JP2022048728A - ビードリングの製造方法および装置並びにタイヤの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】横断面形状を任意の所望形状にしたビードリングを、より簡便に製造できるビードリングの製造方法および装置、並びにタイヤの製造方法を提供する。【解決手段】ゴム被覆ビードワイヤ15を、ドラム2の外周面に上下に積層して巻き付けて環状のビード要素16を成形し、並列されたドラム2と保持プレート3の少なくとも一方を、互いが近接する方向にスライド移動させて、ビード要素16を保持プレート3に移載させる要素成形工程Mを、順次繰り返し行い、各要素成形工程Mでは、製造するビードリングの仕様に基づいて予め決定された回数で、ビードワイヤ15をドラム2の外周面にガイド2aに沿って積層して巻き付け、順次成形したビード要素16どうしの側面を、スライド移動によって接合してビードリングを製造する。【選択図】図6
Description
本発明は、横断面形状を任意の所望形状にしたビードリングを、より簡便に製造できるビードリングの製造方法および装置並びにタイヤの製造方法に関するものである。
タイヤを構成するビードリングは、1本または複数本のビードワイヤを環状にすることで形成される。ビードリングの製造方法は種々知られている。例えば、横並びさせた複数本のゴム被覆されたビードワイヤを、成形リングの外周面に1周以上、上下に積層するように巻き付けて始端部と終端部をオーバーラップさせてビードリングを製造する。この製造方法で製造されたビードリングでは、スプライス部の剛性が他の部位に比して過大になる。これに伴い、それぞれのスプライス部近傍では応力集中し易く、また、良好なユニフォミティを確保するには不利になる。
或いは、1本または複数本のゴム被覆されたビードワイヤを、成形リングの外周面に螺旋状に巻き付け、巻き付け位置を移動させて積層することで環状のビードリングを製造する方法もある。この製造方法で製造されたビードリングでは、ビードワイヤのスプライス部を1か所にできるので良好なユニフォミティを確保するには有利になるが製造時間が長くなる。また、ビードワイヤを安定して螺旋状に巻き付けるために、ビードリングは基本的に横断面視で四角形状になる。
ゴム被覆されたビードワイヤを縦積み状に巻き付けて環状のビードコア単位を複数形成し、並置して隣り合うビードコア単位の側面どうしを圧着してビードコア(ビードリング)を製造する方法も提案されている(特許文献1参照)。この製造方法では、ビードワイヤの巻き始め端と巻き終わり端を、ビードコア単位の相互間でその円周上で均等に分散配置することで、ユニフォミティの悪化を回避している。また、生産性を向上させるために図9に例示されているように、ゴム被覆されたビードワイヤを複数本並列させて、それぞれのビードワイヤを1つの成形ドラム上で縦積み状に巻き付けてビードコア単位を形成する。或いは、それぞれのビードワイヤを個々の成形ドラム上で縦積み状に巻き付けてビードコア単位を形成する。そして、並置して隣り合うビードコア単位の側面どうしを圧着してビードコア(ビードリング)を製造する(段落0030~0035)。そのため、横断面形状が異なる様々なビードリグを効率的に製造するには、ビードコア単位の製造工程と、ビードコア単位どうしの圧着工程とを効率的に連携させる必要がある。これに伴い、両工程を高い精度で管理しなければならない。それ故、横断面形状を任意の所望形状にしたビードリングを、より簡便に製造するは改善の余地がある。
本発明の目的は、横断面形状を任意の所望形状にしたビードリングを、より簡便に製造できるビードリングの製造方法および装置並びにタイヤの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明のビードリングの製造方法は、ドラムの外周面にドラム半径方向外側に突出するガイドを設け、前記ドラムと並列された保持プレートの前記ガイドに対向する位置に保持面を設け、未加硫ゴムに被覆された1本または並列させた複数本のビードワイヤを、前記外周面に1周以上巻き付けて前記ガイドに沿って上下に積層状態にした環状のビード要素を成形し、並列された前記ドラムと前記保持プレートの少なくとも一方を、互いが近接する方向にスライドさせるスライド移動によって、前記環状のビード要素を前記保持面に向かって移動させて前記保持プレートに移載させる要素成形工程を、順次繰り返し行い、それぞれの前記要素成形工程では、製造するビードリングの仕様に基づいて予め決定された回数で、前記ビードワイヤを前記外周面に上下に積層して巻き付け、順次成形した前記環状のビード要素どうしの側面を、前記スライド移動によって接合してビードリングを製造することを特徴とする。
