JP2022064160A - 涙嚢切開ナイフ - Google Patents
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Abstract
Description
この公知の鼻用ナイフでは、鼻腔手術における操作性の向上、内視鏡等の併用器具との干渉回避に有用な構成として、持ち手部に対して、ストレート部および湾曲部をそれぞれ有するシャンク部を連接するとともに、当該湾曲部の先端側に刃部を形成した構造が採用されている。
すなわち、上記DCR法のように、鼻腔を経由して、眼科領域疾患に外科的アプローチを試みる場合には、公知の鼻用ナイフとは別途、術者による操作性向上に関する一層踏み込んだ創意工夫が要請される。
本発明においては、患者の鼻腔内に挿通されるとともに、当該鼻腔の奥側に位置する涙嚢を切開するための涙嚢切開ナイフが構成される。この涙嚢切開ナイフは、所定の長尺方向に延在する長尺体として構成されるとともに、術者の把持に供される把持部と、前記把持部に連接されるとともに、全体に渡って前記長尺方向に直線状に延在するシャンク部と、を有する。本発明では、涙嚢切開ナイフを、全体に渡って長尺方向に直線状に延在させることで、鼻腔を通じて眼科領域である涙嚢までのアプローチ性能を確実に担保することができる。特にシャンク部が、その全体に渡って、長尺方向に直線状に延在することにより、鼻腔内を進入する際の、意図しない受傷リスク等を効果的に軽減することができる。
上記と同様に、基部および刃部を、ともに長尺方向に延在する構成とすることで、鼻腔内を通じて涙嚢に至るまでの術者の操作性および患者の受傷リスク抑制が確実に担保されることになる。
「一対」とは、典型的には、第1サイドブレードおよび第2サイドブレードが左右対称形状となる構成がこれに該当する。
また刺突ブレードは、典型的には、左右対称状の一対構成としつつ、第1サイドブレードおよび第2サイドブレードにそれぞれ連接されるよう構成することが好ましい。また刺突ブレード同士の開き角度を適宜に設定するとともに、刺突ブレードと第1サイドブレードおよび第2サイドブレードの連接角度を適宜に設定することにより、一対の刺突ブレードおよび一対のサイドブレード(すなわち第1サイドブレードおよび第2サイドブレード)がそれぞれ異なる方向に向かう刃群を形成することができる。これにより、涙嚢を切開する場合に、当該涙嚢の複雑な形状に応じて最適な刃を選択することが可能となり、涙嚢切開ナイフの使用性が向上することとなる。
更に、例えば、涙嚢の長尺延在方向と交差状に、複数回切開を行いつつ、切開個所を開いていく手術形態も包含される(当該手術形態は、その切開態様を模して「花弁式」「花びら式」等とも称呼される)。
また方向については、一度、段階的に切開する場合、カーブ状、ジグザグ状に切開する場合など、各種の態様を包含可能である。更に、涙嚢の長尺延在方向成分を含めば足り、それ以外の方向に切開する態様も好適に包含可能である。
また、上記した「花弁式」ないし「花びら」式切開術を涙嚢に対して施行する場合、術者は、把持部の持ち手をその都度換えることなく、異なる方向への複数の切開動作を正確かつ迅速に行うことができるため、涙嚢切開ナイフの使用性が一段と向上する。
これにより涙嚢切開ナイフの操作性を確保しつつ、基部の剛性を高めることが可能とされる。
このように構成することで、涙嚢切開ナイフの刺突性および切開性が一層向上することとなる。
これにより、上記した剛性確保領域および涙嚢切開向上領域それぞれを合理的に具現化することができる。
前記刃部は、前記長尺方向につき略5.7mmの長さ寸法を有するとともに、前記幅方向につき略1.7mmの最大幅寸法を有し、
前記刺突ブレイドは、前記長尺方向につき略1.2mmの刃付け寸法を有するとともに、前記幅方向につき略1.4mmの最大幅寸法を有し、
