JP2022053537A - チオール化合物含有組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、セルロース繊維の分散性及び透明性に優れたチオール化合物含有組成物に関する。【解決手段】チオール化合物と改質セルロース繊維とを含有する、チオール化合物含有組成物であって、前記改質セルロース繊維がセルロースI型結晶を有し、以下のセルロース繊維(A)及びセルロース繊維(B)からなる群から選ばれる一種以上である、チオール化合物含有組成物。改質セルロース繊維(A) イオン性基を含むセルロース繊維のイオン性基に修飾基が結合してなる改質セルロース繊維改質セルロース繊維(B) セルロース繊維のヒドロキシ基に修飾基が結合されてなる改質セルロース繊維【選択図】なし

Description

本発明はチオール化合物含有組成物及びその製造方法に関する。
従来、有限な資源である石油由来のプラスチック材料が多用されていたが、近年、環境に対する負荷の少ない技術が脚光を浴びるようになり、かかる技術背景の下、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロース繊維、その中でも特に微細セルロース繊維を用いた材料は、種々の機械的特性が著しく向上することから注目されている。
特許文献1には、セルロースナノファイバー、樹脂バインダーおよび/または反応性基を有する有機化合物を含むことを特徴とする組成物が記載され、樹脂バインダーが、ヒドロキシル基(-OH)、カルボキシル基(-COOH)、アミノ基(-NH)、チオール基(-SH)の内の少なくとも一種および/またはそれらの誘導体、および/または二重結合を有する有機化合物であることが開示されている。
特開2015-160870号公報
しかしながら、特許文献1において、樹脂バインダー中のセルロース繊維の分散性という点で十分とは言えない。分散性の高いセルロース繊維を含有するチオール化合物含有組成物を用いることで、得られる樹脂組成物の透明性に優れ、強度、耐衝撃性の向上にも繋がると考えられる。
本発明は、セルロース繊維の分散性及び透明性に優れたチオール化合物含有組成物に関する。
本発明は、下記の〔1〕~〔3〕に関する。
〔1〕 チオール化合物と改質セルロース繊維とを含有する、チオール化合物含有組成物であって、前記改質セルロース繊維がセルロースI型結晶を有し、以下のセルロース繊維(A)及びセルロース繊維(B)からなる群から選ばれる一種以上である、チオール化合物含有組成物。
改質セルロース繊維(A) イオン性基を含むセルロース繊維のイオン性基に修飾基が結合してなる改質セルロース繊維
改質セルロース繊維(B) セルロース繊維のヒドロキシ基に修飾基が結合されてなる改質セルロース繊維
〔2〕 前記〔1〕に記載のチオール化合物含有組成物の製造方法であって、500nmを超える平均繊維長の改質セルロース繊維をチオール化合物中で微細化する工程を含み、微細化工程に供される改質セルロース繊維が、以下の改質セルロース繊維(A)及び改質セルロース繊維(B)からなる群から選ばれる一種以上である、チオール化合物含有組成物の製造方法。
改質セルロース繊維(A):イオン性基を含むセルロース繊維のイオン性基に修飾基が結合してなる改質セルロース繊維
改質セルロース繊維(B):セルロース繊維のヒドロキシ基に修飾基が結合されてなる改質セルロース繊維
〔3〕 前記〔1〕に記載のチオール化合物含有組成物の重合生成物。
本発明によれば、セルロース繊維の分散性及び透明性に優れたチオール化合物含有組成物を提供することができる。
本発明の発明者らが上記課題について鋭意検討した結果、特定の改質セルロース繊維をチオール化合物に配合することで、改質セルロース繊維の分散性に優れたチオール化合物含有組成物が得られることを新たに見出した。かかるメカニズムは定かではないが、特定の改質セルロースがチオール化合物に対して高い分散性を有しているためと推定される。
〔チオール化合物含有組成物〕
本発明のチオール化合物含有組成物は、チオール化合物と改質セルロース繊維とを含む。
〔チオール化合物〕
チオール化合物としては、チオール基(-SH)を含有する化合物であれば特に限定されるものではないが、分散性の観点から、チオール基を2つ以上有するポリチオール化合物が好ましい。ポリチオール化合物は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、またチオール基(-SH)を2個以上有していれば、他の官能基、例えばアミン基やヒドロキシル基などの活性水素をもつ官能基を有していてもよい。このような二官能以上のポリチオール化合物の例としては、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトアセテート、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオナート、トリメチロールプロパントリスメルカプトアセテート、トリメチロールプロパントリスメルカプトプロピオナート、1,2,3-トリメルカプトプロパン、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、1,2-ビス(メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、およびビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカンおよび4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン等が挙げられる。これらは単独でもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
更に、メルカプトカルボン酸の多価アルコールエステル、ポリカルボン酸を含むモノメルカプタン一価アルコールのエステル、ポリプロピレングリコールやポリエチレングリコール鎖の末端にメルカプタン基を有する化合物、米国特許第4,126,505号に記載の他のエステル含有ポリメルカプタン、米国特許第4,092,293号に記載のプロポキシル化エーテルポリチオール、米国特許第3,258,495号に記載の750~7000の分子量を有するポリメルカプタン含有樹脂、米国特許第2,919,255号に記載のジメルカプトポリスルフィドポリマー、チオール化オリゴマートリグリセリド等が挙げられる。これらの中では、メルカプトカルボン酸の多価アルコールエステルが好ましい。メルカプトカルボン酸の多価アルコールエステルとしては、例えば、トリメチロールプロパントリメルカプトプロピオン酸エステル、トリメチロールプロパントリチオグルコン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラメルカプトプロピオン酸エステル、ペンタエリスリトールテトラチオグルコン酸エステル、トリメチロールエタントリメルカプトプロピオン酸エステル等が好ましく挙げられる。
ポリチオール化合物は、イソシアネートと反応させて、チオウレタン樹脂を製造することができる。
チオール化合物の平均分子量としては、分散性の観点から、好ましくは100以上、より好ましくは150以上、更に好ましくは200以上である。また、分散性の観点から、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下、更に好ましくは1000以下である。本明細書において、チオール化合物の平均分子量は質量平均分子量である。
〔改質セルロース繊維〕
本発明のチオール化合物含有組成物に含まれる改質セルロース繊維は、以下の改質セルロース繊維(A)及び改質セルロース繊維(B)からなる群より選択される一種以上であり、(a)炭化水素基、及び(b)ポリマー基からなる群より選択される1種以上の修飾基を含有するものが好ましい。
改質セルロース繊維(A):イオン性基を含むセルロース繊維のイオン性基に修飾基が結合してなる改質セルロース繊維
改質セルロース繊維(B):セルロース繊維のヒドロキシ基に修飾基が結合されてなる改質セルロース繊維
改質セルロース繊維の原料のセルロース繊維としては、環境負荷低減の観点から、天然セルロース繊維を用いることが好ましい。天然セルロース繊維としては、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
原料のセルロース繊維の平均繊維径や平均繊維長は特に限定されない。平均繊維径としては、例えば、入手容易性及びコスト低減の観点から、好ましくは1μm以上であり、同様の観点から、好ましくは100μm以下である。平均繊維長としては、例えば、入手容易性及びコスト低減の観点から、好ましくは1000μm以上であり、同様の観点から、好ましくは10000μm以下である。原料のセルロース繊維の平均繊維径や平均繊維長は、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
<改質セルロース繊維(A)>
本発明における改質セルロース繊維(A)とは、イオン性基を含むセルロース繊維のイオン性基に修飾基が結合してなる改質セルロース繊維である。
(イオン性基)
