JP2022062982A - ステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】操舵角によらずにタイヤ空気圧の異常検出を行うことができるようにする。【解決手段】ステアリングホイールの回転を転舵輪に伝達するステアリング装置であって、転舵輪のタイヤ空気圧の異常を検出する異常検出装置を備え、異常検出装置は、ステアリングホイールの操舵操作と相関関係にある操舵パラメータを取得又は算出し、操舵パラメータを一定数含むデータセットの標準偏差又は分散を、操舵パラメータの変動量として算出し、操舵パラメータの変動量に基づいて算出された判定指標を、所定の異常判定閾値と比較することで、転舵輪のタイヤ空気圧の異常を検出するように構成される。【選択図】図1
Description
本発明はステアリング装置に関する。
特許文献1には、従来のステアリング装置として、操舵トルクの実測値が、操舵角及び車速に応じて決定される基準操舵トルクよりも所定時間以上大きければ、タイヤ空気圧に異常が生じていると判定するように構成されたものが開示されている。
しかしながら、上記の判定方法は、操舵角が相対的に小さいときのタイヤ空気圧の異常検出精度が低いという問題があった。
本発明はこのような問題点に着目してなされたものであり、操舵角によらずにタイヤ空気圧の異常検出を行うことができるようにすることを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のある態様によれば、ステアリングホイールの回転を転舵輪に伝達するステアリング装置が、タイヤ空気圧の異常を検出する異常検出装置を備える。異常検出装置は、ステアリングホイールの操舵操作と相関関係にある操舵パラメータを取得又は算出し、操舵パラメータを一定数含むデータセットの標準偏差又は分散を、操舵パラメータの変動量として算出し、操舵パラメータの変動量に基づいて算出された判定指標を、所定の異常判定閾値と比較することで、タイヤ空気圧の異常を検出するように構成される。
本発明のこの態様によれば、操舵パラメータの変動量に基づいてタイヤ空気圧の異常に伴うタイヤと路面間の摩擦の変化を敏感に捉えることができるので、操舵角によらずにタイヤ空気圧の異常検出を行うことができる。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
図1は、本発明の一実施形態によるステアリング装置1の概略構成図である。
本実施形態によるステアリング装置1は、車両の左右の前輪(以下「転舵輪」という。)2を転舵させて車両の進行方向を変えるための装置であって、ステアリングホイール10と、ステアリング軸20と、ピニオン軸31及びラック軸32を含むラックアンドピニオン式のギヤ機構30と、ギヤ機構30と転舵輪2とを連結するリンク機構40と、アシスト機構50と、電子制御ユニット60と、を備える。
ステアリングホイール10は、車両の運転席に設けられて、車両のドライバによって操作される。車両のドライバがステアリングホイール10を操作してステアリングホイール10を回転させることで、ステアリング軸20、ギヤ機構30及びリンク機構40を介して転舵輪2の転舵角が変化し、これにより、車両の進行方向が変化する。
ステアリング軸20は、一端側がステアリングホイール10と連結されてステアリングホイール10と一体となって回転すると共に、他端側がギヤ機構30のピニオン軸31と連結される。ステアリング軸20はステアリングホイール10側のステアリング入力軸20aと、ギヤ機構30側のステアリング出力軸20bと、に分割されており、これらは、ステアリングホイール10に加えられてステアリング軸20に作用するトルク(以下「操舵トルク」という。)の方向及び大きさに応じてねじれるトーションバー21によって連結されている。
ギヤ機構30は、ピニオン軸31の回転運動を、ラック軸32の軸方向に沿った左右の直線運動に変換することができるように構成される。ピニオン軸31は、一端側がステアリング出力軸20bと連結されており、ステアリング軸20と一体となって回転する。ピニオン軸31の他端側の外周面には、ピニオンギヤが形成される。ラック軸32は、車幅方向と略平行に左右に延在しており、その外周面の一部には、ピニオンギヤと噛み合うラックギヤが形成される。これにより、ピニオン軸31が回転すると、その回転方向に応じてラック軸32が軸方向に沿って左右に移動する。
