JP2022092606A - 改質セルロース繊維の製造方法 - Google Patents

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恭平 大和
Kyohei Yamato
穣 吉田
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Abstract

【課題】樹脂に配合した際にも高い透明性を発揮できる改質セルロース繊維の製造方法を提供すること。【解決手段】セルロースI型結晶構造を有するアニオン変性セルロース繊維とアミン化合物とを反応させて改質セルロース繊維を得る工程を含む、改質セルロース繊維の製造方法であって、該工程において、アニオン変性セルロース繊維とアミン化合物とを25℃を超える反応温度で反応させる、改質セルロース繊維の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は改質セルロース繊維の製造方法に関する。
従来、有限な資源である石油由来のプラスチック材料が多用されていたが、近年、環境に対する負荷の少ない技術が脚光を浴びるようになり、かかる技術背景の下、天然に多量に存在するバイオマスであるセルロース繊維、その中でも特に微細セルロース繊維を用いた材料は、種々の機械的特性が著しく向上することから注目されている。
通常、微細セルロース繊維表面は親水的であるために、疎水溶媒や疎水的な樹脂中では凝集してしまう。そのために前記のような系で用いる際は微細セルロース繊維を疎水的に改質する必要がある。
特許文献1には、アニオン変性セルロース繊維に修飾基が結合してなる、平均繊維長が1μm以上1,000μm以下である疎水変性セルロース繊維を、有機溶媒中で微細化処理する工程を含む、微細化疎水変性セルロース繊維の製造方法が記載されている。
特開2019-119983号公報
特許文献1の技術によって得られたセルロース繊維を疎水的な樹脂に配合することによって、樹脂成形体の機械的強度を高めることができる。一方、透明性が高い樹脂成形体が求められる現場では、セルロース繊維を配合した際に樹脂成形体の透明性が低減しないことが望まれる。
従って、本発明は、樹脂に配合した際にも高い透明性を発揮できる、改質セルロース繊維及び微細化改質セルロース繊維の製造方法に関する。
本発明は次の〔1〕~〔3〕に関する。
〔1〕 セルロースI型結晶構造を有するアニオン変性セルロース繊維とアミン化合物とを反応させて改質セルロース繊維を得る工程Aを含む、改質セルロース繊維の製造方法であって、
工程Aにおいて、アニオン変性セルロース繊維とアミン化合物とを25℃を超える反応温度で反応させる、改質セルロース繊維の製造方法。
〔2〕 前記〔1〕に記載の製造方法によって得られた改質セルロース繊維を溶媒中で微細化処理する工程Bを含む、微細化改質セルロース繊維の製造方法。
〔3〕 セルロースI型結晶構造を有する、平均繊維長が1μm以下であり、平均繊維径が0.5nm以上50nm以下である微細化アニオン変性セルロース繊維と、アミン化合物とを反応させて改質セルロース繊維を得る工程Cを含む、微細化改質セルロース繊維の製造方法であって、
工程Cにおいて、微細化アニオン変性セルロース繊維とアミン化合物とを25℃を超える反応温度で反応させる、微細化改質セルロース繊維の製造方法。
本発明によれば、樹脂に配合した際にも高い透明性を発揮できる改質セルロース繊維や微細化改質セルロース繊維を製造することができる。
本発明の製造方法によって得られた改質セルロース繊維や微細化改質セルロース繊維が前記効果を発揮できる理由は定かではないが、25℃を超える温度で反応させることで、アミン化合物がセルロース繊維の水素結合をより弱くし、微細化させやすくしていることが理由であると推定される。そしてその結果、微細化改質セルロース繊維の分散性が向上し、樹脂に配合して得られる樹脂成形体が高い透明性を有することとなる。
1.改質セルロース繊維の製造方法
本発明の改質セルロース繊維の製造方法は、後述の工程A含む製造方法であって、工程Aにおいて、アニオン変性セルロース繊維とアミン化合物とを25℃を超える反応温度で反応させることが一つの特徴である。
工程A:セルロースI型結晶構造を有するアニオン変性セルロース繊維とアミン化合物とを反応させて改質セルロース繊維を得る工程。
1-1.アニオン変性セルロース繊維
本発明で用いられるアニオン変性セルロース繊維は、セルロース繊維中にアニオン性基を含むようにアニオン変性されたセルロース繊維である。
アニオン変性セルロース繊維はセルロースI型結晶構造を有するものである。アニオン変性セルロース繊維の結晶化度は、樹脂成形体の機械的強度の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。また、原料入手性の観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下、更に好ましくは75%以下である。なお、本明細書において、各種セルロース繊維の結晶化度は、X線回折法による回折強度値から算出したセルロースI型結晶化度であり、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。なお、セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース繊維全体のうち結晶領域量の占める割合のことを意味する。セルロースI型結晶構造の有無は、X線回折測定において、2θ=22.6°にピークがあることで判定することができる。
アニオン変性セルロース繊維の平均繊維長は、微細化改質セルロース繊維に高い透明性を発揮させる観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは10μm以上、更に好ましくは25μm以上であり、一方、同様の観点から、好ましくは1000μm以下、より好ましくは800μm以下、更に好ましくは500μm以下、更に好ましくは400μm以下である。
本発明においては、原料のセルロース繊維やアニオン変性セルロース繊維に、例えば、生化学的処理及び/又は化学処理等を行って、前記の平均繊維長を有するように長さを調整することができる。生化学的処理としては、使用する薬剤には特に制限がなく、例えばエンドグルカナーゼやエキソグルカナーゼ、ベータグルコシダーゼといった酵素を使用する処理が挙げられる。化学処理としては、使用する薬剤には特に制限がなく、例えば塩酸や硫酸などによる酸加水分解処理、過酸化水素やオゾンなどによる酸化処理、水酸化ナトリウム等のアルカリによるアルカリ加水分解処理が挙げられる。アルカリ加水分解処理の条件や酸加水分解処理の条件は、例えば、特開2019-119983号公報の段落0034~0035を参考にすることができる。
アニオン変性セルロース繊維の平均繊維径は、生産効率の観点から、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは15μm以上であり、微細化改質セルロース繊維に高い透明性を発揮させる観点から、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは60μm以下である。
アニオン変性セルロース繊維の平均アスペクト比は、微細化改質セルロース繊維を配合した部材の強度を向上させる観点から、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、微細化改質セルロース繊維に高い透明性を発揮させる観点から、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは20以下である。
アニオン変性セルロース繊維の平均繊維長、平均繊維径及び平均アスペクト比は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基の含有量としては、安定的な微細化及び修飾基導入の観点から、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.4mmol/g以上、更に好ましくは0.6mmol/g以上である。同様の観点から、その上限は、好ましくは3.0mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、更に好ましくは2.0mmol/g以下である。アニオン性基の含有量は、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
