JP2022056068A - スペーサー及びタイヤ加硫金型 - Google Patents
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Abstract
【課題】タイヤ加硫成型後の外観不良を抑制できるスペーサー及びタイヤ加硫金型を提供する。【解決手段】タイヤの外表面に標識又は模様を転写形成するための長手形状のプレートと、タイヤ加硫金型に形成されてプレートが装着される装着溝の底面と、の間に挟まれて使用される、弾性材料で形成されたスペーサーであって、装着溝の側壁に沿うように形成された、第1及び第2の長手方向部材と、第1の長手方向部材の第1端に接続される第1の短手方向分割片と、第2の長手方向部材の第1端に接続される第2の短手方向分割片と、第1の長手方向部材の第2端及び第2の長手方向部材の第2端に接続される短手方向部材と、を備え、第1の短手方向分割片と第2の短手方向分割片を近付けるように弾性変形可能な弾性部を有する。【選択図】図6
Description
本開示は、スペーサー及びタイヤ加硫金型に関する。
従来より、タイヤ成型面の装着溝にプレート(「セリアルプレート」又は「ステンシルプレート」とも呼ばれる)を固定したタイヤ加硫金型を使用してタイヤを加硫成型し、タイヤの外表面に凹凸状の標識を形成する方法が知られている。ここで、プレートを装着溝に固定する方法として、ねじを使用する方法が知られている(特許文献1参照)。
プレートは、その両端がねじによって装着溝に固定されるが、プレートと装着溝との間に隙間があると、その隙間からゴムが流れ込み、加硫成型後のタイヤにピンチやバリが形成される。バリは、タイヤ表面に余分な被膜が形成されたものであり、ピンチは、タイヤの表面に生じる意図しない段差である。バリやピンチは、タイヤの外観不良の原因となる。
本開示の目的は、タイヤ加硫成型後の外観不良を抑制できるスペーサー及びタイヤ加硫金型を提供することである。
本開示のスペーサーは、タイヤの外表面に標識又は模様を転写形成するための長手形状のプレートと、タイヤ加硫金型に形成されて前記プレートが装着される装着溝の底面と、の間に挟まれて使用される、弾性材料で形成されたスペーサーであって、
前記装着溝の側壁に沿うように形成された、第1及び第2の長手方向部材と、前記第1の長手方向部材の第1端に接続される第1の短手方向分割片と、前記第2の長手方向部材の第1端に接続される第2の短手方向分割片と、前記第1の長手方向部材の第2端及び前記第2の長手方向部材の第2端に接続される短手方向部材と、を備え、
前記第1の短手方向分割片と前記第2の短手方向分割片を近付けるように弾性変形可能な弾性部を有するものである。
前記装着溝の側壁に沿うように形成された、第1及び第2の長手方向部材と、前記第1の長手方向部材の第1端に接続される第1の短手方向分割片と、前記第2の長手方向部材の第1端に接続される第2の短手方向分割片と、前記第1の長手方向部材の第2端及び前記第2の長手方向部材の第2端に接続される短手方向部材と、を備え、
前記第1の短手方向分割片と前記第2の短手方向分割片を近付けるように弾性変形可能な弾性部を有するものである。
また、本開示のタイヤ加硫金型は、タイヤの外表面に標識又は模様を転写形成するための長手形状のプレートと、
前記プレートが装着される装着溝と、
前記プレートと前記装着溝の底面との間に配置される上記のスペーサーと、
前記プレートと前記スペーサーを前記装着溝へ固定するための締結部材と、を備え、
前記プレートは、前記装着溝の底面へ向かって突出する凸状膨出部を有し、
前記スペーサーは、前記第1及び第2の長手方向部材が前記凸状膨出部を挟んで配置され且つ前記装着溝の側壁へ加圧接触された状態で、前記装着溝に装着されるものである。
前記プレートが装着される装着溝と、
前記プレートと前記装着溝の底面との間に配置される上記のスペーサーと、
前記プレートと前記スペーサーを前記装着溝へ固定するための締結部材と、を備え、
前記プレートは、前記装着溝の底面へ向かって突出する凸状膨出部を有し、
前記スペーサーは、前記第1及び第2の長手方向部材が前記凸状膨出部を挟んで配置され且つ前記装着溝の側壁へ加圧接触された状態で、前記装着溝に装着されるものである。
以下、タイヤ加硫金型における一実施形態について、図1~図7を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
図1を参照しながら、タイヤの加硫成型に用いられるタイヤ加硫金型について説明する。図1は、タイヤ子午線断面に沿ったタイヤ加硫金型10(以降、金型10という)の断面を示す。この金型10は型閉め状態にある。タイヤTは、タイヤ幅方向を上下に向けてセットされる。図1において、左方向はタイヤ径方向外側、右方向はタイヤ径方向内側である。
