JP2022055507A - 内燃機関の失火検出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】一部の気筒において燃焼制御を停止しているときであっても、失火の有無を判定できるようにした内燃機関の失火検出装置を提供する。【解決手段】CPUは、クランク軸の回転変動量の大きさを判定値Δthを用いて評価することによって、失火の有無を判定する。CPUは、特定の1つの気筒で燃焼制御を停止する処理を含んだ再生処理の実行時ではない場合(S40:NO)、判定値Δthに、基準値MAP0を代入する(S42)。これに対し、CPUは、再生処理が実行されている場合(S40:YES)、失火の判定対象となる気筒と燃焼制御の停止気筒との圧縮上死点の角度間隔に応じて、判定値Δthを、各別に設定する(S46,S50,S54)。【選択図】図4

Description

本発明は、内燃機関の失火検出装置に関する。
たとえば下記特許文献1には、回転変動量が所定値以上である場合に失火と判定する装置が記載されている。回転変動量は、燃焼行程に伴う短いタイムスケールにおけるクランク軸の回転速度の、気筒間の相違に基づき定量化されている。この装置は、内燃機関の一部の気筒における燃焼制御が停止される場合、燃焼制御が実行されている気筒での失火の有無の判定を無効とする。
特開平5-060004号公報
ところで、一部の気筒において燃焼制御を停止しているときに残りの気筒において失火が生じると、排気成分の悪化や、排気の後処理装置の熱劣化等の要因となるおそれがある。そのため、一部の気筒において燃焼制御を停止しているときであっても、失火の有無を判定することが望ましい。
以下、上記課題を解決するための手段およびその作用効果について記載する。
1.複数の気筒を有した内燃機関に適用され、前記複数の気筒のうちの一部の気筒における混合気の燃焼制御を停止させる停止処理と、失火の有無の判定対象に関する回転変動量の大きさに基づき失火の有無を判定する判定処理と、を実行し、前記判定処理は、前記回転変動量の大きさを、前記回転変動量に依存しない判定値を用いて評価することによって失火の有無を判定する処理であって、且つ、前記停止処理が実行される場合、前記停止処理が実行されていない第1の気筒と第2の気筒とで、前記判定値を各別に設定する停止時用設定処理を含み、前記回転変動量は、瞬時速度変数の変化量であり、前記瞬時速度変数は、圧縮上死点の出現間隔以下の回転角度領域をクランク軸が回転する際の速度を示す変数である内燃機関の失火検出装置である。
停止処理が実行される場合、クランク軸の回転挙動が、停止処理を実行していないときとは異なる。特に、停止処理が実行される場合、燃焼制御が実行される複数の気筒のそれぞれに関する失火が生じていないときの回転変動量同士の間に、停止処理が実行されていないときと比較して顕著な相違が生じる傾向がある。そこで上記構成では、燃焼制御を実行している第1の気筒と第2の気筒とで判定値を各別に設定する。これにより、停止処理に起因した回転変動量の相違を反映しつつ失火の有無を判定できることから、同一の判定値を設ける場合と比較して、失火の有無をより高精度に判定できる。
2.前記第1の気筒の圧縮上死点は、前記停止処理の対象となる気筒の圧縮上死点の次に出現する圧縮上死点であり、前記第2の気筒の圧縮上死点は、前記第1の気筒の圧縮上死点の次に出現する圧縮上死点である上記1記載の内燃機関の失火検出装置である。
停止処理がクランク軸に及ぼす影響は、停止処理の実行タイミングの後であって、且つ、停止処理の実行タイミングに近いタイミングの方が遠いタイミングよりも大きくなる可能性が高い。そのため、上記構成では、停止処理後に圧縮上死点となる直近の2つの気筒である第1の気筒と第2の気筒とに対して、少なくとも各別の判定値を設けることにより、第1の気筒および第2の気筒における失火の有無を高精度に判定できる。
3.前記停止時用設定処理は、前記第1の気筒の判定値と前記第2の気筒の判定値とを、停止処理が実行されていない場合の判定値とは独立に設定する上記1または2記載の内燃機関の失火検出装置である。
上記構成では、第1の気筒の判定値と第2の気筒と判定値とを、停止処理が実行されていないときの判定値とは独立に設定する。そのため、たとえば上記2の場合、停止処理後に圧縮上死点となる直近の2つの気筒である第1の気筒と第2の気筒とに関する回転変動量に反映されるクランク軸の回転挙動が、停止処理が実行されていない場合とは異なる場合であっても、失火の有無を高精度に判定できる。
4.前記停止時用設定処理は、前記判定値を、前記内燃機関の負荷を示す変数である負荷変数と前記クランク軸の回転速度との2つの変数のうちの少なくとも1つに基づき可変設定する処理を含む上記1~3のいずれか1つに記載の内燃機関の失火検出装置である。
クランク軸の回転速度が高い場合には低い場合よりも慣性エネルギが大きいことから、トルクの変動の割に回転変動が大きくなりにくい。一方、負荷が大きい場合には小さい場合よりも各気筒における燃焼エネルギが大きくなることから、停止処理が実行されることによるトルク変動が大きくなる。そのため、回転速度や負荷は、回転変動量の大きさと相関を有する変数である。そのため、上記構成によれば、回転速度と負荷との少なくとも一方に応じて判定値を設定することによって、少なくとも一方によらずに判定値を設定する場合と比較して、判定精度を高めることができる。
5.前記停止処理は、前記燃焼制御の停止対象とする気筒を変更する処理を含み、前記停止時用設定処理は、失火の判定対象の気筒の圧縮上死点と前記停止処理の対象となる気筒の圧縮上死点との角度間隔に応じて前記判定値を異なる値に設定する処理と、前記失火の判定対象の気筒の圧縮上死点と前記停止処理の対象となる気筒の圧縮上死点との角度間隔が同一であっても前記判定対象となる気筒が異なる場合に前記判定値を異なる値に設定する処理と、を含む上記1~4のいずれか1つに記載の内燃機関の失火検出装置である。
停止処理が実行される場合、判定対象の気筒において失火が生じていないときの回転変動量は、判定対象の気筒の圧縮上死点と停止処理が実行された気筒の圧縮上死点との角度間隔に応じて異なる傾向がある。一方、判定対象の気筒の圧縮上死点と停止処理が実行された気筒の圧縮上死点との角度間隔が同一であっても、判定対象の気筒が異なる場合には、気筒の幾何学的な配置の相違等に起因して、失火が生じていないときの判定対象の気筒に関する回転変動量が異なる懸念がある。
そこで上記構成では、停止処理が実行された気筒との圧縮上死点の出現間隔と、気筒自体の相違との双方に応じて各別に判定値を設定する。これにより、様々な状況においてより適切な判定値を設定できる。