本発明のビードリングの製造装置は、未加硫ゴムに被覆された1本または並列させた複数本のビードワイヤが外周面に巻き付けられるドラムと、このドラムに並列されて設置される保持プレートと、前記ドラムと前記保持プレートの少なくとも一方を、互いの並列方向にスライド移動させるスライド機構と、前記ドラム、前記保持プレートおよび前記スライド機構の動作を制御する制御部とを備えて、前記外周面にドラム半径方向外側に突出するガイドを有し、前記保持プレートの前記ガイドに対向する位置に保持面を有し、前記ビードワイヤが前記外周面に1周以上巻き付けられて前記ガイドに沿って積層状態になった環状のビード要素が成形され、次いで、前記ドラムと前記保持プレートとを近接させる前記スライド移動によって前記環状のビード要素を前記保持面に向かって移動させて前記保持プレートに移載させる要素成形工程が、順次繰り返し行われ、それぞれの前記要素成形工程では、製造するビードリングの仕様に基づいて予め決定された回数で、前記ビードワイヤが前記外周面に上下に積層して巻き付けられて、順次成形された前記環状のビード要素どうしの側面が、前記スライド移動によって接合されてビードリングが製造される構成にしたことを特徴とする。
本発明のタイヤの製造方法は、上記のビードリングの製造方法によってビードリングを製造し、一対の前記ビードリングの間にカーカス材を架け渡した状態のグリーンタイヤを成形し、次いで、前記グリーンタイヤを加硫することを特徴とする。
本発明の別のタイヤの製造方法は、ドラムの外周面にドラム半径方向外側に突出するガイドを設け、前記ドラムと並列された保持プレートの前記ガイドに対向する位置に保持面を設け、未加硫ゴムに被覆された1本または並列させた複数本のビードワイヤを、前記外周面に1周以上巻き付けて前記ガイドに沿って上下に積層状態にした環状のビード要素を成形し、前記ドラムと前記保持プレートの少なくとも一方を、互いが近接する方向にスライドさせるスライド移動によって、前記環状のビード要素を前記保持面に向かって移動させて前記保持プレートに移載させる要素成形工程を行って、それぞれの前記要素成形工程では、製造するビードリングの仕様に基づいて予め決定された回数で、前記ビードワイヤを前記外周面に上下に積層して巻き付け、前記保持プレートに移載させた前記環状のビード要素を、カーカス材のタイヤ幅方向のそれぞれの端部に対して、それぞれの前記端部のタイヤ内側面とタイヤ外側面とのそれぞれに接合してそれぞれの前記端部を一対の前記環状のビード要素によって挟持することで、それぞれの前記端部にビードリングを一体化させて製造して、一対の前記ビードリングの間に前記カーカス材を架け渡した状態のグリーンタイヤを成形し、次いで、前記グリーンタイヤを加硫することを特徴とする。
本発明のビードリングの製造方法および装置によれば、前記要素成形工程を順次繰り返し行うことで、前記保持プレートには、前記ドラムの外周面で順次成形された前記環状のビード要素が移載され、かつ、順次成形された前記環状のビード要素の側面どうしが接合される。そのため、前記要素成形工程を必要回数行うことで、簡便にビードリングを完成させることができる。そして、それぞれの要素成形工程では、製造するビードリングの仕様に基づいて、前記ビードワイヤの前記ドラムの外周面での巻き付け回数を変えることで、ビードリングの横断面形状を任意の所望形状にすることができる。
本発明の前者のタイヤの製造方法によれば、設定した仕様に合致したビードリング、即ち、タイヤ仕様に好適な横断面形状のビードリングを備えたタイヤを製造できるので、製造したタイヤの性能を向上させるには有利になる。
本発明の後者のタイヤの製造方法によれば、前記要素成形工程を行うことで、前記保持プレートには前記ドラムの外周面で成形された前記環状のビード要素が移載される。この移載された前記環状のビード要素を、カーカス材のタイヤ幅方向のそれぞれの端部のタイヤ内側面とタイヤ外側面とのそれぞれに接合することで、それぞれの前記端部を一対の前記環状のビード要素によって挟持して一体化させたビードリングを、簡便に完成させることができる。前記要素成形工程では、製造するビードリングの仕様に基づいて、前記ビードワイヤの前記ドラムの外周面での巻き付け回数を変えることで、前記ビードリングの横断面形状を任意の所望形状にすることができる。これにより、設定した仕様に合致したビードリング、即ち、タイヤ仕様に好適な横断面形状のビードリングを備えたタイヤを製造できるので、製造したタイヤの性能を向上させるには有利になる。
