JP2022060772A - 軟磁性材料及びインダクタ - Google Patents

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Abstract

Figure 2022060772000001
【課題】インダクタに用いる金属磁性体を構成する軟磁性材料であって、金属磁性体を構成したときに高い耐電圧性を安定に実現することのできる軟磁性材料を提供する。
【解決手段】軟磁性金属を含む粒子核と当該粒子核の表面に位置する絶縁膜とで構成された軟磁性粒子を含む軟磁性材料であって、粒子核は、絶縁膜との間に上記軟磁性金属の酸化物で構成される酸化膜を有し、且つCrを含まないか又は1.5重量%以下のCrを含み、酸素の含有量が重量比900ppm以上2800ppm以下である。
【選択図】図7

Description

本発明は、軟磁性材料及びこれを用いたインダクタに関する。
金属磁性体を用いたインダクタ(コイル部品)は、例えば表面実装が可能なチップインダクタとして、スマートフォンなどの様々な電気機器に広く用いられている。このようなインダクタに用いる金属磁性体として、軟磁性材料である金属の粒子で構成される軟磁性粉に樹脂を加えて加圧成型した、圧粉磁心ないし素体を用いることが知られている。
特許文献1には、軟磁性粉を構成する磁性体粒子として微小な磁性材料のコア(粒子核)の表面上にゾルゲル反応生成物で構成された絶縁被膜を形成したものを用いることが記載されている。この構成によれば、磁性体粒子の表面の絶縁性を増して、圧縮成型して得られる圧粉磁心又は素体における比抵抗を大きくし、高い耐電圧特性を実現することができる。
しかしながら、粒子核の表面状態によっては、当該粒子核に対する絶縁膜の固着強度を十分確保できず、製造工程等において絶縁膜が剥離すること等により、金属磁性体としての高い耐電圧性を安定に実現することが困難となる場合があり得る。
国際公開WO2018/131536号
本発明の目的は、加圧成型されて金属磁性体を構成したときに当該金属磁性体としての高い耐電圧性を安定に実現することのできる軟磁性材料を提供することである。
本発明の一の態様は、軟磁性金属を含む粒子核と前記粒子核の表面に位置する絶縁膜とで構成された軟磁性粒子を含む軟磁性材料であって、前記粒子核は、前記絶縁膜との間に前記軟磁性金属の酸化物で構成される酸化膜を有し、前記粒子核は、Crを含まないか又は1.5重量%以下のCrを含み、酸素の含有量が重量比900ppm以上2800ppm以下である、軟磁性材料である。
本発明に係る軟磁性材料によれば、これを加圧成型して金属磁性体としたときに当該金属磁性体としての高い耐電圧性を安定に実現することができる。
本発明の実施形態に係るインダクタの構成を模式的に示す図であり、インダクタの天面の側を視た斜視図である。 同インダクタの構成を模式的に示す図であり、インダクタの実装面の側を視た斜視図である。 同インダクタの内部構成を透視して示す透視斜視図である。 インダクタの製造工程の概要を示す図である。 混合粉で形成されたタブレットを用いた素体成型の態様を示す図である。 成型後の素体のコアの状態を示す模式図である。 混合粉を構成する第1軟磁性粒子の構成を示す図である。 Crレスの第1軟磁性粒子の、粒子核に形成された酸化膜の表面の電子顕微鏡写真である。 第1軟磁性粒子についての、酸素含有量に対する成型体の耐電圧の変化を示す図である。 第1軟磁性粒子についての、酸素含有量に対する成型体の比透磁率の変化を示す図である。 第1軟磁性粒子についての、酸素含有量に対する成型体の飽和磁束密度の変化を示す図である。 混合粉を構成する第2軟磁性粒子の構成を示す図である。 第2軟磁性粒子についての、Si/C重量比に対する成型体の比透磁率の変化を示す図である。 第2軟磁性粒子についての、Si/C重量比に対する成型体の圧環強度の変化を示す図である。 素体成型・硬化工程におけるコイル周辺部での混合粉の流動態様を示す図である。 素体成型・硬化工程における第1タブレットの表面領域と中央部領域の空隙の状態を示す図である。 インダクタの参照面を説明する図である。 素体の側面の樹脂の充填態様を示す図である。 素体の表面粗さの測定結果を示す図である。 素体の側面とコイルとの間隔を説明する図である。 混合粉における樹脂量と素体の密度との関係を説明する図である。 (A)はコイルの下段の巻線部を周囲材料と共に示す画像であり、(B)はコイルの上段の巻線部を周囲材料と共に示す画像である。 素体成型の際の加圧力の説明に供する図である。 線間磁性粉構造のシミュレーション結果を示す特性曲線図である。 巻回部近傍に磁気ギャップとなるエアギャップを設けた場合の画像である。 エアギャップの有無に応じたシミュレーション結果を示す特性曲線図である。 素体研削に用いられる研削装置の一例を模式的に示す図である。 サイドギャップの説明図である。 素体保護膜形成に用いる保護膜形成装置の一例を模式的に示す図である。 ナノシリカの含有量と乾燥速度の実験結果を示す図である。 ナノシリカのシリカ粒子の平均粒径と、くっつき発生率の実験結果を示す図である。 素体保護膜に生じたクラックを示す画像である。 素体保護膜の厚みを変えて「めっき飛び」の数を計測した結果を示す図である。
[インダクタ全体構成]
図1及び図2は本実施形態に係るインダクタ1の構成を模式的に示す図であり、図1はインダクタ1の天面14の側を視た斜視図、図2はインダクタ1の実装面12の側を視た斜視図である。
本実施形態のインダクタ1は、表面実装型の電子部品として構成されており、略直方体形状の素体10と、当該素体10の表面に設けられた一対の外部電極20とを備え、素体10の一面が図示しない回路基板の表面に実装される実装面12(図2)として構成され、また素体10は外部電極20を除き素体保護膜50で覆われている。
以下、素体10において、実装面12の対向面を天面14(図1)と言い、実装面12及び天面14以外の4面の側面のうち、コイル30の後述する引出部34が位置する一対の面を第1側面16と言い、残りの一対の面を第2側面18と言う。これら第1側面16、及び第2側面18は、後述するコイル30が備える巻回部32の径方向に位置する素体10の面でもある。以下では、対向する実装面12と天面14を、一対の主面とも称する。
また、図1に示すように、実装面12から天面14までの長さを素体10の高さHと定義し、天面14の短辺の長さを素体10の幅Wと定義し、長辺の長さを素体10の長さLと定義する。
図3は本実施形態に係るインダクタ1の内部構成を示す透視斜視図である。
素体10は、コイル30と、当該コイル30が埋設されたコア40と、を備え、コイル30をコア40に封入したコイル封入型磁性部品として構成されている。
コイル30は導線を巻回した空芯コイル部品である。
コア40は、軟磁性粉と樹脂を混合した混合粉を、コイル30を内包した状態で圧粉することで略直方体形状に圧縮成型された成型体である。
コイル30は、導線が巻回された巻回部32と、当該巻回部32から引き出された一対の引出部34とを備える。巻回部32は、導線の両端が外周に位置し、かつ内周で互いに繋がるように導線を渦巻き状に巻回して形成される。素体10の内部において、コイル30は、巻回部32の中心軸Kが素体10の高さHの方向に沿う姿勢でコア40に埋設されており、また引出部34は、巻回部32から一対の第1側面16のそれぞれまで引き出されている。
コイル30の形成に用いられる導線は、電気的絶縁性を有した絶縁被覆層と、当該絶縁被覆層の上に形成された融着被覆層とを有する絶縁被覆材60によって予め被覆されている。コイル形成工程では、加熱しながら導線を巻回することで融着被覆層が溶融することで巻回部32の導線同士が固着し、コイル形成後の巻回部32の型崩れが抑えられる。また絶縁被覆層によってコイル30とコア40とが確実に絶縁される。
一対の外部電極20は、素体10の第1側面16のそれぞれから実装面12に亘って延びるL字状部材である。外部電極20はそれぞれ、第1側面16においてコイル30の引出部34と接続され、また実装面12に延出した部分20A(図2)が半田などの適宜の実装手段によって回路基板の配線に電気的に接続される。
かかる構成のインダクタ1は、例えば、高周波回路のインピーダンス整合用コイル(マッチングコイル)として用いられ、パソコン、DVDプレーヤー、デジカメ、TV、携帯電話、スマートフォン、カーエレクトロニクス、医療用・産業用機械などの電子機器に用いられる。ただし、インダクタ1の用途はこれに限られず、例えば、同調回路、フィルタ回路や整流平滑回路などにも用いることもできる。
[インダクタ製造工程概要]
図4は、インダクタ1の製造工程の概要を示す図である。
同図に示すように、インダクタ1の製造工程は、造粒工程と、コイル形成工程と、素体成型・硬化工程と、素体研削工程と、素体保護膜形成工程と、素体保護膜除去工程と、外部電極形成工程と、を含む。
造粒工程は、コア40が含有する軟磁性粉と樹脂を混合した混合粉を造粒する工程である。軟磁性粉は、表面が絶縁膜で覆われた粒子から成っている。
コイル形成工程は、絶縁被覆材60によって被覆された導線からコイル30を形成する工程である。当該工程において、コイル30は、「アルファ巻」と称される巻き方で導線を巻回することにより、上述した巻回部32、及び一対の引出部34を有した形状に形成される。アルファ巻とは、導体として機能する導線の巻始めと巻終わりの引出部34が外周に位置するように渦巻き状に2段に巻回された状態を言う。コイル30のターン数は、特に限定されるものではないが、例えば6.5ターンである。
素体成型・硬化工程は、素体10の元と成る成型体を成型する工程である。
成型体の成型材料には、造粒工程で得られた混合粉が用いられる。
当該工程では、混合粉を予備成型してタブレット(所定形状の固形物)を作成し、当該タブレットとコイル30を成型金型のキャビティ内に配置する。次いで、キャビティを加熱しながらパンチを用いて加圧することでコイル30を内包した成型体を圧縮成型し、その後、硬化した成型体をキャビティから取り出し、この成型体に対して研磨を行う。この研磨にはバレル研磨を用いることで、成型体の角部へのR付けを行うことができる。
予備成型したタブレットには、図5に示すように、コイル30が入り込む溝71を有した適宜形状(例えばE型など)の第1タブレット70と、当該第1タブレット70の溝71を覆う適宜形状(例えばI型や板状など)の第2タブレット72との2種類のタブレットが用いられる。圧縮成型時は、コイル30を溝71に嵌めた第1タブレット70と、第2タブレット72とを成型金型74のキャビティ75内に重ねて配置する。そして、第1タブレット70及び第2タブレット72に熱を加えながら、この重なり方向に、第1タブレット70又は/及び第2タブレット72の側(図5の例では第2タブレット72の側)からパンチ76を用いて加圧することで、第1タブレット70、コイル30、及び第2タブレット72を一体化する。
なお、予備成型したタブレットではなく、造粒工程で得られた混合粉をそのままキャビティに投入して圧縮成型してもよい。
圧縮成型時の加圧力Pは、図6に示すように、素体10の成型後において軟磁性粉を構成する個々の粒子80が潰れることなく成型前の形状を維持するような従前よりも低い圧力であることが好ましい。かかる加圧力Pにより、軟磁性粉を構成する個々の粒子80において、表面の絶縁膜の損傷が抑えられるため、絶縁性能低下(すなわち耐圧性能低下)が抑えられる。
また図6に示すように、軟磁性粉を構成する粒子80の粒度は2種以上(図6の例では、平均粒径が比較的大きな大粒子である第1軟磁性粒子81と、平均粒径が比較的小さな小粒子である第2軟磁性粒子82)であることが好ましい。かかる軟磁性粉によれば、圧縮成型時において、図6に示すように、大粒子である第1軟磁性粒子81の間に樹脂90と共に小粒子である第2軟磁性粒子82が入り込むため、粒子80の充填率が高い成型体(素体10)が得られる。コア40を構成する第1軟磁性粒子81及び第2軟磁性粒子82の実施形態については後述する。
素体研削工程は、素体成型・硬化工程で得た成型体の第2側面18に砥粒を作用させることで、幅Wが所定幅になるまで第2側面18を削り落とす(すなわち研削する)工程である。
当該工程によって、成型体の幅Wを所定幅までダウンサイジングした素体10が得られる。かかるダウンサイジングにより、素体10内のコイル30と第2側面18との距離(サイドギャップとも言う)が縮まるため、コイル30の巻回部32の径方向におけるコイル30の占有率が高められる。また、圧縮成型で得た成型体を所定サイズに研削加工して素体10を得るため、圧縮成型だけで素体10を所定サイズに制御する場合に比べ、素体10の寸法ばらつきを低減することができる。
なお、素体研削工程において、第2側面18の研削によって生じた角を面取りするための研磨(例えばバレル研磨)を行ってもよい。
素体保護膜形成工程は、素体研削工程で所定サイズに研削された素体10の全表面に素体保護膜50を形成する工程である。
素体保護膜50の材料には、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、又は、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂が用いられる。なお、これらの樹脂は酸化ケイ素、酸化チタン等を含むフィラーを更に含んでいても良い。
当該工程では、素体10の全表面に素体保護膜50の材料を、塗布やディップ等の適宜の手段により付与し、これを硬化することにより素体保護膜50を形成する。
素体保護膜除去工程は、全表面が素体保護膜50で覆われた素体10にレーザを照射することで、外部電極20が形成される電極形成箇所(本実施形態では第1側面16内の所定箇所)の素体保護膜50と、当該電極形成箇所に露出しているコイル30の引出部34の絶縁被覆材60と、を除去する工程である。
なお、素体保護膜除去工程において、レーザによる絶縁被覆材60の除去の後、電極形成箇所の表面を清浄するためにエッチング処理を行っても良い。
外部電極形成工程は、素体保護膜除去工程において素体保護膜50が除去された電極形成箇所に、めっきによって外部電極20を形成する工程である。
当該工程において、外部電極20は、素体10の表面に露出した軟磁性粉とコイル30の引出部34に、めっき処理を行うことで形成される。このめっき処理では、銅(Cu)から形成される層をめっき成長によって形成することで外部電極20を形成する。
なお、銅(Cu)の層の上に、ニッケル(Ni)から形成される層と、スズ(Sn)から形成される層とを、この順にめっき成長によって積層形成してもよい。また銅(Cu)の層に代えて、アルミニウム(Al)や、銀(Ag)、金(Au)、パラジウム(Pd)の層を用いてもよい。
また、外部電極は、スパッタリングや導電性樹脂、銅板などを用いて形成してもよい。また、外部電極20は、図示例のL字形状に限らず、いわゆる5面電極構造であってもよく、また底面電極であってもよい。
上記のように製造されたインダクタ1によれば、コア40としての機械強度を維持しつつコア40の比抵抗と軟磁性金属部分の比率等を高めて、信頼性が高く且つ良好な耐電圧性、透磁率、飽和磁束密度、及び直流重畳特性を実現している。
次いでインダクタ1の実施例を以下に説明する。
なお、各実施例において、特に断りがない限り、インダクタ1の寸法は、高さHが0.7±0.1mm、幅Wが1.2±0.2mm、長さLが2.0±0.2mmであり、耐電圧は約20Vである。
また、インダクタ1は、後述する[A-1-1.第1軟磁性粒子]、[A-1-2.第2軟磁性粒子]、[A-2.樹脂]、[B.コイル]、[C.磁路]、[D.素体研削]、及び[E.素体保護膜]のそれぞれに示す任意の実施例を用いて、これら実施例の任意の組み合わせにより構成され得る。
[A.混合粉]
コア40の形成に用いられる混合粉は、軟磁性粉と樹脂とを含む。
[A-1.軟磁性粉]
混合粉に含まれる軟磁性粉は、軟磁性金属の粒子で構成される軟磁性材料である。この軟磁性粉は、例えば、第1軟磁性粒子81(大粒)と、第1軟磁性粒子81より平均粒径が小さい第2軟磁性粒子82(小粒)とを含む。なお、本明細書において「平均粒径」は体積基準のメジアン径を意味する。