前記第1サイドブレードおよび第2サイドブレードは、それぞれ、前記長尺方向につき略4.5mmの刃付け寸法を有し、
前記シャンク部は、前記長尺方向につき略17.3mmの長さ寸法を有し、
前記基部は、前記長尺方向につき略11.6mmの長さ寸法を有し、
前記テーパー部は、前記長尺方向につき、略5mmの長さ寸法を有し、
前記テーパー部の板厚が、略0.3mmから略0.15mmへと暫時減少して前記刃部に連接され、前記刃部における、前記第1サイドブレードおよび前記第2サイドブレード形成領域は、前記長尺方向につき、略0.15mmの板厚を有する構成である。
本発明の実施形態について図1~図12に基づいて説明する。
図中、本実施形態に係る涙嚢切開ナイフ1の構成が図1~図8に示され、当該涙嚢切開ナイフ1を用いた手術態様の概要が図9~図12に示される。
涙嚢切開ナイフ1の構成については、
図1、図2は、その全体構成を示す平面図、正面図であり、
図3、図4は、先端領域の構成を示す模式的平面図であり、
図5、図6は、先端領域の構成を示す模式的正面図、断面図であり、
図7は、刃部の寸法構成を示す模式的平面図であり
図8は、先端領域の寸法構成を示す模式的正面断面図である。
図1~図8においては、説明の便宜上、涙嚢切開ナイフ1の長手方向をL、長尺前側方向をLF、長尺後側方向をLR、幅方向をW、図1、図3における紙面上方側を幅右側方向WR、紙面下方側を幅左側方向WL、図2、図5、図6における紙面上下方向を上下方向Vと定義することとする。
本実施形態に係る涙嚢切開ナイフ1は、図1、図2に示すように、それぞれ長尺方向Lへと延在する長尺体として構成された把持部2およびシャンク部3を主体として、全体としても、長尺方向Lへと延在する長尺体として構成される。
本実施の形態では、把持部2は樹脂、シャンク部3は金属で形成されている。
図3に示すように、シャンク部3は、術者(便宜上、図示を省略)の把持に供される把持部2に対して、長尺前側方向LFに連接された基部4、および基部4の長尺前側方向LFに連接された切断手段としての刃部6を主体として構成されている。
基部4は、図3に示すように幅方向については、略一定の幅寸法を有するとともに(後述する図7の符号W3参照)、その中間領域に段部5が形成されている。また、特に図6に詳しく示すように、当該段部5から刃部6に至るまでの上下方向Vに関しては、長尺前側方向LFに向かうにつれて漸次に板厚が薄くなるテーパ部41が形成されている。本実施形態におけるテーパー部は、段部5の近傍においては、大きな減少比率を有するとともに、段部5から離間して刃部6へと向かう領域においては、相対的に小さく、かつ略一定の板厚減少比率を有するように形成されている。
刃部6は、図4に示すように、長尺前側方向LFの最先端領域に形成された刺突ブレード60と、当該刃部6の幅右側方向WR、幅左側方向WLにそれぞれ形成されるとともに、刺突ブレード60の長尺後側方向LBにおいて、当該刺突ブレード60に対して連続状に形成された一対の第1サイドブレード61および第2サイドブレード62を有する。
図7に詳しく示すように、長尺方向Lに関し、刃部6はL1の長さ寸法を有し、刺突ブレード60はL2の長さ寸法、第1サイドブレード61および第2サイドブレード62はそれぞれL3の長さ寸法を有する。換言すれば、L1=L2+L3の関係を有するように構成される。
本実施形態では、W1<W2の関係となる構成が採用されている。
なお当該寸法比の関係については、例えばW1=W2、あるいはW1>W2の関係となる構成を作用することも可能である。
これらの構成を採用することで、後述する涙嚢切開術を行う場合、幅狭の刺突ブレード60および第1サイドブレード61、第2サイドブレード62の幅狭の先端側領域によって涙嚢への刺突性ないし切開性を向上するとともに、長尺後側方向LBに向かうにつれて幅広となるテーパー状の第1サイドブレード61、第2サイドブレード62によって、涙嚢の刺突能力および切開能力が更に向上されることとなる。