6.前記クランク軸には、電動機のトルクが伝達可能とされており、前記一部の気筒の圧縮上死点後の所定期間におけるトルクの不足を補償するための補償トルクが重畳されたトルク指令値を入力として前記電動機のトルクを操作する補償トルク操作処理を実行する上記1~5のいずれか1つに記載の内燃機関の失火検出装置である。
上記構成では、停止処理が実行される場合、電動機によって補償トルクが出力されることから、クランク軸の回転挙動には、停止処理の影響と補償トルクの影響とが含まれる。そのため、補償トルクの影響が含まれない場合と比較すると、クランク軸の回転挙動がより複雑な要因によって定まることから、燃焼制御を実行する複数の気筒に共通の判定値を設定することが困難となりやすい。そのため、停止時用設定処理の利用価値が特に大きい。
7.前記判定処理は、失火の有無の判定対象となる気筒に関する前記回転変動量と比較用の前記回転変動量との相対的な大きさと前記判定値との大小比較に基づき前記失火の有無を判定する処理を含み、前記比較用の前記回転変動量は、前記停止処理の対象となる気筒に関する前記回転変動量とは異なる前記回転変動量である上記1~6のいずれか1つに記載の内燃機関の失火検出装置である。
回転変動量は、失火の有無とは別の要因によっても異なる大きさとなる変数である。その要因としては、たとえばクランク軸の回転速度や内燃機関の負荷、クランク角の検知に用いる手段の公差等がある。これに対し、回転変動量の中には、上記要因の少なくとも1つに及ぼされる影響が、判定対象となる気筒に関する回転変動量と同等となる量が存在する。そのため、その回転変動量を比較用の回転変動量とするなら、失火の有無の判定の精度が、上記少なくとも1つの要因によって低下することを抑制できる。
第1の実施形態にかかる駆動系と制御装置との構成を示す図。 同実施形態にかかる制御装置が実行する処理を示すブロック図。 同実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示す流れ図。 同実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示す流れ図。 第2の実施形態にかかる制御装置が実行する処理の手順を示す流れ図。
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、内燃機関10は、4つの気筒#1~#4を備える。内燃機関10の吸気通路12には、スロットルバルブ14が設けられている。吸気通路12の下流部分である吸気ポート12aには、吸気ポート12aに燃料を噴射するポート噴射弁16が設けられている。吸気通路12に吸入された空気やポート噴射弁16から噴射された燃料は、吸気バルブ18の開弁に伴って、燃焼室20に流入する。燃焼室20には、筒内噴射弁22から燃料が噴射される。また、燃焼室20内の空気と燃料との混合気は、点火プラグ24の火花放電に伴って燃焼に供される。そのときに生成される燃焼エネルギは、クランク軸26の回転エネルギに変換される。
燃焼室20において燃焼に供された混合気は、排気バルブ28の開弁に伴って、排気として排気通路30に排出される。排気通路30には、酸素吸蔵能力を有した三元触媒32と、ガソリンパティキュレートフィルタ(GPF34)とが設けられている。なお、本実施形態では、GPF34として、PMを捕集するフィルタに三元触媒が担持されたものを想定している。
クランク軸26には、歯部42が設けられたクランクロータ40が結合されている。歯部42は、クランク軸26の複数の回転角度のそれぞれを示す。クランクロータ40には、基本的には、10°CA間隔で歯部42が設けられているものの、隣接する歯部42間の間隔が30°CAとなる箇所である欠け歯部44が1箇所設けられている。これは、クランク軸26の基準となる回転角度を示すためのものである。
クランク軸26は、動力分割装置を構成する遊星歯車機構50のキャリアCに機械的に連結されている。遊星歯車機構50のサンギアSには、第1モータジェネレータ52の回転軸52aが機械的に連結されている。また、遊星歯車機構50のリングギアRには、第2モータジェネレータ54の回転軸54aと駆動輪60とが機械的に連結されている。第1モータジェネレータ52の端子には、インバータ56によって交流電圧が印加される。また、第2モータジェネレータ54の端子には、インバータ58によって交流電圧が印加される。
制御装置70は、内燃機関10を制御対象とし、その制御量としてのトルクや排気成分比率等を制御するために、スロットルバルブ14、ポート噴射弁16、筒内噴射弁22、および点火プラグ24等の内燃機関10の操作部を操作する。また、制御装置70は、第1モータジェネレータ52を制御対象とし、その制御量である回転速度を制御すべく、インバータ56を操作する。また、制御装置70は、第2モータジェネレータ54を制御対象とし、その制御量であるトルクを制御すべくインバータ58を操作する。図1には、スロットルバルブ14、ポート噴射弁16、筒内噴射弁22、点火プラグ24、およびインバータ56,58のそれぞれの操作信号MS1~MS6を記載している。制御装置70は、内燃機関10の制御量を制御するために、エアフローメータ80によって検出される吸入空気量Ga、クランク角センサ82の出力信号Scr、水温センサ86によって検出される水温THW、および排気圧センサ88によって検出されるGPF34に流入する排気の圧力Pexを参照する。また、制御装置70は、第1モータジェネレータ52や第2モータジェネレータ54の制御量を制御するために、第1モータジェネレータ52の回転角を検知する第1回転角センサ90の出力信号Sm1、および第2モータジェネレータ54の回転角を検知する第2回転角センサ92の出力信号Sm2を参照する。また、制御装置70は、内燃機関10、第1モータジェネレータ52および第2モータジェネレータ54の制御量を制御するために、アクセルセンサ94によって検出されるアクセルペダルの踏み込み量であるアクセル操作量ACCPを参照する。
制御装置70は、CPU72、ROM74、記憶装置75、および周辺回路76を備えており、それらが通信線78によって通信可能とされている。ここで、周辺回路76は、内部の動作を規定するクロック信号を生成する回路や、電源回路、リセット回路等を含む。制御装置70は、ROM74に記憶されたプログラムをCPU72が実行することにより制御量を制御する。
