Tr)毎にデータが入力される。このため、第noc番目のドップラ解析部210は、Nc回の送信周期のうち、Ncode回の送信周期のデータ(例えば、ビート周波数解析部208から出力されるビート周波数応答RFTz(fb, m))を用いて、距離インデックスfb毎にドップラ解析を行う。ここで、nocは符号要素のインデックスであり、noc=1, …, Locである。
例えば、Ncodeが2のべき乗値である場合、ドップラ解析においてFFT処理を適用してもよい。この場合、FFTサイズはNcodeであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は±1/(2Loc×Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/(Ncode×Loc×Tr)であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs = -Ncode/2, …, 0, …, Ncode/2-1である。
例えば、第z番の信号処理部206のドップラ解析部210の出力VFT
z
noc(f
b, f
s)は、次式(9)に示される。なお、jは虚数単位であり、z=1~Naである。
また、Ncodeが2のべき乗でない場合には、例えば、ゼロ埋めしたデータを含めることで2のべき乗個のデータサイズ(FFTサイズ)としてFFT処理してもよい。例えば、ゼロ埋めしたデータを含めた場合のドップラ解析部210におけるFFTサイズをN
codewzeroとした場合、第z番の信号処理部206におけるドップラ解析部210の出力VFT
z
noc(f
b, f
s)は、次式(10)に示される。
ここで、nocは符号要素のインデックスであり、noc=1,…,Locである。また、FFTサイズはNcodewzeroであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は、±1/(2Loc×Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/(Ncodewzero×Loc×Tr)であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs=-Ncodewzero/2,…,0,…, Ncodewzero/2-1である。
以下では、一例として、Ncodeが2のべき乗値である場合について説明する。なお、ドップラ解析部210においてゼロ埋めを用いる場合、以下の説明においてNcodeをNcodewzeroと置き換えることにより、同様に適用でき、同様の効果を得られる。
また、ドップラ解析部210は、FFT処理の際に、例えば、Han窓又はHamming窓といった窓関数係数を乗算してもよい。レーダ装置10は、窓関数を適用することでビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。
以上、信号処理部206の各構成部における処理について説明した。
図5において、CFAR部211は、第1~第Na番目の信号処理部206それぞれのLoc個のドップラ解析部210の出力を用いて、CFAR処理(換言すると、適応的な閾値判定)を行い、ピーク信号を与える距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarを抽出する。
CFAR部211は、例えば、次式(11)のように、第1~第Na番目の信号処理部206のドップラ解析部210の出力VFT
z
noc(f
b, f
s)を電力加算し、距離軸とドップラ周波数軸(相対速度に相当)とからなる2次元のCFAR処理、又は、1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理を行う。2次元のCFAR処理又は1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理については、例えば、非特許文献3に開示された処理が適用されてよい。
CFAR部211は、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となる距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfar、及び、受信電力情報PowerFT(fb_cfar, fs_cfar)を折り返し判定部212に出力する。
次に、図5に示す折り返し判定部212の動作例について説明する。
折り返し判定部212は、例えば、CFAR部211において抽出された距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarに基づいて、ドップラ解析部210の出力であるドップラ成分VFTz
noc(fb_cfar, fs_cfar)の折り返し判定を行う。ここで、z=1,…,Naであり、noc=1,…,Locである。
折り返し判定部212は、例えば、想定するターゲットのドップラ範囲を±1/(2×Tr)としてドップラ折り返し判定処理を行ってよい。
ここで、例えば、Ncodeが2のべき乗値である場合、ドップラ解析部210は、符号要素毎にFFT処理を適用するので、(Loc×Tr)周期で、ビート周波数解析部208からの出力を用いてFFT処理を行う。このため、ドップラ解析部210においてサンプリング定理によって折り返しが発生しないドップラ範囲は±1/(2Loc×Tr)である。
よって、折り返し判定部212において想定するターゲットのドップラ範囲は、ドップラ解析部210において折り返しが発生しないドップラ範囲よりも広い。例えば、折り返し判定部212は、ドップラ解析部210の折り返しが発生しないドップラ範囲±1/(2Loc×Tr)のLoc倍のドップラ範囲±1/(2×Tr)までを想定して折り返し判定処理を行う。
以下、折り返し判定部212における折り返し判定処理の一例を説明する。
ここでは、一例として、符号多重数NCM=3であり、符号生成部104が符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号のうち、3個の直交符号Code1=WH4(3)=[1,1, -1, -1]、Code2=WH4(4)=[1,-1, -1, 1]、及び、Code3=WH4(2)=[1,-1, 1, -1]を用いる場合について説明する。
折り返し判定部212は、例えば、符号長Loc=4のNallcode=4個のWalsh-Hadamard符号のうち、1個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号を折り返し判定に用いる。例えば、符号多重数がNCM=3であり、符号生成部104が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH4(3)=[1,1, -1, -1]、Code2=WH4(4)=[1,-1, -1, 1]及びCode3=WH4(2)=[1,-1, 1, -1]の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH4(1)=[1,1, 1, 1]となる。
例えば、レーダ装置10が符号長Loc=4の直交符号を用いて符号多重送信を行う場合、上述したように、ドップラ解析部210は符号要素毎にFFT処理を適用するので、(Loc×Tr)=(4×Tr)周期で、ビート周波数解析部208からの出力を用いてFFT処理を行う。よって、ドップラ解析部210においてサンプリング定理よって折り返しが発生しないドップラ範囲は、±1/(2 Loc×Tr)=±1/(8×Tr)となる。
折り返し判定部212は、例えば、ドップラ解析部210におけるドップラ解析の範囲(ドップラ範囲)と比較して、直交符号系列の符号長Loc倍の範囲において折り返しの判定を行ってよい。例えば、折り返し判定部212は、ドップラ解析部210において折り返しが発生しないドップラ範囲±1/(8×Tr)の4(=Loc)倍のドップラ範囲=±1/(2×Tr)を想定して折り返し判定処理を行う。
ここで、CFAR211部において抽出される距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarに対応するドップラ解析部210の出力であるドップラ成分VFTz
noc(fb_cfar,fs_cfar)は、例えば、±1/(2×Tr)のドップラ範囲において、図7における(a)及び(b)に示すような折り返しを含むドップラ成分が含まれる可能性がある。
例えば、図7における(a)に示すように、ドップラ成分VFTz
noc(fb_cfar,fs_cfar)は、fs_cfar<0の場合、±1/(2×Tr)のドップラ範囲において、fs_cfar-Ncode、fs_cfar、fs_cfar+Ncode、及び、fs_cfar+2Ncodeの4(=Loc)通りのドップラ成分の可能性がある。
また、例えば、図7における(b)に示すように、ドップラ成分VFTz
noc(fb_cfar,fs_cfar)は、fs_cfar>0の場合、±1/(2×Tr)のドップラ範囲において、fs_cfar-2Ncode、fs_cfar-Ncode、fs_cfar、及び、fs_cfar+Ncodeの4(=Loc)通りのドップラ成分の可能性がある。
折り返し判定部212は、例えば、未使用直交符号を用いて、図7に示すような±1/(2×Tr)のドップラ範囲において符号分離処理を行う。例えば、折り返し判定部212は、未使用直交符号に対して、図7に示すような折り返しを含む4(=Loc)通りのドップラ成分の位相変化を補正してもよい。
そして、折り返し判定部212は、例えば、未使用直交符号に基づいて符号分離されたドップラ成分の受信電力に基づいて、各ドップラ成分が折り返しであるか否かを判定する。例えば、折り返し判定部212は、折り返しを含むドップラ成分のうち、受信電力が最小のドップラ成分を検出し、検出したドップラ成分を真のドップラ成分と判定してよい。換言すると、折り返し判定部212は、折り返しを含むドップラ成分のうち、最小の受信電力と異なる他の受信電力のドップラ成分を偽のドップラ成分であると判定してよい。
この折り返し判定処理により、折り返し判定部212は、折り返しを含むドップラ範囲の曖昧性を低減できる。また、この折り返し判定処理により、折り返し判定部212は、ドップラ解析部210におけるドップラ範囲(例えば、-1/(8Tr)以上、かつ、1/(8Tr)未満の範囲)と比較して、曖昧性なくドップラ周波数を検出できる範囲を、-1/(2Tr)以上、かつ、1/(2Tr)未満の範囲に拡大できる。
これは、未使用直交符号に基づいて符号分離することにより、例えば、真のドップラ成分は、当該ドップラ成分の位相変化が正しく補正され、符号多重送信用の直交符号と未使用直交符号との間の直交性が維持される。よって、未使用直交符号と符号多重送信信号とは無相関となり、折り返し判定部212は、ノイズレベル程度の受信電力を検出する。
一方、例えば、偽のドップラ成分は、当該ドップラ成分の位相変化が誤って補正され、符号多重送信用の直交符号と未使用直交符号との間の直交性は維持されない。よって、未使用直交符号と符号多重送信信号との相関成分(干渉成分)が発生するため、例えば、折り返し判定部212は、ノイズレベルよりも大きい受信電力を検出する。
よって、上述したように、折り返し判定部212は、未使用直交符号に基づいて符号分離されたドップラ成分のうち、受信電力が最小のドップラ成分を真のドップラ成分と判定し、最小の受信電力と異なる受信電力の他のドップラ成分を偽のドップラ成分であると判定してよい。
例えば、折り返し判定部212は、各アンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の出力に基づいて、折り返しを含むドップラ成分の位相変化を補正し、未使用直交符号UnCode
nucを用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar,f
s_cfar,DR)を、次式(12)に従って算出する。
折り返し判定部212は、式(12)を用いて、全てのアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の出力に対して、未使用直交符号UnCodenucを用いた符号分離後の受信電力の総和を算出する。これにより、折り返し判定部212は、受信信号レベルが低い場合でも、折り返し判定精度を向上できる。ただし、折り返し判定部212は、式(12)の代わりに、一部のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の出力に対して、未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力を算出してもよい。この場合でも、折り返し判定部212は、例えば、受信信号レベルが十分高い範囲では、折り返し判定の精度を保ち、演算処理量を削減できる。
なお、式(12)において、nuc=1,…,Nallcode-NCMである。また、DRはドップラ折り返し範囲を示すインデックスであり、例えば、DR=ceil[-Loc/2], ceil[-Loc/2]+1,…,0,…, ceil[Loc/2]-1の範囲の整数値をとる。
また、式(12)において、
は、要素数が等しいベクトル同士の要素毎の積を表す。例えば、n次ベクトルA=[a
1,..,a
n]及びB=[b
1,..,b
n]に対して、要素毎の積は以下の式(13)で表される。
また、式(12)において、
は、ベクトル内積演算子を表す。また、式(12)において、上付き添え字Tはベクトル転置を表し、上付き添え字*(アスタリスク)は複素共役演算子を表す。
式(12)において、α(fs_cfar)は「ドップラ位相補正ベクトル」を表す。ドップラ位相補正ベクトルα(fs_cfar)において、例えば、CFAR部211において抽出されたドップラ周波数インデックスfs_cfarが、ドップラ折り返しを含まないドップラ解析部210の出力範囲(換言すると、ドップラ範囲)とする場合に、折り返し判定部212は、Loc個のドップラ解析部210間におけるドップラ解析の時間差に起因するドップラ位相回転を補正する。
例えば、ドップラ位相補正ベクトルα(f
s_cfar)は、次式(14)のように表される。式(14)に示すドップラ位相補正ベクトルα(f
s_cfar)は、例えば、第1番のドップラ解析部210の出力VFT
z
1(f
b_cfar, f
s_cfar)のドップラ解析時間を基準として、第2番のドップラ解析部210の出力VFT
z
2(f
b_cfar, f
s_cfar)から第Loc番のドップラ解析部VFT
z
Loc(f
b_cfar, f
s_cfar)のそれぞれにおけるTr,2Tr,…,(Loc-1)Trの時間遅れにより生じるドップラ周波数インデックスf
s_cfarのドップラ成分での位相回転の補正に用いるドップラ位相補正係数を要素とするベクトルである。
また、式(12)において、β(DR)は「折り返し位相補正ベクトル」を表す。折り返し位相補正ベクトルβ(DR)は、例えば、Loc個のドップラ解析部210間におけるドップラ解析の時間差に起因するドップラ位相回転のうち、ドップラ折り返しが有る場合を考慮して、2πの整数倍のドップラ位相回転の補正に用いられる。
例えば、折り返し位相補正ベクトルβ(DR)は、次式(15)のように表される。
例えば、Loc=4の場合、DR=-2,-1,0,1の整数値をとり、折り返し位相補正ベクトルβ(DR)は、式(16)、式(17)、式(18)及び式(19)のように表される。