リンク機構40は、ラック軸32の両端にそれぞれ取り付けられたタイロッド41や各タイロッド41と連結されて各転舵輪2を支持するナックルアーム(図示せず)などを備え、ラック軸32の左右の直線運動を転舵輪2に伝えてその向き(転舵角)を変化させることができるように構成される。
アシスト機構50は、電動機51と、電動機51の出力をステアリング出力軸20bに伝達する減速機52と、を備える。アシスト機構50は、ドライバによるステアリングホイール10の操舵操作時に電動機51によってアシストトルクを発生させ、減速機52を介してそのアシストトルクをステアリング出力軸20bに伝達することで、ステアリングホイール10の操舵力を軽減させる。
電子制御ユニット60は、双方向性バスによって相互に接続された中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)やランダムアクセスメモリ(RAM)等のメモリ、入力ポート、及び出力ポートを備えたマイクロコンピュータである。
電子制御ユニット60には、操舵操作時におけるステアリングホイール10の回転角度(以下「操舵角」という。)MAを検出するための操舵角センサ61や、トーションバー21に作用するトルク、すなわち操舵操作時においてステアリングホイール10を介してステアリング軸20に入力される操舵トルクMTを検出するための操舵トルクセンサ62、車速を検出するための車速センサ63などからの出力信号が入力される。
電子制御ユニット60は、入力された各種センサの出力信号等に基づいて、所望のアシストトルクが得られるように電動機51を制御する。また電子制御ユニット60は、入力された各種センサの出力信号等に基づいて、転舵輪2等のタイヤ空気圧が予め設定された正常範囲の下限値よりも低下していることを検出するためのタイヤ空気圧の異常検出制御を実施する。
タイヤ空気圧が正常範囲の下限値よりも低下している空気圧異常時においては、タイヤ空気圧が正常範囲に収まっている空気圧正常時と比較して、タイヤと路面間の摩擦増加の影響によって操舵トルクが大きくなる傾向になる。そのため、前述した従来例では、操舵トルクの実測値(すなわち操舵トルクセンサ62で検出された操舵トルクMT)と、操舵角に応じた基準操舵トルクと、を比較することで、タイヤ空気圧の異常を検出していた。
しかしながら、操舵角が相対的に小さいときは(例えば100°以下)、空気圧正常時と空気圧異常時とで操舵トルクMTに差異が生じ難いという問題があり、操舵角が小さいときのタイヤ空気圧の異常検出精度が低いという問題があった。車両走行中において、操舵角が例えば100°以上になる頻度は多いとはいえず、そのため、操舵角によらずに精度良くタイヤ空気圧の異常検出を行う手法が求められる。
このような技術的課題に関して発明者らが鋭意研究を行った結果、ステアリングホイール10の操舵操作と相関関係にあるパラメータ(以下「操舵パラメータ」という。)の変動量に基づいてタイヤ空気圧の異常を検出することで、タイヤ空気圧の異常(低下)に伴うタイヤと路面間の摩擦の変化を敏感に捉えることができ、その結果、操舵角によらずに転舵輪2のタイヤ空気圧の異常を精度良く検出できることがわかった。なお変動量とは、或るデータのバラつき度合いを示す指標であって、例えば標準偏差や分散である。
そこで本実施形態では、操舵パラメータの一例である操舵角MAと操舵トルクMTとを用い、操舵角MAの変動量(以下「操舵角変動量」という。)σMAと、操舵トルクMTの変動量(以下「操舵トルク変動量」という。)σMTと、に基づいて、タイヤ空気圧の異常検出を行うこととした。以下、この本実施形態によるタイヤ空気圧の異常検出制御の詳細について説明する。
図2は、本実施形態によるタイヤ空気圧の異常検出制御について説明するフローチャートである。電子制御ユニット60は、車両が走行可能状態(いわゆるIG-ON状態)になっているときに、本ルーチンを所定の演算周期Δt(本実施形態では0.5[s])で繰り返し実行する。