なお当該幅寸法については、W2=W3、あるいはW2<W3となる構成を採用することも可能である。
涙嚢切開ナイフ1の各構成要素の具体的寸法値については、図3、図7、図8等に示されるように、以下の設定とされている(単位はmm:ミリメートル)。
刃部6は、長尺方向Lにつき略5.7mmの長さ寸法L1を有するとともに、幅方向Wにつき略1.7mmの最大幅寸法W2を有するよう構成される。
刺突ブレイド60は、長尺方向Lにつき略1.2mmの刃付け寸法L2を有するとともに、幅方向Wにつき略1.4mmの最大幅寸法W1を有するよう構成される。
第1サイドブレード61および第2サイドブレード62は、それぞれ、長尺方向Lにつき略4.5mmの刃付け寸法L3を有するように構成され、幅方向Wにつき、略1.4mmの最小幅寸法(当該最小幅寸法にて、刺突ブレード60に連接される)および略1.7mmの最大幅寸法W2を有するよう構成される。換言すれば、第1サイドブレード61および第2サイドブレード62の最大幅寸法W2(本実施形態では略1.7mm)が、刃部6の最大寸法を規定することとなる。
また図3に示すように、基部4は、長尺方向Lにつき、刃部6の略2倍の長さであって、略11.6mmの長さ寸法LBを有するとともに、幅寸法1.4mm~2.0mmの幅寸法W3を有する。
また図3に示すように、シャンク部3は、前記長尺方向につき略17.3mmの長さ寸法LSを有する。
図9には、本手術対象者である患者Pの眼および鼻領域の概要が、模式的に示されている。患者Pの眼P1及び鼻P2領域において、外部への開孔である鼻穴P3から、鼻内部空間である鼻腔P4が、鼻腔延在方向P4Lに沿って延びている。そして、当該鼻腔P4の奥側(図9において上方)において、骨窓P5が介在した状態で、涙嚢R4が鼻腔P4に近接した配置されている。なお骨窓P5は、事前にドリル等を用いて形成されるが、開窓法自体は公知技術に属するため、詳細な説明は省略する。
一方、患者Pの眼P1にあっては、涙腺R1が連接されるとともに、涙点R2および一対の涙小管R3を経由して涙嚢R4に連接されるとともに、鼻涙管R6を通じて鼻腔P4に連通される。これにより涙は、涙腺R1、眼P1、涙点R2、涙小管R3、涙嚢R4、鼻涙管R6を経由して、鼻腔P4へと移送される。
上記DCR法(DCR鼻内法)においては、典型的には、鼻涙管閉塞症に対する治療法の一例として、涙嚢R4に対する切開術を施すものであるが、本実施の形態に係る涙嚢切開ナイフ1は、術者が手で把持部2を把持した状態(把持状態は便宜上省略)で、図9において、鼻穴P3から、内視鏡と共に、鼻腔P4へと挿通されるとともに、鼻腔延在方向P4Lに概ね沿った状態で奥へと進み、骨窓P5を経由して涙嚢R4に達する。なお内視鏡の図示については、便宜上省略している。
涙嚢R4は、長軸および短軸を有する長尺形状を呈し、個人差があるものの、概ね、その長尺延在方向寸法(涙嚢R4の長手方向)が6.0mm~15.5mm程度とされる。
そして図10に示すように、涙嚢切開ナイフ1を長尺方向Lへと移動操作することで、当該涙嚢切開ナイフ1の刺突ブレード60を、術部R5(すなわち涙嚢R4)の、概ね央部として規定される切開領域R5Sにアプローチさせる。なお実際の手術では、涙嚢切開ナイフ1は、必ずしも涙嚢R4に対して直交状にアプローチしない場合もあるが、本実施形態では、説明の便宜上、直交状のアプローチ態様を図示している。
次に、図11に示すように、涙嚢切開ナイフ1を、涙嚢R4の長尺方向の一方側であるR5L1方向(図11における右方向)へと移動操作し、第1サイドブレード61を用いて、涙嚢R4を切開していく。すなわち第1サイドブレード61は、涙嚢第1切開部を構成する。このとき、術者は、涙嚢切開ナイフ1を涙嚢にアプローチさせた際の把持状態を維持したままで(握りを変えないで)、第1サイドブレード61による切開操作が可能である。
