JP2022054837A - マスク - Google Patents

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Nagahiro Kuroda
秀樹 河端
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Abstract

【課題】運動中や作業中においてマスク内に熱気がこもりにくく、装着した際に着用感に優れたマスクを提供する。【解決手段】使用者の顔面の一部を覆うマスク本体部10と、マスク本体部10の左右両側にそれぞれ配置されており、マスク本体部10を使用者の顔面に保持する耳掛け部20と、を有するマスク1であって、マスク本体部10は、織物または編物であり、マスク本体部10の使用者側の面に、疎水性繊維を含む編物であるポケット30が配置されており、マスク本体部10の使用者側の面における、ポケット30を構成する編物の最大密着力は、0gf以上20gf以下(0gfを含む)である。【選択図】図1

Description

本発明は、使用者の顔面の一部を覆うマスク本体部と、マスク本体部を使用者の顔面に保持する耳掛け部と、を有するマスクに関するものである。
近年、マスクを着用した状態でのランニング等の運動中や作業中等において、マスク内に熱気がこもりにくく着用感が優れているマスクが求められている。運動中や作業中におけるマスクの着用感を高めるために、例えば、特許文献1には、水や薬効成分を有する液体を含ませて直接肌に接触させても肌への刺激が小さく、かつ人体への密着性に優れており破断しにくい吸水性短繊維不織布が記載されており、この吸水性短繊維不織布を、マスクを構成する生地に使用することが考えられる。
また、特許文献2には、高吸水性繊維を含む吸水性シートを扇部の少なくとも一部に用いた冷媒効果を持つ団扇、扇子等の手動式の涼風用具が記載されており、マスクを着用した状態でのランニング等の運動中や作業中等にこの涼風用具を使用して、マスク内に熱気がこもらないようにして着用感を高めることも考えられる。
国際公開第2019/146465号 特開2003-180427号公報
しかしながら、特許文献1のような吸水性短繊維不織布は、濡れた不織布を直接肌に密着させるフェイスマスクに適したものであって通気性が低いものである。そのため、マスクに用いるためには通気性を高めるために穴をあける必要があり、マスクへの使用は不適であった。また、特許文献1のような吸水性短繊維不織布は、薬効成分を肌へ吸収させるフェイスマスクに適したものであるため、肌へ接触させると濡れた感触が強く、マスクの着用感が悪くなる。さらに、特許文献2のような涼風用具は、手に持って使用しなければならず、運動や作業を行っている際に用いることには適さないものであった。
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、運動中や作業中においてマスク内に熱気がこもりにくく、装着した際に着用感に優れたマスクを提供することにある。
本発明は前記課題を解決するために、次のような構成を有する。
[1]使用者の顔面の一部を覆うマスク本体部と、前記マスク本体部の左右両側にそれぞれ配置されており、前記マスク本体部を使用者の顔面に保持する耳掛け部とを有するマスクであって、前記マスク本体部は、織物または編物であり、前記マスク本体部の使用者側の面に、疎水性繊維を含む編物であるポケットが配置されており、前記マスク本体部の使用者側の面における、前記ポケットを構成する編物の最大密着力は、0gf以上20gf以下(0gfを含む)であることを特徴とするマスク。
[2]前記ポケットは、右側ポケットと左側ポケットとを有しており、前記マスク本体部の使用者側の面であって、前記マスク本体部の左右方向における中央線の右側に前記右側ポケットが配置されており、前記中央線の左側に前記左側ポケットが配置されている[1]に記載のマスク。
[3]前記マスク本体部は、本体右側部と本体左側部とを有しており、前記本体右側部と前記本体左側部とが接合され、前記右側ポケットは、前記本体右側部に配置され、前記左側ポケットは、前記本体左側部に配置されている[2]に記載のマスク。
[4]使用者側の面における前記本体右側部の左端部および前記本体左側部の右端部は、円弧状となっている[3]に記載のマスク。
[5]前記右側ポケットおよび前記左側ポケットは、前記マスク本体部の左右方向における中央線には配置されていない[2]~[4]のいずれかに記載のマスク。
[6]前記ポケットを構成する編物の通気度は、前記マスク本体部を構成する織物または編物の通気度よりも高い[1]~[5]のいずれかに記載のマスク。
[7]前記マスク本体部を構成する織物または編物、前記ポケットを構成する編物の通気度は、いずれも10cm/cm・s以上250cm/cm・s以下である[1]~[6]のいずれかに記載のマスク。
[8]前記マスク本体部と前記ポケットとの間に、着脱可能に配置される不織布シートを有している[1]~[7]のいずれかに記載のマスク。
[9]前記不織布シートの吸水率は、50重量%以上5000重量%以下である[8]に記載のマスク。
[10]前記不織布シートは、全カルボキシル基量が0.5mmol/g以上18mmol/g以下の吸水性繊維を10重量%以上100重量%以下含んでいる[8]または[9]に記載のマスク。
[11]前記不織布シートは、塩型カルボキシル基量が0.3mmol/g以上10mmol/g以下の吸水性繊維を10重量%以上100重量%以下含んでいる[8]~[10]のいずれかに記載のマスク。
本発明のマスクは、マスク本体部の使用者側の面に疎水性繊維を含む編物であるポケットが配置されていることによって、ポケット内に濡らした布等を入れた際に、ポケットを構成する編物に水分が吸収されにくく、ポケットに接している使用者の肌に水が移行して濡れることやべたつくことを防止できる。また、ポケット内に濡らした布等を入れることによって、濡らした布等が含んでいる水分の気化熱によって冷却された空気をマスク内に取り込むことができ、マスク内に熱気がこもりにくくなる。また、マスク本体部の使用者側の面におけるポケットを構成する編物の最大密着力は0gf以上20gf以下(0gfを含む)であることによって、濡らした布等が入っているポケットが肌に貼り付きにくくなり、マスクの着用感を高めることができる。
本発明の実施の形態におけるマスクの使用者側の面の平面図を示す。 本発明の実施の形態におけるマスクの使用者側と反対の面の平面図を示す。 着用快適性試験における温度センサーの取り付け位置を表す図を示す。 実施例1のマスク本体部の編組織の説明図を示す。 実施例1のポケットの編組織の説明図を示す。
以下、本発明に係る織物に関して、図面を参照しつつ具体的に説明するが、本発明はもとより図示例に限定される訳ではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
以下に本発明のマスクの一つの実施形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態におけるマスク1の使用者側の面の平面図であり、図2はマスク1の使用者側と反対の面の平面図である。図1および図2に示すように、マスク1は、使用者の顔面の一部を覆うマスク本体部10と、マスク本体部10の左右両側にそれぞれ配置されており、マスク本体部10を使用者の顔面に保持する耳掛け部20と、を有する。
マスク本体部10は、織物または編物である。マスク本体部10が織物または編物であることにより、マスク本体部10の肌当たりがよく、マスク1の着用感を高められる。また、マスク本体部10の耐久性を高めることができ、繰り返しの洗濯に耐えるマスク1とすることができる。
マスク本体部10は、織物または編物であればよいが、編物であることが好ましい。マスク本体部10が編物であることにより、マスク本体部10に適度な伸縮性を与えることができ、マスク1の着用時に使用者の顔面にマスク1が沿いやすくなる。
マスク本体部10が織物である場合、例えば、平織、綾織(ツイル)、朱子織、多重織、ドビー織、ジャガード織等の織組織を有するものが挙げられる。マスク本体部10の織物としては、平織が好ましい。マスク本体部10が平織であることにより、マスク本体部10の通気性を高めることができる。マスク本体部10が平織である場合、マスク本体部10にガーゼやジョーゼット、細布等を用いることができる。
マスク本体部10の織物に用いられる糸の繊度は、英式綿番手で30番手以上100番手以下とすることが好ましい。マスク本体部10の織物の密度は、1インチ間の経糸本数と緯糸本数の合計が80本以上200本以下であることが好ましい。マスク本体部10の織物の目付は、60g/m以上150g/m以下とすることが好ましい。
マスク本体部10が編物である場合、マスク本体部10の編物は緯編物または経編物であることが好ましい。なお、緯編物には丸編物も含まれる。