ステップS1において、電子制御ユニット60は、車速が所定車速以上か否かを判定する。電子制御ユニット60は、車速が所定車速以上であれば、ステップS2の処理に進む。一方で電子制御制御ユニット200は、車速が所定車速未満であれば、ステップS3の処理に進む。
ステップS2において、電子制御ユニット60は、タイマ値T[s]を更新する。具体的には電子制御ユニット60は、タイマ値Tの前回値Tzに演算周期Δtを加算することで、タイマ値Tを更新する。なおタイマ値Tの初期値は0とされる。
ステップS3において、電子制御ユニット60は、タイマ値Tの更新を一時的に停止する。すなわち電子制御ユニット60は、タイマ値Tを前回値Tzのままとする。
ステップS4において、電子制御ユニット60は、操舵角センサ61によって検出された操舵角MAを操舵角用のデータベースに格納し、操舵トルクセンサ62によって検出された操舵トルクMTを操舵トルク用のデータベースに格納する。
ステップS5において、電子制御ユニット60は、タイマ値Tが所定値T1[s]以上か否かを判定する。電子制御ユニット60は、タイマ値Tが所定値T1以上であれば、ステップS6の処理に進む。一方で電子制御ユニット60は、タイマ値Tが所定値T1未満であれば、今回の処理を終了する。
ステップS6において、電子制御ユニット60は、タイマ値Tが初期値0から所定値T1になるまでの所定期間内に取得されて操舵角用のデータベースに格納された操舵角MAのデータに基づいて、操舵角変動量σMAをそれぞれ算出する。また電子制御ユニット60は、タイマ値Tが初期値0から所定値T1になるまでの所定期間内に取得されて操舵トルク用のデータベースに格納された操舵トルクMTのデータに基づいて、操舵トルク変動量σMTをそれぞれ算出する。
なお本実施形態では、所定期間内に取得された操舵角MA及び操舵トルクMTの各データの標準偏差を、それぞれ操舵角変動量σMA及び操舵トルク変動量σMTとして算出している。したがって、例えば所定値T1を5秒に設定していた場合には、車速が所定車速以上となっている5秒間の間に取得された10個の操舵角MAの標準偏差が、操舵角変動量σMAとして算出され、同様に車速が所定車速以上となっている5秒間の間に取得された10個の操舵トルクMTの標準偏差が、操舵トルク変動量σMTとして算出されることになる。
ステップS7において、電子制御ユニット60は、操舵トルク変動量σMTが、予め定められた下限値σminから上限値σmaxまでの所定範囲内に収まっているか否かを判定する。電子制御ユニット60は、操舵トルク変動量σMTが所定範囲内に収まっていれば、ステップS8の処理に進む。一方で電子制御ユニット60は、操舵トルク変動量σMTが所定範囲内に収まっていなければ、ステップS9の処理に進む。下限値σmin及び上限値σmaxの設定方法については、図4を参照して後述する。
ステップS8において、電子制御ユニット60は、タイヤ空気圧の異常判定処理を実施する。タイヤ空気圧の異常判定処理の詳細については、図3を参照して後述する。
ステップS9において、電子制御ユニット60は、タイマ値Tを初期値に戻すと共に、操舵角用のデータベース及び操舵トルク用のデータベースをそれぞれ初期化して、各データベース内に格納されていた操舵角MA及び操舵トルクMTの各データを消去する。
図3は、タイヤ空気圧の異常判定処理の詳細について説明するフローチャートである。
ステップS81において、電子制御ユニット60は、操舵トルク変動量σMTを操舵角変動量σMAで割った勾配α(=σMT/σMA)を算出する。
ステップS82において、電子制御ユニット60は、タイヤ空気圧の異常を判定するための判定指標Aを算出する。本実施形態では、勾配αを所定回数N1だけ積算した積算値を判定指標Aとしているため、電子制御ユニット60は、本ステップで判定指標Aの前回値Azに今回の処理で算出した勾配αを加算することで、判定指標Aの値を更新する。なお判定指標Aの初期値は0である。