例えば、Loc=4の場合、図7における(a)又は(b)においてドップラ解析部210の出力であるドップラ周波数インデックスfs_cfarのドップラ成分が検出されるドップラ範囲(例えば、-1/8Tr~+1/8Tr)はDR=0に対応する。また、DR=0のドップラ周波数インデックスfs_cfarに対する2πの整数倍のドップラ位相回転(例えば、β(1)、β(-1)及びβ(-2))により、折り返し判定部212は、DR=1に対応するドップラ範囲(例えば、1/8Tr~3/8Tr)のドップラ成分、DR=-1に対応するドップラ範囲(例えば、-3/8Tr~-1/8Tr)のドップラ成分、及び、DR=-2に対応するドップラ範囲(例えば、-1/2Tr~-3/8Tr及び3/8Tr~1/2Tr)のドップラ成分を算出する。
また、式(12)において、VFTALL
z(f
b_cfar, f
s_cfar)は、例えば、次式(20)のように、第z番のアンテナ系統処理部201におけるLoc個のドップラ解析部210の出力VFT
z
noc(f
b, f
s)のうち、CFAR部211において抽出された距離インデックスf
b_cfar及びドップラ周波数インデックスf
s_cfarに対応する成分VFT
z
noc(f
b_cfar, f
s_cfar)(ただし、noc=1,…,Loc)をベクトル形式で表す。
例えば、折り返し判定部212は、式(12)に従って、折り返しを含むドップラ成分の位相変化を補正した未使用直交符号UnCodenucを用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DR)を、DR=ceil[-Loc/2], ceil[-Loc/2]+1,…,0,…, ceil[Loc/2]-1の範囲においてそれぞれ算出する。
そして、折り返し判定部212は、各DRの範囲のうち、受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)が最小となるDRを検出する。以下では、次式(21)に示すように、各DRの範囲のうち、受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)が最小となるDRを「DR
min」と表す。
以下、上述したような折り返し判定処理によって、ドップラ折り返し判定が可能な理由について説明する。
式(20)に示すVFTALL
z(f
b_cfar, f
s_cfar)に含まれる第ncm番の送信アンテナ106(例えば、Tx#ncm)から送信されたレーダ送信信号成分は、例えば、ノイズ成分を無視すると次式(22)のように表される。
ここで、γz,ncmは、第ncm番の送信アンテナ106から送信されたレーダ送信信号がターゲットに反射した信号が第z番のアンテナ系統処理部201において受信された場合の複素反射係数を表す。また、DRtrueは、真のドップラ折り返し範囲を示すインデックスを表す。DRtrueは、ceil[-Loc/2], ceil[-Loc/2]+1,…,0,…, ceil[Loc/2]-1の範囲のインデックス値とする。以下、DRmin=DRtureとなるように判定できることを示す。
第1番~第N
CM番の送信アンテナ106から送信されたレーダ送信信号成分に対して、未使用直交符号UnCode
nucを用いた符号分離後の受信電力の総和PowDeMul(nuc,DR,DR
true)は次式(23)で表される。
なお、式(23)に示すPowDeMul(nuc,DR,DR
true)は、式(12)における、
の項の評価値に相当する。
式(23)において、DR=DRtrueの場合、未使用直交符号UnCodenucと符号多重送信用の直交符号Codencmとの相関値はゼロ(例えば、UnCodenuc
*・{Codencm}T=0)となるため、PowDeMul(nuc,DR,DRtrue)=0となる。
一方、式(23)において、DR≠DR
trueの場合、
と符号多重送信用の直交符号Code
ncmとの相関値に依存したPowDeMul(nuc,DR,DR
true)が出力される。ここで、全てのUnCode
nucにおいてPowDeMul(nuc,DR,DR
true)がゼロにならない場合、例えば、次式(24)を満たし、DR=DR
trueの場合、PowDeMul(nuc, DR
true,DR
true)の電力が最小となり、折り返し判定部212は、DR
true(=DR
min)を検出できる。換言すると、折り返し判定部212は、式(12)に従ってドップラ折り返し判定できる。
例えば、式(24)を満たすには、
の項が他の未使用直交符号UnCode
nuc2に一致しなければよい。ここで、nuc2≠nucである。
従って、未使用直交符号が1個の場合には式(24)を満たす。また、未使用直交符号が複数の場合には、例えば、符号生成部104は、
の項が他の未使用直交符号に一致しないように、符号多重送信用の符号を選択してもよい。
ここで、Walsh-Hadamard符号又は直交M系列符号といった符号を用いる場合、符号長Locの直交符号のうち、相互の符号間において奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号の組が含まれる場合がある。
一方で、β(0)=[1,1,…,1], β(-Loc/2)=[1, -1, 1,-1,….1,-1]となるため、
の項は、UnCode
nucの奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号に変換される。
したがって、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)が2個以上の場合には、例えば、符号生成部104は、符号長Locの直交符号のうち、相互の符号間において奇数番目及び偶数番目の一方の符号要素が同一であり、奇数番目及び偶数番目の他方の符号要素が符号反転している符号の組が未使用直交符号に含まれないように、符号多重送信用の符号又は未使用直交符号を選択してもよい。
例えば、符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号には、WH
4(1)= [1,1, 1, 1]、及び、WH
4(2)= [1,-1, 1, -1]が含まれ、
、又は、
となる。このため、例えば、符号生成部104は、複数の未使用直交符号にWH
4(1)及びWH
4(2)の組を含めないように符号多重送信用の符号又は未使用直交符号を選択してもよい。また、WH
4(3)= [1,1, -1, -1]、及び、WH
4(4)= [1,-1, -1, 1]も同様な関係となるため、例えば、符号生成部104は、複数の未使用直交符号にWH
4(3)及びWH
4(4)の組を含めないように符号多重送信用の符号又は未使用直交符号を選択してもよい。
なお、未使用直交符号UnCode
nucが複数ある場合、受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)の代わりに、次式(25)のように、全ての未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCodeAll(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)を用いてもよい。
全ての未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力を求めることで、折り返し判定部212は、受信信号レベルが低い場合でも、折り返し判定の精度を向上できる。
例えば、折り返し判定部212は、DR=ceil[-Loc/2], ceil[-Loc/2]+1,…,0,…, ceil[Loc/2]-1のそれぞれの範囲においてDeMulUnCodeAll(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)を算出し、受信電力DeMulUnCodeAll(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)が最小となるDR(換言すると、DR
min)を検出する。式(25)を用いる場合、以下では、次式(26)に示すように、DR範囲において最小となる受信電力を与えるDRを「DR
min」と表す。
また、折り返し判定部212は、例えば、未使用直交符号UnCode
nucを用いた符号分離後の最小受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR
min)と受信電力とを比較して、折り返し判定の確からしさを判定(換言すると、測定)する処理を行ってもよい。この場合、折り返し判定部212は、例えば、次式(27)及び式(28)に従って、折り返し判定の確からしさを判定してもよい。
例えば、折り返し判定部212は、CFAR部211において抽出された距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarの受信電力値PowerFT(fb_cfar, fs_cfar)に所定値ThresholdDRを乗算した値よりも、未使用直交符号UnCodenucを用いた符号分離後の最小受信電力DeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DRmin)が小さい場合(例えば、式(27))、折り返し判定が十分に確からしいと判定する。この場合、レーダ装置10は、例えば、以降の処理(例えば、符号分離処理)を行ってもよい。
一方、例えば、折り返し判定部212は、受信電力値PowerFT(fb_cfar, fs_cfar)に、ThresholdDRを乗算した値よりも、未使用直交符号UnCodenucを用いた符号分離後の最小受信電力DeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DRmin)が等しいか大きい場合(例えば、式(28))、折り返し判定の精度が十分ではない(例えば、ノイズ成分である)と判定する。この場合、レーダ装置10は、例えば、以降の処理(例えば、符号分離処理)を行わなくてもよい。
このような処理により、折り返し判定部212は、折り返し判定の判定誤りを低減でき、また、ノイズ成分を除去できる。なお、所定値ThresholdDRは、例えば、0から1未満の範囲に設定されてよい。一例として、ノイズ成分が含まれることを考慮すると、ThresholdDRは、0.1~0.5程度の範囲で設定されてもよい。
なお、未使用直交符号UnCodenucが複数ある場合、折り返し判定部212は、受信電力DeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DR)の代わりに、DeMulUnCodeAll(fb_cfar, fs_cfar, DR)を用いて受信電力との比較をして、折り返し判定の確からしさを判定(換言すると、測定)する処理を行ってもよい。この場合、折り返し判定部212は、例えば、式(27)及び式(28)におけるDeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DR)の代わりにDeMulUnCodeAll(fb_cfar, fs_cfar, DR)を用いて、折り返し判定の確からしさを判定してもよい。全ての未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力を求めることで、折り返し判定部212は、受信信号レベルが低い場合でも、折り返し判定の確からしさの精度を向上できる。
なお、未使用直交符号UnCode
nucを用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)の算出式は、例えば、式(12)の代わりに、次式(29)でもよい。
式(29)において、
の項は、ドップラ成分のインデックス(ドップラ周波数インデックス)f
sに依らないため、例えば、予めテーブル化することで、折り返し判定部212における演算量を削減できる。
以上、折り返し判定部212の動作例について説明した。
次に、符号多重分離部213の動作例について説明する。
符号多重分離部213は、折り返し判定部212における折り返し判定結果、及び、符号多重送信用の符号に基づいて、符号多重信号の分離処理を行う。
例えば、符号多重分離部213は、次式(30)のように、折り返し判定部212における折り返し判定結果であるDR
minを用いた折り返し位相補正ベクトルβ(DR
min)に基づいて、CFAR部211において抽出された距離インデックスf
b_cfar及びドップラ周波数インデックスf
s_cfarに対応するドップラ解析部210の出力であるドップラ成分VFTALL
z(f
b_cfar, f
s_cfar)に対して符号分離処理を行う。折り返し判定部212は、-1/(2Tr)以上、かつ、1/(2Tr)未満のドップラ範囲で、真のドップラ折り返し範囲であるインデックスを判定できることから(換言すると、DR
min=DR
trueとなるように判定できることから)、符号多重分離部213は、-1/(2Tr)以上、かつ、1/(2Tr)未満のドップラ範囲で、符号多重に使用している直交符号間の相関値をゼロとすることができ、符号多重信号間の干渉を抑圧した分離処理が可能となる。
ここで、DeMulz
ncm(fb_cfar, fs_cfar)は、第z番のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部210の距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarの出力に対する直交符号Codencmを用いて符号多重信号を符号分離した出力(例えば、符号分離結果)である。なお、z=1,…,Naであり、ncm=1,…,NCM (=NTx)である。
以上のような符号分離処理によって、レーダ装置10は、折り返し判定部212において、ドップラ解析部210の折り返しが発生しないドップラ範囲±1/(2Loc×Tr)のLoc倍のドップラ範囲±1/(2×Tr)までを想定した折り返し判定結果に基づいて、第ncm番の送信アンテナTx#ncmに対して付与される直交符号Codencmによって符号多重送信された信号を分離した信号を得ることができる。
また、レーダ装置10は、例えば、符号分離処理時に、符号要素毎のドップラ解析部210の出力に対して、ドップラ折り返しを含めたドップラ位相補正(例えば、折り返し位相補正ベクトルβ(DRmin)に基づく処理)を行う。このため、符号多重信号間における相互干渉は、例えば、ノイズレベル程度にまで低減可能である。換言すると、レーダ装置10は、符号間干渉を低減でき、レーダ装置10における検出性能の劣化への影響を抑制できる。
以上、符号多重分離部213の動作例について説明した。
図5において、方向推定部214は、符号多重分離部213から入力される距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfarに対応するドップラ解析部210の出力に対する符号分離結果DeMulz
ncm(fb_cfar, fs_cfar)に基づいて、ターゲットの方向推定処理を行う。
方向推定部214は、例えば、送信アンテナ106(例えば、ncm=1,..,NTx)から送信される符号多重信号が符号分離処理された信号DeMulz
ncm(fb_cfar, fs_cfar)を用いて、方向推定(DOA)を行ってよい。
[アンテナ配置例]