イオン性基を含むセルロース繊維とは、セルロース繊維中にイオン性基を含むように変性されたセルロース繊維のことである。
イオン性基としては、例えば、アニオン性基及びカチオン性基が挙げられる。本明細書において、アニオン性基を有するセルロース繊維を「アニオン変性セルロース繊維」とも称する。アニオン性基としては、例えばカルボキシ基、スルホン酸基及びリン酸基等が挙げられ、カチオン性基としては、その基内にアンモニウム、ホスホニウム、スルホニウムなどのオニウムを有する基が挙げられる。改質セルロース繊維(A)への導入効率の観点から、イオン性基としてはアニオン性基が好ましく、アニオン性基としてはカルボキシ基がより好ましい。アニオン変性セルロース繊維は、修飾基を導入する観点から、好ましくは酸化セルロース繊維又はカルボキシメチル化されたセルロース繊維であり、より好ましくは、セルロース構成単位のC6位がカルボキシ基であるセルロース繊維である。
イオン性基がアニオン性基である場合、アニオン性基の対となるイオン(カウンターイオン)は、金属イオン及びプロトンからなる群より選択される1種以上である。金属イオンとしては一価のカチオンが好ましく、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。改質セルロース繊維への反応効率の観点から、好ましくはプロトンである。
イオン性基を含むセルロース繊維におけるイオン性基の含有量は、安定的な微細化及び修飾基導入の観点から、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.4mmol/g以上、更に好ましくは0.6mmol/g以上である。同様の観点から、その上限は、好ましくは3.0mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、更に好ましくは2.0mmol/g以下である。イオン性基がアニオン性基の場合のアニオン性基の含有量は、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
(修飾基)
改質セルロース繊維(A)においては、イオン性基を含むセルロース繊維のイオン性基に修飾基が結合している。ここでの結合様式としては、イオン結合及び共有結合(例えば、アミド結合、エステル結合及びウレタン結合等)が挙げられる。
改質セルロース繊維(A)における修飾基としては、(a)炭化水素基、及び(b)ポリマー基からなる群より選択される1種以上の修飾基を含有するものが好ましい。これらの基は単独で又は2種以上を組み合わせて、改質セルロース繊維(A)に導入されていてもよい。(a)炭化水素基と(b)ポリマー基とが改質セルロース繊維(A)に導入されていることが分散性の観点から好ましい。
修飾基としての炭化水素基の炭素数は、分散性及び透明性を向上させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、同様の観点から、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、更に好ましくは24以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは18以下である。なお、炭化水素基の炭素数とは、別に規定の無い限り、一つの修飾基における炭素数のことを意味する。
鎖式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、オクタコサニル基等が挙げられる。
鎖式不飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブテン基、イソブテン基、イソプレン基、ペンテン基、ヘキセン基、ヘプテン基、オクテン基、ノネン基、デセン基、ドデセン基、トリデセン基、テトラデセン基、オクタデセン基が挙げられる。
環式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、シクロプロパン基、シクロブチル基、シクロペンタン基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる。アリール基及びアラルキル基としては、芳香族環そのものが置換されたものでも非置換のものであってもよい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ジフェニル基、トリフェニル基、ターフェニル基、及びこれらの基が後述する置換基で置換された基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、及びこれらの基の芳香族基が置換基でさらに置換された基などが挙げられる。それ以外の芳香族炭化水素基としては、例えば、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、及びこれらの基の芳香族が置換基でさらに置換された基などが挙げられる。
修飾基が炭化水素基であり、該炭化水素基が置換基を有する場合は、置換基として、例えば炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基;アルコキシ基の炭素数が1~6の直鎖又は分岐のアルコキシカルボニル基;臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;炭素数1~6のアシル基;アラルキル基;アラルキルオキシ基;炭素数1~6のアルキルアミノ基;アルキル基の炭素数が1~6のジアルキルアミノ基や、ヒドロキシ基、エーテル、アミド等を用いてもよい。なお、前述の各種の炭化水素基そのものが別の炭化水素基に置換基として結合していてもよい。
ポリマー基とは、ポリマー構造を含有する官能基である。ポリマー基の分子量は、分散性を向上させる観点から好ましくは100以上、より好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上、更に好ましくは600以上、更に好ましくは1,000以上、更に好ましくは1,500以上である。同様の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは7,000以下、更に好ましくは5,000以下、更に好ましくは4,000以下、更に好ましくは3,500以下、更に好ましくは2,500以下である。
ポリマー基は、分散性を向上させる観点から、好ましくは、酸素原子を有する構造によって連結される繰り返し構造を有する官能基、より好ましくは、ポリオキシアルキレン構造(アルキレンオキサイド鎖)、ポリシロキサン構造(シリコーン鎖)等の、酸素原子によって連結される繰り返し構造を有する官能基であり、より好ましくは、ポリオキシアルキレン構造を有し、更に好ましくはアルコキシポリオキシアルキレン基である。
ポリオキシアルキレン構造は、改質セルロース繊維の化学的安定性及びフィラーとしての分散安定性を確保する観点から、好ましくは炭素数が2以上8以下のオキシアルキレンから選ばれる1種又は2種以上のオキシアルキレンの(共)重合体構造、より好ましくは炭素数が2以上4以下のオキシアルキレンから選ばれる1種又は2種以上のオキシアルキレンの(共)重合体構造、更に好ましくはエチレンオキサイド(EO)及びプロピレンオキサイド(PO)から選ばれる1種又は2種のオキシアルキレンの(共)重合体構造、更に好ましくはエチレンオキサイド(EO)及びプロピレンオキサイド(PO)がランダム又はブロック状に重合した共重合体構造である。
エチレンオキサイド(EO)及びプロピレンオキサイド(PO)がランダム又はブロック状に重合した共重合体構造((EO/PO)共重合体構造)を含む基としては、例えば下記式(i’)で示される基が挙げられ、下記式(i)の化合物を用いて導入することができる。
Figure 2022053537000001
〔式中、Rは水素原子、炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はそのアミノアルキル基を示し、EO及びPOはランダム又はブロック状に存在し、aはEOの平均付加モル数を示す正の数、bはPOの平均付加モル数を示す正の数である。ここで、「そのアミノアルキル基」とは、炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を構成する水素原子の一つがアミノ基で置換された基を意味する。式(i)中、アミノ基とEO又はPOとの間に、炭素数1~3のアルキレン基が存在していてもよい。〕
が炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である場合、該アルキル基は好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基及びsec-プロピル基である。Rは、水素原子であってもよい。
aは、分散性及び透明性を向上させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上、更に好ましくは11以上、更に好ましくは15以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは25以上、更に好ましくは30以上、更に好ましくは40以上である。同様の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは70以下、更に好ましくは60以下、更に好ましくは50以下である。