第1軟磁性粒子81及び第2軟磁性粒子82のそれぞれの平均粒径は、これらを互いに混合する前において、それぞれ粒度分布計を用いて測定することができる。また、混合粉を加圧成型した成型体としてのコア40の状態において測定する場合には、コア40を研磨して得られる軟磁性粒子の断面の電子顕微鏡画像を解析することにより測定することができる。例えば、上記電子顕微鏡写真から各軟磁性粒子断面の円相当径を求め、各軟磁性粒子が上記円相当径を有する球であるものと仮定して、各球の体積を求め、その体積値分布の中央値から平均粒径を算出することができる。
第1軟磁性粒子81の平均粒径は、20μm以上28μm以下であり、好ましくは21.4μm以上27.4μm以下である。第2軟磁性粒子82の平均粒径は、1μm以上6μm以下であり、好ましくは1.5μm以上1.8μm以下である。このように、混合粉を平均粒径の異なる第1軟磁性粒子81と第2軟磁性粒子82とにより構成することで、平均粒径の大きい第1軟磁性粒子81によりコア40としての飽和磁束密度を高めて直流重畳特性を向上しつつ、平均粒径の小さい第2軟磁性粒子82を第1軟磁性粒子81同士の間隙に入り込ませ、コア40における軟磁性粒子の充填率を高めて比透磁率を向上させることができる。
また、混合粉に含まれる第2軟磁性粒子82の量は、その混合粉に含まれる軟磁性粒子の総重量を基準として15重量%以上30重量%以下であり、好ましくは20重量%以上30重量%以下である。軟磁性材料における第2軟磁性粒子82の含有量が上記範囲内であると、混合粉の成型体であるコア40における軟磁性粒子の充填率をより高くすることができる。
第2軟磁性粒子82を構成する軟磁性金属の組成は第1軟磁性粒子81を構成する軟磁性金属の組成と同じであってもよいが、互いに異なる組成を有し、互いにほぼ同等の硬度を有していることが好ましい。第1軟磁性粒子81及び第2軟磁性粒子82の硬度は、ナノインデンテーション法を用いて計測することができる。例えば、第1軟磁性粒子81の硬度は、600HV(kgf/mm)以上1200HV以下であり、望ましくは800HV以上1000HV以下である。また、第2軟磁性粒子82の硬度は、900HV(kgf/mm)以上1400HV以下であり、望ましくは900HV以上1100HV以下である。
また、第1軟磁性粒子81の硬度に対する第2軟磁性粒子82の硬度の比は、0.7以上1.2以下であることが望ましい。これにより、これらの軟磁性粒子を含む混合粉を加圧成型してコア40を形成する際に、第1軟磁性粒子81又は第2軟磁性粒子82の硬度の低い一方の軟磁性粒子が変形してしまうのを防止して、コア40としての絶縁抵抗が低下してしまうのを防止することができる。
[A-1-1.第1軟磁性粒子]
[A-1-1-1.第1軟磁性粒子の実施形態]
図7は、第1軟磁性粒子81の構成を示す図である。第1軟磁性粒子81は、軟磁性金属から成る粒子核81Aと、その粒子核81Aの表面に形成された絶縁膜81Cと、で構成される。粒子核81Aは、その粒子核81Aを構成する軟磁性金属を当該粒子核81Aの表面において酸化させることにより形成された酸化膜81Bを有する。
コア40において高い耐電圧性を安定に実現するために、絶縁膜81Cは、その下地となる酸化膜81Bから剥離しない程度に、当該酸化膜81Bとの固着強度が確保されている必要がある。絶縁膜81Cが酸化膜81Bから剥離した場合には、コア40の絶縁抵抗は低下し、インダクタとしての耐電圧性が低下する。一方、酸化膜81Bの形成により粒子核81Aにおける軟磁性金属の量は減少し、当該粒子核81Aを用いて形成されるコア40の比透磁率は減少する。このため、酸化膜81Bの厚さは、比透磁率の観点からはできるだけ薄いことが好ましい。
本発明者は、上記粒子核81AをCrを含む軟磁性金属で構成した場合に、当該粒子核81Aの表面に形成される酸化膜81Bが薄くなって表面が平滑となりやすく、酸化膜81B上における絶縁膜81Cの固着強度が十分に得られない場合があり得ることを見出した。また、本発明者は、その解決策として、粒子核81AにおけるCrの含有量を制限すると共に、粒子核81Aの表面に形成する酸化膜81Bの膜厚を所定範囲の厚さとすることで、酸化膜81B上における絶縁膜81Cの固着強度を確保しつつ、その粒子核81Aを用いて形成されるコア40の比透磁率の減少を一定範囲に抑制できることを見出した。
具体的には、粒子核81Aを構成する軟磁性金属を、Crの含有率が1.5重量%以下の鉄基金属磁性体とする。Crの含有量をこの範囲とすることにより、鉄の含有量を高めて粒子核81Aとしての比透磁率を高めつつ、粒子核81A表面に不動態膜がまだらに形成されるので、酸化膜81Bが不均一になって、酸化膜81Bと絶縁膜81Cの接触表面積を増やすことができ、絶縁膜81Cと酸化膜81Bとの固着強度を高めることができる。
粒子核81Aは、Crレスの(Crを含まない)鉄基金属磁性体であってもよい。ここで、「Crレス」とは、その素材がCrを実質的に含有しないことを意味し、Crを含むとしてもその量が、粒子核81Aの製造過程において環境から混入し得る程度の微小な量(例えば、500ppm以下)であることを意味する。
粒子核81Aは、より具体的には、Crの含有量が上記数値の範囲内であるFe-Si-Cr合金又はFe-Si合金の非晶質(アモルファス)又は結晶質の金属磁性体である。上記Fe-Si-Cr合金又はFe-Si合金は、例えば、Feが87重量%以上、Siが3重量%以上であって、B(ホウ素)を含み得る。
第1軟磁性粒子81の粒子核81Aは、上記Fe-Si-Cr合金又はFe-Si合金に限らず、鉄基金属磁性体を用いて形成されていればよい。そのような鉄基金属磁性体は、例えば、Crの含有量が上記数値の範囲内であるFe-Si-Cr-Al、又はFe-Si-Alの非晶質又は結晶質の合金であるものとすることができる。
第1軟磁性粒子81の粒子核81AとしてCrレスの合金を用いる場合には、粒子核81AにおけるFeの重量比を高めることができるので、この粒子核81Aを用いて作製されるコア40の飽和磁束密度をより高めて、インダクタとしてより良好な直流重畳特性を得ることができる。
酸化膜81Bは、粒子核81Aの製造過程において、その粒子核81Aの表面の軟磁性金属を酸化することにより形成し得る。例えば、酸化膜81Bは、粒子核81Aの製造過程においてその粒子核81Aが水又は酸素雰囲気に暴露されることにより、及び又は粒子核81Aを高温酸素雰囲気中に暴露するなどの積極的な酸化工程を設けることにより形成し得る。
酸化膜81Bは、粒子核81Aの表面において軟磁性金属の酸化が進むに従って、その膜厚が厚くなると共に、その表面の面粗さが増大し、その表面上に形成される絶縁膜81Cと酸化膜81Bとの固着強度が高まる。一方で、軟磁性金属の酸化が進むに従って酸化膜81Bの膜厚が厚くなると、粒子核81Aに含まれる金属の量は減少し、当該粒子核81Aによりコア40を形成した際の当該コア40の比透磁率が減少する。絶縁膜81Cの固着強度を確保し且つ比透磁率の減少を一定範囲に抑制する観点からは、粒子核81Aの酸素含有量として、当該酸素含有量は900ppm以上2800ppm以下であることが望ましい。
酸化膜81B上に形成する絶縁膜81Cは、例えば、メカノケミカル法で形成される無機ガラス被膜である。無機ガラス被膜は、例えば、リン酸亜鉛、リン酸マンガン等のリン酸塩ガラス、又はガラスである。これに代えて、絶縁膜81Cを、有機高分子被膜、有機-無機ハイブリッド被膜、又は無機系絶縁性被膜で構成してもよい。これらの絶縁膜81Cは、その素材に依存して、メカノケミカル法や、金属アルコキシドのゾルゲル反応などにより形成され得る。
絶縁膜81Cの厚みは、10nm以上50nm以下である。絶縁膜81Cの厚みを10nm以上とすることにより、第1軟磁性粒子81の比抵抗を高めることができる。また、絶縁膜81Cの厚みを50nm以下とすることにより、第1軟磁性粒子81に占める金属の割合を高くし、これを用いたコア40において良好な磁気特性を得ることができる。
上記構成の第1軟磁性粒子81は、粒子核81Aの酸化膜81B上に形成される絶縁膜81Cの固着強度を確保してコア40における高い耐電圧性を安定に実現しつつ、コア40の比透磁率を高く維持することができる。
[A-1-1-2.第1軟磁性粒子の製造方法]
次に、本発明の一実施形態に係る第1軟磁性粒子81の製造方法について以下に説明する。なお、以下に説明する方法は一例に過ぎず、本発明に係る第1軟磁性粒子81の製造方法は以下の方法に限定されるものではない。
第1軟磁性粒子81の粒子核81Aは、例えばガスアトマイズ法により得られる。すなわち、粒子核81Aの元となる各金属を電気誘導炉で加熱溶融して溶湯とし、得られた溶湯を不活性ガスであるアルゴンガスのジェットと共に噴出孔から噴出させることにより金属微粒子を得る。その後、得られた微粒子を水中で冷却し、乾燥して第1軟磁性粒子81の粒子核81Aとする。粒子核81Aの平均粒径は、例えば、上記ガスアトマイズ法における溶湯の噴き出しに用いるアルゴンガスのジェット流の速度及び又は噴出孔の口径を調整することにより調整することができる。
粒子核81Aとして例えば20μm以上の平均粒径を有する粒子核81Aをアモルファス金属として形成する場合には、上記溶湯から形成された金属微粒子を高速回転の水流により急冷するSWAP法(Spinning Water Atomization Process)を用いることができる。
上記水における冷却及びその後の乾燥過程において粒子核81Aが水及び又は酸素雰囲気に暴露されることにより、その粒子核81Aの表面に酸化膜81Bが形成される。酸化膜81Bの厚さは、上記水又は酸素雰囲気への暴露時間を制御することにより、及び又は粒子核81Aの製造環境における酸素濃度を制御することにより所望の厚さとすることができる。これに加えて、上記乾燥後の粒子核81Aを高温酸素雰囲気に暴露することにより、粒子核81Aの表面に酸化膜81Bを更に厚く形成することもできる。なお、粒子核81Aの平均粒径は、酸化膜81Bの形成及び後述する絶縁膜81Cの形成処理の前後で実質的に変化しないと考えて差し支えない。
また、粒子核81Aの表面に形成する酸化膜81Bは、その膜内において金属酸化物が必ずしも一様に分布している必要はない。例えば、粒子核81Aを構成する一つ又は複数の金属が複数種類の酸化物を形成し得る場合には、異なる種類の酸化物が酸化膜81B内において互いに不均一に分布していてもよく、また、異なる種類の酸化物から成る複数の層によって酸化膜81Bが構成されていてもよい。
次に、上記粒子核81A上に形成された酸化膜81Bの上に、絶縁膜81Cを形成する。絶縁膜81Cは、例えば、メカノケミカル法で形成されるリン酸塩ガラスの膜である。
[A-1-1-3.第1軟磁性粒子の実施例]
粒子核81AのCr含有量及び粒子核81Aの表面の酸化膜81Bの厚さが互いに異なる27種類の試料(試料A1-01からA1-27)を作製し、その特性についての評価を行なった。試料A1-01からA1-27における粒子の概要は、下記の表1のとおりである。ここで、試料A1-03ないしA1-08、試料A1-12ないしA1-16、及び試料A1-20ないしA1-24は、第1軟磁性粒子81の実施例である。
Figure 2022060772000002
以下、各試料について説明する。
<試料A1-01>
(粒子核の作製)
粒子核81Aとして、Crの含有量がゼロである(Crレスの)Fe-Si合金のアモルファス金属微粒子を、上述したSWAP法により作製した。作製した粒子核81AにおけるFe及びSiの含有量は、Feが93重量%、Siが3.5重量%、Bが3重量%、残部がCである。粒子核81Aの表面酸化による酸化膜81Bの平均膜厚は5nmである。また、作製した粒子核81Aの硬度は、953HVである。
ここで、上記Fe及びSiの含有量は、ICP-OES発光分光分析法(スパーク放電発光分光分析法)により測定した。また、上記粒子核81Aの硬度は、ナノインデンテーション法により測定した。
(絶縁膜の形成)
次に、上記得られた粒子核81A(酸化膜81Bを含む)の表面に、リン酸塩ガラスであるリン酸亜鉛で構成される絶縁膜81Cを、メカノケミカル法により形成し、絶縁膜81Cの形成後の軟磁性粒子を、第1軟磁性粒子81の試料A1-01とした。形成した絶縁膜81Cの膜厚は、23nmである。
第1軟磁性粒子81の平均粒径(メジアン粒径)は25.3μmである。
平均粒径は、粒度分布計を用いて測定した。
酸化膜81Bの平均膜厚と絶縁膜81Cの膜厚は、絶縁膜81Cの形成後の軟磁性粒子とエポキシ樹脂との混合物を加圧成型し、これを切断して電子顕微鏡観察することで得られる軟磁性粒子の断面の電子顕微鏡画像から計測した。具体的には、上記加圧成形により得られた成型体を長さ方向の1/2で切断し、その切断面において、WTの1/2で、厚みを4等分した交点3箇所を、それぞれ10万倍の倍率に設定した電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影した。そして、その切断面に含まれる粒子核81Aの断面の電子顕微鏡画像(TEM画像)から、酸化膜81Bの平均膜厚と絶縁膜81Cの膜厚を計測し、それらの平均値を算出した。
(酸化膜の厚さの不均一性及び酸素含有量の評価)
上記酸化膜81Bの平均膜厚と絶縁膜81Cの膜厚の計測に用いた成型体の電子顕微鏡画像により、粒子核81Aの断面における酸化膜81Bの最大膜厚と最小膜厚との差(以下、酸化膜の厚みの差ともいう)を計測し、酸化膜81Bの厚さの不均一性を示す指標値とした。
また、粒子核81Aの表面上に形成された酸化膜81Bの量を絶縁膜81Cの形成後において推定し得るパラメータとして、上記作製した試料A1-01における酸素含有量を評価した。酸素含有量は、上記作製した軟磁性粒子を1グラム秤量し、これに含まれる酸素含有量を不活性ガス融解法により測定して評価した。
(絶縁膜固着強度の評価)
上記作製した軟磁性粒子における絶縁膜81Cの固着強度を、粉体抵抗測定器(ハイレスタ)を用いて以下のように評価した。まず、上記作製した軟磁性粒子で構成される粉体を10g秤量し、これを、粉体抵抗測定器が備える測定用の円筒(電気的絶縁体を側壁とし且つ接地電位に接続した金属板を底板とする円筒)に入れる。円筒に入れた上記粉体の上面に、上記内径と同サイズの直径を有する金属板で構成される上板を接触させ、底板と上板との間に電圧を印加する。上板に、底板の方向へ向かう加重をかけ、当該加重を増加させつつ上板と底板との間に流れる電流を観測し、当該電流が所定の閾値を超えたときの加重の値(単位MPa(メガパスカル))を、絶縁膜81Cの固着強度の程度を表す評価値として計測した。評価結果を◎〇×で表すものとし、計測値が60Mpa以上であれば◎、20MPa以上60Mpa未満であれば〇、20Mpa未満のときは×とした。評価結果を、表2に示す。
(試験片の作製)
上記作製した試料A1-01の軟磁性粒子を用いて構成される成型体の耐電圧、比透磁率、及び飽和磁束密度を評価するため、試料A1-01についての試験片を作製した。試験片は、試料A01-01である第1軟磁性粒子81と、第2軟磁性粒子82と、エポキシ樹脂と、を加圧成型して成る環状の試験片である。試験片に用いた第2軟磁性粒子82は、後述の試料A2-05である。
上記試験片に用いた第2軟磁性粒子82は、結晶質の純鉄で構成される粒子核82A(後述)に、炭素数16の長鎖部を有するアルキル基を含む厚さ2nmの絶縁膜82B(後述)を形成した、平均粒径3μmのものである。試験片に用いた上記第1軟磁性粒子81と上記第2軟磁性粒子82の重量比は、75:25である。また、上記第1軟磁性粒子81と上記第2軟磁性粒子82の合計と上記エポキシ樹脂との重量比は、100:3.1である。試験片の形状は、内径8mm、外径13mm、厚さ5mmの、トロイダル形状とした。
(耐電圧の評価)
上記作製した試料A1-01についての試験片を用いて、耐電圧を評価した。耐電圧は、AC/DC耐電圧絶縁抵抗試験器を用いて測定した。
(透磁率の評価)
上記作製した試料A1-01についての試験片を用いて、比透磁率を評価した。比透磁率は、BHアナライザとインピーダンス・マテリアル・アナライザとにより、周波数1MHzの高周波信号を用いて測定した。評価結果を、表2に示す。
(飽和磁束密度の評価)
上記作製した試料A1-01についての試験片を用いて、飽和磁束密度を評価した。LCRメータと直流電源を用いて重畳時の試験片のインダクタンス変化を測定し、BHデータを逆算して、磁束が飽和した値を飽和磁束密度とした。評価結果を、表2に示す。