レーダ装置10では、例えば、仮想受信アレーによる開口長増大により、角度分解能を向上させ、グレーティングローブやサイドローブを抑圧する送信アンテナ106及び受信アンテナ202の配置を採用する。
以下、送信アンテナ106及び受信アンテナ202のアンテナ配置の一例、及び、各配置例を適用した場合の方向推定部214における方向推定処理の例について説明する。
なお、以下の配置例では、レーダ装置10は、送信アンテナ106の配置を受信アンテナ202の配置に置き換え、受信アンテナ202の配置を送信アンテナ106の配置と置き換えてもよい。レーダ装置10では、送信アンテナ106と受信アンテナ202とでアンテナ配置を入れ替えた場合でも、以下の配置例と同様の効果を得ることができる。
また、レーダ装置10では、以下の配置例における水平方向(例えば、第1の方向に対応)と垂直方向(例えば、第1の方向に直交する第2の方向に対応)とを入れ替えた配置でもよい。アンテナ配置において水平方向と垂直方向とを入れ替えた場合、レーダ装置10では、以下の配置例における水平方向と垂直方向とを入れ替えた効果を得ることができる。
本実施の形態に係るMIMOアンテナ配置は、例えば、以下のような条件(例えば、条件1又は条件2)を満たす配置である。以下、条件1及び条件2についてそれぞれ説明する。
<条件1>
(1)NTx個の送信アンテナ106は、水平方向(例えば、第1の方向に対応)と垂直方向(例えば、第1の方向に直交する第2の方向に対応)とに配置される。なお、NTx個の送信アンテナ106のうち、1つの送信アンテナ106の配置は、水平方向及び垂直方向の両方に重複して含まれる配置とする。
(2)Na個の受信アンテナ202のうち、Nz個(Nz≧1)の受信アンテナ202を除いた(Na-Nz)個の受信アンテナ202は、水平方向及び垂直方向に配置される。なお、(Na-Nz)個の受信アンテナ202のうち、1つの受信アンテナ202の配置は、水平方向及び垂直方向の両方に重複して含まれる配置とする。
(3)水平方向に並ぶ送信アンテナ106のアンテナ間隔は、水平方向に並ぶ受信アンテナ202(例えば、第1のアンテナに対応)の開口長よりも広い間隔に設定される。また、水平方向に並ぶ受信アンテナ202のアンテナ間隔の少なくとも一つは、水平方向の基本間隔(又は、規定間隔と呼ぶ)DHに設定される。
(4)Nz個の受信アンテナ202(例えば、第3のアンテナに対応)の少なくとも一つは、水平方向に並ぶ受信アンテナ202が配置される垂直位置(垂直軸上の位置)と異なる垂直位置、及び、垂直方向に並ぶ受信アンテナ202(例えば、第2のアンテナ)に隣接する水平位置(水平軸上の位置)に、水平方向の基本間隔DHで配置される。
以下、条件1の一例について説明する。
条件1の(1)について、例えば、NTx個の送信アンテナ106は、L字状(NTx≧3)、T字状(NTx≧4)、又は、十字状(NTx≧5)の何れかの形状に配置される。
図8の(a)は、NTx=6の場合のL字状の配置例を示す。なお、図8の(a)では、等間隔の配置を示すが、これに限定されず、不等間隔の配置でもよい。また、NTx個の送信アンテナ106の配置は、図8の(a)の配置を任意の角度(例えば、90°、180°、270°)回転させた配置でもよい。また、NTx個の送信アンテナ106の配置は、上述した配置を鏡像反転させた配置でもよい。
また、図8の(a)では、送信アンテナ106における水平方向に並ぶアンテナ数NtH=4、垂直方向に並ぶアンテナ数NtV=3の場合を示すが、NtH及びNtVの組み合わせはこれに限定されない。例えば、NtH≧2、NtV≧2であり、NtH+NtV=NTx+1を満たす組み合わせであればよい。例えば、NTx=6の場合のL字状の配置におけるNtHとNtVの組み合わせは、(NtH, NtV)=(2, 5),(3, 4),(4, 3),(5,2)の4通りがある。
また、L字状の配置の場合、送信アンテナ数はNTx≧3であればよい。図8の(b)は、NTx=3の場合のL字状の配置例を示す。
次に、図9の(a)及び(b)は、NTx=6の場合のT字状の配置例を示す。なお、図9の(a)及び(b)では、等間隔の配置を示すが、これに限定されず、不等間隔の配置でもよい。また、NTx個の送信アンテナ106の配置は、図9の(a)及び(b)の配置を任意の角度(例えば、90°、180°、270°)回転させた配置でもよい。また、NTx個の送信アンテナ106の配置は、上述した配置を鏡像反転させた配置でもよい。
図9の(a)では、送信アンテナ106における水平方向に並ぶアンテナ数NtH=4、垂直方向に並ぶアンテナ数NtV=3の場合を示し、図9の(b)では、送信アンテナ106における水平方向に並ぶアンテナ数NtH=3、垂直方向に並ぶアンテナ数NtV=4の場合を示すが、NtH及びNtVの組み合わせはこれに限定されない。例えば、NtH≧2、NtV≧2であり、NtH+NtV=NTx+1を満たす組み合わせであればよい。例えば、NTx=6の場合のT字状の配置におけるNtHとNtVの組み合わせは、(NtH, NtV)=(2, 5),(3, 4),(4, 3),(5,2)の4通りがある。
また、T字状の配置の場合、送信アンテナ数はNTx≧4であればよい。図9の(c)は、NTx=4の場合のT字状の配置例を示す。
次に、図10の(a)は、NTx=6の場合の十字状の配置例を示す。なお、図10の(a)では、等間隔の配置を示すが、これに限定されず、不等間隔の配置でもよい。また、NTx個の送信アンテナ106の配置は、図10の(a)の配置を任意の角度(例えば、90°、180°、270°)回転させた配置でもよい。また、NTx個の送信アンテナ106の配置は、上述した配置を鏡像反転させた配置でもよい。
また、図10の(a)では、送信アンテナ106における水平方向に並ぶアンテナ数NtH=4、垂直方向に並ぶアンテナ数NtV=3の場合を示すが、NtH及びNtVの組み合わせはこれに限定されない。例えば、NtH≧3、NtV≧3であり、NtH+NtV=NTx+1を満たす組み合わせであればよい。例えば、NTx=6の場合の十字状の配置におけるNtHとNtVの組み合わせは、(NtH, NtV)=(3, 4),(4, 3)の2通りがある。
また、十字状の配置の場合、送信アンテナ数はNTx≧5であればよい。図10の(b)は、NTx=5の場合のL字状の配置例を示す。
以上、条件1の(1)に関する例について説明した。
条件1の(2)について、例えば、(Na-Nz)個の受信アンテナ202は、L字状(Na-Nz≧3)、T字状(Na-Nz≧4)、又は、十字状(Na-Nz≧5)の何れかの形状に配置される。
なお、(Na-Nz)個の受信アンテナ202の配置は、送信アンテナ106と同じ形状の配置でもよく、異なる形状の配置でもよい。例えば、送信アンテナ106がL字状に配置される場合、受信アンテナ202はL字状配置でもよく、異なる形状(例えば、T字状、十字状)の配置でもよい。送信アンテナ06及び受信アンテナ202の配置の組み合わせは、これに限定されず、他の形状配置の組み合わせでもよい。
ここで、(Na-Nz)個の受信アンテナ202における水平方向に並ぶアンテナ数をNrH、垂直方向に並ぶアンテナ数をNrVとすると、L字状及びT字状の配置の場合、NrH≧2及びNrV≧2であり、十字状の配置の場合、NrH≧3、NrV ≧3であり、何れの配置の場合でもNrH+NrV=Na-Nz+1を満たす関係となる。
以上、条件1の(2)に関する例について説明した。
条件1の(3)は、送信アンテナ106及び受信アンテナ202から得られる仮想受信アンテナ配置において、送信アンテナ106における水平方向に並ぶアンテナ数NtHと、受信アンテナ202における水平方向に並ぶアンテナ数NrHとの積であるNtH×NrH個のアンテナを配置可能な条件であり、重複なく水平方向に最大限の数の仮想受信アンテナを配置可能な条件である。
条件1の(4)は、例えば、「分離性能向上配置条件」と呼ぶ。分離性能向上配置条件を満たすNz個の受信アンテナ202あるいは送信アンテナ106は、「分離性能向上用アンテナ」と呼ぶ。以下、分離性能向上配置条件の例について説明する。
図11は、NTx=6の送信アンテナ106(例えば、Tx#1~Tx#6)をL字状に配置し、Na-Nz(=6)個の受信アンテナ202(例えば、Rx#1~Rx#6)をL字状に配置した例を示す図である。例えば、図11に示すように、条件1において、送受信アンテナのうち、垂直方向におけるアンテナ間隔がより狭い受信アンテナ202に対して、分離性能向上用アンテナが設定されてもよい。
図11において、分離性能向上配置条件を満たす分離性能向上用アンテナの配置候補は、点線の四角枠で示すA,B,C,Dの位置である。
例えば、Nz=1の場合、受信アンテナ202の総数はNa=7となり、未配置の1(=Nz)個の受信アンテナ202は、図11に示すRx#5及びRx#6の何れかの受信アンテナに対して、水平方向に基本間隔DHで隣接して(換言すると、DH離れた位置に)配置される。すなわち、未配置の1個の受信アンテナ202は、図11に示す点線の四角枠のA,B,C,D位置の何れかに配置される。これにより、分離性能向上配置条件を満たす。
このような位置にNz個の受信アンテナ202が配置されることにより、レーダ装置10は、複数のターゲット反射波がある場合に複数波間の信号成分の影響を低減でき、分離性能(例えば、水平方向の分離性能)を向上できる。なお、レーダ装置10における分離性能の向上効果の例については、後述の計算機シミュレーション結果を用いて説明する。
なお、Nz個の受信アンテナ202(例えば、第3のアンテナに対応)を、水平方向に並ぶ受信アンテナ202(例えば、第1のアンテナに対応)の垂直位置と異なる垂直位置、及び、垂直方向に並ぶ受信アンテナ202(例えば、第2のアンテナに対応)に隣接した水平位置に配置する際、Nz個の受信アンテナ202は、水平方向に並ぶ受信アンテナ202側(図11のA,C)、又は、反対側(図11のB、D)に配置されてよい。
ここで、反対側(図11のB、D)の配置の方が、水平方向に並ぶ受信アンテナ202側(図11のA、C)の配置と比較して、仮想受信アンテナ配置において、水平方向のアンテナ開口を増大する効果があり、水平方向のビーム幅を狭めることができるので、レーダ装置10における分解能向上により寄与する。また、この場合、垂直方向のサイズが大きいアンテナ素子を用いる場合には、より好適となる。
一方、水平方向に並ぶアンテナ側(図11のA,C)の配置の方が、反対側(図11のB,D)の配置と比較して、複数のターゲット反射波がある場合に、複数波間の信号成分の影響をより低減でき、レーダ装置10において水平方向と共に垂直方向の分離性能をより向上できる。
なお、図11では、L字型の送受信アンテナについて説明したが、T字型又は十字型についても、例えば、Nz個の受信アンテナ202は、水平方向において、垂直方向に配置される複数の受信アンテナ202の位置(水平位置)に対して、水平方向に配置される複数の受信アンテナ202がより多く配置される側に配置されてもよい。この配置により、例えば、複数のターゲット反射波がある場合に、複数波間の信号成分の影響をより低減できる。同様に、例えば、Nz個の受信アンテナ202は、水平方向において、垂直方向に配置される複数の受信アンテナ202の(水平位置)に対して、水平方向に配置される複数の受信アンテナ202がより少なく配置される側に配置されてもよい。この配置により、例えば、水平方向のアンテナ開口を増大する効果があり、水平方向のビーム幅を狭めることができるので、レーダ装置10における分解能を向上できる。
また、例えば、Nz=2の場合、受信アンテナ202の総数はNa=8となり、未配置の2(=Nz)個の受信アンテナ202の少なくとも一つは、分離性能向上配置条件を満たす配置(例えば、図11の点線の四角枠のA,B,C,D位置の何れかの配置)とする。なお、未配置の2(=Nz)個の受信アンテナの双方の配置を、分離性能向上配置条件を満たす配置とする場合、例えば、一方の受信アンテナ202が図11に示すRx#5に水平方向の基本間隔DHで隣接して配置(図11のA,Bの何れかに配置)され、他方の受信アンテナ202が図11に示すRx#6に水平方向の基本間隔DHで隣接して配置(図11のC,Dの何れかに配置)されてよい。この配置により、レーダ装置10は、複数のターゲット反射波がある場合に分離性能(例えば、水平方向)をより向上できる。
また、Nz>3の場合も同様に、未配置のNz個の受信アンテナ202の少なくとも一つが分離性能向上配置条件を満たす配置(例えば、図11の点線の四角枠のA,B,C,D位置の何れかに配置)でよい。また、例えば、Nz個の受信アンテナのうち、分離性能向上配置条件を満たす配置の受信アンテナ202の数が多いほど、複数のターゲット反射波がある場合に複数波間の信号成分の影響をより低減でき、レーダ装置10の分離性能をより向上できる。
以上、条件1の例について説明した。
なお、上述した条件1を満たす送信アンテナ106の配置を受信アンテナ202の配置に適用し、条件1を満たす受信アンテナ202の配置を送信アンテナ106の配置に適用してもよい。この場合でも、上述同様の効果を得ることができる。以下、この場合の条件を「条件1a」と呼ぶ。よって、条件1aは以下のとおりである。なお、条件1aの例は、上述した条件1の例において、送信アンテナ及び受信アンテナを、それぞれ受信アンテナ及び送信アンテナに置き換えた内容と同様であるため説明を省略する。
<条件1a>
(1)Na個の受信アンテナ202は、水平方向(例えば、第1の方向に対応)と垂直方向(例えば、第1の方向に直交する第2の方向に対応)とに配置される。なお、Na個の受信アンテナ202のうち、1つの受信アンテナ202の配置は、水平方向及び垂直方向の両方に重複して含まれる配置とする。
(2)NTx個の送信アンテナ106のうち、Nz個(Nz≧1)の送信アンテナ106を除いた(NTx-Nz)個の送信アンテナ106は、水平方向及び垂直方向に配置される。なお、(NTx-Nz)個の送信アンテナ106のうち、1つの送信アンテナ106の配置は、水平方向及び垂直方向の両方に重複して含まれる配置とする。
(3)水平方向に並ぶ受信アンテナ202のアンテナ間隔は、水平方向に並ぶ送信アンテナ106(例えば、第1のアンテナに対応)の開口長よりも広い間隔に設定される。また、水平方向に並ぶ送信アンテナ106のアンテナ間隔の少なくとも一つは、水平方向の基本間隔(又は、規定間隔と呼ぶ)DHに設定される。
(4)Nz個の送信アンテナ106(例えば、第3のアンテナに対応)の少なくとも一つは、水平方向に並ぶ送信アンテナ106(例えば、第1のアンテナに対応)が配置される垂直位置と異なる垂直位置、及び、垂直方向に並ぶ送信アンテナ106(例えば、第2のアンテナに対応)に隣接する水平位置に、水平方向の基本間隔DHで配置される。
図12は、条件1aを満たすアンテナ配置例を示す図である。図12は、Na=8の受信アンテナ202(例えば、Rx#1~Rx#8)をT字状に配置し、NTx-Nz(=5)個の送信アンテナ106(例えば、Tx#1~Tx#5)をT字状に配置した例を示す。例えば、図12に示すように、条件1aにおいて、送受信アンテナのうち、垂直方向におけるアンテナ間隔がより狭い送信アンテナ106に対して、分離性能向上用アンテナが設定されてよい。
図12において、分離性能向上配置条件を満たす分離性能向上用アンテナの配置候補は、点線の四角枠で示したA,B,C,Dの位置である。
例えば、Nz=1の場合、送信アンテナ106の総数はNTx=6となり、未配置の1(=Nz)個の送信アンテナ106は、図12に示すTx#1及びTx#3の何れかの送信アンテナに対して水平方向の基本間隔DHで隣接して(換言すると、DH離れた位置に)配置される。すなわち、未配置の1個の送信アンテナ106は、図12に示す点線の四角枠のA,B,C,D位置の何れかに配置される。これにより分離性能向上配置条件を満たす。