次に、図12に示すように、涙嚢切開ナイフ1を、涙嚢R4の長尺方向の他方側であるR5L2方向(図12における左方向)へと動かし、第2サイドブレード62を用いて、涙嚢R4を更に切開していく。すなわち第2サイドブレード62は、涙嚢第2切開部を構成する。このとき、術者は、第1サイドブレード61を用いてR5L1方向に切開した際の涙嚢切開ナイフ1把持状態を維持したままで(握りを変えることなく)、第2サイドブレード62による切開操作が可能である。
そして図8に示すように、基部4については、相対的に板厚状とされた剛性確保領域Aが設定される(板厚TH2)。一方、刃部6については、板厚がTH1と薄くされた涙嚢切開性向上領域Bが設定されることになる。更に、当該剛性確保領域Aから涙嚢切開向上領域Bへと、板厚が漸次に減少するテーパー部41で結ぶことにより、涙嚢切開ナイフ1が鼻腔P4(図9参照)を進入する場合の円滑性が確保されることとなる。
例えば、第1サイドブレード61を用いて、涙嚢R4を、長尺方向R5L1成分を含む複数方向に何度か切開するとともに、切開された涙嚢R4を少し切り開く。次に、第2サイドブレード62を用いて、涙嚢R4を、長尺方向R5L2成分を含む複数方向に何度か切開するとともに、切開された涙嚢R4を少し切り開き、これによって涙嚢R4を開花状に切開するような術式を好適に採用することが可能である(「花弁式」ないし「花びら式」)。
また、例えば、刺突ブレード60で涙嚢R4を刺突した上で、涙嚢面方向に切開する態様等も好適に採用可能である。
2 把持部
3 シャンク部
4 基部
41 テーパ部
5 段部
6 刃部
60 刺突ブレード
61 第1サイドブレード
62 第2サイドブレード
L 長尺方向
LF 長尺方向の先側方向
LB 長尺方向の後側方向
W 幅方向
WR 幅右側方向
WL 幅左側方向
V 上下方向
P 患者
P1 眼
P2 鼻
P3 鼻穴
P4 鼻腔
P4L 鼻腔延在方向
P5 骨窓
R1 涙腺
R2 涙点
R3 涙小管
R4 涙嚢
R5 術部
R5S 切開領域
R5L1 涙嚢長尺第1方向
R5L2 涙嚢長尺第2方向
R6 鼻涙管
この公知の鼻用ナイフでは、鼻腔手術における操作性の向上、内視鏡等の併用器具との干渉回避に有用な構成として、持ち手部に対して、ストレート部および湾曲部をそれぞれ有するシャンク部を連接するとともに、当該湾曲部の先端側に刃部を形成した構造が採用されている。
すなわち、上記DCR法のように、鼻腔を経由して、眼科領域疾患に外科的アプローチを試みる場合には、公知の鼻用ナイフとは別途、術者による操作性向上に関する一層踏み込んだ創意工夫が要請される。
本発明においては、患者の鼻腔内に挿通されるとともに、当該鼻腔の奥側に位置する涙嚢を切開するための涙嚢切開ナイフが構成される。この涙嚢切開ナイフは、所定の長尺方向に延在する長尺体として構成されるとともに、術者の把持に供される把持部と、前記把持部に連接されるとともに、全体に渡って前記長尺方向に直線状に延在するシャンク部と、を有する。本発明では、涙嚢切開ナイフを、全体に渡って長尺方向に直線状に延在させることで、鼻腔を通じて眼科領域である涙嚢までのアプローチ性能を確実に担保することができる。特にシャンク部が、その全体に渡って、長尺方向に直線状に延在することにより、鼻腔内を進入する際の、意図しない受傷リスク等を効果的に軽減することができる。
上記と同様に、基部および刃部を、ともに長尺方向に延在する構成とすることで、鼻腔内を通じて涙嚢に至るまでの術者の操作性および患者の受傷リスク抑制が確実に担保されることになる。
「一対」とは、典型的には、第1サイドブレードおよび第2サイドブレードが左右対称形状となる構成がこれに該当する。