金型10は、タイヤTのトレッドを成型するトレッド型部11と、タイヤTのサイドウォールを成型する一対のサイド型部12,13と、タイヤTのビードが嵌合される一対のビードリング14,15とを備える。金型10は、キャビティ16にセットされたタイヤTの外表面に接するタイヤ成型面1を備える。タイヤ成型面1は、トレッド型部11の内面、サイド型部12,13の内面、及び、ビードリング14,15の内面を含む。図示を省略しているが、トレッド型部11の内面には、タイヤTのトレッドにトレッドパターンを形成するための凹凸部が設けられている。
トレッド型部11の内面の材料としては、アルミニウム材が例示される。このアルミニウム材は、純アルミ系の材料のみならずアルミニウム合金を含む概念であり、例えばAl-Cu系、Al-Mg系、Al-Mg-Si系、Al-Zn-Mg系、Al-Mn系、Al-Si系が挙げられる。サイド型部12,13の内面及びビードリング14,15の内面の材料としては、一般構造用圧延鋼材(例えばSS400)などの鋼材が例示される。
金型10は、キャビティ16にセットされたタイヤTの外表面に接するタイヤ成型面1と、タイヤ成型面1に設けられた装着溝2と、タイヤTの外表面に凹凸を形成する凹凸形成部を有し、装着溝2に装着されるプレート3とを備える。装着溝2は、タイヤ成型面1の一部を局所的に窪ませることにより設けられている。本実施形態において、装着溝2は、タイヤ成型面1であるサイド型部12の内面に設けられている。
図2は、図1のX矢視平面図であり、図1の下側に位置するサイド型部12の内面における、装着溝2に嵌め込まれたプレート3が示されている。図2では、左右方向がタイヤ周方向に相当し、上方向がタイヤ径方向外側、下方向がタイヤ径方向内側である。
装着溝2及びプレート3は、タイヤ周方向の長さがタイヤ径方向の長さよりも長い長手形状を有する。本実施形態において、装着溝2及びプレート3の長手方向LDはタイヤ周方向に沿う方向であり、短手方向WDはタイヤ径方向に沿う方向である。本実施形態において、装着溝2及びプレート3は、タイヤ周方向に沿って円弧状に湾曲した形状であるが、これに限られず、長手方向LDが直線的に延びた形状でもよい。
図3は、図2における線C1上の断面図を示している。図4は、図2における線C1上の断面において、プレート3を装着溝2に装着する前の状態を示している。なお、線C1は、装着溝2又はプレート3の短手方向WDにおける中心を通る線である。図3及び図4において、左右方向が装着溝2及びプレート3の長手方向LDに相当する。図5は、プレート3を装着溝2に装着する前の斜視図である。
装着溝2は、長手方向LDに延びる一対の第1長手方向側壁21及び第2長手方向側壁22を有する。第1長手方向側壁21及び第2長手方向側壁22は、何れもタイヤ径方向外側に凸となる円弧状を呈する。第1長手方向側壁21及び第2長手方向側壁22は、平面視で何れも長手方向LDに沿って湾曲した形状である。また、装着溝2は、一対の第1長手方向側壁21及び第2長手方向側壁22の端部同士を接続する一対の第1短手方向側壁23及び第2短手方向側壁24を有する。第1短手方向側壁23及び第2短手方向側壁24は、平面視で半円弧状を呈する。また、装着溝2は、平坦な底面20を有する。
装着溝2の短手方向WDの幅W2は、長手方向LDに一定である。本開示において、「一定」とは、厳密な意味での一定に限るものではなく、厳密に一定である場合だけでなく、±5%以下の変動がある場合も含む(以下も同様)。
プレート3は、タイヤの外表面に凹凸を形成可能な領域である凹凸形成部5を有する。タイヤの外表面に形成される凹凸は、例えば、タイヤサイズやロードインデックス、メーカー名、製造年週などを表示した文字や記号等からなる標識、又は、模様やデザインを示す。未加硫のタイヤが、金型10におけるタイヤ成型面1の装着溝2に装着されたプレート3に押し当てられ、凹凸形成部5の凹凸が加硫成型後のタイヤ表面に転写される。図2では、「TT」という文字列からなる標識が凹部34で形成される例を示す。凹部34の詳細は後で説明する。
プレート3は、装着溝2にねじ4(締結部材に相当する)を介して着脱自在に装着される。プレート3が製造年週を表す標識である場合などには、定期的にプレート3が取り換えられる。