このような位置にNz個の送信アンテナ106が配置されることにより、レーダ装置10は、複数のターゲット反射波がある場合に複数波間の信号成分の影響を低減でき、分離性能(例えば、水平方向の分離性能)を向上できる。なお、レーダ装置10における分離性能の向上効果の例については、後述の計算機シミュレーション結果を用いて説明する。
なお、Nz個の送信アンテナ106を、水平方向に送信アンテナ106が並ぶ垂直位置と異なる垂直位置、及び、垂直方向に配置される送信アンテナ106に隣接した水平位置に配置する際、Nz個の送信アンテナ106は、水平方向に並ぶ送信アンテナ106側(図12のB,D)、又は、反対側(図12のA、C)に配置されてよい。
ここで、反対側(図12のA、C)の配置の方が、水平方向に並ぶ送信アンテナ106側(図12のB、D)の配置と比較して、仮想受信アンテナ配置において、水平方向のアンテナ開口を増大する効果があり、水平方向のビーム幅を狭めることができるので、レーダ装置10における分解能向上により寄与する。また、この場合、垂直方向のサイズが大きいアンテナ素子を用いる場合には、より好適となる。
一方、水平方向に並ぶアンテナ側(図12のB,D)の配置の方が、反対側(図12のA,C)の配置と比較して、複数のターゲット反射波がある場合に、複数波間の信号成分の影響をより低減でき、レーダ装置10において水平方向と共に垂直方向の分離性能をより向上できる。
また、例えば、Nz=2の場合、送信アンテナ106の総数はNTx=7となり、未配置の2(=Nz)個の送信アンテナ106の少なくとも一つは、分離性能向上配置条件を満たす配置(例えば、図12の点線の四角枠のA,B,C,D位置の何れかの配置)とする。なお、未配置の2(=Nz)個の送信アンテナの双方の配置を、分離性能向上配置条件を満たす配置とする場合、例えば、一方の送信アンテナ106が図12に示すTx#1に水平方向の基本間隔DHで隣接して配置(図12のA,Bの何れかに配置)され、他方の送信アンテナ106が図12に示すTx#3に水平方向の基本間隔DHで隣接して配置(図12のC,Dの何れかに配置)されてよい。この配置により、レーダ装置10は、複数のターゲット反射波がある場合に分離性能(例えば、水平方向)をより向上できる。
また、Nz>3の場合も同様に、未配置のNz個の送信アンテナ106の少なくとも一つが分離性能向上配置条件を満たす配置(例えば、図12の点線の四角枠のA,B,C,D位置の何れかに配置)でよい。また、例えば、Nz個の送信アンテナのうち、分離性能向上配置条件を満たす配置の送信アンテナ106の数が多いほど、複数のターゲット反射波がある場合に複数波間の信号成分の影響をより低減でき、レーダ装置10の分離性能をより向上できる。
なお、条件1及び条件1aにおける水平方向を垂直方向に置き換え、垂直方向を水平方向に置き換えても同様な効果が得られる。
<条件2>
条件2は、例えば、条件1の水平方向を垂直方向に置き換え、垂直方向を水平方向に置き換えた内容と同様である。
(1)NTx個の送信アンテナ106は、水平方向(例えば、第2の方向に対応)と垂直方向(例えば、第1の方向に対応)とに配置される。なお、NTx個の送信アンテナ106のうち、1つの送信アンテナ106の配置は、水平方向及び垂直方向の両方に重複して含まれる配置とする。
(2)Na個の受信アンテナ202のうち、Nz個(Nz≧1)の受信アンテナ202を除いた(Na-Nz)個の受信アンテナ202は、水平方向及び垂直方向に配置される。なお、(Na-Nz)個の受信アンテナ202のうち、1つの受信アンテナ202の配置は、水平方向及び垂直方向の両方に重複して含まれる配置とする。
(3)垂直方向に並ぶ送信アンテナ106のアンテナ間隔は、垂直方向に並ぶ受信アンテナ202(例えば、第1のアンテナに対応)の開口長よりも広い間隔に設定される。また、垂直方向に並ぶ受信アンテナ202のアンテナ間隔の少なくとも一つは、垂直方向の基本間隔DVに設定される。
(4)Nz個の受信アンテナ202(例えば、第3のアンテナに対応)の少なくとも一つは、垂直方向に並ぶ受信アンテナ202(例えば、第1のアンテナに対応)が配置される水平位置と異なる水平位置、及び、水平方向に並ぶ受信アンテナ202(例えば、第2のアンテナに対応)に隣接する垂直位置に、垂直方向の基本間隔DVで配置される。
図13は、NTx=6の送信アンテナ(例えば、Tx#1~Tx#6)をL字状に配置し、Na-Nz(=6)個の受信アンテナ(例えば、Rx#1~Rx#6)をL字状に配置した例を示す図である。例えば、図13に示すように、条件2において、送受信アンテナのうち、水平方向におけるアンテナ間隔がより狭い受信アンテナ202に対して、分離性能向上用アンテナが設定されてよい。
図13において、分離性能向上配置条件を満たす分離性能向上用アンテナの配置候補は、点線の四角枠で示すA,B,C,Dの位置である。
例えば、Nz=1の場合、受信アンテナ202の総数はNa=7となり、未配置の1(=Nz)個の受信アンテナ202は、図13に示すRx#1及びRx#2の何れかの受信アンテナに対して、垂直方向に基本間隔DVで隣接して(換言すると、DH離れた位置に)配置される。すなわち、未配置の1個の受信アンテナ202は、図13に示す点線の四角枠のA,B,C,D位置の何れかに配置される。これにより分離性能向上配置条件を満たす。
このような位置にNz個の受信アンテナ202が配置されることにより、レーダ装置10は、複数のターゲット反射波がある場合に複数波間の信号成分の影響を低減でき、分離性能(例えば、垂直方向の分離性能)を向上できる。なお、レーダ装置10における分離性能の向上効果の例については、後述の計算機シミュレーション結果を用いて説明する。
なお、Nz個の受信アンテナ202(例えば、第3のアンテナに対応)を、垂直方向に並ぶ受信アンテナ202(例えば、第1のアンテナに対応)の水平位置と異なる水平位置、及び、水平方向に並ぶ受信アンテナ202(例えば、第2のアンテナに対応)に隣接した垂直位置に配置する際、Nz個の受信アンテナ202は、垂直方向に並ぶ受信アンテナ202側(図13のA,C)、又は、反対側(図13のB、D)に配置されてよい。
ここで、反対側(図13のB、D)の配置の方が、垂直方向に並ぶ受信アンテナ202側(図13のA、C)の配置と比較して、仮想受信アンテナ配置において、垂直方向のアンテナ開口を増大する効果があり、垂直方向のビーム幅を狭めることができるので、レーダ装置10における分解能向上により寄与する。また、この場合、水平方向のサイズが大きいアンテナ素子を用いる場合には、より好適となる。
一方、垂直方向に並ぶアンテナ側(図13のA,C)の配置の方が、反対側(図13のB,D)の配置と比較して、複数のターゲット反射波がある場合に、複数波間の信号成分の影響をより低減でき、レーダ装置10において垂直方向と共に水平方向の分離性能をより向上できる。
なお、図13では、L字型の送受信アンテナについて説明したが、T字型又は十字型についても、例えば、Nz個の受信アンテナ202は、垂直方向において、水平方向に配置される複数の受信アンテナ202の位置(垂直位置)に対して、垂直方向に配置される複数の受信アンテナ202がより多く配置される側に配置されてもよい。この配置により、例えば、複数のターゲット反射波がある場合に、複数波間の信号成分の影響をより低減できる。同様に、例えば、Nz個の受信アンテナ202は、垂直方向において、水平方向に配置される複数の受信アンテナ202の位置(垂直位置)に対して、水平方向に配置される複数の受信アンテナ202がより少なく配置される側に配置されてもよい。この配置により、例えば、水平方向のアンテナ開口を増大する効果があり、水平方向のビーム幅を狭めることができるので、レーダ装置10における分解能を向上できる。
また、例えば、Nz=2の場合、受信アンテナ202の総数はNa=8となり、未配置の2(=Nz)個の受信アンテナ202の少なくとも一つは、分離性能向上配置条件を満たす配置(例えば、図13の点線の四角枠のA,B,C,D位置の何れかの配置)とする。なお、未配置の2(=Nz)個の受信アンテナの双方の配置を、分離性能向上配置条件を満たす配置とする場合、例えば、一方の受信アンテナ202が図13に示すRx#1に垂直方向の基本間隔DVで隣接して配置(図13のA,Bの何れかに配置)され、他方の受信アンテナ202が図13に示すRx#2に垂直方向の基本間隔DVで隣接して配置(図13のC,Dの何れかに配置)されてよい。この配置により、レーダ装置10は、複数のターゲット反射波がある場合に分離性能(例えば、垂直方向)をより向上できる。
また、Nz>3の場合も同様に、未配置のNz個の受信アンテナ202の少なくとも一つが分離性能向上配置条件を満たす配置(例えば、図13の点線の四角枠のA,B,C,D位置の何れかに配置)でよい。また、例えば、Nz個の受信アンテナのうち、分離性能向上配置条件を満たす配置の受信アンテナ202の数が多いほど、複数のターゲット反射波がある場合に複数波間の信号成分の影響をより低減でき、レーダ装置10の分離性能をより向上できる。
以上、条件2の例について説明した。
<条件2a>
条件2aは、例えば、上述した条件1aの水平方向を垂直方向に置き換え、垂直方向を水平方向に置き換えた内容と同様である。
(1)Na個の受信アンテナ202は、水平方向(例えば、第2の方向に対応)と垂直方向(例えば、第1の方向に対応)とに配置される。なお、Na個の受信アンテナ202のうち、1つの受信アンテナ202の配置は、水平方向及び垂直方向の両方に重複して含まれる配置とする。
(2)NTx個の送信アンテナ106のうち、Nz個(Nz≧1)の送信アンテナ106を除いた(NTx-Nz)個の送信アンテナ106は、水平方向及び垂直方向に配置される。なお、(NTx-Nz)個の送信アンテナ106のうち、1つの送信アンテナ106の配置は、水平方向及び垂直方向の両方に重複して含まれる配置とする。
(3)垂直方向に並ぶ受信アンテナ202のアンテナ間隔は、垂直方向に並ぶ送信アンテナ106(例えば、第1のアンテナに対応)の開口長よりも広い間隔に設定される。また、垂直方向に並ぶ送信アンテナ106のアンテナ間隔の少なくとも一つは、垂直方向の基本間隔(又は、規定間隔と呼ぶ)DVに設定される。
(4)Nz個の送信アンテナ106(例えば、第3のアンテナに対応)の少なくとも一つは、垂直方向に並ぶ送信アンテナ106(例えば、第1のアンテナ)が配置される水平位置と異なる水平位置、及び、水平方向に並ぶ送信アンテナ106(例えば、第2のアンテナに対応)に隣接する垂直位置に、垂直方向の基本間隔DVで配置される。
図14は、条件2aを満たすアンテナ配置例を示す図である。図14は、Na=8の受信アンテナ202(例えば、Rx#1~Rx#8)を十字状に配置し、NTx-Nz(=5)個の送信アンテナ106(例えば、Tx#1~Tx#5)を十字状に配置した例を示す。例えば、図14に示すように、条件2aにおいて、送受信アンテナのうち、水平方向におけるアンテナ間隔がより狭い送信アンテナ106に対して、分離性能向上用アンテナが設定されてよい。
図14において、分離性能向上配置条件を満たす分離性能向上用アンテナの配置候補は、点線の四角枠で示したA,B,C,Dの位置である。
例えば、Nz=1の場合、送信アンテナ106の総数はNTx=6となり、未配置の1(=Nz)個の送信アンテナ106は、図14に示すTx#2及びTx#5の何れかの送信アンテナに対して垂直方向の基本間隔DVで隣接して配置される。すなわち、未配置の1個の送信アンテナ106は、図14に示す点線の四角枠のA,B,C,D位置の何れかに配置される。これにより分離性能向上配置条件を満たす。
このような位置にNz個の送信アンテナ106が配置されることにより、レーダ装置10は、複数のターゲット反射波がある場合に複数波間の信号成分の影響を低減でき、分離性能(例えば、垂直方向の分離性能)を向上できる。なお、レーダ装置10における分離性能の向上効果の例については、後述の計算機シミュレーション結果を用いて説明する。
また、例えば、Nz=2の場合、送信アンテナ106の総数はNTx=7となり、未配置の2(=Nz)個の送信アンテナ106の少なくとも一つは、分離性能向上配置条件を満たす配置(例えば、図14の点線の四角枠のA,B,C,D位置の何れかの配置)とする。なお、未配置の2(=Nz)個の送信アンテナの双方の配置を、分離性能向上配置条件を満たす配置とする場合、例えば、一方の送信アンテナ106が図14に示すTx#2に垂直方向の基本間隔DVで隣接して配置(図14のA,Bの何れかに配置)され、他方の送信アンテナ106が図14に示すTx#5に垂直方向の基本間隔DVで隣接して配置(図14のC,Dの何れかに配置)されてよい。この配置により、レーダ装置10は、複数のターゲット反射波がある場合に分離性能(例えば、垂直方向)をより向上できる。
また、Nz>3の場合も同様に、未配置のNz個の送信アンテナ106の少なくとも一つが分離性能向上配置条件を満たす配置(例えば、図14の点線の四角枠のA,B,C,D位置の何れかに配置)でよい。また、例えば、Nz個の送信アンテナのうち、分離性能向上配置条件を満たす配置の送信アンテナ106の数が多いほど、複数のターゲット反射波がある場合に複数波間の信号成分の影響をより低減でき、レーダ装置10の分離性能をより向上できる。
以上、条件2及び条件2aについて説明した。
なお、図14に示すアンテナ配置の場合、条件1(又は、条件1a)の分離性能向上配置条件を満たす配置も、点線の四角枠のA,B,C,D位置の何れかの配置となり、条件1及び条件2の分離性能向上配置条件を満たす配置の一部又は全てが一致する場合がある。このような条件1及び条件2の両方の分離性能向上配置条件を満たす配置は、複数のターゲット反射波がある場合に、複数波間の信号成分の影響をより低減でき、レーダ装置10の分離性能をより向上できる。そのため、例えば、条件1及び条件2の両方の分離性能向上配置条件を満たす配置は、Nz個のアンテナ配置として優先的に適用されてもよい。
同様に、条件1a及び条件2aの両方の分離性能向上配置条件を満たす配置は、複数のターゲット反射波がある場合に、複数波間の信号成分の影響をより低減でき、レーダ装置10の分離性能をより向上できる。そのため、例えば、条件1a及び条件2aの両方の分離性能向上配置条件を満たす配置は、Nz個のアンテナ配置として優先的に適用されてもよい。
以上のように、条件1(あるいは条件1a)を満たす配置により、レーダ装置10において、反射波の到来角が異なるターゲットの反射波を受信する場合の分離性能を向上できる。条件1(あるいは条件1a)は、例えば、垂直方向の分離性能も向上できるが、水平方向の分離性能を優先的に向上する条件である。
また、条件2(あるいは条件2a)を満たす配置により、レーダ装置10において、反射波の到来角が異なるターゲットの反射波を受信する場合の分離性能を向上できる。条件2(あるいは条件2a)は、例えば、水平方向の分離性能も向上できるが、垂直方向の分離性能を優先的に向上する条件である。
例えば、レーダ装置10のアンテナ配置において、水平方向の仮想受信アンテナ開口が、垂直方向の仮想受信アンテナ開口より広い場合、垂直方向に並ぶ仮想アンテナ数が少ないので、条件2(あるいは条件2a)と比較して、条件1(あるいは条件1a)の適用が好適であり、分離性能向上用アンテナ数Nzが少なくても、より高い分離性能向上効果が得られる。その一方で、例えば、レーダ装置10のアンテナ配置において、垂直方向の仮想受信アンテナ開口が水平方向の仮想受信アンテナ開口よりも広い場合、水平方向に並ぶ仮想アンテナ数が少ないので、条件1(あるいは条件1a)と比較して、条件2(あるいは条件2a)の適用が好適であり、分離性能向上用アンテナ数Nzが少なくてもより高い分離性能向上効果が得られる。
