例えば、レーダ送信波として、周波数変調波(以下、「チャープ信号」と呼ぶ)を繰り返し送信する方式がある。この方式は、例えば、fast chirp modulation(FCM)方式と呼ばれることもある。
特許文献1には、例えば、同一のチャープ信号を繰り返し送信する送信方法が開示されている。この場合、例えば、チャープ周波数掃引帯域幅BW
chirpに基づいて、距離分解能ΔR
1は、次式(1)に従って定められてよい。なお、C
0は光速度を表す。
また、例えば、チャープ信号の送信周期T
chirpに基づいて、最大ドップラ速度f
dmaxは、次式(2)に従って定められてよい。
また、特許文献2には、例えば、チャープ信号の中心周波数を、チャープ信号を繰り返し送信する度にΔf可変する送信方法が開示されている。この場合、例えば、チャープ信号を繰り返し送信する度に可変されるチャープ信号の中心周波数の周波数変化幅BW
fcvalが、個々のチャープ周波数掃引帯域幅BW
chirpよりも大きい場合(例えば、BW
fcval>BW
chirpの場合)、距離分解能ΔR
2は、次式(3)に従って定められてよい。なお、C
0は光速度を表す。
なお、中心周波数の周波数変化幅BWfcvalは、例えば、(最大となるチャープ信号中心周波数)-(最小となるチャープ信号の中心周波数)によって算出されてよい。
よって、例えば、BWfcvalが大きいほど、個々のチャープ周波数掃引帯域幅BWchirpに依らず(例えば、BWchirpが小さい場合でも)、距離分解能(例えば、ΔR2)を向上でき、チャープ信号の送信周期Tchirpを短縮できる。また、例えば、式(2)より、チャープ信号の送信周期Tchirpの短縮によって最大ドップラ速度fdmaxを向上できる。
しかしながら、特許文献2の送信方法では、送信周期毎に中心周波数が異なるチャープ信号が送信されるため、チャープ信号を可変にするための制御回数が増加し得る。例えば、チャープ信号を可変にするための制御回数の増加に伴い、送信周期毎のチャープ信号の生成に関するパラメータを記憶するメモリ量も増加し得る。また、例えば、チャープ信号を可変するための制御回数が増加すると、チャープ信号可変時の周波数誤差又は位相誤差が発生しやすくなり、距離精度又はドップラ精度といったレーダ装置の性能が劣化しやすくなる。
これに対して、特許文献3には、例えば、中心周波数が同一のチャープ信号をN回繰り返し送信後に、中心周波数をΔf可変する送信方法が開示されている。この送信方法により、例えば、特許文献2よりもチャープ信号を可変するための制御回数を低減し、チャープ信号の生成に関するパラメータを記憶するメモリ量の低減が可能である。
しかしながら、特許文献3は、中心周波数が同一のチャープ信号をN回繰り返し送信するため、中心周波数の周波数変化幅BWfcvalが減少し得る。例えば、特許文献2においてNc回チャープ信号を送信する度に、チャープ信号の中心周波数をΔf可変する場合、中心周波数の周波数変化幅BWfcval=(Nc-1)×Δfとなる。その一方で、特許文献3では、Nc回チャープ信号を送信する際に、中心周波数が同一のチャープ信号をN回繰り返し送信する場合、中心周波数の周波数変化幅BWfcval=(floor(Nc/N)-1)×Δfとなる。なお、ここで、N>2であり、floor(x)は、実数xを超えない最大の整数値を返す関数である。このように、特許文献3における中心周波数の周波数変化幅BWfcvalは、特許文献2と比較して、floor(Nc/N)/(Nc-1)に減少し得る。このため、式(3)より、距離分解能は、特許文献2よりも低減し得る。
また、例えば、中心周波数を可変に設定する|Δf|が大きいほど、距離情報又はドップラ情報を抽出する際に位相不確定性が発生しやすくなるため、|Δf|には上限が設定され得る。例えば、特許文献2に用いたチャープ信号の中心周波数の可変値Δfに対して、特許文献3におけるチャープ信号の中心周波数の可変値を、単純にN倍して、(N×Δf)可変とする設定は許容されない可能性がある。以上より、特許文献3では、距離分解能は、特許文献2よりも低減し得る。
そこで、本開示に係る一実施例では、チャープ信号を繰り返し送信する送信方法において、チャープ信号を可変するための制御回数(チャープ信号の生成に関するパラメータを記憶するメモリ量)を低減し、距離分解能を向上する方法について説明する。
以下、本開示の一実施例に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、実施の形態において、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は重複するので省略する。
(実施の形態1)
[レーダ装置の構成]
図1は、本実施の形態に係るレーダ装置10の構成例を示すブロック図である。
レーダ装置10は、レーダ送信部(送信ブランチ)100と、レーダ受信部(受信ブランチ)200と、を有する。
レーダ送信部100は、レーダ信号(レーダ送信信号)を生成し、送信アンテナ106を用いて、レーダ送信信号を規定された送信周期にて送信する。
レーダ受信部200は、ターゲット(物標。図示せず)にて反射されたレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ202(例えば、Na個)を含む受信アレーアンテナを用いて受信する。レーダ受信部200は、各受信アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理し、例えば、ターゲットの有無検出又は反射波信号の到来距離、ドップラ周波数(換言すると相対速度)、及び到来方向の推定を行い、推定結果に関する情報(換言すると、測位情報)を出力(測位出力)する。
なお、レーダ装置10は、例えば、車両といった移動体に搭載されてよく、レーダ受信部200の測位出力(推定結果に関する情報)は、例えば、衝突安全性を高める先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)や自動運転システムといった制御装置ECU(Electronic Control Unit)(図示なし)に接続され、車両駆動制御や警報発呼制御に利用されてもよい。
また、レーダ装置10は、例えば、路側の電柱又は信号機といった比較的高所の構造物(図示なし)に取り付けられてよく、レーダ装置10は、例えば、通行する車両又は歩行者の安全性を高める支援システムや、不審者の侵入防止システム(図示なし)におけるセンサとして利用してもよく、レーダ受信部200の測位出力は、例えば、安全性を高める支援システムや不審者侵入防止システムにおける制御装置(図示なし)に接続され、警報発呼制御や異常検出制御に利用されてもよい。なお、レーダ装置10の用途はこれらに限定されず、他の用途に利用されてもよい。
なお、ターゲットはレーダ装置10が検出する対象の物体であり、例えば、車両(4輪及び2輪を含む)、人、ブロック又は縁石を含む。
[レーダ送信部100の構成]
レーダ送信部100は、例えば、レーダ送信信号生成部101(例えば、信号生成回路に相当)と、送信アンテナ106と、を有してよい。
レーダ送信信号生成部101は、例えば、レーダ送信信号(換言すると、チャープ信号)を生成してよい。レーダ送信信号生成部101は、例えば、送信タイミング制御部102、送信周波数制御部103、変調信号発生部104、及び、VCO(Voltage Controlled Oscillator:電圧制御発信器)105を有してよい。以下、レーダ送信信号生成部101における各構成部について説明する。
送信タイミング制御部102は、例えば、チャープ信号の送信タイミングを制御してよい。送信タイミング制御部102は、例えば、送信タイミングに関する制御信号を変調信号発生部104へ出力してよい。
送信周波数制御部103は、例えば、チャープ信号の掃引周波数を制御してよい。送信周波数制御部103は、例えば、掃引周波数に関する制御信号を変調信号発生部104へ出力してよい。
変調信号発生部104は、例えば、送信タイミング制御部102及び送信周波数制御部103から入力される制御信号に基づいて、VCO制御用の変調信号を発生させる。
VCO105は、変調信号発生部104から出力される変調信号(又は、電圧出力)に基づいて、周波数変調信号(以下、例えば、周波数チャープ信号又はチャープ信号と呼ぶ)を送信アンテナ106、及び、レーダ受信部200(後述するミキサ部204)へ出力する。
VCO105からの出力は、例えば、所定の送信電力に増幅後に、送信アンテナ106から空間に放射(又は、送信)される。
図2は、レーダ送信信号生成部101において生成されるレーダ送信信号の一例を示す図である。図2では、一例として、レーダ送信信号生成部101から出力されるレーダ送信信号は、チャープ信号の変調周波数が徐々に高くなる場合(例えば、「アップチャープ」と呼ぶ)を示すが、これに限定されない。例えば、レーダ送信信号生成部101から出力されるレーダ送信信号は、チャープ信号の変調周波数が徐々に低くなる場合(例えば、「ダウンチャープ」と呼ぶ)でもよく、アップチャープと同様の効果を得ることができる。
例えば、送信タイミング制御部102は、チャープ信号の送信タイミング制御において、以下の動作を行ってよい。
例えば、送信タイミング制御部102は、第1番目の送信周期Tr#1におけるチャープ送信信号開始タイミングTst(1)を、Tst(1)=T0に設定するように変調信号発生部104を制御してよい。このため、送信周期Tr#1におけるチャープ信号の遅延時間は0である。
また、送信タイミング制御部102は、例えば、第2番目の送信周期Tr#2におけるチャープ送信信号開始タイミングTst(2)を、Tst(2)=T0+Tr+Δtに設定し、第3番目の送信周期Tr#3におけるチャープ送信信号開始タイミングTst(3)をTst(3)=T0+2Tr+2Δtに設定してよい。以降、送信タイミング制御部102は、例えば、第Ncf番目(図2では、Ncf=4)の送信周期まで、同様に、平均送信周期Trの時間間隔毎に、送信信号開始タイミングをΔtずつ変化させてよい。例えば、送信タイミング制御部102は、第Ncf番目の送信周期Tr#Ncfでは、Tst(Ncf)= T0+(Ncf-1)Tr+(Ncf-1)×Δtに設定する。このため、送信周期Tr#2におけるチャープ信号の遅延時間はΔtであり、送信周期Tr#3におけるチャープ信号の遅延時間は2Δtであり、送信周期Tr#4におけるチャープ信号の遅延時間は3Δtである。
また、送信タイミング制御部102は、例えば、第Ncf+1番目の送信周期Tr#Ncf+1では、Tst(Ncf+1)=T0+Ncf×Trに設定してよい。換言すると、送信タイミング制御部102は、第Ncf+1番目の送信周期における送信信号開始タイミングを平均送信周期Trの時間間隔のタイミング(又は、第1番目の送信周期における送信信号開始タイミング)と一致させてよい。例えば、送信タイミング制御部102は、第m番目の送信周期におけるチャープ送信信号開始タイミングをTst(m)= T0+(m-1)×Tr+mod(m-1,Ncf)×Δtに設定してよい。ここで、m=1、…、Ncである。また、mod(x,y)はモジュロ演算子であり、xをyで割った後の余りを出力する関数である。
以上のように、送信タイミング制御部102は、例えば、第1番目から第Ncf-1番目のチャープ信号の送信周期を「Tr+Δt」に設定し、第Ncf番目のチャープ信号の送信周期を「Tr-(Ncf-1)×Δt」に設定して、チャープ信号を送信するように変調信号発生部104を制御する。従って、Ncf回のチャープ信号の平均送信周期は「Tr」となる。以降、送信タイミング制御部102は、同様に、m番目のチャープ信号の送信周期を、mがNcfの整数倍でない場合には「Tr+Δt」に設定し、mがNcfの整数倍の場合には「Tr-(Ncf-1)×Δt」に設定してよい。
換言すると、送信タイミング制御部102は、所定数(例えば、Ncf)の送信周期のそれぞれにおいて、チャープ信号の送信遅延を設定する。本実施の形態では、Ncf回の送信周期内において、チャープ信号の送信遅延の変化は、送信周期毎に異なってよい。また、例えば、チャープ信号の送信遅延の変化は、Ncf回の送信周期で一巡してよい。
送信タイミング制御部102は、例えば、以上のようなチャープ信号の送信タイミング制御をNc回繰り返してよい。ここで、m=1、…、Ncである。
また、例えば、送信周波数制御部103は、チャープ信号の掃引周波数制御において、以下の動作を行ってよい。
送信周波数制御部103は、例えば、第1番目の送信周期Tr#1におけるチャープ信号の掃引開始周波数をfstart(1)=fstart0に設定し、チャープ掃引時間Tchirp内の掃引終了周波数をfend(1)=fend0に設定し、掃引中心周波数fc(1)をfc(1)=f0=|fend0-fstart0|/2に設定するように、変調信号発生部104を制御する。同様に、送信周波数制御部103は、例えば、第2番目の送信周期Tr#2におけるチャープ信号の掃引開始周波数をfstart(2)=fstart0に設定し、掃引終了周波数をfend(2)=fend0に設定し、周波数掃引中心周波数fc(2)をfc(2)=f0に設定するように、変調信号発生部104を制御する。以降、送信周波数制御部103は、例えば、第Ncf番目(図2では、Ncf=4)の送信周期まで、同様に、チャープ信号の掃引開始周波数、掃引終了周波数、及び、周波数掃引中心周波数を一定の値に設定する。
また、送信周波数制御部103は、例えば、第Ncf+1番目の送信周期Tr#Nc+1では、チャープ信号の掃引開始周波数、掃引終了周波数、及び、周波数掃引中心周波数をそれぞれΔf変化させる。例えば、送信周波数制御部103は、第Ncf+1番目の送信周期(図2では、Tr#5)におけるチャープ信号の掃引開始周波数をfstart(Ncf+1)=fstart0+Δfに設定し、掃引終了周波数をfend(Ncf+1)=fend0+Δfに設定し、周波数掃引中心周波数fc(Ncf+1)をfc(Ncf+1)=f0+Δfに設定してよい。なお、図2の例では、Δf<0の場合を示す。以降、同様に、送信周波数制御部103は、例えば、第2×Ncf番目の送信周期(図2では、Tr#8)まで、チャープ信号の掃引開始周波数、掃引終了周波数、及び、周波数掃引中心周波数を一定の値に設定する。
また、送信周波数制御部103は、例えば、第2×Ncf+1番目の送信周期(図2では、Tr#9)では、チャープ信号の掃引開始周波数、掃引終了周波数、及び、周波数掃引中心周波数をそれぞれΔf変化させる。例えば、送信周波数制御部103は、第2×Ncf+1番目の送信周期におけるチャープ信号の中心周波数をfc(2×Ncf+1)=f0+2Δfに設定する。以降、送信周波数制御部103は、第3×Ncf番目の送信周期まで、同様に、チャープ信号の中心周波数を一定(f0+2Δf)に設定する。
また、送信周波数制御部103は、例えば、第3×Ncf+1番目の送信周期では、チャープ信号の掃引開始周波数、掃引終了周波数、及び周波数掃引中心周波数をそれぞれΔf変化させる。例えば、送信周波数制御部103は、第3×Ncf+1番目の送信周期におけるチャープ信号の掃引開始周波数fstart(3×Ncf+1)=fstart0+3Δfに設定し、掃引終了周波数をfend(3×Ncf+1)=fend0+3Δfに設定し、周波数掃引中心周波数fc(3×Ncf+1)をfc(3×Ncf+1)=f0+3Δfに設定する。
以降、同様に、送信周波数制御部103は、例えば、第m番目の送信周期におけるチャープ信号の掃引開始周波数をfstart(m)=fstart0+floor((m-1)/Ncf)×Δfに設定し、掃引終了周波数をfend(m)=fend0+floor((m-1)/Ncf)×Δfに設定し、周波数掃引中心周波数をfc(m)=f0+floor((m-1)/Ncf)×Δfに設定してよい。
以上のように、送信周波数制御部103は、周波数掃引帯域幅Bs=|fend0-fstart0|を一定とし、掃引周波数の変化率(周波数掃引時間変化率)fvr=|fend0-fstart0|/Tchirpを一定とし、(Ncf×Tr)周期毎にチャープ信号の中心周波数をΔfのステップで変化させるように変調信号発生部を制御する。換言すると、送信周波数制御部103は、チャープ信号の中心周波数を、所定数(例えば、Ncf)の送信周期毎に変化させる。
送信周波数制御部103は、例えば、以上のようなチャープ信号の送信周波数制御をNc回繰り返してよい。ここで、m=1、…、Ncである。また、floor(x)は実数xを超えない最大の整数を出力する演算子である。
以上、送信タイミング制御部102及び送信周波数制御部103の動作例について説明した。
なお、Δt及びΔfは、例えば、以下のような関係に基づいて設定されてよい(理由については後述する)。
|Δf|=|Δt×fstep×Ncf|
ここで、fstepは、例えば、チャープ信号の掃引周波数時間変化率[Hz/s]である。
また、Δtは、ADサンプリング間隔Tsの整数倍(Δt=Ndts×Ts)に設定されてよい。これにより、デジタル的な時間制御が容易となり好適である。例えば、ΔtがADサンプリング間隔Tsの整数倍に設定される場合、|Δf|=|fstep×Δt×Ncf|=|fA×Ndts×Ncf|に設定されてよい。ここで、fAは、ADサンプリング間隔Tsでのチャープ信号の掃引周波数変化率であり、fA=fstep×Tsである。なお、一例は後述するが、|Δt×fstep|の設定には上限が設定されてよい。
また、例えば、チャープ信号の周波数掃引がfstart0<fend0の場合(アップチャープ)、Δt>0の場合(チャープ信号の送信時間を遅らせる場合に相当)にはΔf<0に設定されてよい(例えば、図2)。また、例えば、チャープ信号の周波数掃引がfstart0<fend0の場合(アップチャープ)、Δt<0の場合(チャープ信号の送信時間を早める場合に相当)にはΔf>0に設定されてよい(図3に示す例。図3ではNcf=4)。
また、例えば、チャープ信号の周波数掃引がfstart0>fend0の場合(ダウンチャープ)、Δt>0の場合にはΔf>0に設定されてよい(図4に示す例。図4ではNcf=4)。また、例えば、チャープ信号の周波数掃引がfstart0>fend0の場合(ダウンチャープ)、Δt<0の場合にはΔf<0に設定されてよい(図5に示す例。図5ではNcf=4)。
このように、中心周波数の変化Δfは、送信遅延の量Δtに基づいて設定されてよい。なお、中心周波数の変化Δfは、送信遅延の量Δtに基づいて設定されなくてもよく、任意に設定することができる。
例えば、VCO105は、変調信号発生部104の電圧出力に基づいて、チャープ信号を出力してよい。例えば、VCO105は、第1番目から第Ncf番目の送信周期まで、周波数掃引帯域幅Bw=|fend0-fstart0|、周波数掃引時間変化率fstep、及び、周波数掃引中心周波数f0に設定されたチャープ信号を、平均送信周期Trの時間間隔毎に、送信信号開始タイミングをΔtずつ可変して出力してよい。
また、例えば、VCO105は、第Ncf+1番目から第2×Ncf番目の送信周期まで、それぞれ第1番目から第Ncf番目の送信周期と同様の平均送信周期Trの時間間隔毎の周期に対する送信信号開始タイミングで、周波数掃引帯域幅Bw=|fend0-fstart0|、周波数掃引時間変化率fstep、及び、周波数掃引中心周波数f0+Δfに設定されたチャープ信号を出力してよい。
以降、同様に、第m番目の送信周期におけるチャープ信号の掃引開始周波数がfstart(m)=fstart0+floor((m-1)/Ncf)×Δfに設定され、掃引終了周波数がfend(m)=fend0+floor((m-1)/Ncf)×Δfに設定され、周波数掃引中心周波数がfc(m)=f0+floor((m-1)/Ncf)×Δfに設定されてよい。また、m番目のチャープ信号の送信周期は、mがNcfの整数倍でない場合は、Tr+Δtに設定され、mがNcfの整数倍の場合は、Tr-(Ncf-1)×Δtに設定されてよい。
レーダ送信部100は、以上のようなチャープ信号の送信をNc回繰り返してよい。ここで、m=1、…、Ncである。
以上、レーダ送信部100の構成例について説明した。
[レーダ受信部200の構成]
図1において、レーダ受信部200は、例えば、Na個の受信アンテナ202(例えば、Rx#1~Rx#Naとも表す)を備え、アレーアンテナを構成してよい。また、レーダ受信部200は、例えば、Na個のアンテナ系統処理部201-1~201-Naと、CFAR(Constant False Alarm Rate)部210と、方向推定部211と、を有してよい。
各受信アンテナ202は、ターゲットに反射したレーダ送信信号である反射波信号を受信し、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力する。
各アンテナ系統処理部201は、受信無線部203と、信号処理部206とを有する。
受信無線部203は、ミキサ部204と、LPF(low pass filter)205と、を有する。ミキサ部204は、受信した反射波信号に対して、レーダ送信信号生成部101から入力される、送信信号であるチャープ信号をミキシングする。LPF205は、ミキサ部204の出力信号に対してLPF処理を施すことによって、反射波信号の遅延時間に応じた周波数となるビート信号を出力する。
例えば、図6に示すように、ビート信号は、送信チャープ信号(送信周波数変調波)の周波数と、受信チャープ信号(受信周波数変調波)の周波数との差分周波数からなる信号(又は、ビート周波数)として得られる。
各アンテナ系統処理部201-z(ただし、z=1~Naの何れか)の信号処理部206は、AD変換部207と、ビート周波数解析部208と、ドップラ解析部209と、を有する。
LPF205から出力された信号(例えば、ビート信号)は、信号処理部206において、AD変換部207によって、離散的にサンプリングされた離散サンプルデータに変換される。AD変換部207は、例えば、送信されるNc個のチャープ信号に対して、平均送信周期Tr毎にADサンプリングする期間(以下、「レンジゲート」と呼ぶ)TADを設定してよい。
以下、AD変換部207におけるレンジゲート内のチャープ信号について説明する。
例えば、第m番目の送信周期におけるレンジゲートの開始時刻をTstAD(m)=T0+(m-1)×Tr+Tdlyとし、レンジゲートの終了時刻をTendAD(m)=T0+(m-1)×Tr+Tdly+Ts×Ndataとする。ここで、Ndataは、レンジゲート内のADサンプル数を表す。なお、送信されるNc個のチャープ信号の変調周波数時間変化率fstepがそれぞれ同一の場合、各レンジゲートTAD内の周波数変調帯域幅Bw=fstep×TADは同一となる。また、AD変換部207では、送信周期それぞれにおいてAD変換を行う区間(例えば、TAD)及びAD変換を開始するタイミング(例えば、送信周期の開始タイミングからTdly後)は一定である。