緯編物としては、例えば、シングルニットの場合、天竺編(平編)、ベア天竺編、ウエルト天竺編、鹿の子編、裏鹿の子編、総鹿の子編、サッカー、プレーティング編、裏毛編、パイル編、ジャガード編が挙げられ、ダブルニットの場合、リブ編、パール編、両面編、およびそれらのジャガード編、レースが挙げられる。具体的にはフライス編(ゴム編)、片袋編、スムース編、畔編、ミラノリブ、ダブルピケ、スーパーローマ、ブリスター、シングルピケ、タックリップル、ウエルトリップル、ポンチ、両面パイル編、等の編組織を有するものが挙げられる。また、これらの組織の少なくとも一部に弾性糸をプレーティングしたものを用いることができる。中でも、マスク本体部10がシングルニットである場合は、弾性糸を交編またはプレーティングして編まれたベア天竺編、ベアフライス編、ベアスムース、片袋編、ベア鹿の子編であることが好ましい。マスク本体部10がダブルニットである場合は、上記のダブルニット組織の少なくとも一部に弾性糸をプレーティングしたものであることが好ましい。
経編物としては、例えば、トリコット機やラッシェル機、ダブルトリコット機、ダブルラッシェル機で編まれた編物が挙げられる。経編物の編組織としては、例えば、デンビ、プレーンコード、3×1ラップ、4×1ラップ、アトラス、鎖編、二目編、挿入の組織を単一または組み合わせた編地にして、組織の一部に弾性糸を用いることで所望の伸縮性をもつ編地を作ることができる。組合せ組織として、ダブルデンビ、ハーフ、逆ハーフ、ダブルバーコード、サテン、クインズコード、ダブルアトラス、チュール、ハーフセットネットがあり、それらと挿入を組み合わせた組織とするのが好ましい。また、ジャガード編や挿入パイル、編み込みパイル、レース等にしてもよい。
マスク本体部10が編物である場合、編機の針密度(ゲージ:G)は、12G以上46G以下であることが好ましい。仕上密度は、ウェール、コースともに25個/インチ以上100個/インチ以下であることが好ましい。仕上密度の下限値を上記の範囲に設定することにより、マスク本体部10の編物の隙間を小さくすることができ、マスク1の使用者の唾のエアゾールの放出を防ぐことができる。また、仕上密度の上限値を上記の範囲に設定することにより、マスク本体部10の編物に適度な通気性を与えることができ、マスク1の着用時に呼吸しやすくなる。
マスク本体部10を構成する繊維としては、天然繊維や化学繊維等が挙げられる。天然繊維としては、例えば、綿、麻等の植物繊維、毛、絹等の動物繊維等が挙げられる。化学繊維としては、例えば、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアクリロニトリル系繊維等の合成繊維、ジアセテート、トリアセテート等の半合成繊維、ビスコースレーヨン、ハイウェットモジュラスレーヨン、ポリノジック、キュプラ、有機溶剤紡糸セルロース(リヨセル、バンブー繊維等)等の再生繊維等が挙げられる。マスク本体部10を構成する天然繊維としては、綿が好ましい。マスク本体部10を構成する化学繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン6繊維、ポリプロピレン繊維が好ましい。
マスク本体部10を構成するにあたり、上記の繊維を単独または複数組み合わせて糸条として用いることが好ましい。糸条は、フィラメント、紡績糸、これらの複合糸であってもよい。また、これらの糸条を交織または交編して用いてもよい。マスク本体部10の織物または編物に用いる糸の総繊度は、55dtex以上であることが好ましく、57dtex以上であることがより好ましく、60dtex以上であることがさらに好ましく、また、200dtex以下であることが好ましく、175dtex以下であることがより好ましく、150dtex以下であることがさらに好ましい。マスク本体部10の織物または編物に用いる糸が紡績糸である場合には、英式綿番手で30番手以上であることが好ましく、35番手以上であることがより好ましく、40番手以上であることがさらに好ましく、また、100番手以下であることが好ましく、85番手以下であることがより好ましく、70番手以下であることがさらに好ましい。
マスク本体部10を構成する材料として、弾性を有するゴムやスパンデックス、捲縮性を高めたポリエステルやナイロン等の繊維を含むことが好ましく、弾性を有するゴムやスパンデックスを含むことがより好ましい。マスク本体部10を構成する材料に弾性を有するゴムやスパンデックス、捲縮性を高めたポリエステルやナイロン等の繊維が含まれていることにより、マスク本体部10に適度な伸縮性を付与し、通気度を高めて換気性を向上させることができる。
スパンデックスとしては、ポリエーテル系ポリウレタン繊維やポリエステル系ポリウレタン繊維を用いればよいが、切断したときに端部がほつれやすい組織に用いる場合は、例えば、特開2006-307409号に挙げられるようなフロー温度法により測定した融点が165~200℃の融着性ポリウレタン繊維等の熱融着性弾性糸を使うことが好ましい。前述の熱融着性弾性糸の具体例としては、旭化成せんい社製「ロイカSF(登録商標)」、日清紡績社製「モビロンR(登録商標)」等が挙げられる。このような熱融着性弾性糸は熱融着力が高いため、マスク本体部10の製造中に熱処理を施して熱融着性弾性糸を融着させることによって、切断した端部がほつれやすい組織であってもほつれにくくなる。そのため、生地の端部を始末する必要やヘムを付ける必要がなく、切れっぱなしのままの生地を使用することができる。マスク本体部10を構成する生地の端部を切れっぱなしとしたことで、生地の端部の厚みが他の部分と変わらず、また、生地の端部の伸縮性を制限することがないため、フィット性が高く着用感のよいマスク1とすることができ、さらに、マスク1の製造コストを抑えることができる。また、マスク本体部10を構成する材料が2mm以下の厚みの編地である場合、後述するポケット30と、ポケット30内に入れる水を含んだシートのような濡らした布等の重みでマスク本体の形が崩れやすくなるが、マスク本体部10の熱融着性弾性糸を融着させることでマスク本体部10の保形性を高めて、後述する芯材50を使わなくてもマスク1の着用時におけるマスク本体部10の立体形状を安定させることができる。熱融着性弾性糸の繊度は、10dtex以上であることが好ましく、15dtex以上であることがより好ましく、20dtex以上であることがさらに好ましく、また、110dtex以下であることが好ましく、85dtex以下であることがより好ましく、60dtex以下であることがさらに好ましい。
マスク本体部10を構成する生地の端部を始末することやヘムを付けることを行わず、切れっぱなしのままの生地を使用するために、マスク本体部10は、上述の天然繊維や化学繊維からなる糸と熱融着性弾性糸とを引き揃える、または、上述の天然繊維や化学繊維からなる糸と熱融着性弾性糸とからなる被覆弾性糸によって構成されることが好ましい。糸の引き揃えは、構成糸を縒らずに引き揃えて合わせることによって行うことができる。被覆弾性糸は、構成糸に他の構成糸を巻き付けて複合すること等によって得ることができる。被覆弾性糸の詳細については後述する。被覆弾性糸の具体例としては、長繊維と弾性繊維を合撚したフィラメント・ツイスティッド・ヤーン(FTY)、エアーで繊維同士を交絡させたエアー混繊糸、仮撚加工と同時混繊する仮撚複合糸等がある。短繊維と弾性繊維を複合したものとしては、コアスパンヤーン(CSY)、プライヤーン(PLY)等が挙げられる。
マスク本体部10を構成する被覆弾性糸は、FTYであることが好ましい。被覆弾性糸がFTYであることにより、被覆弾性糸が有している弾性繊維が拘束されにくく、伸長回復応力を低下させやすく、また、伸長回復性を高めやすくなる。FTYは、ポリウレタン弾性繊維やポリエチレン系弾性繊維のような弾性繊維に他の素材をコイル状に巻きつけたものである。例えば、弾性繊維を芯として一方向に被覆されているシングルカバードヤーン(SCY)と、下巻きと上巻きを逆方向に被覆されているダブルカバードヤーン(DCY)等がある。本発明では、リング撚糸機やダブルツイスターを使って合撚したものもFTYとして扱うが、SCYやDCYの方が被覆性を向上させることができ、また、弾性繊維を拘束しにくいため、より好適である。被覆弾性糸の総繊度は30dtex以上であることが好ましく、40dtex以上であることがより好ましく、50dtex以上であることがさらに好ましく、また、450dtex以下であることが好ましく、325dtex以下であることがより好ましく、200dtexであることがさらに好ましい。FTYの総繊度は、弾性繊維がドラフトされて複合糸とし、巻上げた状態での実繊度を指す。
マスク本体部10の製造時において、熱融着性弾性糸を融着させるために施す熱処理は、乾熱や湿熱にて行なうことができる。熱処理は、例えば150~210℃で15秒~3分間程度で行えばよいが、熱処理を染色加工工程で行う場合は、拡布で処理ができる熱風乾燥機やベーキング加工機、テンター、HTSスチーマ等を使用することができる。縫製工程で行う場合は、プレス機やヒートシーラー、ヒートカッター等でも行うことができる。