アニオン変性セルロース繊維中に含まれるアニオン性基は、例えばカルボキシ基、スルホン酸基及び(亜)リン酸基等が挙げられ、セルロース繊維への導入効率の観点から、カルボキシ基であることが好ましい。
アニオン変性セルロース繊維におけるアニオン性基の対となるイオン(カウンターイオン)としては、例えば、製造時のアルカリ存在下で生じるナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びアルミニウムイオン等の金属イオンや、これらの金属イオンを酸で置換して生じるプロトン等が挙げられる。
1-2.アニオン変性セルロース繊維の調製方法
本発明で用いられるアニオン変性セルロース繊維は、原料のセルロース繊維に酸化処理又はアニオン性基の付加処理を施して、少なくとも1つ以上のアニオン性基を導入してアニオン変性させることによって得ることができる。
〔原料のセルロース繊維〕
アニオン変性セルロース繊維の原料であるセルロース繊維としては、セルロースI型結晶構造を有する観点及び環境負荷の観点から、天然セルロース繊維を用いることが好ましい。天然セルロース繊維としては、例えば、針葉樹系パルプ、広葉樹系パルプ等の木材パルプ;コットンリンター、コットンリントのような綿系パルプ;麦わらパルプ、バガスパルプ等の非木材系パルプ;バクテリアセルロース等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
原料のセルロース繊維の平均繊維径や平均繊維長は特に限定されない。平均繊維径としては、例えば、入手容易性の観点から、好ましくは1μm以上であり、同様の観点から、好ましくは100μm以下である。平均繊維長としては、例えば、入手容易性の観点から、好ましくは1000μm以上であり、同様の観点から、好ましくは10000μm以下である。原料のセルロース繊維の平均繊維径や平均繊維長は、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
〔アニオン性基を導入する方法〕
(1)セルロース繊維にアニオン性基としてカルボキシ基を導入する場合
セルロース繊維にカルボキシ基を導入する方法としては、例えばセルロース繊維のヒドロキシ基を酸化してカルボキシ基に変換する方法や、セルロース繊維のヒドロキシ基に、カルボキシ基を有する化合物、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種を反応させる方法が挙げられる。
セルロース繊維のヒドロキシ基を酸化処理する方法としては、例えば、特開2015-143336号公報又は特開2015-143337号公報に記載の、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシル(TEMPO)を触媒として、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤及び臭化ナトリウム等の臭化物を原料のセルロース繊維と反応させる方法が挙げられる。TEMPOを触媒としてセルロース繊維の酸化処理を行うことによって、セルロース構成単位のC6位のヒドロキシメチル基(-CHOH)が選択的にカルボキシ基に変換される。特にこの方法は、原料のセルロース繊維表面の酸化対象となるC6位の水酸基の選択性に優れており、且つ反応条件も穏やかである点で有利である。従って、本発明におけるアニオン変性セルロース繊維の好ましい態様として、セルロース構成単位のC6位がカルボキシ基であるセルロース繊維が挙げられる。本明細書において、かかるセルロース繊維を「酸化セルロース繊維」という場合がある。
セルロース繊維へのカルボキシ基の導入に使用するための、カルボキシ基を有する化合物は特に限定されないが、具体的にはハロゲン化酢酸が挙げられる。ハロゲン化酢酸としては、クロロ酢酸等が挙げられる。
セルロース繊維へのカルボキシ基の導入に使用するための、カルボキシ基を有する化合物の酸無水物及びそれらの誘導体は特に限定されないが、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水フタル酸及び無水アジピン酸等のジカルボン酸化合物の酸無水物やカルボキシ基を有する化合物の酸無水物のイミド化物、カルボキシル基を有する化合物の酸無水物の誘導体が挙げられる。これらの化合物は疎水基で置換されていてもよい。
(2)セルロース繊維にアニオン性基としてスルホン酸基又は(亜)リン酸基を導入する場合
セルロース繊維へスルホン酸基を導入する方法としては、セルロース繊維に硫酸を添加し加熱する方法等が挙げられる。
セルロース繊維へ(亜)リン酸基を導入する方法としては、乾燥状態又は湿潤状態のセルロース繊維に、(亜)リン酸又は(亜)リン酸誘導体の粉末や水溶液を混合する方法や、セルロース繊維の分散液に(亜)リン酸又は(亜)リン酸誘導体の水溶液を添加する方法等が挙げられる。これらの方法を採用した場合、一般的に、(亜)リン酸又は(亜)リン酸誘導体の粉末や水溶液を混合または添加した後に、脱水処理及び加熱処理等を行う。
1-3.アミン化合物
本明細書におけるアミン化合物とは、分子内に、修飾基と少なくとも一つのアミノ基とを有する化合物である。
〔修飾基〕
アミン化合物が有する修飾基としては、(a)炭化水素基、及び(b)ポリマー基が挙げられる。これらの修飾基は1種類が単独で又は2種以上が組み合わさって、アニオン変性セルロース繊維に結合してもよい。
(a)炭化水素基
炭化水素基としては、一価の炭化水素基、例えば、鎖式飽和炭化水素基、鎖式不飽和炭化水素基、環式飽和炭化水素基、及び(複素環式)芳香族炭化水素基が挙げられる。
炭化水素基の炭素数は、1以上であり、好ましくは3以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、一方、好ましくは30以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは18以下である。炭化水素基は、後述する置換基を有していてもよく、炭化水素基の一部が窒化水素基に置換されていてもよい。
鎖式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、tert-ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、オクタコサニル基等が挙げられる。
鎖式不飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブテン基、イソブテン基、イソプレン基、ペンテン基、ヘキセン基、ヘプテン基、オクテン基、ノネン基、デセン基、ドデセン基、トリデセン基、テトラデセン基、オクタデセン基が挙げられる。
環式飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、シクロプロパン基、シクロブチル基、シクロペンタン基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロトリデシル基、シクロテトラデシル基、シクロオクタデシル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えば、アリール基及びアラルキル基からなる群より選ばれる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ビフェニル基、トリフェニル基、ターフェニル基、及びこれらの基が後述する置換基で置換された基が挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、ジベンジル基、トリチル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基、フェニルヘプチル基、フェニルオクチル基、及びこれらの基の芳香族基が置換基でさらに置換された基などが挙げられる。
(b)ポリマー基
ポリマー基とは、ポリマー構造を含有する官能基である。ポリマー基の分子量は、改質セルロース繊維を配合した樹脂の透明性向上の観点から好ましくは100以上、より好ましくは200以上、より好ましくは300以上、より好ましくは400以上、更に好ましくは600以上、更に好ましくは1,000以上、更に好ましくは1,500以上である。同様の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは7,000以下、更に好ましくは5,000以下、更に好ましくは4,000以下、更に好ましくは3,500以下、更に好ましくは2,500以下である。