また刺突ブレードは、典型的には、左右対称状の一対構成としつつ、第1サイドブレードおよび第2サイドブレードにそれぞれ連接されるよう構成することが好ましい。また刺突ブレード同士の開き角度を適宜に設定するとともに、刺突ブレードと第1サイドブレードおよび第2サイドブレードの連接角度を適宜に設定することにより、一対の刺突ブレードおよび一対のサイドブレード(すなわち第1サイドブレードおよび第2サイドブレード)がそれぞれ異なる方向に向かう刃群を形成することができる。これにより、涙嚢を切開する場合に、当該涙嚢の複雑な形状に応じて最適な刃を選択することが可能となり、涙嚢切開ナイフの使用性が向上することとなる。
また方向については、一度、段階的に切開する場合、カーブ状、ジグザグ状に切開する場合など、各種の態様を包含可能である。更に、涙嚢の長尺延在方向成分を含めば足り、それ以外の方向に切開する態様も好適に包含可能である。
また、上記した「花弁式」ないし「花びら」式切開術を涙嚢に対して施行する場合、術者は、把持部の持ち手をその都度換えることなく、異なる方向への複数の切開動作を正確かつ迅速に行うことができるため、涙嚢切開ナイフの使用性が一段と向上する。
これにより涙嚢切開ナイフの操作性を確保しつつ、基部の剛性を高めることが可能とされる。
このように構成することで、涙嚢切開ナイフの刺突性および切開性が一層向上することとなる。
これにより、上記した剛性確保領域および涙嚢切開向上領域それぞれを合理的に具現化することができる。
前記刃部は、前記長尺方向につき略5.7mmの長さ寸法を有するとともに、前記幅方向につき略1.7mmの最大幅寸法を有し、
前記刺突ブレイドは、前記長尺方向につき略1.2mmの刃付け寸法を有するとともに、前記幅方向につき略1.4mmの最大幅寸法を有し、
前記第1サイドブレードおよび第2サイドブレードは、それぞれ、前記長尺方向につき略4.5mmの刃付け寸法を有し、
前記シャンク部は、前記長尺方向につき略17.3mmの長さ寸法を有し、
前記基部は、前記長尺方向につき略11.6mmの長さ寸法を有し、
前記テーパー部は、前記長尺方向につき、略5mmの長さ寸法を有し、
前記テーパー部の板厚が、略0.3mmから略0.15mmへと暫時減少して前記刃部に連接され、前記刃部における、前記第1サイドブレードおよび前記第2サイドブレード形成領域は、前記長尺方向につき、略0.15mmの板厚を有する構成である。
本発明の実施形態について図1~図12に基づいて説明する。
図中、本実施形態に係る涙嚢切開ナイフ1の構成が図1~図8に示され、当該涙嚢切開ナイフ1を用いた手術態様の概要が図9~図12に示される。
涙嚢切開ナイフ1の構成については、
図1、図2は、その全体構成を示す平面図、正面図であり、
図3、図4は、先端領域の構成を示す模式的平面図であり、
図5、図6は、先端領域の構成を示す模式的正面図、断面図であり、
図7は、刃部の寸法構成を示す模式的平面図であり
図8は、先端領域の寸法構成を示す模式的正面断面図である。
図1~図8においては、説明の便宜上、涙嚢切開ナイフ1の長手方向をL、長尺前側方向をLF、長尺後側方向をLR、幅方向をW、図1、図3における紙面上方側を幅右側方向WR、紙面下方側を幅左側方向WL、図2、図5、図6における紙面上下方向を上下方向Vと定義することとする。
本実施形態に係る涙嚢切開ナイフ1は、図1、図2に示すように、それぞれ長尺方向Lへと延在する長尺体として構成された把持部2およびシャンク部3を主体として、全体としても、長尺方向Lへと延在する長尺体として構成される。
本実施の形態では、把持部2は樹脂、シャンク部3は金属で形成されている。
図3に示すように、シャンク部3は、術者(便宜上、図示を省略)の把持に供される把持部2に対して、長尺前側方向LFに連接された基部4、および基部4の長尺前側方向LFに連接された切断手段としての刃部6を主体として構成されている。