マスク本体部10の厚みは、0.01mm以上であることが好ましく、0.03mm以上であることがより好ましく、0.05mm以上であることがさらに好ましい。マスク本体部10の厚みの下限値を上記の範囲に設定することにより、マスク本体部10の耐久性が高まり、マスク1の着用時等にマスク本体部10が破断することを防止できる。また、マスク本体部10の厚みは、3mm以下であることが好ましく、2.5mm以下であることがより好ましく、2mm以下であることがさらに好ましい。マスク本体部10の厚みの上限値を上記の範囲に設定することにより、マスク1内に熱や湿気がこもりにくく、着用感を向上させることが可能となる。
マスク本体部10の目付は、50g/m以上であることが好ましく、75g/m以上であることがより好ましく、100g/m以上であることがさらに好ましい。マスク本体部10の目付の下限値を上記の範囲に設定することにより、マスク本体部10の保形性が十分なものとなる。また、マスク本体部10の目付は、280g/m以下であることが好ましく、265g/m以下であることがより好ましく、250g/m以下であることがさらに好ましい。マスク本体部10の目付の上限値を上記の範囲に設定することにより、マスク本体部10の軽量化を図ることができ、マスク1の着用感を快適なものとすることができる。
図1に示すように、マスク本体部10の使用者側の面に、疎水性繊維を含む編物であるポケット30が配置されており、ポケット30が疎水性繊維を含む編物であることにより、ポケット30内に濡らした布等を入れた際に、ポケット30を構成する編物に水分が吸収されにくく、ポケット30に接しているマスク1の使用者の肌に水が移行してべたつくことを防止できる。また、ポケット30に濡らした布等を入れることによって、濡らした布等が含んでいる水分の気化熱によって冷却された空気をマスク1の内部に取り込むことができる。その結果、マスク1内に熱気がこもりにくくなり、着用時に快適なマスク1とすることができる。
濡らした布等としては、水分を含むことができる織物、編物、不織布、スポンジ等の多孔質体等が挙げられる。濡らした布等は、不織布シート40であることが好ましい。不織布シート40の詳細については、後述する。
ポケット30を構成する編物が含む疎水性繊維としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、PBO繊維、アラミド繊維等を用いることが好ましい。また、ポケット30を構成する編物が含む疎水性繊維として、接触冷感性の高い繊維を用いることも好ましい。接触冷感性の高い繊維としては、上記の疎水性繊維の表面績を大きくして熱伝導性を高めたものが好ましく用いられる。例えば、扁平繊維やマイクロファイバー等が挙げられ、少なくともポケット30におけるマスク1の使用者側面に用いることが好ましい。接触冷感性の高い素材として、ポリエステルフィラメントでは、例えば、東洋紡製「D・D・D(登録商標)」、ナイロン6フィラメントでは、例えば、東洋紡製「シルファイン(登録商標) コクーン」、「ザイロン(登録商標)」、超高分子量ポリエチレン繊維「イザナス(登録商標)」、高分子量ポリエチレン繊維「ツヌーガ(登録商標)」等が挙げられる。
ポケット30を構成する編物が接触冷感性の高い疎水性繊維を含んでいる場合、ポケット30の接触冷感性は、カトーテック社製サーモラボIIを用いて測定したQmaxとして、0.20W/cm以上であることが好ましく、0.23W/cm以上であることがより好ましく、0.28W/cm以上であることがさらに好ましい。ポケット30の接触冷感性の下限値を上記の範囲に設定することにより、マスク1の内部の熱を、ポケット30を通じてポケット30内の濡らした布等に伝えやすくなり、さらに涼感が得られ易くなる。また、ポケット30の接触冷感性の上限値は特に限定されないが、例えば、0.7W/cm以下、0.6W/cm以下、0.55W/cm以下とすることができる。
ポケット30を構成する編物は、ダブルニットであることが好ましい。ダブルニットには、リブ編、両面編、およびそれらのジャガード編、レース等が挙げられる。具体的には、フライス編(ゴム編)、インターロック編、片袋編、畔編、モックロディ、ポンチローマ、ミラノリブ、ダブルピケ、スーパーローマ、ブリスター、シングルピケ、タックリップル、ウエルトリップル、両面パイル編等の編組織を有するものが挙げられる。
また、ポケット30を構成する編物は、上記の組織の少なくとも一部に、前述の熱融着性弾性糸を用いていることが好ましい。ポケット30を構成する編物に熱融着性弾性糸を用いていることにより、ポケット30の伸縮性を高め、ポケット30内に濡らした布等を出し入れしやすくなる。熱融着性弾性糸は、例えば、ベア使いで非弾性糸と引き揃え(プレーティング)することや、被覆弾性糸にして交編して用いることができる。好ましくはスパンデックスをベア使いとして、ベアモックロディ、ベアポンチローマ等のベア組織とすることが好ましい。
マスク本体部10にポケット30を配置するには、例えば、縫製、接着、溶着等を方法によって固定することができる。中でも、ポケット30を縫製によってマスク本体部10に配置することが好ましい。縫製は、本縫いミシン、インターロックミシン、オーバーロック等を用いて行うことができ、本縫いによって縫製することが好ましい。縫製にミシンを用いる場合、ミシン糸はカタン糸、ポリエステル糸、フィラメント糸等を使用することができ、マスク本体部10の厚み等の形状、素材、伸度等の物性等に応じて種類や番手等を選択すればよい。接着は、マスク本体部10の形状や素材、物性等に応じて接着剤や接着テープ等を使用することができる。溶着は、熱溶着、振動溶着、超音波溶着、レーザー溶着等が挙げられる。
マスク本体部10の使用者側の面における、ポケット30を構成する編物の最大密着力は、0gf以上20gf以下(0gfを含む)である。また、マスク本体部10の使用者側の面におけるポケット30を構成する編物の最大密着力が0gf以上20gf以下(0gfを含む)であることにより、ポケット30内に濡らした布等を入れた状態にてポケット30がマスク1の使用者の顔面に貼り付きにくくなり、マスク1の着用感を向上させることができる。
ポケット30を構成する編物の最大密着力は、以下の測定方法によって求めることができる。
(1)ポケット30を構成する編物を縦5cm、横5cmに切り取って試料を採取し、試料の使用者側面を上側にしてアクリル板の上に載置する。
(2)スポイトによって0.1mlの水を試料へ滴下する。
(3)圧縮試験機にて、底面積が10cmの円形の圧縮子の底面に、該圧縮子の底面と同面積の円形であって3mm厚の天然ゴム板を貼付したものを用いて、下側に500mNの荷重を試料へ加える。
(4)圧縮子を垂直方向に1.2cm/sの速度で引き上げ、試料と圧縮子の天然ゴム板とが離れるのにかかった力(以下、「密着力」と称する)を測定する。
(5)上記(2)~(4)の操作を合計10回行い、測定した中で最も大きい密着力を最大密着力とする。
ポケット30を構成する編物の最大密着力の下限値は、0gf以上(0gfを含む)であればよい。また、ポケット30を構成する編物の最大密着力の上限値は、20gf以下であればよいが、15gf以下であることが好ましく、10gf以下であることがより好ましく、5gf以下であることがさらに好ましく、2gf以下であることがよりさらに好ましい。ポケット30を構成する編物の最大密着力の上限値を上記の範囲に設定することにより、ポケット30内に濡らした布等を入れてもまたポケット30が肌に貼り付くことやべたつくことを防止し、マスク1の着用感を高めることができる。
図1に示すように、ポケット30は、右側ポケット30Rと左側ポケット30Lとを有しており、マスク本体部10の使用者側の面であって、マスク本体部10の左右方向における中央線CLの右側に右側ポケット30Rが配置されており、中央線CLの左側に左側ポケット30Lが配置されていることが好ましい。ポケット30が右側ポケット30Rと左側ポケット30Lとを有していることにより、ポケット30が左右に分割され、右側ポケット30Rと左側ポケット30Lとをそれぞれマスク本体部10へ中央線CLに沿って配置して固定することにより、マスク本体部10の中央線CLの剛性が高まり、マスク1が立体的な形状を保ちやすくなる。その結果、マスク本体部10と使用者の顔面との間に空間があきやすくなり、マスク1の着用時に呼吸がしやすくなる。
中央線CLと右側ポケット30Rの左端との距離、および中央線CLと左側ポケット30Lの右端との距離は、20mm以下であることが好ましく、15mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることがさらに好ましい。中央線CLと右側ポケット30Rの左端、および中央線CLと左側ポケット30Lの右端とのそれぞれの距離の上限値を上記の範囲に設定することにより、マスク本体部10の左右方向における中央部の剛性を高めることができ、マスク1の立体的な形状が保たれやすくなる。中央線CLと右側ポケット30Rの左端、および中央線CLと左側ポケット30Lの右端とのそれぞれの距離の下限値は特に限定されず、例えば、0mm以上(0mmを含む)、2mm以上、5mm以上とすることができる。