ポリマー基は、改質セルロース繊維を配合した樹脂の透明性向上の観点から、好ましくは、酸素原子を有する構造によって連結される繰り返し構造を有する官能基、より好ましくは、ポリオキシアルキレン構造(アルキレンオキサイド鎖)、ポリシロキサン構造(シリコーン鎖)等の、酸素原子によって連結される繰り返し構造を有する官能基であり、より好ましくは、ポリオキシアルキレン構造を有する官能基、更に好ましくはアルコキシポリオキシアルキレン基である。
(b-1)ポリシロキサン構造(シリコーン鎖)
ポリシロキサン構造(シリコーン鎖)とはシロキサン結合を主鎖とする構造であり、更にアルキレン基が伴っていてもよい。ポリシロキサン構造は、後述する置換基を有していてもよい。
(b-2)ポリオキシアルキレン構造(アルキレンオキサイド鎖)
ポリオキシアルキレン構造(アルキレンオキサイド鎖)は、改質セルロース繊維を配合した樹脂の透明性向上の観点から、好ましくは炭素数が2以上8以下のオキシアルキレンから選ばれる1種又は2種以上のオキシアルキレンの(共)重合体構造、より好ましくは炭素数が2以上4以下のオキシアルキレンから選ばれる1種又は2種以上のオキシアルキレンの(共)重合体構造、更に好ましくはエチレンオキサイド(EO)及びプロピレンオキサイド(PO)から選ばれる1種又は2種のオキシアルキレンの(共)重合体構造、更に好ましくはエチレンオキサイド(EO)及びプロピレンオキサイド(PO)がランダム又はブロック状に重合した共重合体構造((EO/PO)構造ともいう)である。
ポリオキシアルキレン構造としては、例えば、次式:
Figure 2022092606000001
(式中、Rは水素原子、炭素数1以上6以下の炭化水素基、又は-CHCH(CH)NH基を示す。EO及びPOはランダム又はブロック状に存在し、aはEOの平均付加モル数を示す0又は正の数、bはPOの平均付加モル数を示す0又は正の数である。ただし、aとbは同時に0とはならない。)で示される基が挙げられる。
が炭素数1以上6以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である場合、該アルキル基は好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基及びsec-プロピル基である。Rは水素原子であってもよい。
aは、分散安定性を向上させる観点から、好ましくは0以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは3以上、更に好ましくは6以上、更に好ましくは11以上、更に好ましくは15以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは25以上、更に好ましくは30以上である。同様の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下、更に好ましくは50以下、更に好ましくは40以下である。
bは、分散安定性を向上させる観点から、好ましくは0以上、より好ましくは1以上、更に好ましくは3以上、更に好ましくは5以上である。同様の観点から、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、更に好ましくは30以下、更に好ましくは25以下、更に好ましくは20以下、更に好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。
前記式におけるa+bはEOとPOの合計の平均付加モル数を示し、分散安定性を向上させる観点から、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、より好ましくは8以上であり、同様の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは70以下である。
前記炭素数1~3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基及びプロピレン基が挙げられる。
(EO/PO)鎖におけるPOの含有率(モル%)は、前記aとbに基づいて計算することが可能であり、具体的にはb×100/(a+b)より求めることができる。POの含有率は、分散性を一層向上させる観点から、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは7モル%以上、更に好ましくは10モル%以上である。同様の観点から、好ましくは100モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは85モル%以下、更に好ましくは75モル%以下、更に好ましくは60モル%以下、更に好ましくは50モル%以下、更に好ましくは40モル%以下、更に好ましくは30モル%以下である。
ポリオキシアルキレン構造の式量(分子量)は、分散安定性を向上させる観点から好ましくは100以上、より好ましくは200以上、更に好ましくは300以上、更に好ましくは500以上、更に好ましくは1,000以上、更に好ましくは1,500以上である。同様の観点から、好ましくは10,000以下、より好ましくは7,000以下、更に好ましくは5,000以下、更に好ましくは4,000以下、更に好ましくは3,500以下、更に好ましくは2,500以下である。
(c)更なる置換基
なお、修飾基はさらに置換基を有するものであってもよい。置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等の炭素数1~6のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基等のアルコキシ基の炭素数が1~6のアルコキシ-カルボニル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;アセチル基、プロピオニル基等の炭素数1~6のアシル基;アラルキル基;アラルキルオキシ基;炭素数1~6のアルキルアミノ基;アルキル基の炭素数が1~6のジアルキルアミノ基;ヒドロキシ基が挙げられる。
〔アミン化合物の具体例〕
アミン化合物としては、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン及び第4級アンモニウム化合物のいずれでもよい。第4級アンモニウム化合物の陰イオン成分としては、反応性の観点から、好ましくは、塩素イオンや臭素イオンなどのハロゲンイオン、硫酸水素イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェイトイオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヒドロキシイオンが挙げられる。
(a)炭化水素基を有するアミン化合物
炭化水素基を有するアミン化合物の具体例としては、第1~3級アミンとしては、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、トリヘキシルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、トリオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン、ステアリルアミン、ジステアリルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、オレイルアミン、アニリン、オクタデシルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミン、トリチルアミン、ナフチルアミン、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-(3-アミノプロピル)イミダゾール等が挙げられる。
第4級アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラブチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。
炭化水素基を有するアミン化合物は、市販品を用いるか、公知の方法に従って調製することができる。
(b-1)ポリシロキサン構造を有するアミン化合物
かかるアミン化合物は、例えば、ポリシロキサン構造の骨格に、アミノ基がアルキレン基等を介して結合した構造を有するものが挙げられる。本明細書において、かかるアミン化合物を「アミノ変性シリコーン」と称する場合がある。アミノ変性シリコーンは、市販品を用いるか、公知の方法に従って調製することができる。アミノ変性シリコーンは1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