基部4は、図3に示すように幅方向については、略一定の幅寸法を有するとともに(後述する図7の符号W3参照)、その中間領域に段部5が形成されている。また、特に図6に詳しく示すように、当該段部5から刃部6に至るまでの上下方向Vに関しては、長尺前側方向LFに向かうにつれて漸次に板厚が薄くなるテーパ部41が形成されている。本実施形態におけるテーパー部は、段部5の近傍においては、大きな減少比率を有するとともに、段部5から離間して刃部6へと向かう領域においては、相対的に小さく、かつ略一定の板厚減少比率を有するように形成されている。
刃部6は、図4に示すように、長尺前側方向LFの最先端領域に形成された刺突ブレード60と、当該刃部6の幅右側方向WR、幅左側方向WLにそれぞれ形成されるとともに、刺突ブレード60の長尺後側方向LBにおいて、当該刺突ブレード60に対して連続状に形成された一対の第1サイドブレード61および第2サイドブレード62を有する。
図7に詳しく示すように、長尺方向Lに関し、刃部6はL1の長さ寸法を有し、刺突ブレード60はL2の長さ寸法、第1サイドブレード61および第2サイドブレード62はそれぞれL3の長さ寸法を有する。換言すれば、L1=L2+L3の関係を有するように構成される。
本実施形態では、W1<W2の関係となる構成が採用されている。
なお当該寸法比の関係については、例えばW1=W2、あるいはW1>W2の関係となる構成を作用することも可能である。
これらの構成を採用することで、後述する涙嚢切開術を行う場合、幅狭の刺突ブレード60および第1サイドブレード61、第2サイドブレード62の幅狭の先端側領域によって涙嚢への刺突性ないし切開性を向上するとともに、長尺後側方向LBに向かうにつれて幅広となるテーパー状の第1サイドブレード61、第2サイドブレード62によって、涙嚢の刺突能力および切開能力が更に向上されることとなる。
なお当該幅寸法については、W2=W3、あるいはW2<W3となる構成を採用することも可能である。
涙嚢切開ナイフ1の各構成要素の具体的寸法値については、図3、図7、図8等に示されるように、以下の設定とされている(単位はmm:ミリメートル)。
刃部6は、長尺方向Lにつき略5.7mmの長さ寸法L1を有するとともに、幅方向Wにつき略1.7mmの最大幅寸法W2を有するよう構成される。
刺突ブレイド60は、長尺方向Lにつき略1.2mmの刃付け寸法L2を有するとともに、幅方向Wにつき略1.4mmの最大幅寸法W1を有するよう構成される。
第1サイドブレード61および第2サイドブレード62は、それぞれ、長尺方向Lにつき略4.5mmの刃付け寸法L3を有するように構成され、幅方向Wにつき、略1.4mmの最小幅寸法(当該最小幅寸法にて、刺突ブレード60に連接される)および略1.7mmの最大幅寸法W2を有するよう構成される。換言すれば、第1サイドブレード61および第2サイドブレード62の最大幅寸法W2(本実施形態では略1.7mm)が、刃部6の最大寸法を規定することとなる。
また図3に示すように、基部4は、長尺方向Lにつき、刃部6の略2倍の長さであって、略11.6mmの長さ寸法LBを有するとともに、幅寸法1.4mm~2.0mmの幅寸法W3を有する。
また図3に示すように、シャンク部3は、前記長尺方向につき略17.3mmの長さ寸法LSを有する。
図9には、本手術対象者である患者Pの眼および鼻領域の概要が、模式的に示されている。患者Pの眼P1及び鼻P2領域において、外部への開孔である鼻穴P3から、鼻内部空間である鼻腔P4が、鼻腔延在方向P4Lに沿って延びている。そして、当該鼻腔P4の奥側(図9において上方)において、骨窓P5が介在した状態で、涙嚢R4が鼻腔P4に近接した配置されている。なお骨窓P5は、事前にドリル等を用いて形成されるが、開窓法自体は公知技術に属するため、詳細な説明は省略する。