図2に、制御装置70が実行する処理を示す。図2に示す処理は、ROM74に記憶されたプログラムをCPU72がたとえば所定周期で繰り返し実行することにより実現される。
要求トルク設定処理M10は、アクセル操作量ACCPに基づき、内燃機関10に対する要求トルクである機関要求トルクTe*と、第2モータジェネレータ54に対する要求トルクのベース値である第2要求トルクベース値Tmg2b*とを算出する処理である。
スロットル開口度指令値設定処理M12は、内燃機関10に対するトルクの指令値である機関要求トルクTe*を入力とし、スロットルバルブ14の開口度の指令値であるスロットル開口度指令値TA*を設定する処理である。スロットル操作処理M14は、スロットル開口度指令値TA*に基づきスロットルバルブ14の開口度を操作すべくスロットルバルブ14に操作信号MS1を出力する処理である。
補正処理M16は、第2要求トルクベース値Tmg2b*を補正して第2要求トルクTmg2*を出力する処理である。なお、補正処理M16による補正量はゼロとなるときもある。
第2インバータ操作処理M18は、第2モータジェネレータ54のトルクを第2要求トルクTmg2*に応じた値に制御するためにインバータ58を操作すべく、インバータ58に操作信号MS6を出力する処理である。
ベース噴射量算出処理M20は、充填効率ηに基づき、ベース噴射量Qbを算出する処理である。ここで、充填効率ηは、吸入空気量Gaに基づきCPU72によって算出される。ベース噴射量Qbは、たとえば、燃焼室20内の混合気の空燃比を理論空燃比とすべく、充填効率ηに比例係数を乗算した値とすればよい。
要求噴射量算出処理M22は、ベース噴射量Qbに基づき、ポート噴射弁16および筒内噴射弁22から噴射する燃料量の要求値である要求噴射量Qdを算出する処理である。
噴射弁操作処理M24は、ポート噴射弁16および筒内噴射弁22から噴射される燃料の量が要求噴射量Qdに応じた値となるようにポート噴射弁16および筒内噴射弁22を操作すべく、ポート噴射弁16および筒内噴射弁22にそれぞれ操作信号MS2,MS3を出力する処理である。
堆積量算出処理M26は、回転速度NE、充填効率η、および水温THWに基づき、GPF34が捕集している粒子状物質(PM)の量である堆積量DPMを算出する処理である。この処理は、たとえば、回転速度NE、充填効率η、および水温THWに基づき排気中のPM量を算出する処理と、回転速度NE、充填効率ηおよびGPF34の温度と排気中のPM量とに基づき堆積量DPMの更新量を算出する処理とを含んで実現すればよい。なお、GPF34の温度は、たとえば回転速度NEおよび充填効率ηに応じて算出すればよい。
再生処理M28は、GPF34が捕集したPMを燃焼除去するための処理である。再生処理M28は、気筒#1~#4のうちの一部の気筒に関しては、要求噴射量Qdをゼロとすべく、要求噴射量算出処理M22においてベース噴射量Qbに乗算する係数に「0」を代入する処理である。また、再生処理M28は、気筒#1~#4のうちの残りの気筒に関しては、混合気の空燃比を理論空燃比よりもリッチとすべく、要求噴射量算出処理M22においてベース噴射量Qbに乗算する係数に値KiQを代入する処理である。ここで、「KiQ」は「1」よりも大きい。
再生処理M28は、堆積量DPMが所定量以上となることにより実行される。そして、再生処理M28によって、堆積量DPMが所定量よりも小さい規定量以下となることにより、再生処理M28は終了される。本実施形態では、この一度の再生処理M28においては、要求噴射量Qdをゼロとして燃焼制御を停止する気筒を特定の1つの気筒に固定する。そして、再生処理M28の完了後、堆積量DPMが再度所定量以上となることにより、新たに再生処理M28が実行されるときには、燃焼制御を停止する気筒が、前回とは異なる気筒とされる。これは、燃焼制御の実行される頻度を気筒同士で極力同一とするための設定である。
なお、再生処理M28が実行されない場合、要求噴射量算出処理M22におけるベース噴射量Qbの補正係数は「1」とされる。
補償トルク算出処理M30は、再生処理M28が実行される場合、補償トルクΔTmg2を算出する処理である。補償トルクΔTmg2は、再生処理M28によって内燃機関10の一部の気筒で燃焼制御を停止することに起因した内燃機関10のクランク軸26の1燃焼サイクル周期のトルク変動を補償するために、第2モータジェネレータ54が生成するトルクである。
本実施形態では、補償トルクΔTmg2を、振幅A、クランク軸26の2回転を「360°」と定義した回転角度θ、および位相φを用いて「A・sin(θ+φ)」とする。ここで、CPU72は、振幅Aを、回転速度NEおよび充填効率ηに基づき算出する。ここで、回転速度NEは、クランク軸26の慣性エネルギを把握するための変数である。慣性エネルギが大きい場合には小さい場合よりも、圧縮上死点周期の燃焼エネルギの差に起因したクランク軸26の回転変動量が小さくなる。ここで、回転変動量とは、瞬時速度の変動量のことである。また、瞬時速度は、圧縮上死点の出現間隔以下の間隔におけるクランク軸26の回転速度である。また、充填効率ηは、1つの気筒内での燃焼エネルギの大きさを把握するパラメータである。充填効率ηが大きい場合には小さい場合と比較して、燃焼エネルギが大きくなることから、燃焼制御を停止している気筒と燃焼制御を継続している気筒とのエネルギ差が大きくなり、ひいては回転変動量が大きくなる。
詳しくは、回転速度NEおよび充填効率ηを入力変数とし、振幅Aを出力変数とするマップデータがROM74に予め記憶された状態で、CPU72によって振幅Aをマップ演算する。
ここで、マップデータとは、入力変数の離散的な値と、入力変数の値のそれぞれに対応する出力変数の値と、の組データである。また、マップ演算は、たとえば、入力変数の値がマップデータの入力変数の値のいずれかに一致する場合、対応するマップデータの出力変数の値を演算結果とするのに対し、一致しない場合、マップデータに含まれる複数の出力変数の値の補間によって得られる値を演算結果とする処理とすればよい。
なお、位相φは、適合要素である。
図3に、制御装置70が実行する別の処理の手順を示す。図3に示す処理は、ROM74に記憶されたプログラムをCPU72がたとえば30°CA周期で繰り返し実行することにより実現される。なお、以下では、先頭に「S」が付与された数字によって各処理のステップ番号を表現する。