ここで、レーダ送信部100は、例えば、第1番目から第Ncf番目の送信周期まで、同一のチャープ信号を平均送信周期Trの時間間隔毎に、送信信号開始タイミングをΔtずつ可変して出力する。このため、レーダ受信部200において、レンジゲート内でADサンプルされるデータでは、Trの時間間隔毎に、送信チャープ信号の掃引周波数がΔt×fstepずつ変化する。よって、レンジゲート内では、送信チャープ信号の中心周波数もTrの時間間隔毎にΔt×fstepずつ変化する。
例えば、第1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数に対して、第2番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数はΔt×fstep変化し、第3番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数は2Δt×fstep変化する。同様に、第1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数に対して、第Ncf番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数は(Ncf-1)×Δt×fstep変化する。
また、レーダ送信部100は、例えば、第Ncf+1番目から第2×Ncf番目の送信周期まで、それぞれ第1番目から第Ncf番目の送信周期と同様の平均送信周期Trの時間間隔毎の周期に対する送信信号開始タイミングで、周波数掃引中心周波数f0+Δfのチャープ信号を出力する。このため、レーダ受信部200において、第1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数に対し、第Ncf+1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数はΔf変化する。
例えば、レーダ送信部100において、上述したように、ΔtとΔfとは、|Δf|=|Δt×fstep×Ncf|となる関係を用いて設定されてよい。例えば、アップチャープの場合、Δf=-Ncf×Δt×fstepに設定されてよい。また、例えば、ダウンチャープの場合、Δf=+Ncf×Δt×fstepに設定されてよい。
以降、レーダ送信部100は、例えば、第Ncf+2番目から第2×Ncf番目のチャープ信号を、平均送信周期Trの時間間隔毎に、送信信号開始タイミングをΔtずつ可変して出力する。このため、レーダ受信部200において、レンジゲート内でADサンプルされるデータでは、送信チャープ信号の掃引周波数がΔt×fstepずつ変化する。よって、レンジゲート内では、送信チャープ信号の中心周波数もΔt×fstepずつ変化する。
例えば、第1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数に対して、第Ncf+2番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数は(Ncf+1)×Δt×fstep変化し、第Ncf+3番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数は(Ncf+2)×Δt×fstep変化する。同様に、第1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数に対して、第2Ncf番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数は(2Ncf-1)×Δt×fstep変化する。
以降、同様に、第m番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数は、第1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数に対し、(m-1)×Δt×fstep変化する。
このように、レーダ送信部100において、Ncf回の送信周期では同一チャープ信号が送信され、平均送信周期Trの時間間隔毎に送信信号開始タイミングをΔtずつ可変してチャープ信号が出力される。換言すると、Ncf回の送信周期内においてチャープ信号の送信遅延は平均送信周期Trの時間間隔毎に変化する。これにより、レーダ受信部200は、例えば、レンジゲート内でADサンプルされる受信データとして、送信周期毎にチャープ信号の中心周波数をΔt×fstep変化して送信する場合と同等の受信信号を得ることができる。
よって、本実施の形態では、例えば、送信周期毎に中心周波数が異なるチャープ信号を送信する場合と比較して、チャープ信号を可変するための制御回数を低減でき、送信周期毎のチャープ信号を生成する際のパラメータを記憶するメモリ量を低減できる。
また、本実施の形態では、例えば、チャープ信号を可変するための制御回数の低減により、チャープ信号を可変する際の周波数誤差又は位相誤差の発生を低減でき、距離精度又はドップラ精度に対する劣化の影響を低減できる。
また、本実施の形態では、例えば、送信周期毎にチャープ信号の中心周波数をΔt×fstep変化して送信する場合と同等な受信信号を得ることができるため、中心周波数の周波数変化幅を拡大でき、距離高分解能化を図ることができる。
以上、AD変換部207におけるレンジゲート内のチャープ信号について説明した。
図1において、ビート周波数解析部208は、例えば、平均送信周期Tr毎に、規定された時間範囲(レンジゲート)において得られたNdata個の離散サンプルデータをFFT処理する。これにより、信号処理部206では、反射波信号(レーダ反射波)の遅延時間に応じたビート周波数にピークが現れる周波数スペクトラムが出力される。なお、ビート周波数解析部208は、FFT処理として、例えば、Han窓又はHamming窓等の窓関数係数を乗算してもよい。レーダ装置10は、例えば、窓関数係数を用いることにより、ビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。また、Ndata個の離散サンプリングデータ数が2のべき乗ではない場合、ビート周波数解析部208は、例えば、ゼロ埋めしたデータを含めることで2べき乗個のFFTサイズとしてFFT処理してもよい。
ここで、第m番目のチャープパルス送信によって得られる第z番目の信号処理部206におけるビート周波数解析部208から出力されるビート周波数応答をRFTz(fb, m)で表す。ここで、fbはビート周波数インデックスを表し、FFTのインデックス(ビン番号)に対応する。例えば、fb=0,…,Ndata/2であり、z=1,…,Naであり、m=1,…,NCである。ビート周波数インデックスfbが小さいほど、反射波信号の遅延時間が小さい(換言すると、ターゲットとの距離が近い)ビート周波数を示す。
また、ビート周波数インデックスf
bは、次式(4)を用いて距離情報R(f
b)に変換してよい。そのため、以下では、ビート周波数インデックスf
bを「距離インデックスf
b」とも呼ぶ。
ここで、Bwは、チャープ信号におけるレンジゲート内での周波数変調帯域幅を表し、C0は光速度を表す。
第z番目の信号処理部206におけるドップラ解析部209は、例えば、Nc回の送信周期のデータ(例えば、ビート周波数解析部208から出力されるビート周波数応答RFTz(fb, m))を用いて、距離インデックスfb毎にドップラ解析を行う。ここで、z =1, …, Naである。
例えば、Ncが2のべき乗値である場合、ドップラ解析においてFFT処理を適用してもよい。この場合、FFTサイズはNcであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は±1/(2×Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/(Nc×Tr)であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs= -Nc/2, …, 0, …, Nc/2-1である。
例えば、第z番の信号処理部206のドップラ解析部209の出力VFT
z(f
b, f
s)は、次式(5)に示される。なお、jは虚数単位であり、z=1~Naである。
また、Ncが2のべき乗でない場合には、例えば、ゼロ埋めしたデータを含めることで2のべき乗個のデータサイズ(FFTサイズ)としてFFT処理してもよい。例えば、ゼロ埋めしたデータを含めた場合のドップラ解析部209におけるFFTサイズをN
cwzeroとした場合、第z番の信号処理部206におけるドップラ解析部209の出力VFT
z(f
b, f
s)は、次式(6)に示される。
ここで、FFTサイズはNcwzeroであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は、±1/(2×Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/(Ncwzero×Tr)であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs=-Ncwzero/2,…,0,…, Ncwzero/2-1である。
以下では、一例として、Ncが2のべき乗値である場合について説明する。なお、ドップラ解析部209においてゼロ埋めを用いる場合、以下の説明においてNcをNcwzeroと置き換えることにより、同様に適用でき、同様の効果を得られる。
また、ドップラ解析部209は、FFT処理の際に、例えば、Han窓又はHamming窓といった窓関数係数を乗算してもよい。レーダ装置10は、窓関数を適用することでビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。
以上、信号処理部206の各構成部における処理について説明した。
図1において、CFAR部210は、例えば、第1~第Na番目のアンテナ系統処理部201それぞれにおける信号処理部206のドップラ解析部209の出力を用いて、CFAR処理(換言すると、適応的な閾値判定)を行い、ピーク信号を与える距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarを抽出する。
CFAR部210は、例えば、次式(7)のように、第1~第Na番目のアンテナ系統処理部201における信号処理部206のドップラ解析部209の出力VFT
z(f
b, f
s)を電力加算し、距離軸とドップラ周波数軸(相対速度に相当)とからなる2次元のCFAR処理、又は、1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理を行う。2次元のCFAR処理又は1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理については、例えば、非特許文献1に開示された処理が適用されてよい。
CFAR部210は、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となる距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfar、及び、受信電力情報PowerFT(fb_cfar, fs_cfar)を方向推定部211に出力する。
図1において、方向推定部211は、例えば、CFAR部210から入力される距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarに対応するドップラ解析部209の出力VFTz(fb_cfar, fs_cfar)に基づいて、ターゲットの方向推定処理を行う。
例えば、方向推定部211は、式(8)に示す受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)を生成し、方向推定処理を行ってよい。
受信アレー相関ベクトルh(f
b_cfar, f
s_cfar)は、受信アンテナ数Na個の要素を含む列ベクトルである。また、受信アレー相関ベクトルh(f
b_cfar, f
s_cfar)は、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定を行う処理に用いる。ここで、z=1,…,Naである。
方向推定部211は、例えば、方向推定評価関数値PH(θ, fb_cfar, fs_cfar)における方位方向θを規定された角度範囲内で可変として空間プロファイルを算出する。方向推定部211は、算出した空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向を到来方向推定値(例えば、測位出力)として出力する。
なお、方向推定評価関数値PH(θ, fb_cfar, fs_cfar)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種の方法がある。例えば、非特許文献2に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
例えば、Na個の受信アンテナが等間隔d
Hで直線状に配置される場合、ビームフォーマ法は次式(9)及び式(10)のように表すことができる。他にも、Capon, MUSICといった手法も同様に適用可能である。
ここで、上付き添え字Hはエルミート転置演算子である。また、a(θu)は、方位方向θuの到来波に対する受信アレーの方向ベクトルを示す。ここで、方向ベクトルa(θu)は、方位方向θからレーダ反射波が到来した場合の受信アレーの複素応答を要素としたNa次の列ベクトルである。また、受信アレーの複素応答は、受信アンテナの配置とレーダ反射波方向に基づき、幾何光学的に算出される行路差から生じる位相差を表す。
また、方位方向θuは到来方向推定を行う方位範囲内θmin~θmaxを方位間隔DStepで変化させたベクトルである。例えば、θuは以下のように設定される。
θu=θmin + Dstep×u、u=0,…, NU
NU=floor[(θmax-θmin)/DStep]
ここで、floor(x)は、実数xを超えない最大の整数値を返す関数である。
また、式(9)において、Dcalは、受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数及びアンテナ間の素子間結合の影響を低減する係数を含むNa次の正方行列である。受信アレーのアンテナ間の結合が無視できる場合、Dcalは、対角行列となり、対角成分に受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数が含まれる。
また、λは、レーダ送信部100から出力される無線信号のキャリア周波数の波長である。また、例えば、無線信号としてチャープ信号が出力される場合、λは中心周波数の波長でよい。
方向推定部211は、例えば、方向推定結果を出力してよい。また、方向推定部211は、例えば、測位結果として、距離インデックスfb_cfarに基づくターゲットの距離情報、ターゲットのドップラ周波数インデックスfb_cfarに基づくターゲットのドップラ速度情報を出力してもよい。
方向推定部211は、例えば、以下のようにターゲットのドップラ速度情報を算出し、出力してよい。
例えば、上述したように、レーダ受信部200では、チャープ信号の中心周波数fcを平均送信周期Tr毎にΔt×fstep変化させた送信信号と等価な信号の受信信号が得られる。このため、例えば、ターゲットの相対速度がゼロの場合でも、ドップラ解析部209の出力には、平均送信周期Tr毎にチャープ信号の中心周波数の変化に伴う位相回転が含まれる。
例えば、ターゲット距離R
targetに対する第m番目の送信周期におけるチャープ信号の中心周波数fcは、第1番目のチャープ信号の中心周波数を基準として、(m-1)Δt×fstep変化する。このため、中心周波数の変化に伴う位相回転量Δη(m, R
target)は、ターゲット距離R
targetからの反射波到来時間(2R
target/C
0)を考慮すると次式(11)で示される。なお、式(11)は、第1番目の送信周期におけるチャープ信号の受信位相を基準にした場合の相対的な位相回転量を表す。C
0は光速度を表す。
ここで、位相回転量Δη(m, R
target)を表す式(11)のうち、
が1より大きい場合に位相の不確定性が生じ得るため、例えば、
となるようにΔt×fstepが設定されてよい。
例えば、周波数変調帯域幅Bw=fstep×T
AD及び式(4)から、
となり、f
b=0,…,Ndata/2から、
となる。よって、例えば、|Δt|には、2Ts以下(又は、2Tsを上限)に設定されてよい。同様に、Δt×fstepに上限が設定されてもよい。
また、方向推定部211は、例えば、次式(12)に示すように、平均送信周期Tr毎のチャープ信号の中心周波数fcの変化量であるΔt×fstepを考慮した変換式に基づいて、ターゲットのドップラ速度情報v
d(f
b_cfar, f
s_cfar)を算出する。
式(12)における第1項目は、ドップラ周波数インデックスfs_cfarで示される相対ドップラ速度成分である。式(12)における第2項目は、チャープ信号の中心周波数fcを、平均送信周期Tr毎にΔt×fstep変化させることで生じるドップラ速度成分である。方向推定部211は、例えば、式(12)に示すように、第1項目から第2項目のドップラ成分を除くことで本来のターゲットの相対ドップラ速度vd(fb_cfar, fs_cfar)を算出できる。ここで、R(fb_cfar)は、ビート周波数インデックスfb_cfarを用いた距離情報R(fb_cfar)であり、式(4)を用いて算出されてよい。
なお、ターゲットのドップラ範囲は±1/(2×Tr)までを想定しているため、v
d(f
b_cfar, f
s_cfar)が、v
d(f
b_cfar, f
s_cfar)<- C
0/(4f
0 Tr)となる場合、方向推定部211は、例えば、次式(13)に従って、検出したターゲットのドップラ速度情報v
d(f
b_cfar, f
s_cfar)を出力してもよい。
また、同様に、ターゲットのドップラ範囲は±1/(2×Tr)までを想定しているため、v
d(f
b_cfar, f
s_cfar)が、v
d(f
b_cfar, f
s_cfar)>C
0/(4f
0 Tr)となる場合、方向推定部211は、例えば、次式(14)に従って、検出したターゲットのドップラ速度情報v
d(f
b_cfar, f
s_cfar)を出力してもよい。
以上のように、本実施の形態では、レーダ送信部100は、Ncf回の送信周期において同一のチャープ信号を送信し、平均送信周期Trの時間間隔毎に、送信信号開始タイミングをΔtずつ変化させて送信する。また、レーダ送信部100は、当該Ncf回の送信周期に続くNcf回の送信周期において、中心周波数をΔf=Δt×fstep×Nfc変化させたチャープ信号を送信する。
これにより、レーダ受信部200は、例えば、レンジゲート内においてADサンプルされる受信データについて、送信周期毎にチャープ信号の中心周波数をΔt×fstep変化して送信する場合と同等の受信信号を得ることができる。
よって、本実施の形態によれば、例えば、中心周波数が異なるチャープ信号の送信のためにチャープ信号を可変に設定する制御回数を低減でき、送信周期毎のチャープ信号を生成する際のパラメータを記憶するメモリ量を低減できる。また、例えば、レーダ受信部200においてADサンプリングする区間及びタイミングは、チャープ信号の送信周期に依らず一定でよい。これにより、レーダ受信部200における処理を簡易化できる。
また、本実施の形態では、チャープ信号を可変するための制御回数の低減により、例えば、チャープ信号の可変時の周波数誤差又は位相誤差の発生を低減でき、距離精度又はドップラ精度に対する劣化の影響を低減できる。
また、本実施の形態では、レーダ受信部200は、レーダ送信部100において送信周期毎にチャープ信号の中心周波数をΔt×fstep変化して送信する場合と同等の受信信号を得ることができる。このため、中心周波数の周波数変化幅を拡大でき、距離高分解能化を図ることができる。
また、本実施の形態では、チャープ信号を繰り返し送信する度に可変されるチャープ信号の中心周波数の周波数変化幅BWfcval(=(最大となるチャープ信号中心周波数)-(最小となるチャープ信号の中心周波数))が、個々のチャープ周波数掃引帯域幅BWchirpよりも大きい場合(例えば、BWfcval>BWchirp )、距離分解能ΔR2は式(3)によって与えられる。これより、例えば、BWfcvalが大きいほど、個々のチャープ周波数掃引帯域幅BWchirpに依存せずに(例えば、BWchirpを小さくしても)、距離分解能を向上できるので、チャープ信号の平均送信周期Trの短縮が可能となる。また、チャープ信号の平均送信周期Trの短縮により、例えば、式(2)の関係より、最大ドップラ速度fdmaxを高くでき、ドップラ検出範囲を拡大できる。
ここで、例えば、同一チャープ信号を送信する送信周期の回数Ncfが多いほど、チャープ信号の送信時間が長くなる。そこで、例えば、Ncfの設定値として、Ncfは10程度以下に設定されてよい。このNcfの設定により、例えば、チャープ送信時間が著しく増大することを防ぐことができる。なお、上述したNcfの設定値10は一例であり、他の値でもよい。
または、Ncfは、例えば、ADサンプリング(又は、AD変換)を行う区間の長さに基づいて設定されてもよい。例えば、平均送信周期Tr毎にADサンプリングする期間(例えば、レンジゲート)TADに対して、Δt×Ncf≦0.1×TADに設定されてもよい。この設定により、例えば、チャープ信号の長さの増加は10%程度以下に収まることになり好適である。あるいは、レンジゲートTAD内のサンプル数Ndata対して、例えば、Δt×Ncf≦0.1×Ndata×Tsに設定されてもよい。この設定により、例えば、チャープ信号の長さの増加は10%程度以下に収まることになり好適である。なお、上述した設定において、係数0.1は一例であり、他の値でもよい。
(実施の形態2)
実施の形態1では、1つの送信アンテナからレーダ送信信号を出力する構成について説明した。レーダ装置は、この構成に限定されず、複数の送信アンテナを用いてレーダ送信信号を出力する構成(例えば、MIMOレーダ構成)でもよい(例えば、非特許文献3を参照)。
以下では、レーダ装置において、送信ブランチにおいて、複数の送信アンテナから同時に多重された異なる送信信号を送出し、受信ブランチにおいて、各送信信号を分離して受信処理を行う構成(換言すると、MIMOレーダ構成)について説明する。