bは、分散性及び透明性を向上させる観点から好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上である。同様の観点から、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、更に好ましくは25以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは15以下、更に好ましくは10以下、更に好ましくは5以下である。
前記炭素数1~3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基が挙げられる。
(EO/PO)共重合部位中のPOの含有率(モル%)は、前記aとbに基づいて計算することが可能であり、具体的にはb×100/(a+b)より求めることができる。POの含有率は、分散性を一層向上させる観点から好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは5モル%以上である。同様の観点から、好ましくは100モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは85モル%以下、更に好ましくは75モル%以下、更に好ましくは60モル%以下、更に好ましくは50モル%以下、更に好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下、更に好ましくは10モル%以下である。
(EO/PO)共重合体構造の分子量は、分散性を向上させる観点から、好ましくは100以上、より好ましくは200以上、更に好ましくは300以上、更に好ましくは400以上、更に好ましく500以上、更に好ましくは600以上、更に好ましくは1,000以上、更に好ましくは1,500以上である。同様の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは7,000以下、更に好ましくは5,000以下、更に好ましくは4,000以下、更に好ましくは3,500以下、更に好ましくは2,500以下である。
式(i)で表されるEO/PO共重合構造を有するアミンは、式(i’)で示される修飾基を導入するための修飾用化合物であり、該アミンについての詳細は、例えば特許第6105139号公報に記載されている。
前記EO/PO共重合構造を有するアミン(「EOPOアミン」とも称する。)は、例えば、市販品を好適に用いることができ、具体例としては、HUNTSMAN社製のJeffamine M-2070、Jeffamine M-2005、Jeffamine M-2095、Jeffamine M-1000、Jeffamine M-600、Jeffamine M-3085、Jeffamine ED-600、Jeffamine ED-900、Jeffamine ED-2003、Jeffamine D-230、Jeffamine D-400、Jeffamine D-2000、Jeffamine D-4000、Jeffamine T-3000、Jeffamine T-5000等が挙げられる。
改質セルロース繊維(A)における修飾基の平均結合量は、分散性を向上させる観点から、好ましくは0.01mmol/g以上、より好ましくは0.05mmol/g以上、更に好ましくは0.1mmol/g以上、更に好ましくは0.3mmol/g以上、更に好ましくは0.5mmol/g以上である。同様の観点から、好ましくは3.0mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、更に好ましくは2.0mmol/g以下、更に好ましくは1.8mmol/g以下、更に好ましくは1.5mmol/g以下である。修飾基として任意の2種以上の修飾基が同時に改質セルロース繊維(A)に導入されている場合、修飾基の平均結合量は、導入されている修飾基の合計量が前記範囲内であることが好ましい。
改質セルロース繊維(A)における修飾基の導入率は、分散性及び透明性の観点から、好ましくは10%以上であり、機械的強度に優れた成形体を得る観点から、好ましくは99%以下である。修飾基として任意の2種以上の修飾基が同時に導入されている場合には、導入率の合計が上限の100%を超えない範囲において、前記範囲内となることが好ましい。
修飾基の平均結合量及び導入率は、修飾基を導入するための化合物、即ち修飾用化合物の添加量や種類、反応温度、反応時間、溶媒の種類等によって調整することができる。修飾基の平均結合量(mmol/g)及び導入率(%)とは、改質セルロース繊維(A)において、イオン性基に修飾基が導入された(結合した)量及び割合のことである。修飾基の平均結合量及び導入率は、例えば、イオン性基がアニオン性基の場合には、後述の実施例に記載の方法で算出される。
(改質セルロース繊維(A)の製造方法)
改質セルロース繊維(A)は、例えば、イオン性基を含むセルロース繊維のイオン性基に修飾基を導入できるのであれば、特に限定なく公知の方法に従って製造することができる。例えば、イオン性基がカルボキシ基の場合、特開2018-024967号公報の段落0017~0106等を参照して改質セルロース繊維(A)を製造することができる。また、クロロ酢酸等のハロゲン化酢酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸及び無水アジピン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物やカルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物の誘導体等を、セルロース繊維と反応させて、セルロース繊維にカルボキシ基を導入することができる。イオン性基がスルホン酸基の場合、セルロース繊維へスルホン酸基を導入する方法としては、セルロース繊維に硫酸を添加し加熱する方法等が挙げられる。イオン性基がリン酸基の場合、セルロース繊維へリン酸基を導入する方法としては、乾燥状態又は湿潤状態のセルロース繊維に、リン酸又はリン酸誘導体の粉末や水溶液を混合する方法や、セルロース繊維の分散液にリン酸又はリン酸誘導体の水溶液を添加する方法等が挙げられる。修飾基を導入する方法としては、修飾基を有する化合物と、リン酸基を有するセルロース繊維とを混合する方法等が挙げられる。イオン性基がカチオン性基の場合、セルロース繊維にカチオン性基を導入する方法としては、セルロース繊維にアルカリの存在下においてカチオン化剤で処理する方法等が挙げられる。なお、改質セルロース繊維(A)の製造の際には、特開2018-024967号公報における低アスペクト比化処理や微細化工程を省略することができる。
<改質セルロース繊維(B)>
本発明における改質セルロース繊維(B)とは、セルロース繊維のヒドロキシ基に修飾基が結合してなる改質セルロース繊維である。
(修飾基)
改質セルロース繊維(B)において、セルロース繊維と修飾基とはエーテル結合を介して結合している。なお、本明細書において、「エーテル結合を介して結合」とは、セルロース繊維のヒドロキシ基に修飾基が反応して、エーテル結合した状態を意味する。
改質セルロース繊維(B)における修飾基は、好ましくは、置換基を有していてもよい炭化水素基である。ここで、置換基を有してもよい炭化水素基において、炭化水素基としては、飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基、フェニル基等の芳香族炭化水素基、又はシクロヘキシル基等の脂環式炭化水素基が挙げられる。また、本発明における置換基を有してもよい炭化水素基において、置換基としては、ハロゲン原子、オキシエチレン基等のオキシアルキレン基及びヒドロキシ基等が挙げられる。
このような改質セルロース繊維(B)の好適な態様(「態様1」とする)として、例えば、下記一般式(1)で表される修飾基及び下記一般式(2)で表される修飾基から選ばれる1種又は2種以上の修飾基がエーテル結合を介してセルロース繊維に結合しており、セルロースI型結晶構造を有するものが挙げられる。
-CH-CH(R)-R (1)
-CH-CH(R)-CH-(OA)-O-R (2)
〔式中、一般式(1)及び一般式(2)におけるRは水素原子又はヒドロキシ基を示し、Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1以上、好ましくは炭素数3以上30以下の炭化水素基を示し、一般式(2)におけるnは0以上50以下の数、Aは炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基を示す。〕
態様1の具体例としては、例えば、下記一般式(3)で表される改質セルロース繊維が例示される。
Figure 2022053537000002
〔式中、Rは同一又は異なって、水素、もしくは前記一般式(1)で表される修飾基及び前記一般式(2)で表される修飾基から選ばれる修飾基を示す。但し、全てのRが同時に水素である場合を除く。mは20以上3000以下の整数が好ましい。〕