図3に示す一連の処理において、CPU72は、まず、クランク軸26が30°CA回転するのに要する時間T30を取得する(S10)。時間T30は、CPU72により、クランク角センサ82が対向する歯部42が30°CA離間した歯部42に代わるまでの時間を計時することによって算出される。次にCPU72は、「m=0,1,2,3,…」として、時間T30[m+1]に時間T30[m]を代入し、時間T30[0]にS10の処理で新たに取得した時間T30を代入する(S12)。この処理は、時間T30の後のカッコ内の変数を、過去のものほど数字が大きくなるようにするための処理である。この処理によって、カッコ内の変数の値が1つ大きい場合、30°CAだけ前の時間T30となる。
次にCPU72は、現在のクランク軸26の回転角度が、気筒#1~#4のいずれかの圧縮上死点を基準としてATDC150°CAであるか否かを判定する(S14)。CPU72は、ATDC150°CAであると判定する場合(S14:YES)、上記いずれかの気筒を失火の有無の判定対象として、判定対象となる気筒の回転変動量ΔT30[0]を算出し、記憶装置75に記憶する(S16)。詳しくは、CPU72は、最新の時間T30[0]から時間T30[4]を減算する。ここで、T30[4]は、判定対象となる気筒の圧縮上死点からATDC30°CAまでの区間の回転に要する時間である。そのため、失火が生じていない場合には、時間T30[0]は、時間T30[4]よりも小さくなることから、回転変動量ΔT30[0]は、負となる。これに対し、失火が生じる場合、回転変動量ΔT30[0]は正となる。
なお、回転変動量ΔT30の後のカッコ内の数字は、番号が大きいほどより過去の値であることを示す。すなわちたとえば、回転変動量ΔT30[1]は、現在の気筒よりも1つ前に圧縮上死点が出現した気筒における回転変動量ΔT30であることを示す。
次にCPU72は、再生処理を実行していて且つ、S14の処理におけるATDC150°CAが燃焼制御を停止している気筒のATDC期間であるか否かを判定する(S18)。そしてCPU72は、再生処理を実行していない場合や、実行していても燃焼制御を実行している気筒であると判定する場合(S18:NO)には、1燃焼サイクル前の回転変動量ΔT30[4]を読み出す(S20)。
次にCPU72は、回転変動量ΔT30[0]から回転変動量ΔT30[4]を減算した値が判定値Δth以上であるか否かを判定する(S22)。この処理は、判定対象となる気筒において失火が生じたか否かを判定する処理である。すなわち、判定対象となる今回の燃焼行程において失火が生じていない場合には、今回の回転変動量ΔT30[0]は、回転変動量ΔT30[4]と同等の大きさとなることから、回転変動量ΔT30[0]から回転変動量ΔT30[4]を減算した値は、ゼロ程度となる。これに対し、判定対象となる今回の燃焼行程において失火が生じる場合、今回の回転変動量ΔT30[0]が正となることから、回転変動量ΔT30[0]から回転変動量ΔT30[4]を減算した値は正で大きい値となる。なお、ここでは、回転変動量ΔT30[4]に対応する1燃焼サイクル前の燃焼行程において失火が生じていないことが前提である。
CPU72は、判定値Δth以上であると判定する場合(S22:YES)、失火カウンタCnをインクリメントする(S24)。そして、CPU72は、S24の処理を完了する場合や、S22の処理において否定判定する場合には、S22の処理が最初になされたタイミングと後述のS34の処理が最も最近なされたタイミングとのうちの近い方のタイミングから所定期間が経過したか否かを判定する(S26)。
CPU72は、所定期間が経過したと判定する場合(S26:YES)、失火カウンタCnが判定値Cnth以上であるか否かを判定する(S28)。CPU72は、判定値Cnth以上であると判定する場合(S28:YES)、失火が生じた旨判定する(S30)。そして、CPU72は、図1に示す警告灯100を操作することによって、その旨を報知する(S32)。なお、失火が生じた旨の判定は、内燃機関10において失火の発生頻度が所定以上である旨の判定である。たとえば、所定期間内に1度のみ失火が生じるようなものについては、報知処理の対象とならない。すなわち、失火が生じた旨の本判定は、報知処理を実行すべきほどの頻度で失火が生じた旨の判定である。
一方、CPU72は、判定値Cnth未満であると判定する場合(S28:NO)、失火カウンタCnを初期化する(S34)。
なお、CPU72は、S32,34の処理を完了する場合と、S14,S26の処理において否定判定する場合と、S18の処理において肯定判定する場合とには、図3に示す一連の処理を一旦終了する。
図4に、本実施形態にかかる判定値Δthの設定に関する処理の手順を示す。図4に示す処理は、ROM74に記憶されたプログラムをCPU72がたとえば圧縮上死点の出現周期で繰り返し実行することにより実現される。
図4に示す一連の処理において、CPU72は、まず再生処理の実行中であるか否かを判定する(S40)。CPU72は、再生処理の実行中ではないと判定する場合(S40:NO)、判定値Δthに、基準値MAP0を代入する(S42)。基準値MAP0は、再生処理が実行されていない通常時における判定値Δthの値として適切な値が適合されたものである。
詳しくは、CPU72は、回転速度NEが大きい場合に小さい場合よりも基準値MAP0を小さい値に設定する。また、CPU72は、充填効率ηが大きい場合に小さい場合よりも基準値MAP0を大きい値に設定する。これは、たとえば、回転速度NEおよび充填効率ηを入力変数とし、基準値MAP0を出力変数とするマップデータがROM74に予め記憶された状態でCPU72によって基準値MAP0をマップ演算することによって実現される。
一方、CPU72は、再生処理の実行中であると判定する場合(S40:YES)、再生処理による燃焼制御の停止気筒から180°CA後の気筒であるか否かを判定する(S44)。ここで、燃焼制御の停止気筒から180°CA後の気筒とは、燃焼制御の停止気筒との圧縮上死点の間隔が180°CAであって且つ、圧縮上死点の出現タイミングが停止気筒の圧縮上死点の出現タイミングの次となる気筒のことである。そして、CPU72は、180°CA後の気筒であると判定する場合(S44:YES)、判定値Δthに、第1閾値MAP1を代入する(S46)。第1閾値MAP1は、燃焼制御を停止している気筒の次に圧縮上死点が出現する気筒において判定値Δthの値として適切な値が適合されたものである。
