JP2022053541A - 導電パターンが形成されたフィルム用又は基板用粘着シート - Google Patents

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真理子 野田
Mariko Noda
英寛 出口
Hidehiro Deguchi
祥人 新井
Yoshito Arai
徳之 内田
Noriyuki Uchida
拓道 杉原
Hiromichi Sugihara
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Abstract

【課題】伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用することができ、シクロオレフィンポリマー等の難接着性材料からなる基材に対して高い粘着力を発揮できる導電パターンが形成されたフィルム用又は基板用粘着シートを提供する。【解決手段】導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体における部材間の貼り合わせ、基板の内部の部材間の貼り合わせ、或いは、導電パターンが形成されたフィルム又は基板と他の部材との貼り合わせのために用いられる粘着シートであって、一般式(A-B)nCで表される構造を有するラジアル型スチレン系エラストマーと、粘着付与樹脂とを含有する粘着剤層を有し、前記粘着付与樹脂は、SP値が8.0~9.0である芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂(T1)、及び、SP値が7.5~8.5である芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂(T2)からなる群より選択される少なくとも1つを含有する導電パターンが形成されたフィルム用又は基板用粘着シート。A:芳香族アルケニル重合体ブロックB:共役ジエン重合体ブロックC:カップリング剤に由来する成分n:3以上の整数【選択図】なし

Description

本発明は、伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用することができ、シクロオレフィンポリマー等の難接着性材料からなる基材に対して高い粘着力を発揮できる導電パターンが形成されたフィルム用又は基板用粘着シートに関する。
粘着テープ又はシートは多様な分野で広く用いられており、例えば、携帯電話、携帯情報端末(Personal Digital Assistants、PDA)等の携帯電子機器の組み立てのために、或いは、車載用パネル等の車載用電子機器部品を車両本体に固定するために用いられている(例えば、特許文献1、2)。
特開2009-242541号公報 特開2009-258274号公報
近年、電子機器の分野ではより大容量のデータをより高速に送受信することが求められ、いわゆる第5世代移動通信システム(5G)の実用化も進められており、これに伴い、伝送信号の高周波数化が進められている。しかしながら、高周波数化により、伝送信号の減衰量(「伝送損失」という)が大きくなるという問題が生じている。電子機器に用いられる粘着テープ又はシートとしても、このような伝送損失を抑えることができ、伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用できる粘着テープ又はシートが求められている。
本発明は、伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用することができ、シクロオレフィンポリマー等の難接着性材料からなる基材に対して高い粘着力を発揮できる導電パターンが形成されたフィルム用又は基板用粘着シートを提供することを目的とする。
本発明は、導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体における部材間の貼り合わせ、基板の内部の部材間の貼り合わせ、或いは、導電パターンが形成されたフィルム又は基板と他の部材との貼り合わせのために用いられる粘着シートであって、一般式(A-B)Cで表される構造を有するラジアル型スチレン系エラストマーと、粘着付与樹脂とを含有する粘着剤層を有し、上記粘着付与樹脂は、SP値が8.0~9.0である芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂(T1)、及び、SP値が7.5~8.5である芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂(T2)からなる群より選択される少なくとも1つを含有する導電パターンが形成されたフィルム用又は基板用粘着シートである。
A:芳香族アルケニル重合体ブロック
B:共役ジエン重合体ブロック
C:カップリング剤に由来する成分
n:3以上の整数
以下、本発明を詳述する。
伝送損失は周波数に比例して大きくなるため、伝送信号が高周波数化すると、伝送損失が大きくなることは避けられない問題である。
一方、電子機器においては、ポリイミド樹脂(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ABS樹脂、ポリカーボネート(PC)、ガラス等からなる基材上に導電パターンが形成されたフィルムや、これらの基材上に銅箔等からなる回路パターンが形成された基板が用いられている。高周波数帯(例えば、1~80GHz付近)での伝送損失を抑える方法としては、例えば、このような導電パターンが形成されたフィルム又は基板において、銅箔等からなる導通部分の平滑性を上げる方法が知られている。また、導電パターンが形成されたフィルム又は基板と、他の部材との貼り合わせのために用いられる粘着シートの絶縁性部分の材料として、高周波数帯での誘電特性に優れた材料を用いる方法も検討されている。即ち、伝送損失は、周波数に加えて、絶縁性部分の誘電率の平方根、及び、誘電正接の1次式にも比例するため、高周波数帯において誘電率が小さく、かつ/又は、誘電正接が小さい材料を用いることで、伝送損失を抑えることが期待される。
本発明者らは、導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体における部材間の貼り合わせ、基板の内部の部材間の貼り合わせ、或いは、導電パターンが形成されたフィルム又は基板と他の部材との貼り合わせのために用いられる粘着シートにおいて、粘着剤層を構成するベース樹脂について検討した。その結果、本発明者らは、スチレン系エラストマーが高周波数帯での誘電特性に優れること、即ち、高周波数帯において誘電率が小さく、誘電正接が小さいことを見出した。また、高周波数帯での誘電特性は、材料の含水率にも影響される。本発明者らは、スチレン系エラストマーは、加湿環境下に晒した後の含水率が低く、屋外等の湿度変化のある環境下で使用する場合であっても高周波数帯での誘電特性が安定していることを見出した。
なお、これまでに、スチレン系エラストマーの低周波数帯(例えば、100Hz、100kHz等)での誘電特性についての知見はあったが、高周波数帯での誘電特性についての知見はほとんど得られていなかった。