本開示において、ねじ4とは、螺旋状の溝が設けられた棒と当該棒の一端に設けられた頭部とを有する締結要素全般を指し、ボルトやビスを含むものである。本実施形態では、ねじ4の頂面41bには、プラスドライバの先端を挿入するための十字の窪みを有するが、これに限られない。例えば、ねじ4の頂面41bに、マイナスドライバの先端を挿入するためのすり割り状の窪みや、六角レンチの先端を挿入するための六角形状の窪みを有していても、構わない。また、係る窪みを有していなくてもよく、例えば、ねじ頭部側から見たときのねじ頭部を六角形状に形成し、該六角形状のねじ頭部を回すようにしてもよい。
本実施形態のねじ4は、平頭ねじである。図3及び図4に示すように、平頭ねじは、頭部41の底面41aがねじ軸方向に対して垂直の平坦面をなす。ねじ4の頭部41の厚みは、0.5~1.5mmが好ましい。締結時において、頭部41の底面41aは、タイヤ成型面1よりも装着溝2の底面20に近い側に位置する。また、ねじ4の頭部41は、タイヤ成型面1よりもキャビティ16側へ突出し、頭部41の頂面41bは、タイヤ成型面1よりもキャビティ16側に位置する。頭部41のタイヤ成型面1からの突出量T41(図3参照)は、1mm以下が好ましい。突出量T41が大きくなると、加硫成型時にサイドウォールの表層ゴムが局所的に薄くなり、オゾンに起因するクラック発生などタイヤ耐久性に影響を及ぼすおそれがある。
ねじ4の頂面41bに設けられた窪みによって形成されるゴム隆起部の高さは、プレート3の凹部34によって形成される標識の高さ以下が好ましい。これにより、形成される標識の視認性を向上できる。
また、ねじ4の頭部41の直径は、プレート3の短手方向WDの幅W3の50~100%であるのが好ましい。頭部41の直径が小さいとプレート3を保持する力が弱くなり、頭部41の直径が大きいと、装着溝2内に頭部41が収まらず、プレート3とねじ4の接触性悪化によりプレート3を保持する力が損なわれる。
プレート3の長手方向LDの長さL3は、装着溝2の長手方向LDの長さL2より僅かに小さい程度である。なお、プレート3の長さL3及び装着溝2の長さL2は、線C1上での長さである。
プレート3の短手方向WDの幅W3は、装着溝2の短手方向WDの幅W2より僅かに小さい程度である。そのため、装着溝2とプレート3との隙間からゴムが入り込みにくい。なお、装着溝2の長手方向LDの長さL2は、装着溝2の短手方向WDの幅W2の5倍以上とするのが好ましい。
プレート3は、長手方向LDの両端部に、ねじ4を取り付けるための貫通孔39を有している。貫通孔39は丸穴である。ねじ4は、貫通孔39を介して、装着溝2の底面20にあるねじ穴25に螺着される。貫通孔39の穴径は、ねじ4の直径に対し0.5~1.0mm程度大きい。装着溝2の溝深さD2は、例えば、1.2mmに設定される。
プレート3は、キャビティ16に対向する正面31と、装着溝2の底面20に対向する背面32と、を有する。加硫成型時には、プレート3の正面31にタイヤTの外表面が押し当てられ、凹凸形成部5によって標識等がタイヤTの外表面に転写形成される。正面31及び背面32は、凹凸形成部5の凹凸を除いて平面状である。正面31は、タイヤ成型面1よりも装着溝2の底面20に近い。
本実施形態では、正面31に、タイヤの外表面に凸状の標識を形成するための凹部34が設けられている。凹部34は、例えば、正面31側からのエンボス加工(浮き出し工法)により陥没形成される。背面32には、凹部34に対応した凸部36(凸状膨出部に相当する)がある。凸部36は、凹部34を陥没形成したことに伴って形成される。したがって、凸部36は、プレート3の背面32側から凹部34を見たものとなる。
本実施形態におけるプレート3は、タイヤの外表面に凸状の標識を形成するためのものであるが、タイヤの外表面に凹状の標識や模様を形成するための凹凸部をさらに備えてもよい。
プレート3は、軟鋼若しくは極軟鋼の板材で形成するとよい。軟鋼若しくは極軟鋼としては、JIS G3141に規定の冷間圧延鋼板及び鋼帯が例示される。プレート3の厚みT3(図4参照)は、加工の容易性等の観点から、例えば、1mm以下が好ましく、0.6mm以下がより好ましい。厚みT3は、プレート3に適度な強度を付与するなどの観点から、0.3mm以上が好ましい。
装着溝2の底面20と、プレート3の凹凸形成部5を除く背面32との間に、スペーサー6が位置する。スペーサー6は、プレート3の縁に沿って配置される。スペーサー6は、プレート3を載置する底面20を部分的に高くするために使用される。スペーサー6の厚みT6(図4参照)は、装着溝2の溝深さD2よりも小さい。また、スペーサー6の厚みT6は、プレート3の厚みT3よりも大きい。
スペーサー6がプレート3の縁を支持することで、プレート3の座りを安定させ、また、加硫成型時においてもゴムがプレート3の縁をスペーサー6に押さえつけるため、プレート3と装着溝2との間の隙間の発生を防いで、その隙間にゴムが流れ込んでバリが発生することを抑制できる。また、スペーサー6によりプレート3の縁が固定され、タイヤ成型面1とプレート3の正面31の段差を減らすことができるため、ゴムが流れ込む空間が減り、ピンチの発生を抑制することができる。