MIMOレーダは、例えば、時分割、周波数分割又は符号分割を用いて多重した信号(レーダ送信波)を複数の送信アンテナ(又は送信アレーアンテナと呼ぶ)から送信する。そして、MIMOレーダは、例えば、周辺物体において反射された信号(レーダ反射波)を複数の受信アンテナ(又は受信アレーアンテナと呼ぶ)を用いて受信し、それぞれの受信信号から、多重された送信信号を分離して受信する。このような処理により、MIMOレーダは、送信アンテナ数と受信アンテナ数との積で示される伝搬路応答を取り出すことができ、これらの受信信号を仮想受信アレーとしてアレー信号処理を行う。
また、MIMOレーダでは、送受信アレーアンテナにおける素子間隔を適切に配置することにより、仮想的にアンテナ開口を拡大し、角度分解能の向上を図ることができる。
以下では、一例として、複数の送信アンテナから送信信号を同時に多重して送信する方法の一つである符号多重送信を用いたMIMOレーダについて着目する。
[レーダ装置の構成]
図7は、本実施の形態に係るレーダ装置10aの構成例を示すブロック図である。なお、図7において、実施の形態1(例えば、図1)と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
レーダ装置10aは、レーダ送信部(送信ブランチ)100aと、レーダ受信部(受信ブランチ)200aと、を有する。
レーダ送信部100は、レーダ信号(レーダ送信信号)を生成し、複数の送信アンテナ106(例えば、Nt個)によって構成される送信アレーアンテナを用いて、レーダ送信信号を規定された送信周期にて送信する。
レーダ受信部200は、ターゲット(物標。図示せず)により反射したレーダ送信信号である反射波信号を、複数の受信アンテナ202(例えば、Na個)を含む受信アレーアンテナを用いて受信する。レーダ受信部200は、各受信アンテナ202において受信した反射波信号を信号処理し、例えば、ターゲットの有無検出又は反射波信号の到来距離、ドップラ周波数(換言すると相対速度)、及び到来方向の推定を行い、推定結果に関する情報(換言すると、測位情報)を出力する。
なお、ターゲットはレーダ装置10aが検出する対象の物体であり、例えば、車両(4輪及び2輪を含む)、人、ブロック又は縁石を含む。
[レーダ送信部100aの構成]
レーダ送信部100aは、レーダ送信信号生成部101と、符号生成部151と、位相回転部152と、送信アンテナ106と、を有する。
レーダ送信信号生成部101の動作は、例えば、実施の形態1と同様でよい。例えば、レーダ送信部100aは、Ncf回の送信周期において同一のチャープ信号を送信し、平均送信周期Trの時間間隔毎に、送信信号開始タイミングをΔtずつ変化させて送信してよい。また、レーダ送信部100aは、例えば、当該Ncf回の送信周期に続くNcf回の送信周期において、中心周波数をΔf=Δt×fstep×Nfc変化させたチャープ信号を送信してよい。これにより、レーダ受信部200aは、送信周期毎にチャープ信号の中心周波数をΔt×fstep変化して送信する場合と同等の受信信号を得ることができる。
符号生成部151は、符号多重送信を行う送信アンテナ106毎に異なる符号を生成する。符号生成部151は、生成した符号に対応する位相回転量を位相回転部152へ出力する。また、符号生成部151は、生成した符号に関する情報をレーダ受信部200(後述する出力切替部251)へ出力する。
位相回転部152は、例えば、レーダ送信信号生成部101から入力されるチャープ信号に対して、符号生成部151から入力される位相回転量を付与し、位相回転後の信号を送信アンテナ106に出力する。例えば、位相回転部152は、位相器及び位相変調器等を含んでよい(図示せず)。位相回転部152の出力信号は、規定された送信電力に増幅され、各送信アンテナ106から空間に放射される。換言すると、レーダ送信信号は、符号に対応する位相回転量が付与されることによって、複数の送信アンテナ106から符号多重送信される。
次に、レーダ装置10aにおいて設定される符号(例えば、直交符号)の一例について説明する。
符号生成部151は、例えば、符号多重送信を行う送信アンテナ106毎に異なる符号を生成する。
例えば、以下では、符号多重送信を行う送信アンテナ106の数を「Nt」個とする。ここで、Nt≧2である。
また、以下では、符号多重数を「NCM」とする。図7では、一例として、NCM=Ntの場合について説明するが、これに限定されず、例えば、複数の送信アンテナ106の組において同一の符号が送信(例えば、アレー送信又はビームフォーミング送信)されてもよい。この場合、NCM<Ntとなる。
符号生成部151は、例えば、符号長(換言すると、符号要素数)Locの符号系列(例えば、互いに直交する関係となる直交符号系列(又は、単に符号又は直交符号とも呼ぶ))に含まれるNallcode個(以下では、Nallcode(Loc)個と記載することもある)の直交符号のうち、NCM個の直交符号を、符号多重送信用の符号に設定する。
例えば、符号多重数NCMは、直交符号数Nallcodeよりも少なく、NCM<Nallcodeである。換言すると、直交符号の符号長Locは、符号多重数NCMよりも大きい。例えば、符号長LocのNCM個の直交符号をCodencm=[OCncm(1), OCncm(2),…, OCncm(Loc)]と表記する。ここで、「OCncm(noc)」は、第ncm番の直交符号Codencmにおける第noc番の符号要素を表す。また、「ncm」は符号多重に用いる直交符号のインデックスを表し、ncm=1,…, NCMである。また、「noc」は符号要素のインデックスであり、noc=1,…,Locである。
ここで、符号長LocのNallcode個の直交符号のうち、(Nallcode-NCM)個の直交符号は、符号生成部151において用いられない(換言すると、符号多重送信に用いられない)。以下、(Nallcode-NCM)個の符号生成部151において用いられない直交符号を「未使用直交符号」と呼ぶ。未使用直交符号の少なくとも一つは、例えば、後述するレーダ受信部200aの折り返し判定部252におけるドップラ周波数の折り返し判定に用いられる(一例は後述する)。
未使用直交符号の使用により、レーダ装置10aは、例えば、複数の送信アンテナ106から符号多重送信された信号を、符号間干渉を抑制した状態で、個別に分離して受信でき、かつ、検出可能なドップラ周波数の範囲を拡大できる(一例は後述する)。
上述したように、符号生成部151において生成されるNCM個の直交符号は、例えば、互いに直交する符号(換言すると、無相関の符号)である。例えば、直交符号系列には、Walsh-Hadamard符号が用いられてよい。Walsh-Hadamard符号の符号長は2のべき乗であり、各符号長の直交符号には、符号長と同数の直交符号が含まれる。例えば、符号長2、4、8又は16のWalsh-Hadamard符号には、それぞれ2、4、8又は16個の直交符号が含まれる。
以下では、一例として、符号数N
CM個の直交符号系列の符号長Locは次式(15)を満たすように設定してよい。
ここで、ceil[x]は実数x以上の最小の整数を出力する演算子(天井関数)である。符号長LocのWalsh-Hadamard符号の場合、Nallcode(Loc)=Locの関係が成り立つ。例えば、符号長Loc=2、4、8、又は16のWalsh-Hadamard符号は、それぞれ2、4、8又は16個の直交符号を含むため、Nallcode(2)=2、Nallcode(4)=4、Nallcode(8)=8、及び、Nallcode(16)=16が成立する。符号生成部151は、例えば、符号長LocのWalsh-Hadamard符号に含まれるNallcode(Loc)個の符号のうち、NCM個の直交符号を用いてよい。
ここで、符号長について説明する。例えば、ターゲット又はレーダ装置10aの移動速度に加速度が含まれる場合、符号長が長いほど符号間干渉を受けやすくなる。また、符号長が長いほど、後述するドップラ折り返し判定の際のドップラ折り返し範囲の候補が増大する。このため、同一の距離インデックスに異なる折り返し範囲に亘って複数のドップラ周波数のターゲットが存在する場合には、異なる折り返し範囲において検出されるドップラ周波数インデックスが重複する確率が増大し、レーダ装置10aは、折り返しを適切に判定することが困難になる確率が増加し得る。
このため、レーダ装置10aは、後述するレーダ受信部200aの折り返し判定部252における折り返し判定の性能面及び演算量の観点から、符号長のより短い符号を用いてもよい。一例として、レーダ装置10aは、式(15)を満たす符号長Locのうち最も短い符号長の直交符号系列を用いてもよい。
なお、符号長LocのWalsh-Hadamard符号に、例えば、符号長Locの符号[OCncm(1), OCncm(2),…, OCncm(Loc-1), OCncm(Loc)]が含まれる場合、符号長LocのWalsh-Hadamard符号には、当該符号の奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号[OCncm(1), -OCncm(2),…, OCncm(Loc-1), -OCncm(Loc)]も含まれる。
また、符号長LocのWalsh-Hadamard符号と異なる他の符号であっても、例えば、符号長Locの符号[OCncm(1), OCncm(2),…, OCncm(Loc-1), OCncm(Loc)]が含まれる場合、符号長Locの符号は、当該符号の奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号[OCncm(1), -OCncm(2),…, OCncm(Loc-1), -OCncm(Loc)]であってもよいし、又は、当該符号の偶数番目の符号要素が同一であり、奇数番目の符号要素が符号反転している符号[-OCncm(1), OCncm(2),…, -OCncm(Loc-1), OCncm(Loc)]であってよい。
未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)が2以上の場合、レーダ装置10aは、例えば、上述した関係の符号の組を未使用直交符号に含まないように、符号を選択してもよい。例えば、上述した関係の符号の組において一方の符号は符号多重送信に用いられ、他方の符号は未使用直交符号に含まれてもよい。この未使用直交符号の選択により、後述するレーダ受信部200aの折り返し判定部252におけるドップラ周波数の折り返し判定精度を向上できる(一例は後述する)。
以下、各符号多重数NCMにおける直交符号の一例について説明する。
<NCM=2又は3の場合>
NCM=2又は3の場合、例えば、符号長Loc=4、8、16、32、…のWalsh-Hadamard符号を適用してもよい。これらの符号長Locの場合、NCM<Nallcode(Loc)となる。また、符号多重数がNCM=2又は3の場合、これらの符号長Locのうち、符号長がより短いWalsh-Hadamard符号(例えば、Loc=4)を用いてもよい。
例えば、符号長LocのWalsh-Hadamard符号をWHLoc(nwhc)と表す。なお、nwhcは符号長LocのWalsh-Hadamard符号に含まれる符号インデックスを表し、nwhc=1,…, Locである。例えば、符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号には、直交符号WH4(1)=[1,1, 1, 1]、WH4(2)=[1,-1, 1, -1]、WH4(3)=[1,1, -1, -1]、及び、WH4(4)=[1,-1, -1, 1]が含まれる。
ここで、符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号のうち、WH4(1)= [1,1, 1, 1]とWH4(2) = [1,-1, 1, -1]とは、相互の符号間において、奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号の組である。また、WH4(3)= [1,1, -1, -1]及びWH4 (4)= [1,-1, -1, 1]も、WH4(1)及びWH4(2)の組と同様な関係の符号の組である。
例えば、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)が2以上の場合には、レーダ装置10aは、このような関係の符号の組を未使用直交符号に含まないように、符号を選択してもよい。
例えば、符号多重数NCM=2の場合、符号生成部151は、符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号のうち、2個の直交符号を符号多重送信用の符号に決定する。この場合、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)は2個となる。
例えば、符号生成部151は、WH4(1)とWH4(2)の符号の組、又は、WH4(3)とWH4(4)の符号の組が未使用直交符号に含まれないように、符号多重送信用の符号を選択してもよい。例えば、符号多重送信用の符号(Code1及びCode2)の組み合わせは、Code1=WH4(1)(= [1,1, 1, 1])及びCode2=WH4(3)(= [1,1, -1, -1])の組み合わせ、Code1=WH4(1)及びCode2=WH4(4)の組み合わせ、Code1=WH4(2)及びCode2=WH4(3)の組み合わせ、又は、Code1=WH4(2)及びCode2=WH4(4)の組み合わせでもよい。
また、符号多重数NCM=2の場合、例えば、レーダ受信部200aにおける折り返し判定部252は、符号長Loc=4のNallcode=4個のWalsh-Hadamard符号のうち、符号生成部151において用いられない(換言すると、符号多重送信に用いられない)2個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号の少なくとも一つを、折り返し判定に用いてよい(一例は後述する)。
以下では、符号長LocのNallcode個の直交符号のうち、未使用直交符号を「UnCodenuc=[UOCnuc(1), UOCnuc(2),…, UOCnuc(Loc) ]」と表す。なお、UnCodenucは第nuc番の未使用直交符号を表す。また、nucは未使用直交符号のインデックスを表し、nuc =1,…, (Nallcode-NCM)である。また、UOCnuc(noc)は第nuc番の未使用直交符号UnCodenucにおけるnoc番の符号要素を表す。また、nocは符号要素のインデックスを表し、noc=1,…,Locである。
例えば、符号多重数がNCM=2であり、符号生成部151が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH4(1)(= [1,1, 1, 1])及びCode2=WH4(3)(= [1,1, -1, -1])の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH4(2)(= [1,-1, 1, -1])及びUnCode2=WH4(4)(= [1,-1, -1, 1])となる。なお、未使用直交符号(UnCode1及びUnCode2)の組み合わせは、WH4(2)及びWH4(4)の組み合わせに限らず、他の符号の組み合わせでもよい。
同様に、符号多重数NCM=3の場合、符号生成部151は、例えば、符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号のうち、3個の直交符号を符号多重送信用の符号に決定する。この場合、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)は1個となる。
例えば、符号生成部151は、Code1=WH4(3)=[1,1, -1, -1]、Code2=WH4(4)=[1,-1, -1, 1]、及び、Code3=WH4(2)=[1,-1, 1, -1]を選択してもよい。
また、レーダ受信部200aの折り返し判定部252は、符号長Loc=4のNallcode=4個のWalsh-Hadamard符号のうち、1個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号を折り返し判定に用いてよい(一例は後述する)。例えば、符号多重数がNCM=3であり、符号生成部151が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH4(3)=[1,1, -1, -1]、Code2=WH4(4)=[1,-1, -1, 1]、Code3=WH4(2)=[1,-1, 1, -1]の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH4(1)=[1,1, 1, 1]となる。なお、符号多重送信用の符号(Code1、Code2及びCode3)及び未使用直交符号(UnCode1)の組み合わせは、これらに限らず、他の符号の組み合わせでもよい。
<NCM=4、5、6又は7の場合>
NCM=4、5、6又は7の場合、例えば、符号長Loc=8、16、32、…のWalsh-Hadamard符号を適用してもよい。これらの符号長Locの場合、NCM<Nallcode(Loc)となる。また、符号多重数がNCM=4、5、6又は7の場合、これらの符号長Locのうち、符号長がより短いWalsh-Hadamard符号(例えば、Loc=8)を用いてもよい。
例えば、符号長Loc=8のWalsh-Hadamard符号には、以下の8個の直交符号が含まれる。
WH8(1)= [ 1 1 1 1 1 1 1 1],
WH8(2)= [ 1 -1 1 -1 1 -1 1 -1],
WH8(3)= [ 1 1 -1 -1 1 1 -1 -1],
WH8(4)= [ 1 -1 -1 1 1 -1 -1 1],
WH8(5)= [ 1 1 1 1 -1 -1 -1 -1],
WH8(6)= [ 1 -1 1 -1 -1 1 -1 1],
WH8(7)= [ 1 1 -1 -1 -1 -1 1 1],
WH8(8)= [ 1 -1 -1 1 -1 1 1 -1]
ここで、符号長Loc=8のWalsh-Hadamard符号のうち、WH8(1)とWH8(2)とは、相互の符号間において奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号の組である。また、同様に、WH8(3)とWH8(4)の組、WH8(5)とWH8(6)の組、及び、WH8(7)とWH8(8)の組も、WH8(1)とWH8(2)の組と同様な関係の符号の組である。
例えば、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)が2以上の場合には、符号生成部151は、このような関係の符号の組を未使用直交符号に含まないように符号を選択する一例として、WH8(1)とWH8(2)の符号の組、WH8(3)とWH8(4)の符号の組、WH8(5)とWH8(6)の符号の組、又は、WH8(7)とWH8(8)の符号の組が未使用直交符号に含まれないように、符号多重送信用の符号を選択してもよい。
例えば、符号多重数NCM=4の場合、符号生成部151は、符号長Loc=8のWalsh-Hadamard符号のうち、4個の直交符号を符号多重送信用の符号に決定する。この場合、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)は4個となる。
例えば、符号生成部151は、符号多重送信用の符号(Code1、Code2、Code3及びCode4)の組み合わせは、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(3)、Code3=WH8(5)及びCode4=WH8(7)の組み合わせ、又は、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(4)、Code3=WH8(5)及びCode4=WH8(8)の組み合わせでもよい。なお、符号多重送信用の符号(Code1、Code2、Code3及びCode4)の組み合わせは、これらに限定されない。
また、符号多重数NCM=4の場合、例えば、レーダ受信部200aにおける折り返し判定部252は、符号長Loc=8のNallcode=8個のWalsh-Hadamard符号のうち、符号生成部151において用いられない4個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号の一部あるいは全てを折り返し判定に用いてよい(一例は後述する)。
例えば、符号多重数NCM=4であり、符号生成部151が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(3)、Code3=WH8(5)及びCode4=WH8(7)の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH8(2)、UnCode2=WH8(4), UnCode3=WH8(6)及びUnCode4=WH8(8)となる。又は、例えば、符号多重数NCM=4であり、符号生成部151が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(4)、Code3=WH8(5)及びCode4=WH8(8)の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH8(2)、UnCode2=WH8(3), UnCode3=WH8(6)及びUnCode4=WH8(7)となる。
同様に、例えば、符号多重数NCM=5の場合、符号生成部151は、符号長Loc=8のWalsh-Hadamard符号のうち、5個の直交符号を符号多重送信用の符号に決定する。この場合、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)は3個となる。
例えば、符号生成部151は、符号多重送信用の符号(Code1、Code2、Code3、Code4及びCode5)の組み合わせは、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(3)、Code3=WH8(5)、Code4=WH8(7)及びCode5=WH8(8)の組み合わせ、又は、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(4)、Code3=WH8(5)、Code4=WH8(7)及びCode5=WH8(8)でもよい。なお、符号多重送信用の符号(Code1、Code2、Code3、Code4及びCode5)の組み合わせは、これらに限定されない。
符号多重数NCM=5の場合、例えば、レーダ受信部200aにおける折り返し判定部252は、符号長Loc=8のNallcode=8個のWalsh-Hadamard符号のうち、符号生成部151において用いられない3個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号の一部あるいは全てを折り返し判定に用いる(一例は後述する)。