ステップS83において、電子制御ユニット60は、勾配αの積算回数Nαを算出する。具体的には電子制御ユニット60は、積算回数Nαの前回値Nαzに1を加算することで、積算回数Nαを算出する。なお積算回数Nαの初期値は0とされる。
ステップS84において、電子制御ユニット60は、積算回数Nαが所定回数N1(例えばN1=10)以上か否かを判定する。電子制御ユニット60は、積算回数Nαが所定回数N1以上であれば、ステップS85の処理に進む。一方で電子制御ユニット60は、積算回数Nαが所定回数N1未満であれば、ステップS88の処理に進む。
ステップS85において、電子制御ユニット60は、判定指標Aが所定の異常判定閾値A1以上か否かを判定する。電子制御ユニット60は、判定指標Aが異常判定閾値A1以上であれば、タイヤ空気圧に異常があると判定してステップ86の処理に進む。一方で電子制御ユニット60は、判定指標Aが異常判定閾値A1未満であれば、タイヤ空気圧は正常であると判定してステップS87の処理に進む。なお、本実施形態において判定指標Aが異常判定閾値A1以上であればタイヤ空気圧に異常があると判断できる点については、図6を参照して後述する。
ステップS86において、電子制御ユニット60は、ドライバに対して、タイヤ空気圧に異常がある旨の警告を実施する。ドライバに対する警告の実施方法としては、例えばメータディスプレイなどに警告灯を点灯させる方法が挙げられるが、このような方法に限られるものではなく、文字や音声によってドライバに警告するようにしてもよい。
ステップS87において、電子制御ユニット60は、判定指標A及び積算回数Nαを初期値に戻す。
ステップS88において、電子制御ユニット60は、タイマ値Tを初期値に戻すと共に、操舵角用のデータベース及び操舵トルク用のデータベースをそれぞれ初期化して、各データベース内に格納されていた操舵角MA及び操舵トルクMTの各データを消去する。
図4A及び図4Bは、下限値σmin及び上限値σmaxの設定方法について説明する図であり、基準路走行時に所定のサンプリング周期(例えば0.5秒)で取得した操舵トルクのデータを所定期間(例えば5秒)毎のデータセットに分割したときの、各データセットの標準偏差(すなわち操舵トルク変動量σMT)の度数分布図である。
なお図4Aは、タイヤ空気圧が正常な状態で基準路を走行した場合の操舵トルク変動量σMTの度数分布図であり、図4Bは、タイヤ空気圧が異常な状態(低下した状態)で基準路を走行した場合の操舵トルク変動量σMTの度数分布図である。また基準路とは、様々な状態の路面から構成された例えば実験用の道路である。
本実施形態では、この図4Aに示す空気圧正常時における操舵トルク変動量σMTの度数分布図と、図4Bに示す空気圧異常時における操舵トルク変動量σMTの度数分布図と、を重ね合わせたときに、操舵トルク変動量σMTの分布が生じている部分がおおよそ重なっている範囲の下限及び上限を、それぞれ下限値σmin及び上限値σmaxとして設定している。これは、操舵トルク変動量σMTがおおよそ同じ条件のときに、タイヤ空気圧に異常が生じているかを判定するためである。そして、そのような範囲が複数ある場合は、基本的に階級の小さい側の範囲を選択する。これは、階級の大きい側、すなわち操舵トルク変動量σMTの大きい側は、所定期間内に取得された操舵トルクMTのデータセットのバラつき度合いが大きく、判定精度の低下が懸念されるためである。したがって本実施形態では、図4A及び図4Bに破線で囲った範囲の下限及び上限を、それぞれ下限値σmin及び上限値σmaxとして設定している。
図5Aは、タイヤ空気圧が正常な状態で基準路を走行した場合の操舵角MAのタイムチャートであって、操舵トルク変動量σMTが所定範囲内に収まったタイミングにひし形のマークを示した図である。図5Bは、タイヤ空気圧が異常な状態(低下した状態)で基準路を走行した場合の操舵角MAのタイムチャートであって、操舵トルク変動量σMTが所定範囲内に収まったタイミングにバツのマークを示した図である。
また図6は、図5A及び図5Bにおいて操舵トルク変動量σMTが所定範囲内に収まったタイミング毎に算出された勾配αの積算値を、その積算回数と対応させて示した図である。図6において、ひし形のマークが、タイヤ空気圧が正常な状態のときに算出された勾配αの積算値を示し、バツのマークが、タイヤ空気圧が異常な状態のときに算出された勾配αの積算値を示す。