右側ポケット30Rの開口部の長さは右側ポケット30Rの底部の長さよりも短く、かつ、左側ポケット30Lの開口部の長さは左側ポケット30Lの底部の長さよりも短いことが好ましい。右側ポケット30Rの開口部の長さが底部の長さよりも短く、かつ、左側ポケット30Lの開口部の長さが底部の長さよりも短いことにより、右側ポケット30Rと左側ポケット30Lのそれぞれに濡らした布等を入れた際に、濡らした布等が右側ポケット30Rおよび左側ポケット30Lの内部において移動して脱落することを防ぐことができる。
図1および図2に示すように、マスク本体部10は、本体右側部10Rと本体左側部10Lとを有しており、本体右側部10Rと本体左側部10Lとが接合され、右側ポケット30Rは本体右側部10Rに配置され、左側ポケット30Lは本体左側部10Lに配置されていることが好ましい。マスク本体部10が本体右側部10Rと本体左側部10Lとを有し、本体右側部10Rと本体左側部10Lとが接合されていることにより、マスク本体部10が立体的な形状となりやすくなって、マスク本体部10と使用者の顔面との間に空間を設けることが可能となる。マスク本体部10と使用者の顔面との間に空間があることにより、マスク1の着用時に息苦しさを軽減することができ、また、使用者の息等によってこの空間内の空気が流通し、ポケット30内にある濡らした布等の気化潜熱による冷却効果を高めることができる。
本体右側部10Rと本体左側部10Lとを接合する方法としては、例えば、縫製、接着剤による接着、熱や超音波による溶着等が挙げられる。中でも、本体右側部10Rと本体左側部10Lとは、縫製によって互いに接合されていることが好ましい。本体右側部10Rと本体左側部10Lとが縫製によって互いに接合されていることにより、本体右側部10Rと本体左側部10Lとの接合強度を高めることができ、マスク本体部10の耐久性を向上させることが可能となる。
使用者側の面における本体右側部10Rの左端部および本体左側部10Lの右端部は、円弧状となっていることが好ましい。本体右側部10Rの左端部および本体左側部10Lの右端部が円弧状となっていることにより、本体右側部10Rと本体左側部10Lとを接合した状態において、本体右側部10Rと本体左側部10Lとの接合部が外方へ湾曲した形状となる。つまり、マスク本体部10の中央部が外方に向かって膨らむ。その結果、マスク1の着用時に使用者の鼻や口の付近では使用者の顔面とマスク本体部10との間に十分な空間が確保され、一方、鼻柱付近では使用者の顔面とマスク本体部10とが密着しやすくなる。そのため、マスク1の使用者の唾のエアゾールの放出を防止しつつ、息苦しさを低減することができる。なお、本体右側部10Rの左端部および本体左側部10Lの右端部は、一部が円弧状となっていてもよく、全てが円弧状となっていてもよい。
図1に示すように、右側ポケット30Rおよび左側ポケット30Lは、マスク本体部10の左右方向における中央線CLには配置されていないことが好ましい。マスク本体部10の中央線CLに右側ポケット30Rおよび左側ポケット30Lが配置されていないことにより、右側ポケット30Rおよび左側ポケット30Lをマスク本体部10に固定するための固定箇所が中央線CLには存在しないこととなる。そのため、マスク1の使用者の鼻等、使用者の顔面がマスク本体部10の中央線CLの部分と接した場合でも肌当たりがよく、着用感のいいマスク1とすることができる。
マスク本体部10を構成する布地が非常に柔らかくコシがない等、マスク本体部10の保形性が不足している場合に、図1および図2に示すように、マスク本体部10の左右方向における中央線CLに沿って、芯材50が配置されていてもよい。中央線CLに沿って芯材50が配置されていることにより、マスク本体部10の保形性が高まって立体的な形状が保たれやすくなり、マスク1の着用感の向上を図ることができる。
マスク本体部10の中央線CLに沿って芯材50を配置するには、例えば、マスク本体部10の中央線CL付近にポケット部を設けて芯材50を挿通すること、マスク本体部10の中央線CLに沿って芯材50を接着剤等によって固定すること、芯材50の端部をマスク本体部10に引っ掛けること等が挙げられる。中でも、マスク本体部10の中央線CL付近にポケット部が設けられ、このポケット部に芯材50を挿通して配置することが好ましい。中央線CLに沿って芯材50がマスク本体部10に配置されていることにより、マスク本体部10の中央線CL付近の剛性が増し、マスク本体部10の形状が立体的に保たれ、着用感のいいマスク1となる。
ポケット30を構成する編物の通気度は、マスク本体部10を構成する織物または編物の通気度よりも高いことが好ましい。通気度は、JIS L1096(2010) 8.26(フラジール形法)に基づいて測定することができる。ポケット30を構成する編物の通気度がマスク本体部10を構成する織物または編物の通気度よりも高いことにより、ポケット30内に濡らした布等を入れた状態において、濡らした布等が含んでいる水分の気化熱によって冷却された空気をマスク1の内部に取り込みやすくなり、マスク1内に熱気がこもりにくくなって快適性を高めることができる。
マスク本体部10を構成する織物または編物、ポケット30を構成する編物の通気度は、いずれも10cm/cm・s以上250cm/cm・s以下であることが好ましい。マスク本体部10を構成する織物または編物、ポケット30を構成する編物の通気度が10cm/cm・s以上であることにより、マスク本体部10およびポケット30に通気性があり、着用時に呼吸がしやすいマスク1とすることができる。また、マスク本体部10を構成する織物または編物、ポケット30を構成する編物の通気度が250cm/cm・s以下であることにより、マスク1の使用時に使用者の唾液エアゾールが外部に放出されにくくなる。
マスク本体部10を構成する織物または編物、およびポケット30を構成する編物の通気度は、10cm/cm・s以上であることが好ましく、15cm/cm・s以上であることがより好ましく、20cm/cm・s以上であることがさらに好ましい。マスク本体部10およびポケット30の通気度の下限値を上記の範囲に設定することにより、マスク1の着用時に使用者が息苦しくなりにくく、呼吸が行いやすくなる。また、マスク本体部10を構成する織物または編物、およびポケット30を構成する編物の通気度は、250cm/cm・s以下であることが好ましく、150cm/cm・s以下であることがより好ましく、120cm/cm・s以下であることがさらに好ましい。マスク本体部10のおよびポケット30通気度の上限値を上記の範囲に設定することにより、マスク1の使用者の唾液エアゾールをマスク1の外に拡散させにくくすることができる。
マスク本体部10とポケット30との間に、着脱可能に配置される不織布シート40を有していることが好ましい。つまり、上記の説明での濡らした布等が不織布シート40であることが好ましい。マスク本体部10とポケット30との間に配置するものとして不織布シート40を用いることにより、水分の保持量を多くし、かつ通気性を高めることができるため、不織布シート40が含んでいる水分の気化熱によってマスク1内の空気を冷却する効果を高めることができる。
不織布シート40の吸水率は、50重量%以上5000重量%以下であることが好ましい。不織布シート40の吸水率が50重量%以上であることにより、不織布シート40が十分な量の水分を保持することができ、マスク1内の空気を効率的に冷却することができる。また、不織布シート40の吸水率が5000重量%以下であることにより、不織布シート40の強度を十分なものとして、繰り返しの使用に耐えうる耐久性を付与することが可能となる。
不織布シート40の吸水率は、50重量%以上であることが好ましく、100重量%以上であることがより好ましく、200重量%以上であることがさらに好ましく、300重量%以上であることがよりさらに好ましい。不織布シート40の吸水率の下限値を上記の範囲に設定することにより、不織布シート40が保持できる水分の量が増え、気化熱によるマスク1の内部の空気を冷却する効果が高まる。また、不織布シート40の吸水率は、5000重量%以下であることが好ましく、4000重量%以下であることがより好ましく、3000重量%以下であることがさらに好ましく、2500重量%以下であることがよりさらに好ましい。不織布シート40の吸水率の上限値を上記の範囲に設定することにより、不織布シート40の耐久性を高めて、不織布シート40を繰り返し使用しても不織布シート40が破損しにくくなる。