例えば、符号多重数NCM=5であり、符号生成部151が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(3)、Code3=WH8(5)、Code4=WH8(7)及びCode5=WH8(8)の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH8(2)、UnCode2=WH8(4)及び UnCode3=WH8(6)となる。又は、例えば、符号多重数NCM=5であり、符号生成部151が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(4)、Code3=WH8(5)、Code4=WH8(7)及びCode5=WH8(8)の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH8(2)、UnCode2=WH8(3)及びUnCode3=WH8(6)となる。
同様に、例えば、符号多重数NCM=6の場合、符号生成部151は、符号長Loc=8のWalsh-Hadamard符号のうち、6個の直交符号を符号多重送信用の符号に決定する。この場合、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)は2個となる。
例えば、符号生成部151は、符号多重送信用の符号(Code1、Code2、Code3、Code4、Code5及びCode6)の組み合わせは、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(2)、Code3=WH8(3)、Code4=WH8(4)、Code5=WH8(5)及びCode6=WH8(8)でもよい。なお、符号多重送信用の符号(Code1、Code2、Code3、Code4、Code5及びCode6)の組み合わせは、これらに限定されない。
また、符号多重数NCM=6の場合、例えば、レーダ受信部200aにおける折り返し判定部252は、符号長Loc=8のNallcode=8個のWalsh-Hadamard符号のうち、符号生成部151において用いられない2個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号の一部あるいは全てを折り返し判定に用いてよい(一例は後述する)。
例えば、符号多重数がNCM=6であり、符号生成部151が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(2)、Code3=WH8(3)、Code4=WH8(4)、Code5=WH8(5)及びCode6=WH8(8)の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH8(6)及びUnCode2=WH8(7)となる。
同様に、例えば、符号多重数NCM=7の場合、符号生成部151は、符号長Loc=8のWalsh-Hadamard符号のうち、7個の直交符号を符号多重送信用の符号に決定する。この場合、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)は1個となる。
例えば、符号生成部151は、符号多重送信用の符号に、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(2)、Code3=WH8(3)、Code4=WH8(4)、Code5=WH8(5)、Code6=WH8(6)及びCode7=WH8(7)を選択してもよい。なお、符号多重送信用の符号の組み合わせは、これらに限定されない。
また、レーダ受信部200aにおける折り返し判定部252は、符号長Loc=8のNallcode=8個のWalsh-Hadamard符号のうち、符号生成部151において用いられない1個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号を折り返し判定に用いてよい(一例は後述する)。
例えば、符号多重数NCM=7であり、符号生成部151が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH8(1)、Code2=WH8(2)、Code3=WH8(3)、Code4=WH8(4)、Code5=WH8(5)、Code6=WH8(6)及びCode7=WH8(7)の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH(8)となる。
以上、符号多重数NCM=4、5、6又は7の場合について説明した。
なお、レーダ装置10aは、符号多重数NCM=8以上の場合も、符号多重数NCM=2~7の場合と同様に符号多重送信用の符号、及び、未使用直交符号を決定してもよい。
例えば、符号生成部151は、式(16)に示す符号長LocのWalsh-Hadamard符号のうち、N
CM個の直交符号を符号多重送信用の符号に選択してもよい。この場合、N
CM<Loc=N
allcode(Loc)となる。
また、レーダ受信部200aにおける折り返し判定部252は、符号長LocのNallcode=Loc個のWalsh-Hadamard符号のうち、(Nallcode-NCM)個の未使用直交符号を折り返し判定に用いてよい(一例は後述する)。また、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)が2個以上の場合、符号生成部151は、例えば、符号長LocのWalsh-Hadamard符号のうち、相互の符号間において奇数番目及び偶数番目の何れか一方の符号要素が同一であり、奇数番目及び偶数番目の他方の符号要素が符号反転している符号の組が未使用直交符号に含まれないように、符号多重送信用の符号を選択してもよい。
換言すると、符号長LocのWalsh-Hadamard符号のうち、相互の符号間において奇数番目及び偶数番目の何れか一方の符号要素が同一であり、奇数番目及び偶数番目の他方の符号要素が符号反転している符号の組の何れか一方が未使用直交符号に含まれ、他方が未使用直交符号に含まれてもよい。
なお、直交符号系列を構成する要素は実数に限らず、複素数値が含まれてもよい。
また、符号は、Walsh-Hadamard符号と異なる他の直交符号でもよい。例えば、符号は、直交M系列符号又は擬似直交符号でもよい。
以上、各符号多重数NCMにおける直交符号の一例について説明した。
次に、符号生成部151において生成された符号多重送信用の符号に基づく位相回転量の一例について説明する。
レーダ装置10aは、例えば、符号多重送信を行う送信アンテナTx#1~Tx#Ntに対して、それぞれ異なる直交符号を用いた符号多重送信を行う。そこで、符号生成部151は、例えば、第m番の平均送信周期Trにおいて、第ncm番の送信アンテナTx#ncmに対して付与する、直交符号Codencmに基づく位相回転量ψncm(m)を設定し、位相回転部152に出力する。ここで、ncm=1,…, NCMである。
例えば、位相回転量ψ
ncm(m)は、次式(17)に示すように、符号長Loc回の送信周期の期間毎に、直交符号Code
ncmのLoc個の各符号要素OC
ncm(1),…, OC
ncm(Loc)に相当する位相量を巡回的に付与する。
ここで、angle(x)は実数xのラジアン位相を出力する演算子であり、angle(1)=0、angle(-1)=π、angle(j)=π/2、及び、angle(-j)=-π/2である。jは虚数単位である。また、OC_INDEXは、直交符号系列Code
ncmの要素を指示する直交符号要素インデックスであり、平均送信周期(Tr)毎に、次式(18)のように1からLocの範囲で巡回的に可変する。
ここで、mod(x,y)はモジュロ演算子であり、xをyで割った後の余りを出力する関数である。また、m=1,…,Ncである。Ncは、レーダ装置10aがレーダ測位に用いる所定の送信周期数(以下では、「レーダ送信信号送信回数」と呼ぶ)である。また、レーダ装置10aは、例えば、Locの整数倍(例えば、Ncode倍)となるレーダ送信信号送信回数Ncの送信を行ってよい。例えば、Nc=Loc×Ncodeである。
また、符号生成部151は、平均送信周期(Tr)毎に、直交符号要素インデックスOC_INDEXをレーダ受信部200aの出力切替部251へ出力する。
位相回転部152は、例えば、Nt個の送信アンテナ106にそれぞれ対応する位相器又は位相変調器を備える。位相回転部152は、例えば、平均送信周期Tr毎に、レーダ送信信号生成部101から入力されるチャープ信号に対して、符号生成部151から入力される位相回転量ψncm(m)をそれぞれ付与する。
例えば、位相回転部152は、平均送信周期Tr毎にレーダ送信信号生成部101から入力されるチャープ信号に対して、第ncm番の送信アンテナTx#ncmに対して付与する、直交符号Codencmに基づく位相回転量ψncm(m)を付与する。ここで、ncm=1,…,NCMであり、m=1,..,Ncである。
Nt個の送信アンテナ106に対する位相回転部152からの出力は、例えば、所定の送信電力に増幅後に、Nt個の送信アンテナ106(例えば、送信アレーアンテナ)から空間に放射される。
一例として、送信アンテナ数Nt=3、及び、符号多重数NCM=3において符号多重送信する場合について説明する。なお、送信アンテナ数Nt及び符号多重数NCMは、これらの値に限定されない。
例えば、位相回転量ψ1(m), ψ2(m)及びψ3(m)が、第m番の平均送信周期Tr毎に符号生成部151から位相回転部152へ出力される。
第1番(ncm=1)の位相回転部152(換言すると、第1番の送信アンテナ106(例えば、Tx#1)に対応する位相器)は、平均送信周期Tr毎にレーダ送信信号生成部101において生成されたチャープ信号に対して、平均送信周期Tr毎に、次式(19)のように位相回転を付与する。第1番の位相回転部152の出力は、送信アンテナTx#1から送信される。ここで、cp(t)は第m番の平均送信周期Tr毎のチャープ信号を表す。
同様に、第2番(ncm=2)の位相回転部152は、平均送信周期Tr毎にレーダ送信信号生成部101において生成されたチャープ信号に対して、平均送信周期Tr毎に、次式(20)のように位相回転を付与する。第2番の位相回転部152の出力は、送信アンテナTx#2から送信される。
同様に、第3番(ncm=3)の位相回転部152は、平均送信周期Tr毎に、レーダ送信信号生成部101において生成されたチャープ信号に対して、平均送信周期Tr毎に、次式(21)のように位相回転を付与する。第3番の位相回転部152の出力は、送信アンテナTx#3から送信される。
なお、レーダ装置10aは、レーダ測位を継続的に行う場合に、レーダ測位毎(例えば、Nc回の送信周期(Nc×Tr)毎)に、直交符号Codencmに用いる符号を可変に設定してもよい。
また、レーダ装置10aは、例えば、Nt個の位相回転部152の出力を送信する送信アンテナ106(換言すると、位相回転部152の各出力に対応する送信アンテナ106)を可変に設定してもよい。例えば、複数の送信アンテナ106と、符号多重送信用の符号系列との対応付けは、レーダ装置10aにおけるレーダ測位毎に異なってもよい。レーダ装置10aは、例えば、送信アンテナ106毎に異なる他レーダからの干渉の影響を受けて、信号を受信する場合に、レーダ測位毎に送信アンテナ106から出力される符号多重信号が変わることになり、干渉の影響のランダマイズ効果を得ることができる。
以上、レーダ送信部100aの構成例について説明した。
[レーダ受信部200aの構成]
図7において、レーダ受信部200aは、Na個の受信アンテナ202(例えば、Rx#1~Rx#Naとも表す)を備え、アレーアンテナを構成する。また、レーダ受信部200aは、Na個のアンテナ系統処理部201-1~201-Naと、CFAR部210と、折り返し判定部252と、符号多重分離部253と、方向推定部211と、を有する。
各受信アンテナ202は、ターゲットに反射したレーダ送信信号である反射波信号を受信し、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力する。
各アンテナ系統処理部201は、受信無線部203と、信号処理部206aとを有する。
受信無線部203の動作は、例えば、実施の形態1と同様でよい。
各アンテナ系統処理部201-z(ただし、z=1~Naの何れか)の信号処理部206aは、AD変換部207と、ビート周波数解析部208と、出力切替部251と、ドップラ解析部209aと、を有する。
AD変換部207及びビート周波数解析部208の動作は、例えば、実施の形態1と同様である。
出力切替部251は、符号生成部151から出力される直交符号要素インデックスOC_INDEXに基づいて、送信周期毎のビート周波数解析部208の出力を、Loc個のドップラ解析部209aのうち、OC_INDEX番目のドップラ解析部209aに選択的に切り替えて出力する。換言すると、出力切替部251は、第m番目の平均送信周期Trにおいて、OC_INDEX番目のドップラ解析部209aを選択する。
信号処理部206aは、例えば、Loc個のドップラ解析部209a-1~209a-Locを有する。例えば、第noc番目のドップラ解析部209aには、出力切替部251によってLoc回の平均送信周期(Loc×Tr)毎にデータが入力される。このため、第noc番目のドップラ解析部209aは、Nc回の平均送信周期のうち、Ncode回の送信周期のデータ(例えば、ビート周波数解析部208から出力されるビート周波数応答RFTz(fb, m))を用いて、距離インデックスfb毎にドップラ解析を行う。ここで、nocは符号要素のインデックスであり、noc=1, …, Locである。
例えば、Ncodeが2のべき乗値である場合、ドップラ解析においてFFT処理を適用してもよい。この場合、FFTサイズはNcodeであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は±1/(2Loc×Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/(Ncode×Loc×Tr)であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs = -Ncode/2, …, 0, …, Ncode/2-1である。
例えば、第z番の信号処理部206aのドップラ解析部209aの出力VFT
z
noc(f
b, f
s)は、次式(22)に示される。なお、jは虚数単位であり、z=1~Naである。
また、Ncodeが2のべき乗でない場合には、例えば、ゼロ埋めしたデータを含めることで2のべき乗個のデータサイズ(FFTサイズ)としてFFT処理してもよい。例えば、ゼロ埋めしたデータを含めた場合のドップラ解析部209aにおけるFFTサイズをN
codewzeroとした場合、第z番の信号処理部206aにおけるドップラ解析部209aの出力VFT
z
noc(f
b, f
s)は、次式(23)に示される。
ここで、nocは符号要素のインデックスであり、noc=1,…,Locである。また、FFTサイズはNcodewzeroであり、サンプリング定理から導出される折り返しが発生しない最大ドップラ周波数は、±1/(2Loc×Tr)である。また、ドップラ周波数インデックスfsのドップラ周波数間隔は1/(Ncodewzero×Loc×Tr)であり、ドップラ周波数インデックスfsの範囲はfs=-Ncodewzero/2,…,0,…, Ncodewzero/2-1である。
以下では、一例として、Ncodeが2のべき乗値である場合について説明する。なお、ドップラ解析部209においてゼロ埋めを用いる場合、以下の説明においてNcodeをNcodewzeroと置き換えることにより、同様に適用でき、同様の効果を得られる。
また、ドップラ解析部209aは、FFT処理の際に、例えば、Han窓又はHamming窓といった窓関数係数を乗算してもよい。レーダ装置10aは、窓関数を適用することでビート周波数ピーク周辺に発生するサイドローブを抑圧できる。
以上、信号処理部206aの各構成部における処理について説明した。
図7において、CFAR部210は、第1~第Na番目の信号処理部206aそれぞれのLoc個のドップラ解析部209の出力を用いて、CFAR処理(換言すると、適応的な閾値判定)を行い、ピーク信号を与える距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarを抽出する。
CFAR部210は、例えば、次式(24)のように、第1~第Na番目の信号処理部206aのドップラ解析部209aの出力VFT
z
noc(f
b, f
s)を電力加算し、距離軸とドップラ周波数軸(相対速度に相当)とからなる2次元のCFAR処理、又は、1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理を行う。2次元のCFAR処理又は1次元のCFAR処理を組み合わせたCFAR処理については、例えば、非特許文献1に開示された処理が適用されてよい。
CFAR部210は、適応的に閾値を設定し、閾値よりも大きい受信電力となる距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfar、及び、受信電力情報PowerFT(fb_cfar, fs_cfar)を折り返し判定部252に出力する。
次に、図7に示す折り返し判定部252の動作例について説明する。
折り返し判定部252は、例えば、CFAR部210において抽出された距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarに基づいて、ドップラ解析部209aの出力であるドップラ成分VFTz
noc(fb_cfar, fs_cfar)の折り返し判定を行う。ここで、z=1,…,Naであり、noc=1,…,Locである。
折り返し判定部252は、例えば、想定するターゲットのドップラ範囲を±1/(2×Tr)としてドップラ折り返し判定処理を行ってよい。
ここで、例えば、Ncodeが2のべき乗値である場合、ドップラ解析部209aは、符号要素毎にFFT処理を適用するので、(Loc×Tr)周期で、ビート周波数解析部208からの出力を用いてFFT処理を行う。このため、ドップラ解析部209aにおいてサンプリング定理によって折り返しが発生しないドップラ範囲は±1/(2Loc×Tr)である。
よって、折り返し判定部252において想定するターゲットのドップラ範囲は、ドップラ解析部209aにおいて折り返しが発生しないドップラ範囲よりも広い。例えば、折り返し判定部252は、ドップラ解析部209aの折り返しが発生しないドップラ範囲±1/(2Loc×Tr)のLoc倍のドップラ範囲±1/(2×Tr)までを想定して折り返し判定処理を行う。
以下、折り返し判定部252における折り返し判定処理の一例を説明する。
ここでは、一例として、符号多重数NCM=3であり、符号生成部151が符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号のうち、3個の直交符号Code1=WH4(3)=[1,1, -1, -1]、Code2=WH4(4)=[1,-1, -1, 1]、及び、Code3=WH4(2)=[1,-1, 1, -1]を用いる場合について説明する。
折り返し判定部252は、例えば、符号長Loc=4のNallcode=4個のWalsh-Hadamard符号のうち、1個(=Nallcode-NCM)の未使用直交符号を折り返し判定に用いる。例えば、符号多重数がNCM=3であり、符号生成部151が決定した符号多重送信用の符号が、Code1=WH4(3)=[1,1, -1, -1]、Code2=WH4(4)=[1,-1, -1, 1]及びCode3=WH4(2)=[1,-1, 1, -1]の場合、未使用直交符号は、UnCode1=WH4(1)=[1,1, 1, 1]となる。
例えば、レーダ装置10aが符号長Loc=4の直交符号を用いて符号多重送信を行う場合、上述したように、ドップラ解析部209aは符号要素毎にFFT処理を適用するので、(Loc×Tr)=(4×Tr)周期で、ビート周波数解析部208からの出力を用いてFFT処理を行う。よって、ドップラ解析部209aにおいてサンプリング定理よって折り返しが発生しないドップラ範囲は、±1/(2 Loc×Tr)=±1/(8×Tr)となる。
折り返し判定部252は、ドップラ解析部209aにおけるドップラ解析範囲(ドップラ範囲)と比較して、直交符号系列の符号長Loc倍の範囲において折り返しの判定を行う。例えば、折り返し判定部252は、ドップラ解析部209aにおいて折り返しが発生しないドップラ範囲±1/(8×Tr)の4(=Loc)倍のドップラ範囲=±1/(2×Tr)を想定して折り返し判定処理を行う。
ここで、CFAR211部において抽出される距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarに対応するドップラ解析部209aの出力であるドップラ成分VFTz
noc(fb_cfar,fs_cfar)には、例えば、±1/(2×Tr)のドップラ範囲において、図8における(a)及び(b)に示すような折り返しを含むドップラ成分が含まれる可能性がある。
例えば、図8における(a)に示すように、fs_cfar<0の場合、±1/(2×Tr)のドップラ範囲において、fs_cfar-Ncode、fs_cfar、fs_cfar+Ncode、及び、fs_cfar+2Ncodeの4(=Loc)通りのドップラ成分の可能性がある。
また、例えば、図8における(b)に示すように、fs_cfar>0の場合、±1/(2×Tr)のドップラ範囲において、fs_cfar-2Ncode、fs_cfar-Ncode、fs_cfar、及び、fs_cfar+Ncodeの4(=Loc)通りのドップラ成分の可能性がある。
折り返し判定部252は、例えば、未使用直交符号を用いて、図8に示すような±1/(2×Tr)のドップラ範囲において符号分離処理を行う。例えば、折り返し判定部252は、未使用直交符号に対して、図8に示すような折り返しを含む4(=Loc)通りのドップラ成分の位相変化を補正してもよい。
そして、折り返し判定部252は、未使用直交符号に基づいて符号分離されたドップラ成分の受信電力に基づいて、各ドップラ成分が折り返しであるか否かを判定する。例えば、折り返し判定部252は、折り返しを含むドップラ成分のうち、受信電力が最小のドップラ成分を検出し、検出したドップラ成分を真のドップラ成分と判定する。換言すると、折り返し判定部252は、折り返しを含むドップラ成分のうち、最小の受信電力と異なる他の受信電力のドップラ成分を偽のドップラ成分であると判定する。