スペーサー6の厚みT6と凸部36の突出量T36(図4参照)は、同程度に設定される。スペーサー6の厚みT6と凸部36の突出量T36が同程度であれば、タイヤ加硫成型時、スペーサー6及び凸部36の先端36aのみがタイヤ加硫成型時に付与される成型圧力によって装着溝2の底面20に当接する。スペーサー6の厚みT6が凸部36の突出量T36より僅かに小さい場合、加硫成型前はプレート3の背面32がスペーサー6から僅かに離れているが、加硫成型時の成型圧力によりプレート3が変形することで、プレート3の背面32とスペーサー6との接触が実現される。一方、スペーサー6の厚みT6が凸部36の突出量T36より僅かに大きい場合、加硫成型前は凸部36の先端36aが装着溝2の底面20から僅かに離れているが、加硫成型時の成型圧力によりプレート3が変形することで、凸部36の先端36aと装着溝2の底面20との接触が実現される。一方、プレート3が加硫成型時の成型圧力によって大きく撓んで、凸部36の先端36a以外の箇所が装着溝2の底面20に接触することはない。このようにスペーサー6及び凸部36の先端36aのみがタイヤ加硫成型時に付与される成型圧力によって装着溝2の底面20に当接するように構成することで、スペーサー6とプレート3の接触圧力を高めて、両者の界面からのゴム流入を抑制することができる。その結果、加硫成型後のタイヤにおける標識の識別性を確保し、外観不良を抑制できる。
スペーサー6の厚みT6は、凸部36の突出量T36の85%~125%であるのが好ましい。スペーサー6の厚みT6がこの範囲であれば、加硫成型時に凸部36の先端36aと装着溝2の底面20との接触によってスペーサー6とプレート3の接触が損なわれることを防止できる。なお、加硫成型時の成型圧力によりプレート3が変形するため、スペーサー6の厚みT6が凸部36の突出量T36の100%未満であっても加硫成型時にスペーサー6とプレート3の接触は実現できるが、スペーサー6の厚みT6は、凸部36の突出量T36の100%以上であるのがより好ましい。厚みT6は、例えば、0.6mm以上であるとよく、0.9mm以下であるとよい。本実施形態のスペーサー6の厚みT6は、0.8mmである。
また、凸部36の先端36aと装着溝2の底面20との間隔は、0.1mm以下が好ましく、0.05mm以下がより好ましい。凸部36の先端36aと装着溝2の底面20との間に0.1mmを越える隙間がある場合、加硫成型時の成型圧力によりプレート3が過度に装着溝2に陥没することとなり、プレート3の外縁が浮き上がり、スペーサー6との接触性が悪化する。
スペーサー6は、硬さHV300以上、及び引っ張り強さ900N/mm2以上の特性を持つように処理された鉄系金属、例えばステンレスで形成されるのが好ましい。ここで、硬さは、JIS Z2244に準拠した硬さ試験により測定されるものを意味する。また、引っ張り強さは、JIS Z22241に準拠した引張試験により測定されるものを意味する。スペーサー6がばね性を有するようにするため、スペーサー6は弾性に富む材料で形成される。
図6は、図4で示されたスペーサー6を平面図で示している。図6(a)は、装着溝2に非装着の状態(以下、非装着状態ともいう)のスペーサー6の平面図であり、図6(b)は装着溝2に装着された状態(以下、装着状態ともいう)のスペーサー6の平面図である。図7は、図6(a)に示すスペーサー6のVII領域拡大図である。
スペーサー6は、長手方向LDに延びる一対の第1長手方向部材61及び第2長手方向部材62と、第1長手方向部材61の第1端61a及び第2長手方向部材62の第1端62aに接続される第1短手方向部材63と、第1長手方向部材61の第2端61b及び第2長手方向部材62の第2端62bに接続される第2短手方向部材64と、を有する。第1長手方向部材61及び第2長手方向部材62は、何れもタイヤ径方向外側に凸となる円弧状を呈する。第1長手方向部材61及び第2長手方向部材62は、平面視で何れも長手方向LDに沿って湾曲した形状である。
第1短手方向部材63は、短手方向WDに第1短手方向分割片631と第2短手方向分割片632に分割されている。第1短手方向分割片631は、第1長手方向部材61の第1端61aに接続され、第2短手方向分割片632は、第2長手方向部材62の第1端62aに接続されている。第1短手方向分割片631と第2短手方向分割片632は、非装着状態では離れており、装着状態では接する又は僅かな隙間を空けてほぼ接する。このように、本実施形態では、第1短手方向分割片631と第2短手方向分割片632が互いに離れていても接していても、第1短手方向分割片631と第2短手方向分割片632をまとめて第1短手方向部材63と称する。