一方、導電パターンが形成されたフィルム又は基板の基材にも、従来から用いられてきたポリイミド樹脂等に代えて、シクロオレフィンポリマー(COP)、液晶ポリマー(LCP)等の高周波数帯での誘電特性に優れた材料を用いることが検討されている。しかしながら、これらの材料は難接着性であるため、これらの材料からなる基材に対して粘着シートを貼り合わせた場合、粘着力が充分ではなく、剥離が生じやすいという問題が生じている。
これに対して、本発明者らは、スチレン系エラストマーのなかでも特定の式で表される構造を有するラジアル型スチレン系エラストマーを用い、かつ、該ラジアル型スチレン系エラストマーとの相溶性に優れた特定の粘着付与樹脂を添加することにより、難接着性材料からなる基材に対して高い粘着力を発揮できる粘着シートが得られることを見出した。これにより、本発明を完成させるに至った。
本発明の導電パターンが形成されたフィルム用又は基板用粘着シート(以下、単に「粘着シート」ともいう)は、導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体における部材間の貼り合わせ、基板の内部の部材間の貼り合わせ、或いは、導電パターンが形成されたフィルム又は基板と他の部材との貼り合わせのために用いられる粘着シートである。
上記導電パターンが形成されたフィルム又は基板は特に限定されず、電子機器に用いられる導電パターンが形成されたフィルム又は基板であればよく、例えば、絶縁性の基材上に導電パターンが形成されたフィルム、絶縁性の基材上に銅箔等からなる回路パターンが形成された基板等が挙げられる。上記基材は特に限定されず、従来から用いられてきたポリイミド樹脂等からなる基材であってもよいが、シクロオレフィンポリマー(COP)、液晶ポリマー(LCP)等の高周波数帯での誘電特性に優れた材料(難接着性材料)からなる基材が好ましい。
本発明の粘着シートは、一般式(A-B)Cで表される構造を有するラジアル型スチレン系エラストマーと、粘着付与樹脂とを含有する粘着剤層を有する。
A:芳香族アルケニル重合体ブロック
B:共役ジエン重合体ブロック
C:カップリング剤に由来する成分
n:3以上の整数
スチレン系エラストマーは、高周波数帯での誘電特性に優れる。即ち、高周波数帯において誘電率が小さく、誘電正接が小さい。また、高周波数帯での誘電特性は、材料の含水率にも影響される。これは、水分子は誘電率及び誘電正接が高く誘電特性に劣るため、水分子を含まないことが、誘電特性を向上させるために必要となるためである。スチレン系エラストマーは、加湿環境下に晒した後の含水率が低く、屋外等の湿度変化のある環境下で使用する場合であっても高周波数帯での誘電特性が安定している。これらのことから、上記粘着剤層が上記ラジアル型スチレン系エラストマーを含有することで、本発明の粘着シートは、伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用できるものとなる。
また、上記ラジアル型スチレン系エラストマーを含有することで、上記粘着剤層の粘着力が向上する。特に、上記ラジアル型スチレン系エラストマーは、上記粘着剤層の高温での粘着力を向上させるためにハードセグメントの分子量を上げたとしても粘度上昇が抑えられる性質を有し、上記粘着剤層の高温での粘着力を向上させることができるとともに、室温での粘着力も確保することができるものである。
上記一般式(A-B)C中、Aは芳香族アルケニル重合体ブロック(ハードセグメント)を表し、Bは共役ジエン重合体ブロック(ソフトセグメント)を表し、Cはカップリング剤に由来する成分を表し、nは3以上の整数を表す。
上記ラジアル型スチレン系エラストマーは、カップリング剤に由来する成分(C)を中心にして、ハードセグメント1つとソフトセグメント1つとが結合したジブロック構造のスチレン系ブロック共重合体(A-B)が複数放射状に突出した構造を有する、分岐状スチレン系ブロック共重合体である。
nは3以上の整数であればよいが、上記粘着剤層の粘着力、特に高温での粘着力が向上することから、nは4以上が好ましい。nの上限は特に限定されないが、上記ラジアル型スチレン系エラストマーのゲル化を抑制する観点から、通常8以下である。
上記Aで表される芳香族アルケニル重合体ブロックとは、芳香族アルケニル化合物に由来する繰り返し単位を有するブロックを意味する。
上記Aで表される芳香族アルケニル重合体ブロックは、芳香族アルケニル化合物に由来する繰り返し単位を主な構成成分としたブロックであればよく、エチレン等の他の化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
上記Aで表される芳香族アルケニル重合体ブロックとしては、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリジメチルスチレン、ポリt-ブチルスチレン等のポリアルキルスチレン;ポリクロロスチレン、ポリブロモスチレン、ポリフルオロスチレン、ポリフルオロスチレン等のポリハロゲン化スチレン;ポリクロロメチルスチレン等のポリハロゲン置換アルキルスチレン;ポリメトキシスチレン、ポリエトキシスチレン等のポリアルコキシスチレン;ポリカルボキシメチルスチレン等のポリカルボキシアルキルスチレン;ポリビニルベンジルプロピルエーテル等のポリアルキルエーテルスチレン;ポリトリメチルシリルスチレン等のポリアルキルシリルスチレン;ポリ(ビニルベンジルジメトキシホスファイド);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等が挙げられる。なかでも、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリジメチルスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体が好ましい。これらの芳香族アルケニル重合体ブロックは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記芳香族アルケニル化合物として、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等を用いることもできる。上記芳香族アルケニル化合物のなかでも、工業的に入手しやすいことから、スチレンが好ましい。
上記Bで表される共役ジエン重合体ブロックは、共役ジエン化合物に由来する繰り返し単位を有する。
上記共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-オクタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ミルセン、クロロプレン等が挙げられる。これらの共役ジエン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、重合反応性が高く、工業的に入手しやすいことから、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましい。また、上記共役ジエン化合物以外に利用可能なものとして、例えば、2,5-ジヒドロフラン-2,5-ジオンが挙げられる。