以下、本発明のビードリングの製造方法および装置並びにタイヤの製造方法を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
図1~図3に例示する本発明のビードリングの製造装置1(以下、製造装置1という)によって、ビードワイヤ14aの外周面が未加硫ゴム14bによって被覆されたゴム被覆ビードワイヤ15を用いて、図7に例示する環状のビードリング17が製造される。ビードリング17は、複数の環状のビード要素16を接合して製造されている。
製造装置1は、並列されて設置されたドラム2および保持プレート3と、スライド機構5と、制御部10とを備えている。この実施形態では、製造装置1はさらに、ビードワイヤ15を把持する把持部6a、6bと切断具7とベース8とを備えている。制御部10は、製造装置1の構成部品の動きを制御する。制御部10としてはコンピュータが使用される。
円筒状のドラム2は、中心軸4aを中心にして回転可能になっている。例えば、サーボモータなどによって、中心軸4aを中心にして所望の回転角度だけ回転させることができる。即ち、ドラム2は、任意の回転位置で回転を停止して固定した状態にすることができる。図中の一点鎖線CLは、中心軸4aおよび後述する中心軸4bの軸方向、即ちドラム軸方向を示している。このドラム軸方向CLは、ドラム2と保持プレート3の並列方向になる。図中の矢印Cは、ドラム2、保持プレート3、ビードリング17(ビード要素16)の周方向を示している。図中の矢印Rは、ドラム2、保持プレート3、ビードリング17(ビード要素16)の半径方向を示している。
ドラム2の外周面にはガイド2aが備わっている。ガイド2aは、ドラム半径方向外側に突出している。この実施形態では、ドラム周方向全周に連続する円環状のガイド2aになっているが、例えば、ドラム周方向に断続的に突出させた突起をガイド2aにすることもできる。ガイド2aは、ドラム2の外周面のドラム軸方向一方端部に突設されている。
ガイド2aはドラム2と一体物であっても、着脱可能な別体であってもよい。ドラム2と一体物のガイド2aを製造するには、例えばドラム2の外周面の一部を切削する。ドラム2に着脱可能なガイド2aは、ボルトやビスなどの留め具によってガイド2aをドラム2の外周面に取り付ける。
ドラム2が中心軸4aを中心にして回転することで、ドラム2の外周面には、供給源から供給される1本または並列させた複数本のビードワイヤ15が1周以上巻き付けられてガイド2aに沿って上下に積層状態になる。それぞれのビードワイヤ15の先端部と後端部とはオーバーラップされる。このオーバーラップした部分がスプライス部Sである。
ビードワイヤ15は例えば、未加硫ゴムの押出機のヘッド部にビードワイヤ14aを通過させて未加硫ゴム14bを被覆することで製造される。例えば、ドラム2によってビードワイヤ15を巻き取りながら、その上流側で、このビードワイヤ15を構成するビードワイヤ14aを押出機のヘッド部に通過させて未加硫ゴム14bを被覆させる。
円盤状の保持プレート3は、中心軸4bを中心にして回転可能になっている。例えば、サーボモータなどによって、中心軸4bを中心にして所望の回転角度だけ回転させることができる。即ち、保持プレート3は、任意の回転位置で回転を停止して固定した状態にすることができる。ドラム2と保持プレート3はそれぞれ、同軸上に設置された中心軸4a、4bによって回転可能に保持されている。ドラム2と保持プレート3は互いに独立して回転可能になっている。保持プレート3は回転可能にしなくてもよいが、回転可能にすることが好ましい。ドラム2と保持プレート3とは、並列された状態で互いの並列方向に移動できればよい。
保持プレート3の一方面のドラム2のガイド2aに対向する位置には保持面3aが備わっている。この実施形態では、保持面3aに磁石3bが使用されている。磁石3bは、保持プレート3の周方向全周に連続する円環状になっているが、例えば、周方向に断続的に配置することもできる。
スライド機構5は、ドラム2と保持プレート3の少なくとも一方を、互いの並列方向にスライド移動させる。この実施形態では、保持プレート3をスライド移動させる流体シリンダがスライド機構5として使用されている。このシリンダロッドが前進することで保持プレート3はスライド移動して、スライド移動しないドラム2に対して近接する。また、シリンダロッドが後退することで保持プレート3はスライド移動して、スライド移動しないドラム2に対して離反する。スライド機構5としては、その他にサーボモータによって移動制御されるロッドなどを用いることができる。