第1長手方向部材61の第2端61bと第2長手方向部材62の第2端62bは、第2短手方向部材64に接続されている。そして、第1長手方向部材61及び第2長手方向部材62は、第2短手方向部材64に接続される第2端61b及び第2端62bを支点として、非装着状態と装着状態との間を回動可能である。このとき、第2端61b,62bが「弾性部」として機能する。
図6(b)に示す装着状態において、スペーサー6は、中央に中空領域60を有する枠形状を呈する。中空領域60は、プレート3の凸部36を取り巻く。装着状態において、第1長手方向部材61は、装着溝2の一対の第1長手方向側壁21及び第2長手方向側壁22のうちタイヤ径方向外側の第1長手方向側壁21に接触され、第2長手方向部材62は、装着溝2の一対の第1長手方向側壁21及び第2長手方向側壁22のうちタイヤ径方向内側の第2長手方向側壁22に接触される。なお、第1長手方向部材61が第1長手方向側壁21に接触するとは、第1長手方向側壁21の長手方向LDの全体に接触する形態のみならず、第1長手方向側壁21の長手方向LDの一部に接触する形態も含む。例えば、第1長手方向部材61の長手方向LDの両端が第1長手方向側壁21から僅かに離れていてもよい。同様に、第2長手方向部材62が第2長手方向側壁22に接触するとは、第2長手方向側壁22の長手方向LDの全体に接触する形態のみならず、第2長手方向側壁22の一部に接触する形態も含む。
装着状態において、スペーサー6の長手方向LDの長さL6は、装着溝2の長手方向LDの長さL2よりも僅かに小さくなるように形成される。すなわち、第1短手方向部材63と第1短手方向側壁23との間、又は第2短手方向部材64と第2短手方向側壁24との間には僅かな隙間がある。なお、スペーサー6の長手方向LDの長さL6は、プレート3の長手方向LDの長さL3(図2参照)よりも僅かに小さい。
スペーサー6は、弾性材料で形成されており、装着溝2に装着される際、図6(a)に示す非装着状態から、装着溝2の幅W2より小さい幅となるように第1長手方向部材61と第2長手方向部材62を互いに近付ける向きに圧縮した状態へ弾性変形された後に、装着溝2に挿入される。すなわち、スペーサー6は、第1長手方向部材61と第2長手方向部材62が互いに遠ざかる向きに付勢された状態にて装着溝2へ装着される。これにより、スペーサー6の装着溝2への装着及び固定が容易となり、またスペーサー6の脱落を抑制できる。さらに、装着状態において、スペーサー6の第1長手方向部材61と第2長手方向部材62が弾性復元力によって装着溝2の第1長手方向側壁21と第2長手方向側壁22にそれぞれ加圧接触されるため、第1長手方向部材61と第1長手方向側壁21との間、及び第2長手方向部材62と第2長手方向側壁22との間からのゴム流入を抑制することができる。
図6(a)に示す非装着状態のスペーサー6において、タイヤ径方向外側の第1長手方向部材61の曲率半径R61は、タイヤ径方向内側の第2長手方向部材62の曲率半径R62より大きい。ここで、曲率半径R61は、第1長手方向部材61の短手方向WD外側の外縁の曲率半径であり、曲率半径R62は、第2長手方向部材62の短手方向WD外側の外縁の曲率半径である。
第1長手方向部材61の曲率半径R61は、装着溝2の第1長手方向側壁21の曲率半径と同じであり、かつ第2長手方向部材62の曲率半径R62は、装着溝2の第2長手方向側壁22の曲率半径と同じである。よって、第1長手方向部材61と第2長手方向部材62は、装着状態と非装着状態との間を、形状をほとんど変化させることなく回動する。
第1長手方向部材61の幅W61及び第2長手方向部材62の幅W62は、長手方向LDに一定である。第1長手方向部材61の幅W61及び第2長手方向部材62の幅W62を一定とすることで、第1長手方向部材61と第1長手方向側壁21の接触圧、及び第2長手方向部材62と第2長手方向側壁22の接触圧を均一にすることができる。なお、第1長手方向部材61の幅W61と第2長手方向部材62の幅W62は等しいのが好ましい。第1長手方向部材61の幅W61及び第2長手方向部材62の幅W62は、2mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましく、本実施形態では例えば1.2mmである。
また、装着状態において、中空領域60の短手方向WDの幅W60、すなわち第1長手方向部材61と第2長手方向部材62の短手方向WDにおける間隔は、長手方向LDに一定であるのが好ましい。