上記Cで表されるカップリング剤に由来する成分の原料となるカップリング剤は、上記スチレン系ブロック共重合体(A-B)を放射状に結合させる多官能性化合物である。
上記カップリング剤としては、ハロゲン化シラン、アルコキシシラン等のシラン化合物や、ハロゲン化スズ等のスズ化合物や、ポリカルボン酸エステル、エポキシ化大豆油等のエポキシ化合物や、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のアクリルエステルや、エポキシシラン、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物等が挙げられる。より具体例には、例えば、トリクロロシラン、トリブロモシラン、テトラクロロシラン、テトラブロモシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラクロロスズ、ジエチルアジペート等が挙げられる。
上記ラジアル型スチレン系エラストマーは、上記Aで表される芳香族アルケニル重合体ブロックの含有量が5重量%以上、50重量%以下であることが好ましい。
上記ラジアル型スチレン系エラストマーにおける上記Aで表される芳香族アルケニル重合体ブロックの含有量が上記範囲であることで、上記粘着剤層の高温での貯蔵弾性率が高まり、高温での粘着力をより向上させることができるとともに、室温での粘着力も確保することができる。高温での粘着力と室温での粘着力とのバランスの観点から、上記ラジアル型スチレン系エラストマーにおける上記Aで表される芳香族アルケニル重合体ブロックの含有量のより好ましい下限は7重量%、より好ましい上限は25重量%である。
上記ラジアル型スチレン系エラストマーは、光学的な無色透明性を高める観点から、水素添加率が95%以上であることが好ましく、96%以上であることがより好ましい。上記ラジアル型スチレン系エラストマーの水素添加率は、通常100%以下である。
上記ラジアル型スチレン系エラストマーの重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、好ましい下限が25万、より好ましい下限が30万である。上記重量平均分子量(Mw)の上限は特に限定されず、大きければ大きいほど上記粘着剤層の粘着力、特に高温での粘着力を高めることができるが、上記重量平均分子量(Mw)が大きいほど粘度が上がるため実質生産できるのは70万程度が限度である。
上記粘着付与樹脂を含有することで、上記粘着剤層の粘着力が向上する。
上記粘着付与樹脂は、SP値が8.0~9.0である芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂(T1)、及び、SP値が7.5~8.5である芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂(T2)からなる群より選択される少なくとも1つを含有する。
上記芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂(T1)は、SP値が8.0~9.0であることで、上記ラジアル型スチレン系エラストマー中の上記芳香族アルケニル重合体ブロックと相溶するため、上記粘着剤層の粘着力を高めつつ透明性の低下を抑えることができる。また、上記芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂(T1)は、SP値が8.0~9.0であり比較的極性が低いことから、上記粘着付与樹脂が該粘着付与樹脂(T1)を含有することで、上記粘着剤層の極性が低くなる。これにより、本発明の粘着シートは、シクロオレフィンポリマー等の難接着性材料からなる基材に対して高い粘着力を発揮することができる。
より上記芳香族アルケニル重合体ブロックと相溶し、上記粘着剤層の粘着力が高くなり、透明性が低下しにくくなることから、上記芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂(T1)は、SP値の好ましい下限が8.5であり、より好ましい下限が8.6であり、好ましい上限が8.9である。
なお、SP値が9.0以下であれば、芳香族環を含む石油樹脂系の粘着付与樹脂(例えば、水添芳香族系粘着樹脂)であっても、上記ラジアル型スチレン系エラストマー中の上記芳香族アルケニル重合体ブロックと相溶する可能性はある。ただし、一般的な芳香族環を含む石油樹脂系の粘着付与樹脂はSP値が9.0を超えることが多く、SP値が9.0を超えると、上記芳香族アルケニル重合体ブロックと相溶せず、上記粘着剤層の粘着力を高めつつ透明性の低下を抑えることは困難である。
上記芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂(T2)は、SP値が7.5~8.5であることで、上記ラジアル型スチレン系エラストマー中の上記共役ジエン重合体ブロックと相溶するため、上記粘着剤層の粘着力を高めつつ透明性の低下を抑えることができる。また、上記芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂(T2)は、SP値が7.5~8.5であり比較的極性が低いことから、上記粘着付与樹脂が該粘着付与樹脂(T2)を含有することで、上記粘着剤層の極性が低くなる。これにより、本発明の粘着シートは、シクロオレフィンポリマー等の難接着性材料からなる基材に対して高い粘着力を発揮することができる。
より上記共役ジエン重合体ブロックと相溶し、上記粘着剤層の粘着力が高くなり、透明性が低下しにくくなることから、上記芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂(T2)は、SP値の好ましい上限が8.4である。
ここで、本明細書中においてSP値とは溶解性パラメータ(Solubility Parameter)と呼ばれ、溶解のしやすさを表すことのできる指標である。本明細書においてSP値の算出にはFedors法(R.F.Fedors,Polym. Eng. Sci.,14(2),147-154(1974))が用いられる。
上記芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂(T1)、及び、上記芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂(T2)は、軟化点が80℃以上であることが好ましい。これにより、上記粘着剤層の高温での粘着力を高めることができる。より高温での粘着力が向上することから、軟化点は90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。上記軟化点の上限は特に限定されないが、使用される温度を考慮すると140℃であることが好ましい。
なお、上記軟化点はJIS K2207に準じた方法で測定することができる。