スライド機構5によってドラム2がスライド移動して、スライド移動しないドラム2に対して近接および離反する構成にすることもできる。或いは、ドラム2と保持プレート3の両方がスライド機構5によってスライド移動して、互いが近接および離反する構成にすることもできる。
ドラム2の前方、即ち、ビードワイヤ15の供給方向上流側に、把持部6a、6bと切断具7とベース8とが配置されている。ドラム2に巻き付けられるビードワイヤ15は、ベース8の上を通過する。把持部6a、6bは、ベース8上でビードワイヤ15を把持することができる。把持部6a、6bはロボットアームなどを用いて作動させる。ベース8の上方に配置されたカッターなどの切断具7によって、ビードワイヤ15は所定長さで切断される。ベース8とドラム2の間には、ビードワイヤ15を支持するローラ類を適宜設置することができる。
制御部10には、製造するビードワイヤ15の仕様情報が入力されている。この入力されている情報に基づいて、制御部10は、製造装置1の構成部品(ドラム2、保持プレート3、スライド機構5、把持部6a、6b、切断具7など)の動きを制御する。
次に、ビードリング17を製造する手順を、1本のビードワイヤ15を用いてそれぞれのビード要素16を成形する場合を例にして説明する。尚、1本のビードワイヤ15に代えて、並列させた複数本のビードワイヤ15を用いて、以下の同様の手順でビード要素16を成形することもできる。
まず、ドラム2を回転駆動して、1本のビードワイヤ15をドラム2の外周面に1周以上巻き付けてガイド2aに沿って上下に積層状態する。ビードワイヤ15の先端部と後端部とは上下にオーバーラップさせてスプライス部Sにする。スプライス部Sでは、ビードワイヤ15の先端部の未加硫ゴム14bと後端部の未加硫ゴム14bとが接着して、ビード要素16の環状が維持されて環状のビード要素16が成形される。
ビード要素16の成形時には、ビードワイヤ15をドラム2に巻き付けている途中でドラム2の回転を一時的に停止して、ベース8上で把持部6a、6Bによってビードワイヤ15を把持する。そして、切断具7によってビードワイヤ15を所定長さに切断する。その後、ドラム2を回転させてビードワイヤ15の残りの長さをドラム2の外周面に巻き付ける。切断したビードワイヤ15の後端部は、例えば、一方の把持部6aで把持しながらドラム2の外周面まで移送する。また、他方の把持部6bは、把持している新たなビードワイヤ15の先端部を、次の要素形成工程Mの際にドラム2の外周面に移送する。
ビード要素16が成形された後、スライド機構5によって、図4に例示するように、保持プレート3をドラム2に近接するようにスライド移動させる。このスライド移動によって、ドラム2に巻き付けられているビード要素16を保持面3aに向かって移動させて、磁石3bの磁力およびビード要素16(ビードワイヤ15)の未加硫ゴム14bの粘着力によって保持面3aに保持させる。その後、図5に例示するように、保持プレート3をドラム2から離反するようにスライド移動させる。その結果、ビード要素16はドラム2から保持プレート3に移載される。
次いで、図6に例示するように、同様にドラム2の外周面で1本のビード要素16を成形し、保持プレート3に移載させる。このようにドラム2の外周面で1本のビード要素16を成形して保持プレート3に移載させる要素成形工程Mを、順次繰り返し行う。それぞれの要素成形工程Mでは、製造するビードリング17の仕様に基づいて予め決定された回数で、ビードワイヤ15をドラム2の外周面に上下に積層して巻き付ける。そして、順次成形した環状のビード要素16どうしの側面を、上述したスライド移動によって圧着して接合する。隣り合って並列しているビード要素16の側面どうしは、それぞれのビードワイヤ15の未加硫ゴム14bが接着して接合する。これにより、図7に例示するように、並列させて接合した複数のビード要素16によってビードリング17が製造される。
要素成形工程Mを順次繰り返し行うことで、保持プレート3には、ドラム2の外周面で順次成形されたビード要素16が移載され、かつ、順次成形されたビード要素16の側面どうしが接合される。そのため、要素成形工程Mを必要回数行うことで、簡便にビードリング17を完成させることができる。
それぞれの要素成形工程Mでは、製造するビードリング17の仕様に基づいて、ビードワイヤ15のドラム2の外周面での巻き付け回数を変える。これにより、図8に例示するように、ビードリング17の横断面形状を任意の所望形状にすることができる。