以上、条件1及び条件2についてそれぞれ説明した。
なお、条件1及び条件1a(又は、条件2及び条件2a)では、一例として、送受信アンテナのうち、垂直方向(又は、水平方向)におけるアンテナ間隔がより狭いアンテナに対して、分離性能向上用アンテナが設定されてもよい。なお、各図において示したアンテナ以外の位置にアンテナが配置されていても、本開示は、上記に開示した効果を得ることができる。
次に、条件1を満たすアンテナ配置例(例えば、MIMOアンテナ配置例)、及び、計算機シミュレーションによる方向推定結果の一例について説明する。
<配置例1>
図15の(a)は、配置例1に係る送信アンテナ106(例えば、Txと表す)及び受信アンテナ202(例えば、Rxと表す)の配置例(例えば、MIMOアンテナ配置例)を示す図である。
図15の(a)に示す例では、送信アンテナ数NTxは4個(例えば、Tx#1、Tx#2、Tx#3及びTx#4)であり、受信アンテナ数Naは4個(例えば、Rx#1, Rx#2, Rx#3及びRx#4)である。なお、受信アンテナにおいて、Nz=1のアンテナは、アンテナRx#4となる。
図15の(b)は、図15の(a)に示すアンテナ配置によって得られる仮想受信アレーの配置例を示す図である。
ここで、仮想受信アレーの配置は、例えば、送信アレーアンテナを構成する送信アンテナ106の位置(例えば、給電点の位置)及び受信アレーアンテナを構成する受信アンテナ202の位置(例えば、給電点の位置)に基づいて、次式(31)のように表されてよい。
ここで、送信アレーアンテナを構成する送信アンテナ106(例えば、Tx#n)の位置座標を(XT_#n,YT_#n)(例えば、n=1,.., NTx)と表し、受信アレーアンテナを構成する受信アンテナ202(例えば、Rx#m)の位置座標を(XR_#m,YR_#m)(例えば、m=1,.., Na)と表し、仮想受信アレーアンテナを構成する仮想アンテナVA#kの位置座標を(XV_#k,YV_#k)(例えば、k=1,.., NTx×Na)と表す。
なお、式(31)では、例えば、VA#1を仮想受信アレーの位置基準(0,0)として表す。
図15の(a)において、送信アンテナTx#1~Tx#4の配置は、L字状の配置である。例えば、Tx#1~Tx#3が水平方向に並んだ配置であり、Tx#1、Tx#4が垂直方向に並んだ配置である(例えば、条件1の(1)に相当)。例えば、Tx#1の位置座標(XT_#1,YT_#1)に対して、Tx#2~Tx#4の位置座標はそれぞれ(XT_#2,YT_#2)=(XT_#1+2DH,YT_#1)、(XT_#3,YT_#3)=(XT_#1+4DH,YT_#1)、(XT_#4,YT_#4)=(XT_#1,YT_#1+2DV)である。ここで、水平方向に並ぶ送信アンテナTx#1~x#3のアンテナ間隔は、水平方向に並ぶ受信アンテナ202の開口長DHよりも広い間隔である(例えば、条件1の(3)に相当)。また、図15の(a)では、垂直方向に並ぶ送信アンテナTx#1、Tx#4のアンテナ間隔は、垂直方向に並ぶ受信アンテナの開口長DVよりも広い間隔で配置されるが、これに限定されない。
一方、図15の(a)に示すNa=4の受信アンテナRx#1~Rx#4において、Nz=1のアンテナRx#4を除いた3(=Na-Nz)個の受信アンテナRx#1~Rx#3はL字状に配置され(例えば、条件1の(2)に相当)、水平方向に並ぶ受信アンテナRx#1及びRx#2のアンテナ間隔は水平方向の基本間隔DHを含む。
例えば、図15の(a)に示す受信アンテナRx#1~Rx#3の配置は、L字形状を左右反転させた配置であり、Rx#1~Rx#2が水平方向に並んだ配置であり、Rx#2及びRx#3が垂直方向に並んだ配置である。例えば、Rx#1の位置座標(XR_#1,YR_#1)に対して、Rx#2~Rx#3の位置座標はそれぞれ(XR_#2,YR_#2)=(XR_#1+DH,YR_#1)、(XR_#3,YR_#3)=(XR_#1+DH,YR_#1+DV)である。
また、図15の(a)において、Nz=1に対応する受信アンテナRx#4(例えば、分離性能向上用アンテナ)は、水平方向に並ぶ受信アンテナRx#1及びRx#2の垂直位置(YR_#1)と異なる垂直位置(YR_#1+DV)、及び、垂直方向に並ぶ受信アンテナRx#2及びRx#3に隣接する水平位置に、水平方向の基本間隔DHで配置される(例えば、条件1の(4)に相当)。すなわち、Rx#4の位置座標(XR_#4,YR_#4)=(XR_#1+2DH, YR_#1+DV)である。
なお、図15の(a)に示すアンテナ配置において、分離性能向上用アンテナのNz個の受信アンテナであるRx#4を、水平方向に並ぶ受信アンテナRx#1及びRx#2の垂直位置(YR_#1)と異なる垂直位置(YR_#1+DV)において受信アンテナRx#3に隣接した水平位置に配置する際、水平方向に並ぶ受信アンテナと反対側、すなわち、Rx#4の位置座標(XR_#4,YR_#4)=(XR_#1+2DH,YR_#1+DV)に配置する場合について説明したが、これに限定されない。受信アンテナRx#4は、例えば、水平方向に並ぶ受信アンテナ側、すなわち、Rx#4の位置座標(XR_#4,YR_#4)=(XR_#1,YR_#1+DV)に配置されてもよい。
このように、図15の(a)に示すMIMOアンテナ配置は、上述した(条件1)を満たす配置である。
図15の(a)に示す送信アンテナTx#1~Tx#4の配置及び受信アンテナRx#1~Rx#4の配置により、図15の(b)に示す仮想受信アレーアンテナを構成する仮想アンテナVA#1~#16の位置座標は、式(31)より算出可能である。例えば、仮想アンテナVA#1~#16の位置座標は、それぞれ、(XV_#1,YV_#1)=(0,0)、(XV_#2,YV_#2)=(DH,0)、(XV_#3,YV_#3)=(DH, DV)、(XV_#4,YV_#4)=(2DH, DV)、(XV_#5,YV_#5)=(2DH, 0)、(XV_#6,YV_#6)=(3DH,0)、(XV_#7,YV_#7)=(3DH, DV)、(XV_#8,YV_#8)=(4DH, DV)、(XV_#9,YV_#9)=(4DH,0)、(XV_#10,YV_#10)=(5DH, 0) 、(XV_#11,YV_#11)=(5DH, DV) 、(XV_#12,YV_#12)=(6DH, DV) 、(XV_#13,YV_#13)=(0, 2DV) 、(XV_#14,YV_#14)=(DH, 2DV) 、(XV_#15,YV_#15)=(DH, 3DV) 、(XV_#16,YV_#16)=(2DH, 3DV)となる。
ここで、NTx個の送信アンテナ106がL字状(NTx≧3)、T字状(NTx≧3)、又は、十字状(NTx≧4)の何れかの形状に配置され、Na個の受信アンテナ202のうち、Nz個(Nz≧1)の受信アンテナを除く(Na-Nz)個の受信アンテナがL字状(Na-Nz≧3)、T字状(Na-Nz≧4)、又は、十字状(Na-Nz≧5)の何れかの形状に配置される場合、送信アンテナ106における水平方向に並ぶアンテナ数をNtHとし、垂直方向に並ぶアンテナ数をNtVとし、受信アンテナ202における水平方向に並ぶアンテナ数をNrHとし、垂直方向に並ぶアンテナ数をNrVとすると、NtH+NtV=NTx+1、NrH+NrV=Na-Nz+1を満たす関係となる。例えば、図15の(a)の場合、NtH=3, NtV=2, NrH=2, NrV=2であり、NtH+NtV=5, NrH+NrV=4であり、上式を満たす。
また、図15の(a)において、送信アンテナ106の水平方向に並ぶアンテナ間隔DTHは、受信アンテナ202の水平方向に並ぶアンテナ数NrH(=2)-1の値とアンテナ間隔DRH=DHとの積DRH×(NrH-1)=DHよりも大きく設定される。この設定により、図15の(b)に示す仮想受信アレーアンテナを構成するアンテナのうち、水平方向に並ぶ仮想アンテナ数NvHは、NtH×NrH素子となる(図15の(b)では、VA#1, VA#2, VA#5, VA#6, VA#9, VA#10の6素子)。換言すると、上記設定により、水平方向に並ぶ仮想アンテナVA#1, VA#2, VA#5, VA#6, VA#9, VA#10を重複せずに配置可能になる。
また、例えば、アンテナ間隔DTHが、受信アンテナ202の水平方向に並ぶアンテナ数NrH(=2)とアンテナ間隔DRH=DHとの積DRH×NrH(=2DH)に設定されることにより、仮想受信アレーアンテナを構成するアンテナのうち水平方向に並ぶNtH×NrH(=6)素子の仮想アンテナは、等間隔DRH=DHで直線状に並ぶ。
同様に、図15の(a)において、送信アンテナ106の垂直方向に並ぶアンテナ間隔DTVは、受信アンテナ202の垂直方向に並ぶアンテナ数NrV(=2)-1の値とアンテナ間隔DRV=DVとの積DRV×(NrV-1)=DVよりも大きく設定される。この設定により、図15の(b)に示す仮想受信アレーアンテナを構成するアンテナのうち、垂直方向に並ぶ仮想アンテナ数NvVは、NtV×NrV素子となる(図15の(b)では、VA#2, VA#3, VA#14, VA#15の4素子)。換言すると、上記設定により、垂直方向に並ぶ仮想アンテナVA#2, VA#3, VA#14, VA#15を重複せずに配置可能になる。
また、例えば、アンテナ間隔DTVが、受信アンテナ202の垂直方向に並ぶアンテナ数NrV(=2)とアンテナ間隔DRV=DVとの積DRV×NrV(=2DV)に設定されることにより、仮想受信アレーアンテナを構成するアンテナのうち垂直方向に並ぶNtV×NrV(=4)素子の仮想アンテナは、等間隔DRV=DVで直線状に並ぶ。
ここで、DH、DVは、それぞれ、水平方向の基本間隔、及び、垂直方向の基本間隔であり、レーダ送信信号の波長(λ)より短い間隔である。例えば、DH、DVは、それぞれ0.45λ~0.8λ程度(換言すると、0.45λ~0.8λの範囲の何れかの値)に設定されてよい。なお、λはレーダ送信信号のキャリア周波数の波長を表す。例えば、レーダ送信信号としてチャープ信号を用いる場合、λは、チャープ信号の周波数掃引帯域における中心周波数の波長である。
このように、条件1(例えば、条件1a、条件2及び条件2aの場合も同様)を満たすMIMOアンテナ配置により構成される仮想受信アレー配置において、仮想受信アンテナの水平方向及び垂直方向に並ぶそれぞれの素子数の積は、NvH×NvV=NtH×NrH×NtV×NrVとなる。また、送受信アンテナは、各々、L字状(又は、T字状、十字状)の配置により、NtH>1, NtV>1、NrH>1、NrV>1である。よって、仮想受信アンテナの素子数は、送受信アンテナ数の積NTx×Naよりも大きい(例えば、NvH×NvV>NTx×Na)。したがって、仮想受信アンテナにおける垂直方向の素子数及び水平方向に素子数の増大効果を向上できる。
次に、上述したアンテナ配置を適用した場合の方向推定部214における方向推定処理の一例について説明する。
例えば、方向推定部214は、送信アンテナ106から送信された符号多重信号を符号分離処理した受信信号DeMulz
ncm(fb_cfar,fs_cfar)を用いて、式(32)に示す送信アンテナ106の仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)を生成し、方向推定処理を行う。
仮想受信アレー相関ベクトルh(f
b_cfar, f
s_cfar)は、送信アンテナ数N
Txと受信アンテナ数Naとの積であるN
Tx×Na個の要素を含む。仮想受信アレー相関ベクトルh(f
b_cfar, f
s_cfar)は、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定を行う処理に用いる。ここで、z=1,…,Naである。配置例1のMIMOアンテナ配置において、例えば図15の(a)を用いた場合、N
Tx=4、Na=4より、仮想受信アレー相関ベクトルh(f
b_cfar, f
s_cfar)は、16個の要素を含み、それぞれは図15の(b)に示す仮想受信アンテナ配置におけるVA#1~VA#16での受信信号に対応する。
次に、方向推定処理部216は、上述した送受信アンテナ配置から構成される仮想受信アレーの受信信号である仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)を用いて、水平方向及び垂直方向の方向推定処理を以下のように行う。
例えば、上述した仮想受信アレー素子番号(VA#番号)は、式(32)に示す仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)の列ベクトルの要素番号に対応している。例えば、VA#1は、h(fb_cfar, fs_cfar)の列ベクトル要素の1番目の要素DeMul1
1(fb_cfar, fs_cfar)に対応する。
方向推定部214は、例えば、次式(33)のように仮想アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)に対して、送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正値h_cal[y]を乗算することにより、アンテナ間偏差を補正した仮想受信アレー相関ベクトルh_after_cal(fb_cfar, fs_cfar)を出力し、到来反射波の受信アンテナ間の位相差に基づき、水平及び垂直方向の方向推定処理を行う。ここで、y=1,.., (NTx×Na)である。
なお、式(33)において、CAは、式(34)に示すように、送信アンテナ間及び受信アンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数及びアンテナ間の素子間結合の影響を低減する係数を含む(NTx×Na)次の正方行列である。仮想受信アレーのアンテナ間の結合が無視できる場合、CAは、対角行列となり、対角成分に送信アンテナ間及び受信アンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正値h_cal[y]が含まれる。
アンテナ間偏差を補正した仮想受信アレー相関ベクトルh
_after_cal(f
b_cfar, f
s_cfar)は、N
Tx×Na個の要素からなる列ベクトルとなる。以下では、各要素をh
1(f
b_cfar, f
s_cfar)、…、h
NTx×Na(f
b_cfar, f
s_cfar)と表記して方向推定処理の説明に用いる。
方向推定部214は、アンテナ間偏差を補正した仮想受信アレー相関ベクトルh_after_cal(fb_cfar, fs_cfar)を用いて、水平及び垂直方向の方向推定を行う。方向推定部214は、例えば、水平及び垂直方向の方向推定において、到来方向推定評価関数値P(θ、Φ、fb_cfar, fs_cfar)における方位方向θ、及び、仰角方向Φを規定された角度範囲内で可変して、空間プロファイルを算出してよい。方向推定部214は、例えば、算出した空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、それぞれの極大ピークの方位方向及び仰角方向を到来方向推定値(例えば、測位出力)として出力する。
到来方向推定評価関数値P(θ、Φ、fb_cfar, fs_cfar)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種のものがある。例えば、非特許文献4に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