上記芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂(T1)としては、例えば、芳香族変性テルペン、芳香族変性水添テルペン、テルペンフェノール、水添テルペンフェノール、ロジンエステル(例えば、超淡色ロジンエステル等)等が挙げられる。なかでも、より上記芳香族アルケニル重合体ブロックと相溶し、上記粘着剤層の粘着力が高くなり、透明性が低下しにくくなることから、芳香族変性テルペン、芳香族変性水添テルペン、超淡色ロジンエステルが好ましい。
上記芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂(T2)としては、例えば、C5系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、テルペン、水添テルペン、水添αメチルスチレン樹脂等が挙げられる。なかでも、より上記共役ジエン重合体ブロックと相溶し、上記粘着剤層の粘着力が高くなり、透明性が低下しにくくなることから、脂環族系石油樹脂、テルペン、水添テルペン、水添αメチルスチレン樹脂が好ましい。
上記芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂(T1)の含有量は特に限定されないが、上記ラジアル型スチレン系エラストマー100重量部に対する好ましい下限は5重量部、より好ましい下限は10重量部、好ましい上限は100重量部、より好ましい上限は80重量部である。上記粘着付与樹脂(T1)の含有量が上記範囲であることで、より透明性と粘着力とに優れた粘着剤層とすることができる。
上記芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂(T2)の含有量は特に限定されないが、上記ラジアル型スチレン系エラストマー100重量部に対する好ましい下限は5重量部、より好ましい下限は10重量部、好ましい上限は100重量部、より好ましい上限は80重量部である。上記粘着付与樹脂(T2)の含有量が上記範囲であることで、より透明性と粘着力とに優れた粘着剤層とすることができる。
上記粘着付与樹脂の含有量(上記粘着付与樹脂の含有量の合計)は特に限定されず、上記ラジアル型スチレン系エラストマーが、上記粘着剤層の高温での粘着力を向上させることができるとともに、室温での粘着力も確保することができるものであることから、上記粘着付与樹脂の含有量が比較的少ない量であっても充分な粘着力を得ることができる。上記粘着付与樹脂の含有量(上記粘着付与樹脂の含有量の合計)は、上記ラジアル型スチレン系エラストマー100重量部に対する好ましい下限が5重量部、より好ましい下限が10重量部、好ましい上限が100重量部、より好ましい上限が80重量部である。上記粘着付与樹脂の含有量(上記粘着付与樹脂の含有量の合計)が上記範囲であることで、より透明性と粘着力とに優れた粘着剤層とすることができる。
上記粘着剤層は、更に、SP値が8.5以下であり23℃で液体の軟化剤を含有していてもよい。
上記軟化剤を配合することで、上記粘着剤層の常温での粘着力を向上させることができる。また、高周波数帯での誘電特性は、材料の含水率にも影響されるところ、上記軟化剤を配合することで、上記粘着剤層を加湿環境下に晒した後の含水率を低くすることができ、屋外等の湿度変化のある環境下で使用する場合であっても高周波数帯での誘電特性を安定させることができる。また、上記軟化剤は、上記ラジアル型スチレン系エラストマー中の上記共役ジエン重合体ブロックと相溶するため、上記粘着剤層の透明性の低下を抑制することができる。
より上記共役ジエン重合体ブロックと相溶し、上記粘着剤層の透明性が低下しにくくなることから、上記軟化剤のSP値は8.3以下であることがより好ましい。上記軟化剤のSP値の下限は特に限定されないが、相溶性の観点から7.0以上であることが好ましい。
上記軟化剤としては、例えば、ポリブテン、n-ブテン-イソブチレン共重合体、ポリイソプレン、パラフィン系オイル等が挙げられる。なかでも、上記ラジアル型スチレン系エラストマーとよく相溶し、上記粘着剤層の透明性の低下をより抑えられることから、ポリブテンが好ましい。
上記軟化剤は、上記SP値を有していれば上記粘着剤層の透明性を低下させにくいものであるが、大量に用いてしまうと高温での粘着力を低下させることもあるため、常温での粘着力及び含水率よりも高温での粘着力をより重視する場合にはできる限り用いる量を少なくすることが好ましい。
上記軟化剤の含有量は特に限定されないが、上記ラジアル型スチレン系エラストマー100重量部に対して50重量部以下であることが好ましく、30重量部以下であることがより好ましく、0重量部であってもよい。上記軟化剤の含有量が上記範囲であることで、室温での粘着力及び含水率を改善しつつも高温での粘着力の低下を最小限に抑えることができ、性能のバランスに優れた粘着剤層とすることができる。なお、上記軟化剤の含有量が50重量部より多くなると、高温での粘着力低下の影響が大きくなる。
上記粘着剤層は、85℃、85%RHの環境下に72時間晒した後の含水率が1重量%以下であることが好ましい。高周波数帯での誘電特性は、材料の含水率にも影響されるため、上記粘着剤層の含水率が上記範囲であることで、屋外等の湿度変化のある環境下で使用する場合であっても高周波数帯での誘電特性を安定させることができる。上記粘着剤層の含水率は、0.5重量%以下であることがより好ましい。上記粘着剤層の含水率の下限は特に限定されず、小さいほど高周波数帯での誘電特性を安定させることができる。
なお、粘着剤層の85℃、85%RHの環境下に72時間晒した後の含水率は、常温における離型PETフィルム付き粘着剤層の重量をα(g)、85℃、85%RHの環境下に72時間晒した後の粘着剤層の水分量をγ(g)、剥離した離型PETフィルムを再度常温に戻した後の重量をβ(g)とした場合、下記式(1)により算出できる。粘着剤層の水分量は、カールフィッシャー法で測定することができる。
含水率(%)={γ/(α-β)}×100 (1)
上記粘着剤層は、10GHz帯におけるα値が0.005以下であることが好ましい。上記粘着剤層の10GHz帯におけるα値が上記範囲であれば、上記粘着剤層は高周波数帯での誘電特性に優れているといえ、粘着シートは、伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用できるものとなる。
なお、粘着剤層の10GHz帯におけるα値は、粘着剤層の10GHz帯における誘電率εと誘電正接tanδの値から下記式(2)により算出できる。粘着剤層の10GHz帯における誘電率及び誘電正接は、JIS C2565に準拠し、例えば、誘電率測定装置(例えば、エーイーティー社製、ADMS01Nc)を用いてTMモード共振器の測定モードにて測定することができる。
α=(√ε)×tanδ (2)
上記粘着剤層は、23℃におけるシクロオレフィンポリマー基材に対する粘着力が10N/25mm以上であることが好ましい。上記粘着剤層の23℃におけるシクロオレフィンポリマー基材に対する粘着力が上記範囲であることで、上記粘着剤層は難接着性材料からなる基材に対して高い粘着力を発揮することができる。上記粘着剤層の23℃におけるシクロオレフィンポリマー基材に対する粘着力は12N/25mm以上であることがより好ましい。