<試料A1-02ないしA1-27>
粒子核81Aに含まれるCrの含有量を上述の表1とし、Fe及びSiの含有量、酸素含有量を変えて、上述した試料A1-01と同様の手順で、試料A1-02ないしA1-27のそれぞれの試料を作製し、固着強度、比透磁率、飽和磁束密度を評価した。
Figure 2022060772000003
図8は、Cr含有量ゼロ(Crレス)の粒子核81Aのうち、酸素含有量が500、1200、1500、2500、2600ppmである粒子核81A、すなわち、試料A1-01、A1-04、A1-05、A1-06、及びA1-07の粒子核81Aについて撮影した、それら粒子核81Aの表面の電子顕微鏡写真である。図8に示すこれら試料間での粒子核81Aの表面状態の違いから、酸化膜81Bの膜厚が厚くなるほど、従って絶縁膜81Cの形成前における粒子核81Aの酸素含有量が多くなるほど、酸化膜81Bの表面の凹凸が深くなることが判る。このような酸化膜81Bの膜厚増加に伴う凹凸の深さの増大は、例えば、粒子核81Aの接触状態が異なり、粒子核81Aの表面の乾燥状態に差が生じるため、Fe-Si合金の酸化されやすさが場所により異なるためと考えられる。
また、酸素含有量が900ppm以上であれば、酸化膜81Bの平均膜厚が厚く、酸化膜81Bの厚みの差が大きくなって、絶縁膜81Cの固着強度が基準値を満たす。すなわち、絶縁膜81Cの固着強度の観点からは、第1軟磁性粒子81における酸素含有量は900ppm以上であることが望ましい。
このような、酸化膜81Bの膜厚の増加に伴う絶縁膜81Cの固着強度の改善効果は、酸化膜81Bの膜厚の増加に伴って当該酸化膜81Bの表面に形成される凹凸が深まり、当該凹凸に起因するアンカー効果が高まることによるものと考えられる。
そして、表2における、試料A1-26及びA1-27と、他の試料A1-03ないしA1-08、試料A1-12ないしA1-16、及び試料A1-20ないしA1-24と、の間での、固着強度の比較から、このような面粗さの増加に起因する固着強度の向上効果は、Cr含有量が1.5重量%以下で得られ、特に試料A1-01Crレス(含有量0)のときに顕著であることがわかる。
図9、図10、及び図11は、それぞれ、Crレスの試料A1-01ないしA1-09における、耐電圧、比透磁率、及び飽和磁束密度の、酸素含有量への依存傾向を示すグラフである。
図9に示す耐電圧は、酸素含有量の増加と共に増加する。これは、酸化膜81Bの膜厚の増加と共に絶縁膜81Cの固着強度が増加していく結果、第1軟磁性粒子81の粒子核81Aの、周囲に対する絶縁抵抗が増大し、従って試験片(成型体)としての比抵抗が増加していくためと考えられる。
図10に示す比透磁率は、酸素含有量の増加と共に減少する。これは、酸素含有量の増加、すなわち、粒子核81Aを構成するFe-Si合金の酸化部分の増加により、粒子核81AにおけるFe-Si合金の含有量、すなわち軟磁性金属の金属部分の含有量が減少していくためと考えられる。また、酸素含有量2800ppm以下の範囲であれば、酸化膜81Bの膜厚増加に伴う比透磁率の減少を、酸素含有量500ppmにおける値に対し15%程度に抑制できることが判る。
図11に示す飽和磁束密度は、酸素含有量と共に増加する。ここで、酸素含有量2500ppmにおいて飽和磁束密度が減少しているのは、測定ミス等によるものと考えられる。飽和磁束密度が酸素含有量と共に増加するのは、上記のように粒子核81Aを構成する軟磁性金属であるFe-Si合金の酸化部分の増加により当該粒子核81AにおけるFe-Si合金部分の断面積が減少する結果、試験片を通過する磁束のうち粒子核81AのFe-Si合金部分を通過する実効的な磁束の数が減少するためと考えられる。
以上の結果より、コア40を構成する第1軟磁性粒子81の望ましい酸素含有量は、絶縁膜81Cの固着強度を確保して耐電圧を実用レベルに維持しつつ、比透磁率の大幅な減少を抑制し得る範囲として、900ppm以上2800ppm以下であることがわかる。
以上説明したように、コア40の形成に用いる混合粉の軟磁性粉(軟磁性材料)は、第1軟磁性粒子81を含む。第1軟磁性粒子81は、軟磁性金属を含む粒子核81Aと、粒子核81Aの表面に位置する絶縁膜81Cとで構成される。また、上記粒子核81Aは、上記絶縁膜81Cとの間に上記軟磁性金属の酸化物で構成される酸化膜81Bを有する。そして、上記粒子核81Aは、Crを含まないか又は1.5重量%以下のCrを含み、酸素の含有量が重量比900ppm以上2800ppm以下である。
この構成によれば、上記第1軟磁性粒子81を含む混合粉を加圧成型して金属磁性体としてのコア40を構成したときに、コア40において透磁率の減少を抑制しつつ高い耐電圧性を安定に実現することができる。
また、第1軟磁性粒子81の粒子核81Aに含まれる軟磁性金属は、FeとSiを含有する鉄基軟磁性金属とすることができる。この構成によれば、粒子核81Aの表面に酸化膜81Bを容易に形成することができる。
また、上記鉄基軟磁性金属は、結晶質であり得る。この構成によれば、粒子核81Aの表面に酸化膜81Bを更に容易に形成することができる。
また、混合粉を構成する軟磁性粉(軟磁性材料)は、第1軟磁性粒子81に加えて、軟磁性金属を含み且つ第1軟磁性粒子より平均粒径が小さい他の第2軟磁性粒子82を更に含み得る。第1軟磁性粒子81に加えて、後述の第2軟磁性粒子82を用いることにより、コア40における軟磁性粒子の充填率を高めて、より高い透磁率を得ることができる。
また、上述したいずれかの実施例に係る第1軟磁性粒子81を含む軟磁性材料を用いて構成される金属磁性体と、巻回された導線と、により、インダクタ1を構成することができる。この構成によれば、小型で且つ高い耐電圧を有する、信頼性の高いインダクタを実現し得る。
[A-1-2.第2軟磁性粒子]
[A-1-2-1.第2軟磁性粒子の実施形態]
図12は、第2軟磁性粒子82の構成を示す図である。第2軟磁性粒子82は、軟磁性金属から成る粒子核82Aと、その粒子核82Aの表面に形成された絶縁膜82Bと、で構成される。粒子核82Aを構成する軟磁性金属は、例えば結晶質又は非晶質の鉄(Fe)である。具体的には、第2軟磁性粒子82の粒体は、例えば、オニオンスキン構造のカルボニル鉄粉であり、Feの含有量が95重量%以上99.8重量%以下、このましくは97重量%以上99.8重量%以下である。このカルボニル鉄粉は、不純物として炭素C、酸素O、窒素N、硫黄Sを含み得る。また、粒子核82Aとなるカルボニル鉄粉は、その表面にFeの酸化膜を有していてもよい。
第2軟磁性粒子82の粒子核82Aを構成する軟磁性金属は、上述した第1軟磁性粒子81と同様に、Feに限らず、Feにその他の金属を含有する鉄基金属磁性体であるものとすることができる。
第2軟磁性粒子82の絶縁膜82Bは、例えばシリカを成分とするゾルゲル反応生成物で構成され、炭素数8以上の直鎖部を有する炭化水素基を含む。炭素数8以上の直鎖部を有する炭化水素基は、具体的には、例えば、鎖状飽和炭化水素基であるアルキル基である。なお、炭素数8以上の直鎖部を有する炭化水素基は、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基及びオクタデシル基からなる群から選択される1以上の炭化水素基であってもよい。また、アルキル基は、1級アルキル基、2級アルキル基又は3級アルキル基のいずれであってもよい。
長鎖部を有する上記炭化水素基は、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)と上記炭化水素基を有するシランカップリング剤との混合物を用いたゾルゲル反応の生成物として形成され得る。
第2軟磁性粒子82の絶縁膜82Bに炭素数8以上の直鎖部を有する炭化水素基を付与することにより、第1軟磁性粒子81及び第2軟磁性粒子82を含む混合粉を加圧成型してコア40を形成した際に、当該コア40におけるこれら軟磁性粒子の充填率が向上し得る。
軟磁性材料の充填率が向上するメカニズムは、特定の理論に拘束されるものではないが、以下のとおりであると推測される。上述したように、コア40は、第1軟磁性粒子81と、第2軟磁性粒子82と、エポキシ樹脂(熱硬化性樹脂等)と、を含む混合粉を加圧成型することで形成される。この場合、一方の軟磁性粒子である例えば第2軟磁性粒子82(小粒子)が、その表面に炭素数8以上の直鎖部を有する炭化水素基を有していると、第2軟磁性粒子82と、上記エポキシ樹脂が備える極性基(エポキシ基および/または水酸基等)と、の間の水素結合および/または双極子相互作用を小さくすることができ、それにより、加圧成型の際における第2軟磁性粒子82の流動性(滑り性)が向上し得る。
その結果、第1軟磁性粒子81(大粒子)同士の間の隙間に滑り性の高い第2軟磁性粒子82が入り込むことができる。このようなメカニズムにより、軟磁性粒子が長鎖炭化水素基を有しない場合と比較して、コア40における軟磁性粒子の充填率を向上させることができると考えられる。軟磁性粒子の充填率が向上することにより、コア40における軟磁性材料の密度を増大させることができ、その結果、コア40の比透磁率を増大させることができる。
ここで、第2軟磁性粒子82の滑り性は、JISZ 8835で用いられる一面せん断試験装置にて以下の手順で測定することができる。より具体的には、滑り性は、下部セル直動型の一面せん断試験装置(株式会社ナノシーズ製の粉体層せん断力測定装置NS-S500)を用いて以下の手順で測定することができる。上部セル(Ring)の内径及び下部セル(Base)の内径は共に15mmに設定し、上部セルと下部セルとの間の隙間(微小間隔)は0.2mmに設定する。レーザーセンサーを用いて粉体層の厚みを測定できるように、粉体を入れる前に、上部下部セルに上きね(Lid)を配置してゼロ点を設定しておく。この上下分割セルに第2軟磁性粒子82の粉体試料10gを均一に充填し、静かに上きね(Lid)を配置した後、垂直サーボモーター(Vertical servo motor)で150Nの押し込み荷重をかける。垂直サーボモーターで150Nの押し込み荷重をかけた時点で垂直サーボモーターのロードセル(Load cell)の位置が固定される。押し込み速度は0.2mm/秒に設定する。垂直サーボモーターのロードセルの位置が固定されてから100秒後に横摺りを開始する。つまり、横摺り開始遅延を100秒に設定する。水平サーボモーター(Horizontal servo motor)の作動により横摺りが開始した後、0.1秒毎に圧力を測定していく。横摺り速度は5μm/秒に設定する。測定試料ごとに水平サーボモーターが作動している期間内でN=50点以上を連続で測定し、測定値の変動係数(CV値)が0.4%以下になった時に測定を停止する。最終的に圧密された粉体層の厚み(最終粉体層厚み)をレーザーセンサーで計測する。
そして、上記測定により得られた、垂直サーボモーターのロードセルの位置が固定された時点で当該ロードセルにかかる荷重(押し込み最大荷重)、水平サーボモーターの作動開始時点で上記ロードセルにかかる荷重(横滑り開始時押し込み荷重)、及び上記の最終粉体層厚みの値に基づいて、下記の式を用いて滑り性を求めることができる(詳細については、例えば特願2019-224678号参照)。
Figure 2022060772000004
上述したように、第2軟磁性粒子82の表面に炭素数8以上の直鎖部を有する炭化水素基を付与することにより、第2軟磁性粒子82の滑り性を向上し、コア40を形成した際の当該コア40における軟磁性粒子の充填率を向上して、その透磁率を高くすることができる。ただし、第2軟磁性粒子82の表面に長鎖炭化水素基を含有させて滑り性を向上した結果、第2軟磁性粒子82とその周りの樹脂ないし他の軟磁性粒子(第1軟磁性粒子81及び又は他の第2軟磁性粒子82)との密着性ないし結合性は低下し、成型体であるコア40の機械強度は低下することとなり得る。
本発明者は、第2軟磁性粒子82の粒子核82Aの表面に形成する炭素数8以上の長鎖炭化水素基の数を減らして滑り性を制御することにより、成型体であるコア40の機械強度を改善できることを見出した。
第2軟磁性粒子82の表面における長鎖炭化水素基の数は、例えば、絶縁膜82Bを粒子核82Aの表面に形成する際に用いるゾルゲル反応用混合剤におけるテトラエトキシシランとシランカップリング剤との混合比により制御することができる。
第2軟磁性粒子82の表面における長鎖炭化水素基の数の多寡は、絶縁膜82Bにおけるケイ素Siと炭素Cとの含有量の比で評価することができる。また、この長鎖炭化水素基の数の多寡は、第2軟磁性粒子82の粒子核82AにSi及びCが含まれていない場合には、第2軟磁性粒子82の全体に含まれるCに対するSiの量の重量比(Si/C重量比)で評価することができる。コア40の機械強度の低下を抑制しつつ高い透磁率を維持する観点では、第2軟磁性粒子82におけるSi/C重量比は、7.6以上42.8以下であることが望ましい。
なお、本実施形態では、混合粉を構成する平均粒径の異なる第1軟磁性粒子81及び第2軟磁性粒子82のうち、平均粒径の小さい第2軟磁性粒子82の粒子核82Aの表面に長鎖炭化水素基を有するものとしたが、長鎖炭化水素基を形成する軟磁性粒子は第2軟磁性粒子82には限られない。例えば、第2軟磁性粒子82に代えて、第1軟磁性粒子81の表面、又は第1軟磁性粒子81及び第2軟磁性粒子82の表面に、上述したような炭素数8以上の長鎖部を有する炭化水素基を含む絶縁膜82Bを形成するものとしてもよい。これにより、第1軟磁性粒子81の表面、又は第1軟磁性粒子81及び第2軟磁性粒子82の表面の滑り性を向上して、コア40の機械強度の低下を抑制しつつ当該コア40における高い透磁率を実現することができる。
[A-1-2-2.第2軟磁性粒子の製造方法]
次に、本発明の一実施形態に係る第2軟磁性粒子82の製造方法について以下に説明する。なお、以下に説明する方法は一例に過ぎず、本発明に係る第2軟磁性粒子82の製造方法は以下の方法に限定されるものではない。
(軟磁性金属の粒子核の準備)
まず、第2軟磁性粒子82の粒子核82Aとなる金属微粒子を準備する。第2軟磁性粒子82の平均粒径及び粒子核82Aの組成等の詳細は上述したとおりである。なお、粒子核82Aの平均粒径は、後述する表面処理の前後で実質的に変化しないと考えて差し支えない。
(粒子核の表面上への絶縁膜の形成)
次に、上記粒子核82Aの表面上に、炭素数8以上の直鎖部を有する炭化水素基を含む絶縁膜82Bを形成する。この絶縁膜82Bの形成は、例えば、アルコキシドであるテトラエトキシシランとシランカップリング剤とを含む表面処理剤のゾルゲル反応により行うことができる。これにより、ゾルゲル反応生成物としての、直鎖部を有する炭化水素基を有する絶縁膜82Bを、粒子核82A上に形成することができる。
上記アルコキシドは、テトラエトキシシランに限るものではなく、化学式M-(OR)nで表すことができる。式中、金属アルコキシドの金属種Mは、Li、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Ti、Cu、Sr、Y、Zr、Ba、Ce、Ta及びBiからなる群から選択される1以上であることが好ましい。金属アルコキシドのアルコキシ基ORは、メトキシ基、エトキシ基および/またはプロポキシ基等、任意のアルコキシ基を選択することができる。
また、シランカップリング剤は、化学式R′-Si(OR)で表すことができる。式中、R′は炭素数8以上の直鎖部を有する炭化水素基であり、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基およびオクタデシル基からなる群から選択される1以上の炭化水素基であってよい。式中、ORはアルコキシ基であり、好ましくはメトキシ基、またはエトキシ基である。例えば、炭素数16の直鎖部を有する炭化水素基を形成する場合には、ヘキサデシルトリメトキシシランを用いることができる。
このようにして得られた、滑り性が付与された第2軟磁性粒子82は、上述した第1軟磁性粒子81及びエポキシ樹脂と共に加圧成型されてコア40を形成する際に、エポキシ樹脂に過度に拘束されることなく第1軟磁性粒子81同士の間に効果的に充填され得るので、コア40として高い比透磁率の磁性体(磁心)を実現することができる。