ビードリング17において、ビード要素16どうしをより強固に接合するために、すべてのビード要素16の接合が完了した後に、ビードリング17を予備加硫するとよい。即ち、グリーンタイヤGの成形に使用する前に、それぞれのビード要素16(ビードワイヤ15)の未加硫ゴム14bを予備加硫して、いわゆる半加硫状態にして、それぞれのビード要素16どうしの一体性を向上させることができる。これにより、グリーンタイヤGの成形に使用される前に、ビードリング17の変形を防止しつつ、より長期間ストックするには有利になる。
図9に例示するように、ガイド2aおよび保持面3aを、ドラム軸方向CLに対して、製造するビードリング17の仕様に基づいて予め決定された傾斜角度に設定することもできる。この実施形態では、この傾斜角度が75°になっている。それぞれの要素成形工程Mでは、ビードワイヤ15をガイド2aに沿って傾斜させた状態でドラム2の外周面に上下に積層して巻き付けて環状のビード要素16を成形する。そして、ビードワイヤ15をこの傾斜させた状態に維持してビード要素16を保持プレート3に移載させる。要素成形工程Mを必要回数行うことで、図10に例示するビードリング17を完成させることができる。
この実施形態によれば、ビードワイヤ15を単純に縦積み状態に巻回してビード要素16を成形する場合に比して、ビードリング17の横断面形状のバリエーションが増大する。即ち、ビードリング17の横断面形状をより要望に近い形状にすることが可能になる。ガイド2aと保持面3aの組を、傾斜角度を異ならせて複数種類備えておくとよい。そして、ガイド2aと保持面3aの複数種類の組の中から、製造するビードリング17の仕様に最も適合する傾斜角度の組を選択、使用してビードリング17を製造する。
図11に例示するように、拡縮可能なドラム2を使用してドラム2の外周面の外径を異ならせて、ビード要素16を成形することもできる。例えば、それぞれの要素成形工程Mでは、製造するビードリング17の仕様に基づいて予め決定された外径にドラム2を設定してビード要素16を成形する。このように成形したビード要素16の側面どうしを接合することで、図12に例示する横断面形状のビードリング17を製造することができる。したがって、ビードリング17の横断面形状のバリエーションが益々増大する。即ち、ビードリング17の横断面形状を一段と要望に近い形状にすることが可能になる。この製造方法では、ビードリング17を構成しているビードワイヤ15を最密配置にすることが容易になる。
図13に例示するように、ガイド2aおよび保持面3aを、ドラム軸方向CLに対して、製造するビードリング17の仕様に基づいて予め決定された傾斜角度に設定するとともに、拡縮可能なドラム2を使用してドラム2の外周面の外径を異ならせて、ビード要素16を成形することもできる。このように成形したビード要素16の側面どうしを接合することで、図14に例示する横断面形状のビードリング17を製造することができる。したがって、ビードリング17の横断面形状のバリエーションが一段と益々増大する。即ち、ビードリング17の横断面形状をより一段と要望に近い形状にすることが可能になる。
ドラム2から保持プレート3に順次移載されるビード要素16どうしの側面を接合する際には、例えば接合の都度、保持プレート3を所定角度回転させた状態にする。これにより、図15に例示するように、それぞれのビード要素16のビードワイヤ15のスプライス部Sの位置を、周方向にずらしてビード要素16どうしの側面を接合する。それぞれのスプライス部Sどうしの周方向でのオーバーラップを無くすことで、製造したビードリング17のユニフォミティが向上する。
また、ビードリング17の周方向での重量バランスを敢えて特定の周方向位置に偏在させるように、それぞれのスプライス部Sの周方向位置を調整して、それぞれのビード要素16の側面どうしを接合することもできる。このビードリング17を用いることで、製造するタイヤTの他の部材の周方向での重量バランスの偏在を是正して、タイヤTのユニフォミティを向上させることができる。
図16に例示するように、ビード要素16を成形する際のビードワイヤ15のスプライス部Sの長さを任意に異ならせることもできる。そして、それぞれのスプライス部Sの周方向でのオーバーラップ長さをより短くして(最小限にして)、ビード要素16の側面どうしを接合してビードリング17を製造する。これにより、製造したビードリング17のユニフォミティが向上する。