アミノ変性シリコーンとしては、性能の点から、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSF4703(動粘度:1000、アミノ当量:1600)、TSF4708(動粘度:1000、アミノ当量:2800)、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSS-3551(動粘度:1000、アミノ当量:1600)、SF8457C(動粘度:1200、アミノ当量:1800)、SF8417(動粘度:1200、アミノ当量:1700)、BY16-209(動粘度:500、アミノ当量:1800)、BY16-892(動粘度:1500、アミノ当量:2000)、BY16-898(動粘度:2000、アミノ当量:2900)、FZ-3760(動粘度:220、アミノ当量:1600)、信越化学工業(株)製のKF8002(動粘度:1100、アミノ当量:1700)、KF867(動粘度:1300、アミノ当量:1700)、KF-864(動粘度:1700、アミノ当量:3800)、BY16-213(動粘度:55、アミノ当量:2700)、BY16-853U(動粘度:14、アミノ当量:450)が好ましい。( )内において、動粘度は25℃での測定値(単位:mm/s)を示し、アミノ当量の単位はg/molである。
(b-2)ポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物
アミン化合物における、ポリオキシアルキレン構造と該アミン化合物の窒素原子とは、直接に又は連結基を介して結合していることが好ましい。連結基としては炭化水素基が好ましく、炭素数が好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上3以下のアルキレン基が挙げられる。かかるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基が好ましい。
ポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物としては、例えば、次式(i):
Figure 2022092606000002
で示される化合物が挙げられる。式(i)中のR、a及びbは、前述のポリオキシアルキレン構造の一例を示す式中のR、a及びbと同じである。
ポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物は、前記ポリオキシアルキレン構造で示される修飾基を導入するための化合物であり、公知の方法に従って調製することができる。例えば、プロピレングリコールアルキルエーテルにエチレンオキシド、プロピレンオキシドを所望量付加させた後、ヒドロキシ基末端をアミノ化すればよい。必要により、アルキルエーテルを酸で開裂することで末端を水素原子とすることができる。これらの製造方法は、特開平3-181448号を参照することができ、かかるアミン化合物の詳細は、例えば特許第6105139号に記載されている。
ポリオキシアルキレン構造を有するアミン化合物は、例えば、市販品を好適に用いることができる。
前記EO鎖又はPO鎖を伴う、炭化水素基を有していてもよいアミン化合物の具体例としては、日油株式会社製のSUNBRIGHT MEPA-10H、SUNBRIGHT MEPA-20H、SUNBRIGHT MEPA-50H、SUNBRIGHT MEPA-10T、SUNBRIGHT MEPA-12T、SUNBRIGHT MEPA-20T、SUNBRIGHT MEPA-30T、SUNBRIGHT MEPA-40T等が挙げられる。
前記EO/PO鎖を伴う、炭化水素基を有していてもよいアミン化合物の具体例としては、HUNTSMAN社製のJeffamine M-2070、Jeffamine M-2005、Jeffamine M-2095、Jeffamine M-1000、Jeffamine M-600、Surfoamine B200、Surfoamine L100、Surfoamine L200、Surfoamine L207、Surfoamine L300、Surfoamine B-100、XTJ-501、XTJ-506、XTJ-507、XTJ-508、M3000、Jeffamine ED-600、Jeffamine ED-900、Jeffamine ED-2003、Jeffamine D-230、Jeffamine D-400、Jeffamine D-2000、Jeffamine D-4000、XTJ-510、Jeffamine T-3000、Jeffamine T-5000、XTJ-502、XTJ-509、XTJ-510等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。
1-4.工程A
工程Aで使用されるアニオン変性セルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有するアニオン変性セルロース繊維である。工程Aでは、かかるアニオン変性セルロース繊維と前記アミン化合物とを反応させて、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基とアミン化合物とを結合させて、アミン化合物が有する修飾基をアニオン性基に導入することによって、改質セルロース繊維を得る。
アミン化合物とアニオン性基との具体的な結合様式としては、微細化改質セルロース繊維の分散性の観点から、好ましくは、アミン塩等とのイオン結合及び/又はアミド結合が挙げられる。例えば、(1)イオン結合を介して導入する場合は特開2015-143336号公報を参考にすることができ、(2)アミド結合を介して導入する場合は特開2015-143337号公報を参考にすることができる。
結合工程の終了後、未反応の化合物等を除去するために、後処理を適宜行ってもよい。後処理の方法としては、例えば、ろ過、遠心分離、透析等を用いることができる。
(1)イオン結合を介して導入する態様
イオン結合を介して修飾基を導入する場合は、アニオン変性セルロース繊維とアミン化合物を混合すればよく、これにより、アニオン変性セルロース繊維とアミン化合物とが反応し、その結果、アニオン変性セルロース繊維に含有されるアニオン性基と、アミン化合物のアミノ基との間でイオン結合が形成される。
例えば、アニオン変性セルロース繊維として酸化セルロース繊維を使用し、アミン化合物として前述の修飾基を有する第1級アミンを使用する場合、下式に示されるように、セルロース繊維を構成するグルコースのC6位のカルボキシ基に、イオン結合を介して、前述の修飾基を導入することができる(式中、Cはセルロース繊維を構成するグルコースの6位の炭素原子であり、Rは修飾基である。)。
Figure 2022092606000003
本態様におけるアミン化合物の存在量としては、微細化改質セルロース繊維の分散性を向上させる観点から、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基の0.3モル当量を超える量が好ましい。本明細書において、「アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基の0.3モル当量のアミノ化合物」とは、「アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基1モルに対して、アミノ化合物のアミノ基が0.3モルに相当する量のアミノ化合物」を意味する。アミノ化合物の存在量は、前記と同じ観点から、0.5モル当量以上がより好ましく、1モル当量以上がさらに好ましい。一方、部材に配合した際の部材の色調への影響を軽減する観点から、アミノ化合物の存在量は、10モル当量以下が好ましく、5モル当量以下がより好ましく、3モル当量以下が更に好ましい。アミン化合物がアミノ基を複数個有する場合、アミノ基のモル数の合計が、前記モル数となるように存在させる。
混合に際しては溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては、用いる化合物が溶解する溶媒を選択することが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、酢酸エチル、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸、1-メトキシ-2-プロパノール(PGME)、水等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