ここで、粒子核82Aへの絶縁膜82Bの形成は、粒子核82Aの表面へのテトラエトキシシランの膜を形成する第1段階のプロセスと、形成したテトラエトキシシランの膜の上にテトラエトキシシランとシランカップリング剤とのゾルゲル反応により炭素数8以上の直鎖部を有する長鎖炭化水素基を含む膜を形成する第2段階のプロセスと、により行うことが望ましい。これにより、長鎖炭化水素基が絶縁膜82Bの層内に埋もれてしまうのを抑制して、長鎖炭化水素基を絶縁膜82Bの表面に効果的に配することができるので、絶縁膜82Bの形成時に用いるシランカップリング剤の量を低減することができる。
また、上記表面処理剤は、上記第1段階のプロセスにおいて界面活性剤を含むものとすることができる。表面処理剤に界面活性剤を加えることで、ミセルになった界面活性剤の親水基部分と、テトラエトキシシランの加水分解反応によって形成されたシラノール基が水素結合する。これにより、テトラエトキシシランの膜を形成する第1段階のプロセスにおいて上記ミセルが軟磁性金属の粒子核82Aの表面に配され、粒子核82A表面にはテトラエトキシシラン分子の密度が粗な部分と密な部分とができるので、第2段階のプロセスにおいて炭素数8以上の長鎖炭化水素基が互いに間隔をもって配されることとなる。その結果、長鎖炭化水素基が絶縁膜82Bの表面に分散して配されることとなり、第2軟磁性粒子の表面の全体に滑り性を行き渡らせることができる。
[A-1-2-3.第2軟磁性粒子の実施例]
絶縁膜82Bに含まれる炭化水素基の鎖長部の炭素数、及び絶縁膜82BにおけるCに対するSiの重量比(Si/C重量比)がそれぞれ異なる27種類の軟磁性粒子の試料を、試料A2-01ないしA2-27として作製して、その特性についての評価を行なった。試料A2-01からA2-27の概要を表3に示す。ここで、試料A2-01ないしA2-09、試料A2-15ないしA2-18、及び試料A2-24ないしA2-27は、第2軟磁性粒子82の実施例である。なお、表3には、試料A2-01ないしA2-27のそれぞれにおいて絶縁膜82Bの作製に用いたシランカップリング剤も、併せて示している。
Figure 2022060772000005
以下、各試料について説明する。
<試料A2-01>
(粒子核の準備)
第2軟磁性粒子82の粒子核82Aとして、97wt%以上99.8wt%以下の鉄を含むカルボニル鉄粉を選択した。この粒子核82Aは、952HVの硬度を有する。この値は、上述した試料A1-01ないしA1-08において用いた第1軟磁性粒子81の粒子核81Aの硬度とほぼ等しい。
(長鎖炭化水素基を含む絶縁膜の形成)
上記準備した粒子核82Aに、炭素数16の直鎖部を有する炭化水素基であるアルキル基を含む絶縁膜82Bを形成する。上記絶縁膜82Bを形成するための表面処理剤として、アルコキシドであるテトラエトキシシランと、シランカップリング剤であるヘキサデシルトリメトキシシランと、界面活性剤であるリン酸エステル型アニオン界面活性剤と、を含む混合液を用いた。
具体的な手順は、以下のとおりである。なお、テトラエトキシシランおよびヘキサデシルトリメトキシシランは、それぞれ、KBE04(製造元:信越化学工業株式会社)、及びX-88-422(製造元:信越化学工業株式会社)を用いた。また、リン酸エステル型アニオン界面活性剤として、プライサーフAL(製造元:第1工業製薬株式会社)を用いた。
まず、粒子核82Aの表面にテトラエトキシシランの膜を形成する第1段階のプロセスを行った。イソプロピルアルコールと、アンモニア水と、プライサーフALの水溶液と、を添加して攪拌し、分散液1を作製した。上記準備した粒子核82Aを所定量秤量してイソプロピルアルコールを添加し、超音波振動を与えて粒子核82Aの粉を分散させて分散液2を作製した。その後、分散液2へ分散液1を添加し、撹拌機を用いて攪拌して分散液3とした。
次に、イソプロピルアルコールにテトラエトキシシランを加えて混合し、表面処理液1を作製した。この表面処理液1を、分散液3に添加して反応液1とし、これを撹拌機により攪拌して、粒子核82A表面にテトラエトキシシランの膜を形成した。
続いて、上記第1段階のプロセスで形成したテトラエトキシシランの膜の表面に炭素数16の直鎖部を有するアルキル基を形成する第2段階のプロセスを行った。まず、イソプロピルアルコールとヘキサデシルトリメトキシシランと、テトラエトキシシランとを混合して表面処理液2を作製した。この表面処理液2を第1段階のプロセスで生製した反応液1に添加して反応液2とし、これを撹拌機により攪拌して、上記形成したテトラエトキシシランの膜の表面に炭素数16の直鎖部を有するアルキル基を形成した。
その後、反応液2をメンブレンフィルタにより吸引ろ過して、絶縁膜81Cが形成された粒子を分離した。分離した粒子をアセトンにより適宜洗浄し、常温自然環境にて乾燥した。乾燥した粒子を金属メッシュにより濾し、残った粒子を第2軟磁性粒子82について試料A2-01とした。
上記のように作製した第2軟磁性粒子82の平均粒径(メジアン粒径)は、1.7μmである。なお、平均粒径は、粒度分布計を用いて測定した。
(絶縁膜形成後の粒子核におけるSi/C重量比の確認方法)
形成した絶縁膜82Bの表面における炭素数16の長鎖部を有する炭化水素基の数の多寡を表すパラメータとして、上記絶縁膜82Bを形成した後の試料A2-01におけるSi/C重量比を、XPSにより測定したデータを換算して確認した。
(滑り性の評価)
上記作製した試料A2-01の軟磁性粒子を10g秤量し、下部セル直動型の一面せん断試験装置(株式会社ナノシーズ製の粉体層せん断力測定装置NS-S500)を用いて滑り性の評価を行った。上部セル(Ring)の内径及び下部セル(Base)の内径は共に15mmに設定し、押し込み荷重は150Nに設定した。評価結果を、表5に示す。
(試験片の作製)
上記作製した試料A2-01の軟磁性粒子を用いて構成される成型体を評価するため、試料A2-01についての試験片を作製した。試験片は、第1軟磁性粒子81と、試料A02-01である第2軟磁性粒子82と、エポキシ樹脂と、を加圧成型して成る環状の試験片である。
上記試験片に用いた第1軟磁性粒子81は、上述した試料A1-04であり、Crを含まない非晶質のFe-Si合金で構成された平均粒径25.3μmの粒体に、5nmの酸化膜と、23nmの絶縁膜82Bを形成したものである。第1軟磁性粒子81と第2軟磁性粒子82の混合比は、重量比で75:25である。第1軟磁性粒子81と第2軟磁性粒子の合計とエポキシ樹脂との混合比は、重量比で100:3.1である。試験片の形状は、内径8mm、外径13mm、厚さ4mmの、トロイダル形状とした。
(透磁率の評価)
上記作製した試料A2-01についての試験片を用いて、比透磁率を評価した。比透磁率は、BHアナライザとインピーダンス・マテリアル・アナライザにより、周波数1MHzの高周波信号を用いて測定した。また、比透磁率の評価結果を〇×で表すものとし、測定値が基準値30以上である場合には〇、基準値30未満である場合は×とした。比透磁率の測定値及び評価の結果を、表5に示す。
(圧環強度の評価)
上記作製した試料A2-01についての試験片を用いて、圧環強度を評価した。圧環強度の計測方法は、上記トロイダル状に形成された試験片を径方向に圧力を加えて破壊された時の圧力を測定した。また、圧環強度の評価結果を〇×で表すものとし、測定値が基準値85N/mm以上である場合には〇、基準値85N/mm未満である場合は×とした。圧環強度の測定値及び評価の結果を、表5に示す。
(耐電圧の評価)
上記作製した試料A2-01についての試験片を用いて、耐電圧を評価した。耐電圧は、AC/DC耐電圧絶縁抵抗試験器を用いて測定した。評価結果を〇×で表すものとし、測定値が基準値50V/mm以上である場合には〇、基準値50V/mm未満である場合は×とした。評価結果を、表5に示す。
<試料A2-02ないしA2-27>
試料A2-02ないしA2-27では、それぞれ、上述の表3に示すシランカップリング剤を用いて、絶縁膜82Bに含まれる炭化水素基の鎖長部の炭素数を表3に記載の数とすると共に、絶縁膜82BにおけるSi/C重量比を上述の表3の値となるようにした。それ以外は、試料A2-01と同様の手順で、絶縁膜82Bを形成し及び滑り性を評価した。また、試料A2-02ないしA2-27のそれぞれについて、各試料の軟磁性粒子を第2軟磁性粒子82として用いて試料A2-01と同様の試験片を作製し、作製したそれぞれの試験片を用いて、試料A2-01と同様の手順により比透磁率、圧環強度、及び耐電圧を評価した。
ここで、試料A2-01ないしA2-27におけるSi/C重量比は、絶縁膜82Bの形成時に使用するテトラエトキシシランとシランカップリング剤の混合比を変えることにより調整した。
試料A2-01ないしA2-09の評価結果を、表4に示す。また、試料A2-10ないしA2-18の評価結果を表5に、試料A2-19ないしA2-27の評価結果を、表6に示す。
Figure 2022060772000006
Figure 2022060772000007
Figure 2022060772000008
表4ないし表6における滑り性の測定値及び透磁率の評価結果から、粒子核82Aの表面に形成する絶縁膜82Bに炭素数8以上の炭素数の長鎖部を有する炭化水素基を含むことで、軟磁性粒子としての滑り性が向上し、成型体(試験片)の成型密度が向上して比透磁率が向上することがわかる。
図13および図14は、それぞれ、上記の表4ないし表6に示すデータから得られる、Si/C重量比に対する比透磁率および圧環強度の変化を示すグラフである。
図13及び図14より、比透磁率と圧環強度とは、Si/C重量比に関して互いにトレードオフの関係にあることがわかる。また、これらの図より、直鎖部の炭素数が8以上である絶縁膜82Bにおいては、Si/C重量比が7.6以上42.8以下の範囲であれば、互いにトレードオフの関係にある圧環強度および比透磁率について、圧環強度を85以上、比透磁率を30以上にすることができ、実用に耐え得る機械強度を保持しつつ高い比透磁率を有するコアを実現することができることがわかる。特に、製造上における繰り返し再現性の観点では、Si/C重量比は、9.7以上13.4以下の範囲であればより好ましい。
以上説明したように、混合粉を構成する軟磁性粉(軟磁性材料)は、第2軟磁性粒子82を含む。第2軟磁性粒子82は、炭素数が8以上の直鎖部を有する炭化水素基を有する絶縁膜82Bを粒子核82Aの表面に有し、絶縁膜82BにおけるSi含有量に対するC含有量の比が7.6以上42.8以下である。
この構成によれば、上記第2軟磁性粒子82を含む混合粉を加圧成型して金属磁性体としてのコア40を形成したときに、コア40において高い機械強度と高い透磁率とを同時に実現することができる。
また、第2軟磁性粒子82の上記絶縁膜82Bが有する上記炭化水素基は、アルキル基であり得る。この構成によれば、粒子核82Aの表面に炭素数が8以上の直鎖部を有する炭化水素基を容易に形成することができる。
また、第2軟磁性粒子82の粒子核82Aは、カルボニル鉄とすることができる。この構成によれば、金属磁性体としてのコア40を形成したときに、コア40においてより高い透磁率を実現することができる。
また、混合粉を構成する軟磁性粉(軟磁性材料)は、第2軟磁性粒子82に加えて、軟磁性金属を含み且つ第2軟磁性粒子の粒子核82Aより平均粒径が大きい他の粒子核81Aで構成された第1軟磁性粒子81を更に含み得る。この構成によれば、コア40における軟磁性粒子の充填率を更に高めて、より高い透磁率を得ることができる。
また、上述したいずれかの実施例に係る第2軟磁性粒子82を含む軟磁性材料を用いて構成される金属磁性体と、巻回された導線と、により、インダクタ1を構成することができる。この構成によれば、小型で且つ信頼性の高いインダクタを実現し得る。
[A-2.樹脂]
樹脂の割合は、軟磁性粉と樹脂の総重量を基準として、2.0重量%以上3.5重量%以下である。また、樹脂は、少なくともビスフェノールA型エポキシ樹脂とゴム変性エポキシ樹脂とを含み、更に、フェノールノボラック型エポキシ樹脂を含んでもよい。
本発明者らは、後述する評価実験により、混合粉にフェノールノボラック型エポキシ樹脂を配合しない場合のビスフェノールA型エポキシ樹脂とゴム変性エポキシ樹脂の好適な配合率である第1樹脂配合率を見出した。第1樹脂配合率は、混合粉に含まれる樹脂の総重量を基準として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂40重量%以上90重量%以下、ゴム変性エポキシ樹脂10重量%以上50重量%以下である。
ここで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、混合粉に含まれる樹脂の主成分であるが、混合粉に含まれる樹脂をビスフェノールAエポキシ樹脂のみにすると、形成される素体10が硬脆くなり易い。そこで、混合粉に含まれる樹脂にゴム変性エポキシ樹脂を配合することにより、形成される素体10に靭性を持たせて、素体10の硬脆さを改善することができる。そして、第1樹脂配合率により、混合粉に含まれる樹脂中のビスフェノールA型樹脂とゴム変性エポキシ樹脂の割合を設定し、上述した素体成型・硬化工程によってコイル30を封止した素体10を成型することにより、強度と靭性を両立させたインダクタ1を製造することができる。
また、本発明者らは、後述する評価実験により、混合粉にフェノールノボラック型エポキシ樹脂を配合する場合の、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とゴム変性エポキシ樹脂とフェノールノボラック型エポキシ樹脂の好適な配合率である第2配合率を見出した。第2配合率は、混合粉に含まれる樹脂の総重量を基準として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂40重量%以上80重量%以下、ゴム変性エポキシ樹脂10重量%以上50重量%以下、フェノールノボラック型エポキシ樹脂1重量%以上30重量%以下である。
ここで、フェノールノボラック型エポキシ樹脂は、上述した素体成型・硬化工程において、素体を形成する際の混合粉を流動させるときの粘度調整と、素体のガラス転移温度の調整を行って、素体が高温になったときの強度を向上させる機能を果たす。そこで、第2配合率によって、フェノールノボラック型エポキシ樹脂を適切に配合することにより、素体成型時の加熱に対する素体の強度を向上させた上で、強度と靭性を両立させたインダクタ1を製造することができる。
さらに、本発明者らは、上記第1配合率又は第2樹脂配合率により樹脂を配合した混合粉を用いて、素体を形成することによって、以下の特定構成1~特定構成3を有するインダクタを製造することができることを、知見した。
特定構成1…素体10の断面について、素体10の表面から1μm以上100μm以下の表面領域における軟磁性粒子(第1の軟磁性粒子及び第2の軟磁性粒子)と樹脂との合計面積に対する空隙の面積の割合が、素体10の中央部領域における、軟磁性粒子と樹脂との合計面積に対する空隙の面積の割合よりも小さく、中央部領域よりも表面領域の方が緻密である。
特定構成2…図1~図3を参照して、主面12,14と第2側面18とが接する稜線部分における樹脂量が、主面12,14と第1側面16とが接する稜線部分における樹脂量よりも少ない。
特定構成3…図1~図3を参照して、研磨された第1の軟磁性粒子又は研磨された第2の軟磁性粒子がコアから露出し、コアから露出した第1の軟磁性粒子又は第2の軟磁性粒子が素体保護膜50により覆われている。さらに、第2側面18の表面粗さが第1側面16の表面粗さよりも大きく、第2側面18とコイル30の巻回部32との狭い方の間隔が、第1の軟磁性粒子の径の1倍よりも大きく4倍よりも小さい。
上記特定構成1~特定構成3が得られるメカニズムについて説明する。図5を参照して上述したように、第1タブレット70にコイル30をセットして、第1タブレット70と第2タブレット72とによりコイル30を挟んで、一体化する。第1タブレット70と第2タブレット72に熱を加えながら、第1タブレット70と第2タブレット72の重なり方向に加圧することにより、混合粉が流動して、コイル30が埋設されたコアが得られる。