一方、患者Pの眼P1にあっては、涙腺R1が連接されるとともに、涙点R2および一対の涙小管R3を経由して涙嚢R4に連接されるとともに、鼻涙管R6を通じて鼻腔P4に連通される。これにより涙は、涙腺R1、眼P1、涙点R2、涙小管R3、涙嚢R4、鼻涙管R6を経由して、鼻腔P4へと移送される。
上記DCR法(DCR鼻内法)においては、典型的には、鼻涙管閉塞症に対する治療法の一例として、涙嚢R4に対する切開術を施すものであるが、本実施の形態に係る涙嚢切開ナイフ1は、術者が手で把持部2を把持した状態(把持状態は便宜上省略)で、図9において、鼻穴P3から、内視鏡と共に、鼻腔P4へと挿通されるとともに、鼻腔延在方向P4Lに概ね沿った状態で奥へと進み、骨窓P5を経由して涙嚢R4に達する。なお内視鏡の図示については、便宜上省略している。
涙嚢R4は、長軸および短軸を有する長尺形状を呈し、個人差があるものの、概ね、その長尺延在方向寸法(涙嚢R4の長手方向)が6.0mm~15.5mm程度とされる。
そして図10に示すように、涙嚢切開ナイフ1を長尺方向Lへと移動操作することで、当該涙嚢切開ナイフ1の刺突ブレード60を、術部R5(すなわち涙嚢R4)の、概ね央部として規定される切開領域R5Sにアプローチさせる。なお実際の手術では、涙嚢切開ナイフ1は、必ずしも涙嚢R4に対して直交状にアプローチしない場合もあるが、本実施形態では、説明の便宜上、直交状のアプローチ態様を図示している。
次に、図11に示すように、涙嚢切開ナイフ1を、涙嚢R4の長尺方向の一方側であるR5L1方向(図11における右方向)へと移動操作し、第1サイドブレード61を用いて、涙嚢R4を切開していく。すなわち第1サイドブレード61は、涙嚢第1切開部を構成する。このとき、術者は、涙嚢切開ナイフ1を涙嚢にアプローチさせた際の把持状態を維持したままで(握りを変えないで)、第1サイドブレード61による切開操作が可能である。
次に、図12に示すように、涙嚢切開ナイフ1を、涙嚢R4の長尺方向の他方側であるR5L2方向(図12における左方向)へと動かし、第2サイドブレード62を用いて、涙嚢R4を更に切開していく。すなわち第2サイドブレード62は、涙嚢第2切開部を構成する。このとき、術者は、第1サイドブレード61を用いてR5L1方向に切開した際の涙嚢切開ナイフ1把持状態を維持したままで(握りを変えることなく)、第2サイドブレード62による切開操作が可能である。
そして図8に示すように、基部4については、相対的に板厚状とされた剛性確保領域Aが設定される(板厚TH2)。一方、刃部6については、板厚がTH1と薄くされた涙嚢切開性向上領域Bが設定されることになる。更に、当該剛性確保領域Aから涙嚢切開向上領域Bへと、板厚が漸次に減少するテーパー部41で結ぶことにより、涙嚢切開ナイフ1が鼻腔P4(図9参照)を進入する場合の円滑性が確保されることとなる。
例えば、第1サイドブレード61を用いて、涙嚢R4を、長尺方向R5L1成分を含む複数方向に何度か切開するとともに、切開された涙嚢R4を少し切り開く。次に、第2サイドブレード62を用いて、涙嚢R4を、長尺方向R5L2成分を含む複数方向に何度か切開するとともに、切開された涙嚢R4を少し切り開き、これによって涙嚢R4を開花状に切開するような術式を好適に採用することが可能である(「花弁式」ないし「花びら式」)。
また、例えば、刺突ブレード60で涙嚢R4を刺突した上で、涙嚢面方向に切開する態様等も好適に採用可能である。
2 把持部
3 シャンク部
4 基部
41 テーパ部
5 段部
6 刃部
60 刺突ブレード
61 第1サイドブレード
62 第2サイドブレード
L 長尺方向
LF 長尺方向の先側方向
LB 長尺方向の後側方向
W 幅方向
WR 幅右側方向
WL 幅左側方向
V 上下方向
P 患者
P1 眼
P2 鼻
P3 鼻穴
P4 鼻腔
P4L 鼻腔延在方向
P5 骨窓
R1 涙腺
R2 涙点
R3 涙小管
R4 涙嚢
R5 術部
R5S 切開領域
R5L1 涙嚢長尺第1方向
R5L2 涙嚢長尺第2方向