混合時の温度、即ち反応温度は、化合物の反応性の観点から、25℃を超え、好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上である。また、改質セルロース繊維の着色抑制の観点から、反応温度は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは150℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
微細化改質セルロース繊維に高い透明性を発揮させる観点から、工程Aにおいて、アニオン変性セルロース繊維とアミン化合物との反応時間は、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上であり、生産性の観点から、好ましくは120時間以下、より好ましくは72時間以下、更に好ましくは48時間以下、更に好ましくは24時間以下である。
反応時の撹拌条件は、反応を進行させる観点から、好ましくは50rpm以上であり、反応効率の観点から、好ましくは1000rpm以下である。
(2)アミド結合を介して導入する態様
アミド結合を介して修飾基を導入する場合は、公知の縮合剤の存在下で、アニオン変性セルロース繊維とアミン化合物との混合を行えばよく、これにより、アニオン性基とアミン化合物のアミノ基との間でアミド結合が形成される。
例えば、アニオン変性セルロース繊維として酸化セルロース繊維を使用し、アミン化合物として、前述の修飾基を有する第1級アミンを使用する場合、下式に示されるように、セルロース繊維を構成するグルコースのC6位のカルボキシ基に、アミド結合を介して、前述の修飾基を導入することができる(式中、Cはセルロース繊維を構成するグルコースの6位の炭素原子であり、Rは修飾基である。)。
Figure 2022092606000004
本態様におけるアミン化合物の存在量としては、微細化改質セルロース繊維に高い透明性を発揮させる観点から、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基の0.3モル当量を超える量が好ましく、1モル当量以上がより好ましく、1.8モル当量以上が更に好ましい。一方、部材に配合した際の部材の色調への影響を軽減する観点から、アミノ化合物の存在量は、10モル当量以下が好ましく、5モル当量以下がより好ましく、3モル当量以下が更に好ましい。アミン化合物がアミノ基を複数個有する場合、アミノ基のモル数の合計が、前記モル数となるように存在させる。
縮合剤としては、特には限定されないが、合成化学シリーズ ペプチド合成(丸善社)P116記載、又はTetrahedron, 57, 1551 (2001)記載の縮合剤などが挙げられ、例えば、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロライド(以下、「DMT-MM」と称する場合がある。)等が挙げられる。また、縮合剤を使用せずに加熱処理だけで反応を行うことも可能である。
アミド化反応においては溶媒は使用してもしなくても良い。溶媒を使用する場合は、用いる化合物が溶解する溶媒を選択することが好ましく、溶媒の具体例としては、前述の「(1)イオン結合を介して導入する態様」で例示した溶媒が挙げられる。
混合時の温度、即ち反応温度は、化合物の反応性の観点から、25℃を超え、好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上である。また、改質セルロース繊維の着色抑制の観点から、反応温度は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは150℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
微細化改質セルロース繊維に高い透明性を発揮させる観点から、工程Aにおいて、アニオン変性セルロース繊維とアミン化合物との反応時間は、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上であり、生産性の観点から、好ましくは120時間以下、より好ましくは72時間以下、更に好ましくは48時間以下、更に好ましくは24時間以下である。
反応時の撹拌条件は、反応を進行させる観点から、好ましくは50rpm以上であり、反応効率の観点から、好ましくは1000rpm以下である。
1-5.改質セルロース繊維
前述の「(1)イオン結合を介して導入する態様」又は「(2)アミド結合を介して導入する態様」によって得られる改質セルロース繊維の平均繊維長は、分散性の観点から、1μm以上であり、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、更に好ましくは25μm以上であり、一方、同様の観点から1,000μm以下であり、好ましくは800μm以下であり、より好ましくは500μm以下であり、更に好ましくは400μm以下である。
改質セルロース繊維の平均繊維径は特に限定されず、例えば、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、更に好ましくは15μm以上であり、一方、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは60μm以下である。改質セルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長は、後述の実施例に記載の方法に従って測定することができる。
改質セルロース繊維の平均繊維長、平均繊維径及び平均アスペクト比の好ましい範囲は、前述のアニオン変性セルロース繊維の平均繊維長、平均繊維径及び平均アスペクト比の好ましい範囲と同じである。
改質セルロース繊維は、その原料として天然セルロース繊維を使用していることに起因して、セルロースI型結晶構造を有している。セルロースI型とは天然セルロースの結晶形のことであり、セルロースI型結晶化度とは、セルロース全体のうちのセルロースI型結晶領域量の占める割合のことを意味する。セルロースI型結晶構造の有無は、X線回折測定において、2θ=22.6°にピークがあることで判定することができる。
改質セルロース繊維のセルロースI型結晶化度は、分散性の観点から、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上、更に好ましくは40%以上、更に好ましくは45%以上である。また、使用するセルロース原料のコストの観点から、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下である。なお、本明細書において、セルロース繊維や改質セルロース繊維等におけるセルロースI型結晶化度は、具体的には後述の実施例に記載の方法により測定される。
改質セルロース繊維の平均アスペクト比は、生産効率の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは8以上であり、分散性の観点から、好ましくは100以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは50以下である。改質セルロース繊維の平均アスペクト比は、後述の実施例に記載の方法によって測定することができる。
改質セルロース繊維における修飾基の平均結合量は、分散性の観点から、好ましくは0.01mmol/g以上であり、同様の観点から、好ましくは3.0mmol/g以下である。修飾基として任意の2種以上の修飾基が同時に改質セルロースに導入されている場合、修飾基の結合量は、前記範囲内であることが好ましい。
改質セルロース繊維における修飾基の導入率は、分散性の観点から、好ましくは10mol%以上であり、高ければ高いほど好ましく、好ましくは100mol%である。修飾基として任意の2種以上の修飾基が同時に導入されている場合には、導入率の合計が上限の100mol%を超えない範囲において、前記範囲内となることが好ましい。
修飾基の平均結合量及び導入率は、修飾用化合物の種類や添加量、反応温度、反応時間、溶媒の種類等によって調整することができる。修飾基の平均結合量(mmol/g)及び導入率(mol%)とは、改質セルロース繊維において、アニオン性基に修飾基が導入された(結合した)量及び割合のことである。
2.微細化改質セルロース繊維の製造方法