詳しくは、CPU72は、回転速度NEおよび充填効率ηに応じて第1閾値MAP1を算出する。これは、たとえば、回転速度NEおよび充填効率ηを入力変数とし、第1閾値MAP1を出力変数とするマップデータがROM74に予め記憶された状態でCPU72によって第1閾値MAP1をマップ演算することによって実現される。なお、回転速度NEおよび充填効率ηの大きさと第1閾値MAP1の大きさとの相関関係は、回転速度NEおよび充填効率ηの大きさと基準値MAP0の大きさとの相関関係と同等であってもよい。ここで、相関関係が同等であるとは、回転速度NEと第1閾値MAP1との間に負の相関関係があって且つ、充填効率ηと第1閾値MAP1との間に正の相関関係があることを意味する。
一方、CPU72は、180°CA後の気筒ではないと判定する場合(S44:NO)、燃焼制御の停止気筒から360°CA後の気筒であるか否かを判定する(S48)。そして、CPU72は、360°CA後の気筒であると判定する場合(S48:YES)、判定値Δthに、第2閾値MAP2を代入する(S50)。第2閾値MAP2は、燃焼制御を停止している気筒の360°CA後に圧縮上死点が出現する気筒において判定値Δthの値として適切な値が適合されたものである。
詳しくは、CPU72は、回転速度NEおよび充填効率ηに応じて第2閾値MAP2を算出する。これは、たとえば、回転速度NEおよび充填効率ηを入力変数とし、第2閾値MAP2を出力変数とするマップデータがROM74に予め記憶された状態でCPU72によって第2閾値MAP2をマップ演算することによって実現される。なお、回転速度NEおよび充填効率ηの大きさと第2閾値MAP2の大きさとの相関関係は、回転速度NEおよび充填効率ηの大きさと基準値MAP0の大きさとの相関関係と同等であってもよい。
一方、CPU72は、360°CA後の気筒ではないと判定する場合(S48:NO)、燃焼制御の停止気筒から540°CA後の気筒であるか否かを判定する(S52)。そして、CPU72は、540°CA後の気筒であると判定する場合(S52:YES)、判定値Δthに、第3閾値MAP3を代入する(S54)。第3閾値MAP3は、燃焼制御を停止している気筒の540°CA後に圧縮上死点が出現する気筒において判定値Δthの値として適切な値が適合されたものである。
詳しくは、CPU72は、回転速度NEおよび充填効率ηに応じて第3閾値MAP3を算出する。これは、たとえば、回転速度NEおよび充填効率ηを入力変数とし、第3閾値MAP3を出力変数とするマップデータがROM74に予め記憶された状態でCPU72によって第3閾値MAP3をマップ演算することによって実現される。なお、回転速度NEおよび充填効率ηの大きさと第3閾値MAP3の大きさとの相関関係は、回転速度NEおよび充填効率ηの大きさと基準値MAP0の大きさとの相関関係と同等であってもよい。
なお、CPU72は、S42,S46,S50,S54の処理を完了する場合や、S52の処理において否定判定する場合には、図4に示す一連の処理を一旦終了する。
ここで、本実施形態の作用および効果について説明する。
CPU72は、堆積量DPMが閾値DPMth以上となる場合、GPF34の再生処理を実行する。これにより、気筒#1~#4のうちの特定の1つの気筒の吸気行程において吸入された空気は、燃焼に供されることなく、特定の気筒の排気行程において排気通路に流出する。また、残りの気筒の混合気は、理論空燃比よりもリッチとされることから、残りの気筒から排気通路30に排出された排気中には、未燃燃料が多量に含まれる。排気通路30に排出された酸素と未燃燃料とは、三元触媒32等で燃焼に供されることにより、GPF34の温度を上昇させる。また、排気通路30に流出した空気中の酸素は、GPF34においてPMを酸化させる。これにより、PMが燃焼して除去される。
一方、CPU72は、判定対象とする燃焼行程に関する回転変動量ΔT30[0]から比較用の回転変動量ΔT30[4]を減算した値が判定値Δth以上となると判定する場合、失火カウンタCnをインクリメントする。そしてCPU72は、失火カウンタCnが判定値Cnth以上と判定する場合、失火が生じた旨の本判定をしてその旨を報知する。
ここで、CPU72は、再生処理を実行している場合には、実行していない場合と比較して、判定値Δthを異なる値に設定した。これにより、燃焼制御の停止に起因して、再生処理を実行していないときとはクランク軸26の回転挙動が異なったとしても、失火の有無を精度良く判定することができる。
以上説明した本実施形態によれば、さらに以下に記載する作用および効果が得られる。
(1)再生処理が実行される場合、燃焼制御が実行される気筒の判定値Δthを、互いに独立に設定した。これにより、燃焼制御の停止対象となる気筒との圧縮上死点の出現間隔の大小に応じてクランク軸26の回転挙動が異なる場合であっても、失火の有無を判定するうえで適切な判定値Δthを設定できる。
(2)判定値Δthを、負荷を示す変数としての充填効率ηと、回転速度NEと、に基づき可変設定した。回転速度NEが高い場合には低い場合よりも慣性エネルギが大きいことから、トルクの変動の割にクランク軸26の回転変動が大きくなりにくい。一方、負荷が大きい場合には小さい場合よりも各気筒における燃焼エネルギが大きくなることから、燃焼制御が停止されることによるトルク変動が大きくなる。そのため、充填効率ηと回転速度NEとは、回転変動量ΔT30の大きさと相関を有する変数である。そのため、本実施形態によれば、回転速度NEおよび充填効率ηに応じて判定値Δthを設定することにより、それらによらずに判定値Δthを設定する場合と比較して、判定精度を高めることができる。
(3)CPU72は、再生処理の実行時に、第2モータジェネレータ54のトルクに補償トルクΔTmg2を重畳させた。その場合、クランク軸26の回転挙動には、燃焼制御の停止処理の影響と補償トルクΔTmg2の影響とが含まれる。そのため、補償トルクΔTmg2の影響が含まれない場合と比較すると、クランク軸26の回転挙動がより複雑な要因によって定まることから、燃焼制御を実行する複数の気筒に共通の判定値Δthを設定することが困難となりやすい。そのため、燃焼制御の停止気筒との圧縮上死点間の角度間隔の相違に応じて判定値Δthを各別に設定することが特に有効である。
(4)失火の有無の判定対象となる気筒に関する回転変動量ΔT30[0]と判定値との大小を直接比較する代わりに、比較用の回転変動量ΔT30[4]に対する回転変動量ΔT30[0]の相対的な大きさと判定値Δthとの大小比較に基づき失火の有無を判定した。ここで、回転変動量ΔT30[0]には、クランクロータ40の歯部42の間隔の公差の影響が含まれる。しかし、回転変動量ΔT30[0]と回転変動量ΔT30[4]とは、同一の歯部42に基づき算出された値であることから、それら一対の量に対する公差の影響は同等である。そのため、それら一対の量の相対的な大きさを用いることにより、失火の有無の判定の精度が公差の影響で低下することを抑制できる。