また、ビードリング17の周方向での重量バランスを敢えて特定の周方向位置に偏在させるように、それぞれのスプライス部Sの長さを調整して、それぞれのビード要素16の側面どうしを接合することもできる。このビードリング17を用いることで、製造するタイヤTの他の部材の周方向での重量バランスの偏在を是正して、タイヤTのユニフォミティを向上させることができる。
既述したように製造したビードリング17を用いて、公知の方法でタイヤTを製造する。即ち、図17に例示するように、インナーライナ18の外周面にカーカス材19が積層されて、一対のビードリング17の間にカーカス材19を架け渡した状態のグリーンタイヤGを成形する。次いで、図18に例示するように、グリーンタイヤGを、加硫装置12に取り付けられた加硫用モールド13の中に設置する。このグリーンタイヤGの内側で加硫用ブラダ12aを膨張させて、グリーンタイヤGを加硫することで、図19に例示するタイヤTが製造される。
このタイヤの製造方法によれば、設定した仕様に合致したビードリング17、即ち、タイヤ仕様に好適な横断面形状のビードリング17を備えたタイヤTを製造できる。それ故、製造したタイヤTの性能を向上させるには有利になる。
図20に例示する製造装置1Aを用いて、別のタイヤの製造方法によってタイヤTを製造することもできる。この製造方法では、図29に例示するように、カーカス材19のタイヤ幅方向のそれぞれの端部が、一対の環状のビード要素16によって挟持されて一体化したビードリング17を製造する。
この製造装置1Aは、先の実施形態の製造装置1の構成に加えて、保持プレート3を、後述する剛性コア11に対して近接および離反移動させる搬送機構9を有している。搬送機構9としては、ロボットアームなどを用いることができる。この実施形態では、搬送機構9として、スライド機構5となる流体シリンダを保持して、保持プレート3を任意の位置に移動させるロボットアームが用いられている。搬送機構9の動きは制御部10により制御される。
このビードリング17の製造工程を詳述すると、図21に例示するように、1本のビードワイヤ15を、ドラム2の外周面に1周以上巻き付けてガイド2aに沿って上下に積層状態にした環状のビード要素16を成形する。ビード要素16が成形された後、スライド機構5によって、図22に例示するように、保持プレート3をドラム2に近接するようにスライド移動させる。このスライド移動によって、ドラム2に巻き付けられているビード要素16を保持面3aに向かって移動させて、磁石3bの磁力およびビード要素16(ビードワイヤ15)の未加硫ゴム14bの粘着力によって保持面3aに保持させる。
その後、図23に例示するように、保持プレート3をドラム2から離反するようにスライド移動させる。その結果、ビード要素16はドラム2から保持プレート3に移載される。このように、ドラム2の外周面でビード要素16を成形して保持プレート3に移載させる要素成形工程M1を行う。それぞれの要素成形工程M1では、製造するビードリング17の仕様に基づいて予め決定された回数で、ビードワイヤ15をドラム2の外周面に上下に積層して巻き付ける。
一方のビード要素16が移載された保持プレート3を、搬送機構9によって図24に例示するよう移動させる。即ち、図25に例示するように、このビード要素16を剛性コア11に向かって移動させる。
図25に例示するように、金属製の剛性コア11の外面は、製造するタイヤTの内面と同じ形状に形成されている。剛性コア11の外周面には、筒状のインナーライナ18が巻き付けられている。移動させたビード要素16の側面を、インナーライナ18のタイヤ幅方向の一方端部に圧着させて、ビード要素16をインナーライナ18に接合する。他方のビード要素16も同様に、その側面をインナーライナ18のタイヤ幅方向の他方端部に圧着させて、ビード要素16をインナーライナ18のタイヤ幅方向の他方端部に接合する。
次いで、インナーライナ18およびそれぞれのビード要素16を覆うようにカーカス材19が積層されて、インナーライナ18およびそれぞれのビード要素16と接合される。これにより、カーカス材19のタイヤ幅方向のそれぞれの端部のタイヤ内側にビード要素16が接合される。
次いで、図26に例示するように、この筒状のカーカス材19のタイヤ幅方向のそれぞれの端部に、新たな要素成形工程M1によって成形されたビード要素16の側面を圧着させて、ビード要素16をカーカス材19のタイヤ幅方向のそれぞれの端部に接合する。
このようにして、カーカス材19のタイヤ幅方向のそれぞれの端部を、一対のビード要素16によって挟持することで、カーカス材19のそれぞれの端部にビードリング17を一体化させて製造する。このビードリング17の製造方法においても、先の実施形態で説明した様々なアレンジを適用することができる。