図15は、第1のタブレット70と第2のタブレット72とによりコイル30を挟んで、重なり方向に加圧中のコイル30周辺部を拡大した画像である。図16は、第1タブレット70の横断面図である。図15に示したように、コイル30の横の領域には、隙間s1,s2,s3ができる。そのため、第1タブレット70と第2タブレット72の重なり方向に加圧したときに、コアの外周部付近の隙間から先に混合粉が充填される。
すなわち、コイル30の外周部付近では混合粉の移動量が多くなり、これにより、隙間が埋まり易いために充填密度が高くなり易い。それに対して、コイル30の内側の領域では、混合粉の移動量が少ないために隙間が埋まり難く、充填密度が低くなり易い。そのため、図16に示したように、コイル30の外周部s10~s13における混合粉の充填率が、コイル30の内側部分s14よりも高くなる。そのため、上記特定構成1を有するインダクタ1を得ることができる。
素体の表面領域に空隙があると、空隙から素体内部に湿気が入ってインダクタの耐湿性が悪化するという不都合がある。また、外部電極を形成する際に、メッキ液が空隙から素体内部に入って素体の経年劣化が早まるという不都合がある。そこで、上記特定構成により、素体の表面領域の緻密度を高めることにより、これらの不都合が生じることを防止することができる。
ここで、図17は、インダクタ1の参照面であるLT面とWT面の説明図であり、図18は、図17に示したインダクタ1のLT面とWT面の断面の画像である。上述したように、素体10に素体保護膜が形成される前に、素体研削工程により第2側面18が研削されるが、第1側面16については研削が行われない。そのため、LT面の断面での主面(ここでは実装面)12と第2側面18とが接する稜線部分s22,s23は、第2側面と面一に金属磁性粉が研削され、稜線部分s22,s23における金属磁性粉の露出する面積が増加し、稜線部分s22,s23における樹脂量は、WT面の断面での主面12と第2側面18が接する稜線部分s20,s21における樹脂量よりも少なくなる。これにより、上記特定構成2を有するインダクタ1を得ることができる。特定構成2によれば、主面12と第2側面18が接する稜線部分付近が研削されることで、素体保護膜から突出する軟磁性粒子が低減され、インダクタの絶縁性が低下することを防止することができる。
また、図19は、上述した素体成型・硬化工程による加工後、及び素体研削工程後のLT面、及びWT面の表面の顕微鏡写真と最大高さの対比表である。最大高さSzは、表面粗さの指標値として用いられる。最大高さSzが大きいほど、表面粗さが大きいことを示している。
LT面は素体研削工程によって研削され、その際に第1の軟磁性粒子又は第2の軟磁性体粒子の脱粒が生じるために、表面粗さが大きくなる。そのため、LT面の最大高さSz(50μm)は、研削が行われないMT面の最大高さSz(43μm)よりも大きくなる。LT面の表面粗さを大きくすることにより、LT面における素体保護膜とコアとの接合性を高めることができる。この表面粗さは、形状解析レーザ顕微鏡(キーエンス社製 VK-X250)を用いて、LT面、及びWT面の表面の中央を長手方向に沿って走査し、最大高さ(Sz)を測定することにより求めた。
また、図20に示したように、第2側面18とコイル30との間隔SG1,SG2のうち、狭い方の間隔を第1の軟磁性粒子の1倍よりも大きく4倍よりも小さい範囲とすることにより、素体の耐湿性を確保した上で、外形サイズを小さくした、上記特定構成3を有するインダクタ1を得ることができる。
[A―2-1.第1樹脂配合率の樹脂を用いた実施形態]
上記第1樹脂配合率の樹脂を含む混合粉を用いて、上述した、造粒工程→コイル形成工程→素体成型・硬化工程→素体研削工程→素体保護膜形成工程→素体保護膜除去工程→外部電極形成工程、によりインダクタの素体の試料を作成し、各試料の素体について評価を行った。素体成型・硬化工程における製造条件は、温度135℃、加圧力10MPaである。
(素体強度の評価)
各試料について、3点曲げ試験装置(島津製作所製の3点曲げ試験装置AGS-5kNX)を用いて、3点曲げした時の破壊加重により強度を評価した。破壊加重が30MPa以上である場合をG(合格)とし、30MPa未満である場合をNG(不合格)とした。
(靭性の評価)
各試料について、3点曲げ試験装置を用いて3点曲げ試験を行い、壊れた時の試料変形量で靭性を評価した。
(密度の評価)
各試料について、断面の画像に対して、画像処理を行って空隙の画像部分を抽出し、断面の面積に対する空隙の画像部分の総面積の割合を算出して空隙率を測定した。
空隙率の測定は、素体を長さ方向の1/2で切断し、その切断面において、素体の表面から1μm以上100μmの領域の4箇所(各面1箇所づつ)を、それぞれ1000倍の倍率に設定した走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影し、その切断面に含まれる空隙を計測し、平均を算出することにより行った。また、素体を長さ方向の1/2で切断し、その切断面において、素体の中央領域の4箇所を、それぞれ1000倍の倍率に設定した走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影し、その切断面に含まれる空隙を計測し、平均を算出することにより、空隙率を測定した。
その結果、試料番号b9乃至試料番号b13と、試料番号b27、試料番号b28、試料番号b32以外は素体の表面領域及び中央領域の計8点の平均の空隙率が小さく、素体の表面領域における空隙の割合が、素体の中央部領域における空隙の割合よりも小さく、中央部領域よりも表面領域の方が緻密であった。
(混合粉における樹脂の割合)
図21は、混合粉における樹脂の量と素体の密度との関係を、縦軸を素体の密度(g/cm)に設定し、横軸を混合粉中の樹脂量(重量%)に設定して示したものである。素体の成型条件は、温度180度、加圧力30MPa、加圧時間100秒である。図23において、樹脂量を2.0%より少なくすると素体の密度が低下している。これは、混合粉の流動性が低下して、素体を成型する際の混合粉の充填性が悪化しているためであると推認される。
Figure 2022060772000009
表7の試料による評価結果から、素体の強度と靭性を両立させたインダクタを構成するための混合粉における樹脂の好適な配合率として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂40重量%以上90重量%以下、ゴム変性エポキシ樹脂10重量%以上50重量%以下(上記第1樹脂配合率)が見出された。
[A-2-2.第2樹脂配合率の樹脂を用いた実施形態]
上記A-2-1に示した実施形態と同様に、上記第2樹脂配合率の樹脂を含む混合粉を用いて、インダクタの素体の試料を作成し、各試料の素体について評価を行った。混合粉における樹脂の割合は、上記A-2-1に示した実施形態と同様に、混合粉の2.0重量%以上3.5重量%以下である。
Figure 2022060772000010
表8の試料による評価結果から、素体の強度と靭性を両立させたインダクタを構成するための混合材材料における樹脂の好適な配合率として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂40重量%以上80重量%以下、ゴム変性エポキシ樹脂10重量%以上50重量%以下、フェノールノボラック型エポキシ樹脂1重量%以上30重量%以下(上記第2樹脂配合率)が見出された。特に、試料番号b14乃至b26、b29乃至b31で素体の靭性が優れていた。
[A-2-3.サイドギャップに関する実施形態]
図20に示した第2側面18とコイル30との間隔(サイドギャップ)SG1,SG2と、インダクタ1の耐湿性の良否を評価するために、以下の表9、表10に示した試料を作成して、耐湿性の評価を行った。
(耐湿性の評価)
各試料について、温度を85℃、湿度を85%に設定した耐湿槽を用いた耐湿試験を行い、吸水による素子の重量増加が2重量%以下である場合をG(合格)とし、2を超えている場合をNG(不合格)とした。
(混合粉の仕様)
混合粉における樹脂の割合を2.0重量%以上3.5%以下、樹脂の配合は上記第1樹脂配合率とした。混合粉における大粒の軟磁性粒子(第1の軟磁性粒子)の平均粒径は21μm(表10の試料)又は28μm(表11の試料)であり、小粒の軟磁性粒子(第2の軟磁性粒子)の平均粒径は2μmである。
以下、表9に示した試料b51~b60の評価について説明する。試料b54~b60は本発明の実施例であり、試料b51~b53は比較例である。
Figure 2022060772000011
(実施例A-2-3-1)
<実施例A-2-3-11(試料番号b54)
サイドギャップ小側25μm、サイドギャップ大側85μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性G。
<実施例A-2-3-12(試料番号b55)>
サイドギャップ小側29μm、サイドギャップ大側81μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性G。
<実施例A-2-3-13(試料番号b56)>
サイドギャップ小側33μm、サイドギャップ大側77μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性G。
<実施例A-2-3-14(試料番号b57)>
サイドギャップ小側40μm、サイドギャップ大側70μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性G。
<実施例A-2-3-15(試料番号b58)>
サイドギャップ小側45μm、サイドギャップ大側65μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性G。
<実施例A-2-3-16(試料番号b59)>
サイドギャップ小側50μm、サイドギャップ大側60μmである素体を形成した。評価結果…G。
<実施例A-2-3-17(試料番号b60)>
サイドギャップ小側55μm、サイドギャップ大側55μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性G。
(比較例A-2-3-1)
<比較例A-2-3-11(試料番号b51)>
サイドギャップ小側0μm、サイドギャップ大側110μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性NG。
<比較例A-2-3-12(試料番号b52)>
サイドギャップ小側10μm、サイドギャップ大側100μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性NG。
<比較例A-2-3-13(試料番号b53)>
サイドギャップ小側18μm、サイドギャップ大側92μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性NG。
表10による評価結果から、平均粒径21μmの第1の軟磁性粒子について、サイドギャップ小側が、第1の軟磁性粒子の粒径の1倍よりも大きく4倍よりも小さい範囲である素体について、良好な耐湿性が得られることが見出された。
以下、表10に示した試料b61~b70の評価について説明する。試料b54~b60は本発明の実施例であり、試料b51~b53は比較例である。
Figure 2022060772000012
(実施例A-2-3-2)
<実施例A-2-3-21(試料番号b65)
サイドギャップ小側29μm、サイドギャップ大側81μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性G。
<実施例A-2-3-22(試料番号b66)>
サイドギャップ小側33μm、サイドギャップ大側77μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性G。
<実施例A-2-3-23(試料番号b67)>
サイドギャップ小側40μm、サイドギャップ大側70μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性G。
<実施例A-2-3-24(試料番号b68)>
サイドギャップ小側45μm、サイドギャップ大側65μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性G。
<実施例A-2-3-25(試料番号b69)>
サイドギャップ小側50μm、サイドギャップ大側60μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性G。
<実施例A-2-3-26(試料番号b70)>
サイドギャップ小側55μm、サイドギャップ大側55μmである素体を形成した。評価結果…G。
(比較例A-2-3-2)
<比較例A-2-3-21(試料番号b61)>
サイドギャップ小側0μm、サイドギャップ大側110μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性NG。
<比較例A-2-3-22(試料番号b62)>
サイドギャップ小側10μm、サイドギャップ大側100μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性NG。
<比較例A-2-3-23(試料番号b63)>
サイドギャップ小側18μm、サイドギャップ大側92μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性NG。
<比較例A-2-3-24(試料番号b64)>
サイドギャップ小側25μm、サイドギャップ大側85μmである素体を形成した。評価結果…耐湿性NG。
表11による評価結果から、平均粒径28μmの第1の軟磁性粒子について、サイドギャップ小側が、第1の軟磁性粒子の粒径の1倍よりも大きく4倍よりも小さい範囲である素体について、良好な耐湿性が得られることが見出された。
[A-2-4.他の検討事項]
上記実施形態では、混合粉に含有させる樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂を採用した。ビスフェノールAエポキシ樹脂の上位概念はエポキシ樹脂であり、ゴム変性エポキシ樹脂の上位概念は可撓性を有するゴム又は樹脂である。
そこで、ビスフェノールA型エポキシ樹脂との代替を検討する余地がある樹脂として、ビスフェノールA,F,S型のフェノキシ樹脂が挙げられる。また、ゴム変性エポキシ樹脂との代替を検討する余地がある樹脂又はゴムとして、ウレタン変性、NBR(Acrylonitrile Butadiene Rubber)ゴム変性、CTBN(Carboxyl Terminated Butadiene Acrylonitrile)ゴム変性、CTBNゴムが挙げられる。また、フェノールノボラック型エポキシ樹脂との代替を検討する余地がある樹脂としては、ノボラック型に限定すると、クレゾール、ジシクロペンタジエン、フェノールアラルキル、ビフェニル、ナフトール、キシリレン、トリフェニルメタン、テトラキスフェノールエタンが挙げられ、ノボラック型に限定しなければナフタレン、ビフェニル、トリアジンも挙げられる。
[B.コイル]
(導線)
インダクタ1において、コイル30に用いられる導線は、丸線及び平角線のどちらを用いても良いが(図3は平角線)、導線に平角線を用いることにより、巻回部32の形成時に導線同士の間に隙間を生じさせずに巻回すことが容易になる。
この巻回部32の巻数は、インダクタ1が実現する特性に応じて適宜に決定される。
また導線としては、好ましくは銅からなる銅線が用いられる。
例えばインダクタ1において、コイル30の巻回部32の寸法は、幅W方向の外形が1.17mm、内径が0.55mm、高さが0.4mmであることが好ましい。
また、厚みTのみが0.55±0.1mmに変更された寸法のインダクタ1においては、外形が1.17±0.05mm、内径が0.48±0.05mm、高さが0.30±0.05mmであることが好ましい。