不織布シート40は、吸水性繊維を含んでいることが好ましい。吸水性繊維としては、例えば、カルボキシル基を有するアクリロニトリル系繊維やポリアクリル酸繊維、水分率が10%を超えるセルロース繊維、カルボキシメチル化したセルロース繊維、アクリル酸やメタクリル酸をグラフト重合したセルロース繊維等が挙げられる。中でも、不織布シート40が含んでいる吸水性繊維は、カルボキシル基を有するアクリロニトリル系繊維であることが好ましい。不織布シート40がカルボキシル基を有するアクリロニトリル系繊維を含んでいることにより、不織布シート40の吸水率を十分なものとしやすくなる。
不織布シート40は、全カルボキシル基量が0.5mmol/g以上18mmol/g以下の吸水性繊維を10重量%以上100重量%以下含んでいることが好ましい。不織布シート40が、全カルボキシル基量が0.5mmol/g以上18mmol/g以下の吸水性繊維を10重量%以上100重量%以下含んでいることにより、十分な吸水量を有し、かつ、実用的な強度を持つ不織布シート40とすることが可能となる。
不織布シート40が含んでいる吸水性繊維の全カルボキシル基量は、0.5mmol/g以上であることが好ましく、0.8mmol/g以上であることがより好ましく、1.0mmol/g以上であることがさらに好ましい。吸水性繊維の全カルボキシル基量の下限値を上記の範囲に設定することにより、不織布シート40の吸水率を高めることができる。また、不織布シート40が含んでいる吸水性繊維の全カルボキシル基量は、18mmol/g以下であることが好ましく、15mmol/g以下であることがより好ましく、10mmol/g以下であることがさらに好ましい。吸水性繊維の全カルボキシル基量の上限値を上記の範囲に設定することにより、不織布シート40の強度を十分なものとすることができる。
不織布シート40が含んでいる吸水性繊維中のカルボキシル基には、酸型(H型)カルボキシル基とアルカリ金属塩等の塩型カルボキシル基があるが、吸水性繊維の吸水率は塩型カルボキシル基の総量に大きく依存する。不織布シート40は、塩型カルボキシル基量が0.3mmol/g以上10mmol/g以下の吸水性繊維を10重量%以上100重量%以下含んでいることが好ましい。不織布シート40が、塩型カルボキシル基量が0.3mmol/g以上10mmol/g以下の吸水性繊維を10重量%以上100重量%以下含んでいることにより、不織布シート40の吸水性能を向上させることができ、また、不織布シート40の強度も高めることができる。
不織布シート40が含んでいる吸水性繊維の塩型カルボキシル基量は、0.3mmol/g以上であることが好ましく、0.6mmol/g以上であることがより好ましく、0.7mmol/g以上であることがさらに好ましい。不織布シート40が含んでいる吸水性繊維の塩型カルボキシル基量の下限値を上記の範囲に設定することにより、不織布シート40の吸水量を多くすることが可能となる。また、不織布シート40が含んでいる吸水性繊維の塩型カルボキシル基量は、10mmol/g以下であることが好ましく、8mmol/g以下であることがより好ましく、5mmol/g以下であることがさらに好ましい。不織布シート40が含んでいる吸水性繊維の塩型カルボキシル基量の上限値を上記の範囲に設定することにより、不織布シート40の耐久性が高まって破断しにくくなる。
不織布シート40が含んでいる吸水性繊維は、カルボキシル基の中和度を50%に調整した際の吸水率が500重量%以上であることが好ましく、600重量%以上であることがより好ましく、800重量%以上であることがさらに好ましい。中和度50%のときの不織布シート40が含んでいる吸水性繊維の吸水率の下限値を上記の範囲に設定することにより、不織布シート40の吸水性を十分に高めることができる。また、不織布シート40が含んでいる吸水性繊維は、カルボキシル基の中和度を50%に調整した際の吸水率が20000重量%以下であることが好ましく、4800重量%以下であることがより好ましく、4500重量%以下であることがさらに好ましい。中和度50%のときの不織布シート40が含んでいる吸水性繊維の吸水率の上限値を上記の範囲に設定することにより、吸水性繊維の形態が保たれやすく、不織布シート40の形成が行いやすくなる。なお、カルボキシル基の中和度を50%に調整するとは、吸水性繊維前駆体の含有するカルボキシル基のうち、ナトリウム塩型カルボキシル基を50mol%とし、残りをH型カルボキシル基にすることをいう。
不織布シート40が含んでいる吸水性繊維は、芯部分がアクリロニトリル系重合体であり、鞘部分が塩型カルボキシル基を有するアクリル酸系重合体である芯鞘構造を有する繊維であることが好ましい。不織布シート40が含んでいる吸水性繊維が上記の芯鞘構造を有していることにより、芯部分の該重合体は機械的強度が高いことから繊維を補強することができる。そのため、吸水時において鞘部分の強度が低下しても繊維形態の保持と機械的強度を確保することができる。
上述の芯鞘構造を有する吸水性繊維は、アクリロニトリル系重合体でなる繊維(以下アクリロニトリル系繊維と称することがある)の表層部に対して、架橋導入処理と加水分解処理を施し、カルボキシル基を生成させることにより製造することができる。強度低下による生産性が悪化することを防ぐために、一旦、酸処理を施してH型カルボキシル基に変換して吸水性を低下させ、不織布シート40の形態にしてから塩型カルボキシル基に戻してもよい。以下、かかる製造方法について詳しく説明する。
まず、原料となるアクリロニトリル系繊維を構成するアクリロニトリル系重合体としては、アクリロニトリルを80質量%以上、好ましくは85質量%以上含む重合体が望ましい。共重合モノマーとしては塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン類:アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸及びこれらの塩類:(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類:酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類:ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、P-スチレンスルホン酸等のエチレン系不飽和スルホン酸及びこれらの塩類:(メタ)アクリルアミド、シアン化ビニリデン、メタアクリロニトリル等のビニル化合物類等があげられる。かかる重合体を用いて公知の方法により、湿式紡糸等を行うことで、アクリロニトリル系繊維を得ることができる。
次に、該アクリロニトリル系繊維にヒドラジン系化合物とアルカリ性金属化合物とを共存させた水性溶液を付着させ、加熱することによって、ヒドラジン系化合物による架橋の導入と加水分解を同時に行う。具体的には、ヒドラジン系化合物とアルカリ性金属化合物とを共存させた水性溶液を、前述のアクリロニトリル系繊維の乾燥質量に対する付着量が、アルカリ性金属化合物については1.0~20.0meq/g、好ましくは2.5~15.0meq/g、ヒドラジン系化合物については、N純分換算で0.01~2.0質量%、好ましくは0.05~1.5質量%の範囲内になるように付着させた繊維を調整し、該繊維を80℃以上の温度で1~120分間加熱、好ましくは100~150℃の湿熱雰囲気下で5~40分間加熱する手段を採用することが望ましい。
ここで、乾燥繊維質量に対するヒドラジンの付着量が上記下限に満たない場合には、得られた芯鞘構造を有する繊維の吸水時のゲル強度が低くなるため、ゲルが脱落してしまう可能性がある。一方、上限を超えると、得られた芯鞘構造を有する繊維の吸水性能が不十分となる可能性がある。
ここに使用するヒドラジン系化合物としては、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硝酸ヒドラジン、臭素酸ヒドラジン等が例示される。また、アルカリ性金属化合物とは、1.0質量%水溶液としたときのpHが7.5以上を示す物質をいい、かかる物質の例としては、Na、K、Li等のアルカリ金属の水酸化物または炭酸、酢酸、ギ酸等の有機酸のNa、K、Li等のアルカリ金属塩をあげることができる。また、水性溶液を作製する溶媒としては、工業上は水が好ましいが、アルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド等の水混和性有機溶媒と水との混合溶媒でも良い。上述のようにして得られた芯鞘構造を有する繊維のカルボキシル基は、その大部分が、アルカリ性金属化合物に由来する陽イオンをカウンターイオンとする塩型カルボキシル基となっている。