一般式(3)で表される改質セルロース繊維(B)は、前記修飾基が導入されたセルロースユニットの繰り返し構造を有するものである。繰り返し構造の繰り返し数として、一般式(3)におけるmは、分散性の観点から20以上3000以下の整数が好ましい。
(置換基を有していてもよい炭化水素基)
態様1の改質セルロース繊維(B)は、前記の一般式(1)及び下記一般式(2)で表される修飾基から選ばれる1種又は2種以上の修飾基を単独で又は任意の組み合わせで導入される。なお、導入される修飾基が前記修飾基群のいずれか一方の場合であっても、各修飾基群においては同一の修飾基であっても2種以上が組み合わさって導入されてもよい。
分散性の観点から、一般式(1)及び一般式(2)におけるRはヒドロキシ基が好ましい。
一般式(1)におけるRの炭素数は、分散性の観点から、好ましくは25以下である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、イコシル基、トリアコンチル基、フェニル基、メチルフェニル基等が例示される。
一般式(2)におけるRの炭素数は、分散性の観点から、好ましくは4以上であり、入手性及び反応性向上の観点から、好ましくは27以下である。具体的には、前記した一般式(1)におけるRと同じものが挙げられる。
一般式(2)におけるAは、隣接する酸素原子とオキシアルキレン基を形成する。Aの炭素数は、入手性及びコストの観点から、好ましくは2以上であり、同様の観点から、好ましくは4以下である。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が例示される。
一般式(2)におけるnは、アルキレンオキサイドの付加モル数を示す。nは、分散性、入手性及びコストの観点から、好ましくは3以上であり、同様の観点から、好ましくは40以下である。
一般式(2)におけるAとnの組み合わせとしては、分散性の観点から、好ましくはAが炭素数2以上3以下の直鎖又は分岐鎖の2価の飽和炭化水素基で、nが0以上20以下の数の組み合わせである。
一般式(1)で表される修飾基の具体例としては、例えば、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、イコシル基、プロピルヒドロキシエチル基、ブチルヒドロキシエチル基、ペンチルヒドロキシエチル基、ヘキシルヒドロキシエチル基、ヘプチルヒドロキシエチル基、オクチルヒドロキシエチル基、2-エチルヘキシルヒドロキシエチル基、ノニルヒドロキシエチル基、デシルヒドロキシエチル基、ウンデシルヒドロキシエチル基、ドデシルヒドロキシエチル基、ヘキサデシルヒドロキシエチル基、オクタデシルヒドロキシエチル基、イソオクタデシルヒドロキシエチル基、イコシルヒドロキシエチル基、トリアコンチルヒドロキシエチル基等が挙げられる。
一般式(2)で表される修飾基の具体例としては、例えば、3-ブトキシ-2-ヒドロキシ-プロピル基、3-ヘキトキシエチレンオキシド-2-ヒドロキシ-プロピル基、3-ヘキトキシ-2-ヒドロキシ-プロピル基、3-オクトキシエチレンオキシド-2-ヒドロキシ-プロピル基、3-オクトキシ-2-ヒドロキシ-プロピル基、6-エチル-3-ヘキトキシ-2-ヒドロキシ-プロピル基、6-エチル-3-ヘキトキシエチレンオキシド-2-ヒドロキシ-プロピル基、3-デトキシエチレンオキシド-2-ヒドロキシ-プロピル基、3-デトキシ-2-ヒドロキシ-プロピル基、3-ウンデトキシエチレンオキシド-2-ヒドロキシ-プロピル基、3-ウンデトキシ-2-ヒドロキシ-プロピル基、3-ドデトキシエチレンオキシド-2-ヒドロキシ-プロピル基、3-ドデトキシ-2-ヒドロキシ-プロピル基、3-ヘキサデトキシエチレンオキシド-2-ヒドロキシ-プロピル基、3-ヘキサデトキシ-2-ヒドロキシ-プロピル基、3-オクタデトキシエチレンオキシド-2-ヒドロキシ-プロピル基、3-オクタデトキシ-2-ヒドロキシ-プロピル基等が挙げられる。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は0以上50以下であればよく、例えば、前記したエチレンオキシド等のオキシアルキレン基を有する置換基において付加モル数が10、12、13、20モルの置換基が例示される。
(モル置換度(MS))
態様1の改質セルロース繊維(B)において、セルロースの無水グルコースユニット1モルに対する修飾基が導入されたモル量(モル置換度:MS)は、修飾基の種類により一概には限定できないが、分散性の観点から、好ましくは0.0001モル以上、より好ましくは、0.01モル以上、更に好ましくは0.1モル以上であり、また、セルロースI型結晶構造を有し、同様の観点から、好ましくは1.5モル以下、より好ましくは1.2モル以下、更に好ましくは1モル以下である。ここで、結合した修飾基が複数種の修飾基で構成されている場合、結合した修飾基のMSは、各修飾基のMSの合計である。なお、本明細書において、改質セルロース繊維(B)における修飾基のMSは、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
<改質セルロース繊維(B)の製造方法>
本発明における改質セルロース繊維(B)は、上記したようにセルロース繊維に、修飾基、好ましくは前記の修飾基を有していてもよい炭化水素基がエーテル結合を介して結合しているが、修飾基の導入は、特に限定なく公知の方法に従って行うことができる。以下、態様1の改質セルロース繊維(B)を製造する方法の具体的な例を説明する。
(態様1の改質セルロース繊維(B)を製造する方法)
態様1の改質セルロース繊維(B)の製造方法の具体例として、原料のセルロース繊維に対し、塩基存在下、特定の化合物を反応させる態様が挙げられる。
また、製造工程数低減の観点から、あらかじめ微細化されたセルロース繊維を原料のセルロース繊維として用いてよく、その場合の平均繊維径は、入手性およびコストの観点から、好ましくは1nm以上である。また、上限は特に設定されないが、取扱い性の観点から、好ましくは500nm以下である。
(塩基)
塩基としては、特に制限はないが、エーテル化反応を進行させる観点から、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、1~3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール及びその誘導体、ピリジン及びその誘導体、並びにアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。具体的には、特開2017-053077号公報の段落0053~0058に記載の塩基が挙げられる。
塩基の量は、原料のセルロース繊維の無水グルコースユニットに対して、エーテル化反応を進行させる観点から、好ましくは0.01当量以上であり、製造コストの観点から、好ましくは10当量以下である。
なお、前記原料のセルロース繊維と塩基の混合は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、特に制限はなく、例えば、水、イソプロパノール、t-ブタノール、ジメチルホルムアミド、トルエン、メチルイソブチルケトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサン、1,4-ジオキサン、及びこれらの混合物が挙げられる。
原料のセルロース繊維と塩基の混合は、均一に混合できるのであれば、温度や時間は特に制限はない。
次に、前記で得られた原料のセルロース繊維と塩基の混合物に、修飾用化合物(本明細書において「エーテル化剤」ともいう)、好ましくは置換基を有していてもよい炭化水素基を導入するための化合物を添加して、原料のセルロース繊維とかかる化合物とを反応させる。かかる化合物としては、反応性を有する環状構造基を有する化合物を用いることが好ましく、エポキシ基を有する化合物を用いることがより好ましい。
一般式(1)で表される修飾基をエーテル結合を介して結合させることができる化合物としては、例えば、特開2017-053077号公報の段落0079~0084に記載の酸化アルキレン化合物が挙げられる。
一般式(2)で表される修飾基をエーテル結合を介して結合させることができる化合物としては、例えば、特開2017-053077号公報の段落0085~0091に記載のグリシジルエーテル化合物が挙げられる。
修飾用化合物の量は、得られる改質セルロース繊維(B)における修飾基の所望の導入率により決めることができるが、反応性の観点から、原料のセルロース繊維の無水グルコースユニットに対して、好ましくは0.01当量以上であり、製造コストの観点から、好ましくは10当量以下である。
(エーテル化反応)
前記化合物と原料のセルロース繊維とのエーテル化反応は、溶媒の存在下で、両者を混合することにより行うことができる。溶媒としては、特に制限はなく、前記塩基を存在させる際に使用することができると例示した溶媒を用いることができる。エーテル化反応の詳細については、特開2017-053077号公報の段落0070~0075の記載を参照することができる。
このようにして得られた態様1の改質セルロース繊維(B)を、公知の微細化処理、例えば、有機溶媒中で高圧ホモジナイザー等を用いた処理を行ってもよい。