<第2の実施形態>
以下、第2の実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図5に、本実施形態にかかる判定値Δthの設定に関する処理の手順を示す。図5に示す処理は、ROM74に記憶されたプログラムをCPU72がたとえば圧縮上死点の出現周期で繰り返し実行することにより実現される。なお、図5において、図4に示した処理に対応する処理については、便宜上、同一のステップ番号を付与する。
図5に示す一連の処理において、CPU72は、S44の処理において肯定判定する場合、S60,S64,S68の処理において、燃焼制御の停止気筒から180°CA後の気筒が気筒#1~#4のいずれであるかを判定する。そしてCPU72は、気筒#1の場合には(S60:YES)、判定値Δthに、第1気筒用第1閾値MAP11を代入し(S62)、気筒#2の場合には(S64:YES)、判定値Δthに、第2気筒用第1閾値MAP12を代入する(S66)。また、CPU72は、気筒#3の場合には(S68:YES)、判定値Δthに、第3気筒用第1閾値MAP13を代入し(S70)、気筒#4の場合には(S68:NO)、判定値Δthに、第4気筒用第1閾値MAP14を代入する(S72)。
ここで、第1気筒用第1閾値MAP11、第2気筒用第1閾値MAP12、第3気筒用第1閾値MAP13、および第4気筒用第1閾値MAP14は、各別のマップデータに基づきマップ演算されたものである。ここでのマップデータも、回転速度NEおよび充填効率ηを入力変数とするデータであり、ROM74に記憶されている。なお、回転速度NEと上記各閾値との間には負の相関関係を設定して且つ充填効率ηと上記各閾値との間には正の相関関係を設定してもよい。
同様に、CPU72は、S46の処理において肯定判定する場合、S80,S84,S88の処理において、燃焼制御の停止気筒から360°CA後の気筒が気筒#1~#4のいずれであるかを判定する。そしてCPU72は、気筒#1の場合には(S80:YES)、判定値Δthに、第1気筒用第2閾値MAP21を代入し(S82)、気筒#2の場合には(S84:YES)、判定値Δthに、第2気筒用第2閾値MAP22を代入する(S86)。また、CPU72は、気筒#3の場合には(S88:YES)、判定値Δthに、第3気筒用第2閾値MAP23を代入し(S90)、気筒#4の場合には(S88:NO)、判定値Δthに、第4気筒用第2閾値MAP24を代入する(S92)。
ここで、第1気筒用第2閾値MAP21、第2気筒用第2閾値MAP22、第3気筒用第2閾値MAP23、および第4気筒用第1閾値MAP24は、各別のマップデータに基づきマップ演算されたものである。ここでのマップデータも、回転速度NEおよび充填効率ηを入力変数とするデータであり、ROM74に記憶されている。なお、回転速度NEと上記各閾値との間には負の相関関係を設定して且つ充填効率ηと上記各閾値との間には正の相関関係を設定してもよい。
同様に、CPU72は、S48の処理において肯定判定する場合、S100,S104,S108の処理において、燃焼制御の停止気筒から540°CA後の気筒が気筒#1~#4のいずれであるかを判定する。そしてCPU72は、気筒#1の場合には(S100:YES)、判定値Δthに、第1気筒用第3閾値MAP31を代入し(S102)、気筒#2の場合には(S104:YES)、判定値Δthに、第2気筒用第3閾値MAP32を代入する(S106)。また、CPU72は、気筒#3の場合には(S108:YES)、判定値Δthに、第3気筒用第3閾値MAP33を代入し(S110)、気筒#4の場合には(S108:NO)、判定値Δthに、第4気筒用第3閾値MAP34を代入する(S112)。
ここで、第1気筒用第3閾値MAP31、第2気筒用第3閾値MAP32、第3気筒用第3閾値MAP33、および第4気筒用第3閾値MAP34は、各別のマップデータに基づきマップ演算されたものである。ここでのマップデータも、回転速度NEおよび充填効率ηを入力変数とするデータであり、ROM74に記憶されている。なお、回転速度NEと上記各閾値との間には負の相関関係を設定して且つ充填効率ηと上記各閾値との間には正の相関関係を設定してもよい。
なお、CPU72は、S42,S62,S66,S70,S72,S82,S86,S90,S92,S102,S106,S110,S112の処理を完了する場合や、S48の処理において否定判定する場合には、図5に示す一連の処理を一旦終了する。
このように、本実施形態では、燃焼制御の停止気筒との圧縮上死点間の角度間隔が同一であっても、気筒#1~#4のいずれであるかに応じて、判定値Δthを互いに独立に設定した。これにより、停止気筒との圧縮上死点間の角度間隔が同一であっても、気筒が異なる場合には、気筒の幾何学的な配置の相違等に起因して、失火が生じていないときの回転変動量が異なる場合であっても、失火の有無の判定にとって適切な判定値Δthを設定できる。
特に、本実施形態では、クランク軸26の回転挙動に、燃焼制御の停止処理の影響と補償トルクΔTmg2の影響とが含まれる。そのため、補償トルクΔTmg2の影響が含まれない場合と比較すると、クランク軸26の回転挙動がより複雑な要因によって定まることから、燃焼制御を実行する複数の気筒に共通の判定値Δthを設定することが困難となりやすい。そのため、燃焼制御の停止気筒との圧縮上死点間の角度間隔の相違のみならず、気筒の相違に応じて判定値Δthを各別に設定することが特に有効である。
<対応関係>
上記実施形態における事項と、上記「課題を解決するための手段」の欄に記載した事項との対応関係は、次の通りである。以下では、「課題を解決するための手段」の欄に記載した解決手段の番号毎に、対応関係を示している。[1]停止処理は、再生処理M28に対応する。判定処理は、S22~S30,S34の処理に対応する。停止時設定処理は、図4のS44~S54の処理や、図5のS44~S48,S60~S112の処理に対応する。回転変動量は、回転変動量ΔT30に対応し、瞬時速度変数は、時間T30に対応する。[2]第1の気筒は、S44の処理において肯定判定されたときの気筒に対応し、第2の気筒は、S46の処理において肯定判定されたときの気筒に対応する。[3]停止処理が実行されない場合の判定値は、S42の処理が実行される場合の判定値Δthに対応する。[4]負荷を示す変数は、充填効率ηに対応する。[5]図5の処理に対応する。[6]電動機は、第2モータジェネレータ54に対応する。補償トルク操作処理は、第2要求トルクTmg2*に補償トルクΔTmg2が重畳されているときの第2インバータ操作処理M18に対応する。[7]比較用の回転変動量は、回転変動量ΔT30[4]に対応する。