不織布シート40における吸水性繊維の含有率は、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましく、25重量%以上であることがさらに好ましい。吸水性繊維の含有率の下限値を上記の範囲に設定することにより、不織布シート40が含んでいる水分によるマスク1内の冷却効果を高めることができる。また、不織布シート40における吸水性繊維の含有率は、100重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましく、80重量%以下であることがさらに好ましい。吸水性繊維の含有率の上限値を上記の範囲に設定することにより、不織布シート40の強度が十分なものとなり、耐久性を高めることが可能となる。
不織布シート40が含んでいる吸水性繊維の繊度は、0.5dtex以上であることが好ましく、0.7dtex以上であることがより好ましく、1dtex以上であることがさらに好ましい。不織布シート40が含んでいる吸水性繊維の繊度の下限値を上記の範囲に設定することにより、吸水性繊維の強度が確保でき、不織布シート40を製造するためのニードルパンチやスパンレース等の加工時の水流等による繊維の切断が生じにくくなる。また、不織布シート40が含んでいる吸水性繊維の繊度は、15dtex以下であることが好ましく、14dtex以下であることがより好ましく、13dtex以下であることがさらに好ましい。不織布シート40が含んでいる吸水性繊維の繊度の下限値を上記の範囲に設定することにより、不織布シート40の柔軟性や手触りが良好なものとなる。
不織布シート40が含んでいる吸水性繊維の繊維長は、10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることがより好ましく、20mm以上であることがさらに好ましい。不織布シート40が含んでいる吸水性繊維の繊維長の下限値を上記の範囲に設定することにより、不織布シート40を製造するためのニードルパンチやスパンレース等の加工時において吸水性繊維同士が交絡しやすくなり、吸水性繊維の脱落を低減することが可能となる。また、不織布シート40が含んでいる吸水性繊維の繊維長は、200mm以下であることが好ましく、170mm以下であることがより好ましく、150mm以下であることがさらに好ましい。不織布シート40が含んでいる吸水性繊維の繊維長の上限値を上記の範囲に設定することにより、カードウェブを作製する際に吸水性繊維がカード機を通過することが可能となり、不織布シート40の製造の効率を高めることができる。
不織布シート40は、吸水性繊維以外の繊維を有していてもよい。不織布シート40において吸水性繊維以外に混用することができる繊維(以下、混用繊維と称することがある)としては、パルプ、コットン、麻、シルク等の天然繊維、アクリル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等の熱可塑性ポリマーを用いた熱接着性繊維等を使用することができる。また、熱接着性繊維として、融点の異なる2種類以上のポリマーを利用し、芯部に高融点、鞘部に低融点のポリマーを用いた芯鞘構造やサイドバイサイド構造等を使用することもできる。
混用繊維の繊度は、0.5dtex以上であることが好ましく、0.6dtex以上であることがより好ましく、0.7dtex以上であることがさらに好ましい。混用繊維の繊度の下限値を上記の範囲に設定することにより、不織布シート40を製造する際のウェブ形成工程において、カード機の通過時の不良率を低減することができる。また、混用繊維の繊度は、3dtex以下であることが好ましく、2.9dtex以下であることがより好ましく、2.7dtex以下であることがさらに好ましい。混用繊維の繊度の上限値を上記の範囲に設定することにより、不織布シート40の柔軟性を高めることが可能となる。
不織布シート40の目付は、10g/m以上であることが好ましく、12g/m以上であることがより好ましく、15g/m以上であることがさらに好ましい。不織布シート40の目付の下限値を上記の範囲に設定することにより、不織布シート40の強度が十分なものとなる。また、不織布シート40の目付は、100g/m以下であることが好ましく、90g/m以下であることがより好ましく、80g/m以下であることがさらに好ましい。不織布シート40の目付の上限値を上記の範囲に設定することにより、不織布シート40が軽量なものとなって、マスク1の着用感を向上させることができる。
不織布シート40の製造において、スパンレース法のように湿式処理することによって不織布を製造する場合、不織布にする前の段階では吸水性繊維の塩型カルボキシル基量を少なくし、H型カルボキシル基量を多くして吸水性能を抑制した状態としておき、不織布ができてから塩型カルボキシル基量を高める処理を行うことが好ましい。これは、水処理時に塩型カルボキシル基量が多いと繊維がゲル化して水流による脆化が起こりやすいためである。乾式によって不織布を製造する場合には、不織布になる前の原綿で塩型カルボキシル基の比率を適正な状態にしておけばよい。また、混用繊維として熱接着性繊維を用いる場合には、不織布にした後に熱ローラーもしくは熱風などで熱接着性繊維を溶融させ、繊維同士を接着させることによって、さらに強度や形態安定性がよく、毛羽の少ない不織布とすることも可能である。ただし、熱接着性繊維の含有率が高すぎると不織布が硬くなりすぎたり、保水量が不足したりする場合がある。このため、熱接着性繊維の含有率は、吸水性不織布に対して、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。また、上述の強度や形態安定性の向上効果を顕在化させるには、含有率を好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上とする。
マスク本体部10を構成する織物または編物は、JIS L1922(2016)に基づいて測定することができる抗ウイルス活性値が2.0以上であることが好ましく、3.0以上であることがより好ましい。また、抗ウイルス性の洗濯耐久性は、繊維評価技術協議会が指定する「JAFET標準配合洗剤」(ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びアルファオレフィンスルホン酸ナトリウムを配合)を用いて、JIS L1930(繊維製品の家庭洗濯試験方法)の装置および材料に規定するC形基準洗濯機-垂直軸・上部投入形(パルセータ式)に準じる全自動洗濯機にて、JIS L0217 103法にて洗濯を行い、洗濯10回後の抗ウイルス性で評価することができる。
マスク本体部10を構成する織物または編物は、抗ウイルス性のある繊維素材を用いることや、抗ウイルス加工が施されていることが好ましい。本発明のマスク1では、抗ウイルス加工がされていないポケット30を有することによってマスク本体が口、鼻に直接接触しないため、マスク本体部10の織物または編物に有害性がある抗ウイルス物質を付着させても、健康への悪影響がなく使用することが可能である。マスク本体部10を構成する織物または編物に抗ウイルス加工を施すことにより、マスク1に付着したウイルスが素早く死滅させられるため、界面活性剤等を使って洗濯しなくても再使用が可能となる。
また、ポケット30を構成する編物については、抗ウイルス機能を有する非弾性糸を組織の外側面にのみ交編するように用いることが好ましい。抗ウイルス機能を有する非弾性糸を、ポケット30を構成する編物の組織の外側面にのみ交編するように用いることによって、抗ウイルス機能を有する非弾性糸がマスク1の使用者の肌面に存在しないため、抗菌性が強い抗ウイルス物質が口、鼻に直接接触せず、健康への悪影響を心配せずにマスク1を使用することができる。
織物または編物に抗ウイルス加工を施す方法として、織物または編物がセルロース繊維を含んでいる場合には、3-(トリエトキシシリル)プロピルオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド(Etak(登録商標))、3-(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロライド(バイオシル(登録商標))を抗ウイルス加工剤として用いることが好ましく、織物または編物がポリエステルやポリアミド繊維等の合成繊維を含んでいる場合には、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドを抗ウイルス加工剤として用いることが好ましい。抗ウイルス加工剤は、純分として、繊維質量に対して0.1~10.0質量%付着させることが好ましく、0.5~5.0質量%付着させることがより好ましく、0.8~3.0質量%付着させることがさらに好ましい。付着量が上記範囲を超えると皮膚への刺激性が高くなりやすく、上記範囲未満では抗ウイルス性が発揮されにくい。