ここで、コイル30の導線を平角線とした場合、平角線の厚みは、好ましくは0.118mm以下、より好ましくは0.113mm以下である。平角線の厚みを小さくすることにより、同じ巻数であってもコイル30が小さくなり、コイル部品全体の小型化に有利となる。また同じ大きさのコイル30であっても巻数を多くすることができる。
さらに、平角線の厚みは、好ましくは0.052mm以上、より好ましくは0.77mm以上であり得る。平角線の厚みを0.052mm以上とすることにより、導線の抵抗を小さくすることができる。
また平角線の幅は、好ましくは0.203mm以下、より好ましくは0.183mm以下であり得る。
平角線の幅を小さくすることにより、コイル30を小さくすることができ、コイル部品全体の小型化に有利となる。
さらに平角線の幅は、好ましくは0.141mm以上、より好ましくは0.162mm以上であり得る。平角線の幅を0.141mm以上とすることにより、導線の抵抗を小さくすることができる。
また平角線のアスペクト比(幅/厚み)は、1:1.3から1:3.4の間、好ましくは1:1.3であり得る。
なお、幅Wのみが0.55±0.1mmに変更され寸法のインダクタ1においては、厚みが0.113mm、幅が0.141mm、アスペクト比(幅/厚み)が1:1.3の導線がコイル30に用いられる。
アスペクト比を従前のものより小さくするほど、インダクタ1の高さHの方向に対する幅Wの方向のコイル30(導線)占有率が向上し、Rdc(直流抵抗)を低下させつつ飽和磁束密度Bsを向上させることができる。
(絶縁被覆材)
絶縁被覆材60の絶縁被覆層を形成する材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミドアミド樹脂が挙げられ、好ましくはポリイミドアミド樹脂である。
また絶縁被覆層の厚みは4μmが好ましい。
絶縁被覆材60の融着被覆層を形成する材質としては、ポリアミド樹脂が挙げられる。
また、融着被覆層の厚みは、好ましくは1μm以上25μm以下、より好ましくは2μm以上25μm以下、さらに好ましくは2μm以上4μm以下である。
融着被覆層の厚みを上記の値とすることで、コイル30の巻回部32の大型化を抑えつつ、当該巻回部32の最外周において導線のスプリングバックによる剥離を十分に抑える融着力が得られ、コイル30の形状不良を防止することができる。
[C.磁路]
[C-1.線間磁性粉]
インダクタ1は、磁性材料に金属磁性粒子からなる軟磁性材料を用いているので、フェライト等の磁性材料を使用する場合と比べ、良好な直流重畳特性を得ることができる。しかし、特にコイル30の巻回部32近傍の磁束密度が大きくなりすぎると、磁気飽和が発生するおそれがある。
ここで、図22(A)は、コイル30の下段の巻線部32Lを周囲材料と共に示す画像であり、図22(B)は、コイル30の上段の巻線部32Lを周囲材料と共に示す画像である。図22(A)及び(B)において、紙面上下方向が素体10の高さH方向に相当し、紙面左右方向が巻回部32の径方向に相当している。また、図中、符号CWは巻回部32の巻幅を示している。
本構成では、磁束密度が局所的に飽和することを防止すべく、図22(A)及び(B)に示すように、小粒子である第2軟磁性粒子82の一部を、巻線部32L間に入り込ませて巻線部32L間に磁路を形成するようにしている。この巻線部32L間に第2軟磁性粒子82が入り込んだ構造を、線間磁性粉構造と表記する。
線間磁性粉構造について説明する。
図22(A)及び(B)に示すように、大粒子である第1軟磁性粒子81は、巻線部32L間よりも大径であるので、巻線部32L間に入り込まない。一方、第2軟磁性粒子82は、第1軟磁性粒子81よりも小径であり、かつ、融着被覆層の厚さより小さい平均径に形成されている。このため、第2軟磁性粒子82は、第1軟磁性粒子81と巻線部32L間との間の領域10Sに入り、第2軟磁性粒子82を巻線部32L間に入り込ませ易くなる。
本構成では、第1及び第2軟磁性粒子81,82を含む混合粉内にコイル30を配置して圧縮成型する素体成型・硬化工程の際に、第2軟磁性粒子82が、第1軟磁性粒子81と巻線部32Lとの間に積極的に入り込むように加圧力Pを従前よりも高い値に調整している。しかも、その圧縮成型の際に加熱を行うので、巻線部32L表面の絶縁被覆材60中の融着被覆層を溶融させ、溶融した融着被覆層内に第2軟磁性粒子82を入れ易くなる。
より具体的には、図23に示すように上方から加圧力Pを作用させた場合に、コイル30の巻回部32及びその周囲には、上方から加圧力Pが作用するとともに、作用反作用の法則などにより、下方及び左右からも加圧力Pが作用する。これにより、コイル30の外周側から各巻線部32Lに向けて第2軟磁性粒子82に圧力を付与し、巻線部32L間に充填し易くなる。
このときの加圧力Pの条件には、加圧力Pの値だけでなく、加圧力Pを付与する時間などの加圧に関する各種パラメータを含めてもよい。この条件を適切に設定することによって、第2軟磁性粒子82を巻線部32L間に適切に充填し易くなる。この場合、更に、加熱の条件を調整したり、巻回部32と周囲壁(成型金型74及びパンチ76の内面)との間の距離などを調整したりすることによって、第2軟磁性粒子82を巻線部32L間により充填し易くしてもよい。
同図22(A)及び(B)に示すように、巻線部32L間に、第2軟磁性粒子82からなる磁路を形成することにより、巻回部32近傍で磁束密度が局所的に飽和することを抑制でき、直流重畳特性を向上できる。
次に、第2軟磁性粒子82からなる磁路の長さについて説明する。
コイル30の巻線部32Lの線幅95μm、コイル30の巻線部32Lの厚み180μm、コイル30の巻線部32L間の融着被覆層の厚さ6μm、第1軟磁性粒子81の平均粒径が10μm以上、第2軟磁性粒子82の平均粒径が5μm以下、加圧力P=300kg/cm の条件で、巻線部32L間の第2軟磁性粒子82からなる磁路を5%ずつ異ならせて直流重畳定格電流Isatを算出する検討を行った。
直流重畳定格電流Isatは、インダクタンスが電流を重畳していない初期特性に対して一定割合低下するときの電流値であり、磁気飽和させずに流すことのできる最大電流の目安である。なお、初期インダクタンス値より約30%低下するときの電流値を直流重畳定格電流Isatと定義している。検討結果を表11に示している。
Figure 2022060772000013
比較例C1-1は、巻線部32L間の磁路の長さが零、つまり、第2軟磁性粒子82が巻線部232L間に存在していない場合である。比較例C1-2は、巻線部32L間の磁路の長さを、巻線部32L同士が接する長さの5%にした場合である。なお、巻線部32L同士が接する長さはコイル30の高さに相当する。
実施例C1-1は、巻線部32L間の磁路の長さを、巻線部32L同士が接する長さの10%にした場合を示している。実施例C1-2は、巻線部32L間の磁路の長さを、巻線部32L同士が接する長さの50%にした場合を示している。比較例C1-3は、巻線部32L間の磁路の長さを、巻線部32L同士が接する長さの55%にした場合を示している。なお、直流重畳定格電流Isatは、比較例C1の場合を値100としている。
発明者等が検討したところ、巻線部32L間の磁路の長さが10%以上になると、巻線部32L間の磁路の長さが零の場合と比べて、直流重畳定格電流Isatの上昇が大きくなったので、磁路の長さは10%以上が好ましい。しかし、巻線部32L間の磁路の長さが55%を超えると、巻線部32L同士を接合する融着被覆層にひび割れが生じ、巻線部32L同士が剥がれ易くなるおそれが生じる。
これらの事情を考慮すると、磁気飽和を抑制し、直流重畳特性を向上する観点からは、巻線部32L間の磁路の長さを10%以上にすることが好ましく、巻線部32L同士の剥がれを抑制する観点も考慮すると、10%以上、かつ50%以下にすることが好ましいと判断した。したがって、巻線部32L間の磁路の長さを10%~50%の範囲で設定することが好ましい。
図24は、線間磁性粉構造のシミュレーション結果を示す特性曲線図である。
図24中、横軸は電流値を示し、縦軸はインダクタンス値(L値)を示している。また、図24において、比較例C1-4は、線間磁性粉構造を設けない場合を示しており、つまり、上下2段に巻回される巻回部32の上段と下段の間の面、上段の巻線部32L間、及び下段の巻線部32L間のいずれにも第2軟磁性粒子82が存在していない。
実施例C1-3は、巻回部32の上段と下段の間の面、上段の巻線部32L間、及び下段の巻線部32L間のそれぞれの全周に第2軟磁性粒子82を存在させた場合を示している。
実施例C1-4は、上段の巻線部32L間の上側半分、及び下段の巻線部32L間の下側半分に第2軟磁性粒子82を存在させた場合を示している。
実施例C1-6は、上段の巻線部32L間、及び下段の巻線部32L間の全周に第2軟磁性粒子82を存在させた場合を示している。
表12には、比較例C1-4、及び実施例C1-3~C1-6の初期インダクタンス値(初期L値)と直流重畳定格電流Isatのシミュレーション結果を示している。なお、コイル30の線幅、厚さ、及び融着被覆層の厚さなどの条件は表11の場合と同じである。
Figure 2022060772000014
図24に示すように、実施例C1-3~C1-6については、比較例C1-4と比べ、0A~10Aの広い電流範囲で大きいインダクタンス値が得られており、磁気飽和を抑制し、直流重畳特性が向上していることを確認できる。また、表12に示すように、直流重畳定格電流Isatについても、実施例C1-3~C1-6が、比較例C1-4を上回っていることは明らかである。
また、実施例C1-3及びC1-6がほぼ同じ特性(インダクタンス値、及び直流重畳定格電流Isat)が得られ、かつ、他の実施例C1-4,C1-5と比べても、大きいインダクタンス値が得られている。実施例C1-3及びC1-6は、上段の巻線部32L間、及び下段の巻線部32L間に第2軟磁性粒子82を存在させる点が共通であることから、この点が、磁気飽和を抑制し、直流重畳特性を向上することに有利であると推定できる。
このように、コイル30が埋設されるコア40が、大粒子の第1軟磁性粒子81と小粒子の第2軟磁性粒子82とを含み、第2軟磁性粒子82の一部が、第1軟磁性粒子81とコイル30の巻線部32L間との間の領域10Sに入って巻線部32L間に入り込み、巻線部32L間に磁路を形成するので、良好な直流重畳特性が得られる磁性粒子を用いても磁束密度が局所的に飽和することを抑制することができる。
また、第2軟磁性粒子82は、隣接する巻線部32L同士が接する長さの10%以上の長さに渡って巻線部32L間に存在するので、10%未満の場合と比べ、磁束密度の局所的な飽和、つまり、磁気飽和をより抑制できる。
さらに、第2軟磁性粒子82は、隣接する巻線部32L同士が接する長さの50%以下の長さに渡って巻線部32L間に存在する構成にすることにより、巻線部32L同士を接合する融着被覆層にひび割れが生じ、巻線部32L同士が剥がれ易くなる事態を避け易くなる。
また、隣接する巻線部32L同士は融着被覆層からなる融着剤によって接合され、第2軟磁性粒子82は、融着被覆層の厚さよりも小さい径に形成され、第2軟磁性粒子82の一部が融着被覆層内に入り込んで巻線部32L間に磁路を形成するので、隣接する巻線部32L同士を接合しながら巻線部32L間に効率よく磁路を形成でき、磁気飽和を効果的に抑制し易くなる。
さらに、コア40の材料(第1及び第2軟磁性粒子81,82等)とコイル30とからなる素材を圧縮成型して素体10を形成する際に、第2軟磁性粒子82の一部が上記領域10Sに入り込むように、少なくとも圧縮成型時の加圧力Pを調整するので、巻線部32L間に磁路を容易に設けることができる。
なお、第2軟磁性粒子82の一部を巻線部32L間に入り込ませる方法は、加圧力Pの条件、加熱の条件などに限定しなくてもよい。例えば、第1及び第2軟磁性粒子81,82の径の調整、各粒子81,82間の表面層のすべり性の調整、及び、樹脂の選定などを適宜に組み合わせて、第2軟磁性粒子82を上記領域10Sに入り込ませ易くしてもよい。
また、コイル30が、導線がつながった状態で上下多段(2段以上も含む)に巻回された巻回部32を有する場合、最上段、及び/又は最下段の巻線部32L間に第2軟磁性粒子82を存在させることが好ましい。これにより、磁気飽和の抑制に効果的な磁路を設けやすくなる。
なお、第2軟磁性粒子82の一部を巻線部32L間に入り込ませることが可能な範囲で、コア40の材料を適宜に増減したり、変更したりしてもよいし、コイル30などの形状を適宜に変更したりしてもよい。また、素体成型・硬化工程時に第2軟磁性粒子82を上記領域10Sに入り込ませる場合に限定されず、他の方法で、第2軟磁性粒子82を上記領域10Sに入り込ませるようにしてもよい。
また、コイル30の巻き方はアルファ巻に限定されず、例えばエッジワイズ巻でもよい。エッジワイズ巻などの場合も、融着被覆層によって接合された隣接する巻線部32L間に第2軟磁性粒子82によって磁路が形成されることで、磁気飽和を効果的に抑制し易くなる。
[C-2.磁気ギャップ]
インダクタ1に対し、コイル30の巻回部32近傍の磁束密度が飽和することを更に抑制すべく、巻回部32近傍に磁気ギャップを設けるようにしてもよい。
図25は、巻回部32近傍に磁気ギャップとなるエアギャップ40Kを設けた場合の画像である。
このエアギャップ40Kは、巻線部32Lの並び方向に延在し、磁束に略直交する。このエアギャップ40Kは、素体成型・硬化工程の際に形成されている。詳述すると、図23に示したように、コイル30の上下左右に加圧力Pを作用させることにより、コイル30の巻回部32の周囲にてコア材料である第1及び第2軟磁性粒子81,82などが圧縮される。その後、パンチ76を速やかに待避させたり、コア材料が固まりきっていない状態で型から素体10を取り出したりすること等によって、第1及び第2軟磁性粒子81,82などのスプリングバック(反発力)を利用して、巻回部32の周囲に図25に示すようなエアギャップ40Kが形成される。
このスプリングバックには、第1軟磁性粒子81間、第2軟磁性粒子82間、第1及び第2軟磁性粒子81,82間の少なくともいずれかの反発が含まれる。これらの反発を適宜に利用して、磁気ギャップとして機能するエアギャップ40Kが形成される。なお、このスプリングバックに、コイル30とコア40(第1及び第2軟磁性粒子81,82)との間の反発を含めてもよい。
すなわち、圧縮成型時の加圧力P、加圧速度、加圧時間、パンチ76の待避速度、素体10の取り出しタイミングなどの圧縮成型時の各種条件を適宜に調整することによって、巻線部32Lの周囲に、巻線部32Lの並び方向に延在するエアギャップ40Kが形成される。これにより、磁気ギャップとして機能するエアギャップ40Kを容易に設け、このエアギャップ40Kにより、コイル30の巻回部32近傍の磁束密度の飽和を抑え、直流重畳特性を向上することができる。
次に、エアギャップ40Kの位置、長さ及び幅について説明する。
コイル30の巻線部32Lの線幅95μm、コイル30の巻線部32Lの厚さ180μm、コイル30の巻線部32Lの融着被覆層の厚さ4μm、第1軟磁性粒子81の平均粒径が10μm以上、第2軟磁性粒子82の平均粒径が5μm以下、加圧力P=300kg/cm の条件で、エアギャップ40Kの位置、長さ及び幅を異ならせて直流重畳定格電流Isatを算出する検討を行った。直流重畳定格電流Isatは、初期インダクタンス値より約30%低下するときの電流値としている。
表13には、エアギャップ40Kの位置の検討結果を示している。表13中の直流重畳定格電流Isatは、エアギャップ40Kが巻回部32から11μmの位置にある場合を値100とした場合を示している。
Figure 2022060772000015
表13に示すように、エアギャップ40Kが巻回部32から30μmの範囲では、巻回部32から離れるほど直流重畳定格電流Isatの値が大きくなり、50μmを超えると、Isatの値が100を下回った。発明者等の検討では、エアギャップ40Kが巻回部32から50μmの範囲以内が磁気飽和を抑制するのに効果的な範囲であり、換言すると、第1軟磁性粒子81の平均粒径の5倍の距離以内が磁気飽和を抑制するのに好適な範囲であった。より好ましくは、エアギャップ40Kが巻回部32から20μm以上、30μm以下の範囲にあることが望ましい。