なお、粘着剤層の23℃におけるシクロオレフィンポリマー基材に対する粘着力は、JIS Z 0237:2009に従い、引張速度300mm/minの条件で180°剥離試験を行うことで測定することができる。
上記粘着剤層は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定において、重量平均分子量が25万以上の第1のピークと、上記第1のピークよりも重量平均分子量の小さい第2のピークとが観察されることが好ましい。上記第1のピークと上記第2のピークとの重量平均分子量の比(第1のピークの重量平均分子量/第2のピークの重量平均分子量)は、3.5以上であることが好ましい。
上記第1のピークは、上記ラジアル型スチレン系エラストマーの重量平均分子量を示すピークである。上記第1のピークの重量平均分子量、即ち、上記ラジアル型スチレン系エラストマーの重量平均分子量が25万以上であれば、上記粘着剤層の粘着力、特に高温での粘着力を高めることができる。なお、上記ラジアル型スチレン系エラストマーは、上記粘着剤層の高温での粘着力を向上させるためにハードセグメントの分子量を上げたとしても粘度上昇が抑えられる性質を有することから、上記粘着剤層の高温での粘着力を向上させたとしても、室温での粘着力も確保することができる。上記第1のピークの重量平均分子量は、30万以上であることがより好ましい。
また、上記第2のピークは、ジブロック構造のスチレン系ブロック共重合体(A-B)の重量平均分子量を示すピークである。上記第1のピークと上記第2のピークとが観察され、その重量平均分子量の比、即ち、上記ラジアル型スチレン系エラストマーの重量平均分子量とスチレン系ブロック共重合体(A-B)の重量平均分子量との比が3.5以上であれば、上記粘着剤層の室温での粘着力を保ちながら高温での粘着力も向上させることができる。即ち、上記粘着剤層は、分子量の大きいラジアル型スチレン系エラストマーと、濡れ性のよい低分子量のスチレン系ブロック共重合体(A-B)とを同時に含むことができるため、室温での粘着力を保ちながら高温での粘着力も向上させることができる。上記第1のピークと上記第2のピークとの重量平均分子量の比は、3.6以上であることがより好ましい。
なお、粘着剤層のGPC測定は、例えば、以下の方法により行うことができる。
粘着剤層の一部をテトラヒドロフラン(THF)に溶かした溶液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過してGPC検液を得る。GPCシステムとしてWaters社製「ACQUITYTM Advanced Polymer ChromatographyTM System」を、GPCカラムとしてWaters社製「HSPgelTM HR MB-M(6.0mm×150mm)」を、検出器として示差屈折率検出器を使用して、GPC測定を行う。試料注入量は20mg/mL溶液10μL、流速は0.5mL/分、カラム温度は40℃とする。解析ソフトとしては装置付属のEmpower3を使用する。標品としてポリスチレン(ピークトップ分子量:2110000、1090000、427000、190000、37900、18100、5970、2420、500)(東ソー社製)を用いる。標品としてポリスチレンを測定し、解析ソフトで溶出量をポリスチレン分子量に換算する検量線を作成して解析し、この検量線を用いてGPC溶出容量から重量平均分子量(Mw)を換算する。
また、第1のピークの重量平均分子量と第2のピークの重量平均分子量とは、それぞれ以下のように算出することができる。
溶出時間が3.0~4.7minの間にピークトップがあり、最も溶出時間の早いピークの検出初めの時間からピークトップ後の変曲点までを第1のピークとする。第1のピークは、面積が全体の50%以上を占めるものである。第1のピークの重量平均分子量(Mw)は、この変曲点で縦分割して得られたピークの重量平均分子量(Mw)である。一方、溶出時間が4.1~5.5minの間の第1のピークの変曲点から次の変曲点までを第2のピークとする。第2のピークは、面積が全体の10%以上を占めるものである。第2のピークの重量平均分子量(Mw)は、この変曲点で縦分割して得られたピークの重量平均分子量(Mw)である。
上記粘着剤層のゲル分率は特に限定されないが、好ましい下限が30重量%である。上記粘着剤層のゲル分率が30重量%以上であれば、上記粘着剤層の高温での貯蔵弾性率が高まり、高温での粘着力をより向上させることができるとともに、室温での粘着力も確保することができる。上記粘着剤層のゲル分率のより好ましい下限は45重量%、更に好ましい下限は50重量%である。上記粘着剤層のゲル分率の上限は特に限定されないが、高すぎると粘着力が低下することから、好ましい上限は70重量%である。
なお、粘着剤層のゲル分率は、例えば、次のようにして測定することができる。
粘着シートの離型フィルムを剥がし、50mm×25mmの平面長方形状に切断して試験片を作製し、試験片の重量Wを測定する。試験片を酢酸エチル中に23℃にて24時間浸漬した後、200メッシュのステンレスメッシュを用いて試験片を酢酸エチルから取り出して、110℃の条件下で1時間乾燥させる。乾燥後の試験片の重量Wを測定し、下記式(3)によりゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=100×(W-W)/(W-W) (3)
(W:基材の重量、W:酢酸エチル浸漬前の試験片の重量、W:酢酸エチル浸漬、乾燥後の試験片の重量)
上記粘着剤層のゲル分率を上記範囲に調整する方法は特に限定されず、例えば、上記ラジアル型スチレン系エラストマー、上記粘着付与樹脂等を架橋する方法、架橋に関わる上記ラジアル型スチレン系エラストマー、上記粘着付与樹脂等の種類及び量を調整する方法等が挙げられる。また、架橋反応を引き起こす架橋反応開始剤、架橋を促進する架橋助剤等の種類及び量を調整する方法、架橋を促進するエネルギー源であるUV光の照射強度及び照射時間を調整する方法、電子線照射の照射強度、照射時間及び加速電圧を調整する方法、架橋阻害剤の種類及び量を調整する方法等も挙げられる。
上記架橋の方法は特に限定されず、例えば、上記ラジアル型スチレン系エラストマー、上記粘着付与樹脂等に予め官能基を導入して化学的に架橋させる方法、上記ラジアル型スチレン系エラストマー、上記粘着付与樹脂等にUV光を照射することにより架橋させる方法等が挙げられる。また、上記ラジアル型スチレン系エラストマー、上記粘着付与樹脂等を電子線照射により架橋させる方法、上記ラジアル型スチレン系エラストマー、上記粘着付与樹脂等に架橋性官能基を電子線照射によりグラフトさせた後、熱により架橋させる方法等も挙げられる。なかでも、化学的に架橋させる方法では官能基を導入する必要があり、該官能基に起因して上記粘着剤層の誘電正接が大きくなりやすいことから、UV光を照射することにより架橋させる方法、及び、電子線照射により架橋させる方法が好ましく、電子線照射により架橋させる方法がより好ましい。