<その他の実施形態>
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
「瞬時速度変数について」
・上記実施形態では、圧縮上死点間の間隔以下のクランク角度領域におけるクランク軸26の回転速度を示す変数である瞬時速度変数を定義するクランク角度領域を30°CAとしたが、これに限らない。たとえば、10°CAであってもよく、またたとえば圧縮上死点間の間隔自体であってもよい。
・瞬時速度変数としては、時間の次元を有する量に限らず、たとえば速度の次元を有する量であってもよい。
「回転変動量について」
・上記実施形態では、回転変動量ΔT30を、120°CA離間した瞬時速度変数同士の差としたが、これに限らない。たとえば、90°CA離間した瞬時速度変数同士の差としてもよい。
・回転変動量としては、瞬時速度変数同士の差に限らず、瞬時速度変数同士の比であってもよい。
「停止時用設定処理について」
・図4および図5の処理では、再生処理時に、燃焼制御を停止する気筒以外の気筒のそれぞれで各別に、再生処理を実行しないときとは独立の判定値Δthを設定したが、これに限らない。たとえば、S52の処理において肯定判定された場合には、S42の処理に移行し、判定値Δthを、基準値MAP0としてもよい。またたとえば、S48,S52の処理のいずれかにおいて肯定判定された場合には、S42の処理に移行し、判定値Δthを、基準値MAP0としてもよい。
・たとえば下記「内燃機関について」の欄に記載したように、内燃機関の気筒数が6個や8個の場合には、図4および図5の処理において、燃焼制御を停止する気筒以外の5個または7個の気筒のそれぞれのために各別のマップデータ等を用いて各別に判定値Δthを定めてもよい。もっとも、全ての気筒について各別のマップデータ等を備える代わりに、一部の気筒については判定値Δthとして、基準値MAP0を採用してもよい。具体的には、たとえば、燃焼制御を停止した気筒の圧縮上死点の次に圧縮上死点が出現する気筒と、その次に圧縮上死点が出現する気筒との2つの気筒に限って、基準値MAP0とは独立に設定された判定値Δthを用いてもよい。もっとも、一部の気筒に限って再生処理専用の各別の判定値Δthを設ける場合に、その対象となる気筒の圧縮上死点が燃焼制御を停止している気筒の圧縮上死点に近いことは必須ではない。たとえば燃焼制御の停止対象となる気筒の次に圧縮上死点が出現する気筒については判定値Δthとして基準値MAP0を採用し、燃焼制御の対象となる気筒の圧縮上死点間の間隔がより大きい気筒に限って、基準値MAP0とは独立に判定値Δthを設定してもよい。これは、補償トルクΔTmgの影響によって、判定精度が低下するおそれがある気筒の圧縮上死点と燃焼制御の停止対象となる気筒の圧縮上死点とが離れる場合に有効である。
「比較用の回転変動量について」
・上記実施形態では、判定対象となる気筒に関する回転変動量ΔT30[0]との比較用の回転変動量を、720°CAだけ遅角側の回転変動量ΔT30[4]としたが、これに限らない。360CAの整数倍の角度間隔だけ離間した回転変動量ΔT30を用いることで、クランクロータ40の公差等の影響が判定精度に及ぶことを抑制できる。なお、特定の気筒で失火が生じる頻度が大きい異常の有無を判定する場合には、360°CAの整数倍であって、720°CAの整数倍とならない角度間隔だけ離間した回転変動量ΔT30を比較用の回転変動量とすることが望ましい。ただし、その場合、回転変動量ΔT30に燃焼制御の停止対象となる気筒の瞬時速度変数の影響が及ぶことを抑制できるように設定することが望ましい。これはたとえば、下記「再生処理について」欄に記載したように、燃焼制御の停止対象とする気筒を頻繁に変更する場合において、同気筒の影響を抑制できる回転変動量を比較用の回転変動量として選択することで実現できる。なお、燃焼制御の停止対象となる気筒の瞬時速度変数の影響を抑制するうえでは、同気筒の圧縮上死点から次の圧縮上死点までの角度間隔における瞬時速度変数の値を用いることなく算出される回転変動量を選択すればよい。
「判定処理について」
・失火の有無の判定対象となる気筒に関する回転変動量と比較用の回転変動量との相対的な大きさとしては、失火の有無の判定対象となる気筒に関する回転変動量と比較用の回転変動量との差によって定量化されるものに限らず、たとえば比によって定量化してもよい。その場合、失火の有無の判定対象となる気筒に関する回転変動量と比較用の回転変動量との比と判定値との大小比較によって失火の有無を判定すればよい。
・判定処理としては、失火の有無の判定対象となる気筒に関する回転変動量と比較用の回転変動量との相対的な大きさと判定値との大小比較によって、失火の有無を判定する処理に限らない。たとえば、失火の有無の判定対象となる気筒に関する回転変動量と判定値との大小比較によって、失火の有無を判定する処理であってもよい。
「再生処理について」
・上記実施形態では、1度の再生処理の期間では、燃焼制御を停止する気筒を固定する例を示したが、これに限らない。たとえば、上記のように内燃機関の気筒数が4気筒の場合において、5ストロークに1度燃焼制御を停止するなどしてもよい。こうした設定によれば、燃焼制御の停止間隔を調整できることから、たとえば、駆動系の共振周波数と燃焼制御の停止間隔に応じた周波数とが一致することを抑制する目的等に利用できる。
「停止処理について」
・停止処理としては、再生処理に限らない。たとえば、内燃機関10の出力を調整するために一部の気筒における燃料の供給を停止する処理であってもよい。またたとえば、1部の気筒において異常が生じた場合に、その気筒における燃焼制御を停止する処理であってもよい。またたとえば、三元触媒32の酸素吸蔵量が規定値以下となる場合に、一部の気筒のみ燃焼制御を停止し、残りの気筒における混合気の空燃比を理論空燃比とする制御を実行する処理であってもよい。
「失火の判定結果の反映について」
・上記実施形態では、失火が生じたと判定する場合、警告灯100を用いた報知処理を実行したが、報知処理としては、視覚情報を出力する装置を操作対象とする処理に限らず、たとえば聴覚情報を出力する装置を操作対象とする処理であってもよい。