図6に示すように、空気圧正常時において、操舵トルク変動量σMTが所定範囲内に収まったタイミング毎に算出された勾配αを所定回数N1だけ積算した積算値を判定指標Anmlとし、空気圧異常時において、操舵トルク変動量σMTが所定範囲内に収まったタイミング毎に算出された勾配αを所定回数N1だけ積算した積算値を判定指標Adwnとすると、判定指標Adwnが判定指標Anmlよりも明確に大きな値になっていることがわかる。
したがって、操舵トルク変動量σMTが所定範囲内に収まったタイミング毎に算出された勾配αを所定回数N1だけ積算した積算値(すなわち判定指標A)を、例えば図6に示す異常判定閾値A1と比較することで、タイヤ空気圧に異常が生じているか否かを判定することができる。具体的には、操舵トルク変動量σMTが所定範囲内に収まったタイミング毎に算出された勾配αを所定回数N1だけ積算した積算値(すなわち判定指標A)が、異常判定閾値A1以上であれば、タイヤ空気圧に異常が生じていると判定することができる。
以上説明した本実施形態によるステアリング装置1は、ステアリングホイール10の回転を転舵輪2に伝達する装置であって、転舵輪2のタイヤ空気圧の異常を検出する電子制御ユニット60(異常検出装置)を備える。そして電子制御ユニット60は、ステアリングホイール10の操舵操作と相関関係にある操舵パラメータを取得し、操舵パラメータを一定数含むデータセットの標準偏差又は分散を操舵パラメータの変動量として算出し、操舵パラメータの変動量に基づいて算出された判定指標Aを、所定の異常判定閾値A1と比較することで、転舵輪2のタイヤ空気圧の異常を検出するように構成される。
より詳細には、電子制御ユニット60は、操舵パラメータとして操舵角MA及び操舵トルクMTを取得し、操舵角MA及び操舵トルクMTの各変動量(操舵角変動量σMA及び操舵トルク変動量σMT)に基づいて算出された判定指標Aを、所定の異常判定閾値A1と比較することで、転舵輪2のタイヤ空気圧の異常を検出するように構成される。
このようにして操舵角変動量σMA及び操舵トルク変動量σMTに基づいて算出された判定指標Aは、タイヤ空気圧の異常(低下)に伴うタイヤと路面間の摩擦の変化を敏感に捉えることができる。そのため、操舵角によらずに転舵輪2のタイヤ空気圧の異常を精度良く検出することができる。
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、操舵パラメータとして、操舵角MAに関する量と操舵トルクMTに関する量とからなるハミルトニアンHの時間微分dHを用いた点で、第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
次に本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、操舵パラメータとして、操舵角MAに関する量と操舵トルクMTに関する量とからなるハミルトニアンHの時間微分dHを用いた点で、第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
ハミルトニアンHの時間微分dHは、操舵角MA、操舵角MAの時間微分dMA、操舵トルクMT、及び操舵トルクMTの時間微分dMTを用いて下記の(1)式によって表すことができる物理量である。
dH=MA・dMT+MT・dMA …(1)
dH=MA・dMT+MT・dMA …(1)
このハミルトニアンHの時間微分dHは、操舵操作時における操舵角MAと操舵トルクMTとを一対で1つの物理的性質を呈する量とみなした操舵パラメータであって、(1)式からも分かる通り、操舵角MA及び操舵トルクMTに加え、それらの時間微分(変化率)が反映されている。そのため、ドライバの操舵操作をより正確に表した操舵パラメータといえ、その変動量に基づいてタイヤ空気圧の異常を検出することで、第1実施形態にように操舵角変動量σMAと操舵トルク変動量σMTとに基づいてタイヤ空気圧の異常検出を行う場合よりも、より精度良くタイヤ空気圧の異常を検出することができる。