本発明の微細化改質セルロース繊維の製造方法としては、製造工程の違いによって、例えば次の二つの態様が例示できる。即ち、前記「1.改質セルロース繊維の製造方法」によって製造された改質セルロース繊維を溶媒中で微細化処理する工程Bを含む方法、及び、セルロースI型結晶構造を有する、平均繊維長が1μm以下であり、平均繊維径が0.5nm以上50nm以下である微細化アニオン変性セルロース繊維と、アミン化合物とを反応させて改質セルロース繊維を得る工程Cを含む方法である。
以下、それぞれの方法に分けて説明する。
2-1.工程Bを含む方法
工程Bでは、前述のようにして得られた改質セルロース繊維が溶媒に分散した状態のものや、溶媒を除去したものについては新たに溶媒に分散させたものに対して微細化処理を行うことができる。例えば、特開2013-151661号の微細化工程の説明を参照して実施することができる。
〔分散機〕
工程Bでは、例えば分散機を用いて微細化処理を実施することができる。微細化処理で使用できる装置としては公知の分散機が好適なものとして挙げられる。例えば、撹拌翼を備えた撹拌機、離解機、叩解機、低圧ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、グラインダー、カッターミル、ボールミル、ジェットミル、ロールミル、短軸混練機、2軸機混練機、短軸押出機、2軸押出機、超音波撹拌機、家庭用ジューサーミキサー等を用いることができる。装置の運転条件は、添付の取扱い説明書を参照しつつ適宜設定すればよい。
〔溶媒〕
微細化処理の際に使用できる溶媒としては、水等の水系溶媒や有機溶媒が挙げられる。分散性の観点から有機溶媒が好ましい。水への溶解性を有する有機溶媒を溶媒として使用する場合、水と有機溶媒との混合物を溶媒として使用してもよい。
有機溶媒としては、分散性の観点から、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン(THF)、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、n-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、t-ブチルアルコール、シクロヘキサノン、アセトニトリル、シリコーンオイル、1,3-ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン及びメチルエチルケトンからなる群より選択される1種以上の有機溶媒を含むものであり、より好ましくは、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、n-プロパノール、酢酸エチル及びエチレングリコールからなる群より選択される1種以上の有機溶媒を含むものであり、更に好ましくは、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンからなる群より選択される1種以上の有機溶媒を含むものである。
また、前記以外の有機溶媒として、反応性の官能基を有する有機溶媒も使用することができる。反応性の官能基を有する有機溶媒としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸n-へキシル、メタクリル酸n-へキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタアクリル酸2-エチルヘキシル、フェニルグリシジルエーテルアクリレート等のアクリレート類;ヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のウレタンプレポリマー類;n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ステアリン酸グリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類;クロロスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、ビニル安息香酸等が挙げられる。
このような有機溶媒は改質セルロース繊維との親和性が高いと推定されるため、改質セルロース繊維の調製や微細化処理の際にかかる有機溶媒を使用することによって、セルロース繊維の分散性がより高くなり、その結果、微細化改質セルロース繊維も高い分散性を発揮するものと推定される。
微細化処理に用いられる有機溶媒は、本発明の効果をより良く発揮させる観点から、25℃における誘電率が好ましくは75以下であり、より好ましくは55以下であり、更に好ましくは45以下であり、一方、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、更に好ましくは3以上である。なお、有機溶媒の誘電率は、液体用誘電率計Model871(日本ルフト社製)を用い25℃にて測定することができる。
微細化処理における溶媒の使用量としては、改質セルロース繊維の分散状態を維持できる程度であればよく、特に制限はないが、例えば、懸濁液等の処理対象における固形分含有量として、好ましくは0.01質量%以上となる量であり、好ましくは50質量%以下となる量である。
微細化処理の温度としては、意図しない反応の進行を抑制できれば特に制限はない。
2-2.工程Cを含む方法
本方法では、アミン化合物と反応させるアニオン変性セルロース繊維として、「セルロースI型結晶構造を有する、平均繊維長が1μm以下であり、平均繊維径が0.5nm以上50nm以下である微細化アニオン変性セルロース繊維」を使用する。
微細化アニオン変性セルロース繊維はセルロースI型結晶構造を有するものである。アニオン変性セルロース繊維の結晶化度は、樹脂成形体の機械的強度の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは20%以上である。また、原料入手性の観点から、好ましくは90%以下、より好ましくは85%以下、更に好ましくは80%以下、更に好ましくは75%以下である。
微細化アニオン変性セルロース繊維の平均繊維長は、微細化改質セルロース繊維に高い透明性を発揮させる観点から、1μm以下、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下であり、一方、取り扱い性及び機械的強度の観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは80nm以上、更に好ましくは100nm以上である。
微細化アニオン変性セルロース繊維の平均繊維径は、機械的強度の観点から、0.5nm以上、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、一方、微細化改質セルロース繊維に高い透明性を発揮させる観点から、50nm以下、好ましくは10nm以下、より好ましくは6nm以下である。
微細化アニオン変性セルロース繊維に関するセルロースI型結晶構造、平均繊維長及び平均繊維径以外の好ましい性質は、前述のアニオン変性セルロース繊維に関する好ましい性質と同じである。
微細化アニオン変性セルロース繊維は、例えば、前記の原料セルロース繊維に対して前記工程Bと同様の微細化処理を行って、所定のサイズの微細化セルロース繊維を調製し、得られた微細化セルロース繊維に対して、前述のアニオン性基を導入する方法を実施することによって調製することができる。
〔工程C〕
工程Cは、アニオン変性セルロース繊維の代わりに微細化アニオン変性セルロース繊維を用いること以外は、前述の工程Aと同じである。
従って、工程Cを含む方法における好ましい微細化改質セルロース繊維の一態様としては、微細化アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基にアミン化合物がイオン結合及び/又はアミド結合を介して結合してなるものである。ここで、アミン化合物としては、前述の(a)炭化水素基、及び(b)ポリマー基からなる群より選択される1種以上の修飾基を有するものが好ましい。
工程Cにおけるアミン化合物の存在量としては、微細化改質セルロース繊維の分散性を向上させる観点から、微細化アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基の0.3モル当量を超える量が好ましく、0.7モル当量以上がより好ましく、1モル当量以上が更に好ましい。一方、10モル当量以下が好ましく、5モル当量以下がより好ましく、3モル当量以下が更に好ましい。アミン化合物がアミノ基を複数個有する場合、アミノ基のモル数の合計が前記モル数となるように存在させる。