・失火の判定結果を報知処理に利用すること自体必須ではない。たとえば、失火が生じた場合に、失火が生じにくい運転状態へと内燃機関10の制御を変更すべく、内燃機関10の操作部を操作する処理を実行してもよい。要は、失火の判定結果は、所定のハードウェア手段を操作することによって失火に対処する処理によって反映されればよい。
「堆積量の推定について」
・堆積量DPMの推定処理としては、図2において例示したものに限らない。たとえば、GPF34の上流側と下流側との圧力の差と吸入空気量Gaとに基づき堆積量DPMを推定してもよい。具体的には、圧力の差が大きい場合に小さい場合よりも堆積量DPMを大きい値に推定し、圧力の差が同一であっても、吸入空気量Gaが小さい場合に大きい場合よりも堆積量DPMを大きい値に推定すればよい。ここで、GPF34の下流側の圧力を一定値とみなす場合、差圧に代えて上記圧力Pexを用いることができる。
「後処理装置について」
・GPF34としては、三元触媒が担持されたフィルタに限らず、フィルタのみであってもよい。また、GPF34としては、排気通路30のうちの三元触媒32の下流に設けられるものに限らない。また、後処理装置がGPF34を備えること自体必須ではない。たとえば後処理装置が三元触媒32のみからなる場合であっても、その再生処理時において後処理装置の昇温が必要となるなら、上記実施形態やそれらの変更例に例示した処理を実行することが有効である。
「制御装置について」
・制御装置としては、CPU72とROM74とを備えて、ソフトウェア処理を実行するものに限らない。たとえば、上記実施形態においてソフトウェア処理されたものの少なくとも一部を、ハードウェア処理するたとえばASIC等の専用のハードウェア回路を備えてもよい。すなわち、制御装置は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)上記処理の全てを、プログラムに従って実行する処理装置と、プログラムを記憶するROM等のプログラム格納装置とを備える。(b)上記処理の一部をプログラムに従って実行する処理装置およびプログラム格納装置と、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路とを備える。(c)上記処理の全てを実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、処理装置およびプログラム格納装置を備えたソフトウェア実行装置や、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。
「内燃機関について」
・内燃機関の気筒数は4つに限らず、たとえば、6個でもよく、またたとえば8個でもよい。
・内燃機関がポート噴射弁16および筒内噴射弁22を備えることも必須ではない。
・内燃機関としては、ガソリン機関のような火花点火式内燃機関に限らず、たとえば燃料を軽油とする圧縮着火式内燃機関等であってもよい。
「車両について」
・車両としては、シリーズ・パラレルハイブリッド車に限らず、たとえばパラレルハイブリッド車やシリーズハイブリッド車であってもよい。もっとも、ハイブリッド車に限らず、たとえば、車両の動力発生装置が内燃機関10のみの車両であってもよい。
10…内燃機関
26…クランク軸
32…三元触媒
34…GPF
40…クランクロータ
42…歯部
44…欠け歯部
70…制御装置

Claims (7)

  1. 複数の気筒を有した内燃機関に適用され、
    前記複数の気筒のうちの一部の気筒における混合気の燃焼制御を停止させる停止処理と、
    失火の有無の判定対象に関する回転変動量の大きさに基づき失火の有無を判定する判定処理と、を実行し、
    前記判定処理は、前記回転変動量の大きさを、前記回転変動量に依存しない判定値を用いて評価することによって失火の有無を判定する処理であって、且つ、前記停止処理が実行される場合、前記停止処理が実行されていない第1の気筒と第2の気筒とで、前記判定値を各別に設定する停止時用設定処理を含み、
    前記回転変動量は、瞬時速度変数の変化量であり、
    前記瞬時速度変数は、圧縮上死点の出現間隔以下の回転角度領域をクランク軸が回転する際の速度を示す変数である内燃機関の失火検出装置。
  2. 前記第1の気筒の圧縮上死点は、前記停止処理の対象となる気筒の圧縮上死点の次に出現する圧縮上死点であり、
    前記第2の気筒の圧縮上死点は、前記第1の気筒の圧縮上死点の次に出現する圧縮上死点である請求項1記載の内燃機関の失火検出装置。
  3. 前記停止時用設定処理は、前記第1の気筒の判定値と前記第2の気筒の判定値とを、停止処理が実行されていない場合の判定値とは独立に設定する請求項1または2記載の内燃機関の失火検出装置。
  4. 前記停止時用設定処理は、前記判定値を、前記内燃機関の負荷を示す変数である負荷変数と前記クランク軸の回転速度との2つの変数のうちの少なくとも1つに基づき可変設定する処理を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の内燃機関の失火検出装置。
  5. 前記停止処理は、前記燃焼制御の停止対象とする気筒を変更する処理を含み、
    前記停止時用設定処理は、失火の判定対象の気筒の圧縮上死点と前記停止処理の対象となる気筒の圧縮上死点との角度間隔に応じて前記判定値を異なる値に設定する処理と、前記失火の判定対象の気筒の圧縮上死点と前記停止処理の対象となる気筒の圧縮上死点との角度間隔が同一であっても前記判定対象となる気筒が異なる場合に前記判定値を異なる値に設定する処理と、を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の内燃機関の失火検出装置。
  6. 前記クランク軸には、電動機のトルクが伝達可能とされており、
    前記一部の気筒の圧縮上死点後の所定期間におけるトルクの不足を補償するための補償トルクが重畳されたトルク指令値を入力として前記電動機のトルクを操作する補償トルク操作処理を実行する請求項1~5のいずれか1項に記載の内燃機関の失火検出装置。
  7. 前記判定処理は、失火の有無の判定対象となる気筒に関する前記回転変動量と比較用の前記回転変動量との相対的な大きさと前記判定値との大小比較に基づき前記失火の有無を判定する処理を含み、
    前記比較用の前記回転変動量は、前記停止処理の対象となる気筒に関する前記回転変動量とは異なる前記回転変動量である請求項1~6のいずれか1項に記載の内燃機関の失火検出装置。
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