この折り返し判定処理により、折り返しを含むドップラ範囲の曖昧性を低減できる。また、この折り返し判定処理により、ドップラ解析部209aにおけるドップラ範囲と比較して、曖昧性なくドップラ周波数を検出できる範囲を、-1/(2Tr)以上、かつ、1/(2Tr)未満の範囲に拡大できる。
これは、未使用直交符号に基づいて符号分離することにより、例えば、真のドップラ成分については、当該ドップラ成分の位相変化が正しく補正され、符号多重送信用の直交符号と未使用直交符号との間の直交性が維持される。よって、未使用直交符号と符号多重送信信号とは無相関となり、受信電力はノイズレベル程度となる。
一方、例えば、偽のドップラ成分については、当該ドップラ成分の位相変化が誤って補正され符号多重送信用の直交符号と未使用直交符号との間の直交性は維持されない。よって、未使用直交符号と符号多重送信信号との相関成分(干渉成分)が発生し、例えば、ノイズレベルよりも大きい受信電力が検出され得る。
よって、上述したように、折り返し判定部252は、未使用直交符号に基づいて符号分離されたドップラ成分のうち、受信電力が最小のドップラ成分を真のドップラ成分と判定し、最小の受信電力と異なる受信電力の他のドップラ成分を偽のドップラ成分であると判定できる。
例えば、折り返し判定部252は、各アンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部209aの出力に基づいて、折り返しを含むドップラ成分の位相変化を補正し、未使用直交符号UnCode
nucを用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar,f
s_cfar,DR)を、次式(25)に従って算出する。
式(25)では、全てのアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部209aの出力に対して、未使用直交符号UnCodenucを用いた符号分離後の受信電力の総和が算出される。これにより、受信信号レベルが低い場合でも、折り返し判定精度を向上できる。ただし、式(25)の代わりに、一部のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部209aの出力に対して、未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力が算出されてもよい。この場合でも、例えば、受信信号レベルが十分高い範囲では、折り返し判定の精度を保ちつつ、演算処理量を削減できる。
なお、式(25)において、nuc=1,…,Nallcode-NCMである。また、DRはドップラ折り返し範囲を示すインデックスであり、例えば、DR=ceil[-Loc/2], ceil[-Loc/2]+1,…,0,…, ceil[Loc/2]-1の範囲の整数値をとる。
また、式(25)において、
は、要素数が等しいベクトル同士の要素毎の積を表す。例えば、n次ベクトルA=[a
1,..,a
n]及びB=[b
1,..,b
n]に対して、要素毎の積は以下の式(26)で表される。
また、式(25)において、
は、ベクトル内積演算子を表す。また、式(25)において、上付き添え字Tはベクトル転置を表し、上付き添え字*(アスタリスク)は複素共役演算子を表す。
式(25)において、α(fs_cfar)は「ドップラ位相補正ベクトル」を表す。ドップラ位相補正ベクトルα(fs_cfar)は、例えば、CFAR部210において抽出されたドップラ周波数インデックスfs_cfarが、ドップラ折り返しを含まないドップラ解析部209aの出力範囲(換言すると、ドップラ範囲)とする場合に、Loc個のドップラ解析部209a間におけるドップラ解析の時間差に起因するドップラ位相回転を補正する。
例えば、ドップラ位相補正ベクトルα(f
s_cfar)は、次式(27)のように表される。式(27)に示すドップラ位相補正ベクトルα(f
s_cfar)は、例えば、第1番のドップラ解析部209aの出力VFT
z
1(f
b_cfar, f
s_cfar)のドップラ解析時間を基準として、第2番のドップラ解析部209aの出力VFT
z
2(f
b_cfar, f
s_cfar)から第Loc番のドップラ解析部209の出力VFT
z
Loc(f
b_cfar, f
s_cfar)のそれぞれにおけるTr,2Tr,…,(Loc-1)Trの時間遅れにより生じるドップラ周波数インデックスf
s_cfarのドップラ成分での位相回転を補正するドップラ位相補正係数を要素とするベクトルである。
また、式(25)において、β(DR)は「折り返し位相補正ベクトル」を表す。折り返し位相補正ベクトルβ(DR)は、例えば、Loc個のドップラ解析部209a間におけるドップラ解析の時間差に起因するドップラ位相回転のうち、ドップラ折り返しが有る場合を考慮して、2πの整数倍のドップラ位相回転を補正する。
例えば、折り返し位相補正ベクトルβ(DR)は、次式(28)のように表される。
例えば、Loc=4の場合、DR=-2,-1,0,1の整数値をとり、折り返し位相補正ベクトルβ(DR)は、式(29)、式(30)、式(31)及び式(32)のように表される。
例えば、Loc=4の場合、図8における(a)又は(b)においてドップラ解析部209aの出力であるドップラ周波数インデックスfs_cfarのドップラ成分が検出されるドップラ範囲(例えば、-1/8Tr~+1/8Tr)はDR=0に対応する。また、DR=0のドップラ周波数インデックスfs_cfarに対する2πの整数倍のドップラ位相回転(例えば、β(1)、β(-1)及びβ(-2))により、折り返し判定部252は、DR=1に対応するドップラ範囲(例えば、1/8Tr~3/8Tr)のドップラ成分、DR=-1に対応するドップラ範囲(例えば、-3/8Tr~-1/8Tr)のドップラ成分、及び、DR=-2に対応するドップラ範囲(例えば、-1/2Tr~-3/8Tr及び3/8Tr~1/2Tr)のドップラ成分を算出する。
また、式(25)において、VFTALL
z(f
b_cfar, f
s_cfar)は、例えば、次式(33)のように、第z番のアンテナ系統処理部201におけるLoc個のドップラ解析部209aの出力VFT
z
noc(f
b, f
s)のうち、CFAR部210において抽出された距離インデックスf
b_cfar及びドップラ周波数インデックスf
s_cfarに対応する成分VFT
z
noc(f
b_cfar, f
s_cfar)(ただし、noc=1,…,Loc)をベクトル形式で表す。
例えば、折り返し判定部252は、式(25)に従って、折り返しを含むドップラ成分の位相変化を補正した未使用直交符号UnCodenucを用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DR)を、DR=ceil[-Loc/2], ceil[-Loc/2]+1,…,0,…, ceil[Loc/2]-1の範囲においてそれぞれ算出する。
そして、折り返し判定部252は、各DRの範囲のうち、受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)が最小となるDRを検出する。以下では、次式(34)に示すように、各DRの範囲のうち、受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)が最小となるDRを「DR
min」と表す。
以下、上述したような折り返し判定処理によって、ドップラ折り返し判定が可能な理由について説明する。
式(33)に示すVFTALL
z(f
b_cfar, f
s_cfar)に含まれる第ncm番の送信アンテナ106(例えば、Tx#ncm)から送信されたレーダ送信信号成分は、例えば、ノイズ成分を無視すると次式(35)のように表される。
ここで、γz,ncmは、第ncm番の送信アンテナ106から送信されたレーダ送信信号がターゲットに反射した信号が第z番のアンテナ系統処理部201において受信された場合の複素反射係数を表す。また、DRtrueは、真のドップラ折り返し範囲を示すインデックスを表す。DRtrueは、ceil[-Loc/2], ceil[-Loc/2]+1,…,0,…, ceil[Loc/2]-1の範囲のインデックス値とする。以下、DRmin=DRtureとなるように判定できることを示す。
第1番~第N
CM番の送信アンテナ106から送信されたレーダ送信信号成分に対して、未使用直交符号UnCode
nucを用いた符号分離後の受信電力の総和PowDeMul(nuc,DR,DR
true)は次式(36)で表される。
なお、式(36)に示すPowDeMul(nuc,DR,DR
true)は、式(25)における、
の項の評価値に相当する。
式(36)において、DR=DRtrueの場合、未使用直交符号UnCodenucと符号多重送信用の直交符号Codencmとの相関値はゼロ(例えば、UnCodenuc
*・{Codencm}T=0)となるため、PowDeMul(nuc,DR,DRtrue)=0となる。
一方、式(36)において、DR≠DRtrueの場合、
と符号多重送信用の直交符号Code
ncmとの相関値に依存したPowDeMul(nuc,DR,DR
true)が出力される。ここで、全てのUnCode
nucにおいてPowDeMul(nuc,DR,DR
true)がゼロにならない場合、例えば、次式(37)を満たせば、DR=DR
trueの場合、PowDeMul(nuc, DR
true,DR
true)の電力が最小となり、折り返し判定部252は、DR
true(=DR
min)を検出できる。換言すると、折り返し判定部252は、式(25)に従ってドップラ折り返し判定できる。
例えば、式(37)を満たすには、
の項が他の未使用直交符号UnCode
nuc2に一致しなければよい。ここで、nuc2≠nucである。
従って、未使用直交符号が1個の場合には式(37)を満たす。また、未使用直交符号が複数の場合には、例えば、符号生成部151は、
の項が他の未使用直交符号に一致しないように、符号多重送信用の符号を選択してもよい。
ここで、Walsh-Hadamard符号又は直交M系列符号といった符号を用いる場合、符号長Locの直交符号のうち、相互の符号間において奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号の組が含まれる場合がある。
一方で、β(0)=[1,1,…,1], β(-Loc/2)=[1, -1, 1,-1,….1,-1]となるため、
の項は、UnCode
nucの奇数番目の符号要素が同一であり、偶数番目の符号要素が符号反転している符号に変換される。
したがって、未使用直交符号の個数(Nallcode-NCM)が2個以上の場合には、例えば、符号生成部151は、符号長Locの直交符号のうち、相互の符号間において奇数番目及び偶数番目の一方の符号要素が同一であり、奇数番目及び偶数番目の他方の符号要素が符号反転している符号の組が未使用直交符号に含まれないように、符号多重送信用の符号又は未使用直交符号を選択してもよい。
例えば、符号長Loc=4のWalsh-Hadamard符号には、WH
4(1)= [1,1, 1, 1]、及び、WH
4(2)= [1,-1, 1, -1]が含まれ、
、又は、
となる。このため、例えば、符号生成部151は、複数の未使用直交符号にWH
4(1)及びWH
4(2)の組を含めないように符号多重送信用の符号又は未使用直交符号を選択してもよい。また、WH
4(3)= [1,1, -1, -1]、及び、WH
4(4)= [1,-1, -1, 1]も同様な関係となるため、例えば、符号生成部151は、複数の未使用直交符号にWH
4(3)及びWH
4(4)の組を含めないように符号多重送信用の符号又は未使用直交符号を選択してもよい。
なお、未使用直交符号UnCode
nucが複数ある場合、受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)の代わりに、次式(38)のように、全ての未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCodeAll(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)を用いてもよい。
全ての未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力を求めることで、折り返し判定部252は、受信信号レベルが低い場合でも、折り返し判定の精度を向上できる。
例えば、折り返し判定部252は、DR=ceil[-Loc/2], ceil[-Loc/2]+1,…,0,…, ceil[Loc/2]-1のそれぞれの範囲においてDeMulUnCodeAll(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)を算出し、受信電力DeMulUnCodeAll(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)が最小となるDR(換言すると、DR
min)を検出する。式(38)を用いる場合、以下では、次式(39)に示すように、DR範囲において最小となる受信電力を与えるDRを「DR
min」と表す。
また、折り返し判定部252は、例えば、未使用直交符号UnCode
nucを用いた符号分離後の最小受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR
min)と受信電力とを比較して、折り返し判定の確からしさを判定(換言すると、測定)する処理を行ってもよい。この場合、折り返し判定部252は、例えば、次式(40)及び式(41)に従って、折り返し判定の確からしさを判定してもよい。
例えば、折り返し判定部252は、CFAR部210において抽出された距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarの受信電力値PowerFT(fb_cfar, fs_cfar)に所定値ThresholdDRを乗算した値よりも、未使用直交符号UnCodenucを用いた符号分離後の最小受信電力DeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DRmin)が小さい場合(例えば、式(40))、折り返し判定が十分に確からしいと判定する。この場合、レーダ装置10aは、例えば、以降の処理(例えば、符号分離処理)を行ってもよい。
一方、例えば、折り返し判定部252は、受信電力値PowerFT(fb_cfar, fs_cfar)に、ThresholdDRを乗算した値よりも、未使用直交符号UnCodenucを用いた符号分離後の最小受信電力DeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DRmin)が等しいか大きい場合(例えば、式(41))、折り返し判定の精度が十分ではない(例えば、ノイズ成分である)と判定する。この場合、レーダ装置10aは、例えば、以降の処理(例えば、符号分離処理)を行わなくてもよい。
このような処理により、折り返し判定部252における折り返し判定の判定誤りを低減でき、また、ノイズ成分を除去できる。なお、所定値ThresholdDRは、例えば、0から1未満の範囲に設定されてよい。一例として、ノイズ成分が含まれることを考慮すると、ThresholdDRは、0.1~0.5程度の範囲で設定されてもよい。
なお、未使用直交符号UnCodenucが複数ある場合、折り返し判定部252は、受信電力DeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DR)の代わりに、DeMulUnCodeAll(fb_cfar, fs_cfar, DR)を用いて受信電力との比較をして、折り返し判定の確からしさを判定(換言すると、測定)する処理を行ってもよい。この場合、折り返し判定部252は、例えば、式(40)及び式(41)におけるDeMulUnCodenuc(fb_cfar, fs_cfar, DR)の代わりにDeMulUnCodeAll(fb_cfar, fs_cfar, DR)を用いて、折り返し判定の確からしさを判定してもよい。全ての未使用直交符号を用いた符号分離後の受信電力を求めることで、折り返し判定部252は、受信信号レベルが低い場合でも、折り返し判定の確からしさの精度を向上できる。
なお、未使用直交符号UnCode
nucを用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar, DR)の算出式は、例えば、式(25)の代わりに、次式(42)でもよい。
式(42)において、
の項は、ドップラ成分のインデックス(ドップラ周波数インデックス)f
sに依らないため、例えば、予めテーブル化することで、折り返し判定部252における演算量を削減できる。
以上、折り返し判定部252の動作例について説明した。
次に、符号多重分離部253の動作例について説明する。
符号多重分離部253は、折り返し判定部252における折り返し判定結果、及び、符号多重送信用の符号に基づいて、符号多重信号の分離処理を行う。
例えば、符号多重分離部253は、次式(43)のように、折り返し判定部252における折り返し判定結果であるDR
minを用いた折り返し位相補正ベクトルβ(DR
min)に基づいて、CFAR部210において抽出された距離インデックスf
b_cfar及びドップラ周波数インデックスf
s_cfarに対応するドップラ解析部209aの出力であるドップラ成分VFTALL
z(f
b_cfar, f
s_cfar)に対して符号分離処理を行う。折り返し判定部252にて、-1/(2Tr)以上、かつ、1/(2Tr)未満のドップラ範囲で、真のドップラ折り返し範囲であるインデックスを判定できることから(換言すると、DR
min=DR
trueとなるように判定できることから)、符号多重分離部253においては、-1/(2Tr)以上、かつ、1/(2Tr)未満のドップラ範囲で、符号多重に使用している直交符号間の相関値をゼロとすることができ、符号多重信号間の干渉を抑圧した分離処理が可能となる。
ここで、DeMulz
ncm(fb_cfar, fs_cfar)は、第z番のアンテナ系統処理部201におけるドップラ解析部209aの距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarの出力に対する直交符号Codencmを用いて符号多重信号を符号分離した出力(例えば、符号分離結果)である。なお、z=1,…,Naであり、ncm=1,…,NCMである。
なお、符号多重分離部253は、式(43)の代わりに、次式(44)を用いてもよい。
式(44)において、
の項(ただし、式(44)では、DR=DR
min)はドップラ成分のインデックス(例えば、ドップラ周波数インデックス)f
sに依らないため、例えば、予めテーブル化することで、符号多重分離部253における演算量を削減できる。
以上のような符号分離処理によって、レーダ装置10aは、折り返し判定部252において、ドップラ解析部209の折り返しが発生しないドップラ範囲±1/(2Loc×Tr)のLoc倍のドップラ範囲±1/(2×Tr)までを想定した折り返し判定結果に基づいて、第ncm番の送信アンテナTx#ncmに対して付与される直交符号Codencmによって符号多重送信された信号を分離した信号を得ることができる。
また、レーダ装置10aは、例えば、符号分離処理時に、符号要素毎のドップラ解析部209の出力に対して、ドップラ折り返しを含めたドップラ位相補正(例えば、折り返し位相補正ベクトルβ(DRmin)に基づく処理)を行う。このため、符号多重信号間における相互干渉は、例えば、ノイズレベル程度にまで低減可能である。換言すると、レーダ装置10aでは、符号間干渉を低減でき、レーダ装置10aにおける検出性能の劣化への影響を抑制できる。
以上、符号多重分離部253の動作例について説明した。
図7において、方向推定部211は、符号多重分離部253から入力される距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfarに対応するドップラ解析部209aの出力に対する符号分離結果DeMulz
ncm(fb_cfar, fs_cfar)に基づいて、ターゲットの方向推定処理を行う。
例えば、方向推定部211は、式(45)に示す仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)を生成し、方向推定処理を行う。
仮想受信アレー相関ベクトルh(f
b_cfar, f
s_cfar)は、送信アンテナ数Ntと受信アンテナ数Naとの積であるNt×Na個の要素を含む。仮想受信アレー相関ベクトルh(f
b_cfar, f
s_cfar)は、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定を行う処理に用いる。ここで、z=1,…,Naである。
方向推定部211は、例えば、方向推定評価関数値PH(θ, fb_cfar, fs_cfar)における方位方向θを規定された角度範囲内で可変として空間プロファイルを算出する。方向推定部211は、算出した空間プロファイルの極大ピークを大きい順に所定数抽出し、極大ピークの方位方向を到来方向推定値(例えば、測位出力)として出力する。
なお、方向推定評価関数値PH(θ, fb_cfar, fs_cfar)は、到来方向推定アルゴリズムによって各種の方法がある。例えば、非特許文献2に開示されているアレーアンテナを用いた推定方法を用いてもよい。
例えば、Nt×Na個の仮想受信アレーが等間隔d
Hで直線状に配置される場合、ビームフォーマ法は次式(46)及び式(47)のように表すことができる。他にも、Capon, MUSICといった手法も同様に適用可能である。
ここで、上付き添え字Hはエルミート転置演算子である。また、a(θu)は、方位方向θuの到来波に対する仮想受信アレーの方向ベクトルを示す。ここで、方向ベクトルa(θu)は、方位方向θからレーダ反射波が到来した場合の仮想受信アレーの複素応答を要素とした(Nt×Na)次の列ベクトルである。また、仮想受信アレーの複素応答は、仮想受信アンテナの配置とレーダ反射波方向に基づき、幾何光学的に算出される行路差から生じる位相差を表す。
また、方位方向θuは到来方向推定を行う方位範囲内θmin~θmaxを方位間隔DStepで変化させたベクトルである。例えば、θuは以下のように設定される。
θu=θmin + uDStep、u=0,…, NU
NU=floor[(θmax-θmin)/DStep]
ここで、floor(x)は、実数xを超えない最大の整数値を返す関数である。