R6 鼻涙管
Claims (6)
- 患者の鼻腔内に挿通されるとともに、当該鼻腔の奥側に位置する涙嚢を切開するための涙嚢切開ナイフであって、
所定の長尺方向に延在する長尺体として構成されるとともに、術者の把持に供される把持部と、
前記把持部に連接されるとともに、全体に渡って前記長尺方向に直線状に延在するシャンク部と、を有し、
前記シャンク部は、
前記長尺方向に延在する基部と、
前記長尺方向に延在するとともに、前記長尺方向先端側において前記基部に連接される刃部と、を有し、
前記刃部は、前記長尺方向先端側に形成された刺突ブレードと、
前記長尺方向と交差する方向として定義される幅方向につき、当該幅方向の両側に形成された一対の両刃構成であって、それぞれ前記刺突ブレードに連接される第1サイドブレードおよび第2サイドブレードと、を有し、
前記刺突ブレードは、前記把持部が術者によって把持された状態で、前記涙嚢に刺突可能な涙嚢刺突部を構成し、
前記第1サイドブレードおよび前記第2サイドブレードの一方は、前記涙嚢切開ナイフが前記幅方向の一方側に移動操作されることで、前記涙嚢を、当該涙嚢の長尺延在方向のいずれか一方側へと切開する涙嚢第1切開部を構成し、
前記第1サイドブレードおよび前記第2サイドブレードの他方は、前記把持部が術者によって把持された状態を維持しつつ、前記涙嚢切開ナイフが前記幅方向の他方側に移動操作されることで、前記涙嚢を、当該涙嚢の長尺延在方向の他方側へと切開する涙嚢第2切開部を構成し、
前記刃部は、前記長尺方向につき略3.0mm~略10.0mmの長さ寸法を有するとともに、前記幅方向につき略1.0mm~略2.0mmの最大幅寸法を有し、
前記刺突ブレードは、前記長尺方向につき略1.0~4.0mmの刃付け寸法を有するとともに、前記幅方向につき略1.0mm~略2.0mmの最大幅寸法を有し、
前記第1サイドブレードおよび第2サイドブレードは、それぞれ、前記長尺方向につき略2.0mm~略6.0mmの刃付け寸法を有するように構成されることを特徴とする涙嚢切開ナイフ。 - 請求項1に記載の涙嚢切開ナイフであって、
前記長尺方向につき、前記基部は、前記刃部の略2倍の長さ寸法を有するように構成されることを特徴とする涙嚢切開ナイフ。 - 請求項1または2に記載の涙嚢切開ナイフであって、
前記シャンク部は、前記長尺方向につき略15.0mm~略50.0mmの長さ寸法を有し、
前記基部は、前記長尺方向につき略5.0mm~略47.0mmの長さ寸法を有するように構成されることを特徴とする涙嚢切開ナイフ。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の涙嚢切開ナイフであって、
前記第1サイドブレードおよび前記第2サイドブレードは、それぞれ、前記刺突ブレードに向かうにつれて、前記幅方向に漸次幅狭となるように構成されていることを特徴とする涙嚢切開ナイフ。 - 請求項1から4までのいずれか1項に記載の涙嚢切開ナイフであって、
前記基部は、前記長尺方向につき、当該基部の板厚が、前記刃部に向かうにつれて暫時減少するテーパー部として構成されるとともに、前記刃部において、前記第1サイドブレードおよび前記第2サイドブレードが形成される領域は、前記長尺方向につき板厚が一定となるように構成されていることを特徴とする涙嚢切開ナイフ。 - 請求項5に記載の涙嚢切開ナイフであって、
前記テーパー部は、前記長尺方向につき、略3.0mm~略7.0mmの長さ寸法を有するとともに、前記テーパー部の板厚が、略0.3mmから略0.15mmへと暫時減少して前記刃部に連接され、前記刃部における、前記第1サイドブレードおよび前記第2サイドブレード形成領域は、前記長尺方向につき、略0.15mmの板厚を有することを特徴とする涙嚢切開ナイフ。
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