第1短手方向部材63は、短手方向WDに第1短手方向分割片631と第2短手方向分割片632に分割されている。第1短手方向部材63は、全体として半円弧状である。第1短手方向分割片631及び第2短手方向分割片632の外縁63a,63aの形状は、装着溝2の第1短手方向側壁23の形状と同様の形状を有するとよい。
第1短手方向分割片631及び第2短手方向分割片632は、工具の先端が挿入される穴65をそれぞれ有する。工具としては、例えば穴用のスナップリングプライヤーが用いられる。スナップリングプライヤーの先端をそれぞれの穴65に挿入し、グリップを握ることでツメが閉じ、第1短手方向分割片631及び第2短手方向分割片632同士を近付けることができる。第1短手方向分割片631と第2短手方向分割片632を近付けた状態、すなわち第1長手方向部材61と第2長手方向部材62を近付けた状態にすることで、スペーサー6を装着溝2へ容易に挿入することができる。
第1短手方向分割片631及び第2短手方向分割片632の内縁63b,63bは、内側へ向かって突出する一対の突起63p,63pを有する。第1短手方向分割片631及び第2短手方向分割片632の内縁63b,63bと一対の突起63p,63pで形成される長孔661は、ねじ4を取り付けるための取付孔となる。
第2短手方向部材64は半円弧状である。第2短手方向部材64の外縁64aの形状は、装着溝2の第2短手方向側壁24の形状と同様の形状を有するとよい。
第2短手方向部材64の内縁64bは、内側へ向かって突出する一対の突起64p,64pを有する。対向する突起64p,64pの間には隙間S64が設けられている。また、スペーサー6には長手方向LDに延びる切欠き69が形成されており、一対の突起64p,64pは、第1長手方向部材61及び第2長手方向部材62から離れている。第2短手方向部材64と一対の突起64p,64pとは、全体としてC字状を呈する。第2短手方向部材64の内縁64bと一対の突起64p,64pで形成される長孔662は、ねじ4を取り付けるための取付孔となる。
スペーサー6の装着時の位置ずれ、及び装着溝2のねじ穴25の加工精度を考慮し、長孔661,662は、長辺寸法が短辺寸法に対し0.5~2.0mm拡大した形状とするのが好ましい。長孔661,662の短辺寸法は、ねじ4の直径に対し0.5~1.0mm程度大きい。
第1短手方向部材63に設けられた一対の突起63p,63pと第2短手方向部材64に設けられた一対の突起64p,64pとに挟まれた領域が、上記の中空領域60である。図6(b)に示すように、第1長手方向部材61の長さL61及び第2長手方向部材62の長さL62は、何れも中空領域60の長さL60を超える。これにより、第1長手方向部材61の長さL61及び第2長手方向部材62の長さL62を確保して、スペーサー6の装着溝2への固定力を強化することができる。
第1短手方向部材63の幅W63及び第2短手方向部材64の幅W64は、例えば2.5mmである。また、第1短手方向部材63の幅W63及び第2短手方向部材64の幅W64は、第1長手方向部材61の幅W61及び第2長手方向部材62の幅W62の2倍以上であるのが好ましい。これにより、第1長手方向部材61及び第2長手方向部材62が第2端61b,62bを支点として回動しやすくなる。
第2短手方向部材64の短手方向WDの中央部には、第2短手方向部材64の内縁64bから外縁64aへ向かって長手方向LDに延びる切込み67が形成されている。切込み67を形成することで、切込み67と第2短手方向部材64の外縁64aとの間に幅狭領域68が形成される。これにより、第2短手方向部材64が幅狭領域68を支点として弾性変形しやすくなり、スペーサー6を装着する際、第2短手方向部材64を装着溝2に挿入しやすい。
切込み67は、一定幅で延びるスリットである。ただし、切込み67の形状は一定幅のスリットに限定されず、不等幅のスリットでもよい。また、本実施形態の切込み67の幅W67は、一対の突起64p,64pの隙間S64と同じとなっているが、これに限定されない。
以上のように、本実施形態に係るスペーサー6は、タイヤの外表面に標識又は模様を転写形成するための長手形状のプレート3と、タイヤ加硫金型10に形成されてプレート3が装着される装着溝2の底面20と、の間に挟まれて使用される、弾性材料で形成されたスペーサー6であって、装着溝2の側壁21~24に沿うように形成された、第1及び第2の長手方向部材61,62と、第1の長手方向部材61の第1端61aに接続される第1の短手方向分割片631と、第2の長手方向部材62の第1端62aに接続される第2の短手方向分割片632と、第1の長手方向部材61の第2端61b及び第2の長手方向部材62の第2端62bに接続される短手方向部材64と、を備え、第1の短手方向分割片631と第2の短手方向分割片632を近付けるように弾性変形可能な弾性部を有する。