例えばビームフォーマ法は次式(35)のように表すことができる。他にも、Capon, MUSICといった手法も同様に適用可能である。
ここで、上付き添え字Hはエルミート転置演算子である。
また、方向θuは到来方向推定を行う方位範囲内を方位間隔β1で変化させた値である。例えば、θuは以下のように設定されてよい。
θu=θmin + u×β1、u=0,…, NU-1
NU=floor[(θmax-θmin)/β1]
ここで、floor(x)は、実数xを超えない最大の整数値を返す関数である。
また、方向ΦVは到来方向推定を行う仰角範囲内を仰角間隔β2で変化させた値である。例えば、ΦVは以下のように設定されてよい。
ΦV=Φmin + v×β2、v=0,…, NV-1
NV=floor[(Φmax-Φmin)/β2]
なお、本実施の形態では、レーダ装置10は、仮想受信アレー配置VA#1,…, VA#(NTx×Na)に基づいて、方向ベクトルa(θu, θv)を予め算出してもよい。ここで、方向ベクトルa(θu, θv)は、方位方向θ及び仰角方向Φからレーダ反射波が到来した場合の仮想受信アレーアンテナの複素応答を要素とした(NTx×Na)次の列ベクトルである。仮想受信アレーアンテナの複素応答a(θu, θv)は、方位方向θ及び仰角方向Φからレーダ反射波が到来した場合の各仮想受信アレーアンテナ間の素子間隔で幾何光学的に算出される位相差を表す。
次に、上述した配置例1に係るアンテナ配置を適用した場合の方向推定結果(計算機シミュレーション結果)の一例について説明する。
<配置例1の方向推定結果の例1>
例1では、レーダ装置10が1つのターゲットからの反射波を受信した場合の方向推定結果を示す。
図16の(a)は、配置例1のMIMOアンテナ配置(例えば、図15の(a)を用いた場合の方向推定部214における到来方向推定アルゴリズムとしてビームフォーマ法を用いた場合の方向推定結果(計算機シミレーション結果)の一例を示す。また、図16の(b)は、比較例として、図1の(a)に示すアンテナ配置を用いた場合の方向推定結果の一例を示す。
図16の(a)及び(b)は、例えば、MIMOアンテナ配置において、DH=0.5λ、DV=0.5λの場合の方向推定結果の一例を示す。
また、図16の(a)及び(b)は、ターゲットの真値を水平方向角度0度、垂直方向角度0度とした場合の水平方向±90度範囲及び垂直方向±90度範囲における到来方向推定評価関数値の出力をプロットした例を示す。
図16の(a)に示す方向推定結果より、ターゲット真値(ここでは、水平0度、垂直0度)に最大ピークが得られるため、方向推定部214が、ターゲット方向を正しく推定していることが確認できる。
また、図16の(a)に示す配置例1において、水平方向の3dBビーム幅は約16度であり、図16の(b)に示す比較例において、水平方向の3dBビーム幅は約26度である。配置例1(図15の(a))のアンテナ配置では、水平方向の仮想アンテナにおけるDH=0.5λ間隔で並ぶ仮想アンテナ数はNVH=6である一方、比較例(図1の(a))のアンテナ配置では、水平方向の仮想アンテナにおけるDH=0.5λ間隔で並ぶ仮想アンテナ数はNVH=4である。これより、配置例1の方が、比較例よりも、水平方向の仮想アンテナの開口長が1.7倍以上長いので、図16の(a)及び(b)に示すように、配置例1では、比較例と比較して、水平方向のビーム幅が狭くなる。
また、図16の(a)に示す配置例1において、垂直方向の3dBビーム幅は約29度であり、図16の(b)に示す比較例において、垂直方向の3dBビーム幅は約26度である。例えば、配置例1(図15の(a))のアンテナ配置では、垂直方向の仮想アンテナにおけるDV=0.5λ間隔で並ぶ仮想アンテナ数はNVV=4であり、比較例(図1の(a))のアンテナ配置では、垂直方向の仮想アンテナにおけるDV=0.5λ間隔で並ぶ仮想アンテナ数はNVV=4である。これより、配置例1及び比較例の双方の垂直方向の仮想アンテナの開口長は同じであるので、垂直方向のビーム幅は同様となっている。
<配置例1の方向推定結果の例2>
例1では、レーダ装置10が2つのターゲットからの反射波を受信した場合の方向推定結果を示す。
図17の(a)は、配置例1のMIMOアンテナ配置(例えば、図15の(a)を用いた場合の方向推定部214における到来方向推定アルゴリズムとしてビームフォーマ法を用いた場合の方向推定結果(計算機シミレーション結果)の一例を示す。
また、図17の(b)は、比較例として、図18の(a)に示すアンテナ配置を用いた場合の方向推定結果の一例を示す。図18の(a)に示すアンテナ配置は、例えば、図15の(a)のアンテナ配置からRx#4(換言すると、分離性能向上用アンテナ)を除いた配置である。図18の(b)は、図18の(a)のアンテナ配置から得られる仮想受信アンテナの配置例を示す。
また、図17の(a)及び(b)は、例えば、MIMOアンテナ配置において、DH=0.5λ、DV=0.5λの場合の方向推定結果の一例を示す。
また、図17の(a)及び(b)は、ターゲット#1の真値を水平方向角度25度、垂直方向角度25度とし、ターゲット#2の真値を水平方向角度-25度、垂直方向角度-25度とした場合の水平方向±90度範囲及び垂直方向±90度範囲における到来方向推定評価関数値の出力をプロットした例を示す。
図17の(a)に示す方向推定結果より、2つのターゲット真値の方向に最大ピークが得られるため、方向推定部214が、ターゲット方向を正しく推定していることが確認できる。
その一方で、図17の(b)に示す方向推定結果より、2つのターゲット真値の方向にピークが向いているが、ターゲット方向と異なる方向にも高いレベルのサイドローブが生じている。そのため、比較例では、2つのターゲットからの反射波に受信電力差がある場合、強い受信電力のターゲットのサイドローブ方向の受信電力が、弱い受信電力のターゲットのピークレベルよりも高くなる可能性があり、レーダ装置が弱い受信電力のターゲットの方向推定を誤る可能性がある。このように、図18の(a)に示すアンテナ配置(送信L字状、受信L字状の配置)では、複数のターゲットが存在する場合にサイドローブレベルが高くなることがある。これは、以下のような事項が要因として挙げられる。
<垂直方向の配置について>
・仮想受信アンテナにおいて、垂直位置に仮想アンテナが1つ配置される場合、言い換えると、水平方向において仮想アンテナの配置が1つとなる垂直軸上の位置では、水平方向の複数波の分離が困難である(例えば、図18の(b)に示すVA#12)。
・仮想受信アンテナにおいて、垂直位置に、仮想アンテナが複数個配置される場合、水平方向の複数波の分離はできるが、仮想アンテナの水平位置の間隔が1波長以上の場合、(例えば、図18の(b)に示すVA#3,VA#6,VA#9)、特定の水平間隔(グレーティングローブが発生する方位間隔)の複数波の分離が困難である。言い換えると、水平方向において仮想アンテナが複数個となる垂直軸上の位置では、水平方向の複数波の分離はできるが、各仮想アンテナの水平方向の間隔が1波長以上の場合、特定の水平間隔の複数波の分離が困難である。
<水平方向の配置について>
・仮想受信アンテナにおいて、水平位置に、仮想アンテナが1つ配置される場合、言い換えると、垂直方向において仮想アンテナの配置が1つとなる水平軸上の位置では、垂直方向の複数波の分離が困難である(例えば、図18の(b)に示すVA#4,VA#7)。
・仮想受信アンテナにおいて、水平位置に複数の仮想アンテナが複数個である場合、垂直方向の複数波の分離はできるが、垂直位置の間隔が1波長以上の場合(例えば、図18の(b)に示すVA#1,VA#10)、特定の垂直間隔(グレーティングローブが発生する仰角間隔)の複数波の分離が困難である。言い換えると、垂直方向において、仮想アンテナが複数個配置される水平軸上の位置では、垂直方向の複数波の分離はできるが、各仮想アンテナの垂直方向の間隔が1波長以上の場合、特定の垂直間隔の複数波の分離が困難である。
これに対して、配置例1では、上述したように、送信L字状、受信L字状の配置(例えば図18の(a)に示すアンテナ配置)に対して、条件1あるいは条件2に基づいてアンテナが追加されることにより、垂直方向及び水平方向の少なくとも一つにおいて、
・仮想受信アンテナにおいて、垂直(又は、水平)位置に、仮想アンテナが1つである配置が含まれず、複数の仮想アンテナが配置され、水平(又は、垂直)方向の複数波の分離が可能となり、
・仮想受信アンテナにおいて、垂直(又は、水平)位置に、複数の仮想アンテナがある場合に、水平位置(又は、垂直位置)の間隔が1波長以上となる配置を低減し、特定の水平(又は、垂直)間隔の複数波の分離が可能となる。
このように、配置例1(図15の(a))において、比較例(図18の(a))に対して条件1に基づいてアンテナRx#4を追加することにより、例えば、図15の(b)に示すVA#16(図15の(a)のRx#4に対応する仮想アンテナ)により、仮想アンテナが1つ配置されていた垂直位置(図18の(a)のVA#12の垂直位置)を、仮想アンテナが水平方向に複数個配置される垂直位置(例えば、図15の(b)のVA#15、VA#16)に変更することが可能になり、水平方向の複数波の分離が可能となる。
また、例えば、図15の(b)に示すVA#4、VA#8、VA#12(Rx#4に対応する仮想アンテナ)により、これらの仮想アンテナを含む垂直位置において、水平方向のアンテナ間隔が基本間隔DHとなるように仮想アンテナ(例えば、VA#3,VA#4, VA#7,VA#8, VA#11,VA#12)が配置される。よって、配置例1では、比較例と比較して、サイドローブのレベルを低減できる。
また、例えば、図15の(b)に示すVA#4、VA#8(Rx#4に対応する仮想アンテナ)により、これらの仮想アンテナを含む各水平位置において、垂直方向のアンテナ間隔が基本間隔DVとなるように仮想アンテナ(例えば、VA#4とVA#5, VA#8とVA#9)が配置される。よって、配置例1では、比較例と比較して、サイドローブのレベルを低減できる。
また、例えば、図15の(b)に示すVA#4(図15の(a)のRx#4に対応する仮想アンテナ)により、仮想アンテナが1つ配置されていた水平位置(図18の(a)のVA#4の水平位置)を、垂直方向に仮想アンテナが複数個配置される水平位置(例えば、図15の(b)のVA#4,VA#5)に変更することが可能になり、垂直方向の複数波の分離が可能となる。
また、例えば、図15の(b)に示すVA#8(図15の(a)のRx#4に対応する仮想アンテナ)により、仮想アンテナが1つ配置されていた水平位置(図18の(a)のVA#7の水平位置)を、垂直方向に仮想アンテナが複数個配置される水平位置(例えば、図15の(b)のVA#8,VA#9)に変更することが可能になり、垂直方向の複数波の分離が可能となる。
以上、配置例1に係る方向推定結果(計算機シミュレーション結果)の一例について説明した。
方向推定部214は、例えば、方向推定結果を出力し、さらに、測位結果として、距離インデックスfb_cfarに基づく距離情報(例えば、式(8)に基づいて変換した情報)、ターゲットのドップラ周波数インデックスfb_cfar及び折り返し判定部212における判定結果DRminに基づくターゲットのドップラ速度情報を出力してもよい。
方向推定部214は、例えば、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarと折り返し判定部212での判定結果であるDR
minとに基づいて、式(36)に従って、ドップラ周波数インデックスf
es_cfarを算出してもよい。ドップラ周波数インデックスf
es_cfarは、例えば、ドップラ解析部210のFFTサイズをLoc×Ncodeに拡張した場合のドップラインデックスに相当する。以下、f
es_cfarを「拡張ドップラ周波数インデックス」と呼ぶ。
なお、ドップラ範囲±1/(2×Tr)までを想定しており、このドップラ範囲に対応する拡張ドップラ周波数インデックスfes_cfarの範囲は-Loc×Ncode/2≦fes_cfar<Loc×Ncode/2となることから、式(36)において、算出の結果、fes_cfar<-Loc×Ncode/2の場合、fes_cfar+Loc×Ncodeをfes_cfarとする。また、fes_cfar≧Loc×Ncode/2の場合、fes_cfar-Loc×Ncodeをfes_cfarとする。
また、ドップラ周波数情報は相対速度成分に変換して出力されてもよい。ドップラ周波数インデックスf
es_cfarを相対速度成分v
d(f
es_cfar)に変換するには、式(37)を用いて変換してもよい。ここで、λは送信無線部(図示せず)から出力されるRF信号のキャリア周波数の波長である。レーダ送信信号としてチャープ信号を用いる場合、λはチャープ信号の周波数掃引帯域における中心周波数の波長である。また、Δ
fは、ドップラ解析部210におけるFFT処理でのドップラ周波数間隔である。例えば、本実施の形態では、Δ
f=1/{Loc×N
code×T
r}である。
以上、レーダ装置10の動作例について説明した。
以上のように、配置例1では、レーダ装置10において、複数の送信アンテナ106及び複数の受信アンテナ202の配置において、上述した条件1、条件1a、条件2又は条件2aのアンテナ配置により、例えば、より少ないアンテナ数によって仮想アンテナの開口長を拡大でき、垂直方向及び水平方向の少なくとも一方の測角精度を維持しつつ、複数波の分離といった分離性能を向上できる。
以上より、本実施の形態によれば、レーダ装置10におけるターゲットの検知精度を向上できる。
なお、配置例1において、送信アンテナ数、及び、受信アンテナ数の少なくとも一つを増加した場合、配置例1で示した構成(例えば、図15の(a))にさらに式(31)で示す配置において、仮想受信アンテナが加法的に加わる関係となる。換言すると、図15の(b)に示す仮想受信アンテナ配置に対して、更に別の仮想受信アンテナが加わる配置となる。したがって、上述した本実施の形態で説明した効果は保持されるため、配置例1を含むアンテナ配置であっても同様の効果を得ることができる。また、以降の配置例に関しても同様である。
<配置例2>
図19は、配置例2に係る送信アンテナ106(例えば、Txと表す)及び受信アンテナ202(例えば、Rxと表す)の配置例(例えば、MIMOアンテナ配置例)を示す図である。
図19に示す例では、送信アンテナ数NTxは6個(例えば、Tx#1,Tx#2,…,Tx#6)であり、受信アンテナ数Naは8個(例えば、Rx#1,Rx#2,…,Rx#8)である。
また、図20は、図19に示すアンテナ配置によって得られる仮想受信アンテナの配置例を示す図である。
例えば、図19のアンテナ配置は、送受信アンテナともに、水平方向に並ぶアンテナ数は、垂直方向に並ぶアンテナ数よりも多い配置(例えば、NtH>NtV、かつ、NrH>NrV)である。このような配置により、図20に示す仮想受信アンテナ配置において、水平方向に並ぶアンテナ数は垂直方向に並ぶアンテナ数よりも多くなり、水平方向の開口長を、垂直方向の開口長よりも拡大できるので、レーダ装置10において、水平方向の角度分解能を垂直方向よりも向上できる。
ここで、仮想受信アレーアンテナの配置は、例えば、送信アレーアンテナを構成する送信アンテナ106の位置(例えば、給電点の位置)及び受信アレーアンテナを構成する受信アンテナ202の位置(例えば、給電点の位置)に基づいて、式(31)のように表されてよい。