また、式(46)において、Dcalは、送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数及びアンテナ間の素子間結合の影響を低減する係数を含む(Nt×Na)次の行列である。仮想受信アレーのアンテナ間の結合が無視できる場合、Dcalは、対角行列となり、対角成分に送信アレーアンテナ間及び受信アレーアンテナ間の位相偏差及び振幅偏差を補正するアレー補正係数が含まれる。
方向推定部211は、例えば、方向推定結果を出力し、さらに、測位結果として、距離インデックスfb_cfarに基づく距離情報、ターゲットのドップラ周波数インデックスfb_cfar及び折り返し判定部252における判定結果DRminに基づくターゲットのドップラ速度情報を出力してもよい。
例えば、方向推定部211におけるターゲットの距離情報の算出は、実施の形態1と同様でよい。
また、方向推定部211は、ターゲットのドップラ速度情報を以下のように算出して、出力してよい。
方向推定部211は、例えば、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarと折り返し判定部252での判定結果であるDR
minとに基づいて、式(48)に従って、ドップラ周波数インデックスf
es_cfarを算出してもよい。ドップラ周波数インデックスf
es_cfarは、例えば、ドップラ解析部209aのFFTサイズをLoc×Ncodeに拡張した場合のドップラインデックスに相当する。以下、f
es_cfarを「拡張ドップラ周波数インデックス」と呼ぶ。
なお、ドップラ範囲±1/(2×Tr)までを想定しており、このドップラ範囲に対応する拡張ドップラ周波数インデックスfes_cfarの範囲は-Loc×Ncode/2≦fes_cfar<Loc×Ncode/2となることから、式(48)において、算出の結果、fes_cfar<-Loc×Ncode/2の場合、fes_cfar+Loc×Ncodeをfes_cfarとする。また、fes_cfar≧Loc×Ncode/2の場合、fes_cfar-Loc×Ncodeをfes_cfarとする。
また、方向推定部211は、例えば、拡張ドップラ周波数インデックスfes_cfarと距離インデックスfb_cfarを用いて、以下のように検出したターゲットのドップラ速度情報vdを出力してもよい。
例えば、レーダ装置10aでは、チャープ信号の中心周波数fcを平均送信周期Tr毎にΔt×fstep変化させたレーダ送信信号と等価の信号の受信信号が得られるため、ターゲットの相対速度がゼロの場合でも、平均送信周期Tr毎にチャープ信号の中心周波数fcが変化している。このため、レーダ装置10aの受信信号には、平均送信周期Tr毎のチャープ信号における中心周波数の変化に伴う位相回転が含まれる。
ターゲット距離R
targetに対する第m番目の送信周期におけるチャープ信号の中心周波数fcは、第1番目のチャープ信号の中心周波数を基準として(m-1)Δt×fstep変化しており、これに伴う位相回転量Δη(m, R
target)は、ターゲット距離R
targetからの反射波到来時間(2R
target/Co)を考慮すると式(49)で示される。なお、次式(49)は、第1番目の送信周期におけるチャープ信号の受信位相を基準にした場合の相対的な位相回転量を表す。C
0は光速度を表す。このため、レーダ装置10aのLoc個の各ドップラ解析部209aの出力には、平均送信周期Tr毎のチャープ信号における中心周波数の変化に伴う位相回転が含まれる。
よって、式(50)に示すように、方向推定部211は、平均送信周期Tr毎のチャープ信号における中心周波数fcの変化量であるΔt×fstepを考慮した変換式に基づいて、ドップラ速度情報v
d(f
es_cfar, f
b_cfar)を算出する。
式(50)における第1項目は、拡張ドップラ周波数インデックスfes_cfarで示される相対ドップラ速度成分である。式(50)における第2項目は、チャープ信号の中心周波数fcを、平均送信周期Tr毎にΔt×fstep変化させることで生じるドップラ速度成分である。方向推定部211は、例えば、式(50)に示すように第1項目から第2項目のドップラ成分を除くことで本来のターゲットの相対ドップラ速度vd(fes_cfar, fb_cfar)を算出することができる。ここで、R(fb_cfar)は、ビート周波数インデックスfb_cfarを用いた距離情報R(fb_cfar)であり、式(4)に従って算出される。
なお、ターゲットのドップラ範囲は±1/(2×Tr)までを想定しているため、v
dが、v
d < - C
0/(4f
0Tr)となる場合、方向推定部211は、次式(51)に従って、検出したターゲットのドップラ速度情報v
dを出力してもよい。
また、同様に、ターゲットのドップラ範囲は±1/(2×Tr)までを想定しているため、v
dが、v
d > C
0/(4f
0Tr)となる場合、方向推定部211は、次式(52)に従って、検出したターゲットのドップラ速度情報v
dを出力してもよい。
以上のように、本実施の形態では、実施の形態1と同様、レーダ送信部100aは、Ncf回の送信周期において同一のチャープ信号を送信し、平均送信周期Trの時間間隔毎に、送信信号開始タイミングをΔtずつ変化させて送信する。また、レーダ送信部100aは、当該Ncf回の送信周期に続くNcf回の送信周期において、中心周波数をΔf=Δt×fstep×Nfc変化させたチャープ信号を送信する。
これにより、レーダ受信部200aは、例えば、レンジゲート内においてADサンプルされる受信データについて、送信周期毎にチャープ信号の中心周波数をΔt×fstep変化して送信する場合と同等の受信信号を得ることができる。
よって、本実施の形態によれば、実施の形態1と同様、例えば、中心周波数が異なるチャープ信号の送信のためにチャープ信号を可変に設定する制御回数を低減でき、送信周期毎のチャープ信号を生成する際のパラメータを記憶するメモリ量を低減できる。また、例えば、レーダ受信部200においてADサンプリングする区間及びタイミングは、チャープ信号の送信周期に依らず一定でよい。これにより、レーダ受信部200における処理を簡易化できる。
また、本実施の形態では、チャープ信号を可変するための制御回数の低減により、例えば、チャープ信号の可変時の周波数誤差又は位相誤差の発生を低減でき、距離精度又はドップラ精度に対する劣化の影響を低減できる。
また、本実施の形態では、上述したチャープ信号の送信信号開始タイミング及び中心周波数の制御を行う場合でも、レーダ装置10a(例えば、MIMOレーダ)は、符号多重送信を適用できる。また、レーダ装置10aは、符号多重信号の符号要素毎のドップラ解析部209aの出力(換言すると、受信信号)、及び、未使用直交符号を用いて、ドップラ折り返しを判定できる。例えば、レーダ装置10aは、符号分離の際に、折り返しを含めたドップラ位相補正を行うことにより、曖昧性なく検出可能なドップラ周波数範囲を±1/(Tr)とし、かつ、符号多重信号間の相互干渉をほぼノイズレベル程度に抑えることができる。よって、本実施の形態によれば、レーダ検出性能の劣化を抑制して、MIMOレーダの符号多重送信が可能となる。
また、本実施の形態では、チャープ信号を繰り返し送信する度に可変されるチャープ信号の中心周波数の周波数変化幅BWfcval(=(最大となるチャープ信号中心周波数)-(最小となるチャープ信号の中心周波数))が、個々のチャープ周波数掃引帯域幅BWchirpよりも大きい場合(例えば、BWfcval>BWchirp )、距離分解能ΔR2は式(3)によって与えられる。これより、例えば、BWfcvalが大きいほど、個々のチャープ周波数掃引帯域幅BWchirpに依存せずに(例えば、BWchirpを小さくしても)、距離分解能を向上できるので、チャープ信号の平均送信周期Trの短縮が可能となる。また、チャープ信号の平均送信周期Trの短縮により、例えば、式(2)の関係より、最大ドップラ速度fdmaxを高くでき、ドップラ検出範囲を拡大する効果を有し、符号多重送信において曖昧性なく検出可能なドップラ範囲をさらに拡大できる。
なお、本実施の形態において、レーダ送信信号生成部101において用いるパラメータであるNcfの設定値は、符号要素数(又は、符号系列の符号長)Locの整数倍でもよい。これにより、符号送信周期内において、チャープ信号の中心周波数が可変されないため、チャープ信号の可変時において周波数誤差又は位相誤差が発生しにくくなり、符号多重信号間の直交性を維持できる。なお、中心周波数の変化Δfを任意に設定してもよい。また、送信遅延の量Δt=0としてもよい。
また、レーダ装置10aにおける符号多重方法には、上述した符号多重方法を適用しなくてもよい。例えば、符号生成部151は、符号長Locの符号系列に含まれるNallcode個の直交符号のうち、符号多重数NCMを直交符号数Nallcodeに等しく設定してもよい。なお、Ncfの設定値は、符号要素数(又は、符号系列の符号長)Locの整数倍でもよい。また、中心周波数の変化Δfを任意に設定してもよい。また、送信遅延の量Δt=0としてもよい。また、位相回転部152は、例えば、符号長Locの符号系列に含まれるNallcode個の全ての直交符号を用いて符号多重してもよい。この場合、レーダ装置10aの折り返し判定部252における折り返し判定は適用されないため、ドップラ周波数範囲は±1/(2Loc×Tr)となる。
ここで、チャープ信号を繰り返し送信する度に可変されるチャープ信号の中心周波数の周波数変化幅BWfcval(=(最大となるチャープ信号中心周波数)―(最小となるチャープ信号の中心周波数))が、個々のチャープ周波数掃引帯域幅BWchirpよりも、大きい場合(例えば、BWfcval>BWchirp )、距離分解能ΔR2は式(3)によって与えられる。これより、BWfcvalが大きいほど、個々のチャープ周波数掃引帯域幅BWchirpに依存せずに(例えば、BWchirpが小さい場合でも)、距離分解能を向上でき、チャープ信号の平均送信周期Trを短縮できる。よって、上述した符号多重方法を適用しない場合でも、式(2)の関係より、最大ドップラ速度fdmaxが高められ、ドップラ検出範囲を拡大できる。
(実施の形態3)
実施の形態1及び実施の形態2では、一例として、レーダ送信部は、平均送信周期Trの時間間隔毎に送信信号開始タイミングをΔtずつ可変し、Ncf回の送信周期毎に中心周波数をΔf=Δt×fstep×Nfc変化させたチャープ信号を出力する場合について説明した。
本実施の形態では、例えば、符号多重送信に用いる直交符号の符号長(例えば、Loc)に基づいて、チャープ信号の送信開始タイミング及び中心周波数の変化を制御する場合について説明する。
[レーダ装置の構成]
本実施の形態に係るレーダ装置は、実施の形態2(例えば、図7に示すレーダ装置10a)と同様でよい。
例えば、レーダ装置10aは、符号多重送信に用いる1つの直交符号の符号長Loc回の送信周期(Loc×Tr)毎(以下、「符号送信周期」と呼ぶ)にチャープ信号の中心周波数をΔt×fstep変化して送信する場合と同等な受信信号を生成する。
この場合、レーダ送信信号生成部101において用いるパラメータであるNcfの設定値は、符号要素数Locの整数倍に設定されてよい。例えば、Ncf=Loc×Nrocに設定されてよい。ここで、Nroc≧2とする。
[レーダ送信部100aの構成]
本実施の形態に係るレーダ装置10aのレーダ送信部100aにおいて、送信タイミング制御部102、及び、送信周波数制御部103の動作が実施の形態1及び実施の形態2と異なり、他の構成部の動作は実施の形態1又は実施の形態2と同様でよい。
送信タイミング制御部102は、例えば、チャープ信号の送信タイミングを制御してよい。送信タイミング制御部102は、例えば、送信タイミングに関する制御信号を変調信号発生部104へ出力してよい。
また、送信周波数制御部103は、例えば、チャープ信号の掃引周波数を制御してよい。送信周波数制御部103は、例えば、掃引周波数に関する制御信号を変調信号発生部104へ出力してよい。
図9は、レーダ送信信号生成部101において生成されるレーダ送信信号の一例を示す図である。図2では、一例として、レーダ送信信号生成部101から出力されるレーダ送信信号は、チャープ信号の変調周波数が徐々に高くなる場合(アップチャープ)を示すが、これに限定されない。例えば、レーダ送信信号生成部101から出力されるレーダ送信信号は、チャープ信号の変調周波数が徐々に低くなる場合(ダウンチャープ)でもよく、アップチャープと同様の効果を得ることができる。
なお、図9では、一例として、Loc=2、及び、Nroc=2の場合(Ncf=4の場合)について説明するが、Loc、Nroc及びNcfはこれらの値に限定されない。
例えば、送信タイミング制御部102は、チャープ信号の送信タイミング制御において、以下の動作を行ってよい。
例えば、送信タイミング制御部102は、第1番目の送信周期Tr#1におけるチャープ送信信号開始タイミングTst(1)を、Tst(1)=T0とするように変調信号発生部104を制御してよい。また、送信タイミング制御部102は、例えば、第2番目の送信周期Tr#2におけるチャープ送信信号開始タイミングTst(2)を、Tst(2)=T0+Trに設定してよい。以降、送信タイミング制御部102は、同様に、第Loc番目の送信周期におけるチャープ送信信号開始タイミングTst(Loc)を、Tst(Loc)= T0+(Loc-1)Trに設定してよい(例えば、図9では、Loc=2)。
送信タイミング制御部102は、例えば、一つ目の符号送信周期の次の符号送信周期において、第Loc+1番目の送信周期におけるチャープ送信信号開始タイミングTst(Loc+1)を、Tst(Loc+1)= T0+Loc×Tr+Δtに設定してよい。また、送信タイミング制御部102は、例えば、第Loc+2番目の送信周期におけるチャープ送信信号開始タイミングTst(Loc+2)を、Tst(Loc+2)=T0+(Loc+2)×Tr+Δtに設定してよい。同様に、第2Loc番目の送信周期におけるチャープ送信信号開始タイミングTst(2Loc)を、Tst(2Loc)= T0+(2Loc-1)Tr+Δtに設定してよい(例えば、図9では、Loc=2)。
以降、送信タイミング制御部102は、第Ncf番目(図9では、Ncf=4)の送信周期まで、同様に、(Tr×Loc)の時間間隔毎に、送信信号開始タイミングがΔtずつ変化させる。例えば、送信タイミング制御部102は、第Ncf(=Loc×Nroc)番目の送信周期におけるチャープ送信信号開始タイミングTst(Loc×Nroc)を、Tst(Loc×Nroc)=T0+(Loc×Nroc-1)×Tr+(Nroc-1)Δtに設定する。
また、送信タイミング制御部102は、例えば、第Ncf+1番目の送信周期Tr#Ncf+1では、Tst(Ncf+1)=T0+Ncf×Trに設定してよい。換言すると、送信タイミング制御部102は、第Nc+1番目の送信周期における送信信号開始タイミングを、平均送信周期Trの時間間隔のタイミングと一致させてよい。例えば、送信タイミング制御部102は、第m番目の送信周期におけるチャープ送信信号開始タイミングをTst(m)=T0+(m-1)×Tr+mod(floor((m-1)/Loc), Nroc)×Δtに設定してよい。ここで、m=1、…、Ncである。また、mod(x、y)はモジュロ演算子であり、xをyで割った後の余りを出力する関数である。
以上のように、送信タイミング制御部102は、例えば、符号長Locの整数倍Nrocの送信周期において、第(Nroc-1)×Loc番目までのチャープ信号の送信周期(図9の場合、Tr#2)をTr+Δtに設定し、第Ncf(=Loc×Nroc)番目のチャープ信号の送信周期(図9の場合、Tr#4)をTr-(Ncf-1)×Δtに設定し、上記と異なる送信周期(図9の場合、Tr#1及びTr#3)をTrに設定して、チャープ信号を送信するように変調信号発生部104を制御する。従って、Ncf回のチャープ信号の平均送信周期は「Tr」となる。以降、送信タイミング制御部102は、同様に、m番目のチャープ信号の送信周期を、mがNcfの整数倍でない場合で、かつ、Locの整数倍の場合には「Tr+Δt」に設定し、mがNcfの整数倍の場合には「Tr-(Ncf-1)×Δtに設定し、mがLocの整数倍と異なる場合には「Tr」に設定してよい。
換言すると、送信タイミング制御部102は、所定数(例えば、Ncf)の送信周期のそれぞれにおいて、チャープ信号の送信遅延を設定する(例えば、変化させる)。本実施の形態では、Ncf回の送信周期内において、チャープ信号の送信遅延の変化は、符号長Locに対応する送信周期毎に異なってよい。換言すると、チャープ信号の送信遅延は、符号長Locに対応する送信周期内では変化しなくてよい。また、例えば、チャープ信号の送信遅延の変化は、Ncf回の送信周期で一巡してよい。
送信タイミング制御部102は、例えば、以上のようなチャープ信号の送信タイミング制御をNc回繰り返してよい。ここで、m=1、…、Ncである。
また、例えば、送信周波数制御部103は、チャープ信号の掃引周波数制御において、以下の動作を行ってよい。
送信周波数制御部103は、例えば、第1番目の送信周期Tr#1におけるチャープ信号の掃引開始周波数をfstart(1)=fstart0に設定し、チャープ掃引時間Tchirp内での掃引終了周波数をfend(1)=fend0に設定し、掃引中心周波数fc(1)をfc(1)=f0=|fend0-fstart0|/2に設定するように、変調信号発生部104を制御する。同様に、送信周波数制御部103は、例えば、第2番目の送信周期Tr#2におけるチャープ信号の掃引開始周波数をfstart(2)=fstart0に設定し、掃引終了周波数をfend(2)=fend0に設定し、周波数掃引中心周波数fc(2)をfc(2)=f0に設定するように、変調信号発生部104を制御する。以降、送信周波数制御部103は、例えば、第Ncf番目(図9では、Ncf=4)の送信周期まで、同様に、チャープ信号の掃引開始周波数、掃引終了周波数、及び、周波数掃引中心周波数を一定の値に設定する。
また、送信周波数制御部103は、例えば、第Ncf+1番目の送信周期Tr#Ncf+1では、チャープ信号の掃引開始周波数、掃引終了周波数、及び、周波数掃引中心周波数をそれぞれΔf変化させる。例えば、送信周波数制御部103は、第Ncf+1番目の送信周期(図9の場合、Tr#5)におけるチャープ信号の掃引開始周波数fstart(Ncf+1)=fstart0+Δfに設定し、掃引終了周波数をfend(Ncf+1)=fend0+Δfに設定し、周波数掃引中心周波数fc(Ncf+1)をfc(Ncf+1)=f0+Δfに設定してよい。なお、図9の例では、Δf<0の場合を示す。以降、同様に、送信周波数制御部103は、例えば、第2×Ncf番目の送信周期(図9では、Tr#8)まで、チャープ信号の掃引開始周波数、掃引終了周波数、及び、周波数掃引中心周波数を一定の値に設定する。
また、送信周波数制御部103は、例えば、第2×Ncf+1番目の送信周期(図9では、Tr#9)では、チャープ信号の掃引開始周波数、掃引終了周波数、及び、周波数掃引中心周波数をそれぞれΔf変化させる。例えば、送信周波数制御部103は、第2×Ncf+1番目の送信周期におけるチャープ信号の中心周波数をfc(2×Ncf+1)=f0+2Δfに設定する。以降、送信周波数制御部103は、第3×Ncf番目の送信周期(図9の場合、Tr#12)まで、同様に、チャープ信号の中心周波数を一定(f0+2Δf)に設定する。
また、送信周波数制御部103は、例えば、第3×Ncf+1番目の送信周期では、チャープ信号の掃引開始周波数、掃引終了周波数、及び、周波数掃引中心周波数をそれぞれΔf変化させる。例えば、送信周波数制御部103は、第3×Ncf+1番目の送信周期におけるチャープ信号の掃引開始周波数fstart(3×Ncf+1)=fstart0+3Δfに設定し、掃引終了周波数をfend(3×Ncf+1)=fend0+3Δfに設定し、周波数掃引中心周波数をfc(3×Ncf+1)=f0+3Δfに設定する。
以降、同様に、送信周波数制御部103は、例えば、第m番目の送信周期におけるチャープ信号の掃引開始周波数をfstart(m)=fstart0+floor((m-1)/Ncf)×Δfに設定し、掃引終了周波数をfend(m)=fend0+floor((m-1)/Ncf)×Δfに設定し、周波数掃引中心周波数をfc(m)=f0+floor((m-1)/Ncf)×Δfに設定してよい。
以上のように、送信周波数制御部103は、周波数掃引帯域幅Bs=|fend0-fstart0|を一定とし、掃引周波数の変化率(周波数掃引時間変化率)fvr=|fend0-fstart0|/Tchirpを一定とし、(Ncf×Tr)周期毎にチャープ信号の中心周波数をΔfのステップで変化させるように変調信号発生部104を制御する。換言すると、送信周波数制御部103は、チャープ信号の中心周波数を、Ncf回(例えば、符号長Locの整数倍)の送信周期毎に変化させる。
送信周波数制御部103は、例えば、以上のようなチャープ信号の送信周波数制御をNc回繰り返してよい。ここで、m=1、…、Ncである。また、floor(x)は実数xを超えない最大の整数を出力する演算子である。
なお、Δt及びΔfは、例えば、以下のような関係に基づいて設定されてよい(理由については後述する)。
|Δf|=|Δt×fstep×Ncf/Loc|=|Δt×fstep×Nroc|
ここで、fstepは、例えば、チャープ信号の掃引周波数時間変化率[Hz/s]である。
また、Δtは、ADサンプリング間隔Tsの整数倍(Δt=Ndts×Ts)に設定されてよい。これにより、デジタル的な時間制御が容易となり好適である。例えば、ΔtがADサンプリング間隔Tsの整数倍に設定される場合、|Δf|=|fstep×Δt×Nroc|=|fA×Ndts×Nroc|に設定されてよい。ここで、fAは、ADサンプリング間隔Tsでのチャープ信号の掃引周波数変化率であり、fA=fstep×Tsである。
また、例えば、チャープ信号の周波数掃引がfstart0<fend0の場合(アップチャープ)、Δt>0の場合(チャープ信号の送信時間を遅らせる場合に相当)にはΔf<0に設定されてよい(例えば、図9)。また、例えば、チャープ信号の周波数掃引がfstart0<fend0の場合(アップチャープ)、Δt<0の場合(チャープ信号の送信時間を早める場合に相当)にはΔf>0に設定されてよい(図10に示す例。図10ではNcf=4、Loc=2)。
また、例えば、チャープ信号の周波数掃引がfstart0>fend0の場合(ダウンチャープ)、Δt>0の場合にはΔf>0に設定されてよい(図11に示す例。図11ではNcf=4、Loc=2)。また、例えば、チャープ信号の周波数掃引がfstart0>fend0の場合(ダウンチャープ)、Δt<0の場合にはΔf<0に設定されてよい(図12に示す例。図12ではNcf=4、Loc=2)。