上記電子線照射により架橋させる方法における電子線照射強度は特に限定されないが、80kGy以上が好ましく、200kGy以上、350kGy以下がより好ましい。
上記粘着剤層の厚みは特に限定されないが、好ましい下限は1μm、好ましい上限は300μmである。上記粘着剤層の厚みがこの範囲内であると、充分な粘着力と取り扱い性とを両立することができる。上記粘着剤層の厚みのより好ましい下限は2.5μm、より好ましい上限は200μmである。
本発明の粘着シートは、上記粘着剤層を有していれば、基材を有するサポートタイプであってもよく、基材を有さないノンサポートタイプであってもよい。なかでも、コスト及び薄さの観点から、ノンサポートタイプであることが好ましい。
本発明の粘着シートは、ヘイズが5.0%以下であることが好ましい。上記ヘイズが5.0%以下であることで、粘着シートを液晶ディスプレイ等の光学デバイスの固定に用いることができる。上記ヘイズは1.0%以下であることがより好ましい。
本発明の粘着シートを製造する方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、離型処理を施したフィルム上に上記ラジアル型スチレン系エラストマー及び上記粘着付与樹脂、必要に応じて軟化剤等のその他の添加剤を配合した粘着剤溶液を塗工し、乾燥させて粘着剤層を形成し、粘着剤層上に離型処理を施したフィルムを重ね合わせることによって製造することができる。
本発明の粘着シートの用途は、導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体における部材間の貼り合わせ、基板の内部の部材間の貼り合わせ、或いは、導電パターンが形成されたフィルム又は基板と他の部材との貼り合わせのために用いられる限りにおいて、特に限定されない。上記導電パターンが形成されたフィルム又は基板は特に限定されず、上述したように、電子機器に用いられる導電パターンが形成されたフィルム又は基板であればよい。上記電子機器は特に限定されず、例えば、携帯電子機器、車載用電子機器、基地局アンテナ、基地局送受信機器、スマートグラス等が挙げられる。
本発明によれば、伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用することができ、シクロオレフィンポリマー等の難接着性材料からなる基材に対して高い粘着力を発揮できる導電パターンが形成されたフィルム用又は基板用粘着シートを提供することができる。
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
<ベース樹脂>
実施例及び比較例において、以下の方法で合成したラジアル型スチレン系エラストマー、非ラジアル型スチレン系エラストマー及びアクリル系ポリマー、並びに、市販のベース樹脂を用いた。
(ラジアル型スチレン系エラストマー(Mw30万)の合成)
オートクレーブ中に脱気、脱水されたシクロヘキサン4000g、1,3-ブタジエンモノマー200g、n-ブチルリチウム(n-BuLi)3.0g及びテトラヒドロフラン(THF)をモル比でn-BuLi/THF=40の割合で加えた。次いで、重合開始温度の40℃にて40分重合し、スチレンモノマー100gを加えて60分重合した(芳香族アルケニル重合体ブロック(A))。次いで、1,3-ブタジエンモノマー700gを加えて150分重合した(ジブロック構造のスチレン系ブロック共重合体(A-B))。カップリング剤としてテトラクロロシラン(SiCl)をポリマー末端に対して0.25モル量加えてジブロック構造のスチレン系ブロック共重合体(A-B)のカップリング反応を行い、結合スチレン含有量10%のスチレン系ブロック共重合体を得た。
この共重合体を精製乾燥したシクロヘキサンで希釈し、重合体濃度5重量%に調整して水素添加反応に供した。
水素添加反応では、まず、充分に乾燥した容量2Lの撹拌器付オートクレーブに共重合体溶液1000gを仕込み、減圧脱気後水素置換し、撹拌下90℃に保持した。
次に、ジ-p-トリルビス(η-シクロペンダジエニル)チタニウムを0.2ミリモル含むシクロヘキサン溶液50mlと、n-ブチルリチウム(n-BuLi)0.108ミリモルを含むシクロヘキサン溶液10mlとを0℃、2.0kg/cmの水素圧下で混合し、これをオートクレーブの中の共重合体溶液に加えた。
撹拌下で水素ガス供給圧0.7MPa-Gauge、反応温度80℃で水素添加反応を開始し、水素の吸収が終了した時点で、反応溶液を常温、常圧に戻し、反応容器から抜き出すことにより、ラジアル型スチレン系エラストマー(A-B)Cを得た。
得られたラジアル型スチレン系エラストマー(A-B)Cは、H-NMR分析から、ブタジエン単位の95%以上、スチレン単位の5%未満が水素添加されていた。
得られたラジアル型スチレン系エラストマー(A-B)Cをテトラヒドロフラン(THF)に溶かした溶液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過してGPC検液を得た。GPCシステムとしてWaters社製「ACQUITYTM Advanced Polymer ChromatographyTM System」を、GPCカラムとしてWaters社製「HSPgelTM HR MB-M(6.0mm×150mm)」を、検出器として示差屈折率検出器を使用して、GPC測定を行った。試料注入量は20mg/mL溶液10μL、流速は0.5mL/分、カラム温度は40℃とした。解析ソフトとしては装置付属のEmpower3を使用した。標品としてポリスチレン(ピークトップ分子量:2110000、1090000、427000、190000、37900、18100、5970、2420、500)(東ソー社製)を用いた。標品としてポリスチレンを測定し、解析ソフトで溶出量をポリスチレン分子量に換算する検量線を作成して解析し、この検量線を用いてGPC溶出容量から重量平均分子量(Mw)を換算した。
(ラジアル型スチレン系エラストマー(Mw50万)の合成)
n-ブチルリチウム(n-BuLi)の配合量を変更することにより重量平均分子量(Mw)を50万としたこと以外はラジアル型スチレン系エラストマー(Mw30万)の合成と同様にして、ラジアル型スチレン系エラストマー(Mw50万)を得た。
(非ラジアル型スチレン系エラストマー(Mw50万)の合成)
カップリング剤としてメチルジクロロシランを用い、スチレン、1,3-ブタジエン及びカップリング剤の配合量を変更したこと以外はラジアル型スチレン系エラストマー(Mw50万)の合成と同様にして、非ラジアル型スチレン系エラストマー(Mw50万)を得ようと試みた。しかしながら、重量平均分子量(Mw)を50万以上に調整しようとすると重合の進行とともにゲル化が起こり、非ラジアル型スチレン系エラストマー(Mw50万)及び粘着シートを得ることができなかった。
(アクリル系ポリマーの合成)