また、送信アレーアンテナを構成する送信アンテナ106(例えば、Tx#n)の位置座標を(XT_#n,YT_#n)(例えば、n=1,.., NTx)と表し、受信アレーアンテナを構成する受信アンテナ202(例えば、Rx#m)の位置座標を(XR_#m,YR_#m)(例えば、m=1,.., Na)と表し、仮想受信アレーアンテナを構成する仮想アンテナVA#kの位置座標を(XV_#k,YV_#k)(例えば、k=1,.., NTx×Na)と表す。
また、式(31)では、例えば、VA#1を仮想受信アレーの位置基準(0,0)として表す。
図19において、送信アンテナTx#1~Tx#6の配置は、L字状の配置である。例えば、Tx#1~Tx#4が水平方向に並んだ配置であり、Tx#1、Tx#5及びTx#6が垂直方向に並んだ配置である(例えば、条件1の(1)に相当)。例えば、Tx#1の位置座標(XT_#1,YT_#1)に対して、Tx#2~Tx#6の位置座標はそれぞれ(XT_#2,YT_#2)=(XT_#1+5DH,YT_#1)、(XT_#3,YT_#3)=(XT_#1+10DH,YT_#1)、(XT_#4,YT_#4)=(XT_#1+15DH,YT_#1)、(XT_#5,YT_#5)=(XT_#1,YT_#1+3DH)、(XT_#6,YT_#6)=(XT_#1,YT_#1+6DH)である。ここで、水平方向に並ぶ送信アンテナTx#1~Tx#4のアンテナ間隔は、水平方向に並ぶ受信アンテナ202の開口長4DHよりも広い間隔である(例えば、条件1の(3)に相当)。また、図19では、垂直方向に並ぶ送信アンテナTx#1、Tx#5及びTx#6のアンテナ間隔は、垂直方向に並ぶ受信アンテナ202の開口長2DVよりも広い間隔3DVで配置されるが、これに限定されない。
一方、図19に示すNa=8の受信アンテナRx#1~Rx#8において、分離性能向上用アンテナであるNz=1のアンテナRx#8を除いた7(=Na-Nz)個の受信アンテナRx#1~Rx#7はL字状に配置され(例えば、条件1の(2)に相当)、水平方向に並ぶ受信アンテナRx#1~Rx#5のアンテナ間隔は水平方向の基本間隔DHである。
例えば、図19に示す受信アンテナRx#1~Rx#7の配置は、L字形状を90°左回りに回転した配置であり、Rx#1~Rx#5が水平方向に並んだ配置であり、Rx#5~Rx#7が垂直方向に並んだ配置である。例えば、Rx#1の位置座標(XR_#1,YR_#1)に対して、Rx#2~Rx#7の位置座標はそれぞれ(XR_#2,YR_#2)=(XR_#1+DH,YR_#1)、(XR_#3,YR_#3)=(XR_#1+2DH,YR_#1)、(XR_#4,YR_#4)=(XR_#1+3DH,YR_#1)、(XR_#5,YR_#5)=(XR_#1+4DH,YR_#1)、(XR_#6,YR_#6)=(XR_#1+4DH,YR_#1+DV)、(XR_#7,YR_#7)=(XR_#1+4DH,YR_#1+2DV)である。
また、図19において、Nz=1に対応する受信アンテナRx#8(例えば、分離性能向上用アンテナ)は、水平方向に並ぶ受信アンテナRx#1~Rx#5の垂直軸上の位置(YR_#1)と異なる垂直軸上の位置(YR_#1+DV)、及び、垂直方向に並ぶ受信アンテナRx#5~Rx#7に対して、水平方向の基本間隔DH離れた位置に配置される(例えば、条件1の(4)に相当)。すなわち、Rx#8の位置座標(XR_#8,YR_#8)=(XR_#1+5DH,YR_#1+DV)である。
なお、図19に示すアンテナ配置において、分離性能向上用アンテナのNz個の受信アンテナであるRx#8を、水平方向に並ぶ受信アンテナ202の垂直軸上の位置(YR_#1)と異なる垂直軸上の位置(YR_#1+DV)において受信アンテナRx#6に隣接した水平位置に配置する際、水平方向に並ぶ受信アンテナと反対側、すなわち、Rx#8の位置座標(XR_#8,YR_#8)=(XR_#1+5DH,YR_#1+DV)に配置する場合について説明したが、これに限定されない。受信アンテナRx#8は、(XR_#8,YR_#8)=(XR_#1+3DH,YR_#1+DV)、(XR_#8,YR_#8)=(XR_#1+3DH,YR_#1+2DV)、又は、(XR_#8,YR_#8)=(XR_#1+5DH,YR_#1+2DV)に配置されてもよい。
このように、図19に示すMIMOアンテナ配置は、上述した(条件1)を満たす配置である。
また、図19において、送信アンテナ106の水平方向に並ぶアンテナ間隔DTHは、受信アンテナの水平方向に並ぶアンテナ数NrH(=5)-1の値とアンテナ間隔DRH=DHとの積DRH×(NrH-1)=4DHよりも大きく設定される。この設定により、図20に示す仮想受信アレーアンテナを構成するアンテナのうち、水平方向に並ぶ仮想アンテナ数NvHは、NtH×NrH素子となる(図20では、VA#1~VA#5, VA#9~VA#13, VA#17~VA#21, VA#25~VA#29の20素子)。換言すると、上記設定により、水平方向に並ぶ仮想アンテナVA#1~VA#5, VA#9~VA#13, VA#17~VA#21, VA#25~VA#29を重複せずに配置可能になる。
また、例えば、アンテナ間隔DTHが、受信アンテナ202の水平方向に並ぶアンテナ数NrH(=5)とアンテナ間隔DRH=DHとの積DRH×NrH(=5DH)に設定されることにより、仮想受信アレーアンテナを構成するアンテナのうち水平方向に並ぶNtH×NrH(=20)素子の仮想アンテナは、等間隔DRH=DHで直線状に並ぶ。
同様に、図19において、送信アンテナ106の垂直方向に並ぶアンテナ間隔DTVは、受信アンテナ202の垂直方向に並ぶアンテナ数NrV(=3)-1の値とアンテナ間隔DRV=DVとの積DRV×(NrV-1)=2DVよりも大きく設定される。この設定により、図20に示す仮想受信アレーアンテナを構成するアンテナのうち、垂直方向に並ぶ仮想アンテナ数NvVは、NtV×NrV素子となる(図20では、VA#5~VA#7, VA#37~VA#39, VA#45~VA#47の9素子)。換言すると、上記設定により、垂直方向に並ぶ仮想アンテナVA#5~VA#7, VA#37~VA#39, VA#45~VA#47を重複せずに配置可能になる。
また、例えば、アンテナ間隔DTVが、受信アンテナ202の垂直方向に並ぶアンテナ数NrV(=3)とアンテナ間隔DRV=DVとの積DRV×NrV(=3DV)に設定されることにより、仮想受信アレーアンテナを構成するアンテナのうち垂直方向に並ぶNtV×NrV(=9)素子の仮想アンテナは、等間隔DRV=DVで直線状に並ぶ。
ここで、DH、DVは、それぞれ、水平方向の基本間隔、及び、垂直方向の基本間隔であり、レーダ送信信号の波長(λ)より短い規定間隔である。例えば、DH、DVは、それぞれ0.45λ~0.8λ程度に設定されてよい。なお、λはレーダ送信信号のキャリア周波数の波長を表す。例えば、レーダ送信信号としてチャープ信号を用いる場合、λは、チャープ信号の周波数掃引帯域における中心周波数の波長である。
このように、条件1(例えば、条件1a、条件2及び条件2aの場合も同様)を満たすMIMOアンテナ配置により構成される仮想受信アレー配置において、仮想受信アンテナの水平方向及び垂直方向に並ぶそれぞれの素子数の積は、NvH×NvV=NtH×NrH×NtV×NrVとなる。また、送受信アンテナは、各々、L字状(又は、T字状、十字状)の配置により、NtH>1, NtV>1、NrH>1、NrV>1である。よって、仮想受信アンテナの素子数は、送受信アンテナ数の積NTx×Naよりも大きい(例えば、NvH×NvV>NTx×Na)。したがって、仮想受信アンテナにおける垂直方向の素子数、及び、水平方向に素子数の増大効果を向上できる。
また、例えば、分離性能向上用アンテナの数Nzが少ないほど、仮想受信アンテナにおける垂直方向の素子数及び水平方向に素子数の増大効果は向上する。その一方で、分離性能向上用アンテナの数Nzが増加する場合でも素子数の増大効果は得られる。例えば、図19と同様、NTx=6、Na=8において、分離性能向上用アンテナの数Nz=4の場合でも、NrH=3、NrV=3に設定されるので、NtH×NrH×NtV×NrV=4×3×3×3=108となり、仮想受信アンテナの素子数は、送受アンテナ数の積NTx×Na(=48)よりも大きく設定される。
次に、上述した配置例1に係るアンテナ配置を適用した場合の方向推定結果(計算機シミュレーション結果)の一例について説明する。
図21の(a)及び(b)は、配置例2のMIMOアンテナ配置(例えば、図19を用いた場合の方向推定部214における到来方向推定アルゴリズムとしてビームフォーマ法を用いた場合の方向推定結果(計算機シミレーション結果)の一例を示す。
図21の(a)及び(b)は、例えば、MIMOアンテナ配置において、DH=0.5λ、DV=0.5λの場合の方向推定結果の一例を示す。
また、図21の(a)は、1つのターゲットの真値を水平方向角度0度、垂直方向角度0度とした場合の水平方向±90度範囲及び垂直方向±90度範囲における到来方向推定評価関数値の出力をプロットした例を示す。また、図21の(b)は、受信電力の等しい2つのターゲット反射波を受信した場合(例えば、ターゲット真値(水平, 垂直)が(25°, 25°)及び(-25°, -25°))の水平方向±90度範囲及び垂直方向±90度範囲における到来方向推定評価関数値の出力をプロットした例を示す。
図21の(a)に示す方向推定結果より、ターゲット真値(ここでは、水平0度、垂直0度)に最大ピークが得られるため、方向推定部214が、ターゲット方向を正しく推定していることが確認できる。また、図21の(a)において、正面方向の水平方向の3dBビーム幅は約4.5度であり、垂直方向の3dBビーム幅は約11度であり、水平方向の角度分解能は垂直方向の角度分解能よりも向上する。
また、図21の(b)に示す方向推定結果より、ターゲット真値(25°, 25°)及び(-25°, -25°)の方向にピークが得られるため、方向推定部214が、ターゲット方向を正しく推定していることが確認できる。また、図21の(b)において、真値方向と異なる方向のピークレベル(サイドローブレベル)は、-10dB程度に抑圧できていることが確認できる。
以上、配置例2に係る方向推定結果(計算機シミュレーション結果)の一例について説明した。
以上のように、配置例2に係るMIMOアレー配置は、送受信アンテナともに、水平方向に並ぶアンテナ数は、垂直方向に並ぶアンテナ数よりも多い配置である(例えば、NtH>NtVかつ、NrH>NrV)。このような配置により、仮想受信アンテナ配置において、水平方向に並ぶアンテナ数は垂直方向に並ぶアンテナ数よりも多く設定され、水平方向の開口長は、垂直方向の開口長よりも拡大できる。水平方向あるいは垂直方向の開口長に比例して、各方向の角度分解能が向上するため、水平方向の角度分解能を垂直方向の角度分解能よりも向上できる。
配置例2に係るMIMOアレー配置は、例えば、水平方向の仮想アンテナ開口を垂直方向よりも重視して拡大できるので、車載用レーダ用途といった、垂直視野角よりも水平視野角が広い場合により好適となる。例えば、車載用レーダ用途において、垂直視野角よりも水平視野角が広い場合には、異なる水平視野角に複数波が到来する確率が高いため、配置例2のように、水平方向の分解能がより高いアンテナ配置により、ターゲットの検出性能を向上できる(換言すると、未検出を低減できる)。
また、例えば、車載用レーダ用途といった、垂直視野角よりも水平視野角の分解能が要求される場合には、垂直方向の分解能は要求されにくいため、垂直方向については、推定精度を確保できる程度の開口長があればよい。
また、水平方向の角度分解能が高いほど、例えば、複数波が同一の水平方向から到来する場合に水平方向で分離ができず、垂直方向での分解能の低下によるターゲットの未検出が発生する確率を低減できる。
また、例えば、配置例2に係るMIMOアレー配置を用いる場合、方向推定部214は、水平方向に並ぶ仮想受信アンテナを用いて(換言すると、垂直方向に並ぶ仮想受信アンテナを用いず)、水平方向の1次元で到来方向推定し、検出された水平方向に対して、垂直方向の1次元の到来方向推定処理を適用してもよい。この場合、水平方向に並ぶ仮想受信アンテナ数が多いため、水平方向における1次元の到来方向推定時の受信品質(例えば、SNR:Signal to Noise Ratio)の劣化を抑えた上で、方向推定処理の演算量を低減できる効果が得られる。
(配置例2のバリエーション1)
配置例2に係るMIMOアレー配置(例えば、図19)では、受信アンテナ202における垂直方向に並ぶアンテナ(Rx#5,Rx#6,Rx#7)の間隔が垂直方向の基本間隔Dvに設定される場合について説明したが、垂直方向に並ぶアンテナの間隔は、これに限定されない。
図22は、配置例2のバリエーション1に係る送信アンテナ106(例えば、Txと表す)及び受信アンテナ202(例えば、Rxと表す)の配置例(例えば、MIMOアンテナ配置例)を示す図である。図22に示す例では、図19と同様、送信アンテナ数NTxは6個(例えば、Tx#1,Tx#2,…,Tx#6)であり、受信アンテナ数Naは8個(例えば、Rx#1,Rx#2,…,Rx#8)である。また、図23は、図22に示すアンテナ配置によって得られる仮想受信アンテナの配置例を示す図である。
例えば、図22に示すように、送信アンテナ106における垂直方向に並ぶアンテナ(Tx#1,Tx#5,Tx#6)の間隔3Dvと、受信アンテナ202における垂直方向に並ぶアンテナ(Rx#5,Rx#6,Rx#7)の間隔2Dvとの差分が垂直方向の基本間隔Dv(=|3Dv-2Dv|)に設定される配置でもよい。この場合、図23に示す仮想受信アンテナにおいて、垂直方向に並ぶアンテナ(VA#5~7, VA#37~39, VA#45~47)の間隔は、不等間隔となるが、垂直方向の基本間隔Dvを含むので、垂直方向のグレーティングローブを抑制できる。また、図23に示す仮想受信アンテナにおいて、例えば、図20と比較して、垂直方向のアンテナ素子サイズを増加でき、垂直方向の開口長が拡大するため、垂直方向の角度分解能を向上できる。
なお、図22のアンテナ配置では、垂直方向に並ぶ送信アンテナ(Tx#1,Tx#5,Tx#6)の間隔(3Dv)、及び、受信アンテナ(Rx#5,Rx#6,Rx#7)の間隔(2Dv)が等しい間隔に設定される場合について説明したが、これに限定されず、不等間隔に設定されてもよい。この場合、例えば、垂直方向に並ぶ送信アンテナの間隔のうち少なくとも一つと、垂直方向に並ぶ受信アンテナの間隔との差分が、垂直方向の基本間隔Dvに設定される配置が含まれればよい。
また、図22では、条件1を適用する場合について説明したが、条件1a、条件2又は条件2aを適用してもよい。例えば、条件1aを適用する配置では、垂直方向に並ぶ送信アンテナの間隔と、垂直方向に並ぶ受信アンテナの間隔との差分が垂直方向の基本間隔Dvに設定される配置でもよい。同様に、条件2又は条件2aを適用する配置では、例えば、水平方向に並ぶ送信アンテナの間隔と、水平方向に並ぶ受信アンテナの間隔との差分が水平方向の基本間隔DHに設定される配置でもよい。
(配置例2のバリエーション2)
配置例2に係るMIMOアレー配置(例えば、図19)では、送信アンテナ106において水平方向に並ぶアンテナ(例えば、Tx#1~Tx#4)の間隔が、受信アンテナ202において水平方向に並ぶアンテナ(例えば、Rx#1~Rx#5)の開口長にDHを加えた間隔(例えば、図19の場合、5DH)に設定される場合について説明したが、水平方向に並ぶ送信アンテナの間隔は、これに限定されず、より広い間隔でもよい。