図7は、本実施形態によるタイヤ空気圧の異常判定処理の詳細について説明するフローチャートである。なお図7において、ステップS86,S88の処理は第1実施形態と同様なので、ここでは説明を省略する。
ステップS201において、電子制御ユニット60は、タイマ値Tが初期値0から所定値T1になるまでの所定期間内に演算周期Δt毎に取得された操舵角MA及び操舵トルクの組み合わせ毎に、ハミルトニアンHの時間微分dHを算出する。
したがって、例えば所定値T1を5秒に設定していた場合には、演算周期Δt(=サンプリング周期)が0.5秒なので、車速が所定車速以上となっている5秒間の間に操舵角MA及び操舵トルクMTの組み合わせが10組取得されることになり、ハミルトニアンHの時間微分dHが10個算出されることになる。
ステップS202において、電子制御ユニット60は、ステップS201で算出した複数個のハミルトニアンHの時間微分dHの変動量(以下「ハミルトニアン変動量」という。)σdHを算出する。
ステップS203において、電子制御ユニット60は、タイヤ空気圧の異常を判定するための判定指標Aを算出する。本実施形態では、ハミルトニアン変動量σdHを所定回数N1だけ積算した積算値を判定指標Aとしているため、電子制御ユニット60は、本ステップで判定指標Aの前回値Azに今回の処理で算出したハミルトニアン変動量σdHを加算することで、判定指標Aの値を更新する。なお判定指標Aの初期値は0である。
ステップS204において、電子制御ユニット60は、ハミルトニアン変動量σdHの積算回数NσdHを算出する。具体的には電子制御ユニット60は、積算回数NσdHの前回値NσdHzに1を加算することで、積算回数NσdHを算出する。なお積算回数NσdHの初期値は0とされる。
ステップS205において、電子制御ユニット60は、積算回数NσdHが所定回数N1以上か否かを判定する。電子制御ユニット60は、積算回数NσdHが所定回数N1以上であれば、ステップS206の処理に進む。一方で電子制御ユニット60は、積算回数Nαが所定回数N1未満であれば、ステップS88の処理に進む。
ステップS206において、電子制御ユニット60は、判定指標Aが所定の異常判定閾値A2未満か否かを判定する。電子制御ユニット60は、判定指標Aが異常判定閾値A2未満であれば、タイヤ空気圧に異常があると判定してステップ86の処理に進む。一方で電子制御ユニット60は、判定指標Aが異常判定閾値A2以上であれば、タイヤ空気圧は正常であると判定してステップS87の処理に進む。なお、本実施形態において判定指標Aが異常判定閾値A2未満であればタイヤ空気圧に異常があると判断できる点については、図8を参照して後述する。
ステップS207において、電子制御ユニット60は、判定指標A及び積算回数NσdHを初期値に戻す。
図8は、前述した図5A及び図5Bにおいて操舵トルク変動量σMTが所定範囲内に収まったタイミング毎に算出されたハミルトニアン変動量σdHの積算値を、その積算回数と対応させて示した図である。図8において、ひし形のマークが、転舵輪2のタイヤ空気圧が正常な状態のときに算出されたハミルトニアン変動量σdHの積算値を示し、バツのマークが、転舵輪2のタイヤ空気圧が異常な状態のときに算出されたハミルトニアン変動量σdHの積算値を示す。
図8に示すように、空気圧正常時において、操舵トルク変動量σMTが所定範囲内に収まったタイミング毎に算出されたハミルトニアン変動量σdHを所定回数N1だけ積算した積算値を判定指標Anmlとし、空気圧異常時において、操舵トルク変動量σMTが所定範囲内に収まったタイミング毎に算出されたハミルトニアン変動量σdHを所定回数N1だけ積算した積算値を判定指標Adwnとすると、判定指標Adwnが判定指標Anmlよりも明確に小さい値になっていることがわかる。また、第1実施形態のように勾配αの積算値を判定指標Aとした場合と比較して(図6参照)、空気圧正常時と空気圧異常時との差異がより明確に表れていることがわかる。