温度計、攪拌機、冷却管、紫外線照射装置を備えた反応器に、モノマーとして2-エチルヘキシルアクリレート39.9重量部、シクロヘキシルアクリレート30重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート22重量部、ジメチルアクリルアミド8重量部、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド0.1重量部を投入した。該モノマー混合物に、光重合開始剤として2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン0.05重量部を投入し、窒素ガスを吹き込んで窒素置換した。次いで、粘度(BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度25℃)が約4Pa・sになるまで反応器内に紫外線を照射して、モノマー混合物の一部が重合したアクリル系ポリマー前駆体を得た。
得られたアクリル系ポリマー前駆体に、架橋剤として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2重量部及び1,6-ヘキサンジオールジアクリレート0.05重量部、光重合開始剤として2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン0.15重量部を加えて攪拌し、アクリル系ポリマーを得た。なお、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとして信越化学工業社製、KBM-403を、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートとして新中村化学工業社製、A-HD-Nを、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンとしてIGM RESINS B.V.社製、Omnirad651を用いた。
(市販品のベース樹脂)
・SEPS(Mw15万)(セプトン2063、SEPSブロック共重合体、クラレ社製)
・ポリイソブチレン(OPPANOL N80、BASF社製)
<軟化剤>
実施例及び比較例において以下の軟化剤を用いた。
・日石ポリブテンHV-300(表中ではHV-300):n-ブテン-イソブチレン共重合体、SP値7.0~8.5、流動点-55℃、JXTGエネルギー社製
・日石ポリブテンLV-100(表中ではLV-100):n-ブテン-イソブチレン共重合体、SP値7.0~8.5、流動点-12.5℃、JXTGエネルギー社製
<粘着付与樹脂>
実施例及び比較例において以下の粘着付与樹脂を用いた。
(粘着付与樹脂(T1))
・YSレジンTO105(表中ではTO105):芳香族変性テルペン樹脂、SP値8.5~9.0、軟化点105℃、ヤスハラケミカル社製
・ロジンエステルKE311(表中ではKE311):超淡色ロジンエステル樹脂、SP値8.5~9.0、軟化点100℃、荒川化学社製
(粘着付与樹脂(T2))
・YSレジンPX100(表中ではPX100):テルペン樹脂、SP値8.0~8.5、軟化点100℃、ヤスハラケミカル社製
・アルコンP125:水素化石油樹脂(脂肪族炭化水素樹脂)、SP値8.0~8.5、軟化点100℃、荒川化学社製
・Regalrez1126:水添αメチルスチレン系樹脂、SP値8.2、軟化点126℃、イーストマンケミカル社製
・PlastolynR1140:脂肪族炭化水素樹脂、SP値8.1、軟化点140℃、イーストマンケミカル社製
(その他)
・FTR6100:スチレン共重合体、SP値8.7~9.2、軟化点110℃、三井化学社製
・FMR0150:スチレン共重合体、SP値8.7~9.2、軟化点145℃、三井化学社製
(実施例1)
350重量部のトルエンに得られたラジアル型スチレン系エラストマーを100重量部、粘着付与樹脂(T2)であるPX100を30重量部加えて粘着剤溶液を得た。厚み50μmの離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの離型処理面上に、得られた粘着剤溶液を、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗工した後、100℃で10分間乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、粘着剤層のPETフィルムが積層されていない面に同様のPETフィルムを離型処理が施された面が粘着剤層側となるように積層して粘着シートを得た。
得られた粘着シートにおける粘着剤層のゲル分率を、上述した式(3)により算出する方法によって求めた。
(実施例2~22、比較例1~9)
粘着剤層の組成を表1~4に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、粘着シートを得た。
実施例9及び17~22では、粘着剤層を形成した後、電子線照射装置EBC-200(NHVコーポレーション社製)を用いて粘着剤層に電子線照射を行い、粘着剤層を架橋させた。
なお、比較例6では、上述したように非ラジアル型スチレン系エラストマー(Mw50万)及び粘着シートを得ることができなかった。
<評価>
実施例、比較例で得られた粘着シートについて、以下の評価を行った。結果を表1~3に示した。
(1)含水率の測定
粘着シートを23℃、50%RHで72時間(3日間)以上静置した後、1.3cm×4cmに裁断し、一方の離型PETフィルム(離型PETフィルム1とする)を剥離してその重量α(g)を測定した。離型PETフィルム1を剥離した粘着面に、厚さ25μmのアルミニウム箔を貼り合せ、85℃、85%RHの環境下に72時間(3日間)静置した。もう一方の離型PETフィルム(離型PETフィルム2とする)を剥離し、カールフィッシャー法による水分測定装置(平沼微量水分測定装置、AQ-2000)及び水分気化装置(平沼水分気化装置、EV-2000)を用いて、120℃10分間加熱した際に発生した水分量γ(g)を測定した。また、剥離した離型PETフィルム2を再度23℃、50%RHで72時間(3日間)以上静置して重量β(g)を測定した。含水率を下記式(1)により算出した。
含水率(%)={γ/(α-β)}×100 (1)
(2)10GHz帯での誘電特性(誘電率、誘電正接及びα値)の測定
粘着シートを23℃、50%RHで72時間(3日間)以上静置した後、厚みが100μmとなるまで複数枚積層した。積層後の粘着シートの離型PETフィルムを剥離し、上下面に厚み50μmのPETフィルムを貼り合せた。得られたPETフィルムと粘着シートとの積層体を幅3mm、長さ80mmに裁断し、JIS C2565に準拠し、誘電率測定装置(エーイーティー社製、ADMS01Nc)を用いてTMモード共振器の測定モードにて誘電特性を測定した。
PETフィルムのみの誘電特性も上記方法で測定し、PETフィルムと粘着シートとの積層体の誘電特性、及び、PETフィルムのみの誘電特性の測定値を用いて粘着シート単独の誘電特性を求めた。得られたα値をα-1値とした。
(3)誘電特性の変化率の測定
上記(2)と同様にして得られたPETフィルムと粘着シートとの積層体を、85℃、85%RHの環境下に72時間(3日間)晒した後で、上記(2)と同様にして粘着シート単独の誘電特性を求めた。得られたα値をα-2値とした。