工程Cにおける、微細化アニオン変性セルロース繊維とアミン化合物との混合時の温度、即ち反応温度は、化合物の反応性の観点から、25℃を超え、好ましくは40℃以上、更に好ましくは50℃以上である。また、微細化改質セルロース繊維の着色抑制の観点から、反応温度は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、好ましくは150℃以下、より好ましくは100℃以下である。
微細化改質セルロース繊維に高い透明性を発揮させる観点から、工程Cにおいて、微細化アニオン変性セルロース繊維とアミン化合物との反応時間は、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上であり、生産性の観点から、好ましくは120時間以下、より好ましくは、72時間以下、より好ましくは48時間以下、より好ましくは24時間以下である。
反応時の撹拌条件は、反応を進行させる観点から、好ましくは50rpm以上であり、反応効率の観点から、好ましくは1000rpm以下である。
2-3.微細化改質セルロース繊維
本発明の製造方法によって得られる微細化改質セルロース繊維の平均繊維径は、修飾基の種類に関係なくナノオーダーである。微細化改質セルロース繊維の平均繊維径は、取扱い性、入手性、及びコストの観点から、好ましくは0.5nm以上、より好ましくは1nm以上、更に好ましくは2nm以上であり、取扱い性及び機械的強度の観点から、好ましくは50nm以下、より好ましくは10nm以下、更に好ましくは6nm以下である。
微細化改質セルロース繊維の平均繊維長としては、分散性の観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは80nm以上、さらに好ましくは100nm以上である。また、同様の観点から、好ましくは1μm以下、より好ましくは500nm以下、更に好ましくは300nm以下である。微細化改質セルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長は後述の実施例に記載の方法により測定される。
3.樹脂成形体
本発明の製造方法によって得られた改質セルロース繊維や微細化改質セルロース繊維と、有機溶媒及び/又は各種の樹脂若しくは樹脂前駆体とを混合、改質セルロース繊維若しくは微細化改質セルロース繊維の製造工程において各種の樹脂若しくは樹脂前駆体を混合、又はアニオン変性セルロース若しくは改質セルロース繊維の微細化工程において各種の樹脂若しくは樹脂前駆体を混合して、改質セルロース繊維又は微細化改質セルロース繊維及び各種の樹脂又は樹脂前駆体を含有する分散体を調製することができる。本発明で用いられる樹脂成型体に含有される樹脂には、例えば、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂等が挙げられる。かかる分散体に、押出成形、射出成形、プレス成形、注型成形又は溶媒キャスト法等の公知の成形方法を適宜適用することによって、樹脂成形体を製造することができる。かかる樹脂成形体は、セルロース繊維の分散性に優れているだけではなく、透明性にも優れているので、各種用途に好適に用いることができる。
具体的には、例えば透明樹脂材料、3次元造形材料、クッション材、補修材、接着剤、粘着剤、シーリング材、断熱材、吸音材、人工皮革材料、塗料、電子材、包装材料、自動車部品、繊維複合材料に用いることができる。樹脂成形体の形状は、シート状や塗膜のようなフィルム状であってもよい。
かかる樹脂成形体は、公知の方法、例えば、特開2019-119983号公報の段落0092~0114に記載された方法によって製造することができる。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。なお、この実施例は、単なる本発明の例示であり、何ら限定を意味するものではない。例中の部は、特記しない限り質量部である。なお、「常圧」とは101.3kPaを、「常温」とは25℃を示す。
〔セルロース繊維、アニオン変性セルロース繊維及び改質セルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長〕
測定対象のセルロース繊維に脱イオン水を加えて、その含有量が0.01質量%の分散液を調製する。該分散液を湿式分散タイプ画像解析粒度分布計(ジャスコインターナショナル社製、商品名:IF-3200)を用いて、フロントレンズ:2倍、テレセントリックズームレンズ:1倍、画像分解能:0.835μm/ピクセル、シリンジ内径:6515μm、スペーサー厚み:500μm、画像認識モード:ゴースト、閾値:8、分析サンプル量:1mL、サンプリング:15%の条件で測定する。セルロース繊維を100本測定し、それらの平均ISO繊維径を平均繊維径をとして、平均ISO繊維長を平均繊維長として算出する。
〔微細化アニオン変性セルロース繊維及び微細化改質セルロース繊維の平均繊維径及び平均繊維長〕
対象となるセルロース繊維に脱イオン水を加えて、その濃度が0.0001質量%の分散液を調製し、該分散液をマイカ(雲母)上に滴下して乾燥したものを観察試料として、原子間力顕微鏡(AFM、Nanoscope III Tapping mode AFM、Digital instrument社製、プローブはナノセンサーズ社製Point Probe (NCH)を使用)を用いて、該観察試料中のセルロース繊維の繊維高さ(繊維のあるところとないところの高さの差)を測定する。その際、該セルロース繊維が確認できる顕微鏡画像において、該セルロース繊維を無作為に100本抽出し、それらの繊維高さから数平均繊維径を算出する。繊維方向の距離から平均繊維長を算出する。平均アスペクト比は平均繊維長/平均繊維径より算出する。
〔アニオン変性セルロース繊維及び改質セルロース繊維のアニオン性基含有量〕
乾燥質量0.5gの測定対象のセルロース繊維をビーカーにとり、脱イオン水又はメタノール/脱イオン水=2/1(体積比)の混合溶媒を加えて全体で55mLとし、ここに0.01M塩化ナトリウム水溶液5mLを加えて分散液を調製する。測定対象のセルロース繊維が十分に分散するまで該分散液を撹拌する。この分散液に0.1M塩酸を加えてpHを2.5~3に調整し、自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名「AUT-701」)を用い、0.05M水酸化ナトリウム水溶液を、待ち時間60秒の条件で該分散液に滴下し、1分ごとの電導度及びpHの値を測定する。pH11程度になるまで測定を続け、電導度曲線を得る。この電導度曲線から、水酸化ナトリウム滴定量を求め、次式により、測定対象のセルロース繊維のアニオン性基含有量を算出する。
アニオン性基含有量(mmol/g)=[水酸化ナトリウム水溶液滴定量(mL)×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.05M)]/[測定対象のセルロース繊維の質量(0.5g)]
〔各種セルロース繊維における結晶構造の確認〕
セルロース原料、アニオン変性セルロース繊維や改質セルロース繊維等の各種セルロースの結晶構造は、回折計(リガク社製、商品名:MiniFlexII)を用いて以下の条件で測定することにより確認する。
測定ペレット調製条件:錠剤成形機で10~20MPaの範囲で、対象のセルロースに圧力を印加することで、面積320mm×厚さ1mmの平滑なペレットを調製する。
X線回折分析条件:ステップ角0.01°、スキャンスピード10°/min、測定範囲:回折角2θ=5~40°
X線源:Cu/Kα-radiation、管電圧:15kv、管電流:30mA
ピーク分割条件:バックグラウンドノイズを除去した後、2θ=13-23°の間の誤差が5%以内に収まるようにガウス関数でフィッティングする。
各種セルロースの結晶構造は、前述の回折計を用いて、前述の条件で測定することにより確認する。
セルロースI型結晶構造の結晶化度は前述のピーク分割により得られたX線回折ピークの面積を用いて以下の式(A)に基づいて算出する。
セルロースI型結晶化度(%)=[Icr/(Icr+Iam)]×100 (A)
〔式中、Icrは、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22-23°)の回折ピークの面積、Iamはアモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折ピークの面積を示す。〕
〔分散体又は分散液中の固形分含有量〕
ハロゲン水分計(島津製作所社製、商品名:MOC-120H)を用いて行う。サンプル1gに対して150℃恒温で30秒ごとの測定を行い、質量減少が0.1%以下となった値を固形分含有量とする。