表14には、エアギャップ40Kの長さKL(図25参照)の検討結果を示している。表14中の直流重畳定格電流Isatは、エアギャップ40Kの長さKLが巻回部32の巻幅CW(図25)の10%の場合を値100とした場合を示している。
Figure 2022060772000016
表14に示すように、巻回部32の巻幅CWの110%まではエアギャップ40Kが長くなるほど直流重畳定格電流Isatの値が大きくなった。発明者等の検討では、エアギャップ40Kの長さKLが、単一の巻線部32Lの幅以上(巻幅CWの33%以上)であることが磁気飽和を抑制するのに効果的であった。
一方、エアギャップ40Kの長さKLが巻幅CWを大きく超えると、より具体的には、巻幅CWの110%を超えると、エアギャップ40Kがコイル30の巻軸又は巻軸と平行な領域に直交し、インダクタンス値が大幅に低下するおそれが生じる。
そこで、発明者等は、エアギャップ40Kの長さKLは単一の巻線部32Lの幅以上(巻回部32の巻幅CWの33%以上に相当)、巻回部32の巻幅CWの110%以下が好ましく、より好ましくは、単一の巻線部32Lの幅の1.5倍以上(巻回部32の巻幅CWの50%以上)、巻回部32の巻幅CW以下(100%以下)がよいと判断した。
表15には、エアギャップ40Kの幅KW(図25参照)の検討結果を示している。この幅KWは、巻線部32Lの並び方向に直交するエアギャップ40Kの長さに相当している。表15中の直流重畳定格電流Isatは、エアギャップ40Kの幅KWが最小粒子の径未満である1μm未満の場合を値100とした場合を示している。
Figure 2022060772000017
表15に示すように、エアギャップ40Kの幅KWが10μmまでは幅KWが大きくなるほど直流重畳定格電流Isatの値が大きくなり、10μmと11μmでは直流重畳定格電流Isatの値が同じであった。また、エアギャップ40Kの幅KWが11μmを超えると、幅KWが第1軟磁性粒子81の平均粒径よりも大きくなり、第1軟磁性粒子81に固着している樹脂の軟磁性粒子固着強度が弱くなり、エアギャップ40Kの延在方向に沿って素体10にクラックが発生し易くなる。
したがって、エアギャップ40Kの幅KWは、第2軟磁性粒子82の平均粒径以上(5μm)以上、11μm以下が好ましく、より好ましくは、素体10のクラックを抑制可能な範囲で10μmに近い値が好ましい。
図26は、エアギャップ40Kの有無に応じたシミュレーション結果を示す特性曲線図である。図26中、横軸は電流値を示し、縦軸はインダクタンス値(L値)を示しており、特性曲線K1はエアギャップ40K無しの場合を示し、特性曲線K2は、巻回部32の上下、内周及び外周に、巻回部32の長手方向及び短手方向の双方に、エアギャップ40Kが延在している場合を示している。
表16には、特性曲線K1,K2のそれぞれに対応する初期インダクタンス値(初期L値)と直流重畳定格電流Isatのシミュレーション結果を示している。なお、コイル30の線幅、厚さ、及び融着被覆層の厚さなどの条件は表11,K2の場合と同じである。
Figure 2022060772000018
図26及び表16に示すように、シミュレーション結果からエアギャップ40Kありの方が磁気飽和を抑制できることが判り、特に、電流値0A以上、6A以下の範囲で磁気飽和の抑制効果が得られることが確認できる。
このように、素体10は、コイル30の巻回部32の外周、かつ、巻回部32から第1軟磁性粒子81の平均粒径の5倍の距離以内に、巻線部32Lが並ぶ方向に延在するエアギャップ40Kを有しているので、良好な直流重畳特性が得られる磁性粒子を用いても磁気飽和を抑制可能になる。
しかも、エアギャップ40Kは、巻線部32Lが並ぶ方向で、単一の巻線部32Lの幅以上、巻回部32の巻幅CW以下の長さであり、巻線部32Lの径方向で、第2軟磁性粒子82の平均粒径以上、10μm以下の幅であるので、磁気飽和を効果的に抑制可能になる。
また、エアギャップ40Kは、コア40の材料とコイル30とからなる素材を圧縮成型して素体10を形成する際のスプリングバックを利用して形成されているので、エアギャップ40Kを容易に設けることができる。
なお、エアギャップ40Kを形成可能な範囲で、コア40の材料を適宜に増減したり、変更したりしてもよいし、コイル30などの形状を適宜に変更したりしてもよい。また、素体成型・硬化工程時にエアギャップ40Kを形成する場合に限定されず、他の方法でエアギャップ40Kを形成するようにしてもよい。
[D.素体研削]
本実施例において、インダクタ1の素体10には、平均粒径が大きな大粒子及び当該大粒子よりも平均粒径が小さな小粒子から成る軟磁性粉と樹脂との混合粉を圧縮成型して成型体が用いられている。
図4に示した素体研削工程では、先述の通り、圧縮成型後の素体10の第2側面18(図1)に砥粒を作用させて幅Wが所定幅になるまで研削する工程である。この研削によって素体10が所定サイズまでダウンサイジングされ、素体10におけるコイル30の占有率が高められる。また素体10を研削加工によってダウンサイジングし所定サイズに加工する手法を採用することで、成型金型のキャビティの寸法調整によって素体10のサイズを所定サイズに制御する場合に比べ、素体10の寸法ばらつきを低減できる。この研削の後、第2側面18に研削によって生じた角を面取りするために例えばバレル研磨を行ってもよい。
(研削装置)
図27は、素体研削に用いられる研削装置101の一例を模式的に示す図である。
研削装置101は、研削対象である素体10(ワーク)を保持する保持具102と、当該保持具102で保持された素体10を間に挟む上砥石103、及び下砥石104と、を備え、保持具102には、素体10が研削面である第2側面18を上下に向けた姿勢で保持される。
素体研削時には、研削装置101が上砥石103及び下砥石104を所定の荷重で上下の第2側面18のそれぞれに押し当てつつ、これら上砥石103及び下砥石104を上下の第2側面18に対して相対移動させることで、上砥石103及び下砥石104の砥粒105によって上下の第2側面18を同時に研削する(いわゆる両面研削)。
(砥粒の大きさ)
砥粒105の大きさは、研削レートと比例関係にあり、また砥粒105が大きくなるほど、研削面において軟磁性粉の粒子の脱粒が多く発生し表面粗さが大きくなることが発明者の実験によって確かめられている。
詳述すると、軟磁性粉の成型体を研削すると、砥粒105によって軟磁性粉の粒子が少なからず脱粒し、粒子の欠損による凹みが研削面に生じる。大粒子及び小粒子から成る軟磁性粉において、小粒子よりも大粒子の方が脱粒し易く、砥粒105を大きくするほど多くの大粒子が脱粒することで、研削面に比較的大きな凹みが多く発生し、これにより研削面の表面粗さが大きくなる。
表面粗さに関しては、表面粗さと荷重に相関関係が無いことが発明者の実験によって確かめられている。
なお、本実施例において、表面粗さの評価には算術平均高さを用いた。具体的には、測定対象の面において、所定大きさ(本実施例では約200μm×290μm)の複数(例えば3から4点)の測定エリアを設定し、各測定エリアにおける最大高さをレーザ顕微鏡で測定し、これら最大高さの平均から算出平均高さを求めた。レーザ顕微鏡には株式会社キーエンス社製の型式VK-X250を用いた。
(研削速度)
研削速度(上砥石103及び下砥石104の移動速度)が大きくなるほど軟磁性粉の粒子の切削が生じ研削面の表面粗さは低くなること、及び、研削速度が上記研削レートと比例関係にあることが、発明者の実験によって確かめられている。
(研削レート)
研削レートについては、目標値が適宜に設定され、この目標値の実現に必要な砥粒105の大きさ及び研削速度が決定される。これら砥粒105の大きさ及び研削速度はそれぞれ、上述の通り、研削面の表面粗さと関係する。本実施例では、研削後の表面粗さを研削前よりも大きくし、さらには研削後の第2側面18の粗さを研削対象外の面である天面14及び実装面12よりも大きくするように、砥粒105の大きさ及び研削速度が設定されている。
研削によって表面粗さSaが大きくなることで、素体10の第2側面18を覆う素体保護膜50の固着強度が高められる。また素体10は、外部電極20を除き素体保護膜50によって表面が覆われており、かかる素体保護膜50によって素体10の耐湿性や防さび性、電気的絶縁性が高められている。
(研削時間)
研削時間は、研削開始タイミングTsから研削終了タイミングTeまでの時間で定義され、素体研削前の素体10の幅Wと当該幅Wの目標値である所定幅との差、及び研削レートに基づいて決定される。
そして素体研削時には、制御装置(図示せず)が上記荷重プロファイル106及び研削時間に基づいて研削装置101の研削動作を制御することで、圧縮成型後の素体10の幅Wが所定幅になるまで研削が行われる。
(サイドギャップ)
サイドギャップSgは、図28に示すように、インダクタ1において、素体10の内部のコイル30から直近の第2側面18までの厚みで定義される。なお、素体10が素体保護膜50によって覆われている場合、サイドギャップSgは素体保護膜50を除いた厚みである。
そして、本実施例では、幅Wが所定幅まで研削された素体10において、サイドギャップSgが1個分の軟磁性粉の大粒子の平均粒径に相当する厚みよりも大きく、かつ、4個分の軟磁性粉の大粒子の平均粒径に相当する厚みよりも小さくなっている。換言すれば、本実施例において、所定幅に研削された素体10のサイドギャップSgが、かかる厚みとなるように、この所定幅及びコイル30の巻回部32の幅WLa(図28)の両方又は一方が予め調整されている。
研削後の素体10において、サイドギャップSgの厚みを、少なくとも軟磁性粉の1個分の大粒子の平均粒径に相当する厚みよりも大きくすることで、研削によって第2側面18に脱粒が生じていたとしても、少なくとも1粒以上の大粒子が第2側面18とコイル30の間に残存するため、コイル30の露出が防止された状態となる。
また研削後の素体10において、サイドギャップSgの厚みを、軟磁性粉の4個分の大粒子の平均粒径に相当する厚みよりも小さい範囲に制限することで、素体10の大型化を防止しつつコイル30の占有率を十分に高い値に維持し、インダクタンスの低下を防止できる。
表17及び表18は、インダクタ1におけるサイドギャップSgの最大値及び最小値、当該インダクタ1のインダクタンス値、及び耐湿性の測定結果を示す。
表17は、軟磁性粉の大粒子、及び小粒子の平均粒径がそれぞれ21μm、及び2μmのインダクタ1を測定したものであり、表18は、軟磁性粉の大粒子、及び小粒子の平均粒径がそれぞれ28μm、及び2μmのインダクタ1を測定したものである。
かかる軟磁性粉には、クロムレスのFe-Si系アモルファス合金粉と結晶質の純鉄とから成る磁性粉が用いられており、クロムレスのFe-Si系アモルファス合金粉の粒子が大粒子に相当し、純鉄が小粒子に相当する。大粒子の表面はSiO層とFeSiO層とが積層した酸化膜で覆われ、小粒子の表面はFeの酸化膜で覆われており、個々の粒子が酸化膜によって電気的絶縁性を有している。
そして、かかる軟磁性粉とエポキシ樹脂との混合粉を圧縮成型することで、インダクタ1の素体10を成型している。
したがって、素体表面には、樹脂、Fe又はFeの酸化物、リン酸塩ガラス及び、SiOと炭素数が16の鎖長のアルキル基が存在することになる。
インダクタンス値についてはLCRメータで測定し、耐湿性については温度が85℃、湿度が85%の環境下にインダクタ1を曝して試験し、試験結果に基づいて、所定の製品品質基準に耐湿性が満たないものを「NG」としている。
Figure 2022060772000019
Figure 2022060772000020
表17、及び表18に示される通り、サイドギャップSgの最小値が1個分の大粒子の平均粒径よりも大きければ、十分な耐湿性が得られることが分かる。またサイドギャップSgの最大値が大きくなるほどインダクタンス値が低下することが分かる。
またサイドギャップSgの最小値が1個分の大粒子の平均粒径よりも大きく、かつサイドギャップSgの最大値が4個分の大粒子の平均粒径よりも小さい範囲において、サイドギャップSgの最小値と最大値の比が1対1である場合に、耐湿性能、及びインダクタンス値が共に良好なインダクタ1が得られることが分かる。
以上説明したように、本実施例のインダクタ1は、コイル30が埋設された板状の成型体から成る素体10に一対の外部電極20を設けたインダクタ1であって、素体10は、平均粒径が異なる大粒子と小粒子からなる軟磁性粉及び樹脂の混合粉から成型されており、コイル30の径方向に位置する第2側面18から当該コイル30までの厚みであるサイドギャップSgが、1個分の大粒子に相当する厚みよりも大きく、かつ、4個分の大粒子に相当する厚みよりも小さい。
素体10のサイドギャップSgの厚みが、少なくとも軟磁性粉の1個分の大粒子の平均粒径に相当する厚みよりも大きいことで、少なくとも1粒以上の大粒子が第2側面18とコイル30の間に存在し、コイル30の露出が防止された状態となる。
また素体10のサイドギャップSgの厚みが、軟磁性粉の4個分の大粒子の平均粒径に相当する厚みよりも小さい範囲に制限されることで、素体10の大型化を防止しつつコイル30の占有率を十分に高い値に維持し、インダクタンスの低下を防止できる。これにより、小型でありながらも、実用的な直流抵抗及び飽和磁束密度が得られるインダクタ1が実現できる。
本実施例のインダクタ1において、素体10の第2側面18は、素体保護膜50で覆われており、少なくとも他の1以上の面(実装面12及び天面14)よりも表面粗さが大きい。
これにより、第2側面18と素体保護膜50の固着強度を高めることができる。
本実施例のインダクタ1において、素体10は、外部電極20を除き素体保護膜50によって表面が覆われている。
これにより、素体10の耐湿性や防さび性、電気的絶縁性が高められ、高品質なインダクタ1が得られる。
[E.素体保護膜]
本実施例において、インダクタ1の素体10には、平均粒径が大きな大粒子及び当該大粒子よりも平均粒径が小さな小粒子から成る軟磁性粉と樹脂との混合粉を圧縮成型して成型体が用いられている。
素体保護膜50は、外部電極20の箇所を除く素体10の全表面を覆い、素体10の電気的絶縁性、及び防さび性を高める層である。先述の素体研削工程において研削面(第2側面18)に軟磁性粉の大粒子の脱粒が生じたとしても、当該研削面を素体保護膜50が覆うことで電気的絶縁性及び防さび性の低下を防止できる。
(素体保護膜形成工程・保護膜形成装置)
素体保護膜50は、図4を参照して説明した通り、素体保護膜形成工程において素体10の全表面に熱硬化性樹脂を含有する保護膜材料をスプレー(噴霧)やディップ(浸漬)などの適宜の手法で塗布することで形成される。
図29は素体保護膜形成に用いる保護膜形成装置201の一例を模式的に示す図である。
保護膜形成装置201は、ワーク208である多数の素体10の表面に保護膜材料をスプレーすることで塗膜する装置である。同図に示すように、保護膜形成装置201は、装置本体202に回転可能に設けられ、多数の素体10(ワーク208)が投入されるドラム203と、熱を供給するヒータ204と、ドラム203の排気経路となるダクト205と、ドラム203の中に配置されたスプレーノズル206と、を備える。
素体保護膜形成の際、保護膜形成装置201は、多数の素体10が投入されたドラム203をヒータ204によって熱硬化しない温度(例えば、30~70℃)に予熱する(予熱工程)。
次いで、保護膜形成装置201は、ドラム203を回転(いわゆるバレル回転)させて素体10を撹拌しながら、スプレーノズル206から保護膜材料を素体10に噴霧しつつ、不図示のエアーノズルからホットエアー207を素体10に吹き付けて素体10の表面に素体保護膜50を塗膜する(塗布工程)。この塗布工程における終盤では、保護膜形成装置201は、保護膜材料の噴霧を停止する一方で、素体10の撹拌、及びホットエアー207を素体10に吹き付けることで、素体10の素体保護膜50を適度に乾燥させる(乾燥工程)。そして素体保護膜50が乾燥した後に、素体10がドラム203から取り出される(ワーク取り出し工程)。