上記の改質セルロース繊維(A)及び(B)のいずれに関しても、改質セルロース繊維は、分散液の状態で使用することもできるし、あるいは乾燥処理等により該分散液から溶媒を除去して、乾燥した粉末状の改質セルロース繊維を得て、これを使用することもできる。ここで「粉末状」とは、改質セルロース繊維が凝集した粉末状であり、セルロース粒子を意味するものではない。
粉末状の改質セルロース繊維としては、例えば、前記セルロース繊維の分散液をそのまま乾燥させた乾燥物;該乾燥物を機械処理で粉末化したもの;前記セルロース繊維の分散液を公知のスプレードライ法により粉末化したもの;前記セルロース繊維の分散液を公知のフリーズドライ法により粉末化したもの等が挙げられる。前記スプレードライ法は、前記セルロース繊維の分散液を大気中で噴霧し、乾燥させる方法である。
<改質セルロース繊維の特性>
改質セルロース繊維は、その原料として天然セルロース繊維を使用していることに起因して、セルロースI型結晶構造を有している。セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース全体のうちのセルロースI型結晶領域量の占める割合のことを意味する。セルロースI型結晶構造の有無は、X線回折測定において、2θ=22.6°にピークがあることで判定することができる。
改質セルロース繊維のセルロースI型結晶化度は、分散性の観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、更に好ましくは40%以上、更に好ましくは45%以上である。また、使用するセルロース原料のコストの観点から、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下である。なお、本明細書において、セルロース繊維や改質セルロース繊維等におけるセルロースI型結晶化度は、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
改質セルロース繊維の平均繊維長は、生産効率及び機械的特性向上の観点から、好ましくは10nm以上、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは50nm以上であり、一方、分散性の観点から、好ましくは500nm以下、より好ましくは400nm以下、更に好ましくは300nm以下である。改質セルロース繊維の平均繊維長は、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
改質セルロース繊維の平均繊維径は、生産効率及び機械的特性向上の観点から、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上、更に好ましくは3nm以上であり、分散性の観点から、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下、更に好ましくは10nm以下、更に好ましくは5nm以下である。改質セルロース繊維の平均繊維径は、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
改質セルロース繊維の平均アスペクト比は、生産効率及び機械的特性向上の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは8以上、更に好ましくは35以上であり、分散性の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは100未満、更に好ましくは80以下、更に好ましくは55以下、更に好ましくは50以下である。改質セルロース繊維の平均アスペクト比は、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
本発明のチオール化合物含有組成物におけるチオール化合物の含有量は、チオール化合物を含有する観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。また、改質セルロース繊維を含有する観点から、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99質量%以下、更に好ましくは98質量%以下である。
本発明のチオール化合物含有組成物における改質セルロース繊維の含有量は、改質セルロース繊維の効果の発現の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、分散性の観点から、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
本発明のチオール化合物含有組成物における改質セルロース繊維/チオール化合物の質量比は、改質セルロース繊維の効果の発現の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上、分散性の観点から、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.2以下、更に好ましくは0.1以下である。
なお、改質セルロース繊維を2種以上用いる場合における改質セルロース繊維の含有量は合計量を、チオール化合物を2種以上用いる場合におけるチオール化合物の含有量は合計量を指す。チオール化合物含有組成物における改質セルロース繊維の含有量、改質セルロース繊維/チオール化合物の質量比には、修飾基を含めないために、改質セルロース繊維におけるセルロース繊維(換算量)を用いる。
本発明のチオール化合物含有組成物には、例えば、可塑剤、充填剤、顔料、チキソ性付与剤、プロセスオイル、補強材、骨材、硬化促進剤、難燃剤、増粘剤、レベリング剤、重合触媒、内部離型剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料などの成分が任意に含まれていてもよい。これらの他の成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
〔チオール化合物含有組成物の製造方法〕
本発明のチオール化合物含有組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、500nmを超える平均繊維長の改質セルロース繊維をチオール化合物中で微細化する工程を含む製造態様が好適に例示される。
本製造態様において、微細化処理に供される改質セルロース繊維は、上記した改質セルロース繊維(A)及び改質セルロース繊維(B)からなる群より選択される一種以上である。また、微細化処理に供される改質セルロース繊維としては、分散性の観点から、平均繊維長が1μm以上1000μm以下の範囲内に短繊維化された改質セルロース繊維を用いることが好ましい。このような短繊維セルロース繊維の平均繊維長は、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、更に好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上であり、また、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下、更に好ましくは500μm以下、更に好ましくは400μm以下である。また、平均繊維径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは5μm以上であり、また、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは60μm以下である。
短繊維化処理としては公知の方法を用いることができ、対象のセルロース繊維をアルカリ加水分解処理、酸加水分解処理、過酸化水素処理、紫外線処理、電子線処理、熱水分解処理、機械処理、酵素処理などにより短繊維化することができる。なお、微細化処理に供される改質セルロース繊維は、上記の修飾基やイオン性基を導入前に短繊維化してもよいし、導入後に短繊維化してもよい。例えば、原料のセルロース繊維にイオン性基を導入後、短繊維化処理を行い、次いで修飾基を導入し、得られた短繊維化改質セルロース繊維をチオール化合物中で微細化処理する製造態様などが挙げられる。
微細化処理で使用できる装置としては公知の分散機が好適なものとして挙げられる。例
えば、撹拌翼を備えた撹拌機、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザ
ー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、ロールミル、短軸混練機
、2軸機混練機、短軸押出機、2軸押出機、超音波攪拌機、家庭用ジューサーミキサー等
を用いることができる。装置の運転条件は、添付の取扱い説明書を参照しつつ適宜設定す
ればよい。
本発明のチオール化合物含有組成物は、改質セルロース繊維の分散性に優れるため、チオエステル樹脂組成物やチオウレタン樹脂組成物の製造などに好適に用いることができる。以下、本発明のチオール化合物含有組成物の重合生成物について説明する。
〔チオール化合物含有組成物の重合生成物〕