α-1値及びα-2値から、(α-2)/(α-1)の値を算出した。(α-2)/(α-1)の値が1.2以上の場合を×、1.2未満の場合を○とした。
(4)23℃及び85℃での粘着力の測定(対PI及び対COP)
粘着シートを25mm幅に裁断して試験片を作製した。次いで、得られた試験片をポリイミド(PI)基材又はシクロオレフィンポリマー(COP)基材に貼り、2kgのゴムローラーで1往復することによって圧着して測定サンプルを作製した。その後、得られた測定サンプルについてJIS Z 0237:2009に従い、引張速度300mm/minの条件で180°剥離試験を行い、23℃における粘着力を測定した。
糊残りが生じた場合には、実仕様上貼り合せた部材がズレたり剥がれたりするため×とした。糊残りせず被着体界面で剥がれた場合のうち、粘着力が8N/25mm未満を×、8N/25mm以上10N/25mm未満を△、10N/25mm以上~13N/25mm未満を〇、13N/25mm以上を◎とした。
次いで、シクロオレフィンポリマー(COP)基材を用いた場合については、同様の方法で測定サンプルを作製し、85℃、10分の熱処理を行った。熱処理直後の測定サンプルについて、23℃における粘着力と同様の方法で180°剥離試験を行い、85℃における粘着力を測定した。
糊残りが生じた場合には、実仕様上貼り合せた部材がズレたり剥がれたりするため×とした。糊残りせず被着体界面で剥がれた場合のうち、粘着力が1N/25mm未満を×、1N/25mm以上3N/25mm未満を△、3N/25mm以上4N/25mm未満を〇、4N/25mm以上を◎とした。
(5)基板に対する密着性の評価
基板(日立化成社製、MCL-E-679FGタイプ、銅箔厚み12μm/基材厚み0.6mm、基材の材質:シクロオレフィンポリマー(COP))を用意した。この基板の超粗化系密着性向上処理(CZ粗化処理プロセス)(前処理:メックブライトCA-5330A、銅表面の粗化:メックエッチボンドCZ8201)を実施し、エッチング量が0.5μmとなるようにした。
処理後の基板に対して粘着シートを2kgのゴムローラーで1往復することによって圧着して貼り合わせた。端部からの剥がれなく粘着シートが密着できたものを○、粘着シートの密着が不充分であったものを×とした。
(6)透明性の評価
粘着シートについてヘイズメーター(村上色彩技術研究所社製、HM-150)を用いてヘイズ及びb*を測定した。粘着シートを80℃、85%RHの環境下に196時間晒した後、同様にしてヘイズ及びb*を測定した。80℃、85%RHの環境下に196時間晒した後の測定値について、ヘイズが0.5以下かつb*が0.3以下を◎、ヘイズが0.5~1かつb*が0.3以下を〇、ヘイズが0.5~1かつb*が0.3~0.5を△、ヘイズが1以上又はb*が0.5以上を×とした。
Figure 2022053541000001
Figure 2022053541000002
Figure 2022053541000003
Figure 2022053541000004
本発明によれば、伝送信号が高周波数化した場合にも好適に使用することができ、シクロオレフィンポリマー等の難接着性材料からなる基材に対して高い粘着力を発揮できる導電パターンが形成されたフィルム用又は基板用粘着シートを提供することができる。

Claims (7)

  1. 導電パターンが形成されたフィルムを含む積層体における部材間の貼り合わせ、基板の内部の部材間の貼り合わせ、或いは、導電パターンが形成されたフィルム又は基板と他の部材との貼り合わせのために用いられる粘着シートであって、
    一般式(A-B)Cで表される構造を有するラジアル型スチレン系エラストマーと、粘着付与樹脂とを含有する粘着剤層を有し、
    前記粘着付与樹脂は、SP値が8.0~9.0である芳香族環を含む天然物系の粘着付与樹脂(T1)、及び、SP値が7.5~8.5である芳香族環を含まない石油樹脂系又は天然物系の粘着付与樹脂(T2)からなる群より選択される少なくとも1つを含有する
    ことを特徴とする導電パターンが形成されたフィルム用又は基板用粘着シート。
    A:芳香族アルケニル重合体ブロック
    B:共役ジエン重合体ブロック
    C:カップリング剤に由来する成分
    n:3以上の整数
  2. 前記粘着剤層は、85℃、85%RHの環境下に72時間晒した後の含水率が1重量%以下であり、10GHz帯におけるα値が0.005以下であり、23℃におけるシクロオレフィンポリマー基材に対する粘着力が10N/25mm以上であることを特徴とする請求項1記載の導電パターンが形成されたフィルム用又は基板用粘着シート。
  3. 前記粘着剤層は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定において、重量平均分子量が25万以上の第1のピークと、前記第1のピークよりも重量平均分子量の小さい第2のピークとが観察され、前記第1のピークと前記第2のピークとの重量平均分子量の比(第1のピークの重量平均分子量/第2のピークの重量平均分子量)が3.5以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の導電パターンが形成されたフィルム用又は基板用粘着シート。
  4. 前記粘着付与樹脂の含有量が、前記ラジアル型スチレン系エラストマー100重量部に対して5重量部以上、80重量部以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の導電パターンが形成されたフィルム用又は基板用粘着シート。
  5. 前記粘着剤層は、更に、SP値が8.5以下であり23℃で液体の軟化剤を含有し、前記軟化剤の含有量が、前記ラジアル型スチレン系エラストマー100重量部に対して50重量部以下であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の導電パターンが形成されたフィルム用又は基板用粘着シート。
  6. 前記ラジアル型スチレン系エラストマーは、重量平均分子量(Mw)が30万以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の導電パターンが形成されたフィルム用又は基板用粘着シート。
  7. 前記粘着剤層は、ゲル分率が30重量%以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の導電パターンが形成されたフィルム用又は基板用粘着シート。

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WO2023048013A1 (ja) * 2021-09-21 2023-03-30 積水化学工業株式会社 粘着シート、積層体、及び、電磁波を発信又は受信する装置

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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