抗ウイルス性のある繊維素材としては、上述のようなH型カルボキシル基を1~13mmol/g有するアクリロニトリル系繊維を10~70質量%の割合で含有しているものが挙げられる。含有量が10質量%未満では、マスク1として抗ウイルス性を十分に発揮しにくくなり、70質量%を超えると、抗ウイルス性は十分であるが、製造コストが高くなりやすい。より好ましくは20~60質量%、更に好ましくは30~55質量%である。このH型カルボキシル基を1~13mmol/g有するアクリロニトリル系繊維が同時にH型スルホン酸基を0.2~8mmol/g有する場合も使用することができ、この場合も上記と同じ混率で非弾性糸中に含まれることが好ましい。具体的には日本エクスラン工業製のアクリル系繊維「バイアブロック(登録商標)」等を用いることができる。
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に含まれる。なお、特性値の評価は、以下の方法によって行った。
<厚み>
JIS L1096(2010) 8.4 厚さの試験方法に準拠して測定した。
<目付>
JIS L1096(2010) 8.3 単位面積当たりの質量の試験方法に準拠して測定した。
<密度>
JIS L1096(2010) 8.6 密度に準拠して測定した。編物の密度は、8.6.2に基づいて測定した。
<不織布シートの吸水率>
吸水性繊維ウェブまたは不織布をメタノールに浸漬させ、メタノールで水分を抽出することによって水分を除いた後に絞り、105℃で絶乾して不織布を調整した。該不織布約0.5gを純水中へ浸漬し、25℃に保ち30分間後、ナイロン濾布(200メッシュ)に包み、遠心脱水機(160G×5分、但しGは重力加速度)により繊維間の水を除去した。このようにして調整した試料の重量を測定した(W[g])。次に該試料を80℃真空乾燥機中で恒量になるまで乾燥して重量を測定する(W[g])。以上の測定結果から、次式によって算出する。
吸水率[%]=(W-W)/W×100
<通気度>
JIS L1096(2010) 8.26(フラジール形法)に準拠して測定した。
<密着性>
ポケットを構成する編物を5cm×5cmの寸法に切り取り、生地の肌側面を上側に向けてアクリル板の上に置き、スポイトにより0.1mlの水を滴下した。その後、圧縮試験機にて、10cmの円形の圧縮子の底面に、圧縮子の底面と同面積の円形で3mm厚の天然ゴム板を貼り付けたものを用いて下側に500mNの荷重を加えた。次いで、垂直方向に0.2cm/秒の速度で引き上げて、生地と天然ゴム板が離れるためにかかった力を密着力とした。その後、水0.1mlを滴下して密着力を測定する操作を、水滴下量の合計が1.0mlに至るまで繰り返し、水を1.0ml滴下するまでの間の最大の密着力を最大密着力とした。
<接触冷感>
カトーテック社製サーモラボIIを用いてJIS L1927に準拠する測定条件でQmaxを測定した。予め環境温湿度を20℃65%RHに調湿した生地を、肌側面を上に向けて発泡スチロール断熱材上に置き、30℃に温めた熱板兼温度センサーを生地肌側面に接触させて、瞬間の最大熱移動量Qmax(単位:W/cm)を測定した。
<着用快適性 温度変化>
20才代の男性3人を被験者として、口下、頬の2点(図3に示すマネキンの丸印部)に温度センサーを取り付け、マスクの着用開始直前と、30℃55%RHの室外環境にて早歩きをし、30分間歩いた直後のマスク内の温度を測定した。試験結果は、被験者3人の評価の平均値とした。
<着用快適性 官能評価>
被験者3人へ、マスクの着用中の暑苦しさ、および、濡らした布をマスクのポケットに入れた状態でのポケットのべたつき感といったマスクの着用快適性についてアンケート調査を行った。評価は5が最も快適であり、1が最も暑苦しい、または、最もべたつき感が強いとして、それぞれ5段階評価とした。
<フリーカット特性>
ウェール方向に対して、40°の切り込みを3cm、編始め、編終わりの両方向に交互に5箇所入れ、タテ方向の裁断面を合わせて筒状に縫製した後、JIS L0217 103法に準拠して、以下のように洗濯時間のみ300分として洗濯を行った。
洗濯(300分)→遠心脱水→すすぎ(2分)→遠心脱水→すすぎ(2分)→遠心脱水
その後、平干しで風乾し、裁断した編地の端のほつれの程度を以下の基準で評価した。なお、3級以上を端面が切れっぱなしでも使えるものと判断した。
ほつれ評価基準
5級:傷みが認められず、洗濯前との差がない
4級:傷みが認められないが、洗濯前に比べてへたっている部分がある
3級:やや傷みが認められるが、糸端の飛び出しがない
2級:痛みが認められ、糸端が飛び出している
1級:痛みが激しく、裁断面の編地組織が崩れている
<抗ウイルス性>
JIS L1922(2016)抗ウイルス性試験に基づいて、プラーク測定法(3.11)にて評価した。また、洗濯耐久性は、繊維評価技術協議会が指定する「JAFET標準配合洗剤」(ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びアルファオレフィンスルホン酸ナトリウムを配合)を用いて、JIS L1930(繊維製品の家庭洗濯試験方法)の装置および材料に規定するC形基準洗濯機-垂直軸・上部投入形(パルセータ式)に準じる全自動洗濯機にて、JIS L0217 103法にて洗濯を行い、洗濯10回後の抗ウイルス活性値を評価した。なお、抗ウイルス活性値が2.0以上の場合に抗ウイルス性が良好、3.0以上の場合に優良と判断した。
<マスク本体部の作製>
熱融着性弾性糸として、日清紡製「モビロンR(登録商標)」22dtexを用いた。抗ウイルス性のある非弾性糸として、日本エクスラン工業製のアクリル系繊維「バイアブロック(登録商標)」(N120、2.0dtex、繊維長37mm)を30重量%と、木綿を70質量%で混綿した英式綿番手58/1のリング紡績糸(撚り係数3.5)を用いた。抗ウイルス性のない非弾性糸として、綿100%のリング紡績糸の英式綿番手80/1を用いた。これらの糸を用いて、福原精機製ダブルニット丸編機(釜径:30インチ、ゲージ:22本/インチ)使用して、ベアモックロディを編成した。この編組織を図4に示す。編機のシリンダー側にて、抗ウイルス性のある非弾性糸とモビロンR22Tをプレーティング組織として編成(F3、F6)し、ダイヤル側にて綿80/1とモビロンR22Tとをプレーティング組織として編成(F2、F5)して、繋ぎ糸としてモビロンR28Tとポリエステルフィラメント22TのFTY混繊糸を用いてインターロックゲーティングで編成した(F1、F4)。
この生機を乾熱185℃、1分間のプレセットすることで、ポリウレタンを融着させた。その後、綿の丸編みの一般的な工程条件にて、精練・漂白した後、最後にファイナルセットしてオフホワイトで仕上げた。編地の密度は49ウェール/インチ、45コース/インチ、目付は205g/m、厚みは0.80mmであった。通気度は40cm/cm・s)、抗ウイルス活性Mvは3.0であった。この編地から打ち抜きにより、マスク本体部の本体右側部および本体左側部を作製した。
<ポケットの作製>
ポケットの素材には、疎水性フィラメントとして、2種類のポリエステルフィラメントを用いた。熱融着性弾性糸として日清紡製「モビロンR(登録商標)」22dtexを各ポリエステルと合撚し、FTYとして用いた。編機は福原精機製ダブルニットアイレット柄編機M-LEC7EP(釜径:33インチ、ゲージ:24本/インチ)をリブゲージングで図5に示す目移し編みにして、アイレットフライスを編立てた。図5のフィーダー2およびフィーダー5の点線部分のループが目移し部分である。一方のポリエステルフィラメントには、東洋紡製ポリエチレンテレフタレート長繊維「DDD(登録商標)」50dtex36フィラメント(繊維の扁平度4(断面直径の長短比=4:1)の酸化チタン含有率0.5wf%)を熱融着弾性糸とFTYにして、フィーダー1、3、4、6、7で製編した(F1、F3、F4、F6、F7)。他方のポリエステルフィラメントとして、56dtex、24フィラメントのポリエチレンテレフタレート繊維の2ヒーター仮撚糸を熱融着弾性糸とFTYにしてフィーダー2、5に用いて製編した(F2、F5)。
この生機を乾熱185℃、1分間のプレセットをすることで、ポリウレタンを融着させた。その後、綿の丸編みの一般的な工程条件にて、精練・漂白した後、最後にファイナルセットしてオフホワイトで仕上げた。編地片面の密度は28ウェール/インチ、59コース/インチ、目付は95g/m、厚みは0.55mmであった。通気度は165cm/cm・s、最大密着力は1.0ml滴下時に1.5gfであった。接触冷感Qmaxは0.23W/cm、フリーカット性は4級であった。
そして、本体右側部と本体左側部について、それぞれの円弧状となっている部分を合わせて、縫代5mmで本縫いして縫合した。その後、縫い代を広げてから、縫い代を覆うように12mm幅のヘムを本縫いミシンで取り付けた。ヘムの短辺12mmの両端1mmのところをヘム長さ全部についてミシン掛けして、ヘムとマスク本体の間に隙間をつくり、マスク保形のための芯材であるプラスチック棒をその隙間に挿入した。次に、本体右側部に右側ポケットを、本体左側部に左側ポケットを、それぞれ上辺を開放して3つの側辺についてミシン糸#50で本縫いにて縫合して取り付け、マスクを作製した。