本発明におけるチオール化合物含有組成物の重合生成物としてはチオエステル樹脂組成物、チオウレタン樹脂組成物からなる群より選択される1種以上が好ましい。
チオール化合物含有組成物の重合生成物がチオエステル樹脂組成物の場合、求められる物性や反応性に応じて、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系やアジピン酸、セバシン酸、(イソ)フタル酸等の脂肪族系等の多価カルボン酸(分子中にカルボキシル基を2個以上有するもの)を選択し、常法に従い適宜重合反応を行うことで所望のチオエステル樹脂組成物を得ることが出来る。
チオール化合物含有組成物の重合生成物がチオウレタン樹脂組成物の場合、求められる物性や反応性に応じて、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系やペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族系等のイソシアネート(分子中にイソシアネート基を2個以上有するもの)を選択し、常法に従い適宜重合反応を行うことで所望のチオウレタン樹脂組成物を得ることが出来る。
本発明のチオール化合物含有組成物の重合生成物における改質セルロースの量は、配合量で換算して、(修飾基等を含まない)セルロース換算で、物性発現の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.15質量%以上である。また、ハンドリング性の観点から、好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
触媒としては、樹脂の種類に応じて適宜選択でき、例えば、チオウレタン組成物の場合の触媒としては、ルイス酸、第3級アミン、有機酸、アミン有機酸塩などが挙げられる。触媒は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
触媒の割合は、硬化剤の種類などに応じて適宜選択できるが、例えば、チオール化合物含有組成物100質量部に対して好ましくは0.01~100質量部である。
〔その他の成分〕
本発明のチオール化合物含有組成物の重合生成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、可塑剤、結晶核剤、充填剤(無機充填剤、有機充填剤)、加水分解抑制剤、難燃剤、酸化防止剤、炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、内部離型剤、着色防止剤、界面活性剤;でんぷん類、アルギン酸等の多糖類;ゼラチン、ニカワ、カゼイン等の天然たんぱく質;タンニン、ゼオライト、セラミックス、金属粉末等の無機化合物;香料;流動調整剤;レベリング剤;導電剤;紫外線分散剤;消臭剤等が含まれていても構わない。さらに、本発明の効果を阻害しない範囲内で、他の高分子材料や他の組成物を添加することも可能である。
本発明のチオール化合物含有組成物の重合生成物は、塗工成形、押出成形、射出成形、プレス成形、注型成形又は溶媒キャスト法等の公知の成形方法を適宜用いることによって成形することができる。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、「常圧」とは101.3kPaを、「常温」とは25℃を示す。
〔アニオン変性セルロース繊維、短繊維化されたアニオン変性セルロース繊維、及び微細化処理された改質セルロース繊維の平均繊維径、平均繊維長及び平均アスペクト比〕
対象となる上記セルロース繊維又は上記セルロース繊維を含有するチオール化合物含有組成物に脱イオン水又はDMFを加えて、その濃度が0.0001質量%の分散液を調製し、該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe (NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さ(繊維のあるところとないところの高さの差)を測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、該セルロース繊維を無作為に100本抽出し、それらの繊維高さから数平均繊維径を算出する。繊維方向の距離から平均繊維長を算出する。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径より算出する。
〔原料のセルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長〕
測定対象のセルロース繊維に脱イオン水を加えて、その含有量が0.01質量%の分散液を調製する。該分散液を湿式分散タイプ画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、商品名:IF-3200)を用いて、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:1倍、画像分解能:0.835μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:500μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:15%の条件で測定する。セルロース繊維を100本測定し、それらの平均ISO繊維径を平均繊維径をとして、平均ISO繊維長を平均繊維長として算出する。
〔分散液中の固形分含有量〕
ハロゲン水分計(島津製作所社製;商品名「MOC-120H」)を用いて測定する。サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少がサンプルの初期量の0.1%以下となった値を固形分含有量とする。
〔アニオン変性セルロース繊維及び改質セルロース繊維のアニオン性基含有量〕
乾燥質量0.5gの測定対象のセルロース繊維をビーカーにとり、脱イオン水又はメタノール/水=2/1(体積比)の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、ここに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製する。測定対象のセルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を攪拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5~3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名「AUT-701」)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を、待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定する。pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、測定対象のセルロース繊維のアニオン性基含有量を算出する。
アニオン性基含有量(mmol/g)=[水酸化ナトリウム水溶液滴定量(mL)×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)]/[測定対象のセルロース繊維の質量(0.5g)]
〔改質セルロース繊維(A)の修飾基の平均結合量及び導入率〕
修飾基の平均結合量を次のIR測定方法により求め、下記式によりその平均結合量及び導入率を算出する。IR測定は、具体的には、乾燥させた改質セルロース繊維の赤外吸収スペクトルを赤外吸収分光装置(IR)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、Nicolet 6700)を用いATR法にて測定し、式AおよびBにより、修飾基の平均結合量及び導入率を算出する。以下はアニオン性基がカルボキシ基の場合、即ち、酸化セルロース繊維の場合を示す。以下の「1720cm-1のピーク強度」は、カルボニル基に由来するピーク強度である。なお、カルボキシ基以外のアニオン性基の場合は波数の値を適宜変更し、修飾基の平均結合量及び導入率を算出すればよい。
<式A-1(イオン結合の場合)>
修飾基の平均結合量(mmol/g)=a×(b-c)÷b
a:酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)
b:酸化セルロース繊維の1720cm-1のピーク強度
c:改質セルロース繊維の1720cm-1のピーク強度
<式A-2(アミド結合の場合)>
修飾基の平均結合量(mmol/g)=d-e
d:酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)
e:改質セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)
<式B>
修飾基の導入率(mol%)=100×f/g
f:修飾基の平均結合量(mmol/g)
g:酸化セルロース繊維のカルボキシ基含有量(mmol/g)
〔改質セルロース繊維(B)における置換基の導入の程度(MS)〕