スペーサー6を用いることで、プレート3の座りを安定させ、また、加硫成型時においてもゴムがプレート3の縁をスペーサー6に押さえつけるため、プレート3と装着溝2との間の隙間にゴムが流れ込んでバリが発生することを抑制できる。また、スペーサー6によりプレート3の縁が固定され、タイヤ成型面1とプレート3の正面31の段差を減らすことができるため、ピンチの発生を抑制することができる。さらに、装着溝2への装着状態において、スペーサー6の第1及び第2の長手方向部材61,62が弾性復元力によって装着溝2の側壁21,22に加圧接触されるため、第1及び第2の長手方向部材61,62と装着溝2の側壁21,22との隙間を無くしてバリ発生を抑制することができる。その結果、タイヤ加硫成型後の外観不良を抑制できる。
また、本実施形態に係るスペーサー6においては、短手方向部材64の短手方向WDの中央部には、短手方向部材64の内縁64bから外縁64aへ向かって長手方向LDに延びる切込み67が形成される、という構成である。
この構成によれば、切込み67と短手方向部材64の外縁64aとの間に幅狭領域68が形成される。これにより、短手方向部材64が幅狭領域68を支点として弾性変形しやすくなり、スペーサー6を装着する際、短手方向部材64を装着溝2に挿入しやすい。
また、本実施形態に係るスペーサー6においては、第1の短手方向分割片631及び第2の短手方向分割片632は、工具の先端が挿入される穴65をそれぞれ有する、という構成である。
この構成によれば、例えば工具としてのスナップリングプライヤーの先端をそれぞれの穴65に挿入し、グリップを握ることでツメが閉じ、第1の短手方向分割片631及び第2の短手方向分割片632同士を近付けることができる。第1の短手方向分割片631と第2の短手方向分割片632を近付けた状態、すなわち第1長手方向部材61と第2長手方向部材62を近付けた状態にすることで、スペーサー6を装着溝2へ容易に挿入することができる。
また、本実施形態に係るスペーサー6においては、硬さHV300以上及び引っ張り強さ900N/mm2以上の特性を持つ鉄系金属で形成される、という構成である。
この構成によれば、スペーサー6に適切な弾性を付与することができる。
また、本実施形態に係るタイヤ加硫金型10は、タイヤの外表面に標識又は模様を転写形成するための長手形状のプレート3と、プレート3が装着される装着溝2と、プレート3と装着溝2の底面20との間に配置される上記何れかのスペーサー6と、プレート3とスペーサー6を装着溝2へ固定するための締結部材4と、を備え、プレート3は、装着溝2の底面20へ向かって突出する凸状膨出部36を有し、スペーサー6は、第1及び第2の長手方向部材61,62が凸状膨出部36を挟んで配置され且つ装着溝2の側壁21,22へ加圧接触された状態で、装着溝2に装着される。
スペーサー6を用いることで、プレート3の座りを安定させ、また、加硫成型時においてもゴムがプレート3の縁をスペーサー6に押さえつけるため、プレート3と装着溝2との間の隙間にゴムが流れ込んでバリが発生することを抑制できる。また、スペーサー6によりプレート3の縁が固定され、タイヤ成型面1とプレート3の正面31の段差を減らすことができるため、ピンチの発生を抑制することができる。さらに、装着溝2への装着状態において、スペーサー6の第1及び第2の長手方向部材61,62が装着溝2の側壁21,22に加圧接触されるため、第1及び第2の長手方向部材61,62と装着溝2の側壁21,22との隙間を無くしてバリ発生を抑制することができる。その結果、タイヤ加硫成型後の外観不良を抑制できる。
なお、スペーサー6及びタイヤ加硫金型10は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、スペーサー6及びタイヤ加硫金型10は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記した複数の実施形態の各構成や各方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
(1)上記実施形態に係るスペーサー6においては、短手方向部材64の短手方向WDの中央部には、短手方向部材64の内縁64bから外縁64aへ向かって長手方向LDに延びる切込み67が形成される、という構成である。しかしながら、スペーサー6は、かかる構成に限られない。例えば、第2の短手方向部材64に切込み67を設けなくともよい。