このように、中心周波数の変化Δfは、送信遅延の量Δtに基づいて設定されてよい。
例えば、VCO105は、変調信号発生部104の電圧出力に基づいて、チャープ信号を出力してよい。例えば、VCO105は、第1番目から第Ncf番目の送信周期まで、周波数掃引帯域幅Bw=|fend0-fstart0|、周波数掃引時間変化率fstep、及び、周波数掃引中心周波数f0に設定されたチャープ信号を、平均送信周期Trの時間間隔毎に、送信信号開始タイミングをΔtずつ可変して出力してよい。
また、例えば、VCO105は、第Ncf+1番目から第2×Ncf番目の送信周期まで、それぞれ第1番目から第Ncf番目の送信周期と同様の平均送信周期Trの時間間隔毎の周期に対する送信信号開始タイミングで、周波数掃引帯域幅Bw=|fend0-fstart0|、周波数掃引時間変化率fstep、及び、周波数掃引中心周波数f0+Δfに設定されたチャープ信号を出力してよい。
以降、同様に、第m番目の送信周期におけるチャープ信号の掃引開始周波数がfstart(m)=fstart0+floor((m-1)/Ncf)×Δfに設定され、掃引終了周波数がfend(m)=fend0+floor((m-1)/Ncf)×Δfに設定され、周波数掃引中心周波数がfc(m)=f0+floor((m-1)/Ncf)×Δfに設定されてよい。また、m番目のチャープ信号の送信周期は、mがNcfの整数倍でなく、かつ、Locの整数倍である場合は、Tr+Δtに設定され、mがNcfの整数倍の場合は、Tr-(Ncf-1)×Δtに設定され、mがLocの整数倍でない場合は、Trに設定されてよい。
レーダ送信部100aは、以上のようなチャープ信号の送信をNc回繰り返してよい。ここで、m=1、…、Ncである。
以上、レーダ送信部100aの構成例について説明した。
[レーダ受信部200aの構成]
本実施の形態に係るレーダ装置10aのレーダ受信部200aにおいて、アンテナ系統処理部201の処理のうち、AD変換部207の動作は実施の形態1及び実施の形態2と同様であるが、送信信号が異なり、受信信号が異なるため、以下で異なる部分について説明する。他の構成部の動作は、実施の形態1又は実施の形態2と同様でよい。
各受信無線部203から出力された信号(例えば、ビート信号)は、信号処理部206において、AD変換部207によって、離散的にサンプリングされた離散サンプルデータに変換される。AD変換部207は、例えば、送信されるNc個のチャープ信号に対して、平均送信周期Tr毎にADサンプリングする期間(レンジゲート)TADを設定してよい。
以下、AD変換部207におけるレンジゲート内のチャープ信号について説明する。
例えば、第m番目の送信周期におけるレンジゲートの開始時刻をTstAD(m)=T0+(m-1)×Tr+Tdlyとし、レンジゲートの終了時刻をTendAD(m)=T0+(m-1)×Tr+Tdly+Ts×Ndataとする。ここで、Ndataは、レンジゲート内のADサンプル数を表す。なお、送信されるNc個のチャープ信号の変調周波数時間変化率fstepがそれぞれ同一の場合、各レンジゲートTAD内の周波数変調帯域幅Bw=fstep×TADは同一でよい。換言すると、AD変換部207では、送信周期それぞれにおいてAD変換を行う区間(例えば、TAD)及びAD変換を開始するタイミング(例えば、送信周期の開始タイミングからTdly後)は一定である。
ここで、レーダ送信部100aは、例えば、第1番目から第Ncf番目の送信周期まで、同一のチャープ信号を、(Tr×Loc)の時間間隔毎に、送信信号開始タイミングをΔtずつ可変して出力する。このため、レーダ受信部200aにおいて、レンジゲート内でADサンプルされるデータでは、送信チャープ信号の掃引周波数が(Tr×Loc)の時間間隔毎にΔt×fstepずつ変化する。よって、レンジゲート内では、送信チャープ信号の中心周波数も(Tr×Loc)の時間間隔毎にΔt×fstepずつ変化する。
例えば、第1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数に対して、第2番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数は同一であり、以降、第Loc番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数は同一である。
また、一つ目の符号送信周期の次の符号送信周期である第Loc+1番目から第2Loc番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数は、第1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数に対してΔt×fstep変化する。以降、第Ncf(=Loc×Nroc)番目の送信周期まで、同様に、レンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数は、(Tr×Loc)の時間間隔毎に、第1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数に対して、(Nroc-1)×Δt×fstep変化する。
また、レーダ送信部100aは、例えば、第Ncf+1番目から第2×Ncf番目の送信周期まで、それぞれ第1番目から第Ncf番目の送信周期と同様の平均送信周期Trの時間間隔毎の周期に対する送信信号開始タイミングで、周波数掃引中心周波数f0+Δfのチャープ信号を出力する。このため、レーダ受信部200aにおいて、第1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数に対し、第Ncf+1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数はΔf変化する。
例えば、レーダ送信部100aにおいて、上述したように、ΔtとΔfとは、|Δf|=|Δt×fstep×Ncf/Loc|=|Δt×fstep×Nroc|となる関係を用いて設定されてよい。例えば、アップチャープの場合、Δf=-Nroc×Δt×fstepに設定されてよい。また、例えば、ダウンチャープの場合、Δf=+Nroc×Δt×fstepに設定されてよい。
以降、レーダ送信部100aは、例えば、第Ncf+2番目から第2×Ncf番目のチャープ信号を、(Tr×Loc)の時間間隔毎に、送信信号開始タイミングをΔtずつ可変して出力する。このため、レーダ受信部200aにおいて、レンジゲート内でADサンプルされるデータでは、送信チャープ信号の掃引周波数が、(Tr×Loc)の時間間隔毎にΔt×fstepずつ変化する。よって、レンジゲート内では、送信チャープ信号の中心周波数も(Tr×Loc)の時間間隔毎にΔt×fstepずつ変化する。
例えば、第1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数に対して、第Ncf+Loc+1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数は(Nroc+1)×Δt×fstep変化する。同様に、第1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数に対して、第2Ncf+1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数は2Nroc×Δt×fstep変化する。
以降、同様に、第m番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数は、第1番目の送信周期におけるレンジゲート内での送信チャープ信号の中心周波数に対し、(Tr×Loc)の時間間隔毎にfloor((m-1)/Loc)×Δt×fstep変化する。
このように、レーダ送信部100aにおいて、Ncf回の送信周期では同一チャープ信号が送信され、(Tr×Loc)の時間間隔毎に送信信号開始タイミングをΔtずつ可変してチャープ信号が出力される。換言すると、Ncf回の送信周期内においてチャープ信号の送信遅延は(Tr×Loc)の時間間隔毎に変化する。これにより、レーダ受信部200aは、例えば、レンジゲート内でADサンプルされる受信データとして、(Tr×Loc)の周期毎にチャープ信号の中心周波数をΔt×fstep変化して送信する場合と同等の受信信号を得ることができる。
よって、本実施の形態では、例えば、送信周期毎に中心周波数が異なるチャープ信号を送信する場合と比較して、チャープ信号を可変するための制御回数を低減でき、送信周期毎のチャープ信号を生成する際のパラメータを記憶するメモリ量を低減できる。
また、本実施の形態では、例えば、チャープ信号を可変するための制御回数の低減により、チャープ信号を可変する際の周波数誤差又は位相誤差の発生を低減でき、距離精度又はドップラ精度に対する劣化の影響を低減できる。
また、本実施の形態では、例えば、(Tr×Loc)の周期毎にチャープ信号の中心周波数をΔt×fstep変化して送信する場合と同等な受信信号を得ることができるため、中心周波数の周波数変化幅を拡大でき、距離高分解能化を図ることができる。
以上、AD変換部207におけるレンジゲート内のチャープ信号について説明した。
本実施の形態に係るレーダ受信部200aにおいて、後続するCFAR部210における動作は実施の形態1の動作と同様でよい。また、レーダ受信部200aにおいて、方向推定部211における符号多重分離部253の出力を用いた方向推定処理も実施の形態2の動作と同様でよい。
本実施の形態に係るレーダ受信部200aでは、例えば、折り返し判定部252の動作、符号多重分離部253の動作、及び、方向推定部211におけるターゲットのドップラ速度情報に関する変換処理が実施の形態2と異なる。
以下、折り返し判定部252において実施の形態2と異なる動作例について説明する。
例えば、上述したように、レーダ受信部200aでは、チャープ信号の中心周波数fcを符号送信周期(Loc×Tr)毎にΔt×fstep変化させたレーダ送信信号と等価な信号の受信信号が得られる。このため、例えば、ターゲットの相対速度がゼロの場合でも、符号送信周期(Loc×Tr)毎にチャープ信号の中心周波数fcのが変化している。このため、レーダ装置10aのLoc個の各ドップラ解析部209aの出力には、符号送信周期(Loc×Tr)毎のチャープ信号における中心周波数の変化に伴う位相回転が含まれる。
例えば、ターゲット距離R
targetに対する第m番目の送信周期におけるチャープ信号の中心周波数fcは、第1番目のチャープ信号の送信周期における中心周波数fcを基準として、floor[(m-1)/Loc]Δt×fstep変化する。このため、中心周波数の変化に伴う位相回転量Δη(m, R
target)は、ターゲット距離R
targetからの反射波到来時間(2R
target/Co)を考慮すると式(53)で示される。なお、式(53)は、第1番目の送信周期におけるチャープ信号の受信位相を基準にした場合の相対的な位相回転量を表す。C
0は光速度を表す。
チャープ信号の中心周波数fcをΔt×fstep変化させる符号送信周期(Loc×Tr)と、符号要素毎のドップラ解析部209aへの切り替え周期を一致させているため、Loc個の各ドップラ解析部209aは、式(53)で示した位相回転を含めたドップラ解析を行うことになる。
このため、折り返し判定部252は、Loc個のドップラ解析部209a間でのドップラ解析の時間差に起因するドップラ位相回転を補正する際に、式(25)のドップラ位相補正ベクトルα(f
s_cfar)に加えて、式(54)に示す中心周波数変化補正ベクトルξ(f
b_cfar)を用いて、位相を補正する点が異なる。例えば、折り返し判定部252は、α(f
s_cfar)の代わりに、
を用いる。なお、R(f
b_cfar)は式(4)より、ビート周波数インデックスf
b_cfarを用いた距離情報R(f
b_cfar)である。
式(54)において、R(fb_cfar)からの反射波到来時間(2R(fb_cfar)/Co)でのΔt×fstep変化により、位相回転量は、符号送信周期(Loc×Tr)内で、2πΔt×fstep×(2R(fb_cfar)/Co)となることから、各Loc個のドップラ解析部209a間でのドップラ解析の時間差に起因する位相回転は、それぞれ第1のドップラ解析部209aを基準として、第nocのドップラ解析部209aは、(noc-1)/Loc倍となることから導出している。なお、noc=1,…,Locである。
また、レーダ受信部200aでは、チャープ信号の中心周波数fcを符号送信周期(Loc×Tr)毎にΔt×fstep変化させたレーダ送信信号と等価な信号の受信信号が得られるため、符号要素毎のドップラ解析部209aへの切り替え周期とが一致する。このため、折り返し判定部252は、未使用符号を用いた符号多重信号の分離処理における位相補正(ドップラ位相補正ベクトルα(fs_cfar)に加えて、式(54)の中心周波数変化補正ベクトルを用いる)を容易に行うことができる。
以上のような理由により、折り返し判定部252は、未使用直交符号UnCode
nucを用いた符号分離後の受信電力DeMulUnCode
nuc(f
b_cfar, f
s_cfar、DR)を、式(25)の代わりに、式(55)のように算出してもよい。式(55)は、式(25)のα(f
s_cfar)の代わりに、
を用いている点が異なる。ここで、nuc=1,…,N
allcode-N
CMである。また、DRはドップラ折り返し範囲を示すインデックスであり、DR=ceil[-Loc/2], ceil[-Loc/2]+1,…,0,…, ceil[Loc/2]-1の範囲の整数値をとる。
また、折り返し判定部252は、式(42)の代わりに、式(56)を用いてもよい。
次に、符号多重分離部253において実施の形態2と異なる動作例について説明する。
符号多重分離部253においても、上記の折り返し判定部252の動作例の説明と同様な理由から、式(43)の代わりに、式(57)に従って、折り返し判定部252での折り返し判定結果であるDR
minを用いて、CFAR部210において抽出された距離インデックスf
b_cfar及びドップラ周波数インデックスf
s_cfarに対応するドップラ解析部209aの出力であるドップラ成分VFTALL
z(f
b_cfar, f
s_cfar)に対して符号分離処理を行う。式(57)は、式(43)のα(f
s_cfar)の代わりに
を用いる点が異なる。
また、符号多重分離部253は、式(44)の代わりに、式(58)を用いて、折り返し判定部252での折り返し判定結果DR
minを用いて、CFAR部210において抽出された距離インデックスf
b_cfar及びドップラ周波数インデックスf
s_cfarに対応するドップラ解析部209aの出力であるドップラ成分VFTALL
z(f
b_cfar, f
s_cfar)に対して符号多重信号の分離処理を行ってもよい。
式(58)において、
の項はドップラ成分のインデックスf
sに依存しないため、予めテーブル化しておくことで、演算量の削減が可能である。
このように、チャープ信号の中心周波数fcを符号送信周期(Loc×Tr)毎にΔt×fstep変化させたレーダ送信信号と等価な信号の受信信号が得られるため、符号要素毎のドップラ解析部209aへの切り替え周期を一致させることができ、符号多重分離処理における位相補正を容易に行うことができる。
次に、方向推定部211において実施の形態2と異なる動作例について説明する。
方向推定部211は、例えば、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarと折り返し判定部252での判定結果であるDR
minとに基づいて、次式(59)に従って、ドップラ周波数インデックスf
es_cfarを算出してもよい。ドップラ周波数インデックスf
es_cfarは、例えば、ドップラ解析部209aのFFTサイズをLoc×Ncodeに拡張した場合のドップラインデックスに相当する。以下、f
es_cfarを「拡張ドップラ周波数インデックス」と呼ぶ。
なお、ドップラ範囲±1/(2×Tr)までを想定しており、このドップラ範囲に対応する拡張ドップラ周波数インデックスfes_cfarの範囲は-Loc×Ncode/2≦fes_cfar<Loc×Ncode/2となることから、式(59)において、算出の結果、fes_cfar < -Loc×Ncode/2の場合、fes_cfar+Loc×Ncodeをfes_cfarとする。また、fes_cfar≧Loc×Ncode/2の場合、fes_cfar-Loc×Ncodeをfes_cfarとする。
例えば、レーダ装置10aでは、チャープ信号の中心周波数fcを符号送信周期(Loc×Tr)毎にΔt×fstep変化させたレーダ送信信号と等価な信号の受信信号が得られるため、ターゲットの相対速度がゼロとなっている場合でも、符号送信周期(Loc×Tr)毎にチャープ信号の中心周波数fcが変化している。このため、レーダ装置10aの受信信号には、符号送信周期(Loc×Tr)毎のチャープ信号における中心周波数の変化に伴う位相回転が含まれる。
ターゲット距離R
targetに対する第m番目の送信周期における中心周波数fcは、floor[(m-1)/Loc]Δt×fstep変化する。このため、中心周波数fcの変化に伴う位相回転量Δη(m, R
target)は、ターゲット距離R
targetからの反射波到来時間(2R
target/Co)を考慮すると、式(60)で示される。なお、式(60)は、第1の送信周期の位相を基準にした場合の相対的な位相回転量を表す。C
0は光速度を表す。
このため、方向推定部211は、例えば、拡張ドップラ周波数インデックスf
es_cfarと距離インデックスf
b_cfarを用いて、式(61)に従って、検出したターゲットのドップラ速度情報v
d(f
es_cfar, f
b_cfar)を出力してもよい。
式(61)における第1項目は、ドップラ周波数インデックスfes_cfarで示される相対ドップラ速度成分である。また、式(61)における第2項目は、チャープ信号の中心周波数fcを、符号送信周期(Loc×Tr)毎にΔt×fstep変化させることで生じるドップラ速度成分である。方向推定部211は、式(61)における第1項目から第2項目のドップラ成分を除くことで本来のターゲットの相対ドップラ速度vd(fes_cfar, fb_cfar)を算出することができる。ここで、R(fb_cfar)は式(4)より、ビート周波数インデックスfb_cfarを用いた距離情報R(fb_cfar)である。
式(61)に示すように、方向推定部211は、符号送信周期(Loc×Tr)毎のチャープ信号における中心周波数fcの変化量であるΔt×fstepを考慮した変換式に基づいて、ドップラ速度情報vdを算出する。
なお、ターゲットのドップラ範囲は±1/(2×Tr)までを想定しているため、v
dが、v
d < - C
0/(4f
0Tr)となる場合、方向推定部211は、次式(62)に従って、検出したターゲットのドップラ速度情報v
dを出力してもよい。
また、同様に、ターゲットのドップラ範囲は±1/(2×Tr)までを想定しているため、v
dが、v
d > C
0/(4f
0Tr)となる場合、方向推定部211は、次式(63)に従って、検出したターゲットのドップラ速度情報v
dを出力してもよい。
以上のように、本実施の形態では、レーダ送信部100aは、Ncf(=Loc×Nroc)回の送信周期において同一のチャープ信号を送信し、(Tr×Loc)の時間間隔毎に、送信信号開始タイミングをΔtずつ変化させて送信する。また、レーダ送信部100aは、当該Ncf回の送信周期に続くNcf回の送信周期において、中心周波数をΔf=Δt×fstep×Nfc変化させたチャープ信号を送信する。
これにより、レーダ受信部200aは、チャープ信号の中心周波数fcが1つの直交符号系列の送信周期(Loc×Tr)に基づいて変化する受信信号を得ることができる。例えば、レーダ受信部200aでは、チャープ信号の中心周波数fcを符号送信周期(Loc×Tr)毎にΔt×fstep変化させたレーダ送信信号と等価な信号の受信信号が得られる。よって、本実施の形態では、上述したチャープ信号の送信信号開始タイミング及び中心周波数の制御を行う場合でも、レーダ装置10a(例えば、MIMOレーダ)は、符号多重送信を適用できる。また、レーダ装置10aは、実施の形態2と同様、符号多重信号の符号要素毎のドップラ解析部209aの出力(換言すると、受信信号)、及び、未使用直交符号を用いて、ドップラ折り返しを判定できる。
また、本実施の形態によれば、レーダ装置10aは、実施の形態2と同様、符号分離の際に、折り返しを含めたドップラ位相補正を行うことにより、曖昧性なく検出可能なドップラ周波数範囲を±1/(Tr)とし、かつ、符号多重信号間の相互干渉をほぼノイズレベル程度に抑えることができる。よって、本実施の形態によれば、レーダ検出性能の劣化を抑制して、MIMOレーダの符号多重送信が可能となる。
また、本実施の形態によれば、チャープ信号の中心周波数fcをΔt×fstep変化させる周期を複数の送信周期にする場合、符号送信周期(Loc×Tr)を一致させることで、符号要素毎のドップラ解析部209aへの切り替え周期とも一致することになり、折り返し判定部252での未使用符号を用いた符号多重信号の分離処理、及び符号多重分離部253での符号多重分離処理における位相補正を容易に行うことができる。
また、本実施の形態では、レーダ装置10aでは、チャープ信号の中心周波数fcを符号送信周期(Loc×Tr)毎にΔt×fstep変化させたレーダ送信信号と等価な信号の受信信号が得られるため、チャープ信号の中心周波数変化幅は、Δt×fstep×Ncodeとなり、距離分解能は、0.5C0/(Δt×fstep×Ncode)となる。
これにより、Δt×fstep×Ncodeを大きくすることで、チャープ信号の中心周波数の変化幅によって距離分解能を向上できるため、チャープ信号の中心周波数を一定として送信する場合と比較して、チャープ掃引帯域(例えば、Bw)を低減できる。チャープ掃引帯域の低減により、例えば、距離分解能を向上しつつ、送信周期の短縮が可能であるので、符号多重送信において、曖昧性なく検出可能なドップラ範囲をさらに拡大できる。
なお、本実施の形態では、チャープ信号の中心周波数fcを符号送信周期(Loc×Tr)毎にΔt×fstep変化させたレーダ送信信号と等価な信号の受信信号が得られる場合を説明したが、(Locの約数×Tr)毎にチャープ信号の中心周波数fcをΔt×fstep変化させたレーダ送信信号を用いてもよい。なお、Locの約数のうち、1を用いる場合は実施の形態2と同様に、Tr毎に中心周波数fcをΔt×fstep変化させることになる。