換言すると、図20に示すように、仮想受信アンテナにおいて、水平方向に並ぶアンテナが水平方向の基本間隔DHで等間隔に配置される場合について説明したが、これに限定されない。
図24は、配置例2のバリエーション2に係る送信アンテナ106(例えば、Txと表す)及び受信アンテナ202(例えば、Rxと表す)の配置例(例えば、MIMOアンテナ配置例)を示す図である。図24に示す例では、図19と同様、送信アンテナ数NTxは6個(例えば、Tx#1,Tx#2,…,Tx#6)であり、受信アンテナ数Naは8個(例えば、Rx#1,Rx#2,…,Rx#8)である。また、図25は、図24に示すアンテナ配置によって得られる仮想受信アンテナの配置例を示す図である。
例えば、図24に示すように、送信アンテナ106における水平方向に並ぶアンテナ(Tx#1~Tx#4)の間隔は、受信アンテナ202における水平方向に並ぶアンテナ(Rx#1~Rx#5)の開口長4DHに2DHを加えた間隔(6DH)に設定されてもよい。この場合、図25に示す仮想受信アンテナにおいて、水平方向に並ぶアンテナ(例えば、VA#1~VA#5, VA#9~VA#13, VA#17~VA#21, VA#25~VA#29)は、不等間隔となるが、仮想受信アンテナの水平方向の開口長が拡大するため、水平方向の分解能をさらに向上できる。
図26は、配置例2のバリエーション2に係る送信アンテナ106(例えば、Txと表す)及び受信アンテナ202(例えば、Rxと表す)の他の配置例(例えば、MIMOアンテナ配置例)を示す図である。図26に示す例では、図19と同様、送信アンテナ数NTxは6個(例えば、Tx#1,Tx#2,…,Tx#6)であり、受信アンテナ数Naは8個(例えば、Rx#1,Rx#2,…,Rx#8)である。また、図27は、図26に示すアンテナ配置によって得られる仮想受信アンテナの配置例を示す図である。
図26に示すように、送信アンテナ106における水平方向に並ぶアンテナ(Tx#1~Tx#4)の間隔は、受信アンテナ202における水平方向に並ぶアンテナ(Rx#1~Rx#5)の開口長4DHに、DHより大きい間隔を不均一に加えた間隔に設定されてもよい。図26の例では、Tx#1とTx#2の間隔が6DHに設定され、Tx#2とTx#3の間隔が7DHに設定され、Tx#3とTx#4の間隔が6DHに設定される。
このように、図26において水平方向に並ぶ送信アンテナ(Tx#1~Tx#4)の間隔を不均一に設定することにより、図27に示す仮想受信アンテナにおいて、水平方向に並ぶアンテナ(例えば、VA#1~VA#5, VA#9~VA#13, VA#17~VA#21, VA#25~VA#29)は、さらに不均一性が増す。このため、到来方向推定時のサイドローブをより低減できる。また、仮想受信アンテナの水平方向の開口長がより拡大するため、水平方向の分解能をさらに向上できる。
なお、図24及び図26では、条件1を適用する場合について説明したが、条件1a、条件2又は条件2aを適用してもよい。例えば、条件1aを適用する配置では、水平方向に並ぶ受信アンテナの間隔は、水平方向に並ぶ送信アンテナの開口長に水平方向の基本間隔DHを加えた間隔よりも広く、かつ、不均一な間隔に設定されてもよい。同様に、条件2を適用する配置では、垂直方向に並ぶ送信アンテナの間隔は、垂直方向に並ぶ受信アンテナの開口長に垂直方向基本間隔DVを加えた間隔よりも広く、かつ、不均一な間隔が設定されてもよい。同様に、条件2aを適用する配置では、垂直方向に並ぶ受信アンテナの間隔は、垂直方向に並ぶ送信アンテナの開口長に垂直方向の基本間隔DVを加えた間隔よりも広く、かつ、不均一な間隔が設定されてもよい。
以上、配置例2のバリエーション2について説明した。
以上、本開示の一実施の形態について説明した。
なお、上述した条件1を満たす配置に対して、更に、以下のような変形を施した配置が適用されてもよい(以下、条件1の変形配置と呼ぶ)。
(条件1の変形配置)
例えば、条件1において、(Na-Nz)個の受信アンテナ202のうち、垂直方向における異なる位置に配置される複数のアンテナ(例えば、第2のアンテナに対応)は、垂直方向に直線上に配置される場合に限定されない。
例えば、条件1を満たす配置の受信アンテナ202のうち、分離性能向上用アンテナ、及び、分離性能向上用アンテナと水平方向に基本間隔DHで隣接するアンテナの配置は、他の受信アンテナの水平位置と異なる水平位置となる配置でもよい。換言すると、分離性能向上用アンテナ、及び、垂直方向に並ぶ複数の受信アンテナのうち、垂直方向において分離性能向上用アンテナと同じ位置のアンテナは、垂直方向に並ぶ他の受信アンテナの水平位置と異なる水平位置に配置されてもよい。
例えば、分離性能向上用アンテナ、及び、分離性能向上用アンテナと水平方向に基本間隔DHで隣接する受信アンテナは、条件1を満たす配置から、水平方向の基本間隔DHの整数倍、水平方向にずらして配置されてもよい。
図28は、図22に示す条件1を満たすアンテナ配置に対する、条件1の変形配置の一例を示す図である。また、図29は、図22に示すアンテナ配置によって得られる仮想受信アンテナの配置例を示す図である。
図28に示すように、分離性能向上用アンテナRx#8、及び、分離性能向上用アンテナRx#8と水平方向に基本間隔DHで隣接するアンテナRx#6の配置は、他の受信アンテナ(Rx#1~Rx#5、Rx#7)の水平位置と異なる水平位置となる配置である。換言すると、図28では、Rx#6及びRx#8それぞれの水平位置は、図22に示す配置から基本間隔DHの水平方向(図28では右方向)にずらして設定されてもよい。
条件1の変形配置により、例えば、垂直方向のサイズのより大きなアンテナ配置が可能になる。例えば、複数の平面パッチアンテナを垂直方向に複数並べたサブアレーをアンテナ素子に適用可能になる。サブアレー構成のアンテナを用いることにより、垂直方向のアンテナの指向性利得を向上でき、レーダ装置10の距離検知性能を向上できる。
また、例えば、分離性能向上用アンテナ、及び、分離性能向上用アンテナと水平方向に基本間隔DHで隣接する受信アンテナは、水平位置を変更しても、水平方向の分離性能には影響しないため、このような変形配置は好適である。
以上、条件1の変形配置について説明した。
同様に、上述した条件1aを満たす配置に対して、更に、以下のような変形を施した配置が適用されてもよい(以下、条件1aの変形配置と呼ぶ)。
(条件1aの変形配置)
例えば、条件1aを満たす配置の送信アンテナ106のうち、分離性能向上用アンテナ、及び、分離性能向上用アンテナと水平方向に基本間隔DHで隣接するアンテナの配置は、他の受信アンテナの水平位置と異なる水平位置でもよい。
例えば、分離性能向上用アンテナ、及び、分離性能向上用アンテナと水平方向に基本間隔DHで隣接する送信アンテナは、条件1aを満たす配置から、水平方向の基本間隔DHの整数倍、水平方向にずらして配置されてもよい。
条件1aの変形配置により、例えば、垂直方向のサイズのより大きなアンテナ配置が可能になる。例えば、複数の平面パッチアンテナを垂直方向に複数並べたサブアレーをアンテナ素子に適用可能になる。サブアレー構成のアンテナを用いることにより、垂直方向のアンテナの指向性利得を向上でき、レーダ装置10の距離検知性能を向上できる。
また、例えば、分離性能向上用アンテナ、及び、分離性能向上用アンテナと水平方向に基本間隔DHで隣接する送信アンテナは、水平位置を変更しても、水平方向の分離性能には影響しないため、このような変形配置は好適である。
以上、条件1aの変形配置について説明した。
なお、条件1の変形配置及び条件1aの変形配置と同様、条件2及び条件2aについても変形配置を適用してもよい。
また、本開示の一実施例に係るMIMOアレー配置において、水平方向と垂直方向とを入れ替えた配置を用いてもよく、仮想受信アレー配置は、水平方向と垂直方向を入れ替えた配置が得られる。これにより、水平方向と垂直方向とを入れ替えた角度分離性能が得られる。
また、上述した実施の形態では、レーダ装置10は、例えば、受信信号(例えば、符号多重信号の符号要素毎のドップラ解析部210の出力)に対して、符号多重送信に未使用の直交符号を用いて、ドップラ折り返しの判定を行う場合について説明した。このドップラ折り返しの判定により、例えば、レーダ装置10は、ドップラ解析部210におけるドップラ解析範囲と比較して、直交符号系列の符号長倍のドップラ範囲において折り返しを判定できる。よって、本実施の形態によれば、レーダ装置10は、曖昧性なく検出可能なドップラ範囲を、1アンテナ送信時と同等のドップラ範囲に拡大できる。
また、レーダ装置10は、例えば、ドップラ折り返しの判定結果に基づいた符号分離の際に、折り返しを含めたドップラ位相補正を行うことにより、符号多重信号間の相互干渉をノイズレベル程度に抑えることができるので、レーダ検出性能の劣化を抑制して、MIMOレーダの符号多重送信が可能となる。
なお、レーダ装置10は、上述したような符号多重方法を適用しなくてもよく、他の多重方法を適用してもよい。また、レーダ装置10は、上述したようなドップラ折り返しの判定を行わなくてもよい。例えば、符号生成部104は、符号長Locの符号系列に含まれるNallcode個の直交符号のうち、符号多重数NCMを直交符号数Nallcodeに等しくしてもよい。位相回転部105は、符号長Locの符号系列に含まれるNallcode個のすべての直交符号を用いて符号多重してもよい。なお、この場合、レーダ装置10の折り返し判定部212を適用しない構成となるため、ドップラ周波数範囲は±1/(2Loc×Tr)となる。
また、MIMOアンテナのアンテナ数(例えば、送信アンテナ数及び受信アンテナ数)は、上述したアンテナ配置の例において示したアンテナ数に限定されない。例えば、MIMOアンテナは、上述したアンテナ配置例の少なくとも一つにおけるアンテナ配置を含む構成でもよい。MIMOアンテナは、例えば、上述した条件1、条件1a、条件2及び条件2aの少なくとも一つを満たすアンテナ配置を含む構成でもよい。換言すると、レーダ装置10は、例えば、図示したアンテナ配置例に示すアンテナの他に、図示されないアンテナを備えてもよい。
本開示の一実施例に係るレーダ装置において、レーダ送信部及びレーダ受信部は、物理的に離れた場所に個別に配置されてもよい。また、本開示の一実施例に係るレーダ受信部において、方向推定部と、他の構成部とは、物理的に離れた場所に個別に配置されてもよい。
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、図示しないが、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、およびRAM(Random Access Memory)等の作業用メモリを有する。この場合、上記した各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。但し、レーダ装置のハードウェア構成は、かかる例に限定されない。例えば、レーダ装置の各機能部は、集積回路であるIC(Integrated Circuit)として実現されてもよい。各機能部は、個別に1チップ化されてもよいし、その一部または全部を含むように1チップ化されてもよい。
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
また、上述した実施の形態における「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
上記各実施形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
また、上記各実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力端子と出力端子を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブル プロセッサ(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
<本開示のまとめ>
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、複数の送信アンテナを用いて、送信信号を送信する送信回路と、複数の受信アンテナを用いて、前記送信信号が物体にて反射された反射波信号を受信する受信回路と、を具備し、前記送信アンテナ及び前記受信アンテナのうち一方のアンテナは、第1の方向の異なる位置に配置される複数の第1のアンテナ、前記第1の方向に直交する第2の方向の異なる位置に配置される複数の第2のアンテナ、及び、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナと異なる第3のアンテナを含み、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナは重複するアンテナを1つ含み、前記第3のアンテナは、前記第2の方向にて、前記複数の第1のアンテナが配置される位置と異なる位置に配置され、前記第1の方向にて、前記複数の第2のアンテナが配置される位置から規定間隔離れた位置に配置され、前記複数の第1のアンテナの少なくとも一つの間隔は、前記規定間隔であり、前記複数の送信アンテナ及び前記複数の受信アンテナのうちの他方のアンテナは、前記第1の方向に配置される複数の第4のアンテナ、及び、前記第2の方向に配置される複数の第5のアンテナを含み、前記複数の第4のアンテナ、及び、前記複数の第5のアンテナは重複するアンテナを1つ含み、前記第1の方向における前記複数の第4のアンテナの間隔は、前記複数の第1のアンテナ開口長よりも広い。
本開示の一実施例において、前記複数の送信アンテナと前記複数の受信アンテナとにより構成される仮想受信アンテナの開口長は、前記第2の方向よりも前記第1の方向の方が広い。
本開示の一実施例において、前記第3のアンテナは、前記第1の方向において、前記複数の第2のアンテナが配置される位置に対して、前記第1のアンテナがより多く配置される側に配置される。
本開示の一実施例において、前記第3のアンテナは、前記第1の方向において、前記複数の第2のアンテナが配置される位置に対して、前記第1のアンテナがより少なく配置される側に配置される。
本開示の一実施例において、前記複数の送信アンテナ及び前記複数の受信アンテナのそれぞれにおいて、前記第1の方向のアンテナ数は、前記第2の方向のアンテナ数よりも多い。
本開示の一実施例において、前記第1の方向及び前記第2の方向の少なくとも一方において、前記複数の送信アンテナの間隔と、前記複数の受信アンテナの間隔との差分は、前記規定間隔の値である。
本開示の一実施例において、前記第1の方向及び前記第2の方向の少なくとも一方において、前記複数の送信アンテナ及び前記複数の受信アンテナのうちの一方のアンテナ間隔は、前記複数の送信アンテナ及び前記複数の受信アンテナのうちの他方のアンテナ開口長よりも長い。
本開示の一実施例において、前記第1の方向は水平方向である。
本開示の一実施例において、前記第3のアンテナ、及び、前記複数の第2のアンテナのうち、前記第2の方向において前記第3のアンテナと同じ位置のアンテナは、前記複数の第2のアンテナのうちの他のアンテナの前記第1の方向における位置と異なる位置に配置される。
本開示の一実施例において、前記複数の送信アンテナ及び前記複数の受信アンテナのうち少なくとも一方における前記第1の方向のアンテナ間隔は、不等間隔である。
本開示の一実施例において、前記複数の送信アンテナ及び前記複数の受信アンテナは、L字型、T字型又は十字型に配置される。
本開示の一実施例において、前記規定間隔の値は、前記波長の0.45倍から0.8倍の範囲の何れかの値である。