乾燥工程において、乾燥が不十分な場合、素体保護膜50にポア(細孔)や膨潤が発生し、また素体10への素体保護膜50の密着性も悪くなる。乾燥が過度な場合、素体保護膜50がいわゆる不連続膜となり、また素体10への素体保護膜50の密着性も悪くなる。そこで乾燥は、素体保護膜50がいわゆる連続膜となり、かつ素体10への素体保護膜50の密着性が良好に維持される適度な程度で行われることが好ましい。
(保護膜材料)
保護膜材料には、素体保護膜50の基材である樹脂種と、この樹脂種を希釈する溶剤種と、添加物であるフィラー種を混合液が用いられる。
(樹脂種)
樹脂種には、エポキシ樹脂を主剤とし、フェノキシ樹脂及びノボラック樹脂の一方又は両方を添加した樹脂が好適に用いられる。フェノキシ樹脂を添加することで素体保護膜50の靱性が高められる。ノボラック樹脂を添加することで素体保護膜50の耐熱性が高められる。
樹脂種の樹脂には顔料が含まれていることが好ましい。
顔料を含む樹脂を用いることで、図4に示した素体保護膜形成工程、及び外部電極形成工程において、素体10の表面にレーザ光を照射して素体保護膜50を除去し外部電極20を形成する際の加工性を良くできる。顔料には、例えばカーボンブラックが好適に用いられる。
(溶剤種)
溶剤種には、上記塗布工程において樹脂種をミスト状にして噴霧でき、また乾燥工程において適度な乾燥性が得られる溶剤が用いられ、例えばペースト状の樹脂の希釈剤に用いられるメチルエチルケトン(MEK)等を含有する溶剤が好適に用いられる。
(フィラー種)
フィラー種には、素体保護膜50に光沢を低減し、かつ素体保護膜50の膜質を良好とするフィラーであって、溶剤に分散するものが用いられる。
素体保護膜50の光沢が低減することで、カメラを用いたインダクタ1の外観検査時において色飛びによる誤判定を防止できる。かかるフィラーには、シリカ(SiO)粉が好適に用いられる。
また、フィラー種は、保護膜材料を噴霧するスプレーノズル206の目詰まり防止、及び、ドラム203のバレル回転による素体10の表面へのダメージ低減を図るために、フィラーの粒子のサイズは小さいほど好ましく、シリカ粉をフィラーとする場合はナノシリカを用いることが好ましい。
(ナノシリカ)
発明者は、ナノシリカをフィラーとした場合に、塗布工程の終盤に行われる乾燥工程おける乾燥速度と、ナノシリカの含有量との間に相関があることを実験によって見出した。
図30は、ナノシリカの含有量と乾燥速度の実験結果を示す図である。
この実験では、樹脂種にエポキシ樹脂、溶剤種にMEK、フィラー種にナノシリカを用いて保護膜材料のサンプルを作成し、このサンプルを用いて素体10に素体保護膜50を形成し、更に外部電極20を形成してインダクタ1を構成した。そして、素体保護膜50の乾燥工程において、放置する乾燥放置時間と、素体保護膜50の固形分との関係を調べた。
保護膜材料のサンプルは、ナノシリカの含有量が0(含有なし)、50phr、100prh、200phrの4つを作成した。いずれのサンプルにも、平均粒径が45nmのシリカ粒子から成るナノシリカをフィラーに用いている。
シリカ粒子の平均粒径は、インダクタ1において、天面14の4隅の角をそれぞれ対角に結んだ交点部分と交差し、第2側面18と平行に素体10を切断し、素体10の上下の第2側面18において、素体10の長さLを4等分した点のそれぞれにおいて素体保護膜50の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、30万倍に拡大して撮影し、シリカ粒子を観察した。透過型電子顕微鏡には、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)を用いて測定した。この電界放射型透過電子顕微鏡には、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)のシステム(サーモフィシャーサイエンティフィック株式会社製の型番:NORAN System 7)が付設された、日本電子株式会社製の多機能電子顕微鏡(型番:JEM-F200)を用いた。
図30に示されるように、ナノシリカの含有量が大きくなるほど短い乾燥放置時間でも固形分が高くなることが分かる。すなわち、保護膜材料におけるナノシリカの含有量を増やすことで乾燥速度を速め、乾燥工程の工程時間を短縮することができる。
なお、この実験において乾燥後の素体保護膜50を観察結果、乾燥後の固定分が80%以下である場合、後述する「くっつき」が発生し、また固形分が90%程度であると、良好な膜質の素体保護膜50が得られるものの素体保護膜50の表面にクラックが発生することが分かった。
したがって、乾燥工程においては、固定分が80%から90%の範囲となるように乾燥することが好ましい。
(くっつき)
「くっつき」は、塗布工程において、ドラム203に複数の素体を投入してスプレー塗布した際に、素体10の素体保護膜50同士が接着する現象であり、素体保護膜50の品質低下の要因になる。発明者は、ナノシリカをフィラーとした場合に、当該ナノシリカのシリカ粒子の粒子径を変えることで、塗布工程中の「くっつき」が抑えられることを実験によって見出した。
図31は、ナノシリカのシリカ粒子の平均粒径と、くっつき発生率の実験結果を示す図である。
この実験では、保護膜材料として2つのサンプル1、2を作成した。
サンプル1は、樹脂種にエポキシ樹脂、溶剤種にPGM、フィラー種にナノシリカを用いた保護膜材料であり、サンプル2は、樹脂種にエポキシ樹脂、溶剤種にMEK、フィラー種にナノシリカを用いた保護膜材料である。サンプル1、2のいずれも、ナノシリカの含有量は200phrとした。
そして、上記塗布工程により、それぞれのサンプル1、2を用いて素体10に素体保護膜50を塗膜した後、上記ワーク取り出し工程において、ドラム203から素体10を取り出したときに互いに接着状態の素体10の個数を計数することで、くっつき発生率を求めた。
図31に示されるように、シリカ粒子の平均粒径が小さくなるほど、くっつき発生率が低下することがわ分かる。
溶媒種にMEKを用いたサンプル2と、溶剤種にPGMを用いたサンプル1とを比較すると、シリカ粒子の平均粒径が同じ場合、くっつき発生率はサンプル2の方が低いことが分かる。
またサンプル2については、シリカ粒子の平均粒径が45nm以下になると、くっつき発生率が顕著に低下することが分かる。
サンプル1、2のいずれにおいても、シリカ粒子の平均粒径が12nm程度まで小さくなると、くっつき発生率が概ねゼロまで抑えられる。
しかしながら、シリカ粒子の平均粒径が12nmである場合、サンプル1、2のいずれにおいても、形成後の素体保護膜50の表面に、図32に示すクラックの発生が観察された。したがって、シリカ粒子の平均粒径は、12nmよりも大きいことが好ましく、クラックの発生がより確実に抑えられる15nm以上であることがより好ましい。
また、シリカ粒子の平均粒径が75nmを超えて大きくなると保護膜材料にフィラーの沈殿が顕著に生じることが観察された。この保護膜材料が塗膜に用いられると、仮にくっつきが生じなかったとしても、均一な素体保護膜50が得られない。したがって、シリカ粒子の平均粒径は、保護膜材料に沈殿が生じない粒子径である75nm以下であることが好ましい。
なお、平均粒径が15nmから75nmのシリカ粒子(シリカ粉)を、十分な乾燥速度が得られる含有量(150phrから250phr)だけ含む保護膜材料を用いて素体保護膜50を形成した場合、形成後の素体保護膜50においては、樹脂に対するシリカ粒子の重量比が概ね150%から250%となる。
換言すれば、かかる重量比の素体保護膜50が形成されている場合には、速い乾燥速度で、かつ「くっつき」も発生することなく素体保護膜50が形成されたことを示し、高品質な素体保護膜50が得られていると言える。
(めっき飛び)
図33は、素体保護膜50の厚みを変えて「めっき飛び」の数を計測した結果を示す図である。
「めっき飛び」とは、素体10の表面において素体保護膜50が塗布されていない箇所が発生し、意図しない箇所にめっきが形成されることである。例えば素体研削によって軟磁性粉の大粒子が脱粒することで、素体10の表面に比較的大きな凹みが生じていた場合には、当該凹みに保護膜材料が十分に入り込めずに「めっき飛び」が発生する要因となる。
本計測では、素体10における天面14及び実装面12と、第1側面16及び第2側面18とが交差する稜線部分の全辺について、所定計測間隔ごとに「めっき飛び」の有無を確認し、「めっき飛び」が生じている箇所の数を計数した。
同図から分かるように、素体保護膜50の厚みが小さくなると、多くの「めっき飛び」が発生するものの、厚みが5μm以上であれば「めっき飛び」の数は顕著に減少し、10μ以上であれば「めっき飛び」は生じていないことが分かる。
したがって、素体保護膜50の厚みは10μm以上であることが好ましく、このような厚みとすることで、「めっき飛び」の発生を抑え素体10の全表面を素体保護膜50によって確実に保護することができる。
ただし、インダクタ1の素体10のサイズが規定の場合には、素体保護膜50の厚みが大きくなると、その分、素体保護膜50を除いた部分の素体10のサイズが縮小しコイル30も小さくなることからインダクタ1の性能が低下する。
また、インダクタ1は、素体保護膜50を除去した箇所に外部電極20が形成されるため、外部電極20よりも素体保護膜50が厚いと、外部電極20が素体保護膜50の表面から突出せず、外部電極20と基板との接触性が悪くなる。
そこで、素体保護膜50の厚みは、少なくとも外部電極20の厚み以下であることが好ましい。本実施例では、高さHが0.7±0.1mm、幅Wが1.2±0.2mm、長さLが2.0±0.2mmのサイズのインダクタ1の場合、外部電極20の厚みは、0.58mmから0.75mmの範囲であり、高さHが0.55±0.1mm、幅Wが1.2±0.2mm、長さLが2.0±0.2mmのサイズのインダクタ1の場合、外部電極20の厚みは、0.58mm~0.75mmであり、0.43から0.60mmの範囲である。素体保護膜50は、かかる外部電極20の厚み以下の範囲の中でも、高性能のインダクタ1を得るために30μm以下であることがより好ましい。
なお、外部電極20の厚みは次のように測定した。すなわち、インダクタ1において、天面14の4隅の角をそれぞれ対角に結んだ交点部分と交差し、第2側面18と平行に素体10を切断し、素体10の実装面12に形成された外部電極20の長さ方向を4等分した点の膜厚をマイクロスコープを用いて1000倍に拡大して測定し、それぞれの平均を第1測定値として求めた。そして当該第1測定値を10個のインダクタ1について求め、それぞれの第1測定値の平均を、外部電極20の厚みとした。マイクロスコープには株式会社キーエンス社製の型番VHX-7000を用いている。
(脱粒対策)
成型体である素体10の表面が研削加工されている場合、上述の通り、研削時に軟磁性粉の粒子が少なからず脱粒する。本実施例では、平均粒径が大きな大粒子と平均粒径が小さな小粒子とから成る軟磁性粉が用いられているため、大粒子の脱粒によって比較的深い凹みが研削面(本実施例では第2側面18)に生じる。
表19は、素体保護膜50の厚みと、脱粒によって生じた凹みの深さと、防さび性能との実験結果を示す図である。
この実験の保護膜材料には図31に示す実験と同じサンプルを用いた。素体10の成型に用いる軟磁性粉には、大粒子の平均粒径が21μmから28μmのものを用いている。
素体保護膜50の厚みは次のように測定した。すなわち、インダクタ1において、天面14の4隅の角をそれぞれ対角に結んだ交点部分と交差し、第2側面18と平行に素体10を切断し、素体10の上下の第2側面18において、素体10の長さLを4等分した点のそれぞれにおいて素体保護膜50の膜厚をマイクロスコープを用いて1000倍に拡大して測定し、それぞれの平均を第2測定値として求めた。そして当該第2測定値を10個のインダクタ1について求め、それぞれの第2測定値の平均を厚みの測定値としている(平均厚み)。マイクロスコープには株式会社キーエンス社製の型番VHX-7000を用いている。
防さび性は、所定の製品品質基準に防さび性が満たないものを「NG」、満足するものを「G」としている。
Figure 2022060772000021
表19に示されるように、脱粒による凹みの深さに対して素体保護膜50の厚みが小さいと防さび性が悪く、素体保護膜50の品質が十分でないことが分かり、凹みの深さに対する素体保護膜50の厚みの比が0.4以上であると十分な防さび性が得られることが分かる。凹みの深さは、概ね大粒子の平均粒径に相当することから、素体保護膜50の厚みが大粒子の平均粒径の0.4倍以上であれば、表面に脱粒が生じていても十分な品質の素体保護膜50が得られる。
以上説明したように、本実施例のインダクタ1は、軟磁性粉および樹脂を含んで成る素体10と、素体10に埋設されたコイル30と、素体10に設けられた外部電極20とを有し、素体10の表面に素体保護膜50を有するインダクタ1であって、素体保護膜50は、厚みが10μm以上であり、シリカ粒子と樹脂とを含み、シリカ粒子の平均粒径は15~75nmであり、樹脂に対するシリカ粒子の重量比は150~250%である。
素体保護膜50の厚みが10μm以上であることで、「めっき飛び」の発生を抑え素体10の全表面を素体保護膜50によって確実に保護することができる。
素体保護膜50がシリカ粒子を含有することで、光沢が低減され、光学的手法を用いた外観検査時の誤判定を防止できる。
また素体保護膜50において、シリカ粒子の平均粒径が15~75nmであり、樹脂に対するシリカ粒子の重量比は150~250%であることで、素体保護膜形成において「くっつき」による劣化を受けていない高品位な素体保護膜50が得られる。
本実施例において、素体保護膜50の厚みは外部電極20の厚み以下である。
これにより、外部電極20が素体保護膜50の厚みに阻害されることなく、基板の回路と良好に接触できる。
本実施例において、素体保護膜50は、カーボンブラックを含有する。
これにより、外部電極20を形成するために素体保護膜50をレーザによって除去する際の加工性が高められる。
本実施例において、素体保護膜50は、フェノキシ樹脂を含有する。
これにより、素体10の靱性を高めることができる。
本実施例において、素体保護膜50は、ノボラック樹脂を含有する。
これにより、素体10の耐熱性を高めることができる。
本実施例において、素体保護膜50の厚みは大粒子の平均粒径の0.4倍以上である。
これにより、表面に脱粒が生じていても十分な品質の素体保護膜50が得られる。
なお、本実施例において、酸化チタンや酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムをフィラー種に用いてもよい。
1 インダクタ
10 素体
10S 領域
12 実装面
14 天面
16 第1側面
18 第2側面
20 外部電極
30 コイル
32 巻回部
32L 巻線部
34 引出部
40 コア
40K エアギャップ(磁気ギャップ)
50 素体保護膜
60 絶縁被覆材
81 第1軟磁性粒子
81A 粒子核
81B 酸化膜
81C 絶縁膜
82 第2軟磁性粒子
82A 粒子核
82B 絶縁膜
H 高さ
W 幅
L 長さ
P 加圧力
CW 巻回部の巻幅
KL エアギャップの長さ
KW エアギャップの幅

Claims (5)

  1. 軟磁性金属を含む粒子核と前記粒子核の表面に位置する絶縁膜とで構成された軟磁性粒子を含む軟磁性材料であって、
    前記粒子核は、前記絶縁膜との間に前記軟磁性金属の酸化物で構成される酸化膜を有し、
    前記粒子核は、
    Crを含まないか又は1.5重量%以下のCrを含み、
    酸素の含有量が重量比900ppm以上2800ppm以下である、
    軟磁性材料。
  2. 前記粒子核に含まれる軟磁性金属は、鉄基軟磁性金属である、
    請求項1に記載の軟磁性材料。
  3. 前記鉄基軟磁性金属は、非晶質である、
    請求項2に記載の軟磁性材料。
  4. 軟磁性金属を含み且つ前記粒子核より平均粒径が小さい他の粒子核で構成された他の軟磁性粒子を更に含む、
    請求項1ないし3のいずれか一項に記載の軟磁性材料。
  5. 請求項1ないし4のいずれか一項に記載の軟磁性材料を用いて構成される金属磁性体と、
    巻回された導線と、
    を有するインダクタ。
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