また、本実施の形態は、実施の形態2と組み合わせ実施することも可能であるが、実施の形態2で説明したような符号多重方法を適用しなくてもよい。
例えば、符号生成部151は、符号長Locの符号系列に含まれるNallcode個の直交符号のうち、符号多重数NCMを直交符号数Nallcodeに等しく設定してもよい。また、位相回転部152は、符号長Locの符号系列に含まれるNallcode個の全ての直交符号を用いて符号多重してもよい。この場合、レーダ装置10aの折り返し判定部252における折り返し判定は適用されないため、ドップラ周波数範囲は±1/(2Loc×Tr)となる。ここで、チャープ信号を繰り返し送信する度に可変されるチャープ信号の中心周波数の周波数変化幅BWfcval(=(最大となるチャープ信号中心周波数)―(最小となるチャープ信号の中心周波数))が、個々のチャープ周波数掃引帯域幅BWchirpよりも、大きい場合(例えば、BWfcval>BWchirp )、距離分解能ΔR2は式(3)によって与えられる。これより、BWfcvalが大きいほど、個々のチャープ周波数掃引帯域幅BWchirpに依存せずに(例えば、BWchirpが小さい場合でも)、距離分解能を向上でき、チャープ信号の平均送信周期Trを短縮できる。よって、上述した符号多重方法を適用しない場合でも、式(2)の関係より、最大ドップラ速度fdmaxが高められ、ドップラ検出範囲を拡大できる。
また、本実施の形態において、レーダ送信信号生成部101において用いるパラメータであるNcfの設定値は、符号要素数(又は、符号系列の符号長)Locの整数倍でもよい。これにより、符号送信周期内において、チャープ信号の中心周波数が可変されないため、チャープ信号の可変時において周波数誤差又は位相誤差が発生しにくくなり、符号多重信号間の直交性を維持できる。
また、本実施の形態では、(Tr×Loc)毎にチャープ信号の中心周波数をΔt×fstep変化して送信する場合と同等な受信信号を得ることができるため、実施の形態2と比較して、チャープ信号の中心周波数の周波数変化幅BWfcvalは、同一のΔt×fstepを用いる場合、1/Locとなる。その一方で、符号周期内では、送信タイミングが可変しない同一のチャープ信号が送信されるので、符号多重されたチャープ信号間の直交性の維持するためにはより好適となる。また、例えば、Δt×fstepの設定を上限値とすることで、チャープ信号の中心周波数の周波数変化幅BWfcvalの減少を抑えることができる。
(実施の形態4)
実施の形態2及び実施の形態3では、符号多重送信を用いたMIMOレーダ構成について説明したが、これに限定されない。本実施の形態では、一例として、レーダ送信信号を時分割によって複数の送信アンテナから送信する時分割多重送信を用いたMIMOレーダ構成について説明する。
図13は、本実施の形態に係るレーダ装置10bの構成例を示すブロック図である。図13において、実施の形態1及び実施の形態2と同様の動作を行う構成部には同一の符号を付し、その説明を省略する。
[レーダ送信部の構成]
図13に示すレーダ送信部100bは、例えば、図7に示す符号生成部151の代わりに、時分割制御部161を備え、図7に示す位相回転部152の代わりに、切替部162を備える。
例えば、レーダ送信部100bにおいて、時分割制御部161及び切替部162と異なる他の構成部の動作は実施の形態1又は実施の形態2と同様でよい。例えば、レーダ送信部100bは、Ncf回の送信周期において同一のチャープ信号を送信し、平均送信周期Trの時間間隔毎に、送信信号開始タイミングをΔtずつ変化させて送信してよい。また、レーダ送信部100bは、例えば、当該Ncf回の送信周期に続くNcf回の送信周期において、中心周波数をΔf=Δt×fstep×Nfc変化させたチャープ信号を送信してよい。これにより、レーダ受信部200bは、送信周期毎にチャープ信号の中心周波数をΔt×fstep変化して送信する場合と同等の受信信号を得ることができる。
時分割制御部161は、例えば、送信周期毎に送信アンテナ106を切り替える制御信号(以下、「切替アンテナ番号ANT_INDEX」と呼ぶ)を切替部162に出力する。また、時分割制御部161は、例えば、送信周期毎に、ANT_INDEXをレーダ受信部200の出力切替部261へ出力する。
切替部162は、例えば、レーダ送信信号生成部101の出力に対する、時分割制御部161から入力されるANT_INDEXによって指示される送信アンテナ106への入力切替を行う。これにより、レーダ送信信号生成部101の出力(例えば、チャープ信号)は、送信アンテナ106から時分割送信される。
例えば、時分割制御部161は、第1番目の送信周期において第1の送信アンテナ106に切り替える切替制御信号ANT_INDEXを切替部162に出力してよい。切替部162は、例えば、ANT_INDEXの指示に基づいて、第1番目の送信周期においてレーダ送信信号生成部101の出力を、第1の送信アンテナ106に切り替えて出力する。
また、例えば、時分割制御部161は、第2番目の送信周期において第2の送信アンテナ106に切り替える切替制御信号ANT_INDEXを切替部162に出力してよい。切替部162は、例えば、ANT_INDEXの指示に基づいて、第2番目の送信周期においてレーダ送信信号生成部101の出力を、第2の送信アンテナ106に切り替えて出力する。
以降、同様に、時分割制御部161は、逐次的に送信アンテナ106の切り替えを制御し、第Nt番目の送信周期において、第Ntの送信アンテナ106に切り替えるANT_INDEXを切替部162に出力する。切替部162は、例えば、ANT_INDEXの指示に基づいて、第Nt番目の送信周期においてレーダ送信信号生成部101の出力を、第Ntの送信アンテナ106に切り替えて出力する。
また、時分割制御部161は、例えば、第Nt+1番目の送信周期において、第1の送信アンテナ106に切り替えるANT_INDEXを切替部162に出力してよい。切替部162は、例えば、ANT_INDEXの指示に基づいて、第Nt+1番目の送信周期においてレーダ送信信号生成部101の出力を、第1の送信アンテナ106に切り替えて出力する。
以降、時分割制御部161は、第m番目の送信周期において第mod(m-1, Nt)+1の送信アンテナ106に切り替えるANT_INDEXを切替部162に出力する。切替部162は、例えば、ANT_INDEXの指示に基づいて、第m番目の送信周期においてレーダ送信信号生成部101の出力を、第mod(m-1, NTx)+1の送信アンテナ106に切り替えて出力する。ここで、m=1、…、Ncである。
[レーダ受信部200bの構成]
図13において、レーダ受信部200bは、Na個の受信アンテナ202(例えば、Rx#1~Rx#Naとも表す)を備え、アレーアンテナを構成する。また、レーダ受信部200bは、Na個のアンテナ系統処理部201-1~201-Naと、CFAR部210と、方向推定部211と、を有する。
各受信アンテナ202は、レーダ測定のターゲットを含む反射物体に反射したレーダ送信信号である反射波信号をそれぞれ受信し、受信した反射波信号を、対応するアンテナ系統処理部201へ受信信号として出力する。
各アンテナ系統処理部201は、受信無線部203と、信号処理部206bとを有する。
受信無線部203の動作は実施の形態1と同様でよい。
各アンテナ系統処理部201-z(ただし、z=1~Naの何れか)の信号処理部206bは、AD変換部207と、ビート周波数解析部208と、出力切替部261と、ドップラ解析部209bと、を有する。
AD変換部207、及び、ビート周波数解析部208の動作は、実施の形態1と同様でよい。
出力切替部261は、例えば、時分割制御部161から出力されるANT_INDEXに基づいて、送信周期毎のビート周波数解析部208の出力を、Nt個のドップラ解析部209bのうち、ANT_INDEX番目のドップラ解析部209bに選択的に切り替えて出力する。換言すると、出力切替部261は、第m番目の平均送信周期Trにおいて、ANT_INDEX番目のドップラ解析部209bを選択する。
信号処理部206bは、例えば、Nt個のドップラ解析部209b-1~209b-Ntを有する。例えば、第ntx番のドップラ解析部209bには、出力切替部261によってNt回の平均送信周期(Nt×Tr)毎にデータが入力される。このため、第ntx番目のドップラ解析部209bは、Nc回の平均送信周期のうち、Ntdm(=Nc/Ntx)回の送信周期のデータ(例えば、ビート周波数解析部208から出力されるビート周波数応答RFTz(fb, m))を用いて、距離インデックスfb毎にドップラ解析を行う。ここで、ntxは送信アンテナ106のインデックスであり、ntx=1, …, Ntである。
例えば、第z番の信号処理部206bのドップラ解析部209bの出力VFT
z
ntx(f
b, f
s)は、次式(64)に示される。なお、jは虚数単位であり、z=1~Naである。
CFAR部210は、第1~第Na番目の信号処理部206bそれぞれのNt個のドップラ解析部209bの出力を用いて、CFAR処理(換言すると、適応的な閾値判定)を行い、ピーク信号を与える距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarを抽出する。
方向推定部211は、CFAR部210から入力される距離インデックスfb_cfar及びドップラ周波数インデックスfs_cfarに対応するドップラ解析部209bの出力VFTz
ntx(fb, fs)に基づいて、ターゲットの方向推定処理を行う。
例えば、方向推定部211は、CFAR部210から入力される距離インデックスfb_cfar、ドップラ周波数インデックスfs_cfarに対応するドップラ解析部209の出力VFTz
ntx(fb_cfar, fs_cfar)を用いて、次式(65)のような仮想受信アレー相関ベクトルh(fb_cfar, fs_cfar)を生成し、実施の形態2と同様に方向推定処理を行ってよい。
仮想受信アレー相関ベクトルh(f
b_cfar, f
s_cfar)は、送信アンテナ数Ntと受信アンテナ数Naとの積であるNt×Na個の要素を含む。仮想受信アレー相関ベクトルh(f
b_cfar, f
s_cfar)は、ターゲットからの反射波信号に対して各受信アンテナ202間の位相差に基づく方向推定を行う処理に用いられる。ここで、z=1,…,Naである。
ここで、α
ntx(f
s_cfar)はドップラ位相補正係数であり、次式(66)のように表される。ここで、ntx=1, …, Ntである。式(65)及び式(66)に示すドップラ位相補正係数α
ntx(f
s_cfar)は、例えば、第1番のドップラ解析部209bの出力VFT
z
1(f
b_cfar, f
s_cfar)のドップラ解析時間を基準として、第2番のドップラ解析部209の出力VFT
z
2(f
b_cfar, f
s_cfar)から第Nt番のドップラ解析部VFT
z
Nt(f
b_cfar, f
s_cfar)のそれぞれにおけるTr,2Tr,…,(Nt-1)Trの時間遅れにより生じるドップラ周波数インデックスf
s_cfarのドップラ成分での位相回転の補正に用いる複素値の係数である。
また、方向推定部211は、例えば、ドップラ周波数インデックスfs_cfarと距離インデックスfb_cfarを用いて、以下のように検出したターゲットのドップラ速度情報vdを出力してもよい。
例えば、レーダ受信部200bでは、チャープ信号の中心周波数fcを平均送信周期Tr毎にΔt×fstep変化させたレーダ送信信号と等価の信号の受信信号が得られる。このため、例えば、ターゲットの相対速度がゼロの場合でも、平均送信周期Tr毎にチャープ信号の中心周波数fcが変化している。このため、レーダ装置10bの受信信号には、平均送信周期Tr毎のチャープ信号における中心周波数の変化に伴う位相回転が含まれる。
例えば、ターゲット距離R
targetに対する第m番の平均送信周期Trにおける中心周波数fcは、第1番の中心周波数を基準として(m-1)Δt×fstep変化する。このため、中心周波数の変化に伴う位相回転量Δη(m, R
target)は、ターゲット距離R
targetからの反射波到来時間(2R
target/Co)を考慮すると式(67)で示される。なお、次式(67)は、第1の平均送信周期Trの位相を基準にした場合の相対的な位相回転量を表す。C
0は光速度を表す。このため、レーダ装置10bのNt個の各ドップラ解析部209bの出力には、平均送信周期Tr毎のチャープ信号における中心周波数の変化に伴う位相回転が含まれる。
よって、式(68)に示すように、方向推定部211は、平均送信周期Tr毎のチャープ信号における中心周波数fcの変化量であるΔt×fstepを考慮した変換式に基づいて、ドップラ速度情報vd(fb_cfar ,fs_cfar)を算出する。
式(68)における第1項目は、ドップラ周波数インデックスf
s_cfarで示される相対ドップラ速度成分である。式(68)における第2項目は、チャープ信号の中心周波数fcを、平均送信周期Tr毎にΔt×fstep変化させることで生じるドップラ速度成分である。方向推定部211は、例えば、式(68)に示すように第1項目から第2項目のドップラ成分を除くことで本来のターゲットの相対ドップラ速度v
d(f
b_cfar ,f
s_cfar)を算出することができる。ここで、R(f
b_cfar)は、ビート周波数インデックスf
b_cfarを用いた距離情報R(f
b_cfar)であり、式(4)に従って算出される。
なお、ターゲットのドップラ範囲は±1/(2×Nt×Tr)までを想定しているため、v
dが、v
d < - C
0/(4f
0Nt Tr)となる場合、方向推定部211は、次式(69)に従って、検出したターゲットのドップラ速度情報v
dを出力してもよい。
また、同様に、ターゲットのドップラ範囲は±1/(2×Nt×Tr)までを想定しているため、v
dが、v
d > C
0/(4f
0N
Tx Tr)となる場合、方向推定部211は、次式(70)に従って、検出したターゲットのドップラ速度情報v
dを出力してもよい。
以上のように、本実施の形態では、実施の形態1と同様、レーダ送信部100bは、Ncf回の送信周期において同一のチャープ信号を送信し、平均送信周期Trの時間間隔毎に、送信信号開始タイミングをΔtずつ変化させて出力する。また、レーダ送信部100bは、当該Ncf回の送信周期に続くNcf回の送信周期において、中心周波数をΔf=Δt×fstep×Nfc変化させたチャープ信号を送信する。
これにより、レーダ受信部200bは、例えば、レンジゲート内においてADサンプルされる受信データについて、送信周期毎にチャープ信号の中心周波数をΔt×fstep変化して送信する場合と同等の受信信号を得ることができる。
よって、本実施の形態によれば、実施の形態1と同様、例えば、中心周波数が異なるチャープ信号の送信のためにチャープ信号を可変に設定する制御回数を低減でき、送信周期毎のチャープ信号を生成する際のパラメータを記憶するメモリ量を低減できる。また、例えば、レーダ受信部200bにおいてADサンプリングする区間及びタイミングは、チャープ信号の送信周期に依らず一定でよい。これにより、レーダ受信部200bにおける処理を簡易化できる。
また、チャープ信号を可変するための制御回数の低減により、例えば、チャープ信号の可変時の周波数誤差又は位相誤差の発生を低減でき、距離精度又はドップラ精度に対する劣化の影響を低減できる。
また、本実施の形態では、上述したチャープ信号の送信信号開始タイミングおよび中心周波数の制御を行う場合でも、レーダ装置10b(例えば、MIMOレーダ)は、時分割多重送信を適用できる。
また、本実施の形態では、チャープ信号を繰り返し送信する度に可変されるチャープ信号の中心周波数の周波数変化幅BWfcval(=(最大となるチャープ信号中心周波数)-(最小となるチャープ信号の中心周波数))が、個々のチャープ周波数掃引帯域幅BWchirpよりも大きい場合(例えば、BWfcval>BWchirp )、距離分解能ΔR2は式(3)によって与えられる。これより、例えば、BWfcvalが大きいほど、個々のチャープ周波数掃引帯域幅BWchirpに依存せずに(例えば、BWchirpを小さくしても)、距離分解能を向上できるので、チャープ信号の平均送信周期Trの短縮が可能となる。また、チャープ信号の平均送信周期Trの短縮により、例えば、式(2)の関係より、最大ドップラ速度fdmaxを高くでき、ドップラ検出範囲を拡大する効果を有し、符号多重送信において曖昧性なく検出可能なドップラ範囲をさらに拡大できる。
なお、本実施の形態において、レーダ送信信号生成部101において用いるパラメータであるNcfの設定値は、時分割送信に用いられる送信アンテナ106の数Ntの整数倍でもよい。これにより、Nt個の送信アンテナ106の順次切り替えの途中において、チャープ信号の中心周波数が可変されないため、時分割制御部161における送信アンテナ106の切り替え周期と一致し、レーダ装置10bの制御を容易にできる。
以上、本開示に係る一実施例について説明した。
なお、上述した実施の形態では、一例として、チャープ信号の周波数領域における変化量Δfが|Δt×fstep×Nfc|又は|Δt×fstep×Ncf/Loc|に設定される場合について説明したが、これに限定されず、他の値でもよい。また、上述した実施の形態では、一例として、チャープ信号の時間領域における送信遅延に関するΔtがADサンプリング間隔Tsの整数倍(Δt=Ndts×Ts)に設定される場合について説明したが、これに限定されず、他の値でもよい。
また、上述したレーダ装置の送信アンテナは、サブアレー構成でもよい。例えば、レーダ装置は、サブアレービームフォーミング(サブアレーBF)と符号多重送信とを併用したドップラ多重送信を行ってもよい。送信アンテナのうちのいくつかを組み合わせてサブアレーとして用いることにより、送信指向性ビームパターンのビーム幅を狭めて、送信指向性利得を向上できる。これにより、検知可能な角度範囲は狭まるが、検知可能な距離範囲を増加できる。また、指向性ビームを生成するビームウェイト係数を可変にすることにより、ビーム方向を可変制御できる。
また、本開示の一実施例に係るレーダ装置において、レーダ送信部及びレーダ受信部は、物理的に離れた場所に個別に配置されてもよい。また、本開示の一実施例に係るレーダ受信部において、方向推定部と、他の構成部とは、物理的に離れた場所に個別に配置されてもよい。
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、図示しないが、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、およびRAM(Random Access Memory)等の作業用メモリを有する。この場合、上記した各部の機能は、CPUが制御プログラムを実行することにより実現される。但し、レーダ装置のハードウェア構成は、かかる例に限定されない。例えば、レーダ装置の各機能部は、集積回路であるIC(Integrated Circuit)として実現されてもよい。各機能部は、個別に1チップ化されてもよいし、その一部または全部を含むように1チップ化されてもよい。
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
また、上述した実施の形態における「・・・部」という表記は、「・・・回路(circuitry)」、「・・・アッセンブリ」、「・・・デバイス」、「・・・ユニット」、又は、「・・・モジュール」といった他の表記に置換されてもよい。
上記各実施形態では、本開示はハードウェアを用いて構成する例にとって説明したが、本開示はハードウェアとの連携においてソフトウェアでも実現することも可能である。
また、上記各実施形態の説明に用いた各機能ブロックは、典型的には集積回路であるLSIとして実現される。集積回路は、上記実施の形態の説明に用いた各機能ブロックを制御し、入力端子と出力端子を備えてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサを用いて実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、LSI内部の回路セルの接続又は設定を再構成可能なリコンフィギュラブル プロセッサ(Reconfigurable Processor)を利用してもよい。
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術により、LSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックを集積化してもよい。バイオ技術の適用等が可能性としてありえる。
<本開示のまとめ>
本開示の一実施例に係るレーダ装置は、複数のチャープ信号を生成する信号生成回路と、前記複数のチャープ信号を送信する送信アンテナと、を具備し、前記信号生成回路は、2以上の所定数の送信周期のそれぞれにおいて、前記チャープ信号の送信遅延を設定し、前記チャープ信号の中心周波数を、前記所定数の送信周期毎に変化させる。
本開示の一実施例において、前記所定数の送信周期のそれぞれにおいて、前記送信遅延は送信周期毎に異なる。
本開示の一実施例において、前記送信遅延の変化は、前記所定数の送信周期で一巡する。
本開示の一実施例において、前記中心周波数の変化は、前記送信遅延の量に基づいて設定される。
本開示の一実施例において、前記チャープ信号が物体にて反射された反射波信号に対するAD変換を行う受信回路、を更に具備し、前記送信周期それぞれにおいて前記AD変換を行う区間及び前記AD変換を開始するタイミングは一定である。
本開示の一実施例において、前記所定数は、前記AD変換を行う区間の長さに基づいて設定される。
本開示の一実施例において、前記送信アンテナは、符号多重された前記チャープ信号を送信する。
本開示の一実施例において、前記所定数は、前記符号多重に用いられる符号系列の符号長の整数倍に設定される。
本開示の一実施例において、前記送信遅延は、前記符号多重に用いられる符号系列の符号長に対応する送信周期毎に異なる。
本開示の一実施例において、前記チャープ信号が物体にて反射された反射波信号に対するドップラ解析範囲の(前記符号多重に用いられる符号系列の符号長)倍の範囲にて、前記反射波信号におけるドップラ周波数領域での折り返しの判定を行う受信回路、を更に具備する。
本開示の一実施例において、前記送信アンテナは、複数の符号系列のうち一部の符号系列に基づいて符号多重された前記チャープ信号を送信し、前記受信回路は、前記複数の符号系列のうち前記一部の符号系列と異なる他の符号系列に基づいて、前記折り返しの判定を行う。
本開示の一実施例において、前記送信アンテナは、前記チャープ信号を時分割送信する。
本開示の一実施例において、前記所定数は、前記時分割送信に用いられる前記送信アンテナの数の整数倍に設定される。