したがって、操舵トルク変動量σMTが所定範囲内に収まったタイミング毎に算出されたハミルトニアン変動量σdHを所定回数N1だけ積算した積算値(すなわち判定指標A)を、例えば図6に示す異常判定閾値A2と比較することで、タイヤ空気圧に異常が生じているか否かを判定することができる。具体的には、操舵トルク変動量σMTが所定範囲内に収まったタイミング毎に算出されたハミルトニアン変動量σdHを所定回数N1だけ積算した積算値(すなわち判定指標A)が、異常判定閾値A2未満であれば、タイヤ空気圧に異常が生じていると判定することができる。
以上説明した本実施形態によるステアリング装置1は、ステアリングホイール10の回転を転舵輪2に伝達する装置であって、転舵輪2のタイヤ空気圧の異常を検出する電子制御ユニット60(異常検出装置)を備える。そして電子制御ユニット60は、ステアリングホイール10の操舵操作と相関関係にある操舵パラメータを算出し、操舵パラメータを一定数含むデータセットの標準偏差又は分散を操舵パラメータの変動量として算出し、操舵パラメータの変動量に基づいて算出された判定指標Aを、所定の異常判定閾値A1と比較することで、転舵輪2のタイヤ空気圧の異常を検出するように構成される。
より詳細には、電子制御ユニット60は、操舵パラメータとして、操舵角MA及び操舵トルクMTを一対で1つの物理的性質を呈する量とみなしたハミルトニアンHの時間微分dHを算出し、ハミルトニアンHの時間微分dHの変動量(ハミルトニアン変動量σdH)に基づいて算出された判定指標Aを、所定の異常判定閾値A2と比較することで、転舵輪2のタイヤ空気圧の異常を検出するように構成される。
前述した通り、操舵角MA及び操舵トルクMTを一対で1つの物理的性質を呈する量とみなしたハミルトニアンHの時間微分dHは、操舵角MA及び操舵トルクMTに加え、それらの時間微分(変化率)が反映された操舵パラメータであって、ドライバの操舵操作をより正確に表した操舵パラメータである。
そのため、ハミルトニアンHの時間微分dHの変動量(ハミルトニアン変動量σdH)に基づいて算出された判定指標Aは、第1実施形態よりもタイヤ空気圧の異常(低下)に伴うタイヤと路面間の摩擦の変化をさらに敏感に捉えることができる。そのため、操舵角によらずに転舵輪2のタイヤ空気圧の異常をより一層精度良く検出することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば上記の各実施形態において、操舵パラメータの一例として、操舵角MAや操舵トルクMT、それらを一対で1つの物理的性質を呈する量とみなしたハミルトニアンHの時間微分dHを挙げて説明したが、例えば電動機51でアシストトルクを発生させるときに電動機51に流れる電流の値(アシスト電流値)は、操舵トルクMTと相関性がある。したがって、アシスト電流値の変動量に基づいて、タイヤ空気圧に異常が生じているかを判定するようにしてもよい。
1 ステアリング装置
2 転舵輪
10 ステアリングホイール
60 電子制御ユニット(異常検出装置)
2 転舵輪
10 ステアリングホイール
60 電子制御ユニット(異常検出装置)
Claims (1)
- ステアリングホイールの回転を転舵輪に伝達するステアリング装置であって、
前記転舵輪のタイヤ空気圧の異常を検出する異常検出装置を備え、
前記異常検出装置は、
前記ステアリングホイールの操舵操作と相関関係にある操舵パラメータを取得又は算出し、
前記操舵パラメータを一定数含むデータセットの標準偏差又は分散を、前記操舵パラメータの変動量として算出し、
前記操舵パラメータの変動量に基づいて算出された判定指標を、所定の異常判定閾値と比較することで、前記転舵輪のタイヤ空気圧の異常を検出するように構成される、
ステアリング装置。
Priority Applications (1)
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Family Applications (1)
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2020
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