(2)また、上記実施形態に係るスペーサー6においては、第1の短手方向分割片631及び第2の短手方向分割片632は、工具の先端が挿入される穴65をそれぞれ有する、という構成である。しかしながら、スペーサー6は、かかる構成に限られない。例えば、工具を用いることなく第1及び第2の長手方向部材61,62を近付けることができる場合には、穴65を設けなくともよい。
(3)また、上記実施形態に係るスペーサー6においては、硬さHV300以上及び引っ張り強さ900N/mm2以上の特性を持つ鉄系金属で形成される、という構成である。しかしながら、スペーサー6は、かかる構成に限られない。例えば、スペーサー6の材料としては、適切な弾性を付与することができる材料であれば特に限定されない。
(4)また、上記実施形態に係るスペーサー6においては、第1長手方向部材61の曲率半径R61が、装着溝2の第1長手方向側壁21の曲率半径と同じであり、かつ第2長手方向部材62の曲率半径R62が、装着溝2の第2長手方向側壁22の曲率半径と同じである、という構成である。しかし、スペーサー6は、かかる構成に限定されない。例えば、第1長手方向部材61の曲率半径R61が、装着溝2の第1長手方向側壁21の曲率半径と異なっていても、スペーサー6は弾性材料で形成されているため、装着状態において第1長手方向部材61が装着溝2の第1長手方向側壁21に密着することは可能である。
(5)また、上記実施形態に係るスペーサー6においては、第1長手方向部材61の第2端61b及び第2長手方向部材62の第2端62bが「弾性部」として機能している。しかし、スペーサー6は、かかる構成に限定されない。例えば、第1長手方向部材61と第2長手方向部材62の少なくとも一方が「弾性部」として機能してもよい。すなわち、第1長手方向部材61と第2長手方向部材62の少なくとも一方が弾性変形することで、第1及び第2の長手方向部材61,62が装着溝2の側壁21,22に加圧接触されるようにしてもよい。
1…タイヤ成型面、2…装着溝、3…プレート、4…ねじ(締結部材)、5…凹凸形成部、6…スペーサー、10…タイヤ加硫金型、20…底面、21…第1長手方向側壁、22…第2長手方向側壁、23…第1短手方向側壁、24…第2短手方向側壁、36…凸部(凸状膨出部)、60…中空領域、61…第1長手方向部材、61a…第1長手方向部材の第1端、61b…第1長手方向部材の第2端、62…第2長手方向部材、62a…第2長手方向部材の第1端、62b…第2長手方向部材の第2端、63…第1短手方向部材、631…第1短手方向分割片、632…第2短手方向分割片、64…第2短手方向部材、64a…外縁、64b…内縁、65…穴、67…切込み、68…幅狭領域、69…切欠き、LD…長手方向、WD…短手方向
Claims (5)
- タイヤの外表面に標識又は模様を転写形成するための長手形状のプレートと、タイヤ加硫金型に形成されて前記プレートが装着される装着溝の底面と、の間に挟まれて使用される、弾性材料で形成されたスペーサーであって、
前記装着溝の側壁に沿うように形成された、第1及び第2の長手方向部材と、前記第1の長手方向部材の第1端に接続される第1の短手方向分割片と、前記第2の長手方向部材の第1端に接続される第2の短手方向分割片と、前記第1の長手方向部材の第2端及び前記第2の長手方向部材の第2端に接続される短手方向部材と、を備え、
前記第1の短手方向分割片と前記第2の短手方向分割片を近付けるように弾性変形可能な弾性部を有する、スペーサー。 - 前記短手方向部材の前記短手方向の中央部には、前記短手方向部材の内縁から外縁へ向かって長手方向に延びる切込みが形成される、請求項1に記載のスペーサー。
- 前記第1の短手方向分割片及び前記第2の短手方向分割片は、工具の先端が挿入される穴をそれぞれ有する、請求項1又は2に記載のスペーサー。
- 硬さHV300以上及び引っ張り強さ900N/mm2以上の特性を持つ鉄系金属で形成される、請求項1~3の何れか1項に記載のスペーサー。
- タイヤの外表面に標識又は模様を転写形成するための長手形状のプレートと、
前記プレートが装着される装着溝と、
前記プレートと前記装着溝の底面との間に配置される請求項1~4の何れか1項に記載のスペーサーと、
前記プレートと前記スペーサーを前記装着溝へ固定するための締結部材と、を備え、
前記プレートは、前記装着溝の底面へ向かって突出する凸状膨出部を有し、
前記スペーサーは、前記第1及び第2の長手方向部材が前記凸状膨出部を挟んで配置され且つ前記装着溝の側壁へ加圧接触された状態で、前記装着溝に装着される、タイヤ加硫金型。
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