<不織布シートの製造>
(製造例1)
2.9dtex×38mmの吸水性繊維(東洋紡社製:製品名ランシール(登録商標)、全カルボキシル基量1.8mmol/g)を10質量%の炭酸ナトリウム水溶液に浴比1:100で、50℃で15分浸漬させて取り出した。遠心脱水機にかけた後、105℃の乾燥機で2時間乾燥させた。この吸水性繊維の塩型カルボキシル基量は1.6mmol/gであった。この吸水繊維の吸水率は5150重量%であった。次に、この吸水性繊維30重量部と、1.7dtex×51mmのポリオレフィン系熱溶融接着性繊維(チッソ株式会社製、製品名ESCスフ)70重量部を混綿、カーデングし、30g/mのウェブシートを形成し、ベルトコンベアーによる連続式の熱風乾燥機で150℃にて60秒間加熱して不織布を得た。この不織布の吸水率は1200重量%であった。この不織布について、5cm角の正方形に切り取った不織布シートを2枚作製した。
(製造例2)
りん酸二水素ナトリウムとりん酸水素二ナトリウムの0.1mol/Lの緩衝液に、製造例1と同じ吸水性繊維を浴比1:1000で、50℃で15分浸漬させて取り出した。遠心脱水機にかけた後、105℃の乾燥機で2時間乾燥させた。この吸水性繊維の塩型カルボキシル基量は0.9mmol/gであった。吸水繊維の吸水率は2980重量%であった。この吸水性繊維を30重量部、1.7dtex×51mmのポリオレフィン系熱溶融接着性繊維(チッソ株式会社製、製品名ESCスフ)70重量部を混綿、カーデングし、30g/mのウェブシートを形成し、ベルトコンベアーによる連続式の熱風乾燥機で150℃にて60秒間加熱して不織布を得た。吸水率は850重量%であった。この不織布について、5cm角の正方形に切り取った不織布シートを2枚作製した。
<実施例1>
製造例1の不織布シート2枚を水道水に3分間浸して、遠心脱水機水に10秒間かけて水を切ってから、作製したマスクの右側ポケットと左側ポケットにそれぞれ挿入した。このマスクを着用したところ、マスク内温度は、着用直前は口下33.9℃、頬33.5℃、着用30分後の口下32.5℃、頬32.2℃、マスク内温度変化-1.3℃であり、マスクの着用快適性の評価の平均値は5.0であった。マスクの特性値を表1、マスクの着用における温度変化を表2、マスクの着用快適性の評価結果を表3にそれぞれ示す。
<実施例2>
同様にして、実施例1の製造例1の不織布シートの代わりに製造例2の不織布シートを使用して評価したところ、平均温度変化は-0.9℃、着用快適性の評価の平均値は4.7であった。マスクの特性値を表1、温度変化を表2、着用快適性の結果を表3にそれぞれ示す。
<実施例3>
実施例1の製造例1の不織布シートの代わりに、ポリエステルスパンボンド不織布(東洋紡製「エクーレ(登録商標)」、目付20g/m)を用いた。このポリエステルスパンボンド不織布を実施例1と同様に濡らして脱水してから、マスクに取り付けて着用した。吸水率は36重量%、マスク内温度変化は+1.0℃、着用快適性の評価の平均値は4.0であった。マスクの特性値を表1、温度変化を表2、着用快適性の結果を表3にそれぞれ示す。
<比較例1>
市販のガーゼマスクを比較例1として、実施例1~3との比較に用いた。ガーゼは、英式綿番手40/1を経緯に用いて、経密度58本/インチ、緯密度42本/インチに織り上げて精練漂白したものを、布端が隠れるように6枚重ねして、耳掛けとしてマスクゴムを取り付けて縫製したものであった。ガーゼマスクの本体は経9.5cm×緯13.5cmの長方形であり、抗ウイルス加工は施されていない。目付は85g/m×6枚重であって、厚みは1.36mm、通気度は18cm/cm・s(6枚重ねで測定)、接触冷感Qmaxは0.14W/cm、抗ウイルス活性値Mvは0.4であった。この織物1枚で測定したときのフリーカット性は1級であり、最大密着力は1.0ml滴下時の25.6gfであった。このガーゼマスクは水に濡らさずに通常通りの使用にて着用したところ、マスク内温度変化は+3.3℃、着用快適性の評価の平均値は1.7であった。なお、比較例1のマスクは濡らした布等を入れるポケットを有していないため、着用快適性の評価はマスク着用中における暑苦しさについて行った。マスクの特性値を表1、温度変化を表2、着用快適性の結果を表3にそれぞれ示す。
<比較例2>
実施例1と同じマスク本体部であって、英式綿番手40/1を経緯に用い、経密度58本/インチ、緯密度42本/インチに織り上げて精練漂白したガーゼによって作製したポケットを実施例1と同様に取り付けたマスクを比較例2として用いた。ポケットを構成する織物の目付は85g/m、厚みは0.24mm、通気度は18cm/cm・s、最大密着力は1.0ml滴下時に25.6gf、接触冷感Qmaxは0.14W/cm、フリーカット性は1級であった。なお、比較例2に挿入する不織布シートは、実施例1と同じものを使用した。比較例2のマスクについて評価を行ったところ、平均温度変化は-1.3℃、着用快適性の評価の平均値は2.3であった。マスクの特性値を表1、温度変化を表2、着用快適性の結果を表3にそれぞれ示す。
Figure 2022054837000002
Figure 2022054837000003
Figure 2022054837000004
実施例1~3および比較例1~2のマスクを30分間、顔面に装着して使用感を判断したところ、比較例1~2に対して、実施例1、2および3のマスクは着用したときに冷たく感じて良好な通気性を有し、暑苦しさや息苦しさ、べたつきを感じにくかった。また、実施例1および2のマスクは使用中にマスク内の温度が上がらず、また30分以上の長時間において暑苦しさを感じにくかった。なお、比較例2のマスク本体部および不織布シートは実施例1のマスク本体部および不織布シートとそれぞれ同じものを用いているが、比較例2が実施例1よりもマスクの着用中に暑苦しさを感じた理由は、比較例2のマスクのポケットはべたつき感があったため顔面に密着して温かさを感じてしまい、暑苦しさを増長させたためであると考えられる。
1:マスク
10:マスク本体部
10R:本体右側部
10L:本体左側部
20:耳掛け部
30:ポケット
40:不織布シート
50:芯材
CL:中央線

Claims (11)

  1. 使用者の顔面の一部を覆うマスク本体部と、
    前記マスク本体部の左右両側にそれぞれ配置されており、前記マスク本体部を使用者の顔面に保持する耳掛け部とを有するマスクであって、
    前記マスク本体部は、織物または編物であり、
    前記マスク本体部の使用者側の面に、疎水性繊維を含む編物であるポケットが配置されており、
    前記マスク本体部の使用者側の面における、前記ポケットを構成する編物の最大密着力は、0gf以上20gf以下(0gfを含む)であることを特徴とするマスク。
  2. 前記ポケットは、右側ポケットと左側ポケットとを有しており、
    前記マスク本体部の使用者側の面であって、前記マスク本体部の左右方向における中央線の右側に前記右側ポケットが配置されており、
    前記中央線の左側に前記左側ポケットが配置されている請求項1に記載のマスク。
  3. 前記マスク本体部は、本体右側部と本体左側部とを有しており、
    前記本体右側部と前記本体左側部とが接合され、
    前記右側ポケットは、前記本体右側部に配置され、
    前記左側ポケットは、前記本体左側部に配置されている請求項2に記載のマスク。
  4. 使用者側の面における前記本体右側部の左端部および前記本体左側部の右端部は、円弧状となっている請求項3に記載のマスク。
  5. 前記右側ポケットおよび前記左側ポケットは、前記マスク本体部の左右方向における中央線には配置されていない請求項2~4のいずれか一項に記載のマスク。
  6. 前記ポケットを構成する編物の通気度は、前記マスク本体部を構成する織物または編物の通気度よりも高い請求項1~5のいずれか一項に記載のマスク。
  7. 前記マスク本体部を構成する織物または編物、前記ポケットを構成する編物の通気度は、いずれも10cm/cm・s以上250cm/cm・s以下である請求項1~6のいずれか一項に記載のマスク。
  8. 前記マスク本体部と前記ポケットとの間に、着脱可能に配置される不織布シートを有している請求項1~7のいずれか一項に記載のマスク。
  9. 前記不織布シートの吸水率は、50重量%以上5000重量%以下である請求項8に記載のマスク。
  10. 前記不織布シートは、全カルボキシル基量が0.5mmol/g以上18mmol/g以下の吸水性繊維を10重量%以上100重量%以下含んでいる請求項8または9に記載のマスク。
  11. 前記不織布シートは、塩型カルボキシル基量が0.3mmol/g以上10mmol/g以下の吸水性繊維を10重量%以上100重量%以下含んでいる請求項8~10のいずれか一項に記載のマスク。
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