調製例1
針葉樹の漂白クラフトパルプ(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名「Machenzie」、CSF650ml)を天然セルロース繊維として用いた。TEMPOとしては、市販品(ALDRICH社製、Free radical、98質量%)を用いた。次亜塩素酸ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。臭化ナトリウムとしては、市販品(和光純薬工業社製)を用いた。
まず、針葉樹の漂白クラフトパルプ繊維100gを9900gの脱イオン水で十分に撹拌した後、該パルプ質量100gに対し、TEMPO 1.6g、臭化ナトリウム10g、次亜塩素酸ナトリウム28.4gをこの順で添加した。自動滴定装置(東亜ディーケーケー社製、商品名:AUT-701)でpHスタット滴定を用い、十分な撹拌下、0.5M水酸化ナトリウムを滴下してpHを10.5に保持した。反応を120分(20℃)行った後、水酸化ナトリウムの滴下を停止し、酸化セルロース繊維を得た。得られた酸化セルロース繊維を、コンパクト電気伝導率計(堀場製作所製、LAQUAtwin EC-33B)によるろ液の電導度測定において200μs/cm以下になるまで脱イオン水で十分に洗浄し、次いで脱水処理を行い、固形分34.6%の酸化セルロース繊維を得た。この酸化セルロース繊維の平均繊維径は40μm、平均繊維長は2022μm、平均アスペクト比は51、カルボキシ基含有量は1.56mmol/gであり、セルロースI型結晶構造を有していた。
前記で得られた脱水処理後の酸化セルロース繊維144.5gを1000gの脱イオン水で希釈し、これに35%過酸化水素水を1.4g(原料セルロース繊維の絶乾質量100質量部に対して過酸化水素1質量部)加え、1M水酸化ナトリウムでpH12に調整した。次いで、2時間、80℃でアルカリ加水分解処理を行った(酸化セルロース繊維の固形分含有量4.3質量%)。得られた酸化セルロース繊維を十分に洗浄し、固形分28.6%の短繊維化された酸化セルロース繊維を得た。この短繊維化された酸化セルロース繊維の平均繊維径は39μm、平均繊維長は387μm、平均アスペクト比は10、カルボキシ基含有量は1.29mmol/gであった。
実施例1(調製例1の短繊維化された酸化セルロース繊維を用いた改質セルロース繊維)
(工程A)
マグネティックスターラー、撹拌子を備えたビーカーに、調製例1で得られた短繊維化された酸化セルロース繊維を絶乾質量で0.15g仕込んだ。続いて、オクチルアミンを、この酸化セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基1molに相当する量仕込み、溶媒としてのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)30gで溶解させた。これらの混合物を反応温度80℃で1時間反応させることで、酸化セルロース繊維にオクチル基がイオン結合を介して結合した改質セルロース繊維のDMF懸濁液を得た(固形分含有量0.5質量%)。
(工程B)
得られた改質セルロース繊維のDMF懸濁液を高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、商品名:ナノヴェイタL-ES)を用いて、冷却下にて150MPaで5パス処理(15分間)し、微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した分散体(固形分含有量0.5質量%)を得た。
比較例1(反応温度の変更)
工程Aにおける反応温度を25℃に変更したこと以外は実施例1と同様の処理を行って、微細化された改質セルロース繊維がDMFに分散した分散体(固形分含有量0.5質量%)を得た。
比較例2(酸化セルロース繊維単体)
マグネティックスターラー、撹拌子を備えたビーカーに、調製例1で得られた短繊維化された酸化セルロース繊維を絶乾質量で0.15g仕込んだ。続いて、溶媒としてのN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)30gを仕込み、懸濁液を80℃で1時間攪拌した。得られた酸化セルロース繊維のDMF懸濁液を室温に冷却した後にオクチルアミンを、この酸化セルロース繊維のカルボキシ基1molに対してアミノ基1molに相当する量を仕込み、室温(25℃)で1時間混合して反応させた。
得られた改質セルロース繊維の懸濁液を高圧ホモジナイザー(吉田機械社製、商品名:ナノヴェイタL-ES)にて150MPaで5パス処理し、改質セルロース繊維のDMF懸濁液を得た(固形分含有量0.5質量%)。
試験例1(透過率)
紫外可視分光光度計(UV-VISIBLE SPECTROMETER UV-2550、島津製作所社製)を用いて、実施例及び比較例で得られた分散体又は懸濁液の600nmでの吸光度を測定し、これを透明性の指標とした。比較例1における吸光度を100(%)として、各例における吸光度から透過率を相対的に求めた。数値が高いほど透明性に優れることを示す。
Figure 2022092606000005
本発明の製造方法で得られた微細化改質セルロース繊維を含有する分散体は、比較例1及び比較例2における分散体よりも、600nmにおける透過率が高いこと、即ち透明性により優れていることが分かった。具体的には、比較例1では、工程Aにおける反応温度が低かったため、実施例1と比べて透過率に劣る結果となった。
さらに、比較例2では、アミン化合物を添加し、室温での撹拌を行ったため、透過率は比較例1とほぼ同じであった。
本発明の製造方法によって得られた改質セルロース繊維及び微細化改質セルロース繊維は、有機溶媒に対して高い分散性を有するだけではなく、樹脂成形体とした場合に高い透明性を発揮するものであるため、日用雑貨品、家電部品、家電部品用梱包資材、自動車部品等の様々な工業用途に好適に使用することができる。

Claims (10)

  1. セルロースI型結晶構造を有するアニオン変性セルロース繊維とアミン化合物とを反応させて改質セルロース繊維を得る工程Aを含む、改質セルロース繊維の製造方法であって、
    工程Aにおいて、アニオン変性セルロース繊維とアミン化合物とを25℃を超える反応温度で反応させる、改質セルロース繊維の製造方法。
  2. 改質セルロース繊維の平均繊維長が1μm以上1000μm以下である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 改質セルロース繊維が、アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基にアミン化合物がイオン結合及び/又はアミド結合を介して結合してなるものである、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. アニオン変性セルロース繊維の平均繊維長が1μm以上1000μm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. アニオン変性セルロース繊維の平均アスペクト比が100以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. アミン化合物が、(a)炭化水素基、及び(b)ポリマー基からなる群より選択される1種以上の修飾基を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法によって得られた改質セルロース繊維を溶媒中で微細化処理する工程Bを含む、微細化改質セルロース繊維の製造方法。
  8. セルロースI型結晶構造を有する、平均繊維長が1μm以下であり、平均繊維径が0.5nm以上50nm以下である微細化アニオン変性セルロース繊維と、アミン化合物とを反応させて改質セルロース繊維を得る工程Cを含む、微細化改質セルロース繊維の製造方法であって、
    工程Cにおいて、微細化アニオン変性セルロース繊維とアミン化合物とを25℃を超える反応温度で反応させる、微細化改質セルロース繊維の製造方法。
  9. 微細化改質セルロース繊維が、微細化アニオン変性セルロース繊維のアニオン性基にアミン化合物がイオン結合及び/又はアミド結合を介して結合してなるものである、請求項8に記載の製造方法。
  10. アミン化合物が、(a)炭化水素基、及び(b)ポリマー基からなる群より選択される1種以上の修飾基を有する、請求項8又は9に記載の製造方法。
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