その後、図27に例示するように、カーカス材19の外周側にその他のタイヤ構成部材を積層する。その結果、一対のビードリング17の間にカーカス材19を架け渡した状態のグリーンタイヤGが成形される。次いで、図28に例示するように、剛性コア11とともにグリーンタイヤGを、加硫装置12に取り付けられた加硫用モールド13の中に設置して、加硫装置12を用いて加硫することで、図29に例示するタイヤTが製造される。
この方法では、要素成形工程M1を行って保持プレート3に移載されたビード要素16を、カーカス材19のタイヤ幅方向のそれぞれの端部のタイヤ内側面とタイヤ外側面のそれぞれに接合する。その結果、カーカス材19のタイヤ幅方向のそれぞれの端部を一対のビード要素16によって挟持して一体化させたビードリング17を、簡便に完成させることができる。
要素成形工程M1では、製造するビードリング17の仕様に基づいて、ビードワイヤ15のドラム2の外周面での巻き付け回数を変えることで、ビードリング17の横断面形状を任意の所望形状にすることができる。これにより、設定した仕様に合致したビードリング17、即ち、タイヤ仕様に好適な横断面形状のビードリング17を備えたタイヤTを製造できる。したがって、製造したタイヤTの性能を向上させるには有利になる。
1、1A ビードリングの製造装置
2 ドラム
2a ガイド
3 保持プレート
3a 保持面
3b 磁石
4a、4b 中心軸
5 スライド機構
6a、6b 把持部
7 切断具
8 ベース
9 搬送機構
10 制御部
11 剛性コア
12 加硫装置
12a 加硫用ブラダ
13 加硫用モールド
14a ビードワイヤ
14b 未加硫ゴム
15 ゴム被覆ビードワイヤ
16 ビード要素
17 ビードリング
18 インナーライナ
19 カーカス材
G グリーンタイヤ
T 加硫済みタイヤ
2 ドラム
2a ガイド
3 保持プレート
3a 保持面
3b 磁石
4a、4b 中心軸
5 スライド機構
6a、6b 把持部
7 切断具
8 ベース
9 搬送機構
10 制御部
11 剛性コア
12 加硫装置
12a 加硫用ブラダ
13 加硫用モールド
14a ビードワイヤ
14b 未加硫ゴム
15 ゴム被覆ビードワイヤ
16 ビード要素
17 ビードリング
18 インナーライナ
19 カーカス材
G グリーンタイヤ
T 加硫済みタイヤ
Claims (9)
- ドラムの外周面にドラム半径方向外側に突出するガイドを設け、前記ドラムと並列された保持プレートの前記ガイドに対向する位置に保持面を設け、未加硫ゴムに被覆された1本または並列させた複数本のビードワイヤを、前記外周面に1周以上巻き付けて前記ガイドに沿って上下に積層状態にした環状のビード要素を成形し、並列された前記ドラムと前記保持プレートの少なくとも一方を、互いが近接する方向にスライドさせるスライド移動によって、前記環状のビード要素を前記保持面に向かって移動させて前記保持プレートに移載させる要素成形工程を、順次繰り返し行い、それぞれの前記要素成形工程では、製造するビードリングの仕様に基づいて予め決定された回数で、前記ビードワイヤを前記外周面に上下に積層して巻き付け、順次成形した前記環状のビード要素どうしの側面を、前記スライド移動によって接合してビードリングを製造することを特徴とするビードリングの製造方法。
- 前記ガイドおよび前記保持面を、ドラム軸方向に対して、製造するビードリングの仕様に基づいて予め決定された傾斜角度に設定し、それぞれの前記要素成形工程では、前記ビードワイヤを前記ガイドに沿って傾斜させた状態で前記外周面に上下に積層して巻き付けて前記環状のビード要素を成形し、前記ビードワイヤをこの傾斜させた状態で前記環状のビード要素を前記保持プレートに移載させる請求項1に記載のビードリングの製造方法。
- 前記ドラムを拡縮可能にして、それぞれの前記要素成形工程では、製造するビードリングの仕様に基づいて予め決定された外径に前記ドラムを設定する請求項1または2に記載のビードリングの製造方法。
- それぞれの前記環状のビード要素の前記ビードワイヤのスプライス部の位置を、周方向にずらして前記ビード要素どうしの側面を接合する請求項1~3のいずれかに記載のビードリングの製造方法。
- それぞれの前記環状のビード要素の前記ビードワイヤのスプライス部の長さを任意に異ならせる請求項1~4のいずれかに記載のビードリングの製造方法。
- すべての前記環状のビード要素の接合が完了した後に、前記ビードリングを予備加硫して、それぞれの前記環状のビード要素どうしの一体性を向上させる請求項1~5のいずれかに記載のビードリングの製造方法。