最初に、測定対象のセルロース中に含有される置換基の導入質量(質量%)を、Analytical Chemistry, Vol. 51, No.13, 2172 (1979)、「第十五改正日本薬局方(ヒドロキシプロピルセルロースの分析方法の項)」等に記載の、セルロースエーテルのアルコキシ基の平均付加モル数を分析する手法として知られるZeisel法に準じて算出する。以下に手順を示す。
(i)200mLメスフラスコにn-テトラデカン0.1gを加え、ヘキサンにて標線までメスアップを行い、内標溶液を調製する。
(ii)精製、乾燥を行った測定対象のセルロース70mg、アジピン酸80mgを10mLバイアル瓶に精秤し、ヨウ化水素酸2mLを加えて密栓する。
(iii)上記バイアル瓶中の混合物を、スターラーチップにより攪拌しながら、160℃のブロックヒーターにて1時間加熱する。
(IV)加熱後、バイアルに内標溶液2mL、ジエチルエーテル2mLを順次注入し、常温で1分間攪拌する。
(v)バイアル瓶中の2相に分離した混合物の上層(ジエチルエーテル層)をガスクロマトグラフィー(SHIMADZU社製、商品名:GC2010Plus)にて分析する。
(vi)測定対象のセルロースを、その改質に用いたエーテル化剤5mg、10mg、15mgにそれぞれ変更する以外は、(ii)~(v)と同様の方法で分析を行い、エーテル化剤の検量線を作成する。
(vii)作成した検量線と、測定対象のセルロースの分析結果から、測定対象のセルロース中に含有される置換基を定量する。分析条件は以下のとおりである。
カラム:アジレント・テクノロジー社製、商品名:DB-5(12m、0.2mm×0.33μm)
カラム温度:30℃(10min Hold)→10℃/min→300℃(10min Hold)
インジェクター温度:300℃
検出器温度:300℃
打ち込み量:1μL
次いで、得られた置換基の導入質量から、下記数式(1)又は(2)を用いてモル置換度(MS)を算出する。
数式(1):導入する置換基が一種類の場合
MS=(W/Mw)/((100-W)/162.14)
W:改質セルロース繊維中の置換基の導入質量(質量%)
Mw:導入したエーテル化剤の分子量(g/mol)
数式(2):導入する置換基が二種類の場合
MS=(W/Mw)/((100-W-W)/162.14)
MS=(W/Mw)/((100-W-W)/162.14)
MS:一種類目の置換基のモル置換度
MS:二種類目の置換基のモル置換度
:改質セルロース繊維中の一種類目の置換基の導入質量(質量%)
:改質セルロース繊維中の二種類目の置換基の導入質量(質量%)
Mw:導入した一種類目のエーテル化剤の分子量(g/mol)
Mw:導入した二種類目のエーテル化剤の分子量(g/mol)
〔改質セルロース繊維におけるセルロース繊維(換算量)〕
改質セルロース繊維におけるセルロース量(換算量)とは、改質セルロース繊維中の、修飾基を除いたセルロースの量である。本発明における改質セルロース繊維は、修飾基の式量が相当程度(例えばグルコースの分子量よりも)大きい場合があるので、本明細書において、修飾基の式量の違いを排除して説明した方が妥当である場合、改質セルロース繊維の量ではなく、改質セルロース繊維を構成するセルロースの量(換算量)で表示する。
改質セルロース繊維におけるセルロース繊維(換算量)は、以下の方法によって測定する。
(1)添加される「修飾用化合物」が1種類の場合
セルロース繊維量(換算量)を下記式Eによって算出する。
<式E>
セルロース繊維量(換算量)(g)=改質セルロース繊維の質量(g)/〔1+修飾用化合物の分子量(g/mol)×修飾基の平均結合量(mmol/g)×0.001〕
(2)添加される「修飾用化合物」が2種類以上の場合
各化合物のモル比率(即ち、添加される化合物の合計モル量を1とした時のモル比率)を考慮して、セルロース繊維量(換算量)を算出する。
なお、セルロース繊維と修飾用化合物との結合様式がイオン結合の場合、上述の式において、「修飾用化合物の分子量」とは、修飾用化合物が第1級アミン、第2級アミン又は第3級アミンである場合は「共重合部を含めた修飾用化合物全体の分子量」を指し、修飾基を有する化合物が第4級アンモニウム化合物又はホスホニウム化合物である場合は「(共重合部を含めた修飾用化合物全体の分子量)-(陰イオン成分の分子量)」を指す。
一方、セルロース繊維と修飾用化合物との結合様式がアミド結合の場合、上述の式において、「修飾用化合物の分子量」とは、修飾用化合物が第1級アミン又は第2級アミンである場合、「(共重合部を含めた修飾基を有する化合物全体の分子量)-18」である。
〔各種セルロース繊維における結晶構造の確認〕
改質セルロース繊維等の各種セルロース繊維の結晶構造は、X線回折計(リガク社製、MiniFlexII)を用いて以下の条件で測定することにより確認する。
測定条件は、X線源:Cu/Kα-radiation、管電圧:30kv、管電流:15mA、測定範囲:回折角2θ=5~45°、X線のスキャンスピード:10°/minとする。測定用サンプルとしては、測定対象のセルロース繊維を面積320mm×厚さ1mmのペレットに圧縮して作製する。また、セルロースI型結晶構造の結晶化度は得られたX線回折強度を、以下の式Cに基づいて算出する。
<式C>
セルロースI型結晶化度(%)=[(I22.6-I18.5)/I22.6]×100
〔式中、I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、I18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す。〕
一方、上記式Cで得られる結晶化度が35%以下の場合には、算出精度の向上の観点から、「木質科学実験マニュアル」(日本木材学会編;2000年4月発行)のP199-200の記載に則り、以下の式Dに基づいて算出することが好ましい。
したがって、上記式Cで得られる結晶化度が35%以下の場合には、以下の式Dに基づいて算出した値を結晶化度として用いることができる。
<式D>
セルロースI型結晶化度(%)=[Ac/(Ac+Aa)]×100
〔式中、Acは、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)、(011面)(回折角2θ=15.1°)および(0-11面)(回折角2θ=16.2°)のピーク面積の総和、Aaは,アモルファス部(回折角2θ=18.5°)のピーク面積を示し、各ピーク面積は得られたX線回折チャートをガウス関数でフィッティングすることで求める。〕
調製例1(アニオン変性セルロース繊維の調製)
針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムとしては、市販品(富士フイルム和光純薬工業社製)を用いた。臭化ナトリウムとしては、市販品(富士フイルム和光純薬工業社製)を用いた。
まず、針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gを9900gの脱イオン水で十分に攪拌した後、該パルプ質量10gに対し、TEMPO 1.25g、臭化ナトリウム12.5g、5質量%次亜塩素酸ナトリウム28.4gをこの順で添加した。pHスタッドを用い、0.5M水酸化ナトリウムを滴下してpHを10.5に保持した。反応を120分(20℃)行った後、水酸化ナトリウムの滴下を停止し、酸化パルプを得た。脱イオン水を用いて得られた酸化パルプを十分に洗浄し、次いで脱水処理を行った。得られたアニオン変性セルロース繊維のアニオン性基はカルボシキ基であり、カルボキシ基含有量は1.3mmol/gであった。酸化セルロース繊維の平均繊維径は41μm、平均繊維長は1058μmであった。
調製例2(短繊維化アニオン変性セルロース繊維の調製)
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたバイアル瓶に、調製例1で得られた酸化セルロース繊維を絶乾質量で7.2g仕込み、処理液の質量が360gとなるまで、脱イオン水を添加した。得られた混合液を95℃で24時間撹拌した後、脱水処理を行うことで、短繊維化アニオン変性セルロース繊維を得た。得られたアニオン変性セルロース繊維のアニオン性基はカルボシキ基であり、カルボキシ基含有量は1.3mmol/gであった。短繊維化セルロース繊維の平均繊維径は41μm、平均繊維長は133μmであった。
実施例1
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、調製例2で得られた短繊維化アニオン変性セルロース繊維を絶乾質量で0.17g仕込んだ。続いて、脂肪族ポリエーテルアミン(米国ハンツマン社製、商品名:Jeffamine M―2070)を0.21g仕込み、アセトン10gで溶解させた。得られた混合液を室温(25℃)で1時間撹拌し、アニオン変性セルロース繊維に脂肪族ポリエーテルアミンが結合したセルロース繊維複合体を得た。その後、チオール化合物(富士製薬和光純薬社製、番手:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、分子量488、以下、「PETM」と略記する。)を8g添加し、25℃でさらに1時間攪拌した。高圧ホモジナイザー(吉田機械興業株式会社製、ナノヴェイタL-ES)を用いて、150MPaで5回、分散処理に供した。得られた分散液から溶媒を除去し、改質セルロース繊維とPETMを含有するチオール化合物含有組成物を得た。チオール化合物含有組成物中の改質セルロース繊維の平均繊維径は4nm、平均繊維長は160nm、平均アスペクト比は40であり、平均結合量は1.27mmol/g、セルロースI型結晶構造を有していた。
実施例2
実施例1においてアミンを脂肪族ポリエーテルアミン(米国ハンツマン社製、商品名:Jeffamine M-1000)を0.11g仕込んだこと以外は、実施例1と同様の操作でチオール化合物含有組成物を得た。平均結合量は1.27mmol/gであった。
実施例3
実施例1においてアミンを脂肪族ポリエーテルアミン(米国ハンツマン社製、商品名:JEFFAMINE M-2095)を0.21g仕込んだこと以外は、実施例1と同様の操作でチオール化合物含有組成物を得た。平均結合量は1.27mmol/gであった。
実施例4
実施例1においてアミンを脂肪族ポリエーテルアミン(米国ハンツマン社製、商品名:JEFFAMINE M-2070)を0.17g、オクチルアミン(富士フイルム和光純薬社製)を0.01g仕込んだこと以外は、実施例1と同様の操作でチオール化合物含有組成物を得た。平均結合量は0.67mmol/gであった。
実施例5
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、調製例2で得られた短繊維化アニオン変性セルロース繊維を絶乾質量で3.12g仕込んだ。続いて、脂肪族ポリエーテルアミン(米国ハンツマン社製、商品名:JEFFAMINE M-2070)を8.01g、縮合剤である4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロライド(DMT-MM)を0.71g、N-メチルホルマリン(NMM)を0.13gそれぞれ仕込み、DMF85g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、脱イオン水にて洗浄、DMT-MM塩を除去し、アセトンで洗浄及び溶媒置換することで、微細セルロース繊維に、脂肪族ポリエールアミンがアミド結合を介して連結したセルロース繊維複合体を得た。その後、脂肪族ポリエールアミンがアミド結合を介して連結したセルロース繊維複合体を絶乾質量で0.51g、チオール化合物(PETM)を8g添加し、25℃でさらに1時間攪拌した。高圧ホモジナイザー(吉田機械興業株式会社製、ナノヴェイタL-ES)を用いて、150MPaで5回、分散処理に供した。得られた分散液から溶媒を除去し、改質セルロース繊維とPETMを含有するチオール化合物含有組成物を得た。平均結合量は0.98mmol/gであった。
実施例6
実施例5においてアミンを脂肪族ポリエーテルアミン(米国ハンツマン社製、商品名:JEFFAMINE M-1000)を4.00g仕込んだこと以外は、実施例5と同様の操作でチオール化合物含有組成物を得た。平均結合量は1.02mmol/gであった。
実施例7
マグネティックスターラー、攪拌子を備えたビーカーに、調製例2で得られた短繊維化アニオン変性セルロース繊維を絶乾質量で3.12g仕込んだ。続いて、脂肪族ポリエーテルアミン(米国ハンツマン社製、商品名:JEFFAMINE M-1000)を4.86g、縮合剤である4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロライド(DMT-MM)を2.47g、N-メチルホルマリン(NMM)を0.49gそれぞれ仕込み、DMF71g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、脱イオン水にて洗浄、DMT-MM塩を除去し、アセトンとDMFで洗浄及び溶媒置換することで、微細セルロース繊維に、脂肪族ポリエールアミンがアミド結合を介して連結したセルロース繊維複合体を得た。続いて、脂肪族ポリエールアミンがアミド結合を介して連結したセルロース繊維複合体を絶乾質量で1.56g、芳香族アミン(東京化成社製、トリチルアミン)を0.63g、DMT-MMを1.47g、NMMを0.25g、DMF35g中に溶解させ、反応液を室温(25℃)で14時間反応させた。反応終了後ろ過し、脱イオン水にて洗浄、DMT-MM塩を除去し、アセトンで洗浄及び溶媒置換することで、微細セルロース繊維に、脂肪族ポリエールアミンと芳香族アミンがアミド結合を介して連結したセルロース繊維複合体を得た。その後、脂肪族ポリエールアミンと芳香族アミンがアミド結合を介して連結したセルロース繊維複合体を絶乾質量で0.17g、チオール化合物(PETM)を8g添加し、25℃でさらに1時間攪拌した。高圧ホモジナイザー(吉田機械興業株式会社製、ナノヴェイタL-ES)を用いて、150MPaで5回、分散処理に供した。得られた分散液から溶媒を除去し、改質セルロース繊維とPETMを含有するチオール化合物含有組成物を得た。平均結合量は1.04mmol/gであった。
実施例8
実施例7においてトリチルアミンの代わりに(富士フイルム和光純薬工業社製、ジフェニルプロピルアミン)を0.51g仕込んだこと以外は、実施例7と同様の操作でチオール化合物含有組成物を得た。平均結合量は1.03mmol/gであった。
実施例9
実施例7においてJEFFAMINE M-1000のかわりに(米国ハンツマン社製、商品名:JEFFAMINE M―2095)を9.71g、トリチルアミンの代わりにジフェニルプロピルアミンを0.31g仕込んだこと以外は、実施例7と同様の操作でチオール化合物含有組成物を得た。平均結合量は1.04mmol/gであった。
比較例1
実施例1において脂肪族ポリエーテルアミン仕込まなかったこと以外は、実施例1と同様の操作でチオール化合物含有組成物を得た。
試験例1(透明性評価試験)
各実施例及び比較例で得られたチオール化合物含有組成物を使用して、分散体の光透過率を次のようにして測定し、その透明性を評価した。光透過率の測定は常温常圧下で実施した。
具体的には、チオール化合物含有組成物を光路長10mmの石英セルに3mL入れ、すぐに、ダブルビーム分光光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、「U-2910」)用いて、波長660nmの吸光度を測定した。それぞれの分散体の調製に用いた媒体をブランク(即ち、光透過率100%)とし、各分散体の吸光度から光透過率(%)を求めた。
Figure 2022053537000003
表1より、改質セルロース繊維を含む実施例1~9のチオール化合物含有組成物は、未改質のセルロース繊維を含む比較例1に比べて、いずれも分散性及び透明性に優れていたことが分かる。
本発明のチオール化合物含有組成物は、エポキシ樹脂の硬化剤やチオウレタン樹脂組成物やチオエステル樹脂組成物の製造等に好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. チオール化合物と改質セルロース繊維とを含有する、チオール化合物含有組成物であって、前記改質セルロース繊維がセルロースI型結晶を有し、以下のセルロース繊維(A)及びセルロース繊維(B)からなる群から選ばれる一種以上である、チオール化合物含有組成物。
    改質セルロース繊維(A) イオン性基を含むセルロース繊維のイオン性基に修飾基が結合してなる改質セルロース繊維
    改質セルロース繊維(B) セルロース繊維のヒドロキシ基に修飾基が結合されてなる改質セルロース繊維
  2. 前記チオール化合物がチオール基を2つ以上有するポリチオール化合物である、請求項1記載のチオール化合物含有組成物。
  3. 前記改質セルロース繊維のアスペクト比が100以下である、請求項1又は2記載のチオール化合物含有組成物。
  4. 前記改質セルロース繊維の繊維長が500nm以下である、請求項1~3いずれか記載のチオール化合物含有組成物。
  5. 前記イオン性基がカルボキシ基である、請求項1~4いずれか記載のチオール化合物含有組成物。
  6. 前記修飾基が、(a)炭化水素基、及び(b)ポリマー基からなる群より選択される1種以上を含有するものである、請求項1~5いずれか記載のチオール化合物含有組成物。
  7. 請求項1~6いずれかに記載のチオール化合物含有組成物の製造方法であって、500nmを超える平均繊維長の改質セルロース繊維をチオール化合物中で微細化する工程を含み、微細化工程に供される改質セルロース繊維が、以下の改質セルロース繊維(A)及び改質セルロース繊維(B)からなる群から選ばれる一種以上である、チオール化合物含有組成物の製造方法。
    改質セルロース繊維(A):イオン性基を含むセルロース繊維のイオン性基に修飾基が結合してなる改質セルロース繊維
    改質セルロース繊維(B):セルロース繊維のヒドロキシ基に修飾基が結合されてなる改質セルロース繊維
  8. 請求項1~6いずれか記載のチオール化合物含有組成物の重合生成物。
  9. チオエステル組成物またはチオウレタン組成物である、請求項8に記載のチオール化合物含有組成物の重合生成物。
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