- 未加硫ゴムに被覆された1本または並列させた複数本のビードワイヤが外周面に巻き付けられるドラムと、このドラムに並列されて設置される保持プレートと、前記ドラムと前記保持プレートの少なくとも一方を、互いの並列方向にスライド移動させるスライド機構と、前記ドラム、前記保持プレートおよび前記スライド機構の動作を制御する制御部とを備えて、
前記外周面にドラム半径方向外側に突出するガイドを有し、前記保持プレートの前記ガイドに対向する位置に保持面を有し、前記ビードワイヤが前記外周面に1周以上巻き付けられて前記ガイドに沿って積層状態になった環状のビード要素が成形され、次いで、前記ドラムと前記保持プレートとを近接させる前記スライド移動によって前記環状のビード要素を前記保持面に向かって移動させて前記保持プレートに移載させる要素成形工程が、順次繰り返し行われ、それぞれの前記要素成形工程では、製造するビードリングの仕様に基づいて予め決定された回数で、前記ビードワイヤが前記外周面に上下に積層して巻き付けられて、順次成形された前記環状のビード要素どうしの側面が、前記スライド移動によって接合されてビードリングが製造される構成にしたことを特徴とするビードリングの製造装置。 - ドラムの外周面にドラム半径方向外側に突出するガイドを設け、前記ドラムと並列された保持プレートの前記ガイドに対向する位置に保持面を設け、未加硫ゴムに被覆された1本または並列させた複数本のビードワイヤを、前記外周面に1周以上巻き付けて前記ガイドに沿って上下に積層状態にした環状のビード要素を成形し、並列された前記ドラムと前記保持プレートの少なくとも一方を、互いが近接する方向にスライドさせるスライド移動によって、前記環状のビード要素を前記保持面に向かって移動させて前記保持プレートに移載させる要素成形工程を、順次繰り返し行い、それぞれの前記要素成形工程では、製造するビードリングの仕様に基づいて予め決定された回数で、前記ビードワイヤを前記外周面に上下に積層して巻き付け、順次成形した前記環状のビード要素どうしの側面を、前記スライド移動によって接合してビードリングを製造し、
一対の前記ビードリングの間にカーカス材を架け渡した状態のグリーンタイヤを成形し、次いで、前記グリーンタイヤを加硫するタイヤの製造方法。 - ドラムの外周面にドラム半径方向外側に突出するガイドを設け、前記ドラムと並列された保持プレートの前記ガイドに対向する位置に保持面を設け、未加硫ゴムに被覆された1本または並列させた複数本のビードワイヤを、前記外周面に1周以上巻き付けて前記ガイドに沿って上下に積層状態にした環状のビード要素を成形し、前記ドラムと前記保持プレートの少なくとも一方を、互いが近接する方向にスライドさせるスライド移動によって、前記環状のビード要素を前記保持面に向かって移動させて前記保持プレートに移載させる要素成形工程を行って、それぞれの前記要素成形工程では、製造するビードリングの仕様に基づいて予め決定された回数で、前記ビードワイヤを前記外周面に上下に積層して巻き付け、
前記保持プレートに移載させた前記環状のビード要素を、カーカス材のタイヤ幅方向のそれぞれの端部に対して、それぞれの前記端部のタイヤ内側面とタイヤ外側面とのそれぞれに接合してそれぞれの前記端部を一対の前記環状のビード要素によって挟持することで、それぞれの前記端部にビードリングを一体化させて製造して、
一対の前記ビードリングの間に前記カーカス材を架け渡した状態のグリーンタイヤを成形し、次いで、前記グリーンタイヤを加硫するタイヤの製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2020154713A JP2022048728A (ja) | 2020-09-15 | 2020-09-15 | ビードリングの製造方法および装置並びにタイヤの製造方法 |
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JP2020154713A Pending JP2022048728A (ja) | 2020-09-15 | 2020-09-15 | ビードリングの製造方法および装置並びにタイヤの製造方法 |
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- 2020-09-15 JP JP2020154713A patent/JP2022048728A/ja active Pending
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